説明

アクリロニトリル系ポリマーおよびそれを用いた炭素繊維用前駆体繊維

【課題】 本発明は、炭素繊維の生産性と高弾性率等の性能とを両立させるために、高速焼成が可能で、耐炎化処理後の断面二重構造が低減され得る前駆体繊維を与えるようなアクリロニトリル系ポリマーを提供することを目的とする。
【解決手段】 炭素繊維用前駆体繊維の製造に用いられるアクリロニトリル系ポリマーであって、示差走査熱量計を用いて空気気流中にて230℃で測定した等温発熱曲線における発熱ピーク出現時間の逆数をV(min-1)としたときに、Vが0.01以上、0.3未満であることを特徴とするアクリロニトリル系ポリマー。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は炭素繊維の製造原料として用いられるアクリロニトリル系ポリマーに関し、さらに詳しくは炭素繊維の生産性と性能の両方に優れる炭素繊維の製造原料用のアクリロニトリル系ポリマーに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、アクリル系繊維を前駆体とする炭素繊維および黒鉛繊維(本出願では、一括して炭素繊維という。)はその優れた力学的性質により、航空宇宙用途を始め、スポーツ、レジャー用途等の高性能複合材の補強繊維素材として広い範囲で利用されている。さらに、これら複合材料の高性能化のために炭素繊維の品質、性能の向上が求められると共に、さらに製造コストの低減により産業資材用途への広がりが期待されている。
【0003】炭素繊維の前駆体としてのアクリロニトリル系繊維は、衣料用アクリロニトリル繊維とは異なりあくまでも最終製品である炭素繊維を製造するための中間製品である。従って、品質、性能の優れた炭素繊維を与えるようなものが求められると同時に、炭素繊維となす焼成工程において生産性が高く、低コストで提供し得るものであることが極めて重要である。
【0004】炭素繊維の製造工程は、前駆体繊維の紡糸工程、耐炎化工程、炭素化工程、黒鉛化工程から構成されている。この中でアクリロニトリル系前駆体繊維の耐炎化工程おいては、主にニトリル基の環化反応、酸化反応、脱水素反応の3つから構成される複合反応が生じる工程であり、炭素繊維の性能に大きな影響を与えることが知られている。しかも、この耐炎化工程は一般に長時間の処理を必要としているため、耐炎化処理時間を短縮することは生産性向上に大きく寄与することになる。従って、高い耐炎化反応性を有する前駆体繊維は耐炎化時間の短縮には有利である。しかし、このように耐炎化反応性が高い場合には、繊維表層の耐炎化が急速に進むのにつれて、内部への酸素拡散性が低下するため、内部の酸化反応が進まず生焼け状態の断面二重構造が発生してしまう。この断面二重構造が顕著な耐炎化繊維を用いた場合、最終的に得られる炭素繊維の物性が低いことが知られている。このように、耐炎化時間の短縮と断面二重構造の低減化は相反するものであり、これらをバランスよく実現するアクリロニトリル系炭素繊維用前駆体ポリマーが望まれていた。
【0005】耐炎化時間の短縮については、例えば、カルボン酸基含有ビニルモノマーを用いるなど重合体組成の限定により、重合体製造や紡糸工程での安定性も配慮しながら、焼成時間の短縮を試みたもの(特公昭51−7209号公報)、あるいは原料重合体にアミン類や過酸化物を添加する方法(特公昭51−7209号公報、特開昭48−87120号公報)等が提案されている。また、特開平7−292526号公報では、不活性雰囲気中で熱処理した後に、活性雰囲気中で熱処理を行う方法が提案されている。しかしながら、これらは耐炎化での反応促進そのものが高速焼成を可能にすると考えられているものの、一方で得られる炭素繊維の性能は耐炎化糸の断面二重構造形成などによりむしろ損なわれる傾向にあり、炭素繊維の生産性と性能の両面での向上は達成されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、炭素繊維の生産性と高弾性率等の性能とを両立させるために、高速焼成が可能で、耐炎化処理後の断面二重構造が低減され得る前駆体繊維を与えるようなアクリロニトリル系ポリマーを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、炭素繊維用前駆体繊維の製造に用いられるアクリロニトリル系ポリマーであって、示差走査熱量計を用いて空気気流中にて230℃で測定した等温発熱曲線における発熱ピーク出現時間の逆数をV(min-1)としたときに、Vが0.01以上、0.3未満であることを特徴とするアクリロニトリル系ポリマーに関する。
