説明

アルミ擬似模様板及びアルミ擬似模様板の製造方法

【課題】 アルミニウムの風合いを有し、容易に凹凸模様を施すことができ、更に、従来アルミ板では使用することができなかった部位にも使用することができるアルミ擬似模様板を提供することにある。
【解決手段】 鋼板1と、鋼板1上に設けられ、アルミニウム粒子を含有するインク層2と、インク層2上に部分的に設けられ、アルミニウム粒子を含有する模様インク層3と、インク層2及び模様インク層3上に設けられた透明層4と、により構成されており、模様インク層3は、透明層4を形成する塗工液をはじく性質を有することを特徴とするアルミ擬似模様板Pにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、意匠性に優れたアルミ擬似模様板及びアルミ擬似模様板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家電製品や建築物等の外観をきれいに仕上げるために化粧板が用いられており、化粧板に凹凸模様を施した意匠性のある化粧板が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような化粧板として、アルミニウム板に凹凸模様を施した化粧板が知られている。アルミニウム板に凹凸模様を形成する方法としては、(1)アルミニウム板に模様を転写し、アルミニウム板を処理液に浸漬してエッチングにより凹凸模様を形成する方法や、(2)アルミニウム板を研磨することにより凹凸模様を形成する方法等が用いられている。
【特許文献1】特開平6−10385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アルミニウム板に凹凸模様を形成する際に、上記したエッチングする方法(1)では、アルミニウム板を浸す時間や、処理液の濃度等に制約があり、また、研磨する方法(2)では、アルミニウム板を研いで磨くための経験等による制約があり、これらの各方法により、品質的に同じアルミニウム凹凸模様板を連続して生産することは容易ではなかった。
【0005】
また、アルミニウム板は強度が弱いため、凹凸模様を形成したアルミニウム板は、曲げ加工が必要となる部分には使用することができないという問題も生じていた。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、アルミニウムの風合いを有し、容易に凹凸模様を形成することができ、かつ、従来アルミニウム板では使用することができなかった部分にも使用することができるアルミ擬似模様板及びアルミ擬似模様板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明のアルミ擬似模様板は、鋼板と、前記鋼板上に設けられ、アルミニウム粒子を含有するインク層と、前記インク層上に部分的に設けられ、アルミニウム粒子を含有する模様インク層と、前記インク層及び前記模様インク層上に設けられた透明層と、により構成されており、前記模様インク層は、透明層を形成する塗工液をはじく性質を有することを特徴とする。
【0008】
上記アルミ擬似模様板は、前記模様インク層は、前記透明層を形成する塗工液に対して湿潤性に差を設けることが望ましい。
【0009】
上記アルミ擬似模様板は、前記模様インク層は、前記透明層を形成する塗工液に対して湿潤性が5ダイン/cm以上異なるようにしてもよい。
【0010】
上記アルミ擬似模様板は、前記インク層に含有されるアルミニウム粒子の粒径と前記模様インク層に含有されるアルミニウム粒子の粒径が異なっていてもよく、具体的には、前記インク層に含有されるアルミニウム粒子の粒径が8〜40μmであり、前記模様インク層に含有されるアルミニウム粒子の粒径が8〜30μmであってもよい。
【0011】
上記アルミ擬似模様板は、前記インク層の厚さが前記模様インク層の厚さよりも厚くてもよく、具体的には、前記インク層の厚さが2〜3μm、前記模様インク層の厚さが1〜2μmであってもよい。
【0012】
上記アルミ擬似模様板は、前記透明層の厚さが2〜10μmであってもよい。
【0013】
上記課題を解決するための本発明のアルミ擬似模様板の製造方法は、鋼板上にアルミニウム粒子を含有するインク層を形成するインク層形成工程と、前記インク層上にアルミニウム粒子を含有する模様インク層を部分的に形成する模様インク層形成工程と、前記インク層及び前記模様インク層上に、前記模様インク層にはじかれる性質を有する塗工液を塗布することにより前記透明層を形成する透明層形成工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
