説明

アームレスト構造

【課題】側突時に車内側から作用する荷重の車両前後方向位置に依存することなく、アームレストの変形ストロークを十分に確保し、アームレストから車内の物体へ伝わる荷重を低減させることを目的とする。
【解決手段】側面衝突によりアームレスト14の操作部16が車内の物体32に当接すると、該物体から操作部16へ向けての荷重fが荷重伝達部18を介して操作部16の一部へ集中的に作用する。このとき、ドアトリム12内における操作部16の車幅方向外側かつ荷重伝達部18とは異なる高さ位置に設けられた位置規制部20と荷重伝達部18とにより操作部16に対して偶力が生じ、これによって操作部16が車両前後方向回りに全体的に回動する。このため、荷重fの車両前後方向位置に依存することなく、アームレスト14の変形ストロークを十分に確保して、アームレスト14から車内の物体32へ伝わる荷重を低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアを車内側から開閉する際に乗員が操作力入力部として用いる操作部を有するアームレスト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアームレスト構造としては、ドアを車内側から開閉する際の操作部となるプルハンドル(プルカップ)を車外側部材と車内側部材とに二分割し、側面衝突時に車内側から車内側部材に荷重がかかると、該車内側部材が湾曲変形し、衝撃を吸収するようにしたものが開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−9991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来例では、車内側からの荷重が車内側部材の位置に作用した場合には該車内側部材が湾曲変形することでアームレストの変形ストロークをある程度確保することができるものの、車内側からの荷重が車外側部材に跨る領域に作用した場合には、該車外側部材が強度部材として存在しているため、アームレストの変形ストロークを十分に確保することができない。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、側突時に車内側から作用する荷重の車両前後方向位置に依存することなく、アームレストの変形ストロークを十分に確保し、アームレストから車内の物体へ伝達される荷重を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、ドアトリムに設けられるアームレストと、該アームレストに設けられ、乗員がドアを開閉する際の操作力入力部として使用可能な操作部と、前記ドアトリム内における前記操作部の車幅方向内側に設けられ、車内側から前記操作部へ向けて荷重が作用した場合に、該荷重を前記操作部の一部に集中的に作用させる荷重伝達部と、前記ドアトリム内における前記操作部の車幅方向外側かつ前記荷重伝達部と異なる高さ位置に設けられ、前記荷重が前記操作部に作用した際に、該操作部が車幅方向外側へ平行移動することを規制すると共に、該操作部を車両前後方向回りに回動させることが可能な位置規制部と、を有することを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載のアームレスト構造では、側面衝突によりアームレストの操作部が車内の物体に当接すると、該物体から操作部へ向けての反力が生じ、該反力が荷重として荷重伝達部を介して操作部の一部へ集中的に作用する。このとき、ドアトリム内における操作部の車幅方向外側かつ荷重伝達部とは異なる高さ位置に設けられた位置規制部により、操作部の車幅方向外側への平行移動が規制されると共に、互いに高さ位置が異なる位置規制部と荷重伝達部とにより操作部に対して偶力が生じ、これによって操作部が車両前後方向回りに全体的に回動する。
【0007】
このように、操作部が全体的に回動することで、荷重伝達部の高さ位置における操作部の移動ストロークをより大きくすることができ、側突時に車内側から操作部へ作用する荷重の車両前後方向位置に依存することなく、アームレストの変形ストロークを十分に確保して、アームレストから車内の物体へ伝わる荷重を低減させることができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のアームレスト構造において、前記荷重伝達部は、前記位置規制部よりも車両上下方向下側に設けられ、前記操作部の底部は、前記ドアトリム内に車幅方向に配置された支持部材に支持され、かつ該底部は、前記荷重が前記荷重伝達部を介して前記操作部に作用して該操作部が回動した際に、前記支持部材に沿って摺動可能であることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載のアームレスト構造では、側面衝突を受けた際に車内側から操作部へ向かう荷重が生じた場合に、該荷重が位置規制部よりも車両上下方向下側に設けられた荷重伝達部を介して操作部の下側部分へ作用することで、該下側部分が位置規制部を支点として車幅方向外側へ移動するように該操作部が回動し、かつ操作部の底部が該底部を支持する支持部材に沿って車幅方向外側へ向けて摺動する。このため、底部が支持部材に固定されている場合と比較して、操作部の下側部分の移動ストロークがより大きくなり、アームレストの変形ストロークを更に多く確保することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載のアームレスト構造によれば、側突時に車内側から操作部へ作用する荷重の車両前後方向位置に依存することなく、アームレストの変形ストロークを十分に確保し、アームレストから車内の物体へ伝わる荷重を低減させることができる、という優れた効果が得られる。
