説明

アディポネクチン産生増強剤

【課題】安全性が高く、かつ極めて強力なアディポネクチン産生増強作用を有する新規薬剤を提供する。
【解決手段】
下記一般式(1)で示されるフェノール性化合物、及び炭素数8〜22の不飽和脂肪酸若しくはそのグリセリド又は低級アルキルエステルを活性成分として配合して、動物脂肪細胞におけるアディポネクチンの産生を増強もしくは促進する薬剤を得る。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬品及び健康食品において有用な、アディポネクチン産生を増強もしくは促進する薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
最近我が国では2型糖尿病等生活習慣病が急増し社会問題にもなっている。ところで、これら生活習慣病の多くはアディポネクチンというホルモンの不足が密接に関係しており、これを増加させれば改善できることが医学的に示された(非特許文献1)。アディポネクチンは主として脂肪組織の脂肪細胞により産生され、脂肪細胞は中胚葉由来の前駆脂肪細胞からさまざまなホルモンの影響下で分化して生じる。従って、前駆脂肪細胞の分化誘導剤や成熟脂肪細胞のアディポネクチン産生促進剤は生体においても血中アディポネクチンレベルの維持、向上に有効である。このような薬剤としてピオグリタゾン等の合成チアゾリジンジオン類がある(特許文献1、非特許文献2)。しかし、この薬剤は副作用も強いため予防や軽い段階の治療に簡単に用いることはできない。この他、サルポグレラート(特許文献2)、プラバスタチン誘導体(特許文献3,4)、キナーゼ阻害剤IMD-0354(非特許文献3)等もアディポネクチン産生促進作用を有するが同様の問題がある。一方、天然化合物やその誘導体では発酵茶(特許文献5)、エルゴステロール、オリザノールエステル(特許文献6)、大豆蛋白(非特許文献4)、アントシアニン(非特許文献5)、ピリミジンヌクレオシド誘導体(非特許文献6)、共役リノール酸(非特許文献7)等にアディポネクチン産生増強作用のあることが知られているがピオグリタゾン等に比べて十分に強い活性ではない。
【0003】
本発明者等は最近、ショウガ科植物根茎に含まれるクルクミンやジンゲロール、それらに類似の部分構造を有するN-フェルロイルトリプタミンやβ-フェネチルフェルレート等フェルラ酸誘導体、さらにホモバニリン酸やバニリン酸のアミドやエステル、カプサイシンやバニリルアミンの3-フェニル-2-プロペンアミド等が培養脂肪細胞のアディポネクチン産生を促進・増強し、2型糖尿病のモデルマウスを用いた実験においても血糖降下に有効であることを見出した(特許文献7、8、特願2004-201827号、特願2004-345134号、特願2005-61659号、特願2005-194160号、特願2005-218519号)。当該活性は4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル核ともう1つの芳香核が原子数4〜6の直鎖のアミドもしくはエステルで連結された構造の化合物において最も顕著である。しかし、そればかりでなく4-ヒドロキシ-3-メトキシ安息香酸n-ブチルエステルのように芳香核が1つの場合や、N-(3-フェニルプロピル)-4-ヒドロキシベンズアミドのようにフェノール性水酸基に隣接するメトキシ基を欠く場合も弱い当該活性を示す。従って、当該活性を持つ化合物は一般式1としてまとめられる。式1に包括される化合物がアディポネクチン産生増強作用を持つことは本発明者らの前述の特許出願以外今まで全く知られていなかった。ところで、これらの化合物のうちクルクミンはカレー粉に含まれ、N-フェルロイルトリプタミンやβ-フェネチルフェルレート等はトウモロコシ(非特許文献8)、プロポリス(非特許文献9)、漢方薬用植物(非特許文献10)等に、カプサイシンは唐辛子に、バニリン酸やp-クマル酸の低級アルキルエステルはワイン(非特許文献11)、オリーブ油(非特許文献12)、ブルーベリー(非特許文献13)、プロポリス(非特許文献14)等に、また高級アルキルエステルも漢方薬用植物等に含まれ (非特許文献15、16)、さらにp-クマル酸のチラミンアミドやベンジルエステルなど芳香核を持つアミン、アルコールの誘導体も漢方薬(非特許文献17)やプロポリス(非特許文献9)に含まれ、従来からヒトにおいて経口摂取されている。従って、本発明の化合物の安全性は高く日常的に利用可能と考えられる。アディポネクチン産生増強活性も上述のように動物試験で有効性が示される程度に強い。しかし、実用化を念頭においた場合この活性がさらに強いことが望まれた。

【特許文献1】米国特許第6153432号明細書;
【特許文献2】特開2005-53890号公報
【特許文献3】国際公開 WO2004096278号パンフレット
【特許文献4】特開2005-232150号公報
【特許文献5】特開2004-315379号公報
【特許文献6】特開2005-68132号公報
【特許文献7】特開2005-60308号公報
【特許文献8】特開2005-225872号公報
【非特許文献1】前田法一他、モレキュラー・メディシン、Vol.42, No.1, 11 - 21 (2005)
【非特許文献2】N. Maeda etal., Diabetes, 50, 2094 - 2099 (2001)
【非特許文献3】Kamon et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 323,242 - 248 (2004)
【非特許文献4】Nagasawa etal., Horm. Metab.Res., 34, 635-639 (2002)
【非特許文献5】Tsuda et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 316, 149-157 (2004)
【非特許文献6】Lihn et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 316, 853-858 (2004)
【非特許文献7】Nagao et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 310, 562 - 566 (2003)
【非特許文献8】A. Ehmann, Phytochem., 13, 1979-1983 (1974)
【非特許文献9】P. Georgieva etal., Z. Naturforsch., 52c, 60 - 64 (1997)
【非特許文献10】S. Zschocke etal., Planta Med., 63, 203 - 206 (1997)
【非特許文献11】R. Schneider etal., J. Agric. Food Chem., 46(8), 3230 - 3237 (1998)
【非特許文献12】M. Esti et al.,Riv. Ital. Sostanze Grasse, 73(4), 147 - 150 (1996)
【非特許文献13】F. Kader etal., Food Chem.,Volume Date 1996, 55(1), 35 - 40 (1995)
【非特許文献14】W. Greenaway etal., Proc. R. Soc. London, B, 232(1268), 249 - 272 (1987)
【非特許文献15】U. Koetter etal., Planta Med., 59(3), 279 - 280 (1993);
【非特許文献16】M. Li et al., Zhongcaoyao, 23(5), 227 - 228 (1992)
【非特許文献17】T. Okuyama etal., Planta Med., (3), 171 - 175(1986)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の課題は、食用、薬用の植物や天然物に含まれていて安全性が高く、かつ、アディポネクチン産生増強作用の強い新規な薬剤を開発し、実用化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる状況において、本発明者らは鋭意検討の結果、上記フェノール性化合物の一部が転写因子RXRαを活性化することを示唆する知見を得て、さらに、RXRαと結合しアディポネクチンの転写開始に機能する他の転写因子PPARγを活性化する目的でドコサヘキサエン酸等の不飽和脂肪酸を本フェノール性化合物と同時に投与した。その結果、前駆脂肪細胞におけるアディポネクチンの産生がそれぞれ単独での投与に比べて著しく増強されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
ドコサヘキサエン酸等の高度不飽和脂肪酸は抗肥満作用や抗血栓作用等健康に有用な生理活性があることが知られており、その機能の一部はアディポネクチンの産生増加に関わりがあるものと考えられている。しかし、これを実証した報告はまだ見当たらない。長鎖の不飽和脂肪酸の中で共役リノール酸については、上記したようにラットへの投与で血漿中のアディポネクチンレベルが上昇するという報告があるが[Nagao K. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 310 , 562 - 566 (2003)]、マウスの筋肉ではアディポネクチン遺伝子発現が低下するという矛盾した報告もある[Warren J.M. et al., Lipids, 38, 497 - 504 (2003)]。
【0007】
一方、アディポネクチンの遺伝子発現には核内転写因子のPPARγが活性化されることが必要である。そこで、本発明者らはマウス3T3-L1前駆脂肪細胞株に10μMのドコサヘキサエン酸又はエイコサペンタエン酸を加えて培養したところ培地中に分泌されるアディポネクチンの濃度はコントロールの1.5倍から2倍になることを見出した。ところがこの10μMのドコサヘキサエン酸に加えて本フェノール化合物の代表であるβ-フェネチルフェルラミドを10μMの濃度で加えておいたところ、驚くべきことにドコサヘキサエン酸単独の場合の約8倍、β-フェネチルフェルラミド単独の場合の約2倍、コントロールに対しては15倍近い多量のアディポネクチンが培地に産生されることを見出した。すなわち両化合物の作用は相加的ではなく相乗的に現れる。不飽和脂肪酸とフェノール性化合物に関しこのような現象は従来全く知られていなかった。メカニズム的には、先述のごとくPPARγがドコサヘキサエン酸で、そして同時にRXRαがβ-フェネチルフェルラミドで活性化され、両転写因子の活性化により、実際の機能体であるPPARγ-RXRαヘテロダイマーが相乗的にさらに強く活性化されたためであると考えられる。
【0008】
このように、本フェノール性化合物と不飽和脂肪酸の混合組成物が強力なアディポネクチン産生増強作用を持つことを明らかにしたが、これをさらに向上、改善すべく検討を重ねた結果、上記2者にテオフィリン、カフェイン、テオブロミン等、茶やコーヒーに通常含まれるキサンチン誘導体を併用することにより一層活性が増大することを見出した。これはキサンチン誘導体が生体内のホスホジエステラーゼを阻害しセカンドメッセンジャーであるcAMPのレベルを上昇させるためと考えられるが、カフェイン等も広く飲用され安全性が高いため、それと本発明の混合組成物との併用はさらなる薬効増強と用量節減の両面において実用上有意義である。
【0009】
さらに、このような不飽和脂肪酸としては、いわゆる油脂に含まれる直鎖の不飽和脂肪酸ばかりでなく、ゲラン酸やファルネソイック酸などの分岐骨格を持つ不飽和脂肪酸やデセン酸のように比較的短鎖の不飽和脂肪酸も有効である。分岐や短鎖の不飽和脂肪酸もそれ自体で弱いながらアディポネクチン産生増進作用を有するが、このことも本発明において初めて見出された。また、本発明に関わるフェノール性化合物として、上述のフェルラ酸誘導体やクルクミン、ジンゲロール等の他、構造的に近い関係にあるヒドロキシカルコン誘導体もそれ自体で、あるいは不飽和脂肪酸との組合せでアディポネクチン産生増進作用を有することを見出した。
【0010】
すなわち本発明は、以下の(1)〜(36)に示すとおりである。

1)下記一般式(1)で示されるフェノール性化合物、及び炭素数8〜22の不飽和脂肪酸若しくはそのグリセリド又は低級アルキルエステルを活性成分として含むことを特徴とする、動物脂肪細胞におけるアディポネクチン産生を増強もしくは促進する薬剤。
【化1】

(ただし、式1中においてR1、R2、R3、Rは水素原子(H)、水酸基、アルコキシ基、又は炭素数1〜20のアルキル基もしくはアルケニル基を表し、Xは単結合又は炭素数1〜6の2価脂肪族炭化水素基を表し、Yはアミド基(-CO-NH‐もしくは‐NH-CO-)、エステル基(−CO-O-もしくは-O-CO-)、又はカルボニル基(-CO-)を表し、Zは、水酸基、アルコキシ基、オキソ基、カルボキシル基又はアミノ基により置換されているかあるいは非置換の炭素数1〜20の2価脂肪族炭化水素基を表し、Qは水素原子(H)、若しくは水酸基、オキソ基、アルコキシ基、アミノ基、又は炭素数1〜10のアルキル基もしくはアルケニル基により置換されているかあるいは非置換の芳香族炭化水素基又は複素環基を表す。)

