説明

イソオリエンチンを含むヒスタミン抑制用組成物

本発明は、天然物由来のイソオリエンチンを含む、過剰のヒスタミンにより誘発される疾患の予防または治療用の薬学組成物、過剰のヒスタミンにより誘発される疾患の予防または治療用薬剤の製造のためのイソオリエンチンの使用、及び治療学的有効量のイソオリエンチンを対象に投与し、過剰のヒスタミンにより誘発される疾患を予防または治療する方法に関する。本発明の組成物、使用及び方法は優れたヒスタミン抑制効果を示し、特に、各種アレルギー疾患、アトピー疾患、炎症疾患、皮膚疾患、胃酸過多及び神経系障害の予防または治療に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分としてイソオリエンチンを含有する、過剰のヒスタミンにより誘発される疾患の予防及び治療用薬学組成物、過剰のヒスタミンにより誘発される疾患の予防または治療用薬剤の製造のためのイソオリエンチンの使用、及び治療有効量のイソオリエンチンを対象に投与し、対象における過剰のヒスタミンにより誘発される疾患を予防または治療する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒスタミンは、血液と様々な種類の組織に存在する生理活性物質である。構造的に、ヒスタミンは、イミダゾール環とアミン基が2個のメチレン基に結合しているイミダゾールエチルアミンとも呼ばれている。ヒスタミンは、動物のほとんど全ての組織から発見され、様々な種類の毒素、細菌または植物にも存在し、皮膚、気管支、腸粘膜などに豊富に含まれていている。血液では、好塩基球(basophil)にヒスタミンが多く含まれていている。ヒスタミンを含有したこれらの細胞は、L−ヒスチジンデカルボキシラーゼ(L-histidine decarboxylase)によってヒスチジン(histidine)からヒスタミンを合成できる。また、表皮、胃粘膜、中枢神経系の神経細胞等の非肥満細胞でもヒスタミンを合成できる。
【0003】
ヒスタミンの体内代謝は、ヒトの場合、2種類の経路で代謝される。
主な経路は、イミダゾール環が、N−メチルトランスフェラーゼ(N-methyltransferase)によってN−メチルヒスタミンに転換された後、当該N−メチルヒスタミンがアモノアミンオキシダーゼ(amonoamine oxidase)によってN−メチルイミダゾール酢酸(N-methylimidazole acetic acid)に転換される。
他の経路は、ヒスタミンが、非特異性ジアミンオキシダーゼによって酸化的に脱アミン化され、ヒスタミンの代謝産物は活性がほとんどなく、尿で排泄される。
【0004】
ヒスタミンは、アレルギー誘発、胃酸分泌、及び中枢神経系での神経刺激伝達物質として作用すると知られている(「Corrado ME et al., Arzneimittelforschung, 54(10) 660-5, 2004」、「Salmun L.M., Expert Opin Investig Drugs, 11(2) 259-73, 2002」、「Scannell RT et al., Mini Rev Med Chem., 4(9) 923-33, 2004」、「Kapp A et al., J Drugs Dermatol., 3(6) 632-9, 2004」及び「Orzechowski RF et al., Eur J Pharmacol., 506(3) 257-64, 2005」を参照されたい)。
【0005】
第一に、アレルギー反応でのヒスタミンの役割を見ると、抗原に曝されると抗体(IgE)が生成され、その後、肥満細胞と好塩基球の表面に取り付き、膜のリン酸化過程を介してヒスタミンの遊離を引き起こす。ヒスタミンは、完成形で肥満細胞に保存されているので、肥満細胞表面で抗原がIgE抗体と相互作用するとき、遊離される。ホスホリパーゼAも活性化され、血小板活性因子(PAF)、又はプロスタグランジン、ロイコトリエンDなどのようなアラキドン酸の代謝物がヒスタミンと共に生成され、遊離される。
【0006】
第二に、胃酸分泌は、迷走神経やガストリンによって亢進されるが、ヒスタミンが最も重要な胃酸分泌調節物質である。H受容体の阻害薬剤を使用すれば、ヒスタミンによる酸分泌はもちろん、アセチルコリンまたはガストリンによる酸分泌も阻害される。従って、ヒスタミンは、生理的な酸分泌機構の最終の媒介物質として機能していると考えられる。
【0007】
最後に、中枢神経でのヒスタミンの役割を見ると、ヒスタミンは神経刺激伝達物質として作用する。H受容体が、視床(thalamus)、視床下部(hypothalamus)、小脳及び前脳に高い濃度で分布していると知られている。これらの神経細胞では、体温調節、抗利尿ホルモン(ADH)の分泌、血圧調節、飲水などを調節し、これらはHとH受容体によって媒介される。
