説明

アルコール抽出プロポリスからヤニなしプロポリス、プロポリスクロロフィル、水抽出プロポリスの製造方法

【課題】プロポリス原塊にはアルコールに溶けやすい成分、水に溶けやすい成分、植物に特異的な葉緑素(クロロフィル)が含有されており、これら成分をプロポリス原塊から無駄なく抽出する方法を提供することにある。
【解決手段】 本発明は一般的に市販されているアルコール抽出プロポリスの中に含有されている黒褐色のヤニ・ミツロウからプロポリスクロロフィルを、アルコール抽出プロポリスの製造過程で発生する残渣から温度37〜70℃、好ましくは温度50〜60℃の温水で抽出される水抽出プロポリスの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルコール抽出プロポリス(黒褐色)中のケルセチンなどのフラボノイドを効率よく抽出し、かつ樹脂などのタール状ヤニを除去したヤニなしプロポリス、ヤニ中に存在するプロポリスクロロフィル、プロポリス原塊からアルコール抽出プロポリスの製造過程で発生した残渣からの水抽出プロポリスの製造方法とそれらを配合することを特徴とする医薬部外品、健康食品、化粧品の素材の製造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
古くから知られているようにプロポリスは天然の抗生物質、免疫力増進剤などの民間薬として利用されてきた。プロポリス原塊はユーカリ、マツなどの樹液や、花粉、ミツバチ自身の唾液と混ぜ合わせて作られたものである。プロポリス原塊の主な成分はヤニ・ミツロウ、樹脂、フラボノイド類、芳香族、有機酸エステルなどである。これらの成分はエチルアルコール(以下アルコールと略す)に溶けやすいことから市販されているプロポリス製品はその殆どがアルコール抽出したものやアルコール抽出したものを加工したものである。このアルコール抽出プロポリスは黒褐色のヤニ・ミツロウ成分が多く、医薬部外品や化粧品の原料として使用するには黒褐色のヤニ・ミツロウ成分が多く、医薬部外品や化粧品の原料として使用するには黒褐色の色調が問題となり、プロポリス配合量に限界があった。また、水に滴下して飲用する場合、水面に浮いたヤニ状の不溶物が容器の内側に付着するといった問題も指摘されている。
【0003】
請求項1で製造されたヤニなしプロポリスはヤニやミツロウなどの黒色成分が除去され、その色調は黄色から黄褐色でかつ透明でフラボノイドの1成分であるケルセチン濃度はアルコール抽出プロポリスの50〜60%である。また、ヤニやミツロウを含有しないプロポリスの製造は、従来、水抽出で製造されていたがこの水抽出プロポリスは抗炎症作用などの生理活性をもつ成分の抽出効率の低いことが指摘されていた。
【0004】
プロポリスには300種位の化学成分があり、そのうちフラボノイド類は40種位とされている。しかしながらクロロフィルの含有についての報告は見当たらない。アルコール抽出プロポリスを濾紙に滴下し、乾燥させたものを観察すると緑色がかった色調を呈している。この緑色がかった色調に着目し、アルコール抽出プロポリスからヤニなしプロポリスの製造過程で発生したタール成分からプロポリスクロロフィルの抽出方法を探しあてた。
【0005】
現在市販されている健康増進補助食品や飲料製品のプロポリスは、プロポリス原塊にアルコールを加えて有効成分を抽出したアルコール抽出プロポリスが一般的である。プロポリス原塊には花粉、樹脂および芳香族、ミツロウや精油各種有機物、ミネラルなどが含有されている。アルコール抽出プロポリスについては多くの報告がみられるが、糖質、タンパク質、アミノ酸などについての報告は見当たらない。プロポリス原塊からアルコール抽出プロポリスの製造過程で発生した残渣物は産廃物として処理されているのが現状である。我々はこのアルコール抽出プロポリスの残渣にアルコールに不溶でかつ温水に溶けやすい成分のあることに着目し、水抽出プロポリスを製造した。従来の水抽出プロポリスの製造方法はプロポリス原塊に精製水を加えて水に溶解しやすい成分を抽出したものであり、その中に含有される成分についての詳しい報告はみられない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プロポリス原塊にはアルコールに溶けやすい成分、水に溶けやすい成分、植物に特異的な葉緑素(クロロフィル)が含有されており、これら成分をプロポリス原塊から無駄なく抽出する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は一般的に市販されているアルコール抽出プロポリスの中に含有されている黒褐色のヤニ・ミツロウからプロポリスクロロフィルを、アルコール抽出プロポリスの製造過程で発生する残渣から温度37〜70℃、好ましくは温度50〜60℃の温水で抽出される水抽出プロポリスの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明はプロポリス原塊に含有される種々な成分を無駄なく効率よく抽出し、その成分の効能に見合った医薬品、化粧品、健康補助食品の素材として使用できるプロポリス製品の製造方法を提供することと、これらプロポリス製品に高品質木酢液を配合することにより、より効能が増強されることを示すことにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のヤニなしプロポリス製造に用いられるアルコール抽出プロポリスは、ブラジル、中国、オーストラリア、日本原産のプロポリス原塊から製造されたアルコール抽出プロポリスである。プロポリスクロロフィルの製造に用いられるヤニ・ミツロウは上記記載のアルコール抽出プロポリスより製造されるナニなしプロポリスの製造過程で発生するヤニ・ミツロウ成分である。水抽出プロポリスの製造で用いられる原料はプロポリス原塊からアルコール抽出後に発生する残渣である。
