説明

イオンビーム加工装置

【課題】イオンビーム加工装置では、イオンビームの異常状態を、試料に照射する電流でしか検知できなかったため、原因探索による補正ができず、安定な加工が実現できていなかった。
【解決手段】
第1、第2のブランカ128、134とファラデーカップ130、134を用い、第1、第2のブランカ128、134のオンオフを切り替えて、投射マスク115の上下2箇所でビーム電流をモニタする。これにより、投射マスク115の損傷を抑えながら、イオンビームの異常情報を取得し、異常原因の切り分け、異常の補正が可能となる。このため、イオンビームによる安定加工を実現することができ、イオンビーム加工装置を安定的に使用することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイス等の検査や不良解析等のために試料を加工するイオンビーム加工装置に関わる。
【背景技術】
【0002】
微細化が進む半導体デバイスの検査、解析に対するニーズが高まっている。その中でも不良原因を特定するための不良解析においては、デバイス内部の欠陥を直接観察することが必須技術となっている。これらの観察のためにはデバイスの観察目的位置を正確に微細加工する必要がある。従来この正確な微細加工を行う装置として使用されてきたのは集束イオンビーム(Focused Ion Beam、以下FIB)加工装置である。このFIBではサブミクロンオーダーに集束したイオンビームを静電偏向走査し試料に照射することにより目標位置を正確に加工することができるため、解析用の断面形成や解析用試料の作製等に用いられる。
【0003】
また、この不良解析加工において、近年は更に短時間での解析試料作製ニーズが高まっている。即ち、歩留まり向上がデバイスコストに直結するため、短時間での不良原因特定はコスト削減に大きな影響を持つ。このため、高速な解析試料作製が期待されている。これを実現する加工装置として、例えば、特許文献1に記載されている投射型イオンビーム(Projection Ion Beam、以下PJIB)加工装置がある。これは上記のFIBのようにイオンビームを集束させて偏向走査することにより目的形状に加工するのではなく、予め決めた目的形状と相似形のマスクパターンを用意し、このマスクパターンを試料上に投射することにより一括加工するという装置である。加工速度は概略的には加工する面積にどれだけのイオンが照射されるかにより決まるものであり、すなわちイオンビーム電流が大きいほど高速加工が可能になる。ビーム径における単純なイオンビーム電流密度ではFIBの方がPJIBよりも大きいが、FIBのイオンビーム電流よりもPJIBのイオンビーム電流の方が大きくなるような面積の加工においては、単純にPJIB加工の方が速くなる。実際、デバイスの不良解析に用いるような加工の場合は、サブミクロン領域の加工になることはほとんど無く、数〜数10ミクロン領域の加工が必要であることがほとんどであり、これらの面積ではPJIB加工の方が高速となるというメリットがある。
【0004】
これらのイオンビーム加工装置を用いた不良解析は従来、専門のオペレータが使用する場合が多かったため、装置に異常事態が生じてもオペレータの技量での対応が可能であったが、最近は専門のオペレータが付かない自動加工が可能な装置も増えてきたため、これらの装置では特にビームの安定度確保が重要となってきている。ビーム安定度の確保のためにはビームをモニタすることが有効である。例えば、特許文献2にはイオン注入装置によるビーム電流モニタの方法を例に記載されている。これは、被処理物の前や後の2箇所において電流密度分布を多点ファラデーカップを用いて測定し、被処理物(試料)位置でのイオンビームの電流密度分布を内挿、または外挿することが述べられている。こうして推定された電流密度分布に対して、例えば電流密度が薄い領域は走査滞在時間を長く、電流密度が高い領域の走査滞在時間を短くすることでビーム分布を補正ができることが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特許第3542140号公報
【特許文献2】特許第3567749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2開示の技術はビーム走査により補正可能な微小な分布や変動には有効である。このため、FIBの場合は補正可能となる場合も有ると考えるが、PJIBは一般的に走査せずマスク形状を投射するため走査速度変更による補正は不可能である。
【0007】
また、ビームが大きく異常を起こし、走査速度変更で補正不可能な場合も有る。例えば、ビームが何らかの影響で光軸中心から外れた場合、ビーム自身のプロファイルが崩れ、ビーム裾のだれ(弛み)が大きくなり加工形状が崩れる可能性もある。また、イオンビームは光学系内のビームが照射される構成要素を損傷させるため構成要素の寿命が絡んでくる可能性があり、この場合も上記従来例では補正不可能となる。
【0008】
構成要素の寿命が大きく影響を及ぼす例としては、PJIBの投射マスクがある。投射マスクは照射されるイオンビームの内、試料加工に使用するイオンビームだけを選択的に通過させる機能を有するため、通過させないイオンビームは投射マスク自身のスパッタリングによる破損を生じさせる。しかしPJIBはマスクパターン形状が加工形状を決めるため、マスクパターンが崩れないようにしなければならない。この寿命を長くするためにはスパッタされても長く持つようにマスクを厚くすることが一つの解決策であるが、厚くなると加工アスペクトの問題から微細なパターンを形成できなくなるという問題がある。例えば、マスク上で10μm幅のパターンを形成したいとすれば、マスク厚さを1mmとすると加工アスペクト比は100となり、マスク作製は困難となる。このため、形成パターンサイズによるがマスク厚さには一般的に上限があり、例えば300μm程度等となる。このように、マスクには寿命があることを前提条件として、これによる試料の加工失敗等を防止する機能が必要となる。
【0009】
以上はPJIBの投射マスクを例に説明したが、FIBの場合もビーム電流を切り替えるための複数個の大きさの違うアパーチャを有する可動絞りを有することが一般的である。この場合も投射マスクと同様に可動絞りが照射ビームによりスパッタされることから寿命の問題がある。もし、可動絞りが寿命に達してアパーチャの穴径が大きくなることにより試料へ照射されるビーム電流が増加した場合には、ビーム電流が増えるのみならずビームエッジのだれ等ビームプロファイル自身が崩れる可能性が高い。この場合は、従来例のようにビーム滞在時間を補正しただけでは試料へのビーム照射条件を補正できない。特に微細加工に用いるFIBの場合はビームのだれが加工失敗に致命的に繋がるため、このような異常状態での使用を防止することが重要となる。
【0010】
このように、イオンビームが正常か異常かをモニタし、異常であれば補正、もしくは補正できない場合は異常原因の切り分け、また異常状態で使用しないように防止することが可能なイオン加工装置を提供することが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの課題を解決するために、本発明では、試料を保持する試料ステージと、イオンビームを発生させるイオン源と、開口を有する板状部材と、試料ステージに保持される試料に対して開口を透過したイオンビームを照射する照射光学系を有するイオンビーム加工装置で、開口のイオン源側にブランカとビーム電流検出器を有し、試料へのイオンビームの照射不要時にはブランカをオンしてビーム電流検出器で電流をモニタする構成とする。
【0012】
また、試料を保持する試料ステージと、イオンビームを発生させるイオン源と、開口を有する板状部材と、試料ステージに保持される試料に対して開口を透過したイオンビームを照射する照射光学系を有するイオンビーム加工装置で、開口のイオン源側に第1のブランカと第1のビーム電流検出器を設置し、開口の試料側に第2のブランカと第2のビーム電流検出器を設置する構成とする。そして、試料へのイオンビームの照射不要時には第1のブランカをオンして第1のビーム電流検出器で電流をモニタし、試料へのイオンビームの照射直前には第1のブランカをオフし、第2のブランカをオンし第2のビーム電流検出器で電流をモニタする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によりイオンビーム加工装置の安定稼動が実現可能となり、信頼性の高い不良解析が実現できるため、半導体プロセスでの歩留向上にも貢献できる。特に、開口のイオン源側にブランカとビーム電流検出器を有することにより、開口を有する板状部材である投射マスクなどの損傷を抑えた上で、開口に照射されるビーム電流そのものの安定性をモニタすることができるため、開口よりイオン源側の異常を把握することができる。更に、開口の試料側に第2のブランカと第2のビーム電流検出器を設置することにより、第1のブランカと第1のビーム電流検出器と協同して詳細なイオンビーム状態をモニタすることが可能となり、開口を有する板状部材である投射マスクなどの損傷を抑制した上で、イオンビーム加工装置の加工に使用するイオンビームの安定性をモニタできることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、イオンビームのモニタ、及びそれに基づいた補正や異常原因切り分けにより安定稼動を実現できるイオンビーム加工装置および加工方法の具体的実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0015】
