説明

アリスキレンとバルサルタンの医薬組み合わせ剤

本発明は、
a) 治療的有効量のアリスキレン、またはその薬学的に許容される塩、
b) 治療的有効量のバルサルタン、またはその薬学的に許容される塩、
を含む医薬経口固定用量組み合わせ剤に関し、ここで、該医薬経口固定用量組み合わせ剤は、pH4.5で、10分後の60%以下のおよび20分後の95%以下の成分(a)のインビトロ溶解、および30分後の25%以上、および60分後に45%以上の成分(b)の溶解プロファイルを示し、該医薬経口固定用量組み合わせ剤は、アリスキレンおよびバルサルタンの自由投与量組み合わせ剤と生物学的に同等である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適当な担体媒体中に活性成分として経口で活性なレニン阻害剤であるアリスキレン、またはその薬学的に許容される塩、および、アンギオテンシンIIアンタゴニストであるバルサルタン、またはその薬学的に許容される塩を含む、薬学的経口固定投与量組み合わせ剤に関する。特に、本発明は、ヘミフマル酸塩のアリスキレンをバルサルタンと組み合わせて含む、ガレヌス(galenic)製剤を提供する。本発明はまたその製造方法および医薬としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
レニンは腎臓から放出されて循環中でアンギオテンシノーゲンを開裂して、デカペプチドアンギオテンシンIを形成する。続いてこれが肺、腎臓および他の臓器においてアンギオテンシン変換酵素により開裂されて、オクタペプチドアンギオテンシンIIを形成する。このオクタペプチドは、血圧を動脈血管収縮により直接的に、および副腎から、細胞外液容積の増加が付随するナトリウム−イオン−関連ホルモンアルドステロンを遊離させることにより間接的にの両方で血圧を上昇させる。レニンの酵素活性の阻害剤はアンギオテンシンIの形成を低下させる。その結果として産生されるアンギオテンシンIIが少ない。その活性ペプチドホルモンの低下した濃度が、例えば、レニン阻害剤の抗高血圧効果の直接の原因である。従って、レニン阻害剤、またはその塩は、例えば、降圧剤としてまたは鬱血性心不全の処置のために用い得る。
【0003】
レニン阻害剤、アリスキレン、特に、そのヘミフマル酸塩は、年齢、性別または人種に関係なく血圧低下の処置に有効であり、また十分に耐容性であることが知られている。遊離塩基の形のアリスキレンは下記式
【化1】

により表され、化学的に2(S),4(S),5(S),7(S)−N−(3−アミノ−2,2−ジメチル−3−オキソプロピル)−2,7−ジ(1−メチルエチル)−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−[4−メトキシ−3−(3−メトキシ−プロポキシ)フェニル]−オクタンアミドとして定義される。上記の通り、最も好ましいのはそのヘミフマル酸塩であり、それはEP678503Aに実施例83として具体的に記載されている。
【0004】
バルサルタンは既知アンギオテンシン受容体ブロッカー(ARB、アンギオテンシンIIアンタゴニスト)であり、アリスキレンとの組み合わせは、例えばWO02/40007に記載されている。
【0005】
アンギオテンシンIIは、血管の収縮を起こすホルモンである。続いてこれらが高血圧および心臓に対する圧力をもたらし得る。アンギオテンシンIIが標的細胞表面上の特異的受容体と相互作用することが知られている。アンギオテンシンIIに対する2種の受容体サブタイプ、すなわちAT1およびAT2が今日まで同定されている。最近、AT1受容体に結合する物質の同定に多大な労力がかけられている。アンギオテンシン受容体ブロッカー(ARB、アンギオテンシンIIアンタゴニスト)は、アンギオテンシンIIが血管壁上のその受容体と結合するのを妨げ、それにより血圧低下をもたらすことが知られている。AT1受容体の阻害のため、かかるアンタゴニストは、それ故に、抗高血圧剤としてまたは他の適応症のなかで、とりわけ鬱血性心不全の処置に使用できる。
【0006】
経口経路を介したかかる医薬品の投与は非経腸投与より好ましく、なぜならそれは患者による自己投与を可能とするのに対し、非経腸製剤は、ほとんどの場合医師または医療従事者により投与されなければならないからである。
【0007】
しかしながら、アリスキレンは、その物理化学的特性のために製剤が困難な医薬物質であり、信頼でき、確固たる方法で錠剤の形の経口製剤とすることが自明ではない。例えば、アリスキレンは針状結晶癖を有し、これは、医薬物質のバルク特性、例えば、流動特性および容積密度に負の影響を有する。本医薬物質の圧縮挙動は悪く、弱い粒子間結合および圧力下での多形変化に至る。アリスキレンは、粒子間結合の弱化にも至る強い弾力性成分である。本医薬物質品質、例えば、粒子径分布、容積密度、流動性、濡れ挙動、表面積および粘性傾向は錠剤への加工性に影響を伴い非常に可変性である。さらに、アリスキレンは非常に吸湿性である。水と接触させ、水を除去した後、本医薬物質多形性は非晶性状態に変わり、これは結晶状態と比較して安定性が劣る。加えて、特定の場合において、高用量のアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩(錠剤あたり300mgまでの遊離塩基)は、合理的な錠剤サイズを達成するために、高薬剤負荷を必要とする。
【0008】
これらの障害の組み合わせが、標準錠剤製造工程を非常に困難とする。アリスキレンの固体経口投与形態はWO2005/089729に記載されている。
【0009】
他方、バルサルタンはpH依存的溶解性を有し、それにより酸性環境でのわずかに可溶性から、胃腸管の中性環境での可溶性までの範囲である。さらに、バルサルタンの患者に便利な経口投与形態の開発はその低い容積密度のために困難である。
【0010】
さらに、一般に、特定の複数活性成分を使用した経口固定用量組み合わせ製剤の開発は困難である。ここで使用する、“固定用量組み合わせ剤”は、一投与単位(例えば一錠または一カプセル)中に存在する2剤または2種活性成分の規定量の組み合わせを意味し、そのまま投与する;さらにここで使用する、“自由投与量組み合わせ剤”は、同時にではあるが、2つの異なる投与単位として投与する、2剤または2種の活性成分の組み合わせを意味する。経口固定用量組み合わせ剤を製剤するとき、固定用量組み合わせ剤の開発における時間および費用を軽減するため、同じ複数活性成分の対応する自由投与量組み合わせ剤と生物学的に同等である患者に便利な投与形態を提供することが有利である。自由投与量組み合わせ剤と生物学的に同等な固定投与量組み合わせ剤の開発は、組み合わせようとする複数薬剤の薬物動態学的および薬剤学的特性に起因する複数の障害のため、困難である。
【0011】
アリスキレンを信頼でき、確実な方法で錠剤の形の経口製剤に製剤するときに遭遇する困難さは、それを他の治療剤、特に上記理由のためバルサルタンと組み合わせて使用するときに増すと考えられる。
【0012】
バルサルタンおよびアリスキレンの治療用量が高い場合、2剤を合わせるとき、大きすぎる製剤を避けるために賦形剤を最小限に維持することが非常に望まれる。この事実にもかかわらず、この製剤は上記の条件を全て満たさなければならない。
【0013】
従って、特にバルサルタンと一緒に製剤するときに、アリスキレンの特性に関連する上記課題を解決した適当で頑丈(robust)なガレヌス製剤を開発することが必要である。
【0014】
驚くべきことに、曲線下面積(AUC)および好ましくは最高血漿濃度(Cmax)に関しても対応する自由投与量組み合わせ剤にできるだけ類似している、最も好ましくはこの2種の活性成分の自由組合せ剤と生物学的に同等である、この2種の活性成分の特定の溶解プロファイルが、この組み合わせの頑丈なガレヌス製剤を達成するために必要であることが判明した。個々の活性成分の溶解度および吸収特性から、当業者は溶解プロファイルが生物学的同等性に近づくまたは到達することが重要であることを期待しないであろう。
【0015】
一つの態様において、本発明は、
a) 治療的有効量のアリスキレン、またはその薬学的に許容される塩、
b) 治療的有効量のバルサルタン、またはその薬学的に許容される塩、
を含む医薬経口固定用量組み合わせ剤であって、ここで、該医薬経口固定用量組み合わせ剤は、pH4.5で、10分後の60%以下、例えば60%〜15%、および20分後の95%以下、例えば95%〜40%の成分(a)のインビトロ溶解および、および30分後の25%以上、例えば30%以上、および60分後の45%以上、例えば60%以上の成分(b)の溶解プロファイルを示す。
【0016】
