説明

アーチ橋の構築方法

【課題】ロアリング工法によってアーチ橋を架設する方法において、アーチリブ上に立設される支柱及びこの支柱に支持される上路桁を効率よく構築し、工事費の低減及び工期の短縮を図る。
【解決手段】対峙する位置に設けられた二つのアーチアバット1上にそれぞれ回転支承8を設け、この上に、アーチリブ(半アーチ)2’を上方に立ち上げるとともに、上路桁の全部又は一部を構成する鋼部材41及びこの鋼部材をアーチリブと連結する柱部材31を取り付ける。このとき鋼部材の下端は地盤上に固定し、鋼部材及びアーチリブを安定した状態で支持する。所定の高さまでアーチリブが立ち上げられた半アーチは鋼部材及び柱部材とともに、一次ケーブル13又は二次ケーブル14で支持しながら互いに対向する方向へ、上部が下降するように回転させ、半アーチの先端が対向する位置で接合してアーチリブを閉合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係る発明は、架設するアーチ全体のほぼ半分のアーチリブ(以下半アーチという)を対峙するアーチアバット上で上方へ立ち上げるように構築し、形成された半アーチを対向する側に回動させて双方を中央部で連結するアーチ橋の架設方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大規模なコンクリートアーチ橋を構築する方法の一つとして、対峙するアーチアバット上で上方に立ち上げて半アーチを構築し、これらの半アーチをそれぞれ対峙する側に所定の位置まで回転させて対向する2つの半アーチを連結する、いわゆるロアリング工法がある。この工法では、アーチアバットを構築するための機械及び設備をアーチアバットの周辺に集中して設けることができ、作業の効率を向上させることができる。また、架設中の半アーチの自重が軸力としてアーチアバットに伝達されるため、半アーチに生じる曲げモーメント及び半アーチの回転モーメント(転倒モーメント)が小さくなり、半アーチを片持ち状の不安定な状態で吊り支持する期間を極めて短くすることができる。したがって、アーチリブを片持ち状に張り出しながら架設する工法に比べて、安全な施工が可能となるとともに、工期を短縮し、工事費を低減することが可能となる。
【0003】
特許文献1には、一次ケーブルと二次ケーブルの二本のロアリングケーブルを半アーチとアンカーブロック間に張架して半アーチを安定した状態で回転させる工法が開示されている。
この方法では、図10に示すように、対峙する二つのアーチアバット101上でコンクリートを順次打設してアーチリブ102を構築する。そして、このアーチリブ102とアンカーブロック104との間に一次ケーブル103を張架する。また、アーチリブ102には、押し出しジャッキ105を突き当てて支間中央側へ押し出すように支持するとともに、一次ケーブル103の引張力でアーチリブ102を押し出しジャッキ側へ引き付け、構築中のアーチリブ102をしっかりと支持する。
【0004】
さらにアーチリブ102を上方に立ち上げ、アーチリブ全体のほぼ半分の長さまで構築が完了すると、この半アーチの頂部付近102aとアンカーブロック104との間に二次ケーブル106を配置し、押し出しジャッキ105で半アーチを前方へ送り出すとともに一次ケーブル103を徐々に送り出す。これにより半アーチを回転支承107を中心に回転させ、互いに対向する方向へ傾斜させる。半アーチの傾斜が進行し回転モーメントが増大すると、二次ケーブル106の長さを調整しながら二次ケーブル106の引張力で半アーチの回転モーメントに抵抗させる。このように、一次ケーブル103と二次ケーブル106とを用いてそれぞれの応力度を適切に維持することにより、ケーブルのサグの影響を低減し、半アーチを安定した状態で支持することができる。そして、二次ケーブル106を徐々に送り出すことにより、半アーチを所定の角度まで回転させ、対峙した半アーチを支間中央で閉合する。その後、閉合されたアーチリブ上に支保工を組み立てて、上路桁を支持する支柱を立設するとともに上路桁を構築してアーチ橋を完成させる。
【特許文献1】特開2003−321805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなロアリング工法では、アーチリブを架設した後、アーチリブ上に支保工を設けて支柱及びこの支柱に支持される上路桁を施工しなければならず、作業の効率の改善及び施工期間の短縮が望まれている。また、支柱及び上路桁等を構築するための資材を支保工上に運搬するために大がかりな揚重装置が必要となり、多くの時間や費用を要してしまう。