上記アルミ擬似模様板の製造方法は、前記透明層形成工程は、前記模様インク層に対して湿潤性に差がある前記透明層を形成する前記塗工液を用いることが望ましい。
【0015】
上記アルミ擬似模様板の製造方法は、前記透明層形成工程は、前記模様インク層に対して湿潤性の差が5ダイン/cm以上である前記透明層を形成する前記塗工液を用いてもよい。
【0016】
上記アルミ擬似模様板の製造方法は、前記透明層形成工程の後に前記アルミ擬似模様板を焼き付ける焼付工程をさらに有することが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
上記本発明のアルミ擬似模様板によれば、模様インク層が透明層を形成する塗工液をはじく性質を有することによって、模様インク層及びインク層上に透明層を形成する塗工液を塗布するのみで、容易に凹凸模様を形成することができる。具体的には、模様インク層上においては透明層を形成する塗工液をはじいて凹部分が形成され、インク層上においてははじかれた透明層を形成する塗工液が集まって凸部分が形成され、これらにより凹凸模様が形成される。
【0018】
また、鋼板の上にアルミニウム粒子を含有するインク層と、アルミニウム粒子を含有する模様インク層と、を形成することによって、鋼板であってもアルミニウムの風合いを持たせることができる。
【0019】
また、鋼板を用いることにより、アルミニウムの風合いを持ちながらも強度を上げることができるため、従来アルミニウム板では使用することができなかった曲げ加工が必要となる部分、例えば、玄関ドア、間仕切り、家電製品等であっても使用することができる。
【0020】
更に、模様インク層が透明層を形成する塗工液をはじく性質を有することによって凹凸模様を形成するため、エッチングする方法や研磨する方法により凹凸模様を形成する際のような制約がなく、容易に品質的に同じアルミ擬似模様板を連続して生産することができる。
【0021】
例えば、模様インク層は、透明層を形成する塗工液に対して湿潤性に差があることによって、凹凸模様を形成することができる。この場合、模様インク層にシリコン系の添加剤等を用いて凹凸模様を形成する場合よりも、より自然な風合いの凹凸模様を形成することができ、意匠性を高めることができる。
【0022】
具体的に、模様インク層は、透明層を形成する塗工液に対して湿潤性が5ダイン/cm以上異なることによって、模様インク層が透明層を形成する塗工液をはじく力が適当であり、模様インク層が形成された部分に応じた凹凸模様を形成することができる。
【0023】
また、インク層と模様インク層のそれぞれに含有されるアルミニウム粒子の粒径、含有率、色、風合い等や、それぞれの層の厚さ等を異ならせることにより、それぞれの層の外観を異ならせて見せることができるため、更に意匠性を高めることができる。
【0024】
上記本発明のアルミ擬似模様板の製造方法によれば、模様インク層が透明層を形成する塗工液をはじく性質を有することによって、模様インク層及びインク層上に透明層を形成する塗工液を塗布するのみで、容易に凹凸模様を形成することができる。具体的には、模様インク層上においては透明層を形成する塗工液をはじいて凹部分が形成され、インク層上においてははじかれた透明層を形成する塗工液が集まって凸部分が形成され、これらにより凹凸模様が形成される。
【0025】
また、アルミ擬似模様板を焼き付けることにより、凹凸模様がはっきり表れ、意匠性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、本発明のアルミ擬似模様板およびアルミ擬似模様板の製造方法について、図面を参照して説明する。
【0027】
なお、図1は、本発明のアルミ擬似模様板を示す概略断面図であり、図2は、本発明のアルミ擬似模様板の製造方法を示すフローチャートである。
【0028】
(アルミ擬似模様板)
本発明のアルミ擬似模様板は、図1に示すように、鋼板1と、鋼板1上に設けられ、アルミニウム粒子を含有するインク層2と、インク層2上に部分的に設けられ、アルミニウム粒子を含有する模様インク層3と、インク層2及び模様インク層3上に設けられた透明層4と、により構成されており、模様インク層3は透明層4を形成する塗工液をはじく性質を有することに特徴を有している。ここで、図1に示すように、本発明のアルミ擬似模様板には、鋼板1上に、プライマー層aおよび/または基調色層bが任意に設けられる。
【0029】
