説明

アンテナ装置及びその特性調整方法

【課題】共振周波数とインピーダンスをそれぞれ独立して調整することによって、複数機種の小型携帯端末に使用可能なアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナブロック10が実装される実装基板20には、アンテナブロック10の実装領域21の周囲に設けられたグランドパターン22と、第1乃至第3のパッド電極13〜15の位置に対応して実装領域内に設けられた第1乃至第3のランド23〜25と、第1のランド23に接続された給電ライン26と、第1のランド23とグランドパターン22とを接続するインピーダンス調整用パターン27と、第2のランド24とグランドパターン22とを接続する周波数調整用パターン28とを備えている。インピーダンス調整用パターン27の幅を変更することでアンテナのインピーダンスを粗調整でき、周波数調整用パターン28の幅を変更することで共振周波数を粗調整できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関し、特に、携帯電話等に内蔵され、ブルートゥースやGPS用のアンテナとして好ましく用いられる表面実装型アンテナの導体パターン構造に関するものである。また、本発明は、このようなアンテナ装置のインピーダンス又は共振周波数を調整する特性調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の小型携帯端末に内蔵されるチップアンテナの共振周波数やインピーダンスは、実装基板の構造や、周囲に実装される各種電子部品、さらには筐体の影響を受けて変化する。そのため、この種のチップアンテナにおいては、小型携帯端末の機種毎にアンテナのインピーダンスや共振周波数を調整する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、基板上に設けられた調整用エレメントの長さを変化させることで共振周波数を調整する方法が提案されている。この方法によれば、アンテナブロック上の導体パターンをトリミング等することなく共振周波数を調整できることから、同一構造のチップアンテナを複数機種の小型携帯端末に使用でき、部品の共通化を図ることができる。
【0004】
また、特許文献2には、アンテナ電極をトリミングすることによって共振周波数やインピーダンスを調整する方法が提案されている。この方法によれば、共振周波数のみならず、アンテナのインピーダンスを調整することができる。
【特許文献1】特開2007−67993号公報
【特許文献2】特開平10−256825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたアンテナ装置では、共振周波数の調整は可能であるが、アンテナのインピーダンスを調整することはできない。また、特許文献2に記載されたアンテナ装置では、アンテナ電極自体をトリミングする必要があるため、工程が複雑化するという問題がある。特に、放射電極とグランド電極との間にはギャップが設けられており、放射電極やグランド電極をトリミングすることでギャップによる容量成分が調整されるが、こうしたギャップの調整はアンテナ特性に過敏に影響するため、共振周波数とインピーダンスをそれぞれ独立して調整することができない。このため、実際には調整が困難であり、アンテナ特性がばらつきやすいという問題がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、共振周波数とインピーダンスをそれぞれ独立して調整することによって、複数機種の小型携帯端末に使用可能なアンテナ装置を提供することである。
【0007】
また、本発明の他の目的は、このようなアンテナ装置のインピーダンス又は共振周波数を調整する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のアンテナ装置は、アンテナブロックと、アンテナブロックが実装された実装基板とを備え、アンテナブロックは、略直方体状の誘電体又は磁性体からなる基体と、基体の上面に形成された上面導体部と、基体の底面の長手方向の両端部にそれぞれ形成された第1及び第2のパッド電極と、上面導体部と第2のパッド電極とを接続する側面導体部とを備え、実装基板は、アンテナブロックの実装領域と、実装領域の周囲に設けられたグランドパターンと、第1及び第2のパッド電極の位置に対応して実装領域内に設けられた第1及び第2のランドと、第1のランドに接続された給電ラインと、第1のランドとグランドパターンとを接続するインピーダンス調整用パターンと、第2のランドとグランドパターンとを接続する周波数調整用パターンとを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、実装基板にインピーダンス調整用パターンと周波数調整用パターンが設けられていることから、アンテナブロック上の導体パターンをトリミング等することなく、アンテナのインピーダンス及び共振周波数を調整することができる。