説明

アミド類およびラクタム類の実用的な還元方法

【課題】アミド類およびラクタム類の実用的な還元方法を提供する。
【解決手段】本発明では、8(VIII)族遷移金属錯体、塩基および水素ガス(H2)の存在下に、アミド類またはラクタム類を、それぞれアルコール類またはアミノアルコール類に還元することができる。8(VIII)族遷移金属錯体、塩基、反応溶媒、水素ガスの圧力および反応温度の好適な組み合わせにより、極めて実用的な還元方法を提供できる。本発明は、従来の量論的なヒドリド還元剤の代替となり、さらに所望の還元が比較的緩和な反応条件下で実施できるため、基質適用範囲の広い、アミド類およびラクタム類の実用的な還元方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医農薬中間体の製造技術として重要なアミド類およびラクタム類の還元方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミド類からアルコール類への還元は、アルミニウム系のヒドリド還元剤を量論的に用いる方法が多用されている(ラクタム類からアミノアルコール類への還元も同様)。一方、遷移金属を触媒とする水素ガス(H2)による還元、特に、再現性が高い均一系触媒を用いる方法は、研究が殆ど成されていない。最近、特徴的な3座のホスフィン配位子を有するルテニウム錯体を用いる均一系の水素化が報告されたが(特許文献1、非特許文献1)、高い触媒活性を発現するには高温条件を必要とし、さらにアミン類の製造をターゲットにしたものである。
【0003】
本発明で用いる8(VIII)族遷移金属錯体は、塩基および水素ガスの共存下に、ケトン類、エポキシド類、イミド類およびエステル類の還元に有効であることが報告されている(非特許文献2)。しかしながら、これらの基質に比べて還元が格段に困難なアミド類およびラクタム類への適応は一切報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2003/093208号パンフレット
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Chem.Commun.(英国),2007年,p.3154−3156
【非特許文献2】有機合成化学協会誌,2008年,第66号,p.1042−1048
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、アミド類およびラクタム類の実用的な還元方法を提供することにある。
【0007】
ヒドリド還元剤を量論的に用いる方法は、該還元剤が高価で取り扱いに注意がいること、後処理が煩雑で廃棄物が多いことから大量規模での生産には不向きであった。よって、この様な問題を伴わない水素ガスを用いる還元、特に、工業化に向けたスケールアップが比較的容易に行える均一系触媒を用いる方法が強く望まれていた。
【0008】
さらに、本発明では還元が格段に困難なアミド類およびラクタム類を対象とするため、高活性な触媒を設計する必要がある。この様な場合、多くの知見があり、配位子の変更が比較的容易に行える金属錯体を選択することが得策である。本発明で用いる8(VIII)族遷移金属錯体は、この様な要件を正に備えており好適である。しかしながら、該金属錯体から誘導される触媒系がアミド類およびラクタム類の還元に有効であるかは全く不明であり、この有効性を明らかにすることが本発明の課題である。また、本発明で対象とする目的生成物はアルコール類およびアミノアルコール類であり、上記の触媒系で所望の生成物が高い選択性で収率良く得られるかも全く不明であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を踏まえて鋭意検討した結果、8(VIII)族遷移金属錯体、塩基および水素ガスの存在下に、アミド類またはラクタム類を、それぞれアルコール類またはアミノアルコール類に還元できることを新たに見出した。
【0010】
先ず、8(VIII)族遷移金属錯体としては、“シクロペンタジエニル(Cp)基または1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル(Cp*)基、ハロゲン、一酸化炭素、アセトニトリル、フェニルイソシアニドまたはトリフェニルホスフィン、および、窒素−窒素(N−N)またはリン−窒素(P−N)の二座配位子を有する、Fe、RuまたはOs錯体”を用いることができ、“Cp*基、ハロゲンまたはアセトニトリル、および、リンと窒素が2つの炭素を介して結ばれた二座配位子(P−C2−N)を有する、Ru錯体”が好ましく、特に“Cp*RuCl[Ph2P(CH22NH2](Ph;フェニル基)”がより好ましいことを新たに明らかにした。
【0011】
次に、塩基としては、アルカリ金属の水酸化物またはアルコキシドが好ましく、特にアルカリ金属のアルコキシドがより好ましいことを新たに明らかにした。
【0012】
また、反応溶媒としては、立体的に嵩高い第3級アルコールであるtert−ブタノールを用いることにより、アミド結合の加アルコール分解等の副反応を制御することができ、目的生成物を高い選択性で得ることができる。
【0013】
さらに、水素ガスの圧力としては、窒素上の置換基であるR3に好適な電子求引性基を導入することにより、従来技術に比べて比較的低い水素圧でも反応がスムーズに進行することを見出した。実用性を考慮すると好ましい態様であり、係る好適な水素ガスの圧力は、2.5から3.5MPaである。
【0014】
最後に、反応温度としては、水素ガスの圧力と同様、R3に好適な置換基を導入することにより、従来技術に比べて相当低い温度でも反応がスムーズに進行することを見出した。実用性を考慮すると好ましい態様であり、係る好適な反応温度は、70から90℃である。
【0015】
この様に、アミド類およびラクタム類の実用的な還元方法として有用な方法を見出し、本発明に到達した。
【0016】
すなわち、本発明は[発明1]から[発明6]を含み、アミド類およびラクタム類の実用的な還元方法を提供する。
【0017】
[発明1]
一般式[1]
【0018】
【化1】

