説明

アルキン類及び1,3−双極子機能性化合物とアルキン類を反応させる方法

1,3−双極子−機能性化合物(例えば、アジド機能性化合物)を環化反応においてある種のアルキンと反応して、複素環式化合物を形成することができる。有用なアルキン(例えば、歪んだ環式アルキン)及びこのようなアルキンを製造する方法もまた開示される。1,3−機能性化合物とアルキンとの反応は、基質への生体分子の固定化を含む様々な応用に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、全体として参照により本明細書に援用される、2007年11月21日に出願された米国仮特許出願第61/004,021号;2007年12月14日に出願された同第61/007,674号;2008年7月25日に出願された同第61/137,061号の利益を主張する。
【0002】
政府による財政的支援
本発明は、米国国立衛生研究所の生物医学複合糖質の研究資源センターからの助成金による政府支援でなされた(認可番号P41−RR−5351)。
【背景技術】
【0003】
背景
バイオ直交反応は、互いを材料する反応であって、各材料は、インビボで見出される官能基との制限された反応性を有するか、又は実質的に反応性がない。アジドと末端アルキンとの効率的反応は、即ち、「クリック」化学の最も幅広く研究された例であり、バイオ直交反応の有用な例として知られている。特に、末端アルキン類を用いてアジドの1,3−環化され、安定なチアゾール類が得られるCu(I)(例えば、Binder et al.,Macromol.Rapid Commun.2008,29:952−981)は、タンパク質、核酸、脂質、及び単糖類を含む様々な生体分子にタグを付けるために使用されている。付加環化はまた、活性に基づくタンパク質プロフィーリング、酵素活性のモニターリング、並びにマイクロアレイ及び低分子ライブラリーの化学的合成に使用されている。
【0004】
アジド類を生体分子にインストールするための魅力的なアプローチは、代謝標識に基づくものであり、それにより、アジド含有の生合成前駆体が、細胞の生合成機構を用いて生体分子に組み込まれる。このアプローチは、様々な反応性プローブを用いた、生物系のタンパク質、グリカン、及び脂質にタグを付けるために使用されている。これらのプローブは、単糖選択性糖タンパク質のマッピングを促進し、グリコシル化部位を同定することができる。また、アルキンプローブは、アジド修飾された生体分子の細胞表面イメージングのために使用され、特に魅力的なアプローチは、[3+2]付加環化による非蛍光性前駆体由来の蛍光プローブの生成を伴う。
【0005】
アジドと末端アルキンとの反応の明らかな有用性にも関わらず、この反応を用いて生物系における応用は、銅触媒の望ましくない存在を含む因子によって特に制限されてきた。このようにして、新規なバイオ直交反応のための絶え間ない満たされない必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
一局面では、本発明は、アルキンを提供し、アルキンを製造する方法を提供する。一態様では、アルキンは、式:
【0007】
【化1】

【0008】
であり、式中、各R1は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステル、亜硝酸エステル、硫酸エステル、及びC1−C10有機基からなる群から選択され;各R2は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステル、亜硝酸エステル、硫酸エステル、及びC1−C10有機基からなる群から選択され;Xは、C=O、C=N−OR3、C=N−NR34、CHOR3、又はCHNHR3を表し;並びに、各R3及びR4は、独立して、水素又は有機基である(例えば、切断可能なリンカーを含むことができる)。また、また、例えば、本願明細書に記載される薬物の送達を制御するために有用であり得る、重合体、又は任意に共重合体ミセルから形成可能な共重合体とある種のアルキンの混和物が提供される。
【0009】
別の態様では、アルキンは、少なくとも2つの末端を含む切断可能なリンカー断片;切断可能なリンカー断片の第1末端に結合したアルキン断片;及び、切断可能なリンカー断片の第2末端に結合したビオチン化断片を含む。好ましい態様では、アルキン断片には、歪んだ環状アルキン断片が含まれる。ある種の態様では、アルキンは、さらに、少なくとも1つの重質量(heavy mass)アイソトープを含む。任意に、アルキンは、さらに、蛍光標識などの少なくとも1つの検出可能な標識を含む。
【0010】
本明細書において上述されるアルキンなどのアルキンは、環化反応において、少なくとも1つの1,3−双極子機能性化合物(例えば、アジド機能性化合物、ニトリル酸化物機能性化合物、ニトロン機能性化合物、アゾキシ機能性化合物、及び/又はアシルジアゾ機能性化合物)と反応させ、複素環式化合物を形成することができ、添加触媒(例えば、Cu(I))が実質的に存在しないことが好ましい。任意に、反応は、生細胞内又は生細胞の表面上で行うことができる。ある種の態様では、少なくとも1,3−双極子機能性化合物には、1,3−双極子機能性生体分子、例えばペプチド、タンパク質、糖タンパク質、核酸、脂質、単糖、オリゴ糖、及び/又は多糖が含まれる。任意に、1,3−双極子機能性生体分子は、アフィニティー標識などの検出可能な標識を含む。また、アルキンと少なくとも1つの1,3−双極子機能性化合物によって形成される複素環式化合物が本明細書中に開示される。ある種の態様では、アルキンと少なくとも1つの1,3−双極子機能性化合物との反応は、生細胞内又は生細胞の表面上で行うことができる。
【0011】
複素環式化合物がビオチン化断片を含む態様については、複素環式化合物は、アビジン及び/又はストレプトアビジンなどの、ビオチンに結合する化合物に結合することができる。
【0012】
別の局面では、本発明は、表面上に、本明細書に記載されているアルキンを有する基質を提供する。基質は、レジン、ゲル、ナノ粒子、又はそれらの組み合わせの形状であってもよい。任意に、基質は3次元マトリックスである。好ましい態様では、式IのアルキンおX基は、基質の表面への結合点を表す。このような基質は、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、核酸、脂質、単糖、オリゴ糖、及び/又は多糖などの生体分子を固定するために有用であり得る。また、3次元マトリックス上に固定されたタンパク質などの固定化された生体分子を含む製品も本明細書に開示されている。
【0013】
本明細書に開示されている組成物及び方法は、当該技術分野において知られているバイオ直交反応を超えた利点を提供することができる。例えば、Baskin et al.,QSAR Comb.Sci.2007,26:1211−1219を参照されたい。
例えば、驚くべきことに、本明細書に記載されている式Iで表されるアルキン(例えば、式中、XはC=O、C=N−OR3、C=N−NR34、CHOR3、又はCHNHR3を表し;各R3及びR4は、独立して、水素又は有機基を表す)は、他の歪んだ環状アルキン(例えば、式中、XはCH2を表す)よりも1,3−双極子機能性化合物に対する高い反応性を有することが見出されている。例えば、Codelli,et al.,J.Am.Chem.Soc.2008,130:11486−11493;Johnson et al.,Chem.Commun.2008,3064−3066;Sletten et al.,Organic Letters 2008,10:3097−3099;and Laughlin et al.,Science 2008,320:664−667を参照されたい。さらに、式Iで表される様々なアルケンを製造するための柔軟性を有する好都合な方法が本明細書中に開示されている。さらに、式Iで表されるアルキンは、アジドだけでなく、様々な他の1,3−双極子機能性化合物とも反応する能力を有する。
【0014】
定義:
用語「含む」及びその変形は、これらが明細書及び特許請求の範囲に見られる限定された意味を有しない。本明細書で使用するとき、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つの」、及び「1以上の」は交換可能に使用される。
【0015】
本明細書で使用するとき、用語「又は(or)」は、一般には、使用の内容が明確に他を指示していなければ、「及び/又は(and/or)」を含む意味において使用される。
【0016】
また、本明細書において、端点による数値域の引用には、その範囲内に含まれる全ての数を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0017】
上記の概要は、各々、本発明の開示された態様又は全ての実施を記載することを意図していない。以下の説明は、実例となる態様をより具体的に例示する。本出願の全体でいくつかの部分では、ガイダンスが実施例のリストを通じて提供され、実施例が様々な組み合わせで使用され得る。各例では、記載されたリストは、代表的なグループとしてのみ役立ち、排他的なリストとして解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】アジド機能性生体分子を標識するための例示的な試薬を説明する。
【図2】スキーム1を説明する:例示的な試薬及び条件:a)TNSCl、ピリジン;b)Br2、CHCl3;c)LDA、テトラヒドロフラン;d)4−ニトロフェニルクロロギ酸エステル、ピリジン、CH2Cl3;e)N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、トリエチルアミン(TEA)。LDA=リチウムジイソプロピルアミド、TBS=tert−ブチルジメチルシリル。
【図3】スキーム2を説明する:例示的な試薬及び条件:a)メタノール中の化合物3。
【図4】アジド機能性アミノ酸及び単糖を用いた化合物3の例示的な金属不含付加環化を説明する。Boc=tert−ブトキシカルボニル、TDS=テキシルジメチルシリル。
【図5】スキームを説明する:例示的な試薬及び条件:a)1、トリエチルアミン、DMF、室温、78%;b)20%トリフルオロ酢酸(TFA)、室温、95%;c)2、TEA、DMF、室温、68%。
【0019】
【図6】化合物2及び9を用いた細胞表面標識の態様を説明する。Ac4ManNAz(25μmol濃度)の不存在又は存在下で3日間増殖さえたJurkat細胞は、a)化合物2及び9(30μmol濃度)とともに、0〜180分間、又はb)化合物2及び9(0〜100μmol濃度)とともに、1時間、室温でインキュベートされた。次に、細胞をアビジン−FITCとともに、15分間、4℃でインキュベートされ、その後、細胞溶解物を蛍光強度について評価した。試料を次のように指示する:2(白丸)又は9(白四角)とともにインキュベートされたブランク細胞、及び2(黒丸)又は(黒四角)とともにインキュベートされたAc,ManNAz細胞。
【図7】化合物を用いた細胞標識手法及び付加環化反応の毒性評価の態様を説明する。Ac4ManNAz(25μmol濃度)の不存在下(a)又は存在下(b)での3日間のJurkat細胞増殖は、化合物9(0〜100μmol濃度)とともに1時間、室温でインキュベートされた。細胞を3回洗浄し、次に、フルオロセインをコンジュゲートさせたアビジンとともに15分間、4℃でインキュベートした。細胞生存率は、トリパンブルー排出を用いた手法中の異なる点;9(黒色)を用いたインキュベーション後、アビジン−FITCインキュベーション(灰色)後、及び完全な手法(白色)後に評価された。同条件下でCu1Cl(1mM)による処理は、ブランク及びAc4ManNAz処理された細胞について、約98%の細胞死をもたらした。
【図8】化合物9及びアビジン−Alexa Fluor488で標識された細胞の態様の蛍光画像を示す。Ac4ManNAz(100μmol濃度)の不存在(d−f)又は存在(a−c)下で3日間のCHO細胞増殖は、化合物9(30μmol濃度)とともに1時間、4℃(a、d)又は室温(b、c、e、f)インキュベートされた。次に、細胞は、アビジン−Alexa488 Fluor488とともに15分間、4℃でインキュベートされ、洗浄後、固定し、遠赤色の蛍光色素TO−PROで核を染色し、画像にし(a、b、d、e)、又は洗浄後、固定前に1時間、37℃でインキュベートし、核を染色し、画像にした(c、f)。Alexa Fluor(488nm)及びTO−PRO(633mm)で標識された細胞の画像をまとめたものを示す。
【図9】図9は、アルキン断片、切断可能なリンカー断片、及びビオチン化断片を含む例示的な化合物を示す。
【図10】スキーム4を説明する:例示的な反応条件:a)DMF、80℃、70%;b)チオ酢酸カリウム(KSAc)、DMF、60℃、90%、c)NH2NH2、エタノール(EtOH)、還流、95%;d)N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、DMF、0℃、56%;e)DIPEA、DMF、室温、85%。
【0020】
【図11】スキーム5を説明する:例示的な反応条件:a)p−トルエンスルホン(TsOH)、室温、81%;b)DMF、80℃、86%;c)0.1N HCl、EtOH、室温、90%;d)9、NaH、DMF、0℃、88%;e)0.1N HCl、EtOH、室温、88%;f)CCl4、PPh3、ジクロロメタン(DCM)、室温、96%;g)KSAc、DMF、60℃、90%;h)NH2NH2、EtOH、還流、95%;次に、(Boc)2O、TEA、EtOH、91%;i)20% TFA、DCM、室温、95%;j)DIPEA、DMF、0℃;次に、(Boc)2O、TEA、EtOH、2工程で60%;k)20% TFA、DCM、室温、次に8DIPEA、DMF、室温、2工程で80%。
【図12】例示的な切断可能なリンカーを示す。
【図13】例示的なアルキン及び反応性ジエンを示す。
【図14】スキーム6を説明する:例示的な反応受験:a)TMSCH22、BF3OEt2、DCM、−10℃、3時間、71%;b)NaBH4、1:1のEtOH/THF、室温、7時間、100%;c)Brz、CHCl3、室温、0.5時間、58%;d)LDA、THF、0.5時間、57%;e)Dess−Martin試薬、DCM、0.5時間;f)4−ニトロフェニルクロロギ酸エステル、ピリジン、DCM、18時間 、92%;g)tris(エチレングリコール)−1,8−ジアミン、TEA、DCM、室温、3時間、80%;h)ブロモ酢酸、NaH、THF、22%;i)tris(エチレングリコール)−1,8−ジアミン、HATUカップリング試薬、DIPEA、DMF、室温、2時間、75%;j)N−{2−[2−(2−aアミノ−エトキシ)−エトキシ]−エチル}−2−アミノオキ−アセトアミド、AcOH、1:1のDCM/MeOH、63%。
【図15】化合物61〜68及び二次定数を示す。
【0021】
【図16】スキーム7を説明する:例示的な試薬及び条件:a)LiAlH4、AlCl3,Et2O、0℃、61%;b)Br2、CHCl3、0℃、58%;c)カリウムt−ブトキシド(t−BuOK)、THF、室温、25%。
【図17】スキーム8を説明する:例示的な試薬及び条件:a)TEA、CH2Cl2、室温、77%。
【図18】スキーム9を説明する:例示的な試薬及び条件:a)NaH、臭化ベンジル、DMF、室温、59%;b)無水酢酸((Ac2O)、ピリジン、室温、81%。
【図19】スキーム10を説明する:例示的な試薬及び条件:a)LDA、Et3SiCl、THF、room temperature、85%;b)SELECTFLUORフッ素化試薬、DMF、室温、66%;c)LDA、Et3SiCl、THF、室温、79%;d) SELECTFLUORフッ素化試薬、DMF、室温、51%;e)NaBH4、EtOH、室温、78%;f)Br2、CHCl3、0℃、46%;g)c)t−BuOK、THF、室温、49%。
【図20−1】薬物送達のための共重合体ミセルの使用を説明する。A)水中で自己凝集されたポリエステル及びポリエチレングリコール基。B)薬物送達デバイスとして、官能化された共重合体ミセル。
【図20−2】C)共重合ミセルのオキシム修飾されたアルキン誘導体。
【図21】4−ジベンゾシクロオクチン官能性を有する巨大分子の製造を示す。
【図22】種々のニトロンを有する4−ジベンゾシクロオクチノールの付加環化を示す。化合物は6mMの最終濃度で1:1の比率で混合され指示された時間で反応させた。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書に記載されるアルキンなどのアルキンは、環化反応における少なくとも1つの1,3−双極子機能性化合物と反応させ、複素環式化合物を形成することができる。好ましい態様では、反応は、添加触媒(例えば、Cu(I))が実質的に存在せずに得ることができる。例示的な1,3−双極子機能性化合物には、限定されないが、アジド機能性化合物、ニトリル酸化物機能性化合物、ニトロン機能性化合物、アゾキシ機能性化合物、及び/又はアシルジアゾ機能性化合物が挙げられる。
【0023】
例示的なアルキンには、式:
【0024】
【化2】

