説明

アセチルコリンエステラーゼ阻害剤と組み合わせた特定のα7ニコチン酸受容体を用いた認知障害の治療

(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド又はその製薬上許容しうる塩、及びアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を患者に投与することを含む、認知機能を改善する方法が、関連する組成物と共に記載される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)は、アセチルコリンによって活性化されるイオンチャンネルのファミリーを形成する。機能的受容体は5つのサブユニットを含有し、数多くの受容体サブタイプがある。研究により中枢性ニコチン性アセチルコリン受容体が学習及び記憶に関与することが示されている。α7サブタイプのニコチン性アセチルコリン受容体は海馬及び大脳皮質に分布している。
【0002】
WO 03/055878には、α7 nAChRの種々のアゴニストが認知機能の改善に有用と言われていることが記載されている。WO 03/055878は、α7 nAChRの特定のアゴニストが知覚(perception)、集中(concentration)、学習又は記憶の改善、特に、例えば、軽度認知機能障害、加齢に伴う学習及び記憶の障害、加齢に伴う記憶喪失、アルツハイマー病(AD)、統合失調症及び特定の他の認知障害のような状態/疾患/症候群において生じるもののような認知機能障害後の知覚、集中、学習又は記憶の改善に有用であることを示唆している。これらの化合物の中で、(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミドが記載される。
【0003】
一部の人は、アルツハイマー病患者において観察される認知低下及び機能低下が中枢神経系におけるコリン作動性欠損に起因すると考えている。ADを治療するために使用されている少なくとも4つの薬物(タクリン、ドネペジル(塩酸ドネペジル;1−ベンジル−4−[(5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル]メチルピペリジン一塩酸塩)、リバスチグミン((S)−N−エチル−N−メチル−3−[1−(ジメチルアミノ)エチル]−フェニルカルバメート)及びガランタミン(臭化水素酸ガランタミン;(4aS,6R,8aS)−4a,5,9,10,11,12−ヘキサヒドロ−3−メトキシ−11−メチル−6H−ベンゾフロ[3a,3,2−ef][2]ベンズアゼピン−6−オール臭化水素酸塩))は、CNSにおいてアセチルコリンを増加させるアセチルコリンエステラーゼ阻害剤として働くように見える。
【発明の概要】
【0004】
驚いたことに、(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミドが、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(例えば、ドネペジル又はリバスチグミン)を用いて治療されているアルツハイマー病患者において認知機能を改善しうることが見出されている。この方法は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の投与から生じる認知機能の1以上の側面における増進から既に利益を得ている患者の認知機能を改善しうる。従って、認知機能の1以上の側面においてアセチルコリンエステラーゼ阻害剤から既に利益を得ている患者が、(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド及びその製薬上許容しうる塩の投与から、認知機能の1以上の側面において、さらに利益を得ることができる。
【0005】
驚いたことに、(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミドが無症候性投与量(即ち、記憶を改善しない投与量)でアセチルコリンエステラーゼ阻害剤(これも無症候性投与量で投与される)と組み合わせて投与される場合、記憶が改善されうることも見出されている。従って、患者は、非常に少なく、副作用を低減するか又は副作用を回避する投与量でそれぞれが投与される薬物の組み合わせから、利益(例えば、記憶の改善又は認知機能の改善)を体験することができる。更に、薬物の組み合わせは、より広い範囲の患者のために及び/又はより長い治療期間にわたり、利益を提供しうる。例えば、特定のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、数ヶ月間の治療の後に有効性の減少を示しうるのに対し、この組み合わせはより長期間の有効性を提供しうる。
【0006】
患者は、以下の1以上において利益を得ることができる:処理速度、注意力/ビジランス、作業記憶、視覚学習、言語学習、視覚学習、推論/問題解決、実行機能、及び社会的認知。重要なことに、(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド及びその製薬上許容しうる塩は、認知機能を改善するために、そのような既に治療された患者において少ない投与量で、例えば以下の1日経口投与量(又はそれ以下)で使用されうる:3mg、2.70mg、2.50mg、2.25mg、2mg、1.75mg、1.50mg、1.25mg、1mg、0.7、0.5、0.3mg又はわずか0.1mg。従って、例えば、それは0.05〜1.5mgの1日投与量で、好ましくは1mg/日又は0.3mg/日で投与されうる。無症候性投与量を投与する場合において、認知機能の改善のための他の薬剤の非存在下で投与される場合、(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド及びその製薬上許容しうる塩は、0.5mg未満、0.3mg未満、0.1mg未満、0.05mg未満、0.03mg未満又は0.01mg未満の1日経口投与量で使用されうる。無症候性レベルでの使用のために、認知機能を改善するための他の薬剤の非存在下で投与される場合、(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド及びその製薬上許容しうる塩は、0.5nM未満、0.4nM未満、0.3nM未満、0.2nM未満又は0.1nM未満で使用されうる。
