説明

アンテナ・トランシーバー・システム

音声、デジタルデータ、レーダー信号およびIR信号を送信し受信し、そして処理するアンテナ・トランシーバ−・システム100が提供される。本システム100は、複数の放射素子110,112,114を有するアンテナアレイ102を含んでおり、各素子110,112,114は、送受信(T/R)モジュール104,106,108に接続されている。各T/Rモジュール104,106,108は、入力信号のビームパスに沿ってリターン信号を送信する位相器200,202,204と位相共役モジュール206,208,210を含んでいる。本システム100は、コンパクトなタイル400に統合されている垂直に整列されている複数の平面402に配置されている。本タイル400は、ユーザのヘッドギア500中に埋め込まれており、システムのハンドフリーな操作が可能となる。代わりに、本システム100は、車両700、人間が持ち運びできるバックパック800、または他の指定されたプラットフォームに統合することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に多重周波数帯域で信号を送信し受信する動作を行なうことのできる通信システムに関する。特に、本発明は、垂直に積重ねシステム設計を用いて、ユーザのヘッドギアまたは代替のキャリアプラットフォームのどちらにでも統合され、音声、データ、IR信号および/またはRF信号である信号を送信し受信するトランシーバーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自分達の司令官または他の友好的な軍隊と通信するために、兵士はしばしば、低利得で、全方向性のアンテナを有するかさばった無線装置を運搬しなければならない。これらの低利得の、全方向性のアンテナは、全ての方向に同時にRFエネルギーを送信することによってエネルギーを消費する。その上に、全方向性のアンテナは、兵士を通信対抗手段を用いる敵軍隊によって発見されるリスク増にさらす。
【0003】
同様の問題は、消防士、レスキュー隊員、警察機関、通信ネットワークの役割である他のユーザにも存在する。全方向性の通信システムは、莫大な電力を必要とし、送信、受信された信号の質は多くの場合比較的悪い。操作上、スペースと重量の制約は、効果的に通信する必要性に加えて考慮しなければならない。これらのシステムの制限で、ユーザは結局首尾よく任務を果たせないかもしれない。
【0004】
従来の通信システムのさらに別の欠点は、異なる周波数帯域で動作するコンポーネントを、単一で、コンパクトで、軽量な、多重帯域システムに統合することに関連する難しさである。より具体的に言うと、音声やデータ通信用に設計されたシステムは、レーダーを用いてターゲットを追跡し検出する能力を一般的に含んでいない。同様に、これらのシステムは、赤外線(IR信号)を受信し処理するための赤外線(IR)センサーを有していない。多重帯域データ送信を容易にするために従来のセンサー/処理アレイを変更することは、制約された範囲と効用でシステムを操作するにはしばしばかさばり、費用がかかり、難しいということになる。そのようなシステムを収容するために必要なボリュームとそれらを操作するために必要な電力は、しばしば法外な値である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、ターゲットを検出し追跡するために用いられるレーダーやIR信号および、指令の音声信号とデータ信号をシームレスで効率良く送信、受信する通信システムに対するニーズがある。そのシステムは、軽量、コンパクトで、さらにユーザフレンドリーであり、ユーザの自由裁量でハンドフリーでシステムの操作が可能でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示されているアンテナ・トランシーバー・システムは、複数の周波数帯域に渡って多重信号の有向の送信および受信のためのユーザフレンドリーな統合システムを提供することによって、技術を前進させ、上記で明確に表現された問題を克服する。
【0007】
特に、そして単なる例示として、1実施形態によると、信号を送信し受信する複数の送受信モジュールと、複数の放射素子を備えるアンテナアレイを含んでおり、送受信モジュールとアンテナアレイは、プラットフォームの構造に一体に集積されたコンポーネントとして形成されている、アンテナ・トランシーバー・システムが提供される。
【0008】
別の実施形態では、信号を送信し受信する複数の送受信モジュールと、複数の放射素子を備えるアンテナアレイを含んでおり、送受信モジュールとアンテナアレイは、ヘッドギアの構造に一体に集積されたコンポーネントとして形成されている、ユーザが身に着けるヘッドギアが提供される。
【0009】
