説明

インキ組成物、印刷シートおよび印刷シート成形物

【課題】活性エネルギー線硬化型インキに油性インキを混合することにより作製したイン
キ組成物、およびこれを用いて製造される印刷シート、さらにこの印刷シートを成形加工
して製造される成形物の提供。
【解決手段】合成樹脂シート上に印刷を施す場合において、使用されるインキが、a)、
a−1)反応性ウレタンオリゴマーおよびa−2)ラジカル重合性二重結合を有しない非
反応性ポリエステル樹脂を含有する活性エネルギー線硬化型インキと、b)、b−1)熱
可塑性樹脂およびb−2)溶剤とを含有する油性インキとを混合したインキであることを
特徴とするインキ組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型インキと油性インキとを混合したインキ組成物、こ
れを用いて製造される印刷シートおよび印刷シート成形物に関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線硬化型インキは、様々な工業分野において利用されている。しかしな
がら、その硬化機構の性質上、様々な問題を抱えている。すなわち、硬化収縮により発生
する印刷物のカールあるいはひずみ応力等である。さらに、活性エネルギー線硬化型イン
キの物性に、より柔軟性および強靭な皮膜の形成、その上、優れた成形加工性を要求され
ている(非特許文献1〜5)。
【0003】
硬化収縮を低く抑える方法としては、無機物あるいは有機物の所謂充填剤等の添加剤の
混合が挙げられる(非特許文献1、2)。しかしながら、このような無機系添加剤の使用
は、バインダーポリマーの機械的強度、被印刷界面との接着性(所謂印刷層の密着性)お
よび硬化皮膜の透明性等を低下させ、それのみならず組成物の粘度上昇による印刷過程に
おける作業性の低下を伴うなど、完全な解決策とはなっていない。
【0004】
一方、所謂充填剤等の添加剤等を使用しない方法としては、開環重合性モノマーを用い
る方法が提唱されている。この重合性の非収縮モノマーとして、ラジカル重合性、カチオ
ン重合性、アニオン重合性があるなかで、特にカチオン重合性モノマーが好ましいことが
提起されている(非特許文献6、7)。しかしながら、いまだ実用に供せられる材料の種
類が少なく、本願課題の解決策としては、実用的ではない。
【0005】
さらに、合成樹脂シート上に印刷を施した印刷層を有する合成樹脂シートを様々に成形
加工させることも提案されている(特許文献1〜4)。合成樹脂シート上に印刷層を有す
る印刷シートを成形加工する際、使用される活性エネルギー線硬化型インキは、硬化性に
おいては、通常、満足できる物性を得ることができるが、硬化皮膜が硬すぎたり、あるい
は、可撓性はあるが、密着性不足であるため、後加工性(成形性)に問題があることが、
指摘されている。
【0006】
特許文献1には、インサートモルディング成形品および成形品に加飾を行うために用い
られる、ウレタンアクリレートオリゴマーおよびヘテロ環式単官能モノマーまたは環式単
官能モノマーを必須成分とする紫外線硬化型着色インキが記載されている。この方法では
、印刷が施された印刷シートを加熱して柔軟化させ、真空成形あるいは圧空成形によって
所定のプラスチック樹脂成形品を作製している。これらの工程においては、印刷されるイ
ンキが、基材である印刷シートから剥離あるいは亀裂を生じる場合があり、これに耐え得
るものでなくてはならない。この中で、紫外線硬化型着色インキを使用した、特に厚く印
刷した場合の印刷面の剥離および密着性に関しての記述が見当たらない。
【0007】
また、特許文献2にも、インサートモルディング成形品およびその製造方法の記載があ
る。使用されている紫外線硬化型着色インキは、特許文献1と同様であり、この紫外線硬
化型着色インキの上にバインダー層を設けるようにして性能を向上させてはいるが、この
バインダー層は溶剤を含有させているものであり、この特許文献2で使用される紫外線硬
化型着色インキの印刷方法、特に厚く印刷して立体感を得るような目的のためには、特許
文献1と同様に、印刷面に剥離あるいは亀裂(クラック)等が生じる可能性がある。
【0008】
さらに、特許文献3にも、インサートモルディング成形品および成形品に加飾を行うた
