説明

アセスルファムカリウム含有飲料及びその製造方法、並びにアセスルファムカリウム含有飲料の金属味抑制方法

【課題】アセスルファムカリウムに特有の金属味が抑制されてなる、風味良好なアセスルファムカリウム含有飲料、当該アセスルファムカリウム含有飲料の製造方法、及びアセスルファムカリウム含有飲料の金属味を抑制する方法を提供する。
【解決手段】アセスルファムカリウムの濃度[A](mg/kg)に対するネオテームの濃度[B](mg/kg)の比[B]/[A]が0.005〜0.12となるように、アセスルファムカリウムの濃度[A]が100〜500mg/kgとなるように、ネオテームの濃度[B]が0.5〜10mg/kgとなるように、かつ栄養甘味料の濃度をショ糖換算した量[c](質量%)が5質量%以下となるように、アセスルファムカリウム含有飲料におけるアセスルファムカリウムの濃度、ネオテームの濃度及び栄養甘味料の濃度を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセスルファムカリウム含有飲料及びその製造方法、並びにアセスルファムカリウム含有飲料における金属味を抑制する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アセスルファムカリウムは、ショ糖の約200倍の甘味を有する高甘味度甘味料であり、すっきりとキレのある甘味質で、甘味の発現が早く、酸、熱、酵素に対して安定であるという特徴を有する(非特許文献1)。近年、消費者の低カロリー志向の高まりにより、飲料等の食品へのアセスルファムカリウムの利用が増加している。
【0003】
しかし、アセスルファムカリウムは特有の金属味を有しており、飲料等の嗜好品に添加する場合には好ましくないという一面を有していた。そのため、アセスルファムカリウムを含む高甘味度甘味料の呈味を改善する方法として、アセスルファムカリウムにスクラロースを混合する方法(特許文献1)、高甘味度甘味料にアミノ酸を混合する方法(特許文献2)、高甘味度甘味料にヘスペリジンやヘスペリジン誘導体を混合する方法(特許文献3)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−333729号公報
【特許文献2】特開2000−270804号公報
【特許文献3】特開平8−256725号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】月刊フードケミカル,Vol.24,No.9,p.35-38,2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、スクラロースを添加することにより、スクラロースに特有の後味の悪さが付与されてしまうとともに、飲料等に添加した場合には、口に含んだ直後の香り立ちが遅くなるという問題があった。
【0007】
また、上記特許文献2に記載の方法では、アミノ酸に特有の苦味等の不快味が飲料等に付与されてしまうことに加え、飲料等のカロリーが増加し、近年の低カロリー志向に反するものとなってしまうという問題があった。
【0008】
さらに、上記特許文献3に記載の方法では、ヘスペリジンの水への溶解性が低いことから飲料等への利用が制限されてしまい、水への溶解性の高いヘスペリジン誘導体を使用したとしても、当該ヘスペリジン誘導体が、柑橘ポリフェノールに特有の渋味、苦味等を有するため、飲料等に嗜好的に好ましくない味質も付与されてしまうという問題があった。
【0009】
上記問題点に鑑みて、本発明は、アセスルファムカリウムに特有の金属味が抑制されてなる、風味良好なアセスルファムカリウム含有飲料、当該アセスルファムカリウム含有飲料の製造方法、及びアセスルファムカリウム含有飲料の金属味を抑制する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、アセスルファムカリウムと、ネオテームとを含有するアセスルファムカリウム含有飲料であって、前記アセスルファムカリウムの濃度[A](mg/kg)に対する前記ネオテームの濃度[B](mg/kg)の比[B]/[A]が0.005〜0.12であり、前記アセスルファムカリウムの濃度[A]が100〜500mg/kgであり、前記ネオテームの濃度[B]が0.5〜10mg/kgであり、前記飲料における栄養甘味料の濃度をショ糖換算した量[c](質量%)が5質量%以下であることを特徴とするアセスルファムカリウム含有飲料を提供する(発明1)。
【0011】
上記発明(発明1)によれば、アセスルファムカリウムに特有の金属味を効果的に低減することができるとともに、口に含んだ直後の香り立ちを遅らせることがなく、また、風味を良好なものとすることができる。
【0012】
上記発明(発明1)においては、前記アセスルファムカリウムの濃度[A]に対する前記ネオテームの濃度[B]の比[B]/[A]が0.0075〜0.025であり、前記アセスルファムカリウムの濃度[A]が200〜500mg/kgであり、かつ前記ネオテームの濃度[B]が2〜10mg/kgであることが好ましい(発明2)。
【0013】
上記発明(発明1,2)においては、前記飲料として、茶系飲料、野菜飲料、果汁飲料、コーヒー飲料、炭酸飲料、機能性飲料、酢含有飲料、スポーツドリンク、ニアウォーター又は乳酸菌飲料を例示することができる(発明3)。
【0014】
また、本発明は、アセスルファムカリウムとネオテームとを含有し、前記アセスルファムカリウムに特有の金属味が抑制されてなるアセスルファムカリウム含有飲料を製造する方法であって、前記飲料中における前記アセスルファムカリウムの濃度[A](mg/kg)に対する前記ネオテームの濃度[B](mg/kg)の比[B]/[A]が0.005〜0.12となるように、前記アセスルファムカリウムの濃度[A]が100〜500mg/kgとなるように、前記ネオテームの濃度[B]が0.5〜10mg/kgとなるように、かつ前記飲料における栄養甘味料の濃度をショ糖換算した量[c](質量%)が5質量%以下となるように、前記アセスルファムカリウムの濃度、前記ネオテームの濃度及び前記栄養甘味料の濃度を調整することを特徴とするアセスルファムカリウム含有飲料の製造方法を提供する(発明4)。
【0015】