2)グリセリドが、炭素数8〜22の不飽和脂肪酸の少なくとも1つがグリセロールと結合してなるエステルであることを特徴とする、上記1)に記載の薬剤。

3)低級アルキルエステルが、炭素数8〜22の不飽和脂肪酸のエチル、メチル、プロピル、もしくはブチルエステルであることを特徴とする、上記1)に記載の薬剤。

4)炭素数8〜22の不飽和脂肪酸が4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z-ドコサヘキサエン酸、4Z,7Z,10Z,13Z,16Z-ドコサペンタエン酸、7Z,10Z,13Z,16Z,19Z-ドコサペンタエン酸、5Z,8Z,11Z,14Z,17Z-エイコサペンタエン酸、アラキドン酸、6Z,9Z,12Z,15Z-オクタデカテトラエン酸、α-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸、ミリストオレイン酸(シス-9-テトラデセン酸)、2-ドデセン酸、2-デセン酸、3-デセン酸、2-オクテン酸、ゲラン酸(トランス-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン酸)、シトロネル酸(トランス-3,7-ジメチル-6-オクテン酸)又はファルネソイック酸[ (2E,6E,10E)-3,7,11-トリメチル-2,6,10-ドデカトリエン酸]のいずれか1つ又は2つ以上であることを特徴とする、上記1)〜3)のいずれかに記載の薬剤。

5)さらに、カフェイン、テオフィリン、又はテオブロミンの中から選ばれる1又は2以上のキサンチン誘導体を含有することを特徴とする、上記1)〜4)のいずれかに記載の薬剤。

6)一般式(1)で示されるフェノール性化合物が下記一般式(2)で示されるフェルラ酸又はカフェイン酸の誘導体であることを特徴とする、上記1)〜5)のいずれかに記載の薬剤。
【化2】

(ただし、式2においてR1は水酸基またはメトキシ基であり、Y1はイミノ基(NH)または酸素原子(O)であり、Zは炭素数1〜10の2価脂肪族炭化水素基であり、Qは水素原子(H)、若しくは水酸基又はアミノ基により置換されていてもよい、芳香族炭化水素基又は複素環基を表す。)

【0011】
7)一般式(1)で示されるフェノール性化合物が下記一般式(3)で示されるバニリン酸又はプロトカテク酸の誘導体であることを特徴とする、上記1)〜5)のいずれかに記載の薬剤。
【化3】

(ただし、式3においてR1は水酸基またはメトキシ基であり、Y1はイミノ基(NH)または酸素原子(O)であり、Zは炭素数1〜10の2価脂肪族炭化水素基であり、Qは水素原子(H)、若しくは水酸基又はアミノ基で置換されていてもよい、芳香族炭化水素基又は複素環基を表す。)

8) 一般式(1)で示されるフェノール性化合物が下記一般式(4)で示されるホモバニリン酸の誘導体であることを特徴とする、上記1)〜5)のいずれかに記載の薬剤。
【化4】

(ただし、式4においてY1はイミノ基(NH)または酸素原子(O)であり、Zは炭素数1〜10の2価脂肪族炭化水素基であり、Qは水素原子(H)、若しくは水酸基又はアミノ基により置換されていてもよい、芳香族炭化水素基または複素環基を表す。)

9) 一般式(1)で示されるフェノール性化合物が下記一般式(5)で示されるp−クマル酸の誘導体であることを特徴とする、上記1)〜5)のいずれかに記載の薬剤。
【化5】

(ただし、式5においてY1はイミノ基(NH)または酸素原子(O)であり、Zは炭素数1〜10の2価脂肪族炭化水素基であり、Qは水素原子(H)、若しくは水酸基又はアミノ基により置換されていてもよい、芳香族炭化水素基又は複素環基を表す。)

10) 一般式(1)で示されるフェノール性化合物が下記一般式(6)で示されるp−ヒドロキシ安息香酸の誘導体であることを特徴とする、上記1)〜5)のいずれかに記載の薬剤。
【化6】

(ただし、式6においてY1はイミノ基(NH)または酸素原子(O)であり、Zは炭素数1〜10の2価脂肪族炭化水素基であり、Qは水素原子(H)、若しくは水酸基又はアミノ基により置換されていてもよい、芳香族炭化水素基又は複素環基を表す。)

11) 一般式(1)で示されるフェノール性化合物が下記一般式(7)で示されるバニリルアミン誘導体であることを特徴とする、上記1)〜5)のいずれかに記載の薬剤。
【化7】

(ただし、式7においてR1は水酸基又はメトキシ基であり、Y1は炭素数1〜6の2価脂肪族炭化水素基であり、Zは炭素数1〜20の2価脂肪族炭化水素基であり、Qは水素原子(H)、若しくは水酸基又はアミノ基により置換されていてもよい、芳香族炭化水素基又は複素環基を表す。)

12) 一般式(1)で示されるフェノール性化合物が下記一般式(8)で示されるジンゲロールもしくはその類縁体であることを特徴とする、上記1)〜5)のいずれかに記載の薬剤。
【化8】

(ただし、式8において、Zは炭素数1〜11の2価脂肪族炭化水素基であり、Qは水素原子(H)、若しくは水酸基又はアミノ基により置換されていてもよい、芳香族炭化水素基又は複素環基を表す。)

【0012】
13) 一般式(1)で示されるフェノール性化合物がさらに下記一般式(9)で示されるクルクミンもしくはその誘導体であることを特徴とする、上記1)〜5)のいずれかに記載の薬剤。
【化9】

(ただし、式9においてR1とR2は水素原子又はメトキシ基を表す。)

14)一般式(2)で表される化合物が、N-(β-フェネチル)フェルラミド、フェルロイルトリプタミン、フェルロイルチラミン、β-フェネチルフェルレート、フェルラ酸3-フェニル-2-プロペニル、N-(β-フェネチル)カフェイン酸アミド、カフェイン酸フェネチルエステル、フェルラ酸2-(3-インドリル)エチル、N-ベンジルフェルラミド、及びN-(3-フェニルプロピル)フェルラミドから選ばれたものであることを特徴とする、上記6)に記載の薬剤。

15)一般式(3)で表される化合物が、N-(3-フェニルプロピル)-4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアミド、4-ヒドロキシ-3-メトキシ安息香酸3-フェニル-2-プロペニル、N-(3-フェニルプロピル)-3,4-ジヒドロキシベンズアミド、N-(4-フェニルブチル)-4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアミドから選ばれたものであることを特徴とする、上記7)に記載の薬剤

16)一般式(4)で表される化合物がN-(3-フェニルプロピル)-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)アセトアミドであることを特徴とする、上記8)に記載の薬剤

17)一般式(5)で表される化合物が、N-(β-フェネチル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロペンアミド又は3-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロペン酸3-フェニル-2-プロペニルであることを特徴とする、上記9)に記載の薬剤

18)一般式(6)で表される化合物がN-(3-フェニルプロピル)-4-ヒドロキシベンズアミドであることを特徴とする、上記10)に記載の薬剤

【0013】
19)一般式(7)で表される化合物が、カプサイシン、N-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)メチル-3-フェニル-2-プロペンアミド、N-(3,4-ジヒドロキシフェニル)メチル-3-フェニル-2-プロペンアミド、N-[2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)エチル]-3-フェニル-2-プロペンアミドから選ばれた化合物であることを特徴とする、上記11)に記載の薬剤

20)一般式(8)で表される化合物が[6]−ジンゲロールであることを特徴とする、上記12)に記載の薬剤

21)一般式(9)で表される化合物がクルクミンであることを特徴とする、上記13)に記載の薬剤

22) 炭素数8〜22の不飽和脂肪酸又はそのグリセリドもしくは低級アルキルエステルを活性成分として含むことを特徴とする、動物脂肪細胞におけるアディポネクチン産生を増強もしくは促進する薬剤。

23)グリセリドが、炭素数8〜22の不飽和脂肪酸の少なくとも1つがグリセロールと結合してなるエステルであることを特徴とする、上記22)に記載の薬剤。

24)低級アルキルエステルが、炭素数8〜22の不飽和脂肪酸のエチル、メチル、プロピル、もしくはブチルエステルであることを特徴とする、上記22)に記載の薬剤。

【0014】
25) 炭素数8〜22の不飽和脂肪酸が4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z-ドコサヘキサエン酸、4Z,7Z,10Z,13Z,16Z-ドコサペンタエン酸、7Z,10Z,13Z,16Z,19Z-ドコサペンタエン酸、5Z,8Z,11Z,14Z,17Z-エイコサペンタエン酸、アラキドン酸、6Z,9Z,12Z,15Z-オクタデカテトラエン酸、α-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸、ミリストオレイン酸(シス-9-テトラデセン酸)、2-ドデセン酸、2-デセン酸、3-デセン酸、2-オクテン酸、ゲラン酸(トランス-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン酸)、シトロネル酸(トランス-3,7-ジメチル-6-オクテン酸)又はファルネソイック酸[ (2E,6E,10E)-3,7,11-トリメチル-2,6,10-ドデカトリエン酸]のいずれか1つ又は2つ以上であることを特徴とする、上記22)〜24)のいずれかに記載の薬剤。

26)一般式(1)で表されるフェノール性化合物が、下記一般式(1b)で示される4’−ヒドロキシカルコン誘導体であることを特徴とする、上記1) 〜5)のいずれかに記載の薬剤。
【化10】

(ただし、式1b中においてR1、R2、R3、R4、R、R6、R7、R8、R9 は水素原子(H)、水酸基、アルコキシ基又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、このアルキル基は分岐と不飽和結合を含んでいてもよい。)

27) 上記26)の一般式(1b)で表される化合物が、4’−ヒドロキシカルコン、イソリキリチゲニン、リコカルコンA、キサントフモール、及びキサントアンゲロールから選ばれたものであることを特徴とする、上記1) 〜5)のいずれかに記載の薬剤。

28)一般式(1b)で示されるカルコン誘導体を活性成分として含むことを特徴とする、動物脂肪細胞におけるアディポネクチン産生を増強もしくは促進する薬剤。

29)さらに、カフェイン、テオフィリン、又はテオブロミンの中から選ばれる1又は2以上のキサンチン誘導体を含有することを特徴とする、上記28)に記載の薬剤。

30)一般式(1b)で表される化合物が、4’−ヒドロキシカルコン、イソリキリチゲニン、リコカルコンA、キサントフモール、及びキサントアンゲロールから選ばれたものであることを特徴とする、上記29)に記載の薬剤。

【0015】
31)上記1)に記載の一般式(1)で示されるフェノール性化合物、及び炭素数8〜22の不飽和脂肪酸若しくはそのグリセリド又は低級アルキルエステルを活性成分として含有することを特徴とする、2型糖尿病血糖降下剤

32)上記1)に記載の一般式(1)で示されるフェノール性化合物、及び炭素数8〜22の不飽和脂肪酸若しくはそのグリセリド又は低級アルキルエステルを活性成分として含有することを特徴とする、高脂血症治療剤

33)一般式(1)で示される化合物が一般式(2)で示されるフェルラ酸又はカフェイン酸の誘導体、もしくは一般式(8)で示される[6]−ジンゲロール又はその類縁体であることを特徴とする上記31)に記載の薬剤。

34)一般式(1)で示される化合物が一般式(2)で示されるフェルラ酸又はカフェイン酸の誘導体、もしくは一般式(8)で示される[6]−ジンゲロール又はその類縁体であることを特徴とする上記32)に記載の薬剤。