【0025】
で表されるアルキンが含まれ、式中、各R1は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステル、亜硝酸エステル、硫酸エステル、及びC1−C10有機基からなる群から選択され(及び好ましくはC1−C10有機基である);各R2は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステル、亜硝酸エステル、硫酸エステル、及びC1−C10有機基からなる群から選択され(及び好ましくはC1−C10有機基である);Xは、C=O、C=N−OR3、C=N−NR34、CHOR3、又はCHNHR3を表し;並びに各R3及びR4は、独立して、水素又は有機基を表す(いくつかの態様では有機基である)。好ましい態様では、各R1は水素を表し、及び/又は各R2は水素を表す。場合により、R3は、共有結合した有機色素(例えば、蛍光色素)を含む。
【0026】
本明細書で使用するとき、用語「有機基」は、本発明の目的で使用され、脂肪族基、環式基、又は脂肪族基と環式基の組み合わせ(例えば、アルカリル基及びアラルキル基)として分類される炭化水素基を意味する。本発明との関連で、本発明の化合物に適した有機基は、1,3−双極子機能性化合物とのアルキンの反応と干渉せずに、複素環式化合物を形成する有機基である。本発明との関連で、用語「脂肪族基」は、飽和又は不飽和の線状又は分岐状の炭化水素基を意味する。この用語は、例えば、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基を含むように使用される。用語「アルキル基」は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、アミル、ヘプチルなどを含む飽和の線状又は分岐状の一価炭化水素基を意味する。用語「アルケニル基」は、1以上のオレフィン系の不飽和基(即ち、炭素−炭素二重結合)を有する不飽和の線状又は分岐状の一価炭化水素基を意味する(例えばビニル基である)。用語「アルキニル基」は、1以上の炭素−炭素三重結合を有する不飽和の線状又は分岐状の一価炭化水素基を意味する。用語「環式基」は、脂環式基、芳香族基、又は複素環式基として分類される閉環炭化水素基を意味する。用語「脂環式基」は、脂環式基に似た性質を有する環式炭化水素基を意味する。用語「芳香族基」又は「アリール基」は、一価又は多核芳香族炭化水素基を意味する。用語「複素環式基」は、環の1以上の原子が炭素以外の元素(例えば、窒素、酸素、硫黄など)である閉環炭化水素を意味する。
【0027】
本出願を通して使用されるある種の用語の検討及び詳述を単純化する手段として、用語「基(group)」及び「部分(moiety)」は、置換を可能にするか又は置換されてもよい化学種と、置換できないか及び置換されない化学種とを区別するために使用される。このようにして、用語「基」は化学置換を記載するために使用される場合、記載される化学的材料には、置換されていない基、及び例えば、鎖内で過酸化でないO、N、S、Si、又はF原子を有する基、並びにカルボニル基又は他の慣用的な置換基を含む。用語「部分」が化学的化合物又は置換基を記載するために使用される場合、置換されていない化学的材料だけが含まれることが意図される。例えば、句「アルキル基」は、メチル、エチル、プロピル、tert−ブチルなどの純粋な開鎖の飽和炭化水素アルキル置換基だけでなく、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルスルホニル、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシルなど、当該技術分野において知られているさらなる置換基を有するアルキル置換基を含むことが意図される。このようにして、「アルキル基」は、エーテル基、ハロアルキル、ニトロアルキル、カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル、スルホアルキルなどが含まれる。他方、句「アルキル部分」は、メチル、エチル、プロピル、tert−ブチルなど、純粋な開鎖の飽和炭化水素アルキル置換基だけの含むことが意図される。
【0028】
式Iで表されるある菌は、典型的には、歪んだ環状アルキンである。驚くべきことに、本明細書に記載される式Iで表されるアルキン(例えば、XはC=O、C=N−OR3、C=N−NR34、CHOR3、又はCHNHR3を表し;各R3及びR4は、独立して、水素又は有機基を表す)は、他の歪んだ環状アルキン(例えばXはCH2を表す)よりも1,3−双極子機能性化合物に対して高い反応性を有することを見出したことが判明した。
【0029】
式Iで表されるアルキンのある種の態様では、Xは、C=N−OR3(ここで、R3は有機基である)を表すことができる。例えば、R3は、式−(CH2aC(O)Yを有することができ、ここで、aは1〜3であり;YはOH又はNHR5を表し;R5は水素又は1級アミン含有有機基のビオチン化生成物を表す。1級アミン含有基は、例えば、式−(CH2CH2O)b(CH2c−Ld−(CH2CH2O)e(CH2fNH2及び/又は−(CD2CD2O)b(CD2c−Ld−(CD2CD2O)e(CD2fNH2であってもよく、ここで、b=0〜100(好ましくは1〜10);c=0〜100(好ましくは1〜10);d=0〜100(好ましくは1〜10);e=0〜100(例えば、10〜100);f=0〜100(好ましくは1〜10);Lは任意の切断可能なリンカー(例えばジスルフィド)である。
【0030】
式Iで表されるアルキンのある種の態様では、XはCHOR3を表すことができ、ここで、R3は、アルキル基、アリール基、アルカリル基、及びアラルキル基からなる群から選択される。例えば、R3は式−C(O)Zを有することができ、ここで、Zはアルキル基、OR6、又はNHR7を表し;R6及びR7は、各々、独立して、アルキル基、アリール基、アルカリル基、及びアラルキル基からなる群から選択される。ある種の態様では、R7は、1級アミン含有有機基のビオチン化生成物であってもよい。1級アミン含有基は、例えば、式−(CH2CH2O)b(CH2)C−Ld−(CH2CH2CO)e(CH2fNH2及び/又は−(CD2CD2O)b(CD2c−Ld−(CD2CD2O)e(CD2fNH2であってもよく、ここで、b=0〜100(好ましくは1〜10);c=0〜100(好ましくは1〜10);d=0〜100(好ましくは1〜10);e=0〜100(例えば、10〜100);f=0〜100(好ましくは1〜10);Lは任意の切断可能なリンカー(例えばジスルフィド)である。
【0031】
式Iで表される例示的なアルキンは、XがC=Oを表す種であり、式:
【0032】
【化3】

【0033】
で表されるアルキンである。
【0034】
式Iで表される別の例示的なアルキンは、XがCHOHを表す種であり、式:
【0035】
【化4】

【0036】
で表されるアルキンである。
【0037】
式Iで表される別の例示的なアルキンは、XがCHNH2を表す種であり、式:
【0038】
【化5】

【0039】
で表されるアルキンである。
【0040】
式Iで表される別の例示的なアルキンは、XはC=N−OR3を表す種であり、式:
【0041】
【化6】

【0042】
で表されるアルキンであり、ここで、R3は、水素又は有機を表す(いくつかの態様では有機部分である)。
【0043】
更なる例示的なアルキンは、少なくとも2つの末端を含む切断可能なリンカー断片;その切断可能なリンカー断片の第1末端に結合されたアルキン断片;及び切断可能なリンカー断片の第2末端に結合されたビオチン化断片を含むアルキンを含む。ある種の態様では、アルキン断片は、歪んだ環状アルキン断片を含む。ある種の態様では、アルキンは、さらに、少なくとも1つの重質量アイソトープを含む。場合により、アルキンは、少なくとも1つの検出可能な標識(例えば、蛍光標識)を含む。
【0044】
式Iで表されるアルキンのある種の態様では、Xは、重合体基又は共重合体基を表すことができる。Xが共重合体基を表す態様については、共重合体基は、親水性セグメント及び疎水性セグメントを含むことができる。例えば、共重合体基は、式−[CH2CH2O]n−[C(O)(CH25O]m−Hで表される断片を含むことができ、ここで、n=0〜100(例えば、10〜100)、及びm=0〜100(例えば、10〜100)である。水又は水性溶液の液滴が90°未満の接触角を示す表面は、通常、「親水性」と呼ばれる。疎水性材料と水との接触角は、典型的には90°を超える。
【0045】
また、式Iで表されるアルキンを調製する典型的な方法を本明細書に開示する。一態様では、この方法は、式:
【0046】
【化7】

【0047】
で表されるアルケンを臭素化して、式:
【0048】
【化8】

【0049】
で表される二臭化物を提供し、式XVで表される二臭化物を脱臭化水素化し、式:
【0050】
【化9】

【0051】
で表されるアルキンを提供することを含み、ここで、各R1は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステル、亜硝酸エステル、硫酸エステル、及びC1−C10有機基からなる群から選択され;各R2は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステル、亜硝酸エステル、硫酸エステル、及びC1−C10有機基からなる群から選択され;Xは、C=O、C=N−OR3、C=N−NR34、CHOR3、又はCHNHR3を表し;並びに各R3及びR4は、独立して、水素又は有機基を表す(例えば、切断可能なリンカーを含むことができる)。
【0052】
様々な1,3−双極子機能性化合物を用いて、本明細書に開示されるアルキンと反応させることができる。本明細書で使用するとき、「1,3−双極子機能性化合物」は、そこに結合された少なくとも1つの1,3−双極子基を有する化合物を含むことを意味する。本明細書で使用するとき、「1,3−双極子基」は、3つの原子の全体で非局在化した4つの電子を含む3原子π電子系を有する基を指すことが意図される。例示的な1,3−双極子基は、限定されないが、アジド、ニトリル酸化物、ニトロン、アゾキシ基、及びアシルジアゾ基が含まれる。ある種の態様では、1,3−双極子機能性化合物は、そこに結合した少なくとも1つ1,3−双極子基を有する生体分子であってもよい。場合により、少なくとも1つの1,3−双極子機能性化合物は、検出可能な標識(例えば、免疫圧政又はアフィニティーラベル)を含むことができる。
【0053】
1以上の1,3−双極子機能性化合物(例えば、アジド機能性化合物、ニトリル酸化物機能性化合物、ニトロン機能性化合物、アゾキシ機能性化合物、及び/又はアシルジアゾ機能性化合物)は、環化反応において反応し、複素環式化合物を形成するのに有効な条件下で、本明細書に記載されるアルキンと組み合わせることができる。好ましくは、複素環式化合物を形成させるのに有効な条件は、添加触媒が実質的には存在しないことを含むことができる。複素環式化合物を形成するのに有効な条件はまた、様々な溶媒(例えば、限定されないが、水性溶媒(例えば水)及び非水性溶媒;プロトン性溶媒及び非プロトン性溶媒;極性溶媒及び非極性溶媒;並びにそれらの組み合わせを含む)の存在又は不存在を含むことができる。複素環式化合物は、様々な温度範囲で形成することができ、0℃〜40℃(いくつかの態様では23℃〜37℃)の温度範囲は、生体分子が関与する場合に特に有用である。好都合には、反応時間は、1日未満であってもよく、場合により、1時間又はそれ未満である。
【0054】
ある種の態様では、1以上の1,3−双極子機能性化合物とアルキンとの間の環化反応は、生細胞内又は生細胞の表面上で行うことができる。このような反応はインビボ又はエクスビボで行うことができる。本明細書で使用するとき、用語「インビボ」は、対象の生体である反応を指す。本明細書で使用するとき、用語「エクスビボ」は、対象の生体から取り出された、例えば、単離された組織(例えば、細胞)での反応を指す。取り出すことができる組織には、例えば、初代細胞(例えば、直近に対象から取り出された細胞であり、組織培地で制限された増殖又は維持が可能である細胞)、培養細胞(例えば、組織培地で拡張された増殖又は維持が可能である細胞)、並びにそれらの組み合わせが含まれる。
【0055】
1,3−双極子機能性化合物の例示的な態様は、式R8−N3(例えば、原子価構造R8-N−N=N+によって表される)で表されるアジド機能性化合物であり、ここで、R8は、有機基(例えば、生体分子)を表す。場合により、R8は、検出可能な標識(例えば、アフィニティー標識)を含むことができる。
【0056】
式Iの例示的なアルキンとの式R8−N3で表されるアジド機能性化合物の環化反応は、式:
【0057】
【化10】