さらに、本発明は、アセスルファムカリウムを含有する飲料の金属味を抑制する方法であって、前記飲料中における前記アセスルファムカリウムの濃度[A](mg/kg)に対するネオテームの濃度[B](mg/kg)の比[B]/[A]が0.005〜0.12となるように、前記アセスルファムカリウムの濃度[A]が100〜500mg/kgとなるように、前記ネオテームの濃度が0.5〜10mg/kgとなるように、かつ前記飲料における栄養甘味料の濃度をショ糖換算した量[c](質量%)が5質量%以下となるように、前記アセスルファムカリウムの濃度、前記ネオテームの濃度及び前記栄養甘味料の濃度を調整することを特徴とするアセスルファムカリウム含有飲料の金属味抑制方法を提供する(発明5)。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アセスルファムカリウムに特有の金属味が抑制されてなる、風味良好なアセスルファムカリウム含有飲料、当該アセスルファムカリウム含有飲料の製造方法、及びアセスルファムカリウム含有飲料の金属味を抑制する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係るアセスルファムカリウム含有飲料は、アセスルファムカリウムと、ネオテームとを配合してなるものである。
【0018】
アセスルファムカリウムは、6−メチル−1,2,3−オキサチアジン−4(3H)−オン−2,2−ジオキシドカリウムという化学名を有し、その甘味度は砂糖の約200倍とされている(食品と科学,Vol.42,No.5,p.92-103,2000)。本実施形態に係るアセスルファムカリウム含有飲料に配合されるアセスルファムカリウムとしては、例えば、キリン協和フーズ社製の「サネット」を使用することができる。
【0019】
本実施形態に係るアセスルファムカリウム含有飲料におけるアセスルファムカリウムの濃度[A]は、100〜500mg/kgであり、200〜500mg/kgであるのが好ましく、250〜500mg/kgであるのがより好ましく、300〜500mg/kgであるのが特に好ましい。当該濃度が100mg/kg未満であると、アセスルファムカリウムの含有量が少なすぎて、アセスルファムカリウムによる甘味のキレの良さや甘味の早期発現等の効果を奏し得ない。また、アセスルファムカリウム濃度[A]が500mg/kgを超えると、アセスルファムカリウムに特有の金属味が目立ちすぎてしまい、その金属味を抑制するためにネオテーム濃度を高めると、ネオテームに起因する甘味が強くなり、飲料として嗜好的に好ましくないものとなる。一方、アセスルファムカリウム濃度[A]が300〜500mg/kgである場合、アセスルファムカリウムによる甘味のキレの良さや甘味の早期発現等の効果が十分に得られるため、特に好ましい。ここで、ネオテームを配合せずにアセスルファムカリウムを300〜500mg/kg配合した従来の飲料においては、アセスルファムカリウムに特有の金属味が強く感じられたが、本実施形態においてはネオテームにより金属味が十分に抑制されるため、アセスルファムカリウムの好ましい甘味を顕著に引き出すことが可能となる。なお、アセスルファムカリウムの飲料への使用基準が定められているため(1kg当たり0.5g以下)、当該濃度を500mg/kg以下とする必要がある。
【0020】
ここで、本明細書において、飲料に含有される物質の「濃度」とは、飲料のうち液体の部分における含有物質の濃度を質量基準で算出したものである。そのため、不溶性固形分自体や不溶性固形分に含まれる含有物質については、「濃度」の算出において考慮しないものとする。
【0021】
本実施形態において、アセスルファムカリウム含有飲料中のアセスルファムカリウム濃度は、例えば、厚生労働省通知食基発第58号に記載された方法で測定することができる。具体的には、下記のようにして測定することができる。
【0022】
試料(アセスルファムカリウム含有飲料)20gを正確に量り、透析内液用溶液(塩化ナトリウム100gを0.01mol/L塩酸に溶解し、1000mLとする)20mLを加えて混和した後、透析用膜チューブ(例えば、透析膜36/32(Viskase社製,平面幅:43mm、直径:27mm、膜厚:0.0203mm)に移し、200mLメスシリンダー内に入れ、透析外液用溶液(0.01mol/L塩酸)を加えて全量を200mLとし、室温で24〜48時間透析する。
【0023】
透析液20mLを正確に量り、0.1mol/L臭化テトラ−n−プロピルアンモニウム溶液2mLを加え、水を加えて正確に25mLとする。この液を正確に5mL量り、オクタデシルシリル化シリカゲルカートリッジカラム(例えば、Sep-Pak Vac C18(充填剤量1g、Waters社製))に毎分3〜4mLの流速で負荷し、水10mLで洗浄後、強陰イオン交換型カートリッジカラム(例えば、Bond Elut SAX(充填剤量500mg、Varian社製))を接続し、メタノール・水混液(4:6)10mLを毎分3〜4mLの流速で負荷後、オクタデシルシリル化シリカゲルカートリッジカラムを外す。
【0024】
強陰イオン交換型カートリッジカラムに0.3w/v%リン酸5mLを通し、次いで水5mLで洗浄した後、0.3mol/L塩酸で溶出し、溶出液の全量を正確に5mLとし、試料溶液とする。同時に、アセスルファムカリウム標準品を、水で適宜希釈し、標準溶液とする。
【0025】
試料溶液と標準溶液とを10μLずつ正確に量り、次の条件で液体クロマトグラフィーによる処理を行う。検出器は、測定波長230nmの紫外線吸光検出器を用い、カラム充填剤はシリカゲルNH(例えば、Cosmosil 5 NH2-MS(ナカライテスク社製))を用いる。カラムは内径4.6mm、長さ250mmのものを用い、カラム温度は40℃とする。移動相はアセトニトリル・1v/v%リン酸混液(6:4)とし、流速1.0mL/分に調節する。
【0026】
試料溶液及び標準溶液のピーク面積から、試料溶液のアセスルファムカリウム濃度(μg/mL)を算出し、下記式より飲料中のアセスルファムカリウムの濃度(mg/kg)を算出する。
【0027】
アセスルファムカリウム濃度=(25×200×a)/(20×W)
式中、aは「試料溶液中のアセスルファムカリウム濃度(μg/mL)」を表し、Wは「試料溶液の採取量(g)」を表す。
【0028】
