説明

イトロ添加剤吐出量制御装置

【課題】イトロ処理における添加剤の吐出量を調整して、適正で安定した燃焼状態を維持するようにしたイトロ添加剤吐出量制御装置を提供する。
【解決手段】燃料ガスおよび空気が供給されることによりワーク11の火炎処理を行なうバーナー13に対して、バルブから導入されるイトロ添加剤の添加量を調整するイトロ添加剤吐出量制御装置20であって、バーナーの炎の色を撮像する撮像手段21と、撮像手段21からの撮像信号に基づいて、炎の色からイトロ添加剤の添加量を演算し、この演算結果であるイトロ添加剤の添加量に基づいて、イトロ添加剤の添加量が適正範囲内にあるかを判定する制御手段22と、制御手段22による判定結果に基づいて、バルブを調整することにより、イトロ添加剤の添加量を調整する調整手段と、を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナーによる酸化炎を介してワークの表面に酸化ケイ素膜を形成するイトロ処理の燃焼状態を検知して、イトロ添加剤の吐出量を制御するための制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばプラスチックなどの樹脂性の基材,ポリウレタンフォームなどの中間層及び表皮から成る三層構造の、所謂ソフトインストルメトパネルに関して、基材と中間層との接着性を確保するために、火炎処理が行なわれている。
この火炎処理は、例えば図6に示すように、ワークとしての基材1の表面、即ち中間層との接着面に対して、バーナー2による火炎を近接させることにより行なわれている。
【0003】
ここで、バーナー2は、燃料ガスとして例えばLPGが供給され、このLPGに対して空気(AIR)が導入されることで燃焼が行なわれる。そして、このような火炎処理により、図6に示すように、基材1の表面にCOOH基,OH基等の鎖状の基が付着することにより、中間層との接着性が高められるようになっている。
【0004】
ここで、このような火炎処理を確実に行なって、上述した接着性を確保するためには、第一に安定した燃焼即ち炎の温度及び長さ、第二にバーナーとワーク間の距離、さらに処理速度を一定に保持することが重要であり、これらの条件を満足するためには、バーナー2を連続燃焼させた状態にて、図7に示すように、順次にワークをバーナー2に対して接近させて、間欠的に火炎処理を行なうようにしている。このため、バーナー2の連続燃焼により、火炎処理が行なわれていないワーク交換の間もバーナー2が燃焼していることになるため、LPGの消費量が増大してしまい、エネルギー損失が大きくなると共に、コストが増大してしまう。
【0005】
これに対して、このような火炎処理におけるバーナー2の炎の管理を行なうことなく、上記接着性を確保するための手法としては、有機化合物、例えば有機ケイ素化合物による所謂イトロ添加剤の添加による高接着工法が知られている。
この高接着工法は、図8に示すように、導入する空気に対して例えば有機ケイ素化合物等のイトロ添加剤をバルブを介して混入すると共に、図9に示すように、処理時にのみバーナー2を燃焼させるようにしている。このような、バーナーによる酸化炎を介してワークの表面に酸化ケイ素膜を形成する表面処理、所謂イトロ処理を施すことにより、図8に示すように、基材1の表面にSiO基が付着することによって、中間層などの他の物体との接着性が高められる。
【0006】
これに対して、特許文献1には、燃焼炎をカラーテレビカメラで撮像して、炎の色から炎の温度を検出すると共に、炎の画素数から炎の大きさを検出し、燃焼終了点および燃焼終了状態を検出する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平11−37848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、このようなイトロ処理は、従来の火炎処理の装置をそのまま利用して行なうと、以下のような不具合が生ずる。
イトロ添加剤の吐出量の調整は、フローセルに基づいてバルブ調整により行なわれるようになっており、自動調整が困難であることから、イトロ添加剤を適正量に高精度で制御することが難しく、火炎処理の品質安定化を容易に実現することはできなかった。即ち、イトロ処理におけるイトロ添加剤の吐出量が異なると、品質のばらつきが生じることになる。