かかる医薬経口固定用量組み合わせ剤は、各成分についてアリスキレンおよびバルサルタンの自由投与量組み合わせ剤にできるだけ類似しているAUCおよび好ましくはまたCmaxを有し、そしてかかる医薬経口固定用量組み合わせ剤は、かかる自由組み合わせ剤と最も好ましくは生物学的に同等である。アリスキレンおよびバルサルタンについて、それぞれ最初の20分間および60分間にどの速度で活性成分が放出されるかは問題ではないため、上記溶解データがこのように重大であるのは驚きであった。BCS(生物薬剤学分類体系)クラス3化合物(高溶解度、低透過性)について、固定用量組み合わせ剤からのアリスキレンの放出速度およびその後の溶解速度は、溶解速度が既存のアリスキレンフィルムコート錠に類似するかそれより早い限り、重要でないはずである。実際、薬物動態学的パラメーターの一つ、曲線下面積(AUC)は、最初の1時間以内の放出速度およびその後の溶解速度が重要とはならないように、24時間の期間にわたり取る。それにも関わらず、これらの成分、すなわちアリスキレンまたはバルサルタンの少なくとも一方の溶解プロファイル、典型的にアリスキレンの溶解プロファイルが上記範囲の外にあるならば、ヒト薬物動態学的試験においてAUCおよび/またはCmaxの類似性がなく、故に、固定用量組み合わせ剤について生物学的同等性が見られなかった。例えばアリスキレンの場合、上記よりも速い溶解は、自由組み合わせ剤と比較して固定組み合わせ剤への実質的に低い暴露に至った。アリスキレンについて溶解と吸収の間に反比例関係が存在し、それにより、アリスキレンの速い溶解の投与形態は、低いバイオアベイラビリティを有することが判明した。
【0017】
本明細書を通して、種々の用語は次の定義の通りである:
放出プロファイル:
ここで使用する用語“放出”は、該医薬経口固定用量組み合わせ剤を流体と接触させ、流体が投与形態を出て該投与形態を囲む流体に輸送される、過程を言う。患者におけるある投与形態により示される送達速度および送達期間の組み合わせは、そのインビボ放出プロファイルとして記載し得る。複数の投与形態の放出プロファイルは異なる放出速度および放出期間を示し得て、連続的であり得る。連続的放出プロファイルは、1種以上の活性成分が、一定または可変速度のいずれかで、連続的に放出される放出プロファイルを含む。
【0018】
異なる放出プロファイルを有する2種以上の成分を一投与形態に組み合わせるとき、得られる2成分の個々の放出プロファイルは、一方のみの成分を有する投与形態と比較して、同じでも異なってもよい。故に、この2成分は互いの放出プロファイルに影響し、各個々の成分について異なる放出プロファイルに至り得る。
【0019】
二成分投与形態は、互いに同一または異なる2成分の放出プロファイルを示し得る。各成分が異なる放出プロファイルを有するときの二成分投与形態の放出プロファイルは、“非同期”と記載し得る。かかる放出プロファイルは、(1)好ましくは成分b)が成分a)より遅い速度で放出される異なる連続的放出、および(2)成分a)およびb)の一方、好ましくは成分b)が連続的に放出され、成分a)およびb)の他方、好ましくは成分a)が時間遅延を伴い連続的に放出されるように修飾されているプロファイルの両方を含む。一剤への二放出プロファイルの組み合わせは、例えば薬剤の50%が連続的であり、そして同薬剤の50%が時間遅延を伴い連続的である。
【0020】
即時放出:
本出願の目的で、即時放出製剤は、特別な製剤設計または製造方法により故意に修飾されていない活性物質の放出を示す製剤である。
【0021】
修飾放出:
本出願の目的で、修飾放出製剤は、特別な製剤設計または製造方法により故意に修飾された活性物質の放出を示す製剤である。この修飾放出は、典型的に成分の一方または両方、好ましくは成分a)の放出の時間を遅らせることにより得ることができる。典型的に本発明の目的で、修飾放出は、5時間にわたる放出、例えば3時間にわたるまたはそれより短くさえある放出を意味する。ここで使用する修飾放出は、2成分の異なる長時間にわたる連続的放出または成分の一方、好ましくは成分a)がラグタイム後にのみ放出される遅延放出の両方を包含することを意味する。かかる修飾放出形態は、放出修飾コーティング、例えば拡散コーティングを医薬物質(複数もある)に、または医薬物質(複数もある)を含むコアに適用することにより、または医薬物質(複数もある)を包埋する放出修飾マトリックスを創成することにより製造し得る。
【0022】
ここで使用する用語“時間遅延”は、本発明の組成物を含む投与形態の投与と、その特定の要素からの該活性成分の放出間の時間を意味する。
【0023】
ここで使用する用語“タイムラグ”は、投与形態の一要素からの活性成分の放出と、投与形態の他要素からの活性成分の放出の間の時間を意味する。
【0024】
崩壊:
ここで使用する用語“崩壊”は、該医薬経口固定用量組み合わせ剤が、典型的に流体の手段により、別々の粒子に分かれ、分散する過程を意味する。崩壊は、固体経口投与形態が、試験装置の篩上に残る固体経口投与形態の何らかの残渣が、存在するならば、不溶性コーティングまたはカプセル殻以外、USP<701>に従う明白な硬いコアを有しない軟塊である状態であるときに達成される。崩壊特性は水、例えば水道水または脱イオンである水。崩壊時間は、当業者に既知の標準方法により測定され、薬局方USP<701>およびEP2.9.1およびJPに明記の一致させた方法を参照のこと。
【0025】
侵食:
ここで使用する用語“侵食”は、該医薬経口固定用量組み合わせ剤が、外部環境(例えば溶解媒体、体液など)に入れられたときに摩耗するか、小さくなるか、または分散することを意味する。崩壊とは対照的に、該医薬経口固定用量組み合わせ剤は離れることにより分散するのではなく、むしろ侵食過程が進行するにつれて時間と共に小さくなる。
【0026】
溶解速度:
ここで使用する用語“溶解”は、ここでは活性成分である固体物質が、媒体中で分子形態に分散する過程を意味する。本発明の医薬経口固定用量組み合わせ剤の活性成分の溶解速度は、液体/固体界面、温度および溶媒組成の標準化条件下、単位時間あたりで溶液に溶け始める医薬物質の量により定義される。溶解速度は、当業者に既知の標準法により測定し、薬局方USP<711>およびEP2.9.3およびJPに明記の一致させた方法を参照のこと。本発明の目的で、個々の活性成分の溶解を測定するための試験を、薬局方USP<711>に従い、pH4.5で、75rpm(回転/分)でパドル撹拌エレメントを使用して行う。溶解媒体は、好ましくは緩衝液、典型的にリン酸緩衝液、特に実施例“溶解試験”に記載のものである。緩衝液のモル濃度は好ましくは0.1Mである。
【0027】
物理的分離:
ここで使用する用語“物理的分離”は、溶解プロファイルが曲線下面積(AUC)および好ましくはまた最高血漿濃度(Cmax)について、生物学的同等性に近づくまたは到達するようにa)およびb)の自由投与量組み合わせ剤にできるだけ類似するように、物理的接触を最小化するように製剤された、両成分a)およびb)を含む医薬経口固定用量組み合わせ剤を意味する。一つの態様において、“物理的分離”は、同じ担体に互いに混合されるのではなく、分離されているように製剤された両成分a)およびb)を含む医薬経口固定用量組み合わせ剤意味する。この分離は、2成分の、特にそれらの放出による最小化を助ける。典型的に、物理的分離は、2成分a)およびb)が異なる区画、例えば層に存在するか、または異なる製剤物、例えば粒子または顆粒として存在することを意味する。2成分a)およびb)を付加的層またはコーティングによりさらに分離する必要はないが、これが場合によっては適当であり得る。一投与形態中のこの2成分a)およびb)の物理的分離は、当分野で既知の種々の手段により達成できる。
【0028】
一つの態様において、これは、各成分a)およびb)を別々の層、コーティングまたは殻、好ましくは層または殻に製剤して、例えば多または二層製剤、有核(dry-coated)(殻内のコア)錠、鋳造送達系(molded delivery system)、またはスプレーコート錠、好ましくは二層製剤または有核製剤を得ることにより達成される。かかる製剤技術の具体例は後記する。
【0029】
他の態様において、これは、各々成分a)および成分b)の異なる集団の粒子を含む粒子系(多粒子)を使用して、例えばカプセル、サシェット、多粒子を詰めたスティック包装、多粒子の圧縮により得た錠剤、および多粒子、例えば顆粒またはビーズの圧縮により得たミニタブレットを得ることにより達成され、続いてこれをカプセルに充填できる。物理的分離の他の形態は、1)成分の一方の多粒子および2)他方の成分の、多粒子、例えば顆粒またはビーズの圧縮により得た一錠、数錠またはミニタブレットを充填したカプセルである。
【0030】
層、コーティングまたは殻を施した、例えば多粒子、例えばペレット、またはミニタブレットのような上記の2つの方法の任意の組合せも考慮でき、ここで、該層、コーティングまたは殻は、成分a)およびb)の一方を含み、多粒子またはミニタブレットは成分a)およびb)の他方を含む。
【0031】
ここで使用する用語“粒子”は、サイズ、形態または形態学とは無関係に、分離した粒子、ペレット、ビーズまたは顆粒の存在により特徴付けられる物質の状態を意味する。多数の粒子が存在するとき、これを多粒子と呼ぶ。典型的に、粒子は3mm以下、好ましくは1μm〜3mmの平均サイズを有する。“平均粒子径”は、重量で少なくとも粒子の50%が、おおよそ記載の値よりも小さい粒子径を有することを意味する。粒子径は、当業者に既知の慣用の粒子径測定技術による測定する重量平均粒子径に基づき決定し得る。かかる技術は、例えば、沈降場流動分画法、光子相関分光学、光散乱、およびディスク遠心を含む。多粒子成分a)および成分b)を使用するとき、成分a)およびb)の多粒子は同じ形(例えば顆粒)および/またはサイズであってよく、または、成分の一方について一つの形(例えば粒子)およびサイズである多粒子系であり、他方の成分が異なる形(例えば顆粒)および/またはサイズの多粒子系であってもよい。
