説明

イオン化物理的気相蒸着のための磁気強化容量プラズマ源

iPVDのための容量性プラズマ源(22)が強い局所的な磁界(31)に埋設され、iPVDの誘導結合プラズマ(ICP)源とのドロップイン(drop−in)交換品とすることができる。この源(ソース)は、それの後方に、電極表面にわたって放射状に伸びる磁界を有する電極表面に一様に平行な表面磁石(33−35)を含んだ磁石パック(90)を持つ環状の電極(23)を含む。内側および外側の環状リング磁石(それぞれ36および32)のような磁石は、電極に最も近い極が表面磁石の隣接した極と同じ極性である状態で、電極と交差する極軸を持っている。強磁性のハックプレート(37)またはバック磁石(37a)は磁石(32,36)の後方の極を相互接続する。磁石パック(30)後方の強磁性シールド(37b)はiPVD材料源(21)から離れる磁界(31)を閉じ込める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイオン化物理的気相蒸着(iPVD)に関わり、とりわけ、iPVDに特に役立つ高濃度プラズマの生成のための源(ソース)に関係する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造で使われるようなイオン化物理的気相蒸着は、イオン化している金属または他の高濃度プラズマ状態のコーティング材料によって実行され、そしてコーティング材料のイオン化された粒子を、プラズマシース(plasma sheath)の電位降下を越えて基板上に指向する。このようなプラズマを作るための源(source:ソース)は、容量結合または誘導結合される。容量結合された源は、電極からのRF電界を介した結合エネルギーによって、真空処理チャンバー内のプロセスガスを活性化する。誘導結合プラズマ源はアンテナからのRF磁界を介してエネルギーを結合させる。
【0003】
容量性の源は、一般的に、低いプラズマ濃度と電極における大きな負の自己バイアスを作るので、誘導的な源より劣っていると見られている。これらの典型的な容量性の源の特徴は、通常、それらをiPVD用途にとって不適当にする。低いプラズマ濃度は容量結合源の大きなRF電圧と基本的に関係がある。プラズマ濃度は、RFによるプラズマ中へのエネルギー入力と原子プロセスに起因したエネルギー損失との間の、もっと重要なものとしては、プラズマシースを通して落ちる運動エネルギーあるいはイオンと、残ったプラズマとの間のバランスの結果である。RFで電極を作られる大きなシースは、プラズマと電極の間の大きな電位差の特徴であり、プラズマエネルギーのシンク(sink:排出口)の役割をし、そしてプラズマ濃度の低下を招く。iPVD用途では、低いプラズマ濃度は金属イオン割合(fraction)を減少させる。さらに、RF電極における大きなシース電圧は、プラズマ中に電極材料のスパッタリングを招き、その寿命を減らす。
【0004】
ICP(誘導結合プラズマ)源は、特に堆積均一性を最適化するように設計される状況で複雑となる傾向がある。アンテナとバッフル(baffle)は洗練された方法を使って設計されなくてはならない。
【0005】
ある特定の用途のための種々のプラズマ源において、実験的な業績が報告されている。FuruvaとHironoは、スパッタリング速度(スパッタリング・レート)における電界強度と磁界強度の効果、およびRFマグネトロン(magnetron:磁電管)のバイアス電圧を調査した。彼らは、電界の強度が増加するにつれて、自己バイアス電圧の低下とプラズマ濃度の増加を観察した。さらに、彼らは、磁界が400ガウスを超えて増加するにつれて、スパッタリング速度における減少を観察した。彼らの実験においては、4インチ(10cm)直径のCrCo標的が使われ、そして実験は10mTorr(1.33Pa)および200WのRFパワーで行われた[非特許文献1]。
【0006】
さらにIら(1984)は、MRC RIE−51ダイオード・エッチング・システムにおけるエッチング速度への磁界強度と圧力の影響を調査した。60Gから240Gまで変わる磁界により、RF電極上へのバイアス電圧は500Vから50Vに落ちる[非特許文献2]。
【0007】
局所的な磁界を有する容量性の源における磁界効果は、大きな範囲の処理のための二重振動数容量結合された源の最上のRF電極における磁石の埋設アレイに対して、WickramanayakaおよびNakagawa(1998年)によって探究された。磁石は、チェッカボード法(checker-board fashion:市松模様法)に利用され、電極表面から離れた磁界の速やかな減少をもたらす。磁石の付加は、プラズマ濃度の3倍の増加をもたらし、自己バイアス電圧に対応した減少が観察された[非特許文献3]。
【0008】
さらに、KaufmanおよびRobinson(1993年)は、スペース推進(space propulsion)のための幅広ビームイオン源と産業的な用途を提案した[特許文献1]。
【特許文献1】米国特許第5,274,306号明細書
【特許文献2】米国特許第6,287,435号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第09/896,890号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第10/324,213号明細書
【非特許文献1】Furuya A および Hirono S, 1990年, J. Appl. Phys., 68(1), 304 10.
