説明

アロエ葉肉含有食品とその製造方法

【課題】アロエ葉肉が本来有する食感を保持しつつ、更に噛みごたえのある、新しい食感を有するアロエ葉肉含有加工品を配合してなるアロエ葉肉含有食品とその製造方法の提供する。
【解決手段】アロエ生葉に対して、ペクチン、グアガム、キサンタンガム、タラガム及びコーンスターチから選ばれる少なくとも1種の安定剤0.005質量%以上0.05質量%未満の量及び水を添加し、85〜100℃の範囲に加熱して調製したアロエ葉肉加工品に、アロエ葉肉含有加工品に対して2〜40質量%となる量の甘味料及び水を配合してなる、アロエ葉肉の収縮率が30〜45%の範囲であるアロエ葉肉含有加工品を添加してなるアロエ葉肉含有食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アロエ葉肉含有食品とその製造方法に関し、詳しくは、アロエ葉肉が本来有する食感を保持しつつ、更に噛みごたえを付加した新しい食感を有するアロエ葉肉を含有したヨーグルト、ゼリー、乳酸菌飲料等のアロエ葉肉含有食品とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳酸菌の健康増進効果について、世界中でその研究が進むとともに、急速に発酵乳の市場が拡大してきた。また、発酵乳の市場の拡大に伴い、製品の種類も多様化が進み、例えば、様々なフルーツ果肉固形物入りのヨーグルトが上市されている。その結果、急速にフルーツヨーグルトの市場が拡大し、中でも、アロエ葉肉入りヨーグルトは、昔からアロエが持つ健康感と、アロエ葉肉特有の食感が好まれ、飛躍的に市場を伸ばしてきた。
【0003】
一般的にアロエ葉肉入りヨーグルトを製造するためには、一旦アロエの生原料やアロエ缶詰原料に甘味料、安定剤、酸味料、香料などを加えて風味を調整してアロエ葉肉含有加工品(アロエプレザーブ)を作製した後、これをヨーグルトと混合することが必要である。このアロエ葉肉入りヨーグルトの製品価値としては、配合されるアロエの食感が最も重要であり、この食感を改善するために、これまで様々なアロエ葉肉含有加工品及びその製造方法が報告されている。
【0004】
アロエ葉肉含有加工品に関する従来技術としては、例えば、アロエ葉肉、甘味料、カルシウム塩、安定剤、ペクチンメチルエステラーゼ及び水を含有する混合物を、30〜50℃の範囲内の温度にて加熱処理して、アロエ葉肉を弾力性のある硬い葉肉質に改善するアロエ葉肉含有加工品の製造方法及びその製造方法によって得られるアロエ葉肉含有加工品(特許文献1参照)、アロエ葉肉に対して、LMペクチンを0.05〜0.4重量%の割合で配合してなる葉肉質が改善されたアロエ葉肉含有加工品(特許文献2参照)、安定剤としてネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガム及び米でん粉から選択される少なくとも一種の安定剤を0.01〜5重量%の割合で使用して、アロエ葉肉のシュリンクを抑制することでアロエ葉肉本来の食感をたもつアロエ葉肉加工品(特許文献3参照)、アロエ葉肉に対して、グアガム、キサンタンガム及びコーンスターチから選択される少なくとも一種の安定剤を少なくとも0.05重量%の割合で配合してなる葉肉の収縮が抑制された食感のよいアロエ葉肉含有加工品(特許文献4参照)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−248607号公報
【特許文献2】特開2004−248612号公報
【特許文献3】特開2006−271251号公報
【特許文献4】特開2004−248611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アロエ葉肉含有加工品を配合したヨーグルト、ゼリー等は、ヨーグルト、ゼリー等自体の風味にアロエ独特のみずみずしい歯ごたえ、食感が加わることにより、今までにない美味しさを持つ食品として、多くの消費者に支持されている。
アロエ葉肉含有食品を製造する場合、アロエ缶詰などに含まれるアロエ葉肉加工品をそのまま食品材料として使用するとアロエ独特の歯ごたえのある食感が失われるため、特許文献1〜4などに見られる従来技術にあるように、アロエ葉肉加工品に所定の安定剤などを加えて加熱処理をしたアロエ葉肉含有加工品(アロエプレザーブ)を使用することによって、アロエ葉肉の食感を改善していた。
【0007】
しかしながら、従来技術によるアロエ葉肉含有加工品では、アロエ葉肉の歯ごたえのある食感を求めるあまり、アロエ葉肉が硬くなり過ぎたり、逆に加工する際にできるだけアロエ葉肉の収縮を抑えようとするため、アロエ葉肉が柔らかくなり過ぎたりするという問題があった。そのため、このようなアロエ葉肉含有加工品を配合したヨーグルト、ゼリー等のアロエ葉肉含有食品に対し、アロエ葉肉の食感の更なる向上が求められていた。
【0008】
一方、最近では、従来のアロエ葉肉が有する独特の食感に飽きたらず、その食感を生かしながら、更に噛みごたえのある、新しい食感を持った差別化されたアロエ葉肉含有加工品を配合したアロエ葉肉含有食品が求められている。
【0009】
そこで、本発明は、アロエ葉肉が本来有する食感を保持しつつ、更に噛みごたえのある、新しい食感を有するアロエ葉肉含有加工品を配合してなるアロエ葉肉含有食品とその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、原料のアロエを切断し、剥皮、洗浄、カットした未加熱のアロエ生葉を用いて、これにペクチン、グアガム等を0.005質量%以上0.05質量%未満の割合で水などと共に添加し、加熱殺菌し、次いで、調製したアロエ葉肉加工品に、甘味料、水などを加えて加熱殺菌するプレザーブ処理を施して得たアロエ葉肉含有加工品を、ヨーグルト及びゼリーにそれぞれ添加して1日〜1ヶ月保存したところ、これらは従来品に比べて、アロエ葉肉が本来有する食感を有しながら、更に噛みごたえのある、新しい特有の食感を有するアロエ葉肉を含むものであることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
