説明

イソフラボノイドプロドラッグ、その組成物、それらを使用する治療法

プロドラッグ、薬剤、及び調合物、飲料、及び食品に使用するため、イソフラボノイド化合物のリン酸エステルを調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソフラベンプロドラッグ及びその類似体を包含する、含有する、含む、有する及び/又は調製するための化合物、調合物、飲料、食品、方法、及び治療における使用に関する。特に、本発明は、イソフラボノイド及びその誘導体のリン酸エステル、それらを含む薬剤、及びそれらの治療における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
イソフラボン及びその誘導体の多くは、エストロゲン効果を含む非常に広範囲にわたる重要な生物学的特性を有する。ゲニステイン、ダイゼイン等のイソフラボンは、体内のエストロゲンステロイドレベルの変調や減少に関係することが明らかになっている。つい近年、イソフラベン及び特にデヒドロエクオールが優れた化学療法特性を有することが分かっている。生物学的活性に関するある領域においては、いくらかの矛盾さえあり、例えば、あるイソフラボノイドはエストロゲンレセプターのアゴニスト(作動薬)として作用し、別のイソフラボノイドはエストロゲンレセプターのアンタゴニスト(拮抗薬)として作用する。体内における生物学的活性を有するエストロゲンステロイドレベルの減少と、癌(乳癌等)やその他の多くの病気や症状の低い発生率との間には強い相関関係があると考えられる。
【0003】
しかし、動物におけるイソフラボノイドの生物学的活性はイソフラボノイド・ファミリーのスペクトルの全域に保存されておらず、したがって、特に何処に生物学的利用性が含まれているか、予測することができない。したがって、塩基イソフラボノイド分子の独特の各構造変異は、動物において効能0(ゼロ)から強力な効能までの範囲を有する非常に個性的な生物学的プロファイルをもたらす。さらに、例えば、ある生物学的活性を有するエストロゲンステロイドのリン酸エステル等の生物学的に活性な分子の抱合体は大部分活性を示さない
と考えられる。
【0004】
病気、症状、障害を治療、改善、防止するための、新規な、改善された、より良い及び/又は代替となり得る医薬組成物及び作用剤を見出すことが強く求められている。また、新規なイソフラボノイド化合物及びその誘導体が、それらの化合物の改良された調合、生物学的利用性、デリバリーを向上させるために、求められている。さらに、多くの人々を冒す多くの様々な種類の病気や障害を克服するための、医師と一般大衆の両方が利用することができる新規なさまざまな治療法が求められている。
【0005】
したがって、治療学的に有益であり、公知のイソフラボノイド化合物に対して、向上した、代替となり得る、又は少なくとも匹敵する生物学的活性及び生物学的利用性を示す新規なイソフラボノイド化合物及びその誘導体を提供することが求められている。
【発明の開示】
【0006】
本発明者らは、予期せぬことに、イソフラボノイド化合物のリン酸エステルが良好な水溶性と生物学的利用性を示し、有益な生物学的特性を示すことを見出した。特に、リン酸エステルは、投与したとき、体内におけるエストロゲンレベルの調節能力を含む広範囲の治療活性を示す。
【0007】
理論的に証明されてはいないが、本発明のイソフラベンプロドラッグ及びその誘導体、特にイソフラボノイドリン酸エステルは、エストロゲンステロイドの供給を減少させ、エストロゲンに関連する病気や症状のリスクや重症度を低下させるものと考えられる。また、本発明のイソフラボノイドリン酸エステルは、ほ乳動物細胞の様々な分子標的の調節すると考えられる。通常、これらの分子標的は、細胞の成長、分化、移動、及び死などの重要な細胞プロセスに必須のシグナル伝達プロセスに密接に関わっている。したがって、これらの予期せぬ生化学的効果は、ヒトを含む動物の健康に広く重要な関わりを有する。本発明の上述した目的及びその他の好ましい目的を以下に説明する。
【0008】
すなわち、本発明の一態様によれば、下記一般式(I)で表されるイソフラボノイドリン酸エステル化合物又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0009】
【化1】

式中、
、R、及びZは、独立してMPO−、水素、ヒドロキシ、OR、OC(O)R10、OS(O)R10、CHO、C(O)R10、COOH、CO10、CONR、アルキル、ハロアルキル、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルコキシアリール、チオ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ニトロ又はハロであり、又は、
は上に定義した通りであり、及びRとZは、それらが結合している炭素原子とともに次式から選択される5員環を形成しており、
【0010】
【化2】

又は、
は上に定義した通りであり、RとZは、それらが結合している炭素原子とともに次式から選択される5員環を形成しており、
【0011】
【化3】

及び
WはRであり、AとBは、それらが結合している炭素原子とともに次式から選択される6員環を形成しており、
【0012】
【化4】

式中、
は、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、アミノ酸、C(O)R11(式中、R11は水素、アルキル、アリール、アリールアルキル又はアミノ酸である)又はCO12(式中、R12は水素、アルキル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール又はアリールアルキルである)であり、
は、水素、アルキル又はアリールであり、
又は、RとRは、それらが結合している窒素とともにピロリジニル又はピペリジニルを含み、
は、MPO−、水素、C(O)R11(式中、R11は上に定義した通りである)又はCO12(式中、R12は上に定義した通りである)であり、
は、MPO−、水素、ヒドロキシ、アルキル、アリール、アミノ、チオ、NR、COR11(式中、R11は上に定義した通りである)、CO12(式中、R12は上に定義した通りである)又はCONRであり、
は、水素、C(O)R11(式中、R11は上に定義した通りである)、アルキル、ハロアルキル、アリール、アリールアルキル又はSi(R13(式中、R13は各々独立して水素、アルキル又はアリールである)であり、
は、MPO−、水素、ヒドロキシ、アルコキシ又はアルキルであり、
は、アルキル、ハロアルキル、アリール、アリールアルキル、C(O)R11(式中、R11は上に定義した通りである)又はSi(R13(式中、R13は上に定義した通りである)であり、
10は、水素、アルキル、ハロアルキル、アミノ、アリール、アリールアルキル、アミノ酸、アルキルアミノ又はジアルキルアミノであり、
---」は単結合又は二重結合を示し、
Mは、独立して、水素、直鎖又は分枝状のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシアルキル、アルキルチオアルキル、又はアミノアルキル、置換又は非置換のシクロアルキル、アリール、アラルキル、又はアルキルアリール又は少なくとも1つの環が1つ以上の窒素、硫黄、酸素、リン又はケイ素のヘテロ原子を少なくとも1つの環内に含む置換シクロアルキルであり、
Tは、独立して水素、アルキル又はアリールであり、
Xは、O、NR又はS、好ましくはOであり、及び
Yは次式で示され、
【0013】
【化5】

