説明

アルカリ可溶性ポリマーおよびレジスト組成物

【課題】アルカリ現像時のコントラスト性にきわめて優れ、耐熱性とともに透明性にも優れ、顔料分散性のきわめて良好な塗膜を形成しうるアルカリ可溶性ポリマー、レジスト組成物を提供すること
【解決手段】本発明のアルカリ可溶性ポリマーは、耐熱性とともに透明性にも極めて優れた塗膜を形成することができるものであり、例えば、レジスト材料、各種コーティング剤、塗料等の用途において好適に用いることができる。また、本発明によれば、パターンの欠損や現像残渣のない良好な品質のカラーフィルタを提供することができる。また、本発明によれば、輝度および色純度が高く、色ムラ等を生じることのない良好な表示品質の表示装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアルカリ可溶性ポリマーおよびレジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、耐熱性に優れたアルカリ可溶性ポリマーとして、例えば、マレイミド基を含むモノマー成分を重合してなるポリマーと硬化成分とを含むレジスト組成物(例えば、特許文献1、2参照)や、2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステルの二量体である特定構造の化合物を重合してなるポリマーを硬化成分とともに含むレジスト組成物(例えば、特許文献3参照)等が提案されている。
【0003】
しかし、前者のマレイミド基由来のポリマーを含むレジスト組成物においては、マレイミド系ポリマーが窒素原子を含有するため、ポリマーが黄色〜黄褐色に着色しており、たとえば透明ネガ型レジスト材料に用いようとした場合には硬化膜の透明性が不充分になるといった問題があった。この透明性の問題は硬化膜の膜厚が厚い場合には特に顕著であり、しかも、加熱処理を施すとさらに着色することがあった。また、後者の2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステルの二量体を含むレジスト組成物においては、現像条件によっては硬化部分が欠落してパターン形状が悪くなるといった問題や塗膜の機械強度が不十分であるため割れが生じ、歩留まりが悪くなることがあった。
【0004】
また、透明耐熱性ポリマーとしてγーブチロラクトン骨格を有するポリマーが提案されている(例えば、特許文献4、5参照)。主鎖中にγーブチロラクトン骨格を有することにより成形体にした際の機械的性質や吸水性に優れたポリマーが得られるが、アルカリ可溶性が不十分となる場合があり、たとえばネガ型レジスト材料などには用いることができなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平04−130128号公報
【特許文献2】特開平10−31308号公報
【特許文献3】特開2004−300204号公報
【特許文献4】特許公報3580908号
【特許文献5】特許公報3580909号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、耐熱性とともに透明性にも優れ、顔料分散性の良好な塗膜を形成し、かつアルカリ現像時のコントラスト性に極めて優れたアルカリ可溶性ポリマー、およびレジスト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するべく、鋭意検討を行った。その結果、γーブチロラクトン骨格を有する特定構造のモノマーを必須成分とし、ポリマー中に酸基を有するアルカリ可溶性ポリマーが、前記課題を一挙に解決しうることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、少なくとも5員環のラジカル重合性化合物(a1)をモノマー成分に有し、かつ酸基を有するアルカリ可溶性ポリマー(A)である。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1〜20のアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、−OAc基、−CN基、−CO−R5基、または−C−O−R6基を表し、Ac基はアセチル基を表し、R5、R6は、それぞれが独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。なおR1とR2、R3とR4が結合し、環構造を形成しても良い。)
本発明にかかるアルカリ可溶性ポリマーは、モノマー成分100mol%中、化合物(a1)由来のモノマー成分が5〜40mol%が好ましい。
【0011】
本発明にかかるアルカリ可溶性ポリマーは、モノマー成分100mol%中、30〜90mol%がメタクリル酸エステル(a4)が好ましい。
【0012】
本発明にかかるアルカリ可溶性ポリマーは側鎖にラジカル重合性二重結合を有することが好ましい。
【0013】
本発明は上記アルカリ可溶性ポリマー(A)を有機溶媒中で重合する製造方法である。
【0014】
本発明にかかるレジスト組成物は、アルカリ可溶性ポリマー(A)、ラジカル重合性二重結合を有する化合物(B)、光ラジカル重合開始剤(C)からなる。
【0015】
本発明にかかる硬化物は上記レジスト組成物を硬化した硬化物である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のアルカリ現像性ポリマーは、アルカリ現像時のコントラスト性にきわめて優れ、耐熱性とともに透明性にも優れた塗膜を形成することができるものであり、例えば、レジスト材料、各種コーティング剤、塗料等の用途において好適に用いることができる。また、本発明によれば、パターンの欠損や現像残渣のない良好な品質のカラーフィルタを提供することができる。また、本発明によれば、輝度および色純度が高く、色ムラ等を生じることのない良好な表示品質の表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について詳述する。なお本発明のアルカリ可溶性ポリマー(A)を単にポリマー(A)と称することもある。
【0018】
本発明のアルカリ可溶性ポリマーは、下記一般式(a1)
【0019】
【化2】

【0020】
(式中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1〜20のアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、−OAc基、−CN基、−CO−R5基、または−C−O−R6基を表し、Ac基はアセチル基を表し、R5、R6は、それぞれが独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。なおR1とR2、R3とR4が結合し、環構造を形成しても良い。)