かくして、本発明は、アロエ生葉に対して、ペクチン、グアガム、キサンタンガム、タラガム及びコーンスターチから選ばれる少なくとも1種の安定剤0.005質量%以上0.05質量%未満の量及び水を添加し、85〜100℃の範囲に加熱して調製したアロエ葉肉加工品に、アロエ葉肉含有加工品に対して2〜40質量%となる量の甘味料及び水を配合してなる、アロエ葉肉の収縮率が30〜45%の範囲であるアロエ葉肉含有加工品を添加してなるアロエ葉肉含有食品を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、アロエ生葉に対して、ペクチン、グアガム、キサンタンガム、タラガム及びコーンスターチから選ばれる少なくとも1種の安定剤0.005質量%以上0.05質量%未満の量及び水を添加し、85〜100℃の範囲に加熱してアロエ葉肉加工品を調製し、次いで、アロエ葉肉含有加工品に対して2〜40質量%となる量の甘味料及び水を上記アロエ葉肉加工品に添加し、40〜60℃の範囲に加熱してアロエ葉肉含有加工品を調製し、このアロエ葉肉含有加工品を食品材料として用いる、アロエ葉肉含有食品の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アロエ葉肉が本来有する食感を保持しつつ、更に噛みごたえのある、新しい食感を有するアロエ葉肉を含むアロエ葉肉含有食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】アロエ試料の荷重及び歪率のデータを基に作成した近似四次曲線の歪率−荷重曲線の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
本発明において原料として使用しうるアロエは、アロエ科(Aloaceae)アロエ属(Aloe)に属する植物なら何でもよいが、苦味がなく、食感も良いアロエベラが好ましい。
【0016】
本発明品を製造する際に使用するアロエ生葉としては、アロエ生葉を切断し、剥皮、洗浄、カットしたものを用いる。アロエ葉肉をカットしたものの形状及びサイズは、例えば、2mm×2mmないし22mm×22mmのサイズ、好ましくは8mm×8mmないし14mm×14mmのダイスカットされたものを使用することができるが、これらに限定されるものではなく、任意の形状及びサイズのアロエ生葉を使用することができる。
【0017】
前述したアロエ葉肉含有加工品中のアロエ生葉の配合割合は特に制限されるものではなく、また、所望する葉肉率により異なるため一概には言えないが、通常、アロエ葉肉含有加工品に対して30〜90質量%、好ましくは50〜85質量%の範囲内を例示することができる。
【0018】
プレザーブ処理前加工品であるアロエ葉肉加工品は、アロエ生葉に対して、ペクチン、グアガム、キサンタンガム、タラガム及びコーンスターチから選ばれる少なくとも1種の安定剤0.005質量%以上0.05質量%未満の範囲内の量及び水を添加し、85〜100℃の範囲で加熱することによって調製される。
本発明で使用するペクチンとしては、食品工業において増粘安定剤として広く用いられているものであれば、どんなものでもよい。一般に全ガラクチュロン酸のうち、メチル化ガラクチュロン酸の占める割合が50%以上のものはHMペクチン、50%未満のものをLMペクチンと呼ばれるが、本発明では、どちらのタイプでも使用することができる。市販品としては、例えば、GENU pectin type YM-115-LJ、GENU pectin type YM-115-H-J、GENU pectin type BB-KING、GENU pectin type LM-101AS-J、GENU pectin type LM-102AS-J (以上、三晶社製、商品名)、UNIPECTIN AYD-30T、UNIPECTIN HM-1、UNIPECTIN OG355S(以上、ユニテックフーズ社製、商品名)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
また、本発明で使用するグアガム、キサンタンガム、タラガム及びコーンスターチとしては、食品工業において増粘安定剤として広く用いられているものであれば、どんなものでもよい。
【0020】
前述したアロエ葉肉加工品を調製する場合、ペクチン、グアガム、キサンタンガム、タラガム及びコーンスターチから選ばれる少なくとも1種の安定剤の添加量は、アロエ生葉に対して、0.005質量%以上0.05質量%未満の範囲内の量とする。好ましくは0.01質量%以上0.03質量%以下の範囲内の量を挙げることができる。上記安定剤の配合割合が0.005質量%未満では、アロエ葉肉が柔らかくなり、保存、運搬中、あるいは食品と混合する際にアロエ葉肉の損傷が著しいという問題がある。一方、0.05質量%以上であると、アロエ生葉に対して、プレザーブ処理後のアロエ葉肉質の収縮率が45%を超えるようになり、食感も悪くなるため適当でない。
【0021】
前述したアロエ葉肉加工品を調製する場合、水の添加量は、アロエ生葉100質量部に対して、15〜50質量部とする。
また、該アロエ葉肉加工品は、上記安定剤及び水のほか、増粘剤、酸味料、香料、抗酸化剤、色素など食品に使用可能な成分を適宜加えて調製することができる。
【0022】
