説明

アミン置換ジフェニルホスフィン

本発明は、少なくとも1個のアミン置換基をホスフィン基に対してパラ位に有する、式(Ia)、(Ib)の1,1’−ジフェニル−2,2’−ジホスフィンに関する。これらの新規な化合物は、プロキラル有機化合物の不斉付加反応の触媒である金属錯体の配位子であり、そしてこの触媒特性は、アミノ基の置換を介して基質特異的なやり方で調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1個のアミン置換基をホスフィン基に対してパラ位に有するジフェニルジホスフィン、これらの製造方法、中間体、エナンチオ選択的合成用の触媒としてのこれらのジホスフィンとの金属錯体、並びにエナンチオ選択的合成のための金属錯体の使用に関する。
【0002】
キラルなビアリール−1,1’−ジホスフィンは、エナンチオ選択的合成用の触媒としての金属錯体の重要な配位子群である。ルテニウム及びロジウム錯体は、エナンチオ選択的水素化に特に有用であることが見出され、そしてロジウム錯体は、エナンチオ選択的異性体化に特に有用であることが見出されている。金属錯体中の配位子として既知のキラルなビアリール−1,1’−ジホスフィンの幾つかの例には、式(A)のBINAP(S. Akutagawa, Applied Catal. A: General 128 (1995) 171を参照のこと)、式(B)のビスベンゾジオキサン−ホス(BisbenzodioxanPhos)(C.-C. Pai, Y.-M. Li, Z.-Y. Zhou, A.S.C. Chan, Tetrahedron Lett., 43 (2002) 2789)、及びEP-A-0,850,945に記載の式(C)のジホスフィンがある:
【0003】
【化18】

【0004】
また、式(D)、(E)及び(F)の官能基化ビアリールホスフィン配位子の以下の例にも言及することができる;式(D)についてはD.J. Bayston, J.L. Fraser, M.R. Ashton, A.D. Baxter, E.C. Polywka, E. Moses, J. Org. Chem., 63 (1998) 3137;式(E)についてはEP-A-1,002,801;式(F)についてはR. ter Halle, B. Colasson, E. Schulz, M. Spagnol, M. Lemaire, Tetrahedron Lett., 41 (2000) 643を参照のこと:
【0005】
【化19】

【0006】
この型の配位子は、官能基の−COOH、−OH又は−NH2(これらによって、切り離しが容易になり、再使用が可能になる)を利用して、容易に支持体に共有結合、又は支持体に吸着させることができる。しかし、これまで文献に報告された配位子の不都合な点は、リンに結合しているラジカルの選択を介してしか触媒特性に影響を及ぼすことができないことである。
【0007】
結果としてビアリールジホスフィン型の比較的広いスペクトルの配位子が既に知られているが、合成、触媒特性(活性、生産性、エナンチオ選択性)、基底構造上のラジカルの変化により特定の基底構造を微調整する能力(チューニング)又は取扱いの点では未だ改善に対するニーズが存在する。今日の知識の現状では、どの配位子が所定の基質について最良の結果を与えるかを実験せずに予測することができないため、特定の基質に対する最適な配位子を実験的に決定するために、非常に広い範囲の種々の配位子を利用可能とすることが産業界では重要であろう。
【0008】
合成の困難さのために、これまでに知られるようになった、ベンゼン環に直接結合したアミン基を有するキラルなジフェニルジホスフィンはごく僅かである。更に、アニリン性化合物は、酸化的に分解できるため不安定と見なされるが、このことは、合成の中間体という点でも、アミノ置換ビフェニルジホスフィンという点でも厄介なことと見なされる。これらの触媒特性もまた、未だ試験されていない。これまでに調製されている唯一の既知化合物は、式(G):
【0009】
【化20】

【0010】
で示される配位子である(R. Schmid, M. Cereghetti, B. Heiser, P. Schoenholzer, H.J. Hansen, Helv. Chim. Acta, 71 (1988) 897)。
【0011】
しかしこの金属錯体の触媒中心に位置するホスフィン基の電子物性は、メタ位に結合しているジメチルアミン基によってごく僅かにしか影響を及ぼすことができない。目標とするやり方で、例えば、N原子の置換又は塩形成により、リン原子上の電子物性そして金属錯体の触媒特性に影響を及ぼすことができる、アミン基により置換されているジフェニルジホスフィンを配位子として利用可能にすることは、極めて望ましい。
【0012】
しかし上記理由により、ホスフィンに対してパラ位にアミノ基を有するジフェニルジホスフィンを調製することができるかどうか、及び触媒反応において使用できるまでに充分に、金属錯体中の配位子として安定であるかどうかを予測することは不可能である。
【0013】
今や驚くべきことに、ホスフィン基に対してパラ位に少なくとも1個のアミノ基を有するビアリールジホスフィン配位子を調製することができ、そしてこれが触媒反応において使用できるほど充分に安定であることが見出された。更に、この配位子の電子物性が、単純な方法で変更でき、そしてアミノ基を活用して(例えば、塩形成又は窒素原子上の置換基の変化により)特定の基質に対して最適化できることが見出された。
【0014】
本発明は、式(Ia)又は(Ib):
【0015】
【化21】

【0016】
[式中、
1及びX2は、それぞれ相互に独立に、第2級ホスフィノであり;
1及びR2は、それぞれ相互に独立に、水素、C1−C8−アルキル、C3−C8−シクロアルキル、C3−C8−シクロアルキル−C1−C4−アルキル、C6−C10−アリール若しくはC7−C11−アラルキルであるか、又は
1及びR2は、一緒になってC4−C8−アルキレン、3−オキサペンチル−1,5−エン、−(CH22−NH−(CH22−若しくは−(CH22−N(C1−C4アルキル)−(CH22−であり;
3は、水素、C1−C8−アルキル、C3−C8−シクロアルキル、C3−C8−シクロアルキル−C1−C4−アルキル、C6−C10−アリール又はC7−C11−アラルキルであるか、あるいは
1は、上記と同義であり、R2及びR3は、一緒になってC2−C8−アルキリデン、C4−C8−シクロアルキリデン、C1−C4−アルキレン、C2−C8−アルカ−1,2−エニル、−C(O)−又は下記式:
【0017】
【化22】

【0018】
で示される基であるか、あるいは
12N及びR3Oは、一緒になって下記式:
【0019】
【化23】

【0020】
で示される基であるか、あるいは
1、R3、又はR1とR3は一緒に、保護基であり、そしてR2は、上記と同義であり;
4及びR7は、それぞれ相互に独立に、水素、C1−C4−アルキル、C1−C4−アルコキシ、F、Cl又はトリフルオロメチルであり;
5は、水素、R4又はR3O−基(ここで、2つの環のR3O−基は、同一であっても異なっていてもよい)であり;
6は、水素、R7又はR12N−基(ここで、2つの環のR12N−基は、同一であっても異なっていてもよい)であるか;あるいは
5及びR6は、一緒になってトリメチレン、テトラメチレン又は−CH=CH−CH=CH−であり;そして
11は、C1−C8−アルキル、C3−C8−シクロアルキル、C3−C8−シクロアルキル−C1−C4−アルキル、C6−C10−アリール又はC7−C11−アラルキルである(ここで、
1、R2、R3、R4及びR7は、非置換であるか、あるいはC1−C4−アルキル、C1−C4−アルコキシ、OH、F、Cl、Br、トリフルオロメチル、C1−C4−ヒドロキシアルキル、−COOH、−SO3H、−C(O)O−C1−C4−アルキル、−SO3−C1−C4−アルキル、−C(O)−NH2、−CONHC1−C4−アルキル、−CON(C1−C4−アルキル)2、−SO3−NH2、−SO2−NHC1−C4−アルキル、−SO3−N(C1−C4−アルキル)2、−O2C−R8、−O3S−R8、−NH−(O)C−R8、−NH−O3S−R8、−NH2、−NHR9又は−NR910により置換されている(ここで、R8は、水素、C1−C8−アルキル、C3−C8−シクロアルキル、C3−C8−シクロアルキル−C1−C4−アルキル、C6−C10−アリール又はC7−C11−アラルキルであり、そしてR9及びR10は、それぞれ相互に独立に、C1−C4−アルキル、フェニル又はベンジルであるか、あるいはR9及びR10は、一緒になってテトラメチレン、ペンタメチレン、3−オキサ−1,5−ペンタン又は−(CH22−N(C1−C4−アルキル)−(CH22−である))]で示される化合物を提供する。
【0021】
好ましい置換基の1つの群は、C1−C4−アルキル、C1−C4−アルコキシ、F、トリフルオロメチル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、−COOH、−SO3H、−C(O)O−メチル若しくは−エチル、−SO3−メチル若しくは−エチル、−C(O)−NH2、−CONHC1−C4−アルキル、−CON(C1−C4−アルキル)2、−SO3−NH2、−SO2−NHC1−C4−アルキル、−SO3−N(C1−C4−アルキル)2、−O2C−R8、−O3S−R8、−NH−(O)C−R8、−NH−O3S−R8又は−NR910であり、ここで、R8は、C1−C4−アルキル、C5−C6−シクロアルキル、C5−C6−シクロアルキル−C1−C4−アルキル、フェニル、ナフチル、ベンジル又はフェニルエチルであり、そしてR9及びR10は、それぞれ相互に独立に、C1−C4−アルキル、フェニル又はベンジルである。アルキルは、例えば、メチル、エチル、n−又はi−プロピル及びn−、i−又はt−ブチルであってよい。
【0022】
ラジカル:R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は、キラル炭素原子を含んでいてもよく、そしてこのことは、ジアステレオマーではクロマトグラフィーによる分離がしばしば容易であるため、光学異性体の分離において特に有利であることが判明するだろう。
【0023】
個々のホスフィン基:X1及びX2は、一価の炭化水素ラジカルを含んでいてよいか、又は2個の炭化水素ラジカルがP原子と一緒になって、3員〜8員環を形成することができる。個々のホスフィン基:X1及びX2は、好ましくは2個の同一の炭化水素ラジカルを含むが、X1及びX2は相互に異なっていてもよい。好ましくは、X1及びX2は、同一の一価の第2ホスフィン基である。この炭化水素ラジカルは、非置換であっても、又は置換されていてもよく、1〜22個、好ましくは1〜12個の炭素原子を含んでいてよい。式(I)及び(Ia)の化合物の中で、特に好ましいのは、個々のホスフィン基が、直鎖又は分岐のC1−C12−アルキル;非置換、又はC1−C6−アルキル−若しくはC1−C6−アルコキシ置換のC5−C12−シクロアルキル又はC5−C12−シクロアルキル−CH2−;フェニル又はベンジル;及びフェニル又はベンジル[ハロゲン(例えば、F、Cl及びBr)、C1−C6−アルキル、C1−C6−ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、C1−C6−アルコキシ、C1−C6−ハロアルコキシ(例えば、トリフルオロメトキシ)、(C653Si、(C1−C12アルキル)3Si、第2級アミノ又はCO2−C1−C6−アルキル(例えば、−CO2CH3)により置換されている]よりなる群から選択される2個の同一のラジカルであるものである。
【0024】
2個の炭化水素ラジカルがP原子と一緒になって、3員〜8員環を形成する、第2ホスフィン基の例は、具体的には下記式:
【0025】
【化24】

【0026】
で示されるものである。
【0027】
これらのホスフィン基は、ホスフィン基:X1及びX2中の2個のラジカルが、一緒になって、例えば、非置換、又はハロゲン−、C1−C6−アルキル−若しくはC1−C6−アルコキシ置換のテトラメチレン(又はトリメチレン若しくはペンタメチレン)である、ホスホランである。置換基は、好ましくはP原子に対して2個のオルト位に位置し、炭素原子に結合している置換基は、水素、C1−C4−アルキル、フェニル、ベンジル、C1−C4−アルコキシ、フェニルオキシ又はベンジルオキシであってよい。更に、炭素上の2個の近接した置換基はまた、C1−C4−アルキリデンジオキシルであってもよい。
【0028】
ホスフィン基はまた、下記式:
【0029】
【化25】

【0030】
[式中、o及びpは、それぞれ相互に独立に、2〜10の整数であり、o+pの合計は、4〜12、好ましくは5〜8であり、そしてフェニル環は、非置換であるか、又はC1−C4−アルキル若しくはC1−C4−アルコキシにより置換されている]で示される基であってもよい。例には、下記式:
【0031】
【化26】

