説明

アニオン性の水溶性および溶剤可溶性添加剤

本発明は、モノマー(A)、(B)、(C)および(D)を重合して、反応性の末端OH−基を有する非イオン性コポリマーを得、そして引き続き、その末端のOH−基をアニオン性末端基に転化することによって得ることができる、アニオン性に変性されたコポリマーであり、その際、(A)は次式(I)で表されるモノマーであり、
【化1】


(式中、Aは、C〜Cアルキレンを、そしてBは、Aとは異なるC〜Cアルキレンを示し、Rは、水素またはメチルを示す。);(B)は次式(II)で表されるモノマーであり、
【化2】


(Dは、Cアルキレンを、そしてRは、水素またはメチルを示し、oは、2〜500の数である。);(C)は、芳香族基を含むエチレン性不飽和モノマーであり;そして(D)は、アルキル残基を含むエチレン性不飽和モノマーである、上記コポリマーに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、水ベースおよび溶剤ベースの顔料調製物用の分散剤として使用される、新規なアニオン性コポリマー、および該コポリマーの製造方法である。
【0002】
液状の媒体中での顔料の分散には、通常、分散剤が必要である。この分散剤は、湿潤剤とも呼ばれ、適当な界面活性剤の助けにより、表面活性剤として、分散すべき顔料の湿潤を促進し、そして、顔料分散液の調製時に、一般に、粉砕機を使って成し遂げられる、集塊物および凝集物の破砕を容易にする。分散剤は、アニオン性、カチオン性、両性または中性の構造をもつことができる。分散剤としては低分子量の種類であるか、またはより高分子量のポリマーであることができ、それらは重合化されたモノマーのランダム型、交互型、ブロック型、櫛形または星形の配置の構造を形成できる。例えば、エマルションペイント及び着色ニス、塗料、コーティング材および印刷インキを着色するための、並びに、紙、ボール紙およびテキスタイルを着色するのに使用される顔料濃縮物の調製時の、顔料分散用の分散剤がとりわけ商業上重要である。最近では、液状分散物の乾燥工程後に、乾燥した粉末または顆粒の使用媒体中での迅速な溶解を確実にする、分散剤および添加剤が求められている。これには、櫛形ポリマーが適し得る。櫛形ポリマーは、大抵、コモノマーとしてモノ(メタ)アクリル酸エステルをベースとするマクロモノマーの使用下で製造されるが、その主鎖上と側鎖上とに疎水性および親水性及び/又は極性を分配できるため、明確に整列した構造を有することにより、他のポリマー分散剤とは区別される。
【背景技術】
【0003】
欧州特許第1293523号(特許文献1)は、重量平均分子量約5,000〜100,000を有し、かつ、親水性の骨格(Rueckgrat)20〜80重量%およびマクロモノマー側鎖80〜20重量%含むポリマーである分散剤を記載している。該骨格は、その重量に基づいて70〜98%は、カルボキシル基を含まない重合化エチレン性不飽和モノマーから成り、そして2〜30重量%は、カルボキシル基を有し、そのカルボキシル基の少なくとも10%はアミンまたは無機塩基で中和されている重合化エチレン性不飽和モノマーから成る。該骨格は、側鎖と比較して親水性特性を有している。側鎖は、重合化エチレン性不飽和モノマーのマクロモノマーから成る。
【0004】
欧州特許第1081169号(特許文献2)は、次のモノマー混合物から誘導された分枝状ポリマーを記載している。
(A) 少なくとも一種のエチレン性不飽和モノマー50〜93重量%、
(B) 分子量1,000〜20,000の少なくとも一種のエチレン性不飽和マクロモノマー2〜25重量%、および
(C) 少なくとも一種の重合可能なイミダゾール誘導体5〜25重量%
【0005】
欧州特許第1562696号(特許文献3)は、水性エマルション重合で製造された、ポリアルキレングリコール−モノ(メタ)アクリレートから成るマクロモノマーで合成された、ポリマー分散剤を記載している。ポリマーの主鎖は、少なくとも一つのアミノ基を有するエチレン性不飽和モノマーを含んでいなければならない。
【0006】
ドイツ特許第102005019384号(特許文献4)には純粋なポリエチレングリコール−モノ(メタ)アクリレートと組み合わせて、アルキル(メタ)アクリレートおよびアリール(メタ)アクリレートのようなエチレン性不飽和モノマーから合成され、そして分散剤として使用される、櫛形ポリマーが記載されている。
【0007】
欧州特許第1323789号(特許文献5)は、ポリアルキレンオキシド−モノ(メタ)アクリレート構成要素を含むが、水溶性でない、櫛状ポリマーを記載している。水性インキを製造することを目的としている。欧州特許第1491598号(特許文献6)も同様であり、ポリアルキレンオキシド−モノ(メタ)アクリレート構成要素および塩を生じるモノマーを含み、該ポリマーは水性インキに使用される。