なお、本出願中、上下の語は、アルミ擬似模様板Pにおいて、鋼板1を下にして置いた場合の上下を示す。
【0030】
以下に、本発明のアルミ擬似模様板Pの各層について具体的に説明する。
【0031】
まず、鋼板1について説明する。
【0032】
鋼板1は、特に限定されないが、通常、電気亜鉛メッキ鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板、ステンレス板等の鋼板、等が用いられる。なお、アルミニウム板は、強度は弱いが、軽量化等の用途として本発明における鋼板1として用いることができる。これらの鋼板1は、本発明のアルミ擬似模様板Pが用いられる用途等により、任意に選択される。また、鋼板1の厚みも特に限定されず、本発明のアルミ擬似模様板Pが用いられる用途等により、任意に選択される。
【0033】
このように、本発明のアルミ擬似模様板は、鋼板1を用いて形成されているため、後述するように、アルミニウムの風合いは持ちつつも、アルミニウム板よりも強度の強いアルミ擬似模様板を形成することができる。
【0034】
鋼板1のインク層2側には、後述するインク層2との密着性を向上させるために、プライマー層aを設けてもよい。プライマー層aは、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等により形成される。プライマー層の厚さは、特に限定されないが、通常、1〜3μm程度であり、好ましくは1〜2μm程度である。
【0035】
また、鋼板1(プライマー層aが設けられる場合にはプライマー層a)のインク層2側には、アルミ擬似模様板Pの基調となる色を付与すべく、図示しない基調色層bを設けることが望ましい。基調色層bは、例えば、高温焼き付けに耐え得るポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の水酸基を有する合成樹脂と、ブロック化ポリイソシアネート、アミノプラスト樹脂等の架橋剤を結合剤とし、それに着色顔料(メタリック顔料、パール顔料を含む)、体質顔料、各種添加剤等を任意に配合したもの等からなる。
【0036】
基調色層bの厚さは、特に限定されないが、通常、15〜30μm程度であり、好ましくは15〜25μm程度である。
【0037】
次に、インク層2について説明する。
【0038】
インク層2は、鋼板1上の全面に設けられ、アルミニウム粒子を含有する層である。
【0039】
インク層2は、具体的にアルミニウム粒子と樹脂とからなる。樹脂としては特に限定されないが、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アルキド系樹脂等が用いられる。また、架橋剤であるアミノプラスト樹脂からなる結合剤を必須成分とし、着色顔料(メタリック顔料、パール顔料を含む)、体質顔料、改質剤、各種添加剤等を必要に応じ配合したものであってもよい。前記ポリエステル樹脂は多価カルボン酸類と多価アルコールとを常法に従って重合することにより得られるものである。多価カルボン酸としては、例えばオルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、コハク酸、マレイン酸あるいはこれらの無水物などが挙げられ、また多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。前記アミノプラスト樹脂はメラミン、尿素、ベンゾグアナミン等のアミノ化合物とアルデヒド化合物との縮合生成物あるいは該縮合生成物をさらにメタノール、ブタノール等のアルコールでエーテル化したものである。なお、ポリエステル樹脂とアミノプラスト樹脂の固形分重量配合割合は(60/40〜90/10)が適当である。
【0040】
前記着色顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、酸化鉄、黄鉛、酸化クロム、群青等の通常の塗工液用着色顔料が特に制限なく使用可能である。
【0041】
インク層2に含まれるアルミニウム粒子の含有率は、特に限定されることはないが、具体的には、質量比で1パーセント以上10パーセント以下が望ましい。
【0042】
インク層2に含まれるアルミニウム粒子の粒径は、特に限定されることはないが、具体的には、8〜40μm程度、好ましくは12〜25μmの範囲に含まれる。
【0043】
インク層2の厚さは、特に限定されることはないが、具体的には、2〜5μm程度、好ましくは2〜3μmである。
【0044】
次に、模様インク層3について説明する。
【0045】