式中、
14、R15、及びR16は、独立して、MPO−、水素、ヒドロキシ、OR、OC(O)R10、OS(O)R10、CHO、C(O)R10、COOH、CO10、CONR、アルキル、ハロアルキル、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルコキシアリール、チオ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ニトロ又はハロであり、かつ、
、R、R、R、R、R14、R15、R16、Z、W、又はAの少なくとも1つは、存在する場合、独立してMPO−である。
【0014】
好ましい実施形態では、リン酸エステル部分は対応する塩−O−PO(OM)−(式中、Mは水素又は薬学的に許容される対イオン、より好ましくはNa、K、Li、Mg++又はNH、さらに好ましくはNaである)として存在する。
【0015】
本発明者らは、下記一般式(I)で表される化合物が、以下の病気及び障害(以下、便宜的に「治療適応症」と呼ぶ)の治療、予防、改善、防御及び/又は防止に特に有用性と有効性を有することを見出した。
【化6】

式中、
、R、W、A、B、Zは上に定義した通りである。
【0016】
(a)身体の全ての組織におけるあらゆる形態の癌(前癌状態、良性、及び悪性)。この場合、化合物は、抗癌治療の単独の形態として使用してもよく、放射線療法や化学療法を含むがそれらに限定されるないその他の抗癌治療形態と組み合わせて使用することもできる。
【0017】
(b)関節リウマチ、腱炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、硬化性胆管炎を含むが、これらに限定されない、あらゆる体内組織における異常性又は長期性の炎症反応に関係する病気及び傷害。
【0018】
(c)サルコイドーシス、血管肉腫、カポージ肉腫、ファブリー病を含むがこれらに限定されない丘疹膿疱性の皮膚障害。
【0019】
(d)乾癬、ボーエン病、及びライター病を含むがこれらに限定されない丘疹鱗屑性皮膚障害。
【0020】
(e)日光性角化症、光線過敏症、及びしわ形成を含むがこれらに限定されない皮膚の退行性変化を特徴とする光線性損傷。
【0021】
(f)血管腫及び毛細血管拡張症を含むがこれらに限定されない体内のあらゆる組織に影響を及ぼす異常な血管新生に関係する病気及び障害。
【0022】
(g)巨赤芽球性疾患、骨髄異形成症候群、真性多血症、血小板増加症、及び骨髄線維症を含むがこれらに限定されない骨髄の増殖性障害。
【0023】
(h)多発性硬化症、1型糖尿病、全身性エリテマトーデス、及び胆汁性肝硬変を含むがこれらに限定されない異常な免疫応答を特徴とする自己免疫疾患。
【0024】
(i)パーキンソン病、アルツハイマー病、筋ジストロフィー、ルー・ゲーリック病、運動ニューロン疾患を含むがこれらに限定されない神経系の構造における変性変化を特徴とする神経変性疾病及び障害。
【0025】
(j)アテローム性動脈硬化症、粥腫、冠状動脈疾患、脳卒中、心筋梗塞、高血圧性血管疾患、悪性高血圧症、閉塞性血栓血管炎、線維筋性形成異常を含むがこれらに限定されない血管壁内の変性変化に関係する病気及び障害。
【0026】
(k)皮膚筋炎及び強皮症含むがこれらに限定される異常な免疫応答に関係する病気及び障害。
【0027】
(l)白内障、黄斑変性症、網膜萎縮症を含むがこれらに限定されない眼内での変性変化に関係する病気及び障害。
【0028】
特に、イソフラべン化合物は、驚くべきことに、エストロゲンやアンドロゲン等の生殖ホルモンの生産と機能に効能を有することが見出された。したがって、これらの化合物は以下の病気及び障害の治療及び防止に使用することができる。
【0029】
(a)周期的な乳房痛、ざ瘡、月経困難症、子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫、月経前症候群、急性閉経徴候、骨粗鬆症、老人性痴呆症、不妊症を含むがこれらに限定されない異常なエストロゲン/アンドロゲンバランスに関係した女性における症状。
【0030】
(b)良性前立腺肥大症、不妊症、女性化乳房、遺伝性脱毛症、及びその他のさまざまな形態の脱毛症を含むがこれらに限定されない異常なエストロゲン/アンドロゲンバランスバランスに関係した男性における症状。
【0031】
したがって、本発明の別の態様によれば、上記の式(I)で表される1種以上の化合物を治療上有効な量で被検者に投与することを含む、1種以上の治療適応症を治療、予防、改善、防御、及び/又は防止するための方法が提供される。
【0032】
本発明の別の態様によれば、1種以上の治療適応症を治療、改善、防御、予防、及び/又は防止するための薬剤の製造のための、上記式(I)で表される化合物の使用が提供される。
【0033】
本発明の別の態様によれば、1種以上の治療適応症の治療、改善、防御、予防及び/又は防止における、式(I)で表される1種以上の化合物の使用が提供される。
【0034】
本発明の別の態様によれば、式(I)で表される1種以上の化合物単独で又は1種以上の担体又は賦形剤とを組み合わせて含む、治療適応症の治療、予防、改善、防御及び/又は治療のための作用剤が提供される。
【0035】
本発明の別の態様によれば、式(I)で表される1種以上の化合物を、1種以上の医薬担体及び/又は賦形剤と組み合わせて含む治療用組成物が提供される。
【0036】
本発明の別の態様によれば、式(I)で表される1種以上の化合物を含む飲料又は食品が提供される。
【0037】
本発明の別の態様によれば、微生物が式(I)で表される1種以上の化合物を産生する1種以上の微生物菌株を含む微生物培地又は食品が提供される。
【0038】
本発明の別の態様によれば、式(I)で表される1種以上の化合物を産生する1種以上の微生物が提供される。好ましくは、微生物は精製培地であり、式(I)で表される化合物を産生する1種以上の他の培地に混合及び/又は投与することができる。
【0039】
本明細書及び特許請求の範囲をとおして、文が他の意味を要求しない限り、「含む(comprise)」という単語、及び「含む(comprises)」又は「含む(comprising)」等の活用形は、記載した完全体又は工程又は複数の完全体又は工程の群を含むことを意味するが、その他の完全体又は工程又は複数の完全体又は工程の群を排除することを意味するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
「イソフラボノイド」という用語は、一般的に1,2−ジフェニルプロパン系に基づくピラン環からのペンダントフェニル基を有する縮環ベンゾピラン分子を意味する。したがって、イソフラボン、イソフラベン、イソフラバン、イソフラバノン、イソフラバノール等と通常呼ばれる種類の化合物は、本明細書において、イソフラボノイド、イソフラボノイド化合物、イソフラボン代謝物又はその誘導体と総称する。
【0041】
本発明の好ましいイソフラボノイド化合物は、イソフラバン−4−オン、イソフラベン、イソフラバン−4−オール、及びイソフラバンであり、これらは通常は塩基イソフラボンの水素化生成物であり、任意に置換されていてもよい。
【0042】
