説明

アデノシンA2A受容体アゴニストを有効成分として含有する緑内障治療剤

【課題】緑内障治療剤の提供。
【解決手段】アデノシンA2A受容体アゴニストである、GW−328267、UK−432097、若しくは、一般式(1)で表される化合物又はその塩は、眼圧下降試験において、いずれも効果を発揮したことから緑内障若しくは高眼圧症の予防又は治療剤として有用である。一般式(1)のWは水素原子又は下記一般式(8)を示し、;環Aはベンゼン環、ピリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、シクロヘキサン環等を示し、;Xは単結合、O−CH−CH、NH−NH=CH、NH−CH−CH、CO−NH−CH等を示し、;YはCH又はNを示し、;ZはCH又はOを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アデノシンA2A受容体アゴニストを有効成分として含有する緑内障若しくは高眼圧症の予防又は治療剤であって、該アゴニストがGW−328267、UK−432097、及び、下記一般式(1)で表される化合物又はその塩からなる群より選択される少なくとも1種である、予防又は治療剤に関する。
【化1】

【0002】
[式中、
Wは水素原子又は
【化2】

【0003】
を示し、;
環Aはベンゼン環、ピリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環又はシクロヘキサン環を示し、
Xは単結合、O−CH−CH、NH−NH=CH、NH−CH−CH、CO−NH−CH又はC≡C−CHを示し、;
YはCH又はNを示し、;
ZはCH又はOを示し、;
は水素原子、水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基又はアルキルアミノカルボニル基を示し、;
は水素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノ基、アルキルアミノカルボニル基、シクロアルキルアミノカルボニル基又は芳香族複素環基を示し、;
は水素原子又はアルキル基を示し、;
がアルキル基の場合、該アルキル基はアリール基及びハロゲン原子を置換基として有してもよい芳香族複素環基から選択される1又は複数の置換基を有してもよい。]
【背景技術】
【0004】
緑内障は、種々の要因により眼圧が上昇し、失明に至る危険性のある難治性の眼疾患であり、年齢とともに罹患率が上昇し、視神経障害の進行も早くなることが知られている。
【0005】
一方、アデノシン受容体には少なくとも4種類のサブタイプ(A、A2A、A2B及びA)が存在し、クローニングによりいずれも7回膜貫通型の一次構造を持ち、GTP結合タンパク質と共役した受容体であることが知られている(非特許文献1)。また、アデノシンA及びA受容体はキサンチン類(プリンジオン類)によって拮抗され、一方、アデノシンA受容体は拮抗されないことが知られている。
【0006】
アデノシンA受容体は哺乳動物の大脳皮質、小脳、海馬の脳全体や精巣などの末梢組織に広く分布しており、この受容体が刺激されると、アデニル酸シクラーゼの不活性化(cAMP生成減少)やホスホリパーゼCさらにホスホリパーゼDが活性化される。その結果、アデノシンA受容体アゴニストは心筋収縮力の抑制や心拍数の減少、Kチャネルの活性化やCa2+チャネルの不活性化などによる神経終末からの伝達物質の遊離抑制などの薬理作用を引き起こす。また、アデノシンA受容体は精巣にもっとも強い局在を示し、脳、肺、脾臓、肝臓などにうすく広く分布しており、アデノシンA受容体が刺激されると、アデニル酸シクラーゼ活性の抑制やホスホリパーゼCさらにホスホリパーゼDの活性を介してイノシトール三リン酸やプロテインキナーゼC活性の増加などを引き起こす。アデノシンA受容体の性質は、アデノシンA受容体のそれより、アデノシンA受容体のそれに近似していると考えられている。
【0007】
アデノシンA受容体は、アデノシンA受容体とは異なり、受容体刺激によりアデニル酸シクラーゼ活性の促進作用を引き起こす。また、アデノシンA受容体は、該促進作用を引き起こすアデノシンの親和性の違いから、高親和性(10−7Mより有効)の方をA2A受容体、低親和性(10−5Mより有効)の方をA2B受容体とさらに細分類されている。アデノシンA2A受容体は、線条体や嗅結節に強い局在がみられ、その他は大脳皮質、海馬をはじめ、冠血管、肺、肝臓、血小板など広くうすく分布している。この受容体が刺激されると、アデニル酸シクラーゼの活性が増大する。その生理作用としては、冠血管や脳血管などの拡張作用や内臓平滑筋の弛緩作用などが現れる。一方、アデノシンA2B受容体は、大腸、結腸さらに膀胱などにある程度明らかな局在が見られるが、それ以外のほとんどすべての組織にも、わずかながら広く分布している。基本的な性質はアデノシンA2A受容体と類似しているが、その作用発現には、アデノシンA2A受容体の場合に比べ、200倍以上の高濃度のアゴニストを必要とする。言いかえれば、低親和性であることを特徴とし、アデノシンA2B受容体のみに特異的なアゴニスト及びアンタゴニストは存在しない。
【0008】
アデノシン受容体アゴニストの眼組織への薬理作用に関する報告として、非特許文献2で、アデノシン受容体アゴニストの眼圧への影響を検討しており、CPA(アデノシンA受容体アゴニスト)、NECA(非選択的アデノシン受容体アゴニスト)、及び、CV−1808(アデノシンA2A受容体アゴニスト)をウサギに局所投与した後の眼圧変化を調べている。その結果として、CPA及びNECAは眼圧下降作用を示し、CV−1808は眼圧上昇作用を示したこと、かつ、NECAだけが初期眼圧上昇を示したことが報告されている。また、非特許文献3では、アデノシンA受容体アンタゴニストであるDMPXを前処理することで、CV−1808による眼圧上昇を抑制できたことが記載されている。さらに、ウサギやネコを用いた試験で、アデノシン受容体アゴニストが急性の眼圧上昇を引き起こすことが認められ、この眼圧上昇は眼のアデノシンA受容体の活性化が関連していると考察している。