模様インク層3は、インク層2上に部分的に設けられ、アルミニウム粒子を含有する層である。
【0046】
模様インク層3は、具体的にアルミニウム粒子と樹脂とからなる。樹脂としては特に限定されないが、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アルキド系樹脂等が用いられる。また、詳細には、インク層2について説明した材料と同様の材料が用いられる。
【0047】
模様インク層3に含まれるアルミニウム粒子の含有率は、特に限定されることはないが、具体的に、質量比で1パーセント以上20パーセント以下が望ましく、5パーセント以上10パーセント以下であることが特に望ましい。
【0048】
模様インク層3に含まれるアルミニウム粒子の粒径は、特に限定されることはないが、具体的には、8〜30μm程度、好ましくは12〜30μmの範囲内に含まれることが望ましい。
【0049】
模様インク層3の厚さは、特に限定されることはないが、具体的に、1〜2μm程度が望ましい。
【0050】
このように、鋼板1上の全面にアルミニウム粒子を含有するインク層2が設けられ、インク層2上に部分的にアルミニウム粒子を含有する模様インク層3が設けられることにより、本発明のアルミ擬似模様板の表面のどこをとってもアルミニウム粒子が現れることになるため、アルミニウムの風合いを持たせることができる。
【0051】
次に、透明層4について説明する。
【0052】
透明層4は、インク層2及び模様インク層3上に設けられた層であり、当該透明層4を形成する塗工液は、模様インク層3にはじかれる性質を有している。
【0053】
透明層4の材料は、透明であり、後述するように模様インク層3にはじかれる性質を有していれば、特に限定されることはないが、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アルキド系樹脂等が用いられる。
【0054】
透明層4の厚さは、特に限定されることはないが、具体的に、2〜10μm程度、好ましくは2〜5μm程度である。透明層4の厚さをこの範囲とすることにより、凹凸模様をはっきりと形成することができ、意匠効果を上げることができる。
【0055】
透明層4と模様インク層3との関係については後に詳述するが、透明層4の厚さが10μmよりも大きいと、透明層4が動き易く、模様インク層3が形成された部分よりも広い範囲で透明層4を形成する塗工液をはじいてしまい、模様インク層3が形成された部分に応じた凹凸模様が忠実に表現されない。また、透明層4のはじかれる程度が小さく、インク層2上と模様インク層3上に設けられた透明層4を形成する塗工液が干渉してしまい、模様インク層3が形成された部分に応じた凹凸模様が形成されず、意匠効果が劣る場合がある。
【0056】
一方、透明層4の厚さが2μm未満であると、塗工液が模様インク層3によりはじかれにくく、凹凸模様がはっきり表れず、意匠効果が劣ることになる。
【0057】
次いで、本発明のアルミ擬似模様板Pの特徴部分について説明する。
【0058】
まず、本発明において、模様インク層3は、透明層4を形成する塗工液をはじく性質を有することに特徴を有している。
【0059】
以下、これについて図1を用いて具体的に説明する。
【0060】
上述したように、インク層2上に部分的に設けられた模様インク層3上、及び、インク層2上の模様インク層3が形成されていない部分3n上の全面に、透明層4が設けられている。
【0061】
ここで、模様インク層3は、透明層4を形成する塗工液をはじく性質を有しているため、模様インク層3上の透明層4を形成する塗工液は、模様インク層3上に塗布されると、透明層4を形成する塗工液により体積収縮が生じ模様インク層3にはじかれる。はじかれた透明層4を形成する塗工液は、模様インク層3が形成されていない部分3n上に移動することになる。
【0062】
一方、インク層2は、透明層4を形成する塗工液をはじく性質は有さないことが望ましい。
【0063】
透明層4を形成する塗工液に対して上述したように、はじく性質を有する模様インク層3とはじく性質を有しないインク層2が設けられていることによって、それらの相乗効果により、模様インク層3上およびインク層2上に透明層4を形成する塗工液をただ塗布するだけで、模様インク層3と、模様インク層3が形成されていない部分3nで透明層4を形成する塗工液が溜まる高さが異なることにより、凹凸模様が形成されることになる。
【0064】
例えば、模様インク層3が、透明層4を形成する塗工液をはじく性質を有するためには、模様インク層3が透明層4を形成する塗工液に対して湿潤性の差を設けることができる。