本実施例では本発明によるPJIB装置の構成について説明する。
【0016】
図1に示すPJIB装置は、半導体ウェーハ等の試料101の試料基板を載置する可動の試料台102と、試料101の観察、加工位置を特定するため試料台102の位置を制御する試料位置制御装置103と、試料101にイオンビーム104を照射して加工を行うイオンビーム光学系105と、試料101からの2次電子を検出する二次電子検出器106を有する。二次電子検出器106は二次電子検出器制御装置107により制御される。イオンビームアシストデポジションやイオンビームアシストエッチングのために使用するアシストガスを供給するアシストガス源108はガス源制御装置109により制御される。また、加工試料の摘出や電気特性測定用のプローブ110はプローブ制御装置111により制御される。
【0017】
二次電子検出器制御装置107、ガス源制御装置109、試料位置制御装置103、プローブ制御装置111、また後述するイオンビーム光学系105の各構成要素の制御装置等は、中央処理装置112により制御される。ここで言う中央処理装置112とは例えばパーソナルコンピュータやワークステーション等が一般的には使用される。また、表示装置113を有する。試料台102、イオンビーム光学系105、二次電子検出器106、アシストガス源108等は真空容器114内に配置される。この構成によりイオンビーム光学系105で形成されたイオンビーム104を試料台102上に載置された試料101に照射して加工する。本実施例において、イオンビーム104の形状は投射マスク115に開けられた開口の形状で決定される。
【0018】
次にイオンビーム光学系105の詳細について説明する。イオンを生成するのがイオン源116であり、イオン源制御装置117で制御される。本実施例ではプラズマイオン源の場合を示している。プラズマイオン源としては、デュオプラズマトロンや誘導結合型プラズマ型イオン源やペニング型イオン源やマルチカスプ型イオン源等、様々なイオン源を用いることが可能である。これらのプラズマイオン源は酸素や窒素や希ガス等といったガス材料のイオン源として主に用いられている。プラズマイオン源以外にもガス材料のイオン源としては電解電離イオン源等も利用される。また、金属等の材料のイオン源としては液体金属イオン源等も用いられ、本装置でも様々なイオン源の利用が可能である。
【0019】
イオンは引出し電極118を介してイオンビームとして引き出される。引き出されたイオンビームは照射レンズ電源119で制御される照射レンズ120を通して投射マスク115に照射される。投射マスクを通過したイオンビームは投射レンズ電源121で制御される投射レンズ122で試料101上に投射される。これにより、投射レンズ122の条件で決められる縮小率で縮小された投射マスク115の開口形状に試料が加工されることになる。ここで、加工位置、即ち試料上のイオンビーム104の照射位置は、主偏向器制御装置123で制御される主偏向器124により決められる。主偏向器124は一般的にはイオンを偏向しやすい静電偏向器が用いられることが多い。
【0020】
上述した投射マスク115は複数種のパターン開口を有する板状部材で構成されることが一般的であり、開口の選択は投射マスク115を移動することにより行う。これは投射マスク制御装置125により制御される投射マスク駆動機構126により、1軸、または2軸で面内でスライドして、目的とする開口を選択できる構成となっている。投射マスク115はこうした加工用のパターン開口以外に、観察用の微小開口(微小穴)を有する。これは微小開口を試料表面に投射して主偏向器124で走査し、その走査に伴い発生する二次電子を二次電子検出器106で検出し、これをコントラスト信号として表示装置113に画像化することにより、試料101表面の走査イオン像(Scanning Ion Microscopy像、以下SIM像と記載する)を取得することが可能である。この場合、画像分解能は投射マスク115の微小開口の大きさにより決まり、小さい方が分解能は高い。但し、小さい場合はイオン電流も減るため、S/Nは悪くなる。
【0021】
ここで、イオンビーム電流のモニタを行うために光学系内にブランカとファラデーカップを有する。図2にその構成を示す。ファラデーカップ201は図2(a)に示す導電性材質の円筒形の形状をしたものが一般的である。測定原理は以下の通りである。イオンビームは電荷を持っているため、導電部材に照射するとその電荷に対応する電流が流れるため、この導電部材に電流計を接続することでその電流を測定することが可能となる。しかし、イオンビームを導電部材に照射すると、導電部材の材質やイオンビーム質量やエネルギー等に依存する量の二次電子が導電部材から放出される。この二次電子量も導電部材に接続した電流計で計測されてしまうため、正確なイオンビーム照射量が計測できない。ただし、板状の導電部材でも正確ではないがイオンビーム電流の大小に関連するモニタは可能であるため、低コストの電流モニタ機構としては使用することも可能である。一方、図2(a)、その断面図である図2(b)に示すような深穴構造として二次電子202が脱出できない形状にしたものがファラデーカップであり、正確なイオンビーム203の照射量が電流計204で計測できることになる。電流計測だけが目的のファラデーカップは図2(a)にように閉じた底で問題ないが、光学系内で電流計測する場合は、試料へのイオンビーム照射ができる構造である必要があるため、電流計測とビーム通過が可能な構成が望まれる。図2(a)のような底が閉じたファラデーカップを測定時に機械的にイオンビーム光軸に挿入し、試料照射時には光軸から外すという構成も考えられる。ただ、この場合は光学系内の機械的移動が必要であり発塵の可能性等もあるため、図2(c)とその断面図である図2(d)で示すブランカとの併用が一般的に用いられる。ファラデーカップ205の底面にはイオンビーム通過用の微小穴206が形成されている。ブランカ207は2枚の対向電極で構成されることが多い。試料にイオンビームを照射する場合にはブランカ207の両極を等電位とし(一般的には接地電位であることが多い。以下ブランカをオフすると表現する)、イオンビーム203を偏向せず、ファラデーカップ205の穴を通して照射される。一方イオンビーム電流を測定する場合には、ブランカ207の両極に異なる電圧を印加し(以下ブランカをオンすると表現する)、静電気力によりイオンビーム203を中心軸からずらし、ファラデーカップ205の底面にイオンビーム203が照射されるようにする。こうすることでファラデーカップ205に接続された電流計208によりイオンビーム電流が測定される。また、ブランカ207をオンすることによりファラデーカップ205の底面でイオンビーム203が遮断されることから、イオンビーム非照射用の遮蔽器としての働きも同時にすることができる。ファラデーカップ205底面の微小穴206は1mm程度以上の穴径であることが一般的であり投射マスク115の開口よりも大きいため、発明が解決しようとする課題で述べた投射マスクの厚さ制限ほど厚さ制限は無いため、寿命を考慮して厚くしておくことが一般的であるが、それでもスパッタリングにより必ず損傷するため、消耗品であることは確かである。このため、寿命を延ばすためには上記ブランカ207の両極にかける電圧極性を逆にしてイオンビーム203が逆に振れるようにしたり、電極を対抗2枚だけでなく多極子型にすることでファラデーカップ205の異なる位置にイオンビーム203を振ることでさらに寿命を延ばすことも可能となる。
【0022】
