説明

アミドビニルエーテル基含有架橋剤を含む感光性レジスト下層膜形成組成物

【課題】 上塗りフォトレジストの溶剤に対してレジスト下層膜中の光酸発生剤が溶出することがないこと、レジスト下層膜の感度調節が可能なこと、及びフォトレジスト膜がアルカリ現像される際に同時にアルカリ現像されるレジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜形成組成物を提供する。
【解決手段】 下記式(1):
【化1】


(ただし、Qは2〜6価の有機基であり、Rは単結合又は2価の連結基を示し、n1は1〜6の整数であり、n2は2〜6の整数である。)で示される架橋剤を含む感光性レジスト下層膜形成組成物。Qがベンゼン環、シクロヘキサン環、又はトリアジントリオン環である。アルカリ可溶性樹脂(A)、式(1)に記載の架橋剤(B)、光酸発生剤(C)、及び溶剤(D)を含む。アルカリ可溶性樹脂(A)が、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、カルボン酸エステル基、又はそれらの組み合わせを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は半導体装置を製造する際のリソグラフィープロセスにおいて使用されるレジスト下層膜、及びそのレジスト下層膜を用いたレジストパターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造において、フォトレジストを用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。微細加工はシリコンウェハー等の半導体基板上にフォトレジストの薄膜を形成し、その上にデバイスのパターンが描かれたマスクパターンを介して紫外線などの活性光線を照射し、現像し、得られたフォトレジストパターンを保護膜として基板をエッチング処理することにより、基板表面に、前記パターンに対応する微細凹凸を形成する加工法である。ところが、近年、デバイスの高集積度化が進み、使用される露光光もKrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)へと短波長化される傾向にある。しかしながら、これらのフォトリソグラフィー工程では基板からの露光光の反射による定在波の影響や、基板の段差による露光光の乱反射の影響によりフォトレジストパターンの寸法精度が低下するという問題が生ずる。そこで、この問題を解決すべく、フォトレジストと基板の間に反射防止膜(Bottom Anti−Reflective Coating)を設ける方法が広く検討されている。
これらの反射防止膜は、その上に塗布されるフォトレジストとのインターミキシングを防ぐため、熱架橋性組成物を使用して形成されることが多い。その結果、形成された反射防止膜はフォトレジストの現像に使用されるアルカリ性現像液に不溶となる。そのため、半導体基板加工に先立つ反射防止膜の除去は、ドライエッチングによって行なうことが必要である。
【0003】
しかし、反射防止膜のドライエッチングによる除去と同時に、フォトレジストもドライエッチングされる。そのため、基板加工に必要なフォトレジストの膜厚の確保が難しくなるという問題が生じる。特に解像性の向上を目的として、薄膜のフォトレジストが使用されるような場合に、重大な問題となる。
また、半導体装置製造におけるイオン注入工程は、フォトレジストパターンをマスクとして半導体基板に、n型又はp型の導電型を付与する不純物イオンを導入する工程が採用される場合がある。そして、その工程では、基板表面に損傷を与えることを避けるため、フォトレジストのパターン形成の際はドライエッチングをおこなうことは望ましくない。そのため、イオン注入工程のためのフォトレジストパターンの形成においては、ドライエッチングによる除去を必要とする反射防止膜をフォトレジストの下層に使用することができなかった。これまで、イオン注入工程でマスクとして用いられるフォトレジストパターンは、そのパターンの線幅が比較的広かったので、基板からの露光光の反射による定在波の影響及び基板の段差による露光光の乱反射の影響を受けることが少なかった。そのため、染料入りフォトレジスト又はフォトレジスト上層に反射防止膜を用いることで、反射による問題は解決されてきた。しかしながら近年の微細化に伴い、イオン注入工程で用いられるフォトレジストにも微細なパターンが必要とされ始め、フォトレジスト下層の反射防止膜(レジスト下層膜)が必要となってきた。
【0004】
このようなことから、フォトレジストの現像に使用されるアルカリ性現像液に溶解し、フォトレジストと同時に現像除去することができる反射防止膜の開発が望まれていた。そして、これまでも、フォトレジストと同時に現像除去することができる反射防止膜についての検討がなされている(特許文献1を参照)。
一方、アミド基を有するポリマーを用いた感光性樹脂が記載されている(特許文献2、3を参照)。
フォトレジストと同時に現像除去することができる反射防止膜は、上層にフォトレジストが塗布される際に溶剤に暴露される。溶剤による暴露により、反射防止膜中に溶剤が浸透し、さらに反射防止膜中(レジスト下層膜中)の光酸発生剤成分が溶出する。そのため、微細加工への適用性や、形成されるパターン形状などの点において、充分なものではなかった。
【0005】
また、感光性レジスト下層膜は未露光部への光酸発生剤からの酸の移動によるパターン形状の悪化を防ぐための露光量に適応した感度調節を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開WO2005/111724号パンフレット
【特許文献2】特開昭63−287944号
【特許文献3】特開2006−208607
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、短波長の光、例えばArFエキシマレーザー(波長193nm)、KrFエキシマレーザー(波長248nm)に対して強い吸収を持つレジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜形成組成物を提供することにある。また本発明は、ArFエキシマレーザー及びKrFエキシマレーザーの照射光をリソグラフィープロセスの微細加工に使用する際に、半導体基板からの反射光を効果的に吸収し、そして、フォトレジスト膜とのインターミキシングを起こさないレジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜形成組成物を提供すること、上塗りフォトレジストの溶剤に対してレジスト下層膜中の光酸発生剤が溶出することがないこと、レジスト下層膜の感度調節が可能なこと、及びフォトレジスト膜がアルカリ現像される際に同時にアルカリ現像されるレジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜形成組成物を提供することにある。さらに本発明は、当該レジスト下層膜形成組成物を用いたフォトレジストパターンの形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は第1観点として、下記式(1):
【0009】
【化1】