「アルキル」という用語は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、シクロペンチル等の1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子の直鎖、分枝状及び環状(炭素数5以上の場合)飽和アルキル基を含む。アルキル基は、より好ましくは、メチル、エチル、プロピル又はイソプロピルである。アルキル基は、任意にフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、カルボキシル、C〜Cアルコキシカルボニル、C〜Cアルキルアミノ−カルボニル、ジ−(C〜Cアルキル)−アミノ−カルボニル、ヒドロキシル、C〜Cアルコキシ、ホルミルオキシ、C〜Cアルキル−カルボニルオキシ、C〜Cアルキルチオ、C〜Cシクロアルキル又はフェニルの1種以上によって置換されていてもよい。
【0043】
「アルケニル」という用語は、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル等の、少なくとも1つの二重結合を有する、2〜10個の炭素原子、好ましくは2〜6の炭素原子の直鎖状、分枝状及び環状(炭素数5以上の場合)炭化水素を含む。アルケニル基は、より好ましくは、エテニル、1−プロペニル又は2−プロペニルである。アルケニル基は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、カルボキシル、C〜Cアルコキシカルボニル、C〜Cアルキルアミノ−カルボニル、ジ−(C〜Cアルキル)−アミノ−カルボニル、ヒドロキシル、C〜Cアルコキシ、ホルミルオキシ、C〜Cアルキル−カルボニルオキシ、C〜Cアルキルチオ、C〜Cシクロアルキル又はフェニルの1種以上によって任意に置換されていてもよい。
【0044】
「アルキニル」という用語は、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル等の、少なくとも1つの三重結合を有する、2〜10個の炭素原子、好ましくは2〜6個の炭素原子の直鎖及び分枝状炭化水素の両方を含む。アルキニル基は、より好ましくは、エチニル、1−プロピニル又は2−プロピニルである。アルキニル基は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、カルボキシル、C〜Cアルコキシカルボニル、C〜Cアルキルアミノ−カルボニル、ジ−(C〜Cアルキル)−アミノ−カルボニル、ヒドロキシル、C〜Cアルコキシ、ホルミルオキシ、C〜Cアルキル−カルボニルオキシ、C〜Cアルキルチオ、C〜Cシクロアルキル又はフェニルの1種以上によって任意に置換されていてもよい。
【0045】
「アリール」という用語は、フェニル、ビフェニル及びナフチルを含み、C〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、カルボニル、C〜Cアルコキシカルボニル、C〜Cアルキルカルボニルオキシ又はハロの1種以上によって任意に置換されていてもよい。
【0046】
「ヘテロアリール」という用語は、アリル、ピリジル、ピリミジル、チエニル、イミダゾリル、テトラゾリル、ピラジニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、キノリル、イソキノリル、プリニル、モルホリニル、オキサゾリル、チアゾリル、ピロリル、キサンチニル、プリン、チミン、シトシン、ウラシル及びイソキサゾリルを含むがこれらに限定されない、環が他のアリール環又はヘテロアリール環と任意に結合した、少なくとも1つの酸素、硫黄又は窒素を含む5員環及び6員環を含む。ヘテロ芳香族基は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、カルボキシル、C〜Cアルコキシカルボニル、C〜Cアルキルアミノ−カルボニル、ジ−(C〜Cアルキル)−アミノ−カルボニル、ヒドロキシル、C〜Cアルコキシ、ホルミルオキシ、C〜Cアルキル−カルボニルオキシ、C〜Cアルキルチオ、C〜Cシクロアルキル又はフェニルの1種以上により任意に置換されていてもよい。ヘテロ芳香族は、必要に応じて部分的又は完全に水素化されていてもよい。
【0047】
「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、好ましくはフルオロ及びクロロ、より好ましくはフルオロを含む。例えば、「ハロアルキル」としては、モノハロゲン化アルキル基、ジハロゲン化アルキル基から過ハロゲン化アルキル基までを含む。好ましいハロアルキル基は、トリフルオロメチル及びペンタフルオロエチルである。
【0048】
「薬学的に許容される塩」という用語は、電荷を有し、例えば塩中の対カチオン又は対アニオンとして薬学的作用物質と共に投与することができる有機又は無機部分を意味する。薬学的に許容されるカチオン(M部分を含む)は当業者に公知であり、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、及び第四級アミンが含まれるがこれらに限定されない。薬学的に許容されるアニオンは当業者に公知であり、塩化物、酢酸塩、クエン酸塩、重炭酸塩、及び炭酸塩が含まれるがこれらに限定されない。
【0049】
「薬学的に許容される誘導体」あるいは「プロドラッグ」という用語は、レシピエントへの投与時に、直接又は間接的に親化合物又は代謝物を提供できることができる活性化合物の誘導体、又はそれ自身が活性を示す活性化合物の誘導体を意味する。
【0050】
本明細書において使用するように、「治療」、「予防」又は「防止」、「改善」等は、それらの最も広い意味において解釈されるものとする。特に、「治療」という用語は、動物が完全な回復に至るまで治療することを必ずしも意味するものではない。したがって、「治療」は、特定の症状又は重症度の改善あるいは特定の症状が発現するリスクを防止又はさもなくば軽減することを含む。
【0051】
特に、本発明は、下記一般式(II)で表される化合物及びその使用に関する:
【0052】
【化7】

式中、
、R、R、R、R14、R15、W、及びZは上に定義した通りであり、
---」は単結合又は二重結合を示し、より好ましくは、「---」は二重結合を示す。
【0053】
別の態様において、特に本発明は下記一般式(III)で表される化合物及びその使用に関する:
【0054】
【化8】

式中、
、R、R、R、R14、R15、W、及びZは上に定義した通りである。
【0055】
別の態様において、本発明は下記一般式(IV)で表される化合物及びその使用に関する:
【0056】
【化9】

式中、
、R、R、R、R14、R15、W、及びZは、上に定義した通りである。
【0057】
本発明の特に好ましい化合物は、次のとおりのイソフラボノイド化合物である:
【0058】
【化10】

式中、Mは独立して水素又は対カチオンであり、及び
式中、イソフラベン化合物又はその誘導体は、モノ−、ジ−又は過リン酸化され、及び次の水酸基含有イソフラバノン、イソフラベン、イソフラバノール及びイソフラバン化合物及び下記のとおり誘導体1〜22から誘導されるものであってもよい。
【0059】
【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