【0058】
で表される1以上の複素環式化合物を得ることができ、ここで、各R1は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステル、亜硝酸エステル、硫酸エステル、及びC1−C10有機基からなる群から選択され;各R2は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステル、亜硝酸エステル、硫酸エステル、及びC1−C10有機基からなる群から選択され;Xは、C=O、C=N−OR3、C=N−NR34、CHOR3、又はCHNHR3を表し;各R3及びR4は、独立して、水素又は有機基(例えば、切断可能なリンカーを含むことができる)を表し;並びに、R8は、有機基(例えば、生体分子、及び、場合により切断可能なリンカーを含むことができる)を表す。
【0059】
1,3−双極子機能性化合物の別の例示的な態様は、式R8−CNO(例えば、原子価構造R8+C=N−O-によって表される)で表されるニトリル酸化物機能性化合物であり、ここで、R8は、有機基(例えば、生体分子)を表す。場合により、R8は、検出可能な標識(例えば、アフィニティー標識)を含むことができる。
【0060】
式Iの例示的なアルキンとの式R8−CNOで表されるニトリル酸化物機能性化合物の環化反応は、式:
【0061】
【化11】

【0062】
で表される1以上の複素環式化合物を得ることができ、ここで、各R1は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステル、亜硝酸エステル、硫酸エステル、及びC1−C10有機基からなる群から選択され;各R2は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステル、亜硝酸エステル、硫酸エステル、及びC1−C10有機基からなる群から選択され;Xは、C=O、C=N−OR3、C=N−NR34、CHOR3、又はCHNHR3を表し;各R3及びR4は、独立して、水素又は有機基(例えば、切断可能なリンカーを含むことができる)を表し;並びに、R8は、有機基(例えば、生体分子、及び、場合により切断可能なリンカーを含むことができる)を表す。
【0063】
1,3−双極子機能性化合物の別の例示的な態様は、式(R102CN(R10)O(例えば、原子価構造(R102C=+N(R10)−O-によって表される)で表されるニトロン機能性化合物であり、ここで、各R10は、独立して、水素又は有機基を表し、ただし、少なくとも1つのR10は、有機(例えば、生体分子)を表す。場合により、少なくとも1つのR10は、検出可能な標識(例えば、アフィニティー標識)を含むことができる。
【0064】
式Iの例示的なアルキンとの式(R102CN(R10)Oで表されるニトロン機能性化合物の環化反応は、式:
【0065】
【化12】

【0066】
で表される1以上の複素環式化合物を得ることができ、ここで、各R1は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステル、亜硝酸エステル、硫酸エステル、及びC1−C10有機基からなる群から選択され;各R2は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステル、亜硝酸エステル、硫酸エステル、及びC1−C10有機基からなる群から選択され;Xは、C=O、C=N−OR3、C=N−NR34、CHOR3、又はCHNHR3を表し;各R3、R4、及びR10は、独立して、水素又は有機基を表し、ただし、少なくとも1つのR10は有機基(例えば、生体分子、及び、場合により切断可能なリンカーを含むことができる)を表す。
【0067】
1,3−双極子機能性化合物の別の例示的な態様は、式R10−NN(R10)O(例えば、原子価構造R10−N=+N(R10)−O-によって表される)で表されるアゾキシ機能性化合物であり、ここで、各R10は、独立して、水素又は有機基を表し、ただし、少なくとも1つのR10は、有機(例えば、生体分子)を表す。場合により、少なくとも1つのR10は、検出可能な標識(例えば、アフィニティー標識)を含むことができる。
【0068】
式Iの例示的なアルキンとの式R10−NN(R10)Oで表されるアゾキシ機能性化合物の環化反応は、式:
【0069】
【化13】

