アンカボルトの形状探査方法およびその装置
【課題】アンカボルトの長手方向側面に腐食があっても、中心周波数fKを徐々に小さくし、アンカボルトの腐食進行の度合や形状(湾曲、先端先鋭)による超音波伝達経緯中の減衰の影響を受けにくい相対的に低い周波数に基づいて時系列波を求め、反射波の起生を確保することができ、アンカボルトの形状探査に寄与するアンカボルトの形状探査方法およびその装置を提供する。
【解決手段】アンカボルト端面より広帯域超音波を発信S1し、同一端面で広帯域超音波を受信S2し、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルS3を求める第1演算機能と、広帯域受信波スペクトルS3より中心周波数をfKとする狭帯域スペクトルを抽出して、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波S5を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求める第2演算機能と、を備えた演算手段を設け、時系列波よりアンカボルト先端からの反射波の起生を求めるS6ことを特徴とする。
【解決手段】アンカボルト端面より広帯域超音波を発信S1し、同一端面で広帯域超音波を受信S2し、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルS3を求める第1演算機能と、広帯域受信波スペクトルS3より中心周波数をfKとする狭帯域スペクトルを抽出して、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波S5を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求める第2演算機能と、を備えた演算手段を設け、時系列波よりアンカボルト先端からの反射波の起生を求めるS6ことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリート構造物にその一部が埋込まれたアンカボルトの形状を探査するようなアンカボルトの形状探査方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路橋梁や新幹線橋梁など過去に建設された運用途上にあるコンクリート構造物の数は膨大である。
近年のいくつかの大地震でのコンクリート構造物の破損、崩壊に関連して、これらコンクリート構造物の耐震補強および保守保全が、社会的に急務の情勢となっている。
【0003】
このような背景下において、構造物の多岐にわたる保守保全業務を行なう上で、必要な検討項目の一つとして、既設コンクリート橋梁の場合、梁桁と橋台との緊結に必要な構造要素としてのアンカボルトが構造的に適切に施行されているか否かの非破壊検査が必要となる。
【0004】
従来のアンカボルトの形状探査方法およびその装置は次の通りである。
すなわち、図32に示すように、2.5MHz前後の中心周波数の狭帯域超音波(狭帯域波)を発信および受信する共用探触子を備えた超音波装置で、コンクリート80内に埋込まれたアンカボルト81を探査している。なお、図32において、82は鉄板などの支持金具である。
【0005】
図32に示す入力波と受信波の波形を図33に示す。
図33(a)に示すように入力波のスペクトルは、中心周波数が2.5MHz前後の狭帯域波であり、1波程度のパルス波である。受信波は、入力スペクトルに対応した狭帯域スペクトルの波(同図bの受信波スペクトル参照)となる。図33(b)の左図に示すように、受信波の時系列波は、パルス状の波が等時間th毎に生ずる波となる。
【0006】
このパルス状の連続して生ずる波の意味するところを、図34を参照して説明する。
図34の上段は、アンカボルト81の端部(上端)からの超音波入力時、コンクリート80内に埋込まれたアンカボルト81の先端(下端)からの反射波が、繰返し重複反射する様子を示している。
図34の下段は、この重複反射波が時間th毎に、パルス状に生ずる状況を示している。
【0007】
ここで上記時間thは、アンカボルト81の長手方向反射時間つまり、反射波が起生する時間μsecであって、音速をVp(mm/μsec)、アンカボルト81の長さlT(mm)とすると、次の[数3]で求めることができる。
【数3】
上記[数3]からアンカボルト長lTを求めることも可能となる。
【0008】
一方、アンカボルト81のコンクリート80内への埋込み時、求められる施工上の構造基準は、そのアンカボルト81の直径ΦAおよびコンクリート80に埋込まれる長さlAの規定であって、直径ΦAと長さlAとの関係は次の[数4]で示すことができる。
【数4】
但し、Kは係数
これにより、既設コンクリート構造物でのアンカボルト長が従来技術に基づいて超音波装置にて探査されている。
【0009】
アンカボルト81の形状が全て図35(a)に示す直線状で正常なものであれば、特に、問題は生じないが、20〜30年前のコンクリート構造物では、構造的要因や施工時の何等かの要因により、図35(b)、(c)、(d)に示すようなアンカボルト81の形状が存在し、これが問題となる。
【0010】
図35(b)に示すアンカボルト81は溶接面で溶接継手83が接続されたもので、図35(c)に示すアンカボルト81は図示のように湾曲したもので、図35(d)に示すアンカボルト81はその先端(下端)が先鋭に尖ったものである。
図35(a)に示す正常な直線アンカボルト81の場合には、図34に示す重複反射波を得ることができるので、次の[数5]によりアンカボルト長lT(総長さ)を求めることができる。
【数5】
なお、一般的にVp=5900m/secである。
しかしながら、図35(b)に示す溶接継手83を有するアンカボルト81の場合には、溶接継手83を除くアンカボルト81のみの長さl1が求められ、図35(c)に示す湾曲アンカボルト81、同図(d)に示す先端先鋭アンカボルト81の場合には、図34に示す重複反射の出現のみならず、1回目の反射波の起生も得られない。
【0011】
これは、従来の超音波装置の探触子による入力波が、2.5MHz前後の狭帯域波であり、周波数が2.5MHzと相対的に高いため、超音波がアンカボルト内に伝達する経緯の中で衰退が大きくなり、特に、湾曲アンカボルト81や先端先鋭アンカボルト81の場合には、その減衰量が倍加することに起因するものと推考される。
さらに、建設後20〜30年以上が経過するコンクリート構造物のアンカボルト81は、図36に示すように、コンクリート80に接するアンカボルト81の長手方向側面が、腐食84している場合が多々存在する。
【0012】
この腐食84が構造物の安全性に対しては影響を与えない程度であっても、アンカボルト81の長手方向での超音波伝達挙動が大きく変動し、これに起因して図34で示す重複反射波の起生が得られない場合がある。
【0013】
図36の右図に重複反射波の起生が得られない場合の受信波を模式的に示す。
図36において、アンカボルト81の総長さlTに冠するアンカボルト長1回目の反射波の起生時刻の値をthとすると、腐食84の存在で生ずる波はthの1/2程度の起生時刻で起生するため、これら両者の波が混在する所謂混在波により、腐食84の存在で生ずる波と、本来の反射波との識別が困難となり、アンカボルト長に関する重複反射の起生を確保することが不可で、アンカボルト81の分析および計測が不可能となる。
【0014】
図36の左図に示す直線アンカボルト81においても、このような分析不能が生ずるので、まして図35(b)、(c)、(d)に示す溶接継手ありアンカボルト81、湾曲アンカボルト81、先端先鋭アンカボルト81において腐食を伴う場合にあっては分析、計測が全く不可能となる。
【0015】
ところで、特許文献1には被探知体としてのコンクリート材に対して超音波を入力することで、該被探知体の内部構造を探知する超音波探知方法およびその装置が開示されているが、2.5MHzの狭帯域超音波が用いられている関係上、この特許文献1に開示されたものを、アンカボルトの形状探査に適用しても、上述同様の問題点が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第4050470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
そこで、この発明は、アンカボルト端面より広帯域超音波を発信し、同一端面で広帯域超音波を受信し、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルを求め、該広帯域受信波スペクトルより中心周波数をfKとする狭帯域スペクトルを抽出して、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求め、上記時系列波よりアンカボルト先端からの反射波の起生を求めることにより、アンカボルトの長手方向側面に腐食があっても、fKを徐々に小さくし、アンカボルトの腐食進行の度合や形状(湾曲、先端先鋭)による超音波伝達経緯中の減衰の影響を受けにくい相対的に低い周波数に基づいて時系列波を求めるので、上記反射波の起生を確保することができ、アンカボルトの形状探査に寄与することができるアンカボルトの形状探査方法およびその装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明によるアンカボルトの形状探査装置は、超音波を発信する探触子と受信する探触子、または超音波の発信、受信を共用する探触子を備え、コンクリート構造物にその一部が埋込まれたアンカボルトの形状を探査するアンカボルトの形状探査装置であって、上記アンカボルト端面より広帯域超音波を発信し、同一端面で広帯域超音波を受信し、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルを求める第1演算機能と、該広帯域受信波スペクトルより中心周波数をfKとする狭帯域スペクトルを抽出して、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求める第2演算機能と、を備えた演算手段を設け、上記時系列波よりアンカボルト先端からの反射波の起生を求めるものである。
【0019】
上述の発信および受信される広帯域超音波は、0〜5MHzの全ての周波数帯域で成分をもつ広帯域成分波が望ましい。
また、上述の中心周波数はfK=2.5MHzを初期の最大値とし、fK=1.25MHz、fK=0.99MHzまたはそれ以下の任意の周波数に設定することができる。
【0020】
上記構成によれば、演算手段の第1演算機能は、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルを求め、演算手段の第2演算機能は、広帯域受信波スペクトルより中心周波数をfKとする狭帯域スペクトルを抽出して、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求めるので、上記時系列波よりアンカボルト先端からの反射波の起生を求めることができる。
【0021】
このため、アンカボルトの長手方向側面に腐食があっても、中心周波数fKを徐々に小さくし、アンカボルトの腐食進行の度合や形状による超音波伝達経緯中の減衰の影響を受けにくい相対的に低い周波数に基づいて時系列波を求めるので、上記反射波の起生を確保することができて、アンカボルトの形状探査に寄与することができる。
【0022】
この発明の一実施態様においては、上記アンカボルトの先端からの反射波の起生時刻thに基づいて時系列関数を作成する関数作成手段と、上記広帯域受信波に時系列関数を乗じて、アンカボルト長さに関する反射波のスペクトルをフーリエ変換にて求めるスペクトル演算手段とを設け、所定の周波数以上の帯域でスペクトルが林立する時、直線アンカボルトと判定し、林立しない時、湾曲アンカボルトと判定するものである。
上述の所定の周波数は、例えば、0.45MHzまたは0.5357MHzに設定してもよい。
【0023】
上記構成によれば、関数作成手段は、アンカボルトの先端からの反射波の起生時刻thに基づいて時系列関数(TGC関数)を作成し、スペクトル演算手段は、上記広帯域受信波に時系列関数を乗じて、アンカボルト長さに関する反射波のスペクトルをフーリエ変換にて求めるので、上記所定の周波数以上の帯域でスペクトルが林立する場合には、直線アンカボルトと判定し、林立しない場合には、湾曲アンカボルトと判定することができる。
この結果、計測対象(探査対象)のアンカボルトが直線アンカボルトか、または、湾曲アンカボルトかを判断することができる。
【0024】
この発明の一実施態様においては、上記アンカボルト先端からの反射波の起生時刻をthとし、アンカボルト長手方向を伝達する横波と縦波との音速比をε1として、アンカボルトの継手部で生ずる横波M1と、アンカボルト端面からの超音波入力時に発生する長手方向の横波M2との起生時刻(tM1,tM2)を、
【数1】
【数2】
により計算する計算手段と、上記広帯域受信波スペクトルにおいて、最低周波数帯域の起生スペクトルをAとし、次に低い周波数帯域の起生スペクトルをBとした時、起生スペクトルA、Bを含む周波数帯域のスペクトル群を抽出し、フーリエ逆変換にて上記スペクトル群に対応する時系列波を求める時系列演算手段と、上記横波M1,M2の起生時刻tM1,tM2の値に基づいて所定の時系列関数をA、Bスペクトル群に対応する時系列波に乗ずることで、この時刻tM1,tM2より生ずる横波M1,M2を抽出し、この抽出波のスペクトルをフーリエ変換で求めるスペクトル演算手段とを備え、M1,M2のスペクトルの双方で、AおよびB領域のスペクトルのうち、B領域のスペクトルのみが消滅する時、アンカボルトが一本物で溶接継手なしと判断する一方、M1のスペクトルにおいて、AおよびB領域のスペクトルのうち、B領域スペクトルのみが消滅し、かつM2のスペクトルにおいて、AおよびB領域のスペクトルのうち、A領域スペクトルのみが消滅、または大きく減衰する時、アンカボルトが溶接継手ありと判断するものである。
上述の最低周波数帯域(A領域)は37kHz付近の25.3kHz〜49.2kHzに設定してもよく、次に低い周波数帯域(B領域)は70kHz付近の60.9kHz〜91.9kHzに設定してもよい。
【0025】
上記構成によれば、上記計算手段は、上記[数1]、[数2]に基づいて横波M1、M2の起生時刻tM1,tM2を計算し、時系列波演算手段は、起生スペクトルA、Bを含む周波数帯域のスペクトル群を抽出し、フーリエ逆変換にて上記スペクトル群に対応する時系列波を求め、スペクトル演算手段は、横波M1、M2の起生時刻tM1,tM2の値に基づいて所定の時系列関数をA、Bスペクトル群に対応する時系列波に乗ずることで、この時刻tM1,tM2より生ずる横波M1、M2を抽出し、この抽出波のスペクトル(M1波のスペクトル、M2波のスペクトル)をフーリエ変換で求めるので、M1、M2のスペクトルの双方で、B領域のスペクトルのみが消滅する場合には、アンカボルトが一本物で溶接継手なしと判断することができ、一方、M1のスペクトルにおいて、B領域スペクトルのみが消滅し、かつM2のスペクトルにおいてA領域スペクトルのみが消滅、または大きく衰退する場合には、アンカボルトが溶接継手ありと判断することができる。
この結果、計測対象(探査対象)のアンカボルトが、一本物で溶接継手のないアンカボルトか、または、溶接継手のあるアンカボルトかを判断することができる。
【0026】
この発明によるアンカボルトの形状探査方法は、超音波を発信する探触子と受信する探触子、または超音波の発信、受信を共用する探触子を備え、コンクリート構造物にその一部が埋込まれたアンカボルトの形状を探査するアンカボルトの形状探査方法であって、上記アンカボルト端面より広帯域超音波を発信し、同一端面で広帯域超音波を受信する第1の工程と、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルを求める第2の工程と、上記広帯域受信波スペクトルより中心周波数fKとする狭帯域スペクトルを抽出して、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求める第3の工程と、上記時系列波から、アンカボルト先端からの反射波の起生を求める第4の工程と、を備えたものである。
【0027】
上述の発信および受信される広帯域超音波は、0〜5MHzの全ての周波数帯域で成分をもつ広帯域成分波が望ましい。
また、上述の中心周波数はfK=2.5MHzを初期の最大値とし、fK=1.25MHz、fK=0.99MHzまたはそれ以下の任意の周波数に設定することができる。
【0028】
上記構成によれば、第1の工程で、アンカボルト端面より広帯域超音波を発信し、同一端面で広帯域超音波を受信する。次の第2の工程で、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルを求める。次の第3の工程で、上記広帯域受信波スペクトルより中心周波数をfKとする狭帯域スペクトルを抽出して、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求める。次の第4の工程で、上記時系列波から、アンカボルト先端からの反射波の起生を求める。