【0008】
上記の引用特許は、分散剤として、櫛形状またはブロック状ポリマーを提供する従来技術を記載している。しかし、乾燥の結果生じる粉末または顆粒は、水性系の中にしかまたは溶剤含有系の中にしか容易に混ぜ入れることができない。これまで開示された発明は、水性の顔料分散液を良好に安定させ、その際、該分散液は、例えばスプレー乾燥によって引き続き良好に乾燥でき、そしてそれにより、迅速かつ高い色強度の発達を持って水性系中にも、溶剤含有系中にも容易に混ぜ入れることができる粉末または顆粒を提供できていない。本明細書において、粉末または顆粒が水性系中および溶剤含有系中に普遍的に分散性であることが決定的な利点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第1293523号
【特許文献2】欧州特許第1081169号
【特許文献3】欧州特許第1562696号
【特許文献4】ドイツ特許第102005019384号
【特許文献5】欧州特許第1323789号
【特許文献6】欧州特許第1491598号
【特許文献7】ドイツ特許第2638946号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
驚くべきことに、ポリエチレン/ポリプロピレングリコール−モノ(メタ)アクリル酸エステルからのマクロモノマーを用いて製造される、特別なアニオン性櫛形コポリマーによって、上述の課題、すなわち、普遍的な分散性が実現されることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の対象は、モノマー(A)、(B)、(C)および(D)を重合して、反応性の末端(terminalen)OH−基を有する非イオン性コポリマーを得、そして引き続きその末端OH−基を、例えば硫酸モノエステルのようなアニオン性の末端基(Endgruppen)に転化することによって得ることができる、アニオン性に変性されたコポリマーであり、その際、
(A)は次式(I)で表されるモノマーであり、
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、
Aは、C〜Cアルキレン、および
Bは、Aとは異なるC〜Cアルキレンを示し、
Rは、水素またはメチルを示し、
mは、1〜500、好ましくは1〜50の数であり、
nは、1〜500、好ましくは1〜50の数であり、
その際、和m+nは、2〜1000の数に等しい。)
(B)は次式(II)で表されるモノマーであり、
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、
Dは、Cアルキレン、および
Rは、水素またはメチルを示し、
oは、2〜500、好ましくは2〜100、特に2〜50、就中5〜25の数である。)
(C)は、芳香族基を含むエチレン性不飽和モノマーであり、
(D)は、アルキル残基を含むエチレン性不飽和モノマーである。
【0016】
本発明によるコポリマーは、ラジカル重合の開始によってまたは連鎖移動反応によってもしくは連鎖停止反応によって生じる普通の末端の基、例えばプロトン、ラジカル開始剤からの基、または連鎖移動剤からの硫黄含有の基を有している。アニオン性末端基は、スルフェート、カルボキシレートまたはホスフェートであることができる。
【0017】
モノマーのモル分率は、好ましくは、モノマー(A)が0.1〜90%、モノマー(B)が0.1〜90%、モノマー(C)が0.1〜90%およびモノマー(D)が0.1〜90%であり、モル分率の合計は100%である。
【0018】
モノマーのモル分率で特に好ましいのは、モノマー(A)が0.1〜70%、モノマー(B)が10〜80%、モノマー(C)が0.1〜50%およびモノマー(D)で0.1〜50%である。
【0019】
モノマー(A)のアルキレンオキシド単位(A−O)および(B−O)は、ランダム状に、または、好ましい一実施形態ではブロック状に配置されて存在する。
【0020】
好ましい一実施形態では、(A−O)がプロピレンオキシド単位を、(B−O)がエチレンオキシド単位を示す、または(A−O)がエチレンオキシド単位を、(B−O)がプロピレンオキシド単位を示し、その際、エチレンオキシド単位のモル分率は、エチレンオキシド単位とプロピレンオキシド単位との合計(100%)に基づいて、好ましくは50〜98%、とりわけ60〜95%、就中、70〜95%である。
【0021】
アルキレンオキシド単位の和は、原則的にm+n=2〜1000、好ましくは2〜500、とりわけ2〜100、就中5〜50であることができる。
【0022】
好ましいモノマー(C)は、次式(IIIa)または式(IIIb)で表すことができる。
【0023】
【化3】