めに用いられる紫外線硬化型着色インキが記載されている。しかしながら、特許文献1お
よび2と基本的に使用される紫外線硬化型着色インキは、同じものであり、この成形加工
において、紫外線硬化型着色インキの印刷方法、特に厚く印刷して立体感を得るような目
的のためには、特許文献1と同様に、印刷面に剥離あるいは亀裂(クラック)等が生じる
可能性がある。
【0009】
また、特許文献4においては、インサートモルディングさせずに印刷が施された印刷シ
ートを真空成形、圧空成形または真空圧空成形して作製される成形品および印刷に使用さ
れる紫外線硬化型着色インキが記載されており、該紫外線硬化型着色インキは、2種類以
上の(ヘテロ)脂環式単官能モノマーおよび該モノマーに可溶性の熱可塑性樹脂を必須成
分としている。しかしながら、このままでは、印刷方法、特に厚く印刷して立体感を得る
ような目的のためには、特許文献1と同様に、印刷面に剥離あるいは亀裂(クラック)等
が生じる可能性がある。
【0010】
さらに、活性エネルギー線硬化型インキあるいは活性エネルギー線硬化組成物の合成樹
脂シートへの密着性を向上させるために、ウレタンアクリレートおよびアクリロイルモル
フォリン等のモノマー併用系に関して、特許文献5あるいは6に記載があるが、未だ不十
分である。
【0011】
特許文献1に記載されているようなウレタンオリゴマーあるいはウレタン樹脂に関して
、イソシアネート化合物を核として、硬いセグメントと、軟らかいセグメントの組み合わ
せ設計により、用途に適した化合物を用意駆使し、実用上の対応が行われている。この軟
らかいセグメント材料についても提案が各種なされている。しかしながら、ウレタンオリ
ゴマーおよびウレタン樹脂のような、より強い分子間相互作用に起因する性質のある化合
物の利用は、混合組成物において、あるいは着色組成物においては、系の安定性を著しく
欠き、その実施・実用には非常な制約が課せられることになり、実用面において、より安
定性のある材料が必要となる。
【0012】
このウレタンオリゴマーあるいはウレタン樹脂に関しては、湿し水を用いて画像を形成
する印刷方法であるオフセット印刷上、湿し水へ溶解してしまう傾向があり、印刷時の適
性を確保するのが困難である。
【0013】
開示されている技術は何れも柔軟性を付与する方法であるが、依然、さらなる向上が求
められているのが現状である。
【0014】
他方、合成樹脂シート上あるいは基材シート上に印刷層を有する印刷シートを作製する
のに、活性エネルギー線硬化型インキあるいは活性エネルギー線硬化型組成物にアクリル
樹脂等の樹脂あるいは溶剤を加えた組成物が提案されている(特許文献7〜10)。この
方法は、活性エネルギー線硬化型インキあるいは活性エネルギー線硬化型組成物に、活性
エネルギー線を照射し、硬化させるとその後の成形加工性が落ちることを予防する目的で
、印刷シートを作製する段階では、活性エネルギー線を照射させずに、熱乾燥等のみによ
って、印刷シートを作製し、成形加工後に、活性エネルギー線を照射し、硬化させて表面
硬度等を確保する方法である。
【0015】
すなわち、特許文献7には、アクリル樹脂、反応性ビニル基を有する化合物および光重
合開始剤を含有する樹脂組成物により形成される光硬化性樹脂層とシート基材とが積層さ
れてなる光(紫外線)硬化性シートが提案されている。しかしながら、このシートは、光
(紫外線)硬化前においては、低分子量の反応性ビニル基を有する化合物を含有するため
、表面に粘着性を有し、あるいは表面の粘着性が時間と共に変化する等の現象を生じ、ロ
ール状態での保存安定性が不良である。具体的には、粘着して巻き出せない、低温で保存
しないと両端より化合物がしみ出す等の問題があった。さらには、その表面粘着性のため
、印刷シートとして使用する場合の印刷工程において不具合が生じていた。
【0016】
そのため、特許文献7の保存安定性を改善するために、特許文献8あるいは9におい
て、光(紫外線)硬化前の優れた成形性と光(紫外線)硬化後の優れた表面性状(硬度、
耐候性等)を高次元で実現した特定の組成の光(紫外線)硬化性樹脂組成物及び該組成物
からなる光(紫外線)硬化性印刷シートが提案されている。
【0017】
さらに、特許文献10では、特許文献8あるいは9で提案されている光(紫外線)硬化