で示されるラジカル重合性モノマー(a1)(以下「メチレンラクトン」と称することもある。)
を必須とし、ポリマー中に酸基(a2)を必須成分として有する。これにより、本発明のアルカリ可溶性ポリマーは、耐熱性とともに透明性にも極めて優れ、かつアルカリ現像時のコントラスト性にきわめてすぐれた塗膜を形成しうる。
【0021】
以下、本発明のポリマー(A)について説明する。前記メチレンラクトン(a1)を示す前記一般式(a1)中、R1、R2、R3およびR4は水素または有機残基を有していてもよい。炭素数1〜20の炭化水素基としては、特に制限はないが、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、t−アミル、ステアリル、ラウリル、2−エチルヘキシル等の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル等のアリール基;シクロヘキシル、t−ブチルシクロヘキシル、ジシクロペンタジエニル、トリシクロデカニル、イソボルニル、アダマンチル、2−メチル−2−アダマンチル等の脂環式基;1−メトキシエチル、1−エトキシエチル等のアルコキシで置換されたアルキル基;ベンジル等のアリール基で置換されたアルキル基;等が挙げられる。またR1とR2、R3とR4が結合し、環構造を形成しても良い。これらの中で炭素数は8以下が好ましく、さらに、水素、メチル、エチル、シクロヘキシル、ベンジル、2−エチルヘキシル等の1級または2級炭素の置換基が耐熱性、入手製の点で好ましい。なお、R1、R2、R3およびR4は、同種の置換基であってもよいし、異なる置換基であってもよい。
【0022】
前記メチレンラクトン(a1)の具体例としては、例えば、α−メチレン−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−γ−メチル−γ−ブチロラクトン(別称:α−メチレン−γ−ヴァレロラクトン)、α−メチレン−γ−エチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−γ−プロピル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−γ−ブチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−γ,γ−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−エチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−プロピル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−メチル−γ−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−メチル−γ−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−メチル−γ−エチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−メチル−γ−プロピル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−メチル−γ−シクロヘキシル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−エチル−γ−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−エチル−γ、γ−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−エチル−γ−エチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−エチル−γ−プロピル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−β−エチル−γ−シクロヘキシル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−γ−ブチロラクタム、α−メチレン−δ−ブチロラクトンなどが挙げられる。これらの中でも、透明性、耐熱性の点で、α−メチレン−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−γ−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−γ,γ−ジメチル−γ−ブチロラクトンが好ましい。これらメチレンラクトンは、1種のみを用いても良いし、2種以上であってもよい。
【0023】
本発明のポリマー(A)を得る際のモノマー成分中における前記メチレンラクトン(a1)の割合は、特に制限されないが、全モノマー成分中5〜40mol%、好ましくは5〜30mol%、さらに好ましくは5〜20mol%であるのがよい。メチレンラクトンの量が多すぎると、アルカリ溶解性が低下したり、あるいは機械強度が低下するおそれがあり、一方、少なすぎると、透明性や耐熱性などの塗膜性能が不充分となる恐れがある。
【0024】
本発明のポリマー(A)に酸基を導入するには、例えば、酸基を有するモノマー(a2)および/または重合後に酸基を付与しうるモノマー(a3)(以下「酸基を導入するためのモノマー」と称することもある。)を、モノマー成分として重合するようにすればよい。
【0025】
前記酸基を有するモノマー(a2)としては、例えば、カルボキシル基を有するモノマー、フェノール性水酸基を有するモノマー、カルボン酸無水物基を有するモノマー等が挙げられる。これらの中でカルボキシル基を有するモノマーが好ましい。前記酸基を有するモノマー(a2)は特に限定はされないが、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等のカルボキシル基を有するモノマー、マレイン酸、ヒドロキシスチレン、無水マレイン酸、オクテニル無水コハク酸などが挙げられる。これらで特にアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ヒドロキシスチレン、無水マレイン酸が着色、顔料分散性、入手性の点から好ましい。
【0026】