【0032】
で示される、[3.3.1]ホビル(phobyl)及び[4.2.1]ホビルがある。
【0033】
好ましくは1〜6個の炭素原子を含む、P上のアルキル置換基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル並びにペンチル及びヘキシルの異性体がある。P上の非置換又はアルキル置換シクロアルキル置換基の例には、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル及びエチルシクロヘキシル及びジメチルシクロヘキシルがある。P上のアルキル−、アルコキシ−、ハロアルキル−、ハロアルコキシ置換フェニル及びベンジル置換基の例には、メチルフェニル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、メチルベンジル、メトキシフェニル、ジメトキシフェニル、トリフルオロメチルフェニル、ビストリフルオロメチルフェニル、トリストリフルオロメチルフェニル、トリフルオロメトキシフェニル、ビストリフルオロメトキシフェニル、ジメチルアミノフェニル、3,5−ジ−t−ブチルフェン−1−イル、3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェン−1−イル、3,5−ジ−t−ブチル−4−ジメチルアミノフェン−1−イル、3,5−ジ−i−プロピルフェン−1−イル、3,5−ジ−i−プロピル−4−メトキシフェン−1−イル、3,5−ジ−i−プロピル−4−ジメチルアミノフェン−1−イル、3,5−ジ−メチル−4−メトキシフェン−1−イル、3,5−ジ−メチル−4−ジメチルアミノフェン−1−イル及び3,4,5−トリメトキシフェン−1−イルがある。
【0034】
好ましいホスフィン基は、C1−C6−アルキル、非置換シクロペンチル若しくはシクロヘキシル又はシクロペンチル若しくはシクロヘキシル(1〜3個のC1−C4−アルキル又はC1−C4−アルコキシ基により置換されている);ベンジル;及び特にフェニル[非置換であるか、又は1〜3個のC1−C4−アルキル、C1−C4−アルコキシ、(C1−C4−アルキル)2N−、F、Cl、C1−C4−フルオロアルキル又はC1−C4−フルオロアルコキシ基により置換されている]よりなる群から選択される同一のラジカルを含むものである。
【0035】
式(Ia)及び(Ib)の化合物において、X1は、好ましくは−P(R)2基であり、そしてX2は、好ましくは−P(R’)2基であるが、ここで、R及びR’は、それぞれ相互に独立に、1〜20個の炭素原子を持ち、そして非置換であるか、又はハロゲン、C1−C6−アルキル、C1−C6−ハロアルキル、C1−C6−アルコキシ、C1−C6−ハロアルコキシ、−CO2−C1−C6−アルキル、(C1−C4−アルキル)2N−、(C653Si又は(C1−C12−アルキル)3Siにより置換されている炭化水素ラジカルであるか;あるいはR及びR’ラジカルは、一緒になって、非置換又はC1−C4−アルキル−及び/若しくはC1−C4−アルコキシ置換のテトラメチレン又はペンタメチレンである。
【0036】
好ましいのは、R及びR’が、分岐のC3−C6−アルキル、非置換シクロペンチル若しくはシクロヘキシル、又はシクロペンチル若しくはシクロヘキシル(1〜3個のC1−C4−アルキル又はC1−C4−アルコキシ基により置換されている)、非置換ベンジル又はベンジル(1〜3個のC1−C4−アルキル又はC1−C4−アルコキシ基により置換されている)及び特に非置換フェニル又はフェニル[1〜3個のC1−C4−アルキル、C1−C4−アルコキシ、−NH2、(C1−C4−アルキル)NH−、(C1−C4−アルキル)2N−、OH、F、Cl、C1−C4−フルオロアルキル又はC1−C4−フルオロアルコキシ基により置換されている]よりなる群から選択される同一のラジカルであることである。
【0037】
R及びR6は、特に好ましくは、α−分岐C3−C6−アルキル、非置換シクロペンチル、シクロヘキシル、又はシクロペンチル、シクロヘキシル(1〜3個のC1−C4−アルキル、C1−C4−アルコキシにより置換されている)、及び非置換フェニル又はフェニル(1〜3個のC1−C4−アルキル、C1−C4−アルコキシ又はC1−C4−フルオロアルキル基により置換されている)よりなる群から選択される同一のラジカルである。
【0038】
2は、好ましくはN原子上の置換基、例えば、C1−C4−アルキル、C5−C6−シクロアルキル、C5−C6−シクロアルキル−C1−C2−アルキル、フェニル又はベンジルである。R1及びR2は、一緒になって好ましくはC4−C5−アルキレン、3−オキサペンチル−1,5−エン又は−(CH22−N(メチル)−(CH22−である。R1は、好ましくは水素原子であるか、又はR2の好ましい意味の1つを持ち、そしてR1及びR2は、同一であっても異なっていてもよい。幾つかの例には、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、テトラメチレン、ペンタメチレン、フェニル及びベンジルがある。
【0039】
3は、好ましくはO原子上の置換基、例えば、C1−C4−アルキル、C5−C6−シクロアルキル、C5−C6−シクロアルキル−C1−C2−アルキル、フェニル又はベンジルである。幾つかの例には、メチル、エチル、n−及びi−プロピル、n−、i−及びt−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘキシルメチルがある。
【0040】
1は、好ましくはN原子上の置換基であり、そしてR2及びR3は、好ましくは一緒になってC2−C4−アルキリデン、C5−C6−シクロアルキリデン、C1−C2−アルキレン、C2−C4−アルカ−1,2−エニル、−C(O)−又は下記式:
【0041】
【化27】

【0042】
[式中、R11は、好ましくはC1−C4−アルキル、C5−C6−シクロアルキル、C5−C6−シクロアルキルメチル、フェニル又はベンジルである]で示される基である。
【0043】
2及びR3が一緒の幾つかの例には、エチリデン、プロピリデン、ブチリデン、シクロヘキシリデン、ベンジリデン、メチレン、1,2−エチレン、1,2−プロピレン、1,2−エテニレン、1,2−プロペニレン及び1,2−ブテニレンがある。
【0044】
11の幾つかの例には、メチル、エチル、n−及びi−プロピル、n−、i−及びt−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、フェニル及びベンジルがある。
【0045】
適切な保護基:R1及びR3は、例えば、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、炭酸結合、カルバミン酸結合又はウレタン結合を形成し、そして加水分解又は水素化分解のいずれかで再度容易に開裂することができるラジカルである。適切な保護基は、下記式:
【0046】
【化28】

【0047】
[式中、R14は、1〜8個の炭素原子を有する、脂肪族、脂環式、芳香族又は芳香脂肪族ラジカルであり、X4は、−O−、−NH−又はN(C1−C4−アルキル)であり、X5は、−C(O)−又は−SO2−であり、そしてx及びyは、0であるか、又はxは、0若しくは1であり、かつyは1である]で示されるラジカルであってよい。R1及びR3が、保護基を形成するとき、これは、例えば、−C(O)−であってもよい。保護基の更に別の例は、アセタート、トリクロロアセタート、トリフラート、メチルスルホナート、トシラート、ベンジル、ジフェニルメチル、トリチル、トリメチルシリル、メトキシカルボニル及びメチルアミノカルボニルである。
【0048】
4及びR7は、好ましくはそれぞれ水素である。R4及びR7が置換基であるとき、これらは、好ましくはC1−C2−アルキル、C1−C2−アルコキシ、F、Cl又はトリフルオロメチルである。
【0049】
本発明の目的には、好ましいのは、対称性であり、そして式(Ia)及び(Ib)中のX1及びX2が、同一であり、かつR5が、R3O−基であり、そしてR6が、R12N−基である化合物である。
【0050】
好ましい実施態様において、本発明のジフェニルジホスフィンは、式(Ic):
【0051】
【化29】

【0052】
[式中、R1は、水素であり、そしてR2及びR3は、それぞれ相互に独立に、C1−C4−アルキル、好ましくはメチル又はエチルであるか、あるいはR1、R2及びR3は、それぞれ相互に独立に、C1−C4−アルキル、好ましくはメチル又はエチルであり、R5は、水素又はOR3基であり、R6は、水素又はNR12基であるか、あるいはR5及びR6は、一緒になって−CH=CH−CH=CH−であり、そしてX1及びX2は、それぞれ第2級ホスフィノである]に対応する。上述の実施態様及び好ましさは、X1及びX2に適用される。
【0053】
別の好ましい実施態様において、本発明のジフェニルジホスフィンは、式(Id):
【0054】
【化30】

【0055】
[式中、R1は、水素であり、そしてR2及びR3は、それぞれ相互に独立に、C1−C4−アルキル、好ましくはメチル又はエチルであるか、あるいはR1、R2及びR3は、それぞれ相互に独立に、C1−C4−アルキル、好ましくはメチル又はエチルであり、R5及びR6は、それぞれ水素であるか、あるいはR5及びR6は、一緒になって−NR1−R12−O−基であり、X1及びX2は、それぞれ第2級ホスフィノであり、そしてR12は、1,2−エチレン、1,2−エテニレン、−C(O)−又は下記式:
【0056】
【化31】

【0057】
(式中、R11は、分岐C3−C8−アルキル、C5−C6−シクロアルキル、フェニル又はベンジルである)で示される基である]に対応する。上述の実施態様及び好ましさは、X1及びX2に適用される。
【0058】
本発明の幾つかの好ましい具体的な化合物は、式(Ie)、(If)、(Ig)、(Ih)及び(Ii):
【0059】
【化32】

【0060】
[式中、R01は、水素、C1−C8−アルキル、C5−C6−シクロアルキル、フェニル又はベンジルであり、R11は、フェニル又はt−ブチルであり、そしてX1及びX2は、好ましさを含めて上記と同義である]に対応する。好ましいX1及びX2基は、ジフェニルホスフィノ、ジトルイルホスフィノ、ジキシリルホスフィノ、ジ(メトキシフェニル)ホスフィノ、ジ(トリフルオロメチルフェニル)ホスフィノ、ジシクロヘキシルホスフィノ、ジフリルホスフィノ、ジ(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ、ジ[(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニル]ホスフィノ及びジ−t−ブチルホスフィノである。
【0061】
式(I)の化合物は、それ自体既知であり(セグホス(Segphos)合成)、最初に挙げた参考文献に記載されている方法により調製することができる。調製の方法に関する更なる詳細は、下記に見い出すことができる:
【0062】
【表1】

【0063】
第1の方法では、例えば、式(II):
【0064】
【化33】

【0065】
[式中、R1、R2及びR3は、上記と同義である]で示される化合物から出発して、これらを最初にグリニャール金属(マグネシウムアルキル又はリチウムアルキルなど)と反応させ、次に式:RRP(O)−Halのホスフィンオキシド又は式:(R°O)2P(O)−Hal[式中、Halは、Cl、Br又はIであり、R°は、例えば、C1−C6−アルキル(メチル、エチル)又はフェニルであり、そしてRは、上記と同義である]のホスファートハロゲン化物と反応させることができる。式(II)の化合物はまた、Pd触媒法を用いて直接(R°O)2P(O)−Halと反応させることもできる。対称性化合物を調製するために、2当量の生じた式(III):
【0066】
【化34】

【0067】
[式中、X’は、RRP(O)−又は(R°O)2P(O)−である]で示される化合物、又は1当量の式(III)の化合物及び1当量の式(IV):
【0068】
【化35】

【0069】
[式中、R5、R6及びX’は、上記と同義であり、式(IV)中のX’は、式(III)中のX’と異なっていてもよい]で示される化合物(第1製造工程に記載されたように調製することができる)を最初に、例えば、リチウムアミドを用いて、X’基に対してオルト位でメタレートし、次にCuCl2又はFeCl3のような金属塩の存在下で反応させることにより、式(V):
【0070】
【化36】

【0071】
で示される化合物を生成する。
【0072】
この合成法により、X1及びX2基が異なる(−PR2及びPR’2基において、RはR’と異なる)、式(Ia)及び(Ib)の化合物を入手することも可能になる。
【0073】
本反応は、有利には適切な不活性溶媒(エーテル、ニトリル、カルボキサミド又は脂肪族、脂環式若しくは芳香族炭化水素など)中で行われる。適切な金属塩は、例えば、鉄、コバルト及びニッケルのハロゲン化物、特に塩化鉄(III)及び臭化鉄(III)である。適切な塩基は、例えば、開鎖又は環状第3級アミンである。
【0074】
対称性及び非対称性化合物の両方の調製はまた、[3]に記載されている触媒カップリング法を用いて行うことができる。この目的には、式(III)及び(IV)の化合物をメタレート又はハロゲン化し、続いて触媒法を用いてカップリングする(ここで、R5は、好ましくは水素である):
【0075】
【化37】

【0076】
式(V)の化合物は、次にそれ自体既知のやり方でホスフィンオキシド基の還元を利用することにより、式(I)の本発明の化合物に変換することができる。水素化剤として、金属水素化物、例えば、LiH、NaH、KH又はLi(AlH4)を使用することができる。更に有利なのは、アルキルシラン又はクロロシラン及びアルキルスタンナン又はクロロスタンナン、例えば、トリクロロシラン又はトリクロロスタンナンを使用することである。
【0077】
式(V)のホスフィンオキシド中のR1〜R7が、キラルラジカルでないならば、一般には調製により、ラセミ化合物が得られ、ここから、キラル助剤を使用する結晶化又はクロマトグラフィー法を利用した分割(分割は、有利には式(V)の化合物を使用して行われる)により、目的のエナンチオマーを単離することができる。ラジカル:R1〜R7が、光学活性であるならば、実験規模であってもクロマトグラフィーによりジアステレオマーを、より簡単に分離することができるため、光学分割は大抵更に簡単である。
【0078】
非キラルラジカル:R1〜R7を有するホスホナート化合物(V)は、キラル助剤を使用する結晶化又はクロマトグラフィー法を利用して、ホスフィンオキシド化合物(V)と同様のやり方で、そのエナンチオマーに分離することができる。光学的に純粋な、又は光学的に濃縮したホスホナート化合物は、次に既知の方法[1]によりグリニャール試薬:R−Mg−Xとの反応を利用して、目的のホスフィンオキシドに変換し、そして最後に上述のとおり還元することによって、式(Ia)及び(Ib)の化合物が得られる。
【0079】
式(Ia)及び(Ib)の新規な化合物は、第2の方法においてまた、ハロゲン化及びビフェニル骨格へのホスフィン基の導入が行われる、新規な方法により調製することができる。驚くべきことに、このハロゲン化は、レジオ選択的に進行するため高収率が達成できる。
【0080】
本発明は更に、式(Ia)及び(Ib):
【0081】
【化38】

【0082】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、X1及びX2は、上記と同義である]で示される化合物の製造方法であって、
a)式(VI):
【0083】
【化39】