【0009】
一方で、アデノシンA2A受容体アゴニストにより眼圧下降が認められたとする報告があり、非特許文献4では、アデノシンA2A受容体アゴニストであるCGS−21680が眼圧下降作用を示したことが報告されている。また、特許文献1には、アデノシンA2A受容体アゴニストとしてアデノシン誘導体が開示され、これらが緑内障又は高眼圧症に対して有用な薬理作用を有することが報告されているが、その一方で、アデノシン受容体親和性と眼圧下降作用の強度において有意な関係が認められなかったことも報告されている。このように、アデノシンA2A受容体は眼圧に対して何らかの作用を有していることは示唆されているものの、具体的な作用機序は未だ明らかにされていない。
【0010】
ここで、特許文献2及び非特許文献5には、一般式(1)に表される化合物である2−[4−(メチルアミノカルボニル)−1H−ピラゾール−1−イル]−アデノシン、又は、2−[2−(4−クロロフェニル)エトキシ]−アデノシンがアデノシンA2A受容体アゴニストとして開示され、該化合物が抗炎症剤、冠動脈血管拡張剤、神経保護剤等として有用であることが示唆されている。また、特許文献3には、一般式(1)に表される化合物である2−{2−[(シクロヘキシル)メチレン]ヒドラジノ}−アデノシンがアデノシンA受容体アゴニストとして開示され、該化合物が高血圧症、アテローム性動脈硬化症等の治療に有用であることが示唆されている。
【0011】
特許文献4〜5には、一般式(1)に表される化合物である6−(2,2−ジフェニルエチル)アミノ−9−[(2R,3R,4S,5S)−(5−エチルカルバモイル−3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン−2−イル)]−N−(ピリジン−2−イルメチル)−9H−プリン−2−カルボキサミド、又は、(2R,3R,4S,5R)−2−{6−(2,2−ジフェニルエチルアミノ)−2−[2−(1−メチル−1H−イミダゾール−4−イル)−エチルアミノ]−プリン−9−イル}−5−(4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)テトラハイドロフラン−3,4−ジオールがアデノシンA2A受容体アゴニストとして開示され、該化合物が抗炎症作用を有し、成人性呼吸窮迫症候群(ARDS)、気管支炎等に有用であることが示唆されている。また、特許文献6には、一般式(1)に表される化合物である(1S,2R,3S,4R)−4−{7−[1−(3−クロロチオフェン−2−イルメチル)−プロピルアミノ]−3H−イミダゾール[4,5−b]ピリジン−3−イル}−N−エチル−2,3−ジヒドロキシ−シクロペンタンカルボキサミドがアデノシン受容体アゴニストとして開示され、該化合物が血圧降下剤、心臓保護剤等として有用であることが示唆されている。
【0012】
しかしながら、アデノシンA2A受容体アゴニストである、GW−328267、UK−432097、又は、一般式(1)に表される化合物について、緑内障又は高眼圧症に対する薬理作用を検討した報告はなく、これらのアデノシンA2A受容体アゴニストが眼圧下降作用を有するかについて全く示唆されていない。また、どのような構造を有するアデノシンA2A受容体アゴニストが眼圧下降作用を有するかについても全く示唆されていない。
【特許文献1】国際公開00/12098号パンフレット
【特許文献2】特表2003−506461号公報
【特許文献3】特許第3395912号公報
【特許文献4】特表2004−508284号公報
【特許文献5】特表2002−518510号公報
【特許文献6】特表平09−512020号公報
【非特許文献1】細胞膜の受容体−基礎知識から最新の情報まで−, 153-158(1998)
【非特許文献2】J. Ocul. Pharmacol. 10(1), 379-383(1994)
【非特許文献3】Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 37, 1833-1839(1996)
【非特許文献4】J. Pharmacol. Exp. Ther. 273(1), 320-326(1995)
【非特許文献5】J. Med. Chem., 34, 1340-41(1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、アデノシンA2A受容体アゴニストである、GW−328267、UK−432097、及び、下記一般式(1)で表される化合物に関して、新たな医薬用途を探索することは興味深い課題である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、アデノシンA2A受容体アゴニストである、GW−328267、UK−432097、及び、一般式(1)に表される化合物の新たな医薬用途を探索すべく鋭意研究を行ったところ、これらのアゴニストが、眼圧下降試験において優れた眼圧下降効果を発揮することを見出し、本発明に至った。
【0015】
すなわち、本発明は、アデノシンA2A受容体アゴニストである、GW−328267、UK−432097、及び、一般式(1)に表される化合物又はその塩(以下、これらを総称して「本化合物」ともいう)からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する緑内障若しくは高眼圧症の予防又は治療剤である。
【化3】

