説明

アクチュエータ

【課題】例えば昇降装置のような大きなトルクを必要とする場合であっても、その装置に使用するアクチュエータやギアを大型化することなく安定して使用でき、またブレーキ制御を簡易に構成したアクチュエータを提供する。
【解決手段】回転軸5に設けられた1個のウォームホイール8に2個のモータ2a、2bの各出力軸に設けられたウォームギヤ4a、4bを歯合することによって、1個の回転軸5を2個のモータ2a、2bで駆動制御するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば昇降装置のような大きなトルクを必要とする装置であっても、それに用いるアクチュエータやギアを大型化することなく安定して使用し、また駆動と制御を簡単な構成で拮抗させるように構成したアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、台所の流し台等の上方に設けられた昇降棚を上下駆動する昇降装置は、その設置場所を考慮すると、できるだけコンパクトに収納し得るものが望ましい。このため、特許文献1に記載の昇降装置においては、その装置に使用した電動モータをできるだけ小型に構成すると共に、ユニットケース内にコンパクトに収まるようにしている。
【0003】
即ち、特許文献1の装置は、図5に示すように、2本のベルト30、30を1本の巻取軸31に重ねた状態で巻き取るか、或いは1本の巻取軸31に隣接した状態で巻き取るようにしたもので、外箱32の上端内部に固設された装置ベース33の略中央に設けられたモータ34によって1本の巻取軸31を回転し、このモータ34の回転によって巻き取られるか又は巻き戻される2本のベルト30、30は外箱32の滑り部材35に案内されると共に、内箱36の上面の両側に設けられた動プーリ37、37に案内されることによって、各ベルト30、30の端部が折り返された状態で外箱32に固定された構成とされている。
【0004】
このような構成によって、2本のベルト30、30を1本の巻取軸31で巻き取るか又は巻き戻すことが可能となり、従来のように2本の巻取軸を必要としない構成とすることが可能となる。また、2本の巻取軸を使用した場合に必要であったピニオンギアが不要となるため、ピニオンギアの使用に際して懸念されていた疲労破壊のおそれがなくなり、部品点数を少なくすることが可能となるという利点を有するものである。
【特許文献1】特開2001−199692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の特許文献1の構成は昇降棚等の昇降装置に関するものであるが、一般に、電動モータ等のアクチュエータを狭隘な場所に設置するには、アクチュエータを含む駆動機構全体を小型化する必要がある。
【0006】
ところが、より大きいトルクを得るために、アクチュエータを大型化したり、減速機を設けて回転比を調節すると、ギヤに作用する負荷も大きくなるが、ギヤの破損等を回避するには、ギヤを大きく形成することが必要となり、駆動機構の小型化に反することとなる。
【0007】
また、上記の特許文献1の装置のように、1個のモータで巻き取りと巻き戻しを行う場合、この1個のモータをブレーキ制御するか、または他のブレーキ機能を付加する必要があり、制御構造が複雑になるという不都合があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、例えば昇降装置のような大きなトルクを必要とする場合であっても、その装置に使用するモータやギアを大型化することなく構成することができ、またブレーキ制御機能を簡易に構成することができるようにしたアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1のアクチュエータは、回転軸に設けられた1個のウォームホイールに2個のモータの各出力軸に設けられたウォームギヤを歯合することによって、1個の回転軸を2個のモータで駆動制御するようにしたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2のアクチュエータは、請求項1において、前記回転軸に設けられた1個のウォームホイールに対して2個のモータの各出力軸に設けられたウォームギヤを直交するように歯合させたことを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明の請求項3のアクチュエータは、請求項1又は2において、2個のモータのうち1個のモータでブレーキ制御するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上のように構成された本発明のアクチュエータは、回転軸に設けられた1個のウォームホイールに2個のモータの各出力軸に設けられたウォームギヤを歯合することによって、1個の回転軸を2個のモータで駆動制御するようにしてあるため、1個のウォームホイールに対してウォームギヤの歯合位置を2箇所に分散した状態で2個のモータを駆動する構成となり、2個のモータの合計トルクを大きくした場合でも、各モータは半分のトルクですみ、従って各モータを小型化することが可能となる。
【0013】