本実施形態に係るアセスルファムカリウム含有飲料に含まれるネオテームは、アミノ酸由来の高甘味度甘味料であって、砂糖の約10000倍の甘味を持つといわれている(月刊フードケミカル,Vol.24,No.9,p.39-43,2008)。本実施形態に係るアセスルファムカリウム含有飲料に配合されるネオテームとしては、例えば、大日本住友製薬社製の「ミラスィー200」を使用することができる。
【0029】
一方、本実施形態に係るアセスルファムカリウム含有飲料におけるネオテームの濃度[B]は、0.5〜10mg/kgであり、1.5〜10mg/kgであるのが好ましく、2〜10mg/kgであるのがより好ましく、2〜9mg/kgであるのがさらに好ましく、2.25〜8mg/kgであるのが特に好ましい。当該濃度が0.5mg/kg未満であると、アセスルファムカリウムに特有の金属味を十分に抑制することができない。また、ネオテーム濃度[B]が10mg/kgを超えると、ネオテームに由来する甘味が強くなりすぎ、後味の後切れが悪くなるため、飲料の風味等を損ねてしまう。一方、ネオテーム濃度[B]が2.25〜8mg/kgである場合、アセスルファムカリウムに特有の金属味を顕著に抑制することができ、かつネオテームに由来する甘味の後切れの悪さが感じられないため、特に好ましい。
【0030】
なお、アセスルファムカリウム含有飲料中のネオテーム濃度は、例えば、以下のような方法で測定することができる。試料(ネオテーム濃度の測定対象であるアセスルファムカリウム含有飲料)をXg(適当量)正確に量り、後述する移動相と同一組成の液で正確にYg(適当量)に希釈し、試料溶液とする。別に乾燥したネオテーム標準品を移動相と同一組成の液で溶解し、適宜希釈し、検量線用の標準溶液とする。
【0031】
試料溶液と標準溶液とを、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、次の条件で液体クロマトグラフィーを行う。検出器は測定波長210nmの紫外吸光光度計を用い、カラム充填剤はオクタデシルシリル化シリカゲルを用い、カラムは内径4.6mm、長さ10cmのステンレス管を用い、カラム温度は45℃付近の一定温度とする。移動相は、1−ヘプタンスルホン酸ナトリウム3.0gを水740mLに溶かし、トリエチルアミン3.8mLを加え、リン酸でpHを3.5に調整した後、さらに水を加えて750mLとする。この液にアセトニトリル250mLを加え、リン酸でpHを3.7に調整した溶液とする。流量は、ネオテームの保持時間が約12分になるように調整する。
【0032】
試料溶液及び標準溶液のピーク面積から、下記式により、ネオテーム濃度(mg/kg)を算出する。
【0033】
ネオテーム濃度=At/As×C
式中、Atは「試料溶液のネオテームピーク面積」を表し、Asは「標準溶液のネオテームピーク面積」を表し、Cは「標準溶液のネオテーム濃度(mg/kg)」を表す。
【0034】
本実施形態に係るアセスルファムカリウム含有飲料中におけるアセスルファムカリウム濃度[A](mg/kg)に対するネオテーム濃度[B](mg/kg)の比[B]/[A]は、0.005〜0.12であり、0.005〜0.0375であるのが好ましく、0.005〜0.025であるのがより好ましく、0.0075〜0.025であるのがさらに好ましく、0.0075〜0.02であるのが特に好ましい。当該比[B]/[A]が0.005未満であると、アセスルファムカリウムに特有の金属味をネオテームにより十分に低減することができない。また、[B]/[A]が0.12を超えると、ネオテームに由来する甘味が強くなりすぎるために甘味の後切れが悪くなり、飲料の風味等を損ねてしまう。一方、[B]/[A]が0.0075〜0.02である場合、アセスルファムカリウムに特有の金属味を顕著に抑制できるため、特に好ましい。
【0035】
なお、本明細書において、飲料におけるアセスルファムカリウム及びネオテームを含む甘味付与剤の濃度を、当該甘味付与剤の甘味度を元に当該甘味付与剤に由来する甘味をショ糖の濃度に換算した値として表すことがある。ここで、S(甘味付与剤)の濃度をショ糖換算した量とは、Sに由来する甘味の強さをショ糖の甘味の強さ(=1)の倍数で表した甘味度を、Sの濃度に乗じた量を意味する。甘味度は各甘味付与剤に固有の値であって、果糖の甘味度は1.2である。例えば、果糖の濃度が10質量%である場合、ショ糖換算した量は12質量%となる。なお、本明細書においては、アセスルファムカリウムの甘味度を200、ネオテームの甘味度を10000とする。
【0036】
本明細書において、上述したアセスルファムカリウムの濃度[A]が100mg/kg以上であるとは、アセスルファムカリウムの濃度をショ糖換算した量[a]が100mg/kg×200(甘味度)=20g/kg=2質量%以上であることと同義である。同様に、上述したネオテームの濃度[B]が10mg/kg以下であるとは、ネオテームの濃度をショ糖換算した量[b]が10質量%以下であることを意味する。また、[B]/[A]が0.005以上であるとは、[b]/[a]が0.25以上であることを意味する。
【0037】
また、本実施形態に係るアセスルファムカリウム含有飲料は、アセスルファムカリウムの濃度[A]が200〜500mg/kgであり、ネオテームの濃度[B]が2〜10mg/kgであり、かつ[B]/[A]が0.0075〜0.025であることが特に好ましい。かかる条件を全て満たすことで、アセスルファムカリウムによる甘味のキレの良さや甘味の早期発現等の効果が十分に得られ、かつアセスルファムカリウム及びネオテームに由来する甘味のバランスが良好となり、嗜好的に極めて好ましい飲料とすることができる。さらに、本実施形態に係るアセスルファムカリウム含有飲料は、上記の条件を全て満たすことで、アセスルファムカリウムに特有の金属味が効果的に抑制され、ネオテームに由来する甘味の後切れの悪さが目立たず、嗜好的に極めて好ましい飲料となる。本実施形態に係るアセスルファムカリウム含有飲料は、[A]が250〜500mg/kgであり、[B]が2〜9mg/kgであり、かつ[B]/[A]が0.0075〜0.02であることがより好ましい。さらに、[A]が300〜500mg/kgであり、[B]が2.25〜8mg/kgであり、かつ[B]/[A]が0.0075〜0.02であることが特に好ましい。
【0038】