【0065】
ここで、湿潤性とは、いわゆるぬれ性を意味し、固気界面に液体が接触して固液界面に置き換わる性質をいう。本発明における湿潤性は、模様インク層3界面に透明層4を形成する塗工液が接触して模様インク層3界面に置き換わる性質をいう。
【0066】
具体的に、模様インク層3と透明層4を形成する塗工液との湿潤性の差が5ダイン/cm以上異なることが好ましい。なお、この差の値の上限は、特に限定されないが、通常、7ダイン/cm程度である。さらに、模様インク層3と透明層4を形成する塗工液との湿潤性の差が5〜7ダイン/cm以上異なることがより好ましい。
【0067】
模様インク層3と透明層4を形成するの塗工液の湿潤性の差が5ダイン/cm以上であれば、互いにはじく力が適当であり、上述の凹凸模様がはっきり表れることとなる。一方、模様インク層3と透明層4を形成する塗工液の湿潤性の差が5ダイン/cm未満であると、互いにはじく力が不十分であり、凹凸感に乏しく、凹凸模様がはっきり表れない。
【0068】
ここで、模様インク層3と透明層4を形成する塗工液との組合せとしては、(1)ポリエステル系樹脂、からなる模様インク層3と、ポリエステル系樹脂からなる透明層4を形成する塗工液、(2)アルキド系樹脂からなる模様インク層3と、ポリエステル系樹脂からなる透明層4を形成する塗工液等の組合せが挙げられる。
【0069】
また、上述したように、湿潤性の差はインクの樹脂物性をそのまま利用してもよいが、界面活性剤等によりコントロールすることも可能である。具体的には、模様インク層3が、透明層4を形成する塗工液をはじく性質を有するためには、模様インク層3にシリコン系の添加剤などを含ませることができる。この構成により、シリコン系の添加剤を含む模様インク層3が透明層4を形成する塗工液をはじくことになり、上述のように、凹凸模様を形成し、意匠性を表現することができる。
【0070】
なお、模様インク層3にシリコン系の添加剤などを用いた場合は、模様インク層3と透明層4を形成する塗工液との湿潤性の差を利用した場合よりも、模様インク層3が、透明層4を形成する塗工液をはじく力が強いため、模様インク層3が形成された部分よりも広い範囲をはじいてしまう傾向がある。そのため、上述の湿潤性の差を利用して透明層4を形成した方が、より自然な凹凸模様を形成することができ、意匠性を高められることとなる。
【0071】
次いで、インク層2と模様インク層3の性質について、説明する。
【0072】
インク層2に含有されるアルミニウム粒子の粒径と模様インク層3に含有されるアルミニウム粒子の粒径について上述したが、さらに、インク層2に含有されるアルミニウム粒子の粒径と模様インク層3に含有されるアルミニウム粒子の粒径とを異ならせることが望ましい。そうすると、インク層2と模様インク層3とが同一のアルミニウム粒子含有率を有し、同一の厚さを有していたとしても、インク層2と模様インク層3とが異なって見え、意匠性が向上する。
【0073】
また、インク層2におけるアルミニウム粒子の含有率と、模様インク層3におけるアルミニウム粒子の含有率とについて上述したが、さらに、インク層2と模様インク層3とにおいて、各層におけるアルミニウム粒子の含有率を異ならせることが望ましい。そうすると、インク層2と模様インク層3とが同一の粒径のアルミニウム粒子を有し、同一の厚さを有していたとしても、インク層2と模様インク層3とが異なって見え、意匠性が向上する。
【0074】
インク層2の厚さと模様インク層3の厚さとについて上述したが、特に限定はされないが、インク層が模様インク層の厚さよりも厚いことが望ましい。そうすると、インク層2と模様インク層3とが同一の粒径のアルミニウム粒子を有し、同一のアルミニウム粒子含有率を有していたとしても、インク層2と模様インク層3とが異なって見え、安定した外観が得られるため、意匠性が向上する。
【0075】
このように、インク層2と模様インク層3のそれぞれに含有されるアルミニウム粒子の粒径、含有率または層厚を調整することについて説明したが、これらが同一であっても、アルミニウム粒子の色、風合い、輝度等を調整することにより、模様インク層3がエッチングされた側に見えるように、インク層2と模様インク層3との間に差を設ければよい。このように調整することにより、各層2、3の外観を異ならせて見せることができるため、更に意匠性を高めることができる。
【0076】
以上、エッチングによる2段階の凹凸模様に擬似させたアルミ擬似模様板Pについて説明したが、アルミ擬似模様板には、3段階以上の階調を有する凹凸模様を形成することも可能である。