【0008】
【発明の実施の形態】Vは耐炎化反応速度の目安となる値である。Vが小さすぎると耐炎化反応速度が小さく、耐炎化反応が速やかに進行しないため、Vは0.01以上であり、好ましくは0.05以上である。また、Vが大き過ぎると耐炎化反応速度が大き過ぎ、このポリマーを用いた前駆体繊維を耐炎化処理して耐炎化繊維に転換した場合、表面のみが耐炎化が進み、内部が生焼けの状態の断面二重構造が生じやすくなるので、Vは0.3未満が好ましく、特に0.25以下が好ましい。
【0009】本発明のアクリロニトリル系ポリマーでは、このようなVにするために一般にはアクリロニトリル単位に加えて、共重合成分としてポリマー中に耐炎化反応を促進する効果があるカルボン酸基含有ビニルモノマー単位を含有することが好ましい。
【0010】特に本発明のアクリロニトリル系ポリマーを得るためには、ポリマー中のカルボン酸基含有ビニルモノマー単位の共重合量をM(mol%)としたときに、Mが(イ)0.5±0.2、(ロ)1.5±0.2、および(ハ)2.5±0.2の3種類の組成範囲に入るようにカルボン酸基含有ビニルモノマーの共重合率を変えた3種類のポリマーのMと、各ポリマーについて測定したVの値から最小自乗法により求められる直線の傾き(dV/dM)が0.1以下となるような重合条件で重合を行うことが好ましい。
【0011】ここで、(イ)、(ロ)および(ハ)の範囲にある3種類のポリマーを得るための重合は、同一重合条件で行われる必要があり、カルボン酸基含有ビニルモノマーを同一とし、溶液重合または懸濁重合の区別およびそのときの溶媒または懸濁液、開始剤の種類、温度、時間を同一としてモノマーの仕込量比のみを変えて行う。
【0012】そして、その重合条件がdV/dMが0.1以下となることがわかれば、本発明のアクリロニトリル系ポリマーを得るための重合条件が定まり、同一条件により、さらにVが0.01以上、0.3未満となるようなカルボン酸基含有ビニルモノマーの仕込量比の条件で本発明のアクリロニトリル系ポリマーを得ることができる。
【0013】尚、dV/dMが0.1を越えると、ポリマー中の組成斑に起因した耐炎化斑が生じやすく、最終的な炭素繊維の性能を損ない易い。
【0014】また、ポリマー中のアクリロニトリル単位は97mol%以上であることが好ましい。共重合体中のアクリロニトリル含有量が97mol%に満たない場合、前駆体繊維を炭素繊維にしたときにアクリロニトリル以外のコモノマーが欠陥点となり、炭素繊維の品質並びに性能を損ない易い。
【0015】また、前記カルボン酸基含有ビニルモノマー単位の含有量は、0.2〜3mol%であり、好ましくは0.5〜2.5mol%である。
【0016】カルボン酸基含有ビニルモノマーとして具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基を有するビニル系モノマー、およびそれらの塩(例えばアンモニウム塩等)が挙げられる。この中でも、メタクリル酸およびイタコン酸が好ましい。
【0017】イタコン酸の場合は、重合方法がレドックス系水系懸濁重合である場合がより好ましい。このようにカルボン酸基含有ビニルモノマーの種類だけでなく、重合条件(重合方法、開始剤)も耐炎化反応をコントロールする上で重要である。
