説明

アルキルアクリレート共重合体系VI改良剤およびこれらの使用

【課題】 アルキルアクリレート共重合体系VI改良剤およびこれらの使用
【解決手段】 アルキルアクリレートを含んで成る1番目の単量体とオレフィンカルボキシル系アシル化剤を含んで成る2番目の単量体を前記1番目と2番目の単量体のフリーラジカル重合に有効な条件下で反応させることでアシル化アルキルアクリレート共重合体を含んで成る基礎重合体(場合により、前記基礎重合体を更にアミン化合物と反応させることで多官能ポリアルキルアクリレート共重合体を生じさせてもよい)を生じさせることで得た付加反応生成物を含んで成る新規な多官能重合体系粘度改良剤。本基礎重合体は良好な増粘効果を有する。本多官能ポリアルキルアクリレート系共重合体系分散性粘度改良剤は良好な増粘効果を有する。本基礎重合体および多官能ポリアルキルアクリレート共重合体系粘度改良剤は良好な増粘効果、低温特性、分散性および抗酸化特性を有する。それらはまた沈澱も沈降も起こさずかつこれらを混合した完成流体の中でそのような生成を促すこともそれの原因になることもない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物で用いると向上した多官能分散性粘度指数改良剤(multifunctional dispersant viscosity index improver)として有効に働く潤滑油用添加剤(lubricant additive)に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリメタアクリレート系粘度指数改良剤(PMA VII)は一般に潤滑産業で公知である。高温粘度と低温粘度の望ましい均衡を示すばかりでなく所定用途で要求されるせん断安定性も示すPMA VIIを製造する試みが成されてきた。APIのグループIの基油から離れてグループIIおよびグループIIIの基油が利用される度合が大きくなるにつれて適切な低温性能を得ることが益々より困難になってきている。その上、いろいろな基油と理想的に混合しようとする精油業者は、そのような様々な基油の全部で有効に機能する単一の製品を得ることを望むであろう。
【0003】
アクリレートが基になった化学品は流動点降下剤として用いられている(例えば特許文献1、2、3、4に記述されている如く)。優れた低温特性を有するポリアルキル(メタ)アクリレート共重合体そしてそれらを潤滑油用流動点降下剤として用いることが特許文献5に記述されている。前記ポリアルキル(メタ)アクリレート共重合体はC11−C15アルキル(メタ)アクリレートに由来する単位を約5から約60重量パーセントおよびC16−C30アルキル(メタ)アクリレートに由来する単位を約95から約40重量パーセント含有して成る。特定的に限定されたエチレン−プロピレン共重合体を約0.5から30重量%および(A)C1−C5アルキルアクリレートと(B)C16−C22アルキルアクリレートをA:Bの重量比が約90:10から50:50でアルキル側鎖の平均長がほぼ炭素11から16個分の範囲になるように用いて作られた分子量が1000から25,000のポリアルキルアクリレート共重合体(混ぜ物無し)を約0.005から10重量%含有してなる潤滑油組成物が特許文献6に開示されている。
【特許文献1】英国特許第1,559,952号
【特許文献2】米国特許第4,867,894号、
【特許文献3】米国特許第5,312,884号
【特許文献4】EP 0 236 844 B1
【特許文献5】米国特許第6,255,261 B1
【特許文献6】米国特許第4,146,492号
【発明の開示】
【0004】
発明の要約
本発明は、i)アルキル基が炭素原子を1から4個有するアルキルアクリレートの1番目のサブグループとアルキル基が炭素原子を8から16個有する2番目のサブグループとアルキル基が炭素原子を17から30個有する3番目のサブグループを含む異なる3つのサブグループを含んで成る1番目の組のアルキルアクリレートを含んで成る単量体とii)オレフィンカルボキシル系アシル化剤(olefinic carboxylic acylating agent)を含んで成る2番目の単量体を前記1番目と2番目の単量体のフリーラジカル重合に有効な条件下で反応させてアシル化アルキルアクリレート共重合体を含んで成る基礎(base)重合体を生じさせ、場合によりこれを更にアミン化合物と反応させて官能化ポリアルキルアクリレート共重合体系粘度改良剤(functionalized polyalkylacrylate copolymer viscosity modifier)生じさせることで調製した付加反応生成物を含んで成る新規なポリアルキルアクリレート共重合体に向けたものである。
【0005】
本基礎重合体は安定な化合物であり、これはさらなる官能化前に貯蔵および取り扱い可能である。また、個々の用途に応じてではあるがそれ自身を有益な潤滑油用添加剤として使える状態にしようとして必ずしもそれにさらなる官能化を受けさせる必要もない。そのような官能化ポリアルキルアクリレート重合体系粘度改良剤は前記新規な基礎重合体(即ちアミノ化されていない共重合体)の機能強化形態である。
【0006】
本発明に従って製造した本基礎重合体および官能化ポリアルキルアクリレート共重合体系粘度改良剤は、とりわけ、増粘効果、低温特性、分散性および/または抗酸化特性が良好であると言った利点を有する。それらはまた沈澱も沈降も起こさずかつこれらを混合した完成流体の中でそのような生成を促すこともそれの原因になることもない。それらは重合体と結合した抗酸化剤であり、通常の低分子量抗酸化剤が示す熱安定性および酸化安定性によって制限されていた潤滑油の酸化安定性および分散性を向上させる効力を有する。それらはまたエンジンオイル用途でも使用可能であり、通常のスクシニミドと一緒に用いると、完成油中のオレフィン共重合体(OCP)充填量が低くても、酸化、分散性、高温における高せん断(HTHS)/燃料経済性および低温における粘度[例えば冷クランキングシミュレーター(CCS)およびミニロータリー粘度計(MRV)特性]を向上または高める可能性がある。それらは、特に、クランクケース潤滑油および自動車用トランスミッション液などの如き用途用の潤滑油に入れた時に卓越した低温特性を示す。それらは幅広く多様な基油中で優れた低温性能を示す。それらはまたエチレン−プロピレン重合体系VI改良剤が全く入っていないか或はそれの含有量が比較的低い潤滑油組成物中でも良好なVII性能を示す。
【0007】
本基礎重合体を合成する時の共重合反応で反応体として用いる1番目の組の単量体は、一般構造1a:
【0008】
【化1】

【0009】
[ここで、Rは水素またはアルキルであってもよく、そしてXは、非置換もしくは置換n−アルキル基を表すが、但しアルキルアクリレート単量体である反応体がXが1から7個の炭素原子、好適には1から4個の炭素原子を有するアルキル基であるアルキル(アルキル)アクリレートの1番目のサブグループ(即ち「短」鎖長グループ)とXが8から16個の炭素原子を有する2番目のサブグループ(即ち「中」鎖長グループ)とXが17から30個の炭素原子を有する3番目のサブグループ(即ち「長」鎖長グループ)を含有することを条件とする]
で表されるアルキル(アルキル)アクリレート単量体の3つのサブグループを含んで成る。前記共重合反応で用いるアルキルアクリレート単量体の前記3つのサブグループの重量比、即ち短/中/長をそれぞれ約5:95:0.05から約35:55:10の範囲にしてもよい。置換アルキル基には、例えばエポキシ官能アルキル基、ケト官能アルキル基またはアミノアルキル基などが含まれ得る。
【0010】
特別な態様における1番目の単量体は、一般構造2a:
【0011】
【化2】

【0012】
[ここで、Rは水素またはC1−C5アルキル基であり、そしてRは非置換もしくは置換C1−C30アルキル基であるが、但しアルキルアクリレート単量体である反応体がRが炭素原子を1から4個有するアルキル(アルキル)アクリレートの1番目のサブグループとRが炭素原子を8から16個有する2番目のサブグループとRが炭素原子を17から30個有する3番目のサブグループを含んで成る異なる3つのサブグループを含有することを条件とする]
で表されるアルキル(アルキル)アクリレートの3つのサブグループを含んで成る。本明細書における目的で、用語「アルキル(アルキル)アクリレート」は、一般に、本質的にアルキル(アルキル)アクリル酸のエステルおよび/または前駆体である酸を指し、これらを本明細書に示す個々の文脈の中で更に定義または限定するかもしれない。
【0013】
前記2番目の単量体には無水不飽和モノカルボン酸、無水不飽和ジカルボン酸またはこれらの相当する酸が含まれ得、これらは例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水ハロマレイン酸、無水アルキルマレイン酸、マレイン酸およびフマル酸およびこれらの組み合わせおよび誘導体などから成る群から選択可能である。特に適切な2番目の単量体には無水不飽和ジカルボン酸およびこれらの相当する酸、より詳細には、一般式A1、B1、C1またはD1:
【0014】
【化3】