しかも、インピーダンス調整用パターンを用いたインピーダンス調整を行っても共振周波数は実質的に変化せず、周波数調整用パターンを用いた共振周波数の調整を行ってもインピーダンスは実質的に変化しない。このため、インピーダンスと共振周波数をそれぞれ独立して調整することができ、調整作業が容易となる。
【0010】
これにより、同じ構造を有するアンテナブロックを複数機種の小型携帯端末において使用することができ、部品コストの削減及びアンテナ設計の効率化を図ることが可能となる。
【0011】
本発明のアンテナ装置は、実装基板上に実装され、給電ラインとグランドパターンとを接続するインピーダンス調整素子をさらに備えることが好ましい。これによれば、インピーダンス調整用パターンによって粗調整されたインピーダンスを、インピーダンス調整素子によって微調整することが可能となる。
【0012】
本発明において、アンテナブロックは基体の底面の長手方向の中央部に設けられた第3のパッド電極をさらに備え、実装基板は第3のパッド電極の位置に対応して実装領域内に設けられた第3のランドをさらに備えることが好ましい。これによれば、第3のパッド電極と上面導体部との容量結合により、アンテナ装置の共振周波数を変化させることが可能となる。
【0013】
この場合、実装基板上に実装され、第3のランドとグランドパターンとを接続する周波数調整素子をさらに備えることが好ましい。これによれば、周波数調整用パターンによって粗調整された共振周波数を、周波数調整素子によって微調整することが可能となる。
【0014】
本発明のアンテナ装置は、インピーダンス調整用パターン及び周波数調整用パターンの少なくとも一方を複数備えることが好ましい。これによれば、複数のインピーダンス調整用パターンの一つあるいはいくつかをトリミングすることにより、インピーダンスをより細かく調整することが可能となる。また、複数のインピーダンス調整用パターンの一つあるいはいくつかをトリミングすることにより、共振周波数をより細かく調整することが可能となる。
【0015】
さらに、本発明のアンテナ装置は、複数のインピーダンス調整用パターン又は複数の周波数調整用パターンの間に設けられたスペースから延設されたグランドパターンのスリットが形成されていることが好ましい。この場合、スリットを複数備え、複数のスリットの長さがそれぞれ異なることが好ましい。これによれば、インピーダンス調整用パターンや周波数調整用パターンの幅を変更する場合よりも大幅な特性変更が可能となる。
【0016】
本発明によるアンテナ装置の特性調整方法は、上述したアンテナ装置の特性調整方法であって、所定の形状及びサイズを有するインピーダンス調整用パターンが形成された実装基板を用意し、当該実装領域にアンテナブロックを実装する工程と、実装基板上のアンテナブロックのインピーダンスを測定する工程と、測定結果に基づいて適切な定数を持つインピーダンス調整素子を選択し、当該インピーダンス調整素子を実装基板上の所定の位置に実装する工程とを備えることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、アンテナブロック上の導体パターンをトリミング等することなく、アンテナのインピーダンスを調整することができる。このため、同じ構造を有するアンテナブロックを複数機種の小型携帯端末において使用することができ、部品コストの削減及びアンテナ設計の効率化を図ることができる。
【0018】
本発明によるアンテナ装置の特性調整方法は、上述したアンテナ装置の特性調整方法であって、所定の形状及びサイズを有する周波数調整用パターンが形成された実装基板を用意し、当該実装領域にアンテナブロックを実装する工程と、実装基板上のアンテナブロックの周波数を測定する工程と、測定結果に基づいて適切な定数を持つ周波数調整素子を選択し、当該周波数調整素子を実装基板上の所定の位置に実装する工程とを備えることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、アンテナブロック上の導体パターンをトリミング等することなく、アンテナの共振周波数を調整することができる。このため、同じ構造を有するアンテナブロックを複数機種の小型携帯端末において使用することができ、部品コストの削減及びアンテナ設計の効率化を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