【0070】
で表される1以上の複素環式化合物を得ることができ、ここで、各R1は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステル、亜硝酸エステル、硫酸エステル、及びC1−C10有機基からなる群から選択され;各R2は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステル、亜硝酸エステル、硫酸エステル、及びC1−C10有機基からなる群から選択され;Xは、C=O、C=N−OR3、C=N−NR34、CHOR3、又はCHNHR3を表し;各R3、R4、及びR10は、独立して、水素又は有機基を表し、ただし、少なくとも1つのR10は有機基(例えば、生体分子、及び、場合により切断可能なリンカーを含むことができる)を表す。
【0071】
アルキンと1以上の1,3−双極子機能性化合物との間の環化反応から形成される複素環式化合物が検出可能な標識を含む態様については、複素環式化合物は検出可能な標識を用いて検出することができる。例えば、検出可能な標識がアフィニティー標識である態様については、アフィニティー結合(例えば、アフィニティークロマトグラフィー)を用いて、複素環式化合物を検出することができる。
【0072】
さらに、アルキンと1以上の1,3−双極子機能性化合物との間の環化反応から形成される複素環式化合物がビオチン化断片を含む態様については、複素環式化合物は、ビオチンと結合する化合物(例えば、アビジン及び/又はストレプトアビジン)と複素環式化合物との接触によって結合することができる。さらに、結合された複素環式化合物は、本明細書に記載される方法によって検出することができる。
【0073】
本明細書に開示されるアルキンと1,3−双極子機能性化合物との間の環化反応は、様々な応用に使用可能である。例えば、本明細書に開示されるアルキンは、基質の表面に結合することができる。ある種の態様では、アルキンのX基は、基質の表面への結合点を表す。当業者は、X基が、好都合には、官能性(例えば、ビオチン、活性化エステル、活性化カーボネートなど)を含むように選択され、様々な反応を介して機能性基質(例えば、アミン官能性、チオール官能性など)へのアルキンの結合を可能にすることを認識する。
【0074】
基質の表面に結合されたアルキンを有する基質は、1,3−双極子機能性化合物と反応し、基質に1,3−双極子機能性化合物を有効に化学的に結合している複素環式化合物を形成することができる。このような基質は、例えば、レジン、ゲル、ナノ粒子(例えば、磁性ナノ粒子を含む)、又はそれらの組み合わせの形態であってもよい。ある種の態様では、このような基質は、マイクロアレイ又はさらには3次元マトリックス若しくは足場の形態であってもよい。例示的な3次元マトリックスには、限定されないが、全てがInvitrogen(Carlsbad,CA)から入手可能である商品名ALGIMATRIX 3D培養システム、GELTRIXマトリックス、及びGIBCO3次元足場で利用可能であるマトリックスが含まれる。このような3次元マトリックスは、細胞培養を含む応用に特に有用であり得る。
【0075】
1,3−双極子機能性生体分子(例えば、1,3−双極子機能性ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、核酸、脂質、単糖、オリゴ糖、及び/又は多糖)は、複素環式化合物を形成させるための環化反応に有効な条件下で、その表面に結合されたアルキンを有する基質と1,3−双極子機能性生体分子との接触によって、基質表面に固定、好ましくは共有結合することができる。好ましくは、複素環式化合物を形成させるために有効な条件は、添加触媒が実質的に存在しないことを含んでもよい。また、複素環式化合物を形成させるための条件は、限定されないが、水性溶媒(例えば、水及び他の生物学的流体)及び非水性溶媒;プロトン性溶媒及び非プロトン性溶媒;極性溶媒及び非極性溶媒;並びにそれらの組み合わせをすくむ様々な溶媒の存在又は不存在を含んでもよい。複素環式化合物は、様々な温度範囲で形成することができ、0℃〜40℃(いくつかの態様では23℃〜37℃)の温度範囲が特に有用である。好都合には、反応時間は、1日未満であってもよく、場合により、1時間又はそれ未満である。
【0076】
例えば、基質が3次元マトリックスの形態であり、1,3−双極子機能性生体分子が1,3−双極子機能性タンパク質(例えば、アジド機能性タンパク質)である場合、環化反応は、3次元マトリックスに固定されたタンパク質を有する製品をもたらすことができる。このようなマトリックスは、限定されないが、細胞株の分離及び/又は固定を含む様々な使用を有することができる。これらの応用に特に有用なタンパク質には、限定されないが、コラーゲン、フィブロネクチン、ゼラチン、ラミニン、ビトロネクチン、及び/又は細胞播種に一般に使用される他のタンパク質が含まれる。
【0077】
別の例について、1,3−双極子機能性化合物と式Iで表されるアルキン(式中、Xは重合体基又は共重合体基を表す)との間の環化反応は、例えば、以下に本明細書に記載される薬物送達を制御するために使用することができる。例えば、式Iで表されるアルキン(式中、Xは親水性セグメント及び疎水性セグメントを含む共重合体基を表す)は、重合体又は共重合体と混和することができる。さらに、式Iで表されるアルキン(式中、Xは親水性セグメント及び疎水性セグメントを含む共重合体基を表す)が親水性セグメント及び疎水性セグメントを有する共重合体と混和される場合、共重合体ミセルを形成することができる。親水性セグメント及び疎水性セグメントを有する、特に有用な共重合体は、式R9O−[CH2CH2O]p−[C(O)(CH25O]o−Hの共重合体を含み、ここで、R9は、アルキル基(例えば、メチル)、p=0〜100(例えば、1〜100)、及びo=0〜100(例えば、1〜100)を表す。
【0078】
上記に本明細書中に記載される式1であらわさアルキンを含む共重合体ミセルは、好都合には、薬物送達を制御するために用いることができる。例えば、式1で表されるアルキンを含む共重合体ミセルは、少なくとも1つの1,3−双極子機能性薬物と組み合わせることができ、複素環式化合物を形成し、薬物を共重合体ミセルに結合させるのに有効な条件下で反応させることができる。例えば、Nishiyama et al.,Adv.Polym.Sci.2006,193:67−101;Gaucher et al.,J.Control.Release 2005,109:169−188;Choi et al.,J.Dispersion Sci.Tech.2003,24:475−487;Lavasanifar et al.,Adv.Drug Delivery Rev.2002,54:169−190;Rosler et al.,Adv.Drug Delivery Rev.2001,53:95−108を参照されたい。
【0079】
さらに、銅などの毒性触媒を必要としないため、本発明によって提供される新規な付加環化反応は生細胞の標識に使用することができる。例えば、細胞は、最初に、アジド機能性前躯体で代謝的に標識し、アジド機能性糖タンパク質(糖コンジュゲートとも呼ばれる)などのアジド機能性生体分子(バイオコンジュゲートとも呼ばれる)を生成することができる。次に、細胞は、細胞表面でアジド機能性生体分子の標識(付加環化反応を介する)を可能にする条件下で、上記で検討された溶液中で又は基質上で、式Iで表されるアルキンと接触させることができる。得られるトリアゾールコンジュゲートは、細胞表面で検出することができ、又は細胞によって取り込まれ、細胞内で検出することができる。
【0080】
また、式Iで表されるアルキンは、例えば、核磁気共鳴画像(MRI)用の試薬として、画像応用に有用性を有することができる。別の例について、式Iで表されるアルキンは蛍光性タグを含んでもよい。また、式Iで表されるアルキンは、質量分析を利用する定性的又は定量的なプロテオミクル及びグライコミクス応用において有用であり得る。式Iで表されるアルキンは、デューテリウム、13C、15N、35Sなどの1以上の重質量アイソトープを含むように選択することができ、次に、本明細書に記載されるように、アジド機能性生体分子を標識し、及び/又は固定するために使用することができる。
【0081】
また、式Iで表されるアルキンは、ワクチンなどの応用に有用性を有することができる。例えば、式Iで表されるアルキンは、アジド機能性タンパク質(例えば、アジド機能性炭化水素、アジド機能性ペプチド、及び/又はアジド機能性糖ペプチド)と反応することができ、得られるトリアゾールはワクチン用の担体タンパク質として用いることができる。
【0082】
本発明は、以下の実施例によって例証される。特定の実施例、材料、量、及び手法は、本明細書に記載される本発明の範囲及び精神に従って広く解釈されなければならない。
【実施例】
【0083】
実施例1
銅不含及び迅速Huisgen付加環化による生細胞の代謝的に標識された糖コンジュゲートの視覚化
アジドは、生物系においてごく稀であり、バイオコンジュゲートのための魅力的な化学的操作として明らかとなっている(Kolb and Sharpless,Drug Discovery Today 2003,8:1128−1 137;Dedola et al.,Org.Biomol.Chem.2007 5:1006−1017;Moses and Moorhouse,Chem.Soc.Rev.2007,36:1249−1262;Nandivada et al.,Adv.Mater.2007,19:2197−2208;Wu and Fokin,Aldrichimica Acta 2007,40:7−17)。特に、安定したチアゾールを与える、末端アルケンを用いたCu1触媒の1,3−双極子付加環化(Rostovtsev et al.,Angew.Chem.2002,1 14:2708−271 1;Rostovtsev et al.,Angew.Chem.Int.Ed.2002,41:2596−2599;Tornoe et al.,J.Org.Chem.2002,67:3057−3064)は、様々な生体分子は、様々な生体分子のタグ化(Chin et al.,Science 2003,301:964−967;Wang et al.,J.Am.Chem.Soc.2003,125:3192−3193;Kho et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA 2004,101:12479−12484;Gierlich et al.,Org.Lett.2006,8:3639−3642;Link et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA 2006,103:10180−10185)、活性基準のタンパク質プロファイリング(Speers et al.,J.Am.Chem.Soc.2003,125:4686−4687)、並びにマイクロアレイ及び低分子ライブラリーの化学合成(Sun et al.,Bioconjugate Chem.2006,17:52−57)用に使用されている。
【0084】
アジドを生体分子に挿入するという魅力的なアプローチは代謝的標識に基づき、それにより、アジドを含む生合成前躯体は、細胞の生合成機構を用いることによって生体分子に組み込まれる(Prescher and Bertozzi,Nat.Chem.Biol.2005,1:13−21)。このアプローチは、種々の反応性プローブを用いた生物系のタンパク質、グリカン、及び脂質をタグ化するために使用されている。これらのプローブは、単糖選択的な糖タンパク質のマッピングを促進し、グリコシル化部位を特定することができる(Hanson et al.,J.Am.Chem.Soc.2007,129:7266−7267)。また、アルキンプローブは、アジド修飾された生体分子の細胞表面の画像用に使用され、特に魅力的なアプローチは、[3+2]付加環化による非蛍光性前躯体からの蛍光性プローブの発生を伴う(Sivakumar et al.,Org.Lett.2004,6:4603−4606)。
【0085】
Cu1触媒の細胞毒性は、細胞が生存し続けなければならない応用を妨げ(Link and Tirrel,J.Am.Chem.Soc.2003,125:11164−11165)、したがって、Cu1なしの[3+2]付加環化の開発が非常に必要である(Turner et al.,J.Am.Chem.Soc.1973,95:790−792;Agard et al.,J.Am.Chem.Soc.2004,126:15046−15047;van Berkel et al.,Chem−BioChem 2007,8:1504−1508)。この点において、アルキンは、環の歪みによって活性化することができ、例えば、8員環内のアルキンを律則することにおり18kcal/molの歪みが生じ、その大部分は、アジドを用いた[3+2]付加環化に基づいて、遷移状態で放出される(Turner et al.,J.Am.Chem.Soc.1973,95:790−792;Agard et al.,J.Am.Chem.Soc.2004,126:15046−15047)。結果として、1などの付加環化は、触媒を必要とせずに室温でアジドと反応する。歪みを促進した付加環化は、目立った細胞毒性なしに生体分子を標識するために使用されている(Agard et al.,J.Am.Chem.Soc.2004,126:15046−15047)。しかしながら、このアプローチの範囲は、反応の遅速性のために制限されている(Agard et al.,ACS Chem.Biol.2006,1:644−648)。オクチン環への電子求引基の付加は、歪みを促進した付加環化の速度を高めることができる;しかしながら、ホスフィン2とのStaudinger連結は、アジドによる細胞表面標識に最も魅力的な試薬を提供する。
【0086】
化合物3などの4−ジベンゾシクロオクチノールは、アジドによる生細胞の標識にとって理想的であることが予測されたが、それは、芳香族環が更なる環の歪みを強制し、アルキンとコンジュゲートすることが期待されるためであり、それにより、アジドによる金属不含の[2+3]付加環化におけるアルキンの反応性を増加させる。しかしながら、化合物は優れた安定性を有するべきであり、これは、芳香族環のオルトの水素原子が求核攻撃からアルキンを保護するためである。さらに、3のヒドロキシ基は、蛍光性プローブ及びビオチンなどのタグの取り込みの操作を提供する。
【0087】
化合物3は、既知の(Jung et al.,J.Org.Chem.1978,43:3698−3701;Jung and Miller,J.Am.Chem.Soc.1981,103:1984−1992)3−ヒドロキシ−1,2:5,6−ジベンゾシクロオクタ−1,5,7−トリエン(4)から、TBSエーテルなどのヒドロキシ基の保護によって容易に調製し、5を得ることができ、それを臭素化し、収率60%で二臭化物6を得た(スキーム1;図2)。TBS保護基は、後者の変換中に失われたが、臭素化は、アルコール4に行うと低収率であった。0℃でTHF中のLDAを用いた処置による6の脱臭化水素化(Seitz et al,Angew.Chem.1969,81:427−428;Seitz et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1969,8:447−448)により、収率45%で標的シクロオクチンを得た。
【0088】
化合物3は優れた長期の保存期間を有し、処理後、チオール及びアミンなどの求核試薬と反応しなかった。しかしながら、アジドへの曝露により、高速反応が起こり、高収率で対応するチアゾールを得た。例えば、チアゾール10〜13は、メタノール中で対応するアジド含有糖及びアミノ酸誘導体と、3とを30分間反応させることによって、位置異性体の混合物として定量的収率で得られた(スキーム2;図3及び図4)。メタノール及び水/アセトニトリル(1:4v/v)中の3とベンジルアジドとの反応の進行は、ベンジルのプロトンシグナルの積分によって、1H NMR分光によってモニターされ、それぞれ0.17と2.3m-1-1の二次速度定数を決定した。アセトニトリル/水中での3との反応の速度定数は、シクロオクチン1との反応の速度定数よりも約3桁高い。
【0089】
3の優れた反応性を確立したので、本発明者らは、ビオチンで修飾される、4−ジベンゾシクロオクチノールの誘導体(9;スキーム1;図2)の製造に注意を当てた。このような試薬は、アジド含有生合成前駆体を用いて細胞を代謝的に標識し、その後、9を用いて付加環化し、蛍光プローブで修飾されたアビジンによって処理した後に生体分子を視覚化することを可能にすべきである。あるいは、9を用いた糖コンジュゲートのビオチン化は、固体支持体に固定されたアビジンを用いて、グライコミクスのためのこれらの誘導体を単離することを可能にすべきである。化合物9は、活性化した中間体7を得るために、4−ニトロフェニルクロロギ酸エステルを用いた3の処理を伴う2工程反応、その後、即座の8との反応によって容易に調製することができる。また、4−ジベンゾシクロオクチノール(9)は、蛍光性タグで官能化され、蛍光性誘導体を得てもよい(スキーム3;図5)。
【0090】
次に、N−アジドアセチルシアル酸(SiaNAz)部分を糖タンパク質に代謝的に導入するために、3日間、25μmol濃度のN−アジドアセチルマンノサミン(Ac4ManNAz)の存在下でJurkat細胞を培養した(Luchansky and Bertozzi,Chem−BioChem 2004,5:1706−1709)。負の対照として、Ac4ManNAzの不存在下で増殖するJurkat細胞を使用した。種々の期間、化合物9の30μmol濃度溶液に細胞を晒し、洗浄後、細胞をアビジン−フルオレセインイソチオシアネート(FITC)で15分間、4℃で染色した。2工程の細胞表面標識の効率は、細胞溶解物の蛍光強度を測定することによって決定された。比較のために、細胞表面のアジド部分はまた、ビオチン修飾されたホスフィン2を用いたStaudinger標識によって標識され、その後、アビジン−FITCで処理された。9による標識は、60分のインキュベーション時間後、ほぼ完了した(図6a)。
【0091】
興味深いことに、同一の条件下で、ホスフィン2(Agard et al.,ACS Chem.Biol.2006,1:644−648)は有意に低い蛍光強度を与え、これは、Staudinger連結による細胞表面標識がゆっくりであり、有効でないことを示す。各ケースでは、対照細胞は、非常に低い蛍光強度を示し、それは、バックグラウンド標識が無視されることを示す。9を用いた2工程標識アプローチは、形態及びトリパンブルーの排出によって決定される、細胞の生存率に影響はないことが判明した(データ示さず、図7)。
【0092】
細胞表面標識の濃度依存性は、2及び9の種々の濃度で細胞をインキュベーションすることによって試験し、その後、アビジン−FITCで染色した(図6b)。予期されるとおり、アジド部分を示す細胞は、蛍光強度の用量依存的な増加を示した。信頼性のある蛍光標識は、9の3μmol濃度で達成された;しかしながら、最適な結果は、30〜100μmol濃度の範囲の濃度で得られた。標識の増加は、9の制限された溶解性のために100μmol濃度を超える濃度では観察されなかった。
【0093】
次に、共焦点顕微鏡によって生細胞のアジド含有糖コンジュゲートの視覚化に注意を集中させた。したがって、付着したチャイニーズ・ハムスター・オバリー(CHO)細胞をAc4ManNAz(100μmol濃度)の存在下で3日間培養した。得られた細胞表面アジド部分を9(30μmol濃度)で1時間処理し、次に、アビジン−AlexaFluor488で15分間、4℃で処理した。予期されるように、染色は、表面でのみ観察され(図8)、標識手法は、周囲温度又は4℃で行った場合に等しく効果的であった。さらに、ブランク細胞は、非常に低い蛍光染色を示し、これは、バックグラウンド標識が無視し得ることが確認された。細胞表面の糖コンジュゲートは、エンドサイトーシスにおって定常的にリサイクルされ、この手順をモニターするために、代謝てきに標識された細胞は、標準的なプロトコールに従って、9及びアビジン−Alexa488で反応され、37℃で1時間インキュベートし、その後、共焦点顕微鏡によって調べられた。本出願人は、標識された有意量の糖タンパク質は小胞状コンパートメントに内在化されていたことを観察した。
【0094】
これらの試験の終了時、Bertozzi及び共同研究者らは、化合物3と同じ反応速度でアジドと反応するジフッ素化シクロオクチン(DIFO)を報告した(Baskin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA2007,104:16793−16797)。AlexaFluorに連結されたDIFOは、グリカン輸送(trafficking)の動力学を調査するために使用された。1時間のインキュベーション後、標識されたグリカンは、エンドソームとゴルジ体のマーカーとともに共局在化したことが分かった。
【0095】
3及び9などの4−ジベンゾシクロオクチノールは、化学合成の容易さ、及び芳香族部分の官能化による付加環化の速度をさらに高める可能性などの、研究者によっていくつかの好都合な特徴を有する。また、芳香族環の修飾は、糖タンパク質、及び生細胞の他の生体分子の輸送をリアルタイムでモニターすることを可能にする、アジド含有化合物を用いた[3+2]付加環化に基づいて蛍光性となる試薬を得るための絶好の機会を提供することができる。
【0096】
一般法及び材料
化学物質はAldrich及びFlukaから購入され、さらに精製せずに使用した。ジクロロメタンはCaH2から蒸留され、モレキュラーシーブ4Å上で保存された。ピリジンはP25から蒸留され、モレキュラーシーブ4Å上で保存された。THFはナトリウムから蒸留された。全ての反応は、アルゴン雰囲気下で無水条件で行われた。反応物は、Kieselgel 60 F254(Merck)上の薄層クロマトグラフィー(TLC)によってモニターされた。検出は、紫外線(UV)光(254nm)による試験によるか又はメタノール中の5%硫酸による炭化によった。フラッシュクロマトグラフィーは、シリカゲル(Merck、70〜230メッシュ)上で行われた。イアトロビーズ(Iatrobeads)(60μm)をBioscanから購入した。1H NMR(1D、2D)及び13C NMRは、Sunワークステーションを備えたVarian Merc 300分光計、及びVarian 500及び600MHz分光計で記録された。1H及び13C NMRスペクトルは、CDCl3で記録され、ケミカルシフト(δ)は、保護された化合物に対する内部標準として、溶媒ピーク(1H、δ7.24;13C、δ77.0)と比較したppmで与えられる。陰イオンマトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間(MALDI−TOF)は、マトリックスとしてジヒドロ安息香酸を用いて、VOYAGER−DE Applied Biosystemsで記録された。高分解能質量スペクトルは、マトリックスとしてTHF中の2,5−ジヒドロキシ−安息香酸を用いることによって、ポジティブモードでVOYAGER−DE Applied Biosystems上で得られた。
【0097】
3−tert−ブチル−ジメチルシリル−オキシ−1,2:5,6−ジベンゾシクロオクタ−1,5,7−トリエン(5)
tert−ブチルジメチルシリル塩化物(3.0g、20mmol)は、CH2Cl2(20mL)及びピリジン(5mL)の混合物中の4(2.2g、10mmol)の撹拌された溶液に添加された。6時間室温で撹拌した後、反応混合物を水で希釈し、CH2Cl2(40mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を水及びブラインで洗浄し、次に乾燥(MgSO4)させた。溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル、7/1、v/v)によって精製し、5(2.9g、87%)を得た。
【0098】
【化14】

【0099】
3−ヒドロキシ−7,8−ジブロモ−1,2:5,6−ジベンゾシクロオクテン(6)
CHCl3中の臭素(0.8g、5mmol)の溶液を0℃でCHCl3(30mL)中の5(1.7g、5mmol)に滴下した添加した。反応混合物は、反応が完了する(TLCによってモニターされる)まで、室温で12時間撹拌された。得られた混合物を水性飽和チオ硫酸ナトリウム溶液(15mL)で洗浄し、乾燥(MgSO4)させた。溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/CH2Cl2、7/1、v/v)によって精製し、6(1.2g、60%)を得た。
【0100】
【化15】