さらに別の実施形態では、無線周波数(RF)信号を送信し受信する車両搭載システムが提供され、この車両搭載システムは、能動フェーズドアレイアンテナと、RF信号を送信し受信する複数の送受信モジュールと、送信した信号を受信した信号の方向に自動的に指向させる手段と、信号処理装置と、データ処理/制御装置と、ディスプレイモニタを含んでおり、アレイアンテナと送受信モジュールと指向手段と信号処理装置とデータ処理/制御装置は、車両の構造と一体に集積されたコンポーネントとして形成されている。
【0010】
さらに、別の実施形態では、無線周波数(RF)信号を送信し受信する人間が持ち運びできるシステムが提供される。このシステムは、能動フェーズドアレイアンテナと、RF信号を送信し受信する複数の送受信モジュールと、送信した信号を受信した信号の方向に自動的に指向させる手段と、信号処理装置と、データ処理/制御装置と、ディスプレイモニタを含んでおり、アレイアンテナと送受信モジュールと指向手段と信号処理装置とデータ処理/制御装置は、本システムの一体構造のコンポーネントとして形成されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
詳細な説明を続ける前に、本明細書の説明は、単なる例示によるものであり、本発明を制限するものではないことに注意すべきである。ここでの概念は、1つの特定のタイプのアンテナ・トランシーバー・システムによる利用または応用に制限されない。したがって、ここで記述された例は、説明の都合上で、代表的な実施形態に関して示し、記述しているが、ここでの原理は、他のタイプのアンテナ・トランシーバー・システムに同様に適用できる。
【0012】
図1は、ユーザのヘッドギア中に統合するための、または、人間が持ち運びできるバックパックまたは戦闘車両のような他の指定されたキャリアプラットフォームで使用するためのアンテナ・トランシーバー・システム100の概略図を示している。車両搭載の構成では、システム100は、独立のサブシステムとして車両に搭載される。あるいは、システム100は、アップリケとして車両の構造体または外装に統合される。
【0013】
システム100は、能動のフェーズドアレイであるアンテナアレイ102を含んでいる。アンテナアレイ102は、電子走査のフェーズドアレイ(ESA)であるが、この技術分野では良く知られている任意のタイプのフェーズドアレイアンテナであってもよい。また、送受信(T/R)モジュールは、モジュール104、106および108は例示的なものであるが、アンテナアレイ102の各放射素子、例えば素子110、112および114と関連づけられている。各個別のT/Rモジュール、たとえば、モジュール104は、狭い固定領域を電子的に走査し、それによって、アンテナアレイ102の再調整が必要なときに、アンテナアレイ102の全体を機械的に移動する必要性をなくしている。
【0014】
この技術分野で良く知られているタイプのコーポレートフィードネットワーク116は、T/Rモジュール104、106、108に信号を送信しそこから信号を受信するように配置されている。フィードネットワーク116は、標準設計のトランシーバー装置118に連結されている。トランシーバー装置118は、送信機モジュール120と受信機モジュール122を含んでいる。トランシーバー装置118は、信号のその後の増幅と処理の前に、システム100で受信した信号を中間周波数に下方変換する。あるいは、トランシーバー装置118は、信号を既知の、または所望の受信機に送信する前に、送信信号を送信周波数に上方変換する。上方変換と下方変換は、RF励振機124が提供する信号によって容易に行なわれる。
【0015】
さらに図1を参照すると、システム100は、トランシーバー装置118から受信されるRF信号を処理する信号処理装置126を含んでいる。同様に、データ処理/制御装置128は、システム100によって受信されるデータ信号を処理する。データ処理/制御装置128はまた、システム100によって実行される多くの信号操作タスクはもちろん、システム100を機能的に制御し監督する。注記すると、信号処理装置126とデータ処理/制御装置128は、関連する技術分野では良く知られているタイプのものである。信号処理装置126とデータ処理/制御装置128は、トランシーバー装置118のようなシステム100の他のコンポーネントと同じ場所に配置される。あるいは、信号処理装置126とデータ処理/制御装置128は、離れて配置される。例えば、ユーザのバックパックの中または、車両コンポーネントと同じ場所に配置される。離れて配置されたとき、データリンク(示されていない)が処理装置126、128とトランシーバー装置118の間で信号を送信し受信する。
【0016】