【0032】
本発明の範囲内の用語“小錠剤”は、3〜5mmの全体的なサイズの錠剤を意味する。
【0033】
本発明の範囲内の用語“ミニタブレット”は、非コーティング形態で、約2〜30mg、例えば約4〜9mg、例えば約7mgの全体的重量の小錠剤を意味する。ミニタブレットは、ここで定義する多粒子の特定の形である。それらは、他の、より小さい多粒子、例えば顆粒またはビーズからの製造を含み、ここに記載の通り製造できる。ミニタブレットは錠剤について当業者が既知の任意の形、例えば、直径約1.25〜3mmの、例えば丸型;例えば凸上面および凸下面を有する、例えば円筒直径および高さが、互いに独立して、1〜3mmである円柱(cyclindrical);または、例えば高さおよび直径がおおよそ等しく1.25〜3mmである両凸ミニタブレットの形を有し得る。
【0034】
好ましくは、多粒子は修飾放出コーティングを有する。具体的に、多粒子成分a)および成分b)の混合物を使用するとき、各多粒子は、異なる修飾放出プロファイルを提供するために、特に成分a)について、修飾放出コーティングを含む。
【0035】
生物学的同等性:
ここで使用する用語“生物学的同等性”は、次のバイオアベイラビリティに関する。ここで使用する用語“バイオアベイラビリティ”は、投与形態の投与後に全身循環が未変化に到達する活性成分の割合および量として測定される。本発明の医薬経口固定用量組み合わせ剤のバイオアベイラビリティは、対応する自由投与量組み合わせ剤のバイオアベイラビリティと同等である。試験(固定用量組み合わせ剤)製剤および参照(自由投与量組み合わせ剤)製剤を対象に経口投与し、血漿サンプルを経時的に採取する。血漿サンプルを、バルサルタンおよびアリスキレンの濃度を測定する。最高血漿濃度(Cmax)および時間曲線に対する血漿濃度下面積(AUC)を計算する。アリスキレンおよびバルサルタンのログ変換したAUC0−tlast(0時から最後の測定可能濃度サンプリング時間までのAUC)、AUC0−∞(0時から無限までのAUC)、Cmaxを、順序、処置および期間からの固定効果、および対象からの変量効果と共に、線形混合効果モデルを使用して、別々に分析する。推定値(試験製剤対参照製剤のCmaxまたはAUCの幾何平均の比)および対応する90%信頼区間を使用して、生物学的同等性を評価する。生物学的に同等である試験製品および参照製品について、AUCおよびCmax推定値両方についての90%信頼区間は0.8−1.25に入らなければならない。試験製品および参照製品の間で得られる生物学的同等性は、特に複数活性成分の組み合わせ剤について挑戦的であり、結果は先験的に予測できない。
【0036】
自由組み合わせ剤における活性成分と類似であるAUCについて言うときは常に、本発明の医薬経口固定用量組み合わせ剤のAUCが、好ましくは、複数活性成分について0.8−1.25に入らなければならない90%信頼区間を有することを意味する。
【0037】
自由組み合わせ剤における活性成分と類似であるCmaxについて言うときは常に、本発明の医薬経口固定用量組み合わせ剤のCmaxが、好ましくは、複数活性成分について0.8−1.25に入らなければならない90%信頼区間を有することを意味する。
【0038】
好ましい態様において、本発明の医薬経口固定用量組み合わせ剤は、一方または両方の活性成分、特にアリスキレンについて、AUCおよびCmax推定値が0.8〜1.3、より好ましくは0.8〜1.25、最も好ましくは0.85〜1.2の範囲内であるような放出プロファイルを有する。
【0039】
他の態様において、本発明の医薬経口固定用量組み合わせ剤は、一方または両方の活性成分、特にアリスキレンについて、AUCおよびCmaxの90%信頼区間が0.7〜1.43、より好ましくは0.7〜1.30、なお好ましくは0.75〜1.25、最も好ましくは0.8〜1.25であるような放出プロファイルを有する。
【0040】
他の態様において、本発明の医薬経口固定用量組み合わせ剤は、一方または両方の活性成分、特にアリスキレンについて、AUCおよびCmaxの90%信頼区間が0.7〜1.43、より好ましくは0.7〜1.30、なお好ましくは0.75〜1.25、最も好ましくは0.8〜1.25であるような放出プロファイルを有する。
【0041】
少なくともAUC、より好ましくはAUCとCmaxの両方が上記範囲内にあるのが好ましい。
【0042】
この観点から、本発明の医薬経口固定用量組み合わせ剤は、生物学的同等性に近づくまたは好ましくは到達する。
【0043】
本発明の好ましい態様において、成分(a)は該医薬経口固定用量組み合わせ剤の総重量に基づいて10〜45、例えば25〜35重量%の範囲の量で存在する。
【0044】
本発明の他の好ましい態様において、成分(a)は、該医薬経口固定用量組み合わせ剤の総重量に基づいて、12〜45、例えば12〜40、一つの態様において12〜35、例えば12〜25重量%の量で存在する。
【0045】
成分(a)が、医薬経口固定用量組み合わせ剤の単位あたり37.5mg〜300mgの遊離塩基の量で存在するのが好ましい。
【0046】
本発明の好ましい態様において、成分(a)は、医薬経口固定用量組み合わせ剤の単位あたり75〜300mg、例えば75〜150mgの遊離塩基、特に75、150または300mg、例えば150または300mgの量で存在するのが好ましい。
【0047】
本発明の好ましい態様において、成分(b)は、該医薬経口固定用量組み合わせ剤の総重量に基づいて8〜45、例えば10〜35、特に12〜32重量%の範囲の量で存在する。
【0048】
本発明の好ましい態様において、成分(b)は、該医薬経口固定用量組み合わせ剤の総重量に基づいて20〜40、例えば20〜30重量%の範囲の量で存在する。
【0049】
成分(b)が、単位投与形態あたり10〜640mg、例えば20〜320mg、より好ましくは40mg〜320mg、例えば180〜320mgの範囲、特に80、160または320mg、例えば160または320mgの量で存在するのが好ましい。
【0050】
成分(a)対成分(b)の重量比は、好ましくは(a)および(b)の遊離酸に基づいて1:0.001〜1:5、より好ましくは1:0.5〜1:4または1:0.03〜1:0.07の範囲である。最も好ましくは、重量比は1:1.0〜1.1;1:2.1〜2.2;または1:0.005〜0.006である。最も好ましくは、成分(a)および(b)を、(a)の遊離塩基および(b)の遊離酸に基づき、75/80mg、75/160mg、150/80mg、150/160mg、300/320mg、300/160mgまたは150/320mg、最も好ましくは150/160mg、300/320mg、300/160mgまたは150/320mg of(a)/(b)の量で使用する。一つの態様において、300mgの(a)および/または320mgの(b)、最も好ましくは300/320mgの(a)および(b)を用いる高薬剤負荷を使用するのが好ましい。
【0051】
成分(a)についてヘミフマル酸塩のような塩を使用するとき、この比率は合い応じて調節する。次の比率について、数値は成分(a)に関し、故に遊離塩基または塩、特にヘミフマル酸塩に関する。
【0052】
用語“有効量”または“治療的有効量”は、処置する状態の進行を止めるかまたは遅延させるか、または他の方法でその状態を完全にまたは部分的に治癒するか、軽減的に作用する、活性成分または活性剤の量を意味する。ここで使用する用語“薬剤”、“活性物質”、“活性成分”、“活性剤”などは、特記しない限り、成分a)およびb)に関する。成分a)またはb)の各々を“薬剤”、“活性物質”、“活性成分”、“活性剤”などと呼ぶことができる。
【0053】
上記および下記において、用語“アリスキレン”は、具体的な定義がない限り、遊離塩基およびその塩、特にヘミフマル酸塩、硫酸水素塩、オロト酸塩または硝酸塩、最も好ましくはそのヘミフマル酸塩のようなその薬学的に許容される塩の両方として理解されるべきである。
【0054】
アリスキレン、またはその薬学的に許容される塩は、例えば、それ自体既知の方法で、特にEP678503Aの、例えば、実施例83に記載された通り製造できる。
【0055】
下記において、用語“バルサルタン”は、具体的な定義がない限り、遊離酸およびその塩、特に下記のその薬学的に許容される塩の両方として理解されるべきである。
【0056】