このため、アンカボルトの長手方向側面に腐食があっても、中心周波数fKを徐々に小さくし、アンカボルトの腐食進行の度合や形状による超音波伝達経緯中の減衰の影響を受けにくい相対的に低い周波数に基づいて時系列波を求めるので、上記反射波の起生を確保することができて、アンカボルトの形状探査に寄与することができる。
【発明の効果】
【0029】
この発明によれば、アンカボルト端面より広帯域超音波を発信し、同一端面で広帯域超音波を受信し、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルを求め、該広帯域受信波スペクトルより中心周波数をfKとする狭帯域スペクトルを抽出して、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求め、上記時系列波よりアンカボルト先端からの反射波の起生を求めるように構成したので、アンカボルトの長手方向側面に腐食があっても、中心周波数fKを徐々に小さくし、アンカボルトの腐食進行の度合や形状(湾曲、先端先鋭)による超音波伝達経緯中の減衰の影響を受けにくい相対的に低い周波数に基づいて時系列波を求めるので、上記反射波の起生を確保することができ、アンカボルトの形状探査に寄与することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のアンカボルトの形状探査方法に用いる形状探査装置のブロック図
【図2】発信探触子の説明図
【図3】発信探触子のステップ型電圧発生器の説明図
【図4】受信探触子の説明図
【図5】広帯域超音波の説明図
【図6】(a)は発信探触子と受信探触子とを用いる場合の説明図、(b)は発信、受信を共用する探触子を用いる場合の説明図
【図7】第1実施形態の工程図
【図8】形状探査に用いる広帯域入力波スペクトルと広帯域受信波スペクトルの説明図
【図9】スペクトル抽出関数の説明図
【図10】(a)は従来の2.5MHz狭帯域スペクトルの時系列波、(b)は本実施形態の1.25MHz狭帯域スペクトルの時系列波、(c)は本実施形態の0.99MHz狭帯域スペクトルの時系列波を示す波形図
【図11】(a)は直線アンカボルトの説明図、(b)〜(d)は湾曲アンカボルトの説明図
【図12】比較例のアンカボルトの形状探査装置による受信波形図
【図13】(a)は2.5MHz超音波のアンカボルト長手方向の伝達を示す説明図、(b)は1.25MHz超音波のアンカボルト長手方向の伝達を示す説明図
【図14】第2実施形態の工程図
【図15】フーリエ逆変換で時系列波を求める時の波形図
【図16】フーリエ逆変換で時系列波を求める時の波形図
【図17】フーリエ変換で反射波のスペクトルを求める時の波形図
【図18】(a)は一本物アンカボルトの説明図、(b)は溶接継手ありアンカボルトの説明図
【図19】第3実施形態の工程図
【図20】一本物アンカボルトと継手ありアンカボルトとの反射波の起生状況の差異を示す説明図
【図21】フーリエ逆変換で時系列波を求める時の波形図
【図22】(a)は縦波Pの起生を示す説明図、(b)は横波M1の起生を示す説明図、(c)は横波M2の起生を示す説明図
【図23】フーリエ変換でM2波のA、B領域のスペクトルを求める時の波形図
【図24】フーリエ変換でM1波のA、B領域のスペクトルを求める時の波形図
【図25】第4実施形態の工程図
【図26】フーリエ変換で広帯域受信波スペクトルを求める時の波形図
【図27】フーリエ逆変換で時系列波を求める時の波形図
【図28】フーリエ変換で一本物アンカボルトのA、B領域のスペクトルを求める時の波形図
【図29】フーリエ変換で継手ありアンカボルトのA、B領域のスペクトルを求める時の波形図
【図30】フーリエ変換で一本物アンカボルトのA、B領域のスペクトルを求める時の波形図
【図31】フーリエ変換で継手ありアンカボルトのA、B領域のスペクトルを求める時の波形図
【図32】従来のアンカボルトの形状探査を示す説明図
【図33】(a)は従来の2.5MHz狭帯域入力波を示す波形図、(b)は従来の2.5MHz狭帯域受信波を示す波形図
【図34】受信波形状とアンカボルト長手方向の重複反射を示す説明図
【図35】(a)は正常な直線アンカボルトの説明図、(b)は継手ありアンカボルトの説明図、(c)は湾曲アンカボルトの説明図、(d)は先端先鋭アンカボルトの説明図
【図36】アンカボルト表面に腐食がある場合の受信波の状態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0031】
[実施形態1]
この発明の一実施形態を以下図面に基づいて詳述する。
図面はアンカボルトの形状探査方法およびその装置を示すが、まず、図1を参照してアンカボルトの形状探査装置の構成について説明する。
【0032】
被探知体としてのアンカボルト30の表面(アンカボルト端面)に接触配置する発信探触子31と受信探触子32とを設けている。
上述の発信探触子31は広帯域超音波(例えば0〜5MHzの全ての周波数帯域で成分をもつ広帯域成分波)を発信するものであり、上述の受信探触子32は0〜5MHzの広帯域超音波を受信するものである。
【0033】
上述の発信探触子31には超音波発信装置の電流供給回路33から電流が供給され、この発信探触子31から超音波が発信してアンカボルト30内に入射する。
【0034】
また、受信探触子32が受信した超音波信号は解析装置34に入力されて解析される。
この解析装置34においては、受信探触子32の受信信号が増幅回路35により増幅された後、フィルタ回路36でフィルタリングを受けた信号がAD変換回路37(アナログ・デジタル変換回路)によってデジタル信号に変換され、ゲートアレイ38を介してCPU40に入力される。
【0035】
ハードディスク39には解析処理アプリケーションソフトウェアと、CPU40により演算処理された時系列データが保存される。ここで、上述のCPU40はフーリエ変換・フーリエ逆変換を行う制御手段(処理部)である。
【0036】
また、上述の解析結果は表示装置41にも入力されて表示される。この表示装置41は図10に示すような各種の波形を可視表示する表示手段である。
【0037】
さらに、必要な情報が入力手段としてのキーボードなどの入力装置42からCPU40に入力されるように構成している。メモリ43はCPU40が演算する際にデータを一時的に格納するために用いられる。また、CPU40からコントロール回路44に制御信号が出力され、コントロール回路44は増幅回路35、フィルタ回路36、AD変換回路37、ゲートアレイ38および電流供給回路33に作動指令信号を出力する。
【0038】
電流供給回路33は同軸ケーブル45を介して発信探触子31に接続されており、発信探触子31には図2に示すように、基盤化されたステップ型電圧発生器46と振動子47とが内蔵されている。
【0039】
ステップ型電圧発生器46には、図3に示すように、ステップ電圧駆動回路461とステップ電圧発生回路462とが設けられており、ステップ電圧駆動回路461で発生するステップ関数型電圧を振動子47に印加する。
【0040】
広帯域超音波をアンカボルト30に入力する都度、受信探触子32で受信波を得る。
この受信波は同軸ケーブル49を介して、解析装置34の増幅回路35へ電圧の時間変動データとして送られる。増幅回路35へ送られた時間変動データは、フィルタ回路36を介してAD変換回路37に達し、この電圧のアナログ量が該AD変換回路37によりデジタル量に変換され、ゲートアレイ38を介してCPU40に転送され、電圧デジタル値の時刻歴が表示装置41に表示される。
【0041】
自動的に、またはキーボードなどの入力装置42を用いた外部からの指示で、電圧の増幅または減幅およびローパス/ハイパスフィルタ処理の指令がCPU40に伝達され、CPU40はコントロール回路44を介して増幅回路35およびフィルタ回路36を制御する。
【0042】
図4に示すように、受信探触子32には漸減型ハイパスフィルタ回路50、増幅回路51および振動子52が内蔵されている。
【0043】
電流供給回路33はコントロール回路44により制御されて、所定の時間間隔で動作する。
【0044】
受信探触子32に内蔵された振動子52(図4参照)は広帯域超音波が入力する都度、アンカボルト30の音圧変化にともなって振動が励起する。この振動励起で振動子52に生じる電圧の時間変化が、受信探触子32内のフィルタ回路50および増幅回路51で1次処理される。
【0045】
図1の増幅回路35およびフィルタ回路36の制御が終了した段階で、CPU40の指示でコントロール回路44が動作し、ゲートアレイ38に受信波の加算処理を命令する。
【0046】
ゲートアレイ38は、AD変換回路37で得られる電圧に関する時刻歴デジタル量を、上記時刻歴を得る都度、指定回数加算する。そして、CPU40のコントロール下にて加算平均時刻歴を作成し、表示装置41にその時刻歴をリアルタイム表示する。
【0047】
フィルタ回路50,36および増幅回路51,35は受信探触子32と解析装置34との双方にそれぞれ内蔵されている。受信探触子32に内蔵されているハイパスフィルタ回路50および増幅回路51は受信波に対して1次処理を行なうものであり、解析装置34に内蔵されている増幅回路35とフィルタ回路36は、1次処理された受信波に対し、CPU40のコントロール下にて微調整するものである。この微調整は装置機能の高度化のために必要なものであるから、これら増幅回路35、フィルタ回路36は省略してもよい。
【0048】
次に、図5を参照してパルス型電圧積荷による超音波と、ステップ関数型電圧積荷による超音波の相違について説明する。
【0049】
図5(a)は振動子にパルス型電圧(30〜500V)を印加した場合のスペクトルを示し、この場合には同図に示すように振動子の厚さ方向共振振動数を中心周波数とする比較的狭帯域のスペクトルをもつ発信超音波を得ることになる(従来技術の狭帯域周波数に相当。)。
図5(b)は発信探触子31内の振動子47にステップ関数型電圧(30〜500V)を印加した場合のスペクトルを示し、この場合には同図に示すように共振振動数はもちろんのこと、これよりも低周波の成分も励起されたスペクトルとなり、本実施例の広帯域超音波は図5(b)による超音波を意味するものである。
【0050】
図6は、コンクリート20にその一部が埋込まれたアンカボルト30の形状を探査する場合の探触子の配置構造を示し、図6(a)に示すように、アンカボルト30の端面30aに0〜5MHzの広帯域超音波を発信する発信探触子31と、0〜5MHzの広帯域超音波を受信する受信探触子32とを配置して、形状探査を行なってもよく、または、図6(b)に示すように、アンカボルト30の端面30aに0〜5MHzの広帯域超音波の発信、受信を共用する探触子21を配置して、形状探査を行なってもよい。
【0051】
次に、図7に示す工程図を参照して、アンカボルトの形状探査方法について説明する。
【0052】
ステップS1で、発信探触子31はアンカボルト30内に0〜5MHzの広帯域入力波(図8の入力波広帯域スペクトル参照)を発信する。
次のステップS2で、受信探触子32は0〜5MHzの広帯域受信波(図示せず)を受信する。この受信した広帯域受信波をフーリエ変換すると、ステップS3で広帯域受信波スペクトルsp1(図8参照)を求めることができる。
すなわち、演算手段であるCPU40の第1演算機能は、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて図8の左図に示すように広帯域受信波スペクトルsp1を求めるものである。
【0053】
次に、ステップS4で、図8の広帯域受信波スペクトルsp1に、図9に示すスペクトル抽出関数A(f)(A(fK)=1.0)を乗じて、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波(図10参照)を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求める(ステップS5参照)。
【0054】
ここで、図9に示すスペクトル抽出関数A(f)(A(fK)=1.0)は、中心周波数をfKとし、所定値をfaとする時、次のように定義することができる。
f≦fK−faでA(f)=0.0
f=fKでA(f)=1.0
f≧fK+faでA(f)=0.0
fK−fa<f<fKでA(f)は増加関数
fK<f<fK+faでA(f)は減少関数
【0055】
この実施形態では、スペクトル抽出関数A(f)(A(fK)=1.0)の、中心周波数fKの初期値(最大値)を、従来例との対比を明確にする目的で、あえてfK=2.5MHzに設定し、広帯域受信波スペクトルsp1にこのスペクトル抽出関数A(f)を乗じて、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波(図10(a)参照)を求め(ステップS4〜S5参照)、図9に示すように中心周波数fKを徐々に小さくし、fK=1.25MHzの時、広帯域受信波スペクトルsp1にこのスペクトル抽出関数A(f)を乗じて、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波(図10(b)参照)を求め(ステップS4〜S5参照)、さらに中心周波数をfK=0.99MHzに小さくし、この時においても、広帯域受信波スペクトルsp1にこのスペクトル抽出関数A(f)を乗じて、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波(図10のc参照)を求め(ステップS4〜S5参照)るものである。
【0056】
換言すれば、中心周波数fKを徐々に小さくする毎にステップS4〜S5の処理を繰返し、図10(b)、図10(c)に示すような狭帯域スペクトルの時系列波を得るものである。
すなわち、演算手段であるCPU40の第2演算機能は、広帯域受信波スペクトルsp1より、中心周波数をfKとする狭帯域スペクトルを抽出して、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波(図10の(b)、(c)参照)を中心周波数fKを1.25MHz〜0.99MHzへ徐々に小さくしていく経緯の中で順次求めるものである。
【0057】
次にステップS6で、図10(b)、(c)に示す時系列波から、アンカボルト30先端からの反射波の起生を確保する。
つまり、図10(a)、(b)、(c)に示す時系列波形は、図1の表示装置41にリアルタイムで表示されるので、図10(a)においては反射波(e)の確認が不明であるが、図10(b)、(c)においては反射波g,hが明確に確認され、この反射波g,hが開始する瞬間を、作業者が表示装置41の画面を目視しながら、反射波g,hの起生時刻thとして推定することができる。
【0058】
このように、図10(b)、(c)に示す時系列波の反射波g,hから、その起生時刻thが推定できるので、[数5]に基づいてアンカボルト長lTを求めることができる。
【数5】
なお、図10(b)(c)に仮想線で示すラインiは、重み付けのラインであって、このラインiの高さを波形に乗算し、波形全体における振幅バランスの適性化を図るものである。
【0059】
このように、図1〜図10で示した実施形態1のアンカボルトの形状探査装置は、超音波を発信する探触子31と受信する探触子32、または超音波の発信、受信を共用する探触子21を備え、コンクリート構造物にその一部が埋込まれたアンカボルト30の形状を探査するアンカボルトの形状探査装置であって、上記アンカボルト端面30aより0〜5MHzの広帯域超音波を発信し、同一端面30aで0〜5MHzの広帯域超音波を受信し、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルsp1(図8参照)を求める第1演算機能(COU40が備える機能)と、該広帯域受信波スペクトルsp1より中心周波数をfKとする狭帯域スペクトルを抽出して、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波(図10の(b)、(c)参照)を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求める第2演算機能(CPU40が備える機能)と、を備えた演算手段(CPU40参照)を設け、上記時系列波より、アンカボルト30先端からの反射波g,hの起生(起生時刻th参照)を求めるものである。
【0060】
この構成によれば、演算手段CPU40の第1演算機能は、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルsp1を求め、演算手段CPU40の第2演算機能は、広帯域受信波スペクトルsp1より中心周波数をfKとする狭帯域スペクトルを抽出して、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求めるので、上記時系列波(図10の(b)、(c)参照)よりアンカボルト30先端からの反射波g,hの起生を求めることができる。
