説明

アミジノ誘導体を有効成分として含む神経細胞の保護剤

【課題】
神経細胞の保護剤を提供すること。
【解決手段】
下記一般式[I]で表される化合物またはその塩類を有効成分として含む神経細胞の保護剤である。式中、R、RおよびRは同一または異なって水素原子またはアルキル基を示し、あるいはRとRは結合して1または複数の二重結合を有する環を形成してもよい。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般式[I]で表される化合物またはその塩類を有効成分として含む神経細胞の保護剤であり、特に網膜疾患や緑内障などの視神経障害を伴う眼疾患の予防または治療剤に関する。
【化1】

【背景技術】
【0002】
網膜は、外部からの光を受容する機能を有しており、視機能に関して重要な役割を果たしている。構造的には網膜色素上皮層を始め、内網状層、神経節細胞層、神経線維層等、10層の層から成る、厚さ0.1〜0.5mmの組織である。内網状層には、アマクリン細胞という神経節細胞突起と対をなしてシナプスを形成する神経細胞が存在するが、光の照射開始時と終了時によく応答することから、この神経細胞は光強度の検出器として働くと考えられている。神経節細胞層には、網膜のもっとも内側に位置する神経節細胞(以下「RGC」とする。)が存在しており、運動視、周辺視、色覚、形態覚などに深く関与している。また、神経線維層には、網膜中心動静脈の分枝である網膜血管が走行しており、網膜神経細胞に酸素および栄養を供給する役割を担っている。
【0003】
ところで、網膜血管が攣縮、血栓、動脈硬化等の要因により閉塞または狭窄すると網膜血流循環に障害が生じ、網膜や視神経への酸素ならびに栄養の供給が閉ざされる。網膜血流循環障害は、網膜疾患の中で特に重要な位置を占めている。網膜血流循環障害に伴う症状の代表的な例として、網膜静脈や網膜動脈が閉塞あるいは狭窄した網膜血管閉塞症、網膜剥離の一因である糖尿病網膜症、視機能障害が出現する虚血性視神経症がある。さらに、黄斑変性症、網膜色素変性症、レーベル病などにおいても、この神経節細胞死が発症に深く関与すると考えられている。
【0004】
また、緑内障は、適切に治療されなければ失明に至る重篤な視機能障害をもたらす眼疾患のひとつである。緑内障においては網膜神経細胞のうち特にRGCが選択的に障害を受け、視神経障害が引き起こされる結果、視野障害へと進行していくことから、RGC障害を予防あるいは最小限に抑える治療を考えることが究極的な緑内障治療につながるという、いわゆる「ニューロプロテクション」という考え方が確立されつつある(非特許文献1)
緑内障性視神経障害の詳細なメカニズムは未だに明らかではないが、眼圧上昇により視神経が直接圧迫され、視神経萎縮が生ずるという機械的障害説と視神経乳頭の循環障害が視神経萎縮の主因であるという循環障害説が提唱されており、これら機械的障害と循環障害に基づく両メカニズムが複雑に関与していると考えられている。そして、機械的障害および循環障害は、いずれも視神経軸策輸送障害を引き起こし、この軸策輸送障害に伴って神経栄養因子の供給が途絶することがRGC障害の一因となっていると考えられている(非特許文献2)。また、グルタミン酸は網膜内の神経伝達物質の一つであるが、何らかの原因によりこのグルタミン酸シグナルカスケードが過度に活性化することもRGC障害の一因であると考えられている(非特許文献3)。
【0005】
以上のことから、RGCなどの網膜神経細胞に対して保護効果を有する薬物が存在すれば、網膜血管閉塞症、虚血性視神経症、網膜色素変性症およびレーベル病に代表される網膜疾患や緑内障などの視神経障害を伴う眼疾患の予防や治療に有用であることが期待される。
【0006】
他方、特許文献1および特許文献2において、一般式[I]で表される化合物またはその塩類がトリプシン阻害活性を有し、膵炎の治療に有効であることが記載されている。しかしながら、網膜疾患や緑内障などの眼疾患に関して、該化合物がいかなる薬理作用を示すかについては全く検討されていない。
【特許文献1】特開昭57−053454号公報
【特許文献2】特開昭61−33173号公報
【非特許文献1】眼科,40,251−273,1998
【非特許文献2】眼科,44,1413−1416,2002
【非特許文献3】Surv. Ophthalmol. 48,S38-S46,2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般式[I]で表される化合物またはその塩類について、新たな医薬用途を探索することは非常に興味ある課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、一般式[I]で表される化合物またはその塩類が、網膜神経細胞の興奮性アミノ酸、グルタミン酸受容体の一種であるN−メチル−D−アスパラギン酸(以下「NMDA」とする。)受容体の活性剤であるNMDAによるラット網膜障害モデルに対して優れた細胞死抑制効果を発揮することを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、一般式[I]で表される化合物またはその塩類(以下、これらを総称して「本化合物」ともいう。)を有効成分として含む、RGCなどの網膜神経細胞の保護剤であり、かかる化合物は網膜血管閉塞症、糖尿病網膜症、虚血性視神経症、黄斑変性症、網膜色素変性症およびレーベル病に代表される網膜疾患や緑内障などの視神経障害を伴う眼疾患の予防または治療剤として有用である。また、本化合物は神経細胞の保護効果を有するので、老人性痴呆、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、ALS、脊髄損傷、多発性硬化症、神経変性症、筋萎縮症、運動ニューロン損傷、急性中枢神経系損傷、筋ジストロフィーおよびプリオン病といった中枢神経障害の予防または治療剤としても有用である。
【化2】

