説明

アミノ酸源として酵母または大豆抽出物を含み、動物起源のタンパク質複合体を含まない培養培地

【課題】動物起源でないタンパク質性物質の病原性細菌の培養のための培地成分としての使用を提供すること。
【解決手段】病原性細菌の免疫原性因子を調製するためのプロセスであって、Helicobacter pylori、Haemophilus influenzae、Corynebacterium diphtheriae、Neisseria meningitidis、Bordetella pertussis、またはClostridium tetaniから選択される病原性細菌を、少なくとも20乾燥重量%の動物由来でないタンパク質性物質を含み、かつ動物由来タンパク質性物質を含まない培地中で培養する工程、および必要に応じて、該培地から該免疫原性因子を精製する工程を包含し、ここで、該動物由来でないタンパク質性物質は、酵母抽出物および/または大豆由来タンパク質組成物である、プロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病原性細菌を培養するための培地に関する。本発明はまた、この培地を使用して、病原性細菌を培養し、培養された細菌から免疫原性因子を得、そして免疫原性因子を用いてワクチンを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌ワクチンは、培地で病原性細菌を培養し、免疫原性因子を単離し、そして単離した免疫原性因子に基づいてワクチンを調製することによって産生される。このような方法は、Bacterial Vaccines,1984,Rene Germanier Academic Press編、およびBacterial Vaccines in Advances in Biotechnology Processes,第13巻,1990,A.Mizrahi,Wiley−Liss編に記載されている。従来の方法では、病原性細菌は、動物起源のタンパク質性物質を含む培地で培養される。これらの化合物は病原性細菌の増殖に必須ないくらかの増殖因子が、血液、脳心臓注入物(infusion)、肉などのような動物起源の化合物にのみ存在していたという信念で使用されている。例えば、C.tetaniは、心臓注入物およびカゼインの酵素消化物を含む培地で増殖され;C.diphtheriaeは牛肉注入物を必要とし;H.pyloriはペプタミンおよびトリプトンを含む培地で増殖され;そしてHaemophilus influenzaeはプロテオースペプトンを含む培地で増殖される。世界保健機構報告第800巻(1990)および同第814巻(1991)は、Haemophilus influenza、Corynebacterium diphtheriae、clostridium tetaniおよびBordetella pertussisを増殖するために、動物起源の化合物を含む培地が必要であることを示している。
【0003】
培地における動物起源のタンパク質性物質の必要性は、培地の汚染の可能性の心配を生じている。特に、培地がウシ海綿状脳症(BSE)の原因となる物質または他の感染性物質および有害物質により汚染され得るという懸念は、特に治療用途において、このような培養物由来のいずれの因子の有用性をも制限している。
【0004】
動物起源でないタンパク質性物質が病原性細菌の増殖を維持し得、そして細菌による免疫原性因子の産生を可能にすることが、驚くべきことに見出された。
【0005】
特許出願DD 294 502−Aでは、繊毛(fimbriae)の微生物培養における大豆加水分解物を調製するプロセスおよび大豆加水分解物の使用が開示されている。大豆加水分解物は、ストレプトマイシン株で大豆粉末含有培地を培養することにより調製される。大豆加水分解物は、存在する多糖類の高い割合により炭素源として使用され、そして乾燥重量のタンパク質で20%未満を含有する。
【0006】
動物起源でないタンパク質性物質(例えば、大豆、綿実、ジャガイモなどに由来のタンパク質)の、病原性細菌の培養のための培地成分としての使用は、任意の後続の治療的または予防的用途においてヒトに移される動物由来の汚染(例えば、BSE)の危険性を完全に取り除く。
【0007】
植物由来のタンパク質性物質の使用に関連するさらなる利点は、この物質を生成する経費の削減およびこの物質の増加された一貫性である(動物由来でないタンパク質性物質は、動物由来の物質よりもその組成においてより均一である)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、免疫原性因子を生成するために病原性細菌を培養するための培地を提供し、ここでこの培地は、乾燥重量で少なくとも20%の動物由来でないタンパク質性物質を含有し、そして動物由来のタンパク質性物質を含有しない。
【0009】
細菌を培養するための任意の標準培地が、動物由来のタンパク質性物質を含まないという条件で、本発明の培地の基礎として使用され得る。
【0010】
好ましくは、本発明の培地は、炭素およびエネルギー源、窒素源、必須塩類、ならびに必要に応じて培養されるべき微生物を選択するための選択剤(例えば、抗生物質)を含有する。
【0011】
本発明の培地は、固体または液体培地であり得る。本発明の培地の基礎を形成し得る標準液体培地の例には、Brucellaブロス(トリプトンおよびペプタミンなし)、Watson培地(カザミノ酸なし)、Mueller Miller培地(心臓注入物およびカゼイン加水分解物なし)、CL培地(カザミノ酸なし)、およびFranz A培地が挙げられる。標準固体培地は、寒天のような凝固剤の添加により、任意の液体培地から調製され得る。
【0012】
本明細書中で使用される用語「培養する」は、細菌の維持、好ましくは増殖を意味する。細菌増殖は、本明細書中では、細菌生物量の増加として定義される。
【0013】
本明細書中で使用される用語「病原性細菌」は、疾患の病原性に関与する任意の細菌を意味する。好ましい病原性細菌には、Helicobacter pylori、Haemophilus influenzae、Corynebacterium diphtheriaeおよびNeisseria meningitidis、Bordetella pertussisおよびClostridium tetaniが挙げられる。
【0014】