【0015】
[式中、Zは好適には水素であるが、また、有機基、例えば分枝もしくは直鎖アルキル基、無水物、ケトン基、複素環式基または炭素原子数が1−12の他の有機基などであってもよい]
で表されるそれらが含まれ得る。加うるに、Zはハロゲン、例えば塩素、臭素またはヨウ素などであってもよい。QはOHまたは炭素原子数が1−8のアルコキシ基であってもよい。特に無水マレイン酸および無水イタコン酸および/またはそれらの相当する酸が適切である。
【0016】
本基礎重合体はアルキルアクリレート単量体に由来する単量体単位を約99.9から約80重量パーセントおよびオレフィン系アシル化剤単量体を約0.1から約20重量パーセント含んで成っていてもよい。VII用途の場合、本基礎重合体の数平均分子量をゲル浸透クロマトグラフィーで測定して約50,000から約1,000,000、より好適には約50,000から約500,000の範囲にするのが好適である。
【0017】
本基礎重合体のアミン官能化に関して、そのようなアミン化合物である反応体には、例えば芳香族アミン化合物または脂肪族アミン化合物などが含まれ得る。芳香族アミン化合物には、例えばN−アリールもしくはN−アルキル置換フェニレンジアミンなどが含まれ得る。N−アリール置換フェニレンジアミンには、置換されているN−アリールフェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルアミンまたはこれらの塩が含まれ得る。前記脂肪族アミン化合物にはポリアルキレンポリアミン化合物または他のポリアミンが含まれ得る。
【0018】
1つの特別な態様では、C1−C30アルキルメタアクリレート単量体と無水マレイン酸単量体(1−10重量%)をフリーラジカル開始剤の存在下で反応させることでマレエート化ポリメタアクリレート共重合体である中間体を生じさせた後、それにポリアミン化合物による官能化を受けさせることで分散性/抗酸化性官能化ポリメタアクリレートを生じさせるが、これは例えば潤滑用流体組成物、例えばエンジンオイル、自動車用トランスミッション液、ギアオイル、産業、金属加工および油圧油などで用いるに適する。
【0019】
そのようなアミン官能化ポリアルキルアクリレートに持たせる数平均分子量は約50,000から約1,000,000の範囲であってもよい。そのようなアミン重合体は、低い方の分子量の時、VII用途で充分な効果を示さない可能性がある。
【0020】
1つの非限定態様において、本基礎重合体(I)およびこの基礎重合体を用いて数平均分子量が約50,000から約1,000,000になるように生じさせた官能化ポリアルキルアクリレート共重合体系分散剤(IIa+IIb)は下記の個々の構造を有する:
【0021】
【化4】

【0022】
ここで、構造I、IIaおよびIIbに関して、mは、nの値の0.1%から20%の範囲であるとして定義され、mとnの合計は50,000から約1,000,000の範囲であり、Xは、アミン基の窒素を通して分子と結合している官能化用アミンに由来する部分を表し、RおよびRは、本明細書の上で定義した基と同じ基を表す。特別な態様におけるXは、構造:R’R”(NR)NR”’R””[ここで、R、R’R”、R”’、R””は、独立して、H、アルキル、アルカリール、アラルキル、シクロアルキルまたはアリール炭化水素であり、そしてRはアルキレン、アラルキレン、シクロアルキレン、アルカリーレンまたはアリーレンであり、そしてaは0−20である]で表される官能化用アミンに由来する。そのような分散性生成物を典型的には構造IIaとIIbで表される化合物の物理的組み合わせとして得る。
【0023】
また、潤滑粘度の油を含有しかつ本多官能ポリアルキルアクリレート共重合体である反応生成物(即ち、付加反応生成物)を有効量で含有して成る本発明の新規な潤滑油組成物も添加剤濃縮液または完成潤滑油の形態で提供する。本潤滑油組成物は内燃機関、エンジンのトランスミッション、ギアおよび他の機械的装置および部品に潤滑油を差す目的で使用可能である。本発明の付加反応生成物は、とりわけ、本付加反応生成物を含有させた潤滑用組成物で潤滑させたエンジンが備わっている運搬手段の油排出と油排出の間のサービス時間を有効に長くすると言った有益さおよび利点を持ち得る。本発明は、また、そのような改良を受けさせた潤滑用組成物および化合物で潤滑させた(lubricated)エンジンにも向けたものである。
【0024】
この上で行った一般的説明および以下に行う詳細な説明かつ本明細書に示す図は単に例示および説明的であり、請求する如き本発明のさらなる説明を与えることを意図したものであると理解されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
好適な態様の詳細な説明
新規な官能化ポリアルキルアクリレート共重合体は、本明細書で指定する如き短、中および長それぞれのアルキル鎖長を有する3つのサブグループのアルキルアクリレートで構成させた組のアルキルアクリレート単量体とオレフィンカルボン酸系アシル化剤をフリーラジカル開始剤の存在下で共重合させることでアシル化アルキルアクリレート共重合体を含んで成る基礎重合体であって、これを更にアミン化合物と反応させることで多官能ポリアルキルアクリレート共重合体系粘度改良剤を生じさせる基礎重合体を生じさせることを含んで成る方法の反応生成物である。また、本基礎重合体も本質的に潤滑油用添加剤として用いるに有用な新規な化合物に相当する。
【0026】
本基礎重合体または官能化ポリアルキルアクリレート共重合体生成物を潤滑粘度の油で希釈することで潤滑油を生じさせることができる。それを有益に潤滑油用添加剤として直接用いてもよいか或は別法として濃縮形態にしておいて基油で前以て希釈して用いることも可能である。本基礎重合体は粘度指数(VI)改良剤として単独で使用可能である。本官能化ポリアルキルアクリレート共重合体生成物を潤滑用組成物に入れて1種以上の機能の目的で使用可能であり、そのような機能には、分散剤粘度指数(VI)改良剤、抗酸化剤、膜形成改良剤、沈着物制御剤ばかりでなく他の機能剤としての機能が含まれる。本多官能ポリアルキルアクリレート共重合体は、また、エチレン−プロピレン重合体系VI改良剤が全く入っていないか或はそれの含有量が比較的低い潤滑用組成物に入れた時に良好なVII性能を示す。
【0027】
I.基礎重合体の製造
1番目の組の単量体
単独図を参照して、本発明の非限定例に従って基礎重合体および官能化共重合体生成物を製造する典型的な反応スキームを示す。本明細書に示す如く、この反応スキームの処理の初期段階(「段階1」)では、メタアクリレート(MeAc)と無水マレイン酸(MA)を共重合させることで基礎重合体[ここでは、ポリメタアクリレート−無水マレイン酸共重合体(MeAc−MA共重合体)として示す]を生じさせる。本発明は本図の典型的な説明よりも幅広い用途を有することは以下の説明から理解されるであろう。本基礎重合体は安定な化合物であり、さらなる官能化前に貯蔵および取り扱い可能である。また、それ自身を有益な潤滑油用添加剤として使える状態にしようとして必ずしもそれにさらなる官能化を受けさせる必要もない(個々の用途に応じてではあるが)。
【0028】
より一般的には、本基礎重合体を合成(例えば段階1)する時の共重合反応で反応体として用いる1番目の組の単量体は、一般構造1a:
【0029】
【化5】

【0030】
[ここで、Rは水素またはアルキルであってもよく、そしてXはアルキルまたはYを表し、ここで、Yは一般構造1:
【0031】
【化6】

【0032】
(ここで、Rは水素またはアルキルであってもよい)
で表される]
で表されるアクリレートまたはこれらの酸を含んで成り得る。特別な態様における一般構造1aは、Xが非置換もしくは置換n−アルキル基を表すアルキル(アルキル)アクリレートを表すが、但し前記アルキルアクリレート単量体である反応体が末端アルキル基Xが炭素原子を1から7個、好適には炭素原子を1から4個有するアルキル(アルキル)アクリレートの1番目のサブグループ(即ち「短」鎖長基)とアルキル基Xが炭素原子を8から16個有する2番目のサブグループ(即ち「中」鎖長基)とアルキル基Xが炭素原子を17から30個有する3番目のサブグループ(即ち「長」鎖長基)を含有することを条件とする。前記共重合反応で用いるアルキルアクリレート単量体(「AAM」)の前記3つのサブグループの重量比(即ち、重量:重量:重量パーセントベース)、即ち短/中/長はそれぞれ約5:95:0.05から約35:55:10の範囲であってもよい。即ち、前記共重合反応における反応単量体として一般に短鎖AAMを約5から約35重量%、中鎖AAMを約95から約55重量%および長鎖AAMを約0.05から約10重量%用いてもよい。
【0033】
置換アルキル基には、例えばエポキシ官能アルキル基、ケト官能アルキル基またはアミノアルキル基などが含まれ得る。
【0034】
代替態様における一般構造1aは、XがY(この上で定義した如き一般構造1で表される)を表すアクリレートを表す。
【0035】
特別な態様、例えば単独図に例示する如き態様における1番目の単量体は、一般構造2a:
【0036】
【化7】

