説明

アンテナ装置および電子時計

【課題】腕時計におけるデザイン的な制約が回避でき、小型で受信制御の容易なアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ装置2は、GPS衛星からの測位用信号を受信可能な腕時計1に備えられていて、パッチ金属板2a(第1電極)と、ムーブ電極部2c(第2電極)と、パッチ金属板2aとムーブ電極部2cとの間に配置された誘電体層2bと、を有している。このアンテナ装置2のパッチ金属板2aは、腕時計1における文字板3の少なくとも一部を構成していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型化が可能な構成のアンテナ装置、およびこのアンテナ装置を備えた電子
時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子時計に備えることが可能なアンテナ装置として、アンテナが電子時計の表示
板(文字板)に接着されて設けられている構成のもの、が開示されている。この構成によ
れば、アンテナを表示板の裏面側、即ち視認されない側に設けることにより、アンテナに
よって、電子時計のデザイン的外観が損なわれる事態を回避でき、電子時計は、従来の外
観をほぼ維持しつつ、非接触データ通信機能を備えることが可能である(例えば特許文献
1)。
【0003】
また、他の開示例として、複数(2つ)のチップ状の素子を有する構成のアンテナ装置
がある。このアンテナ装置によれば、GPS(Global Positioning System)電波等の
円偏波を受信することが可能である。さらに、アンテナ装置の該素子を電子時計用文字板
の時字として用いることもでき、アンテナ装置は、アンテナとしての機能に加え、電子時
計のデザイン要素の一部としても機能することが可能である(例えば特許文献2)。
これらアンテナ装置は、従来、デザイン面や大きさ等の制約で搭載が困難であった電子
時計に備えられ、この場合アナログ式の電子時計の機能拡大に貢献している。
【0004】
また、他の開示例として、電波の受信端末として機能する平面型受信アンテナと、デジ
タル表示部を含む時計部と、を重ねて配置した電子時計における受信装置(アンテナ装置
)が開示されている。この受信装置の例では、平面型受信アンテナと時計部とを単に重ね
ただけではなく、時計部のカバーガラスを平面型受信アンテナのアンテナ誘電体として用
い、カバーガラスに導電性薄膜を有する構成例が示されている。この構成によれば、受信
装置の小型化を図ることが可能となった(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−66169号公報
【特許文献2】特開2007−124011号公報
【特許文献3】特開平10−197662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1における技術では、通信感度を高めるために、表示板におけるアン
テナが取り付けられる領域の材料は、導電部材を避けて絶縁部材でなくてはならない、と
いう制約があり、表示板の材料選択やデザインに係る表面処理等で課題が残っていた。ま
た、特許文献2における技術では、複数の素子の受信特性方向が交差するように配置しな
くてはならず、さらに受信特性方向の交叉角度に応じた位相差となるように、受信信号の
位相を変化させる位相変化手段を設ける必要があり、煩雑な制御を行なわなくてはならな
い、という課題があった。さらに、特許文献3における技術では、アンテナ誘電体として
カバーガラスを用いているため、カバーガラスの表面側、つまり時刻を視認する側、に導
電性薄膜および導電性薄膜に給電するための給電端子等を設けてあり、それらが時刻等の
視認を妨げないような配置や耐擦性、耐食性等に考慮しなければならない、という制約が
あった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適
用例または形態として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例に係るアンテナ装置は、電子時計に備えられ、衛星からの測位用
信号を受信するものであって、第1電極と、第2電極と、前記第1電極および前記第2電
極の間に配置された誘電体層と、を有し、前記第1電極または前記第2電極のいずれか一
方の電極が、前記電子時計の文字板の少なくとも一部を構成していることを特徴とする。
【0009】
このアンテナ装置によれば、第1電極、誘電体層および第2電極を有していて、この構
成で衛星からの測位用信号を受信する。ここで、衛星からの測位用信号は、移動している
アンテナ装置であっても、受信可能となるように、円偏波が用いられている。円偏波は、
電界の方向が時間経過に伴い回転している。従って、円偏波を受信するためには、第1電
極または第2電極に、時間経過に伴って回転する電流、即ち、直交する電流を流して位相
差のある励振である励振モードを、発生させるようにすれば良い。アンテナ装置は、この
ような円偏波を受信することに優れた構成であり、円偏波を受信する該電極は、給電され
ると、直交する位相差の2つの励振モードで励振して円偏波を受信することになる。この
ような機能を有するアンテナ装置は、小型の電子機器である電子時計に、最適に組み込む
ことが可能である。この場合、第1電極または第2電極のいずれか一方の電極を、電子時
計の文字板の少なくとも一部として構成することにより、電子時計におけるアンテナ装置
の占める領域を極小に近づけることが可能となる。また、文字板を電極として構成して電
波受信することで、従来技術のような、文字板を絶縁部材等にして電波吸収を回避する配
慮等が不要であると共に、電波の受信信号の位相を変化させる等の電気的制御も不要であ
る。このように、アンテナ装置は、組み込まれた電子時計のデザイン等を制約することな
しに、アナログ式の電子時計における電波受信の機能を果たすことが可能である。
【0010】
[適用例2]上記適用例に係るアンテナ装置は、前記文字板が、前記第1電極または前
記第2電極を形成する電気的導体部と、前記電気的導体部の表面に形成された時刻表示体
部と、を有していることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、アンテナ装置において、文字板の少なくとも一部を構成する、第1
電極または第2電極のいずれか一方の電極は、給電されて測位用信号を受信する機能を発
揮するように、電気的に導体な材料で形成された電気的導体部である。電気的導体部の材
料としては、銅・アルミニウム・鉄・金・銀等やそれらの合金が挙げられる。また、この
電気的導体部の表面には、例えば、時針、分針が指し示す時刻を表示してある時刻表示体
部が形成されている。このように、電気的導体部をベース基材とした文字板であれば、従
来のようにアンテナ装置を電子時計内に新たに個別設置する場合に比べて、設置スペース
の節減が図れることに加え、他時計部品を再配置するなどの特別な設計配慮をする必要も
ない。
【0012】
[適用例3]上記適用例に係るアンテナ装置は、前記時刻表示体部が、電気的に不導体
であることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、電子時計の時刻を視認するために形成されている時刻表示体部が、
電気的に不導体の特性を有しているため、電気的導体部へ届くべき円偏波が、時刻表示体
部によって、減衰してしまうような事態を回避することが可能である。つまり、アンテナ
装置は、文字板として機能しつつ、優れた受信性能を維持することが可能である。
【0014】
[適用例4]上記適用例に係るアンテナ装置は、前記一方の電極と対向して配置されて
いる他方の電極が、前記電子時計の機械体の少なくとも一部を構成していることが好まし
い。
【0015】
この構成によれば、アンテナ装置は、一方の電極が文字板として機能すると共に、他方
の電極が機械体の少なくとも一部を構成している。即ち、他方の電極として、機械体を兼
用することにより、電子時計内に新たに他方の電極を配置する必要がなくなる。これによ
り、アンテナ装置を組み込んでも、電子時計の大きさ、特に厚みの増加をより抑制するこ
とが可能である。
【0016】
[適用例5]本適用例に係るアンテナ装置は、電子時計に備えられ、衛星からの測位用
信号を受信するアンテナ装置であって、第1電極と、第2電極と、前記第1電極および前
記第2電極の間に配置された誘電体層と、を有するアンテナ部と、光反射部を有し、情報
を表示する液晶パネル部と、を有する反射型液晶表示部と、を備え、前記第1電極または
前記第2電極のいずれか一方の電極が、前記反射型液晶表示部の前記光反射部の少なくと
も一部を構成していることを特徴とする。
【0017】
このアンテナ装置によれば、アンテナ装置は、アンテナ部と、アナログ式の電子時計に
おける文字板に該当する反射型液晶表示部とを有していて、アンテナ部は、第1電極が誘
電体層を介して第2電極と対向している構成であり、反射型液晶表示部は、液晶パネル部
と液晶パネル部を透過した光を反射し再度液晶パネル部を透過させる光反射部とを有して
いる。このアンテナ装置では、アンテナ部の第1電極または第2電極のいずれか一方の電
極を、光反射部の少なくとも一部として構成しているため、従来のように、電極(導電性
薄膜)を時刻等の視認を妨げないように配置することや耐擦性、耐食性等を考慮する必要
がない。これにより、アンテナ装置は、電波を受信しつつ構成要素数を削減して、電子時
計の小型薄型化を図ることが可能である。
【0018】
[適用例6]上記適用例に係るアンテナ装置は、電子時計に備えられ、衛星からの測位
用信号を受信するアンテナ装置であって、第1電極と、第2電極と、前記第1電極および
前記第2電極の間に配置された誘電体層と、を有するアンテナ部と、情報を表示する液晶
パネル部を有する透過型液晶表示部と、前記透過型液晶表示部の光源であり、発光体層と
前記発光体層を発光させるための光源電極とを有する有機エレクトロルミネッセンス部と
、を備え、前記第1電極または前記第2電極のいずれか一方の電極が、前記有機エレクト
ロルミネッセンス部の前記光源電極の少なくとも一部を構成していることを特徴とする。
【0019】
このアンテナ装置によれば、アンテナ装置は、アンテナ部と、アナログ式の電子時計に
おける文字板に該当する透過型液晶表示部とを有していて、アンテナ部は、第1電極が誘
電体層を介して第2電極と対向している構成であり、透過型液晶表示部は、液晶パネル部
と液晶パネル部の光源として光を発光する光源部とを有している。このアンテナ装置では
、アンテナ部の第1電極または第2電極のいずれか一方の電極を、光源部の少なくとも一
部として構成しているため、従来のように、電極(導電性薄膜)を時刻等の視認を妨げな
いように配置することや耐擦性、耐食性等を考慮する必要がない。これにより、アンテナ
装置は、電波を受信しつつ構成要素数を削減して、電子時計の小型薄型化を図ることが可
能である。
【0020】
[適用例7]本適用例に係る電子時計は、上記適用例のいずれかに記載のアンテナ装置
を備えていることを特徴とする。
【0021】
この電子時計によれば、第1電極または第2電極のいずれか一方の電極が、アナログ式
の電子時計の文字板、または文字板機能を果たす反射型液晶表示部が有する光反射部、ま
たは文字板機能を果たす透過液晶表示部が有する光源電極、である構成とすることにより
、アンテナ装置の占める領域を極小に近づけることが可能となる。これにより、電子時計
は、アンテナ装置を組み込まれても、デザイン等の制約を受けることがなく、且つ、電波
受信の機能も十分に果たすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態1におけるGPSシステムの概要を示す模式図。
【図2】実施形態1におけるGPS受信機能を備えたアナログ式の腕時計の構成を示す断面図。
【図3】腕時計の文字板およびアンテナ装置の構成を示す斜視図。
【図4】(a)アンテナ装置の詳細な構成を示す断面図、(b)パッチ金属板における励振モードを示す平面図。
【図5】GPS受信機能を備えた腕時計の回路構成を示すブロック図。
【図6】実施形態2におけるGPSシステムの概要を示す模式図。
【図7】(a)実施形態2におけるGPS受信機能を備えたデジタル式の腕時計の構成を示す断面図、(b)アンテナ装置の構成を示す断面。
【図8】(a)液晶表示部の構成を示す平面図、(b)液晶表示部の構成を示す断面図。
【図9】GPS受信機能を備えた腕時計の回路構成を示すブロック図。
【図10】(a)アンテナ装置への給電構成を示す断面図、(b)光反射板(第1電極)における励振モードを示す平面図。
【図11】実施形態3における有機ELを備えたアンテナ装置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のアンテナ装置およびアンテナ装置を備えた電子時計について、添付図
面を参照して説明する。
【0024】
(実施形態1)
【0025】
まず、衛星からの測位用信号を受信して利用する通信システムの一例として、GPSシ
ステムを取り上げ、その概要について説明する。なお、衛星を利用した通信システムとし
ては、GPSシステムの他に、WAAS(Wide Area Augmentation System)、QZS
S(Quasi Zenith Satellite System)、GLONASS(GLObal NAvigation Sate
llite System)、GALILEO等があり、これらシステムの利用も可能である。
【0026】
図1は、実施形態1におけるGPSシステムの概要を示す模式図である。図1に示すよ
うに、GPS衛星(衛星)90は、地球の上空の所定の軌道上を周回しており、例えば1
.57542GHzのマイクロ波に航法メッセージ等を重畳させた、衛星信号を地上に送
信している。このGPS衛星90は原子時計を搭載しており、衛星信号には原子時計で計
時された極めて正確な時刻情報であるGPS時刻情報が含まれている。そのため、GPS
受信機としての機能を備えた、アナログ式の腕時計(電子時計)1は、衛星信号を受信し
て、内部時刻の進みまたは遅れを修正することにより、正確な時刻を表示することができ