【非特許文献2】I L, Hinson D C, Class W H & Sandstorm R L 1984 Appl. Phvs., Lett. 44(2), 185.
【非特許文献3】Wickramanayaka S および Nakagawa Y 1998年 Jpn. J. Appl. Phys. 37(11, Pt. 1), 6193.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、放電をもたらすか、または粒子を汚染する危険性の低い単純な高濃度プラズマ源が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、単純な高濃度プラズマ源、特にiPVDにとって有用な源を提供することである。本発明の他の目的は、処理チャンバー中で環境を汚染しうる放電または粒子をもたらす可能性を低減したプラズマ源を提供することである。本発明のさらに他の目的は、交換高濃度プラズマ源として使用できるプラズマ源を提供することである。本発明のさらなる目的は、対称的で均一なプラズマを作ることができる高濃度プラズマ源を提供することである。
【0011】
本発明の原理によれば、高濃度で、容量結合されたプラズマ源が、磁界に埋設されるRF電極により提供される。磁界は磁石または磁石パックによって生成できる。磁石パックは、例えば複数の磁石とヨークを含むことができる。磁力線は、プラズマまたは処理チャンバーに面する電極の表面にほぼ平行なように、あるいは一致するように位置する。
【0012】
例示した実施の形態では、源は、特許文献2に開示されたタイプのICPプラズマ源に対する代替のドロップイン(drop−in)交換品である。源の磁石パックによって生成される磁界は、電極表面近くの電界強度を最大にし、一方、磁束漏れを最小にするよう設計される。磁石パックの後方および側面を囲む強磁性シールドは、磁束漏れを最小にするのに効果がある。漏れを最小にすることは、磁石の分量と中央の強度の構成、および磁石パックのリング磁石によっても促進することができる。プラズマ源がスパッタリングターゲットの中央に置かれる状況では、プラズマ源磁石からの磁束漏れは、スパッタリングカソード組立体の性能を不利にし、または設計を複雑化する可能性がある。特にこのような用途のために、形状の目標は、外側のリング磁石から出るほぼすべての磁束が、プラズマ源の外へ外れることを避けるようにすることである。
【0013】
電極の環状(annular:アニュラー)表面の下に横たわる磁石を、例えばリング形状の磁石のような内側および外側の磁石、後方ヨークまたは後方磁石リング、電極表面に並べた中央の磁石と一体化することによって、高い磁界強度が達成される。これらの磁石の磁束漏れ、幾何学構成、および強度は、好ましくは磁界強度ができるだけ大きくなる状態で慎重に設計される。高い磁界強度は電極の直流(DC)電圧を低下させ、そして源が、少なくとも約100mTorrに及ぶ、より高い圧力で動作することを可能にする。
【0014】
望ましい実施の形態では、磁石パックは、銅またはアルミニウムの箔の薄い保護層によってRF域からシールドされる。さらにその磁石は、好ましくはそこから熱的に絶縁される。
【0015】
本発明のある特定の局面によれば、源は、外側に曲げられるかあるいは一様に凸形で、チャンバーに向かって外向きに伸びるRF電極が提供される。この形状は源から処理空間へのプラズマの放出を容易にする。
【0016】
本発明の代案の実施の形態では、源はその中央において開口として形成される。開口形状により、源の中央部はガス供給部またはシャワーヘッドとして使用できる。このような源は平らにすることができ、あるいは円錐形か円筒形の幾何学構成が提供されうる。このような代替の形状は、高いプラズマ均一性を供給するために使用できる。
【0017】
電極を磁界に埋設された状態でプラズマ源を提供することにより得られる有利な点は、磁界中のプラズマが、プラズマ波と呼ばれる自然な振動モードを呈するということである。これらは速度と波長を有する通常の意味での波である。この挙動は、プラズマがRF波をシールドしてそれを表層厚さに閉じ込め、また波長と速度の概念が有効(妥当)ではないようなICP源のものとは異なっている。プラズマは2つのタイプの波、すなわち電磁気的な波、および静電気的な波をサポートしている。これらはその特性上:つまり、波長、エネルギー輸送メカニズム、および偏光において、非常に異なった2つの波である。電磁波とは異なり、静電波は電界と電流によってエネルギーを運搬する。波の電流部分はエネルギー損失と電子加熱に関与している。ヘリコン(helicon)プラズマにおいて電磁波はヘリコン波と呼ばれる。
【0018】