【0037】
[ここで、Rは水素またはC1−C5アルキル基であり、そしてRは非置換もしくは置換C1−C30アルキル基であるが、但しアルキル(アルキル)アクリレート単量体である反応体がRが炭素原子を1から4個有するアルキル基であるアルキル(アルキル)アクリレートの1番目のサブグループとRが炭素原子を8から16個有するアルキル基である2番目のサブグループとRが炭素原子を17から30個有するアルキル基である3番目のサブグループを含んで成る異なる3つのサブグループを含有することを条件とする]で表されるアルキル(アルキル)アクリレートの3つのサブグループを含んで成る。
【0038】
本明細書で用いる如き用語「アルキル(アルキル)アクリレート」は、示すように、一般に、アルキル(アルキル)アクリル酸のエステルおよび/またはそれら自身の前駆体である酸、例えば構造(1a)で表されるそれらを指すが、これらを本明細書に示す個々の
文脈の中で更に定義または限定するか或はしないかもしれない。1つの態様におけるアルキル(アルキル)アクリレートは、この挙げた化合物の「C1−C30アルキル」部分がこの上に示した一般構造2a中のRに相当するC1−C30アルキル(メタ)アクリレートを含んで成り得る。このようなアルキル(メタ)アクリレートはアクリル酸もしくはメタアクリル酸のアルキルエステルであり、それは基1個当たりの炭素原子数が1から30の直鎖もしくは分枝アルキル基を有する。これに関して、構造2aを言及して、便利さの目的で、この挙げたアクリレート化合物のR基(1番目に述べたアルキル基に相当)ばかりでなくR基(2番目に述べたアルキル基に相当)部分をより具体的に示す目的で時には用語「アルキル(アルキル)アクリレート」を本明細書で適用するかもしれない。
【0039】
1番目の単量体の非限定例には、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸ドデシルペンタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、メタアクリル酸ヘンエイコシル、メタアクリル酸ドコシル、(メタ)アクリル酸グリシジルおよび(メタ)アクリル酸アミノプロピル、およびこれらのブレンド物、混合物および組み合わせが含まれる。1番目の単量体はまた構造2:
【0040】
【化8】

【0041】
[ここで、RおよびRは、この上で記述した意味と同じ意味を有する]
で表される単量体であってもよい。
【0042】
そのようなアルキル(メタ)アクリレート単量体の調製は、一般に、工業品質の脂肪アルコールを用いた標準的エステル化手順で実施可能である。個別のアルキル(メタ)アクリレートか或はこれらの混合物を用いてもよい。本分野の技術者は、本明細書に開示するアルキル(メタ)アクリレートと一緒に共重合し得る他の単量体もそれらが完全配合流体の低温特性に悪影響を及ぼさない、例えば流動点降下剤を分散性VI改良剤と組み合わせて用いた時に潤滑用流体の低温ポンプ輸送粘度を高くすることなどがない限り低濃度で存在させてもよいことを理解するであろう。存在させる追加的単量体の量を典型的には約5重量パーセント未満の量、好適には3重量パーセント未満の量、最も好適には1重量パーセント未満の量にする。例えば、窒素含有アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシもしくはアルコキシ含有アルキル(メタ)アクリレート、エチレン、プロピレン、スチレン、酢酸ビニルなどの如き単量体を存在させた時に当該共重合体の極性が実質的に高くならない限りそのような単量体を少量添加することは本発明の範囲内であることを意図する。
【0043】
2番目の組の単量体
本単独図に示すように、前記アルキルアクリレート単量体を2番目の組の単量体と反応させるが、本明細書では、それを無水マレイン酸(MA)として非限定様式で示す。そのような2番目の組の単量体には、一般に、無水不飽和モノカルボン酸、無水不飽和ジカルボン酸またはこれらの相当する酸が含まれ得る。適切な2番目の単量体には、特に、無水不飽和ジカルボン酸およびこれらの相当する酸、より詳細には、一般式A1、B1、C1
またはD1:
【0044】
【化9】