【0084】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は、上記と同義であるか、あるいはR1が、開裂することができる保護基であり、そしてR2は、水素であるか、又は上記と同義であるか、あるいはR3が、開裂することができる保護基であるか、あるいはR1及びR3が、開裂することができる保護基を形成し、そしてR2は、水素であるか、又は上記と同義である]で示される化合物を、塩素、臭素又はヨウ素を用いてハロゲン化することにより、式(VII):
【0085】
【化40】

【0086】
[式中、Xは、塩素、臭素又はヨウ素である]で示される化合物を生成する工程、
b)適宜、R2及びR3ラジカルを導入するために、保護基を脱離することにより、OH−官能基及びNH−官能基を形成し、そしてOH−官能基及びNH−官能基中のH原子を試薬:R2−Y2、R3−Y2又はY2−R13−Y2[ここで、Y2は、脱離基であり、そしてR13は、1,2−アルキレン又は1,2−シクロアルキレンである]を用いて置換することにより、式(VII)の化合物を製造する工程、並びに
適宜、式(VII)のラセミ化合物を分割する(キラル助剤を使用する結晶化又はキラルカラムを使用するクロマトグラフィー法のような既知の方法による。ラジカル:R1〜R7の少なくとも1つが光学活性である、式(VII)の化合物は、光学的に純粋な配位子の調製に特に有利である。これらの場合には、それ自体既知の方法(例えば、クロマトグラフィー又は結晶化)により分離することができる、ジアステレオマーの混合物が得られる。光学活性ラジカルは、必要ならば、補助基又は保護基として使用することができ、そして次に他のラジカルにより置換することができる)ことにより、式(VIIa)及び(VIIb):
【0087】
【化41】

【0088】
で示されるエナンチオマーを得る工程、
c)例えば、リチウムアルキルを用いる、式(VII)、(VIIa)又は(VIIb)の化合物のメタレーション、及びこれに続く式:X3−PRR(X3は、ハロゲンである)のハロホスフィンとの反応により、式(VIII)、(Ia)又は(Ib)のジホスフィンを得る工程、あるいは式:X3−P(O)RRのハロホスフィンオキシドとの反応により、式(IX)、(IXa)又は(IXb)のジホスフィンオキシドを得る工程、あるいは式:X3−P(O)(OR°)2のホスホナートとの反応により、式(X)、(Xa)又は(Xb)のホスホナートを得る工程:
【0089】
【化42】

【0090】
[式中、Rは、ラジカル形成性X1/X2、例えば、1〜20個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルであり、そしてR°は、C1−C6−アルキル又はフェニルである]、
d)オキシダントを用いて式(VIII)、(VIIIa)又は(VIIIb)の化合物中のホスフィン基を酸化することにより、式(IX)、(IXa)又は(IXb)の化合物を生成する工程、
e)式(VII)のラセミ出発物質が使用されるならば、式(VIII)のラセミ化合物の分割によりエナンチオマー(Ia)及び(Ib)を得る工程、又は式(IX)のラセミ化合物の分割により、式(IXa)及び(IXb)のエナンチオマーを得る工程、又は式(X)のラセミ化合物の分割により、式(Xa)及び(Xb)のエナンチオマーを得る工程、そして式(Xa)及び(Xb)の化合物とR−Mg−Xとの反応により、式(IXa)及び(IXb)のホスフィンオキシドを生成する工程、並びに
f)式(IXa)及び(IXb)の化合物中のホスフィンオキシド基を還元することにより、式(Ia)及び(Ib)の化合物を製造する工程
を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0091】
式(VI)の化合物は、以下のとおり調製することができる。市販の2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジニトロ−5,5’−ジクロロビフェニル(ニクロファン(Niclofan))は、それ自体既知のやり方で、水素を用いて水素化触媒(例えば、パラジウム又は白金)の存在下で接触水素化することにより、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジアミノビフェニル(1)を生成することができる。ヒドロキシ基のH原子及びアミノ基の1個のH原子は、保護基により置換することができ、そして次にアミノ基の第2のH原子は、R2ラジカルにより置換することができる。生じた式(VI)の化合物は、製造工程a)に使用することができる。
【0092】
もう1つの案として、化合物(1)中のヒドロキシ基のH原子及びアミノ基のH原子は、それ自体既知のやり方でR1、R2及びR3ラジカルにより置換することができる。生じた式(VI)の化合物は、製造工程a)に使用することができる。
【0093】
OH及びNH2基を置換するための方法及び試薬は、先行技術であり、実施例に説明されている。保護基の導入及び脱離、並びにこの目的の方法及び試薬もまた、先行技術であり、本明細書に更に詳細には記述されないだろう。適切な保護基は、例えば、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、炭酸結合、カルバミン酸結合又はウレタン結合を形成し、そして加水分解又は水素化分解のいずれかで再度容易に解離することができるラジカルである。適切な保護基のラジカルは、下記式:
【0094】
【化43】

【0095】
[式中、R14は、1〜8個の炭素原子を有する、脂肪族、脂環式、芳香族又は芳香脂肪族ラジカルであり、X4は、−O−、−NH−又はN(C1−C4−アルキル)であり、X5は、−C(O)−又は−SO2−であり、そしてxは、0若しくは1であり、かつyは、1であるか、又はX4がOであるとき、x及びyは、それぞれ0である]に対応していてよい。R1及びR3が、保護基を形成するならば、これは、例えば、−C(O)−であってもよい。保護基の更に別の例は、アセタート、トリクロロアセタート、トリフラート、メチルスルホナート、トシラート、ベンジル、ジフェニルメチル、トリチル、トリメチルシリル、メトキシカルボニル及びメチルアミノカルボニルである。保護基は同時にR1、R2及びR3ラジカルであってよく、他のR1、R2及びR3ラジカルを導入すべきときにだけ置換されることを指摘すべきであろう。
【0096】
式(Ia)及び(Ib)の選択された環状化合物を製造するための特に有利な方法は、下記式:
【0097】
【化44】

【0098】
で示される化合物から出発し、これを1,2−ジハロエタン、例えば、1,2−ジブロモエタンと、アルカリ金属塩基の存在下で反応させることにより、下記式:
【0099】
【化45】

【0100】
で示される化合物を生成することができ、そしてこれを最初に、例えば、臭素を用いてハロゲン化することにより、下記式:
【0101】
【化46】

【0102】
で示される化合物を生成することができ、そしてこれをアルカリ金属水酸化物の存在下で環化することにより、式(A):
【0103】
【化47】

【0104】
で示される化合物を生成することができる。
【0105】
化合物(A)は、縮合したN,O−6員複素環を有する、エナンチオマーとして純粋なジフェニルジホスフィンの調製のための中心的中間体である。ここで、式(A)の化合物の段階で光学異性体の分離を行うのが有利であることが見出されている。NH基のH原子が、キラルラジカルにより置換されているとき、キラルカラムでのクロマトグラフィー分離が特にうまく進行することが見出されている。α又はβ位にキラルC原子を有しており、そして加水分解により容易に再び開裂することができる、カルボン酸又はそのエステル又はそのハロゲン化物は、この目的に特に有用であることが見出されている。好ましいカルボン酸及び誘導体は、α及びβアミノカルボン酸、特にプロリンのような環状アミノカルボン酸である。光学分割後、補助基は再び開裂することにより、式(A1)及び(A2):
【0106】
【化48】

【0107】
で示される光学異性体が得られ、そしてここで、必要に応じて、H原子は、それ自体既知のやり方でR1基により置換することによって、式(B1)及び(B2):
【0108】
【化49】

【0109】
で示される化合物を生成することができる。
【0110】
次に式(B1)及び(B2)の化合物は、リチウムと反応させ、次いでハロホスフィンと反応させることにより、式(Ij)及び(Ik):
【0111】
【化50】

【0112】
を有する、本発明の特に好ましいジホスフィンを得ることができる。
【0113】
反応促進剤として作用する助剤、例えば、ヘキサメチルホスホルアミドは、ホスフィン基の導入の前と製造工程c)の両方で加えることにより、リチウムアルキルとの反応中に起こりうるラセミ化を回避又は抑制することができる。
【0114】
製造工程a)〜d)及びf)の反応は、溶媒なしに、又は不活性溶媒(1種の溶媒又は溶媒の混合物を使用することができる)中で行うことができる。適切な溶媒は、例えば、脂肪族、脂環式及び芳香族炭化水素(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン)、脂肪族ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン及びテトラクロロエタン)、ニトリル(アセトニトリル、プロピオンニトリル、ベンゾニトリル)、エーテル(ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールモノメチル又はモノエチルエーテル)、ケトン(アセトン、メチルイソブチルケトン)、カルボン酸エステル及びラクトン(酢酸エチル又はメチル、バレロラクトン)、N−置換ラクタム(N−メチルピロリドン)、カルボキサミド(ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド)、非環式尿素(ジメチルイミダゾリン)、スルホキシド及びスルホン(ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシド、テトラメチレンスルホン)及びアルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル)、ニトロメタン及び水である。リチウムアルキルとの反応は、主として脂肪族若しくは芳香族炭化水素又はエーテル中で行われる。
【0115】
製造工程a)〜d)及びf)の反応は、冷却又は加熱しながら、例えば、−100℃〜200℃、好ましくは−60℃〜150℃の範囲で行うことができる。個々の反応において利用すべき温度は、当業者には既知であり、実施例からも把握することができる。
【0116】
製造工程a)のハロゲン化は、有利にはルイス酸、例えば、FeCl3又はFeBr3のような金属ハロゲン化物(これらもその場で生成することができる)の存在下で行われる。
【0117】
塩基性又は酸性反応媒体中での保護基の加水分解による脱離(製造工程b)は既知である。一般に、NaOH又はKOHのようなアルカリ金属水酸化物及び塩酸又は硫酸のような鉱酸が使用される。水素化分解による脱離は、一般に、触媒として白金又はパラジウムのような貴金属の存在下で水素を使用して行われる。得られるハロアミノビスフェノールは、あまり安定でないため、有利には単離されずに、試薬:R1−Y2、R2−Y2、R3−Y2又はY2−R13−Y2との反応のため次の反応において直接使用される。この試薬は、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル及びアラルキル基を導入するための試薬である。このような試薬中の脱離基は知られている。Y2は、大抵は塩素、臭素若しくはヨウ素のようなハロゲンであるか、又はスルホナート若しくはスルファートのような酸ラジカルである。R13ラジカルを有する環状スルファート及びカルボナートもまた、適している。
【0118】
ラセミ化合物は、例えば、キラル固定相を用いる分取クロマトグラフィー法(例えば、HPLC)を利用することにより、そのエナンチオマーに分離することができる。
【0119】
工程c)のエナンチオ選択的触媒のキラルジホスフィン配位子を製造するための第2ホスフィン基の導入は、比較的以前から知られている。リチウムアルキルとしては、市販のメチルリチウム又はブチルリチウムの使用が好ましい。製造工程c)により、すぐに使用できるジホスフィン配位子が得られるが、ラセミ化合物の分割がこれより早い段階で行われていないならば、これらはなお、目的のエナンチオマーに分離する必要がある。
【0120】
ホスフィンオキシドを介してラセミ化合物の分割を行うことが簡単ならば、ホスフィンオキシドをエナンチオマーに分離するのはしばしば相当容易であるため、ホスフィン基は、製造工程d)により酸化する。適切なオキシダントは、空気、アルカリ金属過酸化物、及び特に過酸化水素である。
【0121】
ホスホナートの段階でのラセミ化合物の分割は、その後、実質的にラセミ化を伴わずにリンに種々のラジカルを導入することができるという利点を有する。適切なキラル助剤での結晶化による、ホスホナート段階でのラセミ化合物の分割が知られている。ホスフィンオキシドへのホスホナートの変換も同様に文献に報告されている[1]。
【0122】
製造工程e)のラセミ化合物の分割は、ジベンゾイル酒石酸のようなキラル錯化剤の存在下での結晶化を利用する、既知の方法により行うことができる。キラル固定相を用いるクロマトグラフィー法(例えば、HPLC)を利用する分別もまた有利である。様々なキラル固定相を有するこのようなカラムが市販されている。
【0123】
製造工程f)の還元は、適宜、超大気圧下で、LiH、NaH、Li(AlH4)のような金属水素化物を使用して、又はヒドロシラン若しくはヒドロスタンナンを用いて行うことができる。ヒドロシラン、例えば、トリクロロシランを使用する好ましい還元では、第3級アミン、例えば、トリメチルアミン又はトリエチルアミンを加えるのが有利である。これらをシランに基づき等モル量まで、ここでは使用することができる。
【0124】
式(ラセミ化合物)並びに式(Ia)及び(Ib)(エナンチオマー)の化合物は、本発明の製造法により高収率及び高純度で得られる。
【0125】
本発明の製造法において形成される中間体は新規である。本発明はまた、式(VII):
【0126】
【化51】

【0127】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びXは、上記と同義であるか、あるいはR1又はR2は、開裂することができる保護基であるか、又はR2及びR3は、一緒になって開裂することができる保護基を形成し、そしてR1、R3、R4、R5、R6、R7及びX又はR1、R4、R5、R6、R7及びX、上記と同義であり、そしてXは、塩素、臭素又はヨウ素である]で示される化合物を、ジアステレオマー、ジアステレオマーの混合物、純粋なジアステレオマー、又は光学的に濃縮したか、若しくは光学的に純粋形のエナンチオマーとして提供する。
【0128】
式(Ia)及び(Ib)の化合物について示される好ましい実施態様はまた、式(VII)の化合物にも適用される。
【0129】
式(VII)の特に好ましい化合物は、式(VIIc)(ラセミ化合物)、(VIId)又は(VIIe)(ジアステレオマーの混合物、純粋なジアステレオマー、又は光学的に濃縮したか、若しくは光学的に純粋形のエナンチオマー):
【0130】
【化52】