【0101】
3−ヒドロキシ−7,8−ジデヒドロ−l,2:5,6−ジベンゾシクロオクテン(3)
テトラヒドロフラン(50mL)中の6(1.1g、3mmol)の溶液に、アルゴン雰囲気下、室温でテトラヒドロフラン(2.0M)(5mL)中のリチウム・ジイソプロピルアミドを滴下して添加した。反応混合物を2時間室温で撹拌し、その後、氷水(50mL)上に注ぎ、得られた混合物をCH2Cl2(2×100mL)で抽出した。合わせた抽出物を水及びブラインで洗浄し、次に乾燥(MgSO4)させた。溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル、5/1、v/v)によって精製し、3(0.30g、45%)を得た。
【0102】
【化16】

【0103】
カルボン酸7,8−ジデヒドロ−1,2:5,6−ジベンゾシクロオクテン−3−イルエステル4−ニトロフェニルエステル(7)
CH2Cl2(30mL)中の3(0.22g、1mmol)の溶液に、4−ニトロ−フェニルクロロギ酸塩(0.4g、2mmol)及びピリジン(0.4ml、5mmol)を添加した。4時間、周囲温度で撹拌後、得られた混合物をブライン(2×10mL)で洗浄し、有機層を乾燥(MgSO4)した。溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル、10/1、v/v)によって精製し、7(0.34g、89%)を得た。
【0104】
【化17】

【0105】
カルボン酸7,8−ジデヒドロ−1,2:5,6−ジベンゾシクロオクテン−3−イルエステル、8’−ビトチニルアミン−3’,6’−ジオキサオクタン1’−アミド(9)
DMF(10mL)中の8(37mg、0.1mmol)及びNEt3(30mg、0.3mmol)の溶液に7(39mg、0.1mmol)をアルゴン雰囲気下で添加された。 反応混合物を一晩周囲温度で撹拌後、溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/CH3OH、20/1、v/v)によって精製し、9(44mg、71%)を得た。
【0106】
【化18】

【0107】
糖質及びペプチドを用いたクリック反応のための一般法
3−ヒドロキシ−7,8−ジデヒドロ−1,2:5,6−ジベンゾシクロオクテン(2.2mg、0.01mmol)をCH3OH(1mL)に溶解し、アジド(3−アジドプロピル2,3,4,6−テトラ−O−アセテート−α−D−マンノピラノシド、1−O−[ジメチル(1,1,2−トリメチルプロピル)シリル]−4,6−O−イソプロピリジン−2−アジド−2−デオキシ−β−Dグルコピラノース、4,7,8−トリ−O−アセチル−5−アセトアミド−9−アジド−2,3−アンヒドロ−3,5,9−トリ−デオキシ−D−グリセロ−D−ガラクト−非−2−エノン酸メチルエステル、及び4−アジド−N−[(1,1−ジメチルエトキシ)カルボニル]−Lフェニルアラニン、1.0当量)に添加した。反応をTLCによってモニターし、反応混合物を30分間、室温で撹拌後、反応は完了した。溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、定量的収率でそれぞれ所望の生成物10〜13を得た。
【0108】
化合物10;
【0109】
【化19】

【0110】
化合物11;
【0111】
【化20】

【0112】
化合物12;
【0113】
【化21】

【0114】
化合物13;
【0115】
【化22】

【0116】
N−Boc−3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジアミン
CH2Cl2(100mL)中のジ−tert−ブチルジカーボネート(di−Boc)(6g、28mmol、0.5当量)の溶液をトリス(エチレングリコール)−1,8−ジアミン(7.6g、56mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(10mL、57mmol)の混合物に、室温で2時間かけて滴下して添加した。反応混合物を6時間撹拌し、その後、真空中で濃縮した。フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/CH3OH、10/1、v/v)による精製によって、N−Boc−3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジアミン(4.1g、58%)を得た。
【0117】
【化23】

【0118】
N−Boc−N’−ビオチニル−3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジアミン
DMF(100ml)中のビタミンH(ビオチン)(2.2g,9mmol),O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)(3g、8mmol)、及びDIPEA(1.8mL、10mmol)の溶液を室温で10分間撹拌し、その後、N−Boc−3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジアミン(1.5g、6mmol、1)の溶液に滴下して添加した。反応混合物を1時間室温で撹拌し、その後、DMFを真空中で除去し、油性残渣を得た。それをフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/CH3OH、25/1、v/v)によって精製し、N−Boc−N’−ビオチニル−3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジアミン(2.0g、90%)を得た。
【0119】
【化24】

【0120】
N−ビオチニル−3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジアミン(8)
N−Boc−N’−ビオチニル−3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジアミン(1.9g、4mmol)をCH2Cl2(20mL)中の50%RFAに溶解し、1時間室温で撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、油性残渣を得て、それをフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/CH3OH、10/1、v/v)によって精製し、7(1.3g、92%)を得た。
【0121】
【化25】

【0122】
生物学的実験のための試薬
合成化合物2及び9をDMF中で再構成し、80℃で保存した。DMFの最終濃度は、毒性効果を避けるために0.56%を超えることはなかった。
【0123】
細胞表面アジド標識及び蛍光強度による検出
重炭酸ナトリウム(1.5gL-1)、グルコース(4.5gL-1)、HEPES(10mM)、及びピルビン酸ナトリウム(1.0mM)を含むように調整され、ペニシリン(100umL-1)/ストレプトアビジン(100μgmL-1;Mediatech)及びウシ胎児血清(FBS、10%;Hycone)を補足された、L−グルタミン(2mM)を含むRPMI1640培地(ATCC)中でヒトJurkat細胞(クローンE6−1;ATCC)を培養した。湿度のある5%CO2雰囲気下、37℃で細胞を維持した。ペルアセチル化されたN−アジドアセチルマンノサミン(Ac4ManNAz;25μmolの最終濃度)の存在下で3日間、Jurkat細胞を培養し、細胞表面の糖タンパク質への対応するN−アジドアセチルシアル酸(SiaNAz)の代謝的な組込みをもたらした。アジドを有するJurkat細胞と未処理の対照細胞を標識バッファー(DPBS、FBS(1%)を補足されている)中の化合物2及び9(0〜100μmol濃度)とともに、0〜180分間室温でインキュベートした。標識バッファーで細胞を3回洗浄し、その後、フルオレセインをコンジュゲートさせたアビジン(Molecular Probes)とともに15分間4℃でインキュベートした。3回の洗浄及び細胞溶解後、細胞溶解物は、マイクロプレートリーダー(BMG Labtech)を用いて、蛍光強度(485ex/520em)について分析された。データ点は、3点測定で集め、3つの別々の実験を代表する。細胞の生存率は、トリパンブルーの排出を用いた手法で異なる点で評価された。
【0124】
細胞標識及び蛍光顕微鏡による検出
重炭酸ナトリウム(1.5gmL-1)を含むように調整され、ペニシリン(100umL−1)/ストレプトアビジン(100μgmL-1)及びFBS(10%)を補足された、L−グルタミン(2mM)を含むKaighn変法のHam’s F−12培地(F−12K)中でチャイニーズ・ハムスター・オバリー(CHO)細胞(クローンK1;ATCC)を培養した。湿度のある5%CO2雰囲気下、37℃で細胞を維持した。CHO細胞は、細胞表面の糖タンパク質に代謝的にSiaNAz(100μmol最終濃度)の存在下で3日間増殖させた。次に、アジドを有するCHO細胞及び未処理の対照細胞をカバーガラスに移し、36時間、元の培地中で培養した。CHO生細胞は、標識バッファー(DPBS、FBS(1%)を補足してある)で1時間4℃又は室温でビオチン化された化合物9(30マイクロモル濃度)で処理され、次に、AlexaFluor488(Molecular Probes)がコンジュゲートされたアビジンとともに15分間4℃でインキュベートされた。標識バッファーで細胞を3回洗浄し、ホルムアルデヒド(PBS中3.7%)で固定するか又は固定前に1時間37℃でインキュベートした。遠赤色蛍光TO−PRO−3色素(Molecular Probes)で核を標識した。細胞は、画像化前にPermaFlour(Thermo Electron Corporation)に備えつけた。初期の解析は、Zeiss Axioplan2蛍光顕微鏡で行った。共焦点画像は、60×(Na1.42)油浸対物レンズを用いて得た。光学的断片の積層をz次元で集めた。各対物のために計算された最適条件に基づくステップサイズは、0.25〜0.5μmであった(z−プロジェクション)。その後、各スタックを1つの画像にまとめられた。解析は、ImageJ 1.39fソフトウェア(National Institutes of Health,USA)及びAdobe Photoshop CS3拡張バージョン10.0(Adobe Systems Incorporated)を用いてオフラインで行い、それにより全ての画像を等しく処理した。
【0125】
実施例2
ビオチン及び切断可能なリンカーを含むアルキン試薬
アジドは、生物系においてごく稀であり、バイオコンジュゲートのための魅力的な化学的操作として明らかとなっている(Dedola et al.,Org.Biomol.Chem.2007,5,1006;Kolb and Sharpless,Drug D is.Today 2003,8,1 128;Moses and Moorhouse,Chem.Soc.Rev.2007,36,1249;Nandivada et al.,Adv.Mater.2007,19,2197;Wu and Fokin,Aldrichimica ACTA 2007,40,7;Agard et al.,ACS Chem.Biol.2006 1,644)。特に、末端アルケンを用いたアジドの1,3−双極子環化を触媒して、安定したトリアゾールを与えるCu(I)は、タンパク質、核酸、脂質、及び単糖を含む様々な生体分子にタグを付けるために使用されている(Chin et al.,Science 2003,301,964;Gierlich et al.,Org.Lett.2006,8,3639;Kho et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.2004,101,12479;Link et al., Proc.Natl.Acad.Sci.2006,103,10180;Wang et al.,J.Am.Chem.Soc.2003,125,3192)。また、付加環化は、活性に基づくタンパク質プロファイリング(Speers et al., J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 4686)、酵素活性のモニターリング、並びにマイクロアレイ及び低分子ライブラリーの化学合成(Sun et al.,Bioconjugate Chem.2006,17,52)に使用されている。
【0126】
アジドを生体分子に組み込むための魅力的なアプローチは、代謝的標識に基づき、それによりアジドを含む生合成前躯体は、細胞の生合成機構を用いて生体分子に組み込まれる (Prescher and Bertozzi,Nat.Chem.Biol.2005,1,13)。このアプローチは、様々な反応性プローブを用いて、生物系のタンパク質、グリカン、及び脂質に使用されている。これらのプローブは、単糖選択的な糖タンパク質のマッピングを促進し、グリコシル化部位を同定することができる(Hanson et al.,J.Am.Chem.Soc.2007,129,7266)。また、アルキンプローブは、アジド修飾された生体分子の細胞表面画像に使用され、特に魅力的なアプローチは、[3+2]付加環化による非蛍光性前躯体からの蛍光性プローブの生成を伴う(Sivakumar et al.,Org.Lett.2004,6,4603)。
【0127】
本出願人は、本明細書に、アルキン断片、切断可能なリンカー断片、及びビオチンを含む試薬を記載する。このような化合物は、生物学的研究に価値があることは予期される。このようにして、この試薬のアルキン断片は、アジド断片を含む種々の生体分子と反応して、安定したトリアゾール付加物を提供することができる。ビオチン談判は、固定されたアビジンを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって、タグ化された化合物を回収する機会を与える。切断可能なリンカーは、分析用のタグ化され、捕捉された生体分子の放出を可能にする。例えば、放出されたタンパク質又は糖タンパク質は、標準的なプロテオミクル及びグライコミクス分析によって特徴付けることができる(Too,Expert Rev.Proteomics 2007,4,603;Bantscheff et al.,Anal.Bioanal.Chem.2007,389,1017;Lau et al,Proteomics 2007,7,2787)。タンパク質又は糖タンパク質の放出は、固定されたアビジンに結合された生体分子の従来報告されていた分析よりも非常に実践的である(Hanson et al.,J.Am.Chem.Soc.2007,129,7266)。化合物21は、新しい種類の試薬の例である(図9)。それは、アジドとの反応のための4−ジベンゾシクロオクチノール断片、ジチオトレイトール(DTT)などの試薬を還元することを伴う切断可能なジスルフィド、及びビオチンを含む。
【0128】
生物系の生理的状態の相違の定量は、プロテオミクスにおいて技術的にチャレンジな作業である(Too,Expert Rev.Proteomics 2007,4,603; antscheff et al.,Anal.Bioanal.Chem.2007,389,1017;Lau et al.,Proteomics 2007,7,2787)。さらに、色素及びフルオロフォアによる差動タンパク質ゲル又はブロット染色の伝統的な方法と比較して、質量分析に基づく定量方法が流行している。後者の方法の大部分は、質量分析計によって認識され得る特異的な質量タグを生み出し、同時に定量化のための基本を提供するために、差動安定なアイソトープ標識を使用する。これらの質量タグは、(i)代謝的標識によって、(ii)化学的手段によって、(iii)酵素的に、又は(iv)合成ペプチド標準を用いたスパイクによって、タンパク質又はペプチドに導入することができる。
【0129】
アルキン、切断可能なリンカー及びビオチンで構成させる試薬は、タンパク質、糖タンパク質及びアジド断片を含む他の生体分子に質量タグを導入するために使用することができる。このようにして、21及び22などの試薬を使用することによって、様々な質量タグが、タンパク質、糖タンパク質、糖ペプチド、ペプチド及び糖質を定量するために導入することができる。21及び22の化学合成は、それぞれスキーム4及び5に示される(図10及び11)。種々のアルキン部分、切断可能なリンカー及びビオチン誘導体は図12に示され、アルキン及び反応性ジエン誘導体は図13に示される。
【0130】
実施例3
生細胞及びナノ粒子の標識のための急速クリック反応
4−ジベンゾシクロオクチノールを調製し、アミン含有クリック試薬の調製のための化合物を使用する代替アプローチ
4−ジベンゾシクロオクチノール45は、代替の合成経路によって調製することができた(スキーム6;図14)。このようにして、既知のジベンゾスベレノン(41)は、CH2Cl2(20ml)中のBF3・OEt2の存在下、−10℃でチリメチルシリルジアゾメタンで処理され、6H−ジベンゾ[a,e]シクロオクタトリエン−5−オン(42)を良好な収率で得た。42のケトンは、エタノール及びTHFの混合物中で水素化ホウ素ナトリウムで還元され、アルコール43を得て、それは、二重結合のホウ素化によって4−ジベンゾシクロオクチノール45に変換することができ、その後、THF中のLDAを用いた処理によって、得られた化合物44を取り出した。化合物45は、Dess−Martin試薬の使用によって、対応するケトン46に酸化することができた。
【0131】
化合物45及び46は、アミン含有誘導体49、50及び51に変換された。これらの化合物の魅力は、蛍光性タグ及びビオチンなどの種々のプローブで容易に誘導することができることである。さらに、アミンは、高分子支持体への結合のために、容易な化学的操作を当てる。このようにして、アルコール45は、4−ニトロ−フェニルクロロギ酸エステル(0.4g、2mmol)及びピリジンとの反応によってp−ニトロフェニルエステル49に変換された。標的化合物49は、過剰のトリス(エチレングリコール)−1,8−ジアミンと49との反応によって得られた。化合物50は、テトラヒドロフラン中のリチウム・ジイソプロピルアミドの存在下でブロモ酢酸と46との反応によって、その後、カップリング試薬HATU及び塩基DIPEAの存在下、得られた酸48とDMF中のトリス(エチレングリコール)−1,8−ジアミンとの縮合によって得られた。最後に、誘導体51は、酢酸の存在下、メタノールとジクロロメタンの混合物中で、ケトン51とN−{2−[2−(2−アミノ−エトキシ)−エトキシ]−エチル}−2−アミノオキシ−アセトアミド(84mg、0.251mmol)との反応によるオキシム形成によって形成される。51の特徴は、オキシム連結が酸性水溶液による処理によって切断され、クリック試薬から補足された化合物を脱着することができるということである。
【0132】
実験
6H−ジベンゾ[a,e]シクロオクタトリエン−5−オン(42)。CH2Cl2(30ml)中のジベンゾスベレノン41(2.888g、14.0mmol)及びBF3OEt2(2.59ml、21.0mmol)の撹拌溶液に、CH2Cl2(20ml)中のトリメチルシリルジアゾメタン(10.5ml、21.9mmol)野溶液を−10℃で1時間かけて滴下して添加した。混合物を−10℃で2時間撹拌し、その後、氷水上に注いだ。水層をCH2Cl2(3×100ml)で抽出し、有機層を合わせた。合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥(MgSO4)させた。溶媒を減圧下で蒸発させ、粗製生成物は、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(2:1〜1:2v/vヘキサン/CH2Cl2)によって精製し、青白い固体として生成物を得た(2.220g、72%)。
【0133】
【化26】

