説明

イソシアネートを第1アミンのホスゲン化によって製造するための方法および混合ユニット

【課題】品質および速度の点で幅広く異なる粘度の2つの流動可能な物質のために十分な混合を保証するような混合機型反応器を提供する。
【解決手段】分配室と混合室と後面、前面および後面から前面を横断する中心の入口を有する前板と第1の物質を導入するための分配室に隣接したハウジング中の入口と第1の物質を入口から前板の中心の入口へ輸送する手段と第2の物質を分配室中に導入するためのハウジング中の第2の入口と回転対称の形式で前板中に配置されており、かつ第1の物質が分配室から混合室へ輸送される、前板中の複数の平行な入口開口と前板の中心の入口から外向きに半径方向に広がり、かつ第1の物質が輸送手段から混合室へ輸送される複数のチャンネルと前板中の複数の平行な入口開口に対応する複数のピンと混合された物質が除去される混合室中の出口とを有する実質的に回転対称のハウジングを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2007年12月19日付けで出願されたドイツ連邦共和国特許出願第102007061688.2号の35U.S.C.§119(a)−(d)の下での優先権の権利を主張するものである。
【0002】
本発明は、第1アミンのホスゲン化によるイソシアネートの製造法ならびにエダクトのホスゲンおよび第1アミンを含む2つ以上の異なる物質の混合に適した回転子−固定子型(rotor-stator type)の混合ユニットに関する。この回転子−固定子型の混合ユニットは、混合機型反応器であり、著しい粘度差を有することができる少なくとも2つの流動可能な物質の混合、該物質の反応の開始および実施に適している。この混合機型反応器は、モノアミンまたはポリアミンと有機溶剤中に溶解されたホスゲンとの反応によるモノイソシアネートまたはポリイソシアネートの製造に特に好適である。
【背景技術】
【0003】
回転子−固定子型混合機(rotor-stator mixers)は、一般に混合部材を備えた少なくとも1個の回転子と流れを破壊する部材を装備した回転子を包囲する固定子とを有する。このような回転子−固定子型混合機(rotor-stator mixers)は、一般に公知である。本明細書中で、回転子は、高速回転で回転し、一方、固定子は、固定された位置で留まる。回転子が運動する場合、回転子と固定子との間の環状間隙中の液体は、著しい乱流で混合される。本明細書中で、非混和性液体の場合、2つの液体の一方は、高いエネルギー入力によって他方の中で微細に分散され、形成された分散液は、回転速度が増加する(即ち、よりっそう高速になる)とよりいっそう微細に分散され、それ故に、エネルギー入力は、よりいっそう高くなる。
【0004】
回転子の高速回転により、大量のエネルギーが液体中に導入され、このエネルギーは、混合中に熱に変換される。結果として、液体混合物中の温度の増加が混合操作の経過中に起こる。
【0005】
例えば、モノアミンまたはポリアミンとホスゲンとの反応によるモノイソシアネートまたはポリイソシアネートの製造を急速に開始させる反応を、実質的に回転対称のハウジングを有する回転子−固定子型(rotor-stator type)の混合機反応器(および場合によっては付加的なその後の反応装置)中で実施することは、公知であり、この場合このハウジングは、少なくとも2つの物質のための別々の入口および出口を備えた実質的に回転対称の混合室を有し、第1の物質のための入口は、混合室の軸線方向に備えられており、少なくとも第2の物質のための入口は、混合室の軸線方向に対して回転対称に配置された複数の開口の形に構成されている。例えば、欧州特許第291819号明細書B1(米国特許第4851571号明細書に対応すると思われる)および欧州特許第291820号明細書B1(米国特許第4915509号明細書に対応する)、参照。
【0006】
公知技術水準によれば、混合室の軸線に対して回転対称に配置された開口の形で構成されているそれぞれの入口が割り当てられている混合ユニットは、軸線方向にずれていてよいピンを有する。ピンを軸線方向にずらすことによって、開口には、ピンが貫入することができ、こうして存在する任意の付着物は除去される。供給管路内の圧力が増加する場合にまたは周期的に、それぞれピンを入口開口7内にずらすことは、好ましい。例えば、欧州特許第830894号明細書B1(米国特許第5931379号明細書に対応する)参照。