前記酸基を導入するためのモノマー(a3)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマー、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するモノマー、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基を有するモノマー等が挙げられる。酸基を付与しうるモノマーを用い、これによって酸基を導入する場合、重合後に酸基を付与するための処理を行う必要がある。酸基を付与するための処理は、用いる酸基を導入するためのモノマーの種類によって異なるが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのような水酸基を有するモノマーを用いた場合には、例えば、コハク酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、マレイン酸無水物等の酸無水物を付加させるようにすればよく、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するモノマーを用いた場合には、例えば、N−メチルアミノ安息香酸、N−メチルアミノフェノール等のアミノ基と酸基を有する化合物を付加させるようにするか、もしくは、例えば(メタ)アクリル酸のような酸を付加させた後に生じた水酸基に、例えば、コハク酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、マレイン酸無水物等の酸無水物を付加させるようにすればよく、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基を有するモノマーを用いた場合には、例えば、2−ヒドロキシ酪酸等の水酸基と酸基を有する化合物を付加させるようにすればよい。
【0027】
本発明のポリマー(A)を得る際、酸基を有するモノマー(a2)および/または酸基を導入するためのモノマー(a3)は単独で用いても2種以上を複合して用いてもよい。
【0028】
本発明のポリマー(A)を得る際のモノマー成分中における前記酸基を有するモノマー(a2)および/または酸基を導入するためのモノマー(a3)の割合は、特に制限されないが、全モノマー成分中5〜70mol%、好ましくは10〜60mol%、さらに好ましくは15〜50mol%であるのがよい。酸基を有するモノマー(a2)および/または酸基を導入するためのモノマー(a3)の量が多すぎると、着色したりあるいはゲル化し易くなったりするおそれがあり、一方、少なすぎると、アルカリ現像性などの性能が不充分となる恐れがある。
【0029】
本発明のポリマー(A)は、メタクリル酸エステル(a4)をモノマー成分に有することが好ましい。 前記ポリマー(A)中に含まれるメタクリル酸エステルは特に制限はされないが、炭素数が20以下が好ましい。メタクリル酸エステル(a4)の具体例としてはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸メチル2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどが挙げられ、これらの中でも特にメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシルが好ましい。
【0030】
本発明のポリマー(A)は、ラジカル重合性二重結合を有するポリマーであることが好ましい。ポリマー(A)にラジカル重合性二重結合を導入するには、例えば、重合後にラジカル重合性二重結合を付与しうるモノマー(a5)(以下「ラジカル重合性二重結合を導入するためのモノマー」と称することもある。)を、モノマー成分として重合した後に、後述するようなラジカル重合性二重結合を付与するための処理を行えばよい。
【0031】
前記重合後にラジカル重合性二重結合を付与しうるモノマー(a5)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸等のカルボキシル基を有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸無水物基を有するモノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o−(またはm−、またはp−)ビニルベンジルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有するモノマー;等が挙げられる。これらラジカル重合性二重結合を導入するためのモノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0032】
本発明のポリマー(A)を得る際に、モノマー成分としてラジカル重合性二重結合を導入するためのモノマー(a5)を用い、これによってラジカル重合性二重結合を導入する場合、重合後にラジカル重合性二重結合を付与するための処理を行う必要がある。ラジカル重合性二重結合を付与するための処理は、用いるラジカル重合性二重結合を付与しうるモノマーの種類によって異なるが、例えば、(メタ)アクリル酸やイタコン酸等のカルボキシル基を有するモノマーを用いた場合には、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o−(またはm−、またはp−)ビニルベンジルグリシジルエーテル等のエポキシ基とラジカル重合性二重結合とを有する化合物を付加させるようにすればよく、無水マレイン酸や無水イタコン酸等のカルボン酸無水物基を有するモノマーを用いた場合には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基とラジカル重合性二重結合とを有する化合物を付加させるようにすればよく、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o−(またはm−、またはp−)ビニルベンジルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有するモノマーを用いた場合には、(メタ)アクリル酸等の酸基とラジカル重合性二重結合とを有する化合物を付加させるようにすればよい。
【0033】
本発明のポリマー(A)を得る際のモノマー成分が前記ラジカル重合性二重結合を導入するためのモノマー(a5)をも含む場合、その含有割合は、特に制限されないが、全モノマー成分中1〜50mol%、好ましくは5〜40mol%であるのがよい。
【0034】
本発明のポリマー(A)を得る際のモノマー成分は、必須成分である前記メチレンラクトン(a1)と、酸基を有するモノマー(a2)および/または酸基を導入するためのモノマー(a3)、必要に応じて共重合し得るメタクリル酸エステル(a4)、ラジカル重合性二重結合を導入するためのモノマー(a5)のほかに、必要に応じて、他の共重合可能なモノマー(a6)を含んでいてもよい。
【0035】
