説明

アンテナ内蔵ヒンジ

【課題】携帯電話機などの携帯端末のアンテナをヒンジに内蔵して、スペースを有効利用し、携帯端末を小型化する。
【解決手段】携帯端末の上筐体と下筐体を開閉可能に接続するヒンジに、通信用のアンテナ素子を内蔵させる。アンテナ素子は、直線状導体か、直線状導体にヘリカルコイルを接続したものか、直線状導体にヘリカルコイルを接続してさらにスリーブを接続したものか、直線状導体にチップ素子を介してスリーブを接続したものとする。高い周波数帯では、直線状導体のみをアンテナ素子として利用する。低い周波数帯では、直線状導体とコイルやスリーブをアンテナ素子として利用する。単一バンドまたはマルチバンドのアンテナとして利用できる。さらに、チョークコイルを介して上筐体の基板に接続して、TV用アンテナとしても利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ内蔵ヒンジに関し、特に、携帯端末の筐体開閉用ヒンジの内部にアンテナエレメントを設けたアンテナ内蔵ヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機などの携帯端末のアンテナは、小型化が図られている。特に最近の携帯端末は小型化薄型化が進み、内蔵されるアンテナを配置できるスペースが小さくなり、アンテナが一層小型化されている。更に、GPS受信装置や、無線LAN等の無線を利用したインターフェースも搭載されるようになってきて、主通信用以外のアンテナも設けられるようになり、ますます主通信用アンテナの小型化が求められている。そこで、チップアンテナ等のように、高誘電率素材を用いて電気的に短縮して小型化したアンテナが考案されている。
【0003】
しかし、高誘電率素材上にアンテナ構成し、無理に小型化すると、使用可能な周波数帯幅が狭くなる。無理に小型化したアンテナは、適切に整合が行われて使用周波数とアンテナ動作周波数が一致していても、性能が劣化しやすい。使用波数帯での高誘電率素材の損失増大により、アンテナ性能が劣化する。携帯端末の機構部品や電気部品の配置を開発時に少しでも変更すると、使用可能周波数帯幅が狭いためにアンテナの整合状態が変化し、アンテナや整合回路の調整がその都度必要となり、手間がかかる。携帯端末をユーザが使用する際の保持の仕方で、通信性能が大きく変化して劣化しやすくなる。
【0004】
筐体と基板等の内部部品の間に板状のアンテナを配置することも行われているが、アンテナと内部部品が近接するため、アンテナと内部部品の距離がわずかでも変化すると、アンテナ性能が変化して劣化する。内部金属部品とアンテナが近接すると、最良の状態に調整を行っても、アンテナ性能は劣化してしまう。金属製のヒンジをアンテナの一部として利用することも提案されているが、アンテナの一部としてヒンジを利用するだけであり、アンテナ本体を別に設けなくてはならず、小型化薄型化しにくい。以下に、これに関連する従来技術の例をいくつかあげる。
【0005】
特許文献1に開示された「携帯無線機」は、筐体開閉の状態変化に関わらず、安定したアンテナ特性を確保できるものである。図8(a)に示すように、下筐体と上筐体とを、ヒンジ部で開閉可能に連結する。ヒンジ部は、ヒンジ固定部と、ヒンジ部内部に設けたヒンジ可動部とで構成されている。ヒンジ部に、アンテナが備えられている。筐体開閉に応じて突起によりアンテナ長が変更される。
【0006】
特許文献2に開示された「アンテナ装置」は、ボタンを押すことにより、2つ折り式携帯無線装置が自動的に開くと共に、アンテナとして動作するものである。図8(b)に示すように、ヒンジ一体アンテナは、金属製のワンプッシュヒンジがアンテナエレメントを介して給電部に接続されている。ワンプッシュヒンジの略円筒形状の固定部における一方の端部は、同じく略円筒形状の摺動部と同心円上に回転可能な状態で接続され、固定部の他端にはボタン部が接続されている。固定部の側面部表面にはアンテナエレメントの接続部を介して電気長補正素子の一方の端部が電気的に接続され、電気長補正素子の他端には共振素子が接続されている。電気長補正素子と共振素子との接続点は、給電線を介して給電部に接続されている。
【0007】