【0011】
請求項2に記載のアームレスト構造によれば、操作部の底部が支持部材に固定されている場合と比較して、アームレストの変形ストロークを更に多く確保できる、という優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1,図2において、本実施の形態に係るアームレスト構造Sは、ドア10の内装部材であるドアトリム12に設けられるアームレスト14と、操作部の一例たるプルカップ16と、荷重伝達部18と、位置規制部20とを有している。
【0013】
アームレスト14は、ドアトリム12の一部が車内側に突出すると共に、車両前後方向に延びて形成されており、乗員が腕(図示せず)を載せることができるようになっている。プルカップ16は、該アームレスト14に設けられ、乗員がドア10を開閉する際の操作力入力部として使用可能な部分であって、例えば上方に開口した開口部16Aを有する容器状部材として構成され、該開口部16Aがアームレスト14上に露出し、開口部16Aの周囲の縁部16Cがアームレスト14上に突出しないように嵌め込まれている。図2に示されるように、プルカップ16の縁部16Cがドアトリム12に接している領域は、車両上下方向においてあまり大きくはない。
【0014】
また、図2に示されるように、ドアトリム12内には、例えばドアパネル30から車幅方向内側へ突出し、かつ車両上下方向に薄く形成された支持部材22が配置され、プルカップ16の底部16Bは、該支持部材22に支持されると共に、該支持部材22に対してボルト24及びナット26により車両上下方向に拘束されている。図3に示されるように、支持部材22には、車幅方向に長い長穴22Aが形成されており、ボルト24は該長穴22Aに挿通されている。これにより、プルカップ16の底部16Bは、支持部材22に沿ってその面方向に摺動可能となっている。
【0015】
図2において、荷重伝達部18は、ドアトリム12内におけるプルカップ16の車幅方向内側に設けられ、例えば位置規制部20よりも車両上下方向下側においてドアトリム12から車幅方向外側に突出しプルカップ16に当接又は近接する突起部として形成され、車内側からプルカップ16へ向けて荷重fが作用した場合に、該荷重fをプルカップ16の下側部分に集中的に作用させることができるようになっている。荷重伝達部18は、プルカップ16の車両前後方向長さの略全長に渡って、連続的又は断続的に設けられている。
【0016】
位置規制部20は、ドアトリム12内におけるプルカップ16の車幅方向外側かつ荷重伝達部18と異なる高さ位置に設けられ、荷重fがプルカップ16に作用した際に、該プルカップ16が車幅方向外側へ平行移動することを規制すると共に、該プルカップ16を車両前後方向回りに回動させることが可能に構成されている。具体的には、位置規制部20は、荷重伝達部18の高さ位置と異なり、例えば先端がプルカップ16の上側部分に当接又は近接するように、ドアパネル30から車幅方向内側へ突出した突起部として形成されている。位置規制部20は、プルカップ16の車両前後方向長さの略全長に渡って、連続的又は断続的に設けられている。
【0017】
なお、図2においては、荷重伝達部18がドアトリム12と一体的に描かれ、支持部材22及び位置規制部20がドアパネル30と一体的に描かれているが、夫々別部品として取り付けてもよい。また、ドアトリム12やドアパネル30に突起状の荷重伝達部18及び位置規制部20を設けるのではなく、プルカップ16側に荷重伝達部18及び位置規制部20に相当する突起部を設けるようにしてもよい。
【0018】
また、操作部をプルカップ16として説明したが、これに限られるものではなく、アームレスト14内に設けられる部材、即ち小物入れやスイッチボックス等であってもよい。
【0019】
(作用)
図2において、ドア10に対して側面衝突があり、その側突荷重F(1次衝突荷重)により該ドア10が車幅方向内側に押し込まれ、これによってアームレスト14が車内の物体32に当接すると、該物体32からアームレスト14内のプルカップ16へ向けて反力(2次衝突荷重)が生じ、該反力が荷重fとして荷重伝達部18を介してプルカップ16の一部、即ちプルカップ16の下側部分へ集中的に作用する。このとき、ドアトリム12内におけるプルカップ16の車幅方向外側かつ荷重伝達部18とは異なる高さ位置、即ち荷重伝達部18よりも高い位置に設けられた位置規制部20により、プルカップ16の車幅方向外側への平行移動が規制されると共に、該位置規制部20と該位置規制部20よりも相対的に低い位置にある荷重伝達部18とによりプルカップ16に対して偶力が生じ、これによってプルカップ16が車両前後方向回り(図示の例では、車両後方から前方を見た状態において左回り)に全体的に回動する。
【0020】
より具体的には、荷重fが位置規制部20よりも車両上下方向下側に設けられた荷重伝達部18を介してプルカップ16の下側部分へ作用することで、該下側部分が位置規制部20を支点として車幅方向外側へ移動するように該プルカップ16が回動する。このとき、相対的には、プルカップ16の上側部分が荷重伝達部18を支点として車幅方向内側へ移動する状態となっている。荷重伝達部18及び位置規制部20は、プルカップ16の車両前後方向長さの略全長に渡って連続的又は断続的に設けられているので、荷重fの車両前後方向における入力位置が、プルカップ16の前端部や後端部であっても、プルカップ16は同様に回動する。即ち、物体32の大きさ等により図示しない着座シートの車両前後方向位置が異なり、物体32が、プルカップ16の中央部に位置している場合だけでなく、前端部や後端部に位置している場合に対応することが可能である。
