説明

アブレーション方法及び装置

【課題】本発明はアブレーションの分野で多くのアスペクトにおいて実質的な利益を提供する。
【解決手段】レーザビームを用いて、そのレーザビームの下方に位置する基板の特定領域を除去する場合に、レーザビーム用のレンズと前記基板との間を囲み、基板側を開口させたモジュール内に空気,ガス又は液体のいずれかを供給し、その供給した空気,ガス又は液体を前記モジュールから排出することで、レーザビームで基板の特定領域を除去することで発生するデブリを外部に排出させる。また、モジュールが頂部に取り付けられたパックの基板と対向した開口箇所の端部で、空気,ガス又は液体をモジュール内に供給することで、特定領域の基板表面に対してできるだけ平行な空気,ガス又は液体の流れを指向させて、モジュールが頂部に取り付けられたパックを基板表面から浮揚させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパルス化されたレーザビームにより加工物から物質を除去し、粒子や加工生成物などのデブリを制御するためのアブレーション方法及び装置に関する。特に、本発明は、例えば平面パネルデイスプレイ(‘FPD’)または太陽電池パネルの製造に用いられる大きな基板から有機、無機または金属材料の薄膜を削除し、スクライブしまたは除去するためのレーザの使用に関し、複雑な密度の高い3次元構造をポリマーの大面積のシートにして表示ユニットのためのレンズアレー、拡散器等を製造するためのマスターを作り出すレーザアブレーションに関する。
【背景技術】
【0002】
パルス化されたレーザビームによるアブレーションの直接プロセスを用いる材料の組み立ては、精密機器においてしかし限定される訳ではないが医用、自動車、太陽電池、表示及び半導体産業での製造のために広く用いられるよく完成された技術である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
アブレーションプロセスはパルス化されたレーザ源により生成される強い放射のひとつまたはそれ以上のパルスで材料表面を露光することを含む。もしもレーザ波長が材料の最上層で放射が強く吸収されそしてエネルギー密度が高く吸収されたエネルギーが最上層の温度を材料の融点以上に引き上げられたとしたら、この場合、材料の最上層が分解され表面から膨張するガス状、液状または固体粒子の副産物に変化する。アブレーションプロセスが生ずるための本質的な必要条件は十分なエネルギーが、温度を迅速に材料が分解する温度まで引き上げられる十分に短い時間で材料に吸収されることである。
【0004】
厚い材料を除去するのに、各レーザパルスは、エネルギー密度、レーザ波長及び材料吸収係数にもよるが50nmと数ミクロンの間で材料を除去する。各パルスは同一の方法で振舞うのでパルスの連続の後には数ミリメートルの材料の破片が除去できる。除去された材料はしばしばガス状材料に変換されるが、多くの場合それは液体と固体の成分も含む。
【0005】
材料の薄膜に対してアブレーションプロセスは少々異なる。膜が異なる材料からなる基板の表面に付着されそして膜厚が小さいとき(例えば1ミクロン以下)、2つの方法のうちのひとつでアブレーションを行うことができる。もしも膜がレーザ照射を強く吸収すると、照射は下方の基板には浸透せず膜内に吸収される。薄膜でのそのような強い吸収により膜の温度は急速に上昇し、熱は膜と下方に基板との間の接着の崩壊を引き起こす下方側に伝えられる。そのようなプロセスは薄い金属膜で生ずる。この場合、金属は粒子と液体の混合物の形でひとつのレーザパルスで除去される。
【0006】
膜が全体としてまたは部分的にレーザ照射に対して透明であり下方の基板が膜以上に照射を吸収する場合には、エネルギーは2つの層の間の界面で下方の基板の表面に吸収されて急速な温度上昇と最上層のアブレーションを引き起こす。この場合、除去された最上層は一般的にサブミクロンから数十ミクロンに範囲のサイズの粒子に分解される。
【0007】
もしも下にある基板材料がレーザ照射に対して透明であり薄膜がそれを吸収するとしたら、レーザビームを基板を介して直接基板と膜の界面までもたらすのは好都合でもある。そのような場合、膜はしばしば適度なエネルギー密度のひとつのレーザショットのみで基板から層離される。レーザによる材料アブレーションのすべてのプロセスは、ガス状、液状または固体の範囲のアブレーション生成物成分の発生に行き着く。これらは原子、分子、クラスター、粒子、ポリマー鎖、大小材料断片、液体のしずく及び噴射物その他である。我々は以下においてこれらをアブレーションデブリと呼ぶ。このアブレーションデブリの制御は重要な問題であり、基板表面へのアブレーションデブリの堆積は汚染を避けるために最小としなければならない。特に、直接レーザアブレーションプロセスが湿式化学またはプラズマエッチングプロセス(微粒子の汚染がすぐには生じない)に取って代わるFPD製造のための薄膜アブレーションの場合には、レーザアブレーションFPD生産プロセス中の基板表面へのアブレーションデブリの再堆積は許容できない。本発明は基板表面からのアブレーションデブリの流れを制御しかつ基板へのその再堆積を最小とすることを目的とする。