なお、本実施形態に係るアセスルファムカリウム含有飲料には、アセスルファムカリウム及びネオテーム以外の甘味付与剤を、本実施形態による効果を損なわない範囲で配合しても良い。甘味付与剤としては、糖類、糖アルコール等の栄養甘味料、高甘味度甘味料等を挙げることができる。
【0039】
ここで、本明細書において、栄養甘味料とは、ショ糖と同程度の甘味度及びカロリーを有するため、ショ糖と同程度の甘味を得ようとした場合に十分なカロリー供給源となる甘味付与剤を意味する。本実施形態に係るアセスルファムカリウム含有飲料に配合しうる栄養甘味料としては、ショ糖(1)、ブドウ糖(甘味度:0.6)、果糖(甘味度:1.2)、果糖ブドウ糖液糖(甘味度:0.75)、還元麦芽糖(甘味度:0.8)等の糖類;キシリトール(甘味度:1.0)、ソルビトール(甘味度:0.6)、マルチトール(甘味度:0.8)、マンニトール(甘味度:0.6)、ラクチトール(甘味度:0.4)、パラチニット(甘味度:0.45)等の糖アルコール;砂糖(甘味度:1)、異性化糖(甘味度:1)、はちみつ(甘味度:1.3)等の天然甘味料等が含まれる。
【0040】
本実施形態に係るアセスルファムカリウム含有飲料において、上記栄養甘味料の濃度をショ糖換算した量[c]は、5質量%以下である。[c]が5質量%以下であることで、栄養甘味料に由来するカロリーを抑制することができる。なお、本実施形態におけるアセスルファムカリウムの金属味の抑制効果は、ネオテームのみで又は主としてネオテームにより発揮される。また、[c]が5質量%以下であるとは、[c]が0質量%である場合、すなわち栄養甘味料を全く配合しない場合を包含するものである。栄養甘味料の濃度をショ糖換算した量[c]は、3質量%以下であることがより好ましい。
【0041】
また、本実施形態に係るアセスルファムカリウム含有飲料に上記栄養甘味料を配合する場合、アセスルファムカリウムの濃度をショ糖換算した量[a]とネオテームの濃度をショ糖換算した量[b]の合計[d](=[a]+[b])に対する栄養甘味料の濃度をショ糖換算した量[c]の比[c]/[d]は、0.6以下であることが好ましく、0.55以下であることがより好ましく、0.45以下であることがさらに好ましい。[c]/[d]が0.6以下であることで、栄養甘味料に由来するカロリーを抑制することができる。なお、本実施形態におけるアセスルファムカリウムの金属味の抑制効果は、ネオテームのみで又は主としてネオテームにより発揮される。
【0042】
本実施形態に係るアセスルファムカリウム含有飲料に上記栄養甘味料を配合する場合、当該飲料100gあたりの熱量は20kcal以下であることが好ましく、5kcal以下であることがより好ましい。飲料100gあたりの熱量が20kcal以下であることで、本実施形態に係るアセスルファムカリウム含有飲料を飲用した場合のカロリー摂取量を低く抑えることができる。
【0043】
一方、本明細書において、高甘味度甘味料とは、甘味付与剤のうち、ショ糖に比べ甘味度が非常に高く、そのため少量で十分な甘味を有し実質的にカロリー摂取に寄与しないものである。なお、上述したアセスルファムカリウム(甘味度:200)及びネオテーム(甘味度:10000)も高甘味度甘味料に分類される。
【0044】
本実施形態に係るアセスルファムカリウム含有飲料に配合し得るアセスルファムカリウム及びネオテーム以外の高甘味度甘味料としては、アスパルテーム(甘味度:200)、サッカリン(甘味度:300)、ステビア抽出物(甘味度:200)、カンゾウ抽出物(甘味度:200)等が挙げられる。なお、スクラロース(甘味度:600)については、後味の不快味が強く、上述した本実施形態による効果を損なうおそれがあるため、本実施形態に係るアセスルファムカリウム含有飲料には配合しないことが好ましい。
【0045】
本実施形態に係るアセスルファムカリウム含有飲料において、アセスルファムカリウム及びネオテームを含む全ての甘味付与剤の濃度をそれぞれショ糖換算した量の合計は、6〜18質量%であることが好ましく、8〜16質量%であることがより好ましい。全ての甘味付与剤の濃度をそれぞれショ糖換算した量の合計がかかる範囲にあることで、本実施形態に係るアセスルファムカリウム含有飲料の甘味がバランスの良いものとなり、嗜好的に極めて好ましい飲料とすることができる。
【0046】
なお、本実施形態に係るアセスルファムカリウム含有飲料には、所望により、通常飲料に配合される原料が含有されていてもよく、例えば、オレンジ、温州ミカン、レモン、グレープフルーツ、ライム、マンダリン、ユズ、タンジェリン、テンプルオレンジ、タンジェロ、カラマンシー等)、リンゴ、ブドウ、モモ、パイナップル、グアバ、バナナ、マンゴー、カシス、ブルーベリー、アセロラ、プルーン、パパイヤ、パッションフルーツ、ウメ、ナシ、アンズ、ライチ、メロン、西洋ナシ、スモモ類等の果汁;ニンジン、トマト、ナス、カボチャ、ピーマン、ゴーヤ、ナーベラ、トウガン、オクラ、トウガラシ、トウモロコシ、キュウリ等の果菜類、ニンジン、ゴボウ、タマネギ、タケノコ、レンコン、カブ、ダイコン、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、ニンニク、ショウガ等の根菜類、モロヘイヤ、アスパラガス、セロリ、ケール、チンゲンサイ、ホウレンソウ、コマツナ、キャベツ、レタス、ハクサイ、ブロッコリー、カリフラワー、ミツバ、パセリ、ネギ、シュンギク、ニラ等の葉茎類等の野菜汁;ペクチン、ゼラチン、コラーゲン、寒天、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、大豆多糖類、アラビアガム、グァーガム、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ジェランガム等の増粘安定剤;クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料;アスコルビン酸等の酸化防止剤;炭酸水素ナトリウム(重曹)、クエン酸ナトリウム等のpH調整剤;ビタミン類;グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤;食物繊維、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナイアシン、パントテン酸等の強化剤;各種乳酸菌;各種香料;各種色素等が含有されていてもよい。
【0047】