特許文献3に開示された「アンテナ装置」は、小型化にしたものである。図8(c)に示すように、第1の筐体と第2の筐体とは、ヒンジ部において、同一軸線上で回動可能に分割配置された第1のヒンジ筐体部と第2のヒンジ筐体部とをそれぞれ形成している。第1のヒンジ筐体部のうちの一方と第2のヒンジ筐体部とは、両筐体の対向面に設けられた貫通孔をそれぞれ貫通して設けられている回動機構部品により回動可能に接続されている。第1の回路基板には、高周波無線回路が実装されており、高周波無線回路は給電線路を介して接点パターンと接続されている。第1のヒンジ筐体部には、第1のアンテナが内蔵されており、第1のアンテナはその一部にアンテナバネ部を備えている。アンテナバネ部を接点パターンと接触することにより、アンテナは高周波無線回路と接続される。
【0008】
特許文献4に開示された「アンテナ装置」は、2筐体が相互に回動可能に連結された無線装置のスペース効率を高めるため、ヒンジ部にアンテナの一部を設けて、回動による開閉の状態の影響を受けにくくしたものである。図9(a)に示すように、無線装置は、第1筐体と第2筐体がヒンジ部を介して相互に回動可能に連結されて構成される。ヒンジ部は、第1筐体取り付け部、軸受け部及びスプリング収納部からなる第1筐体側部材と、第2筐体取り付け部,シャフト導体部及びシャフト非導体部からなる第2筐体側部材から構成されている。シャフト導体部及びシャフト非導体部が、無線装置のシャフトを形成して、軸受け部及びスプリング収納部に軸支される。基板に設けられた無線回路から給電線を介して、スプリング収納部に収納されたスプリングから遠い側の導電性を有する第2筐体取り付け部及びシャフト導体部に給電する。
【0009】
特許文献5に開示された「携帯無線装置」は、手等の人体による影響を受けにくい位置で給電することにより、アンテナ特性の劣化を防ぐものである。図9(b)に示すように、第1回路基板は、第1筐体に設けられ、グランド層を有し、第2回路基板は第2筐体に設けられ、グランド層を有する。無線部のグランド端子は、第1回路基板のグランド層と同電位で接続すると共に、無線部を介し整合回路と電気的に接続している。また、第2回路基板のグランド層とヒンジ導電部とが静電容量結合により電気的に接続し、ヒンジ導電部は第3導電部を介して基板接続部に接続され整合回路を介し無線部に給電する。これにより第1回路基板のグランド層、第3導電部、ヒンジ導電部及び第2回路基板のグランド層が所定の共振周波数で共振するアンテナとして機能する。
【0010】
特許文献6に開示された「アンテナ装置」は、2筐体が相互に回動可能に連結された無線装置のスペース効率を高めるためにヒンジ部にアンテナの一部を設けたもので、回動による2筐体間の開閉の状態によってアンテナの特性が影響されるのを抑えるものである。図9(c)に示すように、携帯通信端末の第1筐体と第2筐体が、ヒンジ部を介して相互に回動可能に連結されている。ヒンジ部の第2筐体側の一部及び第1筐体側の一部は、それぞれ軸部材及び軸受け部材を収容して機械的に固定している。軸部材は、少なくとも一部が金属材料で形成されると共に、第2筐体の内蔵する基板に設けられたアンテナ給電回路に接続される。第1筐体の内蔵する基板の導体部の一部を軸部材に近接するように配設して、電気的に結合させてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007-318236号公報
【特許文献2】特開2009-094860号公報
【特許文献3】特開2009-111826号公報
【特許文献4】特開2009-141623号公報
【特許文献5】特開2009-171142号公報
【特許文献6】特開2010-081410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上記従来のヒンジをアンテナの一部としているものでは、次のような問題がある。金属で構成された導電性の筐体開閉用ヒンジを、アンテナの一部もしくはアンテナへの給電経路として使用しているのみである。そのため、ヒンジの近傍にアンテナ本体が必要であるか、筐体内にアンテナを設ける必要がある。したがって、携帯端末の小型化軽量化を少ししか達成できない。
【0013】
本発明の目的は、上記従来の問題を解決して、携帯電話機などの携帯端末のアンテナをヒンジに内蔵して、携帯端末を小型化することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明では、携帯端末の2つの筐体を開閉可能に接続するように、一方の筐体に回転不能に取り付けられたケースと、他方の筐体に回転不能に取り付けられたホルダと、ホルダとケースとを貫通してヒンジ軸となるシャフトとを具備する筒状ヒンジにアンテナを内蔵させたアンテナ内蔵ヒンジに、シャフトを素子導体として含む通信用の略1/4波長のアンテナ素子と、高周波給電回路に接触して接続する端子であってアンテナ素子の一端に接続された接触子とを備える構成とした。