【0024】
(式中、
は、ヘテロ原子N、OおよびSを1個または複数個、例えば1個、2個または3個を場合によっては含む、3〜30個のC原子をもつ芳香族または芳香脂肪族の残基を示し、
は、Hまたは(C〜C)アルキルを示し、
は、Hまたは(C〜C)アルキルを示し、
は、Hまたは(C〜C)アルキルを示す。)
【0025】
【化4】

【0026】
(式中、
は、水素またはメチルを示し、
は、ヘテロ原子N、OおよびSを1個または複数個、例えば1個、2個または3個を場合によっては含む、3〜30個のC原子をもつ芳香族または芳香脂肪族の残基を示し、
は、酸素または基NHを示す。)
【0027】
モノマー(C)には、例えば、アクリル酸およびメタクリル酸の次のエステルおよびアミドが挙げられる:フェニル、ベンジル、トリル、2−フェノキシエチル、フェネチル。
【0028】
モノマー(C)としては、そのほか、スチレンのようなビニル芳香族モノマーおよびその誘導体、例えばビニルトルエン、α−メチルスチレンがある。芳香族単位は、例えば、1−ビニルイミダゾールのようにヘテロ芳香族類であることもできる。
【0029】
特に好ましいモノマー(C)は、スチレン、1−ビニルイミダゾール、ベンジルメタクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレートおよびフェネチルメタクリレートであることができる。
【0030】
好ましいモノマー(D)は式(IV)で表すことができる。
【0031】
【化5】

