説明

アンダーシール及びリニアガイド装置

【課題】アンダーシールの脱落を確実に防止できるようにする。
【解決手段】リニアガイド装置のアンダーシール1は、ベアリングブロックがガイドレールに組み付けられた状態において、アンダーシール溝から取り外すことができ、かつアンダーシール溝へ取り付けることができる弾性材料のみで構成され、アンダーシール溝に挿通保持される端部3a,3bの側面一部3a1,3b1に、その挿通方向に延びアンダーシール溝の側面と接触する長尺の突起4を少なくとも1個設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアガイド装置のアンダーシール及びこれを備えたリニアガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、リニアガイド装置のアンダーシール及びこれを備えたリニアガイド装置が開示されている。
先ず、特許文献1にも開示されているが、一般に、リニアガイド(直動案内)装置10は、図16に示すように、ガイドレール20と、ベアリングブロック30と、ガイドレール20に設けられるレール側転動溝21とベアリングブロック30に設けられるベアリングブロック側転動溝31との間に転動自在に介装される転動体(ボール)40と、を含んで構成されている。
【0003】
この種のリニアガイド装置10には、ガイドレール20の中心軸を挟んで両側にボール列が配設されており、転動体(ボール)40は、ガイドレール側ボール溝21及びベアリングブロック側ボール溝31、エンドキャップ50に設けられる不図示の方向転換路、ベアリングブロック30に設けられる循環路32を通って、無限循環するように構成されている。
【0004】
そして、リニアガイド装置10には、油密の確保や異物の混入等の抑制のために、ガイドレール20とベアリングブロック30との間にアンダーシール60が設けられている。ここで、アンダーシール60は、その両端部がエンドキャップ50に設けられる不図示のアンダーシール溝にそれぞれ挿入されて保持される。
次に、特許文献1に開示されているアンダーシール60を図17を参照しつつ説明する。ここで、図17中、左下に示すアンダーシール60の形状は、平面視のアンダーシール60の形状であり、左上に示すアンダーシール60の形状は、アンダーシール60の短辺方向から視たアンダーシール60の側面形状であり、右に示すアンダーシール60の形状は、アンダーシール60の長辺方向から視たアンダーシール60の側面形状である。
【0005】
このアンダーシール60は、エラストマやプラスチックス等の樹脂材料のみで構成されており、図17に示すように、ガイドレール20に当接されるリップ部61と、その両端部がエンドキャップのアンダーシール溝に挿入されて保持される保持部62とを有している。ここで、保持部62の端部は、エンドキャップのアンダーシール溝に差し込まれる差込部位62a,62bを構成している。
【0006】
そして、アンダーシール60には、そのようにエンドキャップのアンダーシール溝に挿入される保持部62の端部(差込部位)62a,62bに略円筒形状の突起63が設けられている。このようなアンダーシールの形状に対応して、エンドキャップのアンダーシール溝には、アンダーシール60の突起63と係合可能な凹部が設けられている。
次に、前述のアンダーシール60のベアリングブロック30への取り付け方法について、図18(a)及び(b)を参照しつつ説明する。
【0007】
先ず、ガイドレール20に組み付けられた状態のベアリングブロック30にアンダーシール60を取り付ける際には、アンダーシール60の一端側の差込部分62aを、エンドキャップ50に隣接するベアリングブロック30側(図18(a)に示す矢印Aの方向)から、対応する側のアンダーシール溝50aに挿入する。
【0008】
次に、アンダーシール60を、図18(b)に示すように中央付近を下方に撓ませて、アンダーシール60の他端側の差込部分62bを、エンドキャップ50に隣接するベアリングブロック30側(図18(b)に示す矢印Bの方向)から、対応する側のアンダーシール溝50aに挿入する。
ガイドレール20に組み付けられた状態のベアリングブロック30からアンダーシール60を取り外す際は、アンダーシール60を、図18(b)に示すように下方に撓ませて、エンドキャップ50のアンダーシール溝50aからアンダーシール60の差込部分62a,62bを抜き取る。
【0009】
以上のように、特許文献1に開示されているアンダーシール60は、エラストマやプラスチックス等の樹脂材料のみで構成されているため、所望のシール性を確保することができると共に、ベアリングブロック30をガイドレール20に組み付けた状態であっても、アンダーシール60の差込部分62a,62bを、対応する側のアンダーシール溝50aに簡単かつ迅速に挿入或いは取り外すことを実現している。
そして、特許文献1に開示されているアンダーシール60は、保持部62の差込部位62a,62bに略円筒形状の突起63を設けたことで、脱落防止を図れるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−303620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示されているアンダーシール60の略円筒形状の突起63だけでは、アンダーシール60の脱落を確実に防止できない恐れがある。
