説明

アプリケーションテープ

【課題】適度な表面滑り性、適度な柔軟性、および適度な接着強度を有するアプリケーションテープを提供すること。
【解決手段】アプリケーションテープは、保護用粘着シートを貼り付ける際に貼り付け作業性を向上させる機能を有するアプリケーションテープであって、PETフィルム(サイズ30mm×30mm、荷重100g、速度100mm/min)に対する、表面の静摩擦係数が、0.05〜1.0であり、かつ、ヤング率が300MPa以下である。このアプリケーションテープと保護用粘着シートとの間の接着強度は、被着体と保護用粘着シートとの接着強度よりも小さいことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアプリケーションテープおよび該アプリケーションテープを備えた保護用粘着シートに関し、特に、適度な表面滑り性、適度な柔軟性、適度な剥離強度を有するアプリケーションテープおよび保護用粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車、航空機業界においては、自動車等のボディーの塗装面の損傷防止のために透明粘着シートが貼り付けられることがある。この塗装面保護用粘着シートは、スキージ等を用いて手作業で塗装面に直接貼り付けられるが、位置ズレが生じたり、手の汚れが付着する、または、折り曲げるとシワが入る等の問題があり、また、塗装面保護用粘着シートの表面をスキージが滑らないため保護用粘着シートにシワが発生する等の問題もあった。また、アプリケーションテープを用いて塗装面保護用粘着シートをボディー表面等に貼付する場合でも、従来のアプリケーションテープでは表面の滑り性に問題がありスキージがうまく滑らないという不具合が生じることがあり、また、曲面追従性が悪いと、保護用粘着シートが曲面を持った被着体に追従させて貼ることが困難となる不具合が生じることがあり、また、貼着後に不要となったアプリケーションテープを剥離除去する際には塗装面保護用粘着シートから剥がれないという不具合が生じることもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−248120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明は、適度な滑り性、適度な柔軟性および適度な接着強度を有するアプリケーションテープを提供することを目的とする。また、該アプリケーションテープを備えた保護用粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のアプリケーションテープは、保護用粘着シートを貼り付ける際に使用され、保護用粘着シートの貼り付け作業性を向上させる機能を有する。このアプリケーションテープの、PETフィルム(サイズ30mm×30mm、荷重100g、速度100mm/min)に対する、表面の静摩擦係数は0.05〜1.0であり、アプリケーションテープのヤング率は300MPa以下である。
また、アプリケーションテープと保護用粘着シートとの間の接着強度は、該保護用粘着シートが貼着される被着体と保護用粘着シートとの間の接着強度よりも小さいことが好ましい。
本発明のアプリケーションテープは支持体および粘着剤層を有し、該支持体が可塑剤を含有する軟質ポリ塩化ビニルを用いてなることが好ましい。
【0006】
本発明のアプリケーションテープは、支持体および粘着剤層を有するアプリケーションテープであって、該支持体が可塑剤を含有する軟質ポリ塩化ビニルを用いてなり、該支持体の外表面の、PETフィルム(サイズ30mm×30mm、荷重100g、速度100mm/min)に対する、静摩擦係数が0.05〜1.0であり、アプリケーションテープのヤング率は300MPa以下であり、該粘着剤層がアクリル系粘着剤を含有することが好ましい。
【0007】
本発明のアプリケーションテープを構成する粘着剤層は、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよびアクリロニトリルからなる群から選ばれる少なくとも1つのアクリル系モノマーを主成分とし、アクリル酸および/またはメタクリル酸を官能基とし、架橋して得られる粘着剤を用いて成ることが好ましい。
【0008】
アプリケーションテープを構成する支持体は、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP)、および、フタル酸ジイソノニル(DINP)からなる群から選ばれる少なくとも1つの可塑剤を含有し、アプリケーションテープを構成する粘着剤層は、アクリル重合ポリマーに、メラミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤およびグリシジルアミン系架橋剤からなる群のうち少なくとも1種を用いて架橋してなることが好ましい。
【0009】
本発明の、アプリケーションテープを備えた保護用粘着シートは、上記アプリケーションテープのいずれかに保護用粘着シートを更に有することを特徴とする。ここで、保護用粘着シートは、粘着層と基材層とを含む。この保護用粘着シートの基材層は、少なくともウレタンポリマーを含有することが好ましい。
また、この保護用粘着シートは、最外層にコート層を有することが好ましく、コート層は、フルオロエチレンビニルエーテル交互共重合体を用いて成ることが好ましい。
本発明においては、前記保護用粘着シートの基材層の背面側に、フッ素系ポリマー、ウレタン系ポリマーまたは(メタ)アクリル系ポリマーのいずれかを含有する表面コート層を有することが好ましい。
【0010】
本発明のアプリケーションテープを備えた保護用粘着シートは、溶剤中に溶解されたフルオロエチレンビニルエーテル交互共重合体にイソシアネートを添加して得られた溶液を、剥離処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布し、乾燥させてコート層を形成し、該コート層の上にウレタンポリマーとアクリル系モノマーの混合物を塗布し、紫外線を照射してコート層と複合フィルムとを結合させた状態で形成した後、該複合フィルムの上に粘着剤層を形成し、次いで、剥離処理されたPETフィルムを剥がして該コート層の上にアプリケーションテープを貼り合わせて成ることを特徴とする。
【0011】
本発明のアプリケーションテープを備えた保護用粘着シートは、自動車、自動二輪車、トラック、ボートおよび航空機からなる群から選ばれる少なくとも1つの外装塗装面に貼付して使用されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、適度な表面滑り性、適度な柔軟性、および適度な接着強度を有するアプリケーションテープを実現することができる。また、該アプリケーションテープを備えた保護用粘着シートを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のアプリケーションテープは、保護用粘着シートを貼り付ける際に貼り付け作業性を向上させる機能を有する。このアプリケーションテープは、PETフィルム(サイズ30mm×30mm、荷重100g、速度100mm/min)に対する、表面の静摩擦係数が0.05〜1.0であり、好ましくは0.1〜0.5である。表面の静摩擦係数が0.05以上、1.0以下であれば、保護用粘着シートをスキージを用いて被着体へ貼り付ける際に良好な滑り性を発揮することができる。
【0014】
本発明のアプリケーションテープは、適度な柔軟性を有していることが必要である。本発明において、アプリケーションテープのヤング率は、300MPa以下であることが好ましい。アプリケーションテープのヤング率が300MPa以下であれば、保護用粘着シートを、曲面を持った被着体に貼り付ける際に良好な追従性を発揮することができる。
【0015】