35)炭素数8〜22の不飽和脂肪酸が4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z-ドコサヘキサエン酸、4Z,7Z,10Z,13Z,16Z-ドコサペンタエン酸、7Z,10Z,13Z,16Z,19Z-ドコサペンタエン酸、5Z,8Z,11Z,14Z,17Z-エイコサペンタエン酸、アラキドン酸、6Z,9Z,12Z,15Z-オクタデカテトラエン酸、α-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸、ミリストオレイン酸(シス-9-テトラデセン酸)、2-ドデセン酸、2-デセン酸、3-デセン酸、2-オクテン酸、ゲラン酸(トランス-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン酸)、シトロネル酸(トランス-3,7-ジメチル-6-オクテン酸)又はファルネソイック酸[ (2E,6E,10E)-3,7,11-トリメチル-2,6,10-ドデカトリエン酸]のいずれか1つ又は2つ以上であることを特徴とする、上記31)〜34)のいずれかに記載の薬剤。

36)さらに、カフェイン、テオフィリン、又はテオブロミンの中から選ばれる1又は2以上のキサンチン誘導体を含有することを特徴とする、上記31)〜35)のいずれかに記載の薬剤。

【発明の効果】
【0016】
本発明のフェノール性化合物(一般式(1)で表される化合物)は、高度不飽和脂肪酸や分岐不飽和脂肪酸あるいはさらにカフェイン等のキサンチン誘導体と共同して働き、動物脂肪細胞におけるアディポネクチンの産生を増強ないし促進する。その結果、個体レベルでは2型糖尿病における高血糖値を低下させたり血中の中性脂肪濃度を減少させる作用を有する。すなわち、本発明に係る薬剤は2型糖尿病血糖降下剤又は高脂血症治療剤としても有用である。
【0017】
一方、アディポネクチンの産生増強物質として知られている前記したチアゾリジンジオン等の物質は、安全性、副作用の問題を抱えているのに対し、本発明のフェルラ酸やカルコン等の誘導体は、従来から、園芸作物や漢方薬、プロポリス等健康増進剤の成分として、喫食あるいは服用されていたものが多く、また、ドコサヘキサエン酸等の高度不飽和脂肪酸も魚油の成分として摂取され、ゲラン酸やシトロネル酸等のテルペン系分岐不飽和脂肪酸は香油・香料の成分として人体に接触、使用されてきたものであり、さらにカフェイン等のキサンチン誘導体も茶やコーヒー等から摂取されてきたものであるから、それらの組み合わせによる本発明の薬剤は安全性が高いものといえる。
【0018】
さらに、上記したように、アディポネクチンは、インスリンが産生されているにもかかわらず血糖値が低下しないいわゆる生活習慣病の2型糖尿病を予防、治療する効果を有するが、これのみでなく動脈硬化につながる血管病変の抑制、肥満改善、抗炎症、単球系細胞の増殖抑制、肝繊維化抑制等、多くの重要な生理作用を有するものであり、本発明により提供される薬剤は、これらの疾患の予防又は治療のための薬剤として安全で極めて有用な薬剤である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明において使用する薬剤組成物は、以下の一般式(1)で表される化合物及び炭素数8〜22の不飽和脂肪酸又はそのグリセリドもしくは低級アルキルエステルを配合することにより得られる。また、必要によりこれらにさらにカフェイン等のキサンチン誘導体を配合する。
【化1】

(ただし、式1中においてR1、R2、R3、Rは水素原子(H)、水酸基、アルコキシ基、又は炭素数1〜20のアルキル基もしくはアルケニル基を表し、Xは単結合又は炭素数1〜6の2価脂肪族炭化水素基を表し、Yはアミド基(-CO-NH‐もしくは‐NH-CO-)、エステル基(−CO-O-もしくは-O-CO-)、又はカルボニル基(-CO-)を表し、Zは、水酸基、アルコキシ基、オキソ基、カルボキシル基又はアミノ基により置換されているかあるいは非置換の炭素数1〜20の2価脂肪族炭化水素基を表し、Qは水素原子(H)、若しくは水酸基、オキソ基、アルコキシ基、アミノ基、又は炭素数1〜10のアルキル基もしくはアルケニル基により置換されているかあるいは非置換の芳香族炭化水素基又は複素環基を表す。)

【0020】
本発明のフェノール性化合物をさらに具体的に示すと以下のとおりである。

a)下記一般式(2)で示されるフェルラ酸又はカフェイン酸の誘導体
【化2】

(ただし、式2においてR1は水酸基またはアルコキシ基であり、Y1はイミノ基(NH)または酸素原子(O)であり、Zは炭素数1〜10の2価脂肪族炭化水素基であり、Qは水素原子(H)、若しくは水酸基又はアミノ基により置換されていてもよい、芳香族炭化水素基又は複素環基を表す。)
上記置換基の定義中、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソペンテニルオキシ基等、炭素数1〜10の2価脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、ビニレン基等のアルキレン基またはアルケニレン基、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等、複素環基としては、3−インドリル基、2−インドリル基、5−イミダゾリル基等がそれぞれ例示される。

b)下記一般式(3)で示されるバニリン酸又はプロトカテク酸の誘導体
【化3】

(ただし、式3においてR1は水酸基またはアルコキシ基であり、Y1はイミノ基(NH)または酸素原子(O)であり、Zは炭素数1〜10の2価脂肪族炭化水素基であり、Qは水素原子(H)、若しくは水酸基又はアミノ基で置換されていてもよい、芳香族炭化水素基又は複素環基を表す。)
これら置換基の定義中、アルコキシ基、炭素数1〜10の2価脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基及び複素環基の具体例は上記a)と同様である。
c) 下記一般式(4)で示されるホモバニリン酸の誘導体
【化4】

(ただし、式4においてY1はイミノ基(NH)または酸素原子(O)であり、Zは炭素数1〜10の2価脂肪族炭化水素基であり、Qは水素原子(H)、若しくは水酸基又はアミノ基により置換されていてもよい、芳香族炭化水素基または複素環基を表す。)
これら置換基の定義中、炭素数1〜10の2価脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基及び複素環基の具体例は上記a)と同様である。

d) 下記一般式(5)で示されるp−クマル酸の誘導体
【化5】

(ただし、式5においてY1はイミノ基(NH)または酸素原子(O)であり、Zは炭素数1〜10の2価脂肪族炭化水素基であり、Qは水素原子(H)、若しくは水酸基又はアミノ基により置換されていてもよい、芳香族炭化水素基又は複素環基を表す。)
これら置換基の定義中、炭素数1〜10の2価脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基及び複素環基の具体例は上記a)と同様である。

【0021】
e) 下記一般式(6)で示されるp−ヒドロキシ安息香酸の誘導体
【化6】

(ただし、式6においてY1はイミノ基(NH)または酸素原子(O)であり、Zは炭素数1〜10の2価脂肪族炭化水素基であり、Qは水素原子(H)、若しくは水酸基又はアミノ基により置換されていてもよい、芳香族炭化水素基又は複素環基を表す。)
これら置換基の定義中、炭素数1〜10の2価脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基及び複素環基の具体例は上記a)と同様である。

f) 下記一般式(7)で示されるバニリルアミン誘導体
【化7】

(ただし、式7においてR1は水酸基又はアルコキシ基であり、Y1は炭素数1〜6の2価脂肪族炭化水素基であり、Zは炭素数1〜20の2価脂肪族炭化水素基であり、Qは水素原子(H)、若しくは水酸基又はアミノ基により置換されていてもよい、芳香族炭化水素基又は複素環基を表す。)
これら置換基の定義中、炭素数1〜6の2価脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基等が挙げられ、アルコキシ基、芳香族炭化水素基及び複素環基の具体例は上記a)と同様である。

g) ジンゲロールもしくはその類縁体。
【化8】

(ただし、式8において、Zは炭素数1〜11の2価脂肪族炭化水素基であり、Qは水素原子(H)、若しくは水酸基又はアミノ基により置換されていてもよい、芳香族炭化水素基又は複素環基を表す。)
これら置換基の定義中、炭素数1〜11の2価脂肪族炭化水素基としては、例えばメチレン基、エチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられ、芳香族炭化水素基及び複素環基の具体例は上記a)と同様である。

h) 下記一般式(9)で示されるクルクミンもしくはその誘導体
【化9】

(ただし、式9においてR1とR2は水素原子又はメトキシ基を表す。)

i) 下記一般式(1b)で示される4’-ヒドロキシカルコン誘導体
【化10】

(ただし、式1b中においてR1、R2、R3、R4、R、R6、R7、R8、R9 は水素原子(H)、水酸基、アルコキシ基又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、このアルキル基は分岐と不飽和結合を含んでいてもよい。)

【0022】
上記一般式1で示されるフェノール性化合物は、ドコサヘキサエン酸等の高度不飽和脂肪酸やこれら高度不飽和脂肪酸ならびにカフェイン等のキサンチン誘導体と同時に投与されるとそれぞれ単独で投与されたときよりも強力に、ヒトやマウスの前駆脂肪細胞の脂肪細胞への分化を促進し、それに伴いこれらの細胞におけるアディポネクチンの産生を促進・増強する。この活性はフェノール性化合物の構造と濃度、及び組み合わせる不飽和脂肪酸の種類と濃度によっては実用化されている抗糖尿病薬のピオグリタゾンに匹敵するほど強い。
【0023】
本発明に使用する炭素数8〜22の不飽和脂肪酸としては、
ドコサヘキサエン酸(4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z-docosahexaenoic acid)、
(n-6)ドコサペンタエン酸(4Z,7Z,10Z,13Z,16Z-docosapentaenoic acid)、
(n-3)ドコサペンタエン酸(7Z,10Z,13Z,16Z,19Z-docosapentaenoic acid)、
エイコサペンタエン酸(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z-eicosapentaenoic acid)、
アラキドン酸(5Z,8Z,11Z,14Z-eicosatetraenoic acid)、
ステアリドン酸(6Z,9Z,12Z,15Z-octadecatetraenoic acid)、
ホモ-γ-リノレン酸(8Z,11Z,14Z-eicosatrienoic acid)、
α-リノレン酸(9Z, 12Z, 15Z-octadecatrienoic acid)、
γ-リノレン酸(6Z, 9Z, 12Z-octadecatrienoic acid)、
リノール酸(9Z,12Z-octadecadienoic acid)、
オレイン酸(9Z-octadecenoic acid)、
共役リノレン酸(10E, 12Z-octadecadienoic acid
又は9Z, 11E-octadecadienoic acid)、
ミリストオレイン酸(9Z-tetradecenoic acid)、
2-ドデセン酸(2-dodecenoic acid)、
2-デセン酸(2-decenoic acid)、
3-デセン酸(3-decenoic acid)、
2-オクテン酸(2-octenoic acid)、
ゲラン酸(3,7-dimethyl-2E,6E-octadienoic acid)、
シトロネル酸(3,7-dimethyl-6E-octenoic acid)、
ファルネソイック酸(3,7,11-trimethyl-2E,6E,10E-dodecatrienoic acid)
などが挙げられる。これらのうちでは、ドコサヘキサエン酸やエイコサペンタエン酸が最も好ましく用いられるが、これらに限定されるわけではない。また、これらの不飽和脂肪酸をグリセリドとして使用する場合には、これらの脂肪酸の少なくとも1つが結合したエステルであれば、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドのいずれでもよく、また、グリセロール中の不飽和脂肪酸の結合位置は1、2、3位のいずれでもよく、さらにジグリセリド、トリグリセリドの場合には当該不飽和脂肪酸以外の脂肪酸、例えばパルミチン酸やステアリン酸が結合していてもさしつかえない。
【0024】
また、本発明に使用するフェノール性化合物のうち、好ましいものの化学構造を具体的に例示すると、以下の10〜39の化合物が挙げられる。
【化11】