【0007】
同様に、例えばモノアミンまたはポリアミンとホスゲンとの反応を、実質的に回転対称のハウジングを有する混合ユニット中で実施することは、公知であり、この場合このハウジングは、少なくとも2つの物質のための別々の入口および1個の出口を備えた実質的に回転対称の混合室を有し、第1の物質のための入口は、混合室の軸線方向に備えられており、少なくとも第2の物質のための入口は、混合室の軸線方向に対して半径方向または横方向にあり、かつ混合室は、移動部分を有していない。例えば、欧州特許第322647号明細書B1(米国特許第5117048号明細書に対応する)およびWO 2002/002217A1参照。
【0008】
更に、例えばモノアミンまたはポリアミンとホスゲンとの反応を、実質的に回転対称のハウジングを有する混合ユニット中で実施することは、公知であり、この場合このハウジングは、少なくとも2つの物質のための別々の入口および1個の出口を備えた実質的に回転対称の混合室を有し、少なくとも双方の入口は、混合室の軸線方向に対して半径方向に配置されている。例えば、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10034621号明細書A1、米国特許第4886368号明細書およびドイツ連邦共和国特許第4220239号明細書C2参照。
【0009】
このような装置中で調製されるモノイソシアネートまたはポリイソシアネートの品質は、少なくとも2つの流動可能な物質の品質および混合速度に決定的に依存する。本明細書中で、混合機型反応器による均一な質量流の維持は、殊に決定的な役を演じる。それというのも、それによって、未反応の出発物質の物質流中への既に互いに反応した物質の逆混合は、回避されることができるからである。
【0010】
混合装置の品質の一般的な判断基準は、特殊な装置で達成されうる混合時間にある。急速な反応の開始、例えばモノアミンまたはポリアミンと有機溶剤中に溶解されたホスゲンとの反応によるモノイソシアネートまたはポリイソシアネートの製造に使用される混合室の混合時間は、通常、0.0001秒〜5秒、有利に0.0005秒〜4秒、特に有利に0.001秒〜3秒である(例えば、ドイツ連邦共和国特許出願公開第102005014846号明細書A1参照)。本明細書中で使用される混合時間は、混合操作の開始から得られた混合物の流体要素の97.5%が特殊な混合物画分を達成するまでの平均時間であると理解すべきである。この混合物画分は、完全な混合物の状態と思われる場合に得られた混合物の理論的な最終値から2.5%を超えてずれてはならない。混合物の破壊の概念は、例えば、J. Wamatz, U. Maas, R.W. Dobble: Combustion, Springer Verlag, Berlin Heidelberg New York, 2006, 第4版, p. 136-137中に説明されている。
【0011】
十分な混合の品質および逆混合を阻止する完璧さは、具体的に幾つかの判断基準から見極めることができる。
【0012】
混合が不適当である場合には、少なくとも第2の物質のための入口開口7内で時間が経つにつれて閉塞するまでのケーキングが起こり、したがって全ての開口を貫流する材料の均一な導入は、妨害される。これは、混合機型反応器による流れの性質を損ない、したがって逆混合がますます発生する。
【0013】
ナノメートルないしマイクロメートルの範囲内であるべきである、反応中に形成されるアミンヒドロクロリド粒子およびカルバモイルクロリド粒子の寸法および寸法分布は、徹底した混合品質のためのもう1つの判断基準である。比較的大量の前記固体の形成は、回避されるべきである。それというのも、大きな凝集したアミンヒドロクロリド粒子の形成は、刊行物中に記載されているようにホスゲン化が極めて遅いこととに結果として起こりうるからである。(例えば、WO 2004/056756A1参照)。
【0014】
また、得られたモノイソシアネートまたはポリイソシアネートの色または粘度は、徹底した混合品質のもう1つの判断基準である。それというのも、全ての副反応が完全に抑制された場合には、無色の低粘度の生成物を得ることができるからである。
【0015】