本明細書中で使用される用語「免疫原性因子」は、ヒトまたは動物の免疫系を刺激し得る任意の因子を意味する。このような免疫原性因子には、抗原性タンパク質、特に毒性因子およびそのフラグメントが挙げられる。毒性因子は、細菌の毒性に関連するものとして定義され、Helicobacter pyloriにより産生される液胞(vaculating)細胞毒素VacAのような因子を含む。他の毒性因子は、Rappuoli,R.ら、European Journal of Gastroenterology and Hepatology of Helicobacterpylori infection.Proceedings of an interdisciplinary meeting (Genova,1993年6月18日〜19日) J.J.Misiewicz編 (CS Current Science),S76〜S78頁(本明細書中で参考として援用される)により記載されている。免疫原性因子は、毒素化(toxoiding)プロセスにより遺伝的に解毒されるかまたは処理され得る。免疫原性因子を遺伝的に解毒および毒素化の方法は、当業者に周知であり、Rappuoli,R.、Vaccine,12,579−581,(1994)(本明細書中で参考として援用される)により記載される方法を含む。
【0015】
本明細書中で使用される用語「タンパク質性物質」は、タンパク質、および遊離のアミノ酸を含むタンパク質分解産物を意味する。好ましくはタンパク質性物質は、タンパク質加水分解物である。
【0016】
本明細書中で使用される動物由来でないタンパク質性物質は、非哺乳動物源(例えば、植物、鳥、魚、酵母、真菌、藻類、および微生物)由来のタンパク質性物質を意味する。より好ましくは、動物由来でないタンパク質性物質は、植物、酵母、藻類および微生物由来のタンパク質性物質を意味する。最も好ましくは、動物由来でないタンパク質性物質は、大豆、綿実、ジャガイモ等由来のタンパク質組成物のような、植物由来のタンパク質性物質を意味する。
【0017】
好ましい動物由来でないタンパク質性物質には、HY YEST (Quest)のような酵母抽出物、ならびにHysoy(Quest)、Amisoy(Quest)、N−Z soy(Quest)およびSoytone(Difco)のような大豆由来のタンパク質組成物が挙げられる。
【0018】
酵母抽出物は、当業者に周知の標準的手順により調製され得る。さらに、酵母抽出物は、SigmaおよびQuestを含む多数の供給源から市販されている。
【0019】
大豆由来のタンパク質組成物は、パパインのような標準的酵素を用いて、大豆粉または大豆単離物の酵素的消化によって調製され得る。例えば、N−Z soyは、大豆単離物の酵素的消化により生成される可溶性タンパク質組成物であり、そしてHysoyは、大豆粉のパパイン消化物である。大豆由来のタンパク質組成物はまた、大豆単離物の酸加水分解により得られ得る。例えば、Amisoyは、大豆単離物の酸加水分解により生成されるアミノ酸およびペプチド供給源である。
【0020】
他の動物由来でないタンパク質性物質は、非哺乳動物源の物質を含むタンパク質の酵素的消化または酸加水分解のいずれかにより得られ得る。
【0021】
本発明の培地における動物由来でないタンパク質性物質は、2つ以上の異なる動物由来でないタンパク質性物質(例えば、Hysoy、Amisoy、N−Z soyおよびSoytoneのような大豆由来のタンパク質性組成物の混合物)を含み得る。
【0022】
動物由来のタンパク質性物質には、ウシ胎仔血清(FCS)、ウシ血清アルブミン(BSA)、プロテオースペプトン、カザミノ酸、トリプトン、ペプタミン、およびカゼイン加水分解物などのタンパク質組成物が挙げられる。
【0023】
好ましくは、本発明の培地は、乾燥重量で少なくとも20%の動物由来でないタンパク質性物質、より好ましくは乾燥重量で少なくとも30%の動物由来でないタンパク質性物質、最も好ましくは乾燥重量で少なくとも50%の動物由来でないタンパク質性物質を含む。
【0024】
本発明の培地を使用した病原性細菌の培養が、動物由来のタンパク質性物質を含む培地における病原性細菌の培養と比較して、細菌増殖の増加および免疫原性因子の収量の増加をもたらすことが、驚くべきことに見出された。
【0025】
本発明はさらに、免疫原性因子を産生するための病原性細菌の培養のための培地の作製プロセスを提供し、このプロセスは、細菌培養のための標準培地に十分な量の動物由来でないタンパク質性物質を添加する工程を包含し、これは動物由来のタンパク質性物質を含まず、故に、病原性細菌の培養のためのこの培地は、乾燥重量で少なくとも20%の動物由来でないタンパク質性物質を含みかつ動物由来のタンパク質性物質を含まない。
【0026】
標準的液体培地の例には、Brucellaブロス(トリプトンおよびペプタミンなし)、Watson培地(カザミノ酸なし)、Mueller Miller培地(心臓注入物およびカゼイン加水分解物なし)、CL培地(カザミノ酸なし)、およびFranz A培地が挙げられる。標準的固体培地は、寒天などの凝固剤の添加により、任意の液体培地から調製され得る。
【0027】
本発明はさらに、任意の前記したおよび病原性細菌の培地を包含する培養を提供する。好ましい病原性細菌には、Helicobacter pylori、Haemophilus influenzae、Corynebacterium diphtheriaeおよびNeisseria meningitidis、Bordetella pertussisおよびClostridium tetaniが挙げられる。最も好ましくは、病原性細菌はHelicobacter pyloriである。
【0028】
本発明はまた、病原性細菌の免疫原性因子を調製するプロセスを提供し、このプロセスは、本発明の培地において細菌を培養する工程、および必要に応じて培地から免疫原性因子を精製する工程を包含する。
【0029】
好ましくは、病原性細菌は、本発明の培地において、少なくとも6時間、より好ましくは少なくとも36時間、最も好ましくは少なくとも72時間、免疫原性因子の産生に適した条件下で、培養される。
【0030】
免疫原性因子の産生に適した培養条件(培養期間を含む)は、培養する細菌に依存して変化する。しかし、当業者は、免疫原性因子の産生に必要な培養条件を、標準的プロトコール(例えば、Methods in Microbiology,Academic Press Inc.のシリーズ(本明細書中で参考として援用される)に記載のプロトコール)に従うことによって、そして必要ならば、適切な培養条件を決定するための多くの標準的実験を行うことによって、容易に決定し得る。
【0031】
免疫原性因子は、多数の標準的技術(Manetti,R.ら、Infect.Immun.,63,4476−4480,(1995)(本明細書中で参考として援用される)に記載されている技術を含む)を用いて、細菌培養物より単離され得る。
【0032】
本発明はまた、病原性細菌の免疫原性因子を調製する工程を包含するワクチン生成のプロセスを提供し、このプロセスは、本発明の培地において細菌を培養する工程、必要に応じて培地から免疫原性因子を精製する工程、および(必要に応じて毒素化された)上記因子を薬学的に受容可能なキャリアと会合させる工程を包含する。ワクチンを産生するのに適した方法は、Rappuoli,R.,New and improved vaccines against Diphtheria and Tetanus.(1990),251−268,New Generation of Vaccines,G.C.Woodrow,M.M Levine編,Marcel Dekker Inc.New York(本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