【0021】
この際、図2に示されるように、プルカップ16の底部16Bを支持する支持部材22は、プルカップ16の回動に伴って、底部16Bと接している支持部分22Cよりも車幅方向外側部分22Bにおいて折れ曲がる。また、プルカップ16の底部16Bを支持部材22へ拘束しているボルト24は、該支持部材22の長穴22Aに挿通されているので、プルカップ16の底部16Bは、折れ曲がっていない支持部分22Cの範囲において、支持部材22に沿って車幅方向外側へ向けて、矢印A方向へ摺動する(図3)。
【0022】
なお、荷重fが小さい場合には、支持部材22はあまり折れ曲がらず、プルカップ16の底部16Bは、該支持部材22に沿って車幅方向外側へ向けて摺動する。
【0023】
一方、プルカップ16の縁部16Cがドアトリム12に接している領域は、車両上下方向においてあまり大きくはないので、該縁部16Cはアームレスト14から容易に離脱し、プルカップ16を回動し易くすることができる。
【0024】
このように、アームレスト構造Sでは、プルカップ16が全体的に回動することで、荷重伝達部18の高さ位置におけるプルカップ16の移動ストロークをより大きくすることができ、側突時に車内側からプルカップ16へ作用する荷重fの車両前後方向位置に依存することなく、アームレスト14の変形ストロークを十分に確保することができる。アームレスト14の変形ストロークが大きくなることで、アームレスト14から物体32へ伝わる荷重が低減する。
【0025】
また、プルカップ16の回動時に該プルカップ16の底部16Bが支持部材22に沿って車幅方向外側へ摺動するので、底部16Bが支持部材22に固定されている場合と比較して、プルカップ16の下側部分の移動ストロークがより大きくなり、アームレスト14の変形ストロークを更に多く確保することができる。このため、アームレスト14から物体32へ伝達される荷重を更に低減させることができる。
【0026】
なお、支持部材22の所定位置、例えば車幅方向外側部分22B付近に折れ曲がり起点となる脆弱部(図示せず)を設けておき、支持部材22を、プルカップ16の回動を積極的に案内するガイド部としても用いてもよい。また、支持部材22には、長穴22Aの代わりに、例えば車室内側が開口したスリット(図示せず)を設けてもよい。更に、プルカップ16の底部16Bが支持部材22に沿って摺動する構成は、上記のものに限られず、例えば支持部材22に車幅方向に延びるレール(図示せず)を設けると共に、プルカップ16の底部16Bに該レール上を摺動可能なガイド部(図示せず)を設ける構成でもよい。
【0027】
また、ボルト24の代わりに、所定の荷重が作用した際に破断するピン等を用いてプルカップ16の底部16Bを支持部材22に固定しておき、プルカップ16が回動する際に該プルカップ16の底部16Bが支持部材22から外れるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】アームレスト構造を有するドアトリムを車内側から見た状態を示す斜視図である。
【図2】アームレスト内におけるプルカップの状態及び荷重が作用した場合におけるプルカップの回動及び底部の摺動状態を示す、図1おける2−2矢視断面図である。
【図3】支持部材に設けられた長穴、及び該長穴に挿通されたボルトを示す、図2における3−3矢視断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 ドア
12 ドアトリム
14 アームレスト
16 プルカップ(操作部)
16B 底部
18 荷重伝達部
20 位置規制部
22 支持部材
f 荷重
S アームレスト構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアトリムに設けられるアームレストと、
該アームレストに設けられ、乗員がドアを開閉する際の操作力入力部として使用可能な操作部と、
前記ドアトリム内における前記操作部の車幅方向内側に設けられ、車内側から前記操作部へ向けて荷重が作用した場合に、該荷重を前記操作部の一部に集中的に作用させる荷重伝達部と、
前記ドアトリム内における前記操作部の車幅方向外側かつ前記荷重伝達部と異なる高さ位置に設けられ、前記荷重が前記操作部に作用した際に、該操作部が車幅方向外側へ平行移動することを規制すると共に、該操作部を車両前後方向回りに回動させることが可能な位置規制部と、
を有することを特徴とするアームレスト構造。
【請求項2】
前記荷重伝達部は、前記位置規制部よりも車両上下方向下側に設けられ、
前記操作部の底部は、前記ドアトリム内に車幅方向に配置された支持部材に支持され、かつ該底部は、前記荷重が前記荷重伝達部を介して前記操作部に作用して該操作部が回動した際に、前記支持部材に沿って摺動可能であることを特徴とする請求項1に記載のアームレスト構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−106233(P2007−106233A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298448(P2005−298448)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】