本発明においては、アプリケーションテープと保護用粘着シートとの間の接着強度は、保護用粘着シートを適用する被着体と保護用粘着シートとの間の接着強度よりも小さいことが好ましい。このような接着強度の条件を満たせば、保護用粘着シートを被着体へ貼り付けた後、保護用粘着シート表面からアプリケーションテープを剥離除去する際に容易に剥がすことができ、また、アプリケーションテープと一緒に保護用粘着シートが被着体から剥がれてしまうという問題が生じることもない。
【0016】
本発明のアプリケーションテープは、支持体および粘着剤層を有している。この支持体は、可塑剤を含有する軟質ポリ塩化ビニルを用いてなることが好ましく、該支持体の外表面の、PETフィルム(サイズ30mm×30mm、荷重100g、速度100min/min)に対する、静摩擦係数が0.05〜1.0である。
【0017】
この可塑剤としては、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(以下「DOP」と略称することもある)、フタル酸ジイソノニル(以下「DINP」と略称することもある)等が、生産量、価格等の面から好ましいものとして挙げられるが、例えば、フタル酸ジブチル(以下「DBP」と略称することもある)等の低分子可塑剤やエポキシ系高分子可塑剤も挙げられ、また、これらの併用系でも良い。
【0018】
可塑剤の配合量は、例えば、PVCの100重量部に対して、10重量部以上、50重量部以下であることが好ましく、20重量部以上、40重量部以下であることが更に好ましい。可塑剤の配合量が10重量部〜50重量部であれば、基材の弾性率/柔軟性(曲面追従性)の両立の面から好ましく、一般的なPVC系粘着テープの支持体として適用し得る。
【0019】
本発明のアプリケーションテープには、滑剤を含有させることができる。滑剤としては、例えば、メチレンビス脂肪酸アミド、エチレンビス脂肪酸アミド等の脂肪酸アミド類を用いることが出来る。滑剤の配合量は、例えば、PVCの100重量部に対して、0.1重量部以上、5重量部以下であることが好ましく、0.5重量部以上、3重量部以下であることが更に好ましい。滑剤の配合量が0.1〜5重量部であれば、表面すべり性付与の効果を維持した上で、粘着力低下、汚染などの不具合を最小限にするという利点がある。一方、滑剤の配合量が0.1重量部未満であると、添加した効果が得難く、また、5重量部を超えると添加剤が粘着剤面に多量に移行し、粘着力低下や被着体面への汚染などの不具合が起こる場合がある。
【0020】
アプリケーションテープを構成する支持体の厚みは、50μm以上、200μm以下であることが好ましいが、これらに限定されるものではない。支持体の厚みが50μm以上、200μm以下であれば、支持体の剛性面の観点から取り扱いが容易であり、貼り合せ作業性を付与するという本来のアプリケーションテープの目的に合致している。また、支持体の厚みが200μm以下であれば、曲面の追従性に優れ、しかもコスト面の観点からも200μm以下とすることが好ましい。
【0021】
アプリケーションテープを構成する粘着剤層は、アクリル系粘着剤を含有する。このアクリル系粘着剤は、アクリロニトリル(AN)、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート等のアクリル系モノマーを主モノマー成分とする。これらのアクリル系モノマーは単独で、あるいは2種類以上を併用して使用することができる。また、このアクリル系粘着剤は、主モノマー成分に、官能基を有するモノマー成分を共重合させて得られるアクリル系共重合体(2種類以上であっても良い)を含む。かかる官能基としては、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MMA)等のカルボキシル基、ヒドロキシルアクリレート(HEA)等の水酸基等が挙げられるがこれに限定されるものではない。また、官能基を有するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、酢酸ビニル、スチレン等を使用しても良い。
【0022】
粘着剤を構成するアクリル系共重合体は、主ポリマー成分100重量部に対して、官能基を有するモノマー成分を0.1重量部以上、20重量部以下、好ましくは0.5重量部以上、15重量部以下、更に好ましくは1重量部以上、10重量部以下の範囲で用いて共重合させて得られる。
【0023】
このアクリル系共重合体は、上記アクリル系モノマー等をエマルジョン重合、溶液重合等して得ることができる。その分子量は、重量平均分子量(Mw)が、200,000以上、1,500,000であることが好ましく、かかる分子量のアクリル系共重合体が好ましく使用される。
【0024】
本発明のアプリケーションテープを構成する粘着剤層の形成に使用される粘着剤は、主ポリマー、すなわち、アクリル系共重合体(2種以上であっても良い)の他に、イソシアネート系架橋剤、グリシジルアミン系架橋剤、および、メラミン系架橋剤からなる群から選ばれる少なくとも1種類を含有することが好ましい。ただし、本発明においては、これらに限定されるものではなく、適宜、その他アクリルポリマーと架橋するものであれば使用可能である。
その配合量は、アクリル系共重合体の100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤を使用する場合には0.5〜10重量部、好ましくは1.0〜5.0重量部であり、グリシジルアミン系架橋剤を使用する場合には0.2〜2.0重量部、好ましくは0.3〜1.0重量部であり、メラミン系架橋剤を使用する場合には0.5〜10重量部、好ましくは0.8〜5.0重量部である。
【0025】
本発明に使用されるイソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等が挙げられる。これらのイソシアネート系架橋剤は、例えば、TDIとしては、コロネート−L(日本ポリウレタン工業株式会社製)、DESMODUR−L75(BAYER.A.G製)等を商業的に入手可能であり、MDIとしては、ミリオネートMR−300(日本ポリウレタン工業株式会社製)等を商業的に入手可能である。
【0026】
本発明に使用されるグリシジルアミン系架橋剤としては、例えば、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(ex.日本ガス化学社製の「TETRAD−C」を商業的に入手可能)が好ましいものとして挙げられる。なお、カルボキシル基・水酸基等の官能基と常温(20℃〜30℃)で化学反応を速やかに起こすものであれば、特に限定されることなく使用することができる。
【0027】
本発明に使用されるメラミン系架橋剤としては、例えば、ブタノール変性メラミンホルムアルデヒド樹脂等が好ましいものとして挙げられ、日本ポリウレタン工業株式会社製の「スーパーベッカミン J−820−60N」、BASF社製の「Luwipal 012」等が商業的に入手可能である。
なお、DOP等の可塑剤による粘着剤の可塑化を防止するために用いられるものであれば、上記樹脂に限定されることなく使用することができる。
【0028】
アプリケーションテープを構成する粘着剤層に用いられるアクリル系粘着剤は、アクリル系共重合体および上記した3種類の架橋剤の少なくとも1種類を用いて架橋して成ることができる。
【0029】
本発明において粘着剤層は、厚みが1〜30μmであることが好ましく、5〜15μmであることが更に好ましい。
【0030】
アプリケーションテープを構成する支持体および粘着剤層には、それぞれ、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の通常使用される各種添加剤を、本発明の効果を阻害しない範囲内で添加することができる。これらの添加剤は、その種類に応じて通常の量で用いられる。