信号処理装置126とデータ処理/制御装置128に加えて、電源130がシステム100の他のコンポーネント/モジュール(たとえば、トランシーバー装置118、アンテナアレイ102)と同じ場所に配置される。あるいは、電源130は、離れて配置されてもよい。電源130は、通常のバッテリパック、システム100と統合された太陽電池、または、DC電源を提供する放射マイクロ波であり、これらは単なる例示であり、これらに限られない。1実施形態では、アンテナアレイ102、トランシーバー装置118、および電源130を含むシステム100の他のコンポーネント/モジュールは、ユーザのヘッドギアの中に統合されている。あるいは、電源130は、ユーザによって運ばれるバックパックに装着されることもできる。離れて配置される場合には、電力ケーブル(示されていない)が電源130をシステム100の残りのものに接続する。
【0017】
システム100は、受信したデータを目に見えるように表示するディスプレイ132を含んでいる。本システム100の1実施形態では、ディスプレイ132は、ユーザのヘッドギアで使用するためのヘッドアップ・ディスプレイである。また別の実施形態では、ディスプレイ132は、車両または、人間が持ち運びできるシステム100で使用するためのディスプレイ画面またはディスプレイモニタである。システム100はまた、この技術分野で普通である入出力(I/O)インタフェース134を含んでいる。
【0018】
図1に示したシステム100の実施形態では、アンテナアレイ102は、全方向性のアンテナとして働き、そしてシステム100は、無線/デジタルデータ信号を送信し受信する。この動作のモードは、システム100のデフォルトモードである。あるいは、多くの詳細は以下で説明するが、システム100は、多重周波数帯域に渡って良く規定された指向性信号を送信し受信する。
【0019】
次に図2の実施形態を参照するすると、システム100は、複数の位相器を含んでいる。位相器200、202および204は例示である。位相器200、202、204は、T/Rモジュール、たとえば、モジュール104、106および108に統合されている。少なくとも1実施形態では、システム100は、入力と出力のRF信号の両方を操縦するために、位相器、たとえば、位相器200、202、204を使用する。さらに、位相器200、202および204の包含で、システム100はまた、アンテナアレイ102の視界(FOV)の内でターゲットを検出し追跡するためのコンパクトなレーダーシステムとして使用することができる。FOVは一般的に、アンテナアレイのボリューム能力、または「フットプリント」によって規定される。レーダーの機能は、前述した通信機能と同時に用いることができ、または、システム100は、「レーダーのみ」、または「音声/データのみ」のモードのどちらかで動作するようにセットすることができる。
【0020】
レーダー能力を提供することに加え、ビームステアリングは(位相器200、202および204を使用して)、高品質の見通し線(LOS)送信、および/または受信に導く高利得、高忠実度のビームを生成する。全方向性のアンテナと対照的に、ビームステアリングはまた、信号傍受の可能性を減少させる。さらに、ビームステアリングは、所定のRF信号を送信するために必要となる総電源を減らす。減少した電源は、長い動作寿命で小さな電源130の使用を可能とする。前述したように、システム100は、ビームステアリングモード、または全方向性のアンテナ(デフォルトモード)のどちらかで動作する機能を有している。
【0021】
さらに図2を参照すると、システム100は、位相共役モジュール206、208および210のような、T/Rモジュール104、106、108に統合されている複数の位相共役モジュールを含んでいる。位相共役モジュール、たとえば、位相共役モジュール206の特定のコンポーネントと動作は、前述したビームステアリング技術はもちろん、Newbergおよびその他の者による米国特許6,630,930「System and Method for redirecting a Signal Using Phase Conjunction」に詳しく述べられている。参照した特許は、現在の譲受人に譲渡されており、ここでの参照文献によって組み入れられている。より具体的には、位相共役モジュール206、208、210はそれぞれ、RFミキサー211、受信と送信のモードの間を切り替えるのを手伝う第1のスイッチ213と第2のスイッチ215、およびRFフィルタ217を含んでおり、それらは位相共役波を生成する機能を果たす。注記すると、これらのモジュール206−210は、通常のどんな位相器を含む必要もなく、またモジュール206−210は、受信した信号を転送するために通常のステアリング命令を受信する必要もない。
【0022】