式中、
、R16、W、及びZは独立してH、OH、Cl、Br、Me又はOMeであり、R14はH、OMe、Me、Cl又はBrである。
【0060】
最も好ましい実施形態において、イソフラボノイド化合物又はその誘導体は、ジヒドロダイゼイン、ジヒドロゲニステイン、テトラヒドロダイゼイン、デヒドロエクオールあるいはエクオールの新規なモノ−、ジ−または又は過リン酸エステルであり、最も好ましくは、デヒドロエクオールのリン酸エステルである。
【0061】
本発明の化合物は、エストロゲン効果、アンドロゲン効果、血管拡張及び痙攣効果、炎症効果及び酸化効果に関係するか、それらに起因する病気の治療に特別な用途を有する。
【0062】
本発明による治療に必要とされる式(I)で表される1種以上の化合物の量は、特定の用途、使用される特定な化合物の性質、治療される症状、投与形式、患者の状態を含む多くの因子に依存する。式(I)で表される化合物は、従来実施されていた方法と量のままで投与することができる。例えば、グッドマン及びギルマン著、「治療の薬学的基礎」、1299(第7版、1985)を参照。活用される特定の投与量は、治療される症状、被検者の状態、投与経路、上述したその他の周知の因子に依存する。通常、患者一人あたりの一日の投与量は、0.1mg〜2gの範囲であり、代表的には0.5mg〜1g、好ましくは50mg〜200mgの範囲である。投与期間は、治療又は緩和すべき症状の重症度に依存して、1日又は2日に1回与えられる1回量から、必要に応じて1週間から数ヶ月、数年にわたって1日に2〜3回の投与量の範囲で投与してもよい。なお、あらゆる被検者について、特定の投薬計画は、個人の必要性及び組成物の投与を管理又は監督する人物の専門的判断に従って時間をかけて調節しなければならない。
【0063】
本明細書に記載する治療適応症の治療のための医薬組成物は、通常は、本発明の化合物(以下、便宜的に「活性化合物」と呼ぶ)と、1種以上の薬学的又は獣医学的に許容される当業界で周知の担体及び/又は賦形剤とを混合することによって調製される。
【0064】
もちろん担体は、調合物中の他のあらゆる成分と適合性を有していなければならず、被検者に有害であってはならない。担体又は賦形剤は、固体、液体又はその両方であってもよく、好ましくは、単位用量として、例えば、0.5〜59重量%又は100重量%以下の活性化合物を含有してもよい錠剤として化合物と配合される。本発明の調合物には1種以上の活性化合物を組み込むことができ、調合物は、任意に1種以上の副成分を含む成分を混合することより実質的になる公知のあらゆる薬学的技法によって調製することができる。本発明の調合物としては、経口、直腸、眼、口腔(例えば舌下)、非経口(例えば、皮下、筋内、皮内又は静脈内)並びに経皮投与に適した調合物が挙げられる。ただし、いずれの場合においても、最も適切な投与経路は、治療する症状の性質及び重症度並びに使用いられる個々の活性化合物の性質によって決定される。
【0065】
経口投与に適した調合物は、各々所定量の活性化合物を、又は粉末又は顆粒として;水性又は非水性液体中の溶液又は懸濁液として;又は水中油型又は油中水型エマルションとして含むカプセル、サシェ、ロゼンジ又は錠剤などの個別の単位で提供することができる。このような調合物は、活性化合物と適切な担体(上述した1種以上の副成分を含んでもよい)を結合させる工程を含むあらゆる適切な製薬法により調製することができる。通常、本発明の調合物は、活性化合物と、液体の担体又は細かく分割された固体の担体又はその両方を均一かつ密接に混合し、その後、得られた混合物を必要に応じて、例えば単位用量を成形するように形作ることによって調製される。例えば、錠剤は、活性化合物と任意に1種以上の副成分を含む粉末又は顆粒を圧縮又は成形することによって調製することができる。圧縮錠剤は、適切な機械内で、例えば、結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤及び/又は界面活性剤/分散剤を任意に混合した粉末又は顆粒等の自由に流動する化合物を圧縮することによって調製することができる。成形錠剤は、適当な機械内で、不活性液状結合剤で湿らせた粉末状の化合物を成形することによって製造することができる。
【0066】
口腔(舌下)投与に適した調合物としては、風味付けされた基剤、通常はスクロース及びアカシア又はトラガカント中に活性化合物を含むロゼンジ;及びゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシア等の不活性基剤中に活性化合物を含むパスティーユが挙げられる。
【0067】
非経口的投与に適した本発明の組成物は、好都合なことには活性化合物の無菌水性製剤を含み、製剤は好ましくは対象とするレシピエントの血液と等張である。これらの製剤は、皮下、筋肉内、又は皮内注射によって投与することができるが、好ましくは静脈内に注射で投与される。そのような製剤は、好適には、化合物を水又はグリシン緩衝液と混合し、得られた溶液を滅菌して血液と等張的にすることによって調製することができる。本発明に係る注射可能な調合物は、一般に活性化合物を0.1%〜60%w/v含み、0.1ml/分/kgの割合で投与される。
【0068】
直腸又は膣内投与に適した調合物は、好ましくは単位用量の坐剤として提供される。坐剤は、活性化合物と1種以上の従来の固体担体、例えばカカオバターと混合し、得られた混合物を成形することによって調製することができる。
【0069】
皮膚への局所的投与に適した調合物又は組成物は、好ましくは、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾル又は油の形状である。使用することができる担体としては、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール及びそれらの2種以上の組合せが挙げられる。活性化合物は、通常は0.1〜0.5%w/w、例えば0.5%〜2%w/wの濃度で存在する。そのような組成物の例としては、化粧用スキンクリームが挙げられる。
【0070】
経皮投与に適した調合物は、レシピエントの表皮と長時間にわたって密接に接触し続けることに適合したパッチとして提供することができる。そのようなパッチは、好ましくは例えば活性化合物に対して0.1〜0.2M濃度の任意に緩衝された水溶液として活性化合物を含む。
【0071】
経皮投与に適した調合物は、
イオントフォレーシスによって配送することもでき(例えば、Pharmaceutical Research 3 (6), 318 (1986)参照)、通常は活性化合物の任意に緩衝された水溶液という形をとる。好適な調合物は、クエン酸塩又はビス/トリス緩衝液(pH6)又はエタノール/水を含み、0.1〜0.2Mの活性成分を含有する。
【0072】
吸入に適した調合物は、溶液、懸濁液又はエマルションの形態のスプレー組成物として配送することができる。吸入用スプレー組成物は、二酸化炭素又は亜酸化窒素等の薬学的に許容される噴射剤をさらに含むことができる。
【0073】
活性化合物は、例えば食品に添加、混合、被覆、結合又はその他の方法で添加した食品の形で提供することができる。「食品」という用語は、最も広義の意味で使用され、乳製品を含む飲料等の液体調合物及び健康食品のバー、デザート等のその他の食品を含む。本発明の化合物を含む食品調合物は、標準的な方法によって容易に調製することができる。
【0074】
本発明の化合物は強い抗酸化活性を有し、薬学的及び獣医学的用途、皮膚の老化を防ぐためのスキンクリーム等の化粧品、日よけ、食品、健康飲料、シャンプー等幅広い用途を有する。
【0075】
予期せぬことに、式(I)で表される化合物は、ビタミンEと相乗的に相互作用して脂質、タンパク質、その他の生体分子を酸化から保護することが分かった。
【0076】
