説明

アルコール検出装置および自動車

【課題】アルコール検出装置において、被験者へのアルコールの影響を正確に把握すること。
【解決手段】被験者の呼気に含まれるアルコールの濃度を時間経過と共に検出し、被験者の体内におけるアルコール代謝状況を解析するアルコール検出装置1において、被験者の呼気を時間経過と共に複数回採取する呼気採取部10と、この呼気採取部10により採取した呼気に含まれるアルコールの濃度を検出するアルコール濃度検出部12と、このアルコール濃度検出部12が検出したアルコール濃度を、アルコールが被験者の口腔内に存在する第1のフェーズと、アルコールが被験者の胃内に存在する第2のフェーズと、アルコールが被験者の血液を通して肺内に存在する第3のフェーズと、を含む複数のフェーズに分類するフェーズ分類部13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール検出装置および自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
飲酒により摂取したアルコールの人体への影響や摂取したアルコールの体内における代謝の状況を把握するためのアルコール検出装置が提案されている(例えば、特許文献1または2参照)。また、アルコール検出装置を用いて飲酒運転を防止する装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−294729号公報
【特許文献2】特開平6−34590号公報
【特許文献3】特開2007−186124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したアルコール検出装置は、いずれも被験者の呼気に含まれるアルコールを検出している。しかしながら、被験者が飲酒を終了してからどのようなタイミングで被験者の呼気を採取したのかという点についてはいずれにも全く言及されていない。このように、被験者の呼気の採取タイミングが不明確である状況下においては、被験者の呼気に含まれるアルコールから被験者へのアルコールの影響を正確に把握することはできない。
【0005】
例えば、被験者が飲酒終了直後であれば、アルコールは、未だ被験者の口腔内に存在する。この状態で被験者の呼気を採取すれば、きわめて高い濃度のアルコールが検出される。また、アルコールが被験者の口腔内から胃へと移動した直後の状態で呼気を採取したとする。この段階では、アルコールは未だ被験者の血液中に溶け込んでおらず、血液を通して肺の中にも現れていない。よって、あたかも被験者がアルコールを摂取していないかのような低い濃度のアルコールが検出される。さらに、被験者の消化器系から血液中に溶け込んだアルコールが血液を通して肺に現れた状態で被験者の呼気を採取すれば、再び高い濃度のアルコールが検出される。
【0006】
このように、被験者の呼気に含まれるアルコールの濃度は、被験者が飲酒を終了した時点からの経過時間に応じて様々に遷移している。この遷移の様子を考慮することなく被験者の呼気を採取しても、被験者へのアルコールの影響を正確に把握することは困難である。
【0007】
本発明は、このような背景の下に行われたものであって、被験者へのアルコールの影響を正確に把握することができるアルコール検出装置および自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のアルコール検出装置は、被験者の呼気を時間経過と共に複数回採取する呼気採取手段と、この呼気採取手段により採取した呼気に含まれるアルコールの濃度を検出するアルコール濃度検出手段と、このアルコール濃度検出手段が検出したアルコール濃度を、アルコールが被験者の口腔内に存在する第1のフェーズと、アルコールが被験者の胃内に存在する第2のフェーズと、アルコールが被験者の血液を通して肺内に存在する第3のフェーズと、を含む複数のフェーズに分類するフェーズ分類手段と、を備えるものである。
【0009】
例えば、フェーズ分類手段は、被験者の飲酒終了時点から、その後、被験者の口腔内にアルコールが存在する期間を第1のフェーズとし、被験者の呼気に含まれるアルコール濃度が第1のフェーズから時間の経過と共に第1のフェーズと比べて減衰した状態を第2のフェーズとし、被験者の呼気に含まれるアルコール濃度が第2のフェーズから時間の経過と共に第2のフェーズと比べて増加した状態を第3のフェーズとする。
【0010】
また、被験者の体重の情報と、第3のフェーズにおける被験者のアルコール濃度の情報と、に基づき被験者の飲酒量を推定する飲酒量推定手段を備えることができる。
【0011】
このときに、呼気採取手段は、アルコール濃度が比較的高いフェーズでは、アルコール濃度が比較的低いフェーズに比べて呼気採取間隔を長く設定することが好ましい。
【0012】
さらに、アルコール濃度が閾値を超えたとき、あるいはアルコール濃度が閾値以上であるときに警報を発出する警報手段を備えることができる。
【0013】
さらに、アルコール濃度が閾値以下、あるいはアルコール濃度が閾値未満であるときにアルコール濃度が閾値を超えるまで、あるいはアルコール濃度が閾値以上になるまでの時間を予測する濃度増加予測手段を備えることができる。
【0014】
さらに、アルコール濃度が閾値以上、あるいはアルコール濃度が閾値を超えたときにアルコール濃度が閾値未満、あるいはアルコール濃度が閾値以下になるまでの時間を予測する濃度低下予測手段を備えることができる。
【0015】
また、本発明を自動車としての観点から観ると、本発明の自動車は、本発明のアルコール検出装置を備える自動車であって、アルコール濃度が閾値を超えたとき、あるいはアルコール濃度が閾値以上であるときにエンジンの始動を禁止する、もしくは発進操作を禁止する手段を備えるものである。
【0016】
さらに、エンジンの始動を禁止する、もしくは発進操作を禁止する直前に警報発出を行う警報手段を備え、警報手段が警報を発出したときには、濃度低下予測手段によるアルコール濃度が閾値未満、あるいはアルコール濃度が閾値以下になるまでの予測時間を推定することができる。
【0017】