引用した参照文献で論じたように、位相共役は、対応する入力信号の波面に等しい波面を有する位相共役波の送信になる。位相共役波は、入力信号と同じビームパスに沿って入力信号とは反対方向に伝播する。位相共役波それ自体は、入力信号源の位置または受信するトランシーバー・アンテナ・システムの位置を知ることなしに、入力信号源の直接後方の向きに放射される。多重信号がトランシーバの視界の中のいくつかの位置から受信されると、各信号は独立にそれぞれの離れた位置に返信される。
【0023】
システム100のような位相共役システムには、多数の操作上の利点がある。たとえば、位相共役は、送信した信号を自動的にポイントし、追跡する手段を提供する。この種の指向性信号は、遮ることが難しく、比較的小さな電力を必要とする高品質送信を提供する。さらに、位相共役は本質的に、入力/出力波が、歪んでいる媒体を通過しているときに波の中に誘導される波の歪を修正することを助ける。また、位相共役モジュールのコンポーネント、たとえば、モジュール206は、T/Rモジュール、たとえば、モジュール104に生成される共役信号の間の相対位相を測定するために用いることができる。位相測定は次に、本技術分野で良く知られているアルゴリズムを使用して、放射された位相共役ビームの方向を計算するために用いられる。この機能により、システム100は、システム100が最近そこから信号を受信した特定のノードに信号を自動的に向けるだけでなくまた、受信された信号に基づいてノードの正確な位置を知ることができる。この文脈においては、用語「ノード」は、以前に送信したおよび受信した信号の電子ソースのことを指す。さらに、受信した信号のコーディングは、1個以上のスイッチがトランシーバ信号を停止することができるようにするために用いることができる。このように、不要なソースからの信号の再送信を防止することができる。
【0024】
次に図3を参照すると、システム100の1実施形態は、ソースから放射または反射されるIR信号を受信する赤外線(IR)受信機アレイ300を含んでいる。熟練した技術者によって認識されるように、3−5μm(近赤外線)または8−12μm(遠赤外線)の波長を持つ赤外線波は、ユーザの環境の中で自然のまたは人工の物体から放射または反射される。これらの波は、IR受信機アレイ300によって検出され、そして信号処理装置126で処理される。処理された信号は、ユーザのFOVにある構造物の熱映像を生成し、それによって、ユーザに夜間視力能力を与える。IR画像は、一般的にヘッドアップ・ディスプレイまたはディスプレイ・モニタのどちらかであるシステムディスプレイ132で見える。
【0025】
積み重ねたコンパクトなタイル400への前述したコンポーネントとモジュールの統合が図4に示されている。タイル400は、キャリアプラットフォーム(たとえば、ヘッドギア、車両など)の外面404に関して縦列に垂直に配置されている複数の平面402を含んでいる。特に垂直の構成またはアレイ格子層(ALL)は、本開示での参照によって組み入れられており、Woodridgeおよびその他の者による米国特許5,493,305「Small Manufacturable Array Lattice Layers」に詳しく述べられている。参照特許は現譲受人に譲渡されおり、ここでの参照によって組み入れられている。
【0026】
Woodridgeおよびその他のによる参照特許文献で開示されているように、ALLの技術は、アンテナ・トランシーバー・システム100の低コストで軽量な目立たない実装を提供する。ALLの材料、またはタイル400は、大規模生産のために、積層材のリールとして効率的に製造することができる。ALLの技術は、トランシーバー・システム100をキャリアプラットフォーム、たとえばヘルメットの構造に統合する機能を提供し、または、プラットフォームの内面または外面、たとえば車両の内面層または外面層上に積み重ねられた構造を位置させる機能を提供する。
【0027】
再度、図4を参照すると、平面406は、ALLの技術の薄い軟質の多層の電気フィルム(示されていない)の中に配置されている、素子410、412、および414が1例である複数の放射素子を有しているアンテナアレイ408を含んでいる。素子の数と2つの素子の間の距離dは、システム100の動作周波数または周波数要件に関係する。特に、ミリ波システム(300−3000GHz)で使用される素子は、1-100GHzの範囲の周波数で動作するシステムで使用されるものより一般に小さい。平面406のような固定された物理幾何学的配置の中に配置することのできるミリ波素子の数自体は、より低い周波数システム(たとえば、1-100GHz)で可能な素子の数よりも大きい。より小さい300-300GHzの素子の間の距離dは、それ相応により小さい。
【0028】