【0007】
ドネペジル(donepizil)について、(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド又はその製薬上許容しうる塩と共に使用される1日投与量は、10mg、5mg、4.5mg、4mg、3.5mg、3mg、2.5mg、2mg、1mg又は0.5mgでありうる。1日投与量は、5から0.5mgの間(例えば、4.5〜1.0mg/日、4.5〜2.0mg/日、4.0〜2.0又は2.5mg/日)でありうる。リバスチグミン(rivistigmine)について、併用のための1日投与量は、11、10、9、8、7、6又は5mgでありうる。ガランタミンについて、併用のための1日投与量は、20、15、13、12、11、10、9、8、7、6又は5mgでありうる。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤について、記憶又は認知機能の改善における有効性のために、それらは少なくとも65%の赤血球アセチルコリンエステラーゼ阻害を達成するように投与されなければならないことが理解される。本明細書中に記載される方法において、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、わずか55%(50、45、40、35又は30%阻害)を達成する、より少ない投与量で投与されうる。
【0008】
本明細書中に、(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド又はその製薬上許容しうる塩、及びアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を患者に投与することを含む、認知機能を改善する方法が記載される。種々の場合において:患者はアルツハイマー病又はプレアルツハイマー病と診断されており、患者は軽度から中等度のアルツハイマー病と診断されており、患者は中等度から重度のアルツハイマー病と診断されており、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤はタクリン、ドネペジル、リバスチグミン及びガランタミンから選択され、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤はドネペジル、リバスチグミン及びガランタミンから選択され、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤はドネペジル及びリバスチグミンから選択され、患者は(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド又はその製薬上許容しうる塩を投与されるより先に一定期間アセチルコリンエステラーゼ阻害剤を投与されており、先の投与は少なくとも1ヶ月間であり、先の投与は少なくとも3ヶ月間であり、そして先の投与は少なくとも6ヶ月間である。特定の場合において:該方法は以下の1以上を改善する:学習、遅延記憶(delayed memory)、注意力、作業記憶、視覚学習、処理速度、ビジランス、言語学習、視覚運動(visual motor)機能、社会的認知、長期記憶又は実行機能。
【0009】
(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド又はその製薬上許容しうる塩を無症候性投与量(アセチルコリンエステラーゼ(acetylcholinestesterase)阻害剤の非存在下で投与された場合、記憶を改善しない投与量)で、そしてアセチルコリンエステラーゼ阻害剤も無症候性投与量((R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド又はその製薬上許容しうる塩の非存在下で投与された場合、記憶を改善しない投与量)で、患者に投与することを含む、認知機能を改善する方法も記載される。種々の場合において:(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド又はその製薬上許容しうる塩は、1.0mg/日;0.5mg/日;0.3mg/日;又は0.1mg/日で経口投与される。種々の場合において:アセチルコリンエステラーゼ阻害剤はドネペジルであり、且つ5mg/日;4.5mg/日;4.0mg/日;2.5mg/日;1.5mg/日又はそれ以下;1.0mg/日で経口投与され;そしてアセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、定常状態で10〜65%の赤血球アセチルコリンエステラーゼ阻害を達成する投与量で投与される。
【0010】
(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド又はその製薬上許容しうる塩、及びアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を含有する医薬組成物も記載される。種々の場合において:アセチルコリンエステラーゼ阻害剤はタクリン、ドネペジル、リバスチグミン及びガランタミンから選択される;アセチルコリンエステラーゼ阻害剤はドネペジル、リバスチグミン及びガランタミンから選択される;アセチルコリンエステラーゼ阻害剤はドネペジル及びリバスチグミンから選択される;そしてアセチルコリンエステラーゼ阻害剤はドネペジルである。
【0011】
