イオン注入方法およびイオン注入装置
【課題】 基板のステップ回転を用いることなく、基板の面内に、円形状注入領域と、それを囲んでいて当該円形状注入領域とはドーズ量の異なる外周部注入領域とを形成することができるイオン注入方法等を提供する。
【解決手段】 このイオン注入方法は、基板2の面内におけるイオンビーム4の走査速度を可変にして、基板2の面内におけるイオンビーム4の1片道走査または1往復走査ごとのX方向における走査速度分布を、基板2のY方向の位置に応じて変化させることによって、基板2の面内に、円形状注入領域と、それを囲んでいて当該円形状注入領域とはドーズ量の異なる外周部注入領域とを形成するものである。
【解決手段】 このイオン注入方法は、基板2の面内におけるイオンビーム4の走査速度を可変にして、基板2の面内におけるイオンビーム4の1片道走査または1往復走査ごとのX方向における走査速度分布を、基板2のY方向の位置に応じて変化させることによって、基板2の面内に、円形状注入領域と、それを囲んでいて当該円形状注入領域とはドーズ量の異なる外周部注入領域とを形成するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板(例えば半導体基板)の面内に、円形状注入領域と、それを囲んでいて当該円形状注入領域とはドーズ量の異なる外周部注入領域とを形成するイオン注入方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSI、メモリー等の半導体デバイス製造における処理工程が複雑化し、かつ半導体基板が大型化して非常に高価になっており、半導体デバイス製造の歩留まり向上が非常に重要になっている。即ち、一つの基板をできる限り有効に活用することが非常に重要になっている。これを実現するために、半導体デバイスを製造する複数の工程の内のイオン注入工程において、イオン注入によるドーズ量分布を、基板の面内で意図的に不均一にすることによって、基板の面内に形成される半導体デバイスの内の特定領域の半導体デバイスの特性補正を行うことへの強い要望がある。
【0003】
例えば、半導体デバイスの製造では、イオン注入の前工程(例えば真空蒸着、CVD等による薄膜形成工程、エッチング工程等)において、処理の面内均一性を高めるために、多くの場合、基板を回転させて処理を行っている。しかしそれでも処理を完全に均一にできるものではなく、基板の面内に形成される半導体デバイスの特性のばらつきは、円形状領域とそれを囲む外周部領域との間でばらつきが生じやすいという傾向がある。
【0004】
より具体例を挙げると、半導体基板上に多数の電界効果トランジスタを形成する製造工程において、イオン注入の前工程で基板上に形成したゲート酸化膜の厚さが、基板の面内において、円形状領域とそれを囲む外周部領域との間でばらつきやすいという傾向があり、それを放置すると電界効果トランジスタの特性にばらつきが生じて歩留まりが低下する。
【0005】
従って、イオン注入工程において、基板の面内に、円形状注入領域と、それを囲んでいて当該円形状注入領域とはドーズ量の異なる外周部注入領域とを形成可能にすることは重要である。このようにドーズ量分布を変えることによって、上述した基板の面内における円形状領域と外周部領域との間での半導体デバイス(例えば電界効果トランジスタ)の特性のばらつきを補正して、歩留まりを向上させることが可能になる。
【0006】
上記のようなイオン注入を行うことのできる方法の一つとして、図22を参照して、イオンビーム4cを電界または磁界によってX方向に往復走査することと、基板2をX方向と交差するY方向に機械的に駆動することとを併用して基板2にイオン注入を行う際に、イオンビーム4cが基板2に入射している状態において、イオンビーム4cの走査速度または基板2の駆動速度をステップ状に変化させることと、基板2をその中心部2aを中心にして例えば矢印Jで示す方向に360/n度(nは注入工程の回数)ずつステップ回転させることとを併用して、基板2の面内に、円形状注入領域と、それを囲んでいて当該円形状注入領域とはドーズ量の異なる外周部注入領域とを形成するイオン注入方法が既に提案されている(例えば特許第4155327号公報参照)。このように基板2のステップ回転を用いるイオン注入を、ステップ回転注入と呼ぶことにする。
【0007】
上記従来のイオン注入方法によれば、例えば、第1回目の注入工程後に図23(A)に示すような三つの注入領域A、B、Aを形成し、第8回目(n=8の場合)の注入工程後に同図(B)に示すような複数の注入領域C〜Fを形成することができる。中央の注入領域Cが円形状注入領域であり、それを囲む注入領域D〜Fが外周部注入領域である。
【0008】
1回の注入工程によるドーズ量をd1 、d2 とすると、上記各注入領域A〜Fのドーズ量は、計算上は次のようになる。
【0009】
注入領域A:ドーズ量d1
注入領域B:ドーズ量d2
注入領域C:ドーズ量8d2
注入領域D:ドーズ量2d1 +6d2
注入領域E:ドーズ量4d1 +4d2
注入領域F:ドーズ量6d1 +2d2
【0010】
【特許文献1】特許第4155327号公報(段落0009−0014、図2、図12)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来のイオン注入方法は、円形状注入領域を形成するために、基板のステップ回転を必ず用いなければならないので、ステップ回転注入を行ってはいけない注入工程に適用することができないという課題がある。
【0012】
例えば、図24に示す例のように、基板2の表面に立てた垂線3とイオンビーム4cとが成す角度であるチルト角(これは注入角度とも呼ばれる。以下同様)φを0度よりも大きくしてイオン注入を行うときに、ステップ回転注入を行ってはいけない場合がある。
【0013】
これは、上記のようなチルト角φの場合に、基板2のステップ回転を用いてイオン注入を行うと、基板2上のある領域に着目すると、当該領域に入射するイオンビーム4cの方向が、基板2のステップ回転の度に変わってしまうからである。イオンビーム4cの入射方向が変ると、注入特性が変わって基板2に所望の注入処理を施せなくなる等の不都合が発生する。
【0014】
より具体例を挙げると、例えば図25に示す例のように、半導体基板2上に、ゲート電極52、ゲート酸化膜54、ソース(またはドレイン)56、エクステンション58(これはソースまたはドレインとチャネルとの電気的接続部である)等から成る電界効果トランジスタ(図25では1個のみ示しているが、通常は複数個形成する。図21においても同様)を形成する製造工程において、エクステンション58の部分に、イオンビーム4の照射によってドーパントを注入することが行われる。この場合は、ゲート酸化膜54の下側にもドーパントを注入する必要があるために、比較的大きなチルト角φでイオン注入を行う。
【0015】
上記のようなチルト角φが付いた状態で、上述したように基板2のステップ回転を用いてイオン注入を行うと、図25(A)に示すように、エクステンション58に入射するイオンビーム4cの方向が、基板2のステップ回転の度に変わってしまう。その結果、例えば、エクステンション58におけるシリコンの結晶格子とイオンビーム4との相対角度が基板2のステップ回転の度に変るので、エクステンション58に注入されるドーパントの深さや、エクステンション58の部分の表面欠陥の状態等が、基板2のステップ回転の度に変化してしまい、所望のデバイス特性を得ることができなくなる。
【0016】
また、上記従来のイオン注入方法では、ステップ回転注入を用いるために、図23(B)およびその上記説明からも分かるように、基板2の中心部2aを中心にした回転対称のドーズ量分布しか形成することができない。更に、厳密に見ると外周部の各注入領域D〜Fのドーズ量が互いに少しずつ異なる。
【0017】
そこでこの発明は、基板のステップ回転を用いることなく、基板の面内に、円形状注入領域と、それを囲んでいて当該円形状注入領域とはドーズ量の異なる外周部注入領域とを形成することができるイオン注入方法および装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明に係るイオン注入方法は、イオンビームを第1の方向に往復走査することと、基板を前記第1の方向と交差する第2の方向に機械的に駆動することとを併用して、前記基板にイオン注入を行うイオン注入方法において、前記基板の面内における前記イオンビームの走査速度を可変にして、前記基板の面内における前記イオンビームの1片道走査または1往復走査ごとの前記第1の方向における走査速度分布を、前記基板の前記第2の方向の位置に応じて変化させることによって、前記基板の面内に、円形状注入領域と、それを囲んでいて当該円形状注入領域とはドーズ量の異なる外周部注入領域とを形成することを特徴としている。
【0019】
この発明に係るイオン注入装置は、イオンビームを第1の方向に往復走査することと、基板を前記第1の方向と交差する第2の方向に機械的に駆動することとを併用して、前記基板にイオン注入を行うイオン注入装置において、前記イオンビームを電界または磁界によって前記第1の方向に往復走査するものであって、前記基板の面内における前記イオンビームの走査速度が可変のビーム走査装置と、前記基板を前記第2の方向に機械的に駆動する基板駆動装置と、前記基板の前記第2の方向の位置を検出して当該位置を表す位置情報を出力する基板位置検出器と、前記基板位置検出器からの前記位置情報に基づいて前記ビーム走査装置を制御して、前記基板の面内における前記イオンビームの1片道走査または1往復走査ごとの前記第1の方向における走査速度分布を、前記基板の前記第2の方向の位置に応じて変化させることによって、前記基板の面内に、円形状注入領域と、それを囲んでいて当該円形状注入領域とはドーズ量の異なる外周部注入領域とを形成する制御を行う制御装置とを備えていることを特徴としている。
【0020】
前記円形状注入領域のドーズ量分布を、例えば、徐々に盛り上がった分布、徐々に窪んだ分布、一様に盛り上がった分布または一様に窪んだ分布にしても良い。
【0021】
前記基板の表面に立てた垂線と前記イオンビームとが成す角度であるチルト角を0度よりも大きくしてイオン注入を行うようにしても良い。
【発明の効果】
【0022】
請求項1〜12に記載の発明によれば、基板の面内におけるイオンビームの1片道走査または1往復走査ごとの前記第1の方向における走査速度分布を、基板の前記第2の方向の位置に応じて変化させることによって、基板の面内に円形状注入領域とそれを囲んでいて当該円形状注入領域とはドーズ量の異なる外周部注入領域とを形成するので、基板のステップ回転を用いることなく、基板の面内に互いにドーズ量の異なる円形状注入領域および外周部注入領域を形成することができる。
【0023】