る。この修正は、測時モードとして行なわれる。
【0027】
また、衛星信号にはGPS衛星90の軌道上の位置を示す軌道情報も含まれている。つ
まり、腕時計1は、測位計算を行うこともでき、通常、4つ以上のGPS衛星からそれぞ
れ送信された衛星信号を受信することによって、それら中に含まれる軌道情報およびGP
S時刻情報を使用して測位計算を行うようになっている。測位計算により、腕時計1は、
現在位置に合わせて時差を修正することが容易にでき、この修正は、測位モードとして行
なわれる。衛星信号を利用すれば、現在位置表示、移動距離測定、移動速度計測を行うな
どの各種応用も可能であるが、腕時計1では、測時モードおよび測位モードによる、時刻
および時差の修正機能を有する場合を例にして説明する。
【0028】
このような、GPS受信機能を備えた腕時計1について、その構成の一例を説明する。
図2は、実施形態1におけるGPS受信機能を備えた腕時計の構成を示す断面図である。
この図2および図1に示すように、GPS受信機能付きの腕時計1は、ステンレス鋼、チ
タン等の金属やプラスティック等の樹脂で構成された外装ケース17を備えている。外装
ケース17は、この場合、略円筒状に形成され、時刻を視認する側である表面側の開口に
ガラス19が取り付けられ、裏面側の開口に裏蓋26が取り付けられている。外装ケース
17の内部には、時刻を刻むための機構であるムーブメント(機械体)13と、ムーブメ
ント13の表面側に設けられ衛星信号を受信するためのアンテナ装置2と、アンテナ装置
2の表面側に設けられ、アナログ式に時刻を示すための時刻表示が形成されている文字板
3と、文字板3の時刻表示を指し示す指針12と、ムーブメント13に内蔵された電池2
4等が配置されている。電池24は、この場合、ボタン型の一次電池であるが、ソーラー
セル等で光発電を行うことで充電可能な二次電池であっても良い。
【0029】
ムーブメント13は、モーターコイル、ステータ、ローター等で構成されているステッ
プモーター20と、ステップモーター20の駆動を指針12へ伝達する輪列21と、を含
んで構成されている。このムーブメント13の裏蓋26の側には、回路基板25が配置さ
れ、回路基板25は、図5を参照して後述する受信モジュール30および制御部40を有
し、コネクターを介してアンテナ装置2や電池24と接続されている。即ち、受信モジュ
ール30や制御部40は、電池24から供給される電力で駆動されている。また、アンテ
ナ装置2へも、衛星信号を受信するために、電池24から受信モジュール30の給電部7
0(図5)を介して給電されている。
【0030】
そして、腕時計1は、外装ケース17の3時側に、リューズ14や、ボタンA15およ
びボタンB16を有している。ボタンA15およびボタンB16は、これらを手動操作す
ることにより、測時モードと測位モードとに設定できるように構成されている。例えば、
ボタンA15が押されると、腕時計1は時刻の進み遅れを修正するための測時モードにな
り、ボタンB16が押されると、腕時計1は時差を修正するための測位モードになる。な
お、腕時計1は、測時モードや測位モードを定期的に、そして自動的に実行するように設
定することもできる。
【0031】
次に、腕時計1において、ムーブメント13と指針12との間に配置されている、アン
テナ装置2および文字板3の詳細な構成について、説明する。図3は、腕時計の文字板お
よびアンテナ装置の構成を示す斜視図である。また、図4(a)は、アンテナ装置の詳細
な構成を示す断面図であり、図4(b)は、パッチ金属板における励振モードを示す平面
図である。
【0032】
腕時計1に内装されているアンテナ装置2は、複数のGPS衛星90からの衛星信号を
受信する必要がある。GPS衛星90から送信される衛星信号の電波は、いわゆる円偏波
であるため、アンテナ装置2は、この円偏波を受信するのに適したパッチアンテナである
ことが望ましく、さらに、腕時計に組み込めるように、コンパクトな形態であることが好
ましい。そこで、アンテナ装置2は、腕時計1の文字板3の一部を構成し文字板3と一体
化した形態のパッチアンテナとなっている。
【0033】
図3および図4(a)に示すように、アンテナ装置2は、電気的導体部であり第1電極
としてのパッチ金属板2aと、ムーブメント13の文字板受け面であると共に第2電極と
しての機能を果たすムーブ電極部2cと、パッチ金属板2aおよびムーブ電極部2cとの
間に配置された誘電体層2bと、を有している。
【0034】
パッチ金属板2aは、銅・アルミニウム・鉄・金・銀・パラジウム等の導体またはこれ
らの合金からなり、この場合、銅合金である黄銅を用いて円形に形成されている。そして
、パッチ金属板2aは、円偏波をより効果的に受信するために、外周から円中心へ向かっ
て所定の切り込み量で形成された切り込み部6を有している。切り込み部6は、この場合
、矩形状であって、円中心を通る仮想直線上に対向するように位置して、2つ形成されて
いる。切り込み部6の作用については、図4(b)を参照して後述する。
【0035】
また、パッチ金属板2aには、その表面側に、時刻を表示する時刻表示体部4が形成さ
れている。この時刻表示体部4は、電気的に不導体であるプラスティック塗料等で形成さ
れ、12時、3時、6時、9時を示す位置には突起状の時表示部4aを有している。つま
り、アンテナ装置2のパッチ金属板2aは、パッチ金属板2aに形成された時刻表示体部
4と共に、腕時計1の文字板3を構成している。
【0036】
そして、誘電体層2bは、パッチ金属板2aとほぼ同じ大きさの円形形状であって、使
用可能な材質としては、アルミナ(Al23)、ムライト(3Al23・2SiO2)、
ステアライト(MgO/SiO2)、フォルステライト(2Mg2O/SiO2)、ジルコ
ニア(PSZ)、チタン酸マグネシア(MgTiCO3)等が挙げられる。この誘電体層
2bの特性としては、誘電率が18以上30以下が望ましく、誘電正接が0.001以下
が望ましい。そこで、これらの特性を得るために、電子時計における誘電体層2bのサイ
ズは、円形の場合には直径が2.5cm〜3.5cm、長方形の場合には一辺が2cm〜
4cmであることが望ましく、共に厚さが0.05mm〜1.5mmであることが望まし
い。ここでは、電子時計である腕時計1において、アンテナ装置2の誘電体層2bは、直
径3cm、厚さ0.5mmのチタン酸マグネシア(MgTiCO3)を用い、誘電率が1
7および誘電正接が0.001の特性を有している。
【0037】
このような構成のアンテナ装置2において、アンテナ装置2へ給電部70から電力供給
をするために、給電体5が設けられている。給電体5は、パッチ金属板2aに対する所定
位置である、給電点5aに設けられている。給電体5は、金属製の電気的導体であり、パ
ッチ金属板2aと接続された状態で誘電体層2bに挿通され、挿通された先端が絶縁体を
介してムーブメント13(ムーブ電極部2c)と非接触となるようにして、ムーブメント
13へ装着されている。ムーブメント13へ装着されたパッチ金属板2aへは、給電体5
を介して、給電部70から電力が供給され、同時に、ムーブ電極部2cへも給電部70か