【0010】
(ただし、Qは2〜6価の有機基であり、Rは単結合又は2価の連結基を示し、n1は1〜6の整数であり、n2は2〜6の整数である。)で示される架橋剤を含む感光性レジスト下層膜形成組成物、
第2観点として、Qがベンゼン環、シクロヘキサン環、又はトリアジントリオン環である第1観点に記載の感光性レジスト下層膜形成組成物、
第3観点として、アルカリ可溶性樹脂(A)、第1観点又は第2観点に記載の式(1)の架橋剤(B)、光酸発生剤(C)、及び溶剤(D)を含む感光性レジスト下層膜形成組成物、
第4観点として、アルカリ可溶性樹脂(A)が、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、カルボン酸エステル基、又はそれらの組み合わせを有する樹脂である第3観点に記載の感光性レジスト下層膜形成組成物、
第5観点として、アルカリ可溶性樹脂(A)が式(A−1)の単位構造、式(A−2)の単位構造:
【0011】
【化2】

【0012】
(Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは1価の有機基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基若しくはアシル基を示し、Rは水素原子又は酸解離性基を示す。pは0〜3の整数であり、qは1〜3の整数であり、(p+q)は1〜5の整数である。)、又はそれらの組み合わせからなる単位構造を含む樹脂である第3観点に記載の感光性レジスト下層膜形成組成物、
第6観点として、更に塩基性化合物を含む第1観点乃至第5観点のいずれか一つに記載の感光性レジスト下層膜形成組成物、
第7観点として、第1観点乃至第6観点のいずれか一つに記載のレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布しベークしてレジスト下層膜を形成する工程、そのレジスト下層膜上にフォトレジスト膜を形成する工程、前記レジスト下層膜と前記フォトレジスト膜で被覆された半導体基板を露光する工程、及び露光後にフォトレジスト膜とレジスト下層膜を現像する工程を含む半導体装置の製造に用いるフォトレジストパターンの形成方法、及び
第8観点として、第1観点乃至第6観点のいずれか一つに記載のレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布しベークしてレジスト下層膜を形成する工程、そのレジスト下層膜上にフォトレジスト膜を形成する工程、前記レジスト下層膜と前記フォトレジスト膜で被覆された半導体基板を露光する工程、及び露光後にフォトレジスト膜とレジスト下層膜を現像する工程を含む半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本願発明ではアミド結合を持ったビニルエーテル化合物を含むレジスト下層膜形成組成物によるレジスト下層膜は、上塗りフォトレジストが被覆された場合にその溶剤がレジスト下層膜に浸透しても、その溶剤によりレジスト下層膜中の光酸発生剤のレジスト下層膜からの溶出が起こらない。従って上塗りレジストと共に露光する時に、レジスト下層膜は十分なリソグラフィー性を有し、レジスト下層膜中で光酸発生剤から発生した酸により十分な感光性を有しているので、上塗りレジスト膜と共に現像液よる十分な解像性があり、矩形なレジストパターンを形成することができる。
【0014】
従来のフォトレジストと同時に現像除去することができるレジスト下層膜は、レジスト下層膜中に光酸発生剤が含まれている場合にはレジスト下層膜中からの光酸発生剤の溶出が避けられなかった。
【0015】
しかし、本願発明では上記構成を用いることによりそれを解決することができた。これはアミド結合を持ったビニルエーテル化合物が、そのアミド結合により光酸発生剤と十分な相互作用を形成することができるため、光酸発生剤の溶出を抑止することができたものである。
【0016】
そのアミド結合は二級アミド又は三級アミドであることが好ましく、これらのアミド結合によって光酸発生剤の極性基との相互作用によると考えられる。
【0017】
アルカリ溶解性ポリマーには水酸基又はカルボキシル基が存在していて、これらの水酸基及び/又はカルボキシル基は架橋剤中のビニルエーテル基と熱架橋によりアセタール結合を形成する。1つのエーテル結合を構成する酸素原子が炭素原子の両側に結合した構造を有する。露光時に光酸発生剤より発生した酸により炭素原子−酸素原子間の結合が切れ、水酸基に分解される。フォトマスクを通じて露光した部分は光酸発生剤の分解により生じた酸により、アセタール結合が切れ水酸基及び/又はカルボキシル基を生成し、アルカリ可溶性(現像液に対する溶解性)を示し現像される。
【0018】
本願発明ではアルカリ溶解性ポリマーと架橋性化合物(ビニルエーテル化合物)との間でアセタール結合がレジスト下層膜中に幾つも形成しているため、細かいパターンを用い露光を行いその後に現像した後でも、結合が切断される箇所がいくつもあり、フェノール性水酸基や芳香族性カルボキシル基が多く再生されるため微細なパターンが作成でき解像度の向上が達成される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願発明は式(1)で示される架橋剤を含む感光性レジスト下層膜形成組成物である。Qは2〜6価の有機基であり、Rは単結合又は2価の連結基を示し、n1は1〜6の整数であり、n2は2〜6の整数である。
【0020】
が2価の連結基である場合は、アルキレン基、アリール基が挙げられる。これらは後述のアルキル基に対応するアルキレン基や、アリール基に対応するアリーレン基が挙げられる。
【0021】
上記Qは例えばベンゼン環、シクロヘキサン環、トリアジントリオン環等が挙げられる。Rは単結合であるか、又は水酸基を含んでいても良い炭素数1〜12のアルキレン基が挙げられる。
【0022】
上記式(1)の架橋剤は例えば以下に例示される。
【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
成就、k、s、tはそれぞれ3〜4を例示することができる。
【0026】
本願発明では式(1)で示される架橋剤と下記式(2)で示される架橋剤を組み合わせて用いることができる。
【0027】
【化5】