【0033】
本発明のプロセスにより調製されるワクチンは、それらを使用するとき、アジュバントの添加を必要とする。適切なアジュバントは、Gupta,R.K.ら、Vaccine,13,1263−1276,(1995)に記載されている。
【0034】
本発明のプロセスにより調製されるワクチンは、細菌感染に対して個体をワクチン接種するために使用され得る。ワクチン接種され得る好ましい細菌感染には、B型胃炎、細菌性髄膜炎、ジフテリア、破傷風、および百日咳が挙げられる。
【0035】
本発明のプロセスにより調製されるワクチンは、上記したように薬学的に受容可能なキャリアおよびアジュバントと混合した本発明のワクチンを含有する薬学的組成物として提供され得る。
【0036】
本発明のプロセスにより調製されるワクチンは、経口または非経口経路(静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、経皮、気道(エアゾール)、直腸および局所的投与を含む)により、投与され得る。
【0037】
経口投与の場合、本発明の化合物は一般的に、錠剤もしくはカプセル剤の形状で、または水性溶液もしくは懸濁液として、提供される。
【0038】
経口使用のための錠剤は、薬学的に受容可能な賦形剤(例えば、不活性希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、甘味剤、矯味剤、着色剤、および保存剤)と混合された有効成分(ワクチン成分)を含み得る。適切な不活性希釈剤には、炭酸ナトリウムおよび炭酸カルシウム、リン酸ナトリウムおよびリン酸カルシウム、ならびに乳酸が挙げられるが、コーンスターチおよびアルギン酸が適切な崩壊剤である。結合剤は、デンプンおよび他の周知の試薬を含み得るが、もし存在する場合、滑沢剤は一般的に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクである。所望であるならば、錠剤は、消化管における吸収を遅延するために、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリル等の物質でコーティングされ得る。
【0039】
経口使用のためのカプセルとしては、有効成分が固体希釈剤と混合される硬質カプセル、および有効成分が水または油(例えば、ピーナッツ油、液体パラフィン、もしくはオリーブ油)と混合される軟質カプセルが挙げられる。
【0040】
筋肉内、腹腔内、皮下、および静脈内の使用について、本発明の化合物は、一般に、適切なpHおよび等張性に緩衝化された、滅菌で水性の溶液または懸濁液中に提供される。適切な水性ビヒクルとしては、リンゲル液および等張性の塩化ナトリウムが挙げられる。本発明に従う水性懸濁液としては、セルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル−ピロリドン、およびトラガカントゴムのような懸濁剤、ならびにレシチンのような湿潤剤が挙げられる。水性懸濁液に適切な保存剤としては、エチルおよびn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエートが挙げられる。
【0041】
本発明のプロセスによって調製されるワクチンはまた、リポソーム処方物として提供され得る。
・本発明はまた、以下を提供し得る:
・(項目1) 免疫原性因子を生成するために病原性細菌を培養するための培地であって、上記培地は、少なくとも20乾燥重量%の動物由来でないタンパク質性物質を含み、かつ動物由来のタンパク質性物質を含まない、培地。
・(項目2) 項目1に記載の培地であって、上記動物由来でないタンパク質性物質は、酵母抽出物および/またはダイズ由来タンパク質組成物である、培地。
・(項目3) 項目1または項目2に記載の培地であって、上記病原性細菌は、Helicobacter pylori、Haemophilus influenzae、Corynebacterium diphtheriae、Neisseria meningitidis、Bordetella pertussis、またはClostridium tetaniである、培地。
・(項目4) 項目1〜3のうちのいずれか1項に記載の培地と、病原性細菌とを含む、培養物。
・(項目5) 病原性細菌の免疫原性因子を調製するためのプロセスであって、
上記細菌を、項目1〜3のうちのいずれか1項に記載の培地中で培養する工程、および
必要に応じて、
上記培地から上記免疫原性因子を精製する工程を包含する、プロセス。
・(項目6) ワクチン生成のためのプロセスであって、
項目5に記載のプロセスによって病原性細菌の免疫原性因子を調製する工程、および
上記因子を薬学的に受容可能なキャリアと結合させる工程
を包含し、ここで、上記因子は必要に応じてトキソイド化される、プロセス。
・(項目7) 免疫原性因子を生成するために病原性細菌を培養するための培地の作製プロセスであって、
病原性細菌を培養するための上記培地が、少なくとも20乾燥重量%の動物由来でないタンパク質性物質を含み、かつ動物由来のタンパク質性物質を含まないように、充分な動物由来でないタンパク質性物質を、細菌を培養するための動物由来タンパク質性物質を含まない標準培地に添加する工程
を包含する、プロセス。
【0042】
本発明は、ここに、以下の実施例および図面を参照して記載される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、トリプトンおよびペプタミン(peptamin)を含有するBBにおけるH.pylori CCUG 17874の増殖の動力学を示す。
【図2】図2は、Soytoneを含有する単純化BBにおけるH.pylori CCUG 17874の増殖の動力学を示す。
【図3】図3は、Hysoyを含有する単純化BBにおけるH.pylori CCUG 17874の増殖の動力学を示す。
【図4】図4は、VacAイムノブロットを示し、ここで、レーン1は、分子量マーカーであり、レーン2は、VacA標準750ngであり、レーン3は、VacA標準500ngであり、レーン4は、VacA標準400ngであり、レーン5は、VacA標準150ngであり、レーン6は、VacA標準20ngであり、レーン7は、発酵の終りで生成されるVacAであり、レーン8は、培養の48時間後に生成されるVacAであり、レーン9は、培養の30時間後に生成されるVacAであり、レーン10は、培養の23時間後に生成されるVacAである。