【0006】
本願に係る発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ロアリングによるアーチ橋の構築方法において、上路桁及びこれを支持する支柱を効率よく構築し、費用の低減及び工期の短縮を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、 対峙する架橋地点の両側にアーチアバットを形成し、 前記アーチアバットのそれぞれの上に設けられた回転支承上に、架設するアーチ全体のほぼ半分のアーチリブ(以下、半アーチという)を上方に立ち上げるように構築し、対峙する二つの前記半アーチを、それぞれ対峙する側に所定の角度まで回転し、該二つの半アーチを連結するアーチ橋の構築方法において、 前記回転支承上に前記半アーチを上方に立ち上げるとともに、連結された後のアーチリブ上に支持される上路桁の全部又は一部となる鋼部材及び該鋼部材を該アーチリブ上に支持するための複数の柱部材を上記半アーチの所定箇所に取り付け、 前記柱部材及び前記鋼部材が取り付けられた半アーチをそれぞれ対峙する側の所定の角度まで回転し、支間中央で該半アーチ及び鋼部材を連結することを特徴とするアーチ橋の構築方法を提供するものである。
【0008】
この方法では、上路桁の全部又は一部となる鋼部材及びこの鋼部材をアーチリブ上に支持するための複数の柱部材が半アーチを上方に構築するときに所定箇所に取り付けられているので、半アーチが連結されてアーチリブが両アーチアバット間に架設されたときには、すでに柱部材及び上路桁の一部又は全部がアーチリブ上に取り付けられている。そして、この柱部材及び鋼部材を利用して上路桁及び上路桁を支持する支柱を構築することができる。これにより、この柱部材及び上路桁を施工するための足場及び支保工を簡略化することができるとともに、アーチリブの架設後にその支間上に搬送する資材量が低減される。したがって、作業能率を向上させて上路桁及び支柱を構築するための期間を大幅に短縮することができる。また、半アーチを構築しながら立ち上げる時には、アーチリブの構築と柱部材及び鋼部材の取り付けとを平行しておこなうことができ、半アーチを構築する期間が大幅に延長されることはない。
【0009】
一方、鋼部材及び柱部材の取り付けがアーチアバット付近で行われるので、クレーン等の設備をアーチアバット付近に設ければよく、簡略化することができる。また、半アーチと一体として回転される柱部材及び鋼部材は軽量であるため、半アーチの回転が進行して半アーチが片持ち状に大きく張り出す状態となっても、半アーチの回転モーメントが過大になるのを抑制することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のアーチ橋の構築方法において、 前記柱部材は、鋼から成るものとし、対峙する二つの半アーチが支間中央で連結された後、コンクリートを巻立てるものとする。
【0011】
この方法では、対峙する半アーチが連結されるまでは、柱部材が鋼のみで構成されているので、柱部材の重量を小さく抑えるとともに、十分な強度及び剛性を有する柱部材によって鋼部材を支持することができる。これにより、半アーチが下方へ回転して支間側に大きく張り出す状態となっても、回転モーメントの増大を抑制することができるとともに、上路桁となる鋼部材が所定の位置に支持される。また、半アーチの閉合後に鋼からなる柱部材に現場でコンクリートを巻立てるので上路桁を支持するために十分な剛性及び強度を有するものとなる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のアーチ橋の構築方法において、 前記鋼部材はトラス構造であり、上記アーチリブが連結された後に、コンクリートを打設して床版を形成し、鋼部材との複合構造である上路桁を形成するものとする。
【0013】
この方法では、上路桁が鋼トラスとコンクリート床版とからなる複合構造であるので、コンクリート構造に比較して顕著に重量を低減することができる。また、半アーチが中央部で閉合されるまでは、トラス構造の鋼部材のみが半アーチに取り付けられており、この鋼トラスは軽量で大きな剛性を有するものにすることができる。したがって、鋼部材を取り付けた半アーチを所定の角度まで回転させる工程においても、回転モーメントの増加が抑制されるとともに、半アーチ上で柱部材又は鋼部材に大きな断面力を生じることもない。