性シートの特性を改良し、光(紫外線)硬化性樹脂組成物の層と基材シートとの密着性お
よび諸物性(耐摩耗性、耐候性、耐薬品性、加工性、保存安定性等)が良好な光(紫外線
)硬化性シートおよび成形品が提案されている。
【0018】
しかしながら、特許文献7〜10は成形後に、光(紫外線)照射を行うことにより、印
刷層の密着性および成形加工性を確保しており、印刷シート作製時に印刷面の処理(硬化
)が終了していることが渇望されている。
【特許文献1】特開2003−145573号公報
【特許文献2】特開2003−145574号公報
【特許文献3】特開2003−326591号公報
【特許文献4】特開2004−314552号公報
【特許文献5】特開2002−69138号公報
【特許文献6】特開平07−314995号公報
【特許文献7】特開平04−166311号公報
【特許文献8】特開2002−79621号公報
【特許文献9】特開2002−80550号公報
【特許文献10】特開2006−282909号公報
【非特許文献1】「機能性インキの最新技術」2002年1月31日、第1刷、編集 大島 壮一、発行者 島 健太郎、発行所 株式会社 シーエム シー出版
【非特許文献2】「機能性インキの応用技術」2003年1月27日、普及版 第1 刷、シーエムシー出版編集部、発行者 島 健太郎、発行所 株式 会社 シーエムシー出版
【非特許文献3】「UV硬化技術の進歩」平成5年7月31日、初版 第1刷、監修 加藤 清視、発行人 井上 克夫、発行所 株式会社 総合技術セ ンター
【非特許文献4】「光・放射線硬化技術」昭和60年8月5日、初版 第1刷、発行 者 佐々木 英男、発行所 株式会社 大成社
【非特許文献5】「特殊機能インキ」昭和58年8月30日、編集人兼発行人 檜垣 寅雄、発行所 株式会社 シーエムシー出版
【非特許文献6】遠藤剛、三田文雄共著、「ラジカル開環重合性モノマー(−重合非 収縮性材料への応用の可能性−)」(No.32 日本接着学会年 次大会講演要旨集36−49頁(1994)
【非特許文献7】遠藤剛、金澤昭彦、三田文雄共著、日本接着学会誌、Vol. 39、No.3、118−124(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、活性エネルギー線硬化型インキに油性インキを混合することにより作
製したインキ組成物、およびこれを用いて製造される印刷シート、さらにこの印刷シート
を成形加工して製造される成形物を提供することにある。さらに、詳しくは、合成樹脂シ
ート上にインキ組成物を印刷し、加熱乾燥させた後、活性エネルギー線を照射させ、硬化
させて製造した印刷シートを真空成形加工、圧空成形加工または真空圧空成形加工等の絞
り加工により成形加工を行い、成形品を製造する方法において使用される、インキ組成物
および印刷シート、さらには、この印刷シートにより製造される印刷シート成形物を提供
することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者は、上記問題を解決し、厚く印刷しても、印刷面に剥離あるいは亀裂(クラッ
ク)等が生じず、しかも合成樹脂シートへの密着性の優れたインキ組成物、および該イン
キ組成物を用いて厚く印刷することにより立体感のある印刷面を有する印刷シート、さら
に該印刷シートを成形加工して製造される成形物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0021】
すなわち、本発明は、合成樹脂シート上に印刷を施す場合において、使用されるインキ
が、a)活性エネルギー線硬化型インキと、b)油性インキとを混合したインキであるこ
とを特徴とするインキ組成物に関するものである。
【0022】
また、本発明は、前記の活性エネルギー線硬化型インキが、a−1)反応性ウレタンオ
リゴマーおよびa−2)ラジカル重合性二重結合を有しない非反応性ポリエステル樹脂を
含有することを特徴とする上記のインキ組成物に関するものである。
【0023】
さらに、本発明は、前記の活性エネルギー線硬化型インキに、さらに、a−3)単官能
モノマーを含有することを特徴とする上記のインキ組成物に関するものである。
【0024】