【0134】
5,6−ジヒドロ−ジベンゾ[a,e]シクロオクテナ−5−オール(43)。室温で1:1のEtOH/THF(120m)中の42(2.203g、10mmol)の撹拌溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(0.757g、20mmol)をゆっくり添加し、反応混合物を室温で7時間撹拌した。TLCは、反応が完了していることを指示し、反応混合物は酢酸(1ml)をゆっくり添加することによってクエンチされた。溶媒を蒸発し、残渣をCH2Cl2(100ml)及びブライン(100ml)に溶解し、CH2Cl2(4×100ml)で抽出した。有機層を合わせ、乾燥(MgSO4)させ、蒸発して、白色の固体として生成物を得た(2.223g、100%)。それは、さらに精製せずに次の工程反応に直接使用される。
【0135】
【化27】

【0136】
11,12−ジブロモ−5,6,11,12−テトラヒドロ−ジベンゾ[a,e]シクロオクテナ−5−オール(44)。室温で1:1のCHCl3(50ml)中の43(2.223g、10mmol)の撹拌溶液に、臭素(0.512ml、10mmol)を滴下して添加し、反応混合物を室温で0.5時間撹拌した。TLCは、反応が完了したことを指示し、溶媒は減圧下で室温で除去された。残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(2:1〜1:2v/vヘキサン/CH2Cl2)によって精製し、黄色味がかった油状物として生成物を得た(2.220g、58%)。
【0137】
【化28】

【0138】
5,6−ジヒドロ−11,12−ジデヒドロ−ジベンゾ[a,e]シクロオクテナ−5−オール(45)。テトラヒドロフラン(40ml)中の44(1.528g、4mmol)の撹拌溶液に、アルゴン雰囲気下、室温で、テトラヒドロフラン(2.0M)中のリチウム・ジイソプロピルアミドを滴下して添加した。反応混合物を0.5時間、室温で撹拌し、その後、滴下した水(0.5ml)の添加によりクエンチした。溶媒は減圧下で蒸発させ、残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(2:1〜0:1v/vヘキサン/CH2Cl2)によって精製し、白色固体として生成物を得た(0.503g、57%)。
【0139】
【化29】

【0140】
6H−11,12−ジデヒドロ−ジベンゾ[a,e]シクロオクタトリエン−5−オン(46)。CH2Cl2(40ml)中の45(0.172g、0.781mmol)の撹拌溶液に、Dess−Martin試薬(0.397g、0.937mmol)を添加した。反応混合物を0.5時間、室温で撹拌した。TLCは、反応が完了したことを指示した。反応混合物を短いパッドのシリカゲルを通じてろ過し、CH2Cl2で洗浄した。ろ液を濃縮し、残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(1:1〜0:1v/vヘキサン/CH2Cl2)によって精製し、白色固体として生成物を得た(0.158g、93%)。
【0141】
【化30】

【0142】
炭酸5,6−ジヒドロ−11,12−ジベンゾ[a,e]シクロオクテナ−5−オールエステル4−ニトロ−フェニルエステル(47)。 CH2Cl2(30mL)中の45(0.22g、1mmol)の溶液に、4−ニトロ−フェニルクロロギ酸エステル(0.4g、2mmol)及びピリジン(0.4ml、5mmol)を添加した。周囲温度で4時間撹拌後、反応混合物をブライン(2×10mL)で洗浄し、有機層を乾燥させた(MgSO4)。溶媒は減圧下で蒸発し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル、10/1、v/v)によって精製し、47(0.34g、89%)を得た。
【0143】
【化31】

【0144】
(5,6−ジヒドロ−11,12−ジデヒドロ−ジベンゾ[a,e]シクロオクテナ−5−イルオキシ)−酢酸(48)。0℃でテトラヒドロフラン(40ml)中のブロモ酢酸(0.280g、2mmol)の撹拌溶液に、水素化ナトリウム(60%油分散、0.120g、3.0mmol)をゆっくり添加した。混合物を0℃で10分間撹拌し、次に45(0.220g、1.0mmol)を添加した。混合物を0℃でさらに10分間撹拌し、その後、室温まで温め、1日撹拌した。反応を1滴のHOAcによってクエンチし、EtOAcで洗浄された短いパッドのシリカゲルを通してろ過し、次に減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(1:0〜1:1のCH2Cl2/EtOAc)によって精製し、白色固体として生成物を得た(0.60g、22%)。
【0145】
【化32】

【0146】
{2−[2−(2−アミノ−エトキシ)−エトキシ]−エチル}−カルバミン酸5,6−ジヒドロ−11,12−ジデヒドロ−ジベンゾ[a,e]シクロオクテナ−5−イルエステル(49)。室温で、CH2Cl2(20ml)中の47(0.077g、0.2mmol)及びトリス(エチレングリコール)−1,8−ジアミン(0.293ml、2mmol)の撹拌溶液に、Et3N(0.139ml、1.0mmol)を添加した。反応混合物を3時間、室温で撹拌し、その後、溶媒を減圧下で除去した。残渣は、イアトロビーズ(8〜29%v/v MeOH/CH2Cl2)上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製され、黄色味がかった固体として生成物を得た(0.063g、80%)。
【0147】
【化33】

【0148】
N−{2−[2−(2−アミノ−エオキシ)−エトキシ]−エチル}−2−(5,6−ジヒドロ−11,12−ジデヒドロ−ジベンゾ[a,e]シクロオクテナ−5−イルオキシ)−アセトアミド(50)。室温で、DMF(3ml)中の48(5.6mg、0.02mmol)及びトリス(エチレングリコール)−1,8−ジアミン(0.0292ml、0.2mmol)の撹拌溶液に、HATUカップリング試薬(7.6mg、0.02mmol)及びDIPEA(0.0348ml、0.2mmol)を添加した。反応混合物を2時間室温で撹拌し、その後、溶媒を減圧下で除去した。残渣をイアトロビーズ上のフラッシュクロマトグラフィー(8〜30%v/v MeOH/CH2Cl2)によって精製し、無色の油状物として生成物を得た。MALDI HRMS:m/z。
【0149】
N−{2−[2−(2−アミノ−エトキシ)−エトキシ]−エチル}−2−(6H−11,12−ジデヒドロ−ジベンゾ[a,e]シクロオクテナ−5−イリデンアミノオキシ)−アセトアミド(51)。1:1v/vのMeOH/CH2Cl2(4ml)中の46(46mg、0.211mmol)、N−{2−[2−(2−アミノ−エトキシ)−エトキシ]−エチル}−2−アミノオキシ−アセトアミド(84mg、0.251mmol)及び酢酸(0.1ml)の溶液を室温で2日間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をイアトロビーズ上のフラッシュクロマトグラフィー(4〜15%v/vMeOH/CH2Cl2)によって精製し、黄色味がかった固体として生成物をw多(56mg、63%)。MALDI HRMS:m/z444.1835[M+Na+].Calcd for C24273NaO4:444.1899.
【0150】
4−ジベンゾシクロオクチノールの誘導体の付加環化の反応動力学
4−ジベンゾシクロオクチノール(61)の多数の類似体(63〜68)を調製し、ベンジルアジドによる付加環化の反応速度に対するこれらの修飾の影響は、1H NMRスペクトルのベンジル型プロトンシグナルの積分によって決定された。図15は、化合物61〜68の二次定数を示す。驚くべき見解は、化合物62は、ヒドロキシル機能を持たないが、類似の4−ジベンゾシクロオクチノール(61)よりも約70倍遅く反応するということであった。化合物63及び64におけるなどの61のヒドロキシルのアシル化は、反応速度のゆっくりとした減少をもたらした。また、化合物65などにおける、61のアルカリ化は反応のより遅い速度をもたらした。化合物66は、ジェミナル−二フッ化物を有するが、化合物61と同じ速度で反応した。興味深いことに、ケトン67は、1よりも僅かに高い反応速度で反応する。オキシム68は61と類似の反応を有する。これらの結果は、61のヒドロキシルの修飾が付加環化の速度に劇的に影響を与え得ることを示す。
【0151】
実験
70の合成。Et2O(100mL)のLiAlH4(0.38g、10mmol) 及びAlCl3(1.3g、10mmol)の撹拌溶液に、69(1.1g、5mmol)を添加した。ml). 反応を0℃で12時間保持し、その後、水(100ml)でクエンした。水層をエーテル(4×100ml)で抽出し、合わせた有機抽出物を水(100ml)及びブライン(100ml)で洗浄した。粗製生成物は、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/CH2Cl2、2/1、v/v)によって精製され、2つの70を得た(0.63g、61%;スキーム7;図16)。
【0152】
【化34】

【0153】
71の合成。CHCl3(10mL)中の臭素の溶液は、0℃でCHCl3(20mL)中の70(0.5g、2.5mmol)の溶液に滴下して添加された。反応混合物は、反応が完了するまで(TLCによってモニターされる)、室温で12時間撹拌された。得られた混合物は、水性飽和チオ硫酸ナトリウム溶液(15mL)で洗浄され、乾燥(MgSO4)された。溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/CH2Cl2、10/1、v/v)によって精製し、71(0.53g、58%;スキーム7;図16)を得た。
【0154】
【化35】

【0155】
62の合成。テトラヒドロフラン(20mL)中の71(0.36g、1mmol)の溶液に、アルゴン雰囲気下、室温でテトラヒドロフラン(2.0M)(2mL)中のt−BuOKを滴下して添加した。反応混合物そ2時間室温で撹拌し、その後、氷水(10mL)上に注ぎ、得られた混合物をCH2Cl2(2×50mL)で抽出した。合わせた抽出物を水、ブラインで洗浄し、乾燥(MgSO4)させ、溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/CH2Cl2、2/1、v/v)によって精製され、62(50mg、25%;スキーム7;図16)を得た。
【0156】
【化36】

【0157】
63の合成。CH2Cl2(15mL)中の72(38mg、0.1mmol)の撹拌溶液に、73(15mg、0.2mmol)及びTEA(10μL)を添加した。反応混合物を室温で12時間撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/CH3OH、20/1、v/v)によって精製され、63(25mg、77%;スキーム8;図17)を得た。
【0158】
【化37】

【0159】
64の合成。ピリジン(4mL)中の61(22mg、0.1mmol)の撹拌溶液にAc2O(1mL)を添加した。反応混合物を室温で12時間撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/CH2Cl2、1/1、v/v)によって精製され、64(21mg、81%;スキーム9;図18)を得た。
【0160】
【化38】