【0031】
本発明のアプリケーションテープは、シート状のものを積層した状態で保管しても良いし、ロール状に巻回した状態で保管しても良い。例えば、アプリケーションテープの粘着剤層面を剥離処理されたセパレータで覆い、ロール状に巻回しても良いし、シート状のアプリケーションテープの粘着剤層面にセパレータを重ねて、この積層体を積み重ねた状態にしても良い。あるいは、アプリケーションテープの支持体裏面に剥離処理を施してロール状等の形状にしても良い。
【0032】
本発明のアプリケーションテープは、アプリケーションテープのまま供給されても良いが、被着体(ex.自動車、航空機等のボディー塗装面)を保護するために貼着される保護用粘着シートに貼付した形態で供給されても良い。すなわち、本発明のアプリケーションテープを備えた保護用粘着シートは、保護用粘着シートの背面側(粘着層が設けられている面とは反対側の面)にアプリケーションテープが貼り付けられている。
【0033】
本発明に使用される保護用粘着シートとしては、特に限定されることなく自由に選択することができるが、所定の接着強度を有するものであることが必要である。すなわち、保護用粘着シートと被着体との間の接着強度の方が、アプリケーションテープと保護用粘着シートとの間の接着強度よりも大きいことが必要である。この条件を満たせば一般的に使用されている保護用粘着シートを使用することができる。
【0034】
本発明に好ましく使用される保護用粘着シートとしては、例えば、基材層および粘着層を有し、基材層がウレタンポリマーを含むフィルムからなることが好ましく、このフィルムは、ウレタンポリマー及びウレタンポリマーとは異なるポリマーを含む複合フィルムであることが好ましい。
【0035】
この複合フィルムは、(メタ)アクリル系ポリマーとウレタンポリマーとを含有することが好ましい。この複合フィルム中の(メタ)アクリル系ポリマーとウレタンポリマーとの混合比は、例えば、重量比で、アクリル成分/ウレタン成分=0.25以上、4.00以下であることが好ましい。
【0036】
本発明において、(メタ)アクリル系ポリマーは、少なくとも(メタ)アクリル酸系モノマー、および、単官能(メタ)アクリル系モノマーを含むアクリル成分を用いてなることが好ましい。
【0037】
本発明において(メタ)アクリル酸系モノマーとは、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーであり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。本発明においては特にアクリル酸が好ましいが、メタクリル酸、または、アクリル酸とメタクリル酸との混合物でも良いし、あるいは、他の酸性基を有するモノマーを混合しても良い。他の酸性基を有するモノマーとしては、例えば、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有単量体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有単量体、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、2−ヒドロキシプロピルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有単量体等が挙げられる。
【0038】
(メタ)アクリル酸系モノマーの含有量は、後述する複合フィルム前駆体中、1重量%以上、40重量%以下であることが好ましい。
なお、本発明において「フィルム」という場合には、シートを含み、「シート」という場合には、フィルムを含む概念とする。また、本発明において(メタ)アクリル系ポリマー、(メタ)アクリル酸系モノマーのように、「(メタ)アクリル」と表示する場合には、メタアクリル、アクリルを総称する概念とする。また、「アクリル」と表示した場合でも、一般常識上問題がなければ、メタアクリルも含む概念とする。
【0039】
本発明に使用される単官能(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート等;および、アクリロイルモルホリン、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート等が挙げられる。これらの単官能(メタ)アクリル系モノマーは単独で、あるいは2種以上を併用することができる。また、本発明において使用される単官能(メタ)アクリル系モノマーは、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーであっても良い。水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、1,4−シクロへキサンジメタノールモノアクリレート、1,4−シクロへキサンジメタノールモノメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ペンタエリスリトールアクリレートなどが挙げられる。これらの水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーは、単独で使用されても良いし、または、2種以上が用いられても良い。
【0040】
単官能(メタ)アクリル系モノマーの含有量は、アクリル成分中、20重量%以上、99重量%以下であることが更に好ましい。
【0041】
ウレタンポリマーは、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られる。ジオールの水酸基とイソシアネートとの反応には、一般的には触媒が用いられるが、本発明によれば、ジブチルチンジラウレート、オクトエ酸錫のような環境負荷が生じる触媒を用いなくても反応を促進させることができる。
【0042】
本発明に用いられるポリオールとしては、例えば、エチレンジオール、1,4−ブチレンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレンジオール、ポリ(オキシプロピレン)ジオール、ポリ(オキシテトラメチレン)ジオール、脂肪族系のポリエステルポリオール(脂肪族ジオールと脂肪族二塩基酸の縮合物;例えば、脂肪族ジオールとしてエチレンジオール、1,4−ブチレンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルジオール、3−メチル−11,5−ペンタンジオール、ジエチレンジオール、脂肪族二塩基酸として、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸)、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール(脂肪族ジオールとエチレンカーボネートの付加物、脂肪族ジオールとジメチルカーボネートの縮合物、脂肪族ジオールとジエチルカーボネートの縮合物;例えば、脂肪族ジオールとしてエチレンジオール、1,4−ブチレンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレンジオール)などの高分子量ジオール、低分子量ジオール等が挙げられる。これらのジオールは1種または2種以上が用いられる。本発明においては、ポリオールとしてポリ(オキシテトラメチレン)ジオール(PTMG)を用いることが望ましい。
【0043】
本発明において、ウレタンポリマーは架橋構造を含まない。ウレタンポリマーの形成に使用されるポリオールは、線状(リニア)のポリオールであることが好ましい。但し、ウレタンポリマーに架橋構造を形成させないという条件を満たす限りにおいて、ポリオールは側鎖状のポリオールまたは分岐構造を含むポリオールであっても良い。すなわち、本発明の複合フィルムを構成するウレタンポリマーは架橋構造を含まないものであり、したがって、IPN構造とは構造的に全く異なるものである。