【0015】
アンテナ素子は、通信用単一バンドのアンテナ素子か、通信用マルチバンドアンテナ素子である。通信用単一バンドアンテナ素子の主要部は、シャフトか、シャフトと等ピッチヘリカルコイルである。通信用マルチバンドアンテナ素子の主要部は、シャフトと密ピッチヘリカルコイルと疎ピッチヘリカルコイルか、シャフトと等ピッチヘリカルコイルとスリーブか、シャフトとチップ素子とスリーブである。チップ素子は、チップコイルか、チップコイルとチップコンデンサからなる並列共振回路である。通信用アンテナ素子に、チョークコイルを介していずれかの筐体の基板を接続して、TV放送帯受信用アンテナとして機能させてもよい。
【発明の効果】
【0016】
上記のように構成したことにより、携帯端末を小型にしながらもアンテナの送受信性能を向上させることができる。また、筐体から飛び出していることが多いヒンジ部にアンテナを設けたことにより、内部部品から離れてアンテナが配置できて、性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の各実施例におけるヒンジ内蔵アンテナの外観斜視図と断面図と組立て概念図である。
【図2】本発明の実施例1におけるヒンジ内蔵アンテナの分解斜視図と断面図とアンテナ動作図である。
【図3】本発明の実施例2におけるヒンジ内蔵アンテナの分解斜視図と断面図とアンテナ動作図である。
【図4】本発明の実施例3におけるヒンジ内蔵アンテナの分解斜視図と断面図とアンテナ動作図である。
【図5】本発明の実施例4におけるヒンジ内蔵アンテナの分解斜視図と断面図とアンテナ動作図である。
【図6】本発明の実施例5におけるヒンジ内蔵アンテナの分解斜視図と断面図と電気的接続図とアンテナ動作図である。
【図7】本発明の実施例6におけるヒンジ内蔵アンテナの断面図とアンテナ動作図である。
【図8】従来のヒンジ内蔵アンテナの概念図である。
【図9】従来のヒンジ内蔵アンテナの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1〜図7を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
本発明の実施例1は、通信用単一バンドの直線状導体アンテナエレメントを内蔵したアンテナ内蔵ヒンジである。
【0020】
図1に、本発明のアンテナ内蔵ヒンジの概念図を示す。図2に、アンテナ内蔵ヒンジの分解図と断面図を示す。図1と図2において、ケース1は、可動カムを下筐体とともに回転させるための部材である。金属でも樹脂でもよい。ホルダ2は、固定カムを上筐体とともに回転させるために、上筐体に固定される樹脂部材である。上筐体と下筐体は逆でもよい。シャフト3は、ヒンジ軸であるとともにアンテナエレメントともなる直線状導体である。可動カム4は、固定カムと係合する凸部を有する金属カムである。
【0021】
固定カム5は、可動カムと係合するための凹部を有する金属カムである。スプリング6は、固定カムに可動カムを押し付けてトルクを発生するバネである。接触子7は、下筐体の基板上に設けた接点バネと接触する接点部である。ワッシャ8は、接触子とシャフトをつなぐ金属部材である。Oリング9、10は、ヒンジのアンテナ構成部への水分侵入防止用ゴムであり、防水防滴タイプの携帯端末でなければ不要である。ピン15は、ヒンジの端部金属部材である。
【0022】
上記のように構成された本発明の実施例1におけるアンテナ内蔵ヒンジの機能と動作を説明する。最初に、図1を参照しながら、アンテナ内蔵ヒンジの機能の概要を説明する。図1(a)、(b)に示すように、アンテナ内蔵ヒンジの外観は、従来の筒状ヒンジと同じである。各実施例では、1軸筒状ヒンジの例を説明するが、表示部筐体が回転するスイーベルヒンジなどのような2軸ヒンジでも、その一部に筒状ヒンジを含むものでは同様であるので、筒状ヒンジは、これらを総称するものである。
【0023】