システム100が異なる周波数帯域に渡って動作する多重アレイ408を有することは可能である。たとえば、衛星航法システム(GPS)を有するシステム100の1実施形態は、おおよそ1.2−1.5GHzの間であると言えるL帯域で動作するアンテナアレイ408を必要とする。それらの周波数での素子の間隔dは、約8インチであり、それゆえ、小さな接近した間隔を保つ素子、たとえば素子410、412および414を有する位相共役アレイは、GPSビームを操縦するのに使用することができない。この例では、システム100は、GPS信号を受信し送信するためにL帯域の全方向性のアンテナ(示されていない)を含んでいる。全方向性のアンテナは、タイル410に統合され、多くの平面402の1つに配置される。さらに、アンテナアレイ408は、より低い周波数通信を提供するために、アレイ408のサイズと放射素子の数を増加させる伸張アーム(示されていない)を含んでもよい。
【0029】
平面406に加えて、システム100は、接地平面416を含んでいる。さらに、平面418は、受信回路または送信回路のどちらかを関連した放射素子410、412、414に接続するために、埋込み型サーキュレーター、たとえばサーキュレーター420、422および424を包含している。タイル400の深さを通して続いている、図1のT/Rモジュール104、106、108のようなT/Rモジュールが面426上に配置される。1実施形態では、図2の位相器200、202、204のような位相器と、位相共役モジュール206、208、210のような位相共役モジュールもまた面426上に設置される。
【0030】
送信機モジュール120と受信機モジュール122のようなシステム100の他のコンポーネントは、複数の平面402の深さの至る所の平面上に配置される。前述のシステム100のコンポーネントとモジュールの配置は、単なる例示であることを理解すべきである。システム100のいろいろなコンポーネントとモジュールは、それらの示されたものは別として、いくつもの平面上に再配列し、設置することができる。コンポーネントとモジュールの本配置、または米国特許5,493,305に開示されているような配置は、システム100に対する特定の設計要件と動作的検討に依存するおびただしい可能性の2つだけにすぎない。
【0031】
1実施形態では、システム100は、コールドプレート428、またはタイル400を冷却する他のメカニズムを含んでいる。先に参照した米国特許5,493,305に記述されているように、コールドプレート428は、アレイ102と他のシステム100のコンポーネントを冷却するために、チャネルマニホルド(示されていない)を通して冷却剤を循環させるために、冷却チャネル(示されていない)を有してもよい。
【0032】
再び図3の実施形態を参照すると、IR受信機300はまた、図4の1以上の複数の平面402上に含まれてもよい。アレイ300のコンポーネントは、単一の平面、たとえば平面430上に配置されもよく、またはいくつかの平面上に配置されてもよい。他の平面、たとえば平面432と434は、電源130のようなシステム100の付加的なコンポーネントを含む。さらに、信号処理装置、たとえば信号処理装置126と、データ処理/制御装置128のようなデータ処理/制御装置もまた、1以上の平面402上に配置される。平面402の特定の数と、平面上のコンポーネントとモジュールの位置決めは、アプリケーションと意図した使用とシステムの対応する設計要件と検討に左右される。これらの全ては変化可能であが、一方、本開示の意図と範囲に忠実のままである。
【0033】
米国特許5,493,305に開示されているように、ALLの構成は、所定のタイル400の平面の間の垂直に配置された電気的相互接続(示されていない)を含んでいる。タイルの間の水平な相互接続(示されていない)ももちろん含んでいる。これらの相互接続は、メタルトレース(metal traces)であるバイア(vias)、共面マイクロ波マイクロブリッジ、またはこの技術分野でよく知られている他の技術を含んでいる。さらに、フォトダイオード(示されていない)と光ファイバーケーブル(示されていない)は、複数の平面402の間の光信号転送を行なうためにタイル400のスタックに組み込んでも良い。
【0034】
ヘルメット500のような、ユーザ定義プラットフォームへのシステム100の統合は、図5に描かれていが、システムは、実際は、より詳細は後述するように、たくさんのプラットフォームで使用されても良い。図5に示されているように、ヘルメット500の層は、ケブラー502(登録商標)、またはヘルメット500に対するベース保護層である別の複合材料を含んでいる。ALLの構成のトランシーバー・システム100は、ケブラー502とレードーム506の層の間の層504として配置される。レードーム506はまた、ヘルメット500の形状に合うように形づけられた複合材料である。外層508、または表面は、一般的には布で作られておりいくつかのカモフラージュパターンのいずれか1つを含んでいるカモフラージュ層である。
【0035】