1.0mg以下の(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド又はその製薬上許容しうる塩、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤及び製薬上許容しうる担体を含有する1日単位投与量医薬組成物も記載される。種々の場合において、1日単位投与量医薬組成物は、0.5(0.3、又は0.1)mg以下の(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド又はその製薬上許容しうる塩を含有する。種々の場合において、1日単位投与量医薬組成物は、5、4、3、2、1、又は0.5mg以下のドネペジルを含有する。
【0012】
(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド又はその製薬上許容しうる塩を含有する第1の単位投与量医薬組成物、及びアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を含有する第2の単位投与量医薬組成物を含むパッケージを含む、包装された医薬品も記載される。
【0013】
別の態様において、患者は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤と組み合わせて、式I:
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、
は1−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イルを表し、
は水素又はC1−C6−アルキルを表し、
は水素、ハロゲン又はC1−C6−アルキルを表し、
Aは酸素又は硫黄を表し、そして
Zはハロゲン、ホルミル、カルバモイル、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、アミノ、ホルムアミド、アセトアミド、C1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシ(alkyoxy)、C1−C6−アルキルチオ、C1−C6−アルキルアミノ、ヘテロアリール−カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、C1−C4−アルキルスルホニルアミノ、ジ(アリールスルホニル)アミノ、C3−C6−シクロアルキルカルボニルメチル又はアミノ(ヒドロキシイミノ)メチルを表す)のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、又はその塩、その溶媒和物若しくはその塩の溶媒和物を用いて治療されうる。
【0016】
別の態様において、患者は、式I(式中、Rは水素であり、Rは水素であり、Aは硫黄であり、そしてZはハロゲン、ホルミル、カルバモイル、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、アミノ、ホルムアミド、アセトアミド、C1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシ(alkyoxy)、C1−C6−アルキルチオ、C1−C6−アルキルアミノ、ヘテロアリール−カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、C1−C4−アルキルスルホニルアミノ、ジ(アリールスルホニル)アミノ、C3−C6−シクロアルキルカルボニルメチル又はアミノ(ヒドロキシイミノ)メチル(具体的にはハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、メチル、エチル、メトキシ、及びエトキシ;より具体的にはハロゲン又はシアノ、なおより具体的にはクロロ又はシアノ)を表す)の化合物を用いて治療される。
【0017】
本明細書中に、1以上のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤と組み合わせて(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド又はその製薬上許容しうる塩を(例えば、以下の1日投与量で:3 mg、2.70mg、2.50mg、2.25mg、2mg、1.75mg、1.50mg、1.25mg、1mg、0.7mg、0.5mg、0.3mg、0.1mg、0.03mg又は0.01mg)含有する医薬組成物を投与することにより患者を治療する方法が記載される。該治療は、認知機能の1以上の面(facets)(例えば、視覚運動スキル、学習、遅延記憶、注意力、作業記憶、視覚学習、処理速度、ビジランス、言語学習、視覚運動機能、社会的認知、長期記憶、実行機能等)を改善しうる。患者は、(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミドの投与より先に一定期間、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤を用いて治療されていることができる。例えば、患者は、少なくとも1週間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも4ヶ月間、少なくとも6ヶ月間又は少なくとも1年間、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤を用いて治療されていることができる。2つの薬剤は、同じ組成物中か又は2つの異なる組成物中で同時に投与されうる。また、これらの薬剤は異なる時間に投与されうる。
【0018】
本明細書中に、(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド又はその製薬上許容しうる塩、及びアセチルコリンエステラーゼ阻害剤(例えば、タクリン、ドネペジル、リバスチグミン又はガランタミン)並びに製薬上許容しうる担体を含有する医薬組成物も記載される。
【0019】
「投与量」は、患者に投与される原薬(active pharmaceutical ingredient)(API)の量である。例えば、1mgとは、各患者に1日あたり1mgのAPIが経口投与されたことを意味する。