他の共重合可能なモノマー(a6)としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸メチル2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のアクリル酸エステル類;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類;ブタジエン、イソプレン等のブタジエンまたは置換ブタジエン化合物;エチレン、プロピレン、塩化ビニル、アクリロニトリル等のエチレンまたは置換エチレン化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル類;等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、スチレンが、透明性が良好で、耐熱性を損ないにくい点で好ましい。これら共重合可能な他のモノマーは、1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0036】
本発明のポリマー(A)を得る際のモノマー成分が前記共重合可能な他のモノマー(a6)をも含む場合、その含有割合は特に制限されないが、90mol%以下が好ましく、80mol%以下であるのがより好ましく、75mol%以下がさらに好ましい。また10mol%以上が好ましく、20mol%以上であるのがより好ましく、30mol%以上がさらに好ましい。
【0037】
本発明の重合反応の方法としては、特に制限はなく、従来公知の各種重合方法を採用することができるが、特に、溶液重合法によることが好ましい。なお、重合温度や重合濃度(重合濃度(%)=[単量体成分の全重量/(単量体成分の全重量+溶媒重量)]×100とする)は、使用するモノマーの種類や比率、目標とするポリマーの分子量によって異なるが、好ましくは、重合温度40〜150℃、重合濃度10〜70%とするのがよく、さらに好ましくは、重合温度60〜130℃、重合濃度20〜60%とするのがよい。
【0038】
本発明の重合において有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒として通常のラジカル重合反応で使用される有機溶媒を用いるようにすればよい。具体的には、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;クロロホルム;ジメチルスルホキシド;等が挙げられる。これら溶媒は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0039】
本発明のポリマー(A)を製造する際には、必要に応じて、通常用いられる重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては特に限定されないが、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2´−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1´−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ化合物;が挙げられる。これら重合開始剤は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。なお、開始剤の使用量は、用いるモノマーの組み合わせや、反応条件、目標とするポリマーの分子量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、ゲル化することなく重量平均分子量が数千〜数万のポリマーを得ることができる点で、全モノマー成分に対して0.1〜15mol%、より好ましくは0.5〜10mol%とするのがよい。
【0040】
本発明のポリマー(A)を製造する際には、分子量調整のために、必要に応じて、通常用いられる連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸メチル等のメルカプタン系連鎖移動剤、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられるが、好ましくは、連鎖移動効果が高く、残存モノマーを低減でき、入手も容易な、n−ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸がよい。連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、用いるモノマーの組み合わせや、反応条件、目標とするポリマーの分子量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、ゲル化することなく重量平均分子量が数千〜数万のポリマーを得ることができる点で、全モノマー成分に対して0.1〜15mol%、より好ましくは0.5〜10mol%とするのが好ましい。
【0041】
本発明のポリマー(A)の重量平均分子量は、特に制限されないが、好ましくは2000〜200000、より好ましくは5000〜100000である。重量平均分子量が200000を超える場合、高粘度となりすぎ塗膜を形成しにくくなり、一方、2000未満であると十分な耐熱性を発現しにくくなる傾向がある。
【0042】
本発明のポリマー(A)は、酸価が、好ましくは30〜500mgKOH/g、より好ましくは50〜200mgKOH/gであるのがよい。ポリマー(A)の酸価が30mgKOH/g未満の場合、アルカリ現像に適用することが難しくなり、500mgKOH/gを超える場合、高粘度となりすぎ塗膜を形成しにくくなる傾向がある。
【0043】
本発明のポリマー(A)は、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上、さらに好ましくは90℃以上であるのがよい。ポリマー(A)のTg未満の場合、耐熱性が不十分となる可能性がある。
【0044】
本発明のレジスト組成物は、ポリマー成分として、ポリマー(A)を必須としていればよく、ポリマー(A)のほかに、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、ブタジエン系ポリマーなど、通常、レジスト組成物に用いられる従来公知のポリマーを含有するものであってもよい。なお、ポリマー(A)以外のポリマーをも含む場合には、ポリマー全成分中に占めるポリマー(A)の含有量を50重量%以上とすることが好ましい。
【0045】
本発明のレジスト組成物は、ラジカル重合性二重結合を有する化合物(B)を適宜用いても良い。これにより、本発明のレジスト組成物は、良好な硬化性を発現しうるものとなる。
【0046】