【0016】
[式中、
Wは水素原子又は
【化4】

【0017】
を示し、;
環Aはベンゼン環、ピリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環又はシクロヘキサン環を示し、
Xは単結合、O−CH−CH、NH−NH=CH、NH−CH−CH、CO−NH−CH又はC≡C−CHを示し、;
YはCH又はNを示し、;
ZはCH又はOを示し、;
は水素原子、水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基又はアルキルアミノカルボニル基を示し、;
は水素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノ基、アルキルアミノカルボニル基、シクロアルキルアミノカルボニル基又は芳香族複素環基を示し、;
は水素原子又はアルキル基を示し、;
がアルキル基の場合、該アルキル基はアリール基及びハロゲン原子を置換基として有してもよい芳香族複素環基から選択される1又は複数の置換基を有してもよい。]
【化5】

【0018】
[式中、
Wは水素原子又は
【化6】

【0019】
を示し、;
環Aはベンゼン環、ピリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環又はシクロヘキサン環を示し、
Xは単結合、O−CH−CH、NH−NH=CH、NH−CH−CH、CO−NH−CH又はC≡C−CHを示し、;
YはCH又はNを示し、;
ZはCH又はOを示し、;
は水素原子、水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基又はアルキルアミノカルボニル基を示し、;
は水素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノ基、アルキルアミノカルボニル基、シクロアルキルアミノカルボニル基又は芳香族複素環基を示し、;
は水素原子又はアルキル基を示し、;
がアルキル基の場合、該アルキル基はアリール基及びハロゲン原子を置換基として有してもよい芳香族複素環基から選択される1又は複数の置換基を有してもよい。]
また、本発明の他の態様は、緑内障若しくは高眼圧症を予防又は治療するためのアデノシンA2A受容体アゴニストであって、該アゴニストがGW−328267、UK−432097、及び、下記一般式(1)で表される化合物又はその塩からなる群より選択される少なくとも1種である、アデノシンA2A受容体アゴニストである。
【化7】

【0020】
[式中、
Wは水素原子又は
【化8】

【0021】
を示し、;
環Aはベンゼン環、ピリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環又はシクロヘキサン環を示し、
Xは単結合、O−CH−CH、NH−NH=CH、NH−CH−CH、CO−NH−CH又はC≡C−CHを示し、;
YはCH又はNを示し、;
ZはCH又はOを示し、;
は水素原子、水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基又はアルキルアミノカルボニル基を示し、;
は水素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノ基、アルキルアミノカルボニル基、シクロアルキルアミノカルボニル基又は芳香族複素環基を示し、;
は水素原子又はアルキル基を示し、;
がアルキル基の場合、該アルキル基はアリール基及びハロゲン原子を置換基として有してもよい芳香族複素環基から選択される1又は複数の置換基を有してもよい。]
また、本発明の他の態様は、緑内障若しくは高眼圧症の予防又は治療剤を製造するための、アデノシンA2A受容体アゴニストの使用であって、該アゴニストがGW−328267、UK−432097、及び、下記一般式(1)で表される化合物又はその塩からなる群より選択される少なくとも1種である、使用である。
【化9】