【0020】
「原薬」としては、(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド塩酸塩、(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド、(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド塩酸塩一水和物及び(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド塩酸塩溶媒和物、並びに式Iの化合物が挙げられる。
【0021】
溶媒和物は、(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド塩酸塩又は(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミドに対して化学量論比が0.1から10分子の溶媒を表す。溶媒分子としては、水、メタノール、1,4−ジオキサン、エタノール、イソプロパノール又はアセトンが挙げられるがこれらに限定されない。場合によっては、水が好ましい溶媒和物である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド(p.o.)及びドネペジル(p.o.)の組み合わせの、患者における認知機能試験への影響を示す。
【図2】図2は、(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド(p.o.)及びドネペジル(p.o.)の、5月齢のオスのウィスターラットにおけるスコポラミン処置(i.p.)後の物体認識タスクにおける識別指数(d2)への影響を示す(平均+標準誤差)。ビヒクル/スコポラミン条件と比較した場合、EVP−6124及びドネペジルの併用は、スコポラミン誘発性記憶能力障害を改善した。スコポラミン条件からの差異は、アスタリスクを用いて示される(ボンフェローニt検定、:P<0.05)。ゼロからの差異は、#を用いて示される(1サンプルt検定、###:P<0.001)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
AD患者に投与される(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド及びドネペジル又はリバスチグミン
(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド塩酸塩の安全性及び有効性を、安定なドネペジル(5又は10mg/日)又はリバスチグミン(1日2回投与量として6〜12mg/日で投与される(即ち、投与量あたり3又は6mg))に関して、48名の軽度から中等度のAD患者(年齢60〜80歳)の第1b相試験において評価した。
【0024】
偽薬又は2つの異なる投与量の(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド(0.3又は1.0mg/d)を28日間、患者に投与した。安全性は、有害事象、ECG、及び臨床検査測定値によって評価した。認知作用は、CogStateのコンピュータ化された認知機能試験及びNTBスケールの一部(カテゴリー流暢性(category fluency)、トレイル(Trails)A及びB)によって測定した。この分析の結果を図1に示す。
【0025】
偽薬の患者に対して、治療した患者においてより高頻度で報告された顕著な有害事象は無く、(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミドは安全であり、良好な耐容性を示すように見えた;重篤な有害事象(SAE)は報告されなかった。ドネペジル又はリバスチグミンに加えて(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミドにさらされた対象は、認知機能(主に非言語学習、記憶、及び実行機能の領域)の増進を示した。
【0026】
無症候性投与量での(R)−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド及びドネペジルは記憶を改善する
【0027】
以下に記載する研究では、5月齢のオスのウィスターラットにおける物体認識タスクにおいて、ムスカリンアンタゴニストであるスコポラミンによって誘導される短期記憶障害への、α7ニコチン性受容体アゴニスト(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド及びAChE阻害剤ドネペジルの閾値下投与量の影響を調べた。物体認識タスクは、(物体)情報の記憶への固定の評価を可能にする(Ennaceur and Delacour, 1988; Prickaerts et al., 1997)。このタスクにおいては、ラットに2つの試験(trials)を与える。第一の試験においては、ラットを2つの同一の物体が置かれた活動領域(arena)に入れる。通常、ラット(rate)は2つの物体を一定時間点検するであろう。一定の遅延時間の後、ラットに第二の試験を与える。この試験においては、ラットを、同じ活動領域であるが一方の物体が新規の物体に置き換えられている活動領域に再び置く。第一の試験と同様に、ラットは2つの物体を再び探索する。ラットが2つの物体を探索するのに異なる時間をかけたか否かを決定するために、各物体を探索する時間を記録する。この採点法に基づき、記憶能力を決定することができる。
【0028】
いくつかの研究は、1時間の遅延時間が第一の試験と第二の試験の間に挿入される場合、ウィスターラットが優れた物体記憶能力を示すことを示している。しかしながら、24時間の遅延時間が使用される場合、ラットは第二の試験において新規の物体と見慣れた物体とを識別せず、このことはラットが見慣れた物体(即ち、第一の試験及び第二の試験の両方において提示された物体)を記憶しないことを示している。6時間の遅延時間を使用すると、識別能力は1時間の遅延時間の場合の能力と24時間の遅延時間の場合の能力との間であり、このことはこのタスクにおける遅延時間依存性の忘却を示唆している。