【0019】
[式中、Aはシクロペンタジエニル(Cp)基または1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル(Cp*)基を表し、MはFe、RuまたはOsを表す。さらに、Bはハロゲン、一酸化炭素、アセトニトリル、フェニルイソシアニドまたはトリフェニルホスフィンを表し、Cは窒素−窒素(N−N)またはリン−窒素(P−N)の二座配位子を表す]で示される8(VIII)族遷移金属錯体、塩基および水素ガス(H2)の存在下に、一般式[2]
【0020】
【化2】

【0021】
[式中、R1はアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、芳香環基または置換芳香環基を表し、R2は水素原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香環基または置換芳香環基を表し、R3は水素原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香環基、置換芳香環基、アルコキシカルボニル基、置換アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、置換アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基または置換アリールスルホニル基を表す]で示されるアミド類、または一般式[3]
【0022】
【化3】

【0023】
{式中、R1−R2は一般式[2]で示されるアミド類のR1とR2が共有結合で結ばれていることを表す(但し、R2が水素原子の場合を除く)}で示されるラクタム類を、それぞれ一般式[4]
【0024】
【化4】

【0025】
{式中、R1は一般式[2]で示されるアミド類のR1と同じである}で示されるアルコール類、または一般式[5]
【0026】
【化5】

【0027】
{式中、R1−R2は一般式[2]で示されるアミド類のR1とR2が共有結合で結ばれていることを表し(但し、R2が水素原子の場合を除く)、R3は一般式[2]で示されるアミド類のR3と同じである}で示されるアミノアルコール類に還元する方法。
【0028】
[発明2]
発明1において、一般式[1]で示される8(VIII)族遷移金属錯体が一般式[6]
【0029】
【化6】

【0030】
[式中、Cp*は1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル基を表し、Xはハロゲンまたはアセトニトリルを表す。さらに、P−C2−Nはリンと窒素が2つの炭素を介して結ばれた二座配位子であることを表す]で示される8(VIII)族遷移金属錯体であり、さらに塩基がアルカリ金属の水酸化物またはアルコキシドであることを特徴とする、発明1に記載のアミド類またはラクタム類の還元方法。
【0031】
[発明3]
発明2において、一般式[6]で示される8(VIII)族遷移金属錯体が式[7]
【0032】
【化7】