【0008】
これに対して、特許文献1による方法では、燃焼終了を判定することはできるが、燃焼状態が適正であるか否かを判定することはできなかった。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑み、イトロ処理のような有機化合物添加剤の添加量を燃焼炎の色の画像処理により検出し、添加剤の吐出量を調整して、適正で安定した燃焼状態を維持するようにしたイトロ添加剤吐出量制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、燃料ガスおよび空気が供給されることによりワークの火炎処理を行なうバーナーに対して、バルブから導入されるイトロ添加剤の添加量を調整する装置であって、バーナーの炎の色を撮像する撮像手段と、撮像手段からの撮像信号に基づいて、炎の色からイトロ添加剤の添加量を演算し、この演算結果であるイトロ添加剤の添加量に基づいて、イトロ添加剤の添加量が適正範囲内にあるか、少な過ぎるかを判定する制御手段と、制御手段による判定結果に基づいて、バルブを調整することにより、イトロ添加剤の添加量を調整する調整手段と、を含むことを特徴としている。
【0011】
本発明によるイトロ添加剤吐出量制御装置は、好ましくは、各ワークの火炎処理開始時にバーナーを点火するパイロットバーナーと、バーナーおよびパイロットバーナーの着火を確認する火炎検出器と、を含んでいる。
【0012】
本発明によるイトロ添加剤吐出量制御装置は、好ましくは、上記制御手段が、バーナーの炎の色からイトロ添加剤の添加量を演算し、この演算結果に基づいて、イトロ添加剤の添加量の適否を判定する。
【0013】
本発明によるイトロ添加剤吐出量制御装置は、好ましくは、上記制御手段が、撮像手段からの撮像信号に基づいて、炎の色をRGB関数に変換し、その各色の値R,G,Bに基づいて、イトロ添加剤の添加量を演算する。
【0014】
本発明によるイトロ添加剤吐出量制御装置は、好ましくは、上記制御手段が、RGB関数の各色の値R,G,Bのうち、Rが、200≦R≦255の範囲内にある場合、イトロ添加剤の添加量が適正であり、またR<200の場合、イトロ添加剤の添加量が不足であると判定する。
【発明の効果】
【0015】
上記構成によれば、イトロ添加剤を利用した高接着工法により、イトロ添加剤を添加することにより可視化されたワークの火炎処理のためのバーナーの炎の色を、撮像手段で撮像して、その炎の画像を画像処理することで、炎の色を間接的に解析することになるので、イトロ添加剤の添加の影響を受けることなく、正確に燃焼状態を確認して、イトロ添加剤の添加量を検出することができる。よって、検出したイトロ添加剤の添加量に基づいてバルブを調整することにより、イトロ添加剤の吐出量を正確に制御することができる。
【0016】
各ワークの火炎処理開始時にバーナーを点火するパイロットバーナーとバーナーおよびパイロットバーナーの着火を確認する火炎検出器とを含んでいる場合には、ワークの火炎処理の間だけバーナーを燃焼させることができる。このような断続燃焼によって、燃料ガスの消費量が大幅に節減され、コストが低減する。また、火炎検出器によりバーナーおよびパイロットバーナーの着火を確認することができ、バーナーの点火そして火炎処理が確実に行なわれることができる。
【0017】
上記制御手段が、撮像手段からの撮像信号に基づいて、炎の色をRGB関数に変換し、その各色の値R,G,Bに基づいて、イトロ添加剤の添加量を演算する場合、さらに、制御手段が、RGB関数の各色の値R,G,Bのうち、Rが、200≦R≦255の範囲内にある場合、イトロ添加剤の添加量が適正であり、またR<200の場合、イトロ添加剤の添加量が不足であると判定する場合には、イトロ添加剤により可視化されたバーナーの炎の色に基づいて、RGB関数を利用して、容易にそして正確にバーナーの炎の色を解析することができる。
【0018】