その結果、この発明を、ステップ回転注入を行ってはいけない注入工程にも適用することができる。例えば、基板の面内に形成される半導体デバイスの内の特定領域の半導体デバイスの特性補正を、基板のステップ回転を用いることなく実施することができる。
【0024】
また、基板のステップ回転を用いることなく、基板の面内に互いにドーズ量の異なる円形状注入領域および外周部注入領域を形成することができるので、基板のステップ回転を用いる場合と違って、回転対称以外のドーズ量分布を形成することができ、自由度の高いドーズ量分布を形成することができる。更に、外周部注入領域のドーズ量分布の均一性を良くすることも可能である。
【0025】
請求項6、12に記載の発明によれば、次の更なる効果を奏する。即ち、0度よりも大きいチルト角でのイオン注入によって、前記円形状注入領域および外周部注入領域を形成することができ、しかもその場合でも、基板のステップ回転を用いる場合と違って、基板に入射するイオンビームの方向が変らないので、イオンビームの入射方向が変ることによって注入特性が変る等の不都合発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、この発明に係るイオン注入方法を実施するイオン注入装置の一実施形態を示す概略平面図である。図2は、図1のイオン注入装置の基板付近の一例を拡大して示す概略側面図である。
【0027】
イオンビーム4の進行方向を常にZ方向とし、このZ方向と実質的に直交する面内において互いに実質的に直交する2方向をX方向およびY方向とすると、以下に述べる実施形態においては、一例として、イオンビーム4を往復走査する前記第1の方向をX方向とし、基板2を駆動する前記第2の方向をY方向としている。X方向およびZ方向は例えば水平方向、Y方向は例えば垂直方向である。但しこれに限られるものではなく、例えば、基板2の表面に実質的に平行な方向を、基板2を駆動する前記第2の方向としても良い。
【0028】
このイオン注入装置は、ハイブリッドスキャン方式と呼ばれるものであり、イオンビーム4を電界または磁界によってX方向に往復走査することと、基板(例えば半導体基板)2をX方向と交差するY方向に機械的に駆動することとを併用して、基板2の全面にイオン注入を行う構成をしている。
【0029】
このイオン注入装置は、より具体的には、イオンビーム4を引き出すイオン源10と、このイオン源10から引き出されたイオンビーム4から特定のイオン種を選別して導出する質量分離マグネット12と、この質量分離マグネット12から導出されたイオンビーム4を加速または減速する加減速管14と、この加減速管14から導出されたイオンビーム4を整形するQレンズ16と、このQレンズ16から導出されたイオンビーム4から特定エネルギーのイオンを選別して導出するエネルギー分離器18と、このエネルギー分離器18から導出されたイオンビーム4を電界または磁界によってX方向に往復走査する走査器20と、この走査器20から導出されたイオンビーム4を電界または磁界によって曲げて走査器20と協働してイオンビーム4の平行走査を行って、X方向において平行走査されたイオンビーム4を作るビーム平行化器24とを備えている。
【0030】
ビーム平行化器24から導出されたイオンビーム4は、注入室26内において、ホルダ28に保持されている基板2に照射され、それによって基板2にイオン注入が行われる。その際、基板2は、基板駆動装置置32によってY方向に駆動される。この駆動は、通常は往復駆動であるが、必要とするドーズ量等によっては、往復駆動と1片道駆動とで終る場合もある。この基板2の駆動とイオンビーム4の往復走査との協働によって、基板2の全面にイオン注入を行うことができる。
【0031】
基板駆動装置32は、この実施形態では、ホルダ28上の基板2の前記第2の方向の位置、即ちこの実施形態ではY方向の位置y(これは例えば、図2等に示す例のように基板2の中心部2aの位置でも良いし、その他の位置でも良い)を検出して当該位置を表す位置情報PDを出力する基板位置検出器33を有している。
【0032】
基板位置検出器33は、例えば、基板駆動装置32による基板2の上記駆動に応答するエンコーダまたはポテンショメータであるが、それ以外のものでも良い。また、この基板位置検出器33を基板駆動装置32とは別に設けても良い。
【0033】
基板2のY方向の駆動速度vyは、前記特許文献1にも記載されているように、イオンビーム4が基板2に入射する領域内で、イオンビーム4のビーム電流密度に正比例するように制御するのが好ましい。そのようにすると、基板2へのイオン注入中に仮にイオンビーム4のビーム電流密度が変化しても、この変化を駆動速度vyで補償して、基板2に対するドーズ量に変化が生じるのを防止することができる。即ち、基板2に対して安定したドーズ量でイオン注入を行うことができる。
【0034】
このイオン注入装置は、更に、図2に示すように、例えばホルダ28上の基板2の表面の中心部2aを中心にして、基板2およびホルダ28を矢印Kで示すように回転させてそれら2、28の傾きを変えて、基板2の表面に立てた垂線3とイオンビーム4とが成す角度であるチルト角φを変えるチルト角可変装置34を備えている。これによって、チルト角φを0度または0度よりも大きくして、イオン注入を行うことができる。チルト角可変装置34は、例えばモータである。基板駆動装置32は、このチルト角可変装置34、ホルダ28および基板2の全体をY方向に駆動する。
【0035】
イオンビーム4のX方向の走査は、走査電源22から走査器20に供給される走査出力P(t)によって制御される。(t)は、時間tの関数であることを表している。走査出力P(t)は、例えば、走査器20が電界によってイオンビーム4を走査するものである場合は走査電圧、磁界によって走査するものである場合は走査電流である。この走査電源22および走査器20は、またはそれら20、22およびビーム平行化器24は、イオンビーム4をX方向に往復走査するビーム走査装置を構成している。このビーム走査装置は、より具体的にはその走査電源22は、後述する制御装置36によって制御されて、基板2の面内におけるイオンビーム4の走査速度vxを後述するように変化させることができる。
【0036】
ホルダ28の上流側には、X方向に長いスリット状の開口42を有していて、イオンビームを整形するマスク40が必要に応じて設けられる。
【0037】
ホルダ28の上流側および下流側には、イオンビーム4を受けてそのX方向のビーム電流密度分布を測定して、走査出力P(t)の波形調整等に用いられる前段多点ファラデー38および後段多点ファラデー39が設けられている。両多点ファラデー38、39は、複数のファラデーカップをX方向に並べたものである。後段多点ファラデー39はイオンビーム4のビームライン上に固定されている。前段多点ファラデー38およびホルダ28は、例えばY方向に駆動されて、必要なときにのみイオンビーム4のビームライン上に置かれる。なお、これと同様の多点ファラデーは、例えば特開2001−143651号公報にも記載されている。
【0038】
両多点ファラデー38、39による測定情報および上記基板位置検出器33からの位置情報PDは、制御装置36に与えられる。制御装置36には、この実施形態では更に、基板2の面内に形成する所望のドーズ量分布を、より具体的には後述する円形状注入領域44および外周部注入領域46のドーズ量分布を含む所望のドーズ量分布を設定するドーズ量分布設定情報DD等が与えられる。制御装置36は、これらの情報等に基づいて、(a)上記ビーム走査装置を制御して(具体的にはこの実施形態では上述したように走査電源22を制御して。以下同様)、基板2の面内におけるイオンビーム4のX方向の走査速度vxを後述するように制御する機能、(b)チルト角可変装置34を制御して所定のチルト角φに設定する機能、(c)基板駆動装置32を制御して、当該基板駆動装置32による基板2等のY方向の駆動を制御すると共に、ホルダ28上の基板2のY方向の駆動速度vyを上述したようにイオンビーム4のビーム電流密度に正比例させる制御を行う機能、等の機能を有している。
【0039】
上記のようなイオン注入装置において、基板2の面内に、円形状注入領域と、それを囲んでいて当該円形状注入領域とはドーズ量の異なる外周部注入領域とを形成するイオン注入方法の例を幾つか説明する。
【0040】
図3に、基板2の面内に形成するドーズ量分布の一例を示す。基板2の面内に、円形状注入領域44と、それを囲んでいて円形状注入領域44とはドーズ量の異なる外周部注入領域46とを形成する。円形状注入領域44は、この例では、徐々に山形に盛り上がったドーズ量分布をしている。より具体的には、複数の同心円状に盛り上がったドーズ量分布をしている。外周部注入領域46は、この例では平坦なドーズ量分布をしている。このようなドーズ量分布は、例えば上述したドーズ量分布設定情報DDとして制御装置36に与えられる(図11等に示す他のドーズ量分布の場合も同様)。
【0041】
なお、以下の図においては、基板2を回転させていないことを示すために、基板2のノッチ(切り欠き)2bを示しているが、このノッチ2bの位置は図示例の位置に限られるものではない。
【0042】
図3に示すドーズ量分布を形成する場合の、イオンビーム4の1片道走査のX方向における走査速度vxの分布(即ち走査速度分布)の例を図4〜図10に示す。これらの図は、ドーズ量分布形成動作を理解しやすくするために、基板2を正面に見て示している。これらの図は一連の図であり、イオンビーム4のY方向の位置は変らず、基板2がY方向に駆動されてその位置yが後になるほど上へ上がっている。図4よりも前および図10よりも後の工程は、イオンビーム4の走査速度分布は平坦であるので、図示を省略している。これらのことは、後述する図12〜図18についても同様である。
【0043】
走査の元になるイオンビーム4は、所定の断面形状(この断面形状は、図4等においては図示の簡略化のために円形で示しているが、円形に限定されない)および所定の断面寸法を有しており、これが前述したように走査速度vxでX方向に走査される。その1片道走査の軌跡を符号4aで示す(図12〜図18においても同様)。
【0044】
前述したように基板2の面内におけるイオンビーム4の走査速度vxは可変であり、このイオンビーム4の、基板2の面内における走査速度分布を、図4〜図10に示す例のように、基板2のY方向の位置yに応じて順次(次々と)変化させることによって、基板2の面内に上記円形状注入領域44および外周部注入領域46を形成する。即ち、イオンビーム4の走査速度vxをX方向の位置xによって変化させるだけでなく、そのような変化を含んで成るイオンビーム4のX方向における走査速度分布を、基板2のY方向の位置yに応じて次々と変化させる。
【0045】