【0010】
本発明において製造されるヤニなしプロポリスは、プロポリス原塊からアルコール抽出プロポリスの他に現在市販されているアルコール抽出プロポリスからも製造可能である。
【0011】
本発明において製造されるプロポリスクロロフィルは現在市販されているアルコール抽出プロポリスからヤニなしプロポリスの製造過程で発生する黒緑色の沈殿物からも製造可能である。
【0012】
プロポリス原塊30〜40重量部に99.5%アルコールを70〜60重量部加えてプロポリス原塊中に含まれるヤニを含む樹脂成分、ミツロウ、フラボノイド。芳香族、有機酸エステルのうち、アルコールに溶解しやすい成分をアルコール相に移行させる。その後、濾紙にて濾過し、濾液をアルコール抽出プロポリスとする。
【0013】
ヤニなしプロポリスの製造はアルコール抽出プロポリス40〜60重量部に対し、精製水60〜40重量部、好ましくはアルコール抽出プロポリス50重量部に対し、精製水50重量部加えて室温で十分撹拌後静置する。上層が透明な黄色〜黄褐色になった時点で遠心分離し、その上清をヤニなしプロポリスとする。この時、アルコール抽出プロポリスの重量比に対して精製水の量が少ない場合、ヤニの凝集沈殿が不十分であり、黄色透明にならない。これとは逆に精製水の量が多い場合にはヤニの凝集沈殿は不十分でかつ色調は乳白色を呈す。
【0014】
このようにして製造された黄色〜黄褐色のヤニなしプロポリスは、プロポリスの規格成分含有量の一つとされるケルセチン濃度は3.5±0.3mg/100gであった。
【0015】
[0013]によって製造されたヤニなしプロポリスは50%もしくはそれ以上のアルコール水溶液、グリセリンによく溶解するため化粧品、医薬品、食品の製造原料あるいはそのものとして使用できる。また50%以下のアルコールで溶解した場合には乳白色となるがヤニが除去されているためこれも化粧品、医薬品、食品の製造原料として使用できる。
【0016】
[0013]のヤニなしプロポリスの製造過程で発生した沈殿物に、その原料として使用したアルコール抽出プロポリスと同等重量部の99.5%アルコールを加え、十分混合してプロポリスクロロフィルの製造原料とする。
【0017】
プロポリスクロロフィル製造原料100〜50重量部に対し、植物油50〜100重量部、好ましくはプロポリス製造原料100重量部にスクワランもしくはホホバ油50重量部加えて40〜60℃に加温しながら十分撹拌する。室温に一昼夜放置後、遠心分離し、油相を採取し、プロポリスクロロフィルを得る。このプロポリスクロロフィルは波長366mmで照射すると赤色の蛍光を発し、図1に示したスペクトルの特徴からクロロフィルaと同定された。このようにして得られたプロポリスクロロフィルのクロロフィルaの含有量は2.1±0.3mg/100gである。
【0018】
クロロフィル美顔法などで使用されるフロロフィルは銅クロロフィリンナトリウムが一般的であるが[0016]で製造されたプロポリスクロロフィルは天然のクロロフィルaであり、かつスクワランもしくはホホバ油に溶解されているため、化粧品として使用した場合、保湿性がよく、クロロフィルのもつ皮膚病の治療効果、皮膚繊維芽細胞の増殖作用のあることから新しい化粧品原料として期待される。
【0019】
近年、ダイエットで注目されているデトックス(解毒)という言葉がある。クロロフィルにはこのデトックス効果のあることが報告されており、スクワラン、ホホバ油に溶解されているプロポリスクロロフィルはスクワラン、ホホバ油のもつ抗酸化能からこれを服用することによる脂質代謝改善およびデトックスの面からも健康増進に期待される素材である。
【0020】
プロポリス原塊からアルコール抽出プロポリスの製造過程で発生した残渣物10〜70重量部(アルコール含浸湿性重量)に精製水90〜30重量部、好ましくは残渣物50重量部に精製水50重量部加えて温度40〜60℃にて十分撹拌後濾紙で濾過し、濾液を得る。この濾液を水抽出プロポリスとする。この水抽出プロポリスの化学成分を表1に示す。この表1に示されているように水抽出プロポリスは糖度が43.6度と高く、またアミノ酸分析の結果では神経活動に重要な働きをもつグルタミン酸が68mg/100g、アスパラギン酸が34mg/100gと含有されているのが大きな特徴である。匂いはハチミツのようにカラメル臭で色調は茶褐色を呈している。
【0021】
【表1】