本発明による源のほとんどの実施の形態は、ヘリコン波にわずかのパワー(または電源またはエネルギー)しか投入されないか、または全く投入されないという状態で静電波を直接励起するものと期待される。これは、RF電流によって大量のプラズマにRFエネルギーが浪費されるような典型的な容量性の源とは異なり、電極に近い電子にエネルギーを消散させる。
【0019】
本発明による源によって、非常に良好な結合が電界とプラズマ波の間に提供され、そしてプラズマへのパワー移送は非常に効率的である。結果として、プラズマは源に対し高いインピーダンスを与える。これは、より低いRF電圧と、減少された電極のDCバイアスをもたらす。最終的な結果は、低減された電極のスパッタリングと、増加されたプラズマ濃度をもたらす。
【0020】
iPVDモジュール(交換可能な部分)においては、本発明による源は、単純さ、対称性、および高い処理性能を提供する。
【0021】
電極を形成して強い磁界中に埋設することは、電極のスパッタリングを減らし、プラズマ濃度を増加させる。源のハードウェアの単純化は誘導結合高周波プラズマ源に対する興味深い選択肢を構成する。本発明による源は適切に配置され、特にさらなる単純さと改善されたプラズマ対称性を提供しながら、プラズマ均一性と同時二極性ドリフト(ambipolar drift)に悪影響を与えることなく、ドロップイン交換品のプラズマ源としての役割を果たすことができる。
【0022】
本発明の源は、誘電体ウインドウと、その誘電体ウインドウをシールドするために通常的に提供されるバッフルシールド(baffle shield)を必要とせずにICP源の利点を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明のこれらおよび他の目的とその利点は、図面を用いた以下の詳細な説明から一層容易に明白となるであろう。
【0024】
図1は、イオン化物理的気相蒸着(iPVD)またはスパッタコーティング機器のようなウェハ処理装置10を示し、そこでは半導体ウェハ15が金属膜(図示せず)の適用(塗布)によって処理される。装置10は、内包される処理チャンバー12を囲んだチャンバー壁11を含む。チャンバー壁11は通常接地される。リッド13はチャンバー壁11をシールおよび接地し、チャンバー12の一端における開口を閉じる。プロセスガス源16がチャンバー12内にプロセスガスを供給し、他方、真空ポンプ17がチャンバー12内の真空圧力レベルにガスを維持する。チャンバー12内の基板サポート18が、処理のためにその中のウェハを支持する。いくつかのシールドの1つであるチャンバーシールド14がチャンバー壁11および他のさらなる常設のチャンバー部品を蒸着(堆積)から保護する。コーティング材料源20がリッド13により支持されて提供され、サポート18上のウェハ15に面する。
【0025】
材料源20はコーティング材料のスパッタリング標的21を含み、そして示した実施形態において、それは環状、さらに詳しくは円錐台形状(frusto-conical)である。RFエネルギー源22は、ここに参考として明確に組み入れられた特許文献2(米国特許第6,287,435号明細書)で詳細に開示された方法で、環状の標的21の中央の開口にマウントされる。この特許文献2においては、ICP RF源は、溝を付けたバッフル(slotted baffle)によってコンタミネーション(汚染)から保護された誘電体ウインドウ後方において、チャンバーの外側にアンテナを有していると記載されている。
【0026】
本発明によるRFエネルギー源22の実施形態は、チャンバー12の軸線19に中心を合わせられた金属電極23を含む。電極23は、それの表面41がチャンバー12に面する状態で、標的21内の中央の開口をシールするようにマウントされている。電極23は、1対の環状の絶縁体24および25によって標的21から電気的に絶縁され、そしてそれらの間には接地された環状の金属シールド26が存在する。標的21はDC電源27の負の出力に電気的に接続され、他方、電極はRF発生器28のRF出力に接続する入力端子28aを持つ。商用のHF周波数が発生器のために使用できるが、約60MHzの一層高い周波数が好ましい。電極23の後方には、軸線19上に中心を合わせられ、またチャンバー12内の電極23の表面41上に伸びるような、環状の磁気トンネル形状磁界31を作る環状の磁石パック30がある。
【0027】
RF電極23は、好ましくはスパッタリング標的21と同じ材料から作られる。電極23は、磁石32〜36と磁石パック30の強磁性バックピース(back piece)37とによって生成された磁界31に埋設される。これらの磁石は、3つの同心で環状の部分33〜35から形成された表面磁石または電極磁石を含むが、それら環状の部分33〜35自体も磁石であって、一様に方向付けられた放射状の極軸、および外側および内側の磁石32と36を持っている。バックピース37は、例えば強磁性ヨークでありうる。理想的には、磁界31の磁力線は、処理チャンバー12に面する電極23の表面41にほぼ平行であり、あるいは一致する。電極23は、その周囲に、装置10における循環冷却水供給システム(図示せず)にその反対側端部で接続する水冷チャンネル29を備える。