より具体的には、図4〜図8に示す例のように、上記円形状注入領域44を形成するときのイオンビーム4の走査速度分布を凹状にして、かつ当該凹状部の幅Wおよび深さPを基板2のY方向の位置yに応じて変化させる。これによって、上述した円形状注入領域44を形成することができる。これは、基板2に対するドーズ量は、イオンビーム4のビーム電流密度を一定とすると、イオンビーム4の走査速度vxに反比例するからである。即ち、イオンビーム4の走査速度vxとドーズ量とは反対の関係にあり、走査速度vxが大きい領域ではドーズ量は小さくなり、走査速度vxが小さい領域ではドーズ量は大きくなるからである。
【0046】
イオンビーム4の走査速度分布の上記凹状部の位置、幅Wおよび深さPをどのようにするかは、形成しようとする円形状注入領域44の位置、大きさおよびそのドーズ量分布に応じて決めれば良い。
【0047】
イオンビーム4が円形状注入領域44を通らなくなった後は、イオンビーム4の走査速度分布は例えば平坦にすれば良い(図9〜図10参照)。
【0048】
より具体的には、基板2の面内の所望のドーズ量分布を、基板2の面内におけるイオンビーム4の軌跡4aに相当する寸法で複数にスライスしたときのX方向の各ドーズ量分布を、基板2のY方向の各位置yについてそれぞれ決めて、その決めたドーズ量分布をそれに対応する位置yで実現するように、イオンビーム4の走査速度分布を、基板2のY方向の位置yに応じて変化させれば良い。
【0049】
イオンビーム4の走査速度vxは、前述した走査出力P(t)の時間変化率dP(t)/dtに比例するので、イオンビーム4の走査速度分布を上記のように変化させるには、具体的には、上記走査出力P(t)の波形を調整すれば良い。
【0050】
例えば、図4〜図8に示すような凹状の走査速度分布を実現するには、例えば図19に示す例のように(これは波形を分かりやすくするために誇張して図示している。後述する図20も同様)、上記走査出力P(t)の波形50を、イオンビーム4の走査速度分布の凹状部に対応する位置で、S字状に整形してその傾き(即ちdP(t)/dt)を徐々に変えれば良い。即ち当該傾きを、徐々に小さくした後に元に戻せば良い。これは、元になる三角波形48を上記のように整形することによって実現することができる。この走査出力P(t)の波形整形は、例えば、前述した多点ファラデー38および39からの測定情報を用いて、制御装置36による制御によって行うことができる。
【0051】
上記例とは反対に、イオンビーム4の走査速度分布を後述するように凸状にするには、上記波形50のS字状の部分の傾きを、図19に示す例とは反対にすれば良い。即ち当該傾きを、徐々に大きくした後に元に戻せば良い。
【0052】
走査出力P(t)が三角波形48の場合は、その傾きは一定であるので、走査速度vxは一定となり、走査速度分布は平坦になる。
【0053】
なお、基板2の駆動速度vyに比べれば、イオンビーム4の走査速度vxは遥かに大きいので、イオンビーム4が基板2の面内を1片道走査または1往復走査している間のイオンビーム4のビーム電流密度は、一定と考えても妥当である。また、同じ理由から、イオンビーム4が基板2の面内を1片道走査または1往復走査している間の基板2のY方向の移動距離は非常に小さいので、それが所望のドーズ量分布を形成することに及ぼす影響は特に考慮しなくても構わない。
【0054】
例えば、上記イオンビーム4の走査速度vxと基板2の駆動速度vyとの大きさの違いを周波数で言えば、基板2の直径が300mmの場合を一例に挙げると、基板2のY方向の駆動サイクルは最大で2秒間に1回程度(周波数で言えば最大で0.5Hz程度)であるのに対して、イオンビーム4のX方向の走査周波数は173Hzであり遥かに(数百倍)大きい。イオンビーム4の走査距離と基板2の駆動距離とはおおよそ同程度であるので、上記周波数の差がほぼ速度の差である。
【0055】
上記のように基板2の駆動速度vyに比べてイオンビーム4の走査速度vxの方が遥かに大きいので、上記1片道走査ごとの走査速度分布の代わりに、基板2の面内におけるイオンビーム4の1往復走査ごとの走査速度分布を、基板2のY方向の位置yに応じて変化させるようにしても良い。そのようにしても、簡単に言えば、基板2の面内におけるドーズ量の変化のきめ細かさが若干粗くなるだけである。
【0056】
基板2をY方向に1往復以上(往復と1片道の場合を含む)駆動することによって所望のドーズ量分布を実現しても良い。その場合は、図4〜図10を参照して説明した動作を必要回数だけ繰り返せば良い。この場合、基板2の同じ位置yでは、イオンビーム4の同じ走査速度分布を用いれば良い。
【0057】
上記円形状注入領域44の形状、その基板2の面内での位置、そのドーズ量分布および外周部注入領域46のドーズ量分布は、あくまでも一例であってそれに限られるものではなく、要は所望のものに定めれば良い。例えば、前述したように基板2の面内に形成される半導体デバイスの内の特定領域の半導体デバイスの特性補正をイオン注入によって行う等の観点に従って所望のものに定めれば良い。
【0058】
例えば、上記円形状注入領域44を形成するときのイオンビーム4の走査速度分布を図4〜図8に示した例とは反対の凸状にして、かつ当該凸状部の幅および高さを基板2のY方向の位置yに応じて変化させて、円形状注入領域44のドーズ量分布を徐々にすり鉢状に窪んだドーズ量分布にしても良い。
【0059】
円形状注入領域44のドーズ量分布は、図3〜図10に示した例では複数の同心円状であるが、複数の偏心円状でも良い。ドーズ量が滑らかに変化しているものでも良い。
【0060】
また、円形状注入領域44は、必ずしも真円でなくても良く、真円から外れた円形、例えば楕円形等でも良い。これら全てを含む広義で、この明細書では円形状注入領域と呼んでいる。
【0061】
図11に、基板2の面内に形成するドーズ量分布の他の例を示す。上記例と同一または相当する部分には同一符号を付しており、以下においては上記例との相違点を主体に説明する。円形状注入領域44は、この例では、円柱のように一様に盛り上がったドーズ量分布をしている。
【0062】
図11に示すドーズ量分布を形成する場合の、イオンビーム4の1片道走査の走査速度vxの分布(即ち走査速度分布)の例を図12〜図18に示す。この例の場合も、基板2の面内におけるイオンビーム4の走査速度分布を、基板2のY方向の位置yに応じて次々と変化させることによって、基板2の面内に上記円形状注入領域44および外周部注入領域46を形成する。
【0063】
より具体的には、図13〜図17に示す例のように、上記円形状注入領域44を形成するときのイオンビーム4の走査速度分布を凹状にして、かつ当該凹状部の深さPを一定に保ちつつその幅Wを基板2のY方向の位置yに応じて変化させる。これによって、上述した円形状注入領域44を形成することができる。
【0064】
図13〜図17に示すような凹状の走査速度分布を実現するには、例えば図20に示す例のように、走査出力P(t)の波形50の傾きを、イオンビーム4の走査速度分布の凹状部に対応する位置で変えれば良い。具体的には当該傾きを一定の傾きで小さくすれば良い。これは、元になる三角波形48を上記のように整形することによって実現することができる。
【0065】
上記例とは反対に、上記円形状注入領域44を形成するときのイオンビーム4の走査速度分布を凸状にして、かつ当該凸状部の高さを一定に保ちつつその幅を基板2のY方向の位置yに応じて変化させて、円形状注入領域44のドーズ量分布を一様に窪んだドーズ量分布にしても良い。この場合は、図20に示した例とは反対に、上記走査出力P(t)の波形の傾きを、イオンビーム4の走査速度分布の凸状部に対応する位置で、一定の傾きで大きくすれば良い。
【0066】
上記制御装置36は、上記基板位置検出器33からの基板2の位置情報PDに基づいて上記ビーム走査装置を制御して、具体的にはこの実施形態では走査電源22を制御して、基板2の面内におけるイオンビーム4の1片道走査または1往復走査ごとのX方向における走査速度分布を、基板2のY方向の位置yに応じて変化させることによって、基板2の面内に、上記各例に示したような円形状注入領域44および外周部注入領域46を形成する制御を行うことができる。具体的には、走査電源22から出力する上記走査出力P(t)の波形を上述したように整形する制御を行うことができる。
【0067】
以上のようにこの発明に係るイオン注入方法またはイオン注入装置によれば、基板2のステップ回転を用いることなく、基板2の面内に互いにドーズ量の異なる円形状注入領域44および外周部注入領域46を形成することができる。
【0068】
その結果、この発明に係るイオン注入方法またはイオン注入装置を、ステップ回転注入を行ってはいけない注入工程にも適用することができる。例えば、基板2の面内に形成される半導体デバイスの内の特定領域の半導体デバイスの特性補正を、基板2のステップ回転を用いることなく実施することができる。
【0069】
また、基板2のステップ回転を用いることなく、基板2の面内に互いにドーズ量の異なる円形状注入領域44および外周部注入領域46を形成することができるので、基板2のステップ回転を用いる場合と違って、回転対称以外のドーズ量分布を形成することができ、また円形状注入領域44の中心を基板2の中心部2aからずらすこともできるので、自由度の高いドーズ量分布を形成することができる。更に、外周部注入領域46のドーズ量分布を一様にしてその均一性を良くすることも可能である。
【0070】
また、上記チルト角可変装置34によってチルト角φを0度よりも大きくした状態で、上記円形状注入領域44および外周部注入領域46を形成することができる。しかもその場合でも、基板2のステップ回転を用いる場合と違って、基板2に入射するイオンビーム4の方向が変らないので、イオンビーム4の入射方向が変ることによって注入特性が変る等の不都合発生を防止することができる。
【0071】
これを、図25に示した例と同様に、基板2上に多数の電界効果トランジスタを形成する製造工程において、そのエクステンション58にイオンビーム4を照射してイオン注入を行う場合の例を示す図21を用いて説明する。図25と同一または相当する部分には同一符号を付して、それとの相違点のみを説明する。
【0072】
この発明に係るイオン注入方法またはイオン注入装置では、基板2のステップ回転を用いないので、チルト角φを0度よりも大きくても、しかもそれを幾ら大きくしても、図21(A)に示すように、エクステンション58に入射するイオンビーム4の方向は変らず一定である。従ってエクステンション58へのイオンビーム4の入射方向が変ることによって前述したような注入特性が変る等の不都合発生を防止することができる。
【0073】
従って、この発明に係るイオン注入方法またはイオン注入装置は、基板2の面内に上記のような円形状注入領域44および外周部注入領域46を形成して半導体デバイスの特性補正等を行うと共に、それを0度よりも大きなチルト角φで行う場合に、より顕著な効果を奏する。