【0161】
65の合成。DMF(2mL)中の61(22mg、0.1mmol)の撹拌溶液にNaH(8mg、0.2mmol)を添加した。混合物を室温で1時間撹拌し、次に臭化ベンジル(BnBr、34mg、0.2mmol)を添加した。反応混合物を室温で12時間撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/CH2Cl2、2/1、v/v)によって精製され、65(18mg、59%;スキーム9;図18)を得た。
【0162】
【化39】

【0163】
74の合成。室温でTHF(200mL)中のLDA(20ml、40mmol、2.0M溶液(THF中))の撹拌溶液に、THF(40mL)中のケトン69(4.4g、20mmol)の溶液をシリンジポンプを用いて1時間かけて添加した。室温でさらに20分間撹拌した後、クロロトリエチルシラン(6.7ml、40mmol)を添加した。溶液を室温で1時間撹拌した。反応混合物をロータリーエバポレーターで濃縮し、粗製生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/CH2Cl2、10/1、v/v)によって直接精製し、透明な油状物74(5.8g、85%;スキーム10;図19)を得た。
【0164】
【化40】

【0165】
75の合成。0℃でDMF(20ml)中の、Air Products(Allentown,PA)から商品名SELECTFLUORとして利用可能であるフッ素化試薬(1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス−(テトラフルオロボレート))の撹拌溶液に、添加ろ過器を介して10分かけて、DMF(20ml)中のシリルエノールエーテル74(5.0g、15mmol)の溶液を添加した。反応は、30分間撹拌しながら室温まで徐々に温め、次に水(100mL)でクエンチした。水層をエーテル(4×100ml)で抽出し、合わせた有機抽出物を水(3×100mL)及びブライン(1×200mL)で洗浄した。粗製生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/CH2Cl2、1/1、v/v)によって精製し、75(2.4g、66%;スキーム10;図19)を得た。
【0166】
【化41】

【0167】
76の合成。室温でTHF(100mL)中のLDA(10ml、20mmol、2.0M溶液(THF中))の撹拌溶液にTHF(20mL)中のケトン75(2.4g、10mmol)を1時間かけてシリンジポンプを用いて添加した。室温でさらに20分間撹拌した後、クロロトリエチルシラン(3.3ml、20mmol)を添加した。溶液を室温で1時間撹拌した。反応混合物をロータリーエバポレーターで濃縮し、粗製生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/CH2Cl2、5/1、v/v)によって直接精製し、透明な油状物76(2.8g、79%;スキーム10;図19)を得た。
【0168】
【化42】

【0169】
77の合成。0℃でDMF(15ml)中のSELECTFLUORフッ素化試薬(3.5g、10mmol)の撹拌溶液にDMF(10ml)中のシリルエノールエーテル76(2.8g、8mmol)の溶液を10分かけて添加ろ過器を用いて添加した。反応は、30分間撹拌しながら室温まで徐々に温め、次に水(100mL)でクエンチした。水層をエーテル(4×100ml)で抽出し、合わせた有機抽出物を水(3×100mL)及びブライン(1×200mL)で洗浄した。粗製生成物をカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2)によって精製し、77(1.0g、51%;スキーム10;図19)を得た。
【0170】
【化43】

【0171】
78の合成。EtOH(30mL)中の77(1.0g、4mmol)の撹拌溶液にNaBH4(0.3g、8mmol)を5分かけて添加した。反応を室温で2時間維持し、次に水(100ml)でクエンチした。水層をCH2Cl2(3×100mL)で抽出し、合わせた有機抽出物を水(100mL)及びブライン(100mL)で洗浄した。粗製生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOH、5/1、v/v)によって精製し、78(0.78g、78%;スキーム10;図19)を得た。
【0172】
【化44】

【0173】
79の合成。CHCl3(10mL)中の臭素(0.16g、1.0mmol)の撹拌溶液に、0℃でCHCl3(10mL)中の78(0.25g、1.0mmol)の溶液を滴下して添加した。反応混合物は、反応が完了する(TLCによってモニターされる)まで、室温で12時間撹拌された。 得られた混合物を水性飽和チオ硫酸ナトリウム溶液(10mL)で洗浄し、乾燥(MgSO4)させた。溶媒を減圧下で蒸発し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc、8/1、v/v)によって精製し、79(0.19g、46%;スキーム10;図19)を得た。
【0174】
【化45】

【0175】
66の合成。テトラヒドロフラン(10mL)中の79(40mg、0.1mmol)の撹拌溶液に、アルゴン雰囲気下、室温でテトラヒドロフラン(2.0M)(0.5mL)中のt−BuOKを滴下して添加した。反応混合物を6時間室温で撹拌し、その後、氷水(10mL)上に注ぎ、得られた混合物をCH2Cl2(2×50mL)で抽出した。合わせた抽出物を水、ブラインで洗浄し、乾燥(MgSO4)させ、溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc、5/1、v/v)によって精製し、66(10mg、49%;スキーム10;図19)を得た。
【0176】
【化46】

【0177】
(6H−11,12−ジデヒドロ−ジベンゾ[a,e]シクロオクテナ−5−イリデンアミノオキシ)−酢酸(68)。1:1:0.02v/v/vのMeOH/CH2Cl2/HOAc(8ml)中の6H−11,12−ジデヒドロ−ジベンゾ[a,e]シクロオクテナ−5−オン67(21.8mg、0.1mmol)及びカルボキシメチル)ヒドロキシルアミンヘミヒドロクロリド(21.8mg、0.2mmol)を室温で2日間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc)によって精製し、白色固体として生成物を得た(17.8mg、61%)。
【0178】
【化47】

【0179】
付加環化を用いた4−ジベンゾシクロオクチノールによる高分子及びナノ材料の修飾
安定したトリアゾールを与える、末端アルキンを有するアジドの1,3−双極子付加環化を触媒するCu(I)は、タンパク質、核酸、脂質、及び単糖を含む様々な生体分子にタグを付けるために使用されている。また、この反応は、高分子及びナノスケールの材料を修飾するために使用されている。非常に毒性のあるCu(I)を取り除くという潜在的な困難性は、生物学的又は医学的応用のための化合物又は材料のコンジュゲーション用に1,3−双極子付加環化の使用を複雑にする。アジドを用いた付加環化のために末端アルキンの変わりに4−ジベンゾシクロオクチノールを使用することにより、この問題が克服されるべきである。
【0180】
バイオコンジュゲーションにおける4−ジベンゾシクロオクチノールの使用を示すために、コブロック共重合体83及び84を調製した。これらの材料を使用して、水中で有機ミセルを形成し、これらの材料の4−ジベンゾシクロオクチン断片がアジドを含む分子と反応することができることが示された(図20A、B)。
【0181】
ポリエステルとポリエチレングリコール断片で構成されるコブロック重合体は水中で自己凝集し、有機ミセルを形成することは周知である。これらのナノ材料は、薬物送達デバイスとして注目を浴びている。例えば組織又は腫瘍標的部分を用いた有機ミセルの誘導化は、洗練された薬物送達デバイスをもたらすことができる。さらに、ビオチンなどの蛍光性タグ又はMRI試薬を用いた有機ミセルの修飾は、目的を画像化するのに価値がある(図20C)。
【0182】
SnOctの触媒量の存在下でポリエチレングリコールメチルエーテル(81)又はアジド(82)(MW約2000Da)とカプロラクトンの共重合は、それぞれ83及び84を与える(スキーム11;図21)。84のアジド断片は、トリフェニルホスフィンで減少され、得られたポリマー85のアミンは、86及び87と反応して、それぞれジベンゾシクロオクチル誘導体88及び89を得た。少量のTHFに溶解した83及び88又は89(9/1、w/w)の混合物を水に添加した。低温TEMは、約40Aの径を有する有機ミセルが形成したことを示した。得られたミセルをアジド含有単糖90とともにインキュベートし、24時間の反応後、未反応の単糖を透析によって除去した。ミセルは、TFAを用いた加水分解によって糖含有量について解析され、その後、高pH陰イオン交換クロマトグラフィーによって定量された。約45%のシクロオクチンが単糖によって修飾されたことが確認された。
【0183】
化合物84はまた、ミセル形成に使用することができ、得られたアジドのアジド部分は、ジベンゾシクロオクチル断片で修飾された化合物を用いた付加環化に使用することができることが予期されるべきである。
【0184】
実験
PEG44−b−PCL2683の合成。PEG45−O−PCL23ブロック共重合体は記載されるように合成された。所定体積(12.0mL)のε−カプロラクトンモノマーをアルゴン雰囲気下、ある量(9.0g)のPEG81を含むフラスコに入れた。次に、1滴のSnOctを添加した。液体窒素温度まで冷却後、フラスコを12時間空にし、密封し、130℃で24時間放置した。合成されたポリマーをTHFに溶解し、冷ヘキサンによる沈殿によって回収し、真空下、室温で乾燥させた。PCLの重合度は、PEG81の重合度と比較して、1H NMRによって計算された。
【0185】
アジド−PEG44−b−PCL2684の合成。アジド−PEG−b−PCLは、130℃、アルゴンの気流下のワンポットのカチオン開環重合によって合成され、いくつかの変更を含む、PEG−b−PCLの調製のための従来報告されている方法を適用した。簡潔には、所定体積(3.3mL)のε−カプロラクトンモノマーを窒素雰囲気下で、アジド−PEG−OH82の予め計量した量(2.5g)を含むフラスコに入れた。次に、1滴のSnOctを添加した。液体窒素の温度まで冷却後、フラスコを空にし、密封し、130℃で24時間放置した。次に、合成されたポリマーをTHFに溶解し、冷ヘキサン中に沈殿することによって回収し、真空下、室温で乾燥させた。アジド−PEO44−b−PCL−2684ブロック共重合体の数平均分子量(Mn)を1H NMRによって決定した。
【0186】
アミン−PEG44−b−PCL2685の合成。EtOH及びHOAc(50μL)中のアジド−PEG44−b−PCL2684(200mg)の溶液にPd/C(活性炭上10wt%、50mg)を添加し、H2を1時間溶液を通じて泡立て、その後、H2雰囲気下で16時間撹拌した。混合物をろ過し、真空中で濃縮した。次に、残渣をTHFに溶解し、冷ヘキサン中に沈殿させて回収し、真空下、室温で乾燥させて、アミン−PEG44−b−PCL2685を得た。
【0187】
DIDO−PEO−PCL共重合体(88)。室温でCH2Cl2(10ml)中のカルボン酸5,6−ジヒドロ−11,12−ジベンゾ[a,e]シクロオクテナ−5−イルエーテル4−ニトロ−フェニルエステル86(11.6mg、0.03mmol)及び共重合体85(98mg、0.02mmol)の撹拌溶液に、Et3N(0.014ml、0.1mmol)を添加した。反応混合物を一晩室温で撹拌し、その後、溶媒を減圧下で除去した。残渣をLH−20カラム上のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)(1:1v/v MeOH/CH2Cl2)によって精製し、黄色味がかった固体として生成物を得た(101mg、97%)。
【0188】
DIDO−PEO−PCL共重合体(89)。室温でDMF(15ml)中の(5,6−ジヒドロ−11,12−ジデヒドロ−ジベンゾ[a,e]シクロオクテナ−5−イルオキシ)−酢酸88(8.3mg、0.03mmol)及び共重合体85(98mg、0.02mmol)にHATUカップリング試薬(11.4mg、0.03mmol)及びDIPEA(0.0104ml、0.06mmol)を添加した。反応混合物を5時間室温で撹拌し、その後、溶媒を減圧下で除去した。残渣をLH−20カラム上のSECクロマトグラフィー(1:1v/v MeOH/CH2Cl2)によって精製し、黄色味がかった固体として生成物を得た(100mg、96%)。
【0189】
種々の1,3−双極子を用いたジベンゾシクロオクタノールの付加環化
4−ジベンゾシクロオクチノールは、ニトロン及びアシルジアゾ誘導体などの1,3−双極子とともに周囲温度で触媒及びプロモーターなしに反応することができ、バイオコンジュゲーション反応に独特の機会を与え得ることが分かった。
【0190】
ニトロンは、Dicken et al,J.Org.Chem.1982,47,2047−2051;Inouye et al.,Bull.Chem.Soc.Jpn.1983,56,3541−3542に開示される手法の修飾によって調製された。トルエン(20ml)中のN−アルキルヒドロキシルアミンヒドロクロリド(10.0mmol)、グリオキシル酸(0.92g、10.0mmol)、及び重炭酸ナトリウム(1.68g、20.0mmol)を室温で一晩撹拌した。固体をろ過し、ろ過物を濃縮してニトロンを得た。次に、このニトロンを精製せずに直接使用した。
【0191】
このようにして、ニトロン91〜95を4−ジベンゾシクロオクチノールと混合し、3分から3.5時間の反応時間後、対応する2,3−ジヒドロ−イソオキサゾール付加環化生成物をほぼ定量的収率で単離された。ニトロンの化学的性質は反応速度の劇的な衝撃を有することが図18において見ることができる。特に、電子不足のニトロン93及び94は、対応するアジドよりも非常に高速で反応する。
【0192】
実験
NMRによる秒オーダーの速度定数を計算するための方法。基質を別々に適切な溶媒に溶解し、6mMの濃度で1:1に混合した。転換率は、複数のケミカルシフトでの積分によって決定されるように、出発物質の消失及び2つの位置異性生成物の出現の両方によってモニターされた。反応の秒オーダーの速度定数は、1/[基質]対時間をプロットし、線形回帰による解析によって決定された。秒オーダーの速度定数は、決定された傾きの2分の1に対応する。
【0193】
本明細書中で引用された全ての特許、特許出願、及び刊行物、並びに電子的に利用可能な基材(例えば、GenBankアミノ酸及び核酸配列寄託;タンパク質データバンク(pdb)寄託)の完全な開示は、参照により援用される。前記で詳述な記載及び実施例は、理解を明確にするためにだけ提供された。不要な限定はそこから解釈されてはならない。本発明は、特許請求の範囲に定義される発明に含まれるであろう、当業者に明らかであるように示され、記載された正確な詳細に限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