【0008】
上述のような作用をするヒスタミンは、炎症やアレルギー反応だけでなく、各種薬剤によって肥満細胞から遊離される。治療薬剤中には、モルヒネ、コデイン、アトロピンなど各種アルカロイド、抗生物質、ツボクラリン、スクシニルコリン、放射線造影剤及びデキストラン、ポリビニルピロリドンなどの血漿膨脹剤(plasma expander)等が、ヒスタミンを遊離させる。
【0009】
ヒスタミンの遊離は、アドレナリン作動薬のようなcAMPを増加させる薬剤、エステラーゼ抑制物質、エネルギー産生の酵素抑制物質(フッ素)及びキモトリプシン抑制物質などによって抑制される。クロモグリク酸ナトリウムは、肥満細胞の細胞膜を安定化させて、気管支粘膜でヒスタミンとロイコトリエンDの遊離を抑制するので、気管支喘息の発作を予防する目的に利用される。
【0010】
従って、ヒスタミンが、アレルギー反応の一次的要素(primary mediator)であり、喘息(asthma)、鼻炎(rhinitis)、及びじんま疹(urticaria)、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis)のような皮膚疾患に単独または他の因子と共に作用する(「Scannell RT et al., Mini Rev Med Chem., 4(9) 923-33, 2004」、「Kapp A et al., J Drugs Dermatol., 3(6) 632-9, 2004」及び「Imaizumi A et al., J Dermatol Sci., 33(1) 23-9, 2003」を参照されたい) 。ヒスタミンはまた、風邪、吐き気と嘔吐、胃酸過多、胃食道逆流疾患、十二指腸潰瘍、炎症、並びに過敏症(アナフィラキシー)と関連する低体温及び低血圧に影響を及す(「Latsen JS., Pharmacotheraphy, 21: 28S-33S, 2001」、「Leurs R., Clin Exp Allergy 32(4) 489-98, 2002」及び「Makabe-Kobayashi Y et al., J Allergy Clin Immunol., 110(2) 298-303, 2002」を参照されたい)。このような疾患を予防治療するために、ジフェンヒドラミン、トリペレナミン、クロルフェニラミン、メクリジン、プロメタジン、アステミゾールなどの多くの薬剤が、開発されており、最近では、神経保護(認知症)及び認知能向上に役立つ薬剤が報告された(「Bachurin S et al., Ann NY Acad Sci., 939: 424-35, 2001」及び「Nakazato E. et al., Life Sci., 67(10) 1139-47, 2000」を参照されたい)。
【0011】
そこで、本発明者らは、天然物を用いて抗ヒスタミン活性のある物質を見出すため鋭意研究を続けた。その結果、アロエ、タケ、イネなどが抗ヒスタミン活性を有していることを確認し、これらの天然物質から活性物質を分離し、そしてイソオリエンチンであることを確認し、本発明の完成に至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、天然物由来のイソオリエンチンを含有する、過剰のヒスタミンによる生理的変化または機能異常による疾患の予防または治療用薬学組成物を提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、過剰のヒスタミンによる生理的変化または機能異常による疾患の予防または治療用薬剤の製造のための天然物由来のイソオリエンチンの使用を提供することにある。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、治療有効量の天然物由来のイソオリエンチンを対象に投与し、過剰のヒスタミンによる生理的変化または機能異常による疾患を予防または治療する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明は有効成分として天然物由来のイソオリエンチンを含む、過剰のヒスタミンによる生理的変化または機能異常による疾患を予防または治療するための薬学組成物を提供する。
【0016】
本発明は、また、過剰のヒスタミンによる生理的変化または機能異常による疾患の予防または治療用薬剤の製造のための天然物由来のイソオリエンチンの使用を提供する。
【0017】