【0032】
(式中、
は、水素またはメチルを示し、
Yは、直鎖状または分枝状、または環状であることもでき、ヘテロ原子O、Nおよび/またはSを含むことができ、そして不飽和であることもできる、1〜30個、好ましくは6〜30個、特に9〜20個のC原子をもつ脂肪族炭化水素残基を示し、
は、酸素または基NHを示す。)
【0033】
モノマー(D)には、例えば、アクリル酸およびメタクリル酸の次のエステルおよびアミドが挙げられる:メチル−、エチル−、プロピル−、イソプロピル−、n−ブチル−、イソブチル−、t−ブチル−、ペンチル−、ヘキシル−、2−エチルヘキシル−、3,3−ジメチルブチル−、ヘプチル−、オクチル−、イソオクチル−、ノニル−、ラウリル−、セチル−、ステアリル−、ベヘニル−、シクロヘキシル−、トリメチルシクロヘキシル−、t−ブチルシクロヘキシル−、ボルニル−、イソボルニル−、アダマンチル−、(2,2−ジメチル−1−メチル)プロピル−、シクロペンチル−、4−エチル−シクロヘキシル−、2−エトキシエチル−、テトラヒドロフルフリル−およびテトラヒドロピラニル−。
【0034】
好ましいモノマー(D)は、アクリル酸およびメタクリル酸の次のアルキルエステルまたはアルキルアミドである:メチル−、エチル−、プロピル−、ブチル−、イソブチル−、2−エトキシエチル−、ミリスチル−、オクタデシル−および特に好ましいのは2−エチルヘキシル−およびラウリル−である。
【0035】
本発明のコポリマーは、10g/mol〜10g/mol、より好ましくは10〜10g/mol、特に好ましくは10〜10g/molの分子量を有する。
【0036】
本発明のコポリマーの製造は、ラジカル重合によって行うことができる。重合反応は、連続的、非連続的または半連続的に遂行できる。
【0037】
この重合反応は、沈殿重合、乳化重合、溶液重合、塊状重合またはゲル重合として行うのが有利である。本発明のコポリマーの特性プロフィールに特に有利なのは溶液重合である。
【0038】
重合反応用の溶剤としては、ラジカル重合反応に関してほぼ不活性に挙動する、有機溶剤または無機溶剤の全てが使用でき、例えばエチルアセテート、n−ブチルアセテートまたは1−メトキシ−2−プロピルアセテート、並びにアルコール類、例えばエタノール、i−プロパノール、n−ブタノール、2−エチルヘキサノールまたは1−メトキシ−2−プロパノール、同様にジオール類、例えばエチレングリコールおよびプロピレングリコールなどがある。ケトン類、例えばアセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノンおよびメチルエチルケトン、酢酸、プロピオン酸および酪酸のアルキルエステル類、例えば酢酸エチル、酢酸ブチルおよび酢酸アミル、エーテル類、例えばテトラヒドロフラン、ジエチルエーテルおよびエチレングリコール−モノアルキルエーテル、−ジアルキルエーテルおよびポリエチレングリコール−モノアルキルエーテル、−ジアルキルエーテルも使用できる。同様に芳香族系溶剤、例えばトルエン、キシレンまたはより高沸点のアルキルベンゼン類も使用できる。同様に、溶剤混合物の使用も可能であり、その際、複数の溶剤または単一の溶剤の選択は、本発明のコポリマーの使用目的に従う。水、低級アルコール類、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、イソ−、sec−およびt−ブタノール、2−エチルヘキサノール、ブチルグリコールおよびブチルジグリコール、特に好ましくはイソプロパノール、t−ブタノール、2−エチルヘキサノール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、5〜30個の炭素原子をもつ炭化水素類および上記化合物の混合物およびエマルションが好ましく使用される。
【0039】
重合反応は、常圧の場合でも高められた圧力下または低減された圧力下の場合でも、好ましくは、0〜180℃、特に好ましくは10〜100℃で行う。場合によっては、重合は、保護ガス雰囲気下で、好ましくは窒素雰囲気下でも行うことができる。
【0040】
重合を開始させるには、高エネルギー電磁放射線、機械的エネルギー、または、慣用の化学的重合開始剤、例えば、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、クモイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド(DLP)のような有機過酸化物類、または、例えば、アゾジイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスアミドプロピルヒドロクロリド(ABAH)および2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)のようなアゾ系開始剤を使用できる。同様に、還元剤(例えば、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸、硫酸鉄(II))または還元性成分として脂肪族または芳香族スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸)を含むレドックス系と場合により組み合わせた、無機ペルオキシ化合物、例えば、(NH、KまたはHも適している。
【0041】
分子量調整剤としては、慣用の化合物が使用される。公知の適当な調整剤は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノールおよびアミルアルコールのようなアルコール類、アルデヒド類、ケトン類、例えば、ドデシルチオールおよびtert−ドデシルチオールのようなアルキルチオール類、チオグリコール酸、チオグリコール酸イソオクチル、およびハロゲン化合物、例えば四塩化炭素、クロロホルムおよび塩化メチレンである。
【0042】
重合に続いて溶剤が除去される。そのように得られた非イオン性ポリマーは、ポリオキシアルキレン側鎖に、次の段階でアニオン性の官能基(Funktionalitaeten)に転化される反応性のヒドロキシ官能部分(Funktionen)を有することになる。アニオン性の官能基は、例えば、SOM、CHCOOM、POまたはスルホサクシナートである。この場合、Mは以下に定義する意味を有する。
【0043】
本発明のアニオン性コポリマーは、例えば次の式(V)または(VI)で表すことができる。
【0044】
【化6】

【0045】
(式中、指数a、b、cおよびdは、モノマー(A)、(B)、(C)および(D)それぞれのモル分率を与えており、具体的には、
a=0.001〜0.9;b=0.001〜0.9;c=0.001〜0.9;d=0.001〜0.9、好ましくは、a=0.001〜0.7;b=0.01〜0.8;c=0.001〜0.5;d=0.001〜0.5;その際、和a+b+c+dは1に等しい。)
【0046】
残りの変数は、式(I)、(II)、(IIIa)および(IIIb)中で定義されているとおりである。
【0047】
上記の式(V)および(VI)中、Qは、SO、CHCOO、POMを示しているか、またはQMが次を意味する。
【0048】
【化7】