【0028】
上記式(2)の架橋剤において、Qは2〜6価の有機基であり、Rは単結合又は2価の連結基を示し、n1は1〜6の整数であり、n2は2〜6の整数である。上記Qは例えばベンゼン環、シクロヘキサン環、トリアジントリオン環等が挙げられる。Rは単結合であるか、又は水酸基を含んでいても良い炭素数1〜12のアルキル基が挙げられる。
【0029】
が2価の連結基である場合は、アルキレン基、アリール基が挙げられる。これらは後述のアルキル基に対応するアルキレン基や、アリール基に対応するアリーレン基が挙げられる。
【0030】
式(1)の架橋剤と式(2)の架橋剤は質量比で、1:0〜1:1の範囲で用いることができる。
【0031】
式(2)の架橋剤は例えば以下に例示することができる。
【0032】
【化6】

【0033】
【化7】

【0034】
本願発明ではアルカリ可溶性樹脂(A)、式(1)に記載の架橋剤(B)、光酸発生剤(C)、及び溶剤(D)を含む感光性レジスト下層膜形成組成物とすることができる。この感光性レジスト下層膜形成組成物の架橋剤(B)は、式(1)の架橋剤、又は式(1)と式(2)の架橋剤との組み合わせを用いることができる。
【0035】
本発明の感光性レジスト下層膜形成組成物における固形分は、例えば0.5〜50質量%、1〜30質量%、又は1〜25質量%である。ここで固形分とはレジスト下層膜形成組成物の全成分から溶剤成分を除いたものである。
【0036】
固形分中に占めるアルカリ可溶性樹脂(A)の割合は20〜90質量%、40〜85質量%、40〜80質量%、又は40〜75質量%とすることができる。
【0037】
レジスト下層膜形成組成物中の式(1)に記載の架橋剤(B)の含有量は、アルカリ可溶性樹脂(A)100質量部に対して、式(1)に記載の架橋剤(B)を10〜60質量部、又は20〜40質量部の割合で含有することができる。
【0038】
アルカリ可溶性樹脂(A)は、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、カルボン酸エステル基、又はそれらの組み合わせを有する樹脂が挙げられる。
【0039】
上記アルカリ可溶性樹脂(A)は例えば上記式(A−1)の単位構造、式(A−2)の単位構造、又はそれらの組み合わせからなる単位構造を含む樹脂を挙げることができる。これらの樹脂は重量平均分子量が3000〜100000の範囲で用いることができる。
【0040】
式(A−1)及び式(A−2)の単位構造において、Rはそれぞれ水素原子又はメチル基を表す。Rは1価の有機基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基若しくはアシル基を示し、Rは水素原子又は酸解離性基を示す。qは1〜3の整数であり、pは0〜3の整数であり、(p+q)は1〜5の整数である。
式(A−1)のRは水素原子(即ち、ベンゼン環の置換基として水酸基を用いる場合)、又はアセチル基(即ち、ベンゼン環の置換基としてアセトキシ基を用いる場合)である場合が好ましい。
式(A−1)、式(A−2) において、R は1価の有機基を表す。この有機基は例えば、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基が挙げられる。
【0041】
上記アルキル基として例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、シクロプロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、シクロブチル、1−メチル−シクロプロピル、2−メチル−シクロプロピル、n−ペンチル、1−メチル−n−ブチル、2−メチル−n−ブチル、3−メチル−n−ブチル、1,1−ジメチル−n−プロピル、1,2−ジメチル−n−プロピル、2,2−ジメチル−n−プロピル、1−エチル−n−プロピル、シクロペンチル、1−メチル−シクロブチル、2−メチル−シクロブチル、3−メチル−シクロブチル、1,2−ジメチル−シクロプロピル、2,3−ジメチル−シクロプロピル、1−エチル−シクロプロピル、2−エチル−シクロプロピル、n−ヘキシル、1−メチル−n−ペンチル、2−メチル−n−ペンチル、3−メチル−n−ペンチル、4−メチル−n−ペンチル、1,1−ジメチル−n−ブチル、1,2−ジメチル−n−ブチル、1,3−ジメチル−n−ブチル、2,2−ジメチル−n−ブチル、2,3−ジメチル−n−ブチル、3,3−ジメチル−n−ブチル、1−エチル−n−ブチル、2−エチル−n−ブチル、1,1,2−トリメチル−n−プロピル、1,2,2−トリメチル−n−プロピル、1−エチル−1−メチル−n−プロピル、1−エチル−2−メチル−n−プロピル、シクロヘキシル、1−メチル−シクロペンチル、2−メチル−シクロペンチル、3−メチル−シクロペンチル、1−エチル−シクロブチル、2−エチル−シクロブチル、3−エチル−シクロブチル、1,2−ジメチル−シクロブチル、1,3−ジメチル−シクロブチル、2,2−ジメチル−シクロブチル、2,3−ジメチル−シクロブチル、2,4−ジメチル−シクロブチル、3,3−ジメチル−シクロブチル、1−n−プロピル−シクロプロピル、2−n−プロピル−シクロプロピル、1−i−プロピル−シクロプロピル、2−i−プロピル−シクロプロピル、1,2,2−トリメチル−シクロプロピル、1,2,3−トリメチル−シクロプロピル、2,2,3−トリメチル−シクロプロピル、1−エチル−2−メチル−シクロプロピル、2−エチル−1−メチル−シクロプロピル、2−エチル−2−メチル−シクロプロピル及び2−エチル−3−メチル−シクロプロピル等が挙げられる。
【0042】
上記アリール基としてはフェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基、o−クロルフェニル基、m−クロルフェニル基、p−クロルフェニル基、o−フルオロフェニル基、p−フルオロフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−ニトロフェニル基、p−シアノフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、o−ビフェニリル基、m−ビフェニリル基、p−ビフェニリル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基及び9−フェナントリル基が挙げられる。
これらのアルキル基、アリール基はハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)や、ニトロ基、シアノ基等で置換することもできる。
式(A−1)においてRは水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基若しくはアシル基を示し、qは1〜3の整数である。pは0〜3の整数であり、(p+q)は1〜5の整数である。特にRが水素原子又はアセトキシ基である場合が好ましい。Rが水素原子である場合はベンゼン環に水酸基が置換した構造であり、Rがアルキル基である場合はアルコキシ基がベンゼン環に置換した構造であり、Rがアシル基である場合はアシルオキシ基がベンゼン環に置換した構造である。アルキル基は上述を例示することができ、アシル基(RC(O)−基)のR部分は上述のアルキル基やアリール基を例示することができる。Rは水素原子又はアセトキシ基である場合が好ましい。
【0043】
式(A−2)においてRは水素原子又は酸解離性基を表す。
の酸解離性基は第3級炭素原子を有する有機基であることが好ましい。Rを含む有機基は酸に不安定な基の1種であるカルボン酸エステルを有する基(−COOR)とすることができる。例えば(−COO−C(CH33をtert−ブチルエステル基という形式で称する。この場合はRは−C(CH33基である。)、tert−ブチルエステルに代表されるエステル結合のα位が3級炭素原子であるアルキルエステル基が挙げられる。またRを含む有機基は脂環式炭化水素基、α位が3級炭素であるラクトン環を有するエステル基を用いることができる。この場合Rは脂環式炭化水素基や、α位が3級炭素であるラクトン環が相当する。このようなRを含むエステル基は例えば1−アルキルシクロアルキルエステル基、2−アルキル−2−アダマンチルエステル基、1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキルエステル基などのエーテル結合のα位が3級炭素原子である脂環式エステル基などが挙げられる。アルキル基は上述の例示が挙げられる。