前記ラジカル重合性二重結合を有する化合物(B)としては、オリゴマーとモノマーがあり、オリゴマー(B−1)としては、例えば、不飽和ポリエステル、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、側鎖に二重結合を持つアクリル系重合体等が挙げられる。モノマー(B−2)(以下ラジカル重合性反応希釈剤と称することもある)としては、例えば、スチレン、α―メチルスチレン、α―クロロスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスホネート等の芳香族ビニル系モノマー;酢酸ビニル、アジピン酸ビニル等のビニルエステルモノマー;メチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、(2−オキソー1,3−ジオキソラン−4−イル)−メチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系モノマー;(ジ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;トリアリルシアヌレート;エポキシポリマーに(メタ)アクリル酸を付加したようなエポキシ(メタ)アクリレート類;等が挙げられる。これらの中で好ましくはラジカル重合可能な二重結合を2官能以上有する多官能モノマーである。
【0047】
本発明のレジスト組成物における前記ラジカル重合性二重結合を有する化合物(B)の含有割合は、前記ポリマー成分(A)に対して、好ましくは5〜1000重量%、より好ましくは10〜600重量%である。
【0048】
本発明のレジスト組成物において、重合開始剤(C)として光ラジカル発生剤を含むことが好ましい。詳しくは、重合開始剤(C)として光ラジカル発生剤を含む場合には、本発明のレジスト組成物は、例えば紫外線等の光エネルギーを照射することにより、ラジカル重合により光硬化しうるものとなる。なお、前記重合開始剤(C)を含有しない場合にも、本発明のレジスト組成物は、X線、電子線等の高エネルギーの放射線エネルギーや、熱エネルギーを付与することによりラジカル重合による硬化が可能なものとなる。
【0049】
前記光ラジカル発生剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オンや2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1;アシルホスフィンオキサイド類およびキサントン類等が挙げられる。
【0050】
本発明のレジスト組成物が前記光ラジカル発生剤を含有する場合、その含有割合は、ポリマー成分(A)とラジカル重合性二重結合を有する化合物(B)の合計量に対して、好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは0.5〜30重量%である。
【0051】
本発明のレジスト組成物は、必要に応じて、希釈剤としての溶媒を含有するものであってもよい。
【0052】
前記溶媒としては、ポリマー(A)、ラジカル重合性二重結合を有する化合物(B)および必要に応じて含有させる重合開始剤(C)の各成分を均一に溶解し、かつ各成分と反応しないものであれば、特に制限はない。具体的には、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;クロロホルム、ジメチルスルホキシド;等が挙げられる。なお、溶媒の含有量は、レジスト組成物を使用する際の最適粘度に応じて適宜設定すればよい。
【0053】
本発明において必要に応じて、染料や顔料を含むことがある。耐熱性、耐光性の面から顔料が望ましい。前記顔料としては、赤色(Red)として、カラーインデックス(C.I.)No.9、97、122、123、149、168、177、180、192、215など、緑色(Green)としてC.I.Pig.7、36、青色(Blue)としてC.I.No.15、22、60、64など、黄色(Yellow)としてC.I.No.20、24、83、86、93、109、110、117、139、153など、紫色(Violet)としては、C.I.No.19、23、29、30、40、50など、黒色(Black)としてはC.I.No.7などが一般的に用いられる。
【0054】
本発明のレジスト組成物は、ポリマー(A)、およびラジカル重合性二重結合を有する化合物(B)、重合開始剤(C)、溶媒、顔料や染料のほかに、本発明に効果を損なわない範囲で、例えば、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、硫酸バリウム等の充填材、消泡剤、カップリング剤、レベリング剤、増感剤、離型剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、重合抑制剤、増粘剤、分散剤等の公知の添加剤を含有するものであってもよい。
【0055】
本発明のレジスト組成物は、必須成分であるポリマー(A)およびラジカル重合性二重結合を有する化合物(B)と、必要に応じて含有させる重合開始剤(C)や溶媒やその他の添加物とを、均一に混合することによって調製することができる。
【0056】
本発明のレジスト組成物は、透明性、耐熱性に優れており、例えば、レジスト材料、各種コーティング剤、塗料等の用途に用いることができ、特に、カラーフィルタや光導波路等を作製するためのアルカリ現像型のネガ型レジスト材料等として好適に用いることができる。さらに、ポリマー(A)はその構造中のラクトン環構造により非常に良好なアルカリ現像時のコントラスト性および、顔料分散性をも有するため、カラーフィルタ用着色感光性樹脂組成物に好適に用いることができる。
【0057】
本発明のカラーフィルタは、硬化ポリマー層が基板上に設けられてなるカラーフィルタにおいて、前記硬化ポリマー層となるポリマー組成物が前記本発明のレジスト組成物であるものである。前記カラーフィルタとは、画像のカラー化に必要な、透明基板上に少なくとも3原色の微細な画素とそれらを区切るブラックマトリクスを有する光学フィルタであり、3原色としては、一般に、赤(R)・緑(G)・青(B)が用いられる。カラーフィルタを構成する部材としては、具体的には、3原色(RGB)画素、ポリマーブラックマトリックス、保護膜、柱状スペーサーがあるが、本発明のカラーフィルタは、該フィルタを構成する各部材の少なくとも1つが、前記レジスト組成物を硬化させて形成されたものであればよい。なお、顔料を含む場合には、分散剤をも含有させることが好ましい。
【0058】