【0049】
そして、Mは、H、金属カチオンまたはアンモニウム、例えば、Na、K、Ca、NH、アルキル化アンモニウムイオン、またはそれの組み合わせを示す(このマーカッシュ構造中の星印*は、その箇所でポリマーへの結合があることを示している。)。
【0050】
スルホサクシナートの場合、非イオン性コポリマーは、例えば、最初に無水マレイン酸でエステル化される。この際に、溶剤無しで作業することができ、ポリマー溶融物中で、高められた温度下で反応を遂行できる。引き続き、得られたマレイン酸モノエステルをスルホン化する。このために、これを、例えば、水溶液中で亜硫酸ナトリウムまたはピロ亜硫酸ナトリウムと反応させる。スルホサクシナート−ナトリウム塩の水溶液が生成物として得られる。
【0051】
硫酸エステルは、例えば、非イオン性コポリマーとアミドスルホン酸との反応によって生成される。この反応は、非イオン性コポリマーの溶融物中でアミドスルホン酸を添加して行われる。この場合に、コポリマーのOH−基は、その後アンモニウム塩として存在することになる硫酸エステルに転化される。
【0052】
カルボキシメチル化、例えばクロロ酢酸ナトリウムでのカルボキシメチル化によって、末端のヒドロキシル官能基を、対応するポリエーテルカルボキシレートに転化することができる。
【0053】
リン酸エステルは、例えば、非イオン性コポリマーの溶融物とポリリン酸または五酸化リンとの反応によって得ることができる。この反応時には、リン酸モノエステルも、リン酸ジエステルも、そしてリン酸トリエステルも生じ得る。
【0054】
非イオン性ポリマーのアニオン官能基への反応は、たいてい定量的には行われないため、転化されたポリマー(QM=SOM、CHCOOM、PO、スルホサクシナート)と転化されなかったポリマー(QM=H)とからなる混合物が生じる場合が多い。この混合物は、実際上分離可能でなく、そして本発明の目的にそのままで使用できる。
【0055】
本発明の更なる対象は、本発明のアニオン性コポリマーの、分散剤、とりわけ、例えば、エマルションペイントおよび着色ニス、塗料、コーティング材および印刷インキを着色するための、並びに、紙、ボール紙およびテキスタイルを着色または印刷するための、水系または溶剤ベースの顔料濃縮物を製造する際の、顔料およびフィラーのための分散剤としての使用である。
【0056】
合成法の指示1:
共通する重合法の指示:
撹拌器、還流冷却器、内部温度計および窒素導入口を備えたフラスコ中に、窒素導入下で、溶剤中のモノマーA、モノマーB、モノマーC、モノマーDおよび分子量調整剤を、次表で与えられた重量部で投入する。それから、温度を撹拌下で80℃にし、そして1時間以内に開始剤溶液を計量添加する。その後さらに2時間その温度で撹拌を続け、その後真空中で溶剤を除去する。
【0057】
合成法の指示2:
合成法の指示1によって得られたポリマーを、側鎖にエーテルスルフェートの基を有するアニオン性コポリマーに転化させるための、共通の合成指示:
上記のコポリマーを、窒素下で、アミドスルホン酸と尿素とを有するフラスコ中に投入する。それから、撹拌下で4時間、100℃まで熱する。引き続き、50重量%濃度の苛性ソーダ溶液(Natronlauge)でもってpH値6.5〜7.5に調節する。NMR分光法により、硫酸エステル−アンモニウム塩への>95%の転化率を確認することができる。
【0058】
合成法の指示3:
合成法の指示1によって得られたポリマーを、側鎖にスルホサクシナート基を有するアニオン性コポリマーに転化させるための、共通の合成指示:
上記のコポリマーを、窒素下でフラスコ中に投入する。それから、無水マレイン酸および水酸化ナトリウムを添加し、そして、撹拌下で75〜85℃の温度まで加熱する。その温度で、3時間の間撹拌し、そして引き続き、亜硫酸ナトリウム水溶液(10重量%濃度)を計量添加する。60〜70℃で、反応が完了するまで撹拌し、そして最後に、50重量%濃度の苛性ソーダ溶液(Natronlauge)でもってそのpH値をpH7に調整する。
【0059】
以下の二つの表に含まれる二段階式の合成例では、まず合成法の指示1に従ってポリマーを製造し、そしてその後、合成法の指示2または3に従ってそのポリマーのアニオン性誘導体を製造する。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】