【図5】図5は、VacAイムノブロットを示し、ここで、レーン1は、分子量マーカーであり、レーン2は、VacA標準750ngであり、レーン3は、VacA標準500ngであり、レーン4は、VacA標準400ngであり、レーン5は、VacA標準150ngであり、レーン6は、VacA標準20ngであり、レーン7は、発酵の終りで生成されるVacAであり、レーン8は、培養の31.5時間後に生成されるVacAであり、レーン9は、培養の30時間後に生成されるVacAであり、レーン10は、培養の24時間後に生成されるVacAである。
【図6】図6は、VacAのイムノブロットを示し、ここで、レーン1は、分子量マーカーであり、レーン2は、VacA標準750ngであり、レーン3は、VacA標準500ngであり、レーン4は、VacA標準400ngであり、レーン5は、VacA標準20ngであり、レーン6は、発酵の終りで生成されるVacAであり、レーン7は、培養の48時間後に生成されるVacAであり、レーン8は、培養の31時間後に生成されるVacAであり、レーン9は、培養の24.5時間後に生成されるVacAであり、レーン10は、VacA標準150ngである。
【図7】図7は、Soytoneまたはプロテオースペプトンを含有する単純化Franz培地中でのH.influenzae bの増殖の動力学を示す。
【図8】図8は、カザミノ酸またはAmisoyを含有するWatson培地中でのN.meningitidisの増殖の動力学を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
実施例
全ての引用文献は、本明細書中に参考として援用される。
実施例I
Helicobacter pyloriは、約10年前に単離された湾曲したグラム陰性の微好気性細菌であり、ヒトにおいてB型胃炎と関連する。この細菌は、ヒト胃粘膜にコロニーを形成し、そして胃潰瘍および十二指腸潰瘍を生じ得(Blaser、M.J.、(1990)、J.Infect.Dis.、161、629−633)、および胃ガン腫の発症についての危険因子であり得る(Parsonnet、J.ら(1991)、New Engl.J.Med.、325、1127−1131)慢性の感染を確立する。
【0045】
長期的には、感染および疾患はワクチン接種によって予防および処置され得る。現在、細菌接着、コロニー形成、および発病力に関与するいくつかの因子が同定されている。疾患に関与する最も興味深い因子のうちの1つは、液胞形成細胞毒(VacA)であり、これはいくつかの哺乳動物細胞株において大量の液胞形成を引き起こす(Leunk、R.D.、(1991)、Rev.Infect.Dis.、13(増刊8)、S683−689)。液胞はまた、慢性胃炎を伴う患者の胃上皮において観察されている(Tricottet、V.ら(1986)、Ultrastruct.Pathol.、10、113−117)。このタンパク質は、マウスにおいて潰瘍形成を引き起こすことが示されており(Telford,J.L.ら(1994)、J.Exp.Med.、179、1653−1658)、そしてワクチンの候補である。精製された細胞毒は、細菌培養上清から非常に小量で精製され得る87〜94kDのタンパク質である。
【0046】
材料および方法
細菌株
Helicobacter pylori CCUG 17874(株型、Culture Collection、University of Goteborg)を使用した。
【0047】
培地および補充物
2g/lの(2,6−ジ−0−メチル)−b−シクロデキストリン(CD)(Teijin Lim.Tokyo、Japan)および20mg/Lのストレプトマイシンを補充した、Brucella Broth(トリプトン10g/l、ペプタミン10g/l、デキストロース1g/l、酵母抽出物2g/l、塩化ナトリウム5g/l、および亜硫酸水素ナトリウム0.1g/l)(BB)(Difco)を、比較目的のための液体培地
として使用した。BBに存在するトリプトンおよびペプタミンの代わりに、HysoyまたはSoytoneを、10g/Lの濃度で使用した。
【0048】
保存
接種物の凍結アリコートを、グリセロール40%、胎児ウシ血清(FCS)(HyClone、Logan、Utah)20%、および0.4% CDから構成される溶液で1:2希釈した、2×10CFU/mlのフラスコ培養物から調製した。得られた懸濁液を、3mlバイアル中に分注し、そして−80℃で保存し、そしてSoytone 20%でFCSを置換して調製した新規の凍結バイアルとの比較のために、開始凍結バイアルとして使用した。
【0049】
液体培地中での増殖
最初の培養を、100mlの液体培地を含有する500ml Erlenmeyerフラスコ中で行った。培養物に、3mlの凍結ストックを接種し、そして微好気性環境において、36℃で36時間、振とうしながら(100rpm、2.5cmの偏心距離)インキュベートした。フラスコを、嫌気性のジャーの内側におき、ここではBBL Campy Pakエンベロープ(Becton Dickinson)を使用して、正確な条件を発生させた。次いで、これらの培養物を使用して、250mlの培地を含有する1000mlのフラスコに接種し、そして上記と同じ条件下でインキュベートし、そしてこれを使用して、バイオリアクターに接種した。
【0050】
培養容器および増殖条件
バッチ発酵を、5lの培地を含有する7リットルのバイオリアクター(MBR Bioreactors AG、8620 Wetzikon、CH)中で行った。全ての培養物を、36℃で増殖した。pH値は制御しなかった。溶存酸素圧力(DOT)を、2工程手順によって、予め設定したレベル(3%)にて自動的に維持した。先ず、空気流量速度を、0.1から0.5l/l/分まで増加して、培養物の増加するO要求性を満たした。さらなる増加が必要である場合、純粋なOを最大0.4l/l/分まで供給することによって得た。最初の12時間の増殖の間、NおよびCOの一定の流量を、それぞれ、0.2l/l/分および0.02l/l/分に等しく維持した。攪拌速度を、130rpmに維持した。攪拌器シャフトは、直径7cmの2つのRhustonタービンを備え、そしてバイオリアクターの直径は、17cmであった。
【0051】
グルコース供給
50%グルコース溶液を、時間0で添加して、5g/Lの最終濃度を与えた。5g/Lの別の添加を、ODが2〜3の範囲にある場合に行った。
【0052】
バイオマス測定
増殖を、水ブランク(Perkin Elmer 35分光光度計)、光路1cmに対して、590nmでの光学密度によってモニターした。サンプルの純度のチェックを、グラム染色によって行った。
【0053】
VacAタンパク質の分析