図1では第1のブランカ制御装置127で制御される第1のブランカ128と第1のファラデーカップ電流計129が接続される第1のファラデーカップ130を投射マスク115の上方(イオン源116側)に有している。この構成により、図3(a)に示すように、試料101にイオンビームを照射しない時はブランカ128をオンにし、投射マスク115に照射しないようにすることができる。これによりイオンビーム照射に伴うスパッタリングにより投射マスク115が損傷することを防ぐことができるため、常に投射マスク115にイオンビームが照射される場合と比較して投射マスク115を長寿命として用いることが可能となる。さらにこの構成により、試料101、及び投射マスク115へのイオンビーム非照射時にもイオンビーム電流をモニタすることができる。こうすることで、正常時のイオンビーム電流を中央処理装置112に記録しておき、この正常値の値から予め設定した割合、例えば20%以上変動した場合には異常と判断することができる。異常時の処理については後述する。
【0023】
上述した第1のブランカ128と第1のファラデーカップ130により投射マスク115の上の電流をモニタすることが可能であるが、実際に試料加工に使用されるイオンビーム電流は投射マスク115を透過したイオンビームであるから、加工条件を決めるためには、この投射マスク115を通過したイオンビームの電流をモニタする方が良い。このため、投射マスク115の下方(試料101側)に第2のブランカ制御装置131で制御される第2のブランカ132と第2のファラデーカップ電流計133が接続される第2のファラデーカップ134を有する。これにより図3(b)に示すように、第1のブランカ128及びファラデーカップ130の場合と同様に投射マスク115通過後のイオンビーム電流を測定することができる。当然のことであるが、第2のファラデーカップ134を用いてイオンビーム電流をモニタするという場合には、第1のブランカ128はオフになっていることは言うまでもない。また、投射マスクへ115のイオンビーム照射位置を調整するために、イオン源116と投射マスク115の間に、偏向器制御装置135で制御される偏向器136を有する。偏向器136も主偏向器124と同様に一般的にはイオンを偏向しやすい静電偏向器が用いられることが多い。
【0024】
ここで、投射マスク115の中の加工に使用する開口の面積と試料101上への投射倍率(縮小率)は既知のものとして決まる。詳細に説明すれば、図1に示すように投射レンズ122が1段レンズの場合は、投射マスク115と投射レンズ122の距離、および投射レンズ122と試料101表面の距離が機械的に決まるため、これにより投射レンズ122の印加電圧条件も一意的に決まる。これにより投射倍率も一意的に決まることになる。もし投射レンズを複数用いて複数段投射を行う場合は、投射マスク115と投射レンズ間距離等の機械的構成のみで投射倍率が一意的に決まるわけではないが、その複数段の投射レンズの電圧印加条件を決めることで縮小率を決めることができる。実際の装置の使用を考えれば、基本的には試料101上で加工したい形状(面積)がニーズとして決まり、縮小率を決めてそれに必要な投射マスク115の開口を設計して投射マスク115を製作することが一般的であるから、本来縮小率は装置のセッティング段階で決まっていることがほとんどである。本実施例では例えばこの投射倍率を1/10とする。即ち試料101上で10μmの長さの加工がしたい場合には、投射マスク115の開口は100μmの長さになっている(非走査加工の場合)。
【0025】
また、イオンビーム電流に対する試料101の加工体積は以下の説明の通り決まる。1個のイオンが試料に入射したときに試料内の何個の原子がスパッタされるかを示すイオンスパッタ率は、1次イオン種、1次イオン加速エネルギー、試料を構成する材料、イオンビームの試料表面への入射角度等から決定される。上記パラメータが既知であればイオンスパッタ率が求まるため、イオンビーム電流から単位時間当たりの加工体積を求めることができる。このため、加工したい深さを決定すれば、加工すべき時間、即ち試料へのイオンビーム照射時間を求めることができる。具体的には以下のような算出法となる。まず加工される体積は下記(数1)で表される。
【数1】

ここで、V[m3]は加工体積、Ib2[A]は第2のファラデーカップ134で測定されたイオンビーム電流、t[s]は加工時間であり、R[m3/C]は単位電荷当たりの加工体積で以下(数2)の通り表される。
【数2】

ここで、Sは上記スパッタリング率、Wは試料構成元素の原子量、u(=1.66E-27[kg])は原子質量単位、e(=1.60E-19[C])は電気素量、d[kg/m3]は試料構成元素の密度である。また、(数1)の体積Vは投射マスク開口面積との関係で以下の通り表される。
【数3】

ここで、A[m2]は投射マスク開口面積、Mは投射倍率、D[m]は加工深さである。即ち加工時間tは下記(数4)で表される。
【数4】

ここで、積の始めの項(e・M2/u)は装置構成として決まる値となる。積の2番目の項(d /(W・S))は試料材質から決まる値であり、積の3番目の項(A・D)は加工したい形状から決まる値である。このため、これらは加工セッティング時に自明の値となる。積の最後の項(1/ Ib2)はモニタ電流で決まるものであるため、このモニタされた電流から加工時間を自動的に算出することができる。
【0026】
本実施例における加工フローの概略を図4に示す。上述の通り試料101へのイオンビーム非照射時には、第1のブランカ128をオンにしてビーム遮断しておく(401)。まず、中央処理装置112に予め(e・M2/u)の値を入力しておく。但し上記の通り複数投射レンズで投射倍率Mが可変の場合はこれもパラメータとなる。次に加工する試料の材質を設定する(402)。これは予め使う可能性のある材質の(d/(W・S))を登録しておき、その中からプルダウンメニューで材質を選べば自動的に(d/(W・S))の値が設定されることが望ましい。次に加工する形を複数の開口の中から選択する(403)。この投射マスク115の開口面積は予め中央処理装置112に登録されており、選択された開口の面積が自動的にAに代入されることになる。また、加工深さDはユーザが指定しても良いし、予め開口毎の雛形を作っておいて選択された開口に対応する値を代入しても良い(404)。上記設定が終わった後、第2のブランカ132をオン状態にする(406)。そして第1のブランカ128をオフし(407)、投射マスク115にイオンビームが照射されるようにすることで、第2のファラデーカップ134で加工試料に照射される直前のイオンビーム電流Ib2を測定することができる(408)。こうして測定された、イオンビーム照射時のすぐ前のイオンビーム電流Ib2を(数4)に代入することで加工時間tを算出することができる(409)。
【0027】
この後、偏向電圧調整等による加工位置決め等が行われ(410)、実際の加工は、第2のブランカ132をオフすることで加工を開始し(411)、t秒後に第1のブランカ128をオンすることで加工を停止することができる(412、413)。こうして所望の深さの加工を行うことが可能となる。加工停止の際には第2のブランカ132をオンしてビーム遮蔽することも可能ではあるが、投射マスク115の損傷を抑制するという点で第1のブランカ128で遮蔽した方が良い。
【0028】
次に電流モニタによる異常対応について説明する。図1の構成でモニタ可能なのは第1のファラデーカップ130の電流、即ち投射マスク115の上のイオンビーム電流と、第2のファラデーカップ134の電流、即ち投射マスク115の開口を通過したイオンビーム電流である。ここで、第1のファラデーカップ130の電流はIb1とし、第2のファラデーカップ134の電流は上記の通りIb2とする。ここで、正常な加工ができている場合、即ちイオンビーム光学系105に異常が無い場合の第1、第2のファラデーカップそれぞれの電流値Ib10、Ib20を予め中央処理装置112のメモリに記憶しておく。ちなみに、実際は投射マスク115の複数の開口毎に異なるIb20が存在するわけであるが、ここでは説明を簡単にするためにその中の1つの開口に注目して説明する。さらに正常に使用可能な電流値も設定する。正常に使用可能な第1のファラデーカップ130の電流値の上限、下限をそれぞれIb1U、Ib1Lとする。例えばこの上限、下限値は経験則上で設定してもかまわないし、割合等で設定しても良い。割合で設定する例としては、±20%の場合を正常範囲とすればIb1U =1.2 Ib10、Ib1L =0.8 Ib10となる。第2のファラデーカップ134の場合も同様に、正常使用範囲の上限、下限をそれぞれIb2U、Ib2Lとする。
【0029】