【0063】

【0064】
使用例
顔料調製物の製造
粉末、顆粒またはプレスケークとしての顔料を、分散剤およびその他の添加剤と一緒に脱イオン水中でペースト化し、そしてそれからディソルバー(Dissolver)(例えば、VMA−Getzmann GmbHのタイプAE3−M1)またはその他適当な装置でもって、均質化して予備分散させた。引き続き、ビーズミル(例えば、VMA−Getzmann製のAE3−M1)またはその他適当な分散装置(Dispergieraggregat)で微分散化を行い、その際、大きさd=1mmのシリカジットビーズまたはジルコニウム混合酸化物ビーズでもって、冷却下で所望の色強度(Farbstaerke)および色彩に達するまで粉砕を行った。続いて、粉砕媒体を取り除き顔料調製物を分離し、そして脱イオン水により約20%の濃度に調整し、そしてBuechi社のスプレー乾燥機(Buechi 190)を使って乾燥した。乾燥粉末が得られた。
【0065】
顔料調製物の評価
色強度および色相の測定はDIN55986に従って行った。水性顔料分散物および乾燥粉末を、従来型の内装塗工用水性ベースのエマルションペイント中で及び従来型の溶剤含有ワニス中で試験した(色強度および着色すべき媒体との相溶性(Vertraeglichkeiten))。“ラブアウト試験(Rub−Out−Test)”については、顔料分散物と混合した後の塗料を塗工カード(Lackkarte)上に塗工した。引き続き、塗工カードの下方部分を指で後擦りした。後擦りした後の面が、隣接の後処理していない面よりも強く着色されている場合には非相溶性が存在した(“ラブアウト試験”はドイツ特許第2638946号(特許文献7)に記載されている)。
【0066】
粘度は、Haake製の円錐−平板型粘度計(Roto Visco 1)を使って、20℃で測定し(チタン製円錐:φ60mm、1°)、その際、0〜200s−1の範囲内のせん断速度に対する粘度の依存性を調べた。粘度はせん断速度60s−1で測定した。
【0067】
分散物の貯蔵安定性の評価には、調製物製造直後および50℃での4週間貯蔵後の粘度を測定した。
【0068】
下記の例に示した顔料調製物を、上記の方法に従って製造した。その場合、下記の成分を、顔料調製物が100部になるように与えられた量で使用した。次例中、部は重量部を意味する。
【0069】

【0070】
乾燥後、顔料調製物は次の組成を有し、この場合、約1%の残留含水量は無視される。
【0071】

【0072】
顔料調製物は、白色分散物中およびワニス中で、高い色強度を示し、かつ安定している。ラブアウト試験は、後擦り面との比較において色強度の差異を全く示していない。分散物は、50℃における28日間の貯蔵後でさえも同じように流動性であることから、流動性があり、そして安定であることを証明している。乾燥粉末は、水ベースの白色分散物中および溶剤含有ワニス中で、自然に混合できる。撹拌は手で3分間行う。いずれの塗料系において高い色強度を有し、かつ、フロキュレーション安定で、ピンホールのない(stippenfreier)塗膜が得られる。ラブアウト試験は、後擦り面との比較において、色強度の差異を全く示していない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー(A)、(B)、(C)および(D)の重合を重合して、反応性の末端OH−基を有する非イオン性コポリマーを得、そして引き続き、その末端のOH−基をアニオン性末端基に転化することによって得ることができる、アニオン性に変性されたコポリマーであり、その際、
(A)は次式(I)で表されるモノマーであり、
【化1】

(式中、
Aは、C〜Cアルキレン、および
Bは、Aとは異なるC〜Cアルキレンを示し、
Rは、水素またはメチルを示し、
mは、1〜500の数であり、
nは、1〜500の数であり、
その際、和m+nは、2〜1000の数に等しい。)
(B)は次式(II)で表されるモノマーであり、
【化2】