【0028】
RFエネルギー源22は既存のICP源に対しドロップイン交換品として構成することができる。従って、RF源22はスパッタリング標的21上に置かれ、図2に示したRF絶縁体24によって分離される。このようなiPVD機器のためのICP源は、2001年6月29日に出願され、ここに参考として明確に組み入れられた特許文献3(米国特許出願公開第09/896,890号明細書)に記載されている。このようなIPVD源組立体を交換するために、源は、例えば外部接地コネクタ、外部標的パワー(電源)コネクタ、RFパワー(電源)コネクタ、外部冷却流体再循環ポート、内部標的パワー(電源)端子、内部RFコネクタ、複数の内部冷却流体ポート、およびチャンバー上部の開口周り源をシールするように構成されたサポート構造を備えたハウジング組立体を含むことになろう。
【0029】
磁界形状に起因して、電極23のいくつかの部分はスパッタリングする傾向があるので、電極はスパッタリング標的21と同じ材料から作られているのが望ましい。シールド26は状況に応じて標的21と源22との間に提供することができ、プラズマが電位を構築することが可能な局所的な接地または他の基準をプラズマに提供する。シールド26は、標的21からシールド26を絶縁する絶縁体24と、電極23からシールド26を絶縁する絶縁体25との間にマウントされる。またシールド26は、好ましくは電極23と同じ材料から作られる。シールド26は、可能ならば接地され、または何らかの他の電圧に直流(DC)バイアスされ、あるいは処理の重要性に応じてフローティングさえもされうる。
【0030】
磁界31は、電極23の表面41近くの磁界強度を最大にするよう設計される。磁束漏れを最小にすることも望ましく、このことは、以下で図5に関連して説明するように、強磁性バックピース37の代わりに、あるいは望ましくはそれに追加して、強磁性シールド37bを使うことによって達成できる。磁石パック30、とりわけその内側のリング磁石36および外側のリング磁石32の体積および強度の注意深い設計のような、他の設計アプローチにより、さらに幾らか磁束漏れを減らすことができる。マグネトロン・スパッタリング・カソード・アセンブリー(magnetron sputtering cathode assembly)のような、漏れる磁束が他のチャンバー部品と干渉する可能性のある用途において、磁界31のほぼすべての磁束をプラズマ源22内に閉じ込めることを確実にすることが目標である。
【0031】
磁界31の高い磁界強度は、外側および内側のリング磁石32と36を、リング磁石32と36の間の電極23の環状領域の電極表面41に並んだ磁石、例えば磁石33〜35と一体化することによって達成することができる。これらの磁石33〜36の幾何学構成と強度は、さらなる磁束漏れを最小にするために最適化できる。側面磁石32と36は、電極23により近い磁極が表面磁石33〜35の隣接する極と同じ極性である状態で、電極23の表面に一様に垂直なそれらの極軸を持っている。この説明では、これは外側の磁石のN極と内側の磁石のS極である。磁石パック30の磁石の共通の極をお互いに隣接するように置くことが磁石を分離させる傾向のある磁力をもたらすので、磁石パック30の磁石は、樹指または他の筐体(図示せず)に入れるのが好ましい。
【0032】
磁界31の強度は、可能な限り大きく、例えば少なくとも1kGを超えるのが好ましい。高い磁界強度は電極23の電圧を低下させ、またRF源が一層高い圧力、例えば100mTorr程度かさらに高い圧力で動作することを可能にする。電極磁石33〜35は、電極23のチャンバー側表面にわたって伸びる磁界31の強度に最も寄付する。側面磁石32および36の追加は、鉄ヨーク形態のバックピース37とともに、磁界31を約30%増加させる。より厚い電極磁石33〜35を使用することは、磁界31の強度における増加をももたらす。磁石が作られる材料のために結合したNeFeBを使うことは、約400〜500ガウスにおいて磁界31の強度を作り、そしてその状況で、さらに強いNeFeB磁石材料を使うことは、約1400〜1500ガウスの磁界強度を作る。
【0033】
磁石パック30は、好ましくは、銅またはアルミニウムの箔(図示せず)の薄い保護層によってRF域からシールドされ、磁石32〜36と磁石パック30に対するヨーク37RF発熱とエネルギー損失を最小にする。さらに、電極23がかなり熱くなるにつれて、磁石32〜36と磁石パック30の他の部品はシールド23から熱的に絶縁されうる。
【0034】