【0061】
このため、アンカボルト30の長手方向側面に腐食があっても、中心周波数fKを徐々に小さくし、アンカボルト30の腐食進行の度合や形状による超音波伝達経緯中の減衰の影響を受けにくい相対的に低い周波数(実施形態1の1.25MHz、0.99MHz参照)に基づいて時系列波を求めるので、上記反射波g,hの起生を確保することができて、アンカボルト30の形状探査に寄与することができる。
【0062】
また、上記実施形態1のアンカボルトの形状探査方法は、超音波を発信する探触子31と受信する探触子32、または超音波の発信、受信を共用する探触子21を備え、コンクリート構造物にその一部が埋込まれたアンカボルト30の形状を探査するアンカボルトの形状探査方法であって、上記アンカボルト端面30aより0〜5MHzの広帯域超音波を発信し、同一端面30aで0〜5MHzの広帯域超音波を受信する第1の工程S1,S2と、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルsp1(図8参照)を求める第2の工程S2〜S3と、上記広帯域受信波スペクトルsp1より中心周波数fKとする狭帯域スペクトルを抽出して、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波(図10(b)、(c)参照)を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求める第3の工程S4〜S5と、上記時系列波(図10(b)、(c)参照)から、アンカボルト30先端からの反射波g,hの起生(起生時刻th参照)を求める第4の工程S6と、を備えたものである(図7参照)。
【0063】
この構成によれば、第1の工程S1、S2で、アンカボルト端面30aより0〜5MHzの広帯域超音波を発信し、同一端面30aで0〜5MHzの広帯域超音波を受信する。次の第2の工程S2〜S3で、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルsp1を求める。次の第3の工程S4〜S5で、上記広帯域受信波スペクトルsp1より中心周波数をfKとする狭帯域スペクトルを抽出して、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波(図10(b)、(c)参照)を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求める。次の第4の工程S6で、上記時系列波から、アンカボルト30先端からの反射波g,hの起生を求める。
【0064】
このため、アンカボルト30の長手方向側面に腐食があっても、中心周波数fKを徐々に小さくし、アンカボルトの腐食進行の度合や形状による超音波伝達経緯中の減衰の影響を受けにくい相対的に低い周波数(実施形態1の1.25MHz、0.99MHz参照)に基づいて時系列波(図10(b)、(c)参照)を求めるので、上記反射波g,hの起生を確保することができて、アンカボルト30の形状探査に寄与することができる。
【0065】
この実施形態1では、図1に示す表示装置41(表示手段)が、時系列波(図10(b)、(c)参照)よりアンカボルト30先端からの反射波g,hの起生を可視判定可能に表示する。
また、上記実施形態1で開示した中心周波数fK=1.25MHz、fK=0.99MHzの数値は一例であって、これに限定されるものではない。さらに、実施形態1の分析法は、溶接継手ありのアンカボルトの1本目のアンカボルト長、湾曲アンカボルト、先端先鋭アンカボルトの総長さ計測に適用することができる。
【0066】
[実施形態2]
次に、探査対象としてのアンカボルト30が湾曲しているか否かを探査する実施形態について説明する。
図11(a)は湾曲がない直線アンカボルト30を示し、図11(b)は湾曲が小さいアンカボルト30を示し、図11(c)は湾曲が中程度のアンカボルト30を示し、図11(d)は湾曲が大きいアンカボルト30を示す。図11(b)、(c)、(d)は何れも湾曲アンカボルトである。
【0067】
図12は比較例として、2.5MHz狭帯域波を図11(a)、(b)、(c)、(d)の各アンカボルト30に発信し、その反射波を受信した場合の受信波形であって、図12の左図は受信スペクトル波を示し、図12の右図はその時系列波を示す。
【0068】
図12にNo.1で示す直線アンカボルト30の場合には、受信スペクトルの強度が大きいので、同図の右図に時系列波で示すように、反射波としての縦波、横波M1、M2の起生が確認できる一方で、図12にNo.2、No.3、No.4で示す湾曲アンカボルト30の場合には、受信スペクトルの強度が過小であるため、図12の右図に時系列波で示すように、その何れにおいても縦波、横波M1、M2の起生を確認することができなかった。
【0069】
湾曲アンカボルト30の場合、その長手方向への超音波の伝達は図13(a)、(b)のようになる。図13(a)は周波数が相対的に高い2.5MHz以上の場合を示し、図13(b)は周波数が相対的に低い1.25MHz以下の場合を示す。
【0070】
図13(a)に示すように、周波数が2.5MHz以上の場合には、超音波の直進性、指向性が高く、アンカボルト30の湾曲部において同図に示すような超音波伝達挙動が生じ、これにより超音波が大きく減衰し、この結果、図12で既に示したように、縦波、横波M1、M2の起生が確認できなくなるものと推考される。
一方、図13(b)に示すように、周波数が1.25MHz以下の場合には、超音波の直進性、指向性が低くなり、その減衰率も小さくなることにより、アンカボルト長手方向での超音波伝達挙動は、同図のようになるものと推考される。
【0071】
実施形態2で示すアンカボルトの形状探査方法およびその装置においても、図1〜図5で示した回路装置を用いるが、この実施形態2の場合には、CPU40は、上記アンカボルト30の先端からの反射波の起生時刻th(図15、図16参照)に基づいて時系列関数(図17のTGC関数参照)を作成する関数作成手段(図14のステップQ5参照)と、上記広帯域受信波に時系列関数(TGC関数)を乗じて、アンカボルト長さに関する反射波のスペクトルをフーリエ変換にて求めるスペクトル演算手段(図14の各ステップQ6、Q7参照)とを兼ね、表示手段としての表示装置41は、所定の周波数(例えば、図17に示す0.45MHz以上)以上の帯域でスペクトルが林立する時、直線アンカボルトである旨を表示し、林立しない時、湾曲アンカボルトである旨を表示する。
【0072】
実施形態2のアンカボルトの形状探査方法を、図14に示す工程図を参照して、以下に詳述する。
ステップQ1で、発信探触子31はアンカボルト30内に0〜5MHzの広帯域入力波(図8の入力波広帯域スペクトル参照)を発信する。
次のステップQ2で、受信探触子32は0〜5MHzの広帯域受信波(図示せず)を受信する。この受信した広帯域受信波をフーリエ変換すると、ステップQ3で広帯域受信波スペクトルsp1(図8参照)を求めることができる。
すなわち、演算手段であるCPU40の第1演算機能は、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて図8の左図に示すように広帯域受信波スペクトルsp1を求めるものである。
【0073】
次に、ステップQ4で、図8の広帯域受信波スペクトルsp1に、図9に示すスペクトル抽出関数A(f)(A(fK)=1.0)を乗じ、例えばfK=1.25MHzの時には図15に示すような狭帯域スペクトルsp2を抽出し、fK=0.625MHzの時には図16に示すような狭帯域スペクトルsp3を抽出し、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルsp2,sp3の時系列波(図15、図16の右図参照)を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求める(ステップQ5、CPU40の第2演算機能参照)。
【0074】
しかも、このステップQ5では、図15、図16の右図に示す時系列波を求めるだけでなく、この時系列波が表示される表示装置41からlTに関する反射波の起生時刻thを読取り、この起生時刻thに基づいて図17の右図に示すようなTGC関数Z1を作成する。
つまり、起生時刻thの直後に特徴となる波が現れると推定して、TGC関数Z1を作成するものである。
【0075】
図17に示すTGC関数Z1は、Δtを所定値として次のように定義することができる。
0≦t≦th−ΔtでTGC(t)=0.0
t=thでTGC(t)=1.0
t≦th+ΔtでTGC(t)=0.0
th−Δt<t<thで、TGC(t)は増加関数
th<t<th+Δtで、TGC(t)は減少関数
次に、ステップQ6で、TGC関数Z1を広帯域受信波(ステップQ2参照)に乗じて、アンカボルト30の長さlTに関する反射波のスペクトルをフーリエ変換にて求めると(ステップQ7参照)、図17の左図のようになる。
【0076】
図17にNo.1で示す直線アンカボルトに30の場合には、所定の周波数以上の帯域、具体的には、0.45MHz以上の帯域でスペクトルが林立する一方、図17にNo.2〜No.4で示す湾曲アンカボルト30の場合には斯る帯域でスペクトルは林立しない。
【0077】
そこで、次のステップQ8(判定手段)で所定の周波数(0.45MHz)以上の帯域でスペクトルが林立するか否かを判定し、林立する場合(YES判定時)にはステップQ9に移行し、林立しない場合(NO判定時)には別のステップQ10に移行する。
上記ステップQ9(表示手段)で、所定の周波数(0.45MHz)以上の帯域でスペクトルが林立することに対応して、表示装置41は探査対象のアンカボルトが直線アンカボルト30である旨を表示し、一方、ステップQ10(表示手段)では、所定の周波数(0.45MHz)以上の帯域でスペクトルが林立しないことに対応して、表示装置41は探査対象のアンカボルトが湾曲アンカボルト30である旨を表示する。
【0078】
このように、図11〜図17で示した実施形態2のアンカボルトの形状探査装置は、上記アンカボルト30の先端30aからの反射波の起生時刻th(図15、図16の右図参照)に基づいて時系列関数としてのTGC関数(図17の右図参照)Z1を作成する関数作成手段(ステップQ5参照)と、上記広帯域受信波にTGC関数Z1を乗じて、アンカボルト長さlTに関する反射波のスペクトルをフーリエ変換にて求めるスペクトル演算手段(ステップQ6、Q7参照)とを設け、所定の周波数(0.45MHz)以上の帯域でスペクトルが林立する時、直線アンカボルトと判定し、林立しない時、湾曲アンカボルトと判定するものである(判定手段としてのステップQ8、表示手段としてのステップQ9、Q10参照)。
【0079】
この構成によれば、関数作成手段(ステップQ5)は、アンカボルト30の先端30aからの反射波の起生時刻th(図15、図16の右図参照)に基づいてTGC関数Z1(図17参照)を作成し、スペクトル演算手段(ステップQ6、Q7)は、上記広帯域受信波にTGC関数Z1を乗じて、アンカボルト長さlTに関する反射波のスペクトルをフーリエ変換にて求めるので、上記所定の周波数以上の帯域でスペクトルが林立する場合には、直線アンカボルト30と判定し、林立しない場合には、湾曲アンカボルト30と判定することができる。
この結果、計測対象(探査対象)のアンカボルトが直線アンカボルト30か、湾曲アンカボルト30かを判断することができる。
【0080】
[実施形態3]
次に、探査対象としてのアンカボルト30が、図18(a)に示すような一本物アンカボルト30か、または、同図(b)に示すような溶接面jを介して溶接継手29が接続された継手ありアンカボルト30かを探査する実施形態について説明する。
【0081】
実施形態1の構成で探査した場合には、その反射波は溶接面j位置の一本物のアンカボルト長l1に関するものとなり、この長さl1をアンカボルト総長さlTと誤認するので、実施形態3は、これを回避するように成したものである。
【0082】
図18(a)(b)に示すアンカボルト30に、発信探触子31と受信探触子32とを配置し、受信探触子32に得られる0〜5MHzの広帯域受信波を、フーリエ変換して、広帯域受信波スペクトルsp1(図8参照)を求めた後に、この広帯域受信波スペクトルsp1にスペクトル抽出関数A(f)(A(fK)=1.0)を乗じ、例えば、中心周波数fK=0.937MHzとした時には、図20の左図に示す狭帯域スペクトルsp4を抽出することができ、これをフーリエ逆変換すると、図20の右図に示す時系列波を得ることができる。
【0083】
図20の右図に、No.1一本物アンカボルト30の時系列波と、No.2継手ありアンカボルト30の時系列波とをそれぞれ示すように、これら両者はほとんど同一となって、継手あり、なしの区別が判別できない。すなわち、No.1の一本物アンカボルト30もNo.2の継手ありアンカボルト30も共に、一本目アンカボルト長l1に関する重複反射波の起生状況となり、継手あり、なしの形状区別を判別することができない。
【0084】
この実施形態3では、溶接継手29があるアンカボルト30か、または溶接継手29がないアンカボルト30かを区別できるように成したものであって、反射波の低周波数領域(20kHz〜120kHz)における振動数(卓越振動数)が、一本物アンカボルト30と継手ありアンカボルト30とで異なるという未公知の物理現象に着目したものである。
【0085】
この実施形態3の構成を、図19に示す工程図を参照して、その作用と共に説明する。
ステップU1で、発信探触子31はアンカボルト30内に0〜5MHzの広帯域入力波(図8の入力波広帯域スペクトル参照)を発信する。
次のステップU2で、受信探触子32は0〜5MHzの広帯域受信波(図示せず)を受信する。この受信した広帯域受信波をフーリエ変換すると、ステップU3で広帯域受信波スペクトルsp1(図8参照)を求めることができる。
すなわち、演算手段であるCPU40の第1演算機能は、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて図8の左図に示すように広帯域受信波スペクトルsp1を求めるものである。
【0086】
次に、ステップU4で、図8の広帯域受信波スペクトルsp1から、図21の左図に示すような起生スペクトルA、Bを含む周波数帯域(20kHz〜120kHzの低周波数領域)のスペクトル群を抽出する。
このスペクトル群の抽出は、一般的なバンドパス法によるか、または、既述したスペクトル抽出関数A(f)(A(fK)=1.0)を用いるかの何れであってもよい。
【0087】
図21に示した最低周波数帯域の起生スペクトルAの領域(A領域)は、37kHz付近、詳しくは、25.3kHz〜49.2kHzの範囲であって次に低い周波数帯域の起生スペクトルBの領域(B領域)は、70kHz付近、詳しくは、60.9kHz〜91.9kHzの範囲である。
【0088】
次に、ステップU5(時系列波演算手段)で、起生スペクトルA、Bを含む周波数帯域(20〜120kHz)のスペクトル群をフーリエ逆変換して上記スペクトル群に対応する時系列波を、図21の右図に示すように求める。
【0089】
図21において、No.1、No.2は一本物アンカボルト30、No.3、No.4は継手ありアンカボルト30である。
また、図21には縦波Pの起生時刻thと、横波M1の起生時刻tM1と、横波M2の起生時刻tM2とを示すと共に、これらに対応するカーソルを点線で示している。この場合、アンカボルト30の長さが既値であれば各時刻th,tM1,tM2は計算で求めることができる。
【0090】
ここで、図21の起生時刻thは、図22(a)に示す一本物アンカボルト30の先端30bからの反射波(縦波P)の起生時刻であり、図21の起生時刻tM1は、図22(b)に示す継手部としての溶接面jで生ずる横波M1の起生時刻であり、図21の起生時刻tM2は、図22(c)に示すアンカボルト端面30aからの縦波入力時に自然発生する該アンカボルト30の長手方向の横波のその1本目先端30bからの反射波(横波M2)の起生時刻である。
【0091】
次に、ステップU6(TGC関数演算手段)で、起生時刻tM2に基づいて図23のTGC関数Z2を求めると共に、起生時刻tM1に基づいて図24のTGC関数Z3を求める。
さらに、このステップU6では、先のステップU5で求めた時系列波(図21の右図参照)にTGC関数Z2,Z3(図23、図24の右図参照)を乗じ、さらに次のステップU7で、フーリエ変換にてTGC関数Z2、Z3で切り出したA、B領域のスペクトルを求める。
【0092】
このTGC関数Z2,Z3で切り出したA、B領域のスペクトルを、図23、図24にそれぞれ示す。
図23、図24のスペクトル起生状況から明らかなように、No.1、No.2で示す一本物アンカボルト30のl1に関する反射波M1,M2(図23、図24に実線で示す波と、点線で示す波)は、A領域の相対的に周波数が低い側において、スペクトルが卓越しており、No.3、No.4で示す継手ありアンカボルト30のl1に関する反射波M1,M2(図23、図24に2点鎖線で示す波と、1点鎖線で示す波)は、B領域の相対的に周波数が高い側においてスペクトルが卓越している。