本発明によれば、イトロ添加剤の添加により可視化されたワークの火炎処理のためのバーナーの炎の色を、画像処理を利用して間接的に解析することにより、イトロ添加剤の添加の影響を受けることなく、正確に燃焼状態を確認して、イトロ添加剤の添加量を検出することができる。したがって、検出したイトロ添加剤の添加量に基づいて、バルブを調整することにより、イトロ添加剤の吐出量を正確に制御して、適正で安定した燃焼状態を維持することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1及び図2は、本発明によるイトロ添加剤吐出量制御装置の一実施形態を組み込んだ火炎処理システムの全体構成を示している。
図1において、火炎処理システム10は、ワーク11を支持するワーク台12と、ワーク台12に支持されたワーク11の火炎処理を行なうメインバーナー13と、このメインバーナー13を支持し且つワーク11に対して火炎処理のための所定位置に移動させるための作業用ロボット14と、メインバーナー13の着火を行なうためのパイロットバーナー15と、メインバーナー13及びパイロットバーナー15の着火を確認するための火炎検出器16と、イトロ添加剤吐出量制御装置20と、から構成されている。
【0020】
ここで、ワーク台12は、互いに反対方向に延出していて鉛直軸まわりに回転可能な一対のアーム12a,12bを備えており、各アーム12a,12bによってワーク11(例えば前述したインストルメントパネルの基材1)を同時に両側で支持し得るように構成されている。各ワーク11は、アーム12a,12bの回転によって、それぞれ作業位置及び反対側の取出し位置に移動し得るようになっている。なお、図1において、作業位置にあるワーク11を実線で示し、取出し位置にあるワーク11を点線で示している。
そして、作業位置に在るワーク11に対して、メインバーナー13によりイトロ処理を含む火炎処理が行なわれると共に、取出し位置にて、火炎処理が終了したワーク11が取り外され、新たなワーク11が取り付けられ得るようになっている。なお、ワーク台12は、火炎処理が終了したワーク11に対して、火炎処理が正常に終了したとき当該ワーク11の一部を切除するエアニッパー12cを備えている。
【0021】
メインバーナー13は、従来の火炎処理用のものと同様の構成であって、燃料ガスとして例えばLPGが供給されると共に、このLPGに対して空気が導入され、さらにこの空気に対して、例えば有機ケイ素化合物等のイトロ添加剤18がバルブ13aを介して混入される。このバルブ13aは、空気に対するイトロ添加剤18の混入の量を外部制御により自動調整され得るように、流量可変バルブとして構成されている。
【0022】
作業用ロボット14は、メインバーナー13を三軸方向に自在に回転可能にそして移動可能に支持しており、メインバーナー13をパイロットバーナー15に接近させて点火した後、ワーク台12の作業位置に支持されたワーク11に対してメインバーナー13を接近させて火炎処理を行なうようになっている。パイロットバーナー15は、ワーク台12に隣接して配置されており、メインバーナー13が接近してきたときメインバーナー13の点火を行なう。
【0023】
火炎検出器16は例えば紫外線火炎検出器として構成されており、メインバーナー13及びパイロットバーナー15の火炎から出ている紫外線を検出して、メインバーナー13及びパイロットバーナー15の着火を確認する。ワーク台12,作業用ロボット14は、図示しない制御部により制御され、各ワーク11に対する火炎処理が行なわれるようになっている。
【0024】
イトロ点火剤吐出量制御装置20は、メインバーナー13がパイロットバーナー15に接近して着火したときに、その炎を撮像する撮像手段21と、この撮像手段21からの撮像信号を画像処理し、さらにイトロ添加剤18の添加量の適否を判定する制御手段22と、制御手段22の判定結果に基づいてバルブ13aを調整する調整手段23と、から構成されている。
【0025】
撮像手段21は、例えばCCDカメラ等から構成されており、メインバーナー13の炎を撮像し、撮像信号を制御手段22に送出する。制御手段22は、撮像手段21からの撮像信号に基づいて、メインバーナー13の炎の画像を画像処理して、炎の色からイトロ添加剤18の添加量の適否を判定すると共に、火炎検出器16からの検出信号に基づいてメインバーナー13及びパイロットバーナー15の着火確認を行なう。上述した画像処理は、制御手段22内に設けられたマイコン等のコンピュータ上で動作する画像処理ソフトウェアにより容易に実現され得る。