【0008】
レーザアブレーションプロセス中に生成されたアブレーションデブリを捕らえ、制御する試みは以前からいくつかの方法が用いられてきた。これらの方法のほとんどは除去される表面近くの何らかのタイプのガスの流れに依存している。流れの方向はしばしば表面に沿い、領域の一方の側から風をおくり他方の側で強く吸い出すことによりつくりだされる。用いられるガスはしばしば空気であり、ある場合には例えばヘリウム、酸素またはアルゴンが用いられる。全ての場合において、ガスの流れは移動しているアブレーションデブリを別の方向に向け直し、臨界領域から離れるように向けるかまたは好ましくは基板領域からすべて除去するために用いられる。このプロセスは、ガス分子とアブレーションデブリとの間の運動量の交換に依存しており、それ故にそれを効果的にするためには高圧と高いガス流量が必要とされる。例えばアルゴンのような重いガスを用いることがこのプロセスを促進することができる。もしもヘリウムを用いるとしたらヘリウム分子の質量が空気の分子よりも非常に小さいので効果は異なったものとなり、ヘリウムは空気よりもアブレーションデブリに相互作用する点において効果的ではない。この場合、移動しているアブレーションデブリは減速され、堆積する前にアブレーションサイトから更に移動できる。このことは発生源の場所から更に堆積した材料を遠くに移動させる効果を有するが、再堆積する材料の全体量を甚だしく減少させるものではない。
【0009】
例えば酸素のような反応性ガスを用いると、アブレーションデブリが反応性ガスと反応して反応性ガスを純粋なガスに変えて堆積物の量を減少させることができる。この例はいくつかのポリマー材料のアブレーションである。ここにおいて、創りだされた有機粒子は酸素と反応して例えば二酸化炭素または一酸化炭素のような純粋ガスを形成する。
【0010】
表面を流れる液体の流れは、アブレーションデブリを取り込むためのガス流の代替物として用いられる。レーザアブレーションプロセス中では水の薄い層または他の液体はアブレーション領域の表面を横切るように向けられる。層は入射されるレーザビームを吸収または妨害しないように薄くなければならず、一般的にはアブレーション領域の一方の側に位置するアトマイザーノズルのいくつかのタイプにより形成される。そのようなシステムはクリーンレーザマシニング(インダストリアル レーザ ソリューション、2003年5月)に最近記載されている。基板表面を横切った後、基板を保持するチャックの周りの幾つかの型のチャンネルに集められる。
【0011】
上述のごとくリストアップされた方法は、拘束されないガスまたは表面を横切るように向けられた液体流を利用している。そのような利用においては、デブリの捕集が全体として効果的ではなく基板の他の領域においてしばしば再堆積が起こるので、アブレーションデブリの除去においては限定された効果でしかない。除去されたデブリは基板の別の領域に単純に吹き飛ばすか流され、再堆積する。さらに液体流の方法の極めて不都合な点は、この場合基板への取り付けチャックが非常に大きく、水分捕集チャンネルがアブレーション点から離れているので、FPD製造に関連する大きな基板を取り扱うには適切ではないことである。その結果、流体の流れからのアブレーションデブリが基板上に再堆積しやすい。
【0012】
本発明は、これらの制約を避け、基板表面への重大な再堆積なしに、如何なる寸法のアブレーションデブリもその表面から除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、レーザビームを用いて、そのレーザビームの下方に位置する基板の特定領域を除去する場合に、
前記レーザビーム用のレンズと前記基板との間を囲み、前記基板側を開口させたモジュール内に空気,ガス又は液体のいずれかを供給し、その供給した空気,ガス又は液体を前記モジュールから排出することで、前記レーザビームで前記基板の特定領域を除去することで発生するデブリを外部に排出させると共に、
前記モジュールが頂部に取り付けられたパックの前記基板と対向した開口箇所の端部で、空気,ガス又は液体を前記モジュール内に供給することで、特定領域の基板表面に対してできるだけ平行な空気,ガス又は液体の流れを指向させて、前記モジュールが頂部に取り付けられたパックを前記基板表面から浮揚させるようにした。