バルサルタン、またはその薬学的に許容される塩は、例えば、それ自体既知の方法で製造できる。好ましい塩形は、酸付加塩を含む。少なくとも1個の酸基(例えば、COOHまたは5−テトラゾリル)を有する化合物は塩基とも塩を形成できる。適当な塩基との塩は、例えば、金属塩、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはマグネシウム塩、またはアンモニアまたは有機アミン、例えばモルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノ−、ジ−またはトリ−低級アルキルアミン、例えば、エチル−、tert−ブチル−、ジエチル−、ジイソプロピル−、トリエチル−、トリブチル−またはジメチルプロピルアミン、またはモノ−、ジ−またはトリヒドロキシ低級アルキルアミン、例えば、モノ−、ジ−またはトリ−エタノールアミンとの塩である。対応する分子内塩もさらに形成され得る。医薬使用には不適であるが、例えば、遊離化合物Iまたはその薬学的に許容される塩の単離または精製に使用できる塩も含む。よりさらに好ましい塩は、例えば、非晶形の一ナトリウム塩;バルサルタンの非晶形または結晶形、特にその水和物形の二ナトリウム塩;バルサルタンの非晶形の一カリウム塩;バルサルタンの非晶形または結晶形、特にその水和物形の二カリウム塩;バルサルタンの結晶形、特にその水和物形、主として四水和物のカルシウム塩;バルサルタンの結晶形、特にその水和物形、主に六水和物のマグネシウム塩;バルサルタンの結晶形、特に水和物形のカルシウム/マグネシウム混合塩;バルサルタンの結晶形、特に水和物形のビス−ジエチルアンモニウム塩;バルサルタンの結晶形、特に水和物形のビス−ジプロピルアンモニウム塩;バルサルタンの結晶形、特にその水和物形、主にヘミ水和物のビス−ジブチルアンモニウム塩;バルサルタンの非晶形の一L−アルギニン塩;バルサルタンの非晶形のビス−L−アルギニン塩;バルサルタンの非晶形の一L−リシン塩;バルサルタンの非晶形のビス−L−リシン塩から選択される。
最も好ましくは、バルサルタンを遊離酸として使用する。
【0057】
本発明の医薬経口固定用量組み合わせ剤は、所望の溶解プロファイルを示すために適切に選択する必要がある。典型的に、該医薬経口固定用量組み合わせ剤は固体投与形態である。
【0058】
本発明の医薬経口固定用量組み合わせ剤は、好ましくは、両成分a)およびb)、より好ましくは成分a)の修飾放出プロファイルと見なされる放出プロファイルを示す。本発明の医薬経口固定用量組み合わせ剤は、好ましくは成分b)の即時放出プロファイルと見なされる放出プロファイルを示す。本発明の好ましい態様において、該医薬経口固定用量組み合わせ剤の2成分の放出プロファイルは非同期である。一つの態様において、両成分とも、非同期放出プロファイルで連続的に放出され、それにより成分の一方、好ましくは成分a)が、より遅い連続速度で放出されるように修飾される。他の態様において、成分の一方、好ましくは成分a)が、成分b)と比較して成分a)のタイムラグがもたらされるように、時間遅延を伴い放出される。
【0059】
好ましくは、本発明の医薬経口固定用量組み合わせ剤は、成分a)およびb)が物理的に分離されるような方法で設計される。本発明に従う必要な溶解プロファイルを満たすことができる医薬経口固定用量組み合わせ剤のための典型的技術および製剤原則は、多粒子系を含む。
【0060】
故に、本発明は、特にここで定義の多粒子を使用することによる、多粒子系の形の医薬経口固定用量組み合わせ剤に関する。かかる多粒子系は、典型的に、それぞれ成分a)および成分b)の異なる集団の粒子を含む、多粒子の混合物を含み、これは各薬剤含有粒子について異なる放出プロファイルを提供し、例えば成分a)含有粒子について修飾放出コーティングを含む。
【0061】
成分aの放出を持続させる多粒子単位は、コーティングされていないマトリックス系、コーティングされたコアまたはコーティングされたマトリックス系を含む。マトリックス、コーティングまたはコーティングされたマトリックス系は、薬剤の連続的または非連続的放出を提供し得る。
【0062】
本発明の組み合わせ剤が錠剤またはカプセル剤の形であるとき、成分a)および成分b)の異なる集団の粒子を含む多粒子、例えば修飾放出コーティングされた多粒子を放出するように崩壊または溶解できる錠剤またはカプセル剤が好ましい。錠剤またはカプセル剤は、口腔、胃または小腸で崩壊または溶解し得る。錠剤またはカプセル剤は、修飾放出特性で多粒子を放出し得る。好ましくは本発明の組成物は、成分a)に関して修飾放出コーティングされた多粒子形態である。
【0063】
本発明の組み合わせ剤がミニタブレットの形であるとき、それは好ましくはカプセルまたはアルミニウムスティック包装中に充填され、それは、同じ製剤の投与用量の高い可変性を提供し得る。ミニタブレットも、好ましくはまたカプセルまたはスティック包装またはサシェットのいずれかに充填する。
【0064】
最も好ましくは、本発明の組み合わせ剤は、それぞれ成分a)および成分b)の異なる集団の粒子を含む錠剤の形である。
【0065】
本発明に従う修飾放出を伴う組成物は、好都合には、体内、好ましくは腸での成分a)および/または成分b)の持続した、連続的な、徐々の、または延長した放出を提供する成分、例えば修飾放出コーティング、例えば拡散コーティングでコートされていてよい。
【0066】
かかる修飾放出コーティング成分の例は、例えばセルロース誘導体;例えばエチルセルロース、例えばFMCから入手可能なAquacoat(登録商標) ECD;Colorconから入手可能なSurelease、Dowから入手可能なエチルセルロースNグレード、アクリル酸コポリマー、好ましくは4級アンモニウム基、例えばトリ(C1−4アルキル)−アンモニウムメチルメタクリレート基、例えばトリメチルアンモニウムメチルメタクリレート基を含むアクリル酸およびメタクリル酸コポリマー、例えば種々の比率の4級アンモニウム基を有するアクリル酸/メタクリル酸−エステル20:1 RL/40:1 RS、例えばRoehm Pharmaから商品名Eudragit RL、Eudragit RSまたはEudragit NEの下に商業的に入手可能なポリマーまたはコポリマー;および/またはその混合物である。重量で約75:25、好ましくは90:10、好ましくは95:5のEudragit RS:Eudragit RLが特に好ましい。
【0067】
修飾放出コーティング成分は水性分散液中、例えば30%水性分散液として、または有機溶液、例えば12.5%有機溶液であってよい。例えば修飾放出コーティング成分は、30%水性分散液または12.5%有機溶液のEudragit RLおよびEudragit RSの混合物である。
【0068】
修飾放出コーティング成分の量は、コーティングの総重量に基づき約30〜約100重量%、より好ましくは約50〜約100重量%であり得る。
【0069】
フィルム形成ポリマー、例えば拡散コーティングは、フィルムコート組成物の総重量の好ましくは5〜95重量%、より好ましくは40−90重量%、さらに好ましくは50−85重量%を成す。
【0070】
当業者は、本発明の組成物に包含される成分a)および/またはb)の溶解プロファイルを必要性に応じて調節するために、修飾放出コーティングポリマーの性質および量を調節する。
【0071】
修飾放出コーティングは、さらに1種以上のさらなる成分または賦形剤、例えば後記の、例えば孔形成剤、可塑剤、粘着防止剤、湿潤剤を含み得る。
【0072】
適当な孔形成剤はpH非依存的孔形成剤、例えばHPMC、HPCまたはpH依存的である孔形成剤であってよい。適当なpH依存的孔形成剤は腸溶性孔形成剤、例えば腸溶性コーティングポリマー類であり得る。これらの腸溶性ポリマー類はまたフィルム形成剤としても使用でき、フィルム形成剤についての上記章に包含される。
【0073】
ここで定義の、腸溶性孔形成剤は、pH>5、例えば腸液の環境への薬剤の放出を提供し、酸性環境、例えば胃で薬剤放出を抑制する孔形成剤である。本発明の腸溶性孔形成剤の例は、例えばShinEtsuからの、HPMC−フタレート(HPMC−P)、例えばHP50、HP55;例えばShinEtsuからのHPMC−アセテート−スクシネート(HPMC−AS)、例えばAqoat LFまたはAqoat MF;メチルアクリル酸−エチルアクリル酸コポリマー、例えばメタクリル酸コポリマー、例えばRoehm PharmaからのEudragit L、S、L100-55および/またはL30D、ColorconからのAcryl-Eze、BASFからのKollicoat MAE 30 DP;セルロースアセテートフタレート、例えばFMC BiopolymerからのAquacoat CPD、またはEastman Kodakからのポリマー;およびポリビニルアセテートフタレート、例えばSureteric、Colorcon、またはこれらの任意の混合物である。好ましくは、有機コーティング溶液中で、HPMC-PおよびHPMC-ASをエチルセルロースまたは4級アンモニウム基、例えばトリ(C1−4アルキル)−アンモニウムメチルメタクリレート基を含むアクリル酸およびメタクリル酸コポリマー、例えばEudragit RSを組み合わせてよく、水に分散したHPMC-ASもまた水性エチルセルロース分散液、例えばAquacoat ECD、FMCと組み合わせてもよい。
【0074】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート類は、典型的に20,000〜100,000ダルトン、例えば80,000〜130,000ダルトンの分子量を有し、例えば5〜10%のヒドロキシプロピル含量、18〜24%のメトキシ含量および21〜35%のフタリル含量である。適当なヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート類の例は、6−10%のヒドロキシプロピル含量、20−24%のメトキシ含量、21−27%のフタリル含量、約84,000ダルトンの分子量の商品名HP50の下に知られ、日本国、東京の信越化学から入手可能な市販製品、およびそれぞれ5−9%、18−22%および27−35%のヒドロキシプロピル含量、メトキシ含量、およびフタリル含量、および78,000ダルトンの分子量の商品名HP55の下に知られ、同じ供給者から入手可能な市販製品である。