【0045】
[式中、Zは好適には水素であるが、また、有機基、例えば分枝もしくは直鎖アルキル基、無水物、ケトン基、複素環式基または炭素原子数が1−12の他の有機基などであってもよい]
で表されるそれらが含まれ得る。加うるに、Zはハロゲン、例えば塩素、臭素またはヨウ素などであってもよい。QはOHまたは炭素原子数が1−8のアルコキシ基であってもよい。
【0046】
2番目の組の適切な単量体は、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水ハロマレイン酸、無水アルキルマレイン酸、マレイン酸およびフマル酸およびこれらの組み合わせおよび誘導体などから成る群から選択可能である。そのような単量体の例が例えば米国特許第5,837,773号(これの説明は引用することによって本明細書に組み入れられる)などに挙げられている。無水マレイン酸またはこれの誘導体は一般に商業的に入手可能でありかつ反応が容易なことから最も好適である。エチレンの不飽和コポリマーもしくはターポリマーの場合にはイタコン酸もしくはこれの無水物が好適である、と言うのは、それはフリーラジカル共重合工程中に架橋構造を形成する傾向が低いからである。エチレン系不飽和カルボン酸材料は典型的にカルボン酸基を重合体に反応体1モル当たり1または2個与え得る。
【0047】
フリーラジカル開始剤
本図に示す「段階1」で基礎重合体、即ちアシル化アクリレート中間体を生じさせる反
応を一般にフリーラジカル開始剤を用いて実施する。使用可能なフリーラジカル開始剤には、例えば過酸化物、ヒドロパーオキサイド、過エステルおよびまたアゾ化合物が含まれ得、好適には沸点が100℃超でありかつ重合反応温度範囲内で熱分解を起こしてフリーラジカルを発生するそれらが含まれ得る。そのようなフリーラジカル開始剤の代表例は、ベンゾイルパーオキサイド、過安息香酸1−ブチル、過オクタン酸t−ブチル、クメンヒドロパーオキサイド、アゾイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ビス−t−ブチルパーオキサイドおよび2,5−ジメチルヘキシ−3−イン−2,5−ビス−t−ブチルパーオキサイドなどである。そのような開始剤を反応混合物の重量を基準にして約0.005から約1重量%の範囲の量で用いる。
【0048】
また、適切な連鎖移動剤、例えばメルカプタン(チオール)、例えばラウリルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、エチルメルカプタンなどを含めることも可能である。使用すべき連鎖移動剤の量の選択は、合成すべき重合体の所望分子量ばかりでなく当該重合体の所望せん断安定度を基にした選択である、即ちせん断安定性が高い重合体が必要な場合には、反応混合物に連鎖移動剤を多い量で添加してもよい。特に、そのような連鎖移動剤を反応混合物に単量体混合物を基準にして0.01から3重量パーセント、より特別には0.02から2.5重量パーセントの量で添加する。
【0049】
本基礎重合体生成物の分子量は、当該フリーラジカル開始剤および連鎖移動剤の添加量を調整することで操作可能である。一般に、使用するフリーラジカル開始剤および連鎖移動剤の濃度を高くすることに相当する他のあらゆる変項によって、結果としてもたらされる基礎重合体生成物の分子量が低くなる一方、それの濃度を低くすると生成物の分子量に対して反対の影響が生じる。
【0050】
共重合反応装置および条件
本発明の基礎重合体(即ち、アシル化アルキルアクリレート共重合体)を製造する目的で、前記アルキルアクリレート単量体とオレフィンカルボン酸系アシル化剤の重合をいろいろな条件下で実施してもよく、そのような条件には、塊状重合、溶液重合(通常は有機溶媒、好適には鉱油中)、乳化重合、懸濁重合および非水性分散技術が含まれる。この反応はバッチ式または連続操作のいずれかで実施可能である。これは混ぜ物無しまたは溶液の状態で強力混合能力が備わっている連続流もしくはバッチ式反応槽で実施可能である。これをまた押出し加工機または同様な連続強力混合装置で実施することも可能である。溶液重合が好適である。溶液重合の場合、希釈剤とアルキルアクリレート単量体とオレフィンカルボン酸系アシル化剤単量体と重合開始剤を含有して成る反応混合物を調製する。
【0051】
希釈剤は不活性な炭化水素のいずれであってもよく、好適には、後で当該共重合体を用いるべき潤滑油と相溶し得るか或は同じである炭化水素系潤滑油である。反応混合物に含有させる希釈剤の量を例えば単量体総量100重量部(pbw)当たり約15から約400重量部、より好適には希釈剤の量を単量体総量100pbw当たり約50から約200pbwにしてもよい。「総単量体仕込み量」を本明細書で用いる場合、これは初期、即ち未反応反応混合物中の単量体全部を一緒にした量を意味する。
【0052】
本発明の基礎重合体(共重合体である中間体)をフリーラジカル重合で製造する時には、当該単量体を同時またはいずれかの順で逐次的に重合させてもよい。本基礎重合体はアルキルアクリレート単量体に由来する単量体単位を約99.9から約80重量パーセントおよびオレフィン系アシル化剤単量体を約0.1から約20重量パーセント含有して成り得る。特別な態様では、総単量体仕込み量に含めるC1−C30アルキル(メタ)アクリレートを80から99.9重量パーセント、好適には90から99重量パーセントおよび無水マレイン酸を0.1から20重量パーセント、好適には1から10重量にしてもよい。適切な重合開始剤には、加熱時に分解を起こしてフリーラジカルを発生する開始剤、例えばパーオキサイド化合物、例えばベンゾイルパーオキサイド、過安息香酸t−ブチル、過オクタン酸t−ブチルおよびクメンヒドロパーオキサイドなど、およびアゾ化合物、例えばアゾイソブチロニトリルおよび2,2’アゾビス(2−メチルブタンニトリル)などが含まれる。前記混合物に含める開始剤の量を単量体混合物総量を基準にして約0.01重量%から約1.0重量%にする。この共重合体合成反応を重合用媒体にするに適した油、例えば鉱油または他の基油など中で実施する。
【0053】
例として、限定するものでないが、撹拌機と熱電対と還流冷却器を取り付けておいた反応槽に反応混合物を仕込んだ後、窒素ブランケット下で撹拌しながら約50℃から約125℃の温度に約0.5時間から約6時間加熱することで重合反応を実施してもよい。さらなる態様では、最初に反応混合物の一部、例えば約25から60%を反応槽に仕込んで加熱する。次に、反応混合物の残りの部分を計量して前記反応槽に撹拌を行いながら前記温度を維持しつつ入れるか、或はバッチを上述した範囲内に約0.5時間から約3時間置く。本発明の共重合体が希釈状態で入っている粘性のある溶液を前記工程の生成物として得る。
【0054】
当該重合体の酸化を防止しかつ未反応の反応体および重合反応の副生成物を排出させる目的で一般に前記処理用装置を窒素でパージ洗浄する。重合が所望度合で起こるように前記処理用装置内の滞留時間を調節しかつ本基礎重合体生成物の精製を行う目的で排気を実施する。場合により、本基礎重合体生成物を溶解させる目的で鉱油もしくは合成の潤滑油を前記処理装置に排気段階後に添加してもよい。
【0055】
得る基礎重合体に持たせる数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィーで測定して約1,000から約1,000,000の範囲であってもよい。VII用途の場合には、数平均分子量が約50,000から約1,000,000、より好適には約50,000から約500,000、更により好適には約100,000から500,000の基礎重合体を生じさせるのが好適である。本基礎重合体に持たせる重量平均分子量は約100,000から約1,000,000、より好適には約200,000から約1,000,000の範囲であってもよい。
【0056】
未反応材料の真空ストリッピング
前記共重合反応(「段階1」)が終了した時点で、本基礎重合体に対してさらなる官能化を実施する前に、場合により、未反応カルボキシル系反応体およびフリーラジカル開始剤を本基礎重合体から除去および分離しておいてもよい。真空ストリッピングで未反応の成分を反応マスから除去してもよく、例えば反応マスを撹拌下で真空をかけながら約250℃に及ぶ温度に揮発性の未反応単量体およびフリーラジカル開始剤材料が出て行くに充分な時間加熱してもよい。
【0057】
基礎重合体のアミノ化
再び本図を参照して、任意の2番目の処理段階(「段階2」)において、カルボン酸系アシル化機能を持たせた本基礎重合体をアミン化合物と反応させる。示すように、本基礎重合体は本質的に機能的潤滑油用添加剤であり、アミノ化はそれに対して場合により実施してもよい強化である。そのようなアミン化合物は、例えば芳香族アミンまたは脂肪族アミンまたはこれらの組み合わせであってもよい。そのようなアミン化合物は芳香族アミン化合物、例えば米国特許第4,863,623号、5,075,383号および6,107,257号(これらの説明は引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている如きそれらから選択可能である。1つの態様におけるアミン化合物は、例えば一般式:
【0058】
【化10】