【0025】
これら化合物の置換基を、一般式(1)中の置換基に対応させて以下に説明する。なお括弧内は、より具体的な一般式(2)〜(9)及び(1b)の中の該当する式の置換基と対応させたものである。
10の化合物(N-(β-フェネチル)フェルラミド);一般式(1)中、R1 = R3 = R4 = H, R2 =- OMe, X =- CH=CH, Y=-CO-NH-基、Z=-CH2CH2-, Q=-C6H5である化合物(一般式(2)中、R1 =-OMe, Y1 =-NH, Z=-CH2CH2-, Q=-C6H5である化合物)。
11の化合物(フェルロイルトリプタミン); 一般式(1)中、R1 = R3 = R4 = H, R2 =- OMe, X=-CH=CH-, Y =-CO-NH-基、Z=-CH2CH2-, Q = 3-インドリル基である化合物(一般式(2)中、R1 =-OMe,Y1 =-NH-, Z =-CH2CH2-, Q = 3-インドリル基である化合物)。
12の化合物(フェルロイルチラミン); 一般式(1)中、R1 = R3 = R4 = H, R2 =- OMe, X =-CH=CH-, Y=-CO-NH-基, Z =-CH2CH2-, Q = p-ヒドロキシフェニル基である化合物(一般式(2)中、R1 =-OMe, Y1 =-NH-, Z =-CH2CH2-, Q = p-ヒドロキシフェニル基である化合物)。
13の化合物(β-フェネチルフェルレート); 一般式(1)中、R1 = R3 = R4 = H, R2 =- OMe, X=-CH=CH-, Y =-CO-O-基, Z =-CH2CH2-, Q =フェニル基である化合物(一般式(2)中、R1 =-OMe, Y1 =-O-, Z =-CH2CH2-, Q =フェニル基である化合物)。
14の化合物(フェルラ酸3-フェニル-2-プロペニル); 一般式(1)中、R1 = R3 = R4 = H, R2 =- OMe, X =-CH=CH-, Y =-CO-O-基, Z =-CH2CH=CH-, Q=フェニル基である化合物(一般式(2)中、R1 =-OMe,Y1 =-O-, Z =-CH2CH=CH-, Q =フェニル基である化合物)。
【0026】
15の化合物(N-(β-フェネチル)カフェイン酸アミド);一般式(1)中、R1 = R3 = R4 = H, R2 =- OMe, X=-CH=CH-, Y =-CO-NH-基,Z =-CH2CH2-, Q =-C6H5である化合物(一般式(2)中、R1 =-OH, Y1 =-NH-, Z=-CH2CH2-, Q =-C6H5である化合物)。
16の化合物(カフェイン酸フェネチルエステル); 一般式(1)中、R1 = R3 = R4 = H, R2 =-OH, X =-CH=CH-, Y =-CO-O-基, Z = -CH2CH2-, Q =-C6H5である化合物(一般式(2)中、R1 =-OH, Y1 =-O-, Z =-CH2CH2-, Q =-C6H5である化合物)。
17の化合物(N-(3-フェニルプロピル)-4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアミド); 一般式(1)中、R1 = R3 = R4 = H, R2 =- OMe, X=単結合, Y=-CO-NH-基, Z=-CH2CH2CH2-, Q=-C6H5である化合物(一般式(3)中、R1 =-OMe, Y1 =-NH-, Z =-CH2CH2CH2-, Q =-C6H5である化合物)。
18の化合物(4-ヒドロキシ-3-メトキシ安息香酸3-フェニル-2-プロペニル); 一般式(1)中、R1 = R3 = R4 = H, R2 =- OMe, X =単結合, Y =-CO-O-, Z =-CH2CH=CH-, Q =-C6H5である化合物(一般式(3)中、R1 =-OMe, Y1 =-O-, Z =-CH2CH=CH-, Q =-C6H5である化合物)。
19の化合物(N-(3-フェニルプロピル)-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)アセタミド); 一般式(1)中、R1 = R3 = R4 = H, R2 =- OMe, X =-CH2-, Y =-CO-NH-基, Z =-CH2CH2CH2-, Q =-C6H5である化合物(一般式(4)中、Y1 =-NH-, Z=-CH2CH2CH2-, Q =-C6H5である化合物)。
【0027】
20の化合物(N-(β-フェネチル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロペナミド); 一般式(1)中、R1 = R2 = R3 = R4 = H, X =-CH=CH-, Y =-CO-NH-基, Z =-CH2CH2-, Q =-C6H5である化合物(一般式(5)中、Y1 =-NH-, Z=-CH2CH2-, Q=-C6H5である化合物)。
21の化合物(3-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロペン酸3-フェニル-2-プロペニル);一般式(1)中、R1 = R2 = R3 = R4 = H, X =-CH=CH-, Y =-CO-O-基, Z =-CH2CH=CH-, Q =-C6H5である化合物(一般式(5)中、Y1 =-O-, Z=-CH2CH=CH-, Q=-C6H5である化合物)。
22の化合物(N-(3-フェニル)-4-ヒドロキシベンザミド); 一般式(1)中、R1= R2= R3 = R4 = H, X=単結合, Y=-CO-NH-基, Z=-CH2CH2CH2-, Q=-C6H5である化合物(一般式(6)中、Y1 =-NH-, Z =-CH2CH2CH2-, Q =-C6H5である化合物)。
23の化合物(カプサイシン); 一般式(1)中、R1 = R3 = R4 = H, R2 =- OMe, X=-CH2-, Y=-NH-CO-基, Z =-(CH2)4CH=C(CH3)CH2-, Q=Hである化合物(一般式(7)中、R1=-OMe, Z =-(CH2)4CH=C(CH3)CH2-, Q =Hである化合物)。
24の化合物 (N-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)メチル-3-フェニル-2-プロペンアミド); 一般式(1)中、R1 = R3 = R4 = H, R2 =- OMe, X =-CH2-, Y =-NH-CO-基, Z =-CH=CH-, Q =-C6H5である化合物(一般式(7)中、R1=-OMe, Y1=-CH2-, Z =-CH=CH-, Q =-C6H5である化合物)。
【0028】
25の化合物([6]-ジンゲロール); 一般式(1)中、R1 = R3 = R4 = H, R2 =- OMe, X=-CH2CH2-, Y=-CO-基, Z=-CH2CH(OH)(CH2)4CH2-, Q=Hである化合物(一般式(8)中、Z=-(CH2)3CH-, Q=Hである化合物)。
26の化合物(クルクミン); 一般式(1)中、R1 = R3 = R4 = H, R2 =- OMe, X=-CH=CH-, Y=-CO-基, Z=-CH2COCH=CH-, Q=3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル基である化合物(一般式(9)中、R1 = R2 =-OMeである化合物)。
27の化合物(フェルラ酸2-(3-インドリル)エチル);一般式(1)中、R1 = R3 = R4 = H, R2 =- OMe, X =-CH=CH-, Y =-CO-O-基, Z =-CH2CH2-, Q =3-インドリル基である化合物(一般式(2)中、R1 =-OMe, Y1 =-O-, Z =-CH2CH2-, Q =3-インドリル基である化合物)。
28の化合物 (N-(3,4-ジヒドロキシフェニル)メチル-3-フェニル-2-プロペンアミド); 一般式(1)中、R1 = R3 = R4 = H, R2 =- OH, X =-CH2-, Y =-NH-CO-基, Z =-CH=CH-, Q =-C6H5である化合物(一般式(7)中、R1=-OH, Y1=-CH2- ,Z =-CH=CH-, Q =-C6H5である化合物)。
29の化合物(N-(3-フェニルプロピル)-3,4-ジヒドロキシベンズアミド); 一般式(1)中、R1 = R3 = R4 = H, R2 =- OH、 X=単結合, Y=-CO-NH-基, Z=-CH2CH2CH2-, Q=-C6H5である化合物(一般式(3)中、R1 =-OH, Y1 =-NH-, Z =-CH2CH2CH2-, Q =-C6H5である化合物)。
【0029】
30の化合物(N-ベンジルフェルラミド);一般式(1)中、R1 = R3 = R4 = H, R2 =- OMe, X =-CH=CH-, Y =-CO-NH-基, Z=-CH2-, Q=-C6H5である化合物(一般式(2)中、R1 =-OMe, Y1 =-NH-, Z=-CH2-, Q=-C6H5である化合物)。
31の化合物(N-(3-フェニルプロピル)フェルラミド);一般式(1)中、R1 = R3 = R4 = H, R2 =- OMe, X =-CH=CH-, Y =-CO-NH-基, Z=-CH2CH2CH2 -, Q =-C6H5である化合物(一般式(2)中、R1 =-OMe, Y1 =-NH-, Z=-CH2CH2CH2-, Q=-C6H5である化合物)。
32の化合物(N-(4-フェニルブチル)-4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアミド); 一般式(1)中、R1 = R3 = R4 = H, R2 =- OMe, X=単結合, Y=-CO-NH-基, Z=-CH2CH2CH2CH2-, Q=-C6H5である化合物(一般式(3)中、R1 =-OMe, Y1 =-NH-, Z =-CH2CH2CH2CH2-, Q=-C6H5である化合物)。
33の化合物 (N-[2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)エチル]-3-フェニル-2-プロペンアミド); 一般式(1)中、R1 = R3 = R4 = H, R2 =- OMe, X =-CH2CH2-, Y =-NH-CO-基, Z =-CH=CH-, Q =-C6H5である化合物(一般式(7)中、R1=-OMe, Y1=-CH2CH-, Z =-CH=CH-, Q=-C6H5である化合物)。
34の化合物(N-[2-(3-インドリル)エチル]カフェイン酸アミド); 一般式(1)中、R1 = R3 = R4 = H, R2 =- OH、 X =-CH=CH-, Y =-CO-NH-基, Z=-CH2CH2-, Q = 3-インドリル基である化合物(一般式(2)中、R1 =-OH, Y1 =-NH-, Z =-CH2CH2-, Q = 3-インドリル基である化合物)。
【0030】
35の化合物(4’-ヒドロキシカルコン);一般式(1)中、R1 = R2 = R3 =R4 = H, X=単結合, Y=-CO-基, Z=-CH=CH-, Q=-C6H5である化合物(一般式(1b)中、R1 = R2 = R3 =R4 = R5 = R6 = R7 =R8 = R9 =Hである化合物)。
36の化合物(イソリキリチゲニン);一般式(1)中、R1 = R2 = R3 = H, R4 = -OH, X=単結合, Y=-CO-基, Z=-CH=CH-, Q=-p-OH-C6H5である化合物(一般式(1b)中、R1 = R2 = R3 = R5 = R6 = R8 = R9 =H, R4 = R7 = -OH である化合物)。
37の化合物(キサントフモール);一般式(1)中、R1 = -OMe, R2 = H, R4 = -OH, R3 = -CH2CH=C(CH3)2, X=単結合, Y=-CO-基, Z=-CH=CH-, Q=-p-OH-C6H5である化合物(一般式(1b)中、R1 = -OMe, R2 = R5 = R6 = R8 = R9 =H, R4 = R7 = -OH, R3 = -CH2CH=C(CH3)2)。
38の化合物(キサントアンゲロール);一般式(1)中、R1 = R2 = H, R4 = -OH, R3 = -CH2CH=C(CH3)CH2CH2CH=C(CH3)2, X=単結合,Y=-CO-基, Z=-CH=CH-, Q=-p-OH-C6H5である化合物(一般式(1b)中、R1 = R2 = R5 = R6 = R8 = R9 =H, R4 = R7 = -OH, R3 = -CH2CH=C(CH3)CH2CH2CH=C(CH3)2,である化合物)。
39の化合物(リコカルコンA);一般式(1)中、R1 = R2 = R3 = R4 =H, X=単結合,Y=-CO-基, Z=-CH=CH-, Q=-2-OCH3-4-OH-5-(C(CH3)2CH=CH2)C6H5である化合物(一般式(1b)中、R1 = R2 = R3 = R4 = R6 = R9 =H, R5 = OCH3, R7 = -OH, R8 = - C(CH3)2CH=CH2,である化合物)。
【0031】