さらに、エンジンの始動を禁止する、もしくは発進操作を禁止する直前に警報発出を行う警報手段を備え、警報手段が警報を発出したときには、飲酒量推定手段により被験者の飲酒量を推定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被験者へのアルコールの影響を正確に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(アルコール検出装置1の構成の説明)
本発明の実施の形態に係るアルコール検出装置1の構成を図1を参照して説明する。図1は、アルコール検出装置1のブロック構成図である。アルコール検出装置1は、呼気採取部10、アルコールセンサ11、アルコール濃度検出部12、フェーズ分類部13、フェーズ記録部14、飲酒量推定部15、警報部16、アルコール濃度増減予測部17、操作部18、表示部19、体重計20から構成される。なお、呼気採取部10の呼気採取制御機能(図示省略)、アルコール濃度検出部12、フェーズ分類部13、フェーズ記録部14、飲酒量推定部15、警報部16の警報制御機能(図示省略)、アルコール濃度増減予測部17、表示部19の表示制御機能(図示省略)の全部または一部はCPU(Central Processing Unit)やその他の回路部材で一体的に構成し、その中にインストールされるソフトウェアで各機能を達成するようにしてもよい。
【0020】
呼気採取部10は、被験者の呼気を採取する部材である。第一の実現例としては、例えば、呼気採取部10は、被験者に呼気採取を促すための表示部と呼気を取り入れる取り入れ部からなる部材である。すなわち、呼気採取部10は、光の点灯やブザー音または音声などにより、被験者に呼気を採取するタイミングであることを通知する。被験者は、呼気採取部10の表示に促されてアルコールセンサ11が内部に配置される呼気採取部10に対して呼気を吹きかける。
【0021】
また、第二の実現例としては、例えば、被験者は運転者であり、被験者が気密性の高い車内に居るような状況であれば、呼気採取部10は、被験者のまわりの空気を吸引して内部に配置されるアルコールセンサ11に向けて吹き付ける装置である。すなわち、呼気採取部10は、被験者の呼気を採取するタイミングになるとファンなどを回転させることにより自動的に周囲の空気を吸引し、吸引した空気をアルコールセンサ11に向けて吹き付ける。なお、アルコールセンサ11は、一般的に市販されているものにより実現できる。例えば、半導体ガスセンサなどの半導体式アルコールセンサにより実現できる。この呼気採取部10の呼気採取制御機能は、上述したようにCPUとソフトウェアとでこの部材の機能を実現するようにしてもよい。
【0022】
アルコール濃度検出部12は、アルコールセンサ11の検出出力を取り込んでアルコール濃度情報を生成する部材である。このアルコール濃度検出部12は、上述したようにCPUとソフトウェアとでこの部材の機能を実現するようにしてもよい。
【0023】
フェーズ分類部13は、アルコール濃度検出部12が検出したアルコール濃度情報、およびフェーズ記録部14からの前回のフェーズ情報に基づき、アルコール濃度検出部12からのアルコール濃度情報がどのフェーズに分類されるべきかを判定する。このフェーズ分類部13は、上述したようにCPUとソフトウェアとでこの部材の機能を実現するようにしてもよい。
【0024】
フェーズ記録部14は、フェーズ分類部13の分類結果に基づきアルコール濃度検出部12が検出したアルコール濃度情報を所定のフェーズのデータとして記録する。このフェーズ記録部14は、上述したようにCPUとソフトウェアとでこの部材の機能を実現するようにしてもよい。
【0025】
飲酒量推定部15は、被験者の体重情報と、フェーズ記録部14に記録されているアルコール濃度情報とに基づき、被験者の飲酒量を推定する。なお、被験者の体重情報の入力は、基本的には、被験者が操作部18のキー操作によって入力することとする。その他にも被験者は運転者であり、被験者が運転席に座っているような状況下であれば、運転席に被験者の体重を自動的に測定する体重計20を備えておき、飲酒量推定部15は、この装置によって被験者の体重情報を取得することもできる。この飲酒量推定部15は、上述したようにCPUとソフトウェアとでこの部材の機能を実現するようにしてもよい。
【0026】
警報部16は、アルコール濃度がフェーズ記録部14に記録されている閾値を超えたとき、あるいはアルコール濃度が閾値以上のときに警報を発出する部材である。この警報部16の警報制御機能は、上述したようにCPUとソフトウェアとでこの部材の機能を実現するようにしてもよい。
【0027】
アルコール濃度増減予測部17は、フェーズ記録部14に記録されたアルコール濃度の情報に基づきアルコール濃度が閾値以下、あるいはアルコール濃度が閾値未満であるときにアルコール濃度が閾値を超えるまで、あるいはアルコール濃度が閾値以上となるまでの時間を予測する。あるいは、アルコール濃度増減予測部17は、フェーズ記録部14に記録されたアルコール濃度の情報に基づきアルコール濃度が閾値以上であるとき、あるいはアルコール濃度が閾値を超えたときにアルコール濃度が閾値未満、あるいはアルコール濃度が閾値以下となるまでの時間を予測する。なお、このアルコール濃度増減予測部17は、上述したようにCPUとソフトウェアとでこの部材の機能を実現するようにしてもよい。
【0028】
操作部18は、被験者が操作するキースイッチなどを備える。例えば、被験者は、飲酒が終了したときに操作部18の所定のキースイッチを操作する。これにより、フェーズ分類部13は、フェーズの分類を開始する。また、操作部18は、被験者が飲酒量推定部15に対して被験者の体重情報を入力する際にも使用される。さらに、操作部18は、被験者がアルコール濃度増減予測部17に対して予測指示を与えたり、予測希望時刻t2(詳細は後述する)を入力する際にも使用される。
【0029】
表示部19は、フェーズ記録部14の記録内容、飲酒量推定部15の飲酒量推定値出力、警報部16の警報出力、アルコール濃度増減予測部17のアルコール濃度増減予測時間出力などに基づく表示を行う。この表示部19の表示制御機能は、上述したようにCPUとソフトウェアとでこの部材の機能を実現するようにしてもよい。
【0030】
体重計20は、被験者の体重を測定して飲酒量推定部15に入力する。また、上述したように、被験者は運転者であり、被験者が運転席に座っているような状況下であれば、運転席に被験者の体重を自動的に測定する体重計20を備えることもできる。
【0031】
(各フェーズの説明)