【0026】
ここで、メインバーナー13の炎の色が、通常のバーナーの燃焼状態と比較して、イトロ添加剤18の添加によって赤外領域から紫外線側にシフトして、最適燃焼の範囲が可視領域にずれ込むことにより、この炎の色を観察することによって燃焼状態を正確に把握することができる。即ち、上記炎の色は、イトロ添加量18の増減により、そのスペクトルが図2(A)にて符号Aに示す範囲から符号Bで示す範囲に移動し、イトロ添加剤18の添加量の適正範囲が可視領域の範囲内に位置する。
したがって、炎の色は、イトロ添加剤18の添加量が増えるにしたがって、例えばRGB関数で表わしたときの値Rが増大することから、当該炎の色を識別することにより、上記値Rが設定値以上となるように、イトロ添加量18を適正に制御することができる。これにより、適正なイトロ添加剤の吐出量を調整することが可能である。例えば、炎の色が、RGB関数で表わしたときに200≦R≦255の値Rになるように、イトロ添加剤の吐出量を調整する。
【0027】
そこで、本発明の実施形態に係るイトロ点火剤吐出量制御装置20においては、光学スペクトルに関して、メインバーナー13の炎の色がイトロ添加剤18の添加量を多くすると、紫外線側にずれることに着目して、撮像手段21からの撮像信号のうち、炎の画像に基づいて炎の色をRGB関数に変換し、炎の色を検出するようになっている。
【0028】
ここで、炎の色は、イトロ添加剤18の添加量が少ないと、例えば図3に示すように青色であるが、イトロ添加剤18の添加量が適正であると紫色となる。その際、青色は、RGB関数にて、Rが0,Gが175そしてBが230程度であるが、紫色は、同様にしてRGB関数にて、Rが200,Gが165そしてBが200程度である。したがって、メインバーナー13の炎の色が、青色から紫色に変化するときに、大幅に変動する値Rを指標として利用し、このR=200を設定値とする。
なお、イトロ添加剤の種類が変更された場合、この設定値も変更する必要があるが、上述した画像処理ソフトウェアのパラメータ変更により、設定値は容易に変更できる。
【0029】
これにより、制御手段22は、撮像手段21により撮像した炎の色に関して、図4に示すようにそのRGB関数の値Rが200以上(200≦R≦255)の場合には、イトロ添加剤18の添加量が適正であると判定し、また上記値Rが200未満(R<200)の場合には、イトロ添加剤18の添加量が不足であると判定する。そして、制御手段22は、その判定結果を調整手段23へ送出する。
【0030】
調整手段23は、制御手段22の判定結果に基づいてバルブ13aを調整する。即ち、調整手段23は、イトロ添加剤18の添加量が適正である場合には、バルブ13aの調整を行なわずに、イトロ添加剤18のバルブ13aからの吐出量をそのまま保持する。一方、調整手段23は、イトロ添加剤18の添加量が不足である場合には、イトロ添加剤18の吐出量を増大させるように、バルブ13aの調整を行なう。なお、調整手段23は、バルブ13aにおけるイトロ添加剤18の流量を変えるために、バルブ13aの弁の開き度合いを変更するためのモーターとして構成されており、制御手段22から送られてくる駆動信号に基づいて動作し、イトロ添加剤18の流量を変えるバルブ13aの開きドアを調整するようになっている。
【0031】
次に、本発明の実施形態に係る火炎処理システム10の動作を、図5のフローチャートに基づいて説明する。
先ずステップST1にて火炎処理システム10を起動する。そして、ステップST2にて、パイロットバーナー15を点火する。火炎検出器16がパイロットバーナー15の炎を検出し、検出信号を制御手段22に送出することで、ステップST3にて、制御手段22が、火炎検出器16からの検出信号に基づいてパイロットバーナー15の着火を確認する。なお、パイロットバーナー15が着火していない場合には、再びステップST2にて、パイロットバーナー15が点火される。
【0032】