発酵の間の決められた時点で、培養サンプルを、10分間当たり8,300×gで、遠心分離した(Biofuge A、Heareus)。上清を、トリクロロ酢酸で沈殿し、そしてBioRad Mini Protean II装置を使用して9% SDS−Pageに供した。タンパク質を、ニトロセルロースフィルター(Schleicher & Schuell)に移し、次いでVacAタンパク質に対して惹起されたポリクローナル抗血清(Telford,J.L.ら(1994)J.Exp.Med.、179、1653−1658)とともに、一晩、インキュベートした。西洋ワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体(Sigma)との2時間のインキュベーション後、免疫反応性のバンドを、4−クロロ−ナフトール染色によって可視化した。
【0054】
結果
Brucella Brothは、トリプトン10g/l、ペプタミン10g/l、デキストロース1g/l、酵母抽出物2g/l、塩化ナトリウム5g/l、および亜硫酸水素ナトリウム0.1g/lから構成される複合培地である。この培地は、血液誘導体が補充された場合にのみ、H.Pyloriの増殖を支持し得るとして多くの文献において記載されている(Cover,T.L.およびBlaser,M.J.(1992)、J.Biol.Chem.、267、10570−10575;Shahamat,M.ら(1991)、J.Clin.Microbiol.、29、2835−2837;Buck、G.E.およびSmith,J.S.(1987)、J.Clin.Microbiol.、25、597−599;ならびにMorgan、D.R.ら(1987)、J.Clin.Microbiol.、25、2123−2125)。H.pylori増殖培地の実質的な単純化は、シクロデキストリンが、血液誘導体の代わりに使用され得ることが発見された近年、得られた(Olivieri,R.ら、(1993)、J.Clin.Microbiol.、31、160−162)。この単純化培地およびグルコース供給を使用する、H.pyloriの増殖は、図1において報告される。グルコース供給は、炭素およびエネルギー供給源が、常に培地に存在することを確実にするために使用された。
【0055】
H.pyloriを、これらの条件下で培養した場合、培地中のVacAの生成を、上記のように測定した。結果を、図5および図6において示す。
【0056】
増殖培地におけるSoytoneおよびHysoyの使用は、それぞれ、図2および3において報告される結果を与えた。VacA産生は、Soytoneが使用された場合、図5において報告され、そしてHysoyを使用した場合、図6において報告される。
【0057】
結果は、Helicobacter pylori増殖の増殖培地および発酵条件に対する改善、ならびに液胞形成細胞毒(VacA)の生成における改善を示す。
【0058】
実施例II
Haemophilus influenzaeは、子供における細菌性髄膜炎の主要な原因である、小さな非運動性のグラム陰性菌である。これらの微生物は主に、毒素産生性ではなく、侵襲性である。これらは、呼吸管の居住者であり(共生性および病原性)、そしてこれらは、抗食作用性の多糖カプセルを有する。
【0059】
材料および方法
細菌株
Haemophilus influenzae B ATCC 10211。
【0060】
培地および補充物
培地の調製は、以下のように異なる溶液の使用を含む:
「Franz A培地」調製
成分 1リットル当たりの量
精製水 800mL
グルタミン酸 1.6g+/−0.01g
Na2HPO12H2O 5.03g+/−0.05g
KCl 0.892+/−0.008g
NaCl 6.005g+/−0.06g
NH4Cl 1.25g+/−0.01g
精製水 1.0リットルに十分な量
3N NaOH pH=8.2に必要なだけ
上述の成分を、混合しながら溶解する。3N NaOHを、溶液のpHをpH=8.2にするために使用する。
【0061】
限外濾過されたSoytone調製
成分 1リットル当たりの量
Soytone 33.3g+/−0.03g
精製水 1.0リットルに十分な量
この溶液を、30kD TFF装置を介して限外濾過した。
【0062】
限外濾過されたプロテオースペプトン
成分 1リットル当たりの量
プロテオースペプトン 33.3+/−0.03g
精製水 1.0リットルに十分な量
この溶液を、30kD TFF装置を介して限外濾過した。
【0063】
限外濾過されたYE調製
成分 1リットル当たりの量
酵母抽出物 100g+/−0.02g
精製水 1.0リットルに十分な量
使用した酵母抽出物は、Questから入手可能なHY EASTであった。この溶液を、10kD TFF装置を介して限外濾過した。
【0064】
50%グルコース溶液
成分 1リットル当たりの量
グルコース(無水 500g+/−5g
精製水 1.0リットルに十分な量。
【0065】
NAD 0.1%溶液
成分 1リットル当たりの量
NAD 1.0g+/−0.005g
TRIS 1.21g+/−0.01g
精製水 1.0リットルに十分な量
HCl 37% pH7.4±0.2に必要なだけ。
【0066】
ヘミン0.4%溶液
成分 1リットル当たりの量
ヘミン 4g+/−0.02g
0.2N NaOH 1.0リットルに十分な量
使用するヘミンは、好ましくは、化学的に合成される。化学的に合成されたヘミンは、Flukaから市販されている。
【0067】
550mlのFranz Aを、450mlの限外濾過したSoytoneまたはプロテオースペプトンと混合して、1リットルのHib基本培地を得、これを、121℃で30分間、オートクレーブすることによって、滅菌した。
【0068】
冷却後、濾過によって滅菌した、10ml/Lグルコース溶液、20ml/LのYE、2ml/LのNAD溶液を、添加し(上記の付加を伴って)、そしてこの培地を「Hib完全培地」と呼んだ。
【0069】
液体培地中での増殖
暖める前の、非整流(unbaffeled)振とうフラスコ(500/150)に、1.0mLのそれぞれの有効な(working)ストックバイアルを接種した。振とうフラスコを、35+/−1℃で、150RPMにて6時間、(1インチの偏心距離)インキュベーター−振とう器に置いた。
【0070】
6時間後、振とうフラスコの適切な量を、0.5Lの暖める前の「Hib完全培地」を含有する1つの2リットルの非整流振とうフラスコに移した。振とうフラスコを、35+/−1℃で、200rpmにて、9時間、(1インチの偏心距離)インキュベーター−振とう器に置き、次いで、内容物を滅菌接種に移し、次いで、接種物を発酵器に移した。
【0071】
培養容器および増殖条件
バッチ発酵を、20lの培地を含有する30リットルバイオリアクター(MBR Bioreactors AG、8620 Wetzikon、CH)において行った。
【0072】
培養物は、35℃および2psiの背圧で増殖した。pHを、3N NaOHで7.3に制御した。最初の攪拌速度を、最小の150rpmに設定し、そして最低通気を10L/分に設定した。DOTを、150〜400の範囲にrpmを制御し、次いで、必要であれば、酸素を補充することによって35%に維持した。。泡止め剤を、泡立ちを制御するために手動で添加した。グルコースの残余の濃度を検出し、そしてこれが約2g/Lであった場合、0.2リットルのグルコース溶液を添加した。