得られた生成物中の遊離イソシアネート基(NCO価)の含量は、徹底した混合品質のもう1つの判断基準である。それというのも、十分な混合が不適当である場合には、含量は低いままであり、逆混合が存在する場合には、液滴が生じるからである。遊離イソシアネート基の含量は、簡単な方法で所謂NCO価として測定されることができる。NCO価は、相応する尿素を生じるためのイソシアネートと過剰量のジブチルアミンとの反応および塩酸塩標準溶液での未使用のアミンの逆滴定によって測定される。高いNCO価は、工業的に適したモノイソシアネートおよびポリイソシアネートのために好ましい。
【0016】
回転子−固定子型の公知の混合ユニットにおいて、混合は、計量された第1の物質が第1の回転子ディスクの遠心分離形のために軸線方向に外向きに流れ、それによって導入される第2の物質で充填され、第2の物質流が互いに遠心分離力によって混合されるような方法によって実施される。
【0017】
回転子−固定子型の混合ユニットを用いてのモノアミンまたはポリアミンと有機溶剤中に溶解されたホスゲンとの反応によるモノイソシアネートまたはポリイソシアネートの製造において、ホスゲン溶液は、有利に混合室の軸線に対して軸線方向に計量され、アミン溶液は、回転対称に配置された入口開口7によって計量される。これは、アミン溶液の入口が閉塞に対してよりいっそう敏感であり、それ故にアミン溶液が有利に入口開口7によって計量され、それぞれの開口には、付着物を除去することができるピンが割り当てられているという事実に由来する。
【0018】
回転子−固定子型の公知の混合機型反応器の欠点は、よりいっそう低い粘度を有する物質が混合室の軸線に沿って軸線方向に計量される場合に、粘度比が0.5未満であるかまたは2を上廻る粘度を有する2つの溶液がもはや適度に混合されることができないことである。それというのも、第1の回転子ディスクによって移相される場合の混合室の遠心力は、第2の物質が回転対称に配置された開口から混合室の出口の方向に現れる場合に、よりいっそう高い粘度の第2の物質に取って代わるのにもはや十分ではないからである。結果として、逆混合が混合室内で起こり、これは、殊にハウジングの断面積を変える前板に対して、および固定子間のハウジング壁の内面に対して問題を生じる。この逆混合は、固体によるコーキングをまねき、かつ混合機型反応器から得られたモノイソシアネートまたはポリイソシアネート中の遊離イソシアネート基の低い含量をまねく。
【0019】
更に、回転子−固定子型の公知の混合機型反応器の欠点は、溶解された物質の濃度を所望のように選択することができないことである。不運なことに、公知の混合機型反応器において、よりいっそう高い粘度の溶液の濃度は、この溶液の粘度が少なくとも第2の溶液の粘度の2倍を上廻ってはならないという事実に制限されており、これは、殊に有機溶剤中のモノアミンまたはポリアミンとホスゲンとの反応によるモノイソシアネートまたはポリイソシアネートの製造においては欠点である。それというのも、ホスゲン溶液の粘度は異なるホスゲン濃度で僅かにのみ増加するが、モノアミン溶液またはポリアミン溶液の粘度は、溶液中に存在するモノアミンまたはポリアミンの濃度で著しく変化または変動するからである。従って、0℃で0〜80質量%の濃度範囲のモノクロロベンゼン(MCB)中のホスゲンの溶液の粘度は、0.5〜1.0mPa.sであり(0℃で粘度0.765mPa.sおよび密度1.27g/lおよび50質量%または56質量%)、一方、25℃で15〜65質量%の濃度範囲内のモノクロロベンゼン中のメチレンジフェニルジアミン(MDA)の溶液の粘度は、1〜200mPa.sである(第1表参照)。他面、溶液間の密度の差は、ごく僅かであり、混合作業を困難にするという効果を有しない。
【0020】
【表1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】欧州特許第291819号明細書B1(米国特許第4851571号明細書に対応すると思われる)
【特許文献2】欧州特許第291820号明細書B1(米国特許第4915509号明細書に対応する)
【特許文献3】欧州特許第830894号明細書B1(米国特許第5931379号明細書に対応する)
【特許文献4】欧州特許第322647号明細書B1(米国特許第5117048号明細書に対応する)
【特許文献5】WO 2002/002217A1
【特許文献6】ドイツ連邦共和国特許出願公開第10034621号明細書A1
【特許文献7】米国特許第4886368号明細書
【特許文献8】ドイツ連邦共和国特許第4220239号明細書C2