また、本発明のアクチュエータによれば、ウォームホイールに対する負荷も二箇所に分散するため、用いられたウォームギヤ及びウォームホイールに要求される強度を分散することができ、これらのウォームホイール及び個々のウォームギヤもまた小型のものを使用することが可能となり、またギアを構成する材料の強度を上げたり大型化しなくても、大きな負荷に十分耐え得るアクチュエータを得ることが可能となる。
【0014】
さらに、一般的に、荷重が大きくなると上昇の際には大きなトルクが要求される一方、下降の際には小さなトルクで済むというように、上昇と下降とでは要求されるトルクが異なるものであるが、本発明によれば、1個のウォームホイールを2個のモータで同時に駆動制御することができるため、上昇の際には2個のモータを上昇作動に使用し、また上昇動作から停止する際には、片方のモータを制動に使用して安定した停止動作を行い、さらに下降の際には、片方又は両方を制動に使用して安定したブレーキ動作及び停止動作を行うというように、2個のモータが拮抗しながら駆動制御されることによって、非常に安定した動作を行うアクチュエータを得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明によるアクチュエータ1は、図1または図2に示すように、回転軸5に設けられた1個のウォームホイール8に2個のモータ2a、2bの各出力軸に設けられたウォームギヤ4a、4bを歯合することによって、1個の回転軸5を2個のモータ2a、2bで駆動制御するようにしたものである。
【0017】
このような構成の実施例について、図2を参照しながら説明する。この図2は図1に図示したギヤケース10からネジ12を離脱することによって蓋11を取り外した内部構造を示すものである。この図に示すように、断面コ字形の筐体6には両側板6a、6bの間にドラム7が回転自在に設けられ、該ドラム7の回転軸5は筐体6の側板6aから外方へ突出されると共に、該突出した回転軸5の端部にウォームホイール8が固定されている。
【0018】
また、このウォームホイール8を挟んで筐体6の側板6aには電動モータ2a、2bが固定されている。ただし、各モータ2a、2bは、夫々の出力軸に設けられたウォームギヤ4a、4bが、ウォームホイール8の外周歯において180度異なる位置に歯合するように配設されている。
【0019】
このような構成において、回転軸5に設けられた1個のウォームホイール8に対して2個のモータ2a、2bの各出力軸に設けられたウォームギヤ4a、4bを互いに直交するように歯合させてあるため、各モータ2a、2bは、筐体6の側部にウォームホイール8を挟んで上下に互いに段を成したように設けられている。従って、各モータ2a、2bは、図1に示すように、ドラム7に取り付けられて巻回されるベルト9の引き出し方向に沿って平行に設けられることとなり、全体をコンパクトにすることができる。
【0020】
なお、上記の構成においては、夫々のモータ2a、2bの各出力軸に設けられたウォームギヤ4a、4bがウォームホイール8の外周歯において180度異なる位置に歯合するように配設されているが、このアクチュエータ1の設置箇所の空きスペースに応じて、モータ2a、2bの取付け位置或いは角度を調整した状態で1個のウォームホイール8に2個のウォームギヤ4a、4bを歯合した配置状況とすることも可能である。
【0021】
上記のように構成されたアクチュエータ1においては、1個のウォームホイール8に対して2個のウォームギヤ4a、4bの歯合位置を2箇所に分散した状態で2個のモータ2a、2bを駆動制御する構成としてあるため、2個のモータ2a、2bの合計トルクを大きくした場合でも、各モータ2a、2bは半分のトルクですみ、従って各モータ2a、2bを小型化することが可能となる。
【0022】
また、ウォームホイール8に対する負荷箇所も二箇所に分散するため、従来のように一箇所の歯合箇所に無理な力が作用することがなく、ウォームギヤ4a、4b及びウォームホイール8に対する負担を軽減することが可能となり、ギアを構成する材料の強度を上げたり大型化しなくても、これらのウォームギヤ4a、4b及びウォームホイール8もまた小型のものを使用することによって大きな負荷に十分耐え得るアクチュエータを得ることが可能となる。
【0023】
さらに、本発明のアクチュエータ1は、1個の回転軸を2個のモータ2a、2bで駆動する構成であるため、一方のモータ2a又は2bを駆動する際、他方のモータ2a又は2bをブレーキ制御に使用するというように、2個のモータを互いに拮抗させた駆動制御を行うことが可能となり、複雑な制御機構を設けることなく、安定した確実な駆動を制御を行うことができるアクチュエータを構成することが可能となる。
【実施例2】
【0024】
この実施例におけるアクチュエータ14もまた、図3または図4(図4は本実施例のアクチュエータの内部構造を透視的に示すものである)に示すように、回転軸受15に設けられた1個のウォームホイール16に2個のモータ17a、17bの各出力軸に設けられたウォームギヤ18a(図示には表れていない)、18bを歯合することによって、1個の回転軸受15を2個のモータ17a、17bで駆動制御する構成とされている。
【0025】