【0073】
バイオマス測定。
【0074】
増殖を、水ブランク(Perkin Elmer 35 分光光度計)、1cmの光路に対する590nmでの光学密度によってモニターした。サンプルの純度チェックを、グラム染色によって行った。
【0075】
Hib PSの分析。
【0076】
この分析を、Weeke,B.,Scand.J.Immunol.2、37−46、(1973)(本明細書中に参考として援用される)によって記載されるように、Rocket免疫電気泳動によって行った。
【0077】
結果
Soytoneを用いて得られた増殖曲線、およびプロテオースペプトンを用いて得られた増殖曲線を、図7において比較する。Hib PSの収量は、Soytoneおよびプロテオースペプトンを含有する培地において、それぞれ、600mg/Lおよび150mg/Lであった。増殖曲線は、2つの培地を使用してかなり類似するが、Soytoneを使用するHib PSの収量は4倍増加する。植物由来のタンパク質性物質を含有する培養培地の使用は、動物由来のタンパク質性物質を含有する培養培地の使用に比較して、Hib PSのような多糖の収量増加を導く。
【0078】
実施例III
C.diphtheriaeは、グラム陽性の、桿体様の微生物であり、柵をまとっている。バクテリオファージによるC.diphtheriae溶原化は、強力な毒素の合成を引き起こし、この発現は、鉄濃度によって調節される。
【0079】
材料および方法
細菌株
C.diphtheriae CN 2000。
【0080】
培地および補充物
培地の調製は、以下のような異なる溶液の使用を含む:
A.限外濾過された酵母抽出物(YE)およびカザミノ酸(CAA)
成分 量g/L
精製水 800ml
酵母抽出物 20g/L
カザミノ酸 10g/L
精製水 1.0リットルに十分な量
この溶液を、10kD TFF装置を介して限外濾過し、そして透過物を、脱鉄酸塩化(deferration)容器に添加した。
【0081】
A.A 限外濾過された酵母抽出物(YE)およびSoytone
成分 量g/L
精製水 800ml
酵母抽出物 20g/L
Soytone 10g/L
精製水 1.0リットルに十分な量
この溶液を、10kD TFF装置を介して限外濾過し、そして透過物を、脱酸素塩容器に添加した。
【0082】
A.B 限外濾過された酵母抽出物
成分 量g/L
精製水 800ml
酵母抽出物 30g/L
精製水 1.0リットルに十分な量
この溶液を、10kD TFF装置を介して限外濾過し、そして透過物を、脱鉄酸塩化容器に添加した。
【0083】
A.1 脱鉄酸塩化
以下の成分を、攪拌容器に導入した
成分 量
UF(YE+CAA)溶液 1L
KHPO 5g/L
CaCl−2HO、50%(w/v) 2mL/L
L−トリプトファン、1%(w/v) 5mL/L(0.05g/L)
3N NaOH (pH7.4に補正するために十分な量)
UFは、溶液が限外濾過されることを示す。
【0084】
攪拌しながら、溶液を100℃に加熱する。100℃で1分間保持し、次いで、37℃に培地を冷却する。濾過は、一旦37℃を下回ると開始し得る。濾過後、培地を、「CAAを含有するCYベース培地」として記載する。
【0085】
A.1.A 脱鉄酸塩化
以下の成分を、攪拌容器に導入する
成分 量
UF(YE+Soytone)溶液 1L
KHPO 5g/L
CaCl−2HO、50%(w/v) 2mL/L
L−トリプトファン、1%(w/v) 5mL/L(0.05g/L)
3N NaOH (pH7.4に補正するために十分な量)。
【0086】
攪拌しながら、溶液を100℃に加熱する。100℃で1分間保持し、次いで、37℃に培地を冷却する。濾過は、一旦37℃を下回ると開始し得る。濾過後、培地を、「Soytoneを含有するCYベース培地」として記載する。
【0087】
A.1.B 脱鉄酸塩化
以下の成分を、攪拌容器に導入する
成分 量
UF YE溶液 1L
KHPO 5g/L
CaCl−2HO、50%(w/v) 2mL/L
L−トリプトファン、1%(w/v) 5mL/L(0.05g/L)
3N NaOH (pH7.4に補正するために十分な量)。
【0088】
攪拌しながら、溶液を100℃に加熱する。100℃で1分間保持し、次いで、37℃に培地を冷却する。濾過は、一旦37℃を下回ると開始し得る。濾過後、培地を、「YEのみを含有するCYベース培地」として記載する。
【0089】
B.「補充物」溶液
B1)溶液A
成分 1リットル当たりの量
MgSO−7HO 225g
β−アラニン 1.15g
ニコチン酸 1.15g
ピメリン酸 0.075g
CuSO 0.50g
ZnSO−7HO 0.40g
MnCl−4HO 0.15g
HCl、37% 30mL
精製水 1.0リットルに十分な量。
【0090】
B2)溶液B
成分 1リットル当たりの量
精製水 800mL
L−シスチン 200g
HCl、37% 200mL。
【0091】
溶液を、個々に10分間、混合する。溶解後、20mLの溶液Aおよび10mLの溶液Bを混合し、そして0.2ミクロンのフィルターを介して濾過する。溶液を、光から覆って、4℃で保存する。
【0092】
フラスコ滅菌化
一旦脱鉄酸塩化したら、濾過した培地(A.1またはA.1.AまたはA.1.B)を、フラスコにロードする。フラスコを、25分間、121℃で滅菌する。
【0093】
滅菌後の調整
1.「50%マルトース」を添加する 30ml/L
2.「補充物」を添加する 3.0ml/L
上述の1+2を含有する培地:「CAAまたはSoytoneまたは酵母のみを含有する完全CY培地」。
【0094】
液体培地中での増殖
各100mlの培地を含有する500mlの非整流振とうフラスコに、1.0mLの有効なストックバイアルを接種する。
【0095】
振とうフラスコを、(1インチの偏心距離)インキュベーター−振とう器に、35+/−1℃で、100rpmにて、5時間、置く。5時間後、攪拌を、250rpm、43時間に増加する。
【0096】
プロセスは、2つの異なる相を有する:1)指数関数的な増殖、および2)産生相。2つの相からの移行は、徐々におこり、そして細胞増殖速度および酸素要求性の減少によって記される。
【0097】
バイオマス測定
増殖を、水ブランク(Perkin Elmer 35 分光光度計)、1cmの光路に対する590nmでの光学密度によってモニターした。サンプルの純度チェックを、グラム染色によって行った。
【0098】
結果
48時間のインキュベーション後、フラスコ中のODおよびLf/mlは以下のとおりであった:
CAAを含有する培地 OD=7.5 Lf/ml=50
Soytoneを含有する培地 OD=7.87 Lf/ml=60
YEのみを含有する培地 OD=8.07 Lf/ml=60。
【0099】
実施例IV
Neisseria meningitidisは、非運動性のグラム陰性球菌であり、最もしばしば、対で増殖するが、必要に応じて、四分子およびクラスターで増殖する。