またRを含む有機基は第3級炭素原子、又は第2級炭素原子を有する有機基を挙げることができる。この炭素原子は例えばアセタール結合の炭素原子が挙げられ、アセタール結合の第3級の炭素原子、第2級の炭素原子が挙げられる。Rを含むエステル基は例えばメトキシメチルエステル基、エトキシメチルエステル基、1−エトキシエチルエステル基、1−イソブトキシエチルエステル基、1−イソプロポキシエチルエステル基、1−エトキシプロピルエステル基、1−(2−メトキシエトキシ)エチルエステル基、1−(2−アセトキシエトキシ)エチルエステル基、1−〔2−(1−アダマンチルオキシ)エトキシ〕エチルエステル基、1−〔2−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)エトキシ〕エチルエステル基、テトラヒドロ−2−フリルエステル基及びテトラヒドロ−2−ピラニルエステル基などのアセタール型エステル基;イソボルニルエステル基が挙げられる。
【0044】
本発明に用いられるアルカリ可溶性樹脂は式(A−1)の単位構造、式(A−2)の単位構造以外に他の単位構造を含むことができる。その場合に式(A−1)の単位構造、式(A−2)の単位構造、又はその組み合わせからなる単位構造の割合は、アルカリ可溶性樹脂(A)全体の10質量%以上、または20質量%以上である。例えば10質量%〜100質量%であり、または15質量%〜80質量%、または20質量%〜70質量%、または25質量%〜50質量%である。他のユニットは、ポリマー製造時に、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物及びビニル化合物等の重合可能な化合物を使用することによって、ポリマーに導入することができる。
【0045】
アクリル酸エステル化合物としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、フェニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、モノ−(2−(アクリロイルオキシ)エチル)フタレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチルアクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルアクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルアクリレート、8−エチル−8−トリシクロデシルアクリレート、及び5−アクリロイルオキシ−6−ヒドロキシノルボルネン−2−カルボキシリック−6−ラクトン等が挙げられる。
【0046】
メタクリル酸エステル化合物としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、モノ−(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)フタレート、2−エトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルメタクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルメタクリレート、8−エチル−8−トリシクロデシルメタクリレート、及び5−メタクリロイルオキシ−6−ヒドロキシノルボルネン−2−カルボキシリック−6−ラクトン等が挙げられる。
【0047】
ビニル化合物としては、ビニルエーテル、メチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、及びプロピルビニルエーテル等が挙げられる。
【0048】
スチレン化合物としては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、及びブロモスチレン等が挙げられる。
マレイミド化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、及びN−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
本発明に係るレジスト下層膜形成組成物は、光酸発生剤(C)を含有することができる。光酸発生剤(C)としては、露光に使用される光の照射によって酸を発生する化合物が挙げられる。例えば、ジアゾメタン化合物、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、ニトロベンジル化合物、ベンゾイントシレート化合物、ハロゲン含有トリアジン化合物、及びシアノ基含有オキシムスルホネート化合物等の光酸発生剤が挙げられる。これらの中でオニウム塩化合物の光酸発生剤が好適である。
オニウム塩化合物の具体例としては、例えば、トリフェニルスルホニウムパーフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトシレート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムN,N’−ビス(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニル)イミデート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート等のトリフェニルスルホニウム塩化合物、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムN,N’−ビス(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニル)イミデート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート等のジフェニルヨードニウム塩化合物等が挙げられる。
【0049】
光酸発生剤(C)は、アルカリ可溶性樹脂(A)の量に対して、0.1質量%〜20質量%、又は1質量%〜15質量%の範囲で用いることができる。
本発明に係るレジスト下層膜形成組成物は、塩基性化合物を含有することができる。塩基性化合物としてはアミンを例示することができる。塩基性化合物を添加することにより、レジスト下層膜の露光時の感度調節を行うことができる。即ち、アミン等の塩基性化合物が露光時に光酸発生剤より発生された酸と反応し、レジスト下層膜の感度を低下させることが可能である。また、露光部のレジスト下層膜中の光酸発生剤(C)より生じた酸の未露光部のレジスト下層膜への拡散を抑えることができる。
上記アミンとしては、特に制限はないが、例えば、トリエタノールアミン、トリブタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリノルマルプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリノルマルブチルアミン、トリ−tert−ブチルアミン、トリノルマルオクチルアミン、トリイソプロパノールアミン、フェニルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、及びジアザビシクロオクタン等の3級アミンや、ピリジン及び4−ジメチルアミノピリジン等の芳香族アミンを挙げることができる。更に、ベンジルアミン及びノルマルブチルアミン等の1級アミンや、ジエチルアミン及びジノルマルブチルアミン等の2級アミンも挙げられる。
【0050】
上記アミンは、光酸発生剤(C)より生じた酸の未露光部のレジスト下層膜への拡散を抑える働きと同時に、またアルカリ可溶性樹脂(A)と、架橋剤(B)により熱架橋時に形成された架橋ポリマーに組み込まれ、そして露光部において光酸発生剤(C)により発生した酸により架橋が切断しヒドロキシ基やカルボキシル基が生成しアルカリ現像液に溶解性を示すことができる。そのためヒドロキシ基を有するアミンが好ましい。ヒドロキシル基を有するアミンとしては、例えばトリエタノールアミン、トリブタノールアミンが挙げられ好適に用いられる。