本発明の実施の形態に係るフェーズについて図2および図3を参照して説明する。図2は、本発明の実施の形態に係るフェーズを説明する図である。図3は、図2における飲酒終了以前のアルコール濃度を表す線を消去した図である。図2および図3は、横軸に経過時間をとり、縦軸にアルコール濃度をとる。
【0032】
(1)♯1−1(増加フェーズ(口腔内):検出対象外)
フェーズ♯1−1は、被験者が飲酒を開始した直後のフェーズである。被験者の口腔内にアルコールが入るため、被験者の呼気に含まれるアルコール濃度は急激に増加する。ただし、フェーズ♯1−1は、飲酒中であるため、アルコール検出装置1の検出対象のフェーズとはならない。
【0033】
(2)♯1−2(飲酒フェーズ(口腔内):途中まで検出対象外)
フェーズ♯1−2は、被験者が飲酒中のフェーズである。フェーズ♯1−2では、被験者の口腔内に常にアルコールが存在するため、被験者の呼気に含まれるアルコール濃度は高い状態が継続する。フェーズ♯1−2において、飲酒終了(一点鎖線で図示)の時点からアルコール検出装置1の検出対象のフェーズとなる。したがって、アルコール検出装置1のフェーズ記録部14に実際に記録されるのは、飲酒終了以降のアルコール濃度であるから図3に示すアルコール濃度を表す線に相当する部分のみがフェーズ記録部14にアルコール濃度情報として記録される。
【0034】
(3)♯2−1(減衰フェーズ(口腔内から胃内):検出対象)
フェーズ♯2−1は、被験者が飲酒を終了してからわずかに経過した後のフェーズである。このフェーズでは、被験者の口腔内に有ったアルコールは、殆どが胃の方に移動するため、被験者の呼気に含まれるアルコール濃度は急激に減衰する。
【0035】
(4)♯2−2(減衰フェーズ(胃内):検出対象)
フェーズ♯2−2は、被験者の胃内にアルコールが存在し、かつ、胃壁からアルコールが血液中に未だ吸収されていない状態である。したがって、呼気に含まれるアルコール濃度は低い状態を継続する。
【0036】
(5)♯3−1(増加フェーズ(血中から肺内):検出対象)
フェーズ♯3−1は、被験者の胃内を含む消化器系に存在するアルコールが消化器系から血液中に溶け込み、その血液を通して被験者の肺内にアルコールが現れ始める状態である。よって、被験者の呼気に含まれるアルコール濃度は再び増加する。
【0037】
(6)♯3−2(減衰フェーズ(血中から肺内):検出対象)
フェーズ♯3−2は、被験者の血液を通して被験者の肺内にアルコールが現れている状態である。しかしながら、被験者の体内ではアルコールの代謝が進行しており、被験者の呼気に含まれるアルコールも徐々に減衰していく。
【0038】
なお、図2および図3に示すフェーズ遷移パターンは、説明を分り易くするために、モデル化した例を示したものである。したがって、実際には、飲酒量や被験者の代謝能力によって様々に変化する。しかしながら、アルコール濃度の増減の傾向については、ほぼ図2および図3に示した傾向に合致すると考えてよい。
【0039】
(フェーズ分類部14の動作の説明)
次に、アルコール検出装置1におけるフェーズ分類部13の動作を図4のフローチャートを参照して説明する。図4は、フェーズ分類部13の動作を示すフローチャートである。
【0040】
被験者は、飲酒が終了したことを操作部18の所定のキースイッチの操作などによりフェーズ分類部13に対して通知する。また、この通知は、呼気採取部10にも伝達される。なお、飲酒が終了したことを通知するのではなく、アルコール検出装置1を飲酒を終了した後に、動作させることでスタートさせるようにしてもよい。
【0041】
図4に示すように、フェーズ分類部13は、被験者による操作部18の操作によって被験者の飲酒終了タイミングを検出する(ステップS1)。フェーズ分類部13は、この時点を図2に示すフェーズ♯1−2として仮に分類する。さらに、フェーズ分類部13は、この仮のフェーズ分類結果をアルコール濃度の情報と共にフェーズ記録部14に出力する。フェーズ記録部14はこれらを仮に記録する(ステップS2)。
【0042】
呼気採取部10は、操作部18からの飲酒終了タイミングまたは検査開始の通知を受け取ると、所定時間経過後に、被験者の呼気採取を行う(ステップS3)。採取された被験者の呼気は呼気採取部10を通りアルコールセンサ11に吹きつけられる。これによりアルコール濃度検出部12は、アルコール濃度を検出する(ステップS4)。なお、ステップS3の呼気採取とステップS4のアルコール濃度検出とは、ステップS5において、アルコール濃度の減衰が検出されず(ステップS5のNo)、かつステップS5Aにてアルコール濃度の増加が検出されない内(ステップS5AのNo)は繰り返し行われる。
【0043】
アルコール濃度検出部12は、アルコール濃度の減衰が検出されないまま(ステップS5のNo)、アルコール濃度の増加を検出したら(ステップS5AのYes)、これは明らかにフェーズ♯1−2への仮の分類が誤りであったと判断できるので、フェーズ記録部14におけるフェーズ♯1−2の仮記録を取り消す(ステップS5B)。さらに、ステップS5でアルコール濃度の減衰が検出されないまま(ステップS5のNo)、ステップS5Aでアルコール濃度の増加を検出したのであるから(ステップS5AのYes)、これはフェーズ♯3−1に分類されるべき状態である。よって、フェーズ分類部13は、前の状態をフェーズ♯2−2に分類する。フェーズ記録部14は、これを記録する(ステップS5B)。さらに、フェーズ分類部13は、ステップS14に移行し、現状をフェーズ♯3−1として分類する。フェーズ記録部14は、これを記録する(ステップS14)。ここまでのフローは、アルコール検出装置1のスタート時点が既にフェーズ♯2−2であったことを示す。
【0044】
呼気採取部10は、フェーズ分類部13からのフェーズ分類結果(フェーズ♯3−1に分類)を受け取ると、所定時間経過後に、被験者の呼気採取を行う(ステップS15)。採取された被験者の呼気はアルコールセンサ11に吹きつけられる。これによりアルコール濃度検出部12は、アルコール濃度を検出する(ステップS16)。なお、ステップS15の呼気採取とステップS16のアルコール濃度検出とは、ステップS17において、アルコール濃度の減衰が検出されるまで繰り返し行われる。
【0045】