【発明の効果】
【0014】
本発明は製品素材のいたるところに無作為にデブリが堆積するのをさけるために、アブレーションから発生するデブリを領域の近くから積極的に除去しつつ、加工対象物上の領域のレーザアブレーションが迅速かつ正確に行うことができる方法及び装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明によるDEMの図解の図である。
【図2】本発明によるDEMの図解の図である。
【図3】本発明によるDEMの図解の図である。
【図4】本発明によるDEMの図解の図である。
【図5】本発明によるDEMの図解の図である。
【図6】本発明によるDEMの図解の図である。
【図7】本発明によるDEMの図解の図である。
【図8】本発明によるDEMの図解の図である。
【図9】本発明によるDEMの図解の図である。
【図10】本発明によるDEMの図解の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明はアブレーションの分野で多くのアスペクトにおいて実質的な利益を提供する。ガスの流れの場合においては、ガスの流れが表面を横切るよりもむしろ基板表面から略垂直に離れるように方向づけられればアブレーションデブリの除去の効率において重要な改良が成し遂げられると信じている。これはガスの流れをアブレーションサイトの全てにわたって横切るように内向きに方向づけ、サイト上で強く吸い出すことにより成し遂げられる。これは、基板と基板を露光するために用いられるレーザビームフォーカシングまたは撮像レンズとの間の間隙の、いくらかの部分を占めて配設されている適切なセルを構成することにより実行される。このセルはレーザビームを透過する窓により頂部側で密閉されそしてその下方縁を基板表面に接近させている。セルはレンズを保持する装置に取り付けられておりそれ故に基板はセルの下方で自由に移動可能となっている。セルは吸い込みポンプ手段により部分的に真空とされているのでガスは基板に接近している間隙を介して吸い込まれる。このようにして強く内向きに方向づけられた表面の流れは上向きの流れに変換され表面からアブレーションデブリを除去する。流れが十分に強ければアブレーションデブリ成分のほとんどは如何なる再堆積もなしに表面から除去できる。以下、セルのこの一般的な型をデブリ除去モジュール(Debris Extract Module)(‘DEM’)と呼ぶこととする。
【0017】
強力な吸い込みに関連するばかりでなく、DEMは基板からのデブリの除去を促進しかつDEMの頂部で窓にデブリが堆積するのを防止するような他の機能を発揮するための付加的なガス流入ポートを有することができる。
【0018】
基板近くでの内向きの流れと窓の近くでの流れの両方のために、多くのガスまたは蒸気をDEM内で用いることができるのは明らかである。しかし多くの場合便宜とコストの理由の両面から、用いられる適切なガスは空気である。
【0019】
DEM設計の重大なアスペクトは、基板が横に移動しても基板が平坦でなくても、一定のガス流状態を維持するために、常にその下方縁と基板の間の距離は一定でなければならないことである。フオーカシングまたは撮像レンズも基板から固定した距離に留まる必要があるので、DEMはレンズと同じ取り付け機構に取り付けられ、両方とも移動中は段差のある基板の表面を辿ることができる。レンズとDEMを基板の頂部から一定の距離に保持するいくつかの機構が、機械的、光学的、空気力学的な、超音波、容量性そして他のセンサーシステムを含めて存在する。そのような装置がDEMの下面に取り付けられ、DEMとレンズがスライド駆動するようサーボモーターに取り付けられているとしたら、モーターへのセンサー信号のフィードバックを用いることによりDEMの下縁をレンズとの距離を基板から常に一定とすることができる。
【0020】
DEM(及びレンズ)を基板から一定の距離に保持する別の方法も存在する。このことは我々の特許出願PCT/GB2004/001432号に記載されているようなエアーパックの使用によるものである。本例において、DEMとレンズは、それらと基板表面の間に一定の距離を常に維持するようその表面上に“浮遊”するエアーパックの頂部に取り付けられている。
【0021】
この方法は、別の高さ感知装置やサーボ制御されたDEM及びレンズ移動システムが必要としないという鍵となる利点を有している。その理由は、パック下面と基板の間の空気層が自動的に高い精度レベルで同一の厚さに維持されるので、パック、DEM及びレンズ組み立て体が常に基板表面の外形に従うようになされているからである。そのようなシステムは、ガラス基板の厚さの変化がミリの端数まで変化するFPD装置の製造ための大面積の基板の処理には勿論理想的である。