【0059】
[式中、Rは水素、−NH、−NH−アリール、−NH−アリールアルキル、−NH−アルキルまたは炭素原子数が4から24の分枝もしくは直鎖基(これはアルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、アルカリール、ヒドロキシアルキルまたはアミノアルキルであってもよい)であり、Rは−NH、CH−(CH−NH、CH−アリール−NH(ここで、nは1から10の値を有する)であり、そしてRは水素、炭素原子数が4から24のアルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、アルカリールである]
で表されるN−アリールフェニレンジアミンなどであってもよい。本発明で用いるに適した特別な芳香族アミンは、N−アリールフェニレンジアミン、より具体的にはN−フェニルフェニレンジアミン、例えばN−フェニル−1,4−フェニレンジアミン、N−フェニル−1,3−フェニレンジアミン、N−フェニル−1,2−フェニレンジアミンおよび4,4−ジアミノジフェニルアミンなどまたはこれらの塩である。
【0060】
芳香族アミンはまた連結している2個の芳香部分を含有するアミンであってもよい。用語「芳香部分」には単核および多核基の両方が含まれることを意味する。そのような多核基は、芳香核が別の核と2つの地点で縮合している縮合型であってもよく、例えばナフチルまたはアントラニル基などに見られる種類であってもよい。多核基はまた少なくとも2個の核(単核または多核のいずれか)が互いに橋渡し連結で連結している連結型であってもよい。そのような橋渡し連結は、とりわけ、本分野の技術者に公知のアルキレン連結、エーテル連結、エステル連結、ケト連結、スルフィド連結、硫黄原子数が2から6のポリスルフィド連結、スルホン連結、スルホンアミド連結、アミド連結、アゾ連結および基間に原子が全く介在しない炭素−炭素直接結合から選択可能である。他の芳香基には、ヘテロ原子を有する基、例えばピリジン、ピラジン、ピリミジンおよびチオフェンなどが含まれる。本明細書で用いるに有用な芳香基の例には、ベンゼン、ナフタレンおよびアントラセン、好適にはベンゼンに由来する芳香基が含まれる。また、そのようないろいろな芳香基の各々はいろいろな置換基で置換されていてもよく、そのような置換基にはヒドロカルビル置換基が含まれる。
【0061】
芳香族アミンは、−O−基で連結している2個の芳香部分を含有するアミンであってもよい。そのようなアミンの一例はフェノキシフェニルアミンであり、これはまたフェノキシアニリンまたはアミノフェニルフェニルエーテルとしても知られており、これらはいろいろな位置異性体(4−フェノキシ、3−フェノキシおよび2−フェノキシ−アニリン)で表され得る。前記芳香基の一方もしくは両方が置換基を持っていてもよく、そのような置換基には、ヒドロカルビル、アミノ、ハロ、スルホキシ、ヒドロキシ、ニトロ、カルボキシおよびアルコキシ置換基が含まれる。アミンの窒素は、示すように第一級アミンの窒素であってもよいか、或は第二級であってもよい、即ちさらなる置換基、例えばヒドロカルビル、好適には短鎖アルキル、例えばメチルなどを持っていてもよい。1つの態様における芳香族アミンは、この上に示した非置換材料である。
【0062】
芳香族アミンは、−N=N−基、即ちアゾ基で連結している2個の芳香部分を含有するアミンであってもよい。そのような材料は米国特許第5,409,623号(これの説明は引用することによって本明細書に組み入れられる)により詳細に記述されている。1つの態様における式で表されるアゾ連結芳香族アミンは、4−(4−ニトロフェニルアゾ)
アニリンばかりでなくこれの位置異性体である。示した材料はDisperse Orange 3として知られる染料として商業的に入手可能である。
【0063】
芳香族アミンは、−C(O)NR−基[ここで、Rは水素またはヒドロカルビルである]、即ちアミド連結で連結している2個の芳香部分を含有するアミンであってもよい。各基はこの上に酸素連結アミンおよびアゾ連結アミンに関して記述した如く置換されていてもよい。1つの態様におけるそのようなアミンは、RおよびRの各々が独立してH、−CH、−OCHまたは−OCである前記構造およびこれの位置異性体で表される。同様に、連結用アミド基の配向を逆にして−NR−C(O)−にすることも可能である。
【0064】
特定態様では、RおよびRの両方とも水素であってもよく、この場合のアミンはp−アミノベンズアニリドである。RがメトキシでありそしてRがメチルの場合の材料は、Fast Violet Bとして公知の市販染料である。RおよびRの両方がメトキシの場合の材料はFast Blue RRとして公知の市販染料である。RおよびRの両方がエトキシの場合の材料はFast Blue BBとして公知の市販染料である。別の態様におけるアミンは4−アミノアセトアニリドであり得る。
【0065】
1つの態様における芳香族アミンは、−C(O)O−基で連結している2個の芳香部分を含有するアミンであり得る。各基はこの上に酸素連結アミンおよびアゾ連結アミンに関して記述した如く置換されていてもよい。1つの態様におけるそのようなアミンは、前記式で表されるアミンばかりでなくこれの位置異性体である。示す材料はフェニル−4−アミノサリチレートまたは4−アミノ−2−ヒドロキシ安息香酸フェニルエステルであり、これは商業的に入手可能である。
【0066】
芳香族アミンは、−SO−基で連結している2個の芳香部分を含有するアミンであってもよい。その芳香部分は各々がこの上に酸素連結アミンおよびアゾ連結アミンに関して記述した如く置換されていてもよい。1つの態様における連結は、−SO−に加えて、更に、−NR−、または具体的には−NH−基も含有し、その結果として、その連結全体は−SONR−または−SONH−である。1つの態様におけるそのような芳香族アミンは4−アミノ−N−フェニル−ベンゼンスルホンアミドの構造で表される。それの市販種は商業的に入手可能な如きスルファメタジン、即ちN’−(4,6−ジメチル−2−ピリミジニル)スルファニルアミド(CAS#57−68−1)であり、これは構造スルファメタジンで表されると考えている。
【0067】
芳香族アミンはニトロ置換アニリンであってもよく、これも同様にこの上に酸素連結アミンおよびアゾ連結アミンに関して記述した如き置換基を持っていてもよい。ニトロアニリンのオルソ−、メタ−およびパラ−置換異性体が含まれる。1つの態様におけるアミンは3−ニトロ−アニリンである。
【0068】
芳香族アミンはまたアミノキノリンであってもよい。市販材料には3−アミノキノリン、5−アミノキノリン、6−アミノキノリンおよび8−アミノキノリンおよび同族体、例えば4−アミノキナルジンなどが含まれる。
【0069】
芳香族アミンはまたアミノベンゾイミダゾール、例えば2−アミノベンゾイミダゾールなどであってもよい。
【0070】
芳香族アミンはまたN,N−ジアルキルフェニレンジアミン、例えばN,N−ジメチル−1,4−フェニレンジアミンなどであってもよい。
【0071】
芳香族アミンはまた環が置換されているベンジルアミンであってもよく、その置換基はこの上に記述した如くいろいろである。1つのそのようなベンジルアミンは2,5−ジメチオキシベンジルアミンである。
【0072】
そのような芳香族アミンは反応性(縮合性)アミノ基を一般に1個以上含有し得る。反応性アミノ基が1個のみであるのが時には好適である。この上に記述した如きN,N−ジメチルフェニレンジアミンの場合のようにアミノ基が複数存在するのも同様に有効であり、特に当該重合体の過度の架橋もゲル化も起こさせないようにそれらを相対的に穏やかな条件下で反応させるならば有効である。
【0073】
上述した芳香族アミンは単独または互いの組み合わせで使用可能である。それらをまた追加的芳香もしくは非芳香アミン、例えば脂肪族アミンなどと組み合わせて用いることも可能であり、そのような脂肪族アミンは、1つの態様において、炭素原子を1から8個含有する。そのような追加的アミンを含める理由は多様であり得る。いくらか残存する酸官能と相対的にかさ高さが大きい芳香族アミンの反応が完全には起こらない可能性がある場合には、時として、当該重合体の酸官能の完全な反応を確保する目的で脂肪族アミンを組み込むのが望ましい可能性がある。別法として、芳香族アミンが示す性能の大部分を維持しながらコストが高い芳香族アミンの一部を脂肪族アミンに置き換えることも可能である。脂肪族モノアミンには、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミンおよびいろいろな高級アミンが含まれる。この機能の目的でジアミンまたはポリアミンも使用可能であるが、一般に、それらが有する反応性アミノ基、即ち第一級もしくは第二級アミノ基、好適には第一級アミノ基が1個のみであることを条件とする。ジアミンの適切な例には、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジブチルアミノエチルアミン、1−(2−アミノエチル)ピペリジン、1−(2−アミノエチル)ピロリジン、アミノエチルモルホリンおよびアミノプロピルモルホリンが含まれる。そのようなアミンの量を典型的には芳香族アミンの量よりも少ない量、即ち存在させるアミン全体の重量またはモルを基準にして50%未満にするが、より多い量、例えば70から130%または90から110%などの量も使用可能である。典型的な量には、10から70重量パーセント、または15から50重量パーセントまたは20から40重量パーセントが含まれる。そのような範囲内で4−フェノキシアニリンとジメチルアミノプロピルアミンの特定組み合わせを用いると、それらは例えば特に煤懸濁の点で良好な性能を示す。特定の態様では、前記重合体に3種以上の異なるアミン、例えば3−ニトロアニリンと4−(4−ニトロフェニルアゾ)アニリンとジメチルアミノプロピルアミンを用いた官能化を受けさせることも可能である。
【0074】
別法として、反応性基、特に第一級基を2つ以上有するアミンを制限した量で用いることで重合体組成物をある度合分枝または架橋させることも可能である。適切なポリアミンには、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、プロピレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、メチレン−ビス−シクロヘキシルアミン、2,7−ジアミノフルオレン、オルソ、メタもしくはパラ−キシレンジアミン、オルソ、メタもしくはパラ−フェニレンジアミン、4,4−オキシジアニリン、1,5−、1,8−もしくは2,3−ジアミノナフタレンおよび2,4−ジアミノトルエンが含まれる。本発明の分散性粘度改良剤に分枝もしくは架橋用ポリアミンを少量組み込むとそれが示す煤取り扱い特性が更に向上し得ることを見いだした。しかしながら、その組み込み量を当該重合体のゲル生成も不溶ももたらさない低濃度に制限すべきである。典型的な量には、使用するアミンの総量を基準にして1から15、または3から10、または7から9重量パーセント、或は別法として、当該重合体を基準にして0.1から1、または0.2から0.6、または0.3から0.5重量パーセントが含まれる。約1モルの第一級アミンが重合体鎖1本当たり1個の酸官能と反応するが残りの酸官能が残存して(他の)芳香族アミンと反応するように適切な量を計算
することができる。別法として、酸官能を二酸、例えばマレイン酸または無水マレイン酸などを用いて与える時には、1個の第一級アミンが重合体鎖1本当たり1個の無水マレイン酸部分(酸基を2個含有)と反応することで両方の酸基がイミド形成を通して反応するようにしてもよい。特定態様におけるアミン量は、それが当該重合体が有する有効カルボン酸官能と反応するような化学量論的量であってもよい。
【0075】
本発明の特定態様では、用いる重合体成分に、アミンの種類が異なるか或は分子量が異なるか或はアミンの種類と分子量の両方が異なる複数、即ち2種以上の重合反応生成物の混合物を含めてもよい。例えば、3−ニトロアニリンと縮合させた重合体の混合物をアミド結合で連結している2個の芳香部分を含有するアミンと縮合させた重合体と一緒に用いてもよい。同様に、数平均分子量が50,000から500,000の重合体の混合物を用いることも可能である。そのように分子量がいろいろな重合体は、例えば3−ニトロアニリンまたは他の適切な芳香族アミンのいずれかの縮合生成物であり得る。
【0076】
使用可能な脂肪族アミン化合物には、例えばアルキル置換モノ−およびジ−アミンなどが含まれる。
【0077】
本基礎重合体と指定アミン化合物もしくはポリアミンの間の反応を好適には当該重合体基質の溶液を不活性な条件下で加熱した後にその加熱した溶液を一般に混合しながらそれに当該アミン化合物を添加して反応を起こさせることで実施する。当該重合体基質の油溶液を用いてこの溶液を窒素ブランケット下に維持しながら120℃から180℃、特に約120℃から160℃に加熱するのが便利である。その溶液に当該アミン化合物を添加、通常は滴下するか、或はそれが固体の時には分割して添加した後、反応を示す条件下で起こさせる。
【0078】
当該アミン化合物を界面活性剤、溶媒、鉱油または合成油のいずれかに溶解させてもよく、そしてそれを前記アシル化重合体が入っている鉱油もしくは合成潤滑油または溶媒溶液に添加する。その溶液を不活性ガスパージ下で撹拌しながら120から180℃の範囲内の温度に加熱する。米国特許第5,384,371号(これの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)に、この用途の目的で一般に適用可能なアミン官能化方法が記述されている。この反応を便利には窒素パージ下の撹拌型反応槽内で実施する。
【0079】
好適な1つの面では、アシル化重合体の油溶液とN−フェニル−1,4−フェニレンジアミンをエトキシル化ラウリルアルコールと一緒に反応させるが、これを約120−180℃の反応槽内で実施する。
【0080】
前記アシル化重合体と当該アミン化合物1種または2種以上の反応の実施で使用可能な界面活性剤には、これらに限定するものでないが、(a)鉱油もしくは合成潤滑油と相溶する溶解度特性、(b)油の引火点を変えないような沸騰範囲および蒸気圧特性および(c)アミン1種または2種以上を溶かすに適切な極性を有するとして特徴づけされる界面活性剤が含まれる。
【0081】
適切な種類のそのような界面活性剤には、脂肪族および芳香族ヒドロキシ化合物とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドまたはこれらの混合物の反応生成物が含まれる。そのような界面活性剤は脂肪族もしくはフェノール系アルコキシレートとして一般に知られる。代表例はSURFONIC(商標)L−24−2、NB40、N−60、L−24−5、L−46−7(Huntsman Chemical Company)、NEODOL(商標)23−5および25−7(Shell Chemical Company)およびTERGITOL(商標)界面活性剤(Union Carbide)である。好適な界面活性剤には、当該アシル化重合体と反応し得る官能基、例えば−OHなどを含有する界面活性剤が含まれる。特にエトキシル化ラウリルアルコール[C1225(OCHCHOH]が好適である。エトキシル化ラウリルアルコールはCAS no.9002−92−0の下で同定される。そのようなエトキシル化ラウリルアルコールは加工助剤および最終的な多官能粘度改良剤製品用の粘度安定剤である。そのようなエトキシル化ラウリルアルコールは当該反応混合物へのアミンの仕込みを容易にする。それはアシル化された官能が未反応のまま残存しないことを確保する反応剤である。アシル化された官能が未反応のままいくらか存在すると完成潤滑用配合物の粘度が望ましくなく変動する。そのような界面活性剤はまた多官能粘度改良剤製品が示す粘弾性反応を修飾することで低温(70から90℃)における取り扱い性を向上させる。
【0082】
使用する界面活性剤の量は、ある程度ではあるが、それが当該アミン化合物を溶かす能力に依存する。典型的には、ポリアミンの5から40重量%の濃度で用いる。また、この上で考察した濃縮液の代わりにか或はそれに加えて界面活性剤を個別に完成添加剤中の界面活性剤の総量が10重量%以下になるように添加することも可能である。
【0083】
本アミン官能化ポリアルキルアクリレート生成物に持たせる数平均分子量は約50,000から約1,000,000、特に約50,000から約500,000の範囲であってもよい。
【0084】
生成物の構造
1つの非限定態様において、本基礎重合体(I)およびこの基礎重合体を用いて数平均分子量が約50,000から約1,000,000になるように生じさせた官能化ポリアルキルアクリレート共重合体系分散剤(IIa+IIb)は下記の個々の構造を有する:
【0085】
【化11】