【0075】
使用し得る適当なヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートの例は、商品名Aqoat LFまたはAqoat MFの下に知られ、例えば、日本国、東京の信越化学から商業的に入手可能である。
【0076】
本発明の組成物は、さらに、例えば水可溶性孔を与えるもの、例えばポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、セルロース誘導体、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、または、例えば酸性媒体に、例えばアンモニウム塩として可溶性であるもの、アクリル酸またはメタクリル酸エステル、例えばEudragit EまたはEudragit EPO;ポリアクリル酸;水中で膨張するもの、例えばEudragit RS、RL、NE 30D、アルカリ性媒体に可溶性のもの、すなわち腸溶性コーティングポリマー、例えばEudragit L、S、L100-55またはその任意の混合物であるpH非依存的孔形成剤を含んでよい。HPMCはまた、その水性溶液の粘性のために濃化剤としても働く。本発明によって、孔形成剤は親水性試薬、例えば水可溶性可塑剤、例えばPEG、トリアセチン、トリエチルシトレート、または親水性二酸化ケイ素、例えばAerosil 200またはSyloid 244 FPであり得る。
【0077】
本発明の組成物の修飾放出コーティングは、修飾放出コーティングの重量に基づき、0〜70重量%、より好ましくは5〜50重量%、最も好ましくは5〜25重量%の孔形成剤を含み得る。
【0078】
本発明の適当な可塑剤は例えば、トリアセチン、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、ジブチルセバケート、ジエチルセバケート、ポリエチレングリコール400、3000、4000または6000、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレートおよびジエチルフタレート、またはそれらの混合物を含む。可塑剤は、一般に、ポリマーのガラス遷移温度を低下させ、その柔軟性および靭性を上昇させ、その透過性を変えるようにコーティングポリマーを膨潤させる。可塑剤が親水性、例えばポリエチレングリコールであるとき、コーティングの水透過性は一般に上昇する。可塑剤が疎水性、例えばジエチルフタレートまたはジブチルセバケートであるとき、コーティングの水透過性は一般に低下する。
【0079】
可塑剤は、好ましくはコーティングの総重量に基づき0〜50重量%、好ましくは2〜35重量%、より好ましくは5−25重量%の量で存在する。
【0080】
粘着防止剤の例は、二酸化ケイ素、例えばコロイド状二酸化ケイ素、合成非晶形ケイ酸、例えばSyloid 244 FP、タルク、Aerosil 200またはグリセリンモノステアレートである。好ましくは粘着防止剤はAerosil 200およびSyloid 244 FPである。粘着防止剤が親水性、例えばAerosil 200またはSyloid 244 FPであるならば、コーティングの水透過性/膨張(および故にまた放出放出)は一般に上昇する。粘着防止剤が疎水性、例えばタルクまたはステアリン酸グリセロールであるとき、コーティングの水透過性は一般に低下する。粘着防止剤は、所望によりコーティング製剤に包含され、薬剤コアの粘着を避け、その高い分離を保証する。
【0081】
好ましくは、粘着防止剤は、コーティングの総重量に基づき、0〜50重量%、より好ましくは5〜25重量%の量で存在する。
【0082】
適当な湿潤剤は、例えばラウリル硫酸ナトリウム、セトマクロゴール、蝋、ステアリン酸グリセロール、ソルビタンエステルおよびポロキサマーを含む。湿潤剤は、界面張力を減らし、スプレー溶液または懸濁液と処置表面の接触を改善するその特性のために、所望によりコーティング製剤に包含される。
【0083】
好ましくは、湿潤剤は、コーティングの乾燥重量に基づき、0〜20重量%、より好ましくは1〜5重量%の量で存在する。
【0084】
本発明の組成物は、さらに腸溶性コーティングされていてよい。腸溶性コーティングされたまたはコーティングは、薬学的に許容されるコーティングが、胃における活性剤の放出を妨げ、腸管上部での放出を可能にすることを意味する。腸溶性コーティングは、修飾放出コーティングの上にオーバーコートとして添加し得る。
【0085】
本発明の組成物のための好ましい腸溶性コーティングは、例えばセルロースアセテートフタレート;セルロースアセテートトリメリテート;メタクリル酸コポリマー、例えば少なくとも40%メチルアクリル酸を含む、メチルアクリル酸およびそのエステル由来のコポリマー;ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート;ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートまたはポリビニルアセテートフタレートから選択されるフィルム形成剤を含む。
【0086】
典型的セルロースアセテートフタレートは、17−26%のアセチル含量および30−40%のフタレート含量と約45−90cPの粘性を有する。適当なセルロースアセテートフタレートの例は、市販製品CAP(Eastman Kodak, Rochester N.Y., USAまたはFMC BiopolymerからのAquacoat CPD)である。
【0087】
典型的セルロースアセテートトリメリテートは、17−26%のアセチル含量、25−35%のトリメチリチル含量と約15−20cSの粘性を有する。適当なセルロースアセテートトリメリテートの例は、市販製品CAT(Eastman Kodak Company, USA)である。
【0088】
メタクリル酸コポリマーは、好ましくは、少なくとも40%メチルアクリル酸を含むメチルアクリル酸およびそのエステル由来のコポリマー、より好ましくは、例えば約1:1のメチルアクリレートおよびメチルまたはエチルメチルアクリレートの比に基づいて100,000ダルトンを超える分子量を有するものである。典型的製品は、Rohm GmbH, Darmstadt, Germanyから市販されているEudragit L、例えばL 100-55、L30 DまたはColorconからのAcryl-Eze、BASFからのKollicoat MAE 30 DPを含む。
【0089】
HPMC−フタレートおよびHPMC−アセテートスクシネートは上記の通りである。適当なHPMC−フタレートの例は、HP50またはHP55である。使用し得る適当なヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートの例は、商品名Aqoat LFまたはAqoat MF(両方ともShin-Etsu)の下に既知のものである。
【0090】
腸溶性コーティングは、さらなる成分、例えば可塑剤、例えばトリアセチン、トリエチルシトレート、ジエチルセバケート、ポリエチレングリコール3000、4000または6000、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、またはジエチルフタレート、および/または粘着防止剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素、合成非晶形ケイ酸、例えばSyloid 244 FP、タルク、またはグリセリンモノステアレートをさらに含み得る。コーティングは、特に水性分散体で、懸濁した賦形剤、例えばHPMC 3cpsまたはHPMC 6 cpsの沈降を避けるために1種以上の濃化剤をさらに含み得る。
【0091】
好ましくは、腸溶性コーティングは、フィルム形成剤、例えばセルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、メタクリル酸コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ポリビニルアセテートフタレートをさらに含み得る。フィルム形成剤の量は、腸溶性コーティングの総重量に基づき、50〜95重量%、より好ましくは60〜80重量%である。可塑剤および/または粘着防止剤は、腸溶性コーティングに存在するならば、例えば修飾放出コーティングについて上記の通りであり、例えば修飾放出コーティングについて上記の量であり得る。
【0092】
本発明によって、医薬物質は、好ましくは本発明の組成物中に、コア(すなわちコーティングを除く)の総重量に基づき、1〜99重量%の量で存在する。特に、本発明の組成物が、小錠剤、ミニタブレット、ペレット、ビーズまたは顆粒の形であるとき、医薬物質は、好ましくは、コア(すなわちコーティングを除く)の総重量に基づき、1〜95重量%、より好ましくは20〜90%、最も好ましくは30〜80重量%の量で存在する。本発明の組成物が粒子、または微粒子の形であるとき、医薬物質は、好ましくは、医薬物質は、好ましくは、コア(すなわちコーティングを除く)の総重量に基づき、1〜95重量%、より好ましくは50−95%、最も好ましくは70−90重量%の量で存在する。