フェーズ分類部13は、フェーズ♯3−1から時間の経過と共にフェーズ♯3−1におけるアルコール濃度が減衰した状態を検出すると(ステップS17のYes)、これをフェーズ♯3−2に分類する。さらに、フェーズ分類部13は、このフェーズ分類結果をアルコール濃度の情報と共にフェーズ記録部14に出力する。フェーズ記録部14は、これを記録する(ステップS18)。
【0046】
一方、ステップS5の処理において、フェーズ分類部13は、フェーズ♯1−2から時間の経過と共にフェーズ♯1−2と比べてアルコール濃度が減衰した状態を検出すると(ステップS5のYes)、これをフェーズ♯2−1として仮に分類する。フェーズ分類部13は、この仮のフェーズ分類結果をアルコール濃度の情報と共にフェーズ記録部14に出力する。フェーズ記録部14は、仮の分類結果を仮に記録する(ステップS6)。
【0047】
呼気採取部10は、フェーズ分類部13からの仮のフェーズ分類結果(フェーズ♯2−1に分類)を受け取ると、所定時間経過後に、被験者の呼気採取を行う(ステップS7)。採取された被験者の呼気はアルコールセンサ11に吹きつけられる。これによりアルコール濃度検出部12は、アルコール濃度を検出する(ステップS8)。なお、ステップS7の呼気採取とステップS8のアルコール濃度検出とは、ステップS9において、アルコール濃度の減衰停止が検出されず(ステップS9のNo)、ステップS9Aにて所定時間が経過していない内(ステップS9AのNo)は繰り返し行われる。
【0048】
アルコール濃度検出部12は、アルコール濃度の減衰停止が検出されないまま(ステップS9のNo)、所定時間が経過しても(ステップS9AのYes)、未だアルコール濃度の減衰停止が検出されていなければ(ステップS9のNo)、これは明らかにフェーズ♯2−1への分類が誤っていると判断できるので、フェーズ記録部14に仮記録されているフェーズ♯2−1の仮の記録を取り消す(ステップS9B)。そして、ステップS9でアルコール濃度の減衰停止が検出されないまま(ステップS9のNo)、ステップS9Aで所定時間が経過しているのであるから(ステップS9AのYes)、この状態はフェーズ♯3−2に分類されるべき状態である。よって、フェーズ分類部13は、前の状態をフェーズ♯3−1に分類する。フェーズ記録部14は、これを記録する(ステップS9B)。さらに、フェーズ分類部13は、ステップS18に移行し、現状をフェーズ♯3−2として分類する。フェーズ記録部14は、これを記録する(ステップS18)。なお、ステップS9Aの所定時間は、フェーズ♯2−1ではなくフェーズ♯3−2と確定できる時間が好ましい。例えば、所定時間は、20分以上が好ましく、30以上であれば確実である。ここまでのフローは、アルコール検出装置1のスタート時点が既にフェーズ♯3−2であったことを示す。よって、ステップS9Bにおいて、前の状態をフェーズ♯3−1としたが、その正確な期間の情報は不明確となる。
【0049】
一方、ステップS9、ステップS9Aの処理において、フェーズ分類部13は、仮に分類されたフェーズ♯2−1からステップS9Aにおける所定時間が経過する以前に、仮のフェーズ♯2−1におけるアルコール濃度の減衰が停止した状態を検出すると(ステップS9のYes)、これをフェーズ♯2−2に分類する。フェーズ分類部13は、このフェーズ分類結果をアルコール濃度の情報と共にフェーズ記録部14に出力する。これにより、フェーズ記録部14は、仮記録されていたフェーズ♯1−2、♯2−1を正式に記録し、かつ、フェーズ分類結果であるフェーズ♯2−2を記録する(ステップS10)。
【0050】
呼気採取部10は、フェーズ分類部13からのフェーズ分類結果(フェーズ♯2−2に分類)を受け取ると、所定時間経過後に、被験者の呼気採取を行う(ステップS11)。採取された被験者の呼気はアルコールセンサ11に吹きつけられる。これによりアルコール濃度検出部12は、アルコール濃度を検出する(ステップS12)。なお、ステップS11の呼気採取とステップS12のアルコール濃度検出とは、ステップS13において、アルコール濃度の増加が検出されるまで繰り返し行われる。
【0051】
フェーズ分類部13は、フェーズ♯2−2から時間の経過と共にフェーズ♯2−2におけるアルコール濃度が増加した状態を検出すると(ステップS13のYes)、これをフェーズ♯3−1に分類する。さらに、フェーズ分類部13は、このフェーズ分類結果をアルコール濃度の情報と共にフェーズ記録部14に出力する。フェーズ記録部14は、これを記録する(ステップS14)。
【0052】
呼気採取部10は、フェーズ分類部13からのフェーズ分類結果(フェーズ♯3−1に分類)を受け取ると、所定時間経過後に、被験者の呼気採取を行う(ステップS15)。採取された被験者の呼気はアルコールセンサ11に吹きつけられる。これによりアルコール濃度検出部12は、アルコール濃度を検出する(ステップS16)。なお、ステップS15の呼気採取とステップS16のアルコール濃度検出とは、ステップS17において、アルコール濃度の減衰が検出されるまで繰り返し行われる。
【0053】
フェーズ分類部13は、フェーズ♯3−1から時間の経過と共にフェーズ♯3−1におけるアルコール濃度が減衰した状態を検出すると(ステップS17のYes)、これをフェーズ♯3−2に分類する。さらに、フェーズ分類部13は、このフェーズ分類結果をアルコール濃度の情報と共にフェーズ記録部14に出力する。フェーズ記録部14は、これを記録する(ステップS18)。
【0054】
これにより、フェーズ分類部13による分類とフェーズ記録部14による記録は完了する。上述した分類では、大きく分けて、被験者の飲酒終了時点から、その後、アルコール(酒)が被験者の口腔内に存在する期間である第1のフェーズとなるフェーズ♯1−2と、被験者の呼気に含まれるアルコール濃度が第1のフェーズから時間の経過と共に第1のフェーズと比べて減衰した状態である第2のフェーズとなるフェーズ♯2−1およびフェーズ♯2−2と、被験者の呼気に含まれるアルコール濃度が第2のフェーズから時間の経過と共に第2のフェーズと比べて増加した状態である第3のフェーズとなるフェーズ♯3−1とに分類している。なお、フェーズ♯3−2は、後半になると第2のフェーズに比べてアルコール濃度が少なくなっているが、前半では第2のフェーズに比べてアルコール濃度が増加した状態であるので、フェーズ♯3−2の前半部分についても第3のフェーズに入れてよい。
【0055】