アミンは単独または二種以上の組合せで使用することができる。アミンが使用される場合、その含有量としては、アルカリ可溶性樹脂(A)100質量部に対して、0.001乃至5質量部、例えば0.01乃至1質量部、又は、0.1乃至0.5質量部である。アミンの含有量が前記値より大きい場合には、感度が低下しすぎる場合がある。
【0051】
本発明に係るレジスト下層膜形成組成物は界面活性剤を含むことができる。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトップEF301、EF303、EF352(株式会社ジェムコ(旧(株)トーケムプロダクツ)製)、メガファックF171、F173、R30(DIC株式会社(旧大日本インキ化学工業(株))製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。これらの界面活性剤の配合量は、本発明のレジスト下層膜形成組成物の全成分中、通常0.2質量%以下、好ましくは0.1質量%以下である。これらの界面活性剤は単独で添加してもよいし、また2種以上の組合せで添加することもできる。
【0052】
本発明に係るレジスト下層膜形成組成物は、その他必要に応じてレオロジー調整剤、接着補助剤等を含んでいてもよい。
本発明に係るレジスト下層膜形成組成物は、上記の各成分を適当な溶剤に溶解させることによって調製でき、均一な溶液状態で用いられる。そのような溶剤(D)としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチルピロリドン等を用いることができる。これらの溶剤は単独または2種以上の組合せで使用することができる。さらに、プロピレングリコールモノブチルエーテル及びプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の高沸点溶剤を混合して使用することができる。
【0053】
調製されたレジスト下層膜形成組成物(溶液)は、孔径が例えば0.2μm程度のフィルタなどを用いてろ過した後、使用することが好ましい。このように調製されたレジスト下層膜形成組成物は、室温で長期間の貯蔵安定性にも優れる。
以下、本発明に係るレジスト下層膜形成組成物の使用について説明する。基板〔例えば、酸化珪素膜で被覆されたシリコン等の半導体基板、窒化珪素膜又は酸化窒化珪素膜で被覆されたシリコン等の半導体基板、窒化珪素基板、石英基板、ガラス基板(無アルカリガラス、低アルカリガラス、結晶化ガラスを含む)、ITO膜が形成されたガラス基板等〕の上に、スピナー、コーター等の適当な塗布方法により本発明に係るレジスト下層膜形成組成物が塗布され、その後、ホットプレート等の加熱手段を用いてベークすることによりレジスト下層膜が形成される。
ベーク条件としては、ベーク温度80℃乃至250℃、ベーク時間0.3分乃至60分間の中から適宜、選択される。好ましくは、ベーク温度130℃乃至250℃、ベーク時間0.5分乃至5分間である。ここで、レジスト下層膜の膜厚としては、0.01μm乃至3.0μm、例えば0.03μm乃至1.0μm、又は0.05μm乃至0.5μmである。
【0054】
本発明に係るレジスト下層膜形成組成物から形成されるレジスト下層膜は、形成時のベークにより架橋剤(B)であるビニルエーテル化合物が架橋することによって強固な膜となる。そして、その上に塗布されるフォトレジスト溶液に一般的に使用されている有機溶剤、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、γ―ブチロラクトン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ピルビン酸メチル、乳酸エチル及び乳酸ブチル等に対する溶解性が低いものとなる。このため、本発明に係るレジスト下層膜形成組成物より形成されるレジスト下層膜は、フォトレジストとのインターミキシングを起こさないものとなる。ベーク時の温度が、上記範囲より低い場合には架橋が不十分となりフォトレジストとインターミキシングを起こすことがある。また、ベーク温度が高すぎる場合も架橋が切断され、フォトレジストとのインターミキシングを起こすことがある。
次いでレジスト下層膜の上に、フォトレジスト膜が形成される。フォトレジスト膜の形成は一般的な方法、すなわち、フォトレジスト溶液のレジスト下層膜上への塗布及びベークによって行なうことができる。
【0055】
本発明のレジスト下層膜の上に形成されるフォトレジストとしては、露光光に感光しポジ型の挙動を示すものであれば特に限定はない。ノボラック樹脂と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとからなるポジ型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物とアルカリ可溶性バインダーと光酸発生剤とからなる化学増幅型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物と光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジストなどがある。例えば、住友化学(株)製、商品名:PAR855が挙げられる。
本発明に係る半導体装置の製造に用いるフォトレジストパターンの形成方法において、露光は所定のパターンを形成するためのマスク(レチクル)を通して露光が行なわれる。露光には、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー等を使用することができる。露光後、必要に応じて露光後加熱(Post ExposureBake)が行なわれる。露光後加熱の条件としては、加熱温度80℃乃至150℃、加熱時間0.3分乃至60分間の中から適宜、選択される。
【0056】
レジスト下層膜とフォトレジスト膜で被覆された半導体基板を、フォトマスクを用い露光を行い、その後に現像する工程により半導体装置を製造するものである。本発明に係るレジスト下層膜形成組成物から形成されるレジスト下層膜は、露光時にレジスト下層膜に含まれている光酸発生剤から発生する酸の作用によって、アルカリ性現像液に可溶となる。露光を行った後、アルカリ性現像液でフォトレジスト膜及びレジスト下層膜両層の一括現像を行うと、そのフォトレジスト膜及びレジスト下層膜の露光された部分はアルカリ溶解性を示すため、除去される。
【0057】
アルカリ性現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリンなどの水酸化四級アンモニウムの水溶液、エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミンなどのアミン水溶液等のアルカリ性水溶液を例として挙げることができる。さらに、これらの現像液に界面活性剤などを加えることもできる。
現像の条件としては、現像温度5℃乃至50℃、現像時間10秒乃至300秒から適宜選択される。本発明のレジスト下層膜形成組成物から形成されるレジスト下層膜は、フォトレジストの現像に汎用されている現像液により現像され、例えば2.38質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を用いて、室温で容易に現像を行なうことができる。
本発明に係るレジスト下層膜は、基板とフォトレジスト膜との相互作用を防止するための層、フォトレジスト膜に用いられる材料又はフォトレジストへの露光時に生成する物質の半導体基板への悪作用を防ぐ機能を有する層、ベーク時に半導体基板から生成する物質の上層フォトレジスト膜への拡散を防ぐ機能を有する層、及び半導体基板の誘電体層によるフォトレジスト膜のポイズニング効果を減少させるためのバリア層等として使用することも可能である。
【0058】
以下、本発明に係るレジスト下層膜形成組成物の具体例を下記実施例に説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0059】
(合成例1)
市販のポリヒドロキシビニルエーテル(日本曹達(株)製、商品名:VP−8000)を準備した。このポリマー(a−1)と略す。重量平均分子量は8,000であった。
【0060】
【化3】