この状態で、一つのワーク11の火炎処理が開始され、ステップST4にて、メインバーナー13が作業用ロボット14によってパイロットバーナー15に接近され、パイロットバーナー15によって点火される。
ステップST5にて、火炎検出器16がメインバーナー13の炎を検出し、この検出信号に基づいて、制御手段22がメインバーナー13の着火を確認する。メインバーナー13が着火していない場合には、再びステップST4にて、メインバーナー13が点火される。
【0033】
続いて、ステップST5でメインバーナー13の着火が確認された場合には、ステップST6にて、撮像手段21がパイロットバーナー15の炎を撮像することにより、制御手段22が、撮像手段21により撮像されたメインバーナー13の炎の画像に基づいて、この炎の色からイトロ添加剤18の添加量の適否を判定する。即ち、メインバーナー13の炎の色の画像に基づいてRGB関数のR値を求める。ここで、画像中の炎の領域を抽出し、各画素ごとにR値を求め、さらにその平均値をメインバーナー13の炎のR値として算出する。そのR値が、200≦R≦255の範囲内にあるか否か比較する。
そして、イトロ添加剤18の添加量が不足している場合、即ち、R値が200≦R≦255の範囲内に含まれていない場合には、ステップST7にて、調整手段23がバルブ13aを自動調整してイトロ添加剤の吐出量を増大させ、ステップST6に戻る。
【0034】
ステップST6にて、イトロ添加剤の添加量が適正範囲内(200≦R≦255)である場合には、続いてステップST8にて、メインバーナー13が作業用ロボット14によりワーク台12の作業位置に位置するワーク11に接近された後、メインバーナー13によるワーク11に対するイトロ処理を含む火炎処理が行なわれる。
火炎処理の終了後に、ステップST9にて、火炎検出器16がメインバーナー13の炎を検出することにより、この検出信号に基づいて、制御手段22がメインバーナー13の着火を確認する。
ここで、メインバーナー13が着火していない場合には、ステップST10にて、ワーク11の火炎処理が正常に行なわれなかったものとして、設備異常処理が行なわれ、作業が中止される。
【0035】
これに対して、ステップST9でメインバーナー13の着火が確認された場合には、火炎処理の間、メインバーナー13が正常に燃焼していたとして、ステップST11にて、メインバーナー13が消火されると共に、ステップST12にて、エアニッパ12cが作動して、火炎処理されたワーク11の一部を切除し、火炎処理が正常に完了した旨のマーキング(OK加工)が当該ワーク11に施されてステップST4に戻る。
【0036】
ここで、当該ワーク11は、ワーク台12が回動することにより、取出し位置に移動されると同時に、新たなワーク11が作業位置にセットされ、火炎処理の開始を待つ。
同時に、取出し位置に移動された処理済みのワーク11は、ワーク台12から取り外され、新たな未処理のワーク11が取り付けられる。
このようにして、一つのワーク11に対する火炎処理が終了する。
以上のステップST4からステップST11までの工程が繰返し行なわれることによって、順次にワーク11の火炎処理が行なわれる。その際、メインバーナー13はステップST4で点火され、ステップST11で消火されることで、断続的に点火されることになり、燃料ガスの消費が低減される。
【0037】
また、メインバーナー13の炎の色は、撮像手段21により撮像され、制御手段22で画像処理されることで解析されて、間接的にイトロ添加剤18の添加量が判定されるので、正確なイトロ添加剤18の添加量の判定が行なわれ、燃焼状態が確認されることができる。
【0038】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施できる。例えば、上述した実施形態においては、イトロ添加剤18として、有機ケイ素化合物の場合について説明したが、これに限らず、シラン化合物等の他の有機化合物をイトロ添加剤として使用してもよいことは明らかである。