【特許文献9】ドイツ連邦共和国特許出願公開第102005014846号明細書A1
【特許文献10】WO 2004/056756A1
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】J. Wamatz, U. Maas, R.W. Dobble: Combustion, Springer Verlag, Berlin Heidelberg New York, 2006, 第4版, p. 136-137
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
従って、本発明の対象は、上記欠点を回避し、また、品質および速度の点で幅広く異なる粘度の2つの流動可能な物質のために十分な混合を保証するような混合機型反応器を提供することである。殊に、この混合機型反応器は、遊離イソシアネート基の高い含量を有するモノイソシアネートまたはポリイソシアネートを製造するための方法を可能にし、それ故に、高度に濃縮されたアミンおよびホスゲン溶液の使用を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、回転子−固定子型の混合機型反応器に関する。この混合機型反応器は、分配室と混合室と前面および後面を有する前板とを含む実質的に回転対称のハウジングおよび前面から後面へ横切る中心の入口を有し、この前板は、分配室と混合室との間でハウジングの断面積を変動させる。前板の後面は、分配室に隣接しており、前板の前面は、混合室に隣接している。更に、少なくとも2つの異なる物質のための混合室中への別々の入口および混合室からの出口が存在し、この出口によって、混合物または生成物は、混合室から流出する。第1の物質を導入するための分配室中へのハウジング中の入口も存在し、この場合この第1の物質は、混合室の回転軸線に沿ってこの第1の物質を中心の入口へ輸送するための手段に流入する。また、ハウジングは、第2の物質を分配室中へ導入するための分配室中への第2の入口を有する。
【0025】
2つのチャンバー間のハウジングの断面積を変動させる前板は、複数の平行な入口開口7(この場合、この開口は、前板の後面から前面を横断している)を含み、この場合この入口開口7は、中心の入口の周囲に回転対称の形式で配置されている。第2の物質が分配室から混合室へ輸送されることは、前記の入口開口7を通して行なわれる。更に、前板は、前板の中心の入口から外向きに半径方向に広がる複数のチャンネルを有し、このチャンネルを通して、第1の物質は、前板の中心の入口から混合室中へ流れる。前記のチャンネルは、好ましくは第2の物質のための複数の平行な入口開口7と交互に対称的に配置されている。また、前板中の平行な入口開口7の数に対応する複数のピンが存在し、これらのピンは、好ましくは個々の基盤上で軸方向にずれて置かれていてよい。
【0026】
前板の中心の入口は、好ましくは、第1の物質がこの中心の入口に侵入する際に回転軸線に沿って流れるように回転軸線内に位置している。
【0027】
本発明による混合機型反応器は、少なくとも2つの流動可能な物質の混合および該物質の反応の実施または開始に適している。この混合機型反応器は、当該混合機型反応器中への侵入の際に第1の物質の粘度と少なくとも第2の物質の粘度との比が0.5を下廻るかまたは2を上廻る、少なくとも2つの流動可能な物質、懸濁液または溶液の混合に使用され、この場合粘度の測定には、DIN 53015によるHaake社からのHoppler落球式粘度計が使用される。この混合機型反応器は、混合およびホスゲン反応の実施または開始に特に好適であり、この場合、溶剤中に溶解されたホスゲンは、第1の物質として使用され、第2アミンの溶液は、第2の物質として使用される。
【0028】