【0018】また、本発明のアクリロニトリル系ポリマーはアクリロニトリルおよび上記カルボン酸基含有ビニルモノマー以外にも本発明の要件を満足する範囲で、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のビニル基含有カルボン酸のエステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、無水マレイン酸、メタクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン等のモノマーを少量含んでいても良い。この中でも特に共重合成分としてはアクリルアミドが好ましい。耐炎化反応速度は、カルボン酸基の含有量が支配的な要因であるが、少量のアクリルアミドが共存することで急激に増大するからである。
【0019】本発明のアクリロニトリル系ポリマーを得るための重合方法は本発明の要件を満たす範囲において、溶液重合、懸濁重合等公知の方法のいずれにも限定されないが、未反応モノマーや重合触媒残査、その他の不純物類を極力のぞくことが好ましい。また前駆体繊維の紡糸での延伸性や炭素繊維の性能発現性などの点から、重合体の重合度は極限粘度[η]が0.8以上、特に1.4以上が好ましい。また、極限粘度[η]が2.0以下のものが通常用いられる。
【0020】本発明の前駆体繊維は、このようなアクリロニトリル系ポリマーを公知の溶剤に溶解して紡糸原液とした後に、公知の方法に従って乾式、乾−湿式、湿式紡糸法により紡出、凝固、延伸(浴中延伸、または空中および浴中延伸)および乾燥緻密化を行い、前駆体繊維にすることができる。
【0021】浴中延伸は凝固繊維を直接行ってもよいし、また空中にて凝固繊維をあらかじめ延伸した後に行ってもよい。浴中延伸は通常50〜98℃の延伸浴中で1回または2回以上の多段に分割するなどして行われ、その前後あるいは中間にて水洗を行ってもよい。
【0022】これらの操作によって凝固繊維は浴中延伸完了時までに約6倍以上延伸されることが好ましい。
【0023】浴中延伸、洗浄後の繊維は公知の方法によって油剤処理を行った後、乾燥緻密化する。乾燥緻密化は公知のいずれの方法によっても可能であるが、乾燥速度、設備の簡便さ、繊維の緻密化効果など考慮した場合100〜200℃程度の加熱ローラーによる方法が好ましい。また必要に応じて乾燥緻密化前あるいは後に、繊維をさらに高温の加熱ローラーあるいは加圧スチームによって延伸を施してもよい。
【0024】このようにして得られた前駆体繊維は、200℃〜400℃の酸化性雰囲気中で加熱処理(耐炎化処理)することにより耐炎化繊維に転換することができる。さらに、公知の方法により1000℃〜1500℃程度の不活性雰囲気中で炭素化することにより炭素繊維が得られる。
【0025】本発明の前駆体繊維を用いると、耐炎化処理の際に高速焼成が可能で、得られる炭素繊維の性能も優れている。
【0026】
【実施例】以下に実施例を示してさらに本発明を具体的に説明する。実施例および比較例における共重合体組成、共重合体の極限粘度[η]および等温DSC発熱曲線は次の方法で測定した。
【0027】(イ)「共重合体組成」
1H−NMR法(日本電子GSX−400型超伝導FT−NMR)により測定した。
【0028】(ロ)「共重合体極限粘度[η]」
25℃のジメチルホルムアミド溶液で測定した。
【0029】(ハ)「等温DSC発熱曲線」
セイコー電子工業製DSC220Cを用いて、アクリロニトリル系ポリマーを4.0mg秤量しアルミニウム製試料容器に入れステンレス製メッシュカバーで押さえた状態で乾燥空気気流中で230℃にて測定した。得られた等温発熱曲線が極大値をとるときの発熱ピーク時間t(min)の逆数をV(min-1)とした。
【0030】また、実施例中の「AN」はアクリロニトリル、「IA」はイタコン酸、「MAA」はメタクリル酸、「AAm」はアクリルアミドを表す。
【0031】[実施例1]セパラブルフラスコに十分窒素置換した蒸留水を入れ55℃に保持した。そこへ、レドックス系重合開始剤である過硫酸アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウムおよび硫酸を入れ、引き続いてAN、IA水溶液を一定速度で滴下した。その後、内温を55℃に維持しながら攪拌を続け、滴下終了後から2時間経過したところで重合を止め、析出した重合スラリーから濾過、洗浄、乾燥してアクリロニトリル系ポリマーを得た。同様な方法でさらに組成が異なるポリマーを2種類重合した。得られたポリマーのNMR分析から、組成はそれぞれ、AN/IA=99.5/0.5、98.4/1.6、97.5/2.5(mol%)であった。また、ポリマーの固有粘度は1.8であった。