(式中、
Dは、Cアルキレン、および
Rは、水素またはメチルを示し、
oは、2〜500の数である。)
(C)は、芳香族基を含むエチレン性不飽和モノマーであり、そして
(D)は、アルキル残基を含むエチレン性不飽和モノマーである、上記コポリマー。
【請求項2】
前記モノマーのモル分率が、前記モノマー(A)については0.1〜90%、前記モノマー(B)については0.1〜90%、前記モノマー(C)については0.1〜90%、そして前記モノマー(D)については0.1〜90%であり、その際、該モル分率の合計が100%であることを特徴とする、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
Aがエチレンを、かつ、Bがプロピレンを意味するか、またはAがプロピレンを、かつ、Bがエチレンを意味することを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項4】
アルキレンオキシド単位(A−O)および(B−O)が、ブロック状に配置されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載のコポリマー。
【請求項5】
前記モノマー(C)が、次式(IIIa)または式(IIIb)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載のコポリマー。
【化3】

(式中、
は、N、OおよびSの群からのヘテロ原子を場合によっては含む、3〜30個のC原子をもつ芳香族または芳香脂肪族の残基を示し、
は、Hまたは(C〜C)アルキルを示し、
は、Hまたは(C〜C)アルキルを示し、そして
は、Hまたは(C〜C)アルキルを示す。)
【化4】

(式中、
は、水素またはメチルを示し、
は、O、NおよびSの群からのヘテロ原子を場合によっては含む、3〜30個のC原子をもつ芳香族または芳香脂肪族の残基を示し、
は、酸素または基NHを示す。)
【請求項6】
前記モノマー(D)が、次式(IV)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載のコポリマー。
【化5】

(式中、
は、水素またはメチルを示し、
Yは、直鎖状または分枝状、または環状であることもでき、そしてO、NおよびSの群からのヘテロ原子を含むことができ、並びに不飽和であることができる、1〜30個のC原子をもつ脂肪族炭化水素残基を示し、
は、酸素または基NHを示す。)
【請求項7】
前記アニオン性末端基が、残基SOM、CHCOOM、POまたはスルホサクシナートのうちの一つを意味し、その際、Mは、H、金属カチオン、NH、アルキル化アンモニウムイオン、またはそれの組み合わせを意味することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載のコポリマー。
【請求項8】
次式(V)または(VI)によって特徴付けられる、請求項1〜7のいずれか一つに記載のコポリマー。
【化6】

(式中、
Aは、C〜Cアルキレン、
Bは、Aとは異なるC〜Cアルキレン、
Dは、Cアルキレンを示し、
mは、1〜500の数であり、
nは、1〜500の数であり、
その際、和m+nは、2〜1000の数に等しく、
oは、2〜500の数であり、
は、N、OおよびSの群からのヘテロ原子を場合によっては含む、3〜30個のC原子をもつ芳香族または芳香脂肪族の残基を示し、
は、Hまたは(C〜C)アルキルを示し、
は、Hまたは(C〜C)アルキルを示し、
は、Hまたは(C〜C)アルキルを示し、
Rは、水素またはメチルを示し、
は、水素またはメチルを示し、
は、水素またはメチルを示し、
Yは、直鎖状または分枝状、または環状であることもでき、そしてO、NおよびSの群からのヘテロ原子を含むことができ、並びに不飽和であることができる、1〜30個のC原子をもつ脂肪族炭化水素残基を示し、
は、酸素または基NHを示し、
は、N、OおよびSの群からのヘテロ原子を場合によっては含む、3〜30個のC原子をもつ芳香族または芳香脂肪族の残基を示し、
は、酸素または基NHを示し、
Qは、SO3、CH2COO、PO3M、またはスルホサクシナートを意味し、
Mは、H、金属カチオン、アンモニウム、アルキル化アンモニウムイオン、またはそれの組み合わせを意味し、
a=0.001〜0.9
b=0.001〜0.9
c=0.001〜0.9
d=0.001〜0.9
その際、和a+b+c+dは1に等しい。)
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一つに記載のコポリマーの製造方法であり、その際、モノマー(A)、(B)、(C)および(D)がラジカル重合され、そしてその際に生じる末端OH−基がアニオン性末端基に転化される、上記方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一つに記載のコポリマーの、分散剤、特に顔料およびフィラーのための分散剤としての使用。

【公表番号】特表2012−500289(P2012−500289A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522394(P2011−522394)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005199
【国際公開番号】WO2010/020315
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(398056207)クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド (182)
【Fターム(参考)】