【0131】
[式中、R001は、R1ラジカル又はキラル補助基であり、そしてX及びR4は、好ましさを含めて上記と同義である]で示される化合物である。キラル補助基としては、β−及び特にα−アミノカルボン酸のカルバミドラジカルが好ましく、特に好ましくはプロリンである。
【0132】
特に好ましい中間体はまた、ラセミ化合物、ジアステレオマーの混合物、純粋なジアステレオマー、又は光学的に濃縮したか、若しくは光学的に純粋形のエナンチオマーとしての式(VIIf):
【0133】
【化53】

【0134】
[式中、Xは、塩素、臭素又はヨウ素であり、そしてR1、R4及びR7は、好ましさを含めて、式(Ia)及び(Ib)の化合物について示される意味を有する]で示される化合物をも含む。
【0135】
本発明はまた更に、式(IX)(ラセミ化合物)及び式(IXa)、(IXb)(ジアステレオマーの混合物、純粋なジアステレオマー、又は光学的に濃縮したか、若しくは光学的に純粋形のエナンチオマー):
【0136】
【化54】

【0137】
で示されるプレ生成物(preproduct)、並びに式(X)(ラセミ化合物)、式(Xa)及び(Xb)(ジアステレオマーの混合物、純粋なジアステレオマー、又は光学的に濃縮したか、若しくは光学的に純粋形のエナンチオマー):
【0138】
【化55】

【0139】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7は、好ましさを含めて、式(I)及び(Ia)の化合物について示される意味を有しており、R°は、C1−C6−アルキル又はフェニルであり、そしてRは、X1/X2形成ラジカル、例えば、1〜20個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルである]で示されるプレ生成物を提供する。
【0140】
特に好ましいのは、R1が、メチルであり、R2及びR3が、一緒になって1,2−エチレンであり、そしてR4、R5、R6、R7及びRが、好ましさを含めて、式(I)及び(Ia)の化合物について示される意味を有しており、そしてR°が、C1−C6−アルキル又はフェニルであり、そしてRが、X1/X2形成ラジカル、例えば、1〜20個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルである、式(IX)、(IXa)、(IXb)、(X)、(Xa)及び(Xb)の化合物である。
【0141】
可能な調製方法は、説明目的で以下に反応スキームとして示される。R12N及びR3Oが、一緒になって下記式:
【0142】
【化56】

【0143】
で示される基である、式(VII)、(Ia)及び(Ib)の化合物:
【0144】
【化57】

【0145】
対称性化合物の調製(カップリング経由の経路1):
【0146】
【化58】

【0147】
経路2、前もって形成したビアリール経由:
【0148】
【化59】

【0149】
ビアリール経由の経路2’(もう1つの閉環及びジアステレオマーを介してのラセミ化合物の分割を伴う):
【0150】
【化60】

【0151】
ビアリール経由の経路3:ラセミ化合物のもう1つの分割(例えば、キラルHPLC)
【0152】
【化61】

【0153】
非対称性化合物の調製:
【0154】
【化62】

【0155】
非対称性置換化合物はまた、以下のスキームにより入手することができる:
【0156】
【化63】

【0157】
式(I)の新規な化合物は、TM8金属群から、特にRu、Rh及びIrよりなる群から選択される金属の錯体の配位子であるが、これらの錯体は、不斉合成、例えば、プロキラル不飽和有機化合物の不斉水素化のための優れた触媒又は触媒前駆体である。プロキラル不飽和有機化合物が使用されるならば、有機化合物の合成において光学異性体の非常に高い過剰率を誘導することができ、そして短い反応時間で高い化学変換率を達成することができる。
【0158】
本発明は更に、TM8金属の群から選択される金属と、配位子としての式(I)及び(Ia)の化合物との錯体を提供する。
【0159】
可能な金属は、例えば、Cu、Ag、Au、Ni、Co、Rh、Pd、Ir、Ru及びPtである。好ましい金属は、ロジウム及びイリジウムであり、また、ルテニウム、白金及びパラジウムである。
【0160】
特に好ましい金属は、ルテニウム、ロジウム及びイリジウムである。
【0161】
金属錯体は、金属原子の酸化数及び配位数に応じて、更に別の配位子及び/又はアニオンを含むことができる。これらはまた、カチオン性金属錯体であってもよい。この型の似の金属錯体及びその調製法は、文献に広く報告されている。
【0162】
金属錯体は、例えば、一般式(XI)及び(XII):
【0163】
【化64】

【0164】
[式中、A1は、式(Ia)又は(Ib)の化合物であり、
Lは、同一であるか又は異なる単座のアニオン性又は非イオン性の配位子を表すか、あるいは2個のLは、同一であるか又は異なる二座のアニオン性又は非イオン性配位子を形成し;
Lが単座配位子であるとき、nは、2、3又は4であるか、あるいはLが二座配位子であるとき、nは、1又は2であり;
zは、1、2又は3であり;
Meは、Rh及びIrよりなる群から選択される金属であり;そしてこの金属は、0、1、2、3又は4の酸化状態を持ち;
-は、オキソ酸又は錯酸のアニオンであり;そして
このアニオン性配位子は、金属の酸化段階1、2、3又は4の電荷と釣り合いをとっている]に対応していてよい。
【0165】
上述の好ましさ及び実施態様は、式(XI)及び(XII)の化合物に適用される。
【0166】
単座非イオン性配位子は、例えば、オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン)、アリル(アリル、2−メタリル)、溶媒和溶媒(ニトリル、直鎖又は環状エーテル、非アルキル化又はN−アルキル化アミド及びラクタム、アミン、ホスフィン、アルコール、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル)、一酸化窒素及び一酸化炭素よりなる群から選択することができる。
【0167】
単座アニオン性配位子は、例えば、ハロゲン化物(F、Cl、Br、I)、擬ハロゲン化物(シアニド、シアナート、イソシアナート)並びにカルボン酸、スルホン酸及びホスホン酸のアニオン(カルボナート、ホルマート、アセタート、プロピオナート、メチルスルホナート、トリフルオロメチルスルホナート、フェニルスルホナート、トシラート)よりなる群から選択することができる。
【0168】
二座非イオン性配位子は、例えば、直鎖又は環状ジオレフィン(例えば、ヘキサジエン、シクロオクタジエン、ノルボルナジエン)、ジニトリル(マロンニトリル)、カルボン酸の非アルキル化又はN−アルキル化ジアミド、ジアミン、ジホスフィン、ジオール、アセトニルアセトナート、ジカルボン酸ジエステル及びジスルホン酸ジエステルよりなる群から選択することができる。
【0169】
二座アニオン性配位子は、例えば、ジカルボン酸、ジスルホン酸及びジホスホン酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、メチレンジスルホン酸及びメチレンジホスホン酸)のアニオンよりなる群から選択することができる。
【0170】
好ましい金属錯体はまた、Eが、−Cl-、−Br-、−I-、ClO4-、CF3SO3-、CH3SO3-、HSO4-、BF4-、B(フェニル)4-、B(C654-、B(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)4-、PF6-、SbCl6-、AsF6-又はSbF6-である錯体を含む。
【0171】
水素化に特に適している、非常に好ましい金属錯体は、式(XIII)及び(XIV):
【0172】
【化65】

【0173】
[式中、
1は、式(Ia)又は(Ib)の化合物であり;
Me1は、ロジウム又はイリジウムであり;
Yは、2個のオレフィン又は1個のジエンを表し;
Zは、Cl、Br又はIであり;そして
1-は、オキソ酸又は錯酸のアニオンである]に対応する。
【0174】
上述の実施態様及び好ましさは、式(Ia)及び(Ib)の化合物に適用される。
【0175】
Yとしてのオレフィンは、C2−C12−、好ましくはC2−C6−そして特に好ましくはC2−C4−オレフィンであってよい。例には、プロペン、1−ブテン及び特にエチレンがある。ジエンは、5〜12個、好ましくは5〜8個の炭素原子を含むことができ、そして開鎖、環状又は多環式ジエンであってよい。ジエンの2個のオレフィン基は、好ましくは1個又は2個のCH2基により結合している。例には、1,3−ペンタジエン、シクロペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,4−又は1,5−ヘプタジエン、1,4−又は1,5−シクロヘプタジエン、1,4−又は1,5−オクタジエン、1,4−又は1,5−シクロオクタジエン及びノルボルナジエンがある。Yは、好ましくは2個のエチレン分子又は1,5−ヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン又はノルボルナジエンを表す。
【0176】
式(XIII)において、Zは、好ましくはCl又はBrである。式(XIV)中のE1の例には、ClO4-、CF3SO3-、CH3SO3-、HSO4-、BF4-、B(フェニル)4-、PF6-、SbCl6-、AsF6-又はSbF6-がある。
【0177】
本発明のルテニウム錯体は、例えば、式(XV):
【0178】
【化66】

【0179】
[式中、
Zは、Cl、Br又はIであり;A1は、式(I)又は(Ia)の化合物であり;Lは、同一又は異なる配位子を表し;E-は、オキソ酸、鉱酸又は錯酸のアニオンであり;Sは、配位子として配位できる溶媒であり;そしてaは、1〜3であり、bは、0〜4であり、cは、0〜6であり、dは、1〜3であり、eは、0〜4であり、fは、1〜3であり、gは、1〜4であり、hは、0〜6であり、そしてkは、1〜4である(ただし錯体の総電荷は、ゼロである)]に対応していてもよい。
【0180】
Z、A1、L及びE-に関する上述の好ましさは、式(XV)の化合物に適用される。配位子Lは、更に、アレーン又はヘテロアレーン(例えば、ベンゼン、ナフタレン、メチルベンゼン、キシレン、クメン、1,3,5−メシチレン、ピリジン、ビフェニル、ピロール、ベンゾイミダゾール又はシクロペンタジエニル)及びルイス酸として作用する金属塩(例えば、ZnCl2、AlCl3、TiCl4及びSnCl4)であってもよい。溶媒配位子は、例えば、アルコール、アミン、酸アミド、ラクタム及びスルホンであってよい。
【0181】
この型の錯体は、後述の参考文献及びそこに引用される参考文献に記述されている:
【0182】
【表2】