【0022】
[0020]によって製造された水抽出プロポリスは精製水、グリセリン、希アルコール水によく溶解するため化粧品、医薬品、食品の製造原料もしくはそのものとして使用できる。特にアルコール過敏症のヒトには、アルコール抽出プロポリスは使用できないが、この水抽出プロポリスは使用可能である。
【0023】
以下、本発明に係るヤニなしプロポリス、プロポリスクロロフィルおよび水抽出プロポリスついて更に説明する。
【実施例1】
【0024】
ヤニなしプロポリス、プロポリスクロロフィル、水抽出プロポリスの抗菌作用
実用例[0013][0017][0020]で製造されたヤニなしプロポリス、プロポリスクロロフィル、水抽出プロポリスを原液とした場合の黄色ブドウ球菌、メシチリン耐性黄色ブドウ球菌(以下MRSAと略す)、緑膿菌、カンジダ・アルビカンス、白癬菌(トリコフィトンメンダグロフィテス)、O−157に対する抗菌作用を検討した。参考に特許3002166で製造された50%グリセリン水溶液溶解高品質木酢液の抗菌作用の結果を対比させて表2に示した。表2に示したようにヤニなしプロポリス、プロポリスクロロフィル、水抽出プロポリスは試験菌の黄色ブドウ球菌、MRSA、カンジダ・アルビカンス、O−157に対して12.5%以上の濃度で抗菌作用を示すが緑膿菌ではヤニなしプロポリスは50%以上でないと抗菌力は認められなかった。一方、プロポリスクロロフィルは緑膿菌に対して6.24%以上の濃度で抗菌力が認められた
【0025】
【表2】

【0026】
表2に示したように今回検討した6種類の病原性微生物全てに抗菌作用をもつ化粧品、医薬品、食品を製造する場合、最終濃度でヤニなしプロポリスは50%、プロポリスクロロフィルは12.5%、水抽出プロポリスは12.5%。高品質木酢液は12.5%以上の濃度が必要とされる。各試料を単独で使用する場合、この濃度ではそれぞれがもつ特異的な臭いがあり、抗菌作用は認めるものの使用者に対して不快感を与えることが余儀なくされる。
【0027】
そのため、ヤニなしプロポリス、プロポリスクロロフィル、水抽出プロポリスと高品質木酢液の混合液を作成し、各種プロポリス製品と高品質木酢液の相乗効果について抗菌作用の面から検討した。
【0028】
検討試料はイ、ロ、ハの3種類を作成した。
試料イで使用するヤニなしプロポリスは50%アルコール水溶液溶解状態にあるため、高品質木酢液も高品質木酢液原料を50%アルコール水溶液で溶解し、ヤニなしプロポリス20重量部に高品質木酢液50重量部を混合したものを試料とした。
【0029】
プロポリスクロロフィルは植物油脂(スクワラン)に溶解されているため、ここで使用する高品質木酢液は高品質木酢液原料をツバキ油に溶解し、プロポリスクロロフィル20重量部にツバキ油溶解高品質木酢液50重量部を混合したものを試料として調整した。
【0030】
試料ハで使用する水抽出プロポリスは水溶解性であるため、ここで使用する高品質木酢液は高品質木酢液原料を50%グリセリン水溶液で溶解したものを使用し、水抽出プロポリス20重量部に50%グリセリン水溶液溶解高品質木酢液50重量部を混合したものを試料とした。
【0031】
上記イ、ロ、ハの試料について抗菌作用を検討した。菌種は表2と同様の菌種で、その抗菌作用の結果を表3に示した。
【0032】
【表3】