【0044】
本発明に用いられるポリイソシアネートとしては芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネート、これらのジイソシアネートの二量体、三量体等が挙げられる。芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、フェニレンジイソシアネート(PPDI)、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(水素化TDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素化MDI)、シクロヘキサンジイソシアネート(水素化PPDI)、ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン(水素化XDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ブタンジイソシアネート、2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート等が挙げられる。これらのジイソシアネート類は単独あるいは併用で使用することができる。また、上記ジイソシアネート類の二量体、三量体や、ポリフェニルメタンジイソシアネートが用いられる。三量体としては、イソシアヌレート型、ビューレット型、アロファネート型等が挙げられ、適宜、使用することができる。
【0045】
本発明においては、ウレタン系ポリマーが、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水添トリレンジイソシアネート(HTDI)、水添4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、および、水添キシレンジイソシアネート(HXDI)からなる群から選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートを用いて形成されることが好ましく、水添キシレンジイソシアネートが特に好ましい。
【0046】
本発明において、ウレタンポリマーを形成するためのポリオール成分とポリイソシアネート成分の使用量は、NCO/OH(当量比)が1.1以上、2.0以下であることが好ましい。
【0047】
複合フィルムには、必要に応じて、通常使用される添加剤、例えば紫外線吸収剤、老化防止剤、充填剤、顔料、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、光安定剤などを本発明の効果を阻害しない範囲内で添加することができる。これらの添加剤は、その種類に応じて通常の量で用いられる。
【0048】
本発明においては、塗工の粘度調整のため少量の溶剤を加えてもよい。溶剤としては、通常使用される溶剤の中から適宜選択することができるが、例えば、酢酸エチル、トルエン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0049】
本発明において複合フィルムは、例えば、アクリル系モノマーを希釈剤として、このアクリル系モノマー中でジオールとジイソシアネートとの反応を行ってウレタンポリマーを形成し、アクリル系モノマーとウレタンポリマーとを主成分として含む混合物を仮支持体(必要に応じて剥離処理されている)や後述するコート層等の上に塗布し、光重合開始剤の種類等に応じて、α線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線や紫外線等の放射線、可視光等を照射して硬化させ、その後、必要に応じて仮支持体等を剥離除去することにより、複合フィルムを形成することができる。この際、酸素による重合阻害を避けるために、塗布した混合物の上に、剥離処理したシート(セパレータ等)をのせて酸素を遮断してもよい。なお、アクリル系モノマーとウレタンポリマーの混合物を形成するための反応条件は適宜設定することができるが、例えば、内浴温度は20℃以上、90℃以下であり、反応時間は1時間以上、48時間以下であることができる。
【0050】
紫外線などの照射量は、要求されるフィルムの特性に応じて、任意に設定することができるが、一般的には、紫外線の照射量は100〜5,000mJ/cmである。
【0051】
ウレタンポリマーとアクリル系モノマーとを主成分とする混合物には、光重合開始剤が含まれる。光重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ケタール系光重合開始剤、α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤、α−アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、ベゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤等を用いることができる。
【0052】
本発明に係る保護用粘着シートを構成する基材層の厚みは、目的等に応じて、例えば被覆保護する対象物の種類や箇所等に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることが更に好ましく、150μm以上であることが特に好ましい。また、厚みの上限値は1mm程度であることが好ましく、500μm以下であることが更に好ましく、400μm以下であることが特に好ましい。
【0053】
本発明に使用される保護用粘着シートは、基材層の背面側にコート層を有していることが好ましい。コート層は、フッ素系ポリマー、ウレタン系ポリマーまたは(メタ)アクリル系ポリマーのいずれかを含有することが好ましく、フルオロエチレン単位とビニルエーテル単位とが交互に並んだフルオロエチレンビニルエーテル交互重合体を用いて成ることが好ましく、コート層の厚みは、2〜50μmであることが好ましく、5〜30μmであることが特に好ましい。
なお、コート層および基材層は結合した状態であることが好ましく、そのためにはコート層にフルオロエチレンビニルエーテル交互重合体および基材層に上記複合フィルム用成分を使用する必要がある。このように結合した状態であれば、コート層は基材層に対して優れた接着性を保持することができるので、アプリケーションテープを剥離する際にコート層が基材層から剥がれてしまうことはない。
【0054】
本発明においては、フルオロエチレンビニルエーテル交互重合体を溶媒に溶解させ、これに多官能イソシアネートを添加してコート層用塗布液を形成し、この溶液を用いてコート層を形成する。例えば、剥離処理されたポリエチレンフィルム上にこの溶液を塗布し、乾燥させてコート層を形成する。このコート層の上に、ウレタンポリマーを含有する混合物(複合フィルム用塗布液)を塗布し、紫外線等を照射することにより、コート層/複合フィルムの積層体を得ることができる。
【0055】
あるいは、水酸基含有モノマーと多官能イソシアネートとを反応させた後、フルオロエチレンビニルエーテル交互重合体を添加し、この溶液を用いてコート層を形成する。例えば、この溶液を剥離処理されたPETフィルムの上に塗布し、乾燥させてコート層を形成する。このコート層の上に、ウレタンポリマーを含有する複合フィルム用塗布液を塗布し、紫外線等を照射して硬化させることにより、コート層/複合フィルムの積層体を得ることができる。
【0056】