RF電極23とその表面41は凸形であるか、またはチャンバー12に向かって「外側へ」曲げられている。この形状は源から処理空間へのプラズマの放出を容易にする。チャンバー12に面する磁界31の磁力線の曲率および電極23の表面の曲率は、ほぼ同一である。これを最も良好に達成するために、電極23と磁石パック30は一緒に設計でき、そしていずれか一方のものの設計は他方のものの形状に従うように修正されうる。設計目標は、電極の内側と外側のエッジの間のこの表面の大部分を横切る磁界31の形状に、電極23のチャンバー側表面の形状を、側面磁石32と36の近傍において電極23にのみ磁界31がカーブして入り込むという状態で、合わせるべきである。
【0035】
他の実施形態は、電極23から軸線19の周り中央部を分離することによって、開いたRF源22aを提供することを基本にできる。これは、電気的または物理的に電極23から分離することができる中央部42と、図3に示されるように電極23aを離す。このような形状は、特にプラズマ均一性がさらに重要である状況のような、ある一定の処理用途にとって有利でありうる。源23aの中央部42は、例えばガス供給装置、シャワーヘッド、またはプラズマ形成電極として使用できる。
【0036】
他の実施形態は、電極23bが備えられ、図4に示すような円錐形または円筒状(図示せず)などの、非平面的幾何学構成を持った、開いたRF源22bを含みうる。
【0037】
図5に示すように、バック磁石(back magnet)37aは、強磁性体のヨークの代わりにバックピース37に対して提供することができ、それによって磁界の強度31を約10%増加させる。さらに、磁束漏れを減らすために、バックピース37に追加、またはバックピース37のヨークか磁石の目的をも果たすもののいずれかとして、強磁性体のシールド37bを提供することができる。このようなシールド37bは、好ましくは磁石パック30の後方に位置する平面的なディスク部分を持ち、そしてそれは、外側の磁石32の外側で磁石パック30を取り囲む円筒形のエッジ部と一体である。この形状は、磁石パック30からの磁界をプラズマ源22の外径内に放射状に閉じ込め、それにより、プラズマ源22からの磁界が標的21に関係するいずれの磁界とも結合しない。
【0038】
バック磁石37aは、好ましくは、図6に示すようにセグメント(segment)38に加工される。ほぼ円形か環状のバック磁石37aのために、このようなセグメントは、くさび形の角度方向のセグメントであり、それぞれの極軸を放射状に向けた状態で隣接して設置された環状リングを形成する。このようなセグメント化された構造は、このような磁石のセグメントそれぞれの極軸が図示のようにN極とS極の間に伸びる状態で、磁石32〜36のいずれにも備えることができる。
【0039】
図5のシールド37bは、磁石37aまたは他のバックピースから分離されたシールドとして示されている。このようなシールドは、例えば1008鋼か1010鋼のような鋼材から作ることができ、また数ミリメートル厚さとすべきである。外側のシールドの円筒状の部分は、外側の磁石32から約2〜3センチメートルにあることが好ましい。
【0040】
本発明によるRF源22は、磁気強化反応イオンエッチャー(magnetically enhanced reactive ion etcher:MERlE)でもなく、ECR源(electron cyclotron resonance:電子サイクロトロン共鳴源)でもなく、またヘリコン源でもない。それはRFマグネトロンの電磁相互作用、あるいは、KaufmanおよびRobinson(1993年)により特許文献1において提案され、スペース推進と産業的用途のために使われるブロードビームイオン源(broad beam ion source)であるところのプラズマ推進源(plasma propulsion source)の特性のいくつかを持つ。その特許文献1の磁界と電極形状は、図4に示す本発明の実施形態の、開いた形状および円筒形の幾何学構成といくらか類似点を持っている。
【0041】
さらに、本発明の源による電子へのエネルギー輸送のメカニズムは、ECR源によるものとは基本的に異なっている。ECR源では、RF磁界は、常に電子を加速する方法で局所的なサイクロトロン振動数に一致させられる。本発明の源では、電界は、電極面に平行な電流のシートを生成する。これらの電流のシートが振動し、そしてガスとプラズマイオンに衝突して消散する。
【0042】
同様に、本発明による源は、磁気強化反応イオンエッチャーのものとも異なる。このようなエッチャーの磁気的に強化された容量性源は、電子のサイクロトロン動作に依存するものとして、ECR源に類似している。これらの源では、RF磁界周波数は、電子サイクロトロン振動数の2倍である。プラズマシース界面において、振動シースはそれらのサイクロトロン回転のそれぞれの半周期の間に電子を加速する。
【0043】