ら電力が供給される。この場合、ムーブ電極部2cは、アース側であり、いわゆる接地電
極として機能する。
【0038】
次に、アンテナ装置2による、GPS衛星90からの測位用信号である電波の受信につ
いて説明する。GPS衛星90からの電波は、受信する対象が、移動体のように任意の方
向を向いていても受信可能となるように、円偏波が用いられている。円偏波は、時間の経
過と共に電界の方向が回転する形態のものである。一般に、アンテナは、電波の電界方向
と同じ方向に電流が流れることにより、該電波を受信することができる。従って、円偏波
を受信するためには、アンテナに流れる電流を時間の経過と共に、回転させることが肝要
である。アンテナに流れる電流が回転するためには、直交する方向に電流を流し90度の
位相差を持った励振を発生させれば良い。アンテナ装置2では、パッチ金属板2aにおい
て、以下に説明するようにして、互いに直交し90度の位相差を持った、2つの励振モー
ドを発生させることにより、円偏波の受信を可能にしている。
【0039】
図4(b)に示すように、アンテナ装置2は、一箇所の給電点5aにおいて、給電体5
から給電するピン給電方式である。この方式は、給電系に特別な回路素子等を用いること
なく励振モードを発生させることができ、円偏波の受信が容易に行える簡便なものである
。そのために、アンテナ装置2は、より確実に円偏波を受信するために、パッチ金属板2
aに切り込み部6を有している。切り込み部6は、この場合、時刻表示体部4の3時およ
び9時の位置に該当するパッチ金属板2aの箇所に、それぞれ設けられ、給電点5aは、
パッチ金属板2aの中心から10時方向へ寄った位置に設けられている。
【0040】
このような配置のアンテナ装置2において、給電部70(図4(a))から給電体5へ
高周波の給電がなされると、パッチ金属板2aの2つの切り込み部6の間には、9時方向
から3時方向へ電流が流れ励振モードF1が発生し、励振モードF1と直交する方向には
、12時方向から6時方向へ電流が流れ励振モードF2が発生する。逆に言えば、アンテ
ナ装置2の構成によれば、上記のような励振モードF1,F2が発生するように、給電点
5aを設定することが可能である。この時、励振モードF1と励振モードF2とが励振す
る間の長さは、切り込み部6の有無により異なっており、切り込み部6の切込み長さを調
整すれば、励振モードF1を励振モードF2と異なる位相とする等の制御が容易に行なえ
る。
【0041】
即ち、アンテナ装置2は、パッチ金属板2aにおける切り込み部6の形状、および、給
電点5aと切り込み部6との相対位置を調整することにより、パッチ金属板2aに発生す
る2つの励振モードF1,F2を制御でき、励振モードF1と励振モードF2とが、90
度ずれた位相となるようにすれば、効果的に円偏波を受信することができる。
【0042】
次に、GPS受信機能を備えた腕時計1の回路構成について説明する。図5は、GPS
受信機能を備えた腕時計の回路構成を示すブロック図である。腕時計1は、少なくとも1
つのGPS衛星90からの衛星信号を受信してGPS時刻情報に基づいて内部時刻情報の
修正を行う測時モードと、複数のGPS衛星90からの衛星信号を受信して測位計算を行
って現在地を求め、現在地から特定される時差およびGPS時刻情報に基づいて、時差情
報の修正を行う測位モードと、を備えている。腕時計1は、アンテナ装置2と、受信モジ
ュール30と、制御部40を含む計時部80と、電池24と、を含んで構成されている。
【0043】
受信モジュール30は、アンテナ装置2が接続されており、SAW(Surface Acousti
c Wave:表面弾性波)フィルター31と、RF(Radio Frequency:無線周波数)部5
0と、ベースバンド部60と、を含んで構成されている。SAWフィルター31は、アン
テナ装置2が受信した信号から衛星信号を抽出する処理を行う。RF部50は、LNA(
Low Noise Amplifier)51と、ミキサー52と、VCO(Voltage Controlled Osci
llator)53と、PLL(Phase Locked Loop)回路54と、IF(Intermediate Fre
quency:中間周波数)アンプ55と、IFフィルター56と、ADC(A/D変換器)5
7と、を含んで構成されている。
【0044】
SAWフィルター31が抽出した衛星信号は、LNA51で増幅され、ミキサー52で
VCO53が出力するクロック信号とミキシングされて中間周波数帯の信号にダウンコン
バートされる。PLL回路54は、VCO53の出力クロック信号を分周したクロック信
号と基準クロック信号とを位相比較してVCO53の出力クロック信号を基準クロック信
号に同期させる。ミキサー52でミキシングされた信号は、IFアンプ55で増幅され、
IFフィルター56で高周波信号が除去される。IFフィルター56を通過した信号は、
ADC(A/D変換器)57でデジタル信号に変換される。ベースバンド部60は、DS
P(Digital Signal Processor)61と、CPU(Central Processing Unit)62
と、SRAM(Static Random Access Memory)63と、RTC(リアルタイムクロッ
ク)64と、を含んで構成されている。また、ベースバンド部60には、温度補償回路付
き水晶発振回路(TCXO:Temperature Compensated Crystal Oscillator)65や
フラッシュメモリー66等が接続されている。
【0045】
温度補償回路付き水晶発振回路(TCXO)65は、温度に関係なくほぼ一定の周波数
の基準クロック信号を生成する。そして、フラッシュメモリー66には時差情報が記憶さ
れている。この時差情報は、地理情報が分割された複数の領域の各々の時差が定義された
情報である。ベースバンド部60は、測時モード又は測位モードに設定されると、RF部
50のADC57が変換したデジタル信号からベースバンド信号を復調する処理を行う。
また、ベースバンド部60は、捕捉したGPS衛星90の航法メッセージに含まれる軌道
情報やGPS時刻情報等の衛星情報を取得してSRAM63に記憶する。
【0046】
そして、計時部80は、制御部40および水晶振動子43を含んで構成されている。制
御部40は、記憶部41と、発振回路42と、駆動回路44とを備え、各種制御を行う。
制御部40は、受信モジュール30を制御し、制御信号を受信モジュール30に送り、受
信モジュール30の受信動作を制御すると共に、制御部40内の駆動回路44を介して指
針12の駆動を制御する。記憶部41には内部時刻情報が記憶されていて、この内部時刻
情報は、腕時計1の内部で計時される時刻の情報である。内部時刻情報は、水晶振動子4
3および発振回路42によって生成される基準クロック信号によって更新されるため、受
信モジュール30への電力供給が停止されていても、内部時刻情報を更新して指針12の
運針を継続することができるようになっている。
【0047】
さらに、制御部40は、測時モードに設定されると、受信モジュール30の動作を制御