前板の前面には、複数のチャンネルが存在する。好ましくは、前記チャンネルは、前板中に存在する中心の入口から外向きに半径方向に導かれ、この入口を通して第1の物質は、この中心の入口を通して前板中に走る、混合室の回転軸線に沿って混合室中に侵入する。前記チャンネルは、好ましくは、回転軸線から最も離れて存在する少なくとも第2の物質のための入口開口7の最も外側の点と回転軸線から等距離にある点で開口する。前記チャンネルは、前板中の凹所または結合されたせき板として構成されていてよく、多種多様の形状を有することができる。換言すれば、前記チャンネルは、例えば三角形、矩形、半円形または楕円形の断面の形状を有することができる。少なくとも前記チャンネルは、少なくとも開始時に、即ち第1の物質流のための中心の入口に物理的に隣接した点および少なくとも端部で、即ち第1の物質流のための中心の入口から物理的に最も離れた点または部位で開いている。上記したように、1つの好ましい実施態様において、それぞれの前記チャンネルの端部も最も遠くに外向きに存在する第2の流れのための入口開口7の最も外側の点と回転軸線から等距離にある点または部位で開いている。前記チャンネルの介在する領域は、開いていてもよいし、閉鎖されていてもよい。閉鎖された場合、前記チャンネルは、混合室の方向に延在する被覆(例えば、板)によって遮蔽され、前板の平面と平行な流れ方向でのみ開く。従って、第1の物質は、中心の入口を通してチャンネル中に流入し、チャンネルから流出し、かつ混合室中に流入する。
【0029】
1つの好ましい実施態様において、前記チャンネルは、好ましくは、介在する領域内で、即ちチャンネルの開始部かまたはチャンネルの開始部を僅かに越えてチャンネルの端部に隣接した(かまたは該端部の僅かに前方の)点に到るまで閉鎖されているかまたは遮蔽されている。それというのも、さらに、混合室内で第2の物質の混合は、よりいっそう急速に、よりいっそう良好に行なわれるからである。前記チャンネルは、好ましくは、長さの5%〜95%に亘って、よりいっそう好ましくは長さの20%〜90%に亘って、最も好ましくは長さの40%〜85%に亘って閉鎖されているかまたは遮蔽されている。本発明によれば、前記の上部範囲と前記の下部範囲の全部を含めて任意の組合せが使用されてよい。別の好ましい実施態様において、被覆は、既に、第1の物質が必然的にチャンネルを貫流しなければならず、次に第1の流れのためのチャンネルの開口を通じてチャンネルを離れ、混合室中に流入し、かつ混合室中で第2の物質と混合されるように、第1の物質のための中心の入口のレベルでチャンネルを覆う。
【0030】
本発明によれば、任意の数のチャンネルを使用することができるが、混合室の方向で前板の前面内または前面上に2〜48個のチャンネルが存在することは、好ましい。更に、混合機型反応器が前板中に2〜48個の開口(即ち、入口開口7)を有することは、好ましく、この場合この開口を通じて第2の物質流は、分配室から流出し、混合室に流入する。第2の物質流のための前記開口(即ち、入口開口7)は、好ましくは回転軸線の周囲の1つ、2つまたは3つの同心円上に配置されている。しかし、また、本発明の範囲内で、入口開口7は、回転軸線の周囲のなお多くの同心円上に配置されていてよい。
【0031】
本発明による混合機型反応器は、モノイソシアネートまたはポリイソシアネートを製造するためのホスゲン化反応器として特に好適である。このホスゲン化反応において、有機溶剤中に溶解されたホスゲンは、第1の物質として使用され、溶剤中に場合によっては溶解された第1モノアミンまたはポリアミンは、少なくとも第2の物質として使用される。
【0032】
また、本発明は、第1アミンのホスゲン化によって(モノーまたはポリ−)イソシアネートを製造するための方法に関し、この場合第1アミンとホスゲンは、本明細書中に記載されたような混合機型反応器中で混合され、反応される。この混合機型反応器を使用する方法において、溶剤中に溶解されたホスゲンを第1の物質として使用し、第1アミンの溶液を第2の物質として使用することは、好ましい。混合機型反応器中への流入の際に第1の物質と第2の物質との粘度比は、有利に0.5未満である。本明細書中で、前記物質の粘度は、有利に、DIN 53015によるHaake社からのHoppler落球式粘度計を使用して測定される。
【0033】
適当な出発物質および反応条件は、例えば、それぞれ米国特許第4851571号明細書、米国特許第5117048号明細書および米国特許出願200060025556号に対応すると思われる欧州特許第291819号明細書B1、欧州特許第322647号明細書B1および欧州特許出願公開第1616857号明細書A1中に開示されている。
【0034】
