説明

アルミ電解コンデンサ用リード線の溶接方法及び溶接装置

【課題】過加熱によるアルミ線丸棒部の溶融変形、アルミ線と銅下地錫引鉄線の接合強度の不足やバラツキを防止するアルミ電解コンデンサ用リード線の溶接方法及び溶接装置を提供することを目的とする。
【解決手段】2つのアルミ線1の丸棒部端面に2つの穴加工軸2を押し込んで加工穴3を形成させ、この加工穴3に沿うようにして銅下地錫引鉄線4の両端に対して2つのアルミ線1を圧挿入したリード線5を軸回転させた状態にて、酸素と水素及びメチルアルコールの混合ガスを燃焼させるバーナー6で2つのアルミ線1の丸棒部を同時に加熱昇温して接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミ電解コンデンサの外部接続端子に使用されるアルミ電解コンデンサ用リード線の溶接方法及び溶接装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のアルミ電解コンデンサ用リード線の溶接方法及び溶接装置としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがあった。図5は、前記特許文献1に記載された従来のアルミ電解コンデンサ用リード線の溶接方法の工程図である。また、図6は、前記特許文献1に記載された従来のアルミ電解コンデンサ用リード線の溶接装置の全体構成を示す平面図である。
【0003】
図5及び図6において、アルミ線1を保持して送り出すと共に所定の長さに切断する第1の供給部18と、この第1の供給部18から送り出されるアルミ線1を保持するチャック19を複数個備えた回転自在なテーブル20と、このテーブル20の回転経路に設けられ上記チャック19に保持されたアルミ線1に穴を開ける穴加工部21と、銅下地錫引鉄線4を保持して送り出すと共に所定の長さに切断して上記アルミ線1に開けた穴に切断された銅下地錫引鉄線4を挿入する第2の供給部22と、この銅下地錫引鉄線4が挿入されたアルミ線1を酸素と水素及びメチルアルコールの混合ガスを燃焼させるバーナー6で加熱する加熱部9と、加熱後に銅下地錫引鉄線4が挿入されたアルミ線1を取り出す取り出し部23からなる製造装置の構成とし、アルミ線1の端面に穴加工を施し、この穴に沿うように銅下地錫引鉄線4を押し込んだ後に加熱し、銅、アルミ、錫の合金層を形成してアルミ線1と銅下地錫引鉄線4を溶接する方法及び装置により、アルミ電解コンデンサ用リード線を得ていた。
【特許文献1】特開平6−349687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のアルミ電解コンデンサ用リード線の溶接方法及び溶接装置では、中形及び大形のアルミ電解コンデンサの場合に使用されるアルミ線1の丸棒直径が1mm以上となり、このような大きい線径のリード線の溶接は極めて困難であり、バーナー6でアルミ線1を加熱昇温する際に、片側からの加熱方法で、かつ大きな熱量を必要とするため、過加熱によるアルミ線1の丸棒部が溶融変形する異形状不良、アルミ線1と銅下地錫引鉄線4の合金層形成が不充分による接合強度の不足やバラツキが大きくなるなどの問題を有していた。
【0005】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、アルミ線丸棒部の外観形状が良好で、アルミ線と銅下地錫引鉄線の均一な高接合強度が得られるアルミ電解コンデンサ用リード線の溶接方法及び溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明のアルミ電解コンデンサ用リード線の溶接方法及び溶接装置は、銅下地錫引鉄線の両端にアルミ線を圧挿入したリード線の前記両端アルミ線の丸棒部外周及び圧挿入した前記アルミ線の他方の端面を保持するガイドと、このガイドが複数個周縁に装着され、かつ外周面に前記銅下地錫引鉄線が接地可能な間欠縦回転するドラムと、このドラムの回転経路に複数個配設され前記ガイドにて保持された前記アルミ線を加熱する加熱部と、この加熱部前後にて前記ドラム外周表面に接地された前記銅下地錫引鉄線を挟持し、かつ前記ドラムと逆方向に所定の速度で連続回転して前記リード線を軸回転可能とするベルトを有したリード線回転部により構成される溶接装置とし、銅下地錫引鉄線の両端にアルミ線を圧挿入したリード線を軸回転させながら前記アルミ線を加熱して銅下地錫引鉄線とアルミ線を接合するものである。