【0061】
(合成例2)
tert−ブトキシスチレン20.0g、4−ビニル安息香酸12.6g、9−アントラセンメチルメタクリレート23.5g、アゾビスイソブチロニトリル1.4gを、2−ブタノン100gに溶解して均一溶液としたモノマー溶液を準備した。また、2−ブタノン100gを投入した300ml三口フラスコ内を30分間窒素でパージしたのち、フラスコ内を沸点にて還流させながら、前記モノマー溶液を滴下漏斗で、10時間かけて滴下した。滴下終了後、フラスコ内を沸点にて還流させながら10時間実施した。重合後、反応溶液を大量のヘキサン中に滴下して、生成共重合体を凝固精製した。次いで、この共重合体に、再度アセトン200gを加えたのち、さらに0.1N塩酸20gを加えて、沸点にて還流させながら、10時間反応を行なった。反応後、溶剤および水を減圧留去し、得られた共重合体をアセトンに溶解したのち、大量の水中に滴下して凝固させ、生成した白色粉末をろ過した。さらに再度アセトンに溶解したのち、大量のトルエンに滴下して凝固させ、生成した白色粉末をろ過し、減圧下50℃で一晩乾燥した。このポリマー(a−2)と略す。重量平均分子量は8,000、Mw/Mnは1.8であり、13C−NMR分析の結果、p−ヒドロキシスチレンと、4−ビニル安息香酸と9−アントラセンメチルメタクリレートのモル比が40:30:30であった。
【0062】
【化4】