本発明は、また、治療有効量の天然物由来のイソオリエンチンを対象に投与し、過剰のヒスタミンによる生理的変化または機能異常による疾患を予防または治療する方法を提供する。
【0018】
本発明において、「過剰のヒスタミンによる生理的変化または機能異常による疾患」は、アレルギー疾患、喘息、鼻炎、アトピー疾患、皮膚疾患、風邪、胃酸過多、胃食道逆流疾患、十二指腸潰瘍、炎症及び神経系障害を意味し、アトピー性皮膚炎、じんま疹、喘息、認知症などを含む。
【0019】
本発明において、「アレルギー疾患」は、じんま疹、吐き気、嘔吐、アトピー性皮膚炎、過敏症、喘息、鼻炎などを意味し、「神経系障害」は、認知症、認知能減退などを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明において、上記イソオリエンチンを含む組成物は、特にアロエ、タケまたはイネ抽出物が好ましい。
イソオリエンチンを含有するアロエ、タケまたはイネ抽出物は、これらに限定されないが、水、若しくはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのC1−4アルコール、又はこれらの混合溶媒での抽出物が好ましい。特に、イソオリエンチンを含有するアロエ抽出物は、30〜80%のメタノールまたはエタノールで抽出して得られるものが好ましい。イソオリエンチンを含有するタケ抽出物は、タケを水で抽出して得られた乾燥物をメタノールまたはエタノールで再抽出して得られるものが好ましい。上記抽出物は、総抽出物及びその画分物を含む。更に、上記イソオリエンチンを含有するアロエ抽出物は、これに限定されないが、アロエの外皮から得られるものが好ましい。
【0021】
本発明の組成物は、薬剤学的分野で公知の方法により製剤化することができ、抽出物自体または薬剤学的に許容される担体、賦形剤などと混合し、通常の薬学的製剤、例えば、ドリンク剤のような液剤、シロップ剤、カプセル剤、粒剤、錠剤、粉末、ピル(丸)、軟膏、エマルジョン、ゲル、クリームなどのような皮膚外用剤などに製剤化することができ、そしてこれらは経口または非経口で投与できる。本発明の組成物は、即効性のためにカプセル剤、錠剤、ドリンク剤で、食前または食後に経口投与することが好ましい。
【0022】
本発明の組成物を含むカプセル剤、錠剤、粉末、粒剤、液剤、ピル、ゲルなどは、医薬品または健康機能食品として使用することが好ましい。本発明で使われる「健康機能食品」は、人体に有用な機能性を有する原料や成分を用いて、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、液状、ピル、ゲルなどの形態に製造加工した食品をいう。
【0023】
本発明の組成物は、体内で活性成分の吸収度、排泄速度、患者の年齢及び体重、性別及び状態、治療する疾患の重症度などによって適宜に投与されるが、一般的に、成人に1日あたり0.01〜500mg/kg、好ましくは0.1〜200mg/kgで、1日に1〜3回投与することが好ましい。
【0024】
以下に、本発明を下記の実施例及び実験例によってさらに具体的に説明するが、本発明の範囲がいかなる方法によっても限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
イソオリエンチンの抽出及び同定
1.抗ヒスタミン活性成分の分離
本発明者らは、天然物の抽出物中から最高の収率及び活性を有する画分物を選択し、当該画分物から抗ヒスタミン活性成分を分離するべく試みた。天然物の抽出物を減圧下に濃縮した後、少量の水によく溶解した。その後、抽出物を同量のCHCl溶媒で抽出分画を行い、非極性物質を除去し、更に同量のBuOH溶媒で抽出分画をした。所望のイソオリエンチンが、BuOH層にあるため、BuOH層を減圧下で濃縮した後、シリカカラムで処理した。この時、使用した溶媒は、CHCl、MeOH及び水の混合溶媒(C:M:W=7:3:1〜6:4:1)を使用した。
【0026】
シリカカラム画分物中で、イソオリエンチンが含まれている画分物を減圧下で濃縮した後、セファデックス(Sephadex)LH20カラムで処理した。この時、使用した溶離溶媒は、100%のMeOHである。セファデックスLH20カラムの画分物中から、TLC及びHPLC分析を介してイソオリエンチンを得た。
【0027】
2.活性成分の確認
黄色粉末のC212211H−NMR(300MHz,d6−DMSO)及び13C−NMR(75MHz,d6−DMSO)のデータは、参考文献と比較した。「Biosci.Biotechnol.Biochem., 67(2), 410-414, 2003」を参照されたい。
【0028】