また、上述した実施形態においては、制御手段は、メインバーナーの炎の色をRGB関数で表わして、その値Rの変動に基づいて、イトロ添加剤18の添加量の適否を判定するようになっているが、イトロ添加剤18の種類に応じて、上記炎の色の変動に対応して、他の値GまたはBの変動に基づいて、イトロ添加剤18の添加量の適否を判定するようにしてもよいことは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明によるイトロ添加剤吐出量制御装置の一実施形態を組み込んだ火炎処理システムの全体構成を示す概略図である。
【図2】図1の火炎処理システムにおいて、(A)はイトロ添加剤の添加量によるメインバーナーの炎の色の変化を示す概略図、(B)はイトロ添加剤の吐出量の調整を示す概略図である。
【図3】図1の火炎処理システムにおけるイトロ添加剤の添加量によるメインバーナーの炎の色の青色および紫色におけるRGB関数の各値を示す図表である。
【図4】図1の火炎処理システムにおけるイトロ添加剤の添加量によるメインバーナーの炎の色のRGB関数の値Rの変動および適正範囲を示すグラフである。
【図5】図1の火炎処理システムにおける火炎処理及びイトロ添加剤吐出量制御の動作を示すフローチャートである。
【図6】従来のバーナーによる基材の火炎処理を示す概略図である。
【図7】図6の火炎処理による基材の連続火炎処理を時間経過と共に示す概略図である。
【図8】従来のイトロ処理を付加したバーナーによる基材の火炎処理を示す概略図である。
【図9】図8の火炎処理による基材の連続火炎処理を時間経過と共に示す概略図である。
【符号の説明】
【0040】
10 火炎処理システム
11 ワーク
12 ワーク台
12a,12b アーム
12c エアニッパ
13 メインバーナー
14 作業用ロボット
15 パイロットバーナー
16 火炎検出器
18 イトロ添加剤
20 イトロ添加剤吐出量制御装置
21 撮像手段
22 制御手段
23 調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスおよび空気が供給されることによりワークの火炎処理を行なうバーナーに対して、バルブから導入されるイトロ添加剤の添加量を調整する装置であって、
上記バーナーの炎の色を撮像する撮像手段と、
上記撮像手段からの撮像信号に基づいて、上記バーナーの炎の画像処理により、上記イトロ添加剤の添加量の適否を判定する制御手段と、
上記制御手段による判定結果に基づいて、上記バルブを調整することにより、上記イトロ添加剤の添加量を調整する調整手段と、
を含んでいることを特徴とする、イトロ添加剤吐出量制御装置。
【請求項2】
各ワークの火炎処理開始時に前記バーナーを点火するパイロットバーナーと、前記バーナーおよびパイロットバーナーの着火を確認する火炎検出器と、を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載のイトロ添加剤吐出量制御装置。
【請求項3】
前記制御手段が、前記バーナーの炎の色からイトロ添加剤の添加量を演算し、この演算結果に基づいて、イトロ添加剤の添加量の適否を判定することを特徴とする、請求項1又は2に記載のイトロ添加剤吐出量制御装置。
【請求項4】
前記制御手段が、撮像手段からの撮像信号に基づいて、炎の色をRGB関数に変換し、その各色の値R,G,Bに基づいて、イトロ添加剤の添加量を演算することを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載のイトロ添加剤吐出量制御装置。
【請求項5】
前記制御手段が、前記RGB関数の各色の値R,G,Bのうち、Rが、200≦R≦255の範囲内にある場合、イトロ添加剤の添加量が適正であり、またR<200の場合、イトロ添加剤の添加量が不足であると判定することを特徴とする、請求項4に記載のイトロ添加剤吐出量制御装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−114384(P2008−114384A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−297039(P2006−297039)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【出願人】(000150512)株式会社仲田コーティング (40)
【Fターム(参考)】