【0010】
[式中、R、RおよびRは同一または異なって水素原子またはアルキル基を示し、あるいはRとRは結合して1または複数の二重結合を有する環を形成してもよい。]
好ましい本化合物の具体例としては、下記式[Ia]で示される6’−アミジノ−2’−ナフチル−4−グアニジノベンゾエート 二メタンスルホン酸塩(以下、「ナファモスタット」という。)、下記式[Ib]で示される6’−アミジノ−2’−ナフチル−(4−(4,5−ジヒドロ−1H−2−イミダゾリル)アミノ)ベンゾエート 二メタンスルホン酸塩(以下、「FUT−187」という。)が挙げられる。
【化3】

【化4】

【0011】
本化合物は、有機合成化学の分野における通常の方法に従って製造でき、特許文献2に詳細な製造方法が記載されている。
【0012】
ここで、本明細書中で規定した各基および文言について以下に示す。「アルキル」とは炭素原子数1〜6個の、直鎖または分枝のアルキルを示し、具体例としてメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル等が挙げられる。また、「1または複数の二重結合を有する環を形成してもよく」とは、2−イミダゾリル、4,5−ジヒドロ−1H−2−イミダゾリル、2−ピリミジル、1,4,5,6−テトラヒドロ−2−ピリミジル等の環を形成してもよいことを意味する。
【0013】
本化合物は、「プロドラッグ」の形態をとることができる。ここでいう「プロドラッグ」とは、本化合物を生体内で脱離し得る基で修飾した化合物を意味し、特にアミノ基やグアニジノ基のようなアシル化可能な窒素原子を含む基をアシル化またはカルバメート化した誘導体の形のプロドラッグを挙げることができる。
【0014】
本化合物の塩類は医薬として許容される有機または無機の酸付加塩であればよく、その酸としては塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、酢酸、リン酸、乳酸、クエン酸、メタンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、マンデル酸、クエン酸、酒石酸、サリチル酸等の有機酸が挙げられる。
【0015】
本化合物には光学異性体が存在し、また場合によってはジアステレオマー異性体が存在するが、これらを有効成分として含むものも本発明に含まれる。また、本化合物は溶媒和物、例えば水和物の形態をとっていてもよい。
【0016】
本化合物による網膜神経細胞の保護作用は、後述するラットNMDA誘発網膜障害に対する薬理試験において、上記一般式[I]で表される化合物またはその塩類が優れた網膜神経細胞死抑制効果を発揮することに基づくものである。
【0017】
本化合物は、必要に応じて、医薬として許容される添加剤を加え、単独製剤または配合製剤として汎用されている技術を用いて製剤化することができる。
【0018】
本化合物は、これら眼疾患の予防または治療に使用する場合、患者に対して経口的又は非経口的に投与することができ、投与形態としては、経口投与、眼への局所投与(点眼投与、硝子体内投与、結膜下投与、テノン嚢下投与等)、静脈内投与、経皮投与等などが挙げられ、必要に応じて、製薬学的に許容され得る添加剤と共に、投与に適した剤型に製剤化される。経口投与に適した剤型としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤などが挙げられ、非経口投与に適した剤型としては、例えば、注射剤、点眼剤、眼軟膏、ゲル、点鼻剤、坐薬などが挙げられる。これらは当該分野で汎用されている通常の技術を用い、調製することができる。また、本化合物はこれらの製剤の他に眼内インプラント用製剤やマイクロスフェアー等のDDS(ドラッグデリバリーシステム)化された製剤にすることもできる。
【0019】