本発明に用いる不飽和脂肪酸は炭素数8から22までで、2重結合の数が1〜6の天然に広く分布している脂肪酸が良く、とりわけ魚油に含まれるドコサヘキサエン酸やエイコサペンタエン酸が好ましく用いられる。また、α-リノレン酸やオレイン酸も用いられ、植物に含まれるテルペンに由来するゲラン酸やシトロネル酸も用いられる。さらに、生体に適用する場合は体内のリパーゼやエステラーゼで分解可能なグリセリドやエチルエステルの形でも用いられる。これらの不飽和脂肪酸やそれを含むグリセリドは魚油、植物油、微生物産生油脂等から公知の方法で容易に製造される。一方、本発明に関わるフェノール性化合物の方は、天然から容易に抽出されるフェルラ酸やバニリン酸の適当な誘導体と、対応するアミンやアルコールを酸クロライド法やカルボジイミド法など公知の方法で縮合させることにより容易に製造できる。以下の実施例で用いたN-(β-フェネチル)フェルラミド(FAPA)等のフェノール性化合物の合成法は特開2005-225872、特願2005-61659、特願2005-218519に記載したところと同様である。代表例としてFAPAの合成法を実施例1に示す。また、クルクミン、[6]−ジンゲロール、ヒドロキシカルコン等植物に豊富に含まれる化合物はそれらの植物から公知の方法で容易に抽出製造される。この場合、不都合な夾雑物がない限り、粗抽出物や部分精製品として用いることもできる。抽出は水やエタノールで容易に行なえる。一方、これらの式1で示される化合物や不飽和脂肪酸と組み合わせてアディポネクチンの産生をさらに増強するために使用するキサンチン誘導体はテオフィリン、カフェイン、もしくはテオブロミンのいずれか1つまたは2つ以上の混合物である。これらは茶葉やコーヒー豆、カカオ豆等から抽出できるし、公知の方法で容易に合成もできる。本発明に用いる場合、これらは純品として、あるいは茶・コーヒー等の粗抽出物の形で式1の化合物と不飽和脂肪酸に混合してもよい。本発明に用いる場合、式1の化合物の添加量は化合物の種類、精製の方法や程度、求められる効果の程度により、生理的に安全な範囲で加減する。例えば式2の化合物の添加量は飲用水の1mlもしくは食物の1gあたり数mg以下とするが、総摂取量や摂取形態に応じて、生理的に安全な範囲内で適宜増減する。DHA等不飽和脂肪酸の添加量は現に健康食品等として使用されている量を参考にして生理的に安全な範囲内で適宜決定するが、先に詳述したように、本発明のフェノール性化合物と混合して使用するので、減量することが可能である。また、キサンチン誘導体の添加量については常用されるコーヒーや緑茶に含まれる濃度に準ずるものとする。すなわち、カフェインは飲用水の1mlもしくは食物の1gあたり0.1mgから0.5mg(約3 mM)、テオフィリンは飲用水の1mlもしくは食物の1gあたり0.01mgから0.05mg(約0.3 mM)、テオブロミンは飲用水の1mlもしくは食物の1gあたり0.1mgから2mg(約10mM)等を目安にするが、総摂取量や摂取形態に応じて、生理的に安全な範囲内で適宜増減する。次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0032】
N-(β-フェネチル)フェルラミド(FAPA)の調製
公知の方法で合成したO-アセチルフェルラ酸クロライドの30gをトルエン350mlに溶かした。この溶液を滴下ロートに入れ、25mlのβ-フェネチルアミンと50mlのピリジンを100mlのトルエンに混合した溶液に氷冷、攪拌下添加した。全量添加後、氷浴を去り、室温で一晩攪拌した。この反応液を2分し分液ロートに入れ500mlの酢酸エチルを加え、150及び100mlの水、150及び100mlの10%クエン酸水溶液、150及び100mlの10%NaHCO3水溶液、100及び50mlの飽和NaCl水溶液で順次洗浄した。有機層を合わせNa2SO4で乾燥後、ロータリー・エバポレーターで濃縮して得たアメ状物質を酢酸エチルから再結晶させ、32.6gのO-アセチル-N-(β-フェネチル)フェルラミドを得た。この全量を500mlのエタノールに溶かし、ヒドラジン一水和物の12mlを入れ、室温に1時間放置した。次いで酢酸を12ml加え、ロータリー・エバポレーターで濃縮した残渣に酢酸エチルの500mlと水100mlを加え、分液ロート中で激しく振とうした。有機層を飽和塩化ナトリウム水の200mlで2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、ロータリー・エバポレーターで濃縮した油状物をベンゼンから結晶化させ、28.3gのN-(β-フェネチル)フェルラミド(FAPA)を得、このうち12.7 gをエタノールから再結晶させ、10.6 gの針状晶(融点153〜154 ℃)を得た。MS m/z: 297.1355 (M+)(calcd. C18H19NO3=297.1364)。また、NMRスペクトルは下記のシグナルを示し、これにより所期の構造であることを確認した。1H-NMR (CDCl3) δ:2.889 (2H, t, J = 7 Hz, CH2), 3.664 (2H, dt, J = 7 and 6 Hz, CH2), 3.903 (3H, s, OMe), 5.597 (1H, t, J = 6 Hz, NH), 5.896 (1H, s., OH), 6.173 (1H, d, J = 15.5 Hz, CH=CH), 6.894 (1H, d, J = 8 Hz, H-5), 6.968 (1H, d, J = 2 Hz, H-2), 7.041 (1H, dd, J = 8 and 2 Hz, H-6), 7.2 - 7.4 (5H, m, phenyl), 7.539 (1H, d, J = 15.5 Hz, CH=CH)。
【実施例2】
【0033】
マウス3T3-L1前駆脂肪細胞株(大日本製薬株式会社より購入)を10%の牛胎仔血清(FBS)を含むDMEM培地で3日間前培養後、EDTA-トリプシン液で回収し、6 x 104 cells/mlの懸濁液とし、あらかじめコラーゲンコーティングを施した96-wellのマルチウェルプレートに1ウェルあたり0.2 ml植え込んだ。3日間培養後、培地(10%の牛胎仔血清を含むDMEM培地)を10μM 又は100μM のドコサヘキサエン酸(Cayman社製、DHAと略称)を含む又は含まない0.2mlの新鮮培地に交換し、次いでβ-フェネチルフェルラミド(FAPA)のエタノール溶液(0.01、0.1、1 mM)を2 μlづつ添加した。コントロールには純エタノールを同量添加した。9日間培養後、位相差顕微鏡でサンプル添加ウェルにおける細胞内脂肪球の蓄積を確認してから培地を回収し、ELISA(大塚製薬 マウス/ラットアディポネクチンELISAキット)により培地中のアディポネクチン濃度を定量した。結果を図1に示すが、FAPAとDHAを同時に添加すると、それぞれ単独でのアディポネクチン産生量の和以上に多量のアディポネクチンが産生されることがわかる。
【実施例3】
【0034】
実施例2と同様の実験をFAPAの代わりにフェルロイルチラミン(Fer-Tyr)を用い、また、DHA濃度は10、30、100μMの3段階に変えて行なった。結果を図2に示すが、Fer-Tyr単独では5 ng/ml程度であったアディポネクチン産生量が30μMのDHAの添加で73.3ng/mlと15倍近く増加した。DHAの側から見ても、30μM 単独では4.4 ng/mlの生産量が10μMのFer-Tyrの添加で17倍に増加したことになる。
30μMのDHAに他の各種フェノール性化合物を組み合わせて上記と同様の実験を行った結果を図3に示す。
また、各種フェノール性化合物、及び高度不飽和脂肪酸として10μMのエイコサペンタエン酸(Cayman社製、EPAと略称)、並びに、さらに、DHAを用いて同様に実験した結果をそれぞれ図4と図5に示す。
さらに、不飽和脂肪酸としてDHAとEPA以外にα-リノレン酸、共役リノレン酸(CL1)等各種の不飽和脂肪酸を遊離酸の状態で、あるいはトリグリセリドもしくはエチルエステルの形で添加した場合の結果を図6に示す。トリグリセリドやエチルエステルの形の場合を含めていずれの場合にも、不飽和脂肪酸とフェノール性化合物の同時添加により、それぞれ単独で用いた場合よりも多量のアディポネクチンが生産されることが確認された。
【実施例4】
【0035】
正常ヒト前駆脂肪細胞(三光純薬製)を10 %のFBSと2 mMグルタミンを添加したPBM培地(PBM増殖培地、PBMは三光純薬製)で4日間前培養後、細胞をEDTA-トリプシン液で回収し、PBM増殖培地に7.5 x 104 cells/mlの割合で懸濁し、あらかじめコラーゲンでコートした96-wellプレートに0.2 mlづつ植え込んだ。5%のCO2存在下、37℃で3日間培養後、培地をPBM基本分化培地[PBM増殖培地にインスリン(10μg/ml)とデキサメタソン(0.1μM)を添加したもの]に、さらに所要の濃度の不飽和脂肪酸またはピオグリタゾン(Alexis Biochemicals社製、PGZと略称)を添加、もしくは添加していない培地に交換した(0.2 ml/well)。これらの各ウェルに各種のフェノール性化合物のエタノール溶液を2μlづつ添加した。コントロールには2μlのエタノールのみを添加した。12日間インキュベート後、培地を回収し、ELISA(大塚製薬、ヒトアディポネクチン用ELISAキット)でアディポネクチンを定量した。結果を図7に示す。この結果から、ヒト前駆脂肪細胞の場合にも、DHAやEPA等の高度不飽和脂肪酸とFAPAやFer-Tyr等のフェノール性化合物の同時添加により、それぞれ単独の場合よりも多量にアディポネクチン産生が誘導されることが確認された。なお、PGZによるアディポネクチン産生もFAPA等フェノール性化合物により相乗的に増強されるが、種類と濃度によっては、不飽和脂肪酸とフェノール性化合物の組み合わせの方がPGZを含む組み合わせよりも強力な場合のあることも図7に示されている。
【実施例5】
【0036】
正常ヒト前駆脂肪細胞を実施例4と同様に96-wellプレートで3日間培養後、培地を新鮮な上記PBM基本分化培地、もしくは30μMのDHAと500μMのカフェインのいずれか一方、もしくは両者を含むPBM基本分化培地に交換した(0.2ml/well)。次いで、これらの各ウェルにFAPA又はFer-Tyr(化合物12)のエタノール溶液を2μlづつ添加し、13日間インキュベート後、培地を回収し、ELISAでアディポネクチンを定量した。結果を図8に示す。この結果から、FAPAのアディポネクチン産生増強作用はカフェインあるいはDHAのいずれかが存在すると強化されるが、両者が存在すると(すなわちFAPA、DHA、カフェインの3者共存において)さらに強化されることがわかる。同様の3者共存の効果はFer-Tyrについても認められた。
【実施例6】
【0037】
実施例2と同様に、FAPA (10μM)、フェルロイルチラミン(Fer-Tyr、100μM)、フェルロイルトリプタミン (Fer-Trp、30 μM)、β−フェネチルフェルレート(FAPE、30 μM)又は[6]-ジンゲロール (和光純薬製、30 μM)のいずれかをゲラン酸 (Sigma社製、50 μM)、ファルネソイック酸 (Echelon Biosciences社製、10 μM)、シトロネル酸 [東京化成製、100 μM]、2-オクテン酸 [東京化成製、100 μM]、又は2-ドデセン酸 [東京化成製、100 μM]のいずれかと組み合わせ、3T3-L1細胞のアディポネクチン産生増強について実験した。結果を図9と図10に示す。これらの炭素数8〜15の不飽和脂肪酸がFAPA等フェノール性化合物と同時に添加されると多くの場合それぞれ単独で用いたときの生成量の和以上に多量のアディポネクチンの産生を誘導することが確認された。なお、参考のためにピオグリタゾンを用いた実験結果も図9に示してある。
【実施例7】
【0038】
実施例4と同様に、FAPA (30 μM)をゲラン酸 (100 μM)又はファルネソイック酸 (100 μM)と組み合わせ、ヒト前駆脂肪細胞におけるアディポネクチン産生増強について実験した。結果を図11に示す。これらの不飽和脂肪酸がFAPAのアディポネクチン産生作用を増強することが確認された。
【実施例8】
【0039】
実施例2と同様に、[6]-ジンゲロール (10 μM)又はクルクミン(BIOMOL社製、10 μM)をDHA(10 μM)と組み合わせ、3T3-L1細胞のアディポネクチン産生増強について実験した。結果を図12Aに示す。また、実施例4と同様に、[6]-ジンゲロール (10 μM)又はクルクミン(10 μM)をDHA又はEPA(いずれも100 μM)と組み合わせ、正常ヒト前駆脂肪細胞のアディポネクチン産生増強について実験した。結果を図12Bに示す。これらの結果から、DHAやEPAがジンゲロールやクルクミンによるアディポネクチン産生を増強することが確認された。
【実施例9】
【0040】
実施例2と同様に、キサントフモール (略号Xhum、Alexis社製)、4‘−ヒドロキシカルコン(4’-OH-C.、和光純薬製)、キサントアンゲロール[Xang、明日葉の茎、根から文献(小澤 貢ら、薬学雑誌、98、210-214、1978)の方法で抽出、精製、結晶化したもの]、リコカルコンA(LicoA、CALBIOCHEM社製)、又はイソリキリチゲニン(Isoliq、Extrasynthese社製)のいずれかをドコサヘキサエン酸(DHA)又はエイコサペンタエン酸(EPA)のいずれかと組み合わせ、3T3-L1細胞のアディポネクチン産生増強について実験した。結果を図13と図14に示すが、これらのカルコン類単独でアディポネチンの産生を増強し、さらにこれらにドコサヘキサエン酸等の不飽和脂肪酸が同時に添加されると一層増強することが確認された。なお、参考のためにピオグリタゾンを用いた実験結果も示してあるが、カルコン類はピオグリタゾンのアディポネクチン産生増強作用も強化することがわかる。
【実施例10】
【0041】
実施例4と同様に、4’-ヒドロキシカルコンをドコサヘキサエン酸またはピオグリタゾンと組み合わせ、ヒト前駆脂肪細胞におけるアディポネクチン産生増強について実験した。結果を図15に示す。4’-ヒドロキシカルコンがドコサヘキサエン酸やピオグリタゾンのアディポネクチン産生作用を増強することが確認された。
【実施例11】
【0042】
遺伝的に2型糖尿病を発症するKK-Ay/Ta Jc1マウス(オス、5週令、16匹、日本クレア社製)を、N-(β-フェネチル)フェルラミド(FAPA と略称)及び/又はドコサヘキサエン酸濃縮油脂(DHA-70G、日本化学飼料株式会社製、含有全脂肪酸中のDHAの割合が70%)を添加し、もしくは添加しないで調製した飼料で4週間にわたり飼育し体重、摂餌量、及び血糖値等を定期的に測定した。なお、飼料は日本クレア社製のA-13251低脂肪食粉末飼料をベースとして、それに表1に示す割合で各成分を混合したが油脂の含量は各群ともトータルで5%(w/w)、DHA群とFAPA+DHA群におけるDHA油脂の含量は4%(w/w)、FAPAの含量は0.3%(w/w)となる。FAPAは表1に示した量のエタノールに溶かして添加した。混合した飼料は32gづつ容積50ccのプラスチック容器に入れ、減圧脱気と窒素ガス置換を繰り返した後、密栓し冷蔵庫に保存した。マウスは1群4匹とし個別飼育、通常1匹あたり毎日8gづつの新鮮飼料を粉末給餌器に入れて給餌した。食べ残しは回収し糞、床材等を篩い分け後、重量を測定し、給餌量との差から摂餌量を計算した。水はオートクレーブで滅菌した水道水を自由摂取させた。体重と摂餌量の測定結果を表2にまとめてある。DHA油脂が添加されると摂餌量はコントロールより20%程度減少したが、体重はコントロール群に比べて数%から10%程度小さいのみであった。また、飼育期間中、体重はどの群においてもほぼコンスタントに増加を続けた。
【表1】