【0022】
[式中、
Wは水素原子又は
【化10】

【0023】
を示し、;
環Aはベンゼン環、ピリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環又はシクロヘキサン環を示し、
Xは単結合、O−CH−CH、NH−NH=CH、NH−CH−CH、CO−NH−CH又はC≡C−CHを示し、;
YはCH又はNを示し、;
ZはCH又はOを示し、;
は水素原子、水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基又はアルキルアミノカルボニル基を示し、;
は水素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノ基、アルキルアミノカルボニル基、シクロアルキルアミノカルボニル基又は芳香族複素環基を示し、;
は水素原子又はアルキル基を示し、;
がアルキル基の場合、該アルキル基はアリール基及びハロゲン原子を置換基として有してもよい芳香族複素環基から選択される1又は複数の置換基を有してもよい。]
特許請求の範囲及び明細書中で使用される各基は、特許請求の範囲及び明細書全体を通して下記の意味を有するものとする。
【0024】
『ハロゲン原子』とはフッ素、塩素、臭素又はヨウ素を示す。
【0025】
『アルキル』とは炭素原子数1〜6個の、直鎖又は分枝のアルキルを示す。具体例としてメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル等が挙げられる。
【0026】
『シクロアルキル』とは炭素原子数3〜8個のシクロアルキルを示す。具体例としてシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルが挙げられる。
【0027】
『アルコキシ』とは炭素原子数1〜6個の、直鎖又は分枝のアルコキシを示す。具体例としてメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキシルオキシ、イオプロポキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、イソペンチルオキシ等が挙げられる。
【0028】
『アルキルカルボニル』とは炭素原子数2〜7個の、直鎖又は分枝のアルキルカルボニルを示す。具体例としてメチルカルボニル、エチルカルボニル、n−プロピルカルボニル、n−ブチルカルボニル、n−ペンチルカルボニル、n−ヘキシルカルボニル、イソプロピルカルボニル、イソブチルカルボニル、sec−ブチルカルボニル、tert−ブチルカルボニル、イソペンチルカルボニル等が挙げられる。
【0029】
『アルキルオキシカルボニル』とは炭素原子数2〜7個の、直鎖又は分枝のアルキルオキシカルボニルを示す。具体例としてメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、n−ペントキシカルボニル、n−ヘキシルオキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、イソペントキシカルボニル等が挙げられる。
【0030】
『アルキルアミノ』とは炭素原子数1〜6個のモノアルキルアミノ又は炭素原子数2〜12個のジアルキルアミノを示す。モノアルキルアミノの具体例としてメチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ブチルアミノ、ヘキシルアミノ等が、ジアルキルアミノの具体例としてジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジヘキシルアミノ、エチルメチルアミノ等が挙げられる。
【0031】
『アルキルアミノカルボニル』とは炭素原子数2〜7個のモノアルキルアミノカルボニル又は炭素原子数3〜13個のジアルキルアミノカルボニルを示す。モノアルキルアミノカルボニルの具体例としてメチルアミノカルボニル、エチルアミノカルボニル、プロピルアミノカルボニル、ブチルアミノカルボニル、ヘキシルアミノカルボニル等が、ジアルキルアミノカルボニルの具体例としてジメチルアミノカルボニル、ジエチルアミノカルボニル、ジプロピルアミノカルボニル、ジブチルアミノカルボニル、ジヘキシルアミノカルボニル、エチルメチルアミノカルボニル等が挙げられる。
【0032】
『シクロアルキルアミノカルボニル』とは炭素原子数4〜9個のモノシクロアルキルアミノカルボニル又は炭素原子数7〜17個のジシクロアルキルアミノカルボニルを示す。モノシクロアルキルアミノカルボニルの具体例としてシクロメチルアミノカルボニル、シクロエチルアミノカルボニル、シクロプロピルアミノカルボニル、シクロブチルアミノカルボニル、シクロヘキシルアミノカルボニル等が、ジシクロアルキルアミノカルボニルの具体例としてジシクロメチルアミノカルボニル、ジシクロエチルアミノカルボニル、ジシクロプロピルアミノカルボニル、ジシクロブチルアミノカルボニル、ジシクロヘキシルアミノカルボニル等が挙げられる。
【0033】
『アリール』とは炭素原子数6〜14個の、単環式芳香族炭化水素又は2環式若しくは3環式の縮合多環式芳香族炭化水素を示す。また、それら単環式芳香族炭化水素又は2環式若しくは3環式の縮合多環式芳香族炭化水素とシクロアルカン環の縮合により形成される縮合多環式炭化水素も本願発明の『アリール』に含まれる。単環式芳香族炭化水素の具体例としてフェニルが、縮合多環式芳香族炭化水素の具体例としてナフチル、アントリル、フェナントリル等が、縮合多環式炭化水素の具体例としてインダニル、テトラヒドロナフチル、テトラヒドロアントリル等が挙げられる。
【0034】
『芳香族複素環』とは1又は複数のヘテロ原子(窒素原子、酸素原子、硫黄原子)を環内に有する単環式芳香族複素環又は2環式若しくは3環式の縮合多環式芳香族複素環を示す。
【0035】
単環式芳香族複素環の具体例として、ピロール、フラン、チオフェン、ピリジン等の環内に1個のヘテロ原子を有する芳香族複素環;イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、トリアゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール等のアゾール系芳香族複素環;ピラジン、ピリミジン等の環内に2個の窒素原子を有する芳香族複素環等が、2環式若しくは3環式の縮合多環式芳香族複素環の具体例として、インドール、イソインドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、チアントレン、フェノキサチン、フェナントロリン等の縮合芳香族複素環等が挙げられる。
【0036】
『ヒドロキシアルキル』とは、1又は複数の水酸基を置換基として有するアルキルを示す。
【0037】
本化合物における『塩』とは、医薬として許容される塩であれば特に制限はなく、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸との塩、ギ酸、酢酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、グルコヘプト酸、グルクロン酸、テレフタル酸、メタンスルホン酸、乳酸、馬尿酸、1,2−エタンジスルホン酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸、オレイン酸、パモ酸、ポリガラクツロン酸、ステアリン酸、タンニン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸ラウリルエステル、硫酸メチル、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸等の有機酸との塩、臭化メチル、ヨウ化メチル等の四級アンモニウム塩、臭素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオンなどのハロゲンイオンとの塩、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、鉄、亜鉛等との金属塩、アンモニアとの塩、トリエチレンジアミン、2−アミノエタノール、2,2−イミノビス(エタノール)、1−デオキシ−1−(メチルアミノ)−2−D−ソルビトール、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、プロカイン、N,N−ビス(フェニルメチル)−1,2−エタンジアミン等の有機アミンとの塩等が挙げられる。
【0038】
本化合物に幾何異性体又は光学異性体が存在する場合は、それらの異性体も本発明の範囲に含まれる。
【0039】
また、本化合物は水和物又は溶媒和物の形態をとっていてもよい。さらに、本化合物に互変異性や多形体が存在する場合には、それらも本発明の範囲に含まれる。
【0040】
(a)本化合物における好ましい例として、一般式(1)で示される化合物において、各基が下記に示す基である化合物又はその塩が挙げられる。
【0041】
(a1)Wは水素原子又は
【化11】