図5に示されている特定の実施形態では、トランシーバー・システム100は、ヘルメット500の構造の中に埋め込まれている。別の実施形態では、システム100は、ヘルメット500にアップリケとして、外層508の直ぐ下またはトップに取り付けられている。
【0036】
図5と図6を少しの間相互参照すると、システム100の実施形態を取り付けたヘルメット500は、ヘルメット500に付けられたヘッドアップ・ディスプレイ600を含んでもよい。ヘッドアップ・ディスプレイ600は、視界のユーザ線に、またはアンテナアレイ102のFOVの中のどこかのどちらかに、ターゲットのユーザ画像602を投影することができる。ターゲットデータは、システム100が受信したIR信号、RF信号、または両方に起因する。別な言い方をすると、システム100の1実施形態では、ユーザは、投影されたIR画像、またはレーダーデータの中から選択することができる。図6に示されているように、付加的な関連あるデータと情報604も表示することができる。1実施形態では、ヘッドアップ・ディスプレイ600は、ヘルメット500に堅く固定されている。さらに別の実施形態では、ディスプレイ600は、使用しないときには、ヘルメット500から外すことも、邪魔にならない所に折りたたむこともできる。
【0037】
図7と図8に示されているように、別の実施形態では、システム100は、車両システムまたは人間が持ち運びできるバックパックに取り付けられ、そして統合されている。図7は、システム10Oを取り付けた車両700を描いている。図示されているように、システム100は、別々の車両700のサブシステム702として取り付けてもよい。あるいは、システム100は、アップリケ704は例示であるが、複数のアップリケを使用して、車両700の構造の中に統合してもよい。各アップリケ704は、タイル706、708、および/または710のような複数のALLのタイルを含んでいる。
【0038】
システム100を取り付けたバックパック800で、ALLのタイルのアレイ802は、バックパック800に付けることができ、その中に格納することもできる。図8に示されているように、システム100は、ケーブル806を介してハウジング808に接続されているポータブルディスプレイモニタ804を含んでいる。ハウジング808は一般的には、電源130のようなシステム100の電子装置を含んでいる。図8に描かれているシステム100に基づいたバックパック800は、ユーザが静止している間、または移動している間とも動作し、ユーザのヘルメット500に統合されたヘッドアップ・ディスプレイ600への相互接続を含んでいる。
【0039】
図9に示されているように、動作的には、システム100は、ユーザ900とたくさんの支援システムの間の通信をサポートするために配置される。たとえば、ユーザ900は、無人の航空輸送機(UAV)902または衛星904によって指示を与えられ、そこからデータを受信する。特に、UAV902または衛星904は、ユーザ900と第2の通信手段の間でデータを渡す中継局として役に立つ。たとえば、ユーザ900は、エリア内の第2のユーザが受信した情報に基づいて敵システム906の位置に関して指示を与えられる。個々のユーザ900はまた、システム100のFOVの中の車両908から情報を受信する。車両908は、アンテナ・トランシーバー・システム100で装備されており、または、もっと通常的な手段によってユーザ900と通信する。また、ユーザ900は、未知のシステム910からのIR信号またはRF信号を検出する。システム100は、システム910が味方であるかまたは敵であるかを確認するために信号を処理する。
【0040】
図10は、複数のユーザ、たとえばユーザ1010、1012および1014が、彼ら自身の主制御局(MCS)、または他のMCS、たとえばMCS1016、1018および1020でお互いに通信できるさらに別のシナリオを描いている。ユーザ1010、1012、1014とMCS1016、1018、1020の間でそれぞれ自由にデータを渡す機能は、効率を著しく高め、任務成功の可能性を増加させる。しかしながら、図10に描かれているユーザ、たとえばユーザ1010は軍人であるが、システム100の使用は軍事的応用に限られない。ハンドフリーな通信を必要とする消防士、警察官、救護者、そしてユーザは、前述の1以上の実施形態から利益を得ることができる。
【0041】
本発明の技術的範囲から逸脱することなく、上記の方法、装置、および構造は変更が可能である。前述した、および/または添付の図面に示されている事項は、例示として理解されるべきであり、限定的な意味で理解されるべきでないことに注意すべきである。以下の請求項は、ここで述べた全ての一般的なそして特定の特徴を包含するように意図している。本発明の方法、装置そして構造の技術的範囲のすべての陳述は、言語の問題として、それらの間に降りかかってくると言えるのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の1実施形態によるアンテナ・トランシーバー・システムの概略図。