【0029】
以前の研究は、0.3mg/kgの(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド(p.o.)がムスカリンアンタゴニストであるスコポラミン(0.1mg/kg、i.p.)によって誘導される物体記憶障害を完全に減衰させるのに対して、0.03mg/kgの投与量は効果がないことを見出した。0.3mg/kgの投与量のドネペジル(p.o.)がスコポラミン誘導性物体記憶障害を減衰させるのに対して、0.1mg/kgのドネペジルは効果がないことも見出された。予備的研究においては、驚いたことに、この閾値下投与量のドネペジルと閾値下投与量の(R)−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミドとの併用投与(これらはいずれも、単独で閾値下投与量で与えられた場合、能力に影響しない)が、スコポラミンによって誘導された物体記憶障害を有するラットにおいて記憶能力を増強することが見出された。このことは、認知機能障害に対する両化合物間の相加相乗効果を示唆する。
【0030】
本研究において、学習試験の30分前に、ムスカリン性受容体アンタゴニストであるスコポラミンをラットに注射した(0.1mg/kg、i.p.投与)。スコポラミンによる処置の後、ラットは学習試験の1時間後には物体の記憶を示さないであろう。閾値下投与量の(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド(0.03mg/kg、p.o.投与)及びドネペジル(0.1mg/kg、p.o.投与)の組み合わせがスコポラミン誘導性物体記憶障害を減衰しうるか否かを検討した。全ての薬物を第一の試験の30分前に与えた。
【0031】
全ての実験手順は、動物実験のためのマーストリヒト大学の地方倫理委員会よって承認され、政府のガイドラインを満たした。24匹の5月齢のオスのウィスターラット(Harlan、The Netherlands)を使用した(平均体重:465g)。これらの24匹の動物のうち、23匹の動物のみを最終的な分析に含めたが、これは1匹のラットが逃げ続けたことに起因した。これらの動物を、空調された部屋(約20℃)の中で、標準の3型マクロロンケージ内、おが屑の床敷の上に個別に収容した。それらを12/12時間の明暗周期(19時から7時まで点灯)下で維持し、飼料及び水を自由摂取させた。ラットは、該動物を試験するのと同じ部屋に収容した。ラジオ(静かにかけた)で室内に背景雑音を提供した。全ての試験を9時から最長18時までの間に行なった。
【0032】
以前のスコポラミンの用量反応試験に基づき、0.1mg/kgの投与量が記憶障害を誘導するために最も効果的な投与量であると決定した。スコポラミン臭化水素酸塩は毎日調製し、生理食塩水に溶解させた。試験1の30分前に、スコポラミンをi.p.投与した(注射量1ml/kg)。EVP−6124はHOに溶解させた。溶液は毎日調製し、0.03mg/kg p.o.の投与量で試験した(注射量2ml/kg)。投与は常に、スコポラミンの直後、試験1の30分前に行なった。ドネペジルは生理食塩水に溶解させた。溶液は毎日調製し、0.1mg/kg p.o.の投与量で試験した(注射量2ml/kg)。投与は常に、(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミドの直後、試験1の30分前に行なった。
【0033】
ビヒクル及びスコポラミン条件を最初に試験した。続いてドネペジル、(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド及び両方の組み合わせを試験した(試験日あたり条件ごとにn=8)。全てのラットを各投与量条件により1回処置した。しかしながら、装置から飛び出し続けたことに起因して1匹のラットを試験から除外したため、n=23である。実験者は、試験される条件/薬物を知らなかった。
【0034】
物体認識試験は、他の場所(Ennaceur and Delacour、1988)に記載されたように実施した。装置は、直径83cmの円形の活動領域から構成された。高さ40cmの壁の半分は灰色のポリ塩化ビニル製、残りの半分は透明のポリ塩化ビニル製であった。光の強さは装置の様々な部分において等しかった。2つの物体を、灰色の壁から約10cm離れた対称の位置に置いた。各物体は三つ同じものが利用可能であった。これらの物体は以下であった:1)上に真ちゅう製のカラーを有する灰色のポリ塩化ビニルの底面(最大直径18cm)から構成される円錐(全高16cm)、2)水で満たした標準的な1lの褐色の透明ガラスボトル(直径10cm、高さ22cm)、3)2つの穴(直径1.9cm)を有する重い金属の立方体(10.0x5.0x7.5cm)、及び4)先細りの上面を有する重いアルミニウムの立方体(13.0x8.0x8.0cm)。ラットはこれらの物体を動かすことはできなかった。赤色の蛍光灯及び電球が、装置の床の上で約20ルクスの一定の照明を提供した。
【0035】
試験セッションは2つの試験から構成された。各試験の期間は3分であった。第一の試験(T1)の間、装置は2つの同一の物体(見本)を含んでいた。ラットは常に、前部の(透明な)区域の中央に、壁に向けて装置内に置いた。第1の探索期間の後、ラットをそのホームケージに戻した。続いて、所定の遅延間隔の後、ラットを第二の試験(T2)のために装置に戻したが、今度は2つの非類似の物体(見慣れたもの(見本)及び新しいもの)を用いた。T1及びT2の間に各物体を探索するのに費やした時間を、パーソナルコンピューターを用いて手作業で記録した。
【0036】