【0042】
を示し、;及び/又は
(a2)環Aはベンゼン環、ピリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環又はシクロヘキサン環を示し、;及び/又は
(a3)Xは単結合、O−CH−CH、NH−NH=CH、NH−CH−CH又はCO−NH−CHを示し、;及び/又は
(a4)YはCH又はNを示し、;及び/又は
(a5)ZはCH又はOを示し、;及び/又は
(a6)Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はアルキルアミノカルボニル基を示し、;及び/又は
(a7)Rはヒドロキシアルキル基、アルキルアミノカルボニル基又はトリアゾリル基を示し、;及び/又は
(a8)Rは水素原子又はアルキル基を示し、;及び/又は
(a9)Rがアルキル基の場合、該アルキル基はフェニル基及び塩素原子を置換基として有してもよいチオフェニル基から選択される1又は複数の置換基を有してもよい。
【0043】
すなわち、一般式(1)で示される化合物において、上記(a1)、(a2)、(a3)、(a4)、(a5)、(a6)、(a7)、(a8)及び(a9)から選択される1又は2以上の各組合せからなる化合物又はその塩。
【0044】
(b)本化合物におけるより好ましい例として、一般式(1)で示される化合物において、各基が下記に示す基である化合物又はその塩が挙げられる。
【0045】
(b1)Wは水素原子、4−(メチルアミノカルボニル)−1H−ピラゾール−1−イル基、2−[(シクロヘキシル)メチレン]ヒドラジノ基、2−(4−クロロフェニル)エトキシ基、ピリジン−2−イルメチルアミノカルボニル基、又は、2−(1−メチル−1H−イミダゾール−4−イル)−エチルアミノ基を示し、;及び/又は
(b2)YはCH又はNを示し、;及び/又は
(b3)ZはCH又はOを示し、;及び/又は
(b4)Rはヒドロキシメチル基、エチルアミノカルボニル基又は4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル基を示し、;
(b5)Rは水素原子、2,2−ジフェニルエチル基、又は、1−(3−クロロチオフェン−2−イルメチル)−プロピル基を示す。
【0046】
すなわち、一般式(1)で示される化合物において、上記(b1)、(b2)、(b3)、(b4)及び(b5)から選択される1又は2以上の各組み合わせからなる化合物又はその塩。
【0047】
本化合物における最も好ましい例としては、
下記式(2)で示される2−[4−(メチルアミノカルボニル)−1H−ピラゾール−1−イル]−アデノシン、
下記式(3)で示される2−{2−[(シクロヘキシル)メチレン]ヒドラジノ}−アデノシン、
下記式(4)で示される2−[2−(4−クロロフェニル)エトキシ]−アデノシン、
下記式(5)で示される6−(2,2−ジフェニルエチル)アミノ−9−[(2R,3R,4S,5S)−(5−エチルカルバモイル−3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン−2−イル)]−N−(ピリジン−2−イルメチル)−9H−プリン−2−カルボキサミド、
下記式(6)で示される(1S,2R,3S,4R)−4−{7−[1−(3−クロロチオフェン−2−イルメチル)−プロピルアミノ]−3H−イミダゾール[4,5−b]ピリジン−3−イル}−N−エチル−2,3−ジヒドロキシ−シクロペンタンカルボキサミド、又は、
下記式(7)で示される(2R,3R,4S,5R)−2−{6−(2,2−ジフェニルエチルアミノ)−2−[2−(1−メチル−1H−イミダゾール−4−イル)−エチルアミノ]−プリン−9−イル}−5−(4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)テトラハイドロフラン−3,4−ジオール 一ギ酸塩が挙げられる。
【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【0048】
本化合物は、有機合成化学の分野における通常の方法に従って製造でき、特許文献2〜6又は非特許文献5に記載された方法に基づいても製造することができる。
【0049】
本発明の緑内障若しくは高眼圧症の予防又は治療剤は、経口でも、非経口でも投与することができる。
【0050】
投与剤型としては、点眼剤、眼軟膏、注射剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等が挙げられ、特に点眼剤が好ましい。これらは汎用されている技術を用いて製剤化することができる。例えば、点眼剤であれば、精製水又は緩衝液等に本化合物を添加・攪拌した後、pH調整剤によりpHを調整することで所望の点眼剤を調製できる。また、必要に応じて点眼剤に汎用されている添加剤を用いることができる。添加剤としては、例えば、塩化ナトリウム、濃グリセリン等の等張化剤、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂、クエン酸等の緩衝化剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレ−ト、ステアリン酸ポリオキシル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の界面活性剤、クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム等の安定化剤、塩化ベンザルコニウム、パラベン等の防腐剤等を用いることができる。pHは眼科製剤に許容される範囲内にあればよいが、3〜8の範囲が好ましい。
【0051】
眼軟膏は、白色ワセリン、流動パラフィン等の汎用される基剤を用いて調製することができる。また、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等の経口剤は、乳糖、結晶セルロ−ス、デンプン、植物油等の増量剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロ−ス、ポリビニルピロリドン等の結合剤、カルボキシメチルセルロ−ス カルシウム、低置換ヒドロキシプロピルメチルセルロ−ス等の崩壊剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロ−ス、マクロゴ−ル、シリコン樹脂等のコ−ティング剤、ゼラチン皮膜等の皮膜剤などを必要に応じて加えて、調製することができる。
【0052】
本化合物の投与量は、剤型、投与すべき患者の症状の軽重、年令、体重、医師の判断等に応じて適宜変えるこができるが、点眼剤の場合には、一般には、成人に対し0.000001〜10%(w/v)、好ましくは0.00001〜3%(w/v)、より好ましくは0.0001〜1%(w/v)、さらに好ましくは0.001〜0.1%(w/v)の有効成分濃度のものを1日1回又は数回点眼することができる。また、経口投与の場合、一般には、成人に対し1日あたり0.01〜5000mg、好ましくは0.1〜2500mg、より好ましくは1〜1000mgを1回又は数回に分けて投与することができる。
【発明の効果】
【0053】
後述の薬理試験の項で詳述するように、カニクイザル及び日本白色ウサギを用いて眼圧下降試験を実施したところ、2−[4−(メチルアミノカルボニル)−1H−ピラゾール−1−イル]−アデノシン(以下、「化合物A」ともいう)、2−{2−[(シクロヘキシル)メチレン]ヒドラジノ}−アデノシン(以下、「化合物B」ともいう)、及び、2−[2−(4−クロロフェニル)エトキシ]−アデノシン(以下、「化合物C」ともいう)は優れた眼圧下降効果を発揮することが示された。すなわち、本化合物は緑内障若しくは高眼圧症の予防又は治療剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下に、薬理試験の結果及び製剤例を示すが、これらの例は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0055】
[薬理試験]
(1)カニクイザルを用いた眼圧下降試験
本化合物の緑内障若しくは高眼圧症の予防又は治療剤としての有用性を調べるため、カニクイザル(性別:雄性)に本化合物を投与した時の眼圧下降効果を評価検討した。被験化合物としては化合物A〜Cを使用した。
【0056】
(眼圧下降評価試験方法)
1)被験化合物溶液の投与直前に0.4%塩酸オキシブプロカイン点眼液を実験動物の両眼に各々1滴点眼し、局所麻酔を施し、圧平式眼圧測定器を用いて眼圧を測定した。この眼圧を初期眼圧とした。
【0057】
2)0.1%(W/V)被験化合物溶液(pH7)を調製し、該被験化合物溶液を1日2回7日間、実験動物の片眼に点眼した。対側眼は無処置もしくは同スケジュールにおいて基剤を点眼した。なお、該被験化合物溶液は前述の点眼剤の調製方法により調製した。
【0058】
3)被験化合物溶液の投与後、所定時間(投与後1,2,4,6時間)に実験動物の両眼の眼圧を各々測定した。尚、測定前に0.4%塩酸オキシブプロカイン点眼液を1滴両眼に点眼し、局所麻酔を施した。
【0059】
(眼圧下降度の計算式)
下記計算式により、各測定時間における被験化合物投与群の眼圧下降度を算出した。得られた各測定時間における眼圧下降度から、最大値のものを最大眼圧下降度とした。
【0060】
[式1]
眼圧下降度(mmHg)=|IOP(D−t)−IOP(D−0)|
IOP(D−t):被験化合物投与t時間後の被験化合物投与眼の眼圧
IOP(D−0):被験化合物投与眼の初期眼圧
(結果及び考察)
化合物A〜Cを用いた場合の試験結果[最大眼圧下降度(mmHg)]を表1に示す。表1から明らかなように、化合物A〜Cはいずれも優れた眼圧下降作用を示した。すなわち、化合物A〜Cに代表される本化合物は緑内障若しくは高眼圧症の予防又は治療剤として特に有用であることが分かった。
【表1】