本実施形態に係るアセスルファムカリウム含有飲料における飲料の種類としては、特に限定されるものではなく、例えば、茶系飲料、野菜飲料、果汁飲料、コーヒー飲料、炭酸飲料、機能性飲料、酢含有飲料、スポーツドリンク、ニアウォーター、乳酸菌飲料等が挙げられる。
【0048】
本実施形態に係るアセスルファムカリウム含有飲料は、PETボトル、ガラスビン、缶、紙パック等の密閉容器に充填した形態で提供することができる。
【0049】
本実施形態に係るアセスルファムカリウム含有飲料は、従来公知の方法により製造することができる。例えば、まず、市水、井水、イオン交換水、脱気水等の飲用に適した水にアセスルファムカリウム及びネオテームを、それらの濃度が上述した範囲に含まれるように添加し、所望によりその他の飲料原料等をさらに添加して攪拌し、飲料原液を調製する。
【0050】
このようにして得られた飲料原液に所望によりpH調整剤等を添加することで、飲料原液のpHを所定の範囲に調整する。その後、所望によりpHを調整した飲料原液を高圧殺菌、加熱殺菌等により殺菌して密閉容器等に充填する。このようにして、本実施形態に係るアセスルファムカリウム含有飲料を製造することができる。
【0051】
このようにして得られる本実施形態に係るアセスルファムカリウム含有飲料によれば、アセスルファムカリウムとネオテームとを含有することで、アセスルファムカリウムに特有の金属味を感じることがないため、嗜好的に優れたアセスルファムカリウム含有飲料とすることができる。しかも、ネオテームを含有することで、ショ糖等の他の甘味料を含む飲料と比較しても、アセスルファムカリウム含有飲料のカロリーを低く抑えることができる。
【0052】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0053】
以下、試験例を示すことにより本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の試験例等に何ら限定されるものではない。
【0054】
〔アセスルファムカリウム含有飲料の調製(1)〕
アセスルファムカリウム濃度[A](mg/kg)が下記表1に示す濃度となるように、イオン交換水にアセスルファムカリウム(製品名:サネット,キリン協和フーズ社製)を溶解させた後、200gに定量した。アセスルファムカリウムが溶解したイオン交換水を95℃に達するまで加熱殺菌した後、PET容器に充填して、アセスルファムカリウム含有飲料を得た(試料1〜7)。
【0055】
〔官能評価試験(1)〕
試料1〜7の各アセスルファムカリウム含有飲料について、官能評価試験を行った。かかる官能評価試験は、飲料の開発を担当する訓練された10人のパネラーにより、15℃に冷却保管された各アセスルファムカリウム含有飲料を試飲することにより行った。次に示す基準でアセスルファムカリウムに特有の金属味に関し評価した。結果を表1に示す。なお、表1中、官能評価における金属味の項目の点数は、各パネラーの評価点の平均値を表す。
【0056】
=金属味の評価(絶対評価)=
1 感じない
2 わずかに感じる
3 感じるが許容範囲内である
4 やや強い
5 強く感じる
【0057】
【表1】

【0058】
表1に示すように、アセスルファムカリウム濃度[A]依存的に、アセスルファムカリウムに特有の金属味が強くなった。また、アセスルファムカリウム濃度[A]が200mg/kg以上、特に250mg/kg以上になると、アセスルファムカリウム由来の金属味が強く感じられ、さらに300mg/kg以上になると、許容範囲を超えるほどの金属味が感じられた。したがって、特にアセスルファムカリウムを300mg/kg以上とする場合に、その金属味を改善する必要があると認められた。
【0059】
〔アセスルファムカリウム含有飲料の調製(2)〕
アセスルファムカリウム濃度[A](mg/kg)及びネオテーム濃度[B](mg/kg)が下記表2に示す濃度となるように、イオン交換水にアセスルファムカリウム(製品名:サネット,キリン協和フーズ社製)及びネオテーム(製品名:ミラスィー200,大日本住友製薬社製)を溶解させた後、200gに定量した。アセスルファムカリウム及びネオテームが溶解したイオン交換水を95℃に達するまで加熱殺菌した後、PET容器に充填して、アセスルファムカリウム含有飲料を得た(試料8〜14)。なお、試料6については、表1に示したものを使用した。
【0060】
〔官能評価試験(2)〕
試料6及び8〜14の各アセスルファムカリウム含有飲料について、官能評価試験を行った。かかる官能評価試験は、飲料の開発を担当する訓練された10人のパネラーにより、15℃に冷却保管された各アセスルファムカリウム含有飲料を試飲することにより行った。次に示す基準でアセスルファムカリウムに特有の金属味、ネオテームに由来する甘味の後切れの悪さ、及び飲料の甘味の3項目に関し評価した。
【0061】
なお、金属味の評価のうち、相対評価の項目に関しては、試料6を5点とし、それを基準として、金属味を強く感じる飲料を高得点とするようにそれぞれ10段階で評価した。金属味の絶対評価の項目に関しては、上述した官能評価試験(1)に準じて評価した。甘味の後切れの悪さの項目に関しては、甘味の後切れが悪い飲料を高得点とするようにして5段階で評価した。甘味の項目に関しては、甘味が強い飲料を高得点とするよう、次に示す基準で評価した。結果を表2に示す。なお、表2中、官能評価における金属味及び甘味の後切れの悪さの各項目の点数は、各パネラーの評価点の平均値を表す。
【0062】
=甘味の評価=
1 弱すぎる
2 やや弱い
3 バランスが良い
4 やや強い
5 強すぎる
【0063】
さらに、総合評価に関しては、金属味及び甘味の後切れの悪さの各項目から総合的に判断して、飲料として適していないものを「×」、飲料として適しているものを「△」、飲料として適しており、かつ嗜好的に極めて好ましいものを「○」と評価した。結果をあわせて表2に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
表2に示すように、アセスルファムカリウム濃度[A]を400mg/kgで一定にしたときに、ネオテーム濃度を増加させるに従い、アセスルファムカリウムに特有の金属味が低減され、嗜好的に好ましい飲料にすることが可能であると認められた。一方、ネオテーム濃度が15mg/kgであると、ネオテームに起因する甘味の後切れの悪さが目立ち、飲料として適していなかった。