探索は以下のように定義した:2cm以下の距離で物体に鼻を向けること及び/又は鼻で物体に触れること。物体の上に座ることは、探索行動とはみなさなかった。嗅覚的痕跡の存在を排除するために、物体を常に徹底的に洗浄した。物体の全ての組み合わせ及び位置をバランスの取れた様式で使用して、特定の位置又は物体に対する嗜好性に起因する潜在的なバイアスを低減させた。
【0037】
いくつかの研究は、1時間の遅延時間が第一の試験と第二の試験との間に挿入される場合、ウィスターラットが優れた物体記憶能力を示すことを示している。しかしながら、24時間の遅延時間が使用される場合、ラットは第二の試験において新規のものと見慣れたものとを識別せず、このことはラットが第一の試験において提示された物体を記憶しないことを示している。6時間の遅延時間を使用すると、識別能力は1時間の遅延時間の場合の能力と24時間の遅延時間の場合の能力との間であり、このことはこのタスクにおける遅延時間依存性の忘却を示唆している。この研究においては、1時間の間隔を使用する。
【0038】
2週間、動物に毎日手を触れ、2日間で手順に順応させた(即ち、動物に毎日2回3分間、装置(いかなる物体もない)を探索させた)。次いで、ラットが安定した識別能力(即ち1時間間隔ではよく識別し、24時間間隔では識別しないこと)を示すまで、試験、並びに第一の試験の30分前の生理食塩水注射によるi.p.注射及びp.o.注射(それぞれ1.0ml/kg及び2.0ml/kg)に順応させた。次に、コントロールセッション(ビヒクル及びスコポラミンを試験した)。続いて、薬物(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド(0.03mg/kg)及びドネペジル(0.1mg/kg)の試験を開始した。化合物セッション間に十分なウォッシュアウト期間を置くために、化合物/ビヒクルは常に月曜日、水曜日及び金曜日(又は火曜日及び木曜日)に試験した。
【0039】
基本的な尺度は、ラットがT1及びT2の間に物体を探索するのに費やした時間であった。2つの同一の見本を探索するのに費やした時間は、「a1」及び「a2」によって表される。T2において見本及び新しい物体を探索するのに費やした時間は、それぞれ「a」及び「b」によって表される。以下の変数を計算した:e1=a1+a2、e2=a+b、及びd2=(b−a)/e2(表1を参照のこと)。e1及びe2は、それぞれT1及びT2中の両方の物体の総探索時間の尺度である。d2は、探索活動(e2)に対して補正した識別の相対的尺度である。従って、同様の間隔での同様の処置による実験間では、d2指数に差異はないはずである。本実験においては5つの条件があり、各ラットを各条件に供した:
【0040】
1)ビヒクル(スコポラミン)、ビヒクル(ドネペジル)&ビヒクル((R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド)
2)スコポラミン、ビヒクル(ドネペジル)&ビヒクル((R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド)
3)スコポラミン、ドネペジル&ビヒクル((R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド)
4)スコポラミン、ビヒクル(ドネペジル)&(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド
5)スコポラミン、ドネペジル &(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド
【0041】
d2がゼロとは異なるか否かを処置条件ごとに評価するために、1サンプルt統計(t-statistics)を行なった。しかしながら、分散なしでのd2の値と値ゼロとの比較は、認識を分析するための最も適切な方法ではないかもしれない(タイプIエラーをおかす危険性の増加)。従って、効果を被験者内(反復測定)ANOVAによっても評価した。条件間で有意差がある場合に備えて、ボンフェローニの補正を伴う事後解析を行なった。
【0042】
【表1】

【0043】
T1の30分前のEVP−6124及びドネペジル処置の結果を表2にまとめる。T1における探索のレベルにおいて、処置条件間で差異は見出されなかった(e1:F(4、88)=1.138、n.s.)。T2においても、T2における探索のレベルにおいて、処置条件間で差異は無かった(e2:F(4、88)=0.888、n.s.)。
【0044】
【表2】

【0045】
1サンプルt検定により、併用条件及びビヒクル条件のd2値がゼロとは異なることが示された(表2Bを参照のこと)。これは、スコポラミン、(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド及びドネペジルを別々に投与した条件(差異を示さなかった)とは対照的である。(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド及びドネペジル処置の相対的識別指数d2への影響を図1に図示する。群間で比較した場合、d2指数について差異が見出された(F(4、88)=8.181、P<0.001)。d2は、スコポラミン条件、(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド条件及びドネペジル条件よりも、併用条件及びビヒクル条件において、より高かった(ボンフェローニt検定;図2を参照のこと)。
【0046】
スコポラミン投与(i.p.)後の、併用された閾値下投与量の薬物(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド(p.o.で与えた)及びドネペジル(p.o.)の認知機能増進効果の評価のために、1hの遅延間隔を使用した。対照のビヒクル条件において、ラットがそのような間隔の後に見慣れた物体を記憶していることが見出された。これは、スコポラミン(0.1mg/kg)条件(見慣れた物体の記憶はもはや見出されなかった)とは対照的である。本研究において、薬物試験に使用するスコポラミンの投与量は、動物の探索活動に影響しなかった。