本発明による混合機型反応器は、任意の望ましい第1モノアミンおよびポリアミンのホスゲン化、殊にポリウレタン化学の分野で通常公知でありかつ使用される有機ポリイソシアネートの製造に適している。これは、有機ポリイソシアネート、例えばジフェニルメタン系列(MDI、モノマーMDIおよび/またはポリマーMDI)のジイソシアネートおよびポリイソシアネート、トルエン−ジイソシアネート(TDI)、キシレン−ジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレン−ジイソシアネート(HDI)、イソホロン−ジイソシアネート(IPDI)またはナフタレン−ジイソシアネートを含む。本発明による方法に好ましい出発物質は、適当な溶剤中のホスゲンの3〜95質量%濃度、好ましくは20〜75質量%濃度の溶液、および適当な溶剤中のモノアミンまたはポリアミンの5〜95質量%濃度、好ましくは20〜70質量%濃度の溶液である。
【0035】
ホスゲンおよびアミン溶液の製造に適した溶剤は、反応条件下で不活性である任意の望ましい溶剤である。溶剤、例えばクロロベンゼン、オルト−ジクロロベンゼン、ジオキサン、トルエン、キシレン、塩化メチレン、ペルクロロエチレン、トリクロロフルオロメタンまたはブチルアセテートが適している。
【0036】
好ましくは、クロロベンゼンまたはオルト−クロロベンゼンが溶剤として使用される。溶剤は、純粋な形で使用されてもよいし、実施例により挙げられた溶剤の任意の望ましい混合物として使用されてもよい。同じ溶剤または溶剤混合物は、これが必ずしも必要でなくとも、アミン成分およびホスゲンのために有利に使用される。
【0037】
ホスゲン溶液およびアミン溶液は、混合機型反応器中で、1.1:1〜30:1、よりいっそう好ましくは1.25:1〜3:1のホスゲン:第1アミノ基のモル比が混合室の混合空間内に存在するような量で有利に使用される。
【0038】
使用されるホスゲン溶液およびアミン溶液は、混合機型反応器中への導入前に温度制御されることができる。ホスゲン溶液は、通常、−50℃〜+80℃、よりいっそう好ましくは−20℃〜+70℃の好ましい温度を有する。アミン溶液は、+25℃〜+160℃、よりいっそう好ましくは+40℃〜+140℃の好ましい温度で温度制御されることができる。アミン溶液の温度は、この温度が最も有利に+50℃〜+120℃であるように制御される。エダクト溶液の温度制御および計量は、有利に特殊な溶液の蒸気圧力を上廻る圧力レベルで実施される。ホスゲン溶液とアミン溶液は、それぞれ0℃〜+70℃および+80℃〜+120℃の温度で特に有利に使用される。本明細書中で、1〜70バール、有利に3〜45バールの絶対圧力は、使用されることができる。
【0039】
ホスゲン溶液とアミン溶液とを混合機型反応器中で混合するために、この混合機型反応器は、加熱されてもよく、絶縁されてもよく、冷却されてもよく、この場合、好ましくは、単に絶縁される。この絶縁は、刊行物に公知の種々の方法によって行なうことができ、混合ユニットを含むことができる。
【0040】
更に、本発明のよりいっそう詳細な記載は、図1および図2により提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】チャンネルを備えた前板を有する回転子−固定子型の本発明による混合機型反応器の断面を有する側面図である。
【図2】本発明による混合機型反応器の構成成分である前板の前面の前面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
参考のために、本発明の1つの実施態様が図1に混合機型反応器の断面図で略示されている。この混合機型反応器は、混合室2および分配室3を有するハウジング1を備えている。少なくとも第1の物質流4は、入口、有利に湾曲管5を介して軸方向に導入され、この第1の物質流は、横方向に分配室壁3の外壁中に流入し、前板23中の中心の入口(図1には、示されていない)を通じて混合室中に輸送される。第1の物質のための前板中のこの中心の入口は、この第1の物質が混合室2中に流入するように回転軸線22(虚構)内に配置されている。この中心の入口(図1には、示されていない)から、第1の物質は、チャンネル(図1には、示されていない)を経て前板23中に流入して第1の物質(図1には、示されていない)のためのチャンネル開口27にまで流れる。第2の物質流6は、入口を介して分配室3中に導入され、次に混合機型反応器の回転軸線22(虚構)に対して前面23内に同心的に配置されている複数の平行な入口開口7を介して混合室2中に流入する。