本発明の源は、主に波動励起法によるヘリコン源とも異なる。2つの源のタイプ間の主な違いは、RF「エミッタ」(放出体)にある。ヘリコン源では、エミッタは、RF電流がプラズマ中の電磁界の励起に関与するアンテナである。本発明の源では、エミッタは、RF電界がプラズマ中の電界の励起に関与する電極である。結果として本発明の源は、すべてのパワーが最も効率的なパワー堆積チャネル(power deposition channel)に入るという状態で、ヘリコン源よりも一層効率的であり得る。
【0044】
本発明によるRF源では、増加した磁界がRF電圧の低下をもたらし、プラズマ濃度の増加と、電極スパッタリング率の減少をもたらす。
【0045】
標的の表面に平行な磁界を作ることに対し、磁石構造が本発明の共同発明者であるデレク・アンドリュー・ラッセル(Derrek Andrew Russell)によって提案された。これは、ここに参考として明確に組み入れられ、同一出願で同時係属中の特許文献4(米国特許出願公開第10/324,213号明細書)で記載されている。
【0046】
本発明は模範的な実施形態の状況で記述してきた。当業者ならば、ここに記載された特徴への付加、削除、および変更が本発明の原則から逸脱することなく成されうる、ということを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明のある特定の実施形態による高濃度プラズマ源が設置されたiPVD機器の断面図である。
【図2】図1のiPVD機器のコーティング材料源組立体の拡大面図であって、さらに高度に詳細にプラズマ源を示す。
【図3】図2に類似する拡大断面図であって、代案のコーティング材料源組立体を示す。
【図4】図2および図3に類似する拡大断面図であって、他の代案のコーティング材料源組立体を示す。
【図5】図2に類似する拡大断面図であって、プラズマ源のある特定の実施形態の追加的特徴を示す。
【図6】図5のプラズマ源のバック磁石の斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
10 ウェハ処理装置
12 処理チャンバー
14 チャンバーシールド
15 半導体ウェハ
16 プロセスガス源
17 真空ポンプ
18 基板サポート
19 軸線
20 コーティング材料源
21 スパッタリング標的
22 RF源(プラズマ源)
22a、22b RF源
23 RF電極
23a、23b 電極
24、25 絶縁体
26 シールド
28 RF発生器
29 水冷チャンネル
30 磁石パック
31 磁界
32 リング磁石
33〜35 表面磁石
36 リング磁石
37 バックピース
37a バック磁石
37b 強磁性シールド
41 電極表面
42 中央部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空処理機器のチャンバーに高濃度のプラズマを生成する方法であって、
処理チャンバーに伸びる磁界を作るのに十分な強度と体積を持った環状の磁石パックを供給する段階と、
磁束が電極の表面にほぼ平行な状態で処理チャンバー中の磁界に前記電極を埋設する段階と、
処理機器の処理チャンバー中にエネルギーを容量結合するためのRFエネルギーにより前記電極にエネルギーを与え、それによって高濃度のプラズマを生成する段階と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
高濃度のプラズマによりチャンバー内の半導体ウェハを処理する段階をさらに有することを特徴とする、請求項1に記載の半導体製造のための方法。
【請求項3】
高濃度のプラズマによりチャンバー内のコーティング材料をイオン化させる段階と、
イオン化させられたコーティング材料により半導体ウェハをコーティングする段階と、
をさらに有することを特徴とする、請求項1に記載の半導体製造のための方法。
【請求項4】
処理機器からICP源を除去する段階と、
ICP源を容量結合源に置換する段階を含む供給および埋設段階と、
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
処理機器からICP源を除去する段階と、
真空チャンバー内で環状の表面を持つ電極と、
前記電極に連結された出力を持ったRF発生器と、
内側の極と外側の極を持ち、またそれらの極の間に伸びる極性の軸を持ち、放射状の平面に位置して、前記電極の表面に一様に平行である環状の表面磁石、
外側の磁石であって、それの第1の極が前記電極により近くそれの第2の極が前記電極からより遠い状態でその極軸が前記電極の表面と交差し、第1の極が表面磁石の外側の極に隣接しかつ同じ極性であるような外側の磁石、
内側の磁石であって、それの第1の極が前記電極により近くそれの第2の極が前記電極からより遠い状態でその極軸が前記電極の表面と交差し、それの第1の極が表面磁石の内側の極に隣接しかつ同じ極性であるような内側の磁石、および、