【0033】
ヤニなしプロポリス、プロポリスクロロフィル、高品質木酢液をそれぞれ単独で使用した時の抗菌力はそのほとんどの試料が12.5%以上の濃度で効果を認めたものに対し、表3の抗菌力の結果に表されているように高品質木酢液を混合したプロポリス製品は全ての菌に対し、単独で使用するよりも抗菌力は優れていた。
【0034】
プロポリスクロロフィル、高品質木酢液混合液(油性)ではそれぞれの原液に換算してプロポリスクロロフィルが2.4%、高品質木酢液が7.0%以上の濃度で全ての菌に対し抗菌力を認めたが、ことに緑膿菌に対してはプロポリスクロロフィルが0.7%、高品質木酢液が1.75%と低濃度でも抗菌力が認められた。この結果は褥瘡(床ずれ)などのように緑膿菌が感染しやすい高齢者の褥瘡対策にプロポリスクロロフィル、高品質木酢液を配合した軟膏の開発に貢献するものと期待される。
【0035】
水抽出プロポリス、高品質木酢液混合液の抗菌力はヤニなしプロポリス、高品質木酢液混合液の結果と同様であった。この結果は口腔内の殺菌目的でプロポリス、高品質木酢液を使用する場合、アルコール過敏症のヒトや小児の口内炎患者、ことにカンジダ・アルビカンス感染症の鵞口瘡に対して口腔内スプレーの素材として使用可能である。
【0036】
水抽出プロポリスはアルコール抽出プロポリスに含有されていない糖質、アミノ酸が含有されているため、高品質木酢液を混合して使用することにより、単に口腔内抗菌剤としてだけでなく、健康飲料としても期待される。この場合さらに飲みやすくするため、好みに応じて香料、甘味料を加えることも可能である
【実施例2】
【0037】
ヤニなしプロポリス、プロポリスクロロフィル、水抽出プロポリス、高品質木酢液の4製品について臭いの点で問題にならない濃度を検討し、皮膚外用塗布軟膏、口腔スプレーを試作した。
【0038】
皮膚外用塗布剤の場合、病巣部の皮膚が乾燥もしくは湿潤状態にあるかによって軟膏の基材を変えて製造する必要がある。
【0039】
例えば病像が小丘診、小水疱と湿潤状態にある場合は表5に示した処方1のように基材に白色ワセリンを使用し、ヤニなしプロポリス、高品質木酢液を配合したものを使用する。この油脂性軟膏は白色ワセリン500重量部を温度70〜80℃に加熱し、ヤニなしプロポリス、高品質木酢液を加えて70〜80℃に加熱し、十分混合する。一昼夜室温に静置後、下層の水相を捨て、ワセリン相を皮膚外用薬として使用する。
【0040】
【表5】