各イオンビーム電流モニタの用途は上述の通り、試料加工をしていないときのイオンビーム安定度はIb1でモニタし、加工パラメータの設定にはIb2をモニタする。ここで、電流モニタの各異常状態に対する対処について以下説明する。ここでは、これら異常状態以前までは正常に使用できていた場合を想定しており、メンテナンス等後の不連続的な使用時、例えばイオンビーム光学系105の部品交換等に伴い生じた異常状態は想定していない。ただし、その場合も下記対処法は異常位置特定の目安にはなる。
【0030】
(a) Ib1>Ib1UまたはIb1<Ib1Lの場合
即ちこれは投射マスク115より上で電流異常を起こしている場合である。この場合、異常原因の可能性が最も高いと考えられるのは、イオン源116の異常である。例えば、本実施例で使用しているプラズマイオン源の場合は、原料ガスの圧力異常、汚染物(コンタミ)による放電不良やイオン経路遮断、電極のプラズマスパッタによる放電不良等の原因が考えられる。もちろん、イオン源116以外も含めて電源異常の可能性もある。このため、以下のような対応策が考えられる。
【0031】
(a-1)警告表示
表示装置113に図5(a)に示すように「投射マスク照射電流異常」や「イオン源側電流異常」や「異常のためコールセンターへ連絡して下さい」等の異常を示す表示501をする。これに伴い加工開始ボタンのロック等を行うと加工失敗を防ぐことができる。なお、表示装置113内の四角い枠組みは観察像表示領域を示している。また、図5(b)に示すように表示装置113に装置の概略構成502を表示し、その中の異常部、例えば本例の場合は投射マスクのイオン源側の領域503を点滅やハイライト等により異常が分かるように示すことにより異常箇所がユーザに分かりやすい。また、ブザーや音声合成技術を用いて音情報で異常、異常箇所を異常情報として出力し、ユーザに知らせるようにしても良い。さらに中央処理装置112がインターネットに接続されている場合、インターネット経由で装置メーカへ異常情報を伝達し、サービスエンジニアの対応を要求することも可能である。これらは、全て異常情報を出力する出力部と呼ぶことができる。
【0032】
(a-2)対応マニュアル表示
表示装置113に図6に示すような異常からの復帰のためのユーザの対応フロー601を表示する。表示項目の順番としては異常原因の可能性が高い部分に関わるもので、ユーザが調査容易なものとした方が効率が良い。本例の場合は、例えば以下のような質問602を表示装置に表示する。「ガス圧は正常ですか?」これに対し「はい」「いいえ」のボタン603を押すことで次の選択肢が表示されるようにする。「いいえ」の場合は「ガス圧を正常値内に調整して下さい」と表示する。「はい」の場合は次の調整に移る。ここでは例えば「引出し電極位置を調整しイオンビーム電流が最大値となるように調整して下さい」と表示する。本例の場合引出し電極118位置は大気中から機械的に調整可能な構造となっている。これらのように調整可能なものを画面上に順次表示する。調整可能なものが無くなった場合には、「イオン源のカソードを交換して下さい」等の大気開放を伴うメンテナンス手順等を表示する。
【0033】
(a-3)自動補正
まず始めに、モニタできる光学パラメータが全て正常範囲内に有るかどうかを中央処理装置112により判定する。例えば、これらはイオンビーム光学系105の真空度、プラズマ放電電源電圧、イオン加速電圧、照射レンズ電源電圧等である。これらが正常範囲から外れている場合は、まずそれを正常値に補正し、イオンビーム電流Ib1を再度モニタする。これらの処理は中央処理装置112により自動的に行う。これでイオンビーム電流が正常値に戻れば問題ないが、正常値に戻らない場合はその他の調整可能なパラメータにより補正を試みる。例えば本実施例で用いているプラズマイオン源構成での補正例を以下に示す。図7はデュオプラズマトロンの構成であり、カソード701、中間電極702、磁石703、アノード704、制御電極705、引出し電極118で構成されている。ここでVdは放電電圧、Vbは制御電圧、Vaは加速電圧である。この中で、加速電圧Vaはイオンビームのエネルギーを決めるものであるため、一般的に補正パラメータとしては使用しない。放電電圧Vdはガス圧等により最適値は変動するが、ガス圧等が正常であれば放電電圧も変化させる必要が無いのが一般的であり、逆に放電電圧を変更しなければならない状態というのは、プラズマ自身が適当な状態に無いことを表すので、放電電圧による補正もあまり望ましくはない。このようにイオンエネルギーやプラズマ状態を変化させずに補正可能なパラメータとしては制御電圧Vbがある。このため、イオンビーム電流Ib1をモニタしながら、中央処理装置112によりこの制御電圧Vbを振り、イオンビーム電流Ib1が正常範囲内にIb1U>Ib1>Ib1L入るように制御電圧Vbを設定することで、補正することが可能である。また、この制御電圧Vb以外にも、偏向器136を振ることで補正することが可能な場合もある。しかし、これらにより補正できない場合は、上記(a-1)(a-2)等の対応となる。
【0034】
以上の対応により、投射マスクより上のイオンビーム異常時に加工失敗の抑制や補正を実現することが可能となる。
【0035】
(b) Ib1U>Ib1>Ib1LかつIb2>Ib2Uの場合
即ちこれは投射マスク115より上の電流値は正常であるが、投射マスク115を通過するイオンビーム電流が増加した場合である。この場合、異常原因の可能性が最も高いと考えられるのは、投射マスク115の損傷である。すなわち、イオンビームにより投射マスク115がスパッタされ、開口が大きくなってしまったことが考えられる。このため、以下のような対応策が考えられる。
【0036】
(b-1)警告表示
表示装置113に(a-1)と同様に図5(a)に示すように「投射マスク異常」や「異常のためコールセンターへ連絡して下さい」等の異常を示す表示をする。これに伴い加工開始ボタンのロック等を行うと加工失敗を防ぐことができる。また、(a-1)の図5(b)と同様に表示装置113に装置の概略構成を表示し、その中の異常部、例えば本例の場合は投射マスクを点滅やハイライト等により異常が分かるように示す、或いは音声合成技術により音情報で伝達を行うことにより異常箇所がユーザに分かりやすい。また、中央処理装置112がインターネットに接続されている場合、インターネット経由で装置メーカへ異常情報を伝達し、サービスエンジニアの対応を要求することも可能であることは、上述の通りである。
【0037】
(b-2)対応マニュアル表示
表示装置113に異常からの復帰のためのユーザの対応フローを(a-2)の図6と同様に表示する。本例の場合は、投射マスクの交換の仕方を画面上に表示する。例えば、イオンビーム光学系要素の電源オフ、イオンビーム光学系の真空排気系停止、イオンビーム光学系105の大気開放、投射マスク115の入れ替え方等である。
【0038】
(b-3)自動補正
上記のように投射マスク115損傷が確実な原因かどうかを判断するためには、異常が見られた開口(ここでは開口Aとする)と異なる他の開口(ここでは開口Bとする)に投射マスク位置を切替えて、開口Bの通過電流(第2のファラデーカップ134電流)が開口Bの正常値範囲内にあるかどうかをモニタする。これは、開口毎に使用頻度が異なるため、損傷により全く同時に開口が大きくなる可能性が低いことを利用している。即ち、開口Aの通過電流は異常であるが開口Bの通過電流が正常であれば、開口Aのみが損傷したことが確認できる。ここで、もし開口Aと同じ形状の開口を複数個有する(例えば開口A’を有する)投射マスク115を使用している場合は、中央処理装置112により投射マスク制御装置125から投射マスク駆動機構126を制御することにより開口Aの使用を禁止し、代替開口A’を使用するように自動的に切り替えることで、正常に使用することが可能となる。
【0039】
以上により、投射マスク損傷による加工失敗を抑制することが可能となる。
【0040】
(c) Ib1U>Ib1>Ib1LかつIb2<Ib2Lの場合
即ちこれは投射マスク115より上の電流値は正常であるが、投射マスク115を通過するイオンビーム電流が減少した場合である。この場合、異常原因の可能性が最も高いと考えられるのは、図8に示すような投射マスク115の開口801への照射ビーム802のずれである。すなわち、投射マスク115への照射電流の絶対値は変化していないが、そのイオンビームが開口部に正常に照射されていないことが考えられる。このため、以下のような対応策が考えられる。
【0041】
(c-1)警告表示
表示装置113に(a-1) (b-1)と同様に図5(a)に示すように「投射マスクへの照射異常」等の異常を示す表示をする。これに伴い加工開始ボタンのロック等を行うと加工失敗を防ぐことができる。また、(a-1) (b-1)と同様に図5(b)に示すように表示装置113に装置の概略構成を表示し、その中の異常部、例えば本例の場合は投射マスクへのビームずれを点滅やハイライト等により異常が分かるように示すことにより異常箇所がユーザに分かりやすい。