例えば、錠剤は、乳糖、ブドウ糖、D−マンニトール、無水リン酸水素カルシウム、デンプン、ショ糖等の賦形剤;カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、デンプン、部分アルファー化デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等の崩壊剤;ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、デンプン、部分アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、含水二酸化ケイ素、硬化油等の滑沢剤;精製白糖、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン等のコーティング剤;クエン酸、アスパルテーム、アスコルビン酸、メントール等の矯味剤などを適宜選択して用い、調製することができる。
【0020】
注射剤は、滅菌精製水及び等張化のための塩化ナトリウムなどを用いて調製することができる。
【0021】
点眼剤は、塩化ナトリウム、濃グリセリンなどの等張化剤;リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなどの緩衝化剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の界面活性剤;クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム等の安定化剤;塩化ベンザルコニウム、パラベン等の防腐剤などから必要に応じて選択して用い、調製することができ、pHは眼科製剤に許容される範囲内にあればよいが、通常4〜8の範囲内が好ましい。
【0022】
眼内インプラント用製剤は、生体分解性ポリマー、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸・グリコール酸共重合体、ヒドロキシプロピルセルロース等の生体分解性ポリマーを用い、調製することができる。
【0023】
一般式[I]で表される化合物またはその塩類の投与量は、剤型、投与すべき患者の症状の軽重、年令、体重、医師の判断等に応じて適宜変えるこができるが、経口投与の場合、一般には、成人に対し1日あたり0.01〜2000mgを1回又は数回に分けて投与することができ、注射剤の場合、一般には、成人に対し1日あたり0.01〜200mgを1回又は数回に分けて投与することができ、また、点眼剤の場合には、通常、0.01〜10%(w/v)の有効成分濃度のものを1日1回又は数回点眼することができる。さらに、眼内インプラント用製剤の場合は、成人に対し0.01〜2000mg含有する眼内インプラント用製剤を眼内にインプラントすることができる。
【発明の効果】
【0024】
後述する薬理試験の項で詳細に説明するが、上記一般式[I]で表される化合物またはその塩類のラットNMDA誘発網膜障害に対する作用を検討したところ、上記一般式[I]で表される化合物またはその塩類はRGCに対して顕著な細胞死抑制効果を示した。このことから、本発明の上記一般式[I]で表される化合物またはその塩類は、網膜神経細胞の保護剤、および網膜血管閉塞症、糖尿病網膜症、虚血性視神経症、黄斑変性症、網膜色素変性症、レーベル病等に代表される網膜疾患や緑内障などの視神経障害を伴う眼疾患の予防または治療剤として有用であることがわかる。なお、本化合物と近似した公知化合物についても同様な試験を行ったが、本化合物はそれらの公知化合物と比べてはるかに高い効果を示し、本化合物の優れた有用性を裏付けるものであった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、薬理試験および製剤例を挙げて、本発明を詳しく説明するが、これらは本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0026】
1.薬理試験
一般式[I]で表される化合物またはその塩類の網膜神経細胞保護作用を検討すべく、一般式[I]で表される化合物またはその塩類であるナファモスタットおよびFUT−187のラットNMDA誘発網膜障害に対する作用を検討した。比較化合物として下記式[II]に表されるカモスタット(N,N−ジメチルカルバモイルメチル−4−(4−グアニジノベンゾイルオキシ)フェニルアセテート メタンスルホン酸塩)および下記式[III]に表されるガベキサート(エチル−4−(6−グアジニノヘキサノイルオキシ)ベンゾエート メタンスルホン酸塩)を用いた。
【化5】