【0022】
エアーパックに取り付けられたDEMの最も単純なケースにおいては、下方部でセルに入りアブレーション領域をとおり上昇する流れを起こしアブレーションデブリを捕集するガスは、パックのチャンネルに向かう空気の流れから派生し、空気サスペンション層を作りだす。この場合、空のパックの下方側から内側方向に逃げるほんの少しの空気はDEMの頂部の近くに取り付けられた強力な注出ポンプにより吸引される。そのような方法は単純であるがパックの内側に移動できる空気の量が制限される。このことは空気の効果的な上方への流れを少ないものとするので、アブレーションデブリの抽出の効果は限定されたものとなる。
【0023】
この限界を克服するために、空のパックの中心にさらなる空気(または他のガス)を向けることができるエアーパックにポートを作ることが提案されている。ポートは流れをパックの外側から内側に放射状に内向させるように構成され、そしてパックの内側に放出するガスが基板表面に非常に近く放出され及び表面に対して小さな角度で向かうような形状とされている。この方法によりガスはアブレーションゾーンに向かって表面に沿って内側方向に向かって高速で流れるようになる。ガスがパックの空の中核部内に移動するにつれて、DEMに適用された吸引により流れが放射状の内向き方向から上向きに変化され、上方に移動するアブレーションデブリをより効果的に捕捉することとなる。
【0024】
アブレーションプロセスにより生成されるデブリは量も大きさも様々であり、幾つかの除去タイプは、デブリの向上した伴出のためにガスの流れを増加することにより更に効果的になることが見出されている。エアーパックに設置されたDEMはさらなるガス流入及び流出ポートを有して、基板からのデブリ除去を向上させDEM窓上へのデブリの再堆積を減少することができる。ポートは適切なポンプまたはコンプレッサーへの接続により空気またはガスを基板に運ぶことができる。また、ガスは吸引ポンプに接続されたポートにより除去できる。
【0025】
パック内のポートは、スキャンモードプロセスの操作における基板の動きに対して、ガスまた空気の流れを平行、斜めまたは垂直な方向に選択的に基板表面に沿って向けるように構成される。移動する基板のアブレーションデブリ除去効率がガスの流れる方向に関連している状況においては、適切なバルブを開閉することによりポートを交互に接続して、流れを流入させたり流出させてこの方向を変更できる。または、パック組み立て体の全体を、基板の動きに対してポートが正確に整列するよう回転させる。
【0026】
DEMに関して、提案されている他の様々な特徴をここで論ずる。レーザ窓の位置は様々な異なる位置とすることができる。ある場合には、DEMがレンズと基板との間の空間を殆どすべて占有するようにレンズの下方に近接するDEMの頂部側に窓を設けることは有益である。他の場合には、窓をレンズと基板との間の中間位置に配置することも有益である。位置の選択はレンズと基板との間のレーザビームの形状によるところが大きい。レンズがビームを集束するとビームの寸法は基板に接近して非常に小さくなり、その結果、基板から距離を十分にとって窓を配置することは高レーザ出力により引き起こされるダメージを避けるためには重要である。一方、レンズが大きい像を投射するとき及び特にレンズが望遠型の場合、窓の位置はレーザビームによるダメージの危険なしに基板に近づけることができる。
【0027】
メインテナンスなしにDEMを長い期間にわたって動作させるためには、DEM内でのアブレーションデブリの堆積を防止することが重要である。そのような現象が生じると堆積したデブリは基板上に落下する。それ故DEMは、好ましくは段差、不連続または突然の寸法の変化なしに平滑な内部表面を有するよう設計される必要がある。DEMのそのような設計により、妨げられることのないガスの流れが作り出されユニット内でのデブリの堆積の危険を最小とすることができる。
【0028】
これらの対策にも拘わらずガスの流れの速度はDEMの壁の近くでは遅くなっているので、ガスの流れからデブリがDEMの壁に堆積する可能性がある。基板上にこの物質が落下するのを防止するために、DEMはデブリがDEMの壁から基板に向かう直接の経路を持たないように構成される。それは適切に設計された逆向きに傾斜する表面または段差を用いることにより得られる。
【0029】