したがって、本発明のさらなる態様は、式(I)で表される1種以上の化合物と、ビタミンEと、及び任意に薬学的、獣医学的又は化粧用途的に許容される担体及び/又は賦形剤とを含む組成物を提供する。
【0077】
治療法、使用及び組成物は、ヒト、コンパニオンアニマル(例えばイヌやネコ)、トリ(例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル)、畜産動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ)等の動物に投与するためであってもよく、水産養殖の用途等に使用することもできる。
【0078】
また、イソフラボノイドプロドラッグとその誘導体は、望ましい作用を損なわない他の活性物質あるいは望ましい作用を補う物質(例えば、抗生物質、抗真菌剤、抗炎症剤又は抗ウイルス性化合物)とともに投与することができる。活性剤は、2種以上のイソフラボン又はその誘導体を組み合わせ又は相乗混合物に含むことができる。また、活性化合物は、プロブコール、ニコチン酸等の抗高脂血症剤;アスピリン等の血小板凝集阻害剤;クマジン等の抗血栓剤;ベラパミル、ジルチアゼム、ニフェジピン等のカルシウムチャネル遮断剤;カプトプリル、及びエナラプリル等のアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤;及びプロパノロール、ターブタロール、及びラベタロール等のβ−遮断薬とともに投与することができる。また、活性化合物は、イブプロフェン、インドメタシン、アスピリン、フェノプロフェン、メフェナム酸、フルフェナム酸、スリンダク等の非ステロイド性抗炎症剤と組み合わせて投与することもできる。活性化合物は、コルチコステロイドとともに投与することができる。
【0079】
併用投与は、同時投与又は逐次的投与であってもよい。同時投与は、化合物を同一の単位用量中に含ませて投与することによって、あるいは化合物を別個の単位用量として同時又は近接する時間に投与することによって行うことができる。
逐次投与の場合は、化合物を任意の順序で投与することができ、特に累積効果又は相乗効果を得たい場合、第2の活性剤(後で投与される活性剤)を投与するときに、第1の活性剤(最初に投与される活性剤)の進行中の生理作用が継続していることが必要である。
【0080】
イソフラボン化合物は、式(I)で表されるイソフラボノイド化合物の合成に適した出発材料であり、イソフラボン出発材料は、当業者に公知の標準的な方法で調製することができる。適切な方法が、例えば、国際特許公開第98/08503号及び国際特許公開第00/49009号に記載されており、これらの開示内容はそっくり参照によって本明細書に援用する。当業者に公知の化学官能基保護、脱保護、シントン等の技術は、適切な場合には本発明の化合物の合成に使用することができる。当業者に公知の適切な方法によって、水酸基置換イソフラボンを誘導体化することによって、本発明の結合体を形成することができる。
【0081】
また、イソフラボン出発材料は、植物を原料とする濃縮液又は抽出液の形で得ることができる。当業者は、適した植物種を容易に特定することができるものと思われるが、例えば、特に有用な植物としては、マメ科の植物が挙げられる。より好ましくは、イソフラボン抽出液は、ヒヨコマメ、レンチル、インゲン豆、アカツメクサ、サブタレニアン・クローバー種等から得ることができる。
【0082】
イソフラボノイドの水溶性は、その多くが水性である薬剤、食品、及び化粧品に調合物を調製するために重要である。また、経口投与品では、溶解性が低い場合には効率的な生物的利用性が妨げられる場合が多い。溶解性が低いと、殆どの場合水性の媒体で投与される静脈内投与薬の調合物にとって特にシリアスな妨げとなる。本発明のイソフラボノイドリン酸エステルは、実質的に未変性化合物の活性特性を維持しながら、生物学的利用性が高められた形態、特に未変性化合物よりも水溶性が高められた形態で使用される。本発明のリン酸エステルは、生理条件下で容易に加水分解して、対応するイソフラボノイド化合物を生成する極性(可溶化)離脱基を有するプロドラッグとして有用である。
【0083】
好ましい実施形態では、イソフラボノイドのアルコール官能基をリン酸基によってエステル化し、リン酸エステルを得る。一般に、消化管や胃腸管に存在する液体、その他の酸、種々の酵素は、エステル化したイソフラボノイドを出発イソフラボノイドに加水分解することができる。
【0084】
リン酸エステルは、好ましくは2つの極性基による(OH)PO基であることが好ましく、優れた溶解剤であり、高い生体適合性を有することが好ましい。MPO−のM基が水素ではない場合、通常は化合物に対する溶解度が低くなるため好ましくないと予想される。例えば、M基がアルキル基の場合は、好ましくは非極性基が小さくなるように選択される。
【0085】
エステル化されたイソフラボンの金属塩錯体、特にLi、Na、K、Mg++、NHを含むアンモニウム塩、並びに低分子量のモノ−又はポリ−アルキルアンモニウム対イオンを使用することも考えられる。
【0086】
以下に実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0087】
本発明のイソフラボノイドリン酸エステルは、入手可能な出発材料と単純な合成方法から、当業者に公知の標準的な化学プロセスによって調製することができる。このようにして、本発明の主題の幾つかの実施形態は、調製することができ、特性を明らかにすることができる。これらの実施例は全て、式MPO−で表される少なくとも1つの基を有する式(I)で表されるプロドラッグ化合物に属するものである。これらの新規なリン酸エステルは全て水溶性であり、生体内で容易に加水分解されるが、生体外では大気温度又は体温で水溶液中標準的なpHで、通常は全く安定しており、固体の場合にはより安定している。
【0088】
実施例1
デヒドロエクオールのリン酸エステル
デヒドロエクオール(120mg、0.5mmol)とジ−tert−ブチルホスホラミダイト(330μl、1.0mmol)のDMF(1ml)溶液をアルゴン下で撹拌しながら、1H−テトラゾール(210mgをDMF 0.5mlに溶解したもの;3.0mmol)を滴下した。その溶液を−20℃に冷却した後、メタクロロ過安息香酸(260mgを塩化メチレン0.5mlに溶解したもの;1.5mmol)の溶液を滴下した。混合液を室温まで温めた後、酢酸エチルで3倍に希釈し、10%二亜硫酸ナトリウムと10%重炭酸ナトリウムで洗浄した。
【0089】
デヒドロエクオールリン酸のブチルエステルを含む酢酸エチル溶液を1M塩酸で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を真空下で除去した後、残渣を30%TFAの酢酸溶液を使用して室温で90分間処理した。溶媒を真空下で除去した後、残渣をエタノール中に入れ、水酸化ナトリウムを使用してpH5.5まで中和した。溶媒を真空下で除去し、130mgのデヒドロエクオールリン酸エステルのナトリウム塩の混合物を得た。
【0090】
このリン酸エステル混合物を分析した結果、4’−リン酸エステル、7−リン酸エステル、4’,7−二リン酸エステル誘導体の存在が認められた。本発明の化合物をエステル化することによってリン酸エステルの混合物を得た後、リン酸エステルは分別結晶化、カラムクロマトグラフィ、及びHPLC等の標準的な分離技法によって個々の化合物に分離することができる。
【0091】
上記方法によって調製したイソフラボノイドリン酸エステルは次式の化合物を含む。
【0092】
【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【0093】
同様に、ジヒドロダイゼイン、テトラヒドロダイゼイン、エクオールのリン酸エステルを合成し、次式の化合物及びそれらの薬学的に許容される塩を得た。
【0094】
【化37】