このように、本発明によれば、実装基板に設けられたインピーダンス調整用パターン及び周波数調整用パターンによって、共振周波数とインピーダンスをそれぞれ独立して調整可能であることから、同じ構造を有するアンテナブロックを複数機種の小型携帯端末において使用することができ、部品コストの削減及びアンテナ設計の効率化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す略分解斜視図である。また、図2は、図1に示すアンテナブロックの展開図である。
【0023】
図1及び図2に示すように、このアンテナ装置100は、アンテナブロック10と、このアンテナブロック10が実装された実装基板20とを備えている。
【0024】
アンテナブロック10は、直方体状の誘電体からなる基体11と、基体11の上面11Aの略全面に形成された上面導体部12と、基体11の底面11Bに形成された第1乃至第3のパッド電極13乃至15と、基体11の長手方向と直交する第1の側面11Cの略全面に形成された側面導体部16とを備えている。なお、第1の側面11Cと対向する第2の側面11D、基体11の長手方向と平行な第3及び第4の側面11E、11Fには導体パターンは形成されていない。
【0025】
上面導体部12の長手方向の一端は開放端をなしているが、実質的には基体11の高さ相当のギャップ17を介して第1のパッド電極13に接続されている。また、上面導体部12の長手方向の他端は側面導体部16を介して第2のパッド電極14に接続されている。これにより、第1のパッド電極13、ギャップ17、上面導体部12、及び側面導体部16は、一本の連続する放射導体を構成している。このように、放射導体が基体11の複数の面にわたって形成されているので、基体11自体を小型化しても所望の電気長を確保することができる。
【0026】
第1及び第2のパッド電極13、14は、基体11の底面11Bの長手方向の両端部にそれぞれ形成された矩形状のパターンである。また、第3のパッド電極15は、基体11の底面11Bの長手方向の中央部に形成されており、第1及び第2のパッド電極13、14の間に設けられている。基体11の各面に形成されたこれらの導体パターンは、できるだけ対称性を有するように形成されていることが好ましい。これによれば、アンテナブロック10の向きを水平反転させても実装基板20の端部側から見たアンテナブロック10上の導体パターンの形状が同じになることから、実装する向きによってアンテナ特性が大きく変化することがなく、アンテナ設計を容易にすることができる。
【0027】
図3は、実装基板20の構成を示す略平面図である。
【0028】
図3及び図1に示すように、実装基板20は、アンテナブロック10の実装領域21と、実装領域21の周囲に設けられたグランドパターン22と、実装領域21内に設けられた第1乃至第3のランド23〜25と、第1のランド23に接続された給電ライン26と、第1のランド23とグランドパターン22とを接続するインピーダンス調整用パターン27と、第2のランド24とグランドパターン22とを接続する周波数調整用パターン28とを備えている。
【0029】
実装領域21は、実装基板20の端部に沿って設けられている。そのため、実装領域21の周囲3方向はグランドパターン22に囲まれているが、残りの一方向は基板の存在しない開放空間である。グランドパターン22は、実装基板20の表面のみならず裏面にも同様に形成されているが、少なくとも実装領域21の裏側部分には、グランドパターンの形成されていないクリアランス領域が存在している。
【0030】
実装領域21内の第1のランド23は、アンテナブロック10の第1のパッド電極13に対応しており、第2のランド24は第2のパッド電極14に対応しており、第3のランド25は第3のパッド電極15に対応している。したがって、実装基板20上にアンテナブロック10を実装したとき、第1のパッド電極13は第1のランド23、第2のパッド電極14は第2のランド24、第3のパッド電極15は第3のランドにそれぞれ半田接続される。
【0031】
給電ライン26は第1のランド23のリード部分23aに接続されており、給電ライン26とグランドパターン22との間にはインピーダンス調整素子であるチップリアクタ31が実装されている。リード部分23aの幅は、給電ライン26よりも十分に狭いことが好ましい。チップリアクタ31の実装位置は、実装領域21を含むクリアランス領域の外側であって、このクリアランス領域にできるだけ近い位置であることが好ましい。