前述したアロエ葉肉加工品は、アロエ生葉に対して、ペクチン、グアガム、キサンタンガム、タラガム及びコーンスターチから選ばれる少なくとも1種の安定剤0.005質量%以上0.05質量%未満の量及び水を添加し、85〜100℃の範囲に加熱することによって調製される。具体的には、アロエ生葉を切断し、剥皮、洗浄、カットしたアロエ生葉に対して、ペクチン、グアガム、キサンタンガム、タラガム及びコーンスターチから選ばれる少なくとも1種の安定剤0.005質量%以上0.05質量%未満の量及び水を添加し、85〜100℃にて10分〜30分間、好ましくは15分〜20分間加熱処理し、必要であれば、脱気処理、糖度調整、有機酸の添加による酸味の調整などを行うことによって得られる。
【0023】
従来、各種食品を製造する際に用いるアロエ葉肉含有加工品は、アロエ生産地でアロエ生葉を切断、剥皮、洗浄、カットし、これを殺菌、容器充填したシロップ漬けのアロエ葉肉加工品(プレザーブ処理前加工品;ペクチン、グアガム、キサンタンガム、タラガム、コーンスターチなどを含まない。)を原料として輸入し、この固形物であるアロエ葉肉加工品にペクチン、甘味料、水などを加えて加熱処理をするプレザーブ処理を行って製造したもの(アロエプレザーブ)であった。したがって、この最終的なアロエ葉肉含有加工品を得るまでに、加熱が2回行われ、そのたびにアロエ葉肉の大きな収縮が起こり、歩留まりが悪いという欠点があった。
また、従来のアロエ葉肉含有加工品の製造方法では、アロエ葉肉の食感に効果を与えるためにはペクチンを少なくとも0.05質量%以上、好ましくは0.1〜0.2質量%程度を添加する必要があった。
また、従来のアロエ葉肉含有加工品において、ペクチンを使用する主目的は、ペクチンの増粘剤としての効果を利用してアロエ葉肉のプレザーブ中での沈降を防止することであり、そのためにペクチンの添加率はアロエ葉肉に対して0.05質量%以上であり、通常、0.1〜0.2質量%程度を添加する必要があった。
【0024】
それに対し、本発明では、0.05質量%より少ない量のペクチン等の安定剤がアロエ葉肉に作用して、アロエ葉肉全体の硬さを増加させるが、アロエ葉肉の収縮は少ないという効果をもたらす。その結果、外側表面も硬さが増して噛みごたえがあるものの、内部は従来のアロエ独特の弾力性のある「プリプリ感」、「シコシコ感」などの評価用語で表される新食感を有するアロエ葉肉を得ることができる。
【0025】
本発明のアロエ葉肉含有加工品は、上記方法によって調製されたアロエ葉肉加工品に、該アロエ葉肉含有加工品に対して2〜40質量%となる量の甘味料、水などを配合してなり、アロエ葉肉の収縮率が30〜45%の範囲のものとして特定される。
【0026】
本発明のアロエ葉肉含有加工品に配合される甘味料としては、例えば、砂糖、異性化糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、麦芽糖などの糖類;フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖などのオリゴ糖類;マルチトール、ソルビトール、キシリトール、ラクチトール、パラチニット、還元澱粉糖化物などの糖アルコール類;アセスルファムK、シュクラロースなどの合成甘味料類;ステビア、グルチルリチン、ソーマチンなどの非糖質天然甘味料類;アスパルテームなどのアミノ酸系甘味料類などの甘味料を挙げることができるが、これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。上記の合成甘味料類、非糖質天然甘味料類、アミノ酸系甘味料類などの甘味料は、高甘味度甘味料と呼ばれる。
これらの甘味料の配合割合は特に制限されるものではなく、使用する甘味料の種類、所望する甘味度により異なり一概には言えないが、通常、高甘味度甘味料以外の甘味料の場合には、アロエ葉肉含有加工品(アロエプレザーブ)に対して、2〜40質量%、好ましくは5〜25質量%の範囲内の濃度、高甘味度甘味料の場合には0.0005〜1質量%、好ましくは0.03〜0.8質量%の範囲内の濃度を例示することができる。
【0027】
本発明のアロエ葉肉含有加工品中における水の配合割合は、アロエ葉肉含有加工品(アロエプレザーブ)に対して、10〜70質量%である。
また、本発明のアロエ葉肉含有加工品には、所望により、増粘剤、酸味料、香料、抗酸化剤、色素など食品に使用可能な成分を適宜配合してもよい。
【0028】
本発明のアロエ葉肉含有加工品中のアロエ葉肉は、収縮率の点から言えば、30〜45%の範囲、好ましくは、30〜40%の範囲であることを特徴とする。アロエ葉肉にペクチンを作用させて、アロエ葉肉の収縮率を30〜45%の範囲とすることにより、アロエ葉肉が本来有する食感を保持しつつ、更に噛みごたえのある新しい食感をアロエ葉肉に付与することができ、また、アロエ葉肉の歩留まりも向上させることができる。
この収縮率(%)は、プレザーブ処理後にアロエ生葉がどれだけ収縮したかを表す数値であり、具体的には、以下の手順によって算出される。
まず、皮剥き、洗浄、選別を行ったアロエ生葉カット品X粒の重量(A0)を測定する。次に、該アロエ生葉カット品を用いて調製されたアロエ葉肉含有加工品より水切りを行ってアロエ葉肉固形物を回収し、そのX粒の重量(An)を測定する。そして、それらの測定値を以下の式に代入して計算することにより、アロエ生葉からのアロエ葉肉の収縮率(%)が求められる。
式:アロエ葉肉の収縮率(%)=100−(An/A0)×100
例えば、A0=100、An=80であった場合、アロエ葉肉の収縮率は、100−(80/100)×100=20%となる。