【0077】
例えば、上述のアルミ擬似模様板Pにおいて、インク層2上の模様インク層3が形成されていない部分3nに、模様インク層3よりも透明層4を形成する塗工液をはじく性質の弱い部分を形成することにより、凹凸模様を3段階に表現することができる。
【0078】
具体的には、模様インク層3のうち、透明層4を形成する塗工液との湿潤性の差を2段階以上設けることによって、透明層4を形成する塗工液をはじく力が異なるように形成することができ、湿潤性を変えた2ヶ所以上の部分と、インク層2がむき出しの部分を設けることによって、3段階以上の凹凸模様を表現することができる。
【0079】
(アルミ擬似模様板の製造方法)
次いで、上述のアルミ擬似模様板の製造方法について、説明する。
【0080】
アルミ擬似模様板Pの製造方法は、図2に示すように、鋼板1上にインク層2を形成するインク層形成工程(ステップS11)、インク層2上に模様インク層3を形成する模様インク層形成工程(ステップS12)、インク層2及び模様インク層3上に透明層4を形成する透明層形成工程(ステップS13)、アルミ疑似模様板を焼き付ける焼付工程(ステップS14)により、各層が形成される。なお、上述したステップS11の前段階として、鋼板1上にプライマー層および/または基調色層が設けられていてもよい。また、ステップS14は、任意に設けられる工程であり、本発明においては必須の工程ではない。
【0081】
まず、鋼板1上にインク層2を形成するインク層形成工程(ステップS11)を行う前段階について説明する。
【0082】
鋼板1と後述するインク層2との密着性を向上させるために、鋼板1上に、プライマー層a用の塗工液をロールコート法等により塗工し、加熱乾燥することができる。また、鋼板1には必要に応じ脱脂処理、研磨処理等の前処理を施してもよい。
【0083】
また、鋼板1上に、基調色層bを設けることができる。基調色層bを形成する方法は、特に限定されないが、通常、カーテンフローコート法、ロールコート法、フローコート法、スプレー塗装、静電塗装、浸漬塗装等の従来用いられている方法が用いられる。さらに、常温乾燥もしくは焼付乾燥により基調色層bを形成させることができる。
【0084】
ここで、この工程に用いられる基調色層bの塗工液は、常乾タイプの塗工液でもよいが、好適には焼付タイプの塗工液が好ましい。具体的に、基調色層b用塗工液としては、上述の樹脂、結合剤、顔料等と溶媒とを任意に配合した熱硬化性樹脂塗工液が代表的なものとして挙げられるが、これらに限定されるものではなく、後述するインク層2と密着性のよい塗工液が用いられる。
【0085】
次いで、鋼板1上にインク層2を形成するインク層形成工程(ステップS11)について説明する。この工程は、鋼板1上にアルミニウム粒子を含有するインク層2の塗工液を全面に塗布してインク層2を形成する工程である。
【0086】
インク層2を形成する方法は、特に限定されないが、通常、グラビアオフセット印刷法、シルクスクリーン法等の従来用いられている方法が用いられる。このうち、グラビアオフセット印刷法を用いることが望ましい。
【0087】
ここで、この工程に用いられるインク層2の塗工液は、上述のアルミニウム粒子と、樹脂と、希釈剤等の溶媒と、からなる。なお、溶媒としてはトルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、等の通常の塗工液用希釈剤が特に制限なく使用可能であるが、蒸発速度の小さい溶媒を併用し、溶媒が急速に揮発しないようにしたものが望ましい。この蒸発速度の小さい溶媒の例を挙げると、セロソルブ、ブチルセロソルブ、シクロヘキサノン、イソホロン等がある。溶媒量は塗布手段により任意に調整される。アルミニウム粒子と樹脂との割合は、アルミニウム粒子の含有率について説明した通りである。また、塗工液に対するアルミニウム粒子と樹脂との合計の割合は、特に限定されないが、通常、質量比で1〜20%、好ましくは5〜10%である。
【0088】
次に、インク層上3に模様インク層3を形成する模様インク層形成工程(ステップS12)について説明する。この工程は、インク層2上にアルミニウム粒子を含有する模様インク層3の塗工液を模様状に塗布して模様インク層3を形成する工程である。
【0089】
模様インク層3を形成する方法は、特に限定されることはないが、通常、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、フレキソ印刷法、凸版印刷法、シルクスクリーン法等の従来公知の方法が用いられる。このうちグラビアオフセット印刷法を用いることが望ましい。