また、アーチリブをアーチアバット間に架設した後に、鋼トラスに支持させた状態で床版のコンクリートを打設し、コンクリート床版との複合構造とすることができ、作業効率を著しく向上させて施工期間を短縮することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1、請求項3又は請求項4に記載のアーチ橋の構築方法において、 前記半アーチが前記アーチアバット上に立ち上げられた状態で支持されている間は、前記鋼部材の下端を、該アーチアバットの後方に設けられた台座に固定しておくものとする。
【0015】
この方法では、上記鋼部材の下端が地盤上の台座に固定されているので、鋼部材を安定した状態で組み立てることができるとともに、アーチアバット上に立ち上げられた半アーチの安定性も確保することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載のアーチ橋の構築方法において、 前記半アーチを回転して傾斜させるときに、該半アーチを支持するためのロアリングケーブルの少なくとも一部は、 前記アーチアバットの上方に立ち上げられた前記半アーチの上部に一端を定着し、 前記柱部材の軸線上に設けられて該半アーチが連結されたときに頂部がアーチクラウンの高さよりも高い位置となる仮支柱の頂部付近に、中間部を係止し、 前記アーチアバットの後方の地盤に固定されたアンカーブロックに他端を係止するものとする。
【0017】
この方法では、上記柱部材の頭部付近に係止されたロアリングケーブルは、半アーチが支間側へ大きく張り出した状態となっても、半アーチの回転中心つまり回転支承の位置から大きく離れた位置に張設することができる。したがって、ロアリングケーブルの張力が小さくても半アーチの大きな回転モーメントに抵抗することができる。これにより、ロアリングケーブルを把持して徐々に送り出すアンカーブロックの負担を軽減することができ、半アーチを所定の角度まで安定した状態で回転させることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本願発明に係るアーチ橋の構築方法では、半アーチをアーチアバット上に立ち上げるとともに、上路桁となる鋼部材及び鋼部材をアーチリブ上に支持する柱部材をアーチリブに取り付けておき、この半アーチを所定の角度まで回転して構築する。したがって、アーチリブが架設された後、上路桁及び上路桁を支持する支柱を施工するための支保工等が著しく低減され、効率よく作業を行って工期を短縮することが可能となる。また、半アーチに取り付けて一体として回転される部材の重量を小さく抑えて半アーチが回転する際に生じる回転モーメントの増大を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本願発明に係る方法で架設することができるアーチ橋の一例を示す概略側面図及び図中のA−A線における断面図である。
このアーチ橋は、架橋地点の両側に対峙するように設けられた二つのアーチアバット1a、1bの間に架設されたアーチリブ2と、このアーチリブ2上に立設された複数の支柱3と、この支柱3によって支持され、この上に路面が形成される上路桁4とで主要部が構成されている。
【0020】
上路桁4はトラス状の鋼部材41とコンクリート床版42からなる複合構造であり、アーチリブ2の上方で、アーチリブから立ち上げられた支柱3に支持される。また、両側部では、アーチアバット1上に立ち上げられた橋脚5a、5b及び地盤上に立ち上げられた橋脚6a、6bに支持されるとともに、その両端は橋台7a、7bに支持されている。
アーチリブ2上に立ち上げられる支柱3は、鋼管からなる柱部材31とその外周面に密着するように巻き立てられた鉄筋コンクリート32との複合部材であり、上端及び下端はそれぞれ上路桁4及びアーチリブ2に接合される。この接合部の構造は、曲げモーメントの伝達が可能な構造又は曲げモーメントが伝達されない構造を適宜に選択することができる。。
【0021】
上記アーチリブ2は鉄筋コンクリートからなり、両端が一対のアーチアバット1a、1bに固定された固定アーチとなっている。そして、幅方向に二つのアーチ部材21a、21bを並設したものであって、コンクリートからなる横材22によって互いに連結されている。これにより、アーチリブ2は横方向の水平力に対しても大きな抵抗力を有するものとなっている。