アロエ葉肉含有加工品より水切りを行ってアロエ葉肉固形物を回収するには、アロエ葉肉含有加工品に安定剤等の粘性物質が含まれない場合は、アロエ葉肉含有加工品を目開き1mmの篩上にあけ、2分間静置させて水切りを行うことによって、アロエ葉肉固形物の回収を行う。また、アロエ葉肉含有加工品が安定剤等の粘性物質を含み、粘性を有する場合は、アロエ葉肉含有加工品に対し倍量のお湯(40℃)を加え、軽く撹拌して安定剤等を洗浄した後、目開き1mmの篩上にあけ、3分間静置させて水切りを行うことによって、アロエ葉肉固形物の回収を行う。
【0029】
本発明のアロエ葉肉含有加工品に含まれるアロエ葉肉は、上記したように、アロエ葉肉が本来有する食感を保持しつつ、更に噛みごたえのある新しい食感を有するものである。この新しい食感を有するアロエ葉肉は、以下の方法で算出した接線の傾きが23〜35の範囲内にあるものとして特定される。その方法とは、測定すべきアロエ葉肉をプランジャーで押圧し、同時に押圧中の荷重及び歪率を連続的に測定し、前記の荷重及び歪率の値を基に、最小自乗法により計算を行って、X軸を歪率、Y軸を荷重とする近似四次曲線の歪率−荷重曲線を作成し、前記の歪率−荷重曲線における極大値に到達する以前の曲線部分の変曲点における接線の傾きを計算して求める方法である。
【0030】
上記の接線の傾きを求める場合、測定するアロエ葉肉のサイズは、押圧する際に使用するプランジャーに基づいて、荷重及び歪率の測定に適した範囲のサイズにすればよい。また、測定に適した形状としては、通常、立方体、直方体、円柱体、及びこれに類似する形状が採用される。例えば、2mm×2mmないし20mm×20mmのサイズ、好ましくは8mm×8mmないし14mm×14mmのダイスカットされたものが例示される。
【0031】
アロエ葉肉を押圧するために使用しうる装置としては、一般にプランジャーと呼ばれる部品を有し、その先端部分で食品試料を一定速度(通常、0.02〜50mm/秒)で押し潰し、同時に押圧中に負荷される荷重とその荷重に対する歪率を連続的に測定することができる装置であるならば、特に制限はない。プランジャーとしては種々の形状があるが、円柱状のプランジャーで測定試料に接する部分が平面の形状のものが好ましい。市販品としては、クリープメータRE2−33005B、クリープメータRE2−3305B(以上、株式会社山電製、商品名)、レオメータCR−500DX−S(株式会社レオテック製、商品名)などを挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。なお、これらの装置には、測定結果を外部に出力するためのソフトが予め組み込まれている。
【0032】
上記の測定装置の出力データである荷重および歪率の値を基に、最小自乗法により計算を行って、X軸を歪率、Y軸を荷重とする近似四次曲線の歪率−荷重曲線を作成する。出力データである荷重および歪率は、四次方程式で近似すると、出力データ分布のほぼ中央を通過する近似四次曲線として描くことができ、かつ破断曲線に酷似する。近似四次曲線の荷重−歪率曲線を作成するには、まず、荷重及び歪率のデータを、例えば、表計算ソフトなどのデータとしてコンピュータに取り込む。ここで、歪率(%)とは、荷重を加えない場合に比べて、アロエ葉肉がどれだけ変形したかを表す数値であり、{(荷重をかける前のアロエ葉肉の高さ−ある所定の荷重をかけたときのアロエ葉肉の高さ)/(荷重をかける前のアロエ葉肉の高さ)}×100(%)で求めることができる。例えば、実際の測定で、アロエ葉肉の高さが20%減少したときは、歪率は20%となる。1個のアロエ葉肉試料に対して、荷重及び歪率を測定する回数は、破断点の前後を合わせて合計で5〜100回、好ましくは20〜80回、より好ましくは30〜60回を挙げることができる。
【0033】
コンピュータに取り込んだ荷重及び歪率のデータは、最小自乗法を用いて、X軸を歪率、Y軸を荷重とする近似四次曲線の荷重−歪率曲線を作成するために使用される。具体的には、荷重及び歪率のデータから、最小自乗法を用いて四次関数の方程式を求め、それをグラフ化することにより荷重−歪率曲線が作成される。これらは市販ソフトを利用することによって自動的に行うことができる。
【0034】
この近似四次曲線である荷重−歪率曲線について詳しく説明すると、該曲線には極大値に到達する以前の曲線部分に1つの変曲点と、極大値、極小値がそれぞれ1つずつ存在する(図1参照)。アロエ葉肉を咀嚼した場合、ある時点で組織が壊れる、すなわち破断が起こるが、この破断点は荷重−歪率曲線の近似四次曲線における最初のピーク値である極大値に相当する。この図1からわかるように、近似四次曲線である荷重−歪率曲線を用いてアロエ葉肉を咀嚼したときの荷重−歪率の関係は、荷重(gf)=0から荷重を増加するに伴って歪率も増加し、破断点で極大値を迎え、その後、極小値に到達するまで歪率は増加するが荷重は減少し、極小値を過ぎると再び、歪率の増加に伴って荷重も増大すると説明できる。
【0035】
上記のように、本発明では、上記近似四次曲線の極大値(破断点)に到達する以前の曲線部分の変曲点における接線の傾きを計算し、当該接線の傾きをアロエ葉肉の硬さを表す指標として採用する。当該接線の傾きは、その点における歪率に対する荷重の変化率を表し、その数値が大きいことは歪みに対する抵抗力が大きい、すなわち硬いことを示し、その数値が小さいことは歪みに対する抵抗力が小さい、すなわち柔らかいことを示す。上記接線の傾きは原点付近で最大の正の値となり、極大値すなわち破断点において接線の傾きは最小値ゼロとなる。ある点における接線の傾きは、その点における荷重に対する歪率の変化の割合を表すので、その数値が大きいことは、歪みに対する抵抗力が大きい、すなわち硬い食品であることを示し、その数値が小さいことは歪みに対する抵抗力が小さい、すなわち柔らかい食品であることを示す。したがって、上記接線の傾きは、荷重だけでなく歪率の値も考慮したパラメータであり、咀嚼時における食品の硬さの指標とすることができる。なお、上記近似四次曲線の変曲点及び該変曲点での接線の傾きは、市販ソフトを利用することによって簡単に求めることができる。