【0032】
第3のランド25とグランドパターン22との間には周波数調整素子であるチップリアクタ32が実装されている。チップリアクタ32は、第3のランド25のリード部分25aとグランドパターン22との間に直列に挿入されている。チップリアクタ32の実装位置は、実装領域21を含むクリアランス領域の内側であって、グランドパターン22にできるだけ近い位置であることが好ましい。
【0033】
第1のランド23とグランドパターン22との間には、インピーダンス調整用パターン27が設けられている。本実施形態のインピーダンス調整用パターン27は矩形状であり、且つ、基板の端部側に位置するインピーダンス調整用パターン27の一辺27bと、基板の端部側に位置する第1のランド23の一辺23bは、同一直線上に位置している。アンテナのインピーダンスの調整は、インピーダンス調整用パターン27の幅Wの変更によって行うことができる。
【0034】
第2のランド24とグランドパターン22との間には、周波数調整用パターン28が設けられている。本実施形態の周波数調整用パターン28は矩形状であり、且つ、基板の端部側に位置する周波数調整用パターン28の一辺28bと、基板の端部側に位置する第2のランド24の一辺24bは、同一直線上に位置している。アンテナの共振周波数の調整は、周波数調整用パターン28の幅Wの変更によって行うことができる。
【0035】
図4は、インピーダンス調整用パターンの変形例を示す平面図である。
【0036】
図4(a)乃至(c)に示すように、アンテナ装置100のインピーダンスは、インピーダンス調整用パターン27の幅Wを変更することによって調整することができる。図4(a)では、インピーダンス調整用パターン27の幅Wが第1のランド23の幅Wxの1/3に設定されており(W=Wx/3)、図4(b)では、W=2Wx/3に設定されており、図4(c)では、W=Wxに設定されている。アンテナ装置100のインピーダンスは、インピーダンス調整用パターン27の幅Wが広くなるほど低くなることから、図4(a)に示すアンテナ装置のインピーダンスが最も大きくなり、図4(c)に示すアンテナ装置のインピーダンスが最も小さくなる。したがって、インピーダンス調整用パターン27のパターン幅Wを適切な値に設定するによってインピーダンスを粗調整することができる。
【0037】
その一方で、インピーダンス調整用パターン27のパターン幅Wを変化させても、アンテナ装置100の共振周波数はほとんど変化しない。すなわち、インピーダンス調整用パターン27を用いることによって、インピーダンスだけを独立して調整することが可能となる。
【0038】
なお、アンテナ装置100のインピーダンスは、所定の大きさのインピーダンス調整用パターンを形成し、設計段階で粗調整することもできるが、予め所定の幅に設定されたインピーダンス調整用パターンをレーザトリミングすることによってさらに調整することもできる。場合によっては、インピーダンス調整用パターン27をグランドパターン22に接地させないようオープン状態にしてもよい。このようにすれば、大幅なインピーダンス調整が可能となる。
【0039】
こうして、インピーダンス調整用パターンによってアンテナインピーダンスを粗調整した後、アンテナブロックのインピーダンスを測定し、この測定結果をもとに、インピーダンス調整素子であるチップリアクタ31の定数を適切に選択することによって、アンテナインピーダンスを微調整することができる。
【0040】
図5は、周波数調整用パターンの変形例を示す平面図である。
【0041】
図5(a)乃至(c)に示すように、アンテナ装置100の共振周波数は、周波数調整用パターン28の幅Wを変更することによって調整することができる。図5(a)では、周波数調整用パターン28の幅Wが第2のランド24の幅Wxの1/3に設定されており(W=Wx/3)、図5(b)では、W=2Wx/3に設定されており、図5(c)では、W=Wxに設定されている。アンテナ装置100の共振周波数は、周波数調整用パターン28の幅Wが広くなるほど高くなることから、図5(a)に示すアンテナ装置の共振周波数が最も低くなり、図5(c)に示すアンテナ装置の共振周波数が最も高くなる。したがって、周波数調整用パターン28のパターン幅Wを適切な値に設定するによって共振周波数を粗調整することができる。
【0042】
その一方で、周波数調整用パターン28のパターン幅Wを変化させても、アンテナ装置100のインピーダンスはほとんど変化しない。すなわち、周波数調整用パターン28を用いることによって、共振周波数だけを独立して調整することが可能となる。