また、このアーチリブ2は、アーチリブ全体のほぼ半分である半アーチをアーチアバット1a、1b上でほぼ鉛直方向に立ち上げるように形成し、この半アーチの下端を中心にして互いに対峙する方向へ上部が下降するように回転させ、対峙する双方の半アーチの先端部を連結することによって形成されたものである。
【0022】
次に、上記アーチ橋の構築方法を図に基づいて説明する。
図2に示すように、上路桁4の端部を支持する位置に橋台7を設け、該橋台7の前方にアーチリブ2を支持するアーチアバット1を構築する。上記橋台7は架設中のアーチリブを支持するケーブルのアンカーブロックをも兼ねるものであり、グラウンドアンカー(図示しない)によって強固に地盤又は岩盤に固定する。また、地盤上の所定位置に橋脚6を立設する。次に、アーチアバット1上に、半アーチの基部となる回転支承8を据え付け、この回転支承8に連続するようにアーチリブ(半アーチ)2’を上方へ立ち上げるように形成する。このアーチリブ2’は、所定の長さのブロックに分けて順次現場でコンクリートを打設して構築する。
【0023】
上記回転支承8はアーチリブ2’の幅方向に並設された二つのアーチ部材21a、21bを支持する位置にそれぞれ配置されており、アーチアバット1に固着される下沓8aと、アーチ部材21a、21bの下端部に固着される上沓8bとで構成されている。そして、下沓8aと上沓8bとは水平方向の軸線周りに互いに回動が可能となっている。
【0024】
回転支承8の上沓8bに固着するように形成されたアーチリブ2’は、アーチアバット1上に設けられた仮支柱9及びこの仮支柱9と橋台7との間に架け渡された反力受け梁10に支持された仮固定用ジャッキ11又は押し出しジャッキ12によって支持する。つまり、構築中のアーチリブ2’の高さが低い間は、図2に示すように仮固定用ジャッキ11で支持し、アーチリブ2’が橋面とほぼ同じ高さまで立ち上げられると、図3に示すように押出しジャッキ12で構築中のアーチリブ2’を支持する。また、アーチリブ2’は後方つまり仮固定用ジャッキ11又は押し出しジャッキ12を設けた方向へやや傾斜させて形成し、前方への転倒モーメントが作用するのを防止する。
【0025】
アーチリブ2’が橋面とほぼ同じ高さまで立ち上げられると、図3に示すように、このアーチリブ2’とアンカーブロックである橋台7との間に一次ケーブル13を配置し、この一次ケーブル13の張力によってアーチリブ2’を押し出しジャッキ11に押し付ける。これにより、アーチリブ2’を安定した状態で支持するともに、前方への転倒を防止する。
【0026】
アーチリブ2’が立ち上げられるのにともないと、図3に示すように、アーチリブ2’上に支柱3を構成する柱部材31が取り付けられる。この柱部材31は、図4に示すように、二つのアーチ部材21a、21b上にそれぞれ立設され、頭部で上路桁の一部となる鋼部材41を支持するものである。また、この柱部材31が設けられる位置は、上路桁2の支間長を適切に分割するとともにアーチリブ3に生じる断面力が小さく押さえられるように適切に設定される。
【0027】
この柱部材31が構築中のアーチリブ2’に取り付けられると、上路桁2の一部となるトラス状の鋼部材41がこの柱部材31の頂部付近に連結される。この鋼部材41は、図3及び図4に示すように、上弦材41a、下弦材41b及び斜材41cからなる三次元のトラスを構成している。上弦材41a及び下弦材41bは鋼管で形成されており、斜材41cには鋼管又は鋼型材等を用いることができる。
このトラス構造となった鋼部材41は所定の長さのブロックとして工場で製作される。そして、現場でブロック毎にクレーン等によって吊り支持され、柱部材31の頭部に接合しながら上方に立ち上げる。鋼部材41の下端は、図3に示すように、アーチアバット1の後方の地盤上に設けられた橋脚6のフーチング6a上に固着する。これにより、上方へ立ち上げる鋼部材41及びアーチリブ2’を安定した状態で支持することができる。
【0028】
アーチリブ2’を順次上方へ立ち上げながら所定の位置に柱部材31を取り付ける工程及び鋼部材41を柱部材31の頭部に連結するとともに先に立ち上げられている鋼部材41と接合する工程を繰り返し、図5に示すようにアーチリブ2’が所定の高さまで形成された半アーチを完成する。
そして、半アーチ2’の上部とアンカーブロック7との間に二次ケーブル14を配置する。この二次ケーブル14には、配置した時に張力は導入せず、半アーチは一次ケーブル13と押し出しジャッキ12とで支持する。
【0029】
上記半アーチは、次のような工程により、互いに対峙する方向すなわち図5に示す矢印Bの方向へ、上端部を下降させるように回転させる。