【0032】このポリマーの等温発熱曲線をDSCにより測定した。その代表例としてAN/IA=99.5/0.5の組成のポリマーの等温発熱曲線を図1に示した。この発熱曲線から、発熱ピーク出現時間は9.2分であり、Vは0.11であった。他の2種のポリマーについて同様に測定を行った結果を表1にまとめて示す。3種類のポリマーの共重合量M(mol%)と発熱ピーク時間の逆数V(min-1)の値から最小自乗法によりdV/dMの値を求めたところ、2.7×10-2であった(図2参照)。
【0033】[実施例2]実施例1と同様な重合方法により、表1に示した組成および固有粘度1.8のポリマーを重合した。各ポリマーについて等温DSC測定を行った結果を表1にまとめて示す。3種類のポリマーのM、Vの値から最小自乗法によりdV/dMの値を求めたところ、4.4×10-2であった。
【0034】[実施例3]セパラブルフラスコにジメチルスルホキシド(以下DMSOと略す)を入れ60℃に保持した。そこへ、アゾ系開始剤の2,2=|アゾジ−(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)を入れ、引き続いてAN、MAAを一定速度で滴下した。その後、内温を60℃に維持しながら攪拌を続け、滴下終了後から2時間経過したところで重合を止めた。得られた溶液を大量の水へ少しづつ投入し、析出してきた沈殿を濾過、洗浄、乾燥してアクリロニトリル系ポリマーを得た。同様な方法でさらに組成が異なるポリマーを2種類重合した。得られたポリマーのNMR分析から、組成はそれぞれ、AN/MAA=99.4/0.6、98.5/1.5、97.3/2.7(mol%)であった。また、ポリマーの固有粘度は1.8であった。
【0035】各ポリマーについて等温DSC測定を行った結果を表1にまとめて示す。3種類のポリマーのM、Vの値から最小自乗法によりdV/dMの値を求めたところ、5.0×10-3であった。
【0036】[比較例1]セパラブルフラスコに十分窒素置換した蒸留水/ジメチルアセトアミド(DMAc)=6/1の割合で入れ60℃に保持する。そこへ、アゾビスイソブチロニトリルを入れ、引き続いてAN、MAAを一定速度で滴下した。その後、内温を60℃に維持しながら攪拌を続け、滴下終了後から2時間経過したところで重合を止めた。析出してきた沈殿を濾過、洗浄、乾燥してアクリロニトリル系ポリマーを得た。同様な方法でさらに組成が異なるポリマーを2種類重合した。得られたポリマーのNMR分析から、組成はそれぞれ、AN/MAA=99.3/0.7、98.4/1.6、97.4/2.6(mol%)であった。また、共重合体の固有粘度は1.8であった。
【0037】各ポリマーについて等温DSC測定を行った結果を表1にまとめて示す。3種類のポリマーのM、Vの値から最小自乗法によりdV/dMの値を求めたところ、4.2×10-2であった。
【0038】[比較例2]実施例3と同様な重合方法により、表1に示した組成および固有粘度1.8のポリマーを重合した。各ポリマーについて等温DSC測定を行った結果を表1にまとめて示す。3種類のポリマーのM、Vの値から最小自乗法によりdV/dMの値を求めたところ、2.0×10-1であった。
【0039】[比較例3]実施例3と同様な重合方法により、表1に示した組成および固有粘度1.8のポリマーを重合した。このポリマーについて同様に等温発熱曲線をDSCにより測定を行ってVを求めたところ、1.4であった。
【0040】
【表1】


[実施例4]実施例2で得られたポリマーのうち、AN/MAA=99.5/0.5の組成のポリマーをジメチルホルムアミド(以下DMFと略す)に23重量%になるように溶解し、紡糸原液とした。この紡糸原液を直径0.15mmの口金から空気中に吐出し、DMF/水の混合溶媒中で凝固させた。その後、さらに空気中で1.5倍、さらに温水中で3.4倍延伸しながら洗浄・脱溶剤した後、シリコン系油剤溶液中に浸漬し、140℃の加熱ローラーにて乾燥緻密化した。引き続いて、180℃の熱板上で1.5倍延伸し、捲取速度77m/minにて1.2dtexの前駆体繊維を得た。