これらは、血清群についての基準である抗食作用性の多糖カプセルを有する。
【0100】
材料および方法
細菌株
Neisseria meningitidis.C11。
【0101】
培地および補充物
培地の調製は、以下のような異なる溶液の使用を含む:
「Franz培地」調製。
【0102】
接種振とうフラスコ培地調製
成分 1リットル当たりの量
精製水 800mL
グルタミン酸 1.6g
Na2HPO2H2O 15.5g
KCl 0.09g
NH4Cl 1.25g
精製水 1リットルに十分な量
3N NaOH pH=7.6について必要とされるように。
【0103】
上述の成分を混合しながら溶解する。121℃で、30分間、オートクレーブすることによって、滅菌する。冷却後、「50%グルコース」および「Men C補充物」を、以下のように添加する。
【0104】
「50%グルコース」 10mL/L+/−0.3mL
「Men C発酵補充物」 20mL/L+/−0.3mL
グルコースおよび補充物溶液の添加を伴って、培地は「Franz完全培地」と呼ばれ得る。
【0105】
20L発酵器の調製
A.CAAを含有する20LのWatsonベース培地を作製するために、以下の成分が、混合容器に導入され、そして溶解されなければならない。
【0106】
成分 1リットル当たりの量
精製水 800mL
グルタミン酸 1g+/−0.01g
NaHPO2H2O 3.25g+/−0.03g
KCl 0.09g+/−0.001g
カザミノ酸 10g+/−0.1g
精製水 1リットルに十分な量
3N NaOH pH=7.6に必要なだけ。
【0107】
A.A Amisoyを含有する20LのWatsonベース培地を作製するために、以下の成分が、混合容器に導入され、そして溶解されなければならない。
【0108】
成分 1リットル当たりの量
精製水 800mL
グルタミン酸 1g+/−0.01g
NaHPO2HO 3.25g+/−0.03g
KCl 0.09g+/−0.001g
Amisoy 10g+/−0.1g
精製水 1リットルに十分な量
3N NaOH pH=7.6に必要なだけ。
【0109】
B.発酵器滅菌
25分間、121℃で発酵器を滅菌する。滅菌後、以下の条件を設定する:温度、35℃;10L/分での通気;150rpmでの攪拌、および0.2バールでの背圧。発酵器を35℃に冷却した後、pHを測定するためのサンプルを採取し、発酵器のpHプローブ校正を調整し、次いで、培地のpHを7.6に調整する。
【0110】
C.滅菌後の調整
1.「50%グルコース」を添加する 10ml/L
2.「Men C補充物」を添加する 20ml/L
上述の1+2を含有する培地:「Watson完全培地」。
【0111】
A.「50%グルコース」溶液
成分 1リットル当たりの量
グルコース(無水物) 500g+/−5g
精製水 1リットルに十分な量
この溶液を、121℃で30分間、オートクレーブすることによって滅菌する。
【0112】
B.「Men C補充物」溶液
B.1限外濾過されたYE
成分 量
精製水 1Lに十分な量
酵母抽出物 125g/L
この溶液を、10kD TFF装置を介して限外濾過する。
【0113】
保持物を、必要な透過物が回収された後に廃棄し、そして透過物を補充物を含有する容器に添加する。
【0114】
B.2
成分 UF YEの1リットル当たりの量
MgSO−7HO 30g+/−0.5g
L−システイン−HCl 1.5g+/−0.2g
1LのUF YEに化学物質を添加し、10分間混合し、0.2ミクロンフィルターを介して濾過滅菌し、そして発酵器に移す。
【0115】
C.3N NaOH
3N NaOH=12%(w/v)NaOH=120g/L NaOH。
【0116】
D.泡止め剤
使用する泡止め剤は、Dow Corning1510である。これを、121℃で30分間、オートクレーブすることによって滅菌する。
【0117】
液体培地中での増殖
500ミリリットルフラスコに、1.0mLの有効なストックバイアルを接種する。振とうフラスコは、150mLの完全「Franz培地」を含む。
【0118】
接種した振とうフラスコを、35+/−1℃で150rpmの(1インチの偏心距離)インキュベーター−振とう器に置く。10時間後、フラスコを、無菌にサンプリングする。光学密度は、(590nmで)1.3〜3.3の間にあるべきであり、その場合、4つの2L振とうフラスコに、それぞれ、150mL振とうフラスコからの適切な容量を接種する。
【0119】
各2L振とうフラスコは、0.2Lの暖める前の「Franz完全培地」を含む。
【0120】
振とうフラスコを、35+/−1℃で、200rpmの(1インチの偏心距離)インキュベーター−振とう器に置く。10時間後、各振とうフラスコの内容物を、滅菌接種に移し、そして発酵器に接種する。
【0121】
培養容器および増殖条件
バッチ発酵を、20Lの培地を含有する30リットルのバイオリアクター(MBR Bioreactors AG、8620 Wetzikon、CH)中で行った。
【0122】
培養物は、35℃および14×10N/m(2psi)背圧で増殖していた。pHを、3N NaOHで7.3に制御した。最初の攪拌速度を、最小の150rpmに設定し、そして最低通気を、10L/分に設定した。DOTを、150〜400の範囲にrpmを制御し、次いで、必要であれば、酸素を補充することによって35%に維持した。泡止め剤を、泡立ちを制御するために手動で添加した。グルコースの残余の濃度を検出し、そしてこれが約2g/Lであった場合、0.2リットルのグルコース溶液を添加した。
【0123】
バイオマス測定
増殖を、水ブランク(Perkin Elmer 35分光光度計)、1cmの光路に対する590nmでの光学密度によってモニターした。サンプルの純度チェックを、グラム染色によって行った。
【0124】
MenC PSの分析
多糖の定量的評価を、Lars Svennerholmによって、Biochimica and Biophysica Acta(1957)、21、610において報告された方法に従って、シアル酸含量を分析することによって行った。
【0125】
結果
Amisoyを用いて得られた増殖曲線、およびカザミノ酸を用いて得られた増殖曲線を、図8において比較する。MenC PSの収量は、Amisoyおよびカザミノ酸を含有する培地において、それぞれ、307mg/Lおよび345mg/Lであった。増殖曲線およびPS産生は、2つの培地を使用してかなり類似する。
【0126】
本発明が、例示の手段としてのみ上記され、そしてび改変が、添付の請求の範囲に規定されるような本発明の範囲内でなされる得ることが理解される。
【0127】
実施例V