本発明は、前述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、アンダーシールの脱落を確実に防止できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に係るリニアガイド装置のアンダーシールは、ガイドレールと、転動体を介して前記ガイドレールに移動自在に配設されるベアリングブロックと、前記ベアリングブロックの両端に配設されるエンドキャップと、を含んで構成されるリニアガイド装置のアンダーシールであって、各端部が対応する前記エンドキャップに設けられるアンダーシール溝にそれぞれ挿入保持されて、前記ガイドレールと前記ベアリングブロックとの間のシールを行うものにおいて、前記ベアリングブロックが前記ガイドレールに組み付けられた状態において、前記アンダーシール溝から取り外すことができ、かつ前記アンダーシール溝へ取り付けることができる弾性材料のみで構成され、前記アンダーシール溝に挿通保持される端部の側面一部に、その挿通方向に延び前記アンダーシール溝の側面と接触する長尺の突起を少なくとも1個設けたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明のうち請求項2に係るリニアガイド装置のアンダーシールは、請求項1に係るリニアガイド装置のアンダーシールにおいて、前記アンダーシール溝に挿通保持される端部のその挿通方向に向く側面に、前記アンダーシール溝に設けた凹溝に嵌る突起を設けたことを特徴とする。
また、本発明のうち請求項3に係るリニアガイド装置は、請求項1又は2に記載のアンダーシールを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のうち請求項1に係るリニアガイド装置のアンダーシールによれば、アンダーシールに設けた突起が、挿通方向に延びアンダーシール溝の側面と接触する長尺の突起であることで、突起とエンドキャップとの接触面積が広くなってエンドキャップとの摩擦を高くすることができ、ベアリングブロックに対するアンダーシールの保持能力を高くすることができる。
【0015】
また、本発明のうち請求項2に係るリニアガイド装置のアンダーシールによれば、アンダーシールに設けた突起がアンダーシール溝に設けた凹溝に嵌るため、ベアリングブロックに対するアンダーシールの保持能力をより高くすることができる。
また、本発明のうち請求項3に係るリニアガイド装置によれば、ベアリングブロックに対するアンダーシールの保持能力が高いため、例えば、油密の確保や異物の混入等の抑制をより確実なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態のアンダーシールの構成例を示す平面図である。
【図2】図1に示す矢印Cの方向から視たアンダーシールの側面図である。
【図3】図1に示す矢印Dの方向から視たアンダーシールの側面図である。
【図4】ベアリングブロックにアンダーシールが取り付けられた状態のアンダーシールとエンドキャップとの関係を示す側面断面図である。
【図5】ベアリングブロックにアンダーシールを取り付けた状態のアンダーシールとエンドキャップとの関係を示す平面断面図である。
【図6】保持部の差込部位に略円筒形状の突起を設けたアンダーシールを示す平面断面図である。
【図7】アンダーシールの他の構成例を示す平面図である。
【図8】アンダーシールの他の構成例の側面図である。
【図9】アンダーシールの他の構成例の側面図である。
【図10】ベアリングブロックに他の構成例のアンダーシールを取り付けた状態のアンダーシールとエンドキャップとの関係を示す平面断面図である。
【図11】アンダーシールの他の構成例を示す平面図である。
【図12】アンダーシールの他の構成例の側面図である。
【図13】アンダーシールの他の構成例の側面図である。
【図14】ベアリングブロックに他の構成例のアンダーシールを取り付けた状態のアンダーシールとエンドキャップとの関係を示す平面断面図である。
【図15】実施例における評価結果を示す図である。
【図16】一般的なリニアガイド(直動案内)装置の構成例を示す図である。
【図17】特許文献1に開示されているアンダーシールの構成を示す図である。
【図18】特許文献1に開示されているアンダーシールをベアリングブロックに取り付ける方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
本実施形態は、本発明を適用したアンダーシールである。
図1〜図3は、本実施形態のアンダーシール1の構成例を示す図である。図1は、平面図であり、図2は、図1に示す矢印Cの方向から視た側面図であり、図3は、図1に示す矢印Dの方向から視た側面図である。
【0018】
アンダーシール1は、エラストマやプラスチックス等の樹脂材料のみによって形成され、図1〜図3に示すように、全体として略平板形状をなしている。具体的には、アンダーシール1は、断面形状が略湾曲形状をなしガイドレールに当接されるリップ部2と、略平板形状をなしその両端部がエンドキャップのアンダーシール溝に挿入されて保持される保持部3とを有している。そして、エンドキャップのアンダーシール溝に差し込まれる保持部3の端部である差込部位3a,3bには、厚さ方向における一側面(図2で上方に向く面)3a1,3b1に突起4(図1〜図3中に示すハッチング部位)がそれぞれ設けられている。
【0019】
突起4は、保持部3の差込部位3a,3bの一側面3a1,3b1において長手方向に沿って延びた凸形状をなしている。すなわち、突起4は、保持部3の差込部位3a,3bの一側面3a1,3b1に対し該差込部位3a,3bのアンダーシール溝への挿通方向に横たわる長尺の四角柱部材として形成されている。