【0090】
ここで、この工程に用いられる模様インク層3の塗工液は、上述のアルミニウム粒子と、樹脂と、希釈剤等の溶媒と、からなる。なお、溶媒は、インク層2について説明した溶媒と同様のものが用いられる。アルミニウム粒子と樹脂との割合は、アルミニウム粒子の含有率について説明した通りである。また、塗工液に対するアルミニウム粒子と樹脂との合計の割合は、特に限定されないが、通常、質量比で1〜20%、好ましくは5〜10%である。
【0091】
次に、模様インク層3上に透明層4を形成する透明層形成工程(ステップS13)について説明する。この工程は、インク層2及び模様インク層3上に、模様インク層3にはじかれる性質を有する塗工液を塗布することにより透明層4を形成する工程である。
【0092】
透明層4を形成する方法としては、特に限定されないが、通常、グラビアオフセット印刷法や、ロールコート法、シルクスクリーン法、フローコート法、スプレー塗装等の従来公知の方法が用いられる。このうちグラビアオフセット印刷法を用いることが望ましい。
【0093】
この工程に用いられる、模様インク層3にはじかれる性質を有する透明層4を形成する塗工液としては、具体的に、上述の樹脂と、希釈剤等の溶媒と、からなる塗工液で、模様インク層3より湿潤性は大きい塗工液が望ましい。
【0094】
次に、アルミ擬似模様板を焼き付ける焼付工程(ステップS14)について説明する。
【0095】
アルミ擬似模様板を焼き付ける際の条件は、特に限定されないが、通常、200〜250℃程度で行うことが望ましい。また、焼き付ける際には、通常、2〜10分程度で行うことが望ましい。これにより、凹凸模様がはっきり表れ、意匠性を向上させることができる。
【0096】
以上の製造方法により製造されたアルミ擬似模様板は、上述の本発明のアルミ擬似模様板と同様の作用効果を奏する。
【0097】
なお、特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明のアルミ擬似模様板及びアルミ擬似模様板の製造方法の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0098】
(実施例1)
まず、鋼板1上に、ポリエステル系樹脂プライマーを用い、ロールコート法により塗装し、鋼板1を加熱乾燥させてプライマー層を形成した。次いで、プライマー層上に高温焼き付けに耐え得るポリエステル系樹脂等を用いた塗工液をカーテンフローコーターにて塗布し、加熱乾燥させて基調色層を形成した。
【0099】
次いで、基調色層上に、アルミニウム粒子、樹脂、希釈剤からなる塗工液を用いて、グラビアオフセット印刷法により厚さ2μmのインク層2を形成した。このとき、アルミニウム粒子:樹脂:溶媒=10:100:15の質量比であった。また、アルミニウム粒子の粒径の粒径の分布は12〜15μm程度で平均粒径13.5μmであった。
【0100】
次いで、インク層2上に、アルミニウム粒子、ポリエステル系樹脂、希釈剤からなる塗工液を用いて、グラビアオフセット印刷法により厚さ2μmの模様インク層3を形成した。このとき、アルミニウム粒子:樹脂:溶媒=10:100:15の質量比であった。また、アルミニウム粒子の粒径の粒径の分布は8〜30μm程度で平均粒径19μmであった。
【0101】
次いで、模様インク層3上に、ポリエステル樹脂、希釈剤からなる塗工液を用いて、グラビアオフセット印刷法により厚さ3μmの透明層4を形成した。このとき、樹脂:溶媒=100:20であった。また、模様インク層3と、透明層4の塗工液との湿潤性の差は、5ダイン/cmであった。
【0102】
次に、透明層4を225℃で5分間焼き付けることにより硬化を行った。
【0103】
このようにして作製されたアルミ擬似模様板は、模様インク層が透明層を形成する塗工液をはじく性質を有することによって、模様インク層及びインク層上に透明層を形成する塗工液を塗布するのみで、容易に凹凸模様を形成できた。また、このアルミ擬似模様板は、アルミニウムをエッチングした風合いを有するものとなった。
【0104】
(実施例2)
実施例1において、模様インク層3に用いる塗工液の代わりに、シリコン系の添加剤を添加した塗工液を用い、その他は実施例1と同様にしてアルミ擬似模様板を作製した。このとき、塗工液は、アルミニウム粒子、ポリエステル系樹脂、希釈剤、シリコン系の添加剤からなり、当該塗工液をグラビアオフセット印刷法により厚さ2μmの模様インク層3を形成した。このとき、アルミニウム粒子:樹脂:溶媒:シリコン系の添加剤=10:100:15:0.05の質量比であった。