本発明のカラーフィルターは、以下のようにして得ることが好ましい。まず、透明基板の表面上の画素パターンを形成する部分を区画するように遮光層を形成する。この遮光層は、クロムスパッタ等による金属ブラックマトリックスでもよいし、本発明のレジスト組成物を用いて前述の方法で形成されたポリマーブラックマトリックスであってもよい。この基板上に、着色剤を含有する本発明のレジスト組成物を用いて前述の方法で着色された画素が所定のパターンで配置された画素アレイを形成する。その後、必要に応じて、他の色(例えば、赤、緑または青)の着色剤を含有する本発明のレジスト組成物を用いて前述の方法で各色の画素アレイを同一基板上に順次形成する。その後、必要に応じて、本発明のレジスト組成物を用いて前述の方法で保護膜や柱スペーサーを形成するようにしてもよい。
【0059】
前記透明基板としては、例えば、ガラス、シリコン、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等を挙げることができる。これらの透明基板には、所望により、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理を施しておくこともできる。
【0060】
本発明の液晶表示装置は、前記本発明のカラーフィルターを構成部材として含むものである。
【0061】
本発明の液晶表示装置は、例えば、以下のようにして形成することができる。まず、本発明のカラーフィルターにポリイミド配向膜を形成し、配向処理をする。次いで、TN駆動モードのTFT素子を形成したTFT基板と張り合わせて、基板周辺を液晶用のシール材で封止し、張り合わせて基板間にTN駆動モード用の液晶を封入する。これにより、柱スペーサーで基板間のギャップを規定した液晶表示装置を作製することができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。なお、実施例および比較例中の分析は次のようにして行った。また、例中の部は重量部を示す。
(ガラス転移温度)
DSC(示差走査熱量計法、測定機器:理学電気社製型番DSC8230)を使用し、ポリマーを、窒素気流下、昇温速度10℃/minでJIS−K7121に準拠し測定した。
【0063】
(分子量)
GPC(ショウデックス社製型番Shodex GPC System−21H)にてTHFを溶離液とし、カラムにTSKgel SuperHZM−N(TOSOH製)を用い、標準ポリスチレン換算にて測定した。
【0064】
(酸価)
樹脂溶液3g又は固形樹脂1gを精秤し、アセトン70g/水30g混合溶媒に溶解し、チモールブルーを指示薬として0.1NKOH水溶液で滴定し、固形分の濃度から固形分1gあたりの酸価を求めた。
【0065】
(ネガ型レジストの現像性)
10cm角のガラス基板上に、透明レジスト組成物をスピンコータにより、塗布、乾燥し、乾燥膜厚1.0μmの塗布膜を形成した。この塗布膜を120℃、3分間加熱した。加熱後、塗布膜から100μmの距離にフォトマスクを配置して2.0kWの超高圧水銀ランプを装着したUVアライナ(TOPCON社製型番TME−150RNS)によって50mJ/cm2の強度(365nm照度換算)で紫外線を照射した。
紫外線照射後、塗布膜に0.1%の水酸化カリウム水溶液をスピン現像機にて散布し、未露光部を溶解、除去し、残った露光部を純水で20秒間水洗することにより現像した。そして、得られた膜の現像性をレーザー顕微鏡によりパターンの形状を観察し、現像時間におけるパターンの欠損の有無を観察した。未:未露光部未溶解、◎:溶解欠損無し、○:欠損部1割未満、△:欠損部5割未満、×:欠損部5割以上と表記した。
【0066】
(顔料分散性)
顔料としてイルガフォアレッドBT−CF(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)とポリマー、および溶媒としてPGMEAを71/29/400(顔料/ポリマー(固形分)/溶媒、重量比)で混合し、ペイントシェーカーを用い、1.0mmジルコニアビーズによって4時間ビーズ分散し、赤色顔料分散組成物を調整した。得られた赤色顔料分散組成物を粒度分布測定装置(堀場製作所製、型番LB500)を用いて分散性(メジアン径)を動的光散乱法により測定した。
【0067】
(コントラスト性)
透明レジスト組成物を現像性評価と同様の方法で乾燥膜厚1.0μmの塗布膜を形成した。この塗布膜を120℃、3分間加熱した。乾燥後ストファー21段ステップタブレット(富士写真フィルム社製)を塗膜に密着させ、1kWの超高圧水銀灯(昭和トレーディング社製型番AZ214)で1000mJ/cm2の光量を照射した。現像性評価と同様の条件で現像し、残存するステップタブレットの段数を調べた。段により硬化部と未硬化部の境界が完全に分かれている物を○、硬化部と未硬化部の境界で硬化部の1部が剥離しているものを△、段による硬化部と未硬化部の境目が全く見られないものを×とした。
【0068】
[製造例1]
α−メチレン−γ−ブチロラクトン(MBL)10.0mmolを、メタクリル酸(MAA)23.0mmol、メタクリル酸メチル(MMA)12.0mmol、メタクリル酸ベンジル(BzMA)55.0mmol、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(商品名「パーブチル(登録商標)O」、日本油脂社製(PBO))3.0mmol、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン(n‐DM)1.5mmol、ジメチルスルホオキシド(DMSO)40.0mmolと混合した。この混合液を窒素雰囲気下中90℃のオイルバスで2時間及び110℃で1時間重合反応を行った。その後未反応のモノマーが残っていないことをGPCにて確認し、MBLをモノマーユニットに有するポリマー溶液S‐1(固形分 47.9wt%)を得た。この反応溶液をIPA/Hexane=1/4(質量比)混合溶媒に滴下して(反応溶液/混合溶媒=1/10(質量比))、沈澱した重合体を分離して取り出し、40℃で一晩真空乾燥してMBL共重合体P‐1を得た。組成及び分子量、酸価、Tgを表1に示す。
【0069】
[製造例2]
MBL 9.6mmolを、MAA 38.3mmol、MMA 2.7mmol、BzMA 49.5mmol、PBO 3.0mmol、連鎖移動剤としてn‐DM 1.5mmol、DMSO 40.0mmolと混合した。この混合液を窒素雰囲気下中90℃のオイルバスで2時間及び110℃で1時間重合反応を行った。その後未反応のモノマーが残っていないことをGPCにて確認した。次いで、この反応液にメタクリル酸グリシジル(GMA)16.1mmol、触媒としてトリエチルアミン(TEA) 0.14mmol、重合禁止剤として2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(商品名「アンテージW400」、川口化学工業社製)0.02mmolを追加し、7%酸素濃度に調整した空気、窒素混合ガスを15ml/分の流量でバブリングしながら8時間反応を継続した。冷却し、MBLをモノマーユニットに有するポリマー溶液S‐2(固形分 35.0wt%)を得た。反応液をGCで測定したところ未反応のGMAは検出されなかった。この反応溶液をメタノールに滴下し(反応溶液/メタノール=1/10(質量比))、沈澱した重合体を分離して取り出し、40℃で一晩真空乾燥してMBL共重合体P‐2を得た。組成及び分子量、酸価、Tgを表1に示す。