上記多官能イソシアネートは、イソシアネート基を分子内に2個以上有するものである。多官能イソシアネートとしては、例えば、水添キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイシシアネート、エチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の2官能イソシアネート、デスモジュールN3200(住化バイエルウレタン(株)製)、コロネートL(日本ポリウレタン工業(株)製)、コロネートHL(日本ポリウレタン工業(株)製)、コロネートHX(日本ポリウレタン工業(株)製)、タケネートD−140N(三井化学ポリウレタン(株)製)、タケネートD−127(三井化学ポリウレタン(株)製)、タケネートD−110N(三井化学ポリウレタン(株)製)等の3官能イソシアネートなどが挙げられる。本発明においては、これらの多官能イソシアネートを単独で、または2種以上併用することができる。
【0057】
保護用粘着シートを構成する粘着層は、例えば片面にコート層を有する場合にはコート層とは反対側の面に設けられる。この粘着層を形成する粘着剤は、特に限定されず、アクリル系、ゴム系、シリコン系等、一般的なものを使用することができるが、低温での接着性や高温での保持性、コスト面等を考慮するとアクリル系の粘着剤が好ましい。
【0058】
アクリル系粘着剤としては、アクリル酸エステルを主体とするモノマー成分に、カルボキシル基やヒドロキシル基等の官能基を有するモノマー成分を共重合したアクリル系共重合体(2種類以上であっても良い)を含むアクリル系粘着剤を用いることができる。
【0059】
アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのアルキル(メタ)アクリレートは1種または2種以上を用いることができる。
【0060】
上記アルキル(メタ)アクリレートに下記モノマー成分を共重合することができる。共重合可能なモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、フマル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基を含有するモノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシへキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有モノマー;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のシアノアクリレート系モノマー;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−3−モルホリノン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−1,3−オキサジン−2−オン、N−ビニル−3,5−モルホリンジオン、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−アクリロイルピロリジン、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の含窒素モノマー、スチレンやスチレンの誘導体、酢酸ビニル等のモノマー等が挙げられる。これらのモノマーを必要に応じて、1種又は2種以上を、(メタ)アクリル酸エステルに共重合させて使用することができる。
【0061】
本発明に用いられる粘着剤は、アクリル酸2−エチルヘキシルおよびアクリル酸イソノニルからなる群から選ばれる少なくとも1種類と、アクリル酸およびメタクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類のカルボキシル基含有モノマーとを含むことが好ましい。すなわち、本発明に用いられる粘着剤は、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソノニル等を主モノマーとし、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマーを共重合した共重合体を使用することができる。
【0062】
粘着層の厚みについては、特に限定があるわけではなく任意に設定することができるが、通常は20μm以上であることが好ましく、更に好ましくは30μm以上、特に好ましくは40μm以上である。但し、上限値は通常1000μm程度であることが好ましい。
【0063】
本発明において、粘着層は、例えば、基材層等に、溶剤系、エマルジョン系の粘着剤を直接塗布し、乾燥する方法、これらの粘着剤を剥離紙に塗布し、予め粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層を基材層等に貼り合わせる方法等を適用することができる。放射線硬化型粘着剤を基材層に塗布し、粘着剤層と、フィルムの両方に放射線を照射することにより、多層シートと粘着剤層を同時に硬化させて、形成する方法も適用することができる。
【0064】
保護用粘着シートは、塗膜保護用などに使用する場合には被着体の塗装面の色等をそのまま外観に反映させるためには透明であることが好ましい。
【0065】
上記保護用粘着シートは、高強度と高破断伸びを両立することができ、曲面に対する柔軟性にも優れており、また、防汚性、耐候性、耐熱性、耐薬品性、透明性等の特性に優れている。
【0066】
本発明のアプリケーションテープは、保護用粘着シートの貼り付け作業を向上させ、貼付位置決めに有効に機能する。また、適度な滑り性を有するので、貼着される保護用粘着シートを傷つけることなく、シワ等の外観上の問題も発生することなく保護用粘着シートを貼着することができ、しかも、適度な接着強度を有するので、使用後にアプリケーションテープを容易に剥離することができる。
本発明のアプリケーションテープを備えた保護用粘着シートは、輸送機械、例えば、自動二輪、自転車、鉄道車両、船舶、スノーモービル、ゴンドラ、リフト、エスカレーター、自動車、航空機等、特に自動車、航空機、自動二輪等の塗装面を保護するための保護用粘着シートの貼着に作業に非常に優れており、かかる用途に好適である。
【実施例】
【0067】
以下に実施例を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特にことわりがない限り、部は重量部を意味し、%は重量%を意味する。また、以下の実施例において使用される測定方法および評価方法は下記に示す。
【0068】
(測定方法および評価方法)
実施例の評価に使用する試験用サンプルは、以下のようにして作製した。
得られた保護用粘着シートを100mm×200mmの大きさに切断した。得られたアプリケーションテープは150mm×250mmの大きさに切断し、保護用粘着シートの中心部分にアプリケーションテープのコート層面を貼り合わせて試験用サンプルとした。なお、アプリケーションテープを備えていない比較例では、保護用粘着シートのみを上記大きさに切断して試験用サンプルとした。
【0069】
(1)保護用粘着シートの汚れの付着
試験用サンプルを自動車後部ドアの塗装面に、布を巻いたポリプロピレン(PP)製のヘラを用いて貼り付けた。アプリケーションテープを備えている場合にはアプリケーションテープを剥がし、保護用粘着シートの表面を目視で観察した。なお、評価は下記に示す評価基準に基づいて行った。
評価基準:
「○」 保護用粘着シートに指紋等の汚れが全く付着していない。
「×」 保護用粘着シートに指紋等の汚れが認められる。
【0070】
(2)保護用粘着シートの表面の傷
試験用サンプルを自動車後部ドアの塗装面に、布を巻いたポリプロピレン(PP)製のヘラを用いて貼り付けた。アプリケーションテープを備えている場合にはアプリケーションテープを剥がし、保護用粘着シートの表面を目視で観察した。なお、評価は下記に示す評価基準に基づいて行った。
評価基準:
「○」 保護用粘着シートの表面にはヘラ等による傷が認められない。
「×」 保護用粘着シートの表面にヘラ等による傷が認められる。
【0071】
(3)貼り付け作業時における表面の滑り性