本発明では、原点と破断点の間に存在する第一の変曲点での接線の傾きを「アロエ葉肉の硬さ」の指標として採用する。検討の結果、物性のバラツキの多いアロエ葉肉でも、近似四次曲線の上記変曲点での接線の傾きの数値は、官能評価に基づく硬さの違いを反映することが統計的に判明している。
【0036】
本発明のアロエ葉肉含有加工品は、まず、アロエ生葉にペクチン等の上記安定剤、水等を添加し、加熱してアロエ葉肉加工品を調製し、その後、このアロエ葉肉加工品に甘味料、水、安定剤等を添加して加熱処理(プレザーブ処理)を行う二段階反応によって得ることができる。すなわち、プレザーブ処理の際に同時にペクチンを添加していた従来の製造方法とは異なり、本発明では、プレザーブ処理とは切り離して、ペクチンなどの安定剤の添加、加熱を最初に行ってアロエ葉肉加工品を調製し、次いで、このアロエ葉肉加工品に対してプレザーブ処理を行う点に特徴がある。
【0037】
本発明のアロエ葉肉含有加工品の具体的な製造方法としては、例えば、前述した方法によってアロエ葉肉加工品(プレザーブ処理前加工品)を調製し、この調製後、通常、少なくとも、7日間経過した後、好ましくは、10日〜15日間経過した後、上記アロエ葉肉含有加工品に対して、2〜40質量%の甘味料、10〜70質量%の水、その他、安定剤、酸味料、香料、色素等を適宜加えて、40〜60℃にて1分〜120分間、好ましくは20分〜100分間加熱処理(プレザーブ処理)をすることにより、葉肉質の改善された本発明のアロエ葉肉含有加工品を調製することができる。
【0038】
アロエ葉肉含有加工品中のアロエ葉肉加工品の配合割合は特に制限されるものではなく、また、所望する葉肉率により異なるため一概には言えないが、通常、アロエ葉肉含有加工品に対して30〜90質量%、好ましくは50〜85質量%の範囲内を例示することができる。
【0039】
上記製造方法によって得られた本発明のアロエ葉肉含有加工品中のアロエ葉肉は、原料のアロエ生葉に対する収縮率が30〜45%の範囲であり、従来品に比べて低い収縮率を示し、また、従来品のアロエ葉肉にはない新食感、すなわち、外側表面は硬さが増して噛みごたえがあるものの、内部は従来のアロエが持つ独特の弾力性のある「プリプリ」あるいは「シコシコ」などの評価用語で表される食感を有しているため、消費者の嗜好を満足させる新たな商品設計が可能となる。
【0040】
本発明の一実施態様を例示すれば、アロエ生葉に対して、LMペクチン0.005質量%以上0.05質量%未満、アロエ生葉100質量部に対して25〜100質量部の水を添加混合して85〜100℃、好ましくは90〜98℃で、10分〜30分間、好ましくは15分〜20分間加熱処理し、殺菌してアロエ葉肉加工品を調製し、調製から7日間経過した後、アロエ葉肉含有加工品全体に対し、10〜25質量%の甘味料、更には安定剤、香料、色素等を上記アロエ葉肉加工品に加えて、40〜60℃にて1分〜120分間、好ましくは20分〜100分間、加熱処理を行い、得たプレザーブを殺菌、容器に充填することにより、特有の食感を有し、かつ収縮率が低い、葉肉質の改善されたアロエ葉肉含有加工品を得ることができる。
【0041】
本発明のアロエ葉肉含有食品は、上記アロエ葉肉含有加工品又はアロエ葉肉加工品を食品材料として用いることによって得られる食品であり、具体的には、ヨーグルト、ゼリーが例示される。
例えば、アロエ葉肉入りヨーグルトは、適宜の量の上記アロエ葉肉含有加工品又はアロエ葉肉加工品を、発酵後の発酵乳に添加することによって製造することができる。アロエ葉肉含有加工品を添加する段階は必ずしも限定されるわけではなく、発酵前の原料乳に上記アロエ葉肉含有加工品を添加して、殺菌後、乳酸発酵させることも可能である。
また、アロエ葉肉入りゼリーの場合も、上記アロエ葉肉含有加工品又はアロエ葉肉加工品を使用して任意の方法によって製造することができ、例えば、ゲル化剤、甘味料、水等を溶融して調製したベースと、上記アロエ葉肉含有加工品、甘味料、香料等を混合して調製したソースとを混合し、冷却することによって製造することができる。
【0042】
本発明のアロエ葉肉含有食品に配合されたアロエ葉肉は、以下の方法で算出した接線の傾きが2.0〜4.0の範囲内にあるものとして特定される。その方法とは、測定すべきアロエ葉肉をプランジャーで押圧し、同時に押圧中の荷重及びアロエ葉肉の変形の大きさを連続的に測定し、前記の荷重及び変形の大きさの値を基に、最小自乗法により計算を行って、X軸を変形の大きさ、Y軸を荷重(N)とする曲線の極大値に到達する以前の曲線部分の変曲点における接線の傾きを計算して求める方法である。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に具体的に説明する。
【0044】
(実施例1)
(1)アロエプレザーブの調製
収穫されたアロエベラの葉の外皮を除き、ゲル状の葉肉のみを取り出して、水洗等により表面のぬめりを取り除いた。更に約12mm×12mmのダイス状に裁断した後、選別を行い、異物、夾雑物を除去した。次に、選別後のアロエベラ生葉肉2300gをA10缶に入れ、0.32g(0.014質量%)のHMペクチン(GENU PECTIN Type YM−115−LJ;三晶社製)を溶解したシロップ水(砂糖:クエン酸:水=50:0.5:50)を満量まで加え、脱気、巻き締め工程後、ドブ漬け殺菌(90℃以上100℃以下、20分)を行い、0.014質量%ペクチン処理アロエ缶詰を調製した。
その後、この缶詰を常温にて1週間以上インキュベーションすることにより、適度にシュリンクされ、食感が良好なアロエ葉肉加工品を得た。