【0183】
対応する式を有するが、異なるジホスフィン配位子を有する、更に具体的なルテニウム錯体は、以下の参考文献に記述されている:
【0184】
【表3】

【0185】
幾つかの具体的な好ましいルテニウム錯体は、下記である:[Ru(アセタート)2(A1)]、[Ru(OOCCF32(A1)]、[RuCl2(A1)]、[RuBr2(A1)]、[RuI2(A1)]、[Ru2Cl4(A12](N−エチル3)、[Ru2Cl4(A12](N−エチル3)(キシレン)、[RuCl(ベンゼン)(A1)]Cl、[RuBr(ベンゼン)(A1)]Br、[RuI(ベンゼン)(A1)]I、[RuCl(p−クメン)(A1)]Cl、[RuBr(p−クメン)(A1)]Br、[RuI(p−クメン)(A1)]I、[Ru(2−メタリル)2(A1)]、[RuCl2(フェニルCN)2(A1)]、[Ru(A1)(AcO)2(エタノール)2]、[(Cp)Ru(A1)]Cl、[(Cp)Ru(A1)]PF6、[RuCl(Pフェニル3)(A1)]2(η−Cl)2、[RuCl2(A1)(dpen)]及び[RuCl2(A1)(daipen)]。Cpは、シクロペンタジエニルである。dpen及びdaipenは、キラルエチレンジアミン、例えば、1,2−ジフェニルエチレン−1,2−ジアミン又は1,1−ジ(p−メトキシフェニル)−2−イソプロピルエチレン−1,2−ジアミンである。
【0186】
本発明の金属錯体は、文献から既知の方法により調製される(US-A-5,371,256、US-A-5,446,844、US-A-5,583,241及びE. Jacobsen, A. Pfaltz, H. Yamamoto(編), 包括的不斉触媒反応I〜III, Springer Verlag, Berlin, 1999並びにこれらに引用される参考文献を参照のこと)。
【0187】
本発明の金属錯体は、均一系触媒、又は反応条件下で活性化することができる触媒前駆体であり、これらは、プロキラル不飽和有機化合物への不斉付加反応に使用することができる。
【0188】
金属錯体は、例えば、炭素−炭素又は炭素−ヘテロ原子二重結合を有するプロキラル化合物の不斉水素化(水素の付加)に使用することができる。可溶性均一系金属錯体を使用する、このような水素化は、例えば、Pure and Appl. Chem., Vol. 68, No. 1, pp. 131-138 (1996)に記載されている。水素化される好ましい不飽和化合物は、C=C、C=N及び/又はC=O基を含む。本発明では、ルテニウム、ロジウム及びイリジウムの金属錯体が、好ましくは水素化に使用される。
【0189】
本発明の金属錯体はまた、炭素−炭素二重結合を有するプロキラル有機化合物の不斉ヒドロホウ素化(水素化ホウ素の付加)のための触媒としても使用することができる。このようなヒドロホウ素化は、例えば、Tamio Hayashiにより、E. Jacobsen, A. Pfaltz, H. Yamamoto(編), 包括的不斉触媒反応I〜III, Springer Verlag, Berlin, 1999, 351〜364ページに記載されている。適切な水素化ホウ素は、例えば、カテコールボランである。このキラルホウ素化合物は、合成反応に使用することができるか、かつ/あるいはそれ自体既知のやり方で、キラル中間体又は活性物質の調製のための有用な構成単位である他のキラル有機化合物に変換することができる。このような反応の一例は、3−ヒドロキシテトラヒドロフランの調製である(DE 19,807,330に記載されている)。
【0190】
本発明の金属錯体はまた、炭素−炭素又は炭素−ヘテロ原子二重結合を有するプロキラル有機化合物の不斉ヒドロシリル化(シランの付加)のための触媒として使用することができる。このようなヒドロシリル化は、例えば、G. PiodaとA. TogniによりTetrahedron: Asymmetry, 1998, 9, 3093に、又はS. UemuraらによりChem. Commun. 1996, 847に記載されている。適切なシランは、例えば、トリクロロシラン又はジフェニルシランである。例えば、C=O−及びC=N−基のヒドロシリル化は、好ましくはロジウム及びイリジウムの金属錯体を使用して行われる。例えば、C=C基のヒドロシリル化は、好ましくはパラジウムの金属錯体を使用して行われる。キラルシリル化合物は、合成反応に使用することができるか、かつ/あるいはそれ自体既知のやり方で、キラル中間体又は活性物質の調製のための有用な構成単位である他のキラル有機化合物に変換することができる。このような反応の例は、アルコールを生成させる加水分解である。
【0191】
本発明の金属錯体はまた、不斉アリル置換反応(アリル化合物への炭素求核物質の付加)のための触媒として使用することができる。このようなアリル化は、例えば、A. PfaltzとM. Lautensにより、E. Jacobsen, A. Pfaltz, H. Yamamoto(編), 包括的不斉触媒反応I〜III, Springer Verlag, Berlin, 1999, 833〜884ページに記載されている。アリル化合物の適切な前駆体は、例えば、1,3−ジフェニル−3−アセトキシ−1−プロペン又は3−アセトキシ−1−シクロヘキセンである。この反応には、好ましくはパラジウムの金属錯体が使用される。このキラルアリル化合物は、キラル中間体又は活性物質の調製のための合成に使用することができる。
【0192】
本発明の金属錯体はまた、不斉アミノ化(アリル化合物へのアミンの付加)又はエーテル化(アリル化合物へのアルコール又はフェノールの付加)のための触媒としても使用することができる。このようなアミノ化及びエーテル化は、例えば、A. PfaltzとM. Lautensにより、E. Jacobsen, A. Pfaltz, H. Yamamoto(編), 包括的不斉触媒反応I〜III, Springer Verlag, Berlin, 1999, 833〜884ページに記載されている。適切なアミンは、アンモニア並びに第1級及び第2級アミンを含む。適切なアルコールは、フェノール及び脂肪族アルコールである。アリル化合物のアミノ化又はエーテル化には、好ましくはパラジウムの金属錯体が使用される。キラルアミン及びエーテルは、キラル中間体又は活性物質の調製のための合成に使用することができる。
【0193】
本発明の金属錯体はまた、不斉異性化のための触媒としても使用することができる(M. Bellerら, 有機合成のための遷移金属, 第1巻, Wiley-VCH, Weinheim 1998, 147〜156ページを参照のこと)。
【0194】
本発明は更に、プロキラル有機化合物中の炭素−炭素又は炭素−ヘテロ原子多重結合への水素、水素化ホウ素又はシランの不斉付加による、あるいはアリル化合物への炭素求核物質又はアミンの不斉付加による、キラル有機化合物の調製のための均一系触媒としての本発明の金属錯体の使用を提供する。
【0195】
本発明の更に別の態様は、触媒の存在下での、プロキラル有機化合物中の炭素−炭素又は炭素−ヘテロ原子多重結合への水素、水素化ホウ素又はシランの不斉付加による、あるいはアリル化合物への炭素求核物質、アルコール又はアミンの不斉付加による、キラル有機化合物の製造方法であって、この付加反応が、触媒量の少なくとも1つの本発明の金属錯体の存在下で行われることを特徴とする方法である。
【0196】
水素化される好ましいプロキラル不飽和化合物は、1つ以上の同一又は異なるC=C、C=N及び/又はC=O基を開鎖又は環状有機化合物中に含むことができ、そしてC=C、C=N及び/又はC=O基は、環系の一部であっても、又は環外基であってもよい。このプロキラル不飽和化合物は、アルケン、シクロアルケン、ヘテロアルケン、更にまた開鎖又は環状ケトン、ケチミン及びケトヒドラゾンであってよい。これらは、例えば、式(XVI):
【0197】
【化67】

【0198】
[式中、R15及びR16は、この化合物がプロキラルであるように選択され、そしてそれぞれ相互に独立に、開鎖又は環状の炭化水素ラジカル又はヘテロ炭化水素ラジカル(O、S及びNよりなる群から選択されるヘテロ原子を含む)であり、そしてそれぞれ1〜30個、好ましくは1〜20個の炭素原子を有しており;
Dは、O又は式:CR1718若しくはNR19のラジカルであり;
17及びR18は、それぞれ相互に独立に、R15及びR16と同義であり;
19は、水素、C1−C12−アルキル、C1−C12−アルコキシ、C3−C12−シクロアルキル、C3−C12−シクロアルキル−C1−C6−アルキル、C3−C11−ヘテロシクロアルキル、C3−C11−ヘテロシクロアルキル−C1−C6−アルキル、C6−C14−アリール、C5−C13−ヘテロアリール、C7−C16−アラルキル又はC6−C14−ヘテロアラルキルであり;
15及びR16は、これらが結合している炭素原子と一緒になって、3〜12個の環原子を有する炭化水素環又はヘテロ炭化水素環を形成し;
15及びR17は、これらが結合しているC=C基と一緒になって、3〜12個の環原子を有する炭化水素環又はヘテロ炭化水素環を形成し;
15及びR19は、これらが結合しているC=N基と一緒になって、3〜12個の環原子を有する炭化水素環又はヘテロ炭化水素環を形成し;
複素環中のヘテロ原子は、O、S及びNよりなる群から選択され;そして
15、R16、R17、R18及びR19は、非置換であるか、又はC1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシ、シクロヘキシル、C6−C10−アリール、C7−C12−アラルキル、C1−C4−アルキル−C6−C10−アリール、C1−C4−アルコキシ−C6−C10−アリール、C1−C4−アルキル−C7−C12−アラルキル、C1−C4−アルコキシ−C7−C12−アラルキル、−OH、=O、−NR21122、−CO−OR20又は−CO−NR2122により置換されている(ここで、R20は、H、アルカリ金属、C1−C6−アルキル、シクロヘキシル、フェニル又はベンジルであり、そしてR21及びR22は、それぞれ相互に独立に、水素、C1−C6−アルキル、シクロヘキシル、フェニル又はベンジルであるか、あるいはR21及びR22は、一緒になってテトラメチレン、ペンタメチレン又は3−オキサペンチレンである)]に対応していてよい。
【0199】
置換基の例及び好ましさは、上述されている。
【0200】
15及びR16は、例えば、C1−C20−アルキルそして好ましくはC1−C12−アルキル、O、S及びNよりなる群から選択されるヘテロ原子を含むC1−C20−ヘテロアルキルそして好ましくはC1−C12−ヘテロアルキル、C3−C12−シクロアルキルそして好ましくはC4−C8−シクロアルキル、O、S及びNよりなる群から選択されるヘテロ原子を含むC結合C3−C11−ヘテロシクロアルキルそして好ましくはC4−C8−ヘテロシクロアルキル、C3−C12−シクロアルキル−C1−C6−アルキルそして好ましくはC4−C8−シクロアルキル−C1−C6−アルキル、O、S及びNよりなる群から選択されるヘテロ原子を含むC3−C11−ヘテロシクロアルキル−C1−C6−アルキルそして好ましくはC4−C8−ヘテロシクロアルキル−C1−C6−アルキル、C6−C14−アリールそして好ましくはC6−C10−アリール、O、S及びNよりなる群から選択されるヘテロ原子を含むC5−C13−ヘテロアリールそして好ましくはC5−C9−ヘテロアリール、C7−C15−アラルキルそして好ましくはC7−C11−アラルキル、O、S及びNよりなる群から選択されるヘテロ原子を含むC6−C12−ヘテロアラルキルそして好ましくはC6−C10−ヘテロアラルキルであってよい。
【0201】
15及びR16、R15及びR17、又はR15及びR19が、これらが結合している基と一緒になって、炭化水素環又はヘテロ炭化水素環を形成するならば、この環は、好ましくは4〜8個の環原子を含む。このヘテロ炭化水素環は、例えば、1〜3個、好ましくは1個又は2個のヘテロ原子を含むことができる。
【0202】
19は、好ましくは、水素、C1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシ、C4−C8−シクロアルキル、C4−C8−シクロアルキル−C1−C4−アルキル、C4−C10−ヘテロシクロアルキル、C4−C10−ヘテロシクロアルキル−C1−C4−アルキル、C6−C10−アリール、C5−C9−ヘテロアリール、C7−C12−アラルキル及びC5−C13−ヘテロアラルキルである。
【0203】
不飽和有機化合物の幾つかの例には、アセトフェノン、4−メトキシ−アセトフェノン、4−トリフルオロメチルアセトフェノン、4−ニトロアセトフェノン、2−クロロアセトフェノン、対応する非置換又はN−置換アセトフェノンベンジルイミン、非置換又は置換ベンゾシクロヘキサノン又はベンゾシクロペンタノン、並びに対応するイミン、非置換又は置換テトラヒドロキノリン、テトラヒドロピリジン及びジヒドロピロールよりなる群からのイミン、並びに不飽和カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボキサミド及びカルボン酸塩、例えば、α−及び適宜β−置換アクリル酸又はクロトン酸がある。好ましいカルボン酸は、下記式:
【0204】
【化68】

【0205】
[式中、R23は、C1−C6−アルキル、非置換C3−C8−シクロアルキル若しくはC3−C8−シクロアルキル(1〜4個のC1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシ又はC1−C6−アルコキシ−C1−C4−アルコキシ基により置換されている)又は非置換C6−C10−アリール若しくはC6−C10−アリール(1〜4個のC1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシ又はC1−C6−アルコキシ−C1−C4−アルコキシ基により置換されている)、好ましくはフェニルであり、そしてR24は、直鎖若しくは分岐のC1−C6−アルキル(例えば、イソプロピル)、非置換シクロペンチル、シクロヘキシル若しくはフェニル、又は上記と同様に置換されているシクロペンチル、シクロヘキシル若しくはフェニル、又は保護アミノ(例えば、アセチルアミノ)である]で示されるカルボン酸、そしてまたその塩、エステル及びアミドである。
【0206】
水素化のための更に別の適切な基質は、例えば、プロキラルアリルアルコール及びβ−エナミドである。ルテニウム錯体を用いる水素化のための特に適切な基質は、例えば、プロキラルα−及びβ−ケトカルボン酸塩、エステル及びアミド、1,3−ジケトン並びにプロキラルケトン、α−及びβ−アルコキシケトン及びα−及びβ−ヒドロキシケトン、α−及びβ−ハロケトン並びにα−及びβ−アミノケトンである。
【0207】
本発明の工程は、低温又は高温、例えば、−20〜150℃、好ましくは−10〜100℃、そして特に好ましくは10〜80℃の温度で行うことができる。光学収率は、一般に高温よりも比較的低温で良好である。
【0208】
本発明の工程は、大気圧又は超大気圧下で行うことができる。圧力は、例えば、105〜2×107Pa(パスカル)であってよい。水素化は、好ましくは超大気圧で行われる。
【0209】
触媒は、水素化される化合物に基づいて、好ましくは0.00001〜10mol%、特に好ましくは0.0001〜10mol%、そして非常に好ましくは0.001〜5mol%の量で使用される。
【0210】
触媒の調製、そしてまた水素化及び付加反応は、溶媒なしで、又は不活性溶媒の存在下で行うことができ、そして1つの溶媒又は溶媒の混合物を使用することができる。適切な溶媒は、上述されている。
【0211】
反応は、共触媒、例えば、第4級アンモニウムハロゲン化物(ヨウ化テトラブチルアンモニウム)の存在下で、及び/又はプロトン酸、例えば、鉱酸の存在下で行うことができる(例えば、US-A-5,371,256、US-A-5,446,844及びUS-A-5,583,241並びにEP-A-0,691,949を参照のこと)。共触媒は、水素化には特に有用である。
【0212】
触媒として使用される金属錯体は、別に調製された単離化合物として加えることができるか、又は反応に先だってその場で生成し、次いで水素化される基質と混合することができる。単離された金属錯体を用いる反応では追加の配位子を加えることが有利であるか、あるいはその場での調製には過剰の配位子を使用することが有利であろう。過剰とは、調製に使用される金属化合物に基づいて、例えば、1〜10mol、好ましくは1〜5molであってよい。触媒のその場での調製の場合にはまた、ジホスフィン配位子の塩、例えば、ハロゲン化物又はテトラフルオロホウ酸塩を使用することもできる。
【0213】
本発明の工程は一般に、最初に触媒を反応容器に入れ、次いで基質、必要であれば、反応助剤及び追加化合物を加え、次に反応を開始することにより行われる。追加される気体化合物、例えば、水素又はアンモニアは、好ましくは加圧注入する。本工程は、種々の型の反応器中で連続又はバッチ式で行うことができる。
【0214】
本発明により調製することができるキラル有機化合物は、特に医薬品及び農薬の調製の分野において、活性物質又はこのような物質の調製のための中間体である。即ち、例えば、o,o−ジアルキルアリール−ケタミン誘導体、特にアルキル及び/又はアルコキシアルキル基を有する誘導体は、殺菌剤、特に除草剤として作用する。この誘導体は、アミン塩、酸アミド、例えば、クロロ酢酸、第3級アミン及びアンモニウム塩であってよい(例えば、EP-A-0,077,755及びEP-A-0,115,470を参照のこと)。
【0215】
以下の実施例により本発明を説明する。
A)中間体の調製
実施例A1:下記式:
【0216】
【化69】