【0093】
なお、図23、図24から明らかなように、No.1、No.2で示す一本物アンカボルト30のl1に関する反射波M1,M2は、B領域で大きく減衰するので、このB領域でのスペクトル状況をメインとして判別し、A領域でのスペクトル状況をサブとして判別することができる。
【0094】
そこで、次のステップU8(判定手段)で、A、B何れの領域でスペクトルが卓越しているかを判定し、A領域で卓越していると判定された時には、次のステップU9に移行し、B領域で卓越していると判定された時には、別のステップU10に移行する。
【0095】
上述のステップU9(表示手段)で、スペクトルがA領域で卓越していることに対応して、表示装置41は探査対象のアンカボルトが一本物アンカボルト30である旨を表示し、一方、ステップU10(表示手段)では、スペクトルがB領域で卓越していることに対応して、表示装置41は探査対象のアンカボルトが継手ありアンカボルト30である旨を表示する。
このようにして、探査対象のアンカボルトが一本物アンカボルト30であるか、または、継手ありアンカボルト30であるかを、容易に探査することができる。
【0096】
[実施形態4]
上記実施形態3ではアンカボルト長が既知の場合について説明したが、この実施形態4ではアンカボルト長が未知の場合において、探査対象のアンカボルトが一本物アンカボルト30か、または、継手ありアンカボルト30かを探査するものである。
【0097】
この実施形態4では、図1で示したCPU40は上記アンカボルト30先端からの反射波の起生時刻をthとし、アンカボルト長手方向を伝達する横波と縦波との音速比(つまり、横波音速÷縦波音速=0.54)をε1として、アンカボルト30の継手部(溶接面j参照)で生ずる横波M1と、アンカボルト30端面からの超音波入力時に発生する長手方向の横波M2との起生時刻(tM1,tM2)を、
【数1】
【数2】
により計算する計算手段(図25のステップX2参照)と、上記広帯域受信波スペクトルsp5(図26参照)において、最低周波数帯域(25.3〜49.2kHz)の起生スペクトルをAとし、次に低い周波数帯域(60.9〜91.9kHz)の起生スペクトルをBとした時、起生スペクトルA、Bを含む周波数帯域(20kHz〜120kHz)のスペクトル群を抽出し、フーリエ逆変換にて上記スペクトル群に対応する時系列波を求める時系列演算手段(図25のステップX5参照)と、上記横波M1,M2の起生時刻tM1,tM2の値に基づいて所定の時系列関数としてのTGC関数をA、Bスペクトル群に対応する時系列波に乗ずることで、この時刻tM1,tM2より生ずる横波M1,M2を抽出し、この抽出波のスペクトルをフーリエ変換で求めるスペクトル演算手段(図25の各ステップX6,X7参照)とを兼ねる。
【0098】
そして、表示手段としての表示装置41は、M1,M2のスペクトルの双方で、AおよびB領域のスペクトルのうち、B領域のスペクトルのみが消滅する時、アンカボルトが一本物で溶接継手なしである旨を表示する一方、M1のスペクトルにおいて、AおよびB領域のスペクトルのうち、B領域スペクトルのみが消滅し、かつM2のスペクトルにおいて、AおよびB領域のスペクトルのうち、A領域スペクトルのみが消滅、または大きく減衰する時、アンカボルトが溶接継手を有する旨を表示する。
この実施形態4においても、図1〜図5で示した回路装置を用いる。
【0099】
次に、図25に示す工程図を参照して、アンカボルトの形状探査方法について説明する。
ステップX1で、発信探触子31はアンカボルト30内に0〜5MHzの広帯域入力波(図8の入力波広帯域スペクトル参照)を発信する。
次のステップX2で、受信探触子32は0〜5MHzの広帯域受信波α(図26参照)を受信する。この広帯域受信波αは表示装置41で表示されるので、反射波(P波)からその起生時刻thを読取る。
【0100】
そして、この起生時刻thから、上述の[数1]、[数2]に基づいて、横波M1の起生時刻tM1と、横波M2の起生時刻tM2とを計算で求め、メモリ43に読出し可能に記憶する。なお、図26の右図に示す広帯域受信波αのNo.1のものと、No.2のものとは、同一のものである。
上記広帯域受信波αをフーリエ変換すると、ステップX3で図26の左図に示す広帯域受信波スペクトルsp5を求めることができる。
【0101】
次に、ステップX4で、図26の広帯域受信波スペクトルsp5から、最低周波数帯域の起生スペクトルAと、次に低い周波数帯域の起生スペクトルBとを含むスペクトル群を抽出する(図27の左図参照)。
【0102】
図27で示す最低周波数帯域の起生スペクトルAの領域(A領域)は、37kHz付近、詳しくは、25.3kHz〜49.2kHzの範囲であって、次に低い周波数帯域の起生スペクトルBの領域(B領域)は、70kHz付近、詳しくは、60.9kHz〜91.9kHzの範囲であって、このスペクトル群の抽出は、一般的なバンドパス法であってもよく、または、既述したスペクトル抽出関数A(f)(A(fK)=1.0)を用いる抽出であってもよい。
【0103】
次に、ステップX5で、図27の左図に示す抽出スペクトルを、フーリエ変換して、上記スペクトル群に対応する時系列波(図27の右図参照)を求める。なお、図27の右図にNo.1、No.2で示す時系列波は同一のものである。
次に、ステップX6で、予めステップX2で計算した横波M1,M2の起生時刻tM1,tM2または、起生時刻の推定値t~M1,t~M2(なお、t~は数式においてtの上に“〜”を付された符号を表す。以下同じ。)に基づいて、図28、図29に示すTGC関数Z4,Z5を求める
また、同ステップX6で、上記TGC関数Z4,Z5を時系列波(図28、図29の右図参照)に乗ずることにより、上記推定値t~M1,t~M2より生ずる横波M1,M2を抽出し、抽出波のスペクトル(M1波のスペクトル、M2波のスペクトル)をフーリエ変換で求める(ステップX7参照)。
【0104】
図28、図29においては、M1波のスペクトルを実線で示し、M2波のスペクトルを点線で示している。また、図28は一本物アンカボルト30のスペクトル起生図、図29は継手ありアンカボルト30のスペクトル起生図であって、図28に示すように、M1、M2のスペクトルの双方で、AおよびB領域のスペクトルのうち、B領域のスペクトルが消滅する場合には、アンカボルトは一本物である。
【0105】
一方、図29に示すように、M1のスペクトルにおいて、B領域スペクトルが消滅し、かつ、M2のスペクトルにおいて、A領域スペクトルが消滅または大きく減衰する場合には、アンカボルトは継手を有するものである。
そこで、次のステップX8(判定手段)で、A、B両領域のスペクトル状況を判定し、M1波、M2波のスペクトルの双方がB領域で消滅していると判定された場合(図28に相当)には、次のステップX9に移行し、B領域でM1波が消滅し、かつ、A領域でM2波が消滅または大きく減衰していると判定された場合(図29に相当)には、別のステップX10に移行する。
【0106】
上述のステップX9(表示手段)で、M1波、M2波のスペクトルの双方がB領域で消滅していることに対応して、表示装置41は探査対象のアンカボルトが一本物のアンカボルト30である旨を表示し、一方、ステップX10(表示手段)では、B領域でM1波が消滅し、かつA領域でM2波が消滅または大きく減衰していることに対応して、表示装置41は探査対象のアンカボルトが継手ありアンカボルト30である旨を表示する。
【0107】
このようにして、探査対象のアンカボルトが一本物アンカボルト30であるのか、または、継手ありアンカボルト30であるのかを、容易に探査することができる。
なお、図28、図29の対比から明らかなように、B領域においてM2波のスペクトル(同図の点線の波参照)が大か小かで、一本物アンカボルト30か継手ありアンカボルト30かを判定してもよい。すなわち、一本物アンカボルト30の場合には、図28に示すようにB領域でそのスペクトルが消滅する一方、継手ありアンカボルト30の場合には、図29に示すようにB領域でそのスペクトルは大きな強度を有するので、この方法により簡易に判定することも可能である。
【0108】
なお、図28、図29で示したTGC関数Z4、Z5に代えて、図30、図31に示す略台形波の如きTGC関数Z6、Z7を用いてもよい。図30は図28に相当する一本物アンカボルト30のスペクトル起生図であり、図31は図29に相当する継手ありアンカボルト30のスペクトル起生図であって、図25の工程図に基づく処理内容については同一であるから、その詳しい説明を省略する。
【0109】
このように、図25〜図31で示した実施形態4においては、上記アンカボルト30先端からの反射波の起生時刻をth(図26参照)とし、アンカボルト30長手方向を伝達する横波と縦波との音速比をε1(具体的にはε1=0.54)として、アンカボルト30の継手部(溶接面j参照)で生ずる横波M1と、アンカボルト端面30aからの超音波入力時に発生する長手方向の横波M2との起生時刻(tM1,tM2)を、
【数1】
【数2】
により計算する計算手段(ステップX2参照)と、上記広帯域受信波スペクトルsp5(図26参照)において、最低周波数帯域の起生スペクトルをAとし、次に低い周波数帯域の起生スペクトルをBとした時、起生スペクトルA、Bを含む周波数帯域(20kHz〜120kHz)のスペクトル群を抽出(図27の左図参照)し、フーリエ逆変換にて上記スペクトル群に対応する時系列波(図27の右図参照)を求める時系列演算手段(ステップX5参照)と、上記横波M1,M2の起生時刻tM1,tM2の値に基づいて所定の時系列関数(TGC関数Z4,Z5またはTGC関数Z6,Z7参照)をA、Bスペクトル群に対応する時系列波に乗ずることで、この時刻tM1,tM2より生ずる横波M1,M2を抽出し、この抽出波のスペクトル(図28、図29の左図参照)をフーリエ変換で求めるスペクトル演算手段(ステップX6,X7参照)とを備え、M1,M2のスペクトルの双方で、AおよびB領域のスペクトルのうち、B領域のスペクトルのみが消滅する時(図28参照)、アンカボルト30が一本物で溶接継手なしと判断(判定手段としてのステップX8参照)する一方、M1のスペクトルにおいて、AおよびB領域のスペクトルのうち、B領域スペクトルのみが消滅し、かつM2のスペクトルにおいて、AおよびB領域のスペクトルのうち、A領域スペクトルのみが消滅、または大きく減衰する時(図29参照)、アンカボルト30が溶接継手ありと判断(判定手段としてのステップX8参照)するものである。
【0110】
この実施形態においては、上述の最低周波数帯域(A領域)は37kHz付近の25.3kHz〜49.2kHzに設定し、次に低い周波数帯域(B領域)は70kHz付近の60.9kHz〜91.9kHzに設定しているが、この数値に限定されるものではない。
【0111】
この構成によれば、計算手段(ステップX2参照)は、上記[数1]、[数2]に基づいて横波M1,M2の起生時刻tM1,tM2を計算し、時系列波演算手段(ステップX5参照)は、起生スペクトルA、Bを含む周波数帯域(20kHz〜120kHz)のスペクトル群を抽出し、フーリエ逆変換にて上記スペクトル群に対応する時系列波を求め、スペクトル演算手段(ステップX6,X7参照)は、横波M1、M2の起生時刻tM1,tM2の値に基づいて所定の時系列関数(TGC関数)をA、Bスペクトル群に対応する時系列波に乗ずることで、この時刻tM1,tM2より生ずる横波M1,M2を抽出し、この抽出波のスペクトル(M1波のスペクトル、M2波のスペクトル)(図28、図29参照)をフーリエ変換で求めるので、M1、M2のスペクトルの双方で、B領域のスペクトルのみが消滅する場合(図28参照)には、アンカボルト30が一本物で溶接継手なしと判断することができ、一方、M1のスペクトルにおいて、B領域スペクトルのみが消滅し、かつM2のスペクトルにおいてA領域スペクトルのみが消滅、または大きく衰退する場合(図29参照)には、アンカボルト30が溶接継手ありと判断することができる。
【0112】
この結果、計測対象(探査対象)のアンカボルト30が、一本物で溶接継手のないアンカボルトか、または、溶接継手のあるアンカボルトかを判断することができる。
【0113】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の超音波を発信する探触子は、実施形態の発信探触子31に対応し、
以下同様に、
受信する探触子は、受信探触子32に対応し、
超音波の発信、受信を共用する探触子は、探触子21に対応し、
演算手段は、CPU40に対応し、
第1の工程は、ステップS1,S2に対応し、
第2の工程は、ステップS2,S3に対応し、
第3の工程は、ステップS4,S5に対応し、
第4の工程は、ステップS6に対応し、
関数作成手段は、ステップQ5に対応し、
スペクトル演算手段は、ステップQ6,Q7に対応し、
計算手段は、ステップX2に対応し、
時系列波演算手段は、ステップX5に対応し、
スペクトル演算手段は、ステップX6,X7に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0114】
21…探触子
30…アンカボルト
31…発信探触子
32…受信探触子
40…CPU(演算手段)
S1,S2…第1の工程
S2,S3…第2の工程
S4,S5…第3の工程
S6…第4の工程
Q5…関数作成手段
Q6,Q7…スペクトル演算手段
X2…計算手段
X5…時系列波演算手段
X6,X7…スペクトル演算手段
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリート構造物にその一部が埋込まれたアンカボルトの形状を探査するようなアンカボルトの形状探査方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路橋梁や新幹線橋梁など過去に建設された運用途上にあるコンクリート構造物の数は膨大である。
近年のいくつかの大地震でのコンクリート構造物の破損、崩壊に関連して、これらコンクリート構造物の耐震補強および保守保全が、社会的に急務の情勢となっている。
【0003】
このような背景下において、構造物の多岐にわたる保守保全業務を行なう上で、必要な検討項目の一つとして、既設コンクリート橋梁の場合、梁桁と橋台との緊結に必要な構造要素としてのアンカボルトが構造的に適切に施行されているか否かの非破壊検査が必要となる。
【0004】
従来のアンカボルトの形状探査方法およびその装置は次の通りである。
すなわち、図32に示すように、2.5MHz前後の中心周波数の狭帯域超音波(狭帯域波)を発信および受信する共用探触子を備えた超音波装置で、コンクリート80内に埋込まれたアンカボルト81を探査している。なお、図32において、82は鉄板などの支持金具である。
【0005】
図32に示す入力波と受信波の波形を図33に示す。
図33(a)に示すように入力波のスペクトルは、中心周波数が2.5MHz前後の狭帯域波であり、1波程度のパルス波である。受信波は、入力スペクトルに対応した狭帯域スペクトルの波(同図bの受信波スペクトル参照)となる。図33(b)の左図に示すように、受信波の時系列波は、パルス状の波が等時間th毎に生ずる波となる。
【0006】
このパルス状の連続して生ずる波の意味するところを、図34を参照して説明する。
図34の上段は、アンカボルト81の端部(上端)からの超音波入力時、コンクリート80内に埋込まれたアンカボルト81の先端(下端)からの反射波が、繰返し重複反射する様子を示している。
図34の下段は、この重複反射波が時間th毎に、パルス状に生ずる状況を示している。
【0007】
ここで上記時間thは、アンカボルト81の長手方向反射時間つまり、反射波が起生する時間μsecであって、音速をVp(mm/μsec)、アンカボルト81の長さlT(mm)とすると、次の[数3]で求めることができる。
【数3】
上記[数3]からアンカボルト長lTを求めることも可能となる。
【0008】
一方、アンカボルト81のコンクリート80内への埋込み時、求められる施工上の構造基準は、そのアンカボルト81の直径ΦAおよびコンクリート80に埋込まれる長さlAの規定であって、直径ΦAと長さlAとの関係は次の[数4]で示すことができる。
【数4】
但し、Kは係数
これにより、既設コンクリート構造物でのアンカボルト長が従来技術に基づいて超音波装置にて探査されている。
【0009】
アンカボルト81の形状が全て図35(a)に示す直線状で正常なものであれば、特に、問題は生じないが、20〜30年前のコンクリート構造物では、構造的要因や施工時の何等かの要因により、図35(b)、(c)、(d)に示すようなアンカボルト81の形状が存在し、これが問題となる。
【0010】
図35(b)に示すアンカボルト81は溶接面で溶接継手83が接続されたもので、図35(c)に示すアンカボルト81は図示のように湾曲したもので、図35(d)に示すアンカボルト81はその先端(下端)が先鋭に尖ったものである。