次に、得られたアロエ葉肉加工品800g、砂糖140g、クエン酸0.4g、安定剤としてキサンタンガム(エコーゲル T;大日本住友製薬社製)1.2g、グアガム(メイプロガット90−S;三晶社製)0.5g、水198gを混合し、50℃で10分間加熱撹拌し、殺菌、無菌充填することで、良好な食感を有するペクチン処理アロエプレザーブを調製した。
このプレザーブに含まれるアロエ葉肉のアロエ生葉からの収縮率を測定したところ、32%であった。
この収縮率(%)は、以下の手順によって算出した。まず、皮剥き、洗浄、選別を行ったアロエ生葉カット品1000粒の重量(A0)を測定し、次に、該アロエ生葉カット品を用いて調製されたアロエプレザーブより水切りを行ってアロエ葉肉固形物を回収し、その1000粒の重量(An)を測定し、それらの測定値を以下の式に代入して計算することにより、アロエ葉肉の収縮率(%)を求めた。
式:アロエ葉肉の収縮率(%)=100−(An/A0)×100
なお、アロエプレザーブより水切りを行ってアロエ葉肉固形物を回収するには、アロエ葉肉プレザーブに安定剤等の粘性物質が含まれない場合は、アロエプレザーブを目開き1mmの篩上にあけ、2分間静置させて水切りを行うことによって、アロエ葉肉固形物の回収を行う。また、アロエプレザーブが安定剤等の粘性物質を含み、粘性を有する場合は、アロエプレザーブに対し倍量のお湯(40℃)を加え、軽く撹拌して安定剤等を洗浄した後、目開き1mmの篩上にあけ、3分間静置させて水切りを行うことによって、アロエ葉肉固形物の回収を行う。以下、同様にして、アロエ葉肉の収縮率(%)を求めた。
また、上記プレザーブに含まれるアロエ葉肉の硬度を測定したところ、25.9であった。
この硬度は、以下の手順によって算出した。アロエ葉肉試料を内径12mm、深さ6mmの治具を用いて試料台の上に、載置、固定し、クリープメータRE2−33005B(山電社製、商品名)を用いて、該アロエベラ缶詰葉肉の上面方向から、接触面積50mm2の円柱状のプランジャーを、1.0mm/秒の速度で押圧することにより、荷重(gf)及び歪率(%)を測定した。荷重(gf)及び歪率(%)の測定は、同一試料に対して30回測定した。
上記測定によって得られた荷重(gf)及び歪率(%)の測定値から、コンピューターを用いて最小自乗法により計算を行って、X軸を歪率、Y軸を荷重とする近似四次曲線の歪率−荷重曲線を作成した(図1参照)。
次いで、前記の歪率−荷重曲線から、極大値に到達する以前の曲線部分の領域で、上記近似四次曲線を表す関数y=f(x)の二次導関数f’(x)の符号が変化する点を、第一の変曲点として特定し、該変曲点における接線の傾きを計算して求め、これをプレザーブに含まれるアロエ葉肉の硬度とした。以下の実施例及び比較例においては、同様に、プレザーブに含まれるアロエ葉肉の硬度を求めた。
(2)発酵乳の調製
脱脂粉乳(森永乳業製)1.25kg、45%クリーム(森永乳業製)650g、グラニュー糖(大日本明治製糖製)1kgを水に溶解し、全体を10kgに調合し、この溶液を70℃で均一化後、90℃で10分間保持し、殺菌後40℃に冷却し、市販のヨーグルト用スターター(クリスチャンハンセン製)を1g添加して均一に混合した。これを37℃でpH4.8まで発酵させた後、10℃まで速やかに冷却し、発酵乳10kgを得た。
(3)アロエ葉肉含有ヨーグルトの調製
上記のアロエプレザーブ30質量部と発酵乳70質量部を混合し、アロエ葉肉含有ヨーグルトを得た。
【0045】
(実施例2)
実施例1において、HMペクチン0.32g(0.014質量%)の代わりに、同HMペクチン0.64g(0.028質量%)とした以外は、実施例1と同様に処理して、アロエ葉肉加工品を得た。
次いで、このアロエ葉肉加工品を用いて、実施例1と同様に処理して、アロエプレザーブ、アロエ葉肉含有ヨーグルトを得た。
そして、上記プレザーブに含まれるアロエ葉肉のアロエ生葉からの収縮率を測定したところ、35%であった。また、該プレザーブに含まれるアロエ葉肉の硬度を測定したところ、26.9であった。
【0046】
(実施例3)
実施例1において、HMペクチン0.32g(0.014質量%)の代わりに、同HMペクチン0.96g(0.042質量%)とした以外は、実施例1と同様に処理して、アロエ葉肉加工品を得た。
次いで、アロエ葉肉加工品を用いて、実施例1と同様に処理して、アロエプレザーブ、アロエ葉肉含有ヨーグルトを得た。
そして、上記プレザーブに含まれるアロエ葉肉のアロエ生葉からの収縮率を測定したところ、38%であった。また、該プレザーブに含まれるアロエ葉肉の硬度を測定したところ、30.0であった。
【0047】
(実施例4)
実施例1で得られたアロエ葉肉加工品800g、砂糖140g、クエン酸0.4g、安定剤としてグアガム(メイプロガット90−S;三晶社製)0.35g、水198gを混合し、50℃で10分間加熱撹拌し、殺菌、無菌充填することで、良好な食感を有するペクチン処理アロエプレザーブを調製し、実施例1と同様に処理して、アロエ葉肉含有ヨーグルトを得た。
そして、上記プレザーブに含まれるアロエ葉肉のアロエ生葉からの収縮率を測定したところ、30%であった。また、該プレザーブに含まれるアロエ葉肉の硬度を測定したところ、25.9であった。
【0048】
(実施例5)
実施例2で得られたアロエ葉肉加工品を用いた以外は、実施例4と同様に処理して、アロエプレザーブ、アロエ葉肉含有ヨーグルトを得た。
そして、上記プレザーブに含まれるアロエ葉肉のアロエ生葉からの収縮率を測定したところ、34%であった。また、該プレザーブに含まれるアロエ葉肉の硬度を測定したところ、25.5であった。
【0049】
(実施例6)
実施例3で得られたアロエ葉肉加工品を用いた以外は、実施例4と同様に処理して、アロエプレザーブ、アロエ葉肉含有ヨーグルトを得た。