【0217】
で示される化合物の調製:
a)2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジアミノビフェニル(2)の調製:
【0218】
【化70】

【0219】
ニクロホラン(niclofolan)(1)10gをテトラヒドロフラン(THF)100mL及びトリエチルアミン17.6gに溶解した。パラジウム担持カーボン(5%)4g及び40時間後更に4gの添加後、全部で約88時間かけて飽和するまで水素化を行った。この溶液をハイフロ(Hyflo)により濾過して、蒸発させることなく直ちに更に処理した。(2)の想定収率:
【0220】
【表4】

【0221】
b)化合物(3)の調製:
【0222】
【化71】

【0223】
既に充分なトリエチルアミンを含む(2)を含む水素化からの濾過溶液を氷中で冷却して、THF 10ml中のトリホスゲン5.67gの溶液を迅速に滴下により加えた。この混合物を最初に0℃で30分間、そして次に室温(RT)で1時間撹拌した。水を用いて生成物を沈殿させ、4N HClで酸性にし、次に濾別した。乾燥した結晶をメタノールで温浸して、吸引しながら濾別した。これにより、化合物(3)の褐色の結晶4.9g(理論値の64%)を得た、融点:
【0224】
【表5】

【0225】
c)化合物(4)の調製:
【0226】
【化72】

【0227】
カルバマート(3)35gをジメチルホルムアミド(DMF)700mlに溶解して、カリウムtert−ブトキシド32.2gを1回につき少量ずつ15〜20℃(氷浴)で加えた。RTで1時間撹拌後、ヨウ化メチル17.9mlを8℃で加えた。これにより、温度が12℃まで上昇した。この混合物をRTで2日間撹拌し、そして更に塩基0.1当量及びヨウ化メチル0.1当量を加えた。RTで1時間撹拌し、次に一時的に50℃まで加熱後、この懸濁液から溶媒を留去した。残渣を水約500mlと共に撹拌して、吸引しながら濾別した。これにより、化合物(4)37.07gを褐色の微粉の形態で得た(理論値の96%)。
融点:
【0228】
【表6】

【0229】
d)化合物(5)の調製:
【0230】
【化73】

【0231】
メチル化カルバマート(4)37gをニトロベンゼン260mlに200℃で溶解した。鉄粉250mgの添加後、臭素14mlをニトロベンゼン少量に溶解して、150〜180℃で25分間かけて滴下により加え、そしてこの混合物を160〜100℃で2時間撹拌した。次に更に臭素5mlを加え、この混合物を80℃で更に1時間撹拌した。RTに冷却後、生成物が沈殿し始めたが、この粗生成物は、石油エーテル300ml及びジエチルエーテル300mlの添加と、これに続く濾過により、実質的に定量的に単離した。この粗生成物は、アセトニトリル150mlと共に一時的に加熱して、次に吸引しながらRTで濾別した。高真空/80℃で乾燥することにより、異性体として純粋な生成物(5)37.1g(理論値の65%)を褐色の微細結晶として得た。
融点:
【0232】
【表7】

【0233】
e)化合物(7)の調製:
【0234】
【化74】

【0235】
ジブロモカルバマート(5)38gを2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)400mgと共にジメチルスルホキシド(DMSO)590mlに95℃で溶解して、この混合物をこの温度で2N水酸化ナトリウム水溶液200mlと一緒にアルゴン下で遮光して15〜30分間撹拌した(HPLCモニタリング)。こうして得られたアミノフェノール中間体(6)を直ちに更に処理した:最初に冷却し、7℃の内部温度でジブロモエタン144mlと混合した。10分後、氷浴を取り外し、この混合物をRTで更に21時間撹拌した。次に95℃で2時間反応させた。この反応混合物を水で希釈し、次いでCH2Cl2で2回抽出して、水で2回洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥して、蒸発乾固した。粗生成物56gは、CH2Cl2/石油エーテル(4:1)を用いてシリカゲル(40〜63μm)500gで分離した。この物質を次にシリカゲル60gにとった(CH2Cl2)。合わせた純粋な画分(22.5g)を冷メタノールで温浸し、吸引しながら濾別して、50℃で高真空で3日間乾燥した。これにより、化合物(7)の純粋な白色の結晶20.9g(理論値の55%)を得た。
融点:
【0236】
【表8】

【0237】
f)化合物(8)の調製:
【0238】
【化75】

【0239】
n−ブチルLi(ヘキサン中の1.6mol溶液)10mlを、トルエン50ml中のジブロモ化合物(7)3g及びテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)1.8mlの混合物に、0〜5℃で撹拌しながらゆっくり滴下により加えた。この混合物をこの温度で30分間撹拌した。続いてこの混合物を−60℃に冷却して、撹拌しながら10分間かけてクロロジフェニルホスフィン4.2mlを滴下により加えた。−60℃で30分間撹拌後、この反応混合物を冷却浴中で撹拌しながら、室温までゆっくり温まるのを待った。生じた懸濁液を塩化メチレンと混合して、濾過した。この溶液を飽和NaHCO3水溶液及び塩化メチレンで抽出し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥して、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。撹拌しながら生成物が沈殿するまで酢酸エチルを加えた。これを濾別し、メタノール/酢酸エチル(5:1)で洗浄して、高真空で乾燥した。生成物(8)は、白色の粉末として得た。
【0240】
【表9】

【0241】
g)式(9)の化合物の調製(Phはフェニルである):
【0242】
【化76】

【0243】
過酸化水素(水中30%)0.6mlを、THF 25ml中のジホスフィン(8)1.8gの混合物に0〜5℃でゆっくり滴下により加えた。この反応は、発熱反応である。添加後、反応混合物を0〜5℃で更に10分間撹拌して、次に室温までゆっくり温まるのを待った。溶媒をロータリーエバポレーターで留去後、生成物(9)を淡色の安定した泡状物として得た。
【0244】
【表10】

【0245】
h)化合物(9)のエナンチオマーの分離:
【0246】
【化77】

【0247】
ラセミ化合物の分割は、分取カラムクロマトグラフィー(HPLC)により行った;カラム:キラセルOD(Chiracell OD)、250×50mm、粒径=10mm。ヘキサン/イソプロパノール(55:45)を溶離液として使用した。
【0248】
実施例A2:式(12):
【0249】
【化78】

【0250】
で示される化合物の調製:
a)式(13):
【0251】
【化79】

【0252】
で示される化合物の調製
DMF 150ml中の化合物(3)20gの溶液を炭酸カリウム22.6gと共に15分間撹拌した。次にジブロモエタン64mlを加え、この反応混合物を3日間撹拌した。この反応混合物から溶媒を留去して、残渣を水で温浸し、乾燥してアセトニトリルで再び温浸することにより精製した。これにより、(13)を青紫褐色の微粉として得た。
【0253】
【表11】

【0254】
b)式(14):
【0255】
【化80】

【0256】
で示される化合物の調製
(13)9.9gをジクロロメタン90mlに懸濁して、鉄粉115mg及び臭素2.6mlと混合した。3日間撹拌後、更に臭素0.5mlを加え、この反応混合物を更に5日間撹拌し、次いで処理した。液相をタール様残渣から注ぎだし、水及びNaHSO3溶液で洗浄した。次にこれをジクロロメタンで1回抽出した。有機相を活性炭及びシリカゲルと共に撹拌し、濾過してロータリーエバポレーターで蒸発乾固した。酢酸エチルに温浸することにより、(14)を明ピンク色の結晶として得た。
【0257】
【表12】

【0258】
c)式(15):
【0259】
【化81】

【0260】
で示される化合物の調製
水酸化ナトリウム水溶液(25%)846mlを、メタノール3l及びTHF 3l中の(14)513g及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)1gの懸濁液に10分間かけて加えた。これにより温度が45℃に上昇したが、混合物を更に還流温度まで加熱して、この温度で5時間撹拌した。この反応混合物をロータリーエバポレーターで部分的に蒸発させ、水1.7lと混合し、吸引濾過して、固体を水及びメタノール少量で洗浄した。これにより(15)を褐色の粉末として得た。
【0261】
【表13】

【0262】
d)式(16):
【0263】
【化82】

【0264】
で示される化合物の調製(Zは、ベンジルオキシカルボニルである)
化合物(15)37.44g及びヒューニッヒ(Huenig)塩基36.1mlをジクロロメタン300ml中で撹拌した。冷却(0〜5℃)しながら、ジクロロメタン100ml中の(S)−Z−プロリン酸塩化物51.75gの溶液を滴下により加えた。この混合物を一晩撹拌して、この反応混合物を飽和NaHCO3溶液及び1N HClで洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、活性炭及びシリカゲル少量と共に撹拌し、吸引濾過して、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去した。これにより(16)78gを明褐色の泡状物として得た。Rf=0.33(CH2Cl2/アセトン、9:1)。
【0265】
e)式(17)及び(18):
【0266】
【化83】

【0267】
で示されるジアステレオマーの調製
HBr/氷酢酸(33%)130mlを、氷酢酸250ml中の化合物(16)76.8gの溶液に加えた。混合物の発泡停止後(15分)直ちに、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し、続いてトルエンと共蒸発させ、最後にアセトニトリルと共に80℃で20分間撹拌した。RTで、凝固塊を充分に破砕し、吸引しながら濾別した。これにより、実質的に臭化ベンジルを含まない化合物(17)/(18)の二臭化水素塩を得た。CH2Cl2/MeOH、9:1の存在下でのNa2CO3水溶液での抽出により、アミンを遊離させた。シリカゲル(40〜63μm)1.1kgでのカラムクロマトグラフィー(溶離液:CH2Cl2/メタノール/NEt3、100:10:3)により、2種の純粋なジアステレオマー(17)及び(18)を実質的に定量的収率で得た。
【0268】
【表14】

【0269】
f)式(19):
【0270】
【化84】

【0271】
で示される化合物の調製
水酸化ナトリウム水溶液(50%)17.1mlを、メタノール200ml及びTHF 20ml中の化合物(18)20.0gの溶液に加え、この反応混合物を1時間還流した。この反応混合物からロータリーエバポレーターで溶媒を留去した。これにより生成物が結晶化した。これを吸引しながら濾別して、メタノールで洗浄した。目的生成物(19)は、ピンク色の針状結晶として得た。
f=0.45(CH2Cl2/イソプロパノール、20:1)。
【0272】
e)式(12):
【0273】
【化85】

【0274】
で示される化合物の調製
塩酸水溶液(37%)4ml及びホルマリン(36%)7.5mlを、撹拌しながらメタノール130ml及びTHF 25ml中の化合物(19)10.53gの懸濁液に加えた。冷却(0〜5℃)しながら、シアノ水素化ホウ素ナトリウム3.4gを1回につき少量ずつ加えて、次にこの混合物をRTで2時間撹拌した。この反応混合物からロータリーエバポレーターで溶媒を留去した。次にこれを、水の存在下でジクロロメタンで2回抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥して、ロータリーエバポレーターで蒸発乾固した。70℃で高真空でブルーゲル(blue gel)で乾燥することにより、(20)を白色の泡状物として得た。
【0275】
【表15】

【0276】
実施例A3:式(20):
【0277】
【化86】

【0278】
で示される化合物の調製
化合物(15)0.5gをヒューニッヒ塩基442μl及び臭化ベンジル307μlと共にDMF 10ml中で60℃で10時間撹拌した。この反応混合物を水/ジエチルエーテルで抽出し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥して、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去した。この粗生成物をシリカゲル(40〜63μm)14gのクロマトグラフィー(溶離液:石油エーテル/酢酸エチル、4:1)に付した。メタノールでの温浸により、(20)を帯褐色の泡状物として得た。
【0279】
【表16】

【0280】
実施例A4:式(21):
【0281】
【化87】

【0282】
で示される化合物の調製
a)式(23):
【0283】
【化88】

【0284】
で示される化合物の調製
化合物(22)6g(19.4mmol)の溶液を、激しく撹拌しながら、水素1barを用いてラネーニッケル(エタノールで湿らせた)1.35gの存在下で室温で水素化した。1.5時間後、水素化が停止した(水素の吸収が無くなった)。触媒を濾別して、溶媒をロータリーエバポレーターで留去した。これにより、帯褐色の結晶性生成物を定量的収率で得た。水素化溶液は、処理することさえなく次の工程に使用することができる。
【0285】
【表17】

【0286】
b)式(24):
【0287】
【化89】

【0288】
で示される化合物の調製
最初にトリエチルアミン20.2g(0.2mol)、続いて0〜5℃でトリホスゲン10.4g(35mmol)の溶液を、THF 300ml中の化合物(23)14.2g(50mmol)の溶液に、アルゴン下で撹拌しながら15分間かけて滴下により加えた。更に30分間撹拌後、この反応混合物を水300mlと混合して、次にロータリーエバポレーターでTHFを留去した。生じた暗色の懸濁液を濾過し、固体を水で洗浄して、乾燥炉中で減圧下60℃で乾燥した。この乾燥した褐色の粗生成物をアセトニトリル100mlと混合して、室温で1時間撹拌した。生成物を濾別し、アセトニトリルで洗浄して乾燥した。これにより、褐色の生成物14.5g(収率:86%)を得た。
【0289】
【表18】