図1(c)に示すように、筒状ヒンジ内部の中心回転軸部分にアンテナエレメントを設ける。図1(d)に示すように、アンテナ内蔵ヒンジを上筐体と下筐体に取り付けて、相対的に回転させることにより、筐体を開閉する。図1(e)に示すように、下筐体のヒンジ取付穴にケース1を挿入し、上筐体のヒンジ取付穴にホルダ2を挿入する。筐体取付穴の凹凸とケース1、ホルダ2の凹凸を嵌合させて、上筐体とホルダ2間、下筐体とケース1間を、回転しないように固定する。図1(f)に示すように、上筐体内基板と下筐体内基板は、接続用フレキシブル基板で接続されている。図1(g)に示すように、アンテナは接点バネで下筐体内の高周波回路部に接続される。接触子7は、下筐体の基板上に設けた端子が接して、アンテナエレメントと高周波回路を接続する。
【0024】
次に、図2を参照しながら、アンテナ内蔵ヒンジの動作を説明する。図2(a)の分解図と図2(b)の断面図に示すように、シャフト3が、ホルダ2、固定カム5、可動カム4、スプリング6、ケース1を貫通している。ケース1と可動カム4の凹凸を嵌合させて、相対回転しないようにする。シャフト3に平坦部を設け、ホルダ2に対して相対回転しないように固定する。ホルダ2と固定カム5の凹凸を嵌合させて、相対回転しないようにする。シャフト3とケース1は相対的に回転可能な関係でなければならないので、シャフト3の先端を半径方向に広げてつぶして、ワッシャ8にシャフト3を加締めて、シャフト3がケース1に対してワッシャで円滑に回転できるように保持する。接触子7とワッシャ8とシャフト3が電気的に接続される。この例では、ピン15はシャフト3と一体化されている。
【0025】
ケース1と可動カム4の複合部品と、固定カム5とホルダ2の複合部品とは、相対的に回転可能なようにシャフト3で保持されている。可動カム4は、スプリング6により固定カム5に押し付けられている。固定カム5と可動カム4は、互いに回転可能なように嵌合している。組み立てる際は、スプリング6を圧縮した状態で、シャフト3の左端(図2(b)左端)の穴部外周を外側へ倒すように加工して、スプリング6の圧縮状態を維持し、両カムに荷重を印加する。
【0026】
ヒンジ部を中心にして、下筐体に対して上筐体を開閉させたとき、可動カム4と固定カム5の嵌合面の形状に応じて、全閉では閉じる方向に力が働いて、全閉状態を維持する。全開では開く方向に力が働いて、全開状態を維持する。中間より開いた範囲では開く方向に力が働き、中間より閉じた範囲では閉じる方向に力が働く。必要に応じて、中間の半開状態を維持するようにもできる。これらのヒンジ機能は、従来のヒンジと同じである。実施例2以下のようにアンテナエレメントの構成が異なっても、ヒンジ部の構成は同じであり、ヒンジ動作も同じである。
【0027】
図2(b)に示すヒンジに内蔵したシャフト3の電気的長さは、1.7〜2GHz帯の波長の約1/4となる。したがって、図2(c)に示すように、シャフト3は、1.7〜2GHz帯の略λ/4モノポールアンテナとして動作する。アンテナ電流分布を曲線で示してある。電流の方向を矢印で示してある。携帯端末の下側筐体基板クランドは、一般的には1.7〜2GHz帯の約3λ/4の長さがある。したがって、下側筐体基板クランドには3λ/4の電流が乗り、ヒンジ部の電流と合わせてアンテナが構成されて、送受信動作をする。アンテナエレメントとして動作させるシャフト3は太い方が、使用可能周波数帯域幅が広くなり、アンテナ性能が向上する。
【0028】
上記のように、本発明の実施例1では、アンテナ内蔵ヒンジを、通信用単一バンドの直線状導体アンテナエレメントを内蔵した構成としたので、高性能なアンテナを小型にできる。
【実施例2】
【0029】
本発明の実施例2は、直線状導体と等ピッチヘリカルコイルからなる通信用単一バンドのアンテナエレメントを内蔵したアンテナ内蔵ヒンジである。
【0030】
図3に、アンテナ内蔵ヒンジの分解図と断面図とアンテナ動作図を示す。図3において、ピン15は、ヒンジの端部金属部材である。ヘリカルエレメント11は、螺旋状の導体であり、ローディングコイルとして機能するアンテナエレメントである。その他の部材は、実施例1と同じである。
【0031】
上記のように構成された本発明の実施例2におけるアンテナ内蔵ヒンジの機能と動作を説明する。図3(a)の分解図と図3(b)の断面図に示すように、シャフト3が、ホルダ2、固定カム5、可動カム4、スプリング6、ケース1を貫通している。等ピッチのヘリカルエレメント11の一端がシャフト3に接触し、他端がピン15に接触して、電気的に接続されている。ピン15は、金属であり、ホルダ2に対して圧入して固定する。または、ホルダ2とピン15にそれぞれ凹凸を設けて、パチンと嵌るまで押し込んで固定する。その他の基本的構成は実施例1と同じである。