【0086】
ここで、構造I、IIaおよびIIbに関して、mは、nの値の0.1%から20%の範囲であるとして定義され、mとnの合計は官能化ポリアルキルアクリレート共重合体が50,000から約1,000,000の分子量を有する範囲であり、Xは、アミン基の窒素を通して分子と結合している官能化用アミンに由来する部分を表し、RおよびRは、本明細書の上で定義した基と同じ基を表す。特別な態様におけるXは、構造:R’R”(NR)NR”’R””[ここで、R、R’R”、R”’、R””は、独立して、H、アルキル、アルカリール、アラルキル、シクロアルキルまたはアリール炭化水素であり、そしてRはアルキレン、アラルキレン、シクロアルキレン、アルカリーレンまたはアリーレンであり、そしてaは0−20である]で表される官能化用アミンに由来する。そのような分散性生成物を典型的には構造IIaとIIbで表される化合物の物理的組み合わせとして得る。
【0087】
色安定化
また、本アシル化アルキルアクリレート重合体にアミノ化反応を受けさせた後、色安定化、例えば前記アシル化アルキルアクリレート重合体をCからC12アルキルアルデヒ
ド(例えばノニルアルデヒド)と反応させることなどによる色安定化を受けさせることも可能である。この反応を例えばそのアルキルアルデヒド剤を約0.2から約0.6重量%の量で添加してアミノ化反応で用いた条件と同様な温度および圧力条件下で約2から約6時間進行させてもよい。
【0088】
濾過
前記アミノ化と色安定化を受けさせたアシル化アクリレート化重合体生成物の純度を高める目的で、それの濾過をバッグまたはカートリッジのいずれかを用いた濾過または両方を直列で用いた濾過で実施してもよい。
【0089】
本発明の多官能ポリアルキルアクリレート共重合体生成物化合物に場合により後処理を受けさせることで特定の潤滑用途に必要または望まれる追加的特性を与えることも可能である。後処理技術は本技術分野で良く知られており、ホウ素化、燐酸化およびマレイン化が含まれる。
【0090】
III.潤滑用組成物
本発明の基礎重合体または多官能ポリアルキルアクリレート共重合体生成物またはこれらの組み合わせを潤滑油用の特殊な添加剤として有益に直接用いてもよいか或は別法として濃縮形態にしておいて基油で前以て希釈して用いることも可能である。本発明の基礎重合体および多官能重合体生成物は基油が用いられている潤滑油組成物で使用可能であり、この場合には、本添加剤を前記基油にそれが所望の機能を与えるに充分な量で溶解または分散させる。そのような基油は天然、合成またはこれらの混合であってもよい。使用に適した基油には、例えば米国特許第6,255,261 B1および6,107,257号(これらの説明は引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されているそれらが含まれる。
【0091】
本発明の潤滑油組成物を調製する時に用いるに適した基油には、火花点火内燃機関および圧縮点火内燃機関、例えば自動車用およびトラック用エンジン、海洋および鉄道用ディーゼルエンジンなど用のクランクケース潤滑油として通常用いられる基油が含まれる。本明細書に示す特殊なVI改良剤である添加剤を含有させたクランクケース潤滑油で有利に潤滑させることができる内燃機関には、ガソリン、ガソホールおよびディーゼル燃料が動力のエンジンが含まれる。有益に潤滑させることができるディーゼルエンジンには、これらに限定するものでないが、大型車両用ディーゼルエンジンが含まれ、それには排ガス再循環(EGR)装置が備わっているエンジンが含まれる。
【0092】
本添加剤は、とりわけ、性能試験で増粘効果、低温特性、分散性および抗酸化特性が良好であることが観察されると言った利点を有する。
【0093】
また、本発明の添加剤混合物を動力伝達用流体、高耐久性油圧油、パワーステアリング用流体などで通常用いられそして/またはそれらに適した基油に入れて用いることでも有利な結果を達成する。また、ギア潤滑油、産業用油、ポンプ用油および他の潤滑油組成物もこれに本発明の添加剤混合物を混合することで利益を得るであろう。
【0094】
完成潤滑油組成物に本発明の共重合体に加えて他の添加剤を含有させることも可能である。例えば、そのような潤滑油配合物に、このような配合物に必要な特性を与えるであろう追加的添加剤を含有させてもよい。そのような種類の添加剤には、とりわけ、追加的粘度指数改良剤、抗酸化剤、腐食抑制剤、洗浄剤、分散剤、流動点降下剤、抗摩耗剤、消泡剤、乳化破壊剤、極圧剤および摩擦改良剤が含まれる。
【0095】
そのような潤滑油配合物を調製する時、本添加剤を有効成分が炭化水素油、例えば潤滑
用鉱油または他の適切な溶媒などに10から80重量%入っている濃縮液の形態で導入するのが一般的な実施である。
【0096】
通常は、完成潤滑油、例えばクランクケースモーターオイルなどを生じさせる時にそのような濃縮液を添加剤パッケージ重量部当たり3から100、例えば5から40重量部の潤滑油を用いて希釈してもよい。そのような濃縮液の目的は、勿論、様々な材料の取り扱いの困難さおよび厄介さを低くすることばかりでなく最終混合物への溶解または分散を助長することにある。このように、本基礎重合体および/または多官能ポリアルキルアクリレート共重合体の総量を通常は潤滑油画分に例えば10から50重量%入れた濃縮液の形態で用いることになるであろう。1つの態様では、完成潤滑油中の本基礎重合体および/または多官能ポリアルキルアクリレート共重合体系分散性粘度改良剤の総量を約0.1重量パーセントから約20重量パーセント、特に約1重量パーセントから約5.0重量パーセント、より特別には約0.5重量パーセントから約2.5重量パーセントにする。
【0097】
本発明の基礎重合体および/または多官能ポリアルキルアクリレート共重合体を一般的には潤滑粘度の油を含んで成る潤滑油ベースストック(lube oil base stock)との混合物の状態で用いるが、そのような油には、天然の潤滑油、合成の潤滑油およびこれらの混合物が含まれる。天然油には動物油および植物油(例えばヒマシ油、ラード油)、液状石油、そしてパラフィン型、ナフテン型およびパラフィン−ナフテン混合型の潤滑用鉱油に水素化精製、溶媒処理または酸処理を受けさせたものが含まれる。石炭または頁岩から得られる潤滑粘度の油もまた有用な基油である。本発明で用いる合成潤滑油には、かなり多数の通常用いられる合成炭化水素油の中の油が含まれ、それには、これらに限定するものでないが、ポリ−アルファ−オレフィン、アルキル置換芳香族、アルキレンオキサイド重合体、コポリマー、ターポリマー、インターポリマーおよびそれらの誘導体(この場合、末端のヒドロキシル基がエステル化、エーテル化などによる修飾を受けている)、ジカルボン酸のエステルおよびケイ素が基になった油が含まれる。
【0098】
本発明は、更に、運搬手段における潤滑油排出間隔を長くすることを意図した方法にも向けたものである。前記方法は、この上に記述した潤滑油組成物を前記運搬手段に添加しそしてそれのクランクケース内で機能させることを含んで成る。
【0099】
以下の実施例に本発明の新規な重合体の製造および使用を例示する。量、パーセント、部および比率は全部特に明記しない限り重量である。
【実施例】
【0100】
最初に、アシル化アルキルメタアクリレート共重合体を下記の様式で調製した。窒素雰囲気および2個の混合用羽根(反応中に300rpmで回転)を装備しておいた2リットルの反応槽にメタアクリル酸ブチル(「BMA」、MW=142.2)、メタアクリル酸ラウリル(「LMA」、MW=262.2)およびメタアクリル酸セチル(「CMA」、MW=327.6)を無水マレイン酸(「MA」、MW=98.06)、ラウリルメルカプタン(「LSH」)および加工油と一緒に仕込んだ。その反応混合物を前以て約85℃に加熱しておいた後、アゾイソブチロニトリル(ABN)を加える。反応を約79−85℃で約4時間進行させた後、約100℃で1時間進行させた。ある場合には、生成物の注ぎを容易にする目的で、この段階で追加的油を加えてもよい。その反応マスを約120℃に加熱しかつ真空をかけることで未反応の無水マレイン酸およびフリーラジカル開始剤を除去した。重合中の反応体の重量比およびそのようにして得た結果としてもたらされたアシル化共重合体の分子量を表1に示す。
【0101】
【表1】