【0093】
本発明の組成物は、例えば上記の通り、1種以上の賦形剤または希釈剤を含み得る。
【0094】
本発明に従う成分a)および/または成分b)の多粒子の好ましい群は、約1000μm未満、好ましくは約10〜800μm、より好ましくは30〜500μmの有効平均粒子径を有するものである。薬剤微粒子を、好ましくは、例えば噴霧乾燥、流動床乾燥または沈殿技術により、1種以上の薬学的に許容される賦形剤を合わせて、薬剤賦形剤マトリックスを形成させ、例えばエチルセルロースまたはメタクリル酸コポリマーおよび安定化剤、例えばコロイド状シリカと合わせて、微粒子薬剤コアを形成させる。例えば1〜200ミクロン(μm)のサイズ範囲の結晶粒子もまた、医薬物質が僅かに可溶性の何らかの流体、例えば有機溶媒、例えばシクロヘキサン中の未製粉結晶薬剤結晶の懸濁液の高圧均質化の手段によっても製造し得る。
【0095】
これらの微粒子薬剤懸濁液を、直接ポリマーの助けによりコートしてよく、またはポリマーマトリックスに、例えばポリマーを添加し、それを均質化懸濁液に溶解し、続いて噴霧乾燥するかまたは噴霧重層してもよい。好ましくは使用するポリマーは、エチルセルロースまたは、4級アンモニウム基を含むアクリル酸およびメタクリル酸コポリマーである。
【0096】
沈殿技術はまた、例えばコーティング物質の液体相をポリマー溶液から分離し、その相を懸濁コア粒子の周りの均一層として覆うための、コアセルベーション技術も含む。得られる微粒子を濾過または遠心により集め、適当な溶媒で洗浄し、続いて標準技術、例えば噴霧乾燥または流動床乾燥により乾燥させてよい。
【0097】
これらの薬剤粒子を、ここに記載の通り、修飾放出コーティング成分、および所望により安定化剤、例えばコロイド状シリカでさらにコーティングしてよい。修飾放出コーティングは、例えば流動床コーティングおよび/または造粒または沈殿技術により調製し得る。適当なコーティング技術は、当業者が選択できる。
【0098】
得られるコーティングされた薬剤粒子を、所望により、例えば下記の通り希釈剤、例えばラクトース、マンニトールまたはスクロース、例えば下記の通り平滑剤、例えばステアリン酸マグネシウムと合わせ、カプセルまたはサシェットに分配するかまたは錠剤に圧縮することにより合わせ得る。
【0099】
他の態様において、成分a)および/または成分b)は、所望により結合剤と、または所望により希釈剤および結合剤と、例えば後記の通り、合わせ、例えば顆粒薬剤コアを形成させるための高または低剪断造粒または流動床造粒のような技術を使用して、顆粒を形作る。得られた顆粒を、次いで、例えばここに記載の修飾放出コーティング成分でコーティングし、例えばカプセルまたはサシェットに分配する。顆粒薬剤コアは、典型的に0.05〜2mmまたは好ましくは0.1〜2mm、またはより好ましくは0.15〜1.5mmの直径の平均幅を有する。コアに存在する医薬物質の量は、顆粒薬剤コア(すなわちコーティングを除く)の総重量に基づき、1〜95%または好ましくは20〜90%、またはより好ましくは50〜90重量%であり得る。
【0100】
結晶、非晶形粒子またはそれらの混合物の形の薬剤の薬剤粒子も、続くコーティングに使用し得る。
【0101】
他の態様において、成分a)および/または成分b)を、所望により1種以上の薬学的に許容される押出助剤、例えば微結晶性セルロース、アミロースアルファ化デンプンなど、例えばここに記載の結合剤、または例えばここに記載の希釈剤と合わせ、例えばペレット薬剤コアを形成するための押出球形化、直接ペレット化/高または低剪断造粒、流動床造粒または噴霧乾燥/融解コンシーリング(melt concealing)のような技術を使用して、ペレットに形作る。得られたペレットは、例えばここに記載の修飾放出コーティング成分でコーティングし、カプセルまたはサシェットに分配し得る。ペレット薬剤コアは、典型的に0.2〜2mm、好ましくは0.5〜1.4mmの直径の幅を有する。コアに存在する医薬物質の量は、顆粒薬剤コア(すなわちコーティングを除く)の総重量に基づき、1〜95%または好ましくは20〜90%、またはより好ましくは50〜90重量%である。
【0102】
他の態様において、所望により薬学的に許容される結合剤と組み合わせた薬剤を薬学的に許容される種、典型的にスクロース、ラクトース、マンニトール、デンプン、微結晶性セルロースまたはこれらの任意の組み合わせの粒子(例えば球体)の表面に重層し、ビーズ薬剤コアを形成し得る。かかる重層は、溶液重層または粉末重層であり得る。かかる薬学的に許容される種は、好ましくは18−20メッシュ、25−30メッシュまたは35−40メッシュのノンパレイユ(non-pareil)糖/デンプン球体、最も好ましくは25−30メッシュのノンパレイユ糖デンプン球体または100−1000μm、より好ましくは100−200および200−355μmのサイズ範囲のCellets、すなわち、例えばPharmatrans Sanaq AGからの微結晶性セルロースビーズである。得られたビーズを、例えばここに記載の修飾放出コーティング成分でコーティングし、カプセルまたはサシェットに分配するか、またはさらに他の薬剤の重層により処理してよい。ビーズ薬剤コアは、典型的に0.2〜2mm、好ましくは0.5〜1.4mmの直径の幅を有する。コアに存在する医薬物質の量は、顆粒薬剤コア(すなわちコーティングを除く)の総重量に基づき、1〜95%または好ましくは20〜90%、またはより好ましくは50〜90重量%である。
【0103】
さらなる態様において、コーティングされた薬剤粒子またはコーティングされた顆粒またはコーティングされたペレット薬剤コアを、所望により薬学的に許容される成分、例えばここに記載の、当業者に既知の、例えば希釈剤、結合剤、平滑剤と合わせて、胃で崩壊し、コーティングされた薬剤粒子、またはコーティングされたペレットまたはコーティングされた顆粒を放出する錠剤およびまたは小錠剤を形成し得る。
【0104】
成分a)および/または成分b)はミニタブレットまたは小錠剤の製造前に造粒してよい。
この顆粒は、薬剤、すなわち成分a)および/または成分b)、結合剤および増量剤を含む。この顆粒を、所望によりさらなる増量剤、結合剤、崩壊剤および平滑剤と共に錠剤/ミニタブレットに圧縮してよい。
【0105】
増量剤、結合剤、崩壊剤および平滑剤の例は下記の通りである。
適当な増量剤は、微結晶性セルロース(例えば、Avicel PH 101、PH 102、PH105)、マンニトール、スクロースまたは他の糖類または糖誘導体、リン酸水素カルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびこれらの組み合わせ、好ましくは、微結晶性セルロース、例えばAvicel PH102、または登録商標AVICEL、FILTRAK、HEWETENまたはPHARMACELの下に入手可能な類似製品を含み、これらに限定されない。
【0106】
適当な結合剤は、例えば、PVP K 30またはPVP90のようなポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール類(PEG)、例えば、PEG 4000、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(両方とも低粘性、例えば粘性グレード3または6cps)、アルファ化デンプンおよびそれらの組み合わせを含み、これらに限定されない。
【0107】
適当な平滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムまたはケイ酸カルシウム、ステアリン酸、CUTINA、PEG 4000-8000、タルクおよびそれらの組み合わせを含み、これらに限定されず、好ましくはステアリン酸マグネシウムである。
【0108】
適当な崩壊剤は、カルボキシメチルセルロースカルシウム(CMC-Ca)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、架橋PVP(例えばCROSPOVIDONE、POLYPLASDONEまたはKOLLIDON XL)、アルギン酸、アルギン酸ナトリウムおよびグアーガム、最も好ましくは架橋PVP(CROSPOVIDONE)、架橋CMC(Ac-Di-Sol)、カルボキシメチルデンプン−Na(PlRIMOJELおよびEXPLOTAB)を含み、これらに限定されない。最も好ましい崩壊剤は、架橋PVP(PVPPXL)である。
【0109】
適当な流動促進剤は、コロイド状二酸化ケイ素(例えば、Aerosil 200)、三ケイ酸マグネシウム、粉末セルロース、デンプン、タルクおよびこれらの組み合わせを含み、これらに限定されない。
【0110】
本発明の組成物は、好ましくは、コーティングされていない錠剤組成の総重量に基づき、0〜50重量%、より好ましくは3〜30重量%、最も好ましくは5〜15重量%の量で増量剤を含む。
【0111】
好ましくは本発明の組成物は、コーティングされていない組成の総重量に基づき、0〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%、最も好ましくは3〜15重量%の量の結合剤を含む。
【0112】