【表2】

【0043】
血糖やアディポネクチン測定のためのプラズマ(血漿)は、おおむね1週間に1度血液をマウス尾部先端から1回あたり9μl採取し、これを直ちに3μlのヘパリン溶液(50 mg/ml)と混合、遠心分離(12000 rpm、12分)で血球を除いて調製した。このプラズマ中のグルコースとトリグリセリド濃度をそれぞれグルコースCII-テストワコー、トリグリセリドE-テストワコー(いずれも和光純薬工業株式会社製)で測定した。一方、プラズマの2μlを水8μl及び2x SDS緩衝液の10μlと混合後、95℃で5分加熱処理し、電気泳動の試料とした。ポリアクリルアミドゲルによる電気泳動(各レーン2μlをアプライ)とウェスタンブロッティングによるアディポネクチンの検出は定法によって行った。用いた1次抗体はケミコン社製のmouse anti-adiponectin, mouse monoclonal antibody (Catalog No. MAB3608)であり、2次抗体はZymed社製のrabbit anti-mouse Ig G1-HRP conjugate (Catalog No. 61-0120)である。バンドの検出にはPharmacia社製ECL Plus測定キットを用いた。また泳動後のゲルについて、分子量8万前後の部分をCBB試薬で染色し血清アルブミンを検出した。これらのバンドをスキャナーで画像としてパソコンに取り込み、ゲル・プロ・アナライザー(ソフトウェア、BioRad社)でバンドの濃さを数値化した。これらの値から血清アルブミンを基準にした血中アディポネクチンの相対的なレベルを求めた。結果を図16に示す。図16AはFAPA+DHA群のマウスの血漿グルコース濃度は給餌開始後2〜5週間の間おおむねコントロール群の値より有意に低いことを示す。一方、DHA単独群のマウスもコントロール群より低い平均値を示しているが、有意に低かったのは4週目(31日目)の値のみであった。従って、糖尿病発症による血糖増加はDHAで抑制されるが、FAPAの同時添加によりその効果はより顕著になることが確認された。図16Bは血漿トリグリセリド測定の結果であるが、この場合はFAPA+DHA群がコントロール群やFAPA単独群に対してはもとより、DHA単独群に対しても有意に低い値を示しており、FAPAとDHAの相乗的効果が確認された。さらに、図16Cは血中アディポネクチンの測定結果であるが、FAPA+DHA群が最も高い値を示しており、さらに24日目の値はDHA単独群の値より有意に高かった。従って、血中アディポネクチンレベルの上昇に関してもFAPAとDHAの相乗的効果が確認された。
【実施例12】
【0044】
生姜根茎の乾燥チップ(内田和漢薬製)1Kgを250gづつ0.6リットルのエタノールと混合し、室温においてミキサーで粉砕、抽出した。不溶物を濾集し、再度0.6リットルのエタノールで抽出した。エタノール溶液を合わせロータリーエバポレーターで濃縮し、粗エキス60gを油状物として得た。この抽出物全量を1リットルのヘキサン−酢酸エチル(4:1)で再抽出後、不溶物をろ過除去した。抽出液の溶媒を除き、残分を0.65リットルのメタノールに溶解し、1.5リットルのへキサンを加え、分配後、上層の溶媒を留去して、ジンゲロール含有抽出物(SG)39gを得た。このSGを表3に示すようにA-13251 粉末及び油脂と混合して調製した飼料を用いてKK-Ay/Ta Jc1マウス(オス、5週令、12匹、1群3匹で4群)を飼育し、実施例11と同様の実験を行なった。油脂の含量は各群飼料ともトータルで5%(w/w)、DHA群とSG+DHA群飼料におけるDHA油脂の含量は3%(w/w)、SGの含量は0.5%(w/w)となる。
【表3】

【0045】
体重、摂餌量の変化は表4にまとめてある。SGのみ、またはDHA油脂のみを添加した飼料の場合は通常、摂餌量と体重ともコントロール群より10%程度抑制された。一方、SGとDHA油脂の両者が添加された場合は、摂餌量は20%強、体重は15〜20%抑制された。しかし、その場合でも体重はゆるやかながら増加を続けた。血漿中のグルコース、トリグリセリド濃度及びアディポネクチンレベルの測定結果は図17に示すが、SGとDHAの同時投与群ではそれぞれの単独投与群やコントロール群よりグルコース、トリグリセリド濃度ともに有意に低く、また、血中アディポネクチンレベルも同時投与群はコントロール群やSG単独群より有意に高く、さらにDHA単独群に比べてもより高くなる傾向にあったが、特に30日目の値はDHA群の値より有意に高かった。これらの結果はアディポネクチンの生産増強と血糖、血中脂質濃度の減少においてSGとDHAが相乗的に働くことを示す。
【表4】

【実施例13】
【0046】
DHAの代わりにエイコサペンタエン酸(EPA)濃縮油脂(EPA-45G、日本化学飼料株式会社製、含有全脂肪酸中のEPAの割合が45%)を用い、これとFAPA又は上記の生姜抽出物(SG)とを混合した飼料を用いて実施例11と同様の実験を行なった。飼料の組成を表5に、マウス(各群3匹)の体重と摂餌量のデータを表6に、給餌開始後30日目における血漿グルコース、トリグリセリド濃度、アディポネクチンレベルの測定結果を表7にまとめてある。
【表5】

【表6】

【表7】

【0047】
この実験結果においてはコントロール群に対する統計的な有意差は認められなかったが、SGとEPAの同時投与群で血糖が最も低くなり、またFAPAとEPAの同時投与群で血漿トリグリセリド濃度が最も低くなった。また、SG+EPA群がSG単独群よりも有意に高い(p<0.05)アディポネクチンレベルを示し、さらに統計的に有意ではなかったがEPA単独群よりも高いアディポネクチンレベルを示した。これらの結果から、EPAはアディポネクチン産生を増強し、またその血糖や血漿トリグリセリド濃度改善に対する効果はSGもしくはFAPAの共存において強化される傾向のあることがわかる。
【実施例14】
【0048】
上記の生姜抽出物(SG)とDHA濃縮油脂及びカフェインを混合した飼料を用いて実施例11と同様の実験を行なった。飼料の組成を表8に、マウス(各群3匹)の体重と摂餌量のデータを表9に、給餌開始後36日目における血漿グルコース、トリグリセリド濃度、アディポネクチンレベルの測定結果を表10にまとめてある。この表においてSG+DHA+カフェイン群のデータに付されたアステリスクのうち**1はコントロール群に対して有意に低い(p<0.01)ことを示し、*2はSG +DHA群に対して有意に低い(p<0.05)ことを示し、**3はカフェイン単独群に対して有意に低い(p<0.01)ことを示す。また、†1はコントロール群に対してアディポネクチンレベルが有意に高い(p<0.01)ことを示す。
【表8】

【表9】

【表10】

この結果から、生姜抽出物とDHAに更にカフェインを配合すると、前2者のみの場合よりも血糖、血中トリグリセリド濃度ともに一層低下することがわかる。
【0049】
[参考例1]
生姜抽出物(SG)とカフェインのみの組合せによる動物実験の結果を参考例として表11〜表13に示す。マウスの種類及び実験方法は、SGとカフェインの濃度を除き上記したところと同様である。表13においてSG+カフェイン群のデータに付されたアステリスクの**1、**2、**3はそれぞれコントロール群、SG単独群、カフェイン単独群の値より有意に(p<0.01)低いことを示し、†1、†2、†3はそれぞれコントロール群、SG単独群、カフェイン単独群に対してアディポネクチンレベルが有意に高い(p<0.01)ことを示す。これらの結果から、SGとカフェインの併用により、それぞれ単独での使用よりも、血中トリグリセリド濃度がより低下し、アディポネクチンレベルがより上昇することがわかる。
【表11】