し、GPS時刻情報に基づいて内部時刻情報の進みまたは遅れを修正して記憶部41に記
憶し、測位モードに設定されると、受信モジュール30の動作を制御し、GPS時刻情報
および現在地から求められる時差情報に基づいて、内部時刻情報を修正して記憶部41に
記憶する。これにより、腕時計1は、表示している時刻の進みまたは遅れを把握すること
により、水晶振動子43による計時をさらに高精度に修正して、常に正確な時刻を表示す
ることができる。また、腕時計1は、時差情報を把握することにより、時差のある地域間
を移動等した場合でも、常に現在地域の時刻を正確に表示することができる。
【0048】
以上説明した実施形態におけるアンテナ装置2および腕時計1の主要な効果を記載する

【0049】
(1)腕時計1におけるアンテナ装置2は、パッチ金属板2aを、腕時計1の文字板3
の一部として構成している。これにより、アンテナ装置2は、腕時計1の内部で占める領
域を、特に厚さにおいて、ほぼ最小限にすることが可能となる。さらに、パッチ金属板2
aで電波を受信するため、文字板3を電波が透過するように絶縁部材等にする等の考慮が
不要であり、電波の受信信号の位相を変化させる等の電気的制御の追加も不要である。こ
のように、アンテナ装置2は、腕時計1のデザイン等を制約せずに、電波受信の機能を果
たすことが可能である。
【0050】
(2)腕時計1は、アンテナ装置2の有する2つの電極のうち、パッチ金属板2aが文
字板3の一部として機能すると共に、ムーブ電極部2cがムーブメント13の一部として
機能している。即ち、腕時計1は、両電極として時計部品を兼用することにより、アンテ
ナ装置2を内蔵しても、その大きさ、特に厚みの増加をより抑制することが可能である。
(実施形態2)
【0051】
次に、アンテナ装置の他の実施形態について、説明する。この場合、アンテナ装置は、
デジタル式の腕時計(電子時計)に装着され、腕時計は、反射型の液晶表示部を備えてい
る。
【0052】
図6は、実施形態2におけるGPSシステムの概要を示す模式図である。図6に示すよ
うに、GPS衛星(衛星)90は、地球の上空の所定の軌道上を周回し、衛星信号を地上
に送信している。この衛星信号には原子時計で計時された極めて正確な時刻情報であるG
PS時刻情報が含まれている。そのため、GPS受信機としての機能を備えたデジタル式
の腕時計(電子時計)100は、衛星信号を受信して、内部時刻の進みまたは遅れを修正
することにより、正確な時刻を表示することができ、この修正は、測時モードとして行な
われる。
【0053】
また、衛星信号にはGPS衛星90の軌道上の位置を示す軌道情報等も含まれている。
腕時計100は、軌道情報等を利用して測位計算を行う機能等を有し、現在位置に合わせ
て時差を修正すること等も容易にできる。この修正は、測位モードとして行なわれる。こ
のほか、衛星信号を利用すれば、現在位置表示、移動距離測定、移動速度計測を行う等の
各種応用が可能であり、腕時計100では、これらの情報を、アナログ式の腕時計1にお
ける文字板3に該当する反射型液晶表示部400によりデジタル表示することが可能であ
る。
【0054】
このような、GPS受信機能を備えた腕時計100について、その構成の一例を説明す
る。図7(a)は、実施形態2におけるGPS受信機能を備えたデジタル式の腕時計の構
成を示す断面図であり、図7(b)は、アンテナ装置の構成を示す断面である。図7(a
)および図6に示すように、GPS受信機能付きの腕時計100は、ステンレス鋼、チタ
ン等の金属やプラスティック等の樹脂で構成された外装ケース110を備えている。外装
ケース110は、この場合、略円筒状に形成され、時刻等の情報を視認する側である、表
面側の開口に取り付けられたガラス120と、裏面側の開口に取り付けられた裏蓋130
と、外装ケース110の側面に設けられたボタン160a,160b,160c(図6)
と、を有している。これらボタン160は、手動操作により、反射型液晶表示部400へ
の表示の設定等ができるように構成されている。
【0055】
外装ケース110の内部には、時刻等を刻むための駆動機構や情報を処理して表示する
処理機構等を有し、表面側が金属製で略円筒状をなすモジュール150と、モジュール1
50の表面側に配置されたアンテナ装置200と、モジュール150に内蔵された電池1
80等が設けられている。アンテナ装置200は、GPS衛星90からの衛星信号を受信
するためのアンテナ部300と、アンテナ部300の表面側に配置され時刻等の情報を示
すための反射型液晶表示部400と、を有している。この腕時計100の場合、アンテナ
装置200のアンテナ部300および反射型液晶表示部400は、矩形形状であり、外周
が略円形状のリング110aの内周側に収容されている。
【0056】
そして、アンテナ装置200におけるアンテナ部300のより詳細な構成は、この場合
、図7(b)に示すように、モジュール150の表面側から順に、モジュール150の表
面側の面であるモジュール電極部(第2電極)300cと、誘電体層300bと、反射型
液晶表示部400に設けられているパッチ金属板300aと、から成っている。即ち、パ
ッチ金属板300aとモジュール電極部(第2電極)300cとは、誘電体層300bを
介して対向するように位置している。
【0057】
次に、反射型液晶表示部400について説明する。図8(a)は、液晶表示部の構成を
示す平面図であり、図8(b)は、液晶表示部の構成を示す断面図である。図8(b)は
、図8(a)のP−P’に沿った断面図である。図8(a)および(b)において、反射
型液晶表示部400は、反射型液晶表示部400が形成される基材であるTFT(Thin
Film Transistor)基板400aと、TFT基板400aと対をなす対向基板400bと
が、封止材であるシール材400cによって貼り合わされている。このシール材400c
は、両基板面内において、閉ざされた枠状の領域を形成している。
【0058】
そして、反射型液晶表示部400は、TFT基板400aにおけるシール材400cに
よる枠状領域の内側に設けられ、既述したパッチ金属板300aとしても機能する光反射
板(光反射部)400mと、モザイク状等をなし光反射板400mの表面に配置されてい
る複数の画素電極400dと、各画素電極400dをスイッチング制御するTFT(Thin
Film Transistor)400eと、対向基板400bのTFT基板400a側の面に画素
電極400dに対向して配置されている平面状の対向電極400fと、画素電極400d
および対向電極400fを覆うように形成されている配向膜400gと、シール材400
cおよび配向膜400gによって区画された領域内に封入保持されている液晶400hと
、を有している。これら画素電極400d、TFT400e、対向電極400fおよび配
向膜400gは、透明部材により形成されている。液晶400hは、TFT400eによ
りスイッチング制御された画素電極400dに対応して、光430を透過または遮断する
ことにより、各種情報の表示をする。この時、光反射板400mは、対向基板400bの
側から入射して液晶400hを通過した光430を反射する。光反射板400mで反射さ