【0032】
図3(c)に示すように、シャフト3に接続されたヘリカルエレメント11により、アンテナエレメントの電気的長さが長くなり、800MHz帯の略λ/4のアンテナエレメントとして動作する。一般的に、携帯端末の下側筐体基板クランドは、800MHz帯の約λ/4の電気的長さがある。そのため、800MHz帯の略λ/4のアンテナエレメントとして動作する。アンテナ電流分布を曲線で示してある。電流の方向を矢印で示してある。ヒンジ部内のアンテナエレメントと下筐体基板クランドで、略λ/2ダイポールアンテナを構成し、送受信の動作をする。
【0033】
上記のように、本発明の実施例2では、アンテナ内蔵ヒンジを、直線状導体と等ピッチヘリカルコイルからなる通信用単一バンドのアンテナエレメントを内蔵した構成としたので、高性能なアンテナを小型にできる。
【実施例3】
【0034】
本発明の実施例3は、直線状導体と不等ピッチヘリカルコイルからなる通信用マルチバンドのアンテナエレメントを内蔵したアンテナ内蔵ヒンジである。
【0035】
図4に、アンテナ内蔵ヒンジの分解図と断面図とアンテナ動作図を示す。図4において、ヘリカルエレメント16は、密ピッチ部と疎ピッチ部からなる螺旋状の導体であり、チョークコイルとローディングコイルとして機能するアンテナエレメントである。その他の部材は、実施例1、2と同じである。
【0036】
上記のように構成された本発明の実施例3におけるアンテナ内蔵ヒンジの機能と動作を説明する。図4(a)の分解図と図4(b)の断面図に示すように、シャフト3が、ホルダ2、固定カム5、可動カム4、スプリング6、ケース1を貫通している。不等ピッチのヘリカルエレメント16の一端がシャフト3に接触し、他端がピン15に接触して、電気的に接続されている。その他の基本的構成は実施例1、2と同じである。
【0037】
図4(c)に示すように、800MHz帯では、不等ピッチのヘリカルエレメント16の全体がローディングコイルとして動作する。ピン15とシャフト3も含めて略λ/4のアンテナエレメントとして動作する。下筐体グランドとともに略λ/2ダイポールアンテナとして動作する。1.7〜2GHz帯では、ヘリカルエレメント16の密ピッチ部がチョークコイルとして動作し、ハイインピーダンスとなる。密ピッチ部より右側の疎ピッチ部とピン15は、電気的に切り離される。シャフト3のみが略λ/4のモノポールアンテナとして動作する。アンテナ電流分布を曲線で示してある。電流の方向を矢印で示してある。このように、800MHz帯と1.7〜2GHz帯の多周波数アンテナとして動作する。
【0038】
図4(d)に示すように、固定カムも可動カムも無い単純ヒンジにアンテナを内蔵することもできる。通常は、ヒンジ部の片側にはクリック付きのヒンジを取り付けて、反対側にクリックの無い単なる軸を取り付けて、ヒンジ機能を構成している。クリックの無い単なる軸のヒンジにもアンテナを組み込むこといが可能である。この構成は、他の実施例の場合も同様に可能である。
【0039】
上記のように、本発明の実施例3では、アンテナ内蔵ヒンジを、直線状導体と不等ピッチヘリカルコイルからなる通信用マルチバンドのアンテナエレメントを内蔵した構成としたので、高性能なアンテナを小型にできる。
【実施例4】
【0040】
本発明の実施例4は、直線状導体と等ピッチヘリカルコイルとスリーブからなる通信用マルチバンドのアンテナエレメントを内蔵したアンテナ内蔵ヒンジである。
【0041】
図5に、アンテナ内蔵ヒンジの分解図と断面図とアンテナ動作図を示す。図5において、ヘリカルエレメント11は、等ピッチの螺旋状の導体であり、ローディングコイルまたはチョークコイルとして機能するアンテナエレメントである。ワッシャ12は、ヘリカルエレメントとスリーブをつなぐ金属部材である。スリーブ13は、筒状のアンテナエレメントである。カラー14は、ヘリカルエレメントとスリーブの間を絶縁する部材である。その他の部材は、実施例1〜3と同じである。
【0042】
上記のように構成された本発明の実施例4におけるアンテナ内蔵ヒンジの機能と動作を説明する。図5(a)の分解図と図5(b)の断面図に示すように、シャフト3が、ホルダ2、固定カム5、可動カム4、スプリング6、ケース1を貫通している。等ピッチのヘリカルエレメント11の一端がシャフト3に接触し、他端がワッシャ12に接触して、シャフト3とヘリカルエレメント11とスリーブ13とピン15が電気的に接続されている。その他の基本的構成は実施例1〜3と同じである。