レーザビームはDEMの窓を通過しなければならないので、窓上のデブリの堆積を最小とすることは重要である。これは窓に近い流入ガスの正しい流れにより成し遂げられるが、それでもある程度の堆積は生じる。この場合、窓を移動可能に構成して窓の汚染された部分をビームから除去し清潔な領域と交換することにより、DEMの動作寿命を延ばすことが重要である。そのような移動は手動または自動で行うことができる。
【0030】
窓クリーニングシステムにおける組み立てがDEMの寿命を延ばすために提供される。そのようなシステムは可動型の刷子羽根かまたは静止型の刷子羽根から構成され、それを介して窓の汚染された側は定期的に移動できる。別のバージョンにおいては動力によるまたは手動による窓の一連の駆動が提供でき、ひとつは作業窓として機能するよう配置され、残りの一連の構成要素が掃除される。
【0031】
レーザビームの直径が小さくDEMがレンズと基板の間の空間の実質的な部分を占めているような場合には、透明な窓を開口部または孔を有する不透明板で置き換えることができる。開口部が適切な寸法(板でのビームの寸法よりも大きい)でありDEMに加えられる吸引が十分であれば、基板近くのガスの上方への流れそして同時に開口部を介したガスの下方への流れが造りだされ、基板からの個々の微粒子からなるデブリを除去することを確実なものとし、デブリはレンズへは到達しない。
【0032】
レンズが投射レンズでありテレセントリック系ではない場合には、レーザビームはレンズと基板との間の位置に焦点を形成する。この位置はストップと呼ばれる。殆どの場合このストップポイントでのビーム寸法は小さく、それ故にDEMの頂部を封止するためにこのポイントに配置される板は小さな開口部のみを必要とする。この場合、DEMにおけるガスの流れの上での孔の効果は小さい。
【0033】
レンズにより投射されるビームをマスク(開口)の手前で均質化するために、マルチーエレメントレンズシステムが用いられるとすれば、ストップ位置でのビームはもはや単一の焦点スポットではなく焦点スポットの配列から構成される。スポットの数はマルチーエレメント均質化光学により従来 “ビームレット”と記述されるものの数に等しい。一般的にこの数は少数から100またはそれ以上であるが実行可能な数のスポットが使用できる。この場合、DEMの頂部を封止する板は適切な寸法の孔の配列を有し、かつ全てのビームレットを通過させる間隔を有している。必要とされる孔の各々の寸法はレーザビームの拡散によるが、殆どのレーザでレンズの焦点距離は実質的には1ミリ未満である。
【0034】
レーザが例えば紫外線エキシマレーザまたは近赤外線固体レーザのようなマルチモード型のときは、ストップ位置に配置される孔の配列を有する板によりDEMの頂部が封止される場合がよくある。これらのレーザビームには、投射のために均一のパターンを創りだすためにビームを多数のビームに分割することを含む均質化システムが最も普通に用いられる。
【0035】
ある場合にはDEMに入れ、その後DEMから引きだされる空気またはガスは閉サイクル循環ループシステムに含むことができる。そのような場合、除去された粒子を捕捉するための流れのループ内にポンプとフィルタユニットを配置することが便利である。他の場合には、DEMから吸引された空気または他のガスをDEMに戻すよりはむしろ放出するほうがより賢明である。この場合、新鮮なガスまたは空気がDEMに供給される。
【0036】
エアーパックに設けられたり、または他の手段により自身の位置を維持するDEMは殆どの向きで動作できる。基板を垂直にそしてビームを水平としたDEMを動作させることが可能である。垂直と水平の間の如何なる中間角度に基板を有する他の相対的位置付けも可能である。
【0037】
基板を水平にそして下から垂直に上方にビームを向けてDEMを動作させることも可能である。除去する物質をレーザ照射を透過する基板上に置くと、適切であればレーザビームは基板を介してフィルムを照射することができる。この場合、DEMは基板の一方の側に位置し、レーザビームは他方の側に位置する。水平の場合には、ビームは頂部から放出され基板を介して下方に向かう。その際、DEMは基板の下方に位置し、下面から除去されたデブリを捕集する。または、ビームが基板の下から上方に向かい、上側でアブレーションを起こし生ずるデブリを除去することもできる。後者の場合、DEMは頂部にある。両方の場合において、レーザビームはDEMを透過しないので窓または穴あきのビーム流入板は必要ない。
【0038】
(液体の流れの活用)
ここで、基板上に位置する液体の薄い層の使用に起因する改良を提案する。この場合、この液体は常に窓を基板との間で捕捉される。液体層の厚さは薄い必要はなくそして基板とレンズとの間の全体の空間を満たすことができればよい。しかし、層が数分の1ミリメートルから1または2ミリメートルの範囲の薄さであればアブレーションデブリのより効果的な捕捉と除去ができることが予想される。