【0074】
なお、図2に示した実施形態のように、基板2を駆動する方向がイオンビーム4の走査方向Xと実質的に直交するY方向の場合は、チルト角φを0度よりも大きくすると、基板2のY方向のある移動距離LY よりも、それに伴う基板表面内でのイオンビーム4に対する基板2の相対的な移動距離LR の方が次式の関係で大きくなる。従ってこの関係を考慮して、基板2のY方向の位置yを表す上記位置情報PDを取り扱えば良い。それによって、チルト角φの大小の影響を受けなくなる。基板2の駆動方向を前述したように基板2の表面に実質的に平行な方向に取る場合は、チルト角φの影響を受けないので、このような考慮をする必要はない。
【0075】
[数1]
LR =LY /cosφ
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】この発明に係るイオン注入方法を実施するイオン注入装置の一実施形態を示す概略平面図である。
【図2】図1のイオン注入装置の基板付近の一例を拡大して示す概略側面図である。
【図3】基板の面内に形成するドーズ量分布の一例を示す概略図である。
【図4】図3に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの1片道走査の走査速度分布の一例を示す図であり、図5に続く。
【図5】図3に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの1片道走査の走査速度分布の一例を示す図であり、図6に続く。
【図6】図3に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの1片道走査の走査速度分布の一例を示す図であり、図7に続く。
【図7】図3に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの1片道走査の走査速度分布の一例を示す図であり、図8に続く。
【図8】図3に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの1片道走査の走査速度分布の一例を示す図であり、図9に続く。
【図9】図3に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの1片道走査の走査速度分布の一例を示す図であり、図10に続く。
【図10】図3に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの1片道走査の走査速度分布の一例を示す図である。
【図11】基板の面内に形成するドーズ量分布の他の例を示す概略図である。
【図12】図11に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの1片道走査の走査速度分布の一例を示す図であり、図13に続く。
【図13】図11に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの1片道走査の走査速度分布の一例を示す図であり、図14に続く。
【図14】図11に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの1片道走査の走査速度分布の一例を示す図であり、図15に続く。
【図15】図11に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの1片道走査の走査速度分布の一例を示す図であり、図16に続く。
【図16】図11に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの1片道走査の走査速度分布の一例を示す図であり、図17に続く。
【図17】図11に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの1片道走査の走査速度分布の一例を示す図であり、図18に続く。
【図18】図11に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの1片道走査の走査速度分布の一例を示す図である。
【図19】図3に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの走査に用いる走査出力の一例を示す図である。
【図20】図11に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの走査に用いる走査出力の一例を示す図である。
【図21】基板上に電界効果トランジスタを形成する製造工程において、当該電界効果トランジスタのエクステンションにこの発明に係るイオン注入方法によってイオン注入を行う場合の例を拡大して示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
【図22】従来のイオン注入方法の一例を示す概略図である。
【図23】従来のイオン注入方法によって形成されるドーズ量分布の一例を示す概略図であり、(A)は第1回目の注入工程後のもの、(B)は第8回目の注入工程後のものを示す。
【図24】従来のイオン注入方法によってチルト角を0度よりも大きくしてイオン注入を行う場合の一例を示す概略図である。
【図25】基板上に電界効果トランジスタを形成する製造工程において、当該電界効果トランジスタのエクステンションに従来のイオン注入方法によってイオン注入を行う場合の例を拡大して示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
【符号の説明】
【0077】
2 基板
4 イオンビーム
20 走査器
22 走査電源
32 基板駆動装置
33 基板位置検出器
34 チルト角可変装置
36 制御装置
44 円形状注入領域
46 外周部注入領域
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板(例えば半導体基板)の面内に、円形状注入領域と、それを囲んでいて当該円形状注入領域とはドーズ量の異なる外周部注入領域とを形成するイオン注入方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSI、メモリー等の半導体デバイス製造における処理工程が複雑化し、かつ半導体基板が大型化して非常に高価になっており、半導体デバイス製造の歩留まり向上が非常に重要になっている。即ち、一つの基板をできる限り有効に活用することが非常に重要になっている。これを実現するために、半導体デバイスを製造する複数の工程の内のイオン注入工程において、イオン注入によるドーズ量分布を、基板の面内で意図的に不均一にすることによって、基板の面内に形成される半導体デバイスの内の特定領域の半導体デバイスの特性補正を行うことへの強い要望がある。
【0003】
例えば、半導体デバイスの製造では、イオン注入の前工程(例えば真空蒸着、CVD等による薄膜形成工程、エッチング工程等)において、処理の面内均一性を高めるために、多くの場合、基板を回転させて処理を行っている。しかしそれでも処理を完全に均一にできるものではなく、基板の面内に形成される半導体デバイスの特性のばらつきは、円形状領域とそれを囲む外周部領域との間でばらつきが生じやすいという傾向がある。
【0004】
より具体例を挙げると、半導体基板上に多数の電界効果トランジスタを形成する製造工程において、イオン注入の前工程で基板上に形成したゲート酸化膜の厚さが、基板の面内において、円形状領域とそれを囲む外周部領域との間でばらつきやすいという傾向があり、それを放置すると電界効果トランジスタの特性にばらつきが生じて歩留まりが低下する。
【0005】
従って、イオン注入工程において、基板の面内に、円形状注入領域と、それを囲んでいて当該円形状注入領域とはドーズ量の異なる外周部注入領域とを形成可能にすることは重要である。このようにドーズ量分布を変えることによって、上述した基板の面内における円形状領域と外周部領域との間での半導体デバイス(例えば電界効果トランジスタ)の特性のばらつきを補正して、歩留まりを向上させることが可能になる。
【0006】
上記のようなイオン注入を行うことのできる方法の一つとして、図22を参照して、イオンビーム4cを電界または磁界によってX方向に往復走査することと、基板2をX方向と交差するY方向に機械的に駆動することとを併用して基板2にイオン注入を行う際に、イオンビーム4cが基板2に入射している状態において、イオンビーム4cの走査速度または基板2の駆動速度をステップ状に変化させることと、基板2をその中心部2aを中心にして例えば矢印Jで示す方向に360/n度(nは注入工程の回数)ずつステップ回転させることとを併用して、基板2の面内に、円形状注入領域と、それを囲んでいて当該円形状注入領域とはドーズ量の異なる外周部注入領域とを形成するイオン注入方法が既に提案されている(例えば特許第4155327号公報参照)。このように基板2のステップ回転を用いるイオン注入を、ステップ回転注入と呼ぶことにする。
【0007】
上記従来のイオン注入方法によれば、例えば、第1回目の注入工程後に図23(A)に示すような三つの注入領域A、B、Aを形成し、第8回目(n=8の場合)の注入工程後に同図(B)に示すような複数の注入領域C〜Fを形成することができる。中央の注入領域Cが円形状注入領域であり、それを囲む注入領域D〜Fが外周部注入領域である。
【0008】
1回の注入工程によるドーズ量をd1 、d2 とすると、上記各注入領域A〜Fのドーズ量は、計算上は次のようになる。
【0009】
注入領域A:ドーズ量d1
注入領域B:ドーズ量d2
注入領域C:ドーズ量8d2
注入領域D:ドーズ量2d1 +6d2
注入領域E:ドーズ量4d1 +4d2
注入領域F:ドーズ量6d1 +2d2
【0010】
【特許文献1】特許第4155327号公報(段落0009−0014、図2、図12)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来のイオン注入方法は、円形状注入領域を形成するために、基板のステップ回転を必ず用いなければならないので、ステップ回転注入を行ってはいけない注入工程に適用することができないという課題がある。
【0012】
例えば、図24に示す例のように、基板2の表面に立てた垂線3とイオンビーム4cとが成す角度であるチルト角(これは注入角度とも呼ばれる。以下同様)φを0度よりも大きくしてイオン注入を行うときに、ステップ回転注入を行ってはいけない場合がある。
【0013】
これは、上記のようなチルト角φの場合に、基板2のステップ回転を用いてイオン注入を行うと、基板2上のある領域に着目すると、当該領域に入射するイオンビーム4cの方向が、基板2のステップ回転の度に変わってしまうからである。イオンビーム4cの入射方向が変ると、注入特性が変わって基板2に所望の注入処理を施せなくなる等の不都合が発生する。