実際には、ステップS18に続き、アルコール濃度が減衰を続け、やがて閾値以下となり、さらにはゼロとなるまでの過程においてもアルコール濃度の検出を継続することが好ましい。このときに、フェーズ♯3−2をさらに細分化し、アルコール濃度が閾値以上、あるいはアルコール濃度が閾値を超えるフェーズと、アルコール濃度が閾値と一致するフェーズ、アルコール濃度が閾値以下、あるいはアルコール濃度が閾値未満となるフェーズとにそれぞれ分類することが好ましい。
【0056】
また、呼気採取部10は、アルコール濃度検出部12からアルコール濃度情報も取得しており、アルコール濃度が比較的高いフェーズや比較的高い値が検出された際には、アルコール濃度が比較的低いフェーズや比較的低い値が検出されたときに比べて呼気採取間隔を長く設定するようになっている。すなわち、アルコール濃度が明らかに閾値を超えているフェーズや検出時においては、短時間経過後に閾値を下回るアルコール濃度となる可能性は低い。これに対し、アルコール濃度が閾値近傍のフェーズや検出時においては、短時間経過後にアルコール濃度が閾値以下、あるいはアルコール濃度が閾値未満となる可能性がある。よって、アルコール濃度が高いフェーズまたは/および検出時点では、アルコール濃度が低いフェーズや検出時に比べて、呼気採取間隔を長くしている。これにより、被験者が頻繁に呼気採取を行う煩わしさを軽減できる。なお、このように呼気採取間隔を変化させるのではなく、常に一定間隔で採取するようにしてもよい。
【0057】
図5および図6は、呼気採取部10におけるアルコール濃度と採取間隔との関係を示す図である。図5および図6は、横軸にアルコール濃度をとり、縦軸に採取間隔をとる。図5でわかるように、呼気採取部10は、アルコール濃度が(a1)mg/L以下では1分間隔で呼気採取を行う。これに対し、呼気採取部10は、アルコール濃度が(a1)mg/Lを超え、(a2)mg/L以下のときには、1分〜5分の間で採取間隔を増減させる。また、呼気採取部10は、アルコール濃度が(a2)mg/Lを超えるときには、採取間隔を5分以上で増減させる。
【0058】
また、図6に示すような関係としてもよい。すなわち、呼気採取部10は、アルコール濃度が(b1)mg/L以下では30秒間隔で呼気採取を行い、アルコール濃度が(b1)mg/Lを超え、(b2)mg/L以下では2分間隔で呼気採取を行い、アルコール濃度が(b2)mg/Lを超え(b3)mg/L以下では4分間隔で呼気採取を行うなどのようにする。
【0059】
(飲酒量推定部15の動作の説明)
次に、飲酒量推定部15の動作を説明する。飲酒量推定部15は、被験者の体重情報と呼気に含まれるアルコール濃度情報とを取得し、飲酒量の推定値を出力する。すなわち、呼気に含まれるアルコール濃度の情報から血液中に溶け込んでいるアルコール量を推定する。例えば、呼気に含まれるアルコール濃度がどれくらいであれば、血液の単位量(例えば1cc)当たりにどれくらいの量のアルコールが溶け込んでいるかを推定することができる。このように、呼気に含まれるアルコール濃度と血液中に含まれるアルコール量との関係は、多くの実験によって統計的に求めることができる。さらに、被験者の体重が分かれば、被験者が有する血液量が推定できる。これにより、被験者が摂取したアルコール量を推定することができる。
【0060】
ただし、呼気に含まれるアルコール濃度の情報と血液中に溶け込んでいるアルコール量の情報とが正確に対応するフェーズは、図2、図3に示すフェーズ♯3−2のみである。なぜなら、フェーズ♯1−2は、アルコールが口腔内に存在するフェーズであり、アルコールは血液中には溶け込んでいないから呼気に含まれるアルコール濃度の情報と血液中に溶け込んでいるアルコール量の情報とは対応しない。また、フェーズ♯2−1およびフェーズ♯2−2は、アルコールが胃内に存在するフェーズであり、このフェーズでもアルコールは血液中には溶け込んでいないから呼気に含まれるアルコール濃度の情報と血液中に溶け込んでいるアルコール量の情報とは対応しない。また、フェーズ♯3−1は、アルコールが血液中に溶け込みつつあるフェーズであり、被験者が飲酒したアルコールの全部は、未だ血液中に溶け込んでいないから呼気に含まれるアルコール濃度の情報と血液中に溶け込んでいるアルコール量の情報とは対応しない。よって、呼気に含まれるアルコール濃度の情報と血液中に溶け込んでいるアルコール量の情報とが対応するのはフェーズ♯3−2のみである。
【0061】
さらに、フェーズ♯3−2では、フェーズ♯3−1とフェーズ♯3−2との境界におけるアルコール濃度を最大値として時間の経過と共にアルコール濃度が減衰する。これは被験者の体内でアルコールの代謝が進行していることに起因する。また、人の体内でのアルコール代謝能力は、個人差が大きい。よって、被験者の体内でアルコールの代謝が進行する以前における呼気に含まれるアルコール濃度に基づき被験者の飲酒量を推定することが好ましい。
【0062】
このような原理に基づく飲酒量推定部15における飲酒量推定動作を図7のフローチャートを参照して説明する。飲酒量推定部15は、被験者の体重情報が操作部18などを介して入力されているか否かを確認する(ステップS20)。さらに、フェーズ記録部14に記録されているフェーズがフェーズ♯3−2であるか否かを確認する(ステップS21)。
【0063】
飲酒量推定部15は、被験者の体重情報が入力され(ステップS20のYes)、かつ、フェーズ♯3−2であれば(ステップS21のYes)、フェーズ記録部14からフェーズ♯3−2内のアルコール濃度の最大値を取得する(ステップS22)。なお、ここで最大値を取得する理由は、前述したとおりである。続いて、フェーズ♯3−2内のアルコール濃度の最大値に基づき被験者の飲酒量を推定する計算を実行する(ステップS23)。計算式の一例を挙げると、
【0064】
被験者の飲酒量(アルコール摂取量)=(体重から推定した全血液量(cc))×(呼気に含まれるアルコール濃度から推定した血液の単位量(例えば1cc)当たりに含まれるアルコール量)±調整量
になる。
【0065】
なお、調整量とは、例えば、性別や年齢などによる補正値である。すなわち、同じ体重であっても男性と女性とでは全血液量に差がある。あるいは、同じ体重であっても若年層と高齢層とでは全血液量に差がある。このような差異を補正するために調整量を適宜設けることが好ましい。
【0066】