試験用サンプルを自動車後部ドアの塗装面に、布を巻いたポリプロピレン(PP)製のヘラを用いて貼り付けた。この貼り付け作業時における試験用サンプルの表面滑り性について評価を行った。なお、評価は下記に示す評価基準に基づいて行った。
評価基準:
「A」 試験用サンプルの表面をヘラが滑らかに滑り、貼り付け作業が容易に行えた。
「B」 試験用サンプルの表面のヘラの滑りは全く滑らかというわけではないが、貼り付け作業に問題は生じなかった。
「C」 試験用サンプルの表面のヘラの滑りが滑らかでなく、貼り付け作業が困難であった。
【0072】
(4)湾曲部への追従性
試験用サンプルを自動車後部ドアの塗装面に、布を巻いたポリプロピレン(PP)製のヘラを用いて貼り付けた。アプリケーションテープを備えている場合にはアプリケーションテープを剥がし、保護用粘着シートを目視で観察した。なお、評価は下記に示す評価基準に基づいて行った。
評価基準:
「○」 保護用粘着シートがドア曲面にきちんと追従して貼着されていた。
「×」 保護用粘着シートにシワが発生するか、気泡が入り込んでおり、貼着が不完全であった。
【0073】
(5)アプリケーションテープの剥がし易さ
試験用サンプルを自動車後部ドアの塗装面に、布を巻いたポリプロピレン(PP)製のヘラを用いて貼り付けた後、アプリケーションテープを剥がして、その剥がし易さの評価を行った。なお、評価は下記に示す評価基準に基づいて行った。
評価基準:
「○」 アプリケーションテープのみを容易に剥がすことができた。
「×」 保護用粘着シートも一緒に剥がれてしまった。
【0074】
(6)アプリケーションテープ剥離時の保護用粘着シートの被着体からの浮き
試験用サンプルを自動車後部ドアの塗装面に、布を巻いたポリプロピレン(PP)製のヘラを用いて貼り付けた。アプリケーションテープを剥がして、保護用粘着シートの状態を観察した。なお、アプリケーションテープを剥離した際に、保護用粘着シートに浮きが発生した場合は「有」と表示し、保護用粘着シートに全く浮きが発生しなかった場合は「無」と表示した。
【0075】
(7)保護用粘着シートの位置ズレ
自動車後部ドアの塗装面に、100mm×200mmの長方形の枠、および、該枠を中心として150mm×250mmの長方形の枠をマジックで書き記した。次に、その内側の枠内に、試験用サンプルを、布を巻いたポリプロピレン(PP)製のヘラを用いて貼り付けた。アプリケーションテープを備えている場合にはアプリケーションテープを剥がし、被着体に貼着した保護用粘着シートに位置ズレが生じたか否か観察した。なお、評価は下記に示す評価基準に基づいて行った。
評価基準:
「A」 位置ズレが生じずに保護用粘着シートを枠内に正確に貼着することができた。
「B」 わずかに位置ズレ(約1.0〜2.0mm)が生じたが問題がない程度であった。
「C」 大幅な位置ズレ(約5.0mm以上)が生じた。
【0076】
(8)180度折り曲げた際のシワ
100mm×100mmのサイズの試験用サンプルを、対角線上に5秒間折り曲げた後、保護用粘着シートにシワが発生するか否かについて下記評価基準に基づき評価を行った。評価基準は、アプリケーションテープを剥離した際に、保護用粘着シートにシワが確認された場合は「有」と表示し、保護用粘着シートにシワが確認されなかった場合は「無」と表示した。
【0077】
(9)接着強度
試験用サンプルを自動車後部ドアの塗装(酸・エポキシ架橋型アクリル系塗装(メタリック黒))面に2kgローラーを1往復させて圧着して貼り付け、1時間経過した後に、アプリケーションテープと保護用粘着シートとの間の接着強度、および、保護用粘着シートと被着体との間の接着強度を、試験片幅10mm、剥離角度180度、引張速度300mm/minで測定した。
【0078】
(実施例1)
《アプリケーションテープの作製》
支持体として、塩化ビニル樹脂(重合度(P)=1,050)の100部に対して、フタル酸(2−エチルヘキシル)(DOP)を27部含有する軟質ポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルム(70μm厚)を得た。
得られたフィルムの片面に、トルエンを溶媒としたシリコーン樹脂を塗布後、150℃にて1分間乾燥させて、0.1g/mの背面処理層を得た。
【0079】
アクリル系共重合体(BA/AN/AA=85部/15部/2.5部)(Mw=800,000)を100部、架橋剤としてブタノール変性メラミンホルムアルデヒド樹脂(「スーパーベッカミン J−820−60N」、日本ポリウレタン工業株式会社製)を10部、および、フタル酸2−エチルヘキシル(DOP)を60部用いてアクリル系粘着剤を作製した。このアクリル系粘着剤をトルエンに溶解して粘着剤溶液とし、この粘着剤溶液を上記支持体の片面(シリコーン樹脂を塗布していない面)に塗布し、130℃で90秒間乾燥させて、厚み10μmの粘着剤層を支持体上に形成して、アプリケーションテープを得た。
【0080】
《複合フィルム用塗布液の作製》
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、アクリル酸(AA)を10部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を20部、アクリル酸n−ブチル(BA)を20部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を36.4部とを投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)の13.6部を滴下し、65℃で10時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。
【0081】
その後、光重合開始剤として、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキサイド(チバ・ジャパン(株)製の「IRGACURE819」)を0.3部、紫外線吸収剤として、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンとモノ[〈C10〜C16−アルコキシ 主としてC12〜C13〉メチル]オキシラン誘導体との反応生成物と、1−メトキシ−2−プロパノールからなる紫外線吸収剤(チバ・ジャパン(株)製の「TINUVIN 400」)を1.25部、および光安定剤として、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物(チバ・ジャパン(株)製の「TINUVIN 123」)を1.25部添加して、ウレタンポリマーとアクリル系モノマーの混合物(複合フィルム用塗布液)を得た。但し、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
【0082】
《コート層用塗布液の作製》
0.7部の4−ヒドロキシブチルアクリレート(日本化成(株)製の「4HBA」)と、11.2部のイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業(株)製の「コロネートHX」)とを混合して、12時間反応させて反応液を得た。フルオロエチレンビニルエーテルのキシレンおよびトルエンによる50%濃度溶解液(旭硝子(株)製の「LF600」)の100部に、得られた反応液(11.9部)を硬化剤として添加し、また、触媒として3.5部のジブチル錫ラウリン酸(東京ファインケミカル株式会社製の「OL1」)のキシレン希釈液(固形分濃度が0.01%)を添加し、さらに、希釈溶媒としてトルエン110部を添加して、コート層用塗布液を作製した。
【0083】
《アプリケーションテープを備えた保護用粘着シートの作製》
得られたコート層用塗布液を、仮支持体1として、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ75μm)の上に塗布し、温度140℃で3分間乾燥および硬化させてフルオロエチレンビニルエーテル層を形成した。なお、コート層の厚みは10μmであった。