【0033】
[式中、Cp*は1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル基を表し、Phはフェニル基を表す]で示される8(VIII)族遷移金属錯体であり、さらに塩基がアルカリ金属のアルコキシドであることを特徴とする、発明2に記載のアミド類またはラクタム類の還元方法。
【0034】
[発明4]
発明1及至発明3の何れかにおいて、反応溶媒がtert−ブタノールであることを特徴とする、発明1及至発明3の何れかに記載のアミド類またはラクタム類の還元方法。
【0035】
[発明5]
発明1及至発明4の何れかにおいて、水素ガス(H2)の圧力が2.5から3.5MPaであることを特徴とする、発明1及至発明4の何れかに記載のアミド類またはラクタム類の還元方法。
【0036】
[発明6]
発明1及至発明5の何れかにおいて、反応温度が70から90℃であることを特徴とする、発明1及至発明5の何れかに記載のアミド類またはラクタム類の還元方法。
【発明の効果】
【0037】
本発明の触媒系は、還元が格段に困難なアミド類およびラクタム類の還元にも適応でき、本発明の目的生成物であるアルコール類およびアミノアルコール類を高い選択性で収率良く与える。よって、従来の量論的なヒドリド還元剤の代替となり、大量規模での生産にも好適に利用できる。
【0038】
しかも、反応条件が比較的緩和なため、目的生成物との分離の難しい不純物を殆ど副生せず、精製に負荷が掛からない。また、エステル基やアミド基のα位に水素を有する光学活性な基質を用いても、反応を通してラセミ化は起こらない(実施例7および実施例24を参照)。さらに、本反応は還元条件であるにも拘らず、脱ベンジル化等の加水素分解も全く起こらない(実施例3を参照)。
【0039】
この様に、本発明は、従来の量論的なヒドリド還元剤の代替となり、さらに所望の還元が比較的緩和な反応条件下で実施できるため、基質適用範囲の広い、アミド類およびラクタム類の実用的な還元方法である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明のアミド類およびラクタム類の実用的な還元方法について詳細に説明する。
【0041】
本発明では、一般式[1]で示される8(VIII)族遷移金属錯体、塩基および水素ガスの存在下に、一般式[2]で示されるアミド類、または一般式[3]で示されるラクタム類を、それぞれ一般式[4]で示されるアルコール類、または一般式[5]で示されるアミノアルコール類に還元することができる。
【0042】
一般式[1]で示される8(VIII)族遷移金属錯体のAは、Cp基またはCp*基を表す。その中でもCp*基が好ましい。
【0043】
一般式[1]で示される8(VIII)族遷移金属錯体のMは、Fe、RuまたはOsを表す。その中でもFeおよびRuが好ましく、特にRuがより好ましい。
【0044】
一般式[1]で示される8(VIII)族遷移金属錯体のBは、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン、一酸化炭素、アセトニトリル、フェニルイソシアニドまたはトリフェニルホスフィンを表す。その中でもハロゲンおよびアセトニトリルが好ましく、特に塩素がより好ましい。Bの種類によってはカチオン性錯体を採ることもあり、係るカウンターアニオンは、塩素、テトラフルオロボラート(BF4-)、トリフラートイオン(CF3SO3-)、ヘキサフルオロホスフェート(PF6-)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6-)等が挙げられる。その中でもCF3SO3-、PF6-およびSbF6-が好ましく、特にCF3SO3-およびPF6-がより好ましい。
【0045】
一般式[1]で示される8(VIII)族遷移金属錯体のCは、N−NまたはP−Nの二座配位子を表す。その中でもP−C2−Nが好ましく、特にPh2P(CH22NH2がより好ましい。また、一般式[2]で示されるアミド類、またはR3が芳香環基または置換芳香環基である一般式[3]で示されるラクタム類の還元では、N−N二座配位子が効果的であり、特に2−ピリジルメチルアミンがより効果的である。N−N二座配位子は、公知の方法により製造でき、また多くが市販されている。P−N二座配位子は、Aldrichimica ACTA(米国),2008年,第41巻,第1号,p.15−26等により製造できる。代表的なN−NおよびP−N(P−C2−N)の二座配位子を図−1に示すが、これらの代表例に限定されるものではない(代表例のそれぞれの構造式において、任意の炭素原子上に、任意の数で、低級アルキル基が置換できる)。なお、代表例における略記号は次の通りとする。Me;メチル基、Ph;フェニル基、i−Pr;イソプロピル基、t−Bu;tert−ブチル基、Bn;ベンジル基。*は不斉炭素または軸不斉を表し、R体またはS体を採ることができる。*が複数ある場合には、R体またはS体の任意の組み合わせを採ることができる。
【0046】
【化8】