【0043】
なお、アンテナ装置100の共振周波数は、所定の大きさの周波数調整用パターンを形成し、設計段階で粗調整することもできるが、予め所定の幅に設定された周波数調整用パターンをレーザトリミングすることによってさらに調整することもできる。場合によっては、周波数調整用パターン28をグランドパターン22に接地させないようオープン状態にしてもよい。このようにすれば、大幅なインピーダンス調整が可能となる。
【0044】
こうして、周波数調整用パターンによってアンテナの共振周波数を粗調整した後、アンテナブロックの共振周波数を測定し、この測定結果をもとに適切な周波数調整素子であるチップリアクタ32の定数を適切に選択することによって、アンテナの共振周波数を微調整することができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態のアンテナ装置100は、第1のパッド電極23とグランドパターン22とを接続するインピーダンス調整用パターン27を備えていることから、アンテナブロック10上の導体パターンをトリミング等することなく、アンテナのインピーダンスを粗調整することができる。さらに、本実施形態によれば、給電ライン26とグランドパターン22とを並列接続するインピーダンス調整素子(チップリアクタ)31を備えていることから、適切な素子値を採用することでアンテナのインピーダンスを微調整することができる。
【0046】
また、本実施形態のアンテナ装置100は、第2のパッド電極24とグランドパターン22とを接続する周波数調整用パターン28を備えていることから、アンテナブロック10上の導体パターンをトリミング等することなく、アンテナの共振周波数を粗調整することができる。さらに、本実施形態によれば、第3のランド25とグランドパターン22とを接続する周波数調整素子(チップリアクタ)32を備えていることから、適切な素子値を採用することでアンテナの共振周波数を微調整することができる。
【0047】
しかも、インピーダンス調整用パターン27を用いたインピーダンス調整を行っても共振周波数は実質的に変化せず、周波数調整用パターン28を用いた共振周波数の調整を行ってもインピーダンスは実質的に変化しないことから、インピーダンスと共振周波数をそれぞれ独立して調整することができる。すなわち、一方が他方に与える影響がほとんどないことから、調整を容易に行うことが可能となる。
【0048】
さらにまた、本実施形態のアンテナ装置100によれば、インピーダンス調整用パターン27及びインピーダンス調整素子31からなるインピーダンス調整手段と、周波数調整用パターン28及び周波数調整素子32からなる周波数調整手段とが共に実装基板20上にそれぞれ独立して設けられていることから、同じ構造を有するアンテナブロック10を複数機種の小型携帯端末において使用することができ、部品コストの削減及びアンテナ設計の効率化を図ることができる。
【0049】
ところで、上述のアンテナ装置100においては、一つのインピーダンス調整用パターン、或いは一つの周波数調整用パターンの大きさを変えることによって、インピーダンス或いは共振周波数を調整しているが、パターンの数を変えることによってこれらの特性を調整することも可能である。また、パターンの形状も矩形状に限らず、テーパー状、階段状、スリット状等、種々の形状を採用することができる。
【0050】
図6は、本発明の第2の実施形態によるアンテナ装置の構成を示す略斜視図である。
【0051】
図6に示すように、このアンテナ装置200は、一定の幅Wを有する矩形状の周波数調整用パターン28を複数(本例では3つ)用いる点に特徴を有している。これら複数の周波数調整用パターン28の各々の大きさは等しいことが好ましく、パターン間隔も等しいことが好ましい。インピーダンス調整用パターン27についても、周波数調整用パターン28と同様に複数用いてもよい。或いは、インピーダンス調整用パターン27のみを複数形成してもよい。本実施形態によれば、周波数調整用パターン28の幅W及び数を適切な値に設定することで共振周波数を粗調整することができる。また、インピーダンス調整用パターン27の幅及び数を適切な値に設定することでインピーダンスを粗調整することができる。
【0052】
さらに、上述した複数のインピーダンス調整用パターン27のいくつかは、その後のトリミング工程にて除去してもよい。このように、複数の周波数調整用パターン27のいくつかを切断することによって、アンテナのインピーダンスをより細かく調整することができる。
【0053】
図7は、本発明の第3の実施形態によるアンテナ装置の実装基板の構成を示す略平面図である。
【0054】