れた光430は、再度液晶400hを通過して対向基板400bから出射される。これに
より、液晶400hに示された情報を、ガラス120の側から視認することができる。ま
た、反射型液晶表示部400は、端子部410を介して、外部との接続用のフレキシブル
配線420を有している。
【0059】
この反射型液晶表示部400は、光反射板400mが、アンテナ部300のパッチ電極
板(第1電極)300aとしての機能も果たす設定になっていることを特徴としている。
さらに、シール材400c近傍には、第1電極として機能する光反射板400mへ高周波
の給電をするための、給電体400kが配設されている。なお、これら光反射板400m
および給電体400kによる、衛星信号の受信機能ついては図10を参照して後述する。
【0060】
次に、GPS受信機能を備えた腕時計100の回路構成について説明する。図9は、G
PS受信機能を備えた腕時計の回路構成を示すブロック図である。デジタル式の腕時計1
00は、アンテナ部300と、受信モジュール30と、制御部40を含む表示部800と
、電池180と、を含んで構成されている。腕時計100の回路構成部品のそれぞれは、
アナログ式の腕時計1におけるアンテナ装置2、受信モジュール30、制御部40を含む
計時部80および電池24とほぼ同じ機能を果たしている構成であるため、詳細な説明は
割愛する。
【0061】
ここで、腕時計100に内臓されているアンテナ装置200は、複数のGPS衛星90
(図6)からの衛星信号を受信する必要がある。GPS衛星90から送信される衛星信号
の電波は、いわゆる円偏波であるため、アンテナ装置200は、この円偏波を受信するの
に適した、パッチアンテナであることが望ましく、さらに、腕時計100に組み込めるよ
うに、コンパクトな形態であることが好ましい。そこで、アンテナ装置200は、腕時計
100のアンテナ部300と反射型液晶表示部400とを一体化した形態となっている。
【0062】
図10(a)は、アンテナ装置への給電構成を示す断面図であり、図10(b)は、光
反射板(第1電極)における励振モードを示す平面図である。図10に示すように、アン
テナ装置200は、既述した光反射板400mでありパッチアンテナの第1電極としても
機能するパッチ金属板300aと、モジュール150におけるアンテナ装置200の受け
面であり第2電極としての機能も果たすモジュール電極部300cと、パッチ金属板30
0aとモジュール電極部300cとの間に配置された誘電体層300bと、を有している

【0063】
パッチ金属板300aは、通常、銅・アルミニウム・鉄・金・銀・パラジウム等の導体
またはこれらの合金であれば機能するが、この場合、光反射板400mでもあるため、表
面を鏡面に仕上げられたアルミニウムで形成されている。つまり、パッチ金属板300a
は、アンテナ部300を構成すると共に反射型液晶表示部400をも構成している。
【0064】
また、誘電体層300bは、パッチ金属板300aとほぼ同じ大きさの矩形状であって
、厚さ0.5mm、縦2cmおよび横3cmの矩形状をなすチタン酸マグネシア(MgT
iCO3)を用い、誘電率が17および誘電正接が0.001の特性を有している。なお
、誘電体層300bとして使用可能な材質は、アルミナ(Al23)、ムライト(3Al
23・2SiO2)、ステアライト(MgO/SiO2)、フォルステライト(2Mg2
/SiO2)、ジルコニア(PSZ)等が挙げられる。
【0065】
このような構成のアンテナ装置200において、パッチ金属板300aへ給電部70(
図9)から電力供給をするために、給電体400kが設けられている。給電体400kは
、パッチ金属板300aに対する所定位置に設けられている金属製の電気的導体であり、
パッチ金属板300aと接続された状態で、TFT基板400aおよび誘電体層300b
に挿通され、挿通された先端が絶縁体を介してモジュール150と非接触となるようにし
て、モジュール150へ装着されている。これにより、パッチ金属板300aへは、給電
体400kを介して、給電部70から電力が供給され、同時に、モジュール電極部300
cへも給電部70から電力が供給される。この場合、モジュール電極部300cは、アー
ス側であり、いわゆる接地電極として機能する。また、給電体400kへの給電用配線は
、パッチ金属板300aの受信用配線としても機能する。
【0066】
次に、アンテナ部300による、GPS衛星90からの測位用信号である電波の受信に
ついて説明する。GPS衛星90からの電波は、受信する対象が、移動体のように任意の
方向を向いていても受信可能となるように、円偏波が用いられている。この円偏波を受信
するためには、アンテナに流れる電流を時間の経過と共に、回転させることが肝要であり
、それには、パッチ金属板300aにおいて、直交する方向に電流を流し90度の位相差
を持った励振を発生させれば良い。アンテナ部300では、パッチ金属板300aにおい
て、以下に説明するようにして、互いに直交し90度の位相差を持った、2つの励振モー
ドを発生させることにより、円偏波の受信を可能にしている。
【0067】
図10(b)に示すように、アンテナ装置200のアンテナ部300は、給電体400
kの部分において給電を受けるピン給電方式である。この方式は、給電系に特別な回路素
子等を用いることなく励振モードを発生させることができ、円偏波の受信が容易に行える
簡便なものである。このような配置のアンテナ部300において、給電部70から給電体
400kへ高周波の給電がなされると、パッチ金属板300aには、短辺方向に電流が流
れ励振モードF1が発生し、励振モードF1と直交する方向には、長辺方向に電流が流れ
励振モードF2が発生する。逆に言えば、アンテナ装置200の構成によって、上記のよ
うな励振モードF1,F2が発生するように、給電体400kを設定することが可能であ
る。この時、励振モードF1と励振モードF2とが励振する間の長さは、パッチ金属板3
00aの矩形状により異なっており、短辺および長辺の長さを調整すれば、励振モードF
1と励振モードF2とを異なる位相とする等の制御が容易に行なえる。なお、パッチ金属
板300aが矩形ではなく略円形である場合、励振モードF1,F2が発生するように、
給電体400kの位置設定に加え、パッチ金属板300aに切り込み部を設けることが好
ましい。
【0068】
以上説明したように、腕時計100におけるアンテナ装置200は、アンテナ部300
のパッチ金属板300a(第1電極)を反射型液晶表示部400の光反射板400mとし
て兼用している。また、モジュール150の一部をモジュール電極部300c(第2電極
)として兼用している。これらにより、アンテナ装置200は、使用する構成要素数を削
減することが可能となっている。また、アンテナ装置200は、腕時計100の内部で占
める領域を、特に厚さにおいて、ほぼ最小限にすることが可能となり、腕時計100のデ
ザイン等を制約せずに小型化でき、且つ電波受信の機能を果たすことが可能である。
(実施形態3)
【0069】
次に、アンテナ装置の他の実施形態について、説明する。この場合、アンテナ装置は、