【0039】
窓はレンズと同一の取り付け構成体に取り付けられ、両者は基板の上部の位置を検出する適切なセンサー装置により駆動、スライド、作動されるサーボモータにより基板から一定の距離に維持されている。基板と窓との間隙はこのようにして常に一定である。間隙は、液体が通過してアブレーションプロセス中に生成された粒子を除去するセルまたはDEMを形成する。DEMの横方向の寸法は一般的にレーザビームが占める領域よりも少し大きくなされている。撮像ビームの場合には寸法は20ミリメートルまでとなる。走査光学システムの場合には寸法は少し大きくされる。DEMの形状は円形、正方形、角型またはビーム形状に基板で最も適合する適切な如何なる形状でも良い。液体は一方の側からDEMに注入され逆側から抜き取られるので、その結果、窓と基板との間のDEMを横切る液体に流れが存在することとなる。液体はアブレーションデブリを捕捉しアブレーション領域からそれを除去する。
【0040】
そのようなシステムは、ウエハステッパーまたはスキャナーツールとの間の間隙が液体で満たされ光学解像度と焦点深度を改良する光学イマーションリソグラフィ用に提案されている方法を類似している。この場合、基板は一般的にレジスト被覆ウエハであり、その上にレンズにより作り出される照射パターンはレジストを露光し、次いで現像されて構造を形成する。この場合、光の強度は非常に弱いのでレジストの直接のアブレーションは生ずることがなくそれ故にアブレーションデブリも生成されない。最悪の場合、露光工程中幾らかのガスが放出される。これは液体中に捕捉されて除去される。
【0041】
我々が提案する発明は、特にレーザビーム強度が十分に高く直接材料をアブレーションしアブレーションデブリを形成する場合についてである。DEM窓により液体を保持しているため本発明はアブレーションプロセス中大きな圧力が生成される場合には適切ではない。それはポリマーの高エネルギー最低密度の照射の場合と言える。形成されるガスによりアブレーションプロセス中に高圧力になるとしたら、このことは液体の流れを妨害しおそらくはDEM窓を傷つけるかもしれない。我々の発明は有機または無機材料からなる薄い層が適度なまたは低エネルギー密度で下方基板から分離される際に特に重要である。この場合、ガスは殆どまたはまったく生成されず、そして圧力も発生せず、液体の流れとセルは揺らぐことがない。そのような状況はFPDにおけるような材料の薄い層がレーザによりパターン化されるときに起こる。
【0042】
DEM窓が基板に近接しているので、この液体セルの発明は、ビームが合焦されそして窓に対して小さな寸法であるような場合には適切ではないのは明らかである。本発明は像の寸法が比較的大きくそして材料の薄い層をアブレートするのに必要とされるエネルギー密度が低い場合に適切である。
【0043】
窓が直接レンズに取り付けられ、窓(及びレンズ)が窓と基板との間の液体の薄い層上に浮遊する上記したタイプの液体DEMを想定することができる。これは上述のエアーパックとDEMに類似しているが、しかしこの場合、液体セルは浮遊とDEMの機能の両方を同時に行うものである。
【0044】
上述したDEM発明のガスと液体の両方のバージョンは、遠赤外(例えば10.6μm)から下って深紫外線(例えば157nm)までの波長の如何なるタイプのレーザシステムと共に使用できる。主な必要条件としては、光学放射が重大な損失なしに窓材料を透過できることであり、そして液体の場合には液体はレーザ放射を透過できることである。一般的に本発明は波長193nm乃至1.06μmのレーザを用いるときに最も有用であると予想できる。この範囲においては溶融したシリカは理想的な窓材料であり、水は理想的な液体である。特に、248nmまたは308nmで動作するUVエキシマレーザを用いるとき、液体DEM装置の多くの応用が重要になると我々は予想している。
【0045】
ガス及び液体形態の両方のDEMが、基板に対して静止しているDEMとしてまたは相対的な動きがある場合にも動作可能である。静的な場合はレーザ処理が段階的な繰り返しモードで行われるとき生じる。移動する場合はレーザ処理が走査モードで行われるとき生ずる。
【0046】
本発明の例示的な実施例を今DEMの図解の図である図1乃至10から構成される添付の図面を参照して述べる。