図35(a)に示す正常な直線アンカボルト81の場合には、図34に示す重複反射波を得ることができるので、次の[数5]によりアンカボルト長lT(総長さ)を求めることができる。
【数5】
なお、一般的にVp=5900m/secである。
しかしながら、図35(b)に示す溶接継手83を有するアンカボルト81の場合には、溶接継手83を除くアンカボルト81のみの長さl1が求められ、図35(c)に示す湾曲アンカボルト81、同図(d)に示す先端先鋭アンカボルト81の場合には、図34に示す重複反射の出現のみならず、1回目の反射波の起生も得られない。
【0011】
これは、従来の超音波装置の探触子による入力波が、2.5MHz前後の狭帯域波であり、周波数が2.5MHzと相対的に高いため、超音波がアンカボルト内に伝達する経緯の中で衰退が大きくなり、特に、湾曲アンカボルト81や先端先鋭アンカボルト81の場合には、その減衰量が倍加することに起因するものと推考される。
さらに、建設後20〜30年以上が経過するコンクリート構造物のアンカボルト81は、図36に示すように、コンクリート80に接するアンカボルト81の長手方向側面が、腐食84している場合が多々存在する。
【0012】
この腐食84が構造物の安全性に対しては影響を与えない程度であっても、アンカボルト81の長手方向での超音波伝達挙動が大きく変動し、これに起因して図34で示す重複反射波の起生が得られない場合がある。
【0013】
図36の右図に重複反射波の起生が得られない場合の受信波を模式的に示す。
図36において、アンカボルト81の総長さlTに冠するアンカボルト長1回目の反射波の起生時刻の値をthとすると、腐食84の存在で生ずる波はthの1/2程度の起生時刻で起生するため、これら両者の波が混在する所謂混在波により、腐食84の存在で生ずる波と、本来の反射波との識別が困難となり、アンカボルト長に関する重複反射の起生を確保することが不可で、アンカボルト81の分析および計測が不可能となる。
【0014】
図36の左図に示す直線アンカボルト81においても、このような分析不能が生ずるので、まして図35(b)、(c)、(d)に示す溶接継手ありアンカボルト81、湾曲アンカボルト81、先端先鋭アンカボルト81において腐食を伴う場合にあっては分析、計測が全く不可能となる。
【0015】
ところで、特許文献1には被探知体としてのコンクリート材に対して超音波を入力することで、該被探知体の内部構造を探知する超音波探知方法およびその装置が開示されているが、2.5MHzの狭帯域超音波が用いられている関係上、この特許文献1に開示されたものを、アンカボルトの形状探査に適用しても、上述同様の問題点が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第4050470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
そこで、この発明は、アンカボルト端面より広帯域超音波を発信し、同一端面で広帯域超音波を受信し、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルを求め、該広帯域受信波スペクトルより中心周波数をfKとする狭帯域スペクトルを抽出して、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求め、上記時系列波よりアンカボルト先端からの反射波の起生を求めることにより、アンカボルトの長手方向側面に腐食があっても、fKを徐々に小さくし、アンカボルトの腐食進行の度合や形状(湾曲、先端先鋭)による超音波伝達経緯中の減衰の影響を受けにくい相対的に低い周波数に基づいて時系列波を求めるので、上記反射波の起生を確保することができ、アンカボルトの形状探査に寄与することができるアンカボルトの形状探査方法およびその装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明によるアンカボルトの形状探査装置は、超音波を発信する探触子と受信する探触子、または超音波の発信、受信を共用する探触子を備え、コンクリート構造物にその一部が埋込まれたアンカボルトの形状を探査するアンカボルトの形状探査装置であって、上記アンカボルト端面より広帯域超音波を発信し、同一端面で広帯域超音波を受信し、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルを求める第1演算機能と、該広帯域受信波スペクトルより中心周波数をfKとする狭帯域スペクトルを抽出して、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求める第2演算機能と、を備えた演算手段を設け、上記時系列波よりアンカボルト先端からの反射波の起生を求めるものである。
【0019】
上述の発信および受信される広帯域超音波は、0〜5MHzの全ての周波数帯域で成分をもつ広帯域成分波が望ましい。
また、上述の中心周波数はfK=2.5MHzを初期の最大値とし、fK=1.25MHz、fK=0.99MHzまたはそれ以下の任意の周波数に設定することができる。
【0020】
上記構成によれば、演算手段の第1演算機能は、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルを求め、演算手段の第2演算機能は、広帯域受信波スペクトルより中心周波数をfKとする狭帯域スペクトルを抽出して、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求めるので、上記時系列波よりアンカボルト先端からの反射波の起生を求めることができる。
【0021】
このため、アンカボルトの長手方向側面に腐食があっても、中心周波数fKを徐々に小さくし、アンカボルトの腐食進行の度合や形状による超音波伝達経緯中の減衰の影響を受けにくい相対的に低い周波数に基づいて時系列波を求めるので、上記反射波の起生を確保することができて、アンカボルトの形状探査に寄与することができる。
【0022】
この発明の一実施態様においては、上記アンカボルトの先端からの反射波の起生時刻thに基づいて時系列関数を作成する関数作成手段と、上記広帯域受信波に時系列関数を乗じて、アンカボルト長さに関する反射波のスペクトルをフーリエ変換にて求めるスペクトル演算手段とを設け、所定の周波数以上の帯域でスペクトルが林立する時、直線アンカボルトと判定し、林立しない時、湾曲アンカボルトと判定するものである。
上述の所定の周波数は、例えば、0.45MHzまたは0.5357MHzに設定してもよい。
【0023】
上記構成によれば、関数作成手段は、アンカボルトの先端からの反射波の起生時刻thに基づいて時系列関数(TGC関数)を作成し、スペクトル演算手段は、上記広帯域受信波に時系列関数を乗じて、アンカボルト長さに関する反射波のスペクトルをフーリエ変換にて求めるので、上記所定の周波数以上の帯域でスペクトルが林立する場合には、直線アンカボルトと判定し、林立しない場合には、湾曲アンカボルトと判定することができる。
この結果、計測対象(探査対象)のアンカボルトが直線アンカボルトか、または、湾曲アンカボルトかを判断することができる。
【0024】
この発明の一実施態様においては、上記アンカボルト先端からの反射波の起生時刻をthとし、アンカボルト長手方向を伝達する横波と縦波との音速比をε1として、アンカボルトの継手部で生ずる横波M1と、アンカボルト端面からの超音波入力時に発生する長手方向の横波M2との起生時刻(tM1,tM2)を、
【数1】
【数2】
により計算する計算手段と、上記広帯域受信波スペクトルにおいて、最低周波数帯域の起生スペクトルをAとし、次に低い周波数帯域の起生スペクトルをBとした時、起生スペクトルA、Bを含む周波数帯域のスペクトル群を抽出し、フーリエ逆変換にて上記スペクトル群に対応する時系列波を求める時系列演算手段と、上記横波M1,M2の起生時刻tM1,tM2の値に基づいて所定の時系列関数をA、Bスペクトル群に対応する時系列波に乗ずることで、この時刻tM1,tM2より生ずる横波M1,M2を抽出し、この抽出波のスペクトルをフーリエ変換で求めるスペクトル演算手段とを備え、M1,M2のスペクトルの双方で、AおよびB領域のスペクトルのうち、B領域のスペクトルのみが消滅する時、アンカボルトが一本物で溶接継手なしと判断する一方、M1のスペクトルにおいて、AおよびB領域のスペクトルのうち、B領域スペクトルのみが消滅し、かつM2のスペクトルにおいて、AおよびB領域のスペクトルのうち、A領域スペクトルのみが消滅、または大きく減衰する時、アンカボルトが溶接継手ありと判断するものである。
上述の最低周波数帯域(A領域)は37kHz付近の25.3kHz〜49.2kHzに設定してもよく、次に低い周波数帯域(B領域)は70kHz付近の60.9kHz〜91.9kHzに設定してもよい。
【0025】
上記構成によれば、上記計算手段は、上記[数1]、[数2]に基づいて横波M1、M2の起生時刻tM1,tM2を計算し、時系列波演算手段は、起生スペクトルA、Bを含む周波数帯域のスペクトル群を抽出し、フーリエ逆変換にて上記スペクトル群に対応する時系列波を求め、スペクトル演算手段は、横波M1、M2の起生時刻tM1,tM2の値に基づいて所定の時系列関数をA、Bスペクトル群に対応する時系列波に乗ずることで、この時刻tM1,tM2より生ずる横波M1、M2を抽出し、この抽出波のスペクトル(M1波のスペクトル、M2波のスペクトル)をフーリエ変換で求めるので、M1、M2のスペクトルの双方で、B領域のスペクトルのみが消滅する場合には、アンカボルトが一本物で溶接継手なしと判断することができ、一方、M1のスペクトルにおいて、B領域スペクトルのみが消滅し、かつM2のスペクトルにおいてA領域スペクトルのみが消滅、または大きく衰退する場合には、アンカボルトが溶接継手ありと判断することができる。
この結果、計測対象(探査対象)のアンカボルトが、一本物で溶接継手のないアンカボルトか、または、溶接継手のあるアンカボルトかを判断することができる。
【0026】
この発明によるアンカボルトの形状探査方法は、超音波を発信する探触子と受信する探触子、または超音波の発信、受信を共用する探触子を備え、コンクリート構造物にその一部が埋込まれたアンカボルトの形状を探査するアンカボルトの形状探査方法であって、上記アンカボルト端面より広帯域超音波を発信し、同一端面で広帯域超音波を受信する第1の工程と、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルを求める第2の工程と、上記広帯域受信波スペクトルより中心周波数fKとする狭帯域スペクトルを抽出して、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求める第3の工程と、上記時系列波から、アンカボルト先端からの反射波の起生を求める第4の工程と、を備えたものである。
【0027】
上述の発信および受信される広帯域超音波は、0〜5MHzの全ての周波数帯域で成分をもつ広帯域成分波が望ましい。
また、上述の中心周波数はfK=2.5MHzを初期の最大値とし、fK=1.25MHz、fK=0.99MHzまたはそれ以下の任意の周波数に設定することができる。
【0028】
上記構成によれば、第1の工程で、アンカボルト端面より広帯域超音波を発信し、同一端面で広帯域超音波を受信する。次の第2の工程で、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルを求める。次の第3の工程で、上記広帯域受信波スペクトルより中心周波数をfKとする狭帯域スペクトルを抽出して、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求める。次の第4の工程で、上記時系列波から、アンカボルト先端からの反射波の起生を求める。
このため、アンカボルトの長手方向側面に腐食があっても、中心周波数fKを徐々に小さくし、アンカボルトの腐食進行の度合や形状による超音波伝達経緯中の減衰の影響を受けにくい相対的に低い周波数に基づいて時系列波を求めるので、上記反射波の起生を確保することができて、アンカボルトの形状探査に寄与することができる。
【発明の効果】
【0029】
この発明によれば、アンカボルト端面より広帯域超音波を発信し、同一端面で広帯域超音波を受信し、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルを求め、該広帯域受信波スペクトルより中心周波数をfKとする狭帯域スペクトルを抽出して、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求め、上記時系列波よりアンカボルト先端からの反射波の起生を求めるように構成したので、アンカボルトの長手方向側面に腐食があっても、中心周波数fKを徐々に小さくし、アンカボルトの腐食進行の度合や形状(湾曲、先端先鋭)による超音波伝達経緯中の減衰の影響を受けにくい相対的に低い周波数に基づいて時系列波を求めるので、上記反射波の起生を確保することができ、アンカボルトの形状探査に寄与することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のアンカボルトの形状探査方法に用いる形状探査装置のブロック図
【図2】発信探触子の説明図
【図3】発信探触子のステップ型電圧発生器の説明図
【図4】受信探触子の説明図
【図5】広帯域超音波の説明図
【図6】(a)は発信探触子と受信探触子とを用いる場合の説明図、(b)は発信、受信を共用する探触子を用いる場合の説明図
【図7】第1実施形態の工程図
【図8】形状探査に用いる広帯域入力波スペクトルと広帯域受信波スペクトルの説明図
【図9】スペクトル抽出関数の説明図
【図10】(a)は従来の2.5MHz狭帯域スペクトルの時系列波、(b)は本実施形態の1.25MHz狭帯域スペクトルの時系列波、(c)は本実施形態の0.99MHz狭帯域スペクトルの時系列波を示す波形図
【図11】(a)は直線アンカボルトの説明図、(b)〜(d)は湾曲アンカボルトの説明図
【図12】比較例のアンカボルトの形状探査装置による受信波形図
【図13】(a)は2.5MHz超音波のアンカボルト長手方向の伝達を示す説明図、(b)は1.25MHz超音波のアンカボルト長手方向の伝達を示す説明図
【図14】第2実施形態の工程図
【図15】フーリエ逆変換で時系列波を求める時の波形図
【図16】フーリエ逆変換で時系列波を求める時の波形図
【図17】フーリエ変換で反射波のスペクトルを求める時の波形図
【図18】(a)は一本物アンカボルトの説明図、(b)は溶接継手ありアンカボルトの説明図
【図19】第3実施形態の工程図
【図20】一本物アンカボルトと継手ありアンカボルトとの反射波の起生状況の差異を示す説明図
【図21】フーリエ逆変換で時系列波を求める時の波形図
【図22】(a)は縦波Pの起生を示す説明図、(b)は横波M1の起生を示す説明図、(c)は横波M2の起生を示す説明図
【図23】フーリエ変換でM2波のA、B領域のスペクトルを求める時の波形図
【図24】フーリエ変換でM1波のA、B領域のスペクトルを求める時の波形図
【図25】第4実施形態の工程図
【図26】フーリエ変換で広帯域受信波スペクトルを求める時の波形図
【図27】フーリエ逆変換で時系列波を求める時の波形図
【図28】フーリエ変換で一本物アンカボルトのA、B領域のスペクトルを求める時の波形図
【図29】フーリエ変換で継手ありアンカボルトのA、B領域のスペクトルを求める時の波形図
【図30】フーリエ変換で一本物アンカボルトのA、B領域のスペクトルを求める時の波形図
【図31】フーリエ変換で継手ありアンカボルトのA、B領域のスペクトルを求める時の波形図
【図32】従来のアンカボルトの形状探査を示す説明図
【図33】(a)は従来の2.5MHz狭帯域入力波を示す波形図、(b)は従来の2.5MHz狭帯域受信波を示す波形図
【図34】受信波形状とアンカボルト長手方向の重複反射を示す説明図
【図35】(a)は正常な直線アンカボルトの説明図、(b)は継手ありアンカボルトの説明図、(c)は湾曲アンカボルトの説明図、(d)は先端先鋭アンカボルトの説明図
【図36】アンカボルト表面に腐食がある場合の受信波の状態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0031】
[実施形態1]
この発明の一実施形態を以下図面に基づいて詳述する。
図面はアンカボルトの形状探査方法およびその装置を示すが、まず、図1を参照してアンカボルトの形状探査装置の構成について説明する。
【0032】
被探知体としてのアンカボルト30の表面(アンカボルト端面)に接触配置する発信探触子31と受信探触子32とを設けている。
上述の発信探触子31は広帯域超音波(例えば0〜5MHzの全ての周波数帯域で成分をもつ広帯域成分波)を発信するものであり、上述の受信探触子32は0〜5MHzの広帯域超音波を受信するものである。
【0033】
上述の発信探触子31には超音波発信装置の電流供給回路33から電流が供給され、この発信探触子31から超音波が発信してアンカボルト30内に入射する。