【0102】
次に、そのようにして得たアシル化アルキルメタアクリレートを更にいろいろなポリアミンと反応させた。
【0103】
[実施例7]
実施例5のアシル化アルキルメタアクリレート共重合体と加工油をこの混合物を窒素ブランケット下に維持しながら機械的撹拌を伴わせて135℃の温度で混合した。前記共重合体が溶解した後、N−フェニル−p−フェニレンジアミン(「NPPDA」、MW=184.0)とエトキシル化ラウリルアルコール[「ELA」、SURFONIC(商標)L24−2、Huntsman Chemical Company]の混合物を加え、その結果として得た反応混合物を窒素雰囲気下で機械的に混合しながら160から170℃の範囲に約3時間維持した。結果として生じた多官能化重合体反応生成物が入っている反応混合物を濾過した。%N=0.36。
【0104】
[実施例8]
実施例3のアシル化アルキルメタアクリレート共重合体(310g)と加工油(77.4g)をこの混合物を窒素ブランケット下に維持しながら機械的撹拌を伴わせて140℃の温度で混合した。前記共重合体が溶解した後、17.05gのN−フェニル−p−フェニレンジアミン(「NPPDA」、MW=184.0)と8.54gのエトキシル化ラウリルアルコール[「ELA」、SURFONIC(商標)L24−2、Huntsman Chemical Company]の混合物を加え、その結果として得た反応混合物を窒素雰囲気下で機械的に混合しながら140℃の範囲に約6時間維持した。次に、その結果として得た反応混合物に真空ストリッピングを受けさせた。%N=0.65。
【0105】
[実施例9]
窒素雰囲気で満たされている反応槽に実施例2のアシル化アルキルメタアクリレート共重合体を104gおよび加工油を452g仕込んだ。この混合物を約160Cに加熱した後、全体で3.0gの4,4’−ジアミノジフェニルアミンを6時間かけて等しく3分割して加えた。その反応混合物を160Cに更に6時間保持した後、熱濾過した。%N=0.08。
【0106】
[実施例10]
実施例6のアシル化アルキルメタアクリレート共重合体(168.8g)と加工油(610.9g)をこの混合物を窒素ブランケット下に維持しながら機械的撹拌を伴わせて140℃の温度で混合した。前記共重合体が溶解した後、7.72gのN−フェニル−p−フェニレンジアミン(「NPPDA」、MW=184.0)と8.54gのエトキシル化ラウリルアルコール[「ELA」、SURFONIC(商標)L24−2、Huntsman Chemical Company]の混合物を加え、その結果として得た反応混合物を窒素雰囲気下で機械的に混合しながら140℃の範囲に約8時間維持した。次に、その結果として得た反応混合物に真空ストリッピングを受けさせた後、それをセライトの上に置いて濾過した(%N=0.19)。
【0107】
[実施例11]
実施例7の多官能化重合体反応生成物を大型車両用ディーゼル15 W40 PC−10プロトタイプ配合物の中に混合した。その配合物の実施例7の多官能化重合体反応生成物の含有量を6.67重量%にして通常のOCP粘度指数改良剤の含有量を5.9重量%にした。比較油として、同じ通常のOCP VI改良剤の含有量を7.6重量%にする以外は同じ種類の基油を用いて比較実施例1を調合した。その結果として得た混合物が示した粘度を表2に示す。これらの潤滑用流体が示す膜形成特性を高振動数往復リグ(High Frequency Reciprocating Rig)(HFRR)を用いて測定した。
【0108】
【表2】

【0109】
潤滑用流体が示す膜形成特性は高振動数往復リグ(HFRR)(SAE 2002−01−2793、Mark T.Devlin他による「Film Formation Properties of Polymers in the Presence of Abrasive Contaminants」を参照)を用いて測定可能である。この試験では、鋼製ボールが潤滑油の中に浸漬している鋼製ディスクを横切るように往復する。前記ボールとディスクに電流を流す。境界膜が生じると前記ボールとディスクが分離されることで前記ボールとディスクの間を流れる電流が減少し、それを抵抗パーセントとして記録する。境界膜は抵抗パーセントが高ければ高いほど強固である。
【0110】
ここに、HFRR膜の結果を表3に示すが、当該流体にカーボンブラックをいろいろな量で添加しそしてそのようにして汚染させた流体を1−2mLの量でHFRRセルの中に入れる。この試験中、前記ボールが前記ディスクを横切って1mmの路に渡って20Hzの振動数で往復する。10分間継続する試験中に前記ボールと前記ディスクの間に0.1Nの負荷をかける。10分間の試験全体に渡って境界膜の形成を測定して、平均膜測定値(抵抗パーセント)を報告する。
【0111】
【表3】