このような本実施例のアクチュエータ14について説明すると、図4に示すように、1個のウォームホイール16の両側に2個のモータ17a、17bの各出力軸に設けられたウォームギア18a、18bが歯合されると共に、ウォームホイール16には外筒20内をスライド可能な送りネジ19が接続され、2個のモータ17a、17bの駆動及び制御により送りネジ19を回転又は制動することができる。また、送りネジ19の外周にはネジ山22が形成され、このネジ山22がスライドロッド21の端部に設けられたナット23の内側のネジ山に歯合されており、送りネジ19の回転によって、スライドロッド21が前後動することが可能とされている。
【0026】
このような構成においても、夫々のモータ17a、17bの各出力軸に設けられたウォームギア18a、18bがウォームホイール16の外周歯において180度異なる位置に歯合するように配設されているが、このアクチュエータ14の設置箇所の空きスペースに応じて、モータ17a、17bの取付け位置或いは角度を調整した状態で1個のウォームホイール16に2個のウォームギア18a、18bを歯合した配置構成とすることが可能である。
【0027】
上記のように構成されたアクチュエータ14においてもまた、1個のウォームホイール16に対してウォームギア18a、18bの歯合位置を2箇所に分散した状態で2個のモータ17a、17bを駆動制御する構成としてあるため、2個のモータ17a、17bの合計トルクを大きくした場合でも、各モータ17a、17bは半分のトルクですみ、従って各モータ17a、17bを小型化することが可能となる。
【0028】
また、ウォームホイール16に対する負荷箇所も二箇所に分散するため、ウォームギア18a、18b及びウォームホイール16に対する負担を軽減することが可能となり、ギアを構成する材料の強度を上げたり大型化しなくても、これらのウォームギヤ18a、18b及びウォームホイール16に小型のものを使用することによって大きな負荷に十分耐え得るアクチュエータを得ることが可能となる。
【0029】
さらに、本発明のアクチュエータ1は、1個の回転軸を2個のモータ17a、17bで駆動する構成であるため、2個のモータを互いに拮抗させた駆動制御を行うことが可能となり、複雑な制御機構を設けることなく、安定した確実な駆動を制御を行うことができるアクチュエータを構成することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のアクチュエータは、大きなトルクを必要とする昇降装置等のアクチュエータとして利用することができ、特に、アクチュエータやギアを大型化することなく、各ギヤに作用する負荷を分散することによって軽減し、また2個のモータを互いに拮抗させた駆動制御を行うことによって安定した動作を行うことができるアクチュエータとして利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による実施例1のアクチュエータの外観斜視図である。
【図2】本発明による実施例1のアクチュエータのギア構造を示す分解斜視図である。
【図3】本発明による実施例2のアクチュエータの外観斜視図である。
【図4】本発明による実施例2のアクチュエータのギア構造を透視的に図示した全体斜視図である。
【図5】特許文献1の昇降装置の構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 アクチュエータ
2a、2b モータ
4a、4b ウォームギヤ
5 回転軸
6 筐体
6a、6b 両側板
7 ドラム
8 ウォームホイール
9 ベルト
10 蓋
11 ギヤケース
12 ネジ
14 アクチュエータ
15 回転軸受
16 ウォームホイール
17a、17b モータ
18a、18b ウォームギヤ
17a、17b モータ
19 送りネジ
20 外筒
21 スライドロッド
22 ネジ山
23 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に設けられた1個のウォームホイールに2個のモータの各出力軸に設けられたウォームギヤを歯合することによって、1個の回転軸を2個のモータで駆動制御するようにしたことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記回転軸に設けられた1個のウォームホイールに対して2個のモータの各出力軸に設けられたウォームギヤを直交するように歯合させたことを特徴とする請求項1記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記2個のモータのうち1個のモータでブレーキ制御するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載のアクチュエータ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−215303(P2007−215303A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31426(P2006−31426)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(391016989)株式会社的場電機製作所 (8)
【Fターム(参考)】