【表12】

【表13】

【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】マウス3T3-L1前駆脂肪細胞にドコサヘキサエン酸(DHA)とβ-フェネチルフェルラミド(FAPA、化合物10)を単独または同時に添加して培養した時に培地中に分泌されたアディポネクチンの濃度(2つのウェルの平均と標準偏差)を示すグラフである。DHAとFAPAの濃度(μM)は図中に表示した。
【図2】マウス3T3-L1前駆脂肪細胞にDHAとフェルロイルチラミン(Fer-Tyr、化合物12)を単独または同時に添加して培養した時に培地中に分泌されたアディポネクチンの濃度(3つのウェルの平均と標準偏差)を示すグラフである。DHAとFer-Tyrの濃度(μM)は図中に表示した。
【図3】マウス3T3-L1前駆脂肪細胞に30μMのDHAと各種のフェノール性化合物(30μM、ただし化合物18は10μM、カプサイシンは100μM)をそれぞれ単独または同時に添加して培養した時に培地中に分泌されたアディポネクチンの濃度(3つのウェルの平均と標準偏差)を示すグラフである。化合物17、20、22、24、18、27、21、15はそれぞれN-(3-フェニルプロピル)-4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアミド、N-(β-フェネチル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロペナミド、N-(3-フェニル)-4-ヒドロキシベンザミド、N-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)メチル-3-フェニル-2-プロペンアミド、4-ヒドロキシ-3-メトキシ安息香酸3-フェニル-2-プロペニル、フェルラ酸2-(3-インドリル)エチル、3-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロペン酸3-フェニル-2-プロペニル、N-(β-フェネチル)カフェイン酸アミドである。なお、図中に表示したuMは濃度の単位でμMと同義である。
【図4】マウス3T3-L1前駆脂肪細胞に10μMのエイコサペンタエン酸(EPA)と各種のフェノール性化合物(濃度は図中に表示)をそれぞれ単独または同時に添加して培養した時に培地中に分泌されたアディポネクチンの濃度(3つのウェルの平均と標準偏差)を示すグラフである。化合物11、12、13、16はそれぞれフェルロイルトリプタミン、フェルロイルチラミン、β-フェネチルフェルレート、カフェイン酸フェネチルエステルである。
【図5】マウス3T3-L1前駆脂肪細胞に10μMのDHA又はエイコサペンタエン酸(EPA)と各種のフェノール性化合物(濃度は図中に表示、単位のuMはμMと同義)をそれぞれ単独または同時に添加して培養した時に培地中に分泌されたアディポネクチンの濃度(2つのウェルの平均と標準偏差)を示すグラフである。化合物12、28、29、34、19、30、31、32、33はそれぞれフェルロイルチラミン、N-(3,4-ジヒドロキシフェニル)メチル-3-フェニル-2-プロペンアミド、N-(3-フェニルプロピル)-3,4-ジヒドロキシベンズアミド、N-[2-(3-インドリル)エチル]カフェイン酸アミド、N-(3-フェニルプロピル)-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)アセタミド、N-ベンジルフェルラミド、N-(3-フェニルプロピル)フェルラミド、N-(4-フェニルブチル)-4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアミド、N-[2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)エチル]-3-フェニル-2-プロペンアミドである。
【図6】マウス3T3-L1前駆脂肪細胞に30μMの化合物10(FAPA)と0.1μMのピオグリタゾン又は不飽和脂肪酸もしくはそのトリグリセリドやエチルエステル(濃度は図中に表示、単位のuMはμMと同義)をそれぞれ単独または同時に添加して培養した時に培地中に分泌されたアディポネクチンの濃度(2つのウェルの平均と標準偏差)を示すグラフである。不飽和脂肪酸の略号の意味は次のとおりである。n3DPA、(n-3)ドコサペンタエン酸 (7Z,10Z,13Z,16Z,19Z-docosapentaenoic acid);18:1、オレイン酸;18:2、リノール酸;18:3、α-リノレン酸;CLA1、共役リノレン酸(9Z,11E-octadecadienoic acid);DHAee、DHAのエチルエステル;n3DPAee、(n-3)ドコサペンタエン酸のエチルエステル。
【図7】ヒト前駆脂肪細胞にDHA、EPA、又はアラキドン酸と各種のフェノール性化合物(濃度は図中に表示)をそれぞれ単独または同時に添加して培養した時に培地中に分泌されたアディポネクチンの濃度(2つのウェルの平均と標準偏差)を示すグラフである。比較のためにピオグリタゾン(PGZ)を用いた実験結果も表示した。化合物10〜13の説明は前記したところと同様である。
【図8】(a)はヒト前駆脂肪細胞に化合物10(FAPA)、DHA、カフェインのいずれか1つ、又は2つ、もしくは3つを添加、培養した時に培地中に分泌されたアディポネクチンの濃度(2つのウェルの平均と標準偏差)を示すグラフである。各化合物の濃度は図中に記載してあるが、単位のuMはμMと同義である。(b)は化合物12(Fer-Tyr)を用いて(a)と同様の実験を行ない、アディポネクチン濃度を測定した結果を示すグラフである。
【図9】マウス3T3-L1前駆脂肪細胞に10μMのFAPA又は100 μMのFer-Tyrを炭素数8〜15の不飽和脂肪酸(名称及び濃度は図中に表示、単位のuMはμMと同義)と別々または同時に添加して培養した時に培地中に分泌されたアディポネクチンの濃度(2つのウェルの平均と標準偏差)を示すグラフである。比較のためにピオグリタゾン(PGZ、0.1μM)を用いた実験結果も示した。
【図10】マウス3T3-L1前駆脂肪細胞に30μMのフェルロイルトリプタミン(Fer-Trp)、β−フェネチルフェルレート(FAPE)、又は[6]-ジンゲロールを不飽和脂肪酸(名称及び濃度は図中に表示、単位のuMはμMと同義)と別々または同時に添加して培養した時に培地中に分泌されたアディポネクチンの濃度(2つのウェルの平均と標準偏差)を示すグラフである。
【図11】ヒト前駆脂肪細胞に30μMのFAPAを100 μMのゲラン酸又はファルネソイック酸と別々または同時に添加して培養した時に培地中に分泌されたアディポネクチンの濃度(2つのウェルの平均と標準偏差)を示すグラフである。
【図12】A:マウス3T3-L1前駆脂肪細胞に10μMのジンゲロール又は10μMのクルクミンを単独で、もしくは10μMのドコサヘキサエン酸(DHA)と同時に添加して培養した時に培地中に分泌されたアディポネクチンの濃度(2つのウェルの平均と標準偏差)を示すグラフである。B:ヒト前駆脂肪細胞に10μMのジンゲロール又は10μMのクルクミンを単独で、もしくは100μMのドコサヘキサエン酸(DHA)又はエイコサペンタエン酸(EPA)と同時に添加して培養した時に培地中に分泌されたアディポネクチンの濃度(2つのウェルの平均と標準偏差)を示すグラフである。なお、PUFAなしとはDHAもEPAも添加されていないことを意味する。
【図13】マウス3T3-L1前駆脂肪細胞に10μMのキサントアンゲロール(Xang)、10μMのキサントフモール(Xhum)、又は30μMの4'-ヒドロキシカルコン(4’-OH-C.)を単独で、もしくは10又は30μMのドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)又は0.1μMのピオグリタゾンと同時に添加して培養した時に培地中に分泌されたアディポネクチンの濃度(2つのウェルの平均と標準偏差)を示すグラフである。図中の横軸の数字は濃度(μM)。
【図14】マウス3T3-L1前駆脂肪細胞に10μMのリコカルコンA(LicoA)、10又は30μMのイソリキリチゲニン(Isoliq)を単独で、もしくは10μMのドコサヘキサエン酸(DHA)と同時に添加して培養した時に培地中に分泌されたアディポネクチンの濃度(2つのウェルの平均と標準偏差)を示すグラフである。図中の横軸の数字は濃度(μM)。
【図15】ヒト前駆脂肪細胞に30μMの4’-ヒドロキシカルコン(4’-OH-Chal.)を10μMのドコサヘキサエン酸又は0.1μM のピオグリタゾンと別々または同時に添加して培養した時に培地中に分泌されたアディポネクチンの濃度(2つのウェルの平均と標準偏差)を示すグラフである。
【図16】0.3%FAPA及び/又は4%DHA濃縮油脂を添加した飼料で飼育したKK-Ay/TaJc1マウスの血漿中のグルコース濃度(A)、トリグリセリド濃度(B)、及び血中アディポネクチンレベルの相対値(C)。採血日は給餌開始17、24、31、37日目であり、平均値がそれぞれ、白、斜線、二重斜線、黒の棒で示されている。エラーバーは標準偏差 (AとBではn=12、Cではn=8〜12)。Cではコントロール群の示す値の平均値を1とした。表中の*印はコントロール群の対応する値に比べて有意に低い(A,B)または有意に高い(C)ことを示す(p<0.05)。また、FAPA+DHA群の棒についた†印はDHA単独群の対応する値より有意に低い(B)か有意に高い(C)ことを示す(p<0.05)。
【図17】0.5%生姜抽出物(SG)及び/又は3%DHA濃縮油脂を添加した飼料で飼育したKK-Ay/TaJc1マウスの血漿中のグルコース濃度(A)、トリグリセリド濃度(B)、及び血中アディポネクチンレベルの相対値(C)。採血日は給餌開始16、23、30、35日目であり、平均値がそれぞれ、白、斜線、二重斜線、黒の棒で示されている。エラーバーは標準偏差 (AとBではn=9、Cではn=8〜12)。Cではコントロール群の示す値の平均値を1とした。表中の*印はコントロールに比べて有意に低い(A,B)または有意に高い(C)ことを表す(p<0.05)。SG+DHA群の値に付された‡印はSG単独群とDHA単独群の対応するいずれの値よりも有意に小さいことを示す(p<0.05)。(C)のSG+DHA群の30日目の値に付された†印はDHA単独群の対応する値より有意に大きいことを示す(p<0.05)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるフェノール性化合物、及び炭素数8〜22の不飽和脂肪酸若しくはそのグリセリド又は低級アルキルエステルを活性成分として含むことを特徴とする、動物脂肪細胞におけるアディポネクチン産生を増強もしくは促進する薬剤。
【化1】

(ただし、式1中においてR1、R2、R3、Rは水素原子(H)、水酸基、アルコキシ基、又は炭素数1〜20のアルキル基もしくはアルケニル基を表し、Xは単結合又は炭素数1〜6の2価脂肪族炭化水素基を表し、Yはアミド基(-CO-NH‐もしくは‐NH-CO-)、エステル基(−CO-O-もしくは-O-CO-)、又はカルボニル基(-CO-)を表し、Zは、水酸基、アルコキシ基、オキソ基、カルボキシル基又はアミノ基により置換されているかあるいは非置換の炭素数1〜20の2価脂肪族炭化水素基を表し、Qは水素原子(H)、若しくは水酸基、オキソ基、アルコキシ基、アミノ基、又は炭素数1〜10のアルキル基もしくはアルケニル基により置換されているかあるいは非置換の芳香族炭化水素基又は複素環基を表す。)
【請求項2】
グリセリドが、炭素数8〜22の不飽和脂肪酸の少なくとも1つがグリセロールと結合してなるエステルであることを特徴とする、請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
低級アルキルエステルが、炭素数8〜22の不飽和脂肪酸のエチル、メチル、プロピル、もしくはブチルエステルであることを特徴とする、請求項1に記載の薬剤。
【請求項4】
炭素数8〜22の不飽和脂肪酸が4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z-ドコサヘキサエン酸、4Z,7Z,10Z,13Z,16Z-ドコサペンタエン酸、7Z,10Z,13Z,16Z,19Z-ドコサペンタエン酸、5Z,8Z,11Z,14Z,17Z-エイコサペンタエン酸、アラキドン酸、6Z,9Z,12Z,15Z-オクタデカテトラエン酸、α-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸、ミリストオレイン酸(シス-9-テトラデセン酸)、2-ドデセン酸、2-デセン酸、3-デセン酸、2-オクテン酸、ゲラン酸(トランス-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン酸)、シトロネル酸(トランス-3,7-ジメチル-6-オクテン酸)又はファルネソイック酸[ (2E,6E,10E)-3,7,11-トリメチル-2,6,10-ドデカトリエン酸]のいずれか1つ又は2つ以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の薬剤。
【請求項5】
さらに、カフェイン、テオフィリン、又はテオブロミンの中から選ばれる1又は2以上のキサンチン誘導体を含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の薬剤。
【請求項6】
一般式(1)で示されるフェノール性化合物が下記一般式(2)で示されるフェルラ酸又はカフェイン酸の誘導体であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の薬剤。
【化2】