【0014】
より具体例を挙げると、例えば図25に示す例のように、半導体基板2上に、ゲート電極52、ゲート酸化膜54、ソース(またはドレイン)56、エクステンション58(これはソースまたはドレインとチャネルとの電気的接続部である)等から成る電界効果トランジスタ(図25では1個のみ示しているが、通常は複数個形成する。図21においても同様)を形成する製造工程において、エクステンション58の部分に、イオンビーム4の照射によってドーパントを注入することが行われる。この場合は、ゲート酸化膜54の下側にもドーパントを注入する必要があるために、比較的大きなチルト角φでイオン注入を行う。
【0015】
上記のようなチルト角φが付いた状態で、上述したように基板2のステップ回転を用いてイオン注入を行うと、図25(A)に示すように、エクステンション58に入射するイオンビーム4cの方向が、基板2のステップ回転の度に変わってしまう。その結果、例えば、エクステンション58におけるシリコンの結晶格子とイオンビーム4との相対角度が基板2のステップ回転の度に変るので、エクステンション58に注入されるドーパントの深さや、エクステンション58の部分の表面欠陥の状態等が、基板2のステップ回転の度に変化してしまい、所望のデバイス特性を得ることができなくなる。
【0016】
また、上記従来のイオン注入方法では、ステップ回転注入を用いるために、図23(B)およびその上記説明からも分かるように、基板2の中心部2aを中心にした回転対称のドーズ量分布しか形成することができない。更に、厳密に見ると外周部の各注入領域D〜Fのドーズ量が互いに少しずつ異なる。
【0017】
そこでこの発明は、基板のステップ回転を用いることなく、基板の面内に、円形状注入領域と、それを囲んでいて当該円形状注入領域とはドーズ量の異なる外周部注入領域とを形成することができるイオン注入方法および装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明に係るイオン注入方法は、イオンビームを第1の方向に往復走査することと、基板を前記第1の方向と交差する第2の方向に機械的に駆動することとを併用して、前記基板にイオン注入を行うイオン注入方法において、前記基板の面内における前記イオンビームの走査速度を可変にして、前記基板の面内における前記イオンビームの1片道走査または1往復走査ごとの前記第1の方向における走査速度分布を、前記基板の前記第2の方向の位置に応じて変化させることによって、前記基板の面内に、円形状注入領域と、それを囲んでいて当該円形状注入領域とはドーズ量の異なる外周部注入領域とを形成することを特徴としている。
【0019】
この発明に係るイオン注入装置は、イオンビームを第1の方向に往復走査することと、基板を前記第1の方向と交差する第2の方向に機械的に駆動することとを併用して、前記基板にイオン注入を行うイオン注入装置において、前記イオンビームを電界または磁界によって前記第1の方向に往復走査するものであって、前記基板の面内における前記イオンビームの走査速度が可変のビーム走査装置と、前記基板を前記第2の方向に機械的に駆動する基板駆動装置と、前記基板の前記第2の方向の位置を検出して当該位置を表す位置情報を出力する基板位置検出器と、前記基板位置検出器からの前記位置情報に基づいて前記ビーム走査装置を制御して、前記基板の面内における前記イオンビームの1片道走査または1往復走査ごとの前記第1の方向における走査速度分布を、前記基板の前記第2の方向の位置に応じて変化させることによって、前記基板の面内に、円形状注入領域と、それを囲んでいて当該円形状注入領域とはドーズ量の異なる外周部注入領域とを形成する制御を行う制御装置とを備えていることを特徴としている。
【0020】
前記円形状注入領域のドーズ量分布を、例えば、徐々に盛り上がった分布、徐々に窪んだ分布、一様に盛り上がった分布または一様に窪んだ分布にしても良い。
【0021】
前記基板の表面に立てた垂線と前記イオンビームとが成す角度であるチルト角を0度よりも大きくしてイオン注入を行うようにしても良い。
【発明の効果】
【0022】
請求項1〜12に記載の発明によれば、基板の面内におけるイオンビームの1片道走査または1往復走査ごとの前記第1の方向における走査速度分布を、基板の前記第2の方向の位置に応じて変化させることによって、基板の面内に円形状注入領域とそれを囲んでいて当該円形状注入領域とはドーズ量の異なる外周部注入領域とを形成するので、基板のステップ回転を用いることなく、基板の面内に互いにドーズ量の異なる円形状注入領域および外周部注入領域を形成することができる。
【0023】
その結果、この発明を、ステップ回転注入を行ってはいけない注入工程にも適用することができる。例えば、基板の面内に形成される半導体デバイスの内の特定領域の半導体デバイスの特性補正を、基板のステップ回転を用いることなく実施することができる。
【0024】
また、基板のステップ回転を用いることなく、基板の面内に互いにドーズ量の異なる円形状注入領域および外周部注入領域を形成することができるので、基板のステップ回転を用いる場合と違って、回転対称以外のドーズ量分布を形成することができ、自由度の高いドーズ量分布を形成することができる。更に、外周部注入領域のドーズ量分布の均一性を良くすることも可能である。
【0025】
請求項6、12に記載の発明によれば、次の更なる効果を奏する。即ち、0度よりも大きいチルト角でのイオン注入によって、前記円形状注入領域および外周部注入領域を形成することができ、しかもその場合でも、基板のステップ回転を用いる場合と違って、基板に入射するイオンビームの方向が変らないので、イオンビームの入射方向が変ることによって注入特性が変る等の不都合発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、この発明に係るイオン注入方法を実施するイオン注入装置の一実施形態を示す概略平面図である。図2は、図1のイオン注入装置の基板付近の一例を拡大して示す概略側面図である。
【0027】
イオンビーム4の進行方向を常にZ方向とし、このZ方向と実質的に直交する面内において互いに実質的に直交する2方向をX方向およびY方向とすると、以下に述べる実施形態においては、一例として、イオンビーム4を往復走査する前記第1の方向をX方向とし、基板2を駆動する前記第2の方向をY方向としている。X方向およびZ方向は例えば水平方向、Y方向は例えば垂直方向である。但しこれに限られるものではなく、例えば、基板2の表面に実質的に平行な方向を、基板2を駆動する前記第2の方向としても良い。
【0028】
このイオン注入装置は、ハイブリッドスキャン方式と呼ばれるものであり、イオンビーム4を電界または磁界によってX方向に往復走査することと、基板(例えば半導体基板)2をX方向と交差するY方向に機械的に駆動することとを併用して、基板2の全面にイオン注入を行う構成をしている。
【0029】
このイオン注入装置は、より具体的には、イオンビーム4を引き出すイオン源10と、このイオン源10から引き出されたイオンビーム4から特定のイオン種を選別して導出する質量分離マグネット12と、この質量分離マグネット12から導出されたイオンビーム4を加速または減速する加減速管14と、この加減速管14から導出されたイオンビーム4を整形するQレンズ16と、このQレンズ16から導出されたイオンビーム4から特定エネルギーのイオンを選別して導出するエネルギー分離器18と、このエネルギー分離器18から導出されたイオンビーム4を電界または磁界によってX方向に往復走査する走査器20と、この走査器20から導出されたイオンビーム4を電界または磁界によって曲げて走査器20と協働してイオンビーム4の平行走査を行って、X方向において平行走査されたイオンビーム4を作るビーム平行化器24とを備えている。
【0030】
ビーム平行化器24から導出されたイオンビーム4は、注入室26内において、ホルダ28に保持されている基板2に照射され、それによって基板2にイオン注入が行われる。その際、基板2は、基板駆動装置置32によってY方向に駆動される。この駆動は、通常は往復駆動であるが、必要とするドーズ量等によっては、往復駆動と1片道駆動とで終る場合もある。この基板2の駆動とイオンビーム4の往復走査との協働によって、基板2の全面にイオン注入を行うことができる。
【0031】
基板駆動装置32は、この実施形態では、ホルダ28上の基板2の前記第2の方向の位置、即ちこの実施形態ではY方向の位置y(これは例えば、図2等に示す例のように基板2の中心部2aの位置でも良いし、その他の位置でも良い)を検出して当該位置を表す位置情報PDを出力する基板位置検出器33を有している。
【0032】
基板位置検出器33は、例えば、基板駆動装置32による基板2の上記駆動に応答するエンコーダまたはポテンショメータであるが、それ以外のものでも良い。また、この基板位置検出器33を基板駆動装置32とは別に設けても良い。
【0033】
基板2のY方向の駆動速度vyは、前記特許文献1にも記載されているように、イオンビーム4が基板2に入射する領域内で、イオンビーム4のビーム電流密度に正比例するように制御するのが好ましい。そのようにすると、基板2へのイオン注入中に仮にイオンビーム4のビーム電流密度が変化しても、この変化を駆動速度vyで補償して、基板2に対するドーズ量に変化が生じるのを防止することができる。即ち、基板2に対して安定したドーズ量でイオン注入を行うことができる。
【0034】
このイオン注入装置は、更に、図2に示すように、例えばホルダ28上の基板2の表面の中心部2aを中心にして、基板2およびホルダ28を矢印Kで示すように回転させてそれら2、28の傾きを変えて、基板2の表面に立てた垂線3とイオンビーム4とが成す角度であるチルト角φを変えるチルト角可変装置34を備えている。これによって、チルト角φを0度または0度よりも大きくして、イオン注入を行うことができる。チルト角可変装置34は、例えばモータである。基板駆動装置32は、このチルト角可変装置34、ホルダ28および基板2の全体をY方向に駆動する。
【0035】
イオンビーム4のX方向の走査は、走査電源22から走査器20に供給される走査出力P(t)によって制御される。(t)は、時間tの関数であることを表している。走査出力P(t)は、例えば、走査器20が電界によってイオンビーム4を走査するものである場合は走査電圧、磁界によって走査するものである場合は走査電流である。この走査電源22および走査器20は、またはそれら20、22およびビーム平行化器24は、イオンビーム4をX方向に往復走査するビーム走査装置を構成している。このビーム走査装置は、より具体的にはその走査電源22は、後述する制御装置36によって制御されて、基板2の面内におけるイオンビーム4の走査速度vxを後述するように変化させることができる。