【0047】
また、上記のAldrichimica ACTAに記載されたP−N二座配位子も同様に用いることができる。
【0048】
一般式[1]で示される8(VIII)族遷移金属錯体は、Organometallics(米国),2003年,22巻,p.4190−4192およびOrganometallics(米国),1997年,第16巻,p.1956−1961等により製造できる。本発明の請求項は、触媒系がAMBCと塩基から誘導される2成分調製法を基に記載しているが、水素ガスとの作用(反応溶媒が関与することもある)により同じ触媒活性種{AMHC[式中、Hはヒドリドを表す]}が反応系内で調製できる全ての方法が本発明の請求項に含まれるものとする。具体的に補足すると、2成分調製法{Cp*RuCl[Ph2P(CH22NH2]、塩基/水素ガス(反応溶媒が関与することもある)}で調製される触媒活性種のCp*RuH[Ph2P(CH22NH2]は、3成分調製法{Cp*RuCl(cod)(cod;1,5−シクロオクタジエン)、Ph2P(CH22NH2、塩基/水素ガス(反応溶媒が関与することもある)}でも同様に調製することができる。さらに、Organometallics(米国),2003年,22巻,p.4190−4192で報告されている様に、同じ触媒活性種{Cp*RuH[Ph2P(CH22NH2]}は、イソプロピルアルコール中でCp*RuCl[Ph2P(CH22NH2]と塩基からも同様に調製できる。予め調製した触媒活性種を用いて水素ガスの存在下に(必要に応じて塩基の共在下に)反応を行うこともできる。具体例以外でもこの様な関係にある全ての調製方法が、本発明の請求項には含まれていることを意味する。
【0049】
一般式[1]で示される8(VIII)族遷移金属錯体の使用量は、一般式[2]で示されるアミド類、または一般式[3]で示されるラクタム類1モルに対して触媒量を用いれば良いが、通常は0.3から0.00001モルが好ましく、特に0.2から0.0001モルがより好ましい。
【0050】
塩基は、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属の炭酸塩、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化テトラn−ブチルアンモニウム、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、リチウムイソプロポキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムイソプロポキシド、リチウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド等のアルカリ金属のアルコキシド、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(DBU)等の有機塩基、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド等が挙げられる。その中でもアルカリ金属の水酸化物およびアルコキシドが好ましく、特にアルカリ金属のアルコキシドがより好ましい。
【0051】
塩基の使用量は、一般式[1]で示される8(VIII)族遷移金属錯体1モルに対して0.7モル以上を用いれば良く、0.8から20モルが好ましく、特に0.9から10モルがより好ましい。
【0052】
水素ガス(H2)の使用量は、一般式[2]で示されるアミド類、または一般式[3]で示されるラクタム類1モルに対して2モル以上を用いれば良いが、通常は大過剰が好ましく、特に加圧下での大過剰がより好ましい。係る水素ガスの圧力は、大気圧より高い条件で行えば良いが、2から5MPaが好ましく、実用性を考慮すると特に2.5から3.5MPaがより好ましい。
【0053】
一般式[2]で示されるアミド類のR1は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、芳香環基または置換芳香環基を表す。その中でもアルキル基、置換アルキル基、芳香環基および置換芳香環基が好ましく、特にアルキル基および置換アルキル基がより好ましい。
【0054】
アルキル基は、炭素数が1から18の、直鎖または枝分れの鎖式、または環式(炭素数が3以上の場合)を採ることができる。アルケニル基は、該アルキル基の、任意の隣り合う2つの炭素原子の単結合が二重結合に、任意の数で置き換わり、該二重結合の立体化学はE体、Z体、またはE体とZ体の混合物を採ることができる。芳香環基は、炭素数が1から18の、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等の芳香族炭素水素基、またはピロリル基、フリル基、チエニル基、インドリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基等の窒素原子、酸素原子または硫黄原子等のヘテロ原子を含む芳香族複素環基を採ることができる。
【0055】