そして、上記プレザーブに含まれるアロエ葉肉のアロエ生葉からの収縮率を測定したところ、34%であった。また、該プレザーブに含まれるアロエ葉肉の硬度を測定したところ、29.5であった。
【0050】
(比較例1)
実施例1において、アロエ葉肉加工品の代わりに、市販のアロエ葉肉(兼松)とした以外は、実施例1と同様に処理して、アロエプレザーブ、アロエ葉肉含有ヨーグルトを得た(特許文献4実施例)。
そして、上記プレザーブに含まれるアロエ葉肉のアロエ生葉からの収縮率を測定したところ、19%であった。また、該プレザーブに含まれるアロエ葉肉の硬度を測定したところ、22.1であった。
【0051】
(比較例2)
実施例1において、HMペクチン0.32g(0.014質量%)の代わりに、同HMペクチン3.20g(0.140質量%)とした以外は、実施例1と同様に処理して、アロエ葉肉加工品を得た。
次いで、該アロエ葉肉加工品を用いて、実施例1と同様に処理して、アロエプレザーブ、アロエ葉肉含有ヨーグルトを得た。
そして、上記プレザーブに含まれるアロエ葉肉のアロエ生葉からの収縮率を測定したところ、61%であった。また、該プレザーブに含まれるアロエ葉肉の硬度を測定したところ、36.4であった。
【0052】
(比較例3)
市販のアロエ葉肉(兼松)を600g、砂糖194g及び水200gを混合し、それに乳酸カルシウム1g、NovoShape(ノボ社製のペクチンメチルエステラーゼの商品名)1g、グアガム2.1g、キサンタンガム0.9g、及びクエン酸1gを添加して、40℃で30分間加熱した後、85℃で30分間殺菌し、30℃に冷却し、香料を添加して容器に充填し、アロエプレザーブを調製し、実施例1と同様に処理して、アロエ葉肉含有ヨーグルトを得た(特許文献1実施例)。
そして、上記プレザーブに含まれるアロエ葉肉のアロエ生葉からの収縮率を測定したところ、18%であった。また、該プレザーブに含まれるアロエ葉肉の硬度を測定したところ、36.2であった。
【0053】
(比較例4)
砂糖150g、クエン酸三ナトリウム0.3g、ネイティブジェランガム(三栄源エフ・エフ・アイ社製)0.6gを水346.4gを混合し、80℃にて10分間加熱撹拌溶解した後、クエン酸0.7g、アロエフレーバー2gを添加し、更に80℃にて3分間撹拌溶解した後、市販のアロエ葉肉(兼松)500g添加し、85℃にて30分間加熱殺菌してアロエプレザーブを調製し、実施例1と同様に処理して、アロエ葉肉含有ヨーグルトを得た(特許文献3実施例)。
そして、上記プレザーブに含まれるアロエ葉肉のアロエ生葉からの収縮率を測定したところ、23%であった。また、該プレザーブに含まれるアロエ葉肉の硬度を測定したところ、19.6であった。
【0054】
(比較例5)
市販のアロエ葉肉(兼松)を600g、グラニュー糖160g、ペクチン(ユニテックフーズ社製)0.5g、クエン酸1g、及び香料(長谷川香料社製)5gを水233.5gに添加、溶解して、55℃で10分間加熱し、脱気処理後、93℃で3分間殺菌し、容器に充填することで、アロエプレザーブを調製した。
次いで、該アロエプレザーブを用いて、実施例1と同様に処理して、アロエ葉肉含有ヨーグルトを得た(特許文献2実施例)。
そして、上記プレザーブに含まれるアロエ葉肉のアロエ生葉からの収縮率を測定したところ、48%であった。また、該プレザーブに含まれるアロエ葉肉の硬度を測定したところ、22.2であった。
【0055】
(比較例6)
実施例1で得られたアロエ葉肉加工品800gの代わりに、市販のアロエ葉肉(兼松)800gを使用した以外は、実施例4と同様に処理を行い、アロエプレザーブ、アロエ葉肉含有ヨーグルトを得た。
そして、上記プレザーブに含まれるアロエ葉肉のアロエ生葉からの収縮率を測定したところ、19%であった。また、該プレザーブに含まれるアロエ葉肉の硬度を測定したところ、22.1であった。
【0056】
(比較例7)
実施例1で得られたアロエ葉肉加工品800gの代わりに、比較例2で得られたアロエ葉肉加工品800gを使用した以外は、実施例4と同様に処理を行い、アロエプレザーブ、アロエ葉肉含有ヨーグルトを得た。
そして、上記プレザーブに含まれるアロエ葉肉のアロエ生葉からの収縮率を測定したところ、63%であった。また、該プレザーブに含まれるアロエ葉肉の硬度を測定したところ、35.6であった。
【0057】
(実施例7)
実施例1と同様に処理して調製したアロエ葉肉加工品30質量部と実施例1と同様に処理して調製した発酵乳70質量部を混合し、アロエ葉肉含有ヨーグルトを得た。
【0058】
(実施例8)
実施例7において、使用するアロエ原料を実施例2と同様に処理して調製したアロエ葉肉加工品にした以外は、実施例7と同様に処理してアロエ葉肉含有ヨーグルトを得た。
【0059】
(実施例9)
実施例7において、使用するアロエ原料を実施例3と同様に処理して調製したアロエ葉肉加工品にした以外は、実施例7と同様に処理してアロエ葉肉含有ヨーグルトを得た。
【0060】
(比較例8)
実施例7において、使用するアロエ原料を市販のアロエ葉肉(兼松)とした以外は、実施例7と同様に処理してアロエ葉肉含有ヨーグルトを得た。
【0061】
(比較例9)
実施例7において、使用するアロエ原料を比較例2と同様に調製したアロエ葉肉加工品とした以外は、実施例7と同様に処理してアロエ葉肉含有ヨーグルトを得た。
【0062】
(実施例10)
実施例1と同様に処理して調製したアロエ葉肉加工品を用い、表1、2に示す配合でベース(表1)とソース(表2)を作製し、それぞれ90℃、10分で加熱殺菌後、ベースを70℃、ソースを50℃まで冷却し、ベース50質量部とソース50質量部をよく混合してカップに充填し、10℃まで冷却してアロエ葉肉含有ゼリーを得た。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