【0070】
[製造例3]
MBLの代わりにα−メチレン−γ−ヴァレロラクトン(MVL)を、DMSOの代わりにPGMEAを用いた以外は製造例1と同様の方法で重合を行い、MVLをモノマーユニットに有するポリマー溶液S‐3(固形分 38.3wt%)を得た。この反応溶液をHexaneに滴下して、沈澱した重合体を分離して取り出し、40℃で一晩真空乾燥してMVL共重合体P‐3を得た。組成及び分子量、酸価、Tgを表1に示す。
【0071】
[製造例4]
MVL 10.0mmolを、MAA 28.6mmol、MMA 42.4mmol、BzMA 19.0mmol、PBO 3.0mmol、連鎖移動剤としてn‐DM 1.5mmol、PGMEA 40.0mmolと混合した。この混合液を窒素雰囲気下中90℃のオイルバスで2時間及び110℃で1時間重合反応を行った。その後未反応のモノマーが残っていないことをGPCにて確認した。次いで、この反応液にGMA 16.1mmol、TEA 0.14mmol、アンテージW400 0.02mmolを追加し、7%酸素濃度に調整した空気、窒素混合ガスを15ml/分の流量でバブリングしながら8時間反応を継続した。冷却し、MVLをモノマーユニットに有するポリマー溶液S‐4(固形分 38.5wt%)を得た。この反応溶液をHexaneに滴下して、沈澱した重合体を分離して取り出し、40℃で一晩真空乾燥してMVL共重合体P‐4を得た。組成及び分子量、酸価、Tgを表1に示す。
【0072】
[製造例5]
MVL 10.0mmolを9.7mmolに、MAA 28.6mmolを44.4mmolに、MMA 42.4mmolを27.3mmolに、BzMA 19.0mmolを18.6mmolに、GMA 16.1mmolを32.2mmolに変えた以外は製造例4と同様の方法で反応を行い、MVLをモノマーユニットに有するポリマー溶液S‐5(固形分 38.1wt%)を得た。この反応溶液をHexaneに滴下して、沈澱した重合体を分離して取り出し、40℃で一晩真空乾燥してMVL共重合体P‐5を得た。組成及び分子量、酸価、Tgを表1に示す。
【0073】
[製造例6]
MVL 10.0mmol、MAA 15.6mmol、MMA 42.4mmol、BzMA 19.0mmol、GMA 13.0mmol、PBO 3.0mmol、連鎖移動剤としてn‐DM 1.5mmol、PGMEA 40.0mmolと混合した。この混合液を窒素雰囲気下中70℃のオイルバスで4.5時間重合反応を行った。その後未反応のモノマーが残っていないことをGPCにて確認し、MVLをモノマーユニットに有するポリマー溶液S‐6(固形分 38.4wt%)を得た。この反応溶液をHexane溶媒に滴下して(反応溶液/混合溶媒=1/10(質量比))、沈澱した重合体を分離して取り出し、40℃で一晩真空乾燥してMVL共重合体P‐6を得た。組成及び分子量、酸価、Tgを表1に示す。
【0074】
[製造例7]
MVL 10.0mmolをα−メチレン−γ−ヘキシルブチロラクトン(MHL)6.4mmolに、MAA 28.6mmolを29.7mmolに、MMA 42.4mmolを44.1mmolに、BzMA 19.0mmolを19.8mmolに変えた以外は製造例4と同様の方法で反応を行い、MHLをモノマーユニットに有するポリマー溶液S‐7(固形分 38.4wt%)を得た。この反応溶液をHexaneに滴下して、沈澱した重合体を分離して取り出し、40℃で一晩真空乾燥してMVL共重合体P‐7を得た。組成及び分子量、酸価、Tgを表1に示す。
【0075】
[製造例8]
重合槽に、溶媒としてプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)113.6mmolを仕込み、窒素雰囲気下に90℃に昇温した後、滴下系1としてベンジルマレイミド(BzMI)6.2mmol、PGMEA 13.8mmol、MMA 44.6mmol、MAA 29.4mmol、BzMA 19.8mmol、滴下系2として、PBO 1.1mmol、滴下系3としてn‐DM 3.2mmolを、それぞれ3時間かけて連続的に供給した。その後、30分90℃を保持した後、温度を115℃に昇温し、2時間重合を継続した。
次いで、この反応液にGMA 13.5mmol、TEA 0.4mmol、アンテージW400 0.06mmolを追加し、7%酸素濃度に調整した空気、窒素混合ガスを15ml/分の流量でバブリングしながら6時間反応を継続した。冷却し、ベンジルマレイミドをモノマーユニットに有するポリマー溶液S‐8(固形分 42.5wt%)を得た。反応液をGCで測定したところ未反応のGMAは検出されなかった。この反応溶液5部にテトラヒドロフラン(THF)15部を加え、ヘキサンに滴下し(反応液THF希釈溶液/ヘキサン=1/10(質量比))、沈澱した重合体を分離して取り出し、40℃で一晩真空乾燥してマレイミド共重合体P‐8を得た。組成及び分子量、酸価、Tgを表1に示す。
【0076】
[製造例9]
反応槽にPGMEA 12.6mmol、イソプロピルアルコール(IPA)27.8mmolを仕込み、滴下系1として、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート(MD)9.5mmol、MAA 47.3mmol、MMA 2.0mmol、BzMA 41.2mmol、滴下系2として、PBO 0.3mmol、滴下系3として、n−DM 0.6mmolを準備した。
反応槽を窒素置換した後、攪拌しながらオイルバスで加熱して反応槽の温度を90℃まで昇温した。反応槽の温度が90℃に安定してから、滴下系1,2,3から滴下を開始した。滴下は、温度を90℃に保ちながら、それぞれ135分間かけて行った。滴下が終了してから60分後に昇温を開始して反応槽を110℃にした。3時間110℃を維持した後、セパラブルフラスコにガス導入管を付け、酸素/窒素=5/95(v/v)混合ガスのバブリングを開始した。次いで、反応槽に、GMA 7.7mmol、ジメチルベンジルアミン(DMBA)0.1mmol、トパノール(リプレ株式会社製) 0.01mmolを仕込み、そのまま110℃で6時間反応させた。冷却し、MDをモノマーユニットに有するポリマー溶液S‐9(固形分 40.7wt%)を得た。反応液をGCで測定したところ未反応のGMAは検出されなかった。この反応溶液5部にTHF 15部を加え、ヘキサンに滴下し(反応液THF希釈溶液/ヘキサン=1/10(質量比))、沈澱した重合体を分離して取り出し、40℃で一晩真空乾燥してMD共重合体P‐9を得た。組成及び分子量、酸価、Tgを表1に示す。