図7に示すように、このアンテナ装置300の特徴は、グランドパターン22の一部を切り欠いて形成されたインピーダンス調整用スリット33及び周波数調整用スリット34を備える点にある。インピーダンス調整用スリット33は、インピーダンス調整用パターン27に隣接して設けられており、基体11の長手方向と平行に延設されている。周波数調整用スリット34は、周波数調整用パターン28と隣接して設けられており、基体11の長手方向と平行に延設されている。
【0055】
これらのスリット33、34は基板の上面側だけに形成してもよいが、上面側と下面側の両方に形成してよい。スリット33、34の長さ及び幅は、目的とするアンテナインピーダンスに応じて適宜設定すればよい。インピーダンス調整用スリット33を形成した場合には、インピーダンス調整用パターン27の幅を細くするよりもインピーダンスを上げることができる。また、周波数調整用スリット34を形成した場合には、周波数調整用パターン28の幅を細くするよりも共振周波数を下げることができる。
【0056】
図8は、本発明の第4の実施形態によるアンテナ装置の実装基板の構成を示す略平面図である。
【0057】
図8に示すように、このアンテナ装置400の特徴は、複数の周波数調整パターン28の間にあるスペースから連続する複数のスリット34a、34bがさらに設けられている点にある。これらのスリット34a、34bの長さは同一ではなく、不均一であることが好ましい。こうしたスリット34a、34bが形成されることにより、周波数調整幅をさらに細かく設定することが可能となる。
【0058】
図9は、本発明の第5の実施形態によるアンテナ装置の構成を示す略斜視図である。
【0059】
図9に示すように、このアンテナ装置500は、テーパー状の周波数調整用パターン28を用いる点に特徴を有している。インピーダンス調整用パターン27についても、周波数調整用パターン28と同様にテーパー状のものを用いても構わない。逆に、インピーダンス調整用パターン27のみをテーパー状としても構わない。本実施形態によれば、インピーダンス調整用パターン27又は周波数調整用パターン28のテーパー角度を適切な角度に設定することにより、アンテナのインピーダンス又は共振周波数を粗調整することができる。
【0060】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を加えることが可能であり、それらも本発明の範囲に包含されるものであることはいうまでもない。
【0061】
例えば、上記実施形態においては、アンテナ実装領域の周囲3方向がグランドパターンに囲まれている場合を例に挙げたが、周囲2方向が囲まれていてもよく、さらには一方向のみグランドパターンが存在していてもかまわない。
【0062】
また、上記実施形態においては、インピーダンス調整用パターン及び周波数調整用パターンの幅及び長さを調整することにより、インピーダンス及び共振周波数を調整しているが、これらのパターンと並列ないし直列に集中定数素子(L,C)を設けることによって調整してもよい。
【0063】
また、上記実施形態においては、直方体状の誘電体からなる基体11を用いているが、誘電体以外に誘電性を有する磁性体を用いてもよい。この場合、1/√(ε×μ)の波長短縮効果が得られるので、透磁率μの高い磁性体を用いることによって、大きな波長短縮効果が得られる。また、μ/εが電極のインピーダンスを決定するため、μの高い磁性体を用いることによってインピーダンスが高まる。これにより、高すぎるアンテナのQを低下させて、広帯域特性を得ることができる。また、直方体状の基体11は、実質的に直方体であればよく、例えば、直方体の角部にその向きを特定するためのテーパーが設けられていても構わない。
【0064】
また、上記実施形態では、第3のパッド電極15及び第3のランド25が設けられているが、本発明においてこれらを設けることは必須でない。
【実施例1】
【0065】
まず、図1及び図2に示したアンテナブロック10を用意した。アンテナブロック10の基体11の寸法は、9×3×1(mm)である。
【0066】
このようなアンテナブロック10を図1及び図3に示した実装基板20に実装した。本実施例では、周波数調整用パターン28の幅Wについては一定(W=1mm)とし、インピーダンス調整用パターン27の幅Wを、W=Wx/3=1mm、W=2Wx/3=2mm、W=Wx=3mmの3段階に変化させたときのアンテナのインピーダンスを測定した。これらの3タイプは、それぞれ図4(a)〜(c)に対応している。
【0067】