【0063】
架橋剤(B):上記式(1−1)で示される1,3,5トリメリット酸トリス(3−ビニルオキシプロピル)アミドを(b−1)と略す。
【0064】
架橋剤(B):上記式(2−2)で示される1,3,5トリメリット酸トリス(4−ビニルオキシブチル)
1267057841283_10
を(b−2)と略す。
【0065】
光酸発生剤(C):下記式(c−1)で示されるトリフェニルスルホニウムパーフルオロブタンスルホネートを(c−1)と略す。
【0066】
【化5】

【0067】
光酸発生剤(C):下記式(c−2)で示されるトリフェニルスルホニウムトシレートを(c−2)と略す。
【0068】
【化6】

【0069】
溶剤(D):プロピレングリコールモノメチルエーテルを(d−1)と示す。
【0070】

(実施例1〜8、比較例1〜2)
表1に示す各成分と量(但し、質量部に基づく)で混合して均一溶液としたのち、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過し、更に、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過してレジスト下層膜形成組成物(溶液)を調製した。
【0071】
〔表1〕
表1
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
樹脂 架橋剤 光酸発生剤 溶剤
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
実施例1 (a-1)100 (b-1)40 (c-1) (d-1)
実施例2 (a-1)100 (b-1)30+(b-2)10 (c-1) (d-1)
実施例3 (a-1)100 (b-1)20+(b-2)20 (c-1) (d-1)
実施例4 (a-1)100 (b-1)10+(b-2)30 (c-1) (d-1)
実施例5 (a-1)100 (b-1)40 (c-2) (d-1)
実施例6 (a-1)100 (b-1)30+(b-2)10 (c-2) (d-1)
実施例7 (a-1)100 (b-1)20+(b-2)20 (c-2) (d-1)
実施例8 (a-1)100 (b-1)10+(b-2)30 (c-2) (d-1)
実施例9 (a-2)100 (b-1)50 (c-2) (d-1)
実施例10 (a-2)100 (b-1)40+(b-2)10 (c-2) (d-1)
実施例11 (a-2)100 (b-1)30+(b-2)20 (c-2) (d-1)
実施例12 (a-2)100 (b-1)20+(b-2)30 (c-2) (d-1)
実施例13 (a-2)100 (b-1)10+(b-2)40 (c-2) (d-1)
比較例1 (a-1)100 (b-2)40 (c-1) (d-1)
比較例2 (a-1)100 (b-2)40 (c-2) (d-1)
比較例3 (a-2)100 (b-2)50 (c-2) (d-1)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0072】
〔フォトレジスト溶剤への溶出試験〕
実施例1乃至実施例13、比較例1乃至比較例3で調製された各レジスト下層膜形成組成物をスピナーにより、半導体基板(シリコンウェハー)上に塗布した。実施例1乃至実施例8、比較例1乃至比較例2の場合、ホットプレート上、190℃で1分間ベークし、レジスト下層膜(膜厚0.05μm)を形成した。また、実施例9乃至実施例13、及び比較例3の場合、ホットプレート上、170℃で1分間ベークし、レジスト下層膜(膜厚0.05μm)を形成した。このレジスト下層膜をフォトレジストに使用する溶剤、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルに浸漬した。実施例1乃至実施例13、比較例1乃至比較例3はその溶剤に難溶であることを確認した。
〔光学パラメーターの試験〕
実施例1、及び比較例1で調製された各レジスト下層膜形成組成物をスピナーにより、シリコンウェハー上に塗布した。ホットプレート上で190℃1分間ベークし、レジスト下層膜(膜厚0.05μm)を形成した。また、実施例9で調製されたレジスト下層膜形成組成物をスピナーにより、シリコンウェハー上に塗布した。ホットプレート上で170℃1分間ベークし、レジスト下層膜(膜厚0.05μm)を形成した。そして、これらのレジスト下層膜を光エリプソメーター(J.A.Woollam社製、VUV−VASE VU−302)を用い、波長248nm及び193nmでの屈折率(n値)及び減衰係数(k値)を測定した。評価の結果を下記表2に示す。
【0073】
〔表2〕
表2
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
248nm 248nm 193nm 193nm
n値 k値 n値 k値
実施例1 1.85 0.049 1.52 0.87
実施例9 1.61 0.366 1.51 0.46
比較例1 1.83 0.016 1.53 0.86
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0074】
〔光酸発生剤の溶出試験〕
実施例1乃至実施例8、比較例1乃至比較例2で調製された各レジスト下層膜形成組成物をスピナーにより、シリコンウエハー上に塗布した。ホットプレート上で190℃1分間ベークし、レジスト下層膜(膜厚0.05μm)を形成した。また、実施例9乃至実施例13、及び比較例3で調製された各レジスト下層膜形成組成物をスピナーにより、シリコンウエハー上に塗布した。ホットプレート上で170℃1分間ベークし、レジスト下層膜(膜厚0.055μm)を形成した。
(溶剤処理あり)
上記の得られたレジスト下層膜をそれぞれスピンコーター上で0rpmの回転下に溶剤(OKシンナー(製品名、東京応化工業(株):プロピレングリコールモノメチルエーテル:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート=7:3)を1.5秒間滴下し、すぐに3000rpmで20秒間回転させた。
その後、ニコン製スキャナー(波長248nm、NA=0.75、Sigma=0.85)を用いて5mJ/cmの露光を行った。その後、ホットプレート上、110℃で1分間の露光後加熱を行った。冷却後に現像液(2.38質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)に60秒間浸析した後、水洗と乾燥を行い膜厚(nm)の測定を行った。
(溶剤処理なし)
上記得られたレジスト下層膜をそれぞれニコン製スキャナー(波長248nm、NA=0.75、Sigma=0.85)を用いて5mJ/cmの露光を行った。その後、ホットプレート上で110℃で1分間の露光後加熱を行った。冷却後に現像液(2.38質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)に60秒間浸析した後、水洗と乾燥を行い膜厚(nm)の測定を行った。
【0075】
〔表3〕
表3
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
露光前 溶剤処理後 溶剤処理なし
5mJ/cm露光 5mJ/cm露光
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
実施例1 50 44 44
実施例2 50 36 36
実施例3 50 20 20
実施例4 50 5 3
実施例5 50 42 42
実施例6 50 37 37
実施例7 50 25 25
実施例8 50 7 5
実施例9 55 39 39
実施例10 55 35 35
実施例11 55 14 14
実施例12 55 0 0
実施例13 55 0 0
比較例1 50 3 2
比較例2 50 45 1
比較例3 55 0 0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0076】
表3の結果から、式(1)の架橋剤(B)成分を含む実施例1〜13のレジスト下層膜形成組成物から得られたレジスト下層膜は、溶剤処理を行った場合と溶剤処理を行わない場合で、その後に露光と現像を行っても得られたレジスト下層膜の膜厚の変化がない。これは光酸発生剤(C)成分が溶剤処理によっても除去されないということを示すものである。しかし、実施例4において若干の光酸発生剤(C)の溶出があるためか溶剤処理後によってその後の露光と現像後の膜厚が高くなる(光酸発生剤の酸による架橋結合の切断が起こりにくいため膜が残りやすい。)傾向がある。
【0077】
比較例1〜比較例3では、溶剤処理を行った場合と溶剤処理を行わない場合で、溶剤処理により光酸発生剤(C)の溶出が発生しやすいために、溶剤処理によってその後に露光と現像を行うことにより膜厚は大きい(特に比較例2では顕著な差になる)。
【0078】
他方、式(1)の架橋剤(B)は感度調節剤(クエンチャー)としての機能も併せ持つ。アミド基は光酸発生剤(C)成分が露光時に発生する酸を適切にトラップするために、同じ露光時間でも式(1)の架橋剤(B)の含有量が高くなるに伴い、現像後の膜厚は高くなる。感度調節機能は露光部から未露光部に光酸発生剤からの酸が移行することにより、レジスト形状が悪化することを防ぐ。このような感度調節剤は一般にアミン化合物やアミド化合物を添加することによっても達成ができるが、本発明では架橋剤(B)にそれらの機能を持たせることにより、樹脂(A)と架橋結合を形成し樹脂中に固定化されるために、上述の溶剤処理が行われる工程を含んでいても光酸発生剤(C)がアミド成分と共に流出されることを防止できたものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
上塗りフォトレジストの溶剤に対してレジスト下層膜中の光酸発生剤が溶出することがないこと、感度調節機能を有する架橋剤を有すること、及びフォトレジスト膜がアルカリ現像される際に同時にアルカリ現像されるレジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜形成組成物を提供することができる。従って、ArFエキシマレーザー及びKrFエキシマレーザーの照射光をリソグラフィープロセスの微細加工に使用するレジスト下層膜形成組成物として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】