【0105】
このようにして作製されたアルミ擬似模様板は、模様インク層が透明層を形成する塗工液をはじく性質を有することによって、模様インク層及びインク層上に透明層を形成する塗工液を塗布するのみで、容易に凹凸模様を形成できた。また、このアルミ擬似模様板は、アルミニウムをエッチングした風合いを有するものとなった。しかしながら、模様インク3による透明層4の塗工液のはじき方が強く、実施例1に比較すると、意匠性は若干劣っていた。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明のアルミ擬似模様板を説明するための概略断面図である。
【図2】本発明のアルミ擬似模様板の製造方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0107】
1・・・鋼板
a・・・プライマー層
b・・・基調色層
2・・・インク層
3・・・模様インク層
3n・・・模様インク層が形成されていない部分
4・・・透明層
P・・・アルミ擬似模様板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板と、
前記鋼板上に設けられ、アルミニウム粒子を含有するインク層と、
前記インク層上に部分的に設けられ、アルミニウム粒子を含有する模様インク層と、
前記インク層及び前記模様インク層上に設けられた透明層と、
により構成されており、
前記模様インク層は、透明層を形成する塗工液をはじく性質を有することを特徴とするアルミ擬似模様板。
【請求項2】
前記模様インク層は、前記透明層を形成する塗工液に対して湿潤性に差があることを特徴とする請求項1に記載のアルミ擬似模様板。
【請求項3】
前記模様インク層は、前記透明層を形成する塗工液に対して湿潤性が5ダイン/cm以上異なることを特徴とする請求項2に記載のアルミ擬似模様板。
【請求項4】
前記インク層に含有されるアルミニウム粒子の粒径と前記模様インク層に含有されるアルミニウム粒子の粒径が異なることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載のアルミ擬似模様板。
【請求項5】
前記インク層に含有されるアルミニウム粒子の粒径が8〜40μmであり、前記模様インク層に含有されるアルミニウム粒子の粒径が8〜30μmであることを特徴とする請求項4に記載のアルミ擬似模様板。
【請求項6】
前記インク層の厚さが前記模様インク層の厚さよりも厚いことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載のアルミ擬似模様板。
【請求項7】
前記インク層の厚さが2〜3μmであり、前記模様インク層の厚さが1〜2μmであることを特徴とする請求項6に記載のアルミ擬似模様板。
【請求項8】
前記透明層の厚さが2〜10μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一に記載のアルミ擬似模様板。
【請求項9】
鋼板上にアルミニウム粒子を含有するインク層を形成するインク層形成工程と、
前記インク層上にアルミニウム粒子を含有する模様インク層を部分的に形成する模様インク層形成工程と、
前記インク層及び前記模様インク層上に、前記模様インク層にはじかれる性質を有する塗工液を塗布することにより前記透明層を形成する透明層形成工程と、
を有することを特徴とするアルミ擬似模様板の製造方法。
【請求項10】
前記透明層形成工程は、前記模様インク層に対して湿潤性に差がある前記透明層を形成する前記塗工液を用いることを特徴とする請求項9に記載のアルミ擬似模様板の製造方法。
【請求項11】
前記透明層形成工程は、前記模様インク層に対して湿潤性の差が5ダイン/cm以上である前記透明層を形成する前記塗工液を用いることを特徴とする請求項10に記載のアルミ擬似模様板の製造方法。
【請求項12】
前記透明層形成工程の後に前記アルミ擬似模様板を焼き付ける焼付工程をさらに有することを特徴とする請求項9乃至請求項11のいずれか一に記載のアルミ擬似模様板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−95994(P2006−95994A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−287759(P2004−287759)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】