【化6】

【0027】
カモスタットおよびガベキサートとナファモスタットおよびFUT−187との化学構造を比較すると、これらはグアニジノ基および芳香環を有する点で共通しているが、その他は異なった化学構造を有する。また、カモスタットおよびガベキサートはトリプシン阻害活性を有すること、および、膵炎の治療に有効であることが知られており、背景技術の項で述べたとおりナファモスタットおよびFUT−187も同活性を有する点で、カモスタットおよびガベキサートは本発明に係る上記3化合物と共通している。
【0028】
(被験化合物含有液の調製)
NMDA、ナファモスタットおよびFUT−187をそれぞれ蒸留水に溶解させ、NMDA溶液、ナファモスタット溶液およびFUT−187水溶液を得た。つぎに、得られた溶液を適宜混合することで、4mM NMDA+2mM ナファモスタット水溶液(以下、「被験液1」という。)、4mM NMDA+2mM FUT−187水溶液(以下、「被験液2」という。)を得た。同様の方法で、4mM NMDA+20mM カモスタット水溶液(以下、「比較被験液1」という。)および4mM NMDA+20mM ガベキサート水溶液(以下、「比較被験液2」という。)を得た。また、NMDA溶液と蒸留水を混合して4mM NMDA液を得た(以下、「NMDA液」という。)
ラットを0.5%(W/V)トロピカミド−0.5%塩酸フェニレフリン点眼液で散瞳させ、3%ハロタンで麻酔導入し、1%ハロタンで維持した(ハロタンは、酸素0.5L/分、笑気1.5L/分で気化させた)。つぎに、0.4%(W/V)塩酸オキシブプロカイン点眼液を点眼して眼球表面を麻酔し、32Gハミルトンマイクロシリンジを用いて、手術用顕微鏡下で硝子体内に被験液1を5μl投与した。また、被験液1を蒸留水、NMDA液、被験液2、比較被験液1および比較被験液2に順次代えて上記と同じ操作を行った。投与14日後に眼球を摘出し、2.5%グルタルアルデヒド−10%中性緩衝ホルマリン中で1日固定後、角膜、水晶体を切除し、2.5%グルタルアルデヒド−10%中性緩衝ホルマリンを10%中性緩衝ホルマリンに交換した。後日、脱水を行い、パラフィン包埋、薄切し、ヘマトキシリン−エオジン(HE)で染色した病理組織切片(3μm厚)を作製した。1眼につき視神経乳頭部が入るように15μm間隔で8枚作製した切片から任意に3切片を選択し、選択した切片について、視神経乳頭から左右いずれかの1〜1.5mm間の網膜の写真撮影を行い、網膜における神経節細胞層(GCL)中の細胞数(RGC数)および内網状層(IPL)の厚さを計測した。これらの計測値より式1および式2に従い、節細胞死抑制率およびIPL菲薄化抑制率を産出した。これらの結果を表1に示す。なお、表1、式1および式2では、蒸留水を投与した群、NMDA液を投与した群、被験液1を投与した群、被験液2を投与した群、比較被験液1を投与した群および比較被験液2を投与した群を、それぞれ「蒸留水投与群」、「NMDA投与群」、「被験液1投与群」、「被験液2投与群」、「比較被験液1投与群」および「比較被験液2投与群」と示す。各投与群の例数は3〜5である。
【0029】
式1
節細胞死抑制率=(Ax−Ab)/(Aa−Ab)x100
Aa:蒸留水投与群のRGC数
Ab:NMDA投与群のRGC数
Ax:被験液または比較被験液投与群のRGC数
式2
IPL菲薄化抑制率=(Ax−Ab)/(Aa−Ab)x100
Aa:蒸留水投与群のIPLの厚さ
Ab:NMDA投与群のIPLの厚さ
Ax:被験液または比較被験液投与群のIPLの厚さ
【表1】