測定の結果を図10に示す。同図において、図10(a)はアンテナ効率を示すグラフであり、横軸は周波数(GHz)、縦軸はアンテナ効率(%)を示している。また、図10(b)はアンテナのインピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【0068】
図10(a)に示すように、インピーダンス調整用パターン27の幅W=1mmのときのアンテナ効率は約83%であり、W=2mmのときのアンテナ効率は約81%であり、W=3mmのときのアンテナ効率は約67%であった。また、図10(b)に示すように、インピーダンス調整用パターン27の幅が広くなるほどインピーダンスは低くなった。その一方で、インピーダンス調整用パターン27の幅Wが変化しても共振周波数はほとんど変化しなかった。
【0069】
これにより、インピーダンス調整用パターン27の幅Wを変化させることにより、共振周波数を実質的に変化させることなく、インピーダンスを独立して調整できることが確認された。
【実施例2】
【0070】
次に、実施例1と同じアンテナブロック10を用意し、これを図1及び図3に示した実装基板20に実装した。本実施例では、インピーダンス調整用パターン27の幅Wを一定(W=1mm)とし、周波数調整用パターン28の幅Wを、W=Wx/3=1mm、W=2Wx/3=2mm、W=Wx=3mmの3段階に変化させたときのアンテナの共振周波数を測定した。これらの3タイプは、それぞれ図5(a)〜(c)に対応している。
【0071】
測定の結果を図11に示す。同図において、図11(a)はアンテナ効率を示すグラフであり、横軸は周波数(GHz)、縦軸はアンテナ効率(%)を示している。また、図11(b)はアンテナのインピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【0072】
図11(a)に示すように、周波数調整用パターン28の幅W=1mmのときの共振周波数は約1.570GHzであり、W=2mmのときの共振周波数は約1.630GHzであり、W=3mmのときの共振周波数は約1.680GHzであった。また、図11(b)に示すように、周波数調整用パターンの幅が広くなるほどアンテナの共振周波数は高くなった。その一方で、周波数調整用パターン28の幅Wが変化してもインピーダンスはほとんど変化しなかった。
【0073】
これにより、周波数調整用パターン28の幅Wを変化させることにより、インピーダンスを実質的に変化させることなく、共振周波数を独立して調整できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す略分解斜視図である。
【図2】図2は、図1に示すアンテナブロックの展開図である。
【図3】図3は、アンテナ装置100の変形例を示す略斜視図である。
【図4】図4は、本発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す略分解斜視図である。
【図5】図5は、図4に示すアンテナブロックの展開図である。
【図6】図6は、本発明の第3の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す略分解斜視図である。
【図7】図7は、図6に示すアンテナブロックの展開図である。
【図8】図8は、本発明の第4の実施形態によるアンテナ装置の構成を示す略平面図である。
【図9】図9は、本発明の第5の実施形態によるアンテナ装置の構成を示す略斜視図である。
【図10】図10(a)は、インピーダンス調整用パターンの大きさとアンテナ効率との関係を示すグラフであり、図11(b)はインピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【図11】図11(a)は、周波数調整用パターンの大きさとアンテナ効率との関係とを示すグラフであり、図11(b)はインピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【符号の説明】
【0075】
10 アンテナブロック
11 基体
11A アンテナブロックの上面
11B アンテナブロックの底面
11C アンテナブロックの第1の側面
11D アンテナブロックの第2の側面
11E アンテナブロックの第3の側面
11F アンテナブロックの第4の底面
12 上面導体部
13 第1のパッド電極
14 第2のパッド電極
15 第3のパッド電極
16 側面導体部
17 ギャップ
20 実装基板
21 実装領域
22 グランドパターン
23 第1のランド
23a 第1のランドのリード部分
24 第2のランド
25 第3のランド
25a 第3のランドのリード部分
26 給電ライン