【0084】
このコート層の上に、作製した複合フィルム用塗布液を、硬化後の厚みが300μm(表面コート層の厚みも含めると310μm)と成るように塗布し、この上にセパレータとして剥離処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを重ねた。このPETフィルム面に、メタルハライドランプを用いて紫外線(照度290mW/cm、光量4,600mJ/cm)を照射して硬化させて、仮支持体1の上にコート層および複合フィルムを形成した。
【0085】
予め、アクリル酸(2−エチルヘキシル)を主モノマーとするアクリル系粘着剤を用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に粘着層を形成しておいた。
形成した複合フィルム面に、予め形成しておいた粘着層を重ねて、保護用粘着シートを作製した。
【0086】
次いで、保護用粘着シートの仮支持体1を剥がし、コート層の上に、アプリケーションテープの粘着剤層を重ねて貼り合わせ、アプリケーションテープを備えた保護用粘着シートを作製した。得られたアプリケーションテープを備えた保護用粘着シートについて、上記(1)〜(9)の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0087】
また、アプリケーションテープを備えた保護用粘着シートを、白色塗装板(日本テストパネル社製 ダル鋼板(JIS−G3141)の白色アクリル焼付け)に、2kgのローラーを1往復させて圧着し、貼り付けた後、支持体表面の静摩擦係数を測定した。すなわち、試験片形状:30mm×30mm、相手材:厚み50μmのPETフィルムを、日東電工(株)製の両面テープ(No.5000N)で滑り片重量100gのSUS304に貼り付けた試験片を、アプリケーションテープの支持体面上で、試験速度:100mm/minで滑らせて静摩擦係数を測定した。この静摩擦係数は、0.40であった。また、ヤング率は250MPaであった。
【0088】
(実施例2)
実施例1のアプリケーションテープの作製において、支持体の厚みを70μmから110μmに変更した以外は実施例1と同様にして、アプリケーションテープを作製した。
【0089】
すなわち、支持体として、塩化ビニル樹脂(重合度(P)=1,050)の100部に対して、フタル酸(2−エチルヘキシル)(DOP)を27部含有する軟質ポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルム(110μm厚)を得た。得られたフィルムに、トルエンを溶媒としたシリコーン樹脂を塗布した後、150℃で1分間乾燥させて、0.1g/mの背面処理層を得た。
【0090】
次に実施例1と同様にして粘着剤層を積層した。すなわち、アクリル系共重合ポリマー(BA/AN/AA=85部/15部/2.5部)(Mw=800,000)を100部、架橋剤としてブタノール変性メラミンホルムアルデヒド樹脂(スーパーベッカミン J−820−60N、日本ポリウレタン工業株式会社製)を10部、および、フタル酸2−エチルヘキシル(DOP)を60部混合して粘着剤を作製した。このアクリル系粘着剤をトルエンに溶解して粘着剤溶液とし、この粘着剤溶液を支持体の片面に塗布し、130℃で90秒間乾燥させて厚み10μmの粘着剤層を支持体上に形成して、アプリケーションテープを得た。
【0091】
得られたアプリケーションテープを用いて、実施例1と同様にしてアプリケーションテープを備えた保護用粘着シートを作製した。得られたアプリケーションテープを備えた保護用粘着シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
得られたアプリケーションテープの支持体表面の静摩擦係数を実施例1と同様にして測定したところ、静摩擦係数は0.44であった。また、ヤング率は230MPaであった。
【0092】
(実施例3)
実施例1のアプリケーションテープの作製において、粘着剤層を以下のように変更した以外は実施例1と同様にしてアプリケーションシートを作製した。
すなわち、支持体として、塩化ビニル樹脂(重合度(P)=1,050)の100部に対して、フタル酸(2−エチルヘキシル)(DOP)を27部含有する軟質ポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルム(70μm厚)を得た。
得られたフィルムに、トルエンを溶媒としたシリコーン樹脂液を塗布した後、150℃で1分間乾燥させて、0.1g/mの背面処理層を得た。
【0093】
アクリル系共重合ポリマー(BA/AN/AA=85部/15部/2.5部)(Mw=800,000)を100部、イソシアネート系架橋剤としてトリレンジイソシアネートトリメチロールプロパン(コロネートL、日本ポリウレタン工業株式会社製)を2重量部、メラミン系架橋剤としてブタノール変性メラミンホルムアルデヒド樹脂(スーパーベッカミン J−820−60N、日本ポリウレタン工業株式会社製)を3重量部、および、フタル酸2−エチルヘキシル(DOP)を60部混合して粘着剤を作製した。このアクリル系粘着剤をトルエンに溶解して粘着剤溶液とし、この粘着剤溶液を支持体の片面に塗布し、130℃で90秒間乾燥させて厚み10μmの粘着剤層を支持体上に形成して、アプリケーションテープを得た。
【0094】
得られたアプリケーションテープを用いて、実施例1と同様にしてアプリケーションテープを備えた保護用粘着シートを作製した。得られたアプリケーションテープを備えた保護用粘着シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
得られたアプリケーションテープについて、その表面の静摩擦係数を実施例1と同様にして測定したところ、静摩擦係数は0.23であった。また、ヤング率は240MPaであった。
【0095】
(実施例4)
実施例1のアプリケーションテープの作製において、支持体を以下にように変更した以外は実施例1と同様にして、アプリケーションテープを作製した。
【0096】
すなわち、支持体として、塩化ビニル樹脂(重合度(P)=1,050)の100部に対して、フタル酸(2−エチルヘキシル)(DOP)を26部、滑剤としてメチレンビス脂肪酸アミドを1.5部含有する軟質ポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルム(70μm厚)を得た。得られたフィルムに、トルエンを溶媒としたシリコーン樹脂を塗布した後、150℃で1分間乾燥させて、0.1g/mの背面処理層を得た。
【0097】
次に実施例1と同様にして粘着剤層を積層した。すなわち、アクリル系共重合ポリマー(BA/AN/AA=85部/15部/2.5部)(Mw=800,000)を100部、架橋剤としてブタノール変性メラミンホルムアルデヒド樹脂(スーパーベッカミン J−820−60N、日本ポリウレタン工業株式会社製)を10部、および、フタル酸2−エチルヘキシル(DOP)を60部混合して粘着剤を作製した。このアクリル系粘着剤をトルエンに溶解して粘着剤溶液とし、この粘着剤溶液を支持体の片面に塗布し、130℃で90秒間乾燥させて厚み10μmの粘着剤層を支持体上に形成して、アプリケーションテープを得た。
【0098】
得られたアプリケーションテープを用いて、実施例1と同様にしてアプリケーションテープを備えた保護用粘着シートを作製した。得られたアプリケーションテープを備えた保護用粘着シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
得られたアプリケーションテープの支持体表面の静摩擦係数を実施例1と同様にして測定したところ、静摩擦係数は0.51であった。また、ヤング率は180MPaであった。