(警報部16の動作の説明)
次に、警報部16の動作について説明する。警報部16は、図2、図3に示す閾値をアルコール濃度が超えたとき、あるいはアルコール濃度が閾値以上になったときに警報を発出する。また、アルコール濃度が閾値以下、あるいはアルコール濃度が閾値未満になったときに警報を停止する。
【0067】
警報出力は、この実施の形態では、表示部19に画像データやテキストデータにより表示される。その他にも警報出力として、ランプ類の点灯や点滅、あるいは、ブザーの鳴動や合成音声によるメッセージ送出などがある。これによって被験者にアルコール濃度が閾値を超えたこと、あるいはアルコール濃度が閾値以上になったことを通知することができる。その他にも警報出力として、アルコール濃度が閾値を超えたとき、あるいは、アルコール濃度が閾値以上になったときに、自動車等の機械の操作を禁止させる制御出力の送出などがある。
【0068】
(アルコール濃度増減予測部17の動作の説明)
次に、アルコール濃度増減予測部17の動作について説明する。アルコール濃度増減予測部17は、図3に示すフェーズの遷移に鑑み、今後のアルコール濃度の増減を予測する。アルコール濃度増減予測部17の動作を図8〜図14を参照して説明する。
【0069】
図8は、時刻t1におけるフェーズと時刻t1までのアルコール濃度の変移を示す図である。図8に示すように、被験者は、アルコール濃度増減予測部17に対して図7に示すフェーズ遷移における時刻t1において時刻t2におけるアルコール濃度の予測を指示したとする。すなわち、被験者は、時刻t1において、(t2−t1)時間後のアルコール濃度の予測をアルコール濃度増減予測部17に対して指示したとする。
【0070】
図9〜図12は、それぞれフェーズ遷移パターンのテンプレートを示す図である。アルコール濃度増減予測部17は、図9〜図12に示すようなフェーズ遷移パターンのテンプレートを予め保持している。このテンプレートは、アルコール検出装置1の出荷前に、多数の実験によって得られたものである。あるいは、アルコール検出装置1の出荷後に、ユーザ(被験者)から実際に検出したアルコール濃度の記録をフェーズ遷移パターンのテンプレートとして用いてもよい。また、出荷前と出荷後のものを合わせてテンプレートとして保持したり、さらに、両者を混ぜ合わせることにより新たなテンプレートを作成してもよい。
【0071】
出荷前のテンプレートであれば、アルコール検出装置1の出荷直後であってもフェーズ遷移パターンのテンプレートを保持しているので、アルコール濃度増減予測部17の機能は使用可能である。これに対し、出荷後のテンプレートのみであれば、アルコール検出装置1の出荷直後には未だフェーズ遷移パターンのテンプレートを保持していないため、アルコール濃度増減予測部17の機能は使用できない。その代わりに、ユーザから実際に検出したアルコール濃度の記録をそのままフェーズ遷移パターンのテンプレートとして使用するので、予測精度は前者よりも高くすることができる。
【0072】
また、出荷前と出荷後のテンプレートを併用する場合、アルコール検出装置1の出荷前に多数の実験によって得られたフェーズ遷移パターンのテンプレートを保持しつつ、アルコール検出装置1の出荷後にユーザから実際に検出したアルコール濃度の記録に基づくフェーズ遷移パターンのテンプレートをさらに追加することとなる。これによれば、アルコール検出装置1の出荷直後であってもアルコール濃度増減予測部17の機能は使用可能であり、さらに、アルコール検出装置1の出荷後には、ユーザから実際に検出したアルコール濃度の記録に基づくフェーズ遷移パターンのテンプレートを用いて精度の高い予測を行うことができる。
【0073】
アルコール濃度増減予測部17は、図9〜図12に示すテンプレートの中から図7の時刻t1までのフェーズ遷移パターンに近似するフェーズ遷移パターンを有するテンプレートを探索する。例えば、図8においては、フェーズ♯1−2における縦軸(アルコール濃度)の高さがL1である。この点に着目すると、図10に示すテンプレートのフェーズ♯1−2における縦軸(アルコール濃度)の高さがL1であり、図8のフェーズ遷移パターンと近似していることがわかる。なお、このような縦軸の高さL1の比較は、説明を分り易くするために行ったものであり、パターンを構成する直線(または曲線)の角度や長さといった様々な要因によって、パターン形状の近似を調べることができるものとする。
【0074】
このようにして選択した図10のテンプレートを図8のフェーズ遷移パターンに重ね合わせることによって、図13に破線で示すように、時刻t2におけるアルコール濃度の予測が可能になる。図13の例では、時刻t2におけるアルコール濃度は(a2)mg/Lである。
【0075】
アルコール濃度増減予測部17の動作を図14のフローチャートを参照して説明する。図14に示すように、アルコール濃度増減予測部17は、操作部18を介して被験者から予測希望時刻t2の情報を取得する。また、図示外の時計から現在時刻t1の情報を取得する(ステップS30)。つぎに、アルコール濃度増減予測部17は、フェーズ記録部14の記録を参照して飲酒終了から現在時刻t1までの被験者のフェーズ遷移パターン情報を取得する(ステップS31)。
【0076】
アルコール濃度増減予測部17は、保持しているテンプレートの中から被験者のフェーズ遷移パターンと近似するフェーズ遷移パターンのテンプレートを選択する(S32)。ここで、テンプレートが選択できたら(ステップS33のYes)、アルコール濃度増減予測部17は、被験者の飲酒終了から現在時刻t1までのフェーズ遷移パターンに選択したテンプレートを合成する(ステップS34)。これにより、アルコール濃度増減予測部17は、予測希望時刻t2におけるアルコール濃度を推定する(ステップS35)。さらに、アルコール濃度増減予測部17は、アルコール濃度が閾値未満となる時刻t3を推定する(ステップS36)。この推定結果は、表示部19に表示される。なお、ステップS33でテンプレートが選択できなかったときには(ステップS33のNo)、予測不可を表示部19に表示する(ステップS37)。
【0077】
(応用例)
次に、アルコール検出装置1を用いて、飲酒を行った後の被験者における自動車等の機械操作の可否判定を行う応用例について説明する。図15は、応用例の動作を示すフローチャートである。ここで被験者は、自動車等の機械操作を行う運転者またはオペレータである。