本発明の組成物は、好ましくは、コーティングされていない組成の総重量に基づき、20重量%まで、より好ましくは5〜15%の量の崩壊剤を含む。
【0113】
本発明の組成物は、好ましくは、コーティングされていない組成の総重量に基づき、5重量%まで、より好ましくは0.1〜2%、最も好ましくは0.2〜0.5%の量の流動促進剤を含む。
【0114】
本発明の組成物は、好ましくは、コーティングされていない組成の総重量に基づき、5重量%まで、より好ましくは0.5〜2%の量の平滑剤を含む。
【0115】
本発明の組成物の製造および/またはコーティングに使用し得る方法は、当分野で慣用的であるかまたは知られ、または、例えばL. Lachman et al. The Theory and Practice of Industrial Pharmacy, 3rd Ed, 1986, H. Sucker et al, Pharmazeutische Technologie, Thieme, 1991, Hager's Handbuch der pharmazeutischen Praxis, 4th Ed. (Springer Verlag, 1971)およびRemington's Pharmaceutical Sciences, 13th Ed., (Mack Publ., Co., 1970)またはそれ以後の版に記載される方法に基づき得る。ミニタブレットは、例えば標準回転打錠機で製造し得る。
【0116】
本発明に従い得られた製剤は次の利点を示す:
・ モノリシック錠剤と比較して、生物学的等価に近づいたまたは到達した製剤が達成される
・ 十分な硬度、破砕に対する抵抗性、崩壊時間などを有する薬学的経口固定投与量組み合わせ剤の製剤が可能である;
・ 医薬物質の粘着傾向および不十分な流動が最小限まで減らされる;
・ 堅牢な製造法が達成される;
・ 再現性をもたらす製剤および工程のスケールアップが達成される;および
・ 合理的な貯蔵寿命を達成するための十分な安定性が達成される。
【0117】
本発明は、同様に、上記の薬学的経口固定投与量組み合わせ剤の製造方法に関する。かかる薬学的経口固定投与量組み合わせ剤は、上記の適当量の複数成分を練り上げ(working up)、単位薬学的経口固定投与量組み合わせ剤を形成させる方法に関する。
【0118】
本発明の薬学的経口固定投与量組み合わせ剤は、収縮期または拡張期のいずれかまたは両方の血圧低下に有用である。本発明が有用な状態は、高血圧(悪性、本態性、腎血管性、糖尿病性、孤立性収縮期、または他の二次性のいずれであれ)、鬱血性心不全、狭心症(安定型であれ不安定型であれ)、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症(artherosclerosis)、糖尿病性腎症、糖尿病性心筋症、腎不全、末梢血管疾患、左室肥大、認知機能不全(例えばアルツハイマー)および卒中、頭痛および慢性心不全を含み、これらに限定されない。
【0119】
本発明は、同様に、高血圧(悪性、本態性、腎血管性、糖尿病性、孤立性収縮期、または他の二次性のいずれであれ)、鬱血性心不全、狭心症(安定型であれ不安定型であれ)、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症(artherosclerosis)、糖尿病性腎症、糖尿病性心筋症、腎不全、末梢血管疾患、左室肥大、認知機能不全、例えば、アルツハイマー、卒中、頭痛および慢性心不全の処置方法であって、かかる処置を必要とするヒト患者を含む動物に、治療的に有効な本発明の薬学的経口固定投与量組み合わせ剤を投与することを含む、方法に関する。
【0120】
本発明は、同様に、高血圧(悪性、本態性、腎血管性、糖尿病性、孤立性収縮期、または他の二次性のいずれであれ)、鬱血性心不全、狭心症(安定型であれ不安定型であれ)、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症(artherosclerosis)、糖尿病性腎症、糖尿病性心筋症、腎不全、末梢血管疾患、左室肥大、認知機能不全、例えば、アルツハイマー、卒中、頭痛および慢性心不全の処置用医薬の製造における、本発明の薬学的経口固定投与量組み合わせ剤の使用に関する。
【0121】
本発明は、同様に、本発明の薬学的経口固定投与量組み合わせ剤を含む、高血圧(悪性、本態性、腎血管性、糖尿病性、孤立性収縮期、または他の二次性のいずれであれ)、鬱血性心不全、狭心症(安定型であれ不安定型であれ)、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症(artherosclerosis)、糖尿病性腎症、糖尿病性心筋症、腎不全、末梢血管疾患、左室肥大、認知機能不全、例えば、アルツハイマー、卒中、頭痛および慢性心不全の処置用医薬組成物に関する。
【0122】
最終的に、投与すべき活性剤および特定の製剤の正確な投与量は、多くの因子、例えば、処置する状態、望む処置期間および活性剤の放出速度による。例えば、必要な活性剤の量およびその放出速度は、どの程度長く血漿中の特定の活性剤濃度が治療効果のために許容されるレベルで残るかを測定する、インビトロまたはインビボ技術に基づき決定できる。
【0123】
上記は、本発明を、その好ましい態様を含み、十分に開示する。具体的にここに開示した態様の修飾および改善は、添付の特許請求の範囲の範囲内である。さらなる労作なしで、当業者は、前記を使用し、本発明をその完全な程度まで利用できると確信する。故に、ここに記載の実施例は単なる説明として解釈すべきであり、本発明の範囲をいかなる方法でも限定しない。
【実施例】
【0124】
実施例1:薬剤製品
【表1】

300mg塩基に対応
** 処理中に除去
*** 添加した正確な量は、正しい量(表示請求(label claim))の薬剤が錠剤に存在することを確実にするために、ペレットの活性医薬成分の内容量のアッセイに基づく。示される量は、含量についてのアッセイが100%であると仮定する
**** 微結晶性セルロースは、887.00mgのペレットおよび微結晶性セルロースの総量を維持するために可変量のペレットを補う
***** コーティングプレミックスは、1種以上の酸化鉄および/または二酸化チタンを色素として含む市販品(Opadry, Colorcon Ltd., UK)である。個々の成分は、医薬および/または国際基準に合う。
【0125】
製造方法は二つの部分に分けることができる。最初の部分は、2種の医薬中間体、アリスキレンでのペレットコーティングおよびバルサルタンからのペレットの製造である。第2の工程は、2種の中間体の他の打錠賦形剤との混合錠剤コアの圧縮および続くこれらのコアのフィルムコーティングである。
【0126】
【表2】

1.105の塩計数。医薬物質の理論的重量は乾燥物質(100%)および100%アッセイ値に基づく
** コーティング工程中の損失を補うため(5)%過多量を含む
*** 処理中に除去
【0127】
【表3】

コーティング工程中の損失を補うため(5)%過多量を含む
** 処理中に除去
【0128】
【表4】

コーティング工程中の損失を補うため(5)%過多量を含む
** 処理中に除去
【0129】
【表5】

過剰量で製造し、実際の量を報告
**処理中に除去
【0130】
製造方法
アリスキレンペレット
1. 適当な流動床コーターに微結晶性セルロースCelletsを充填。
2. 容器に無水エタノールを充填することによりコーティング液を調製。溶解するまで撹拌しながら、続いてエチルセルロースおよび次いでヘミフマル酸アリスキレンを添加。
3. 工程2で製造したコート溶液で予め加熱したCelletsを噴霧コーティング、その後乾燥工程。これらのコーティングされたCelletsを篩い、再び乾燥させる(アリスキレン一層ペレット)。
4. 容器に無水エタノールを充填することによりコーティング液を調製。溶解するまで撹拌しながら、続いてエチルセルロースおよび次いでヘミフマル酸アリスキレンを添加。
5. 適当な流動床コーターにアリスキレン一層ペレット(工程3)を充填。
6. 予め加熱したアリスキレン一層ペレットを工程4で製造したコーティング溶液で噴霧コーティング、その後乾燥工程。これらのコーティングされたペレットを篩い、再び乾燥させる(アリスキレン二層ペレット)。
工程4〜6を3〜4回繰り返してよい。
7. 容器に無水エタノールを充填することによりコーティング液を調製。溶解するまで撹拌しながら、続いてエチルセルロースおよび次いでヒドロキシプロピルセルロースを添加。
8. 適当な流動床コーターにアリスキレン二層ペレット(工程6)を充填。
9. 予め加熱したアリスキレン二層ペレットを工程7で製造したコーティング溶液で噴霧コーティング、その後乾燥工程。これらのコーティングされたペレットを篩い、再び乾燥させる。
工程7〜9を、先のコーティング工程の各バッチをコーティングするために繰り返してよい。
10. 適当なブレンダーを使用してサブバッチを混合。
【0131】
バルサルタンペレット
1. 適当な造粒機に微結晶性セルロース、CROSPOVIDONEおよびバルサルタンを充填し、混合。
2. 工程1からの混合物を水を噴霧しながら造粒。
3. 工程2からの顆粒を適当な流動床コーターに移し、適当な粒子径に到達するまで造粒。
4. 工程3からのペレットを乾燥させ、続いて篩う。
工程1〜4を繰り返してよい。