27 インピーダンス調整用パターン
28 周波数調整用パターン
31 インピーダンス調整素子(チップリアクタ)
32 周波数調整素子(チップリアクタ)
33 インピーダンス調整用スリット
34 周波数調整用スリット
34a 周波数調整用スリット
34b 周波数調整用スリット
100 アンテナ装置
200 アンテナ装置
300 アンテナ装置
インピーダンス調整用パターンの幅
周波数調整用パターンの幅
周波数調整用パターンの幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナブロックと、前記アンテナブロックが実装された実装基板とを備え、
前記アンテナブロックは、
略直方体状の誘電体又は磁性体からなる基体と、前記基体の上面に形成された上面導体部と、前記基体の底面の長手方向の両端部にそれぞれ形成された第1及び第2のパッド電極と、前記上面導体部と前記第2のパッド電極とを接続する側面導体部とを備え、
前記実装基板は、
前記アンテナブロックの実装領域と、前記実装領域の周囲に設けられたグランドパターンと、前記第1及び第2のパッド電極の位置に対応して前記実装領域内に設けられた第1及び第2のランドと、前記第1のランドに接続された給電ラインと、前記第1のランドと前記グランドパターンとを接続するインピーダンス調整用パターンと、前記第2のランドとグランドパターンとを接続する周波数調整用パターンとを備えることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記実装基板上に実装され、前記給電ラインと前記グランドパターンとを接続するインピーダンス調整素子をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記アンテナブロックは、前記基体の底面の長手方向の中央部に設けられた第3のパッド電極をさらに備え、
前記実装基板は、前記第3のパッド電極の位置に対応して前記実装領域内に設けられた第3のランドをさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記実装基板上に実装され、前記第3のランドと前記グランドパターンとを接続する周波数調整素子をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記インピーダンス調整用パターン及び前記周波数調整用パターンの少なくとも一方を複数備えることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記複数のインピーダンス調整用パターン又は前記複数の周波数調整用パターンの間に設けられたスペースから延設された前記グランドパターンのスリットをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記スリットを複数備え、前記複数のスリットの長さがそれぞれ異なることを特徴とする請求項6に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
請求項2乃至7のいずれか一項に記載のアンテナ装置の特性調整方法であって、
所定の形状及びサイズを有する前記インピーダンス調整用パターンが形成された前記実装基板を用意し、当該実装領域に前記アンテナブロックを実装する工程と、
前記実装基板上の前記アンテナブロックのインピーダンスを測定する工程と、
前記測定結果に基づいて適切な定数を持つ前記インピーダンス調整素子を選択し、当該インピーダンス調整素子を前記実装基板上の所定の位置に実装する工程とを備えることを特徴とするアンテナ装置の特性調整方法。
【請求項9】
請求項2乃至8のいずれか一項に記載のアンテナ装置の特性調整方法であって、
所定の形状及びサイズを有する前記周波数調整用パターンが形成された前記実装基板を用意し、当該実装領域に前記アンテナブロックを実装する工程と、
前記実装基板上の前記アンテナブロックの周波数を測定する工程と、
前記測定結果に基づいて適切な定数を持つ前記周波数調整素子を選択し、当該周波数調整素子を前記実装基板上の所定の位置に実装する工程とを備えることを特徴とするアンテナ装置の特性調整方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−81702(P2009−81702A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249846(P2007−249846)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】