デジタル式の腕時計(電子時計)に装着され、腕時計は、光源を有する透過型の液晶表示
部を備えている。
【0070】
図11は、実施形態3における有機ELを備えたアンテナ装置を示す断面図である。図
11に示すように、腕時計100Aのアンテナ装置500は、アンテナ部600と、白色
発光する有機エレクトロルミネッセンス部(光源、以下有機EL部と記す)710を有す
る透過型液晶表示部700と、時刻等を刻むための駆動機構や情報を処理して表示する処
理機構等を有するモジュール150と、から成る。
【0071】
透過型液晶表示部700は、透過型液晶表示部700が形成される基材であるTFT(
Thin Film Transistor)基板700aと、TFT基板700aと対をなす対向基板70
0bとが、封止材であるシール材700cによって貼り合わされている。このシール材7
00cは、両基板面内において、閉ざされた枠状の領域を形成している。
【0072】
そして、透過型液晶表示部700は、TFT基板700aの表面にモザイク状等をなし
て配置されている複数の画素電極700dと、各画素電極700dをスイッチング制御す
るTFT700eと、対向基板700bのTFT基板700a側の面に画素電極700d
に対向して配置されている平面状の対向電極700fと、画素電極700dおよび対向電
極700fを覆うように形成されている配向膜700gと、シール材700cおよび配向
膜700gによって区画された領域内に封入保持されている液晶700hと、を有してい
る。これら画素電極700d、TFT700e、対向電極700fおよび配向膜700g
は、透明部材により形成されている。液晶700hは、TFT700eによりスイッチン
グ制御された画素電極700dに対応して、各種情報の表示をする。
【0073】
そして、透過型液晶表示部700は、TFT基板700aの画素電極700dと反対側
の面側に有機EL部710を有している。有機EL部710は、TFT基板700a側か
ら、表電極710aと、表電極710aと対をなして配置された裏電極(光源電極)71
0dと、表電極710aおよび裏電極710dの外周部に設けられ両電極を貼り合わせて
いるシール部710cと、表電極710a、裏電極710dおよびシール部710cで区
画された領域に形成された発光体層710bと、を有している。発光体層710bは、裏
電極710d上に形成された正孔輸送層(不図示)と、正孔輸送層上に形成された白色の
発光をする発光層(不図示)と、を有し、スイッチング素子(不図示)と電気的に接続さ
れた裏電極710dにより発光層の発光が制御される。有機EL部710から発光された
白色光は、TFT基板700aおよび液晶700hを通過して、対向基板700bから出
射される。これにより、腕時計100Aは、液晶700hに示された情報が視認されるこ
とになる。この場合、透過型液晶表示部700は、裏電極710dがアンテナ部600の
第1電極であるパッチ金属板600aとしても機能するため、裏電極710dへ高周波の
給電をするための、給電体700kを有している。
【0074】
次に、アンテナ部600は、有機EL部710の裏電極710dであり第1電極として
も機能するパッチ金属板600aと、モジュール150におけるアンテナ装置500の受
け面であり第2電極としての機能も果たすモジュール電極部600cと、パッチ金属板6
00aとモジュール電極部600cとの間に配置された誘電体層600bと、を有してい
る。このアンテナ部600による、GPS衛星90からの測位用信号の受信は、実施形態
2のアンテナ装置200の場合と同様に行われる。即ち、図10(b)におけるアンテナ
装置200の第1電極としての光反射板400m(パッチ金属板300a)を、アンテナ
装置500の第1電極として機能する裏電極710d(パッチ金属板600a)に置き換
えた形態での受信となる。
【0075】
以上説明したように、腕時計100Aにおけるアンテナ装置500は、アンテナ部60
0のパッチ金属板600a(第1電極)として、透過型液晶表示部700の有する有機E
L部710の裏電極710dを兼用している。また、モジュール150の一部をモジュー
ル電極部600c(第2電極)として兼用している。これらにより、アンテナ装置500
は、使用する構成要素数を削減することができ、腕時計100Aのデザイン等を制約せず
に薄型化および小型化を図りつつ、電波受信の機能を果たすことができる。
【0076】
また、アンテナ装置2,200,500および腕時計1,100,100Aは、上記の
実施形態に限定されるものではなく、次に挙げる変形例のような形態であっても、実施形
態と同様な効果が得られる。まず、実施形態1におけるアンテナ装置2を備えたアナログ
式の腕時計1にかかる変形例(A1〜A7)について述べる。
【0077】
(変形例A1)アンテナ装置2は、パッチ金属板2aと誘電体層2bとが同じ大きさの
円形であるが、これに限定されることなく、異なる大きさの円形、または矩形等であって
も良い。例えば、パッチ金属板2aを、直径3cmの誘電体層2bより4mm小さくして
も、ほぼ同様の受信性能が維持できる、という知見が得られている。
【0078】
(変形例A2)アンテナ装置2の第2電極は、ムーブメント13の一部を兼用したムー
ブ電極部2cではなく、ムーブメント13と誘電体層2bとの間に別途設ける設定であっ
ても良い。アンテナ装置2の構成より厚くなるが、衛星信号の受信性能は同等である。
【0079】
(変形例A3)パッチ金属板2aの切り込み部6は、外周から円中心へ向かって凹状に
形成された形状に限定されず、外周から凸状に突起した形状であっても良い。また、切り
込み部6は、矩形の形状でなくても良い。さらに、切り込み部6は、外周を面取り状に切
り欠いた形状であっても良い。これにより、パッチ金属板2aは、文字板3のデザイン形
状等に対応して、融通性のある設定が可能である。
【0080】
(変形例A4)パッチ金属板2aは、表面側に時刻表示体部4が形成されているが、パ
ッチ金属板2a自体が時刻表示体部4であっても良い。金、銀等の合金の文字板3を用い
る仕様等においては、無垢材の高級感が醸し出されて好ましい。
【0081】
(変形例A5)パッチ金属板2aは、メッシュ状の形態や、貫通孔が形成された形態等
であっても良い。これによれば、アンテナ装置2は、その特性を損なうことなく、材料節
減および軽量化等が図れる。
【0082】
(変形例A6)アンテナ装置2は、一箇所の給電体5からパッチ金属板2aへ給電する
構成であるが、多箇所から給電する構成であっても良い。アンテナ装置2に比べて、制御
等が煩雑となるが、衛星信号の受信は可能である。
【0083】
(変形例A7)腕時計1は、GPS衛星90からの測位用信号を受信して、時刻および
時差の修正を行なう機能を備えているが、これらに加え、現在位置、移動距離、移動速度
等の表示をする機能を備えることも可能である。また、電子時計には、腕時計1に限らず
、トラベルクロックや、懐中時計等も該当し、携帯型電子機器に付属する時計類も該当す
る。
【0084】
次に、実施形態2および3にかかるアンテナ装置200,500およびデジタル式の腕