混合室2は、有利に回転軸線22(虚構)上に配置された軸10を介して駆動される回転子部材8と、ハウジングに結合されている固定子部材9を含む(余談になるが、混合室2それ自体が実際に回転するのではなく、混合室2内の回転子部材8が軸10によって駆動されることに注目される)。混合物を環状チャンネル12を介して出口13中に輸送するランニングホイール11も有利に存在する。それぞれの入口開口7には、軸方向にずれていてよいピン15が割り当てられている。このピン15は、好ましくはキャリヤーリング17上に固定されている。キャリヤーリング17は、スペーサー片18を介してハンドホイール21により軸10を介して軸線方向にずれていてよい板19に結合されている。分配室3を通じてのこの軸10の通路は、ベローズ20により気密に封入されている。
【0043】
本発明によれば、ピン15の軸線方向のずれは、相応する入口開口7を通してそれぞれのピン15を押圧し、こうして入口開口7の周囲または入口開口7中で任意の固体または残存する他の残留物を清浄化しおよび/または立ち退かせる。
【0044】
図2は、図1に示された本発明による混合機型反応器の構成成分である前板23の前面を示す。前板23は、第1の物質流のための中心の入口26と、この第1の物質流を、複数の平行な入口開口7が少なくとも第2の流れのための回転軸線22からの距離と等距離だけ前板23の前面の中心の入口26から半径方向に通過させる複数のチャンネル24とを有する。チャンネル24は、例えば前板23中の凹所として構成されていてもよいし、前板23上の取付け物として構成されていてもよい。また、前記チャンネル24は、完全に開いているが、しかし、好ましくは、全長の5〜95%の範囲で被覆25によって混合室から完全に遮蔽されていてもよいし、部分的に遮蔽されていてもよい。更に、第1の物質流は、前板23の中心の入口26を通過し、場合によっては被覆25で覆われているチャンネル24を貫流し、さらにチャンネル開口27を通じてチャンネル24を離れ(または流出し)、混合室2(図2には、示されていない)中に流入する。好ましい実施態様(図2には、示されていない)において、被覆25は、既に第1の物質のための中心の入口26のレベルで、または該中心の入口26の点でチャンネル24を覆い、したがって第1の物質流は、必然的に該チャンネルを貫流しなければならず、次にチャンネル開口27を通じてチャンネルを離れ、混合室2(図2には、示されていない)中に流入する。
【0045】
本発明を、説明を目的として前記において詳説したが、このような詳細は単にこの目的のためだけものであり、請求項により限定され得るものを除き、当業者によって本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく変法が作られることができると理解すべきである。
【符号の説明】
【0046】
1 ハウジング、 2 混合室、 3 分配室、 4 第1の物質流、 5 湾曲管、 6 第2の物質流、 7 入口開口、 8 回転子部材、 9 固定子部材、 10 軸、 12 環状チャンネル、 15 ピン、 17 キャリヤーリング、 18 スペーサー片、 19 板、 20 ベローズ、 21 ハンドホイール、 22 回転軸線、 23 前板、 24 複数のチャンネル、 25被覆、 26 中心の入口、 27 チャンネル開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)分配室と、
b)混合室と、
c)後面、前面および後面から前面を横断する中心の入口を有する前板と、この場合、この前板は、分配室と混合室との間でハウジングの断面積を変動させ、この場合前板の後面は、分配室に隣接しており、前板の前面は、混合室に隣接しており、
d)第1の物質を導入するための分配室に隣接したハウジング中の入口と、
e)第1の物質を入口d)から前板の中心の入口へ輸送する手段と、
f)第2の物質を分配室中に導入するためのハウジング中の第2の入口と、
g)回転対称の形式で前板中に配置されており、かつ第2の物質が分配室から混合室へ輸送される、前板中の複数の平行な入口開口と、
h)前板の中心の入口から外向きに半径方向に広がり、かつ第1の物質が輸送手段から混合室へ輸送される複数のチャンネルと、この場合該チャンネルは、前板の前面中、前面上または前面の上方に配置されており、
i)前板中の複数の平行な入口開口に対応する複数のピンと、この場合このピンは、軸線方向にずれていてよく、