該アルキル基、アルケニル基または芳香環基は、任意の炭素原子上に、任意の数でさらに任意の組み合わせで、置換基を有することもできる(それぞれ置換アルキル基、置換アルケニル基および置換芳香環基に対応する)。係る置換基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のハロゲン原子、アジド基、ニトロ基、メチル基、エチル基、プロピル基等の低級アルキル基、フルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基等の低級ハロアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の低級アルコキシ基、フルオロメトキシ基、クロロメトキシ基、ブロモメトキシ基等の低級ハロアルコキシ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基等の低級アルキルアミノ基、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基等の低級アルキルチオ基、シアノ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基等の低級アルコキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アミノカルボニル基(CONH2)、ジメチルアミノカルボニル基、ジエチルアミノカルボニル基、ジプロピルアミノカルボニル基等の低級アルキルアミノカルボニル基、アルキニル基、フェニル基、ナフチル基、ピロリル基、フリル基、チエニル基等の芳香環基、フェノキシ基、ナフトキシ基、ピロリルオキシ基、フリルオキシ基、チエニルオキシ基等の芳香環オキシ基、ピペリジル基、ピペリジノ基、モルホリニル基等の脂肪族複素環基、ヒドロキシル基の保護体、アミノ基(アミノ酸またはペプチド残基も含む)の保護体、チオール基の保護体、アルデヒド基の保護体、カルボキシル基の保護体等が挙げられる。なお、本明細書において、次の各用語は、それぞれ次に掲げる意味で用いられる。"低級"とは、炭素数が1から6の、直鎖または枝分れの鎖式、または環式(炭素数3以上の場合)を意味する。"ヒドロキシル基、アミノ基(アミノ酸またはペプチド残基も含む)、チオール基、アルデヒド基およびカルボキシル基の保護基"としては、Protective Groups in Organic Synthesis,Third Edition,1999,John Wiley & Sons,Inc.に記載された保護基等を用いることができる(2つ以上の官能基を1つの保護基で保護することもできる)。また、"アルキニル基"、"芳香環基"、"芳香環オキシ基"および"脂肪族複素環基"には、ハロゲン原子、アジド基、ニトロ基、低級アルキル基、低級ハロアルキル基、低級アルコキシ基、低級ハロアルコキシ基、低級アルキルアミノ基、低級アルキルチオ基、シアノ基、低級アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、低級アルキルアミノカルボニル基、ヒドロキシル基の保護体、アミノ基(アミノ酸またはペプチド残基も含む)の保護体、チオール基の保護体、アルデヒド基の保護体、カルボキシル基の保護体等が置換することもできる。
【0056】
本発明は還元反応であるため、置換基の種類によっては置換基自体が還元される場合もある。しかしながら、好適な反応条件を採用することにより所望の反応を良好に行うことができる。
【0057】
一般式[2]で示されるアミド類のR2は、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香環基または置換芳香環基を表す。その中でもアルキル基、置換アルキル基、芳香環基および置換芳香環基が好ましく、特にアルキル基および置換アルキル基がより好ましい。該アルキル基、置換アルキル基、芳香環基および置換芳香環基は、一般式[2]で示されるアミド類のR1に記載したアルキル基、置換アルキル基、芳香環基および置換芳香環基と同じである。
【0058】
一般式[2]で示されるアミド類のR3は、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香環基、置換芳香環基、アルコキシカルボニル基、置換アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、置換アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基または置換アリールスルホニル基を表す。その中でも芳香環基、置換芳香環基、アルコキシカルボニル基、置換アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、置換アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基および置換アリールスルホニル基が好ましく、特にアルコキシカルボニル基、置換アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、置換アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基および置換アリールスルホニル基がより好ましい。該アルキル基、置換アルキル基、芳香環基および置換芳香環基は、一般式[2]で示されるアミド類のR1に記載したアルキル基、置換アルキル基、芳香環基および置換芳香環基と同じである。アルコキシカルボニル基(CO2R)のアルキル基(R)、置換アルコキシカルボニル基(CO2R’)の置換アルキル基(R’)、アルキルスルホニル基(SO2R)のアルキル基(R)、置換アルキルスルホニル基(SO2R’)の置換アルキル基(R’)、アリールスルホニル基(SO2Ar)の芳香環基(Ar)および置換アリールスルホニル基(SO2Ar’)の置換芳香環基(Ar’)は、一般式[2]で示されるアミド類のR1に記載したアルキル基、置換アルキル基、芳香環基および置換芳香環基と同じである。
【0059】