【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【化42】

【化43】

【化44】

【0095】
実施例2
デヒドロエクオール−7−リン酸エステル
水酸基がペンダントフェニル4’−位置で保護されたデヒドロエクオールを実施例1に従って反応させ、対応する7−リン酸エステル誘導体を得た。MOM又はMEMエーテル及びベンジル型エーテルを含むあらゆる好適な保護基を使用することができる。これらの基は、リン酸化後に任意に除去することができる。保護基を使用する場合は、保護基を本明細書に記載したいずれかの方法に従ってイソフラボノイド出発材料の合成に組み込むことができる。又は、シントン、化学反応性、極性、電子的検討事項、対象となる水酸基上又はその近傍の立体配置状態をきっかけにして時間をおいて保護基を結合させてもよい。
【0096】
これらの方法によって、上記化合物1〜22のモノ−、ジ−、過−リン酸誘導体を合成する。このようにして、リン酸及びその薬学的に許容される塩を調製する。プロトン又は炭素の核磁気共鳴分析法、赤外線及び/又は質量スペクトル分析法を使用して合成した化合物の特性を解析した。
【0097】
実施例3
本発明のイソフラボノイドリン酸エステルの生物学的利用性を、種々の酵素と生物学的媒体を使用してデヒドロエクオールリン酸エステルを生体外で加水分解することによって検証した。結果は、遊離デヒドロエクオールの量をHPLCで測定することによって決定した。使用した血清及び媒体としては、ヒト血清、ヒト血液、ラット血液、アルカリホスファターゼタイプVII−S(ウシの腸粘膜)及びアルカリホスファターゼタイプXXIV(ヒトの胎盤)が挙げられる。
【0098】
イソフラボノイドリン酸エステルの生物学的利用性とエステルからの転化率は、リン酸エステル及びその置換基の性質、媒体、存在するあらゆる酵素、温度、及びpHを含む多くの要因に依存する。これらの各種パラメータを制御することにより、エステルプロドラッグの半減期を変化させることによって望ましい生物学的利用性とより一致させ、ある程度の調節や制御を行うことができることが分かった。
【0099】
実施例4
エステル化したイソフラボノイドは、胃腸液や血液等の生体媒体中で遊離イソフラボノイドに容易に変換されることが分かった。特に、胃腸液は酵素を含む場合が多く、エステル結合を加水分解するに十分高いpHを有する。また、血液は、ホスファターゼ等のリン酸エステル結合を加水分解できる酵素を通常含む。
【0100】
薬物動態実験
PBSに配合したデヒドロエクオール(DHE)−二リン酸エステルを使用して、腹腔内投与と経口投与による2つの別々の薬物動態(PK)実験を行った。5タイムポイント(15分、30分、1時間、4時間、24時間)のそれぞれに3匹のアニマルを割り当てた(合計15匹)。実験の目的は、腹腔内投与と経口投与でPKプロファイルが似ているか否かを決定することである。
【0101】
プロトコル−腹腔内投与
1.雌のヌードマウスに少なくとも1週間にイソフラボンを含まない食事を与え、血漿中のイソフラボンを除去した。
【0102】
2.実験を行う前の日に、3匹のマウスを各タイムポイントに割り当て、一意の識別子で印を付けた。各マウスの体重を測定し、各マウスに50mg/kgを投与するために1回の腹腔内注射で必要なDHE−二リン酸エステルの濃度を決定した。
わずかに過剰量となるDHE−二リン酸エステルを調製し、それに応じて粉末質量を調節した。残りの溶液はQA分析用に−20℃で保管した。
【0103】
3.血管又は腸管に針が刺さらないように、各マウスの右又は左下腹部に注射を行った。DHE−二リン酸エステルを投与後、各タイムポイントとなるまで(15分、30分、1時間、4時間、24時間)マウスをケージに入れた。
【0104】
4.各マウスを頸椎脱臼によって安楽死させ、20ゲージ針を使用し、標準操作手順書(SOP) BD−009に準拠して胸腔から血液を採取した。
【0105】
5.血液を凝固させ、ベンチトップ型ミニ微量遠心管を使用して室温で3分間、最高速度で遠心分離を行った。
【0106】
6.血清を適切に標識を付けたエッペンドルフ型チューブ内に吸引し、分析を行うまで−20℃で保管した。賦形剤(対照)を投与したマウスの血清と配合されたDHE−二リン酸エステルを投与したマウスの血清は、一定量(200μL)の分析用の賦形剤と配合されたDHE−二リン酸エステルとともに−20℃で保管した。
【0107】
プロトコル−経口投与
1.雌のBALB/cマウスに少なくとも1週間にわたってイソフラボンを含まない食事を与え、血漿中のイソフラボンを除去した。
【0108】
2.実験を行う前日に、各タイムポイントに3匹のマウスを割り当て、一意の識別子で印を付けた。各マウスの体重を測定し、50mg/kgで投与するために必要なDHE−二リン酸エステルの濃度を決定した。
【0109】
3.各マウスを拘束し、50mg/kgの投与量となる調合されたDHE−二リン酸エステルの適切量を強制経口投与した。DHE−二リン酸エステルの投与後、タイムポイントが経過するまで(15分、30分、1時間、4時間、24時間)マウスをケージに入れた。対照群のマウスには、1%CMC 200μLを強制経口投与した。15分、30分、1時間、4時間、24時間のタイムポイントに達した時点で対照群のマウスを選択した。
【0110】
4.指定されたタイムポイントで各マウスを頸椎脱臼によって安楽死させ、20ゲージ針を使用してSOP BD−009に準拠して胸腔から血液を採取した。
【0111】
5.血液を凝固させ、ベンチトップ型ミニ微量遠心管を使用して室温で3分間、最高速度で遠心分離を行った。
【0112】
6.血清は適切に標識を付けたエッペンドルフ型チューブ内に吸引し、分析を行うまで−20℃で保管した。賦形剤(対照)を投与したマウスの血清と調合されたDHE−二リン酸エステルを投与したマウスの血清は、一定量(200μL)の分析用の賦形剤と調合されたDHE−二リン酸エステルとともに−20℃で保管した。
【0113】
7.残りの3匹のマウスにはタイムポイント0(ゼロ)で調合物賦形剤を強制経口投与し、タイム30分でマウスを処分した。血清は他のサンプルと共に保管した。
【0114】
結果
マウスに25mg/kgで投与した場合、DHE−二リン酸エステル分子はDHEの遊離型に代謝されて、腹腔内注射後15分間経過時点での血液中の血清濃度は平均98.6μMだった。薬剤は62μM/hrで急速に排出され、投与後1時間経過時点での血清レベルは12μMに低下した。投与後15分間経過時点でDHEの合計(結合体+遊離体)濃度は120μMに達し、その後排出されて(120μM/hr)、投与後1時間経過時点で血清濃度は30.85μMとなった(表1及び図1を参照)。
【0115】
【表1】