【0066】
したがって、アセスルファムカリウム濃度[A](mg/kg)に対するネオテーム濃度[B](mg/kg)の比[B]/[A]が0.005以上となるようにアセスルファムカリウム及びネオテームを配合することで、アセスルファムカリウムに特有の金属味を低減することができ、さらにネオテーム濃度を10mg/kg以下にすることで、風味等の良好なアセスルファムカリウム含有飲料とすることが可能であると確認された。
【0067】
〔アセスルファムカリウム含有飲料の調製(3)〕
アセスルファムカリウム濃度[A](mg/kg)及びネオテーム濃度[B](mg/kg)が下記表3に示す濃度となるように、イオン交換水にアセスルファムカリウム(製品名:サネット,キリン協和フーズ社製)及びネオテーム(製品名:ミラスィー200,大日本住友製薬社製)を溶解させた後、200gに定量した。アセスルファムカリウム及びネオテームが溶解したイオン交換水を95℃に達するまで加熱殺菌した後、PET容器に充填して、アセスルファムカリウム含有飲料を得た(試料15〜21)。なお、試料5については、表1に示したものを使用した。
【0068】
〔官能評価試験(3)〕
試料5及び15〜21の各アセスルファムカリウム含有飲料について、官能評価試験を行った。かかる官能評価試験は、飲料の開発を担当する訓練された10人のパネラーにより、15℃に冷却保管された各アセスルファムカリウム含有飲料を試飲することにより行った。次に示す基準でアセスルファムカリウムに特有の金属味、ネオテームに由来する甘味の後切れの悪さ、及び飲料の甘味の3項目に関し評価した。
【0069】
なお、金属味の評価のうち、相対評価の項目に関しては、試料5を5点とし、それを基準として、金属味を強く感じる飲料を高得点とするようにそれぞれ10段階で評価した。金属味の絶対評価の項目に関しては、上述した官能評価試験(1)に準じて評価した。甘味の後切れの悪さの項目に関しては、甘味の後切れが悪い飲料を高得点とするようにして5段階で評価した。甘味の項目に関しては、上述した官能評価試験(2)に準じて評価した。結果を表3に示す。なお、表3中、官能評価における金属味及び甘味の後切れの悪さの各項目の点数は、各パネラーの評価点の平均値を表す。
【0070】
さらに、総合評価に関しては、金属味及び甘味の後切れの悪さの各項目から総合的に判断して、飲料として適していないものを「×」、飲料として適しているものを「△」、飲料として適しており、かつ嗜好的に極めて好ましいものを「○」と評価した。結果をあわせて表3に示す。
【0071】
【表3】

【0072】
表3に示すように、アセスルファムカリウム濃度[A]が300mg/kgのアセスルファムカリウム含有飲料においても、ネオテームを配合することにより、アセスルファムカリウムに特有の金属味を低減することができ、風味等を良好にし得ることが確認された。
【0073】
また、アセスルファムカリウム濃度[A](mg/kg)に対するネオテーム濃度[B](mg/kg)の比[B]/[A]が0.005以上となるようにアセスルファムカリウム及びネオテームを配合することで、アセスルファムカリウムに特有の金属味を低減することができ、さらにネオテーム濃度を10mg/kg以下にすることで、風味等の良好なアセスルファムカリウム含有飲料とすることが可能であると確認された。
【0074】
〔アセスルファムカリウム含有飲料の調製(4)〕
アセスルファムカリウム濃度[A](mg/kg)及びネオテーム濃度[B](mg/kg)が下記表4に示す濃度となるように、イオン交換水にアセスルファムカリウム(製品名:サネット,キリン協和フーズ社製)及びネオテーム(製品名:ミラスィー200,大日本住友製薬社製)を溶解させた後、200gに定量した。アセスルファムカリウム及びネオテームが溶解したイオン交換水を95℃に達するまで加熱殺菌した後、PET容器に充填して、アセスルファムカリウム含有飲料を得た(試料22)。なお、試料3については、表1に示したものを使用した。
【0075】
〔官能評価試験(4)〕
試料3及び22の各アセスルファムカリウム含有飲料について、官能評価試験を行った。かかる官能評価試験は、飲料の開発を担当する訓練された10人のパネラーにより、15℃に冷却保管された各アセスルファムカリウム含有飲料を試飲することにより行った。次に示す基準でアセスルファムカリウムに特有の金属味、ネオテームに由来する甘味の後切れの悪さ、及び飲料の甘味の3項目に関し評価した。
【0076】
なお、金属味の評価のうち、相対評価の項目に関しては、試料3を5点とし、それを基準として、金属味を強く感じる飲料を高得点とするようにそれぞれ10段階で評価した。金属味の絶対評価の項目に関しては、上述した官能評価試験(1)に準じて評価した。甘味の後切れの悪さの項目に関しては、甘味の後切れが悪い飲料を高得点とするようにして5段階で評価した。甘味の項目に関しては、上述した官能評価試験(2)に準じて評価した。結果を表4に示す。なお、表4中、官能評価における金属味及び甘味の後切れの悪さの項目の点数は、各パネラーの評価点の平均値を表す。
【0077】
さらに、総合評価に関しては、金属味及び甘味の後切れの悪さの各項目から総合的に判断して、飲料として適していないものを「×」、飲料として適しているものを「△」、飲料として適しており、かつ嗜好的に極めて好ましいものを「○」と評価した。結果を表4にあわせて示す。
【0078】
【表4】

【0079】
表4に示すように、アセスルファムカリウム濃度が200mg/kgのアセスルファムカリウム含有飲料においても、ネオテームを配合することにより、アセスルファムカリウムに特有の金属味を低減することができ、風味等を良好にし得ることが確認された。一方で、ネオテームを配合しない試料3においては、金属味がわずかに感じられる程度であったが、甘味が不十分であったため、飲料として適していなかった。
【0080】
〔アセスルファムカリウム含有飲料の調製(5)〕
アセスルファムカリウム濃度(mg/kg)及びその他の高甘味度甘味料濃度が下記表5に示す濃度となるように、イオン交換水にアセスルファムカリウム(製品名:サネット,キリン協和フーズ社製)及びその他の高甘味度甘味料を溶解させた後、200gに定量した。アセスルファムカリウム及びその他の高甘味度甘味料が溶解したイオン交換水を95℃に達するまで加熱殺菌した後、PET容器に充填して、アセスルファムカリウム含有飲料を得た(試料23〜25)。