3に好適な電子求引性基を導入すると所望の還元反応が比較的緩和な条件で進行することを明らかにした。その効果は“メシル基>メトキシカルボニル基>パラトルエンスルホニル基〜tert−ブトキシカルボニル基>ベンジルオキシカルボニル基”の順であり、この順に好ましい置換基の態様と言える。
【0060】
一般式[3]で示されるラクタム類のR1−R2は、一般式[2]で示されるアミド類のR1とR2が共有結合で結ばれていることを表す(但し、R2が水素原子の場合を除く)。該共有結合は、R1とR2の任意の炭素原子同士間は当然であるが、窒素原子、酸素原子または硫黄原子等のヘテロ原子を介して結ばれることもある。好適なR1およびR2は、一般式[2]で示されるアミド類の場合と同じである。また、ラクタム類の環員数が反応速度に影響を与えることも明らかにしており、基質としては、7員環に比べて4から6員環が好ましい。
【0061】
また、実施例6の基質であるFの様に、一般式[2]で示されるアミド類のR1とR3の置換基が同時に兼ね合わさった化合物も、本発明の一般式[2]で示されるアミド類として扱う。さらに、実施例24の基質の様に、一般式[2]で示されるアミド類のR2とR3の任意の炭素原子同士が共有結合で結ばれることもあり(場合によっては、窒素原子、酸素原子または硫黄原子等のヘテロ原子を介して結ばれることもある)、本発明の一般式[2]で示されるアミド類として扱う。
【0062】
反応溶媒は、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系、ベンゼン、トルエン、α,α,α−トリフルオロトルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素系、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール等のエーテル系、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系等が挙げられる。その中でもアルコール系が好ましく、特にtert−ブタノールがより好ましい。これらの反応溶媒は、単独または組み合わせて用いることができる。
【0063】
アルコール系の反応溶媒を用いると所望の還元反応がスムーズに進行するが、立体的な嵩高さが期待できないメタノールではアミド結合の加アルコール分解も起こる(実施例1と同様の反応をメタノール中で行うと34モル%副生)。イソプロパノールやtert−ブタノール中で行うと、この副反応は効果的に制御できる(イソプロパノール;18モル%副生、tert−ブタノール;副生せず)。この様に、アルコール系の中でも立体的な嵩高さが期待できる第3アルコールが極めて効果的である。
【0064】
反応溶媒の使用量は、一般式[2]で示されるアミド類、または一般式[3]で示されるラクタム類1モルに対して0.1L(リットル)以上を用いれば良いが、通常は0.2から20Lが好ましく、特に0.3から10Lがより好ましい。
【0065】
反応温度は、50℃以上で行えば良いが、60から100℃が好ましく、実用性を考慮すると特に70から90℃がより好ましい。
【0066】
反応時間は、特に制限はないが、通常は120時間以内であるが、触媒系、基質および反応条件により異なるため、ガスクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴等の分析手段により反応の進行状況を追跡し、原料が殆ど消失した時点を反応の終点とすることが好ましい。
【0067】
後処理は、反応終了液に対して通常の操作を行うことにより、目的とする一般式[4]で示されるアルコール類、または一般式[5]で示されるアミノアルコール類を得ることができる。目的物は、必要に応じて、活性炭処理、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等により、高い化学純度に精製することができる。 本発明では、一般式[1]で示される8(VIII)族遷移金属錯体、塩基および水素ガスの存在下に、一般式[2]で示されるアミド類、または一般式[3]で示されるラクタム類を、それぞれ一般式[4]で示されるアルコール類、または一般式[5]で示されるアミノアルコール類に還元することができる(態様1)。
【0068】
8(VIII)族遷移金属錯体と塩基の、好ましい同士の組み合わせにより、さらに高活性な触媒活性種を調製することができる(態様2)。
【0069】
8(VIII)族遷移金属錯体と塩基の、特により好ましい同士の組み合わせにより、極めて高活性な触媒活性種を調製することができる(態様3)。
【0070】
態様1から3と好適な反応溶媒の組み合わせにより、さらに実用的な還元方法を提供できる(態様4)。
【0071】
態様1から4と好適な水素ガスの圧力の組み合わせにより、格段に実用的な還元方法を提供できる(態様5)。
【0072】
態様1から5と好適な反応温度の組み合わせにより、極めて実用的な還元方法を提供できる(態様6)。
【0073】
[実施例]
実施例により本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例における略記号は次の通りとする。Cp*;1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル基、Ph;フェニル基、tert;第3級、Bu;ブチル基、Boc;tert−ブトキシカルボニル基、Me;メチル基、Cbz;ベンジルオキシカルボニル基、Ms;メシル基、Ts;パラトルエンスルホニル基、Bn;ベンジル基、Et;エチル基。
【0074】
[実施例1から16]
実施例1の実験操作を代表例として下に示す。
【0075】
アルゴン雰囲気下、シュレンク管に、下記式
【0076】
【化9】