[式中、
各R1は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステル、亜硝酸エステル、硫酸エステル、及びC1−C10有機基からなる群から選択され;
各R2は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステル、亜硝酸エステル、硫酸エステル、及びC1−C10有機基からなる群から選択され;
Xは、C=O、C=N−OR3、C=N−NR34、CHOR3、又はCHNHR3を表し;並びに
各R3及びR4は、独立して、水素又は有機基を表す]
で表されるアルキン。
【請求項2】
各R1が水素を表す、請求項1に記載のアルキン。
【請求項3】
各R2が水素を表す、請求項1又は2に記載のアルキン。
【請求項4】
3が共有結合した有機色素を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルキン。
【請求項5】
有機色素が蛍光色素である、請求項4に記載のアルキン。
【請求項6】
XがC=N−OR3を表し、R3が式:
−(CH2aC(O)Y
[式中、
aは、1〜3であり;
Yは、OH又はNHR5を表し;及び
5は、水素又は1級アミンを含む有機基のビオチン化生成物を表す]
を有する有機基を表す、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルキン。
【請求項7】
ビオチン化生成物が、−(CH2CH2O)b(CH2c−Ld−(CH2CH2O)e(CH2fNH2及び/又は−(CD2CD2O)b(CD2c−Ld−(CD2CD2O)e(CD2fNH2[式中、b=0〜100;c=0〜100;d=0〜100;e=0〜100;f=0〜100;及びLは任意の切断可能なリンカーである]の1級アミン含有基のビオチン化生成物である、請求項6に記載のアルキン。
【請求項8】
切断可能なリンカーは、存在する場合には、ジスルフィドである、請求項7に記載のアルキン。
【請求項9】
XがCHOR3を表し、R3がアルキル基、アリール基、アルカリル基、及びアラルキル基から選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルキン。
【請求項10】
3が、
−C(O)Z
[式中、
Zは、アルキル基、OR6、又はNHR7を表し;
6及びR7は、独立して、アルキル基、アリール基、アルカリル基、及びアラルキル基からなる群から選択される]
を表す、請求項9に記載のアルキン。
【請求項11】
7が、1級アミンを含む有機基のビオチン化生成物である、請求項10に記載のアルキン。
【請求項12】
ビオチン化生成物が、−(CH2CH2O)b(CH2c−Ld−(CH2CH2O)e(CH2fNH2及び/又は−(CD2CD2O)b(CD2c−Ld−(CD2CD2O)e(CD2fNH2[式中、b=0〜100;c=0〜100;d=0〜100;e=0〜100;f=0〜100;及びLは任意の切断可能なリンカーである]の1級アミン含有基のビオチン化生成物である、請求項11に記載のアルキン。
【請求項13】
切断可能なリンカーは、存在する場合には、ジスルフィドである、請求項12に記載のアルキン。
【請求項14】
3が、重合体基又は共重合体基を表す、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルキン。
【請求項15】
共重合体基が、親水性部分及び疎水性部分を含む、請求項14に記載のアルキン。
【請求項16】
共重合体基が、式−[CH2CH2O]n−[C(O)(CH25O]m−H(式中、n=0〜100、m=0〜100)のフラグメントを含む、請求項14に記載のアルキン。
【請求項17】
【化2】

で表されるアルキン。
【請求項18】
【化3】

で表されるアルキン。
【請求項19】
【化4】

で表されるアルキン。
【請求項20】
【化5】

[式中、R3は水素又は有機を表す]
で表されるアルキン。
【請求項21】
請求項14〜16のいずれか1項に記載のアルキンと重合体又は共重合体との混和物を含む組成物。
【請求項22】
共重合体が親水性部分及び疎水性部分を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
共重合体が式:R9O−[CH2CH2O]p−[C(O)(CH25O]o−H[式中、R9はアルキル基を表し、p=0〜100、o=0〜100]である、請求項21又は22に記載の組成物。
【請求項24】
9がメチルを表す、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
組成物が共重合体ミセルを形成する、請求項21〜24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
薬物送達を調節する方法であって、
少なくとも1つの双極子機能性薬物と1,3−アルキンを含む請求項25に記載の共重合体ミセルとを組み合わせ;及び
少なくとも1つの1,3−双極子機能性薬物とアルキンを含む共重合体ミセルとが複素環式化合物を形成するのに有効な条件下で反応できるようにする
ことを含む方法。
【請求項27】
式:
【化6】

[式中、
各R1は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステル、亜硝酸エステル、硫酸エステル、及びC1−C10有機基からなる群から選択され;
各R2は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステル、亜硝酸エステル、硫酸エステル、及びC1−C10有機基からなる群から選択され;
Xは、C=O、C=N−OR3、C=N−NR34、CHOR3、又はCHNHR3を表し;
各R3及びR4は、独立して、水素又は有機基を表し;並びに
8は有機基を表す]
で表される化合物。
【請求項28】
式:
【化7】

[式中、
各R1は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステル、亜硝酸エステル、硫酸エステル、及びC1−C10有機基からなる群から選択され;
各R2は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステル、亜硝酸エステル、硫酸エステル、及びC1−C10有機基からなる群から選択され;
Xは、C=O、C=N−OR3、C=N−NR34、CHOR3、又はCHNHR3を表し;
各R3及びR4は、独立して、水素又は有機基を表し;並びに
8は有機基を表す]
で表される化合物。
【請求項29】
8が生体分子を表す、請求項27又は28に記載の化合物。
【請求項30】
生体分子が、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、核酸、脂質、単糖類、オリゴ糖類、多糖類、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項29に記載の化合物。
【請求項31】
式:
【化8】

[式中、
各R1は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステル、亜硝酸エステル、硫酸エステル、及びC1−C10有機基からなる群から選択され;
各R2は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステル、亜硝酸エステル、硫酸エステル、及びC1−C10有機基からなる群から選択され;
Xは、C=O、C=N−OR3、C=N−NR34、CHOR3、又はCHNHR3を表し;並びに
各R3、R4は及びR10は、独立して、水素又は有機基を表し、ただし、少なくとも1つのR10は有機基を表す]
で表される化合物。
【請求項32】
式:
【化9】

[式中、
各R1は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステル、亜硝酸エステル、硫酸エステル、及びC1−C10有機基からなる群から選択され;
各R2は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステル、亜硝酸エステル、硫酸エステル、及びC1−C10有機基からなる群から選択され;
Xは、C=O、C=N−OR3、C=N−NR34、CHOR3、又はCHNHR3を表し;並びに
各R3、R4は及びR10は、独立して、水素又は有機基を表し、ただし、少なくとも1つのR10は有機基を表す]
で表される化合物。
【請求項33】
有機基を表す少なくとも1つのR1が生体分子を表す、請求項31又は32に記載の化合物。
【請求項34】
生体分子が、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、核酸、脂質、単糖類、オリゴ糖類、多糖類、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項33に記載の化合物。
【請求項35】
複素環式化合物を製造する方法であって、
少なくとも1つの1,3−双極子機能性化合物と請求項1〜20のいずれか1項に記載の少なくとも1つのアルキンとを組み合わせ;
少なくとも1つの1,3−双極子機能性薬物と少なくとも1つのアルキンが複素環式化合物を形成させるのに有効な条件下で反応できるようにする
ことを含む方法。
【請求項36】
1,3−双極子機能性化合物が、アジド機能性化合物、ニトリル酸化物機能性化合物、ニトロン機能性化合物、アゾキシ機能性化合物、アシルジアゾ機能性化合物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
複素環式化合物を形成させるのに有効な条件が、添加触媒が実質的に存在しないことを含む、請求項35又は36に記載の方法。
【請求項38】
反応が生細胞内又は生細胞の表面上で起こる、請求項35〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
少なくとも1つの1,3−双極子機能性化合物が1,3−双極子機能性生体分子を含む、請求項35〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
少なくとも1つの1,3−双極子機能性化合物が検出可能な標識を含む、請求項35〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
複素環式化合物を検出することをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
検出可能な標識がアフィニティー標識である、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項43】
親和性結合を用いて複素環式化合物を単離することを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
少なくとも2つの末端を含む、切断可能なリンカーフラグメント;
切断可能なリンカーフラグメントの第1末端に結合されたアルキンフラグメント;及び
切断可能なリンカーフラグメントの第2末端に結合されたビオチン化フラグメント
を含むアルキン。
【請求項45】
アルキンフラグメントが、歪んだ環状アルキンフラグメントを含む、請求項44に記載のアルキン。
【請求項46】
少なくとも1つの重質量(heavy mass)アイソトープをさらに含む、請求項44又は45に記載のアルキン。
【請求項47】
少なくとも1つの検出可能な標識をさらに含む、請求項44〜46のいずれか1項に記載のアルキン。
【請求項48】
検出可能な標識が蛍光標識を含む、請求項47に記載のアルキン。
【請求項49】
請求項44〜48のいずれか1項に記載の少なくとも1つのアルキンと少なくとも1つの1,3−機能性化合物との反応によって形成される複素環式化合物。
【請求項50】
1,3−機能性化合物が、アジド機能性化合物、ニトリル酸化物機能性化合物、ニトロン機能性化合物、アゾキシ機能性化合物、アシルジアゾ機能性化合物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項49に記載の複素環式化合物。
【請求項51】
複素環式化合物を製造するための方法であって、
少なくとも1つの1,3−双極子機能性化合物と請求項44〜48のいずれか1項に記載の少なくとも1つのアルキンとを組み合わせ;及び
少なくとも1つの1,3−双極子機能性化合物と少なくとも1つのアルキンが複素環式化合物を形成するのに有効な条件下で反応できるようにする
ことを含む方法。
【請求項52】
1,3−双極子機能性化合物が、アジド機能性化合物、ニトリル酸化物機能性化合物、ニトロン機能性化合物、アゾキシ機能性化合物、アシルジアゾ機能性化合物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
複素環式化合物を形成させるのに有効な条件が、添加触媒が実質的に存在しないことを含む、請求項51又は52に記載の方法。
【請求項54】
反応が生細胞内又は生細胞の表面上で起こる、請求項51〜53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
少なくとも1つの1,3−双極子機能性化合物が1,3−双極子機能性生体分子を含む、請求項51〜54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
複素環式化合物と、ビオチンに結合する化合物とを接触させることをさらに含む、請求項51〜55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
ビオチンに結合する化合物がアビジン及び/又はストレプトアビジンを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
複素環式化合物を検出することをさらに含む、請求項51〜57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
アルキンを製造する方法であって:
式:
【化10】

で表されるアルケンを臭素化し、式:
【化11】

で表される二臭化物を得て;及び
式XVで表される二臭化物を脱臭化水素化し、式:
【化12】

で表されるアルキンを得る方法であって、式中、
各R1は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステル、亜硝酸エステル、硫酸エステル、及びC1−C10有機基からなる群から選択され;
各R2は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、硝酸エステル、亜硝酸エステル、硫酸エステル、及びC1−C10有機基からなる群から選択され;
Xは、C=O、C=N−OR3、C=N−NR34、CHOR3、又はCHNHR3を表し;並びに
各R3及びR4は、独立して、水素又は有機基を表す、方法。
【請求項60】
請求項1〜20のいずれか1項に記載のアルキンを表面上に有する基質。
【請求項61】
基質が、レジン、ゲル、ナノ粒子、又はそれらの組み合わせの形態である、請求項60に記載の基質。
【請求項62】
基質が3次元マトリックスである、請求項60又は61に記載の基質。
【請求項63】
アルキンのX基が、基質の表面の結合点を表す、請求項60〜62のいずれか1項に記載の基質。
【請求項64】
生体分子を基質上に固定する方法であって、
請求項60〜63のいずれか1項に記載の基質を提供し:
複素環式化合物を形成するのに有効な条件下で基質と1,3−双極子機能性生体分子とを接触させる
ことを含む方法。
【請求項65】
1,3−双極子機能性生体分子が、アジド機能性生体分子、ニトリル酸化物機能性生体分子、ニトリル酸化物機能性生体分子、アゾキシ機能性生体分子、アシルジアゾ機能性生体分子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
生体分子が、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、核酸、脂質、単糖類、オリゴ糖類、多糖類、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項64又は65に記載の方法。
【請求項67】
請求項64〜66のいずれか1項に記載の方法によって製造される固定化された生体分子を含む製品。
【請求項68】
3次元マトリックス上に固定されたタンパク質を含む製品。
【請求項69】
細胞を固定する方法であって、
請求項60〜63のいずれか1項に記載の基質を用意し;
複素環式化合物を形成するのに有効な条件下で基質と、1,3−双極子機能性生体分子を含む細胞とを接触させる
ことを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20−1】
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【図20−2】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2011−504507(P2011−504507A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535090(P2010−535090)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/084345
【国際公開番号】WO2009/067663
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(500182460)ユニバーシティ・オブ・ジョージア・リサーチ・ファウンデイション・インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】