【0043】
円筒状のスリーブをアンテナエレメントにする方法について説明する。高誘電率の素材を用いて物理的な長さを小さくしながら電気的な長さを稼いだアンテナは性能が良くない。特に、携帯端末の大きさに対して波長が長い800MHz帯の性能が落ちる。そこで、800MHz帯では、ローディングコイルの右端をスリーブの内側に接続して、スリーブの内側もアンテナエレメントとして動作させ、十分な電気的長さを得る。スリーブ13の外側から絞って内側に凸部を作り、ヘリカルエレメント11に押されるワッシャ12を止める。全周を絞って円周状の凸部を形成してもよいし、点状に絞って3点以上の凸部を形成してもよい。
【0044】
図5(c)に示すように、低い周波数の800MHz帯では、ヘリカルエレメント11がローディングコイルとして動作するので、長いアンテナエレメントと等価になる。図5(d)に示すように、ヘリカルエレメント11の電気長とスリーブ13の内面と外面の長さがシャフト3の長さに加算される。すなわち、(シャフト3〜ヘリカルエレメント11〜ワッシャ12〜スリーブ13内壁〜スリーブ13左端〜スリーブ13外壁〜スリーブ13右端〜ピン15)の経路全てが、略λ/4のアンテナエレメントとして動作する。下筐体グランドとともに略λ/2ダイポールアンテナとして動作する。
【0045】
高い周波数の1.7〜2MHz帯では、ヘリカルエレメント11がチョークコイルとして動作し、ハイインピーダンスとなり、ヘリカルエレメント11より右側のスリーブ13とピン15は切り離されて、シャフト3が略λ/4のアンテナエレメントとして動作する。図5(d)に示すように、シャフト3のみが略λ/4のアンテナエレメントとして動作する。アンテナ電流分布を曲線で示してある。電流の方向を矢印で示してある。このように、1.7〜2MHz帯と800MHz帯の多周波数アンテナとして動作する。
【0046】
上記のように、本発明の実施例4では、アンテナ内蔵ヒンジを、直線状導体と等ピッチヘリカルコイルとスリーブからなる通信用マルチバンドのアンテナエレメントを内蔵した構成としたので、高性能なアンテナを小型にできる。
【実施例5】
【0047】
本発明の実施例5は、直線状導体とチップ部品とスリーブからなる通信用マルチバンドのアンテナエレメントを内蔵したアンテナ内蔵ヒンジである。
【0048】
図6に、アンテナ内蔵ヒンジの分解図と断面図と回路図とアンテナ動作図を示す。図6において、カラー14は、スリーブとピンの間をつなぐ金属部材である。プリント基板17は、チップコイルなどを搭載した基板である。チップ18は、チップコイルやチップコンデンサである。スプリング19は、カラーを介してスリーブを押して固定するバネであり、スリーブ13とプリント基板17の接続荷重印加用である。
【0049】
上記のように構成された本発明の実施例5におけるアンテナ内蔵ヒンジの機能と動作を説明する。図6(a)の分解図と図6(b)の断面図に示すように、シャフト3が、ホルダ2、固定カム5、可動カム4、スプリング6、ケース1を貫通している。プリント基板17の一端がシャフト3に接触し、他端がスリーブ13に接触して、シャフト3とチップ18とスリーブ13が電気的に接続されている。その他の基本的構成は実施例1〜4と同じである。
【0050】
シャフト3の先にチップ18を設けて、スリーブ13を接続する。チップ18は、チップコイルか、チップコイルとチップコンデンサからなる並列共振回路である。スリーブ13の先にカラー14とスプリング19とピン15を設ける。スプリング19の一端がピン15に当接し、他端はカラー14に当接し、圧縮された状態で組み込む。したがって、カラー14がスリーブ13をプリント基板17に押し付け、プリント基板17がシャフト3に押し付けられる。すなわち、(シャフト3〜プリント基板17左側銅箔〜基板17内スルーホール〜チップ18〜基板17右側銅箔〜スリーブ13)の経路で接続される。携帯端末の電気的な条件によっては、カラー14とピン15のいずれかまたは両方を樹脂にして、アンテナの長さを短くしてもよい。チップ18は小型であるので、ヘリカルコイルを用いる場合よりアンテナを小型にできる。しかし、コストはヘリカルコイルよりかかる。
【0051】