【0077】
で示されるCp*RuCl[Ph2P(CH22NH2]20.0mg(0.04mmol,0.02eq)、tert−ブトキシカリウム4.5mg[0.04mmol,1.00eq(ルテニウム錯体に対する当量)]、tert−ブタノール10mLと、下記式
【0078】
【化10】

【0079】
で示されるラクタム類370mg(2.00mmol,1.00eq)を加え、凍結脱気を3回繰り返した。アルゴン雰囲気下、得られた溶液をカニュラーにより、ガラス製内筒を有するステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に移した。反応容器内を水素ガスで5回置換し、水素圧を3MPaに設定し、80℃で36時間攪拌した。反応終了液をシリカゲル濾過し、酢酸エチルで洗浄し、濾液と洗浄液を減圧濃縮し、セミミクロ蒸留することにより、下記式
【0080】
【化11】

【0081】
で示されるアミノアルコール類を378mg得た。収率は>99%であった。
【0082】
実施例2から16は、ラクタム類の種類、Cp*RuCl[Ph2P(CH22NH2]の使用量、tert−ブトキシカリウムの使用量および反応時間を変えて、実施例1と同様に行った。実施例2から16の結果を表−1に纏めた。
【0083】
【表1】

【0084】
実施例6の基質Fは、アミド類のR1とR3の置換基がフェニル基を共有した化合物である。また、実施例7の生成物の、エトキシカルボニル基のα位は全くラセミ化していなかった。
【0085】
[実施例17から23]
実施例23の実験操作を代表例として下に示す。
【0086】
アルゴン雰囲気下、シュレンク管に、下記式
【0087】
【化12】

【0088】
で示されるCp*RuCl[C54NCH2NH2]76.0mg(0.20mmol,0.10eq)、ナトリウムメトキシド32.4mg[0.60mmol,3.00eq(ルテニウム錯体に対する当量)]、tert−ブタノール2mLと、下記式
【0089】
【化13】

【0090】
で示されるラクタム類350mg(2.00mmol,1.00eq)を加え、凍結脱気を3回繰り返した。アルゴン雰囲気下、得られた溶液をカニュラーにより、ガラス製内筒を有するステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に移した。反応容器内を水素ガスで5回置換し、水素圧を5MPaに設定し、100℃で90時間攪拌した。反応終了液をシリカゲル濾過し、酢酸エチルで洗浄し、濾液と洗浄液を減圧濃縮し、セミミクロ蒸留することにより、下記式
【0091】
【化14】

【0092】
で示されるアミノアルコール類を326mg得た。収率は91%であった。
【0093】
実施例17から22は、ラクタム類の種類、Cp*RuCl[二座配位子]の種類および反応温度を変えて、実施例23と同様に行った。実施例17から22の結果を表−2に纏めた。
【0094】
【表2】

【0095】
[実施例24]
アルゴン雰囲気下、シュレンク管に、下記式
【0096】
【化15】

【0097】
で示されるCp*RuCl[Ph2P(CH22NH2]12.3mg(0.025mmol,0.03eq)、tert−ブトキシカリウム2.8mg[0.025mmol,1.00eq(ルテニウム錯体に対する当量)]、イソプロパノール5.6mLと、下記式
【0098】
【化16】

【0099】
で示されるアミド類259.7mg(0.81mmol,1.00eq)を加え、凍結脱気を3回繰り返した。アルゴン雰囲気下、得られた溶液をカニュラーにより、ガラス製内筒を有するステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に移した。反応容器内を水素ガスで5回置換し、水素圧を3MPaに設定し、80℃で20時間攪拌した。反応終了液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記式
【0100】
【化17】

【0101】
で示されるアルコール類を108.8mg得た。収率は90%であった。還元反応において光学純度の低下は全く認められなかった。また、下記式
【0102】
【化18】

【0103】
で示される不斉補助基を127.2mg回収した。回収率は89%であった。
【0104】
実施例24の結果を下のスキームに示す。
【0105】
【化19】

【0106】
[実施例25から31]
実施例25の実験操作を代表例として下に示す。
【0107】
アルゴン雰囲気下、シュレンク管に、下記式
【0108】
【化20】

【0109】
で示されるCp*RuCl[C54NCH2NH2]22.8mg(0.06mmol,0.10eq)、ナトリウムメトキシド9.7mg[0.18mmol,3.00eq(ルテニウム錯体に対する当量)]、tert−ブタノール0.6mLと、下記式
【0110】
【化21】

【0111】
で示されるラクタム類138mg(0.60mmol,1.00eq)を加え、凍結脱気を3回繰り返した。アルゴン雰囲気下、得られた溶液をカニュラーにより、ガラス製内筒を有するステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に移した。反応容器内を水素ガスで5回置換し、水素圧を5MPaに設定し、100℃で90時間攪拌した。反応終了液の変換率は>99%であった。反応終了液をシリカゲル濾過し、酢酸エチルで洗浄し、濾液と洗浄液を減圧濃縮し、セミミクロ蒸留することにより、下記式
【0112】
【化22】

【0113】
で示されるアミノアルコール類を126mg得た。収率は90%であった。
【0114】
実施例26から31は、ラクタム類の種類、Cp*RuCl[C54NCH2NH2]の使用量および反応時間を変えて、実施例25と同様に行った。実施例25から31の結果を表−3に纏めた。
【0115】
【表3】

【0116】
[実施例32から37]
実施例32の実験操作を代表例として下に示す。
【0117】
アルゴン雰囲気下、シュレンク管に、下記式
【0118】
【化23】