時計100,100Aにかかる変形例(D1~D4)について述べる。
【0085】
(変形例D1)腕時計100,100Aの外装ケース110は、表面側の開口を含め平
面視で略円筒状の形状であるが、これに限定されることなく、長方形等の矩形状であって
も良い。また、アンテナ装置200,500も、矩形形状に限定されず、円形等の他の形
状であっても良い。さらに、アンテナ装置200,500は、同様な電極構成を有する、
いわゆる逆Fアンテナとして構成しても、アンテナ機能を十分に発揮することができる。
【0086】
(変形例D2)アンテナ装置200,500は、液晶400h,700hによる白黒表
示であるが、カラーフィルターを配置してカラー表示が可能な構成であっても良い。
【0087】
(変形例D3)腕時計100、100Aは、GPS衛星90からの測位用信号を受信し
て、時刻および時差の修正を行なう機能を備えているが、これらに加え、現在位置、移動
距離、移動速度等の情報表示をする機能を備えることもでき、デジタル式の表示によって
、情報等を精緻な数字で正確に表すことが可能である。
【0088】
(変形例D4)腕時計100、100Aにおいて、文字板に該当するものとしては、反
射型液晶表示部400および透過型液晶表示部700の他に、EPD(Electro Phoreti
c Display)が挙げられる。EPDは、例えば、白黒の微粒子を有する液体で内部が満た
されたマイクロカプセルを薄いフィルム上に敷き詰めた構成であり、白い微粒子は正に荷
電されており、黒い微粒子は負に荷電されている。このマイクロカプセルに負の電界をか
けると、白い粒子はマイクロカプセルの上部に移動し、黒い粒子はマイクロカプセルの下
部に移動するようになっている。このため、上部側からは、黒い粒子が白い粒子に隠れて
見えなくなり、マイクロカプセルの表面(上部側)は白く見える。正の電界をかけると逆
の現象が生じる。このように、EPDは、白または黒のマイクロカプセルを配列すること
により、情報表示が可能である。さらに、EPDは、表示部分を曲面等にすることが容易
に可能であり、腕時計の形状に合わせたフレキシブルな表示部を形成することができる。
この場合、電界を付与する電極等をパッチ金属板(第1電極)とすること等が可能である

【0089】
(変形例D5)腕時計100Aは、光源として有機EL部710を有する構成であるが
、有機EL部710以外の光源を用いた構成であっても良い。例えば、光源ランプと、光
源ランプからの光を画素電極700dの方向へ導く導光体と、を有する光源が挙げられる
。この場合、アンテナ装置のパッチ金属板(第1電極)は、有機EL部710の裏電極7
10dを兼用していた構成に替えて、光源とアンテナ装置の誘電体層との間に配置される
。あるいは、パッチ金属板が、透明板であって、光源とTFT基板700aとの間に配置
される構成であっても良い。
【符号の説明】
【0090】
1…電子時計としての腕時計、2…アンテナ装置、2a…第1電極としてのパッチ金属
板、2b…誘電体層、2c…第2電極としてのムーブ電極部、3…文字板、4…時刻表示
体部、5…給電体、5a…給電点、6…切り込み部、13…機械体としてのムーブメント
、17…外装ケース、30…受信モジュール、40…制御部、70…給電部、80…計時
部、90…衛星としてのGPS衛星、100…電子時計としての腕時計、100A…電子
時計としての腕時計、150…モジュール、200…アンテナ装置、300…アンテナ部
、300a…第1電極としてのパッチ金属板、300b…誘電体層、300c…第2電極
としてのモジュール電極部、400…反射型液晶表示部、400m…光反射部としての光
反射板、500…アンテナ装置、600…アンテナ部、600a…第1電極としてのパッ
チ金属板、600b…誘電体層、600c…第2電極としてのモジュール電極部、700
…透過型液晶表示部、710…光源としての有機EL部、710a…表電極、710b…
発光体層、710d…光源電極としての裏電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子時計に備えられ、衛星からの測位用信号を受信するアンテナ装置であって、
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極および前記第2電極の間に配置された誘電体層と、を有し、
前記第1電極または前記第2電極のいずれか一方の電極が、前記電子時計の文字板の少
なくとも一部を構成していることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ装置において、
前記文字板は、前記第1電極または前記第2電極を形成する電気的導体部と、前記電気
的導体部の表面に形成された時刻表示体部と、を有していることを特徴とするアンテナ装
置。
【請求項3】
請求項2に記載のアンテナ装置において、
前記時刻表示体部は、電気的に不導体であることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のアンテナ装置において、
前記一方の電極と対向して配置されている他方の電極が、前記電子時計の機械体の少な
くとも一部を構成していることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項5】
電子時計に備えられ、衛星からの測位用信号を受信するアンテナ装置であって、
第1電極と、第2電極と、前記第1電極および前記第2電極の間に配置された誘電体層
と、を有するアンテナ部と、
光反射部を有し、情報を表示する反射型液晶表示部と、を備え、
前記第1電極または前記第2電極のいずれか一方の電極が、前記反射型液晶表示部の前
記光反射部の少なくとも一部を構成していることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項6】
電子時計に備えられ、衛星からの測位用信号を受信するアンテナ装置であって、
第1電極と、第2電極と、前記第1電極および前記第2電極の間に配置された誘電体層
と、を有するアンテナ部と、
情報を表示する液晶パネル部を有する透過型液晶表示部と、
前記透過型液晶表示部の光源であり、発光体層と前記発光体層を発光させるための光源
電極とを有する有機エレクトロルミネッセンス部と、を備え、
前記第1電極または前記第2電極のいずれか一方の電極が、前記有機エレクトロルミネ
ッセンス部の前記光源電極の少なくとも一部を構成していることを特徴とするアンテナ装
置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のアンテナ装置を備えていることを特徴とする電
子時計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−189570(P2012−189570A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181280(P2011−181280)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】