図1について述べると、流体の流れが用いられるDEM概念のガスバージョンは空気である。平たい基板1はレンズ2により合焦または撮像されるレーザビーム3により照射される。レーザビーム3は透明窓5によりその上方端部を閉止されたDEMを通過し、領域Rにおいて基板1をアブレートする。そしてアブレーションプロセスによりつくりだされる引き起こされたデブリDEM4を介してポート6から抜き取られ、DEM4の下方縁4Aと基板1との間の間隙Gを介して吸引される流入空気7に置き換えられる。DEM4とレンズ2はサーボモータ駆動スライド機構(図示せず)に連結された高さセンサーによって基板に対して一定に位置に保持される。
【0047】
図2について述べると、ガス使用のDEM4はガスを内部に流入せしめるためにDEM4の上方領域にはめ込まれる追加ポート8を具備している。この追加ポート8は窓5の下方側を超えて保持される空気8Aの清掃の流れを準備する。
【0048】
図3について述べると、ガス使用DEM4のより複雑な形態は、間隙Gを所定の高さに維持するために基板1上にパック9を浮揚させる、ポート10を介して空気の流れ10Aが供給される空気パック9に取り付けられる。
【0049】
図4について述べると、空気の流れDEM4はアブレーションサイトRに近接するパック9の内側に追加の空気の流れ11Aを向ける特別のガス流入ポート11を具備している。ポート11はアブレーションサイトRに向かって内側方向に空気の流れ11Aと指向させ、そしていくつかの適切な小さな角度でまたは基板表面にできるだけ平行に空気の流れを指向させるのに役立つ。ポート11はパック9の2つまたはそれ以上の側に構成することができまたはパック9の周りに構成することができる。
【0050】
図5について述べると、DEM4′は透明な基板1に使用して好適である。レーザビーム3は、基板1を通過して、レンズ2がその上に位置している側1Bの反対側の基板1の側1A上の領域R′から材料を除去する。この場合、DEM4′はレーザ窓を必要としない。
【0051】
図6について述べると、DEM4′は孔(孔H1,H2により例示される)の配列を有する板12に置き換えられる窓として図1乃至4に記述されるものを図示している。孔の各々はビームレットB1,B2がDEM4′の内側に入りこむことを許可する。板12は上流均質化光学機器により作りだされるビームレット13がフィールドレンズにより焦点スポットの配列に合焦されるレンズ絞りに位置される。これは非望遠中心投射レンズとともに起こる状況である。図6では2つのビームレットB1,B2のみが図示されているが、絞りでのビームレット及び合焦スポットの数は均質化光学機器において用いられるレンズの数に依存して100を超えることもできる。
【0052】
図7について述べると、ガスDEM4は、DEMの壁に堆積されるまたは基板表面に落下するデブリの可能性を最小をするように形成される内的構造を有している。ポート6、6′は内側のポート6、6′のデブリがDEM4に内側に向かって戻らないように下方に傾斜されて構成されている。DEM4の直径は、DEM4の壁から分離される堆積されるデブリを捕まえるよう適切に配置されている適切に噴出するデブリ捕集チャンネル14を有し底部から頂部に向かって次第に増加するようになされている。
【0053】
図8について述べると、ガスセル4は、レーザビーム3が水平でありそして基板15が垂直に取り付けられている場合に使用されるエアーパックPに取り付けられている。この場合、基板の後ろ側に取り付けられている第2のエアーパック16はセル4を間隙Gを一定の寸法に維持するよう取り付けられているパックPに基板15を圧接するのに用いられる。
【0054】
図9について述べると、この図はパック12と一体化されたDEM11を図示している。DEM11は上方端部14を有する箱13、DEM11を介してレーザビームLが矢印Aの方向に向けられる窓及び基板製品素材17の領域16での開口15を組み入れている。入り口ダクト18、19はパック12中に提供され、レーザビームLが現在除去している領域16の一部分上の領域20にガス(この場合空気)に向かわせることができる。空気の流れはボリューム22に入りそして流出ポート23によりDEMから出るまでダクト21を介して捕捉されたデブリを有する領域20から垂直に移動するようになされる。流入ダクト18、19、領域20、ボリューム22そして流出ポート23の寸法及び割合は利用できる圧力差動分を有する空気の流れが作用し除去されたデブリの量が最適なものとなるのを確実なものとする。この場合、ダクト18及び19は空気の流れを領域20に向かうようにする。しかしながら、これらのダクトのひとつへの流れが逆転して領域20からダクトに沿って流出をなさしめる用意もある。更にダクト18、19に共通の軸に対して直角な軸に沿って流入ダクト18、19と互換性のあるダクト(図示せず)が提供されており、その結果4つの流入ダクトが領域20の周辺に90°の間隔で設けられることとなる。