【0036】
ホルダ28の上流側には、X方向に長いスリット状の開口42を有していて、イオンビームを整形するマスク40が必要に応じて設けられる。
【0037】
ホルダ28の上流側および下流側には、イオンビーム4を受けてそのX方向のビーム電流密度分布を測定して、走査出力P(t)の波形調整等に用いられる前段多点ファラデー38および後段多点ファラデー39が設けられている。両多点ファラデー38、39は、複数のファラデーカップをX方向に並べたものである。後段多点ファラデー39はイオンビーム4のビームライン上に固定されている。前段多点ファラデー38およびホルダ28は、例えばY方向に駆動されて、必要なときにのみイオンビーム4のビームライン上に置かれる。なお、これと同様の多点ファラデーは、例えば特開2001−143651号公報にも記載されている。
【0038】
両多点ファラデー38、39による測定情報および上記基板位置検出器33からの位置情報PDは、制御装置36に与えられる。制御装置36には、この実施形態では更に、基板2の面内に形成する所望のドーズ量分布を、より具体的には後述する円形状注入領域44および外周部注入領域46のドーズ量分布を含む所望のドーズ量分布を設定するドーズ量分布設定情報DD等が与えられる。制御装置36は、これらの情報等に基づいて、(a)上記ビーム走査装置を制御して(具体的にはこの実施形態では上述したように走査電源22を制御して。以下同様)、基板2の面内におけるイオンビーム4のX方向の走査速度vxを後述するように制御する機能、(b)チルト角可変装置34を制御して所定のチルト角φに設定する機能、(c)基板駆動装置32を制御して、当該基板駆動装置32による基板2等のY方向の駆動を制御すると共に、ホルダ28上の基板2のY方向の駆動速度vyを上述したようにイオンビーム4のビーム電流密度に正比例させる制御を行う機能、等の機能を有している。
【0039】
上記のようなイオン注入装置において、基板2の面内に、円形状注入領域と、それを囲んでいて当該円形状注入領域とはドーズ量の異なる外周部注入領域とを形成するイオン注入方法の例を幾つか説明する。
【0040】
図3に、基板2の面内に形成するドーズ量分布の一例を示す。基板2の面内に、円形状注入領域44と、それを囲んでいて円形状注入領域44とはドーズ量の異なる外周部注入領域46とを形成する。円形状注入領域44は、この例では、徐々に山形に盛り上がったドーズ量分布をしている。より具体的には、複数の同心円状に盛り上がったドーズ量分布をしている。外周部注入領域46は、この例では平坦なドーズ量分布をしている。このようなドーズ量分布は、例えば上述したドーズ量分布設定情報DDとして制御装置36に与えられる(図11等に示す他のドーズ量分布の場合も同様)。
【0041】
なお、以下の図においては、基板2を回転させていないことを示すために、基板2のノッチ(切り欠き)2bを示しているが、このノッチ2bの位置は図示例の位置に限られるものではない。
【0042】
図3に示すドーズ量分布を形成する場合の、イオンビーム4の1片道走査のX方向における走査速度vxの分布(即ち走査速度分布)の例を図4〜図10に示す。これらの図は、ドーズ量分布形成動作を理解しやすくするために、基板2を正面に見て示している。これらの図は一連の図であり、イオンビーム4のY方向の位置は変らず、基板2がY方向に駆動されてその位置yが後になるほど上へ上がっている。図4よりも前および図10よりも後の工程は、イオンビーム4の走査速度分布は平坦であるので、図示を省略している。これらのことは、後述する図12〜図18についても同様である。
【0043】
走査の元になるイオンビーム4は、所定の断面形状(この断面形状は、図4等においては図示の簡略化のために円形で示しているが、円形に限定されない)および所定の断面寸法を有しており、これが前述したように走査速度vxでX方向に走査される。その1片道走査の軌跡を符号4aで示す(図12〜図18においても同様)。
【0044】
前述したように基板2の面内におけるイオンビーム4の走査速度vxは可変であり、このイオンビーム4の、基板2の面内における走査速度分布を、図4〜図10に示す例のように、基板2のY方向の位置yに応じて順次(次々と)変化させることによって、基板2の面内に上記円形状注入領域44および外周部注入領域46を形成する。即ち、イオンビーム4の走査速度vxをX方向の位置xによって変化させるだけでなく、そのような変化を含んで成るイオンビーム4のX方向における走査速度分布を、基板2のY方向の位置yに応じて次々と変化させる。
【0045】
より具体的には、図4〜図8に示す例のように、上記円形状注入領域44を形成するときのイオンビーム4の走査速度分布を凹状にして、かつ当該凹状部の幅Wおよび深さPを基板2のY方向の位置yに応じて変化させる。これによって、上述した円形状注入領域44を形成することができる。これは、基板2に対するドーズ量は、イオンビーム4のビーム電流密度を一定とすると、イオンビーム4の走査速度vxに反比例するからである。即ち、イオンビーム4の走査速度vxとドーズ量とは反対の関係にあり、走査速度vxが大きい領域ではドーズ量は小さくなり、走査速度vxが小さい領域ではドーズ量は大きくなるからである。
【0046】
イオンビーム4の走査速度分布の上記凹状部の位置、幅Wおよび深さPをどのようにするかは、形成しようとする円形状注入領域44の位置、大きさおよびそのドーズ量分布に応じて決めれば良い。
【0047】
イオンビーム4が円形状注入領域44を通らなくなった後は、イオンビーム4の走査速度分布は例えば平坦にすれば良い(図9〜図10参照)。
【0048】
より具体的には、基板2の面内の所望のドーズ量分布を、基板2の面内におけるイオンビーム4の軌跡4aに相当する寸法で複数にスライスしたときのX方向の各ドーズ量分布を、基板2のY方向の各位置yについてそれぞれ決めて、その決めたドーズ量分布をそれに対応する位置yで実現するように、イオンビーム4の走査速度分布を、基板2のY方向の位置yに応じて変化させれば良い。
【0049】
イオンビーム4の走査速度vxは、前述した走査出力P(t)の時間変化率dP(t)/dtに比例するので、イオンビーム4の走査速度分布を上記のように変化させるには、具体的には、上記走査出力P(t)の波形を調整すれば良い。
【0050】
例えば、図4〜図8に示すような凹状の走査速度分布を実現するには、例えば図19に示す例のように(これは波形を分かりやすくするために誇張して図示している。後述する図20も同様)、上記走査出力P(t)の波形50を、イオンビーム4の走査速度分布の凹状部に対応する位置で、S字状に整形してその傾き(即ちdP(t)/dt)を徐々に変えれば良い。即ち当該傾きを、徐々に小さくした後に元に戻せば良い。これは、元になる三角波形48を上記のように整形することによって実現することができる。この走査出力P(t)の波形整形は、例えば、前述した多点ファラデー38および39からの測定情報を用いて、制御装置36による制御によって行うことができる。
【0051】
上記例とは反対に、イオンビーム4の走査速度分布を後述するように凸状にするには、上記波形50のS字状の部分の傾きを、図19に示す例とは反対にすれば良い。即ち当該傾きを、徐々に大きくした後に元に戻せば良い。
【0052】
走査出力P(t)が三角波形48の場合は、その傾きは一定であるので、走査速度vxは一定となり、走査速度分布は平坦になる。
【0053】
なお、基板2の駆動速度vyに比べれば、イオンビーム4の走査速度vxは遥かに大きいので、イオンビーム4が基板2の面内を1片道走査または1往復走査している間のイオンビーム4のビーム電流密度は、一定と考えても妥当である。また、同じ理由から、イオンビーム4が基板2の面内を1片道走査または1往復走査している間の基板2のY方向の移動距離は非常に小さいので、それが所望のドーズ量分布を形成することに及ぼす影響は特に考慮しなくても構わない。
【0054】
例えば、上記イオンビーム4の走査速度vxと基板2の駆動速度vyとの大きさの違いを周波数で言えば、基板2の直径が300mmの場合を一例に挙げると、基板2のY方向の駆動サイクルは最大で2秒間に1回程度(周波数で言えば最大で0.5Hz程度)であるのに対して、イオンビーム4のX方向の走査周波数は173Hzであり遥かに(数百倍)大きい。イオンビーム4の走査距離と基板2の駆動距離とはおおよそ同程度であるので、上記周波数の差がほぼ速度の差である。
【0055】
上記のように基板2の駆動速度vyに比べてイオンビーム4の走査速度vxの方が遥かに大きいので、上記1片道走査ごとの走査速度分布の代わりに、基板2の面内におけるイオンビーム4の1往復走査ごとの走査速度分布を、基板2のY方向の位置yに応じて変化させるようにしても良い。そのようにしても、簡単に言えば、基板2の面内におけるドーズ量の変化のきめ細かさが若干粗くなるだけである。
【0056】
基板2をY方向に1往復以上(往復と1片道の場合を含む)駆動することによって所望のドーズ量分布を実現しても良い。その場合は、図4〜図10を参照して説明した動作を必要回数だけ繰り返せば良い。この場合、基板2の同じ位置yでは、イオンビーム4の同じ走査速度分布を用いれば良い。
【0057】
上記円形状注入領域44の形状、その基板2の面内での位置、そのドーズ量分布および外周部注入領域46のドーズ量分布は、あくまでも一例であってそれに限られるものではなく、要は所望のものに定めれば良い。例えば、前述したように基板2の面内に形成される半導体デバイスの内の特定領域の半導体デバイスの特性補正をイオン注入によって行う等の観点に従って所望のものに定めれば良い。
【0058】
例えば、上記円形状注入領域44を形成するときのイオンビーム4の走査速度分布を図4〜図8に示した例とは反対の凸状にして、かつ当該凸状部の幅および高さを基板2のY方向の位置yに応じて変化させて、円形状注入領域44のドーズ量分布を徐々にすり鉢状に窪んだドーズ量分布にしても良い。
【0059】
円形状注入領域44のドーズ量分布は、図3〜図10に示した例では複数の同心円状であるが、複数の偏心円状でも良い。ドーズ量が滑らかに変化しているものでも良い。
【0060】
また、円形状注入領域44は、必ずしも真円でなくても良く、真円から外れた円形、例えば楕円形等でも良い。これら全てを含む広義で、この明細書では円形状注入領域と呼んでいる。
【0061】
図11に、基板2の面内に形成するドーズ量分布の他の例を示す。上記例と同一または相当する部分には同一符号を付しており、以下においては上記例との相違点を主体に説明する。円形状注入領域44は、この例では、円柱のように一様に盛り上がったドーズ量分布をしている。
【0062】