【0041】
病像が乾燥状態にある場合、表6に示した処方2の内容にて乳剤性軟膏を製造して使用する。
【0042】
【表6】

この処方で特徴的なことはヤニなしプロポリス、高品質木酢液を配合しているだけでなく、生体内に存在する活性酸素を消去する働きのあるSOD(スーパーオキシデンスムターゼ:超酸化物不均化酵素)を活性化する働きのある亜鉛(ステアリン酸亜鉛)を配合していることである。
【0043】
前記処方1、2で製造した軟膏についてその安全性を確認するため、皮膚認容試験を実施した。皮膚認容試験、光貼布試験ともに被験者は、健常人男性24名、女性12名の計36名とした。被験者は検査時に薬物を内服もしくは常用しておらず、皮膚に異常を認めない健常人とした。その他医師が不適当と認めたものは除外した。
【0044】
皮膚認容試験は処方1の軟膏とその基材である白色ワセリン、処方2の乳剤性軟膏と処方2の内容からヤニなしプロポリス、高品質木酢液を除いた製品を、フィンチャンバーを用いて健常人の背部に貼布してから48時間後、72時間後にICDRG(International Contact Dirmatitis Reserch Group)の基準に基づいて判定した。
【0045】
光貼試験は処方1とその基材である白色ワセリン、処方2の乳剤性軟膏と処方2の内容からヤニなしプロポリス、高品質木酢液を除いた製品を、フィンチャンバーを用いて健常人被験者の背部に貼布してから、24時間後にICDRの基準に基づいて判定する。判定結果で異常のないことを確認の上、30分後、紫外線波長(3J/平方cm)を照射し、照射30分後、24時間後、48時間後に異常がないかを判定する。
【0046】
皮膚認容試験、光貼布試験ともに36名全員の試験部位に紅斑、発赤湿、浮腫などの病像は認められず陰性で処方1、処方2で製造された軟膏の安全性が確認された。
【0047】
微生物同定試験でTrichophyton mentagrophytes(水虫の病原菌とされる白癬菌の1種)によると診断された足指間白癬菌症患者10例(乾燥型6例、湿潤型4例)に処方1、2で製造された軟膏を朝、夜2回(夜は風呂上がり)患部にすり込むように塗布させた。病像が乾燥型の場合は処方2を、湿潤型の場合は処方1を使用させ、効果の判定は使用後2週間目に肉眼的判定と患者の訴えによって行った。各患者の訴えでは掻痒感は消失し、患部の症状も改善されたが、病像が乾燥型に対し、湿潤型では症状の改善に3〜4週間を要した。
【0048】
アトピー性皮膚炎に対して一般的に副腎皮質ホルモン剤が使用されているが、副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)療法は病像が一度完治したかにみえるが患部の色素沈着、皮膚の亀裂、異常乾燥、角質増殖がしばしば認められ、長期使用はできない。このようなアトピー性皮膚炎の患者には初め処方1の軟膏を使用し、使用後2〜3週間目より処方2の軟膏を使用させることにより、症状の改善が認められ、副作用の少ないアトピー性皮膚炎の治療剤として多いに期待される。
【0049】
カカトや肌のヒビ割れの修復には処方1で製造されてワセリンを基材とした製品を使用するとよい。好みに応じて柔軟性を増加する場合は白色ワセリンを減量し、スクワランもしくはホホバ油を加えることも可能である。
【0050】
カカトや肌のヒビ割れの修復にはワセリンを基材とした製品(処方3)の代わりに[0017]で製造されたプロポリスクロロフィル、もしくは[0029]で製造されたプロポリスクロロフィル(スクワランもしくはホホバ油溶解)とツバキ油溶解高品質木酢液を配合した製品も使用可能である。
【0051】
プロポリスクロロフィルはクロロフィルaのもつ消臭、皮膚繊維芽細胞の活動を助ける効果のあることや高品質木酢液の持つ、収れん作用、殺菌作用からこれら両成分を配合した製品は褥瘡皮膚潰瘍治療薬として期待される。
【0052】
褥瘡皮膚潰瘍治療薬として使用する場合の処方内容は表7に示した処方4の成分で構成される。
【0053】
【表7】

【0054】
処方1、処方4で製造された白色ワセリンを基材とした軟膏はリップクリームとしても使用可能である。
【0055】
単純ヘルペス感染による口囲皮膚炎は口のまわりに小丘疹、小水疱と湿潤面の病像がみられる皮膚炎である。治療には副腎皮質ホルモンがよく使用されるが、副作用などの面から長期使用はできない。このような単純ヘルペス感染による口囲皮膚炎患者には処方1で製造された白色ワセリン基材にヤニなしプロポリス、高品質木酢液を配合した軟膏を使用するとよい。
【実施例3】
【0056】
口内炎は口腔粘膜に生ずる炎症で口腔内の不潔さ、機械的および熱刺激、感染、栄養不良など種々な原因で生ずる病態である。それにはヘルペス性口内炎、カタル性口内炎、潰瘍性口内炎、手・足・口病、口腔カンジダ症などがある。口内炎は抗癌剤投与を受けている患者に多くみられ、口臭を発することが多い。
【0057】
【表8】