インビトロ分析を通じて、アロエ、イネ及びタケ画分から活性を追跡し、抗ヒスタミン活性を持つ化合物を分離した。分離された化合物の構造を、同定するためにNMR分光装置を用いた。H−NMRスペクトル(図1及び表1)にて、δ 13.64ppmで1個のプロトンが単一ピークで観察され、この領域に現れる殆どのピークは、水素結合により低磁場にシフトされた結果といえる。δ 7.47ppmで、隣接したδ 6.97ppmとオルト位結合によるダブレット(doublet)(J=8.3Hz)、δ7.45ppmとメタ位結合によるダブレット(J=2.2Hz)で観察された。さらに、δ 6.72ppmとδ 6.53ppmで、1個のプロトンが単一ピークでそれぞれ観察された。δ 4.65ppmでは、典型的なアノマープロトンが、ダブレットとしてJ=9.8Hzの結合定数値を有しており、グルコースが結合していることが観察された。
【0029】
13C−NMRスペクトル(図2)では、総計21個の炭素が観察されており、特に、δ 182.1ppmでカルボニル炭素、δ 73.5ppmでアノマー炭素が観察された。ネガティブHPLC ESI−MSスペクトル(図3)で、m/z:487で親イオンピーク(parent ion peak)が観察されたので、分子量はm/z:488として予想された。
【0030】
【表1】

【0031】
以上の機器分析結果と参考文献(Abdul Mun'IM, Osamu Negishi, and Testuo Ozawa.(2003), Antioxidative Compounds from Crotalaria sessiliflora., Biosci. Biotechnol. Biochem., 67(2), 410-414)に基づいて、 抽出物から単離した抗ヒスタミン活性を有する化合物を、イソオリエンチンとして同定した。
【実施例2】
【0032】
植物からイソオリエンチン含有植物の探索及び含量分析
上記実施例1で、イソオリエンチンが抗ヒスタミン活性を有することを確認し、出願人が保有する幾つかの植物の抽出物を対象にして分析を実施した結果、下記表2のような植物の抽出物及びそれらのイソオリエンチン含量の結果を得た。
【0033】
抽出物に対する分析のために使われたHPLCは、HITACHIシステム(ポンプ;L−7100、検出器;L−7455、インターフェース;D−7000、カラムオーブン;L−7300、自動試料採取装置(サンプラー);L−7200)を使用した。分析条件は、静止相でPhenomenex C18 4.6×250mmを使用し、移動相条件は、(A溶媒:アセトニトリル、B溶媒:0.1%のHPO水溶液)の勾配条件であり、流速は1.5mL/minで、総分析時間は85分に、カラムオーブンの温度は35℃に設定し、試料の濃度は50,000ppmに、注入量は10μLとし、UV検出器により330nmで検出した。
【0034】
【表2】

【実施例3】
【0035】
アロエからのイソオリエンチン高含有の画分物の製造
アロエベラの外皮1kgを、15Lの95%、80%、70%、60%、50%、40%または30%のエタノール水溶液で抽出した後、減圧下で蒸発させて、水和した抽出物を確保した。これら抽出物のイソオリエンチン含量を、HPLCにより実施例2と同じ分析方法で分析した。比較した結果、イソオリエンチン含量は、50%のエタノール抽出物で最高の含量を示した。
【0036】
【表3】

【実施例4】
【0037】
タケからのイソオリエンチン高含有の画分物の製造
タケ葉10kgを、水150Lで、80℃にて8時間抽出し、その後、減圧下で蒸発させて、抽出物680gを得た。水和した抽出物500gを、エタノール4Lで70℃にて2時間抽出し、室温に冷却した後、濾過し、そして濾過物を減圧下に蒸発させて、濃縮の抽出物127gを得た。濃縮抽出物100gに水800mLを加えて、80℃にて2時間抽出し、その後、濾過して得られた濾過物を凍結乾燥して、水和した抽出物61gを得た。
HPLCによって実施例2の分析方法で分析した結果、イソオリエンチン含量は3.2%であった。
【0038】
(実験例1.イソオリエンチンのヒスタミン遊離抑制活性の測定)
1.テンジクネズミ肺の肥満細胞の精製