【0042】
(c-2)対応マニュアル表示
表示装置113に異常からの復帰のためのユーザの対応フローを(a-2)(b-2)の図6と同様に表示する。本例の場合は、偏向器136調整、引出し電極118位置調整等である。
【0043】
(c-3)自動補正1
投射マスク115へのイオンビーム照射位置を変更できる装置構成の中で、中央処理装置112から制御可能なものに偏向器136がある。このため、中央処理装置112でイオンビーム電流Ib2をモニタしながら、偏向器136を振って最大となる位置に偏向器136電圧を設定することで自動補正することができる場合がある。このとき使用する開口としては単純な開口の中心対称形が望ましい。例えば図9のような円形や、正方形や長方形等の開口901〜905である。図10に示すように、照射イオンビーム1001のプロファイルが中心付近1002が密度が高く、周辺が薄い場合には、例えばコの字型の開口1003の場合、開口1003の本来的な中心に照射されている図10(a)よりもずれている図10(b)の方が通過イオンビーム電流が大きくなるためである。ここで前提条件として、投射マスク115の駆動機構126による各開口の選択時の中心は揃っているように設定されている必要がある。こうして単純な中心対称形の開口を用いて偏向器136を調整することで照射イオンビーム位置を補正することで照射位置ずれを補正することができる。
【0044】
(c-4)自動補正2
上記(c-3)のように通過イオンビーム電流Ib2の絶対値のイオンビーム偏向による最大化も簡便で有効な調整方法であるが、さらに詳細な調整方法としてはマスクに照射されているイオンビームのビームプロファイルを取得して、ずれを補正する方法がある。この方法について図11を用いて以下に述べる。まず微小開口1101を選択する。この微小開口(微小穴)1101は、通過イオンビーム電流Ib2がモニタできる条件下で、できる限り小さい開口を選択した方が良い。これはこの穴径がビームプロファイルの分解能を決めるためである。ここでは微小円形開口Sを選択し、このとき第2のファラデーカップ134でモニタする通過イオンビームをIb2Sとする。ここで、偏向器136により偏向走査信号を印加し、投射マスク115に照射するイオンビームを偏向走査する。この偏向走査信号とその印加に伴うイオンビーム電流のIb2S値を強度信号として、図11(b)のようなプロファイルを得ることができる。ちなみに予め正常状態のビームプロファイルを図11(c)のように取得し、中央処理装置112に記憶しておくと異常状態と比較できて良い。図11(b)、(c)は偏向器136の電圧零点(偏向していない状態)を原点とした例を示している。ちなみに使用時(異常発生前)はイオンビーム軸調整のために偏向器136には電圧を加えている場合が多い。この電圧を、簡単のため2軸偏向を例として、 (Vx0,Vy0)とする。ここで、異常時のビームプロファイルを中央処理装置112で評価し補正する。補正の手段としては、ビームプロファイル中心、例えば電流強度の重心位置のずれ量で判断する。異常時の電流強度の重心位置が(Vxa,Vya)であれば、偏向器136に(Vxa,Vya)を印加すれば(即ち(Vxa- Vx0,Vya- Vy0)分シフトすれば)イオンビームを最適照射位置に調整することが可能となる。さらに詳細に評価する場合は、例えばプロファイルにおける正常時のピーク電流値と異常時のピーク電流値の比較や、ビームプロファイルの形状、即ち一定の電流量以上の領域、例えばピーク電流の13.5%以上の領域の形状や面積の正常時と異常時の比較等により評価可能である。即ち照射イオンビームがずれただけであればこれらのピーク値やプロファイル形状はそれほど変化しないはずであるが、これらが大きく変化している場合はビームシフトによる補正のみでは対応できないことを判断することが可能となるからである。もし、本手法で補正できないと判断された場合は、(c-1)(c-2)等の対処となる。
【0045】
以上説明してきたように、本実施例の構成によれば、2つのファラデーカップの電流をモニタすることにより、異常原因の切り分けが可能であり、その異常を補正することも可能となるため装置を安定的に使用することが可能となる。また、図12に示すように画面に2つの電流値を表示窓1201に表示してユーザがモニタ可能にしておくだけでも、ユーザが原因を切り分けるために役立つため効果的である。
【0046】
上記は予め設定した正常使用範囲を元に正常、異常を切り分けた場合を説明したが、他にも変化率を元に切り分けても良い。特に第1のファラデーカップ電流Ib1は加工時間以外は常にモニタすることが可能であるため、時間に対するIb1の変化を図13(a)のようにメモリしておき、図13(b)のように変化率の絶対値がある閾値1301より大きくなると、急激な状態変化がt1に起きたとして異常と判断することもできる。
【0047】
また、本実施例の変形例として、図1のイオンビーム加工装置を適用した走査電子顕微鏡 (Scanning Electron Spectroscopy、以下SEM)とイオンビーム加工装置との複合装置の例を図14に示す。本複合装置は、真空容器114上に設けられたイオンビーム光学系105と電子ビーム光学系1401とを有し、SEM機能により試料101の不良部等を検出、観察することができる。電子ビーム光学系1401は電子ビーム光学系制御装置1406で制御される。ここで、電子ビーム1402を用いて検査を行う理由は、イオンビームと異なり検査試料ウェーハを損傷させないこと、また現在の装置では一般的にイオンビームより分解能が高いこと等が理由である。
【0048】
こうして検出された不良部等の中で試料内部を観察すべき場所について、イオンビーム光学系105を用いて断面加工、またはマイクロサンプリング法等の微小試料片摘出手法によって解析試料に加工する。ここでは、非傾斜試料台でも試料摘出可能なように傾斜したイオンビーム光学系105を有する例を示している。
【0049】
図14に示す構成例では、電子ビーム光学系1401とイオンビーム光学系105が異なる位置にビームを照射する構成となっている。即ち、試料内の同一位置にビームを照射するためには試料台102を移動する必要がある。しかしながら、この構成では電子ビーム光学系1401とイオンビーム光学系105が機械的に干渉することが無いため、各々の光学系出口から試料までの距離を短くすることができる。これにより高分解能化や大電流化がやり易くなるという特徴がある。一方、図には記載していないが、電子ビームとイオンビームが同じ点に照射可能な構成としても良い。この場合は、光学系同士の機械的干渉を避けるために光学系先端を細くしたりすることが必要となるが、イオンビーム加工部をその場で電子ビームを使って観察できるという長所がある。
【0050】
図14中の101〜136の符号は図1の同番号の符号と同じであり、ここでは説明を省略する。アシストガス源1403は電子ビームアシストデポジションや電子ビームアシストエッチングのために使用するアシストガスを供給する。試料101の高さを計測する高さセンサ1405は高さセンサ制御装置1404で制御される。
【0051】
こうして電子ビーム1402を用いて検出された不良部の位置座標をステージ位置制御装置103から中央処理装置112に送りメモリしておく。但し、微細化が進む近年のデバイスでは不良解析すべき位置に必要な精度がサブミクロン以下であるためステージの絶対精度だけで加工すべき位置を特定することは難しい。このため、例えばアシストガス源1403からアシストデポジションガスを供給し、不良部近傍に電子ビーム1402を照射して電子ビームアシストデポジション膜によりマーキングすることで、不良位置を正確に特定するマークを形成しておく。そして不良部とマークを含むSEM像を取得し、中央処理装置112に送りメモリしておく。こうすることで、検出した不良部をイオンビームで加工して解析することができる。即ち、イオンビーム104の照射位置に検出された不良部が来るように、中央処理装置112に記録された不良部の位置座標にステージ位置制御装置103の制御で試料台102を移動する。ステージ位置精度にもよるが、一般的にはこのステージ移動により不良部、即ち上記電子ビームアシストデポジションによるマークがイオンビーム走査領域内に入る。ここでSIM像を取得し、予め中央処理装置112に記録されていたSEM像と比較することで、マーク位置から加工すべき不良部を特定することができ、不良解析が可能となる。このように不良検出から不良解析までを容易に実現することができる。