j)混合された物質が除去される混合室中の出口とを有する実質的に回転対称のハウジングを備えた回転子−固定子型の混合機型反応器。
【請求項2】
前記チャンネルの端部がそれぞれ平行な入口開口の最も外側の点と中心の入口の中心から等距離にあるように、前板中に存在する複数の前記チャンネルは、最も遠い前板中に存在する複数の平行な入口開口が配置されている部位にまで半径方向に第1の物質のための中心の入口から外向きに延在する、請求項1記載の混合機型反応器。
【請求項3】
複数のチャンネルは、前記チャンネルがチャンネルの長さの5〜95%が閉鎖されているように、それぞれのチャンネル上の被覆によって混合室の方向に部分的に閉鎖されている、請求項1記載の混合機型反応器。
【請求項4】
混合室が混合室の中心を通る回転軸線上に付加的に回転子部材および固定子部材を有する、請求項1記載の混合機型反応器。
【請求項5】
複数のピンが、スペーサー片を介して分配室中の板に結合しているキャリヤーリングに固定されている、請求項1記載の混合機型反応器。
【請求項6】
前記板が分配室の外側に位置しているハンドホイールに結合した軸によって軸線方向にずれており、この場合この軸は、この軸がベローズにより分配室を通過するように気密に封入されている、請求項5記載の混合機型反応器。
【請求項7】
第1の物質を入口d)から前板の中心へ輸送する手段が湾曲管である、請求項1記載の混合機型反応器。
【請求項8】
混合室が付加的に混合物を環状チャンネルを介して出口管中に搬送するランニングホイールを有する、請求項1記載の混合機型反応器。
【請求項9】
チャンネルが長さの20〜90%に亘って閉鎖されている、請求項3記載の混合機型反応器。
【請求項10】
第1の物質のためのチャンネルの数が2〜48の範囲にあり、第2の物質のための入口開口の数が2〜48の範囲にあり、この場合チャンネルの数と入口開口の数とは、同一でも異なっていてもよい、請求項1記載の混合機型反応器。
【請求項11】
第2の物質のための平行な入口開口が、前板中の中心の入口の周囲の1つ、2つまたは3つの同心円上に配置されている、請求項1記載の混合機型反応器。
【請求項12】
請求項1記載の混合機型反応器中で第1の物質と第2の物質とを混合することにより、少なくとも2つの異なる物質を混合する方法において、第1の物質および第2の物質をそれぞれ個別的に流動可能な物質、懸濁液または溶液から選択することを特徴とする、請求項1記載の混合機型反応器中で第1の物質と第2の物質とを混合することにより、少なくとも2つの異なる物質を混合する方法。
【請求項13】
請求項1記載の混合機型反応器中で第1の物質と第2の物質とを混合することにより、少なくとも2つの異なる物質を混合する方法において、混合機型反応器中への流入時の第1の物質の粘度と第2の物質の粘度との比が0.5を下廻るかまたは2を上廻ることを特徴とする、請求項1記載の混合機型反応器中で第1の物質と第2の物質とを混合することにより、少なくとも2つの異なる物質を混合する方法。
【請求項14】
第1の物質が溶剤中に溶解されたホスゲンを有し、第2の物質が第1アミンの溶液を有する、請求項12記載の方法。
【請求項15】
第1アミンのホスゲン化によりイソシアネートを製造する方法において、第1アミンとホスゲンとを混合し、請求項1記載の混合機型反応器中で反応させる改善方法であることを特徴とする、第1アミンのホスゲン化によりイソシアネートを製造する方法。
【請求項16】
溶剤中に溶解されたホスゲンを第1の物質として使用し、第1アミンの溶液を第2の物質として使用し、この場合混合機型反応器中への流入時の第1の物質の粘度と第2の物質の粘度との比は、0.5を下廻る、請求項15記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−190024(P2009−190024A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−323264(P2008−323264)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(504213548)バイエル マテリアルサイエンス アクチエンゲゼルシャフト (54)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【住所又は居所原語表記】D−51368 Leverkusen, Germany
【Fターム(参考)】