(実施例11)
実施例10において、使用するアロエ原料を実施例2と同様に調製したアロエ葉肉加工品にした以外は、実施例10と同様に処理してアロエ葉肉含有ゼリーを得た。
【0066】
(実施例12)
実施例10において、使用するアロエ原料を実施例3と同様に調製したアロエ葉肉加工品にした以外は、実施例10と同様に処理してアロエ葉肉含有ゼリーを得た。
【0067】
(比較例10)
実施例10において、使用するアロエ原料を市販のアロエ葉肉(兼松)とした以外は、実施例10と同様に処理してアロエ葉肉含有ゼリーを得た。
【0068】
(比較例11)
実施例10において、使用するアロエ原料を比較例2と同様に調製したアロエ葉肉加工品とした以外は、実施例10と同様に処理してアロエ葉肉含有ゼリーを得た。
【0069】
(評価1)
実施例1〜12、比較例1〜11で得られたアロエ葉肉含有ヨーグルト又はアロエ葉肉含有ゼリーに含まれるアロエの硬度について、上述した硬度測定法の変法を用いて測定した。すなわち、アロエ葉肉含有ヨーグルト又はアロエ葉肉含有ゼリー調製後、1〜2日後に、アロエ葉肉を取り出し、くさび型プランジャーを使用し、前記の歪率を測定する代わりに、アロエ葉肉を押圧した際に生じるアロエ葉肉の変形の大きさ(mm)を測定し、X軸を変形の大きさ、Y軸を荷重(N)とする曲線の極大値に到達する以前の曲線部分の変曲点における接線の傾きを、前記測定法と同様にして求め、これをアロエ葉肉含有ヨーグルト又はアロエ葉肉含有ゼリーに含まれるアロエ葉肉の硬度とした。結果を表3に示す。
【0070】
(評価2)
10人の専門パネラーにより、次の評価方法により官能的に試験した。実施例1〜12、比較例1〜11で得られたアロエ葉肉含有ヨーグルト又はアロエ葉肉含有ゼリーに含まれるアロエの硬さと、食感の好みについて下記基準で5段階の点数をつけ、評価点の平均点を算出した。結果を表3に示す。

【0071】
【表3】

【0072】
表3からわかるように、実施例に関しては、アロエの硬度、食感における硬さが十分に得られ、食感の好みも良好な結果だった。一方、比較例に関しては、アロエの硬度、食感における硬さが十分に得られず、食感の好みにおいて良好な結果が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、アロエ葉肉が本来有する食感を保持しつつ、更に噛みごたえのある、新しい食感を有するアロエ葉肉を含有するヨーグルト、ゼリー等の食品が提供される。本発明の製造方法を用いて加工したアロエ葉肉は、一旦加工した後でも、再度消費者の嗜好に合わせて風味付けを行うことができるため、食感だけでなく、様々な消費者のニーズにあった幅広い商品に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アロエ生葉に対して、ペクチン、グアガム、キサンタンガム、タラガム及びコーンスターチから選ばれる少なくとも1種の安定剤0.005質量%以上0.05質量%未満の量及び水を添加し、85〜100℃の範囲に加熱して調製したアロエ葉肉加工品に、アロエ葉肉含有加工品に対して2〜40質量%となる量の甘味料及び水を配合してなる、アロエ葉肉の収縮率が30〜45%の範囲であるアロエ葉肉含有加工品を添加してなるアロエ葉肉含有食品。
【請求項2】
アロエ葉肉含有加工品に含まれるアロエ葉肉をプランジャーで押圧し、同時に押圧中の荷重及び歪率を連続的に測定し、
前記の荷重及び歪率の値を基に、最小自乗法により計算を行って、X軸を歪率、Y軸を荷重とする近似四次曲線の歪率−荷重曲線を作成し、
前記の歪率−荷重曲線における極大値に到達する以前の曲線部分の変曲点における接線の傾きを計算して求めたとき、この変曲点の傾きが23〜35の範囲内の数値にある請求項1に記載のアロエ葉肉含有食品。
【請求項3】
アロエ生葉に対して、ペクチン、グアガム、キサンタンガム、タラガム及びコーンスターチから選ばれる少なくとも1種の安定剤0.005質量%以上0.05質量%未満の量及び水を添加し、85〜100℃の範囲に加熱して調製したアロエ葉肉加工品を添加してなるアロエ葉肉含有食品。
【請求項4】
アロエ葉肉含有食品がヨーグルト又はゼリーである請求項1〜3のいずれか1項に記載のアロエ葉肉含有食品。
【請求項5】
アロエ生葉に対して、ペクチン、グアガム、キサンタンガム、タラガム及びコーンスターチから選ばれる少なくとも1種の安定剤0.005質量%以上0.05質量%未満の量及び水を添加し、85〜100℃の範囲に加熱してアロエ葉肉加工品を調製し、次いで、アロエ葉肉含有加工品に対して2〜40質量%となる量の甘味料及び水を上記アロエ葉肉加工品に添加し、40〜60℃の範囲に加熱してアロエ葉肉含有加工品を調製し、このアロエ葉肉含有加工品を食品材料として用いる、アロエ葉肉含有食品の製造方法。
【請求項6】
アロエ生葉に対して、ペクチン、グアガム、キサンタンガム、タラガム及びコーンスターチから選ばれる少なくとも1種の安定剤0.005質量%以上0.05質量%未満の量及び水を添加し、85〜100℃の範囲に加熱してアロエ葉肉加工品を調製し、このアロエ葉肉加工品を食品材料として用いる、アロエ葉肉含有食品の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−220533(P2010−220533A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70950(P2009−70950)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000006127)森永乳業株式会社 (269)
【Fターム(参考)】