【0052】
以上、図14に示した装置は、検出された不良部の解析を同一装置内のその場で一貫して行えるため、短時間での不良解析が可能となる。さらに、加工に使用するイオンビームに試料を汚染しないイオン、例えば酸素や窒素やアルゴン等を用いることで、試料ウェーハを汚染することなく検査から解析まで行うことが可能となり、解析後のウェーハを製造プロセスラインに戻すこともできる。この装置の場合は、装置稼働時間の中で電子ビーム1402による検査時間が半分以上を占めることも多いため、イオンビーム光学系105は待機状態であることが多い。しかし、待機状態でイオン源を停止させると、再立ち上げ時のイオンビーム安定性は悪くなるため、イオン源は常時動作させることが望まれる。このため上記で説明したとおり、この待機時間は第1のブランカ128をオンにして投射マスク115を損傷しないようにして、第1のファラデーカップ130でイオンビーム電流の安定性をモニタすることが大変効果的である。
【0053】
また、上記はイオンビームの実施例を説明したが、電子ビーム描画装置等に用いるマスクに対するビーム調整等は電子ビームでも同様の調整が可能である。
【0054】
本実施例で説明したイオンビーム加工装置を用いることで、イオンビーム異常を検出し、原因の切り分け、異常補正等を行うことができるため加工失敗を抑制し、安定な加工を実現することができる。
【実施例2】
【0055】
本実施例では、本発明による投射マスク寿命の詳細な管理を実現するイオンビーム加工装置について説明する。
【0056】
実施例1でも述べたとおり、投射マスク115は装置の中でも寿命の短い部品である。このため、実施例1のようにイオンビーム電流異常が生じてから交換することも一つの方法であるが、寿命を推定して余裕を持って交換することが加工失敗を防ぎ安定的に装置を稼動するには有効である。しかし、この余裕を取りすぎると寿命が短くなるという問題がある。このため、できる限り正確に寿命を見積もることが重要となる。実施例1では試料への照射イオンビームIb2と試料加工の関係について(数4)で説明したが、投射マスク115についても同様の議論が成り立つ。即ち投射マスク寿命時間tmの式として(数5)が成り立つ。
【数5】

ここで、dmは投射マスクの密度、Wmは投射マスク構成元素の原子量、Dmは投射マスクの厚さ(開口部の厚さ)である。Smは投射マスクのスパッタ率で、これは照射イオンビームのイオン種、投射マスクへの照射イオンエネルギー、投射マスク構成材料で決まる。Amは投射マスクへのイオンビーム照射面積であり、例えば実施例1で図11を用いて説明したイオンビームプロファイル等からも求めることが可能である。Kは補正係数であり、ここでは特に開口のエッジ効果によるスパッタ増速の影響を補正するものであり、一般的には1よりも小さい値である。例えば0.5等になる場合も有る。
【0057】
開口のエッジ効果について図15により以下に説明する。開口1501エッジは初期状態としては、図15(a)のような断面となっており、もしエッジ効果が無ければイオンビーム1502の照射により図15(b)の損傷部1503ように加工されるはずであるが、実際は図15(c)にようにエッジ部1504のスパッタ量の方が多くなる。これはスパッタ率が加工面への垂直入射の場合よりも傾斜している場合の方が大きくなることが原因であり、一度傾斜化した開口エッジ部の加工が増速されることによるものである。この増速効果を上記補正係数Kで補正することができる。以上の数値を設定すれば、後は第1のファラデーカップの電流Ib1により寿命時間が決定できることになる。ただし、中央処理装置により計算されるこの時間tmはある1つの開口に対する寿命である。実際のある開口の使用時間taは、イオンビーム光学系105稼働時間の内、投射マスク駆動機構126によりその開口を選択し、かつ第1のブランカ128をオフしているイオンビーム照射時間であり、これは中央処理装置112で管理される。即ちこの使用時間taが時間tmより小さい時間は使用できることになる。実際はマージンを取ることになり、例えば2割のマージンをとる場合にはtmの0.8倍程度に使用時間taが達した場合に、中央処理装置112が表示装置113に投射マスク115の交換時期が来たことを表示することで、ユーザに知らせることができる。一般的にはどれか1つの開口が上記寿命条件に達した時点で寿命とするが、実施例1で説明したように投射マスク115が同形状の開口を複数有する場合は寿命条件に達した開口を使用禁止とし、代替開口を使用することで継続使用が可能になる。
【0058】
上記の寿命条件導出は、投射マスク115への照射ビーム電流値を元に計算されるため寿命を簡便に見積もるためには大変有効であるが、より詳細に投射マスクの開口の状態をモニタする方法について以下に説明する。図16に示すようにこのイオンビーム光学系は投射レンズ115のイオン源側にイオン源制限マスク1601を有する。これは図示はしていないが、試料加工用の大電流イオンビームを通過させる大きな開口や、試料観察や微細加工のためにイオンビームの幾何学収差を抑制するための微小な開口を有し、イオン源制限マスクの駆動機構(図示せず)で開口を選択できる。ここでは、投射マスク115の開口形状をモニタするために微小な開口1602を選択する。ここでは例えば10μm径の開口を選択したとする。次にこのイオン源制限マスク1601の開口が投射マスク115に投射される条件に照射レンズ120電圧を設定する。このときの照射レンズ120の投射倍率がMcであれば、投射マスク115上には10μmにMcを乗じた大きさのビーム径でイオンビームが照射されることになる。ここで、偏向器136でこのイオンビーム1603を偏向走査する。
【0059】
このときの第2のファラデーカップ134電流Ib2を強度信号として開口1604の通過電流プロファイルを例えば図17(a)のように得ることができる。すなわちこれは開口1604エッジにより2値化された像となり、開口でイオンビームが通過する領域1701が明るく観察され、投射マスクで遮蔽されイオンビームが通過しない領域1702が暗く観察される。ここで予め中央処理装置112に記録しておいた投射マスクの初期状態での開口通過電流プロファイル図17(b)と比較することで、開口1604エッジの損傷を確認することができる。例えば図17(a)は異常形状1703が損傷を受けて開口パターンが変形した領域であり、寿命が来たと認識できる。また図17(c)のように領域1705が正常の領域1704よりも大きく観察された場合も、損傷により全体的に開口サイズが大きくなった場合であり寿命と認識できる。
【0060】
上記図16により説明した開口モニタは開口エッジをモニタすることができる方法であるが、投射マスク115の開口のより詳細な情報を得るためには図18に示す構成にすると良い。図18と大きく異なる点は、投射マスク115に電流計1801が接続されており、流入電流を測定することができる点である。ここで、投射マスク流入電流Imは以下の(数6)で表される。
【数6】

ここで、Ieはイオンビーム照射により投射マスクから放出される二次電子電流である。即ち、(数6)から二次電子電流Ieは(数7)で表される。
【数7】

このため図16で説明したとおり、イオンビーム制限マスク1601の微小開口1602を照射レンズ120により投射マス115ク上に投射する条件で、偏向器136でイオンビーム1603を偏向走査し、予め測定しておいた第1のファラデーカップ電流Ib1と、偏向走査に伴う第2のファラデーカップ電流Ib2と投射マスク流入電流Imをモニタすることにより、中央処理装置112で(数7)の演算を行うことで、投射マスク115の二次電子像を図19のように得ることができる。この像は二次電子の放出のしやすさが画像化されるため、開口部は領域1901のように暗く、それ以外の領域1902等はそれよりも明るく観察される。また、例えば開口エッジが斜面に削れている領域1903は明るく観察され、または汚染物(コンタミ)が形成された領域1904等は暗く観察される等、図17と異なり開口周りのより詳細な情報を得ることができる。また、損傷領域1905を観察することで、イオンビームが開口に対してどのように照射されていたかが分かり、照射位置ずれ等も認識することができる。
【0061】
本実施例で説明したイオンビーム光学系を有するイオンビーム加工装置を用いることで、より詳細な投射マスク損傷を把握することが可能であるため、投射マスク損傷による加工失敗を抑制し、安定な加工を実現することができる。
【実施例3】
【0062】
本実施例では、本発明によるイオンビームの異常検出を実現するFIB装置について説明する。
【0063】