8匹のテンジクネズミ(雌性、200g)の肺組織(3g/1匹)を分離し、脂肪組織と気管支、血液を除去した後、Ca2+、Mg2+及び0.1%のゼラチンが含まれたタイロード緩衝液(TGCMバッファー)を使用し、15、15及び25分間の3回、酵素処理(5mg/mLコラゲナーゼ、1.8unit/27μLエラスターゼ)した。各酵素処理に、ナイロンメッシュと金属メッシュ(100μm)で濾過した後、遠心分離した(単分散肥満細胞という)。ペレットを、Ca2+、Mg2+フリー、0.1%のゼラチン含有緩衝液(TGバッファー)16mLに懸濁し、ラフパーコール(1.041mg/mL密度)で処理し、1,400rpmで25分間遠心分離してペレットを得た。また、TGバッファー8mLに細胞を懸濁し、不連続パーコール(1.06〜1.10mg/mL密度)で処理し、1,400rpmで25分間遠心分離して、様々な細胞層に分離した。その中、第3層又は第4層に、肥満細胞が主に存在するので、これらの層の細胞を得て、TGCMバッファーで2回洗浄した。全体の細胞及び肥満細胞は、それぞれトリパンブルー及びアルシアンブルー染色し、顕微鏡で細胞数を測定して、肥満細胞の純粋度(purity)を測定して約80〜90%を得た。
【0039】
2.抗原/抗体反応によって活性化された肥満細胞から遊離されたヒスタミンの試験
肥満細胞(4×10細胞)にテンジクネズミIgG1抗体(抗OVAの1mL/10細胞)を加え、37℃で45分間反応させ、その後、肥満細胞膜に結合しない抗OVA抗体を除去するために、TGCM緩衝液で洗浄した。細胞を1mLのTGCMに懸濁させた後、各々の濃度の薬剤(検索しようとする物質)で5分間処置した。1.0μg/mLのOVA(オボアルブミン)で感作し、10分間反応させた後、氷で冷却し、遠心分離し、その後、上清でヒスタミンを測定した。
【0040】
各々のサンプルに遊離されたヒスタミン量は、Siraganianの方法(1)を変形した、自動連続フロー抽出法及び蛍光分析計(Astoria analyzer series 300, Astoria-pacific international, Oragon, USA)を使用して測定した。1Nの塩酸、0.73Mのリン酸、5Nの水酸化ナトリウム、1Nの水酸化ナトリウム、生理食塩水希釈剤及びサンプラー洗浄液、o−フタルアルデヒド溶液を準備し、分析計に連結されたチューブを接続した後、ヒスタミンストック溶液を20ng、10ng、5ng、3ng、1ngに希釈し、標準曲線の濃度依存性の結果を得た。2%の過塩素酸で各々のサンプルを希釈し、ヒスタミン量を測定した。各々のサンプルに含まれるヒスタミンの量は、使われた細胞全体に含まれるヒスタミン量に対する百分率として下記のように計算した。
*ヒスタミン量=(サンプルのヒスタミン遊離量−自然遊離量)/(全体ヒスタミン
遊離量−自然遊離量)×100
【0041】
上記測定結果を、下記表4に示した。天然物から単離したイソオリエンチンを利用して抗ヒスタミン活性を検索したところ、イソオリエンチンは肥満細胞でヒスタミンの遊離を濃度依存性で抑制しており、IC50値は30μgであることが観察された。
【0042】
【表4】

【0043】
:テンジクネズミの肥満細胞が分離され、酵素消化、及びラフパーコール及び不連続パーコールの密度勾配法で精製した。肥満細胞(4×10細胞)が、抗OVA抗体で受動感作され、1.0μg/mLのOVAによって誘発(チャレンジ)された。抗原誘発(チャレンジ)の5分前に、イソオリエンチンを加えた。上清のヒスタミンを、蛍光分析計により測定した。
:遊離されたヒスタミン量は、全体ヒスタミン量の百分率として示した。丸括弧の値は、UG4−92前処理で引き起こされた減少百分率として示した。
:p<0.05;**:p<0.01;***:p<0.001、各々の値は、OVA単独と比較したときの値
( ):抑制率%
【0044】
製剤例1:液剤の製造
イソオリエンチン 1g
砂糖 10g
異性化糖 10g
レモン香 適量
精製水を加えた全体量 100mL
上記の成分を通常の液剤の製造方法に従い混合し、滅菌させて液剤を製造した。
【0045】
製剤例2:カプセル剤の製造
イソオリエンチン 500mg
ラクトース 50mg
デンプン 50mg
タルク 2mg
ステアリン酸マグネシウム 適量
上記の成分を混合し、通常のカプセル剤の製造方法に従いゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によるイソオリエンチンを含む組成物、イソオリエンチンの使用及びイソオリエンチンを用いる予防または治療方法は、優れたヒスタミン抑制効果を示すので、各種アレルギー疾患、アトピー疾患、皮膚疾患、風邪、胃酸過多及び神経系障害の予防または治療に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、イソオリエンチンのH−NMRスペクトルである。
【図2】図2は、イソオリエンチンの13C−NMRスペクトルである。
【図3】図3は、イソオリエンチンのネガティブHPLC ESI−MSスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として天然物由来のイソオリエンチン(isoorientin)を含有する、過剰のヒスタミンによる生理的変化または機能異常による疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項2】