Clostridium tetaniは、2μm長、および0.3〜0.5μm幅である細長い桿菌である。これはしばしば、より長い微細線維様の細胞の形態で存在する。胞子が形成される場合、この桿菌は、特徴的なドラムスティックの外見をとる。これは、運動性の生物体であり、グラム陽性であるが、そのグラム染色は、変化し得るか、または老化した培養物においては陰性でさえある。Clostridium tetaniは、厳密に嫌気性であり、そして2つの外毒素を生成する。これらのうちの1つの、テタノスパスミン(tetano spasmin)は、疾患の臨床像全体を担う神経毒である。
【0128】
材料および方法
細菌株
Clostridium tetani Harvary Y−VI−3。
【0129】
培地
種培養物を、g/Lで表わされる、以下に報告される培地を使用して調製した。
【0130】
成分 量g/L
N−Z Soy 15.0
グルコース 5.5
酵母抽出物 5.0
NaCl 2.5
L−システイン 0.5
ナトリウムチオグリコール酸 0.5
寒天 0.75
PH=7.1。
産生培地を、WHO/VSQ/GEN/94(1990)において記載されるMueller−Miller培地の改変として調製した。この培地においては、ウシ心臓注入液およびカゼイン溶液が使用されているが、g/Lで表わされる、以下に報告される改変培地においては、ウシ心臓注入液およびカゼイン溶液の代わりにHysoyおよびSoytoneを使用した:
成分 量g/L
グルコース−HO 12.1
NaCl 2.5
NaHPO−12HO 2.5
KHPO 0.15
MgSO−7HO 0.15
アミノ酸溶液 17.5ml
ビタミン溶液 4.2ml
NaOH 5M 4.0ml
FeSO−7HO(1%溶液) 4.0ml
Soy誘導体 20.0
PH=7.3
120℃で20分間、オートクレーブすることによって滅菌する。
【0131】
アミノ酸溶液
成分
L−チロシン 28.51g/L
ウラシル 0.142g/L
L−システイン 14.25g/L
HCl 37% 131.6ml/L。
【0132】
ビタミン溶液:
成分
パントテン酸Ca
(Ca pantithenate) 238.1mg/L
チアミン 59.7mg/L
ピリドキシン 59.7mg/L
リボフラビン 59.7mg/L
ビオチン 0.73mg/L
エタノール 256.4ml/L。
【0133】
液体培地中での増殖
15mlの種培地を含有する、2つの25mlチューブに、0.5mlの有効な種バイアルのそれぞれを接種し、そして35℃で、29時間、嫌気性ジャーにおいてインキュベートし、ここでは、Gas生成キット(OXOID)を使用した。第2の一連のチューブに、1.5mlの第1のチューブを接種し、そして上記の同じ条件で、24時間、インキュベートした。
【0134】
これらの培養物の7mlを使用して、75mlの同じ培地を含有する100mlチューブに接種した。これらのチューブを、上記と同じ条件で、24時間、インキュベートした。
【0135】
これらのチューブの全内容物を使用して、2500mlの産生培地を含有する5000mlビーカーに接種した。
【0136】
バイオマス測定
増殖を、水ブランク(Pharmacia分光光度計)、1cmの光路に対する590nmでの光学密度によってモニターした。サンプルの純度チェックを、グラム染色によって行った。
【0137】
結果
186時間のインキュベーション後、ビーカー中のODおよびLf/mlは以下のとおりであった:
Hysoyを含有する培地 OD=1.08 Lf/ml=60
Soytoneを含有する培地 OD=0.74 Lf/ml=60
ウシ心臓注入液および
カゼイン溶液を含有する培地 OD=1.236 Lf/ml=60。
【0138】
実施例VI
Bordetella pertussisは、約0.5μmの直径および0.5〜2μmの長さのグラム陰性球状桿菌である。その栄養要求性は、単純であり、そしてこれは、糖を必要としない。これは、脂肪酸に極めて感受性であり、防御因子がないと生存は不十分である。
【0139】
材料および方法
細菌株
Bordetella pertussis 9K/129G(Pizza,M.ら(1989)Science、246、497−500)。
【0140】
培地
種培養物および産生培養物を、g/Lで表わされる、以下に報告されるCL培地(Imaizumi,A.ら(1983)Infection and Immunity、41(3)、1138−1143)を使用して調製した:
成分 量g/L
L−グルタミン酸ナトリウム 10.7
L−プロリン 0.24
NaCl 2.5
KHPO 0.5
KCl 0.2
MgCl−6HO 0.1
CaCl 0.02
Tris 6.1
L−システイン* 0.04
FeSO−7HO* 0.01
ナイアシン* 0.004
還元型グルタチオン* 0.15
アスコルビン酸* 0.4
カザミノ酸 10.0
ジメチル−B−シクロデキストリン 1.0
PHを、HClで7.6に調整する
*濾過によって滅菌し、次いで、オートクレーブした培地に無菌的に添加する。改変培地は、カザミノ酸の代わりに10g/lのN−Z Soyを含んだ。
【0141】
液体培地中での増殖
各100mlのCL培地または改変培地を含有する500mlの非整流振とうフラスコに、3.0mLの有効なストックバイアルを接種した。
【0142】
振とうフラスコを、35+/−1℃で、100RPMにて、12時間、(1”の偏心距離)インキュベーター−振とう器に置いた。12時間後、攪拌を、さらに16時間、250RPMに増加した。
【0143】
バイオマス測定
増殖を、水ブランク(Pharmacia分光光度計)、1cmの光路に対する590nmでの光学密度によってモニターした。サンプルの純度チェックを、グラム染色によって行った。
【0144】
PTの分析
この分析を、ELISA(Nencioni,L.ら(1990)Infect.Immun.、58、1306−1315)によって行った。
【0145】
結果
28時間のインキュベーション後、フラスコ中のODおよびPT(mg/L)は、以下のとおりであった:
CAAを含有する培地 OD=2.31 PT=2.4mg/L
NZ−Soyを含有する培地 OD=1.99 PT=2.25mg/L。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載される発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−5495(P2012−5495A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179095(P2011−179095)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【分割の表示】特願2008−101788(P2008−101788)の分割
【原出願日】平成10年5月28日(1998.5.28)
【出願人】(592243793)ノバルティス ヴァクシンズ アンド ダイアグノスティクス エスアールエル (107)
【Fターム(参考)】