【0030】
(結果および考察)
表1の結果から明らかなように、ナファモスタットおよびFUT−187はともに高い節細胞死抑制率およびIPL菲薄化抑制率を示した。また、カモスタットおよびガベキサートと比較しても、ナファモスタットおよびFUT−187は高い抑制率を示した。従って、ナファモスタットおよびFUT−187は、RGCの減少および内網状層の菲薄化を抑制する効果が特に優れていることが分かった。すなわち、ナファモスタットおよびFUT−187に代表される一般式[I]で表される化合物またはその塩類が、網膜神経細胞の保護剤として有用であることが分かった。
【0031】
次に製剤例を掲げて本発明の薬剤をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら製剤例のみに限定されるものではない。
【0032】
2.製剤例
製剤例1 点眼剤(1ml中)
ナファモスタット 1mg
濃グリセリン 250mg
ポリソルベート80 200mg
リン酸ニ水素ナトリウム二水和物 20mg
1N水酸化ナトリウム 適量
1N塩酸 適量
滅菌精製水 適量
滅菌精製水にナファモスタットおよびそれ以外の上記成分を加え、これらを十分に混合して点眼剤とする。
【0033】
製剤例2 錠剤(100mg中)
FUT−187 1mg
乳糖 66.4mg
トロウモロコシデンプン 20mg
カルボキシメチルセルロースカルシウム 6mg
ヒドロキシプロピルセルロース 6mg
ステアリン酸マグネシウム 0.6mg
FUT−187と乳糖を混合機中で混合し、ここへカルボキシメチルセルロースカルシウム及びヒドロキシプロピルセルロースを加え、この混合物を造粒し、得られた顆粒を乾燥後整粒し、その整粒顆粒にステアリン酸マグネシウムを加えて混合し、この混合物を打錠機で打錠する。
【0034】
製剤例3 注射剤(10ml中)
FUT−187 10mg
塩化ナトリウム 90mg
滅菌精製水 適量
FUT−187及び塩化ナトリウムを滅菌精製水に溶解して注射溶液とする。
【0035】
上述した製剤を含めて、本化合物および添加物の種類ならびに量を適宜変更することにより所望の製剤を得ることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[I]で表される化合物またはその塩類を有効成分として含む神経細胞の保護剤。
【化1】

[式中、
、RおよびRは同一または異なって水素原子またはアルキル基を示し、
あるいはRとRは結合して1または複数の二重結合を有する環を形成してもよい。]
【請求項2】
一般式[I]で表される化合物が6’−アミジノ−2’−ナフチル−4−グアニジノベンゾエートまたは6’−アミジノ−2’−ナフチル−(4−(4,5−ジヒドロ−1H−2−イミダゾリル)アミノ)ベンゾエートである請求項1記載の神経細胞の保護剤。
【請求項3】
下記一般式[I]で表される化合物またはその塩類を有効成分として含む視神経障害を伴う眼疾患の予防または治療剤。
【化2】

[式中、
、RおよびRは同一または異なって水素原子またはアルキル基を示し、
あるいはRとRは結合して1または複数の二重結合を有する環を形成してもよい。]
【請求項4】
眼疾患が緑内障である請求項3記載の予防または治療剤。
【請求項5】
眼疾患が網膜疾患である請求項3記載の予防または治療剤。
【請求項6】
網膜疾患が網膜色素変性症またはレーベル病である請求項5記載の予防または治療剤。
【請求項7】
下記一般式[I]で表される化合物またはその塩類を有効成分として含む老人性痴呆、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、ALS、脊髄損傷または多発性硬化症の予防または治療剤。
【化3】

[式中、
、RおよびRは同一または異なって水素原子またはアルキル基を示し、
あるいはRとRは結合して1または複数の二重結合を有する環を形成してもよい。]
【請求項8】
投与剤型が経口剤、注射剤、点眼剤または眼内インプラント用製剤である請求項1若しくは2に記載の神経細胞の保護剤または3〜7のいずれかに記載の予防若しくは治療剤。


【公開番号】特開2006−348024(P2006−348024A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137265(P2006−137265)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000177634)参天製薬株式会社 (177)
【Fターム(参考)】