【0061】
*尚、最大眼圧下降度は、1群5例の平均値を示す。
【0062】
(2)日本白色ウサギを用いた眼圧下降試験
本化合物の緑内障若しくは高眼圧症の予防又は治療剤としての有用性を調べるため、日本白色ウサギ(性別:雄性)に本化合物を投与した時の眼圧下降効果を評価検討した。被験化合物としては化合物A〜Cを使用した。
【0063】
(被験化合物溶液の調製)
前述の点眼剤の調製方法により、化合物A(1%(W/V))、化合物B(1%(W/V))又は化合物C(0.5%(W/V))を含む各被験化合物溶液を調製した(pH7)。
【0064】
(投与方法および測定方法)
1)被験化合物溶液の投与直前に0.4%塩酸オキシブプロカイン点眼液を実験動物の両眼に各々1滴点眼し、局所麻酔を施し、圧平式眼圧測定器を用いて眼圧を測定した。この眼圧を初期眼圧とした。
【0065】
2)調製した被験化合物溶液を1日2回7日間、実験動物の片眼に点眼した(対側眼は無処置)。
【0066】
3)被験化合物溶液の投与後、所定時間(投与後1,2,4,6時間)に実験動物の両眼の眼圧を各々測定した。尚、測定前に0.4%塩酸オキシブプロカイン点眼液を1滴両眼に点眼し、局所麻酔を施した。
【0067】
(眼圧下降度の算出)
下記計算式により、各測定時間における被験化合物投与群の眼圧下降度を算出した。得られた各測定時間における眼圧下降度から、最大値のものを最大眼圧下降度とした。
【0068】
[数2]
眼圧下降度(mmHg)=|IOP(Ad−t)−IOP(Ad−0)|
IOP(Ad−t):被験化合物投与t時間後の被験化合物投与眼の眼圧
IOP(Ad−0):被験化合物投与眼の初期眼圧
(結果及び考察)
化合物A〜Cを用いた場合の試験結果[最大眼圧下降度(mmHg)]を表1に示す。表1から明らかなように、化合物A及び化合物Bはいずれも優れた眼圧下降作用を示した。すなわち、化合物A〜Cに代表される本化合物は緑内障若しくは高眼圧症の予防又は治療剤として特に有用であることが分かった。
【表2】