【0034】
また、受信探触子32が受信した超音波信号は解析装置34に入力されて解析される。
この解析装置34においては、受信探触子32の受信信号が増幅回路35により増幅された後、フィルタ回路36でフィルタリングを受けた信号がAD変換回路37(アナログ・デジタル変換回路)によってデジタル信号に変換され、ゲートアレイ38を介してCPU40に入力される。
【0035】
ハードディスク39には解析処理アプリケーションソフトウェアと、CPU40により演算処理された時系列データが保存される。ここで、上述のCPU40はフーリエ変換・フーリエ逆変換を行う制御手段(処理部)である。
【0036】
また、上述の解析結果は表示装置41にも入力されて表示される。この表示装置41は図10に示すような各種の波形を可視表示する表示手段である。
【0037】
さらに、必要な情報が入力手段としてのキーボードなどの入力装置42からCPU40に入力されるように構成している。メモリ43はCPU40が演算する際にデータを一時的に格納するために用いられる。また、CPU40からコントロール回路44に制御信号が出力され、コントロール回路44は増幅回路35、フィルタ回路36、AD変換回路37、ゲートアレイ38および電流供給回路33に作動指令信号を出力する。
【0038】
電流供給回路33は同軸ケーブル45を介して発信探触子31に接続されており、発信探触子31には図2に示すように、基盤化されたステップ型電圧発生器46と振動子47とが内蔵されている。
【0039】
ステップ型電圧発生器46には、図3に示すように、ステップ電圧駆動回路461とステップ電圧発生回路462とが設けられており、ステップ電圧駆動回路461で発生するステップ関数型電圧を振動子47に印加する。
【0040】
広帯域超音波をアンカボルト30に入力する都度、受信探触子32で受信波を得る。
この受信波は同軸ケーブル49を介して、解析装置34の増幅回路35へ電圧の時間変動データとして送られる。増幅回路35へ送られた時間変動データは、フィルタ回路36を介してAD変換回路37に達し、この電圧のアナログ量が該AD変換回路37によりデジタル量に変換され、ゲートアレイ38を介してCPU40に転送され、電圧デジタル値の時刻歴が表示装置41に表示される。
【0041】
自動的に、またはキーボードなどの入力装置42を用いた外部からの指示で、電圧の増幅または減幅およびローパス/ハイパスフィルタ処理の指令がCPU40に伝達され、CPU40はコントロール回路44を介して増幅回路35およびフィルタ回路36を制御する。
【0042】
図4に示すように、受信探触子32には漸減型ハイパスフィルタ回路50、増幅回路51および振動子52が内蔵されている。
【0043】
電流供給回路33はコントロール回路44により制御されて、所定の時間間隔で動作する。
【0044】
受信探触子32に内蔵された振動子52(図4参照)は広帯域超音波が入力する都度、アンカボルト30の音圧変化にともなって振動が励起する。この振動励起で振動子52に生じる電圧の時間変化が、受信探触子32内のフィルタ回路50および増幅回路51で1次処理される。
【0045】
図1の増幅回路35およびフィルタ回路36の制御が終了した段階で、CPU40の指示でコントロール回路44が動作し、ゲートアレイ38に受信波の加算処理を命令する。
【0046】
ゲートアレイ38は、AD変換回路37で得られる電圧に関する時刻歴デジタル量を、上記時刻歴を得る都度、指定回数加算する。そして、CPU40のコントロール下にて加算平均時刻歴を作成し、表示装置41にその時刻歴をリアルタイム表示する。
【0047】
フィルタ回路50,36および増幅回路51,35は受信探触子32と解析装置34との双方にそれぞれ内蔵されている。受信探触子32に内蔵されているハイパスフィルタ回路50および増幅回路51は受信波に対して1次処理を行なうものであり、解析装置34に内蔵されている増幅回路35とフィルタ回路36は、1次処理された受信波に対し、CPU40のコントロール下にて微調整するものである。この微調整は装置機能の高度化のために必要なものであるから、これら増幅回路35、フィルタ回路36は省略してもよい。
【0048】
次に、図5を参照してパルス型電圧積荷による超音波と、ステップ関数型電圧積荷による超音波の相違について説明する。
【0049】
図5(a)は振動子にパルス型電圧(30〜500V)を印加した場合のスペクトルを示し、この場合には同図に示すように振動子の厚さ方向共振振動数を中心周波数とする比較的狭帯域のスペクトルをもつ発信超音波を得ることになる(従来技術の狭帯域周波数に相当。)。
図5(b)は発信探触子31内の振動子47にステップ関数型電圧(30〜500V)を印加した場合のスペクトルを示し、この場合には同図に示すように共振振動数はもちろんのこと、これよりも低周波の成分も励起されたスペクトルとなり、本実施例の広帯域超音波は図5(b)による超音波を意味するものである。
【0050】
図6は、コンクリート20にその一部が埋込まれたアンカボルト30の形状を探査する場合の探触子の配置構造を示し、図6(a)に示すように、アンカボルト30の端面30aに0〜5MHzの広帯域超音波を発信する発信探触子31と、0〜5MHzの広帯域超音波を受信する受信探触子32とを配置して、形状探査を行なってもよく、または、図6(b)に示すように、アンカボルト30の端面30aに0〜5MHzの広帯域超音波の発信、受信を共用する探触子21を配置して、形状探査を行なってもよい。
【0051】
次に、図7に示す工程図を参照して、アンカボルトの形状探査方法について説明する。
【0052】
ステップS1で、発信探触子31はアンカボルト30内に0〜5MHzの広帯域入力波(図8の入力波広帯域スペクトル参照)を発信する。
次のステップS2で、受信探触子32は0〜5MHzの広帯域受信波(図示せず)を受信する。この受信した広帯域受信波をフーリエ変換すると、ステップS3で広帯域受信波スペクトルsp1(図8参照)を求めることができる。
すなわち、演算手段であるCPU40の第1演算機能は、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて図8の左図に示すように広帯域受信波スペクトルsp1を求めるものである。
【0053】
次に、ステップS4で、図8の広帯域受信波スペクトルsp1に、図9に示すスペクトル抽出関数A(f)(A(fK)=1.0)を乗じて、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波(図10参照)を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求める(ステップS5参照)。
【0054】
ここで、図9に示すスペクトル抽出関数A(f)(A(fK)=1.0)は、中心周波数をfKとし、所定値をfaとする時、次のように定義することができる。
f≦fK−faでA(f)=0.0
f=fKでA(f)=1.0
f≧fK+faでA(f)=0.0
fK−fa<f<fKでA(f)は増加関数
fK<f<fK+faでA(f)は減少関数
【0055】
この実施形態では、スペクトル抽出関数A(f)(A(fK)=1.0)の、中心周波数fKの初期値(最大値)を、従来例との対比を明確にする目的で、あえてfK=2.5MHzに設定し、広帯域受信波スペクトルsp1にこのスペクトル抽出関数A(f)を乗じて、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波(図10(a)参照)を求め(ステップS4〜S5参照)、図9に示すように中心周波数fKを徐々に小さくし、fK=1.25MHzの時、広帯域受信波スペクトルsp1にこのスペクトル抽出関数A(f)を乗じて、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波(図10(b)参照)を求め(ステップS4〜S5参照)、さらに中心周波数をfK=0.99MHzに小さくし、この時においても、広帯域受信波スペクトルsp1にこのスペクトル抽出関数A(f)を乗じて、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波(図10のc参照)を求め(ステップS4〜S5参照)るものである。
【0056】
換言すれば、中心周波数fKを徐々に小さくする毎にステップS4〜S5の処理を繰返し、図10(b)、図10(c)に示すような狭帯域スペクトルの時系列波を得るものである。
すなわち、演算手段であるCPU40の第2演算機能は、広帯域受信波スペクトルsp1より、中心周波数をfKとする狭帯域スペクトルを抽出して、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波(図10の(b)、(c)参照)を中心周波数fKを1.25MHz〜0.99MHzへ徐々に小さくしていく経緯の中で順次求めるものである。
【0057】
次にステップS6で、図10(b)、(c)に示す時系列波から、アンカボルト30先端からの反射波の起生を確保する。
つまり、図10(a)、(b)、(c)に示す時系列波形は、図1の表示装置41にリアルタイムで表示されるので、図10(a)においては反射波(e)の確認が不明であるが、図10(b)、(c)においては反射波g,hが明確に確認され、この反射波g,hが開始する瞬間を、作業者が表示装置41の画面を目視しながら、反射波g,hの起生時刻thとして推定することができる。
【0058】
このように、図10(b)、(c)に示す時系列波の反射波g,hから、その起生時刻thが推定できるので、[数5]に基づいてアンカボルト長lTを求めることができる。
【数5】
なお、図10(b)(c)に仮想線で示すラインiは、重み付けのラインであって、このラインiの高さを波形に乗算し、波形全体における振幅バランスの適性化を図るものである。
【0059】
このように、図1〜図10で示した実施形態1のアンカボルトの形状探査装置は、超音波を発信する探触子31と受信する探触子32、または超音波の発信、受信を共用する探触子21を備え、コンクリート構造物にその一部が埋込まれたアンカボルト30の形状を探査するアンカボルトの形状探査装置であって、上記アンカボルト端面30aより0〜5MHzの広帯域超音波を発信し、同一端面30aで0〜5MHzの広帯域超音波を受信し、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルsp1(図8参照)を求める第1演算機能(COU40が備える機能)と、該広帯域受信波スペクトルsp1より中心周波数をfKとする狭帯域スペクトルを抽出して、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波(図10の(b)、(c)参照)を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求める第2演算機能(CPU40が備える機能)と、を備えた演算手段(CPU40参照)を設け、上記時系列波より、アンカボルト30先端からの反射波g,hの起生(起生時刻th参照)を求めるものである。
【0060】
この構成によれば、演算手段CPU40の第1演算機能は、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルsp1を求め、演算手段CPU40の第2演算機能は、広帯域受信波スペクトルsp1より中心周波数をfKとする狭帯域スペクトルを抽出して、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求めるので、上記時系列波(図10の(b)、(c)参照)よりアンカボルト30先端からの反射波g,hの起生を求めることができる。
【0061】
このため、アンカボルト30の長手方向側面に腐食があっても、中心周波数fKを徐々に小さくし、アンカボルト30の腐食進行の度合や形状による超音波伝達経緯中の減衰の影響を受けにくい相対的に低い周波数(実施形態1の1.25MHz、0.99MHz参照)に基づいて時系列波を求めるので、上記反射波g,hの起生を確保することができて、アンカボルト30の形状探査に寄与することができる。
【0062】
また、上記実施形態1のアンカボルトの形状探査方法は、超音波を発信する探触子31と受信する探触子32、または超音波の発信、受信を共用する探触子21を備え、コンクリート構造物にその一部が埋込まれたアンカボルト30の形状を探査するアンカボルトの形状探査方法であって、上記アンカボルト端面30aより0〜5MHzの広帯域超音波を発信し、同一端面30aで0〜5MHzの広帯域超音波を受信する第1の工程S1,S2と、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルsp1(図8参照)を求める第2の工程S2〜S3と、上記広帯域受信波スペクトルsp1より中心周波数fKとする狭帯域スペクトルを抽出して、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波(図10(b)、(c)参照)を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求める第3の工程S4〜S5と、上記時系列波(図10(b)、(c)参照)から、アンカボルト30先端からの反射波g,hの起生(起生時刻th参照)を求める第4の工程S6と、を備えたものである(図7参照)。
【0063】
この構成によれば、第1の工程S1、S2で、アンカボルト端面30aより0〜5MHzの広帯域超音波を発信し、同一端面30aで0〜5MHzの広帯域超音波を受信する。次の第2の工程S2〜S3で、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルsp1を求める。次の第3の工程S4〜S5で、上記広帯域受信波スペクトルsp1より中心周波数をfKとする狭帯域スペクトルを抽出して、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波(図10(b)、(c)参照)を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求める。次の第4の工程S6で、上記時系列波から、アンカボルト30先端からの反射波g,hの起生を求める。
【0064】
このため、アンカボルト30の長手方向側面に腐食があっても、中心周波数fKを徐々に小さくし、アンカボルトの腐食進行の度合や形状による超音波伝達経緯中の減衰の影響を受けにくい相対的に低い周波数(実施形態1の1.25MHz、0.99MHz参照)に基づいて時系列波(図10(b)、(c)参照)を求めるので、上記反射波g,hの起生を確保することができて、アンカボルト30の形状探査に寄与することができる。
【0065】
この実施形態1では、図1に示す表示装置41(表示手段)が、時系列波(図10(b)、(c)参照)よりアンカボルト30先端からの反射波g,hの起生を可視判定可能に表示する。
また、上記実施形態1で開示した中心周波数fK=1.25MHz、fK=0.99MHzの数値は一例であって、これに限定されるものではない。さらに、実施形態1の分析法は、溶接継手ありのアンカボルトの1本目のアンカボルト長、湾曲アンカボルト、先端先鋭アンカボルトの総長さ計測に適用することができる。
【0066】
[実施形態2]
次に、探査対象としてのアンカボルト30が湾曲しているか否かを探査する実施形態について説明する。
図11(a)は湾曲がない直線アンカボルト30を示し、図11(b)は湾曲が小さいアンカボルト30を示し、図11(c)は湾曲が中程度のアンカボルト30を示し、図11(d)は湾曲が大きいアンカボルト30を示す。図11(b)、(c)、(d)は何れも湾曲アンカボルトである。
【0067】
図12は比較例として、2.5MHz狭帯域波を図11(a)、(b)、(c)、(d)の各アンカボルト30に発信し、その反射波を受信した場合の受信波形であって、図12の左図は受信スペクトル波を示し、図12の右図はその時系列波を示す。
【0068】
図12にNo.1で示す直線アンカボルト30の場合には、受信スペクトルの強度が大きいので、同図の右図に時系列波で示すように、反射波としての縦波、横波M1、M2の起生が確認できる一方で、図12にNo.2、No.3、No.4で示す湾曲アンカボルト30の場合には、受信スペクトルの強度が過小であるため、図12の右図に時系列波で示すように、その何れにおいても縦波、横波M1、M2の起生を確認することができなかった。
【0069】
湾曲アンカボルト30の場合、その長手方向への超音波の伝達は図13(a)、(b)のようになる。図13(a)は周波数が相対的に高い2.5MHz以上の場合を示し、図13(b)は周波数が相対的に低い1.25MHz以下の場合を示す。
【0070】
図13(a)に示すように、周波数が2.5MHz以上の場合には、超音波の直進性、指向性が高く、アンカボルト30の湾曲部において同図に示すような超音波伝達挙動が生じ、これにより超音波が大きく減衰し、この結果、図12で既に示したように、縦波、横波M1、M2の起生が確認できなくなるものと推考される。