【0041】この繊維を空気中230℃雰囲気中に60分間放置して耐炎化処理を行い耐炎化繊維に転換した。得られた耐炎化繊維を樹脂で包埋しカットして横断面を出し研磨した後、反射顕微鏡で断面の状態を観察したところ、繊維断面は均一に黒く着色しており、断面二重構造は観察されなかった。
【0042】[比較例3]比較例1で得られたポリマーのうち、AN/MAA=99.3/0.7の組成のポリマーから実施例5と同様の方法で前駆体繊維を得た。この繊維を空気中230℃雰囲気中に60分間放置して耐炎化処理を行い耐炎化繊維に転換した。得られた耐炎化繊維を樹脂で包埋しカットして横断面を出し研磨したのち反射顕微鏡で断面の状態を観察したところ、繊維表面のみが黒く着色して、内部が着色していない断面二重構造が観察された。
【0043】
【発明の効果】本発明のアクリロニトリル系ポリマーを用いて炭素繊維用前駆体繊維を製造すると、耐炎化処理の際に高速に焼成することが可能で、かつ得られる耐炎化繊維の断面二重構造を低減することができる。従って、炭素繊維製造工程の生産性が向上し、高弾性率等の優れた品質・性能を有する炭素繊維が得られるので、生産性と品質・性能を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】示差走査熱量計(DSC)により測定したアクリロニトリル系ポリマーの等温発熱曲線の1例である。
【図2】実施例および比較例について、カルボン酸基含有ビニルモノマーの共重合量Mと発熱ピークの逆数Vの関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 炭素繊維用前駆体繊維の製造に用いられるアクリロニトリル系ポリマーであって、示差走査熱量計を用いて空気気流中にて230℃で測定した等温発熱曲線における発熱ピーク出現時間の逆数をV(min-1)としたときに、Vが0.01以上、0.3未満であることを特徴とするアクリロニトリル系ポリマー。
【請求項2】 ポリマー中のカルボン酸基含有ビニルモノマー単位の共重合量をM(mol%)としたときに、Mが(イ)0.5±0.2、(ロ)1.5±0.2、および(ハ)2.5±0.2の3種類の組成範囲に入るようにカルボン酸基含有ビニルモノマーの共重合率を変えた3種類のポリマーのMと、各ポリマーについて測定したVの値から最小自乗法により求められる直線の傾き(dV/dM)が0.1以下となるような重合条件で重合を行って得られる請求項1記載のアクリロニトリル系ポリマー。
【請求項3】 ポリマー中のアクリロニトリル単位の含有量が97mol%以上であり、前記カルボン酸基含有ビニルモノマー単位の含有量が0.2〜3mol%である請求項1または2記載のアクリロニトリル系ポリマー。
【請求項4】 前記共重合成分であるカルボン酸基含有ビニルモノマーがメタクリル酸である請求項3記載のアクリロニトリル系ポリマー。
【請求項5】 前記共重合成分であるカルボン酸基含有ビニルモノマーがイタコン酸であり、かつ重合方法がレドックス系開始剤を用いた水系懸濁重合によって得られた請求項3記載のアクリロニトリル系ポリマー。
【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載のアクリロニトリル系ポリマーからなる炭素繊維用前駆体繊維。
【請求項7】 請求項6の炭素繊維用前駆体繊維を耐炎化し、炭素化して得られる炭素繊維。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2000−119341(P2000−119341A)
【公開日】平成12年4月25日(2000.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−293877
【出願日】平成10年10月15日(1998.10.15)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】