【0069】
*尚、最大眼圧下降度は、1群5例の平均値を示す。
【0070】
[製剤例]
以下に本化合物を用いた代表的な製剤例を示す。
【0071】
[製剤例]
製剤例を挙げて本発明の薬剤をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの製剤例にのみ限定されるものではない。
【0072】
処方例1 点眼剤
100ml中
化合物A 0.1g
ホウ酸 2.0g
ポリソルベート80 適量
水酸化ナトリウム 適量
希塩酸 適量
滅菌精製水 適量
滅菌精製水に化合物A及びそれ以外の上記成分を加え、これらを十分に混合して点眼液を調製する。化合物Aの添加量を変えることにより、濃度が0.01%(w/v)、0.03%(w/v)、0.05%(w/v)、0.3%(w/v)、0.5%(w/v)又は1.0%(w/v)の点眼剤を調製できる。
【0073】
処方例2 点眼剤
100ml中
化合物B 0.1g
ホウ酸 2.0g
ポリソルベート80 適量
水酸化ナトリウム 適量
希塩酸 適量
滅菌精製水 適量
滅菌精製水に化合物B及びそれ以外の上記成分を加え、これらを十分に混合して点眼液を調製する。化合物Bの添加量を変えることにより、濃度が0.01%(w/v)、0.03%(w/v)、0.05%(w/v)、0.3%(w/v)、0.5%(w/v)又は1.0%(w/v)の点眼剤を調製できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アデノシンA2A受容体アゴニストを有効成分として含有する緑内障若しくは高眼圧症の予防又は治療剤であって、該アゴニストがGW−328267、UK−432097、及び、下記一般式(1)で表される化合物又はその塩からなる群より選択される少なくとも1種である、予防又は治療剤。
【化1】

[式中、
Wは水素原子又は
【化2】

を示し、;
環Aはベンゼン環、ピリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環又はシクロヘキサン環を示し、
Xは単結合、O−CH−CH、NH−NH=CH、NH−CH−CH、CO−NH−CH又はC≡C−CHを示し、;
YはCH又はNを示し、;
ZはCH又はOを示し、;
は水素原子、水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基又はアルキルアミノカルボニル基を示し、;
は水素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノ基、アルキルアミノカルボニル基、シクロアルキルアミノカルボニル基又は芳香族複素環基を示し、;
は水素原子又はアルキル基を示し、;
がアルキル基の場合、該アルキル基はアリール基及びハロゲン原子を置換基として有してもよい芳香族複素環基から選択される1又は複数の置換基を有してもよい。]
【請求項2】
一般式(1)において、
Wは水素原子又は
【化3】

を示し、;
環Aはベンゼン環、ピリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環又はシクロヘキサン環を示し、;
Xは単結合、O−CH−CH、NH−NH=CH、NH−CH−CH又はCO−NH−CHを示し、;
YはCH又はNを示し、;
ZはCH又はOを示し、;
は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はアルキルアミノカルボニル基を示し、;
はヒドロキシアルキル基、アルキルアミノカルボニル基又はトリアゾリル基を示し、;
は水素原子又はアルキル基を示し、;
がアルキル基の場合、該アルキル基はフェニル基及び塩素原子を置換基として有してもよいチオフェニル基から選択される1又は複数の置換基を有してもよい、
請求項1記載の予防又は治療剤。
【請求項3】
一般式(1)において、
Wは水素原子、4−(メチルアミノカルボニル)−1H−ピラゾール−1−イル基、2−[(シクロヘキシル)メチレン]ヒドラジノ基、2−(4−クロロフェニル)エトキシ基、ピリジン−2−イルメチルアミノカルボニル基、又は、2−(1−メチル−1H−イミダゾール−4−イル)−エチルアミノ基を示し、;
YはCH又はNを示し、;
ZはCH又はOを示し、;
はヒドロキシメチル基、エチルアミノカルボニル基又は4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル基を示し、;
は水素原子、2,2−ジフェニルエチル基、又は、1−(3−クロロチオフェン−2−イルメチル)−プロピル基を示す、;
請求項1記載の予防又は治療剤。
【請求項4】
一般式(1)で表される化合物が、2−[4−(メチルアミノカルボニル)−1H−ピラゾール−1−イル]−アデノシン、2−{2−[(シクロヘキシル)メチレン]ヒドラジノ}−アデノシン、2−[2−(4−クロロフェニル)エトキシ]−アデノシン、6−(2,2−ジフェニルエチル)アミノ−9−[(2R,3R,4S,5S)−(5−エチルカルバモイル−3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン−2−イル)]−N−(ピリジン−2−イルメチル)−9H−プリン−2−カルボキサミド、(1S,2R,3S,4R)−4−{7−[1−(3−クロロチオフェン−2−イルメチル)−プロピルアミノ]−3H−イミダゾール[4,5−b]ピリジン−3−イル}−N−エチル−2,3−ジヒドロキシ−シクロペンタンカルボキサミド、又は、(2R,3R,4S,5R)−2−{6−(2,2−ジフェニルエチルアミノ)−2−[2−(1−メチル−1H−イミダゾール−4−イル)−エチルアミノ]−プリン−9−イル}−5−(4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)テトラハイドロフラン−3,4−ジオールである請求項1記載の予防又は治療剤。
【請求項5】
剤型が、点眼剤又は眼軟膏である請求項1〜4いずれか1記載の予防又は治療剤。
【請求項6】
緑内障若しくは高眼圧症を予防又は治療するためのアデノシンA2A受容体アゴニストであって、該アゴニストがGW−328267、UK−432097、及び、下記一般式(1)で表される化合物又はその塩からなる群より選択される少なくとも1種である、アデノシンA2A受容体アゴニスト。
【化4】