(ただし、Qは2〜6価の有機基であり、Rは単結合又は2価の連結基を示し、n1は1〜6の整数であり、n2は2〜6の整数である。)で示される架橋剤を含む感光性レジスト下層膜形成組成物。
【請求項2】
Qがベンゼン環、シクロヘキサン環、又はトリアジントリオン環である請求項1に記載の感光性レジスト下層膜形成組成物。
【請求項3】
アルカリ可溶性樹脂(A)、請求項1又は請求項2に記載の式(1)の架橋剤(B)、光酸発生剤(C)、及び溶剤(D)を含む感光性レジスト下層膜形成組成物。
【請求項4】
アルカリ可溶性樹脂(A)が、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、カルボン酸エステル基、又はそれらの組み合わせを有する樹脂である請求項3に記載の感光性レジスト下層膜形成組成物。
【請求項5】
アルカリ可溶性樹脂(A)が式(A−1)の単位構造、式(A−2)の単位構造:
【化2】


(Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは1価の有機基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基若しくはアシル基を示し、Rは水素原子又は酸解離性基を示す。pは0〜3の整数であり、qは1〜3の整数であり、(p+q)は1〜5の整数である。)、又はそれらの組み合わせからなる単位構造を含む樹脂である請求項3に記載の感光性レジスト下層膜形成組成物。
【請求項6】
更に塩基性化合物を含む請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の感光性レジスト下層膜形成組成物。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布しベークしてレジスト下層膜を形成する工程、そのレジスト下層膜上にフォトレジスト膜を形成する工程、前記レジスト下層膜と前記フォトレジスト膜で被覆された半導体基板を露光する工程、及び露光後にフォトレジスト膜とレジスト下層膜を現像する工程を含む半導体装置の製造に用いるフォトレジストパターンの形成方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布しベークしてレジスト下層膜を形成する工程、そのレジスト下層膜上にフォトレジスト膜を形成する工程、前記レジスト下層膜と前記フォトレジスト膜で被覆された半導体基板を露光する工程、及び露光後にフォトレジスト膜とレジスト下層膜を現像する工程を含む半導体装置の製造方法。

【公開番号】特開2011−175135(P2011−175135A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39788(P2010−39788)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】