一方、図13(b)に示すように、周波数が1.25MHz以下の場合には、超音波の直進性、指向性が低くなり、その減衰率も小さくなることにより、アンカボルト長手方向での超音波伝達挙動は、同図のようになるものと推考される。
【0071】
実施形態2で示すアンカボルトの形状探査方法およびその装置においても、図1〜図5で示した回路装置を用いるが、この実施形態2の場合には、CPU40は、上記アンカボルト30の先端からの反射波の起生時刻th(図15、図16参照)に基づいて時系列関数(図17のTGC関数参照)を作成する関数作成手段(図14のステップQ5参照)と、上記広帯域受信波に時系列関数(TGC関数)を乗じて、アンカボルト長さに関する反射波のスペクトルをフーリエ変換にて求めるスペクトル演算手段(図14の各ステップQ6、Q7参照)とを兼ね、表示手段としての表示装置41は、所定の周波数(例えば、図17に示す0.45MHz以上)以上の帯域でスペクトルが林立する時、直線アンカボルトである旨を表示し、林立しない時、湾曲アンカボルトである旨を表示する。
【0072】
実施形態2のアンカボルトの形状探査方法を、図14に示す工程図を参照して、以下に詳述する。
ステップQ1で、発信探触子31はアンカボルト30内に0〜5MHzの広帯域入力波(図8の入力波広帯域スペクトル参照)を発信する。
次のステップQ2で、受信探触子32は0〜5MHzの広帯域受信波(図示せず)を受信する。この受信した広帯域受信波をフーリエ変換すると、ステップQ3で広帯域受信波スペクトルsp1(図8参照)を求めることができる。
すなわち、演算手段であるCPU40の第1演算機能は、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて図8の左図に示すように広帯域受信波スペクトルsp1を求めるものである。
【0073】
次に、ステップQ4で、図8の広帯域受信波スペクトルsp1に、図9に示すスペクトル抽出関数A(f)(A(fK)=1.0)を乗じ、例えばfK=1.25MHzの時には図15に示すような狭帯域スペクトルsp2を抽出し、fK=0.625MHzの時には図16に示すような狭帯域スペクトルsp3を抽出し、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルsp2,sp3の時系列波(図15、図16の右図参照)を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求める(ステップQ5、CPU40の第2演算機能参照)。
【0074】
しかも、このステップQ5では、図15、図16の右図に示す時系列波を求めるだけでなく、この時系列波が表示される表示装置41からlTに関する反射波の起生時刻thを読取り、この起生時刻thに基づいて図17の右図に示すようなTGC関数Z1を作成する。
つまり、起生時刻thの直後に特徴となる波が現れると推定して、TGC関数Z1を作成するものである。
【0075】
図17に示すTGC関数Z1は、Δtを所定値として次のように定義することができる。
0≦t≦th−ΔtでTGC(t)=0.0
t=thでTGC(t)=1.0
t≦th+ΔtでTGC(t)=0.0
th−Δt<t<thで、TGC(t)は増加関数
th<t<th+Δtで、TGC(t)は減少関数
次に、ステップQ6で、TGC関数Z1を広帯域受信波(ステップQ2参照)に乗じて、アンカボルト30の長さlTに関する反射波のスペクトルをフーリエ変換にて求めると(ステップQ7参照)、図17の左図のようになる。
【0076】
図17にNo.1で示す直線アンカボルトに30の場合には、所定の周波数以上の帯域、具体的には、0.45MHz以上の帯域でスペクトルが林立する一方、図17にNo.2〜No.4で示す湾曲アンカボルト30の場合には斯る帯域でスペクトルは林立しない。
【0077】
そこで、次のステップQ8(判定手段)で所定の周波数(0.45MHz)以上の帯域でスペクトルが林立するか否かを判定し、林立する場合(YES判定時)にはステップQ9に移行し、林立しない場合(NO判定時)には別のステップQ10に移行する。
上記ステップQ9(表示手段)で、所定の周波数(0.45MHz)以上の帯域でスペクトルが林立することに対応して、表示装置41は探査対象のアンカボルトが直線アンカボルト30である旨を表示し、一方、ステップQ10(表示手段)では、所定の周波数(0.45MHz)以上の帯域でスペクトルが林立しないことに対応して、表示装置41は探査対象のアンカボルトが湾曲アンカボルト30である旨を表示する。
【0078】
このように、図11〜図17で示した実施形態2のアンカボルトの形状探査装置は、上記アンカボルト30の先端30aからの反射波の起生時刻th(図15、図16の右図参照)に基づいて時系列関数としてのTGC関数(図17の右図参照)Z1を作成する関数作成手段(ステップQ5参照)と、上記広帯域受信波にTGC関数Z1を乗じて、アンカボルト長さlTに関する反射波のスペクトルをフーリエ変換にて求めるスペクトル演算手段(ステップQ6、Q7参照)とを設け、所定の周波数(0.45MHz)以上の帯域でスペクトルが林立する時、直線アンカボルトと判定し、林立しない時、湾曲アンカボルトと判定するものである(判定手段としてのステップQ8、表示手段としてのステップQ9、Q10参照)。
【0079】
この構成によれば、関数作成手段(ステップQ5)は、アンカボルト30の先端30aからの反射波の起生時刻th(図15、図16の右図参照)に基づいてTGC関数Z1(図17参照)を作成し、スペクトル演算手段(ステップQ6、Q7)は、上記広帯域受信波にTGC関数Z1を乗じて、アンカボルト長さlTに関する反射波のスペクトルをフーリエ変換にて求めるので、上記所定の周波数以上の帯域でスペクトルが林立する場合には、直線アンカボルト30と判定し、林立しない場合には、湾曲アンカボルト30と判定することができる。
この結果、計測対象(探査対象)のアンカボルトが直線アンカボルト30か、湾曲アンカボルト30かを判断することができる。
【0080】
[実施形態3]
次に、探査対象としてのアンカボルト30が、図18(a)に示すような一本物アンカボルト30か、または、同図(b)に示すような溶接面jを介して溶接継手29が接続された継手ありアンカボルト30かを探査する実施形態について説明する。
【0081】
実施形態1の構成で探査した場合には、その反射波は溶接面j位置の一本物のアンカボルト長l1に関するものとなり、この長さl1をアンカボルト総長さlTと誤認するので、実施形態3は、これを回避するように成したものである。
【0082】
図18(a)(b)に示すアンカボルト30に、発信探触子31と受信探触子32とを配置し、受信探触子32に得られる0〜5MHzの広帯域受信波を、フーリエ変換して、広帯域受信波スペクトルsp1(図8参照)を求めた後に、この広帯域受信波スペクトルsp1にスペクトル抽出関数A(f)(A(fK)=1.0)を乗じ、例えば、中心周波数fK=0.937MHzとした時には、図20の左図に示す狭帯域スペクトルsp4を抽出することができ、これをフーリエ逆変換すると、図20の右図に示す時系列波を得ることができる。
【0083】
図20の右図に、No.1一本物アンカボルト30の時系列波と、No.2継手ありアンカボルト30の時系列波とをそれぞれ示すように、これら両者はほとんど同一となって、継手あり、なしの区別が判別できない。すなわち、No.1の一本物アンカボルト30もNo.2の継手ありアンカボルト30も共に、一本目アンカボルト長l1に関する重複反射波の起生状況となり、継手あり、なしの形状区別を判別することができない。
【0084】
この実施形態3では、溶接継手29があるアンカボルト30か、または溶接継手29がないアンカボルト30かを区別できるように成したものであって、反射波の低周波数領域(20kHz〜120kHz)における振動数(卓越振動数)が、一本物アンカボルト30と継手ありアンカボルト30とで異なるという未公知の物理現象に着目したものである。
【0085】
この実施形態3の構成を、図19に示す工程図を参照して、その作用と共に説明する。
ステップU1で、発信探触子31はアンカボルト30内に0〜5MHzの広帯域入力波(図8の入力波広帯域スペクトル参照)を発信する。
次のステップU2で、受信探触子32は0〜5MHzの広帯域受信波(図示せず)を受信する。この受信した広帯域受信波をフーリエ変換すると、ステップU3で広帯域受信波スペクトルsp1(図8参照)を求めることができる。
すなわち、演算手段であるCPU40の第1演算機能は、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて図8の左図に示すように広帯域受信波スペクトルsp1を求めるものである。
【0086】
次に、ステップU4で、図8の広帯域受信波スペクトルsp1から、図21の左図に示すような起生スペクトルA、Bを含む周波数帯域(20kHz〜120kHzの低周波数領域)のスペクトル群を抽出する。
このスペクトル群の抽出は、一般的なバンドパス法によるか、または、既述したスペクトル抽出関数A(f)(A(fK)=1.0)を用いるかの何れであってもよい。
【0087】
図21に示した最低周波数帯域の起生スペクトルAの領域(A領域)は、37kHz付近、詳しくは、25.3kHz〜49.2kHzの範囲であって次に低い周波数帯域の起生スペクトルBの領域(B領域)は、70kHz付近、詳しくは、60.9kHz〜91.9kHzの範囲である。
【0088】
次に、ステップU5(時系列波演算手段)で、起生スペクトルA、Bを含む周波数帯域(20〜120kHz)のスペクトル群をフーリエ逆変換して上記スペクトル群に対応する時系列波を、図21の右図に示すように求める。
【0089】
図21において、No.1、No.2は一本物アンカボルト30、No.3、No.4は継手ありアンカボルト30である。
また、図21には縦波Pの起生時刻thと、横波M1の起生時刻tM1と、横波M2の起生時刻tM2とを示すと共に、これらに対応するカーソルを点線で示している。この場合、アンカボルト30の長さが既値であれば各時刻th,tM1,tM2は計算で求めることができる。
【0090】
ここで、図21の起生時刻thは、図22(a)に示す一本物アンカボルト30の先端30bからの反射波(縦波P)の起生時刻であり、図21の起生時刻tM1は、図22(b)に示す継手部としての溶接面jで生ずる横波M1の起生時刻であり、図21の起生時刻tM2は、図22(c)に示すアンカボルト端面30aからの縦波入力時に自然発生する該アンカボルト30の長手方向の横波のその1本目先端30bからの反射波(横波M2)の起生時刻である。
【0091】
次に、ステップU6(TGC関数演算手段)で、起生時刻tM2に基づいて図23のTGC関数Z2を求めると共に、起生時刻tM1に基づいて図24のTGC関数Z3を求める。
さらに、このステップU6では、先のステップU5で求めた時系列波(図21の右図参照)にTGC関数Z2,Z3(図23、図24の右図参照)を乗じ、さらに次のステップU7で、フーリエ変換にてTGC関数Z2、Z3で切り出したA、B領域のスペクトルを求める。
【0092】
このTGC関数Z2,Z3で切り出したA、B領域のスペクトルを、図23、図24にそれぞれ示す。
図23、図24のスペクトル起生状況から明らかなように、No.1、No.2で示す一本物アンカボルト30のl1に関する反射波M1,M2(図23、図24に実線で示す波と、点線で示す波)は、A領域の相対的に周波数が低い側において、スペクトルが卓越しており、No.3、No.4で示す継手ありアンカボルト30のl1に関する反射波M1,M2(図23、図24に2点鎖線で示す波と、1点鎖線で示す波)は、B領域の相対的に周波数が高い側においてスペクトルが卓越している。
【0093】
なお、図23、図24から明らかなように、No.1、No.2で示す一本物アンカボルト30のl1に関する反射波M1,M2は、B領域で大きく減衰するので、このB領域でのスペクトル状況をメインとして判別し、A領域でのスペクトル状況をサブとして判別することができる。
【0094】
そこで、次のステップU8(判定手段)で、A、B何れの領域でスペクトルが卓越しているかを判定し、A領域で卓越していると判定された時には、次のステップU9に移行し、B領域で卓越していると判定された時には、別のステップU10に移行する。
【0095】
上述のステップU9(表示手段)で、スペクトルがA領域で卓越していることに対応して、表示装置41は探査対象のアンカボルトが一本物アンカボルト30である旨を表示し、一方、ステップU10(表示手段)では、スペクトルがB領域で卓越していることに対応して、表示装置41は探査対象のアンカボルトが継手ありアンカボルト30である旨を表示する。
このようにして、探査対象のアンカボルトが一本物アンカボルト30であるか、または、継手ありアンカボルト30であるかを、容易に探査することができる。
【0096】
[実施形態4]
上記実施形態3ではアンカボルト長が既知の場合について説明したが、この実施形態4ではアンカボルト長が未知の場合において、探査対象のアンカボルトが一本物アンカボルト30か、または、継手ありアンカボルト30かを探査するものである。
【0097】
この実施形態4では、図1で示したCPU40は上記アンカボルト30先端からの反射波の起生時刻をthとし、アンカボルト長手方向を伝達する横波と縦波との音速比(つまり、横波音速÷縦波音速=0.54)をε1として、アンカボルト30の継手部(溶接面j参照)で生ずる横波M1と、アンカボルト30端面からの超音波入力時に発生する長手方向の横波M2との起生時刻(tM1,tM2)を、
【数1】
【数2】
により計算する計算手段(図25のステップX2参照)と、上記広帯域受信波スペクトルsp5(図26参照)において、最低周波数帯域(25.3〜49.2kHz)の起生スペクトルをAとし、次に低い周波数帯域(60.9〜91.9kHz)の起生スペクトルをBとした時、起生スペクトルA、Bを含む周波数帯域(20kHz〜120kHz)のスペクトル群を抽出し、フーリエ逆変換にて上記スペクトル群に対応する時系列波を求める時系列演算手段(図25のステップX5参照)と、上記横波M1,M2の起生時刻tM1,tM2の値に基づいて所定の時系列関数としてのTGC関数をA、Bスペクトル群に対応する時系列波に乗ずることで、この時刻tM1,tM2より生ずる横波M1,M2を抽出し、この抽出波のスペクトルをフーリエ変換で求めるスペクトル演算手段(図25の各ステップX6,X7参照)とを兼ねる。
【0098】
そして、表示手段としての表示装置41は、M1,M2のスペクトルの双方で、AおよびB領域のスペクトルのうち、B領域のスペクトルのみが消滅する時、アンカボルトが一本物で溶接継手なしである旨を表示する一方、M1のスペクトルにおいて、AおよびB領域のスペクトルのうち、B領域スペクトルのみが消滅し、かつM2のスペクトルにおいて、AおよびB領域のスペクトルのうち、A領域スペクトルのみが消滅、または大きく減衰する時、アンカボルトが溶接継手を有する旨を表示する。
この実施形態4においても、図1〜図5で示した回路装置を用いる。
【0099】
次に、図25に示す工程図を参照して、アンカボルトの形状探査方法について説明する。
ステップX1で、発信探触子31はアンカボルト30内に0〜5MHzの広帯域入力波(図8の入力波広帯域スペクトル参照)を発信する。
次のステップX2で、受信探触子32は0〜5MHzの広帯域受信波α(図26参照)を受信する。この広帯域受信波αは表示装置41で表示されるので、反射波(P波)からその起生時刻thを読取る。
【0100】
そして、この起生時刻thから、上述の[数1]、[数2]に基づいて、横波M1の起生時刻tM1と、横波M2の起生時刻tM2とを計算で求め、メモリ43に読出し可能に記憶する。なお、図26の右図に示す広帯域受信波αのNo.1のものと、No.2のものとは、同一のものである。
上記広帯域受信波αをフーリエ変換すると、ステップX3で図26の左図に示す広帯域受信波スペクトルsp5を求めることができる。
【0101】
次に、ステップX4で、図26の広帯域受信波スペクトルsp5から、最低周波数帯域の起生スペクトルAと、次に低い周波数帯域の起生スペクトルBとを含むスペクトル群を抽出する(図27の左図参照)。
【0102】
図27で示す最低周波数帯域の起生スペクトルAの領域(A領域)は、37kHz付近、詳しくは、25.3kHz〜49.2kHzの範囲であって、次に低い周波数帯域の起生スペクトルBの領域(B領域)は、70kHz付近、詳しくは、60.9kHz〜91.9kHzの範囲であって、このスペクトル群の抽出は、一般的なバンドパス法であってもよく、または、既述したスペクトル抽出関数A(f)(A(fK)=1.0)を用いる抽出であってもよい。
【0103】
次に、ステップX5で、図27の左図に示す抽出スペクトルを、フーリエ変換して、上記スペクトル群に対応する時系列波(図27の右図参照)を求める。なお、図27の右図にNo.1、No.2で示す時系列波は同一のものである。