実施例1、実施例2はPJIBの例について説明したが、同様のイオンビーム検出をFIBでも実現可能である。図20に示すFIB装置は、半導体ウェーハ等の試料2101の試料基板を載置する可動の試料台2102と、試料2101の観察、加工位置を特定するため試料台2102の位置を制御する試料位置制御装置2103と、試料2101にイオンビーム2104を照射して加工を行うイオンビーム光学系2105と、試料2101からの2次電子を検出する二次電子検出器2106を有する。二次電子検出器2106は二次電子検出器制御装置2107により制御される。イオンビームアシストデポジションやイオンビームアシストエッチングのために使用するアシストガスを供給するアシストガス源2108はガス源制御装置2109により制御される。また、加工試料の摘出や電気特性測定用のプローブ2110はプローブ制御装置2111により制御される。二次電子検出器制御装置2107、ガス源制御装置2109、試料位置制御装置2103、プローブ制御装置2110、また後述するイオンビーム光学系2105の各構成要素の制御装置等は、中央処理装置2112により制御される。ここで言う中央処理装置2112とは例えばパーソナルコンピュータやワークステーション等が一般的には使用される。また、表示装置2113を有する。試料台2102、イオンビーム光学系2105、二次電子検出器2106、アシストガス源2108等は真空容器2114内に配置される。この構成によりイオンビーム光学系2105で形成されたイオンビーム2104を試料台2102上に載置された試料2101に照射して加工する。
【0064】
次にイオンビーム光学系2105の詳細について説明する。イオンを生成するのがイオン源2116であり、イオン源制御装置2117で制御される。本実施例ではプラズマイオン源の場合を示している。プラズマイオン源としては、デュオプラズマトロンや誘導結合型プラズマ型イオン源やペニング型イオン源やマルチカスプ型イオン源等、様々なイオン源を用いることが可能である。これらのプラズマイオン源は酸素や窒素や希ガス等といったガス材料のイオン源として主に用いられている。プラズマイオン源以外にもガス材料のイオン源としては電解電離イオン源等も利用される。また、金属等の材料のイオン源としては液体金属イオン源等も用いられ、本装置でも様々なイオン源の利用が可能である。イオンは引出し電極2118を介してイオンビームとして引き出される。引き出されたイオンビームは集束レンズ電源2119で制御される集束レンズ2120と、対物レンズ電源2121で制御される対物レンズ2122で試料2101上に集束される。
【0065】
即ち、このFIB構成では、集束レンズ2120のイオン源側でイオンビームが最も絞られる点を、集束レンズ2120と対物レンズ2122の2段で試料上に結像するような条件で集束レンズ2120、対物レンズ2122を用いる。ちなみに上記のイオンビームが最も絞られる点とは、例えばプラズマイオン源等であればアノードの開口や、実施例2で説明した例であればイオン源制限マスクの開口等であり、液体金属イオン源や電解電離型イオン源の場合は、イオン放出点である。また、プラズマイオン源の場合は、上記のような集束レンズと対物レンズの2段レンズでの結像以外にも、集束レンズ2120で形成したイオンビームのクロスポイントを対物レンズ2122で試料上に結像する方法もある。
【0066】
また、PJIBとの大きな違いは、試料の加工形状を投射マスク開口形状で決めるのではなく、上記のように試料上にスポット上に絞ったイオンビームを主偏向器制御装置2123で制御される主偏向器2124で偏向走査することでイオンビーム照射位置を決め加工する点である。このため、任意の形状の加工をすることが可能である。このFIB装置の中で、開口を有する板状部材で構成されたビーム制限開口2115は試料上のイオンビームスポット径とイオンビーム電流値を決めるために使用される。即ち、通常円形のサイズの違う開口を複数有し、これをビーム制限開口制御装置2125により制御されるビーム制限開口駆動機構2126により切り替えることで、大きい開口ではビーム径が太いため加工精度は悪いが大電流を用いた高速加工、小さい開口では小電流のため低速加工であるがビーム径が細いため高精度な加工といったさまざまな加工を実現できる。また、主偏向器2124で走査し、その走査に伴い発生する二次電子を二次電子検出器2106で検出し、これをコントラスト信号として表示装置2113に画像化することにより、試料2101表面のSIM像を取得することが可能である。
【0067】
ここで、図20に示すように、実施例1、2と同様にこのビーム制限開口2115の上に第1のブランカ制御装置2127で制御される第1のブランカ2128と第1のファラデーカップ電流計2129が接続される第1のファラデーカップ2130、下に第2のブランカ制御装置2131で制御される第2のブランカ2132と第2のファラデーカップ電流計2133が接続される第2のファラデーカップ2134を有する構成としている。また、ビーム制限開口2115の上に偏向器制御装置2135で制御される偏向器2136を有する。こうすることで、ビーム制限開口2115の上下のイオンビーム電流をそれぞれモニタすることができるため、実施例1と実施例2に示した異常検出と同様の効果をFIBでも得ることができることとなる。
【0068】
本実施例で説明したイオンビーム加工装置を用いることで、FIBにおいてもイオンビーム異常を検出し、原因の切り分け、補正等を行うことができるため加工失敗を抑制し、安定な加工を実現することができる。
【0069】
また、上記はイオンビームの実施例を説明したが、アパーチャに対するビーム調整等は電子ビームでも同様の調整が可能であるためSEMなどの他の荷電粒子線装置でも同様の効果が得られる。
【0070】
以上、詳述してきた、本発明は半導体プロセスの検査、解析に効果を発揮するため、半導体製造メーカでの歩留向上のために利用でき、コスト削減等に大きく寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第一の実施例によるPJIB装置の構成例を示す図。
【図2】第一の実施例のファラデーカップ及びブランカを示す図。
【図3】第一の実施例の2段のブランカとファラデーカップの動作例を示す図。
【図4】第一の実施例の加工フローの例を示す図。
【図5】第一の実施例の異常表示の例を示す図。
【図6】第一の実施例の対応マニュアル表示例を示す図。
【図7】第一の実施例のデュオプラズマトロンの構成例を示す図。
【図8】第一の実施例の投射マスクへのイオンビーム照射ずれを説明するための図。
【図9】第一の実施例の中心対称の開口の例を示す図。
【図10】第一の実施例の中心対称でない開口でのイオンビーム照射の例を示す図。
【図11】第一の実施例のイオンビームプロファイルの取得方法の例を示す図。
【図12】第一の実施例の2箇所のイオンビームモニタ値の表示の例を示す図。
【図13】第一の実施例におけるイオンビームモニタ電流の時間変化の例を示す図。
【図14】第一の実施例の変形例としてのPJIB−SEM複合装置の構成例を示す図。
【図15】本発明の第二の実施例を説明するための投射マスク開口エッジのスパッタ損傷の例を示す図。
【図16】第二の実施例における投射マスク形状モニタの構成例を示す図。
【図17】第二の実施例による投射マスク開口通過電流プロファイルの例を示す図。
【図18】第二の実施例による投射マスク形状の二次電子モニタの構成例を示す図。
【図19】第二の実施例による投射マスク二次電子像の例を示す図。
【図20】本発明の第三の実施例であるFIB装置の構成例を示す図。
【符号の説明】
【0072】