【0119】
で示されるCp*RuCl[C54NCH2NH2]22.8mg(0.06mmol,0.10eq)、ナトリウムメトキシド9.7mg[0.18mmol,3.00eq(ルテニウム錯体に対する当量)]、tert−ブタノール0.6mLと、下記式
【0120】
【化24】

【0121】
で示されるアミド類118mg(0.60mmol,1.00eq)を加え、凍結脱気を3回繰り返した。アルゴン雰囲気下、得られた溶液をカニュラーにより、ガラス製内筒を有するステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に移した。反応容器内を水素ガスで5回置換し、水素圧を5MPaに設定し、100℃で90時間攪拌した。反応終了液の変換率は100%であった。反応終了液をシリカゲル濾過し、酢酸エチルで洗浄し、濾液と洗浄液を減圧濃縮し、セミミクロ蒸留することにより、下記式
【0122】
【化25】

【0123】
で示されるアルコール類を得た。また、下記式
【0124】
【化26】

【0125】
で示されるアミン類を回収した。
【0126】
実施例33から37は、アミド類の種類、Cp*RuCl[C54NCH2NH2]の使用量および反応時間を変えて、実施例32と同様に行った。実施例32から37の結果を表−4に纏めた。
【0127】
【表4】






【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式[1]
【化1】

[式中、Aはシクロペンタジエニル(Cp)基または1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル(Cp*)基を表し、MはFe、RuまたはOsを表す。さらに、Bはハロゲン、一酸化炭素、アセトニトリル、フェニルイソシアニドまたはトリフェニルホスフィンを表し、Cは窒素−窒素(N−N)またはリン−窒素(P−N)の二座配位子を表す]で示される8(VIII)族遷移金属錯体、塩基および水素ガス(H2)の存在下に、一般式[2]
【化2】

[式中、R1はアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、芳香環基または置換芳香環基を表し、R2は水素原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香環基または置換芳香環基を表し、R3は水素原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香環基、置換芳香環基、アルコキシカルボニル基、置換アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、置換アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基または置換アリールスルホニル基を表す]で示されるアミド類、または一般式[3]
【化3】

{式中、R1−R2は一般式[2]で示されるアミド類のR1とR2が共有結合で結ばれていることを表す(但し、R2が水素原子の場合を除く)}で示されるラクタム類を、それぞれ一般式[4]
【化4】

{式中、R1は一般式[2]で示されるアミド類のR1と同じである}で示されるアルコール類、または一般式[5]
【化5】

{式中、R1−R2は一般式[2]で示されるアミド類のR1とR2が共有結合で結ばれていることを表し(但し、R2が水素原子の場合を除く)、R3は一般式[2]で示されるアミド類のR3と同じである}で示されるアミノアルコール類に還元する方法。
【請求項2】
請求項1において、一般式[1]で示される8(VIII)族遷移金属錯体が一般式[6]
【化6】

[式中、Cp*は1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル基を表し、Xはハロゲンまたはアセトニトリルを表す。さらに、P−C2−Nはリンと窒素が2つの炭素を介して結ばれた二座配位子であることを表す]で示される8(VIII)族遷移金属錯体であり、さらに塩基がアルカリ金属の水酸化物またはアルコキシドであることを特徴とする、請求項1に記載のアミド類またはラクタム類の還元方法。
【請求項3】
請求項2において、一般式[6]で示される8(VIII)族遷移金属錯体が式[7]
【化7】

[式中、Cp*は1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル基を表し、Phはフェニル基を表す]で示される8(VIII)族遷移金属錯体であり、さらに塩基がアルカリ金属のアルコキシドであることを特徴とする、請求項2に記載のアミド類またはラクタム類の還元方法。
【請求項4】
請求項1及至請求項3の何れかにおいて、反応溶媒がtert−ブタノールであることを特徴とする、請求項1及至請求項3の何れかに記載のアミド類またはラクタム類の還元方法。
【請求項5】
請求項1及至請求項4の何れかにおいて、水素ガス(H2)の圧力が2.5から3.5MPaであることを特徴とする、請求項1及至請求項4の何れかに記載のアミド類またはラクタム類の還元方法。
【請求項6】
請求項1及至請求項5の何れかにおいて、反応温度が70から90℃であることを特徴とする、請求項1及至請求項5の何れかに記載のアミド類またはラクタム類の還元方法。

【公開番号】特開2010−168357(P2010−168357A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285820(P2009−285820)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】