過剰のヒスタミンによる生理的変化または機能異常による疾患が、アレルギー疾患、アトピー疾患、皮膚疾患、風邪、胃酸過多または神経系障害である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
天然物由来のイソオリエンチンを含有する組成物が、アロエ、タケまたはイネ抽出物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
イソオリエンチンを含有するアロエ抽出物が、30〜80%のメタノールまたはエタノールで抽出して得られるものである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
イソオリエンチンを含有するタケ抽出物が、タケを水で抽出して得られた乾燥物を、メタノールまたはエタノールで再抽出して得られる乾燥した抽出物である、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
イソオリエンチンを含有するアロエ抽出物が、アロエの外皮から得られるものである、請求項3又は4に記載の組成物。
【請求項7】
過剰のヒスタミンによる生理的変化または機能異常による疾患の、予防または治療用薬剤の製造のための、天然物由来のイソオリエンチンの使用。
【請求項8】
過剰のヒスタミンによる生理的変化または機能異常による疾患が、アレルギー疾患、アトピー疾患、皮膚疾患、風邪、胃酸過多または神経系障害である、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
天然物由来のイソオリエンチンを含有する組成物が、アロエ、タケまたはイネ抽出物である、請求項7に記載の使用。
【請求項10】
イソオリエンチンを含有するアロエ抽出物が、30〜80%のメタノールまたはエタノールで抽出して得られるものである、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
イソオリエンチンを含有するタケ抽出物が、タケを水で抽出して得られた乾燥物を、メタノールまたはエタノールで再抽出して得られる乾燥した抽出物である、請求項9に記載の使用。
【請求項12】
イソオリエンチンを含有するアロエ抽出物が、アロエの外皮から得られるものである、請求項9又は10に記載の使用。
【請求項13】
治療有効量の天然物由来のイソオリエンチンを対象に投与し、対象において過剰のヒスタミンによる生理的変化または機能異常による疾患を予防または治療する方法。
【請求項14】
過剰のヒスタミンによる生理的変化または機能異常による疾患が、アレルギー疾患、アトピー疾患、皮膚疾患、風邪、胃酸過多または神経系障害である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
天然物由来のイソオリエンチンを含有する組成物が、アロエ、タケまたはイネ抽出物である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
イソオリエンチンを含有するアロエ抽出物が、30〜80%のメタノールまたはエタノールで抽出して得られるものである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
イソオリエンチンを含有するタケ抽出物が、タケを水で抽出して得られた乾燥物を、メタノールまたはエタノールで再抽出して得られる乾燥した抽出物である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
イソオリエンチンを含有するアロエ抽出物が、アロエの外皮から得られるものである、請求項15又は16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−533131(P2008−533131A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501819(P2008−501819)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【国際出願番号】PCT/KR2006/000984
【国際公開番号】WO2006/098603
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(505219794)ユニジェン インク. (8)
【Fターム(参考)】