【0290】
c)式(25):
【0291】
【化90】

【0292】
で示される化合物の調製
1,2−ジブロモエタン35.7g(190mmol)及び炭酸カリウム(粉末)10.8g(78mmol)を、DMF 65ml中の化合物(24)6.5g(19.4mmol)に加え、この混合物を室温で48時間撹拌した。次にロータリーエバポレーターで10mbarでDMFを留去した。残渣を水と共に撹拌し、濾別し、水で洗浄して、乾燥炉中で減圧下で3時間40℃で乾燥した。これにより、青紫褐色の粗生成物を得たが、これをアセトニトリル50ml中で30分間撹拌した。生じた明瞭にもっと明るい色の微細懸濁液を濾過し、固体をアセトニトリルで洗浄して、最後に生成物をロータリーエバポレーターで減圧下で乾燥した。これにより生成物7.3gを得た(収率:69%)。
【0293】
【表19】

【0294】
e)式(26):
【0295】
【化91】

【0296】
で示される化合物の調製
メタノール50ml中の化合物(25)2.55g(4.6mmol)及びナトリウムメトキシド(95%)1.05g(18.5mmol)の混合物を、撹拌しながら1.5時間還流した。次に生じた暗色の溶液をロータリーエバポレーターで蒸発乾固した。残渣を塩化メチレン100ml及び水20ml中で振盪した。有機相を水で2回洗浄して、水相を塩化メチレンで1回抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥して、溶媒を留去し、ロータリーエバポレーターで減圧下で乾燥した。これにより青紫色の泡状物2.07gを得た(収率:99%)。
【0297】
【表20】

【0298】
f)式(27):
【0299】
【化92】

【0300】
で示される化合物の調製
鉄粉20mg、次に臭素2.86g(17.9mmol)を、ジクロロメタン75ml中の化合物(26)3.25g(7.16mmol)の溶液に室温で加えた。1時間後、更に臭素0.3gを加えて、この混合物を更に1時間撹拌した。この反応溶液を暗色の鉄塩残渣からデカントし、塩化メチレンで希釈して、水で3回洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥して、ロータリーエバポレーターで減圧下で溶媒を留去した。これにより、黄色の結晶性物質3.77gを得た(収率86%)。必要であれば、この粗生成物は、塩化メチレン100ml/酢酸エチル50mlに温浸し、ロータリーエバポレーターで600mbarで塩化メチレンを留去し、沈殿した固体生成物を濾別して、これを酢酸エチルで洗浄することにより、更に精製することができる。
【0301】
【表21】

【0302】
g)式(28):
【0303】
【化93】

【0304】
で示される化合物の調製
化合物(27)3.05g(5mmol)、メタノール50ml及びTHF 50mlの混合物を、水酸化ナトリウム水溶液(15%)20mlとアルゴン下で混合して、この混合物を2.5時間還流した。次にメタノール及びTHFをロータリーエバポレーターで留去した。残った淡色の懸濁液を濾過し、固体を水で洗浄して、乾燥炉中で減圧下で50℃で乾燥した。これにより、結晶性生成物2.36gを得た(収率:95%)。
【0305】
【表22】

【0306】
h)式(21):
【0307】
【化94】

【0308】
で示される化合物の調製
ホルムアルデヒド溶液(36%)1.52ml(20mmol)、濃塩酸(37%)0.215ml(10mmol)及びシアノ水素化ホウ素725mg(11mmol)を、メタノール50ml及びTHF 5ml中の化合物(28)1.98g(4mmol)に、撹拌しながら1回に少量ずつ加えて、この混合物を一晩撹拌した。メタノール及びTHFをロータリーエバポレーターで留去し、この懸濁液を水で希釈して、重炭酸ナトリウム溶液と混合して撹拌し、濾過して、この固体を水で洗浄した。乾燥炉中で40〜50℃で乾燥することにより、無色の結晶性生成物2.05gを得た(収率:98%)。
【0309】
【表23】

【0310】
B)ジホスフィン配位子の調製
実施例B1:ジホスフィン配位子(29)の調製(Phは、フェニルである)
【0311】
【化95】

【0312】
ジホスフィンオキシド(10)200mg、トルエン5ml、トリクロロシラン1.6ml及びトリエチルアミン0.43mlを、鋼製オートクレーブに入れ、このオートクレーブを閉じて、反応混合物を110℃で12時間撹拌した。RTに冷却後、氷少量を加えて、混合物を飽和NaHCO3水溶液及び塩化メチレンで抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥して、次にロータリーエバポレーターで溶媒を除去した。生成物(12)をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、メルク(Merck)60;溶離液:2%のトリエチルアミンを含むトルエン)により精製して、白色の粉末として得た。
【0313】
【表24】

【0314】
実施例B2:ジホスフィン配位子(30)の調製
【0315】
【化96】

【0316】
無水THF 140ml及び無水ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)7.9ml中の化合物(12)10.23gの溶液を、モレキュラーシーブ(4Å)2gと共にアルゴン下で1時間撹拌した。次にtert−ブチルリチウム(ペンタン中1.5M)60mlを−76°〜−64℃で滴下により加え、この混合物を−75℃で12分間撹拌した。次にTHF 25ml中のジフェニルクロロホスフィン8.1mlの溶液を1.5分間かけて滴下により加えると、−43℃まで温度が上昇した。この混合物がRTまで温まるのを待ち、次にこの反応混合物からロータリーエバポレーターで溶媒を留去し、水とジクロロメタンとの間で2回抽出し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥して、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去した。この粗生成物は、遮光してシリカゲル(40〜63μm)250gのクロマトグラフィー(アロックス(Alox)IV 30gで覆った;溶離液:1%のNEt3及び少量のBHTを含むトルエン/MTB、98:2)に付した。純粋な画分からロータリーエバポレーターで溶媒を留去した。酢酸エチル/ジエチルエーテル20mlに溶解して、ラセミ化合物を接種することにより、残ったラセミ化合物を晶出することができる(光学的に純粋な生成物は、ラセミ化合物よりもはるかに容易にこの溶媒混合物に溶解するため)。次に生成物を熱イソプロパノールで温浸した。冷却後、これを破砕した。こうして得られた粉末を濾別して、高真空で70℃で乾燥した。これにより、生成物(30)を帯黄色の粉末として得たが、これは空気中で安定である。
【0317】
【表25】

【0318】
実施例B3:ジホスフィン配位子(31)の調製
【0319】
【化97】

【0320】
ジフェニルクロロホスフィンの代わりにジ−3,5−キシリルクロロホスフィンを使用して、実施例B2の手順を繰り返した。これにより、143〜150℃の融点を有する帯黄色の粉末としてジホスフィン(31)を得た。
【0321】
【表26】

【0322】
実施例B4:ジホスフィン配位子(32)の調製
【0323】
【化98】

【0324】
ジフェニルクロロホスフィンの代わりにジシクロヘキシルクロロホスフィンを使用して、実施例B2の手順を繰り返した。これにより、ベージュ色の粉末として化合物(32)を得た。
f=0.63(CH2Cl2/メタノール/NH4OH 25%、100:10:1)。
ESI−MS:M+H 689。
【0325】
実施例B5:ジホスフィン配位子(33)の調製
【0326】
【化99】

【0327】
化合物(21)及びジフェニルクロロホスフィンを使用して、実施例B2の手順を繰り返すことにより、化合物(33)を得た。
【0328】
実施例B6:ジホスフィン配位子(34)の調製
【0329】
【化100】

【0330】
化合物(20)及びジフェニルクロロホスフィンを使用して、実施例B2の手順を繰り返した。
【0331】
【表27】

【0332】
C)金属錯体の調製
実施例C1:ルテニウム錯体の調製
[RuI2(p−クメン)]2 1.47mg(0.0015mmol)及び実施例B1からのジホスフィン配位子(29)2.14mg(0.0032mmol)を、アルゴン雰囲気を充填したシュレンク管に導入した。次にエタノール(脱気)5mlを加え、この溶液を室温で10分間撹拌した。この溶液を水素化に直接使用した。
【0333】
実施例C2:ルテニウム錯体の調製
[RuI2(p−クメン)]2 6.3mg(0.0063mmol)及び実施例B1からのジホスフィン配位子(29)8.8mg(0.0133mmol)を、アルゴン雰囲気を充填したシュレンク管に導入した。次にエタノール(脱気)5mlを加え、この溶液を室温で10分間撹拌した。この溶液を水素化に直接使用した。
【0334】
実施例C3:ルテニウム錯体の調製
[RuI2(p−クメン)]2 11.4mg(0.0115mmol)及び実施例B1からのジホスフィン配位子(29)15.9mg(0.024mmol)を、アルゴン雰囲気を充填したシュレンク管に導入した。次にエタノール(脱気)20mlを加え、この溶液を室温で10分間撹拌した。この溶液を水素化に直接使用した。
【0335】
実施例C4:水溶性ロジウム錯体の調製
【0336】
【化101】

【0337】
配位子(29)11.6mg(0.0175mmol)及び[Rh(COD)2]BF4 6.9mg(0.017mmol)をアルゴン下でマグネティックスターラーを備えたシュレンク管に入れ、脱気メタノール0.9mlに溶解した。10分間撹拌後、メタノールを減圧下で室温で除去した。脱気水2mlを、残った赤色の固体Rh錯体に加え、この混合物を激しく撹拌した。錯体は溶解せず、水は無色のままだった。撹拌しながら、次にメタンスルホン酸をゆっくり加えた。これにより、錯体が溶解し始めた。メタンスルホン酸320マイクロリットルの添加により、水溶液中で水素化を実施することができる清澄な橙色の溶液が得られた。
【0338】
D)使用例
実施例D1:3−ケト酪酸エチルの水素化
【0339】
【化102】

【0340】
アセト酢酸エチル30g、脱気エタノール5ml及び1N HCl 0.9mlを、アルゴンを充填したシュレンク管に連続して導入した。次にこの溶液及び実施例C1からの触媒溶液を、アルゴンを充填した50ml鋼製オートクレーブ中に鋼製毛細管を用いて連続して移した。s/c(基質(substrate)/触媒(catalyst))比は、75,000であった。オートクレーブを閉じて、4周期のフラッシングを利用して50barの圧力を設定した(20barの水素で加圧)。次にオートクレーブを80℃に加熱し、30分後に反応圧力を80barに設定した。オートクレーブを19時間撹拌した。続いて加熱を止めて、オートクレーブを室温まで冷却した。減圧後、帯赤色の反応溶液を単離した。変換率は、>98%であった(GC及び1H−NMRを用いて決定)。ロータリーエバポレーターで溶媒を除去することにより、97.1%eeのエナンチオマー純度を有する定量的収率の(R)−3−ヒドロキシ酪酸エチルを得た(無水トリフルオロ酢酸との反応後にGCを用いて決定;カラム:リポデックスE(Lipodex E)、50m)。
【0341】
実施例D2:ベンゾイル酢酸エチルの水素化
【0342】
【化103】

【0343】
ベンゾイル酢酸エチル0.498g(2.53mmol)、脱気エタノール5ml及び1N HCl 60μlを、アルゴンを充填したシュレンク管に連続して導入した。次にこの溶液及び実施例C2からの触媒溶液を、アルゴンを充填した50ml鋼製オートクレーブ中に鋼製毛細管を用いて連続して移した。s/c(基質/触媒)比は、200であった。オートクレーブを閉じて、4周期のフラッシングを利用して50barの圧力を設定した(20barの水素で加圧)。次にオートクレーブを80℃に加熱し、30分後に反応圧力を80barに設定した。オートクレーブを21時間撹拌した。続いて加熱を止めて、オートクレーブを室温まで冷却した。減圧後、帯赤色の反応溶液を単離した。変換率は、>98%であった(GC及び1H−NMRを用いて決定)。ロータリーエバポレーターで溶媒を除去することにより、98%eeのエナンチオマー純度を有する定量的収率の(S)−3−ヒドロキシフェニルプロピオン酸エチルを得た(HPLCを用いて決定;キラルセル(Chiralcel)OD−H、250mm、ヘキサン/i−プロパノール、93:7、流量:0.8ml/分)。
【0344】
比較実施例:
配位子(29)の代わりに(R)−MeObiphep 7.73mg(0.0133mmol)を使用して、実施例D2の手順を繰り返した。変換率は、>98%であった。ロータリーエバポレーターで溶媒を除去することにより、92%eeのエナンチオマー純度を有する定量的収率の(S)−3−ヒドロキシフェニルプロピオン酸エチルを得た。
【0345】
実施例D3:アセチルアセトンの水素化
【0346】
【化104】

【0347】
アセチルアセトン0.253g(2.53mmol)、脱気エタノール5ml及び1N HCl 60μlを、アルゴンを充填したシュレンク管に連続して導入した。次にこの溶液及び実施例C2からの触媒溶液を、アルゴンを充填した50ml鋼製オートクレーブ中に鋼製毛細管を用いて連続して移した。s/c(基質/触媒)比は、200であった。オートクレーブを閉じて、4周期のフラッシングを利用して50barの圧力を設定した(20barの水素で加圧)。次にオートクレーブを80℃に加熱し、30分後に反応圧力を80barに設定した。オートクレーブを16時間撹拌した。続いて加熱を止めて、オートクレーブを室温まで冷却した。減圧後、帯赤色の反応溶液を単離した。変換率は、>98%であった(GC及び1H−NMRを用いて決定)。ロータリーエバポレーターで溶媒を除去することにより、99%eeのエナンチオマー純度を有する定量的収率の(2R,4R)−ペンタン−2,4−ジオールを得た(dl:メソの比;98:2;無水トリフルオロ酢酸との反応後にGCを用いて決定;カラム:リポデックスE、50m)。
【0348】
実施例D4:ベンゾイル酢酸エチルの水素化
配位子(29)の代わりに実施例B3からのジホスフィン(31)10.3mg(0.0133mmol)を使用して、実施例D2の手順を繰り返した。HClを添加することなく、この基質溶液を使用した。変換は、定量的であった(GC及び1H−NMRを用いて決定)。ロータリーエバポレーターで溶媒を除去することにより、98.2%eeのエナンチオマー純度を有する定量的収率の(S)−3−ヒドロキシフェニルプロピオン酸エチルを得た。
【0349】
実施例D5:シクロヘキシル−3−ケトプロピオン酸エチルの水素化
【0350】
【化105】