図6(c)に示すように、チップ18がチップコイルの場合、低い周波数の800MHz帯では、チップコイルが、ローディングコイルとして動作する。(シャフト3〜チップコイル〜スリーブ13〜カラー14〜ピン15)の全てが1つとなって、略λ/4のアンテナエレメントとして動作する。高い周波数の1.7〜2GHz帯では、チップコイルがチョークコイルとして働いてハイインピーダンスとなる。スリーブ13とピン15は切り離されて、シャフト3が略λ/4のアンテナエレメントとして動作する。このようにして、1.7〜2MHz帯と800MHz帯の多周波数アンテナとして動作する。
【0052】
図6(d)に示すように、チップ18がチップコイルとチップコンデンサからなる並列共振回路の場合、低い周波数の800MHz帯では、チップコンデンサはハイインピーダンスとなり作用せず、チップコイルがローディングコイルとして動作するので、長いアンテナエレメントと等価になる。(シャフト3〜チップコイル〜スリーブ13〜カラー14〜ピン15)の全てが1つとなって、略λ/4のアンテナエレメントとして動作する。
【0053】
高い周波数の1.7〜2GHz帯では、チップコイルとチップコンデンサが並列共振してハイインピーダンスになる。スリーブ13とピン15が切り離され、シャフト3が略λ/4のアンテナエレメントとして動作する。チョークコイルのみでハイインピーダンスにして切り離す場合より、並列共振回路で切り離す方が鋭く切り離すことができて性能が向上する。このようにして、1.7〜2MHz帯と800MHz帯の多周波数アンテナとして動作する。
【0054】
図6(e)に示すように、800MHz帯では、シャフト3とチップコイルとスリーブ13とカラー14とピン15が略λ/4のアンテナエレメントとして動作する。下筐体グランドとともに略λ/2ダイポールアンテナとして動作する。1.7〜2GHz帯では、チョークコイルまたは並列共振回路がハイインピーダンスとなり、スリーブ13は電気的に切り離される。シャフト3のみが略λ/4のアンテナエレメントとして動作する。アンテナ電流分布を曲線で示してある。電流の方向を矢印で示してある。
【0055】
上記のように、本発明の実施例5では、アンテナ内蔵ヒンジを、直線状導体とチップ部品とスリーブからなる通信用マルチバンドのアンテナエレメントを内蔵した構成としたので、高性能なアンテナを小型にできる。
【実施例6】
【0056】
本発明の実施例6は、通信用とTV用のマルチバンドのアンテナエレメントを内蔵したアンテナ内蔵ヒンジである。
【0057】
図7に、アンテナ内蔵ヒンジの断面図とアンテナ動作図を示す。図7において、ワッシャ20は、スリーブとチョークコイルをつなぐ金属部材である。チョークコイル21は、通信用のアンテナエレメントとピンをつなぐ導電部材である。ピン15は、上筐体のグランドに接続されている。その他の部材は実施例1〜5と同じである。
【0058】
上記のように構成された本発明の実施例6におけるアンテナ内蔵ヒンジの機能と動作を説明する。図7(a)の断面図に示すように、シャフト3が、ホルダ2、固定カム5、可動カム4、スプリング6、ケース1を貫通している。等ピッチのヘリカルエレメント11の一端がシャフト3に接触し、他端がワッシャ12に接触して、シャフト3とヘリカルエレメント11とスリーブ13が電気的に接続されている。スリーブ13が、ワッシャ20とチョークコイル21を介してピン15に接続されている。ピン15が、上筐体のグランドに接続されている。その他の基本的構成は実施例1〜5と同じである。
【0059】
上筐体のグランドと下筐体のグランドを、TV用の半波長ダイポールアンテナとして利用する。TV用アンテナとして利用する場合は、ヒンジ内の通信用のアンテナエレメントは、単なる給電線として働くのみである。実施例4のアンテナ素子にチョークコイルを付加して上筐体の基板に接続した例を説明するが、図7(c)〜(f)に示すように、他の実施例のアンテナ素子に同様にチョークコイルを付加して上筐体の基板に接続しても、同様な効果が得られる。
【0060】
地上デジタルTV受信のために、通信用アンテナ部分の先端に、ワッシャ20とチョークコイル21を追加する。通信用アンテナ部分(ワッシャ20より左側)は、実施例1〜5のいずれでもよい。通話用周波数帯の800MHz帯と1.7〜2GHz帯でのアンテナ動作は、実施例1〜5と同じである。もちろん、TV放送の受信に限らず、このTV放送帯における他の電波の通信にも利用できる。