このアンダーシール1は、図16に示したようなリニアガイド(直動案内)装置のベアリングブロックに取り付けられる。
【0020】
次に、前述のアンダーシール1をベアリングブロックに取り付けた状態を説明する。
図4及び図5は、ベアリングブロックにアンダーシール1が取り付けられた状態のアンダーシール1とエンドキャップ50との関係を示す図である。ここで、図4は側面断面図を示し、図5は平面断面図を示す。
図4及び図5に示すように、ベアリングブロックにアンダーシールを取り付けた状態では、エンドキャップ50のアンダーシール溝50a内に、アンダーシール1の差込部位3a,3bとともに突起4が収容される。すなわち、アンダーシール1のアンダーシール1の差込部位3a,3bは、一側面3a1,3b1に設けた各突起4をアンダーシール溝50aの内側面とで挟み込むようにして該アンダーシール溝50aに支持されている。
【0021】
そして、突起4が、従来のような単なる円柱形状ではなく、保持部3の差込部位3a,3bの一側面3a1,3b1に横たわる長尺の四角柱形状であるため、アンダーシール1は、突起4とエンドキャップ50との接触面積が広くなってエンドキャップ3との摩擦を高くすることができ、ベアリングブロックに対する保持能力を高くすることができる。
なお、図6には、特許文献1に開示されているように、保持部62の差込部位62a,62bに略円筒形状の突起63を設けたアンダーシール60を示す。
【0022】
図6に示すように、本実施形態の場合と比較して、突起63とエンドキャップ50との接触面積が小さくなるため、アンダーシール60とエンドキャップ50との摩擦を本実施形態によって得られる程度まで高くすることができない。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
【0023】
例えば、本実施形態では、突起形状は前述の形状に限定されない。図7〜図9は、その例を示す図である。
図7〜図9に示すように、本実施形態では、保持部3の各差込部位3a,3bに複数の突起5a,5bをそれぞれ設けることもできる。
これにより、図10に示すように、アンダーシール1は、複数の突起5a,5bとエンドキャップ3との接触面積がより広くなるため、エンドキャップ3との摩擦をより高くすることができる。
【0024】
また、本実施形態では、保持部3の各差込部位3a,3bの一側面3a1,3b1にだけ突起を設けることに限定されない。図11〜図13は、その例を示す図である。
図11〜図13に示すように、本実施形態では、保持部3の各差込部位3a,3bの長手方向側面(アンダーシール溝50aに対するアンダーシール1の挿通方向に向く側面)にさらに突起6をそれぞれ設けることもできる。そして、このようなアンダーシール1の突起6に対応して、エンドキャップ50のアンダーシール溝50aには、その突起6が嵌合可能な凹部を設ける。
【0025】
これにより、図14に示すように、アンダーシール1は、突起4及び突起6とエンドキャップ3との接触面積がより広くなり、さらには、突起6がアンダーシール溝50aの凹部50bに嵌るため、ベアリングブロックに対する保持能力をより高くすることができる。
【実施例】
【0026】
次に実施例を説明する。
実施例では、図3に示す突起の高さhを変化させて、アンダーシールの脱落について検証した。また、比較例として、突起を略円筒形状としたアンダーシールを用いた。図15は、その検証結果を示す。
図15に示すように、比較例に対して、本実施形態の場合には、長尺の四角柱形状の突起としたことで、脱落しない又は脱落しにくい結果となった。また、本実施形態及び変形例ともに、突起を高くすると、エンドキャップが変形する結果となった。
【符号の説明】
【0027】
1 アンダーシール
2 リップ部
3 保持部
3a,3b 差込部位(端部)
4,5a,5b,6 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドレールと、転動体を介して前記ガイドレールに移動自在に配設されるベアリングブロックと、前記ベアリングブロックの両端に配設されるエンドキャップと、を含んで構成されるリニアガイド装置のアンダーシールであって、各端部が対応する前記エンドキャップに設けられるアンダーシール溝にそれぞれ挿入保持されて、前記ガイドレールと前記ベアリングブロックとの間のシールを行うものにおいて、
前記ベアリングブロックが前記ガイドレールに組み付けられた状態において、前記アンダーシール溝から取り外すことができ、かつ前記アンダーシール溝へ取り付けることができる弾性材料のみで構成され、
前記アンダーシール溝に挿通保持される端部の側面一部に、その挿通方向に延び前記アンダーシール溝の側面と接触する長尺の突起を少なくとも1個設けたことを特徴とするリニアガイド装置のアンダーシール。
【請求項2】
前記アンダーシール溝に挿通保持される端部のその挿通方向に向く側面に、前記アンダーシール溝に設けた凹溝に嵌る突起を設けたことを特徴とする請求項1に記載のリニアガイド装置のアンダーシール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアンダーシールを備えたことを特徴とするリニアガイド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−92203(P2013−92203A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234760(P2011−234760)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】