フーチング6c上に固定されていた鋼部材41の下端部を解放し、押出しジャッキ12を前方(支間中央側)に押し出すとともに、一次ケーブル13を橋台7側でゆっくりと送り出す。これにより、半アーチ2’を回転支承8を中心に徐々に回転させ、支間中央側へ傾斜させていく。半アーチ2’の回転が所定量進むと、半アーチ2’がアーチアバット1から張り出した状態となり、回転モーメントが増大する。そして、所定の角度まで傾斜すると、二次ケーブル14に張力を導入し、増大した回転モーメントに対して二次ケーブル14の張力で抵抗し、さらに二次ケーブル14を少しずつ送り出して半アーチ2’を所定の角度まで回転する。
【0030】
図6に示すように、対向する一対の半アーチ2’a、2’bが先端を突き合わせるように所定の位置に配設されたら、双方の半アーチ2’a、2’bの先端面の間に鉄筋を配置するとともにコンクリートを打設してアーチクラウン部2cを形成し、閉合されたアーチリブ2を形成する。その後、回転支承8をコンクリートによって埋め込んでアーチリブ2の下端部がアーチアバット1と一体に連続するものとし、両端固定アーチとする。
【0031】
一方、アーチリブ2上に立設されている柱部材31の周囲には、鉄筋を配置するとともに型枠を組み立て、コンクリートを巻立てて柱部材31とその周囲のコンクリート32との複合部材とする。これにより、上路桁2を支持するための十分な強度と剛性を確保する。また、アーチアバット1上では、仮支柱9及び反力受け梁10を撤去し、橋脚5(図6には示されていない)を立設する。そしてアーチリブ2上にほぼ水平に取り付けられているトラス状の鋼部材41に連続し、橋台7上に至る鋼部材(図6には示されていない)を取り付ける。この3次元のトラスを形成している鋼部材41の上に型枠を組み立て、この鋼部材41と一体となるように床版42のコンクリートを打設し、アーチ橋を完成させる。
【0032】
図7、図8及び図9は、請求項5に係る発明の一実施形態であるアーチ橋の構築方法を示す概略図である。
この方法では、図7に示すように、半アーチ52’の構築がほぼ完成すると、アンカーブロックとなる橋台57と半アーチ52’の上部との間に二次ケーブル61が配置される。また、半アーチ52’に取り付けられ、支柱を構成する複数の柱部材(鋼管)62の内、アーチアバット51に最も接近した位置に取り付けられた柱部材62は、その頂部62aがアーチクラウン部よりも高くなるように鋼部材63との接合部より上方に突き出して設けられる。
なお、半アーチ52’を構築する工程は、図3から図6までに示すアーチ橋と同様に行うことができる。
【0033】
その後、半アーチ52’を押し出しジャッキ64で押し出すとともに、一次ケーブル65をゆっくりと送り出して半アーチ52’を徐々に回転させ、支間側へ傾斜させていく。半アーチ52’の回転が所定の角度まで進行したときに、二次ケーブル61に張力を導入し、この二次ケーブル61の張力で半アーチ52’を支持する。そして、さらに半アーチ52’の回転が進行したときに、上方に延長された柱部材の頂部62aに二次ケーブル61が係止され、図8に示すように、半アーチ52’の上部から上記柱部材62の頂部62aで曲折されて他端が橋台57に係止される。このように張架された二次ケーブル61は、半アーチ52’の回転が進行したときにも、図9に示すようにその軸線が回転支承58より離れた位置にあり、小さい引張力で半アーチ52’の回転モーメントに抵抗することが可能となる。これにより、アンカーブロックとして機能する橋台57によって負担される引張力を低減し、安定した状態で閉合前の半アーチ52’を支持することができる。このように二次ケーブル61で半アーチ52’を支持しながら所定の位置まで回転させ、図9に示すように双方の半アーチ52’a、52’bの端面が突き合わされるように支持する。そして、双方の半アーチ52’a、52’bの端面間に鉄筋を配置し、コンクリートを打設してアーチリブ52を閉合する。半アーチ52’a、52’bが閉合した後の工程は、図3から図6に示すアーチ橋の構築と同様に行うことができる。
【0034】
なお、以上に説明したアーチ橋の構築方法は、上路桁がアーチリブより高い位置にある上路式アーチ橋であるが、上路桁が一部でアーチリブより下方となる、いわゆる中路式のアーチ橋に対しても適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本願発明に係る方法で架設することができるアーチ橋の一例を示す概略側面図及び図中のA−A線における断面図である。