【0081】
なお、試料24の飲料においては、高甘味度甘味料としてネオテーム(製品名:ミラスィー200,大日本住友製薬社製)を使用し、試料25の飲料においては、高甘味度甘味料としてスクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ社製)を使用した。また、試料25の飲料においては、試料24の飲料と甘味度が同程度になるように、高甘味度甘味料(スクラロース)の配合量を調整した。
【0082】
〔官能評価試験(5)〕
試料23〜25の各アセスルファムカリウム含有飲料について、官能評価試験を行った。かかる官能評価試験は、飲料の開発を担当する訓練された10人のパネラーにより、15℃に冷却保管された各アセスルファムカリウム含有飲料におけるアセスルファムカリウムに特有の金属味、及び高甘味度甘味料に由来する後味の不快味の2項目に関し評価した。
【0083】
なお、金属味の項目に関しては、試料23を5点とし、それを基準として、金属味を強く感じる飲料を高得点とするようにそれぞれ10段階で評価し、後味の不快味の項目に関しては、試料23を5点とし、それを基準として、後味として不快味を感じる飲料を高得点とするようにそれぞれ10段階で評価した。結果を表5に示す。なお、表5中、官能評価における金属味及び後味の不快味の項目の点数は、各パネラーの評価点の平均値を表す。
【0084】
また、金属味の評価に関しては、金属味の評価点(平均値)が5点以上のものを「×」、4点超5点未満のものを「△」、4点以下のものを「○」と評価した。さらに、総合評価に関しては、金属味及び後味の不快味の各項目から総合的に判断して、飲料として適していないものを「×」、飲料として適しているものを「△」、飲料として適しており、かつ嗜好的に極めて好ましいものを「○」と評価した。結果を表5にあわせて示す。
【0085】
【表5】

【0086】
表5に示すように、ネオテームを配合したアセスルファムカリウム含有飲料(試料24)は、アセスルファムカリウムに特有の金属味を低減することができ、かつ後味として不快味を感じることのない、風味の優れたものであった。一方、スクラロースを配合したアセスルファムカリウム含有飲料(試料25)は、アセスルファムカリウムに特有の金属味を低減することができたものの、スクラロースに由来する後味としての不快味が目立ち、飲料として適していなかった。
【0087】
〔アセスルファムカリウム含有飲料の調製(6)〕
アセスルファムカリウム濃度(mg/kg)及びその他の高甘味度甘味料が下記表6に示す濃度となるように、イオン交換水にアセスルファムカリウム(製品名:サネット,キリン協和フーズ社製)及びその他の高甘味度甘味料を溶解させるとともに、グレープフルーツ香料(高砂香料社製)0.1質量%を添加した後、200gに定量した。アセスルファムカリウム及びその他の高甘味度甘味料が溶解したイオン交換水を95℃に達するまで加熱殺菌した後、PET容器に充填して、アセスルファムカリウム含有飲料を得た(試料26,27)。
【0088】
なお、試料26の飲料においては、高甘味度甘味料としてネオテーム(製品名:ミラスィー200,大日本住友製薬社製)を使用し、試料27の飲料においては、高甘味度甘味料としてスクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ社製)を使用した。また、試料27の飲料においては、試料26の飲料と甘味度が同程度になるように、高甘味度甘味料(スクラロース)の配合量を調整した。
【0089】
〔官能評価試験(6)〕
試料26及び27のアセスルファムカリウム含有飲料について、官能評価試験を行った。かかる官能評価試験は、飲料の開発を担当する訓練された16人のパネラーに、15℃に冷却保管された各アセスルファムカリウム含有飲料のうち、口に含んだ直後の香りの強い飲料を選択させた。
【0090】
また、総合評価に関しては、飲料を口に含んだ直後の香り立ちから総合的に判断して、飲料として適していないものを「×」、飲料として適しているものを「△」、飲料として適しており、かつ嗜好的に極めて好ましいものを「○」と評価した。結果を表6に示す。
【0091】
【表6】

【0092】
表6に示すように、ネオテームを配合したアセスルファムカリウム含有飲料(試料26)の方が、スクラロースを配合したもの(試料27)よりも、飲料を口に含んだ直後の香りが強いと判定したパネラーの数が多かった。
【0093】
このように、アセスルファムカリウム含有飲料にネオテームを配合することで、飲料を口に含んだ直後の香り立ちに影響を与えることなく、アセスルファムカリウムに特有の金属味を低減できることが確認された。
【0094】
〔アセスルファムカリウム含有飲料の調製(7)〕
アセスルファムカリウム濃度[A](mg/kg)、ネオテーム濃度[B](mg/kg)及びショ糖濃度[c](質量%)が下記表7に示す濃度となるように、イオン交換水にアセスルファムカリウム(製品名:サネット,キリン協和フーズ社製)、ネオテーム(製品名:ミラスィー200,大日本住友製薬社製)及びショ糖(グラニュー糖,ホクレン社製)を溶解させた後、200gに定量した。アセスルファムカリウム、ネオテーム及びショ糖が溶解したイオン交換水を95℃に達するまで加熱殺菌した後、PET容器に充填して、アセスルファムカリウム含有飲料を得た(試料28〜34)。
【0095】
〔官能評価試験(7)〕
試料28〜34の各アセスルファムカリウム含有飲料について、官能評価試験を行った。かかる官能評価試験は、飲料の開発を担当する訓練された10人のパネラーにより、15℃に冷却保管された各アセスルファムカリウム含有飲料におけるアセスルファムカリウムに特有の金属味に関し評価した。
【0096】
なお、金属味の絶対評価の項目に関しては、上述した官能評価試験(1)に準じて評価した。結果を表7に示す。なお、表7中、官能評価における金属味の項目の点数は、各パネラーの評価点の平均値を表す。
【0097】
【表7】

【0098】