【0007】
本構成によって、リード線を軸回転しつつ、アルミ線を加熱することにより、アルミ線外周より均一に加熱することが可能となり、過加熱によるアルミ線丸棒部が溶融変形する異形状不良、アルミ線と銅下地錫引鉄線の接合合金層形成が不充分による接合強度の不足やバラツキを防止することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアルミ電解コンデンサ用リード線の溶接方法及び溶接装置によれば、アルミ線丸棒部の外観形状が良好で、アルミ線と銅下地錫引鉄線の均一な高接合強度が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
(実施の形態1)
図1(a)〜(e)は、本発明の実施の形態1におけるアルミ電解コンデンサ用リード線の溶接方法の工程図である。図1において、図5及び図6と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0011】
まず、図1(a)に示すように、2つのアルミ線1の丸棒部端面に穴加工を施すために2つの穴加工軸2を準備し、同図(b)に示すように、2つのアルミ線1の丸棒部端面に2つの穴加工軸2を押し込んで加工穴3を形成させ、同図(c)、(d)に示すように、この加工穴3に沿うようにして銅下地錫引鉄線(以下、CP線と呼ぶ)4の両端に対して2つのアルミ線1を圧挿入する。
【0012】
次に同図(e)に示すように、圧挿入したリード線5を軸回転させた状態にて、酸素と水素及びメチルアルコールの混合ガスを燃焼させるバーナー6で2つのアルミ線1の丸棒部を同時に加熱昇温して接合する。その後、CP線4の中央部でリード線5を切断することで、プラス極用とマイナス極用のリード線を同時に製作することになり、高生産性を実現できる。
【0013】
尚、上記の本実施の形態はアルミ線1の丸棒部の直径1.5mm、アルミ線1の丸棒部端面に施した加工穴3の直径0.58mm、CP線4の直径0.6mmのものを用い、混合ガスの供給圧力は0.15kgf/cm2、加熱時間は0.4秒にて実施した結果、アルミ線1の丸棒部とCP線4との境界面付近に銅、アルミ、錫の拡散合金層を形成していることが確認された。
【0014】
尚、上記の本実施の形態では、アルミ線1の丸棒部の加熱熱源として、ガス炎を用いているが、誘導加熱、電子ビーム、レーザービーム等でも可能である。
【0015】
尚、上記の本実施の形態では、CP線4を用いているが、錫引銅線においても有効である。
【0016】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2におけるアルミ電解コンデンサ用リード線の溶接装置の全体構成を示す側面図である。図3は、アルミ電解コンデンサ用リード線の溶接装置の溶接要部A−A断面図である。また、図4は、溶接後のアルミ電解コンデンサ用リード線の接合部断面図である。
【0017】
図2及び図3において、ガイド7は、焼入れ鋼からなる45°V溝形状を有しており、CP線4の両端にアルミ線1を圧挿入したリード線5の両端アルミ線1の丸棒部外周及び圧挿入されたアルミ線1の他方端面を保持可能とするものである。ドラム8は、焼入れ鋼からなり、このガイド7が複数個周縁に装着され、かつ外周面にCP線4が接地可能で間欠縦回転する。加熱部9は、ドラム8の回転経路に複数個配設され、酸素と水素及びメチルアルコールの混合ガスを燃焼させるバーナー6を有する。リード線回転部10は、前記加熱部9前後にて前記ドラム8外周表面に接地されたCP線4を挟持し、かつ前記ドラム8と逆方向に所定の速度で連続回転してリード線を軸回転可能とするベルト11を有している。ベルト11は、耐熱性のゴム又は、金属からなり、ローラー12に沿って所定の張力を保たれている。
【0018】
以上のように構成された本実施の形態におけるアルミ電解コンデンサ用リード線の溶接装置について、以下に動作を説明する。
【0019】
まず、2つのアルミ線1の丸棒部端面に加工穴3を形成させ、加工穴3に沿うようにしてCP線4の両端に対して2つのアルミ線1を圧挿入したリード線5を供給位置13にて供給し、圧挿入されたリード線5を位置決めする。
【0020】
次に、ガイド7に保持された圧挿入したリード線5は、ドラム8の間欠回転に伴いリード線回転部10に送られ、ドラム8外周表面に接地したCP線4がベルト11とで挟持される。このとき、CP線4はベルト11とドラム8の接触及び相対的な回転により摩擦回転力を発生し、圧挿入したリード線5は、ドラム8の外周表面にて軸回転14する。