【0112】
境界膜が生じると前記ボールとディスクが分離されることで前記ボールとディスクの間を流れる電流が減少し、それを抵抗パーセントとして記録する。境界膜は抵抗パーセントが高ければ高いほど強固である。
【0113】
本発明を特に個々の方法および生成物の態様を具体的に言及することで説明してきたが、本開示が基になったいろいろな変形、修飾形および応用形が存在する可能性がありそしてそれらを本請求項で定義する如き本発明の精神および範囲内に入れることを意図することは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】単独図に、本発明の非限定例示に従う共重合体(基礎重合体)および官能化共重合体生成物を製造するに適した反応スキームを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)アルキル基が炭素原子を1から4個有するアルキルアクリレートの1番目のサブグループとアルキル基が炭素原子を8から16個有する2番目のサブグループとアルキル基が炭素原子を17から30個有する3番目のサブグループを含む異なる3つのサブグループを含んで成る1番目の組のアルキルアクリレートを含んで成る単量体と、ii)オレフィンカルボキシル系アシル化剤を含んで成る2番目の単量体を、前記1番目と2番目の単量体のフリーラジカル重合に有効な条件下で反応させてアシル化アルキルアクリレート共重合体を含んで成る基礎重合体を生じさせ、場合により、前記基礎重合体を更にアミン化合物と反応させて多官能重合体系粘度改良剤を生じさせることで得た付加反応生成物。
【請求項2】
前記1番目と2番目と3番目のサブグループのアルキルアクリレート単量体の重量比がそれぞれ約5:95:0.05から約35:55:10の範囲である請求項1記載の付加反応生成物。
【請求項3】
前記アルキルアクリレートが一般構造:
【化1】

[ここで、Rは水素またはC1−C5アルキル基であり、そしてRは非置換もしくは置換C1−C30アルキル基であるが、但しRが前記1番目と2番目と3番目のサブグループのアルキルアクリレート単量体が前記モル比になるに有効なように選択されることを条件とする]
で表される請求項2記載の付加反応生成物。
【請求項4】
がメチルである請求項3記載の付加反応生成物。
【請求項5】
前記2番目の単量体が無水不飽和ジカルボン酸またはこれの相当する酸もしくはエステルを含んで成る請求項1記載の付加反応生成物。
【請求項6】
前記2番目の単量体が無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水ハロマレイン酸、無水アルキルマレイン酸、マレイン酸、フマル酸、無水アクリレート、無水メタアクリレートおよびこれらの組み合わせおよび誘導体から成る群から選択される請求項1記載の付加反応生成物。
【請求項7】
前記1番目の単量体がメタアクリレートを含んで成りそして前記2番目の単量体が無水マレイン酸を含んで成る請求項1記載の付加反応生成物。
【請求項8】
前記基礎重合体が前記1番目の組のアルキルアクリレート単量体に由来する単量体単位を約99.9から約80重量パーセントおよびオレフィン系アシル化剤単量体を約0.1から約20重量パーセント含んで成り得る請求項7記載の付加反応生成物。
【請求項9】
前記基礎重合体の数平均分子量が約50,000から約1,000,000の範囲である請求項8記載の付加反応生成物。
【請求項10】
前記基礎重合体の数平均分子量が約50,000から約500,000の範囲である請求項8記載の付加反応生成物。
【請求項11】
前記基礎重合体の重量平均分子量が約100,000から約1,000,000の範囲である請求項8記載の付加反応生成物。
【請求項12】
前記基礎重合体の重量平均分子量が約20,000から約1,000,000の範囲である請求項8記載の付加反応生成物。
【請求項13】
前記アミン化合物が芳香族アミンおよび脂肪族アミンおよびこれらの組み合わせから成る群から選択される請求項1記載の付加反応生成物。
【請求項14】
前記アミン化合物がN−フェニルフェニレンジアミンおよび4,4−ジアミノジフェニレンアミンから選択される請求項1記載の付加反応生成物。
【請求項15】
前記アミン化合物がジアミンまたはモノアミンを含んで成る請求項1記載の付加反応生成物。
【請求項16】
数平均分子量が約50,000から約1,000,000の範囲の多官能重合体系粘度改良剤を含んで成る請求項1記載の付加反応生成物。
【請求項17】
有効成分を基準にして担体または希釈用油を20から90重量パーセントおよび請求項1記載の付加反応生成物を約10から約80重量パーセント含有する添加剤濃縮液。
【請求項18】
潤滑粘度の油を主要量で含有しかつ請求項1記載の付加反応生成物を主要でない量で含有して成る潤滑油組成物。
【請求項19】
前記付加反応生成物が約0.5重量パーセントから約18重量パーセントの量で存在する請求項18記載の潤滑油組成物。
【請求項20】
前記潤滑粘度の油が天然油、合成油およびこれらの混合物から成る群から選択される請求項18記載の潤滑油組成物。
【請求項21】
数平均分子量が約50,000から約1,000,000の多官能重合体系粘度改良剤であって、
【化2】

[ここで、構造IIaおよびIIbに関して、mは、nの値の0.1%から20%の範囲であるとして定義され、mとnの合計は前記多官能重合体粘度改良剤が50,000から約1,000,000の分子量を有する範囲であり、Xは、アミン基の窒素を通して分子と結合している官能化用アミンに由来する部分を表し、Rは水素またはC1−C5アルキル基であり、そしてRは非置換もしくは置換C1−C30アルキル基であるが、但しRが前記1番目と2番目と3番目のサブグループのアルキルアクリレート単量体が前記モル比になるに有効なように選択されることを条件とする]
を含んで成る構造IIaおよびIIbで表される化合物の組み合わせを含んで成る粘度改良剤。
【請求項22】
内燃機関のトランスミッションを潤滑化する方法であって、前記機関の前記トランスミッションを請求項18記載の潤滑油組成物によって潤滑化することを含んで成る方法。
【請求項23】
内燃機関を潤滑化する方法であって、前記機関のクランクケースに請求項18記載の潤滑油組成物を添加することを含んで成る方法。
【請求項24】
前記内燃機関がディーゼルエンジン、火花点火エンジンおよび排ガス再循環エンジン(EGR)エンジンから成る群から選択される請求項23記載の方法。
【請求項25】
共重合体系VI改良剤を製造する方法であって、
i)アルキル基が炭素原子を1から4個有するアルキルアクリレートの1番目のサブグループとアルキル基が炭素原子を8から16個有する2番目のサブグループとアルキル基が炭素原子を17から30個有する3番目のサブグループを含む異なる3つのサブグループを含んで成る1番目の組のアルキルアクリレートを含んで成る単量体と、ii)オレフィンカルボキシル系アシル化剤を含んで成る2番目の単量体を、前記1番目と2番目の単量体のフリーラジカル重合に有効な条件下で反応させることで数平均分子量が約50,000から1,000,000の範囲のアシル化アルキルアクリレート共重合体を含んで成る基礎重合体を生じさせ、そして場合により、
前記基礎重合体をアミン化合物と反応させることで多官能重合体系粘度改良剤を生じさせてもよい、
ことを含んで成る方法。
【請求項26】
前記基礎重合体のMwを約100,000から約1,000,000にする請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記基礎重合体とアミン化合物の反応を約120℃から約180℃の範囲の温度で実施する請求項25記載の方法。
【請求項28】
前記多官能重合体系粘度改良剤が
【化3】

[ここで、構造IIaおよびIIbに関して、mは、nの値の0.1%から20%の範囲であるとして定義され、mとnの合計は前記多官能重合体粘度改良剤が50,000から約1,000,000の分子量を有する範囲であり、Xは、アミン基の窒素を通して分子と結合している官能化用アミンに由来する部分を表し、Rは水素またはC1−C5アルキル基であり、そしてRは非置換もしくは置換C1−C30アルキル基であるが、但しRが前記1番目と2番目と3番目のサブグループのアルキルアクリレート単量体が前記モル比になるに有効なように選択されることを条件とする]
を含んで成る構造IIaおよびIIbで表される化合物の組み合わせを含んで成る請求項25記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−31477(P2008−31477A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188364(P2007−188364)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】