表7に示すように、アセスルファムカリウム濃度[A]が300mg/kgのアセスルファムカリウム含有飲料において、ネオテームを配合することにより、アセスルファムカリウムに特有の金属味を低減することができ、風味等を良好にし得ることが確認された。また、ショ糖を配合したアセスルファムカリウム含有飲料についても、ショ糖を配合しないアセスルファムカリウム飲料の場合と同様に、ネオテームによる金属味の低減効果が認められた。一方、ショ糖濃度[c]が5質量%を超えると、アセスルファムカリウムに特有の金属味は抑制されるが、飲料100gあたりのカロリーが20kcalを超えるため、アセスルファムカリウム含有低カロリー飲料としては好ましくない。
【0099】
〔加糖飲料及びゼロカロリー飲料の調製〕
下記表8に示す飲料原料を用い、当該飲料原料の飲料における濃度が下記表8に示す濃度となるように、イオン交換水に各飲料原料を溶解させ、200gの飲料原液を得た。得られた飲料原液を95℃に達するまで加熱殺菌した後、PET容器に充填して、アセスルファムカリウム含有加糖飲料(試料35)及びアセスルファムカリウム含有ゼロカロリー飲料(試料36)を得た。
【0100】
なお、各飲料(試料35,36)において、アセスルファムカリウムとしてはサネット(製品名,キリン協和フーズ社製)を、ネオテームとしてはミラスィー200(製品名,大日本住友製薬社製)を、ショ糖としてはグラニュー糖(ホクレン社製)を、リンゴ酸としてはリンゴ酸フソウ(扶桑化学工業社製)を、香料としてはりんご香料(ジボダンジャパン社製)を使用した。
【0101】
〔官能評価試験(8)〕
アセスルファムカリウム含有加糖飲料(試料35)及びアセスルファムカリウム含有ゼロカロリー飲料(試料36)について、官能評価試験を行った。かかる官能評価試験は、飲料の開発を担当する訓練された10人のパネラーにより、15℃に冷却保管された各アセスルファムカリウム含有飲料におけるアセスルファムカリウムに特有の金属味、及びネオテームに由来する甘味の後切れの悪さの2項目に関し評価した。
【0102】
なお、金属味の項目に関しては、金属味を強く感じる飲料を高得点とするように5段階で評価し、甘味の後切れの悪さの項目に関しては、甘味の後切れが悪い飲料を高得点とするようにして5段階で評価した。結果を表8に示す。なお、表8中、官能評価における金属味及び甘味の後切れの悪さの各項目の点数は、各パネラーの評価点の平均値を表す。
【0103】
また、金属味の評価に関しては、金属味の評価点(平均値)が5点以上のものを「×」、4点超5点未満のものを「△」、4点以下のものを「○」と評価した。さらに、総合評価に関しては、金属味及び甘味の後切れの悪さの各項目から総合的に判断して、飲料として適していないものを「×」、飲料として適しているものを「△」、飲料として適しており、かつ嗜好的に極めて好ましいものを「○」と評価した。結果を表8にあわせて示す。
【0104】
【表8】

【0105】
表8に示すように、アセスルファムカリウム含有加糖飲料(試料35)及びアセスルファムカリウム含有ゼロカロリー飲料(試料36)のいずれも、アセスルファムカリウムに特有の金属味が抑制された、嗜好的に好ましい飲料であることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセスルファムカリウムと、ネオテームとを含有するアセスルファムカリウム含有飲料であって、
前記アセスルファムカリウムの濃度[A](mg/kg)に対する前記ネオテームの濃度[B](mg/kg)の比[B]/[A]が0.005〜0.12であり、
前記アセスルファムカリウムの濃度[A]が100〜500mg/kgであり、
前記ネオテームの濃度[B]が0.5〜10mg/kgであり、
前記飲料における栄養甘味料の濃度をショ糖換算した量[c](質量%)が5質量%以下である
ことを特徴とするアセスルファムカリウム含有飲料。
【請求項2】
前記アセスルファムカリウムの濃度[A]に対する前記ネオテームの濃度[B]の比[B]/[A]が0.0075〜0.025であり、前記アセスルファムカリウムの濃度[A]が200〜500mg/kgであり、かつ前記ネオテームの濃度[B]が2〜10mg/kgであることを特徴とする請求項1に記載のアセスルファムカリウム含有飲料。
【請求項3】
前記飲料が、茶系飲料、野菜飲料、果汁飲料、コーヒー飲料、炭酸飲料、機能性飲料、酢含有飲料、スポーツドリンク、ニアウォーター又は乳酸菌飲料であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアセスルファムカリウム含有飲料。
【請求項4】
アセスルファムカリウムとネオテームとを含有し、前記アセスルファムカリウムに特有の金属味が抑制されてなるアセスルファムカリウム含有飲料を製造する方法であって、
前記飲料中における前記アセスルファムカリウムの濃度[A](mg/kg)に対する前記ネオテームの濃度[B](mg/kg)の比[B]/[A]が0.005〜0.12となるように、前記アセスルファムカリウムの濃度[A]が100〜500mg/kgとなるように、前記ネオテームの濃度[B]が0.5〜10mg/kgとなるように、かつ前記飲料における栄養甘味料の濃度をショ糖換算した量[c](質量%)が5質量%以下となるように、前記アセスルファムカリウムの濃度、前記ネオテームの濃度及び前記栄養甘味料の濃度を調整することを特徴とするアセスルファムカリウム含有飲料の製造方法。
【請求項5】
アセスルファムカリウムを含有する飲料の金属味を抑制する方法であって、
前記飲料中における前記アセスルファムカリウムの濃度[A](mg/kg)に対するネオテームの濃度[B](mg/kg)の比[B]/[A]が0.005〜0.12となるように、前記アセスルファムカリウムの濃度[A]が100〜500mg/kgとなるように、前記ネオテームの濃度が0.5〜10mg/kgとなるように、かつ前記飲料における栄養甘味料の濃度をショ糖換算した量[c](質量%)が5質量%以下となるように、前記アセスルファムカリウムの濃度、前記ネオテームの濃度及び前記栄養甘味料の濃度を調整することを特徴とするアセスルファムカリウム含有飲料の金属味抑制方法。

【公開番号】特開2011−182789(P2011−182789A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27905(P2011−27905)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(591014972)株式会社 伊藤園 (213)
【Fターム(参考)】