【0047】
(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミドもドネペジルも、探索行動を変化させなかった。相対的識別指数d2は、探索活動における変化(これらは本研究においては観察されなかったが)を補正する。更にこれは、within分析(即ちゼロとの比較)で物体認識へのわずかな影響を検出できるため、信頼できる尺度である。ドネペジル条件のd2、並びに(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド条件のd2は、ゼロと異ならなかった。同様に、between分析(即ちスコポラミン単独で処置した動物との比較)は、閾値下投与量のEVP−6124(0.03mg/kg)及びドネペジル(0.1mg/kg)が、別々に与えられた場合には、動物の記憶を改善しないことを示した。これは、併用条件(一緒に与えた閾値下投与量の(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド及びドネペジルがスコポラミンによって引き起こされる物体記憶障害を完全に改善した)とは対照的である。
【0048】
参考文献
Boess, F.G., Hendrix, M., van der Staay, F.J., Erb, C., Schreiber, R., van Staveren, W., de Vente, J., Prickaerts, J., Blokland, A., Koenig, G., 2004. Inhibition of phosphodiesterase 2 increases neuronal cGMP, synaptic plasticity and memory performance. Neuropharmacology 47, 1081-1092.
Blokland, A., Prickaerts, J., Honig, W., De Vente, J., 1998. State-dependent impairment in object recognition after hippocampal NOS inhibition. NeuroReport 9, 4205-4208.
Ennaceur, A., Delacour, J., 1988. A new one-trial test for neurobiological studies of memory in rats. 1: Behavioral data. Behav. Brain Res. 31, 47-59.
Ennaceur, A., Meliani, K., 1992. Effects of physostigmine and scopolamine on rats' performances in object-recognition and radial-maze tests. Psychopharmacology 109, 321-330.
Ennaceur, A., Cavoy, A., Costa, J. C., Delacour, J. 1989. A new one-trial test for neurobiological studies of memory in rats. II: Effects of piracetam and pramiracetam. Behav. Brain Res. 33, 197-207.
De Bruin, N.M.W.J., Prickaerts, J., Akkerman, S., Lange, J.H.M., Andriambeloson, E., De Haan, M., Wijnen, J., Van Drimmelen, M., Hissink, E., Heijnk, L. Kruse, C.G. (In Press) SLV330, a cannabinoid CB1 receptor antagonist, ameliorates deficits in the T-maze, object recognition and social recognition tasks in rodents. Neurobiol. Learn. Mem.
Prickaerts, J., Steinbusch, H.W.M., Smits, J.F.M., De Vente, J., 1997. Possible role of nitric oxide-cyclic GMP pathway in object recognition memory: Effects of 7-nitroindazole and zaprinast. Eur. J. Pharmacol. 337, 125-136.
Prickaerts, J., Sik, A., van Staveren, W.C., Koopmans, G., Steinbusch, H.W., van der Staay, F.J., de Vente, J., Blokland, A., 2004. Phosphodiesterase type 5 inhibition improves early memory consolidation of object information. Neurochem Int. 45, 915-928.
Prickaerts, J., Sik, A., van der Staay, F.J., de Vente, J., Blokland, A., 2005. Dissociable effects of acetylcholinesterase inhibitors and phosphodiesterase type 5 inhibitors on object recognition memory: acquisition versus consolidation. Psychopharmacology 177, 381-390.