【0116】
DHE−二リン酸エステルとDHE−PEG:PBS調合物を腹腔内投与したマウスから得た血清中の遊離デヒドロエクオール濃度と合計デヒドロエクオール濃度とを比較した結果、投与後15分間経過時点では血清中で、その薬剤の遊離体の濃度はほぼ等しいことが分かった。一方、DHE−PEG:PBS調合物(50mg/kg)と比較して、DHE−二リン酸エステルでは半分の投与量(25mg/kg)で上記結果(74.4μMと62μM)を得られることが分かった(表1、表2、図2a)。興味深いことに、DHE−二リン酸エステル製剤とDHE−PEG:PBS調合物における遊離体:合計の比率は約5倍異なることが観察された。すなわち、DHE−二リン酸エステル製剤と比較したとき、PEG:PBS調合物を投与したマウスから投与後15分間経過時点で得られた血清にはより多くのDHEが含まれていることが分かった(120.8μMフェノキソジオール対511.6μMデヒドロエクオール)。遊離デヒドロエクオールの血漿中濃度は、デヒドロエクオールのHPBCD調合物(50mg/kg)を投与後15分間経過時点でのマウスよりも約1.8倍(DHE−二リン酸エステル)及び約2.2倍(DHE−PEG:PBS)低かった(図2b、表3)。
【0117】
【表2】

【0118】
【表3】

【0119】
エステル化イソフラボノイドの使用は、上述した使用又は文献に記載された使用を含み、イソフラボノイド又はその誘導体の現在知られている使用又は後に発見された使用を含む。エステル化イソフラボノイドは、閉経後の女性の骨粗鬆症やエストロゲン欠乏によるその他の症状の治療に有用であることが分かった。また、本発明の化合物は、高齢者の病気や死亡の大きな原因となっている骨粗鬆症や骨粗鬆症による骨折を防止するために使用することができる。さらに、エステル化イソフラボンを予防的に使用して、紫外線保護を提供して及び他の方法で皮膚の健康を向上させ、免疫系を刺激し、及び、望ましくない酸化の作用を減少させる(抗酸化効果の提供)ことができる。さらに重要なことには、本発明の化合物は、乳癌、卵巣癌、前立腺癌等の癌を治療するために使用することができる。
【0120】
本発明のイソフラボノイドリン酸エステルは、治療対象の被検者において有益な及び/又は著しい活性を全く予想外に示す。この比較は、本発明の結合体イソフラボノイド化合物の、特には上述した化合物1〜34からの結合体の特別な有用性と有効性を示している。
【0121】
ゲニステインリン酸エステルは、上述し、例示したイソフラボノイド対照物と比較して薬物動態特性及びプロファイルが劣ることが分かった。
【0122】
上に述べたように、エステル化イソフラボノイド化合物の特定の実施形態と用途を開示した。ただし、当業者には、本明細書中の本発明のコンセプトから逸脱することなく、上述した以外に様々な多くの変形が可能であることは明らかであろう。したがって、本発明の主題は、添付特許請求の範囲の精神を除いては限定されるものではない。
【0123】
当業者は、本明細書に記載した発明は、具体的に記載した以外の変形及び修正の影響を受けやすいことを十分理解するであろう。本発明は、そのような変形及び修正をすべて含むものであると解されるべきである。また、本発明は、本明細書において個別又は集合的に言及又は示唆したステップ、特徴、組成物及び化合物を全て含み、それらのステップ又は特徴の任意の2以上のあらゆるかつ全ての組み合わせを含む。
【0124】
本明細書における如何なる先行技術への言及は、先行技術が当該分野において共通の一般的な知識の一部をなすと認識するものでなく、又は何らかの形態の示唆をするものでなく、あるいは、かかる認識又は示唆として解釈してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】PBSを使用して調製したDHE−二リン酸のボーラス注入で25mg/kgの用量で腹腔内に注射したマウスから得た血清の遊離デヒドロエクオール濃度と合計デヒドロエクオール濃度を比較した薬物動態データを示す。
【図2】図2a及び図2bは、異なる調合物に調製したデヒドロエクオールを腹腔内にボーラス注入したマウスから得た血清の遊離デヒドロエクオール濃度と合計デヒドロエクオール濃度を比較した薬物動態データを示す。DHE−二リン酸調合物はPBSを使用して調製し、25mg/kgで投与した。DHE PEG:PBS調合物はPEG:PBS=1:1で調合し、50mg/kgで投与した。DHE−HPBCD調合物は20% HPBCD(HPBCDはPBSを使用して調製)を使用して調製し、50mg/kg(合計DHE濃度は示していない)で投与した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるイソフラボノイドリン酸エステル化合物又はその薬学的に許容される塩:
【化1】