【0058】
【表9】

【0059】
口腔スプレーとして製造された表8に示した処方3、表9に示した処方5の試料について口内炎でよく検出される病原菌の黄色ブドウ球菌、MRSA、緑膿菌、カンジダ・アルビカンスを試験菌として抗菌作用を検討した。試料の抗菌力はJISL1902:2002「繊維製品の抗菌性試験方法・抗菌効果」9・定性試験(ハロー法)を参考にして実施し、その結果を表4に示した。
【0060】
【表4】

【0061】
表4に示したように試験菌(黄色ブドウ球菌、MRSA、緑膿菌、カンジダ・アルビカンス)全てに対し処方3、5で製造された試料(スプレー液)はこれら病原性徴生物に対して発育阻止作用のあることが確認された。処方3の試料で菌の発育阻止作用で効果が認められたことは、アルコール過敏症でアルコール溶剤の使用できないヒトや小児の口内炎、ことにカンジダ・アルビカンスに感染(鵞口瘡)しやすい患者への健康飲料水、口腔スプレーの素材として使用可能である。
【0062】
処方1〜処方5で製造される軟膏、スプレーは好みに応じて香料、甘味料を加えることが可能である。
【0063】
水抽出プロポリスを糖質、アミノ酸補給のために健康増進補助食品として使用する場合、好みに応じ果汁食品、香料、甘味料を配合することも可能である。
【0064】
図2にプロポリス原塊からアルコール抽出プロポリス、水抽出プロポリス、プロポリスクロロフィルの製造フローを示した。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】 図1はプロポシルクロロフィルのスペクトルクロマトグラフィーである。
【図2】 図2はプロポリス原塊からのヤニなしプロポリス、プロポリスクロロフィル、水抽出プロポリスの製造フローである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロポリス原塊からアルコール抽出されたアルコール溶解性プロポリス(以下アルコール抽出プロポリスと略す)からヤニ成分を除去したヤニなしプロポリスの製造方法。
【請求項2】
請求項1で得られるヤニなしプロポリスの製造過程で残渣として得られたヤニ成分に油脂を加えて油脂相に抽出されるプロポリスクロロフィルの製造方法。
【請求項3】
請求項1で得られたヤニなしプロポリスを配合した健康補助食品。
【請求項4】
請求項1で得られたヤニなしプロポリスを配合した化粧品。
【請求項5】
請求項1で得られたヤニなしプロポリスを配合した医薬部外品。
【請求項6】
請求項2で得られたプロポリスクロロフィルを配合した化粧品。
【請求項7】
請求項2で得られたプロポリスクロロフィルを配合した医薬部外品。
【請求項8】
請求項2で得られたプロポリスクロロフィルを配合した健康食品。
【請求項9】
プロポリス原塊からアルコール抽出プロポリスの製造過程で発生した残渣に精製水を加えて抽出される水抽出プロポリスの製造。
【請求項10】
請求項9で得られた水抽出プロポリスを配合した健康補助飲料などの食品。
【請求項11】
請求項9で得られた水抽出プロポリスを配合した医薬部外品。
【請求項12】
特許3002166および特許3002170で製造された高品質木酢液原料と請求項1で製造されたヤニなしプロポリスの配合を特徴とする口内炎治療薬、口臭消臭を目的とした医薬部外品。
【請求項13】
特許3002166および特許3002170で製造された高品質木酢液原料と請求項1で製造されたヤニなしプロポリスの配合を特徴とする単純ヘルペスの治療を目的とした医薬部外品。
【請求項14】
特許3002166および特許3002170で製造された高品質木酢液原料と請求項2で製造されたプロポリスクロロフィルの配合を特徴とする褥瘡治療を目的とした医薬部外品。
【請求項15】
特許3002166および特許3002170で製造された高品質木酢液原料と請求項9で製造された水抽出プロポリスの配合を特徴とする医薬部外品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−29767(P2009−29767A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213116(P2007−213116)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(507278281)
【Fターム(参考)】