【0099】
(比較例1)
アプリケーションテープを作製しなかった以外は実施例1と同様にして保護用粘着シートを作製した。すなわち、アプリケーションテープを貼り付けていない状態の保護用粘着シートを得た。得られた保護用粘着シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0100】
【表1】

【0101】
表1から明らかなように、実施例1〜4のアプリケーションテープは良好な表面の滑り性を有し、かつ、適度な接着強度を有していることが分かった。すなわち、本発明の実施例1〜4のアプリケーションテープを用いて保護用粘着シートを貼り付ければ、表面の滑り性が良好であるので、貼付位置ズレを生ずることがなく、保護用粘着シートがシワになったり、浮きが生ずることもなく、被着体へ良好な状態で貼着することができることが分かった。また、貼り付け作業が終了した後は、アプリケーションテープを容易に剥離することができた。
【0102】
なお、実施例1〜4の保護用粘着シートはコート層と基材層とが結合しており、アプリケーションテープの剥離の際に表面コート層が基材層から剥がれたりすることがなかった。また、実施例1〜4の保護用粘着シートは、ウレタンポリマーおよびアクリル系ポリマーを含む複合フィルムを備えているので、強度、柔軟性等にも優れており、被着体、例えば自動車のボディー曲面に十分に追従することができた。
【0103】
一方、本願発明のアプリケーションテープを使用せずに貼り付け作業を行った比較例1では貼り付け作業を容易に行うことができなかった。また、このようにして貼着された保護用粘着シートは、位置ズレが生じ、表面に指紋等の汚れ等が付着し、傷つきが認められた。
【0104】
以上説明したように、本発明のアプリケーションテープは適度な表面滑り性、適度な柔軟性、および適度な接着強度を有するので、アプリケーションテープを用いて保護用粘着シートを被着体(ex.自動車等のボディー)に貼着すると、位置ズレが生じず、しかも、シワや浮きが生じることなく曲面に十分に追従させることができ、貼着後はアプリケーションテープを容易に剥がすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明のアプリケーションテープは、保護用粘着シートの貼り付け作業性および貼着仕上がり性(外観等)を向上させることができるので、保護用粘着シートの貼り付け作業時に有効に利用される。また、貼着された保護用粘着シートは美しい外観を呈するので、自動車や航空機等の塗膜面等のように外観の美しさが重視される箇所、要求される箇所や分野において好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護用粘着シートを貼り付ける際に貼り付け作業性を向上させる機能を有するアプリケーションテープであって、PETフィルム(サイズ30mm×30mm、荷重100g、速度100mm/min)に対する、表面の静摩擦係数が、0.05〜1.0であり、かつ、ヤング率が300MPa以下であることを特徴とするアプリケーションテープ。
【請求項2】
前記アプリケーションテープと保護用粘着シートとの間の接着強度が、被着体と該保護用粘着シートとの接着強度よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のアプリケーションテープ。
【請求項3】
前記アプリケーションテープが支持体および粘着剤層を有し、該支持体が可塑剤を含有する軟質ポリ塩化ビニルを用いてなることを特徴とする請求項1または2に記載のアプリケーションテープ。
【請求項4】
支持体および粘着剤層を有するアプリケーションテープであって、該支持体が可塑剤を含有する軟質ポリ塩化ビニルを用いてなり、該支持体の外表面の、PETフィルム(サイズ30mm×30mm、荷重100g、速度100mm/min)に対する、静摩擦係数が0.05〜1.0、ヤング率が300MPa以下であり、該粘着剤層がアクリル系粘着剤を含有することを特徴とするアプリケーションテープ。
【請求項5】
前記粘着剤層を形成する粘着剤が、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよびアクリロニトリルからなる群から選ばれる少なくとも1つのアクリル系モノマーを主モノマーとし、アクリル酸および/またはメタクリル酸を官能基とし、架橋して得られることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のアプリケーションテープ。
【請求項6】
前記支持体が、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP)、および、フタル酸イソノニル(DINP)からなる群から選ばれる少なくとも1つの可塑剤を含有し、前記粘着剤層が、アクリル重合ポリマーに、メラミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤およびグリシジルアミン系架橋剤からなる群から選ばれた少なくとも1種の架橋剤を用いて架橋してなることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のアプリケーションテープ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のアプリケーションテープに、粘着層と基材層とを含む保護用粘着シートを更に有することを特徴とするアプリケーションテープを備えた保護用粘着シート。
【請求項8】
前記アプリケーションテープを構成する粘着剤層の接着強度が、前記保護用粘着シートを構成する粘着層の接着強度よりも小さいことを特徴とする請求項7に記載のアプリケーションテープを備えた保護用粘着シート。
【請求項9】
前記保護用粘着シートの基材層が、少なくともウレタンポリマーを含有することを特徴とする請求項7または8に記載のアプリケーションテープを備えた保護用粘着シート。
【請求項10】
前記保護用粘着シートの基材層の背面側に、フッ素系ポリマー、ウレタン系ポリマーまたは(メタ)アクリル系ポリマーのいずれかを含有する表面コート層を有することを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載のアプリケーションテープを備えた保護用粘着シート。
【請求項11】
溶剤中に溶解されたフルオロエチレンビニルエーテル交互共重合体にイソシアネートを添加して得られた溶液を、剥離処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布し、乾燥させてコート層を形成し、該コート層の上にウレタンポリマーとアクリル系モノマーの混合物を塗布し、紫外線を照射してコート層と複合フィルムとを結合させた状態で形成した後、該複合フィルムの上に粘着剤層を形成し、次いで、剥離処理されたPETフィルムを剥がして該コート層の上に請求項1から6のいずれか1項に記載のアプリケーションテープを貼り合わせて成ることを特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載のアプリケーションテープを備えた保護用粘着シート。
【請求項12】
自動車、自動二輪車、トラック、ボートおよび航空機からなる群から選ばれる少なくとも1つの外装塗装面に貼付して使用されることを特徴とする請求項7から11のいずれか1項に記載のアプリケーションテープを備えた保護用粘着シート。

【公開番号】特開2012−46723(P2012−46723A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100542(P2011−100542)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】