式中、
、R、及びZは、独立してMPO−、水素、ヒドロキシ、OR、OC(O)R10、OS(O)R10、CHO、C(O)R10、COOH、CO10、CONR、アルキル、ハロアルキル、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルコキシアリール、チオ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ニトロ又はハロであり、又は、
は上に定義した通りであり、及び、RとZは、それらが結合している炭素原子とともに次式から選択される5員環を形成しており、
【化2】

又は、
は上に定義した通りであり、RとZは、それらが結合している炭素原子とともに次式から選択される5員環を形成しており、
【化3】

及び
WはRであり、AとBは、それらが結合している炭素原子とともに次式から選択される6員環を形成しており、
【化4】

式中、
は、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、アミノ酸、C(O)R11(式中、R11は水素、アルキル、アリール、アリールアルキル又はアミノ酸である)又はCO12(式中、R12は水素、アルキル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール又はアリールアルキルである)であり、
は、水素、アルキル又はアリールであり、
又は、RとRは、それらが結合している窒素とともにピロリジニルまたは又はピペリジニルを含み、
は、MPO−、水素、C(O)R11(式中、R11は上に定義した通りである)又はCO12(式中、R12は上に定義した通りである)であり、
は、MPO−、水素、ヒドロキシ、アルキル、アリール、アミノ、チオ、NR、C(O)R11(式中、R11は上に定義した通りである)、CO12(式中、R12は上に定義した通りである)又はCONRであり、
は、水素、C(O)R11(式中、R11は上に定義した通りである)、アルキル、ハロアルキル、アリール、アリールアルキル又はSi(R13(式中、R13は各々独立して水素、アルキル又はアリールである)であり、
は、MPO−、水素、ヒドロキシ、アルコキシ又はアルキルであり、
は、アルキル、ハロアルキル、アリール、アリールアルキル、C(O)R11(式中、R11は上に定義した通りである)又はSi(R13(式中、R13は上に定義した通りである)であり、
10は、水素、アルキル、ハロアルキル、アミノ、アリール、アリールアルキル、アミノ酸、アルキルアミノ又はジアルキルアミノであり、
---」は単結合又は二重結合を示し、
Mは、独立して、水素、直鎖又は分枝状のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシアルキル、アルキルチオアルキル、又はアミノアルキル、置換又は非置換のシクロアルキル、アリール、アラルキル、又はアルキルアリール及び少なくとも1つの環が1つ以上の窒素、硫黄、酸素、リン又はケイ素のヘテロ原子を少なくとも1つの環内に含む置換シクロアルキルであり、
Tは、独立して、水素、アルキル又はアリールであり、
Xは、O、NR又はS、好ましくはOであり、かつ
Yは次式で示され、
【化5】

式中、
14、R15、及びR16は、独立して、MPO−、水素、ヒドロキシ、OR、OC(O)R10、OS(O)R10、CHO、C(O)R10、COOH、CO10、CONR、アルキル、ハロアルキル、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルコキシアリール、チオ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ニトロ又はハロであり、かつ、
、R、R、R、R、R14、R15、R16、Z、W、又はAの少なくとも1つは、存在するならば、独立してMPO−である。
【請求項2】
下記一般式(II)で表される、請求項1に記載のイソフラボノイドリン酸エステル:
【化6】

式中、
、R、R、R、R14、R15、W、及びZは、請求項1に定義した通りであり、及び
---」は単結合又は二重結合を示す。
【請求項3】
---」が二重結合を示す請求項2に記載のイソフラボノイドリン酸エステル。
【請求項4】
下記一般式(III)で表される、請求項1に記載のイソフラボノイドリン酸エステル:
【化7】

式中、
、R、R、R、R14、R15、W、及びZは請求項1に定義した通りである。
【請求項5】
下記一般式(IV)で表される、請求項1に記載のイソフラボノイドリン酸エステル:
【化8】

式中、
、R、R、R、R14、R15、W、及びZは請求項1に定義した通りである。
【請求項6】
リン酸エステル部分が、対応する塩MPO−(式中、Mは薬学的に許容されるカチオンである)として存在する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のイソフラボノイド化合物。
【請求項7】
前記対応する塩MPO−がNaO(HO)P(O)O−である、請求項6に記載のイソフラボノイド化合物。
【請求項8】
下記の一般式で表される化合物から選択されるイソフラボノイド化合物、又はその薬学的に許容される塩、
【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【請求項9】
式(I)で表される1種以上の化合物を被検者に治療上有効な量で投与することを含む、明細書に定義した1種以上の治療適応症を治療、予防、改善、防御及び/又は防止する方法。
【請求項10】
明細書に定義した1種以上の治療適応症の治療、予防、改善、防御及び/又は防止用の薬剤を製造するための、式(I)で表される1種以上の化合物の使用。
【請求項11】
式(I)で表される1種以上の化合物単独で、又は式(I)で表される1種以上の化合物と1種以上の担体又は賦形剤とが一緒になって含む、明細書に定義した1種以上の治療適応症の治療、予防、改善、防御及び/又は治療のための作用剤。
【請求項12】
式(I)で表される1種以上の化合物単独で又は式(I)で表される1種以上の化合物と1種以上の担体又は賦形剤とを一緒に投与する工程を含む、エストロゲン/アンドロゲンバランスの異常によって起こる被検者の症状の治療、予防、改善、防御及び/又は防止のための方法。
【請求項13】
前記被検者が女性である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記被検者が男性である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
エストロゲン/アンドロゲンバランスの異常によって起こる被検者の症状を治療、改善、防御、予防及び/又は防止する薬剤製造のための式(I)で表される1種以上の化合物の使用。
【請求項16】
式(I)で表される1種以上の化合物と、1種以上の医薬担体及び/又は賦形剤とを一緒に含む治療用組成物。
【請求項17】
式(I)で表される1種以上の化合物を含む飲料又は食品。
【請求項18】
式(I)で表される1種以上の化合物、ビタミンE、及び、任意に、薬学的に、獣医学的に又は化粧用途的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む組成物。
【請求項19】
イソフラバン−4−オン、イソフラベン、イソフラバン−4−オール又はイソフラバン化合物、又はその薬学的に許容される塩の生物学的利用性を向上又は改善するためのリン酸エステル部分の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−511542(P2007−511542A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540079(P2006−540079)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【国際出願番号】PCT/AU2004/001602
【国際公開番号】WO2005/049627
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(500445789)ノボゲン リサーチ ピーティーワイ リミテッド (10)
【Fターム(参考)】