図11に示すドーズ量分布を形成する場合の、イオンビーム4の1片道走査の走査速度vxの分布(即ち走査速度分布)の例を図12〜図18に示す。この例の場合も、基板2の面内におけるイオンビーム4の走査速度分布を、基板2のY方向の位置yに応じて次々と変化させることによって、基板2の面内に上記円形状注入領域44および外周部注入領域46を形成する。
【0063】
より具体的には、図13〜図17に示す例のように、上記円形状注入領域44を形成するときのイオンビーム4の走査速度分布を凹状にして、かつ当該凹状部の深さPを一定に保ちつつその幅Wを基板2のY方向の位置yに応じて変化させる。これによって、上述した円形状注入領域44を形成することができる。
【0064】
図13〜図17に示すような凹状の走査速度分布を実現するには、例えば図20に示す例のように、走査出力P(t)の波形50の傾きを、イオンビーム4の走査速度分布の凹状部に対応する位置で変えれば良い。具体的には当該傾きを一定の傾きで小さくすれば良い。これは、元になる三角波形48を上記のように整形することによって実現することができる。
【0065】
上記例とは反対に、上記円形状注入領域44を形成するときのイオンビーム4の走査速度分布を凸状にして、かつ当該凸状部の高さを一定に保ちつつその幅を基板2のY方向の位置yに応じて変化させて、円形状注入領域44のドーズ量分布を一様に窪んだドーズ量分布にしても良い。この場合は、図20に示した例とは反対に、上記走査出力P(t)の波形の傾きを、イオンビーム4の走査速度分布の凸状部に対応する位置で、一定の傾きで大きくすれば良い。
【0066】
上記制御装置36は、上記基板位置検出器33からの基板2の位置情報PDに基づいて上記ビーム走査装置を制御して、具体的にはこの実施形態では走査電源22を制御して、基板2の面内におけるイオンビーム4の1片道走査または1往復走査ごとのX方向における走査速度分布を、基板2のY方向の位置yに応じて変化させることによって、基板2の面内に、上記各例に示したような円形状注入領域44および外周部注入領域46を形成する制御を行うことができる。具体的には、走査電源22から出力する上記走査出力P(t)の波形を上述したように整形する制御を行うことができる。
【0067】
以上のようにこの発明に係るイオン注入方法またはイオン注入装置によれば、基板2のステップ回転を用いることなく、基板2の面内に互いにドーズ量の異なる円形状注入領域44および外周部注入領域46を形成することができる。
【0068】
その結果、この発明に係るイオン注入方法またはイオン注入装置を、ステップ回転注入を行ってはいけない注入工程にも適用することができる。例えば、基板2の面内に形成される半導体デバイスの内の特定領域の半導体デバイスの特性補正を、基板2のステップ回転を用いることなく実施することができる。
【0069】
また、基板2のステップ回転を用いることなく、基板2の面内に互いにドーズ量の異なる円形状注入領域44および外周部注入領域46を形成することができるので、基板2のステップ回転を用いる場合と違って、回転対称以外のドーズ量分布を形成することができ、また円形状注入領域44の中心を基板2の中心部2aからずらすこともできるので、自由度の高いドーズ量分布を形成することができる。更に、外周部注入領域46のドーズ量分布を一様にしてその均一性を良くすることも可能である。
【0070】
また、上記チルト角可変装置34によってチルト角φを0度よりも大きくした状態で、上記円形状注入領域44および外周部注入領域46を形成することができる。しかもその場合でも、基板2のステップ回転を用いる場合と違って、基板2に入射するイオンビーム4の方向が変らないので、イオンビーム4の入射方向が変ることによって注入特性が変る等の不都合発生を防止することができる。
【0071】
これを、図25に示した例と同様に、基板2上に多数の電界効果トランジスタを形成する製造工程において、そのエクステンション58にイオンビーム4を照射してイオン注入を行う場合の例を示す図21を用いて説明する。図25と同一または相当する部分には同一符号を付して、それとの相違点のみを説明する。
【0072】
この発明に係るイオン注入方法またはイオン注入装置では、基板2のステップ回転を用いないので、チルト角φを0度よりも大きくても、しかもそれを幾ら大きくしても、図21(A)に示すように、エクステンション58に入射するイオンビーム4の方向は変らず一定である。従ってエクステンション58へのイオンビーム4の入射方向が変ることによって前述したような注入特性が変る等の不都合発生を防止することができる。
【0073】
従って、この発明に係るイオン注入方法またはイオン注入装置は、基板2の面内に上記のような円形状注入領域44および外周部注入領域46を形成して半導体デバイスの特性補正等を行うと共に、それを0度よりも大きなチルト角φで行う場合に、より顕著な効果を奏する。
【0074】
なお、図2に示した実施形態のように、基板2を駆動する方向がイオンビーム4の走査方向Xと実質的に直交するY方向の場合は、チルト角φを0度よりも大きくすると、基板2のY方向のある移動距離LY よりも、それに伴う基板表面内でのイオンビーム4に対する基板2の相対的な移動距離LR の方が次式の関係で大きくなる。従ってこの関係を考慮して、基板2のY方向の位置yを表す上記位置情報PDを取り扱えば良い。それによって、チルト角φの大小の影響を受けなくなる。基板2の駆動方向を前述したように基板2の表面に実質的に平行な方向に取る場合は、チルト角φの影響を受けないので、このような考慮をする必要はない。
【0075】
[数1]
LR =LY /cosφ
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】この発明に係るイオン注入方法を実施するイオン注入装置の一実施形態を示す概略平面図である。
【図2】図1のイオン注入装置の基板付近の一例を拡大して示す概略側面図である。
【図3】基板の面内に形成するドーズ量分布の一例を示す概略図である。
【図4】図3に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの1片道走査の走査速度分布の一例を示す図であり、図5に続く。
【図5】図3に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの1片道走査の走査速度分布の一例を示す図であり、図6に続く。
【図6】図3に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの1片道走査の走査速度分布の一例を示す図であり、図7に続く。
【図7】図3に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの1片道走査の走査速度分布の一例を示す図であり、図8に続く。
【図8】図3に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの1片道走査の走査速度分布の一例を示す図であり、図9に続く。
【図9】図3に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの1片道走査の走査速度分布の一例を示す図であり、図10に続く。
【図10】図3に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの1片道走査の走査速度分布の一例を示す図である。
【図11】基板の面内に形成するドーズ量分布の他の例を示す概略図である。
【図12】図11に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの1片道走査の走査速度分布の一例を示す図であり、図13に続く。
【図13】図11に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの1片道走査の走査速度分布の一例を示す図であり、図14に続く。
【図14】図11に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの1片道走査の走査速度分布の一例を示す図であり、図15に続く。
【図15】図11に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの1片道走査の走査速度分布の一例を示す図であり、図16に続く。
【図16】図11に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの1片道走査の走査速度分布の一例を示す図であり、図17に続く。
【図17】図11に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの1片道走査の走査速度分布の一例を示す図であり、図18に続く。
【図18】図11に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの1片道走査の走査速度分布の一例を示す図である。
【図19】図3に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの走査に用いる走査出力の一例を示す図である。
【図20】図11に示すドーズ量分布を形成する場合のイオンビームの走査に用いる走査出力の一例を示す図である。
【図21】基板上に電界効果トランジスタを形成する製造工程において、当該電界効果トランジスタのエクステンションにこの発明に係るイオン注入方法によってイオン注入を行う場合の例を拡大して示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
【図22】従来のイオン注入方法の一例を示す概略図である。
【図23】従来のイオン注入方法によって形成されるドーズ量分布の一例を示す概略図であり、(A)は第1回目の注入工程後のもの、(B)は第8回目の注入工程後のものを示す。
【図24】従来のイオン注入方法によってチルト角を0度よりも大きくしてイオン注入を行う場合の一例を示す概略図である。
【図25】基板上に電界効果トランジスタを形成する製造工程において、当該電界効果トランジスタのエクステンションに従来のイオン注入方法によってイオン注入を行う場合の例を拡大して示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
【符号の説明】
【0077】
2 基板
4 イオンビーム
20 走査器
22 走査電源
32 基板駆動装置
33 基板位置検出器
34 チルト角可変装置
36 制御装置
44 円形状注入領域
46 外周部注入領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームを第1の方向に往復走査することと、基板を前記第1の方向と交差する第2の方向に機械的に駆動することとを併用して、前記基板にイオン注入を行うイオン注入方法において、