内側および外側の磁石の第2の極の間に伸び、かつそれらに隣接する強磁性バックピース、
を含む磁石パックと、
を有し、そして前記磁石パックの磁石は、表面磁石の外側の極および外側の磁石の第1の極から、表面磁石の内側の極および内側の磁石の第1の極まで一様に伸びる磁界を作るのに十分な体積と強度を持ち、前記電極は前記磁界に埋設されるようにした、ICP源を容量結合源に置換する段階を含む供給および埋設段階と、
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記埋設する段階は、一様に凹形の表面を持った電極を供給する段階、およびその表面がチャンバーに外向きに伸びる状態で、その電極を磁界に埋設する段階と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
スパッタコーティング機器の環状の標的の中央に磁石パックおよび電極を位置させて、機器のためのチャンバー内で前記電極から高濃度プラズマにRFエネルギーを容量結合させる段階をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
スパッタコーティング機器の環状の標的の中央に磁石パックおよび電極を位置させる段階と、
環状の標的の内部に磁界を閉じ込める段階と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
処理機器の処理チャンバー中に高濃度のプラズマを容量結合するためのプラズマ源であって、
真空チャンバー内で環状の表面を持つ電極と、
前記電極に連結された出力を持ったRF発生器と、
内側の極と外側の極を持ち、またそれらの極の間に伸びる極性の軸を持ち、放射状の平面に位置して、前記電極の表面に一様に平行である環状の表面磁石、
外側の磁石であって、それの第1の極が前記電極により近くそれの第2の極が前記電極からより遠い状態でその極軸が前記電極の表面と交差し、第1の極が表面磁石の外側の極に隣接しかつ同じ極性であるような外側の磁石、
内側の磁石であって、それの第1の極が前記電極により近くそれの第2の極が前記電極からより遠い状態でその極軸が前記電極の表面と交差し、それの第1の極が表面磁石の内側の極に隣接しかつ同じ極性であるような内側の磁石、および、
内側および外側の磁石の第2の極の間に伸び、かつそれらに隣接する強磁性バックピース、
を含む磁石パックと、
を有し、
前記磁石パックの磁石は、表面磁石の外側の極および外側の磁石の第1の極から、表面磁石の内側の極および内側の磁石の第1の極まで一様に伸びる磁界を作るのに十分な体積と強度を持ち、そして
前記電極は前記磁界に埋設される
ことを特徴とするプラズマ源。
【請求項10】
前記強磁性バックピースは、外側の磁石の第2の極に隣接しかつ反対の極性である外側の極を持ち、内側の磁石の第2の極に隣接しかつ反対の極性である内側の極を持ったバック磁石を含むことを特徴とする請求項9に記載のプラズマ源。
【請求項11】
電極からみて磁石パックの反対側にあり、外側の磁石の周りに伸びる強磁性材料のシールドをさらに有し、前記シールドは、外側の磁石から放射状内側へ磁束を十分に閉じ込めるよう構成されていることを特徴とする請求項9に記載のプラズマ源。
【請求項12】
前記強磁性バックピースは、電極からみて磁石パックの反対側にあり、外側の磁石の周りに伸びる強磁性材料を含み、前記シールドは、外側の磁石から放射状内側へ磁束を十分に閉じ込めるよう構成されていることを特徴とする請求項9に記載のプラズマ源。
【請求項13】
外側の磁石は電極表面の外側エッジ近くの外側リング磁石であり、
内側の磁石は電極表面の内側エッジ近くの内側リング磁石である
ことを特徴とする請求項9に記載のプラズマ源。
【請求項14】
磁石パックの磁石は、ほぼ全ての磁束がプラズマ源の近傍に閉じ込められるような磁界を作るのに十分な体積と強度を持っていることを特徴とする請求項9に記載のプラズマ源。
【請求項15】
チャンバーに面する電極の表面は凸形であり、チャンバーに向かって外側へ曲がることを特徴とする請求項9に記載のプラズマ源。
【請求項16】
磁界はチャンバーに面する電極の表面と一様に一致することを特徴とする請求項9に記載のプラズマ源。
【請求項17】
前記電極はその中央に開口を持つことを特徴とする請求項9に記載のプラズマ源。
【請求項18】
前記磁石はその表面上に導電性材料のコーティングを持つことを特徴とする請求項9に記載のプラズマ源。
【請求項19】
前記源は、iPVD機器のICP源にドロップイン交換品を提供するよう構成される交換源であることを特徴とする請求項9に記載のプラズマ源。
【請求項20】
請求項9に記載のプラズマ源を有し、さらに、
処理される基板を支持するために内部に基板サポートを持つ真空チャンバーと、