【0061】
図7(b)に示すように、ヒンジ右端に設けたチョークコイル21が、通話帯域の800MHz帯と1.7〜2GHz帯に対してはハイインピーダンスとなり、上筐体基板グランドは切り離され、アンテナエレメントとしては動作しない。地上デジタルTVの470〜770MHzの周波数帯では、チョークコイル21が低インピーダンス状態となり、シャフト3〜ピン15が上筐体基板グランドに接続される。上筐体基板グランドと下筐体基板グランドのそれぞれが、略λ/4のアンテナエレメントとして動作する。上下筐体合わせて略λ/2ダイポールアンテナとして動作する。アンテナ電流分布を曲線で示してある。電流の方向を矢印で示してある。
【0062】
上記のように、本発明の実施例6では、アンテナ内蔵ヒンジを、通信用とTV用のマルチバンドのアンテナエレメントを内蔵した構成としたので、高性能なアンテナを小型にできる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のアンテナ内蔵ヒンジは、携帯電話機などの携帯端末のアンテナとして最適である。
【符号の説明】
【0064】
1 ケース
2 ホルダ
3 シャフト
4 可動カム
5 固定カム
6 スプリング
7 接触子
8 ワッシャ
9 Oリング(大径)
10 Oリング(小径)
11 ヘリカルエレメント(等ピッチ)
12 ワッシャ
13 スリーブ
14 カラー
15 ピン
16 ヘリカルエレメント(不等ピッチ)
17 プリント基板
18 チップ
19 スプリング
20 ワッシャ
21 チョークコイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末の2つの筐体を開閉可能に接続するように、一方の筐体に回転不能に取り付けられたケースと、他方の筐体に回転不能に取り付けられたホルダと、前記ホルダと前記ケースとを貫通してヒンジ軸となるシャフトとを具備する筒状ヒンジにアンテナを内蔵させたアンテナ内蔵ヒンジであって、前記シャフトを素子導体として含む通信用の略1/4波長のアンテナ素子と、高周波給電回路に接触して接続する端子であって前記アンテナ素子の一端に接続された接触子とを備えることを特徴とするアンテナ内蔵ヒンジ。
【請求項2】
前記アンテナ素子は、通信用単一バンドのアンテナ素子であることを特徴とする請求項1記載のアンテナ内蔵ヒンジ。
【請求項3】
前記アンテナ素子の主要部は、前記シャフトであることを特徴とする請求項2記載のアンテナ内蔵ヒンジ。
【請求項4】
前記アンテナ素子の主要部は、前記シャフトと等ピッチヘリカルコイルであることを特徴とする請求項2記載のアンテナ内蔵ヒンジ。
【請求項5】
前記アンテナ素子は、通信用マルチバンドアンテナ素子であることを特徴とする請求項1記載のアンテナ内蔵ヒンジ。
【請求項6】
前記アンテナ素子の主要部は、前記シャフトと密ピッチヘリカルコイルと疎ピッチヘリカルコイルであることを特徴とする請求項5記載のアンテナ内蔵ヒンジ。
【請求項7】
前記アンテナ素子の主要部は、前記シャフトと等ピッチヘリカルコイルとスリーブであることを特徴とする請求項5記載のアンテナ内蔵ヒンジ。
【請求項8】
前記アンテナ素子の主要部は、前記シャフトとチップ素子とスリーブであることを特徴とする請求項5記載のアンテナ内蔵ヒンジ。
【請求項9】
前記チップ素子は、チップコイルであることを特徴とする請求項8記載のアンテナ内蔵ヒンジ。
【請求項10】
前記チップ素子は、チップコイルとチップコンデンサからなる並列共振回路であることを特徴とする請求項8記載のアンテナ内蔵ヒンジ。
【請求項11】
前記アンテナ素子に、チョークコイルを介していずれかの筐体の基板を接続して、TV放送帯受信用アンテナとして機能させることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のアンテナ内蔵ヒンジ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−239347(P2011−239347A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111353(P2010−111353)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(592245432)スタッフ株式会社 (31)
【Fターム(参考)】