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド又はその製薬上許容しうる塩、及びアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を患者に投与することを含む、認知機能を改善する方法。
【請求項2】
患者がアルツハイマー病又はプレアルツハイマー病と診断されている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
患者が軽度から中等度のアルツハイマー病と診断されている、請求項1記載の方法。
【請求項4】
患者が中等度から重度のアルツハイマー病と診断されている、請求項1記載の方法。
【請求項5】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤がタクリン、ドネペジル、リバスチグミン及びガランタミンから選択される、前述のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項6】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤がドネペジル、リバスチグミン及びガランタミンから選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤がドネペジル及びリバスチグミンから選択される、請求項5記載の方法。
【請求項8】
患者が、(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド又はその製薬上許容しうる塩を投与されるより先に一定期間アセチルコリンエステラーゼ阻害剤を投与されている、前述のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項9】
先の投与が少なくとも1ヶ月間である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
先の投与が少なくとも3ヶ月間である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
先の投与が少なくとも6ヶ月間である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
以下の1以上を改善する、前述のいずれかの請求項に記載の方法:学習、遅延記憶、注意力、作業記憶、視覚学習、処理速度、ビジランス、言語学習、視覚運動機能、社会的認知、長期記憶又は実行機能。
【請求項13】
(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド又はその製薬上許容しうる塩、及びアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の一方又は両方が無症候性投与量で投与される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド又はその製薬上許容しうる塩が1.0mg未満/日で経口投与される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド又はその製薬上許容しうる塩が0.5mg未満/日で経口投与される、請求項13記載の方法。
【請求項16】
(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド又はその製薬上許容しうる塩が0.3mg未満/日で経口投与される、請求項13記載の方法。
【請求項17】
(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド又はその製薬上許容しうる塩が0.1mg未満/日で経口投与される、請求項13記載の方法。
【請求項18】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤がドネペジルであり、且つ5mg未満/日で経口投与される、請求項13記載の方法。
【請求項19】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤がドネペジルであり、且つ4.5mg/日又はそれ以下で経口投与される、請求項13記載の方法。
【請求項20】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤がドネペジルであり、且つ4.0mg/日又はそれ以下で経口投与される、請求項13記載の方法。
【請求項21】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤がドネペジルであり、且つ2.5mg/日又はそれ以下で経口投与される、請求項13記載の方法。
【請求項22】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤がドネペジルであり、且つ1.5mg/日又はそれ以下で経口投与される、請求項13記載の方法。
【請求項23】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤がドネペジルであり、且つ1.0mg/日又はそれ以下で経口投与される、請求項13記載の方法。
【請求項24】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤が、定常状態で10〜65%の赤血球アセチルコリンエステラーゼ阻害を達成する投与量で投与される、請求項1記載の方法。
【請求項25】
(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド又はその製薬上許容しうる塩、及びアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を含有する医薬組成物。
【請求項26】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤がタクリン、ドネペジル、リバスチグミン及びガランタミンから選択される、請求項25記載の医薬組成物。
【請求項27】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤がドネペジル、リバスチグミン及びガランタミンから選択される、請求項25記載の医薬組成物。
【請求項28】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤がドネペジル及びリバスチグミンから選択される、請求項25記載の医薬組成物。
【請求項29】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤がドネペジルである、請求項25記載の医薬組成物。
【請求項30】
1.0mg以下の(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド又はその製薬上許容しうる塩、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤及び製薬上許容しうる担体を含有する、1日単位投与量医薬組成物。
【請求項31】
0.5mg以下の(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド又はその製薬上許容しうる塩を含有する、請求項30記載の1日単位投与量医薬組成物。
【請求項32】
0.3mg以下の(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド又はその製薬上許容しうる塩を含有する、請求項31記載の1日単位投与量医薬組成物。
【請求項33】
0.1mg以下の(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド又はその製薬上許容しうる塩を含有する、請求項31記載の1日単位投与量医薬組成物。
【請求項34】
5mg以下のドネペジルを含有する、請求項31記載の1日単位投与量医薬組成物。
【請求項35】
4mg以下のドネペジルを含有する、請求項31記載の1日単位投与量医薬組成物。
【請求項36】
2.5mg以下のドネペジルを含有する、請求項31記載の1日単位投与量医薬組成物。
【請求項37】
1mg以下のドネペジルを含有する、請求項31記載の1日単位投与量医薬組成物。
【請求項38】
(R)−7−クロロ−N−(キヌクリジン−3−イル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミド又はその製薬上許容しうる塩を含有する第1の単位投与量医薬組成物、及びアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を含有する第2の単位投与量医薬組成物を含むパッケージを含む、包装された医薬品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−526821(P2012−526821A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510926(P2012−510926)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/034353
【国際公開番号】WO2010/132423
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(507184074)エンビボ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】