前記基板の面内における前記イオンビームの走査速度を可変にして、前記基板の面内における前記イオンビームの1片道走査または1往復走査ごとの前記第1の方向における走査速度分布を、前記基板の前記第2の方向の位置に応じて変化させることによって、前記基板の面内に、円形状注入領域と、それを囲んでいて当該円形状注入領域とはドーズ量の異なる外周部注入領域とを形成することを特徴とするイオン注入方法。
【請求項2】
前記円形状注入領域を形成するときの前記イオンビームの前記走査速度分布を凹状にして、かつ当該凹状部の幅および深さを前記基板の前記第2の方向の位置に応じて変化させて、前記円形状注入領域のドーズ量分布を徐々に盛り上がったドーズ量分布にする請求項1記載のイオン注入方法。
【請求項3】
前記円形状注入領域を形成するときの前記イオンビームの前記走査速度分布を凸状にして、かつ当該凸状部の幅および高さを前記基板の前記第2の方向の位置に応じて変化させて、前記円形状注入領域のドーズ量分布を徐々に窪んだドーズ量分布にする請求項1記載のイオン注入方法。
【請求項4】
前記円形状注入領域を形成するときの前記イオンビームの前記走査速度分布を凹状にして、かつ当該凹状部の深さを一定に保ちつつその幅を前記基板の前記第2の方向の位置に応じて変化させて、前記円形状注入領域のドーズ量分布を一様に盛り上がったドーズ量分布にする請求項1記載のイオン注入方法。
【請求項5】
前記円形状注入領域を形成するときの前記イオンビームの前記走査速度分布を凸状にして、かつ当該凸状部の高さを一定に保ちつつその幅を前記基板の前記第2の方向の位置に応じて変化させて、前記円形状注入領域のドーズ量分布を一様に窪んだドーズ量分布にする請求項1記載のイオン注入方法。
【請求項6】
前記基板の表面に立てた垂線と前記イオンビームとが成す角度であるチルト角を0度よりも大きくしてイオン注入を行う請求項1ないし5のいずれかに記載のイオン注入方法。
【請求項7】
イオンビームを第1の方向に往復走査することと、基板を前記第1の方向と交差する第2の方向に機械的に駆動することとを併用して、前記基板にイオン注入を行うイオン注入装置において、
前記イオンビームを電界または磁界によって前記第1の方向に往復走査するものであって、前記基板の面内における前記イオンビームの走査速度が可変のビーム走査装置と、
前記基板を前記第2の方向に機械的に駆動する基板駆動装置と、
前記基板の前記第2の方向の位置を検出して当該位置を表す位置情報を出力する基板位置検出器と、
前記基板位置検出器からの前記位置情報に基づいて前記ビーム走査装置を制御して、前記基板の面内における前記イオンビームの1片道走査または1往復走査ごとの前記第1の方向における走査速度分布を、前記基板の前記第2の方向の位置に応じて変化させることによって、前記基板の面内に、円形状注入領域と、それを囲んでいて当該円形状注入領域とはドーズ量の異なる外周部注入領域とを形成する制御を行う制御装置とを備えていることを特徴とするイオン注入装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記円形状注入領域を形成するときの前記イオンビームの前記走査速度分布を凹状にして、かつ当該凹状部の幅および深さを前記基板の前記第2の方向の位置に応じて変化させて、前記円形状注入領域のドーズ量分布を徐々に盛り上がったドーズ量分布にする制御を行う請求項7記載のイオン注入装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記円形状注入領域を形成するときの前記イオンビームの前記走査速度分布を凸状にして、かつ当該凸状部の幅および高さを前記基板の前記第2の方向の位置に応じて変化させて、前記円形状注入領域のドーズ量分布を徐々に窪んだドーズ量分布にする制御を行う請求項7記載のイオン注入装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記円形状注入領域を形成するときの前記イオンビームの前記走査速度分布を凹状にして、かつ当該凹状部の深さを一定に保ちつつその幅を前記基板の前記第2の方向の位置に応じて変化させて、前記円形状注入領域のドーズ量分布を一様に盛り上がったドーズ量分布にする制御を行う請求項7記載のイオン注入装置。
【請求項11】
前記制御装置は、前記円形状注入領域を形成するときの前記イオンビームの前記走査速度分布を凸状にして、かつ当該凸状部の高さを一定に保ちつつその幅を前記基板の前記第2の方向の位置に応じて変化させて、前記円形状注入領域のドーズ量分布を一様に窪んだドーズ量分布にする制御を行う請求項7記載のイオン注入装置。
【請求項12】
前記基板の傾きを変えて、前記基板の表面に立てた垂線と前記イオンビームとが成す角度であるチルト角を変えるチルト角可変装置を備えている請求項7ないし11のいずれかに記載のイオン注入装置。
【請求項1】
イオンビームを第1の方向に往復走査することと、基板を前記第1の方向と交差する第2の方向に機械的に駆動することとを併用して、前記基板にイオン注入を行うイオン注入方法において、
前記基板の面内における前記イオンビームの走査速度を可変にして、前記基板の面内における前記イオンビームの1片道走査または1往復走査ごとの前記第1の方向における走査速度分布を、前記基板の前記第2の方向の位置に応じて変化させることによって、前記基板の面内に、円形状注入領域と、それを囲んでいて当該円形状注入領域とはドーズ量の異なる外周部注入領域とを形成することを特徴とするイオン注入方法。
【請求項2】
前記円形状注入領域を形成するときの前記イオンビームの前記走査速度分布を凹状にして、かつ当該凹状部の幅および深さを前記基板の前記第2の方向の位置に応じて変化させて、前記円形状注入領域のドーズ量分布を徐々に盛り上がったドーズ量分布にする請求項1記載のイオン注入方法。
【請求項3】
前記円形状注入領域を形成するときの前記イオンビームの前記走査速度分布を凸状にして、かつ当該凸状部の幅および高さを前記基板の前記第2の方向の位置に応じて変化させて、前記円形状注入領域のドーズ量分布を徐々に窪んだドーズ量分布にする請求項1記載のイオン注入方法。
【請求項4】
前記円形状注入領域を形成するときの前記イオンビームの前記走査速度分布を凹状にして、かつ当該凹状部の深さを一定に保ちつつその幅を前記基板の前記第2の方向の位置に応じて変化させて、前記円形状注入領域のドーズ量分布を一様に盛り上がったドーズ量分布にする請求項1記載のイオン注入方法。
【請求項5】
前記円形状注入領域を形成するときの前記イオンビームの前記走査速度分布を凸状にして、かつ当該凸状部の高さを一定に保ちつつその幅を前記基板の前記第2の方向の位置に応じて変化させて、前記円形状注入領域のドーズ量分布を一様に窪んだドーズ量分布にする請求項1記載のイオン注入方法。
【請求項6】
前記基板の表面に立てた垂線と前記イオンビームとが成す角度であるチルト角を0度よりも大きくしてイオン注入を行う請求項1ないし5のいずれかに記載のイオン注入方法。
【請求項7】
イオンビームを第1の方向に往復走査することと、基板を前記第1の方向と交差する第2の方向に機械的に駆動することとを併用して、前記基板にイオン注入を行うイオン注入装置において、
前記イオンビームを電界または磁界によって前記第1の方向に往復走査するものであって、前記基板の面内における前記イオンビームの走査速度が可変のビーム走査装置と、
前記基板を前記第2の方向に機械的に駆動する基板駆動装置と、
前記基板の前記第2の方向の位置を検出して当該位置を表す位置情報を出力する基板位置検出器と、
前記基板位置検出器からの前記位置情報に基づいて前記ビーム走査装置を制御して、前記基板の面内における前記イオンビームの1片道走査または1往復走査ごとの前記第1の方向における走査速度分布を、前記基板の前記第2の方向の位置に応じて変化させることによって、前記基板の面内に、円形状注入領域と、それを囲んでいて当該円形状注入領域とはドーズ量の異なる外周部注入領域とを形成する制御を行う制御装置とを備えていることを特徴とするイオン注入装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記円形状注入領域を形成するときの前記イオンビームの前記走査速度分布を凹状にして、かつ当該凹状部の幅および深さを前記基板の前記第2の方向の位置に応じて変化させて、前記円形状注入領域のドーズ量分布を徐々に盛り上がったドーズ量分布にする制御を行う請求項7記載のイオン注入装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記円形状注入領域を形成するときの前記イオンビームの前記走査速度分布を凸状にして、かつ当該凸状部の幅および高さを前記基板の前記第2の方向の位置に応じて変化させて、前記円形状注入領域のドーズ量分布を徐々に窪んだドーズ量分布にする制御を行う請求項7記載のイオン注入装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記円形状注入領域を形成するときの前記イオンビームの前記走査速度分布を凹状にして、かつ当該凹状部の深さを一定に保ちつつその幅を前記基板の前記第2の方向の位置に応じて変化させて、前記円形状注入領域のドーズ量分布を一様に盛り上がったドーズ量分布にする制御を行う請求項7記載のイオン注入装置。
【請求項11】
前記制御装置は、前記円形状注入領域を形成するときの前記イオンビームの前記走査速度分布を凸状にして、かつ当該凸状部の高さを一定に保ちつつその幅を前記基板の前記第2の方向の位置に応じて変化させて、前記円形状注入領域のドーズ量分布を一様に窪んだドーズ量分布にする制御を行う請求項7記載のイオン注入装置。
【請求項12】
前記基板の傾きを変えて、前記基板の表面に立てた垂線と前記イオンビームとが成す角度であるチルト角を変えるチルト角可変装置を備えている請求項7ないし11のいずれかに記載のイオン注入装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2010−118235(P2010−118235A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290190(P2008−290190)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(302054866)日新イオン機器株式会社 (161)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(302054866)日新イオン機器株式会社 (161)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]