【0078】
フェーズ分類部13は、被験者の飲酒終了や検査開始を、被験者の操作部18の操作入力などによって検出する(ステップS40)。これにより、フェーズ分類部13は、図4に示すフェーズ分類フローを実行する(ステップS41)。その結果、アルコール濃度が閾値以上であれば(ステップS42のYes)、警報部16は、警報を発出すると共に、自動車等の機械操作のインターロックを開始する(ステップS43)。ここで、インターロックとは、例えば、自動車であれば、エンジンの始動を禁止する、あるいは、エンジンの始動は許可するが自動車の発進は禁止する、などである。また、工作機械であれば、電源の投入を禁止する、などである。
【0079】
続いて、飲酒量推定部15は、被験者の体重情報を取得する(ステップS44)。この体重情報の取得は、自動車であれば、運転席などのシートの荷重を測定することによって自動的に行うことができる。または、被験者が自分の体重の情報を操作部18のキー操作によって、飲酒量推定部15に入力してもよい。これにより、飲酒量推定部15は、図7に示す飲酒量推定計算フローを実行する(ステップS45)。その結果として、飲酒量推定部15は、飲酒量推定値を出力する(ステップS46)。出力された飲酒量推定値は、表示部19に表示されると共に、外部記憶装置などに記録される。あるいは、通信回線を介して管理者に通報される。
【0080】
続いて、アルコール濃度増減予測部17は、図14に示すアルコール濃度増減予測フローを実行する(ステップS47)。例えば、被験者が機械操作を開始したい希望の時間を時刻t2として入力する。また、アルコール濃度増減予測部17は、アルコール濃度が閾値未満となる時刻t3を推定して表示部19に表示を行う(ステップS48)。これにより、被験者は、あとどれくらいで警報解除およびインターロック解除となり、機械操作が可能になるかを知ることができる。
【0081】
アルコール検出装置1は、単体で使用してもよいし、自動車等の機械に搭載して使用してもよい。特に、アルコール検出装置1を自動車に搭載し、図15のフローを実行させることによって、飲酒運転を防止する自動車を実現することができる。
【0082】
(本発明の実施の形態の効果の説明)
この実施の形態のアルコール検出装置1は、被験者の飲酒終了後からの被験者の呼気に含まれるアルコール濃度に基づき被験者の体内におけるアルコールの状態を複数のフェーズに分類することができる。これにより、被験者の体内で飲酒により摂取したアルコールが完全に血液中に溶け込んでいるフェーズを見つけ出すことができる。よって、このときに、被験者の呼気に含まれるアルコール濃度から被験者の血液中に溶け込んでいるアルコール量をほぼ正確に推定することができる。したがって、被験者の飲酒量を推定することも可能になる。
【0083】
さらに、フェーズに分類し、そのフェーズの遷移を予測することから、今後、被験者の呼気に含まれるアルコール濃度が上がるのか下がるのかを推定することができる。また、どれくらいの時間で被験者の呼気に含まれるアルコール濃度が閾値以下、または閾値未満となるのかを推定することができる。
【0084】
また、アルコール検出装置1を自動車に搭載し、図15に示すフローを実行させることにより、飲酒運転を防止できる自動車を実現することができる。さらに、運転者(被験者)に対し、あとどれくらい待てば運転可能になるかといった情報を提供することができる。また、運転者(被験者)の管理者に対し、運転者の飲酒量の情報などを提供することができる。
【0085】
(変形例)
本実施の形態は、本発明の要旨を逸脱しない限り、様々に変更が可能である。例えば、図15においてステップS42で閾値以上のときに、ステップS43で警報発出およびインターロック開始としている。これに対し、ステップS42で閾値を超えたときとしてもよい。また、閾値は、国によって運転禁止となる値が異なるので、その閾値を変更できるようにするのが好ましい。さらに、閾値として、運転禁止となる値とするのが好ましいが、運転禁止となる値より高い値としたり、低い値としてもよい。また、ステップS42の閾値を図2、図3の閾値ではなく、その閾値の80%の値を閾値とし、その他の値としてもよい。
【0086】
また、図15のフローチャートにおいて、被験者の体重情報取得(ステップS44)から飲酒量推定値出力(ステップS46)までの手順を、アルコール濃度増減予測フロー実行(ステップS47)および警報解除およびインターロック解除予測表示(ステップS48)の後に行ってもよい。
【0087】
また、図1に示す構成において、呼気採取部10、アルコールセンサ11、アルコール濃度検出部12、警報部16、操作部18、表示部19、体重計20のみを被験者の近傍に設置し、フェーズ分類部13、フェーズ記録部14、飲酒量推定部15、アルコール濃度増減予測部17を被験者から離れた場所に設置して通信回線によって接続してもよい。これによれば、フェーズ分類部13、フェーズ記録部14、飲酒量推定部15、アルコール濃度増減予測部17を備える1台のアルコール検出装置1を、複数の被験者が利用することができる。
【0088】
また、閾値をフェーズ記録部14が保持しているとして説明したが、警報部16または他の部が保持してもよい。また、フェーズ分類部13とフェーズ記録部14とを別に設けず、1つのものとしてもよい。
【0089】
また、自動的に、フェーズ分類部13に被験者の飲酒終了を通知してもよい。すなわち、検出開始を自動的に行ってもよい。例えば、操作部18にGPS(Global Positioning System)などの位置情報を検出する装置を備える。被験者の飲酒場所が判明しているような場合には、このGPSにより、被験者が飲酒場所から移動した時点を飲酒終了タイミングとして自動的にフェーズ分類部13に通知するようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施の形態に係るアルコール検出装置のブロック構成図である。
【図2】図1のアルコール検出装置が分類するフェーズを説明する図である。
【図3】図1のアルコール検出装置が記録するフェーズを説明する図である。
【図4】図1のアルコール検出装置のフェーズ分類動作を示すフローチャートである。
【図5】図1のアルコール検出装置のフェーズ分類動作における呼気採取間隔の変化を示す図である。