【0351】
配位子(29)の代わりに実施例B3からのジホスフィン(31)10.3mg(0.0133mmol)を使用して、実施例D2の手順を繰り返した。この基質溶液は、シクロヘキシル−3−ケトプロピオン酸エチル0.502mg(2.53mmol)、1N HCl 60ml及びエタノール5mlを含む。変換は、定量的であった(GC及び1H−NMRを用いて決定)。ロータリーエバポレーターで溶媒を除去することにより、96.4%eeのエナンチオマー純度を有する定量的収率の(S)−3−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルプロピオン酸エチルを得た。
【0352】
実施例D6:アセチルアセトンの水素化
配位子(29)の代わりに実施例B3からのジホスフィン(31)10.3mg(0.0133mmol)を使用して、実施例D3の手順を繰り返した。変換率は、>98%であった(GC及び1H−NMRを用いて決定)。ロータリーエバポレーターで溶媒を除去することにより、99.4%eeのエナンチオマー純度を有する定量的収率の(2R,4R)−ペンタン−2,4−ジオールを得た(dl:メソの比;98.5:1.5)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Ia)又は(Ib):
【化1】


[式中、
1及びX2は、それぞれ相互に独立に、第2級ホスフィノであり;
1及びR2は、それぞれ相互に独立に、水素、C1−C8−アルキル、C3−C8−シクロアルキル、C3−C8−シクロアルキル−C1−C4−アルキル、C6−C10−アリール若しくはC7−C11−アラルキルであるか、又は
1及びR2は、一緒になってC4−C8−アルキレン、3−オキサペンチル−1,5−エン、−(CH22−NH−(CH22−若しくは−(CH22−N(C1−C4アルキル)−(CH22−であり;
3は、水素、C1−C8−アルキル、C3−C8−シクロアルキル、C3−C8−シクロアルキル−C1−C4−アルキル、C6−C10−アリール又はC7−C11−アラルキルであるか、あるいは
1は、上記と同義であり、R2及びR3は、一緒になってC2−C8−アルキリデン、C4−C8−シクロアルキリデン、C1−C4−アルキレン、C2−C8−アルカ−1,2−エニル、−C(O)−又は下記式:
【化2】


で示される基であるか、あるいは
12N及びR3Oは、一緒になって下記式:
【化3】


で示される基であるか、あるいは
1、R3、又はR1とR3は一緒に、保護基であり、そしてR2は、上記と同義であり;
4及びR7は、それぞれ相互に独立に、水素、C1−C4−アルキル、C1−C4−アルコキシ、F、Cl又はトリフルオロメチルであり;
5は、水素、R4又はR3O−基(ここで、2つの環のR3O−基は、同一であっても異なっていてもよい)であり;
6は、水素、R7又はR12N−基(ここで、2つの環のR12N−基は、同一であっても異なっていてもよい)であるか;あるいは
5及びR6は、一緒になってトリメチレン、テトラメチレン又は−CH=CH−CH=CH−であり;そして
11は、C1−C8−アルキル、C3−C8−シクロアルキル、C3−C8−シクロアルキル−C1−C4−アルキル、C6−C10−アリール又はC7−C11−アラルキルである(ここで、
1、R2、R3、R4及びR7は、非置換であるか、あるいはC1−C4−アルキル、C1−C4−アルコキシ、OH、F、Cl、Br、トリフルオロメチル、C1−C4−ヒドロキシアルキル、−COOH、−SO3H、−C(O)O−C1−C4−アルキル、−SO3−C1−C4−アルキル、−C(O)−NH2、−CONHC1−C4−アルキル、−CON(C1−C4−アルキル)2、−SO3−NH2、−SO2−NHC1−C4−アルキル、−SO3−N(C1−C4−アルキル)2、−O2C−R8、−O3S−R8、−NH−(O)C−R8、−NH−O3S−R8、−NH2、−NHR9又は−NR910により置換されている(ここで、R8は、水素、C1−C8−アルキル、C3−C8−シクロアルキル、C3−C8−シクロアルキル−C1−C4−アルキル、C6−C10−アリール又はC7−C11−アラルキルであり、そしてR9及びR10は、それぞれ相互に独立に、C1−C4−アルキル、フェニル又はベンジルであるか、あるいはR9及びR10は、一緒になってテトラメチレン、ペンタメチレン、3−オキサ−1,5−ペンタン又は−(CH22−N(C1−C4−アルキル)−(CH22−である))]で示される化合物。
【請求項2】
1が、−P(R)2基であり、そしてX2が、−P(R’)2基[ここで、R及びR’は、それぞれ相互に独立に、X1/X2形成ラジカル、例えば、1〜20個の炭素原子を持ち、そして非置換であるか、又はハロゲン、C1−C6−アルキル、C1−C6−ハロアルキル、C1−C6−アルコキシ、C1−C6−ハロアルコキシ、−CO2−C1−C6−アルキル、(C653Si若しくは(C1−C12−アルキル)3Siにより置換されている、炭化水素ラジカルであるか;あるいはR及びR’ラジカルは、一緒になって非置換又はC1−C4−アルキル−及び/若しくはC1−C4−アルコキシ−置換のテトラメチレン又はペンタメチレンである]であることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
式(Ic):
【化4】


[式中、R1は、水素であるか、又はR2と同義であるか、あるいはR1、R2及びR3は、それぞれ相互に独立に、C1−C4−アルキルであり、R5は、水素又はOR3基であり、R6は、水素又は−NR12基であるか、あるいはR5及びR6は、一緒になって−CH=CH−CH=CH−であり、そしてX1及びX2は、第2級ホスフィノである]に対応することを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
式(Id):
【化5】


[式中、R1は、水素又はC1−C4−アルキルであり、R5及びR6は、それぞれ水素であるか、又はR5及びR6は、一緒になって−NR1−R12−O−基であり、X1及びX2は、第2級ホスフィノであり、そしてR12は、1,2−エチレン、1,2−エテニレン、−C(O)−又は下記式:
【化6】


(式中、R11は、分岐C3−C8−アルキル、C5−C6−シクロアルキル、フェニル又はベンジルである)で示される基である]に対応することを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
式(Ie)、(If)、(Ig)、(Ih)又は(Ii):
【化7】


[式中、R01は、水素、C1−C8−アルキル、C5−C6−シクロアルキル、フェニル又はベンジルであり、R11は、フェニル又はt−ブチルであり、そしてX1及びX2は、好ましさを含めて上記と同義である]に対応することを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
式(Ia)及び(Ib):
【化8】


[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、X1及びX2は、上記と同義である]で示される化合物の製造方法であって、
a)式(VI):
【化9】


[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は、上記と同義であるか、あるいはR1が、開裂することができる保護基であり、そしてR2は、水素であるか、又は上記と同義であるか、あるいはR3が、開裂することができる保護基であるか、あるいはR1及びR3が、開裂することができる保護基を形成し、そしてR2は、水素であるか、又は上記と同義である]で示される化合物を、塩素、臭素又はヨウ素を用いてハロゲン化することにより、式(VII):
【化10】


[式中、Xは、塩素、臭素又はヨウ素である]で示される化合物を生成する工程、
b)適宜、R2及びR3ラジカルを導入するために、保護基を脱離することにより、OH−官能基及びNH−官能基を形成し、そしてOH−官能基及びNH−官能基中のH原子を試薬:R2−Y2、R3−Y2又はY2−R13−Y2[ここで、Y2は、脱離基であり、そしてR13は、1,2−アルキレン又は1,2−シクロアルキレンである]を用いて置換することにより、式(VII)の化合物を製造する工程、並びに
適宜、式(VII)のラセミ化合物を分割することにより、式(VIIa)及び(VIIb):
【化11】


で示されるエナンチオマーを得る工程、
c)例えば、リチウムアルキルを用いる、式(VII)、(VIIa)又は(VIIb)の化合物のメタレーション、及びこれに続くリチウムアルキルの存在下での式:X3−PRR(X3は、ハロゲンである)のハロホスフィンとの反応により、式(VIII)、(Ia)又は(Ib)のジホスフィンを得る工程、あるいは式:X3−P(O)RRのハロホスフィンオキシドとの反応により、式(IX)、(IXa)又は(IXb)のジホスフィンオキシドを得る工程、あるいは式:X3−P(O)(OR°)2のホスホナートとの反応により、式(X)、(Xa)又は(Xb)のホスホナートを得る工程:
【化12】


[式中、Rは、ラジカル形成性X1/X2、例えば、1〜20個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルであり、そしてR°は、C1−C6−アルキル又はフェニルである]
d)式(VII)のラセミ出発物質が使用されるならば、オキシダントを用いて式(VIII)、(VIIIa)又は(VIIIb)の化合物中のホスフィン基を酸化することにより、式(IX)、(IXa)又は(IXb)の化合物を生成する工程、
e)式(VIII)のラセミ化合物の分割によりエナンチオマー(Ia)及び(Ib)を得る工程、又は式(IX)のラセミ化合物の分割により、式(IXa)及び(IXb)のエナンチオマーを得る工程、又は式(X)のラセミ化合物の分割により、式(Xa)及び(Xb)のエナンチオマーを得る工程、そして式(Xa)及び(Xb)の化合物とR−Mg−Xとの反応により、式(IXa)及び(IXb)のホスフィンオキシドを生成する工程、並びに
f)式(Xa)及び(Xb)の化合物中のホスフィンオキシド基を還元することにより、式(Ia)及び(Ib)の化合物を製造する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
ラセミ化合物、ジアステレオマーの混合物、純粋なジアステレオマー又は光学的に濃縮したか、若しくは光学的に純粋形のエナンチオマーの形態である、式(VII):
【化13】


[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は、請求項1と同義であるか、あるいは
2は、開裂することができる保護基であるか、又はR2及びR3は、一緒になって開裂することができる保護基を形成し、そしてR1、R3、R4、R5、R6及びR7又はR1、R4、R5、R6及びR7は、請求項1と同義であり、そして
Xは、塩素、臭素又はヨウ素である]で示される化合物。
【請求項8】
式(IX)の化合物(ラセミ化合物)又は式(IXa)及び/若しくは(IXb)の化合物(ジアステレオマーの混合物、純粋なジアステレオマー、又は光学的に濃縮したか、若しくは光学的に純粋形のエナンチオマー):
【化14】


あるいは式(X)のプレ生成物(ラセミ化合物)又は式(Xa)及び/若しくは(Xb)の化合物(ジアステレオマーの混合物、純粋なジアステレオマー、又は光学的に濃縮したか、若しくは光学的に純粋形のエナンチオマー):
【化15】


[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7は、好ましさを含めて式(I)及び(Ia)の化合物に関して示した意味であり、R°は、C1−C6−アルキル又はフェニルであり、そしてRは、X1/X2形成ラジカル、例えば、1〜20個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルである]。
【請求項9】
TM8金属よりなる群から選択される金属と、配位子としての請求項1記載の式(Ia)又は(Ib)の化合物との錯体。
【請求項10】
一般式(XI)又は(XII):
【化16】


[式中、
1は、請求項1記載の式(Ia)又は(Ib)の化合物であり;
Lは、同一であるか又は異なる単座のアニオン性又は非イオン性の配位子を表すか、あるいは2個のLは、同一であるか又は異なる二座のアニオン性又は非イオン性配位子を形成し;
Lが単座配位子であるとき、nは、2、3又は4であるか、あるいはLが二座配位子であるとき、nは、1又は2であり;
zは、1、2又は3であり;
Meは、Rh及びIrよりなる群から選択される金属であり;そしてこの金属は、0、1、2、3又は4の酸化状態を持ち;
-は、オキソ酸又は錯酸(complex acid)のアニオンであり;そして
このアニオン性配位子は、金属の酸化段階1、2、3又は4の電荷と釣り合いをとっている]に対応する、請求項9記載の金属錯体。
【請求項11】
式(XIII)又は(XIV):
【化17】


[式中、
1は、請求項1記載の式(Ia)又は(Ib)の化合物であり;
Me1は、ロジウム又はイリジウムであり;
Yは、2個のオレフィン又は1個のジエンを表し;
Zは、Cl、Br又はIであり;そして
1-は、オキソ酸又は錯酸のアニオンである]に対応する、請求項9記載の金属錯体。
【請求項12】
触媒の存在下での、プロキラル有機化合物中の炭素−炭素又は炭素−ヘテロ原子多重結合への水素、水素化ホウ素又はシランの不斉付加による、あるいはアリル化合物への炭素求核物質、アルコール又はアミンの不斉付加による、キラル有機化合物の製造方法であって、この付加反応が、触媒量の少なくとも1つの請求項9記載の金属錯体の存在下で行われることを特徴とする方法。
【請求項13】
プロキラル有機化合物中の炭素−炭素又は炭素−ヘテロ原子多重結合への水素、水素化ホウ素又はシランの不斉付加による、あるいはアリル化合物への炭素求核物質又はアミンの不斉付加による、キラル有機化合物の製造用の均一系触媒としての請求項9記載の金属錯体の使用。

【公表番号】特表2006−523654(P2006−523654A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505522(P2006−505522)
【出願日】平成16年4月5日(2004.4.5)
【国際出願番号】PCT/EP2004/050439
【国際公開番号】WO2004/089920
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(599163159)ソルヴィーアス アクチェンゲゼルシャフト (22)
【氏名又は名称原語表記】Solvias AG
【Fターム(参考)】