【図2】1実施形態によるレーダー信号検出/生成機能と位相共役機能の両方を有する図1のアンテナ・トランシーバー・システムの概略図。
【図3】1実施形態によるIR信号検出機能を有する図2のアンテナ・トランシーバー・システムの概略図。
【図4】1実施形態によるアンテナ層格子の斜視図。
【図5】1実施形態によるユーザが身に着けるヘッドギアの層に統合されたトランシーバー・システムの分解図。
【図6】1実施形態によるヘッドアップ・ディスプレイの斜視図。
【図7】1実施形態による車両搭載システムの斜視図。
【図8】1実施形態によるバックパック装着システムの斜視図。
【図9】1実施形態によるユーザが複数の信号を送信し受信する動作環境の描写図。
【図10】1実施形態による複数のマスタ通信局環境の描写図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を送信し受信する複数の送受信モジュール(104、106、108)と、
複数の放射素子(110、112、114)を備えるアンテナアレイ(102)とを具備し、
送受信モジュール(104、106、108)およびアンテナアレイ(102)は、プラットフォーム(500、700、800)の構造に一体に集積されたコンポーネントとして形成されているアンテナ・トランシーバー・システム(100)。
【請求項2】
送受信モジュール(104、106、108)およびアンテナアレイ(102)は、プラットフォーム(500、700、800)の外面に関して垂直に整列されている複数の平面(402)上に配置されている請求項1記載のシステム(100)。
【請求項3】
電源(130)、信号処理装置(126)およびデータ処理/制御装置(128)は、プラットフォーム(500、700、800)の構造に一体に集積されたコンポーネントとして形成されている請求項1記載のシステム(100)。
【請求項4】
赤外線(IR)信号を検出する赤外線(IR)受信機アレイ(300)をさらに具備しており、このIR受信機アレイ(300)は、プラットフォーム(500、700、800)の構造に一体に集積されたコンポーネントとして形成されている請求項1記載のシステム(100)。
【請求項5】
動作中にアンテナアレイ(408)および送受信モジュール(104、106、108)を冷却する手段をさらに具備している請求項1記載のシステム(100)。
【請求項6】
アンテナアレイ(102)は、送受信されたRF信号を電子的に操縦する複数の位相器(200、202、204)を含んでいる電子走査アレイである請求項1記載のシステム(100)。
【請求項7】
RFミキサー(211)と、
第1のスイッチ(213)と、
第2のスイッチ(215)と、
フィルタ(217)とをさらに具備し、
RFミキサー(211)と、第1のスイッチ(213)と、第2のスイッチ(215)と、およびフィルタ(217)は、受信した信号の波面に等しい波面を有する送信信号を生成するために使用され、さらに送信された信号は、受信した信号のビームパスに沿って受信した信号源に進行する請求項6記載のシステム(100)。
【請求項8】
受信した信号の信号源の位置とシステム(100)の位置は知られていない請求項7記載のシステム(100)。
【請求項9】
プラットフォームは、ヘッドギア(500)、車両(700)および人間が持ち運びできるバックパック(800)から成るグループから選択される請求項1記載のシステム(100)。
【請求項10】
信号を送信し受信する複数の送受信モジュール(104、106、108)と、
複数の放射素子(410、412、414)を備えるアンテナアレイ(102)と、
ヘッドアップ・ディスプレイを具備し、
送受信モジュール(104、106、108)とアンテナアレイ(102)は、ヘッドギア(500)の構造に一体に集積されたコンポーネントとして形成されているユーザが身に着けるヘッドギア(500)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−509402(P2009−509402A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531139(P2008−531139)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/033376
【国際公開番号】WO2007/035224
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(503455363)レイセオン カンパニー (244)
【Fターム(参考)】