【図6】図1のアルコール検出装置のフェーズ分類動作における呼気採取間隔の変化を示す図である(ただし、他の変化)。
【図7】図1のアルコール検出装置の飲酒量推定動作を示すフローチャートである。
【図8】図1のアルコール検出装置のアルコール濃度増減予測動作を説明するための図であり、アルコール濃度増減予測指示時刻t1の状態を示す図である。
【図9】図1のアルコール検出装置が保持するフェーズ遷移パターンのテンプレートの例1を示す図である。
【図10】図1のアルコール検出装置が保持するフェーズ遷移パターンのテンプレートの例2を示す図である。
【図11】図1のアルコール検出装置が保持するフェーズ遷移パターンのテンプレートの例3を示す図である。
【図12】図1のアルコール検出装置が保持するフェーズ遷移パターンのテンプレートの例4を示す図である。
【図13】図1のアルコール検出装置のアルコール濃度増減予測動作を説明するための図であり、時刻t2におけるアルコール濃度を予測した状態を示す図である。
【図14】図1のアルコール検出装置のアルコール濃度増減予測動作を示すフローチャートである。
【図15】図1のアルコール検出装置の応用例の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0091】
1 アルコール検出装置、10 呼気採取部(呼気採取手段)、11 アルコールセンサ、12 アルコール濃度検出部(アルコール濃度検出手段)、13 フェーズ分類部(フェーズ分類手段)、14 フェーズ記録部、15 飲酒量推定部(飲酒量推定手段)、16 警報部(警報手段)、17 アルコール濃度増減予測部(濃度増加予測手段、濃度低下予測手段)、18 操作部、19 表示部、20 体重計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の呼気を時間経過と共に複数回採取する呼気採取手段と、
この呼気採取手段により採取した呼気に含まれるアルコールの濃度を検出するアルコール濃度検出手段と、
このアルコール濃度検出手段が検出したアルコール濃度を、
アルコールが上記被験者の口腔内に存在する第1のフェーズと、
アルコールが上記被験者の胃内に存在する第2のフェーズと、
アルコールが上記被験者の血液を通して肺内に存在する第3のフェーズと、
を含む複数のフェーズに分類するフェーズ分類手段と、
を備えることを特徴とするアルコール検出装置。
【請求項2】
請求項1記載のアルコール検出装置において、
前記フェーズ分類手段は、
前記被験者の飲酒終了時点から、その後、被験者の口腔内にアルコールが存在する期間を前記第1のフェーズとし、
前記被験者の呼気に含まれるアルコール濃度が前記第1のフェーズから時間の経過と共に前記第1のフェーズと比べて減衰した状態を前記第2のフェーズとし、
前記被験者の呼気に含まれるアルコール濃度が前記第2のフェーズから時間の経過と共に前記第2のフェーズと比べて増加した状態を前記第3のフェーズとする、
ことを特徴とするアルコール検出装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のアルコール検出装置において、
前記被験者の体重の情報と、前記第3のフェーズにおける前記被験者のアルコール濃度の情報と、に基づき前記被験者の飲酒量を推定する飲酒量推定手段を備える、
ことを特徴とするアルコール検出装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載のアルコール検出装置において、
前記呼気採取手段は、アルコール濃度が比較的高いフェーズでは、アルコール濃度が比較的低いフェーズに比べて呼気採取間隔を長く設定する、
ことを特徴とするアルコール検出装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載のアルコール検出装置において、
アルコール濃度が閾値を超えたとき、あるいはアルコール濃度が閾値以上であるときに警報を発出する警報手段を備える、
ことを特徴とするアルコール検出装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項記載のアルコール検出装置において、
アルコール濃度が閾値以下、あるいはアルコール濃度が閾値未満であるときにアルコール濃度が閾値を超えるまで、あるいはアルコール濃度が閾値以上になるまでの時間を予測する濃度増加予測手段を備える、
ことを特徴とするアルコール検出装置。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項記載のアルコール検出装置において、
アルコール濃度が閾値以上、あるいはアルコール濃度が閾値を超えたときにアルコール濃度が閾値未満、あるいはアルコール濃度が閾値以下になるまでの時間を予測する濃度低下予測手段を備える、
ことを特徴とするアルコール検出装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項記載のアルコール検出装置を備える自動車であって、
アルコール濃度が閾値を超えたとき、あるいはアルコール濃度が閾値以上であるときにエンジンの始動を禁止する、もしくは発進操作を禁止する手段を備えることを特徴とする自動車。
【請求項9】
請求項8記載の自動車において、
前記エンジンの始動を禁止する、もしくは発進操作を禁止する直前に警報発出を行う警報手段を備え、
上記警報手段が警報を発出したときには、前記濃度低下予測手段によるアルコール濃度が閾値未満、あるいはアルコール濃度が閾値以下になるまでの予測時間を推定する、
ことを特徴とする自動車。
【請求項10】
請求項8または9記載の自動車において、
前記エンジンの始動を禁止する、もしくは発進操作を禁止する直前に警報発出を行う警報手段を備え、
上記警報手段が警報を発出したときには、前記飲酒量推定手段により前記被験者の飲酒量を推定する、
ことを特徴とする自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−68926(P2010−68926A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238102(P2008−238102)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】