【0021】
次に、ガイド7に保持され、かつ軸回転14する圧挿入したリード線5は、ドラム8の間欠回転に伴い加熱部9に送られ、ドラム8の回転経路に複数個配設されたバーナー6の酸素、水素及びメチルアルコールの混合ガスの燃焼による炎で段階的に外形を保ちつつ加熱昇温される。
【0022】
ここで、図4に示すように、圧挿入したリード線5のアルミ線1とCP線4の境界部には銅、アルミ、錫の拡散合金層15が形成される。
【0023】
次に、ガイド7に保持され、かつ軸回転14する溶接後のリード線16は、ドラム8の間欠回転に伴いドラム8外周表面に接地したCP線4がベルト11から解放された状態となり、取り出し位置17に送られ取り出される。その後、溶接後のリード線16をCP線4の中央部で切断することで、プラス極用とマイナス極用のリード線を同時に製作することになり、高生産性を実現できる。
【0024】
尚、上記の本実施の形態では、アルミ線1の丸棒部の加熱熱源として、ガス炎を用いているが、誘導加熱、電子ビーム、レーザービーム等でも可能である。
【0025】
尚、上記の本実施の形態では、CP線4を用いているが、錫引銅線においても有効である。
【0026】
尚、上記の本実施の形態では、ドラム8を間欠回転としたが、連続回転でも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明にかかるアルミ電解コンデンサ用リード線の溶接方法及び溶接装置は、アルミ線外周より均一に加熱して、過加熱によるアルミ線丸棒部が溶融変形する異形状不良、アルミ線と銅下地錫引鉄線の接合合金層形成が不充分による接合強度の不足やバラツキを防止できるので、電子部品リード線の溶接等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1におけるアルミ電解コンデンサ用リード線の溶接方法の工程図
【図2】本発明の実施の形態2におけるアルミ電解コンデンサ用リード線の溶接装置の全体構成を示す側面図
【図3】本発明の実施の形態2におけるアルミ電解コンデンサ用リード線の溶接装置の溶接要部A−A断面図
【図4】本発明の実施の形態2における溶接後のアルミ電解コンデンサ用リード線の接合部断面図
【図5】従来のアルミ電解コンデンサ用リード線の溶接方法の工程図
【図6】従来のアルミ電解コンデンサ用リード線の溶接装置の全体構成を示す平面図
【符号の説明】
【0029】
1 アルミ線
2 穴加工軸
3 加工穴
4 銅下地錫引鉄線(CP線)
5 圧挿入したリード線
6 バーナー
7 ガイド
8 ドラム
9 加熱部
10 リード線回転部
11 ベルト
12 ローラー
13 供給位置
14 軸回転
15 拡散合金層
16 溶接後のリード線
17 取り出し位置
18 第1の供給部
19 チャック
20 テーブル
21 穴加工部
22 第2の供給部
23 取り出し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅下地錫引鉄線の両端にアルミ線を圧挿入したリード線を軸回転させながら前記アルミ線を加熱して、前記銅下地錫引鉄線と前記アルミ線を接合することを特徴とした、
アルミ電解コンデンサ用リード線の溶接方法。
【請求項2】
銅下地錫引鉄線の両端にアルミ線を圧挿入したリード線の前記両端アルミ線の丸棒部外周及び圧挿入された前記アルミ線の他方の端面を保持するガイドと、
このガイドが複数個周縁に装着され、かつ外周面に前記銅下地錫引鉄線が接地可能な間欠縦回転するドラムと、
このドラムの回転経路に複数個配設された前記ガイドにて保持された前記アルミ線を加熱する加熱部と、
この加熱部前後にて前記ドラム外周表面に接地された前記銅下地錫引鉄線を挟持し、かつ前記ドラムと逆方向に所定の速度で連続回転して前記リード線を軸回転可能とするベルトを有したリード線回転部により構成されるものとした、
アルミ電解コンデンサ用リード線の溶接装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−220857(P2007−220857A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−39007(P2006−39007)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】