(ただし、式2においてR1は水酸基またはメトキシ基であり、Y1はイミノ基(NH)または酸素原子(O)であり、Zは炭素数1〜10の2価脂肪族炭化水素基であり、Qは水素原子(H)、若しくは水酸基又はアミノ基により置換されていてもよい、芳香族炭化水素基又は複素環基を表す。)
【請求項7】
一般式(1)で示されるフェノール性化合物が下記一般式(3)で示されるバニリン酸又はプロトカテク酸の誘導体であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の薬剤。
【化3】

(ただし、式3においてR1は水酸基またはメトキシ基であり、Y1はイミノ基(NH)または酸素原子(O)であり、Zは炭素数1〜10の2価脂肪族炭化水素基であり、Qは水素原子(H)、若しくは水酸基又はアミノ基で置換されていてもよい、芳香族炭化水素基又は複素環基を表す。)
【請求項8】
一般式(1)で示されるフェノール性化合物が下記一般式(4)で示されるホモバニリン酸の誘導体であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の薬剤。
【化4】

(ただし、式4においてY1はイミノ基(NH)または酸素原子(O)であり、Zは炭素数1〜10の2価脂肪族炭化水素基であり、Qは水素原子(H)、若しくは水酸基又はアミノ基により置換されていてもよい、芳香族炭化水素基または複素環基を表す。)
【請求項9】
一般式(1)で示されるフェノール性化合物が下記一般式(5)で示されるp−クマル酸の誘導体であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の薬剤。
【化5】

(ただし、式5においてY1はイミノ基(NH)または酸素原子(O)であり、Zは炭素数1〜10の2価脂肪族炭化水素基であり、Qは水素原子(H)、若しくは水酸基又はアミノ基により置換されていてもよい、芳香族炭化水素基又は複素環基を表す。)
【請求項10】
一般式(1)で示されるフェノール性化合物が下記一般式(6)で示されるp−ヒドロキシ安息香酸の誘導体であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の薬剤。
【化6】

(ただし、式6においてY1はイミノ基(NH)または酸素原子(O)であり、Zは炭素数1〜10の2価脂肪族炭化水素基であり、Qは水素原子(H)、若しくは水酸基又はアミノ基により置換されていてもよい、芳香族炭化水素基又は複素環基を表す。)
【請求項11】
一般式(1)で示されるフェノール性化合物が下記一般式(7)で示されるバニリルアミン誘導体であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の薬剤。
【化7】

(ただし、式7においてR1は水酸基又はメトキシ基であり、Y1は炭素数1〜6の2価脂肪族炭化水素基であり、Zは炭素数1〜20の2価脂肪族炭化水素基であり、Qは水素原子(H)、若しくは水酸基又はアミノ基により置換されていてもよい、芳香族炭化水素基又は複素環基を表す。)
【請求項12】
一般式(1)で示されるフェノール性化合物が下記一般式(8)で示されるジンゲロールもしくはその類縁体であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の薬剤。
【化8】

(ただし、式8において、Zは炭素数1〜11の2価脂肪族炭化水素基であり、Qは水素原子(H)、若しくは水酸基又はアミノ基により置換されていてもよい、芳香族炭化水素基又は複素環基を表す。)
【請求項13】
一般式(1)で示されるフェノール性化合物がさらに下記一般式(9)で示されるクルクミンもしくはその誘導体であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の薬剤。
【化9】

(ただし、式9においてR1とR2は水素原子又はメトキシ基を表す。)
【請求項14】
一般式(2)で表される化合物が、N-(β-フェネチル)フェルラミド、フェルロイルトリプタミン、フェルロイルチラミン、β-フェネチルフェルレート、フェルラ酸3-フェニル-2-プロペニル、N-(β-フェネチル)カフェイン酸アミド、カフェイン酸フェネチルエステル、フェルラ酸2-(3-インドリル)エチル、N-ベンジルフェルラミド、及びN-(3-フェニルプロピル)フェルラミドから選ばれたものであることを特徴とする、請求項6に記載の薬剤。
【請求項15】
一般式(3)で表される化合物が、N-(3-フェニルプロピル)-4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアミド、4-ヒドロキシ-3-メトキシ安息香酸3-フェニル-2-プロペニル、N-(3-フェニルプロピル)-3,4-ジヒドロキシベンズアミド、N-(4-フェニルブチル)-4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアミドから選ばれたものであることを特徴とする、請求項7に記載の薬剤
【請求項16】
一般式(4)で表される化合物がN-(3-フェニルプロピル)-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)アセトアミドであることを特徴とする、請求項8に記載の薬剤
【請求項17】
一般式(5)で表される化合物が、N-(β-フェネチル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロペンアミド又は3-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロペン酸3-フェニル-2-プロペニルであることを特徴とする、請求項9に記載の薬剤
【請求項18】
一般式(6)で表される化合物がN-(3-フェニルプロピル)-4-ヒドロキシベンズアミドであることを特徴とする、請求項10に記載の薬剤
【請求項19】
一般式(7)で表される化合物が、カプサイシン、N-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)メチル-3-フェニル-2-プロペンアミド、N-(3,4-ジヒドロキシフェニル)メチル-3-フェニル-2-プロペンアミド、N-[2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)エチル]-3-フェニル-2-プロペンアミドから選ばれた化合物であることを特徴とする、請求項11に記載の薬剤
【請求項20】
一般式(8)で表される化合物が[6]−ジンゲロールであることを特徴とする、請求項12に記載の薬剤
【請求項21】
一般式(9)で表される化合物がクルクミンであることを特徴とする、請求項13に記載の薬剤
【請求項22】
炭素数8〜22の不飽和脂肪酸又はそのグリセリドもしくは低級アルキルエステルを活性成分として含むことを特徴とする、動物脂肪細胞におけるアディポネクチン産生を増強もしくは促進する薬剤。
【請求項23】
グリセリドが、炭素数8〜22の不飽和脂肪酸の少なくとも1つがグリセロールと結合してなるエステルであることを特徴とする、請求項22に記載の薬剤。
【請求項24】
低級アルキルエステルが、炭素数8〜22の不飽和脂肪酸のエチル、メチル、プロピル、もしくはブチルエステルであることを特徴とする、請求項22に記載の薬剤。
【請求項25】
炭素数8〜22の不飽和脂肪酸が4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z-ドコサヘキサエン酸、4Z,7Z,10Z,13Z,16Z-ドコサペンタエン酸、7Z,10Z,13Z,16Z,19Z-ドコサペンタエン酸、5Z,8Z,11Z,14Z,17Z-エイコサペンタエン酸、アラキドン酸、6Z,9Z,12Z,15Z-オクタデカテトラエン酸、α-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸、ミリストオレイン酸(シス-9-テトラデセン酸)、2-ドデセン酸、2-デセン酸、3-デセン酸、2-オクテン酸、ゲラン酸(トランス-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン酸)、シトロネル酸(トランス-3,7-ジメチル-6-オクテン酸)又はファルネソイック酸[ (2E,6E,10E)-3,7,11-トリメチル-2,6,10-ドデカトリエン酸]のいずれか1つ又は2つ以上であることを特徴とする、請求項22〜24のいずれかに記載の薬剤。
【請求項26】
一般式(1)で表されるフェノール性化合物が、下記一般式(1b)で示される4’−ヒドロキシカルコン誘導体であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の薬剤。
【化10】

(ただし、式1b中においてR1、R2、R3、R4、R、R6、R7、R8、R9 は水素原子(H)、水酸基、アルコキシ基又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、このアルキル基は分岐と不飽和結合を含んでいてもよい。)
【請求項27】
一般式(1b)で表される化合物が、4’−ヒドロキシカルコン、イソリキリチゲニン、リコカルコンA、キサントフモール、及びキサントアンゲロールから選ばれたものであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の薬剤。
【請求項28】
一般式(1b)で示されるカルコン誘導体を活性成分として含むことを特徴とする、動物脂肪細胞におけるアディポネクチン産生を増強もしくは促進する薬剤。
【請求項29】
さらに、カフェイン、テオフィリン、又はテオブロミンの中から選ばれる1又は2以上のキサンチン誘導体を含有することを特徴とする、請求項28に記載の薬剤。
【請求項30】
一般式(1b)で表される化合物が、4’−ヒドロキシカルコン、イソリキリチゲニン、リコカルコンA、キサントフモール、及びキサントアンゲロールから選ばれたものであることを特徴とする、請求項28又は29に記載の薬剤。
【請求項31】
請求項1に記載の一般式(1)で示されるフェノール性化合物、及び炭素数8〜22の不飽和脂肪酸若しくはそのグリセリド又は低級アルキルエステルを活性成分として含有することを特徴とする、2型糖尿病血糖降下剤
【請求項32】
請求項1に記載の一般式(1)で示されるフェノール性化合物、及び炭素数8〜22の不飽和脂肪酸若しくはそのグリセリド又は低級アルキルエステルを活性成分として含有することを特徴とする、高脂血症治療剤
【請求項33】
一般式(1)で示される化合物が一般式(2)で示されるフェルラ酸又はカフェイン酸の誘導体、もしくは一般式(8)で示される[6]−ジンゲロール又はその類縁体であることを特徴とする請求項31に記載の薬剤。
【請求項34】
一般式(1)で示される化合物が一般式(2)で示されるフェルラ酸又はカフェイン酸の誘導体、もしくは一般式(8)で示される[6]−ジンゲロール又はその類縁体であることを特徴とする請求項32に記載の薬剤。
【請求項35】
炭素数8〜22の不飽和脂肪酸が4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z-ドコサヘキサエン酸、4Z,7Z,10Z,13Z,16Z-ドコサペンタエン酸、7Z,10Z,13Z,16Z,19Z-ドコサペンタエン酸、5Z,8Z,11Z,14Z,17Z-エイコサペンタエン酸、アラキドン酸、6Z,9Z,12Z,15Z-オクタデカテトラエン酸、α-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸、ミリストオレイン酸(シス-9-テトラデセン酸)、2-ドデセン酸、2-デセン酸、3-デセン酸、2-オクテン酸、ゲラン酸(トランス-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン酸)、シトロネル酸(トランス-3,7-ジメチル-6-オクテン酸)又はファルネソイック酸[ (2E,6E,10E)-3,7,11-トリメチル-2,6,10-ドデカトリエン酸]のいずれか1つ又は2つ以上であることを特徴とする、請求項31〜34のいずれかに記載の薬剤。
【請求項36】
さらに、カフェイン、テオフィリン、又はテオブロミンの中から選ばれる1又は2以上のキサンチン誘導体を含有することを特徴とする、請求項31〜35のいずれかに記載の薬剤。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−262050(P2007−262050A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337119(P2006−337119)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】