101…試料、102…試料台、103…試料位置制御装置、104…イオンビーム、105…イオンビーム光学系、106…二次電子検出器、107…二次電子検出器制御装置、108…アシストガス源、109…ガス源制御装置、110…プローブ、111…プローブ制御装置、112…中央処理装置、113…表示装置、114…真空容器、115…投射マスク、116…イオン源、117…イオン源制御装置、118…引出し電極、119…照射レンズ電源、120…照射レンズ、121…投射レンズ電源、122…投射レンズ、123…主偏向器制御装置、124…主偏向器、125…投射マスク制御装置、126…投射マスク駆動機構、127…第1のブランカ制制御装置、128…第1のブランカ、129…第1のファラデーカップ電流計、130…第1のファラデーカップ、131…第2のブランカ制制御装置、132…第2のブランカ、133…第2のファラデーカップ電流計、134…第2のファラデーカップ、135…偏向器制御装置、136…偏向器、201…ファラデーカップ、202…二次電子、203…イオンビーム、204…電流計、205…ファラデーカップ、206…微小穴、207…ブランカ、208…電流計、501…表示、502…装置の概略構成、503…領域、601…対応フロー、602…質問、603…ボタン、701…カソード、702…中間電極、703…磁石、704…アノード、705…制御電極、801…開口、802…照射ビーム、901〜905…開口、1001…照射イオンビーム、1002…中心付近、1003…開口、1101…微小開口、1201…表示窓、1301…閾値、1401…電子ビーム光学系、1402…電子ビーム、1403…アシストガス源、1404…高さセンサ制御装置、1405…高さセンサ、1406…電子ビーム光学系制御装置、1501…開口、1502…イオンビーム、1503…損傷部、1504…エッジ部、1601…イオンビーム源マスク、1602…開口、1603…イオンビーム、1604…開口、1701、1702…領域、1703…異常形状、1704、1705…領域、1801…電流計、1901、1902、1903、1904…領域、1905…損傷領域、2101…試料、2102…試料台、2103…試料位置制御装置、2104…イオンビーム、2105…イオンビーム光学系、2106…二次電子検出器、2107…二次電子検出器制御装置、2108…アシストガス源、2109…ガス源制御装置、2110…プローブ、2111…プローブ制御装置、2112…中央処理装置、2113…表示装置、2114…真空容器、2115…ビーム制限開口、2116…イオン源、2117…イオン源制御装置、2118…引出し電極、2119…照射レンズ電源、2120…照射レンズ、2121…対物レンズ電源、2122…対物レンズ、2123…主偏向器制御装置、2124…主偏向器、2125…ビーム制限開口制御装置、2126…ビーム制限開口駆動機構、2127…第1のブランカ制制御装置、2128…第1のブランカ、2129…第1のファラデーカップ電流計、2130…第1のファラデーカップ、2131…第2のブランカ制制御装置、2132…第2のブランカ、2133…第2のファラデーカップ電流計、2134…第2のファラデーカップ、2135…偏向器制御装置、2136…偏向器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を保持する試料ステージと、イオンビームを発生させるイオン源と、開口を有する板状部材と、前記試料ステージに保持される試料に対して前記開口を透過したイオンビームを照射する照射光学系を有するイオンビーム加工装置において、
前記板状部材のイオン源側にブランカとビーム電流検出器を有し、前記試料への前記イオンビームの照射不要時に、前記ブランカをオンして前記ビーム電流検出器で電流をモニタする
ことを特徴とするイオンビーム加工装置。
【請求項2】
請求項1記載のイオンビーム加工装置において、
前記開口を有する板状部材はパターン開口を有する投射マスクである
ことを特徴とするイオンビーム加工装置。
【請求項3】
請求項1記載のイオンビーム加工装置において、
表示装置を更に有し、
前記ビーム電流検出器の電流が予め設定した電流値範囲以上に変動した場合には、前記表示装置に異常を示す表示、または対処マニュアルを表示する
ことを特徴とするイオンビーム加工装置。
【請求項4】
請求項1記載のイオンビーム加工装置において、
前記ビーム電流検出器がファラデーカップである
ことを特徴とするイオンビーム加工装置。
【請求項5】
試料を保持する試料ステージと、イオンビームを発生させるイオン源と、開口を有する板状部材と、前記試料に対して前記開口を透過したイオンビームを照射する照射光学系を有するイオンビーム加工装置において、
前記開口のイオン源側に第1のブランカと第1のビーム電流検出器を有し、前記開口の試料側に第2のブランカと第2のビーム電流検出器を有することを特徴とするイオンビーム加工装置。
【請求項6】
請求項5記載のイオンビーム加工装置において、
前記試料への前記イオンビームの照射不要時には前記第1のブランカをオンして前記第1のビーム電流検出器で電流をモニタし、前記試料への前記イオンビームの照射直前に前記第1のブランカをオフし、前記第2のブランカをオンして前記第2のビーム電流検出器で電流をモニタする
ことを特徴とするイオンビーム加工装置。
【請求項7】
請求項5、または6記載のイオンビーム加工装置において、
前記開口を有する板状部材は、複数のパターン開口を有する投射マスクである
ことを特徴とするイオンビーム加工装置。
【請求項8】
請求項7記載のイオンビーム加工装置において、
表示装置を更に有し、前記第1のビーム電流検出器の電流値と前記第2のビーム電流検出器の電流値を前記表示装置に表示する
ことを特徴とするイオンビーム加工装置。
【請求項9】
請求項8記載のイオンビーム加工装置において、
前記第1のビーム電流検出器の電流値から算出される時間と前記パターン開口へのイオンビーム照射時間を比較することにより、前記投射マスクの交換時期を前記表示装置に表示する
ことを特徴とするイオンビーム加工装置。
【請求項10】
請求項8記載のイオンビーム加工装置において、
前記第1のビーム電流検出器の電流が予め設定した電流値範囲以上に変動した場合には、前記表示装置に異常を示す表示、または対処マニュアルを表示する
ことを特徴とするイオンビーム加工装置。
【請求項11】
請求項8記載のイオンビーム加工装置において、
前記第1のビーム電流検出器の電流が予め設定した電流値範囲内で、前記第2のビーム電流検出器の電流が予め設定した電流値より大きい場合には、前記表示装置に前記投射マスクの異常を示す表示、または対処マニュアルを表示する
ことを特徴とするイオンビーム加工装置。
【請求項12】
請求項7記載のイオンビーム加工装置において、
前記第2のビーム電流検出器の電流値と予め登録した前記パターン開口の開口面積から算出される時間のみ、前記第1のブランカ及び第2のブランカを共にオフする
ことを特徴とするイオンビーム加工装置。
【請求項13】
請求項7記載のイオンビーム加工装置において、
前記投射マスクのイオン源側に配置される偏向器を有し、
前記第1のビーム電流検出器の電流が予め設定した電流値範囲内で、前記第2のビーム電流検出器の電流が予め設定した電流値より小さい場合には、前記第2のビーム電流検出器の電流が前記予め設定した電流値範囲内となるビーム偏向条件に前記偏向器を設定する
ことを特徴とするイオンビーム加工装置。
【請求項14】
請求項7記載のイオンビーム加工装置において、
前記投射マスクは微小穴を形成しておくと共に、前記投射マスクのイオン源側に配置される偏向器と、前記投射マスクが有する前記複数のパターン開口と前記微小穴を前記イオンビーム照射領域下に選択的に切り替えるマスク駆動機構とを有し、前記マスク駆動機構が前記微小穴を前記イオンビーム照射領域下に選択的に切り替え、前記偏向器に偏向走査信号を印加して前記イオンビームを偏向走査し、前記第2のビーム電流検出器の電流値と前記偏向走査信号から前記イオンビームのビームプロファイルを取得する
ことを特徴とするイオンビーム加工装置。
【請求項15】
請求項14記載のイオンビーム加工装置において、
前記第1のビーム電流検出器の電流が予め設定した電流値範囲内で、前記第2のビーム電流検出器の電流が予め設定した電流値より小さい場合には、前記ビームプロファイルの最大電流領域が前記微小穴の位置となるビーム偏向条件に前記偏向器を設定する
ことを特徴とするイオンビーム加工装置。
【請求項16】
請求項5、または6記載のイオンビーム加工装置において、
前記第1、第2のビーム電流検出器はファラデーカップである
ことを特徴とするイオンビーム加工装置。
【請求項17】
請求項5、または6記載のイオンビーム加工装置おいて、
前記第1のビーム電流検出器の電流が予め設定した電流値範囲以上に変動した場合には、異常情報を出力する出力部を有する
ことを特徴とするイオンビーム加工装置。
【請求項18】
請求項5、または6記載のイオンビーム加工装置において、
前記第1のビーム電流検出器の電流が予め設定した電流値範囲内で、前記第2のビーム電流検出器の電流が予め設定した電流値より大きい場合には、異常情報を出力する出力部を有する
ことを特徴とするイオンビーム加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−176984(P2008−176984A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8063(P2007−8063)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】