前記プラズマ源を囲む環状のスパッタリング標的と、
を有することを特徴とするiPVD装置。
【請求項21】
前記環状の表面磁石は、角度方向に配列された複数のセグメントから形成されることを特徴とする請求項9に記載のプラズマ源。
【請求項22】
処理される基板を支持するために内部に基板サポートを持つ真空チャンバー、および
真空チャンバー内で環状の表面を持つ電極と、
前記電極に連結された出力を持ったRF発生器と、
内側の極と外側の極を持ち、前記電極の表面に一様に平行である環状の表面磁石、
前記表面磁石の外側の極と同じ極性の極を持ち、前記表面磁石に隣接する外側の磁石、
前記表面磁石の内側の極と同じ極性のそれの極を持ち、前記表面磁石に隣接する内側の磁石、および、
内側および外側の磁石の間に伸び、かつそれらに隣接する強磁性バックピース、
を含む磁石パックと、
を含んだ容量結合された高濃度プラズマ源、
を有し、
前記磁石パックの磁石は、外側の磁石から内側の磁石まで一様に伸びる磁界を持ち、そして
前記電極は、前記磁界に埋設される
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項23】
プラズマ源を囲むチャンバーと連通する環状のスパッタリング標的をさらに有し、
前記プラズマ源は、スパッタリング標的から離して磁界を閉じ込める強磁性シールドを持つことを特徴とする、半導体ウェハ上にイオン化物理的気相蒸着を遂行するための請求項22に記載の装置。
【請求項24】
チャンバー側の電極の表面は凸形であり、チャンバーに向かって外側へ曲がり、また磁界は前記電極の表面とほぼ一致することを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項25】
前記電極はその中央に開口を持ち、
また、前記装置はさらに前記電極の中央の開口においてガス導入源を有することを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項26】
前記強磁性バックピースは、外側の磁石に隣接している外側の極を持ち、内側の磁石に隣接している内側の極を持ったバック磁石を含むことを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項27】
処理機器の処理チャンバー中に高濃度のプラズマを容量結合するためのプラズマ源であって、
真空チャンバーに向かって内側へ伸びる凸形の表面を持ち、その凸形の表面が前記チャンバーの内側に伸びる状態でチャンバーの一端を支持できる電極と、
前記電極に連結された出力を持つRF発生器と、
前記電極の後方にあって、前記電極の凸形表面にほぼ一致する凸形磁界を持つ磁石パックと、
を有し、
前記電極は、それの凸形表面が前記磁界に一致する状態で前記磁界の中に埋設されることを特徴とするプラズマ源。
【請求項28】
前記電極はその半径にわたって凸形をなす環状の表面により環状の形状を持ち、
前記磁界はその半径にわたって環状で凸形をなし、前記電極の環状の表面に従うことを特徴とする請求項27に記載の源。
【請求項29】
処理される基板を内部に支持するための基板サポートを持った真空チャンバーと、
スパッタリング標的と、
を有し、
請求項27に記載のプラズマ源が、内部に埋設された電極が前記チャンバーに向かって伸びる状態で凸形磁界を持つことを特徴とするiPVD装置。
【請求項30】
請求項27に記載のプラズマ源を持ち、さらに、
処理される基板を支持するために内部に基板サポートを持つ真空チャンバーと、
スパッタリング標的と、
を有し、
凸形磁界が内部に電極を埋設しチャンバーに伸びるという状態で、前記プラズマ源がチャンバーの一端に取り付けられることを特徴とするiPVD装置。
【請求項31】
請求項27に記載のプラズマ源を持ち、さらに、
処理される基板を支持するために内部に基板サポートを持つ真空チャンバー
を有し、
その状況で、凸形磁界が内部に電極を埋設しチャンバーに伸びるという状態で、前記プラズマ源がチャンバーの一端に取り付けられることを特徴とするプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−531818(P2007−531818A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501774(P2007−501774)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/001584
【国際公開番号】WO2005/095666
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(505390680)ト−キョ−・エレクトロン・アメリカ・インコーポレーテッド (64)
【Fターム(参考)】