[式中、
Wは水素原子又は
【化5】

を示し、;
環Aはベンゼン環、ピリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環又はシクロヘキサン環を示し、
Xは単結合、O−CH−CH、NH−NH=CH、NH−CH−CH、CO−NH−CH又はC≡C−CHを示し、;
YはCH又はNを示し、;
ZはCH又はOを示し、;
は水素原子、水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基又はアルキルアミノカルボニル基を示し、;
は水素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノ基、アルキルアミノカルボニル基、シクロアルキルアミノカルボニル基又は芳香族複素環基を示し、;
は水素原子又はアルキル基を示し、;
がアルキル基の場合、該アルキル基はアリール基及びハロゲン原子を置換基として有してもよい芳香族複素環基から選択される1又は複数の置換基を有してもよい。]
【請求項7】
一般式(1)において、
Wは水素原子又は
【化6】

を示し、;
環Aはベンゼン環、ピリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環又はシクロヘキサン環を示し、;
Xは単結合、O−CH−CH、NH−NH=CH、NH−CH−CH又はCO−NH−CHを示し、;
YはCH又はNを示し、;
ZはCH又はOを示し、;
は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はアルキルアミノカルボニル基を示し、;
はヒドロキシアルキル基、アルキルアミノカルボニル基又はトリアゾリル基を示し、;
は水素原子又はアルキル基を示し、;
がアルキル基の場合、該アルキル基はフェニル基及び塩素原子を置換基として有してもよいチオフェニル基から選択される1又は複数の置換基を有してもよい、
請求項6記載のアデノシンA2A受容体アゴニスト。
【請求項8】
一般式(1)において、
Wは水素原子、4−(メチルアミノカルボニル)−1H−ピラゾール−1−イル基、2−[(シクロヘキシル)メチレン]ヒドラジノ基、2−(4−クロロフェニル)エトキシ基、ピリジン−2−イルメチルアミノカルボニル基、又は、2−(1−メチル−1H−イミダゾール−4−イル)−エチルアミノ基を示し、;
YはCH又はNを示し、;
ZはCH又はOを示し、;
はヒドロキシメチル基、エチルアミノカルボニル基又は4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル基を示し、;
は水素原子、2,2−ジフェニルエチル基、又は、1−(3−クロロチオフェン−2−イルメチル)−プロピル基を示す、;
請求項6記載のアデノシンA2A受容体アゴニスト。
【請求項9】
一般式(1)で表される化合物が、2−[4−(メチルアミノカルボニル)−1H−ピラゾール−1−イル]−アデノシン、2−{2−[(シクロヘキシル)メチレン]ヒドラジノ}−アデノシン、2−[2−(4−クロロフェニル)エトキシ]−アデノシン、6−(2,2−ジフェニルエチル)アミノ−9−[(2R,3R,4S,5S)−(5−エチルカルバモイル−3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン−2−イル)]−N−(ピリジン−2−イルメチル)−9H−プリン−2−カルボキサミド、(1S,2R,3S,4R)−4−{7−[1−(3−クロロチオフェン−2−イルメチル)−プロピルアミノ]−3H−イミダゾール[4,5−b]ピリジン−3−イル}−N−エチル−2,3−ジヒドロキシ−シクロペンタンカルボキサミド、又は、(2R,3R,4S,5R)−2−{6−(2,2−ジフェニルエチルアミノ)−2−[2−(1−メチル−1H−イミダゾール−4−イル)−エチルアミノ]−プリン−9−イル}−5−(4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)テトラハイドロフラン−3,4−ジオールである請求項6記載のアデノシンA2A受容体アゴニスト。
【請求項10】
剤型が、点眼剤又は眼軟膏である請求項6〜9いずれか1記載のアデノシンA2A受容体アゴニスト。

【公開番号】特開2008−285478(P2008−285478A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106283(P2008−106283)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000177634)参天製薬株式会社 (177)
【Fターム(参考)】