【図2】図1に示すアーチ橋の構築中の状態を示す側面図である。
【図3】図1に示すアーチ橋の構築中の状態を示す側面図である。
【図4】図1に示すアーチ橋の構築中における断面図である。
【図5】図1に示すアーチ橋の構築中の状態を示す側面図である。
【図6】図1に示すアーチ橋の構築中の状態であって、半アーチの回転が終了した状態を示す側面図である。
【図7】図1に示すアーチ橋の他の構築方法を示す側面図である。
【図8】図1に示すアーチ橋の他の構築方法を示す側面図である。
【図9】図1に示すアーチ橋の他の構築方法によって半アーチの回転が終了した状態を示す側面図である。
【図10】従来のロアリング工法を示す概略図である。
【符号の説明】
【0036】
1:アーチアバット、 2:アーチリブ、 2’:構築中のアーチリブ、 3:支柱、 4:上路桁、 5:橋脚、 6:橋脚、 6c:橋脚のフーチング、 7:橋台(アンカーブロック)、 8:回転支承、 8a:下沓、 8b:上沓、 9:仮支柱、 10:反力受け梁、 11:仮固定用ジャッキ、 12:押し出しジャッキ、 13:一次ケーブル(ロアリングケーブル)、 14:二次ケーブル(ロアリングケーブル)、
21a,21b:アーチ部材、 2c:アーチクラウン部、 22:横材、
31:鋼管からなる柱部材、 32:鉄筋コンクリート、
41:鋼部材、 41a:上弦材、 41b:下弦材、 41c:斜材、 42:コンクリート床版、
51:アーチアバット、 52’:構築中のアーチリブ、 56:橋脚、 57:橋台(アンカーブロック)、 58:回転支承、 59:仮支柱、 60:反力受け梁、
61:一次ケーブル(ロアリングケーブル)、 62:柱部材(鋼管)、 62a:柱部材の頂部、 63:鋼部材、 64:押し出しジャッキ、 65:二次ケーブル(ロアリングケーブル)、


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対峙する架橋地点の両側にアーチアバットを形成し、
前記アーチアバットのそれぞれの上に設けられた回転支承上に、架設するアーチ全体のほぼ半分のアーチリブ(以下、半アーチという)を上方に立ち上げるように構築し、
対峙する二つの前記半アーチを、それぞれ対峙する側に所定の角度まで回転し、該二つの半アーチを連結するアーチ橋の構築方法において、
前記回転支承上に前記半アーチを上方に立ち上げるとともに、連結された後のアーチリブ上に支持される上路桁の全部又は一部となる鋼部材及び該鋼部材を該アーチリブ上に支持するための複数の柱部材を上記半アーチの所定箇所に取り付け、
前記柱部材及び前記鋼部材が取り付けられた半アーチをそれぞれ対峙する側の所定の角度まで回転し、支間中央で該半アーチ及び鋼部材を連結することを特徴とするアーチ橋の構築方法。
【請求項2】
前記柱部材は、鋼から成るものとし、対峙する二つの半アーチが支間中央で連結された後、コンクリートを巻立てることを特徴とする請求項1に記載のアーチ橋の構築方法。
【請求項3】
前記鋼部材はトラス構造であり、上記アーチリブが連結された後に、コンクリートを打設して床版を形成し、鋼部材との複合構造である上路桁を形成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアーチ橋の構築方法。
【請求項4】
前記半アーチが前記アーチアバット上に立ち上げられた状態で支持されている間は、前記鋼部材の下端を、該アーチアバットの後方に設けられた台座に固定しておくことを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載のアーチ橋の構築方法。
【請求項5】
前記半アーチを回転して傾斜させるときに、該半アーチを支持するためのロアリングケーブルの少なくとも一部は、
前記アーチアバットの上方に立ち上げられた前記半アーチの上部に一端を定着し、
前記柱部材の軸線上に設けられて該半アーチが連結されたときに頂部がアーチクラウンの高さよりも高い位置となる仮支柱の頂部付近に、中間部を係止し、
前記アーチアバットの後方の地盤に固定されたアンカーブロックに他端を係止することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のアーチ橋の構築方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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