次に、ステップX6で、予めステップX2で計算した横波M1,M2の起生時刻tM1,tM2または、起生時刻の推定値t~M1,t~M2(なお、t~は数式においてtの上に“〜”を付された符号を表す。以下同じ。)に基づいて、図28、図29に示すTGC関数Z4,Z5を求める
また、同ステップX6で、上記TGC関数Z4,Z5を時系列波(図28、図29の右図参照)に乗ずることにより、上記推定値t~M1,t~M2より生ずる横波M1,M2を抽出し、抽出波のスペクトル(M1波のスペクトル、M2波のスペクトル)をフーリエ変換で求める(ステップX7参照)。
【0104】
図28、図29においては、M1波のスペクトルを実線で示し、M2波のスペクトルを点線で示している。また、図28は一本物アンカボルト30のスペクトル起生図、図29は継手ありアンカボルト30のスペクトル起生図であって、図28に示すように、M1、M2のスペクトルの双方で、AおよびB領域のスペクトルのうち、B領域のスペクトルが消滅する場合には、アンカボルトは一本物である。
【0105】
一方、図29に示すように、M1のスペクトルにおいて、B領域スペクトルが消滅し、かつ、M2のスペクトルにおいて、A領域スペクトルが消滅または大きく減衰する場合には、アンカボルトは継手を有するものである。
そこで、次のステップX8(判定手段)で、A、B両領域のスペクトル状況を判定し、M1波、M2波のスペクトルの双方がB領域で消滅していると判定された場合(図28に相当)には、次のステップX9に移行し、B領域でM1波が消滅し、かつ、A領域でM2波が消滅または大きく減衰していると判定された場合(図29に相当)には、別のステップX10に移行する。
【0106】
上述のステップX9(表示手段)で、M1波、M2波のスペクトルの双方がB領域で消滅していることに対応して、表示装置41は探査対象のアンカボルトが一本物のアンカボルト30である旨を表示し、一方、ステップX10(表示手段)では、B領域でM1波が消滅し、かつA領域でM2波が消滅または大きく減衰していることに対応して、表示装置41は探査対象のアンカボルトが継手ありアンカボルト30である旨を表示する。
【0107】
このようにして、探査対象のアンカボルトが一本物アンカボルト30であるのか、または、継手ありアンカボルト30であるのかを、容易に探査することができる。
なお、図28、図29の対比から明らかなように、B領域においてM2波のスペクトル(同図の点線の波参照)が大か小かで、一本物アンカボルト30か継手ありアンカボルト30かを判定してもよい。すなわち、一本物アンカボルト30の場合には、図28に示すようにB領域でそのスペクトルが消滅する一方、継手ありアンカボルト30の場合には、図29に示すようにB領域でそのスペクトルは大きな強度を有するので、この方法により簡易に判定することも可能である。
【0108】
なお、図28、図29で示したTGC関数Z4、Z5に代えて、図30、図31に示す略台形波の如きTGC関数Z6、Z7を用いてもよい。図30は図28に相当する一本物アンカボルト30のスペクトル起生図であり、図31は図29に相当する継手ありアンカボルト30のスペクトル起生図であって、図25の工程図に基づく処理内容については同一であるから、その詳しい説明を省略する。
【0109】
このように、図25〜図31で示した実施形態4においては、上記アンカボルト30先端からの反射波の起生時刻をth(図26参照)とし、アンカボルト30長手方向を伝達する横波と縦波との音速比をε1(具体的にはε1=0.54)として、アンカボルト30の継手部(溶接面j参照)で生ずる横波M1と、アンカボルト端面30aからの超音波入力時に発生する長手方向の横波M2との起生時刻(tM1,tM2)を、
【数1】
【数2】
により計算する計算手段(ステップX2参照)と、上記広帯域受信波スペクトルsp5(図26参照)において、最低周波数帯域の起生スペクトルをAとし、次に低い周波数帯域の起生スペクトルをBとした時、起生スペクトルA、Bを含む周波数帯域(20kHz〜120kHz)のスペクトル群を抽出(図27の左図参照)し、フーリエ逆変換にて上記スペクトル群に対応する時系列波(図27の右図参照)を求める時系列演算手段(ステップX5参照)と、上記横波M1,M2の起生時刻tM1,tM2の値に基づいて所定の時系列関数(TGC関数Z4,Z5またはTGC関数Z6,Z7参照)をA、Bスペクトル群に対応する時系列波に乗ずることで、この時刻tM1,tM2より生ずる横波M1,M2を抽出し、この抽出波のスペクトル(図28、図29の左図参照)をフーリエ変換で求めるスペクトル演算手段(ステップX6,X7参照)とを備え、M1,M2のスペクトルの双方で、AおよびB領域のスペクトルのうち、B領域のスペクトルのみが消滅する時(図28参照)、アンカボルト30が一本物で溶接継手なしと判断(判定手段としてのステップX8参照)する一方、M1のスペクトルにおいて、AおよびB領域のスペクトルのうち、B領域スペクトルのみが消滅し、かつM2のスペクトルにおいて、AおよびB領域のスペクトルのうち、A領域スペクトルのみが消滅、または大きく減衰する時(図29参照)、アンカボルト30が溶接継手ありと判断(判定手段としてのステップX8参照)するものである。
【0110】
この実施形態においては、上述の最低周波数帯域(A領域)は37kHz付近の25.3kHz〜49.2kHzに設定し、次に低い周波数帯域(B領域)は70kHz付近の60.9kHz〜91.9kHzに設定しているが、この数値に限定されるものではない。
【0111】
この構成によれば、計算手段(ステップX2参照)は、上記[数1]、[数2]に基づいて横波M1,M2の起生時刻tM1,tM2を計算し、時系列波演算手段(ステップX5参照)は、起生スペクトルA、Bを含む周波数帯域(20kHz〜120kHz)のスペクトル群を抽出し、フーリエ逆変換にて上記スペクトル群に対応する時系列波を求め、スペクトル演算手段(ステップX6,X7参照)は、横波M1、M2の起生時刻tM1,tM2の値に基づいて所定の時系列関数(TGC関数)をA、Bスペクトル群に対応する時系列波に乗ずることで、この時刻tM1,tM2より生ずる横波M1,M2を抽出し、この抽出波のスペクトル(M1波のスペクトル、M2波のスペクトル)(図28、図29参照)をフーリエ変換で求めるので、M1、M2のスペクトルの双方で、B領域のスペクトルのみが消滅する場合(図28参照)には、アンカボルト30が一本物で溶接継手なしと判断することができ、一方、M1のスペクトルにおいて、B領域スペクトルのみが消滅し、かつM2のスペクトルにおいてA領域スペクトルのみが消滅、または大きく衰退する場合(図29参照)には、アンカボルト30が溶接継手ありと判断することができる。
【0112】
この結果、計測対象(探査対象)のアンカボルト30が、一本物で溶接継手のないアンカボルトか、または、溶接継手のあるアンカボルトかを判断することができる。
【0113】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の超音波を発信する探触子は、実施形態の発信探触子31に対応し、
以下同様に、
受信する探触子は、受信探触子32に対応し、
超音波の発信、受信を共用する探触子は、探触子21に対応し、
演算手段は、CPU40に対応し、
第1の工程は、ステップS1,S2に対応し、
第2の工程は、ステップS2,S3に対応し、
第3の工程は、ステップS4,S5に対応し、
第4の工程は、ステップS6に対応し、
関数作成手段は、ステップQ5に対応し、
スペクトル演算手段は、ステップQ6,Q7に対応し、
計算手段は、ステップX2に対応し、
時系列波演算手段は、ステップX5に対応し、
スペクトル演算手段は、ステップX6,X7に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0114】
21…探触子
30…アンカボルト
31…発信探触子
32…受信探触子
40…CPU(演算手段)
S1,S2…第1の工程
S2,S3…第2の工程
S4,S5…第3の工程
S6…第4の工程
Q5…関数作成手段
Q6,Q7…スペクトル演算手段
X2…計算手段
X5…時系列波演算手段
X6,X7…スペクトル演算手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を発信する探触子と受信する探触子、または超音波の発信、受信を共用する探触子を備え、
コンクリート構造物にその一部が埋込まれたアンカボルトの形状を探査する
アンカボルトの形状探査装置であって、
上記アンカボルト端面より広帯域超音波を発信し、同一端面で広帯域超音波を受信し、
受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルを求める第1演算機能と、
該広帯域受信波スペクトルより中心周波数をfKとする狭帯域スペクトルを抽出して、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求める第2演算機能と、
を備えた演算手段を設け、
上記時系列波よりアンカボルト先端からの反射波の起生を求める
アンカボルトの形状探査装置。
【請求項2】
上記アンカボルトの先端からの反射波の起生時刻thに基づいて時系列関数を作成する関数作成手段と、
上記広帯域受信波に時系列関数を乗じて、アンカボルト長さに関する反射波のスペクトルをフーリエ変換にて求めるスペクトル演算手段とを設け、
所定の周波数以上の帯域でスペクトルが林立する時、直線アンカボルトと判定し、林立しない時、湾曲アンカボルトと判定する
請求項1記載のアンカボルトの形状探査装置。
【請求項3】
上記アンカボルト先端からの反射波の起生時刻をthとし、
アンカボルト長手方向を伝達する横波と縦波との音速比をε1として、
アンカボルトの継手部で生ずる横波M1と、アンカボルト端面からの超音波入力時に発生する長手方向の横波M2との起生時刻(tM1,tM2)を、
【数1】
【数2】
により計算する計算手段と、
上記広帯域受信波スペクトルにおいて、最低周波数帯域の起生スペクトルをAとし、
次に低い周波数帯域の起生スペクトルをBとした時、
起生スペクトルA、Bを含む周波数帯域のスペクトル群を抽出し、フーリエ逆変換にて上記スペクトル群に対応する時系列波を求める時系列演算手段と、
上記横波M1,M2の起生時刻tM1,tM2の値に基づいて所定の時系列関数をA、Bスペクトル群に対応する時系列波に乗ずることで、この時刻tM1,tM2より生ずる横波M1,M2を抽出し、
この抽出波のスペクトルをフーリエ変換で求めるスペクトル演算手段とを備え、
M1,M2のスペクトルの双方で、AおよびB領域のスペクトルのうち、B領域のスペクトルのみが消滅する時、アンカボルトが一本物で溶接継手なしと判断する一方、
M1のスペクトルにおいて、AおよびB領域のスペクトルのうち、B領域スペクトルのみが消滅し、かつ
M2のスペクトルにおいて、AおよびB領域のスペクトルのうち、A領域スペクトルのみが消滅、または大きく減衰する時、アンカボルトが溶接継手ありと判断する
請求項1記載のアンカボルトの形状探査装置。
【請求項4】
超音波を発信する探触子と受信する探触子、または超音波の発信、受信を共用する探触子を備え、
コンクリート構造物にその一部が埋込まれたアンカボルトの形状を探査する
アンカボルトの形状探査方法であって、
上記アンカボルト端面より広帯域超音波を発信し、同一端面で広帯域超音波を受信する第1の工程と、
受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルを求める第2の工程と、
上記広帯域受信波スペクトルより中心周波数fKとする狭帯域スペクトルを抽出して、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求める第3の工程と、
上記時系列波から、アンカボルト先端からの反射波の起生を求める第4の工程と、を備えたアンカボルトの形状探査方法。
【請求項1】
超音波を発信する探触子と受信する探触子、または超音波の発信、受信を共用する探触子を備え、
コンクリート構造物にその一部が埋込まれたアンカボルトの形状を探査する
アンカボルトの形状探査装置であって、
上記アンカボルト端面より広帯域超音波を発信し、同一端面で広帯域超音波を受信し、
受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルを求める第1演算機能と、
該広帯域受信波スペクトルより中心周波数をfKとする狭帯域スペクトルを抽出して、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求める第2演算機能と、
を備えた演算手段を設け、
上記時系列波よりアンカボルト先端からの反射波の起生を求める
アンカボルトの形状探査装置。
【請求項2】
上記アンカボルトの先端からの反射波の起生時刻thに基づいて時系列関数を作成する関数作成手段と、
上記広帯域受信波に時系列関数を乗じて、アンカボルト長さに関する反射波のスペクトルをフーリエ変換にて求めるスペクトル演算手段とを設け、
所定の周波数以上の帯域でスペクトルが林立する時、直線アンカボルトと判定し、林立しない時、湾曲アンカボルトと判定する
請求項1記載のアンカボルトの形状探査装置。
【請求項3】
上記アンカボルト先端からの反射波の起生時刻をthとし、
アンカボルト長手方向を伝達する横波と縦波との音速比をε1として、
アンカボルトの継手部で生ずる横波M1と、アンカボルト端面からの超音波入力時に発生する長手方向の横波M2との起生時刻(tM1,tM2)を、
【数1】
【数2】
により計算する計算手段と、
上記広帯域受信波スペクトルにおいて、最低周波数帯域の起生スペクトルをAとし、
次に低い周波数帯域の起生スペクトルをBとした時、
起生スペクトルA、Bを含む周波数帯域のスペクトル群を抽出し、フーリエ逆変換にて上記スペクトル群に対応する時系列波を求める時系列演算手段と、
上記横波M1,M2の起生時刻tM1,tM2の値に基づいて所定の時系列関数をA、Bスペクトル群に対応する時系列波に乗ずることで、この時刻tM1,tM2より生ずる横波M1,M2を抽出し、
この抽出波のスペクトルをフーリエ変換で求めるスペクトル演算手段とを備え、
M1,M2のスペクトルの双方で、AおよびB領域のスペクトルのうち、B領域のスペクトルのみが消滅する時、アンカボルトが一本物で溶接継手なしと判断する一方、
M1のスペクトルにおいて、AおよびB領域のスペクトルのうち、B領域スペクトルのみが消滅し、かつ
M2のスペクトルにおいて、AおよびB領域のスペクトルのうち、A領域スペクトルのみが消滅、または大きく減衰する時、アンカボルトが溶接継手ありと判断する
請求項1記載のアンカボルトの形状探査装置。
【請求項4】
超音波を発信する探触子と受信する探触子、または超音波の発信、受信を共用する探触子を備え、
コンクリート構造物にその一部が埋込まれたアンカボルトの形状を探査する
アンカボルトの形状探査方法であって、
上記アンカボルト端面より広帯域超音波を発信し、同一端面で広帯域超音波を受信する第1の工程と、
受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルを求める第2の工程と、
上記広帯域受信波スペクトルより中心周波数fKとする狭帯域スペクトルを抽出して、フーリエ逆変換にて狭帯域スペクトルの時系列波を、中心周波数fKを徐々に小さくしていく経緯の中で順次求める第3の工程と、
上記時系列波から、アンカボルト先端からの反射波の起生を求める第4の工程と、を備えたアンカボルトの形状探査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【公開番号】特開2011−13177(P2011−13177A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159735(P2009−159735)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(506258305)有限会社エッチアンドビーソリューション (5)
【出願人】(505398941)東日本高速道路株式会社 (66)
【出願人】(505398952)中日本高速道路株式会社 (94)
【出願人】(505398963)西日本高速道路株式会社 (105)
【出願人】(507194017)株式会社高速道路総合技術研究所 (33)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(506258305)有限会社エッチアンドビーソリューション (5)
【出願人】(505398941)東日本高速道路株式会社 (66)
【出願人】(505398952)中日本高速道路株式会社 (94)
【出願人】(505398963)西日本高速道路株式会社 (105)
【出願人】(507194017)株式会社高速道路総合技術研究所 (33)
【Fターム(参考)】
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