【0077】
[製造例10]
反応槽にPGMEA 12.6mmol、IPA 27.8mmolを仕込み、滴下系1として、MD 6.4mmol、MAA 23.0mmol、MMA 28.0mmol、BzMA 42.6mmol、滴下系2として、PBO 0.3mmol、滴下系3として、n−DM 0.6mmolを準備した。
反応槽を窒素置換した後、攪拌しながらオイルバスで加熱して反応槽の温度を90℃まで昇温した。反応槽の温度が90℃に安定してから、滴下系1,2,3から滴下を開始した。滴下は、温度を90℃に保ちながら、それぞれ135分間かけて行った。滴下が終了してから60分後に昇温を開始して反応槽を110℃にした。3時間110℃を維持した後、その後未反応のモノマーが残っていないことをGPCにて確認し、MDをモノマーユニットに有するポリマー溶液S‐10(固形分 40.0wt%)を得た。この反応溶液5部にTHF 15部を加え、ヘキサンに滴下し(反応液THF希釈溶液/ヘキサン=1/10(質量比))、沈澱した重合体を分離して取り出し、40℃で一晩真空乾燥してMD共重合体P‐10を得た。
組成及び分子量、酸価、Tgを表1に示す。
【0078】
[製造例11]
重合槽に、PGMEA 113.6mmolを仕込み、窒素雰囲気下に90℃に昇温した後、滴下系1としてビニルイミダゾール(VIZ)2.6mmol、PGMEA 13.8mmol、MMA 35.8mmol、アクリル酸(AA)25.1mmol、BzMA 36.5mmol、滴下系2として、PBO 1.1mmol、滴下系3としてn‐DM 3.2mmolを、それぞれ3時間かけて連続的に供給した。その後、30分90℃を保持した後、温度を115℃に昇温し、2時間重合を継続した。
次いで、この反応液にGMA 16.8mmol、TEA 0.4mmol、アンテージW400 0.06mmolを追加し、7%酸素濃度に調整した空気、窒素混合ガスを15ml/分の流量でバブリングしながら6時間反応を継続した。冷却し、ビニルイミダゾールをモノマーユニットに有するポリマー溶液S‐11(固形分 40.0wt%)を得た。反応液をGCで測定したところ未反応のGMAは検出されなかった。この反応溶液5部にTHF 15部を加え、ヘキサンに滴下し(反応液THF希釈溶液/ヘキサン=1/10(質量比))、沈澱した重合体を分離して取り出し、40℃で一晩真空乾燥してビニルイミダゾール樹脂P‐11を得た。組成及び分子量、酸価を表1に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
[実施例1〜7および比較例1〜3]
樹脂組成物の調製
上記製造例の共重合体(A) 40部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA) 60部、光重合開始剤としてイルガキュア907(チバ・ガイギー社製) 1.75部混合し、固形分濃度が20重量%になるようにPGMEAに溶解した後、孔径0.5μmのミリポアフィルタでろ過して組成物溶液を調整した。各成分の量を表2に、現像性試験の結果を表3に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
【表3】

【0083】
[実施例8〜14および比較例4〜7]
赤色顔料分散組成物樹脂組成物の調製
上記製造例の共重合体(A) 29部、顔料としてイルガフォアレッドBT−CF 71部混合し、固形分濃度が20重量%になるようにPGMEAを加えた後、1.0mmジルコニアビーズとペイントシェーカーを用いて4時間ビーズ分散し、赤色顔料分散組成物を調整した。各成分の量を表4に、分散性(メジアン径)を測定した結果を表5に示す。
【0084】
【表4】

【0085】
【表5】

【0086】
[実施例15〜21および比較例8〜10]
樹脂組成物の調製
上記製造例の共重合体(A) 71部、DPHA 29部、光重合開始剤としてイルガキュア907 1.75部混合し、固形分濃度が20重量%になるようにPGMEAに溶解した後、孔径0.5μmのミリポアフィルタでろ過して組成物溶液を調整した。各成分の量を表6に、コントラスト性を測定した結果を表7に示す。
【0087】
【表6】

【0088】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも5員環のラジカル重合性化合物(a1)をモノマー成分に有し、かつ酸基を有するアルカリ可溶性ポリマー(A)。
【化1】

(式中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1〜20のアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、−OAc基、−CN基、−CO−R5基、または−C−O−R6基を表し、Ac基はアセチル基を表し、R5、R6は、それぞれが独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。なおR1とR2、R3とR4が結合し、環構造を形成しても良い。)
【請求項2】
モノマー成分100mol%中、化合物(a1)由来のモノマー成分が5〜40mol%である請求項1記載のアルカリ可溶性ポリマー(A)。
【請求項3】
モノマー成分100mol%中、30〜90mol%がメタクリル酸エステル(a4)である請求項1または2いずれかに記載のアルカリ可溶性ポリマー(A)。
【請求項4】
側鎖にラジカル重合性二重結合を有する請求項1〜3いずれか記載のアルカリ可溶性ポリマー(A)。
【請求項5】
有機溶媒中で重合する請求項1〜4いずれかに記載のアルカリ可溶性ポリマー(A)の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4いずれかに記載のアルカリ可溶性ポリマー(A)、ラジカル重合性二重結合を有する化合物(B)、光ラジカル重合開始剤(C)からなるレジスト組成物。
【請求項7】
請求項6に記載のレジスト組成物を硬化した硬化物。

【公開番号】特開2009−62529(P2009−62529A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205599(P2008−205599)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】