【0055】
図10について述べると、液体流れDEM4′は基板1に近接する窓5を具備しており、液体17の層は窓5と基板1の上面Uとの間で止められている。窓5はレンズ2を保持する同一の機構に取り付けられている。これらの両方は、センサーとサーボモータ駆動スライド装置により基板表面Uに関してより制御された方法で制御されるようになされ窓5と基板表面U及びレンズ2と基板Uとの間の間隔を一定とする。液体層17はポート18により窓5と基板1との間に間隙Gに入りこみそしてポート19により引き抜かれる。
【符号の説明】
【0056】
1…基板、2…レンズ、3…レーザビーム、4…DEM、4′…DEM,4A…下縁、5…窓、6…流出ポート、7…液体の流れ、8…流入ポート、9…エアーパック、10…ポート、11…特別なガス流入ポート、11A…空気の流れ、12…プレート、13…ビームレット、14…デブリ捕捉チャンネル、15…基板、16…第2のエアーパック、17…基板製品素材、18,19…流入ダクト、20…領域、21…ダクト、22…ボリューム、23…流出ポート、G,G′…間隙、R…領域、R′…領域、B1,B2…ビームレット、H1,H2…孔、U…上面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームを用いて、そのレーザビームの下方に位置する基板の特定領域を除去するアブレーション方法であって、
前記レーザビーム用のレンズと前記基板との間を囲み、前記基板側を開口させたモジュールに空気,ガス又は液体のいずれかを供給し、その供給した空気,ガス又は液体を前記モジュールから排出することで、前記レーザビームで前記基板の特定領域を除去することで発生するデブリを外部に排出させると共に、
前記モジュールの前記基板と対向した開口箇所の端部で、空気,ガス又は液体を前記モジュールが頂部に取り付けられたパックに供給することで、特定領域の基板表面に対してできるだけ平行な空気,ガス又は液体の流れを指向させて、前記モジュールが頂部に取り付けられたパックを前記基板表面から浮揚させるようにした
アブレーション方法。
【請求項2】
前記モジュールが頂部に取り付けられたパックの開口箇所の端部での空気,ガス又は液体の供給は、少なくとも対向した2箇所のポートから行う
請求項1記載のアブレーション方法。
【請求項3】
前記モジュールのレーザビーム入射位置に窓を設けた
請求項1又は2記載のアブレーション方法。
【請求項4】
レーザビーム用を基板に照射して、前記基板の特定領域を除去するアブレーション装置において、
前記レーザビーム用のレンズと前記基板との間を囲み、前記基板側を開口させたモジュールと、
前記モジュールに空気,ガス又は液体を供給する第1のポートと、
前記モジュールから空気,ガス又は液体を排出する第2のポートと、
前記モジュールが頂部に取り付けられたパックの前記基板と対向した開口箇所の端部に配置し、特定領域の基板表面に対してできるだけ平行な空気又はガスの流れを指向させて、前記モジュールが頂部に取り付けられたパックを前記基板表面から浮揚させるための空気,ガス又は液体を供給する第3のポートとを備え、
前記第1のポートから供給した空気,ガス又は液体を前記第2のポートから排出することで、前記レーザビームで前記基板の特定領域を除去することで発生するデブリを外部に排出させる
アブレーション装置。
【請求項5】
前記モジュールが頂部に取り付けられたパックの開口箇所の端部に配置した前記第3のポートは、少なくとも対向した2箇所に設けた
請求項4記載のアブレーション装置。
【請求項6】
前記モジュールのレーザビーム入射位置に窓を設けた
請求項4又は5記載のアブレーション装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−254482(P2012−254482A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−180204(P2012−180204)
【出願日】平成24年8月15日(2012.8.15)
【分割の表示】特願2007−520873(P2007−520873)の分割
【原出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(505207883)エキシテック リミテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】Exitech Limited
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】