5. 適当なブレンダーを使用してサブバッチを混合。
【0132】
圧縮およびコーティング
1. 十分量(活性成分含量のアッセイに基づく)のアリスキレンペレットおよびバルサルタンペレットを適当なブレンダーに充填。
2. 予め篩った微結晶性セルロース、CROSPOVIDONEおよびコロイド状無水シリコーンを添加。
3. 工程1および2からの成分を混合。
4. 予め篩ったステアリン酸マグネシウムを添加し、混合を継続。
5. 適当な打錠機を使用して最終混合物を圧縮し、錠剤コアを得る。
6. 市販のコーティングプレミックスに滅菌水を添加して水性コーティング懸濁液を製造し、錠剤を適当なフィルムコーターを使用してフィルムコーティング。
【0133】
アリスキレンペレットおよびバルサルタンペレットは医薬中間体であり、装置設定のモニタリングおよび製造工程制御により制御する。各中間体の医薬物質含量の分析的決定の結果を使用して、最終フィルムコーティング錠における活性成分の正確な量を確実にするために錠剤マトリックスに添加すべき中間体の正確な量を計算する。
【0134】
次の結果は、製品の質を述べる:
【表6】

【表7】

pH4.5での溶解は実施例2に記載の通り実施。
【0135】
この製剤の安定性試験は、この製品が30℃/65%rhで少なくとも6ヶ月間安定であることを確認した。試験期間が6ヶ月間より長ければ、6ヶ月より長い貯蔵寿命が非常に高い確率で予測される。
【0136】
実施例2:溶解試験
本発明の製剤の溶解特性を下記の通り確認した。
【0137】
pH4.5でのパドル法:
装置は次のものから成る:ガラスまたは他の不活性、透明物質製のカバーされた容器;モーター、および撹拌素子として刃と柄から形成されたパドル。容器を、任意の好都合なサイズの適当な水浴に部分的に浸すか、またはヒーティングジャケット内に入れる。水浴またはヒーティングジャケットは、容器内の温度を、試験中37±0.5°に維持し、浴液の一定で滑らかな動きを維持するのを可能にする。装置が置かれた環境を含め、装置のいずれの部分も、撹拌素子の滑らかな回転を超える顕著な動き、撹拌または振動に関与しない。試験中の標本および撹拌素子の観察を可能にする装置は次の寸法および容積を有する:高さは160mm〜210mmおよびその内部直径は98mm〜106mm。その側面は頂上に突縁。蒸発を遅らせるため適合したカバーを使用してよい。
【0138】
シャフトを、その軸が容器の垂直軸のいずれの点からも2mmを超えず、顕著な動揺がなく滑らかに回転するように配置する。刃の垂直中心線は、刃の底がシャフトの底と同じ高さであるようにシャフトの軸を通る。パドルの設計は、USP<711>、図2に示す通りである。刃と容器の内底の間の25±2mmの距離を試験中維持する。金属性または同様の不活性の、硬い刃およびシャフトが一体を成す。適当な二部分脱着可能設計も、試験中集合体が硬く組み合わさったままであるならば使用してよい。パドル刃およびシャフトを適当な不活性コーティングでコーティングしてよい。投与単位を、刃の回転が開始する前に容器の底に沈める。非反応性物質のワイヤ螺旋構造の数巻きを超えないような小さな、緩い破片を、そうしなければ浮くであろう投与単位に結合させてよい。他の確認された重り装置を使用してよい。
【0139】
1Lの溶解媒体を装置の容器に入れ、装置を組み立て、溶解媒体を37±0.5°に平衡化し、温度計を外す。投与形態単位の表面から気泡を除くことに注意しながら、1投与形態(例えば錠剤またはカプセル)を装置に入れ、直ぐに装置をpHによって75±3rpmまたは100±3rpmの速度で動かす。特定の時間間隔(例えば10、20、30、45、60、90および120分間)内に、または記載した各時点で、標本(≧1ml)を、容器壁から1cm未満ではない、溶解媒体表面と回転している刃の頂上の中程の領域から取る。[注 − 分析用に採取した一定量を等量の37°の溶解媒体と置き換えるか、媒体での置き換えが必要ではないことが示され得るならば、容積の変化を計算で補正する。容器を試験注カバーしたままにし、試験下の混合物の温度を適当な時点で確認する。]。標本を適当なフィルター、例えば0.45μm PVDFフィルター(Millipore)を通し、濾液の最初の数ml(2〜3ml)を廃棄する。分析をHPLCまたはUV検出で行う。この試験を少なくとも6回、さらなる投与形態単位で繰り返す。
pH4.5用溶解媒体:1Lの緩衝化水性溶液、pH4.5±0.05に調節(13.61gのリン酸水素カリウムを750mlの脱イオン水に溶解し、脱イオン水で1Lに希釈することにより得た0.1M リン酸緩衝液)
【0140】
本発明に従い製造した多粒子系の例は、全て、本発明の特許請求の範囲に明示した必須の溶解特性を有する。結果を実施例1に示す。
【0141】
実施例3:生物学的同等性試験
本発明の医薬経口固定用量組み合わせ剤のバイオアベイラビリティを、対応する自由投与量組み合わせ剤と比較した。試験(固定用量組み合わせ剤)投与形態および参照(自由投与量組み合わせ剤)投与形態を対象に経口投与し、血漿サンプルを48時間にわたり採取した。血漿サンプルをバルサルタンおよびアリスキレンの濃度について分析した。統計学的比較を、試験および参照で達成された最高血漿濃度(Cmax)および時間曲線に対する血漿濃度下面積(AUC)で行った。
【0142】
本発明に従い製造したバルサルタンおよびアリスキレン(320/300mg)の本発明の医薬経口固定用量組み合わせ剤を、健康ヒトボランティアにおける320mg バルサルタン(2回、160mg カプセル)および300mgアリスキレン錠剤の自由投与量組み合わせ剤と、オープンラベル、無作為、一投与量、三期間、クロスオーバー試験で比較した。バルサルタンおよびアリスキレンの固定用量組み合わせ錠剤のバイオアベイラビリティを、自由投与量組み合わせ剤と比較した。結果を下記表に示す。
【0143】
参照:
− アリスキレン錠剤 300mg
− バルサルタン:硬ゼラチンカプセル 160mg(対象に2カプセルを一投与量として与えた)
参照製品の両方ともNovartis Pharma AG, Switzerlandによる市販品
試験:実施例1に記載の製剤
対象数:参加数42名
【0144】
【表8】

【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 治療的有効量のアリスキレン、またはその薬学的に許容される塩、
b) 治療的有効量のバルサルタン、またはその薬学的に許容される塩、
を含み、pH4.5で、10分後の60%以下のおよび20分後の95%以下の成分(a)のインビトロ溶解、および30分後の25%以上、および60分後に45%以上の成分(b)の溶解プロファイルを示す、医薬経口固定用量組み合わせ剤。
【請求項2】
成分(a)および成分(b)の非同期放出プロファイルを有する、請求項1に記載の医薬経口固定用量組み合わせ剤。
【請求項3】
両成分(a)および(b)の連続放出を有する、請求項1または2に記載の医薬経口固定用量組み合わせ剤。
【請求項4】
成分(a)の放出が放出の時間を遅らせることにより、または放出速度を減速させることにより修飾されている、請求項1〜3のいずれかに記載の医薬経口固定用量組み合わせ剤。
【請求項5】
成分(b)が即時放出を示す、請求項1〜4のいずれかに記載の医薬経口固定用量組み合わせ剤。
【請求項6】
医薬経口固定用量組み合わせ剤が固体投与形態である、請求項1〜5のいずれかに記載の医薬経口固定用量組み合わせ剤。
【請求項7】
成分(a)が成分(b)から物理的に分離されている、請求項1〜6のいずれかに記載の医薬経口固定用量組み合わせ剤。
【請求項8】
成分a)および/または成分b)各々の異なる集団の粒子を含む多粒子の形である、請求項1〜7のいずれかに記載の医薬経口固定用量組み合わせ剤。
【請求項9】
成分a)含有粒子が修飾放出コーティングを含む、請求項8に記載の医薬経口固定用量組み合わせ剤。
【請求項10】
錠剤またはフィルムコーティング錠の形の、請求項8または9に記載の医薬経口固定用量組み合わせ剤。
【請求項11】
成分(a)が単位投与形態あたり75〜300mgの遊離塩基の範囲の量で存在する、請求項1〜10のいずれかに記載の医薬経口固定用量組み合わせ剤。
【請求項12】
成分(b)が単位投与形態あたり80〜320mgの範囲の量で存在する、請求項1〜11のいずれかに記載の医薬経口固定用量組み合わせ剤。
【請求項13】
高血圧、鬱血性心不全、狭心症、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎症、糖尿病性心筋症、腎不全、末梢血管疾患、左室肥大、認知機能不全、卒中、頭痛および慢性心不全、特に高血圧の処置のための、請求項1〜12のいずれかに記載の医薬経口固定用量組み合わせ剤の使用。

【公表番号】特表2010−540548(P2010−540548A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527092(P2010−527092)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/077417
【国際公開番号】WO2009/045796
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】