また、本発明は、前記の油性インキが、b−1)熱可塑性樹脂およびb−2)溶剤を含
有していることを特徴とする上記のインキ組成物に関するものである。
【0025】
さらに、本発明は、前記のb−1)熱可塑性樹脂として、少なくとも塩化ビニル−酢
酸ビニル共重合体樹脂あるいは(メタ)アクリル樹脂を含有していることを特徴とする上
記のインキ組成物に関するものである。
【0026】
また、本発明は、前記のb−1)熱可塑性樹脂として、少なくとも塩化ビニル−酢酸ビ
ニル共重合体樹脂および(メタ)アクリル樹脂を含有していることを特徴とする上記のイ
ンキ組成物に関するものである。
【0027】
さらに、本発明は、前記のb−1)熱可塑性樹脂のガラス転移温度が、50〜250℃
であることを特徴とする上記のインキ組成物に関するものである。
【0028】
また、本発明は、前記のインキ組成物によって印刷を施したことを特徴とする印刷シー
トに関するものである。
【0029】
さらに、本発明は、前記の印刷シートが、スクリーンで印刷されることを特徴とする印
刷シートに関するものである。
【0030】
また、本発明は、前記の印刷シートを、絞り加工により行われて製造されることを特徴
とする印刷シート成形物に関するものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、厚く印刷しても、印刷面に剥離あるいは亀裂(クラック)等が生じない
インキ組成物、およびこれを用いて厚く印刷することにより立体感のある印刷面を有する
印刷シート、さらにこの印刷シートを成形加工して製造される成形物を提供することが可
能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明では、厚く印刷しても基材特に合成樹脂シートとの密着性が良く、柔軟性、可撓
性および強靭性も有するインキ組成物を提供し、厚く印刷できることから立体感のある印
刷層を形成することが可能である。さらに、これらの性状を有する印刷層であることから
製造された印刷シートを真空成形加工、圧空成形加工または真空圧空成形加工等の絞り加
工等により成形加工を行い、成形品を製造することも可能である。本発明では、活性エネ
ルギー線硬化型インキのみでは、厚く印刷した場合、特に合成樹脂シート上に印刷した場
合に、密着性等および印刷層の後成形加工性を良くする目的で、下記のような油性インキ
の混合を行う。
【0033】
本発明で使用されるインキ組成物は、活性エネルギー線硬化型インキに油性インキを混
合したインキである。混合割合は、活性エネルギー線硬化型インキおよび油性インキの合
計量に対して、活性エネルギー線硬化型インキが、10重量%〜90重量%が好ましく、
20重量%〜80重量%がより好ましく、50重量%〜80重量%が良い。
【0034】
本発明で使用される活性エネルギー線硬化型インキの組成としては、
(a−1)反応性ウレタンオリゴマー 5〜50重量%
(a−2)ラジカル重合性二重結合を有しない
非反応性ポリエステル樹脂 1〜50重量%
(a−3)単官能モノマー 1〜50重量%
(a−4)反応性ウレタンオリゴマーを除く反応性オリゴマー 0〜25重量%

(a−5)ラジカル重合性二重結合を有しない
非反応性ポリエステル樹脂を除く非反応性樹脂 0〜30重量%
(a−6)単官能モノマーを除くエチレン性不飽和二重結合を
有するモノマー 0〜30重量%

(a−7)光開始剤、光開始助剤 5〜15重量%
(a−8)顔料(有機顔料・無機顔料) 0〜55重量%
(a−9)添加剤 1〜10重量%
等が好ましい組成として挙げられる。
【0035】
また、本発明で使用される油性インキとしては、
(b−1)熱可塑性樹脂 5〜80重量%
(b−2)溶剤 20〜90重量%
(b−3)熱可塑性樹脂を除く樹脂 0〜20重量%
(b−4)顔料(有機顔料・無機顔料) 0〜55重量%
(b−5)添加剤 0〜10重量%
等が好ましい組成として挙げられる。
【0036】
第1に活性エネルギー線硬化型インキについて以下説明を行う。
【0037】
本発明において、(a−1)反応性ウレタンオリゴマーとしては、エチレン性不飽和二
重結合を有するものが好ましい。
【0038】
また、本発明の(a−1)反応性ウレタンオリゴマーは、平均重量分子量(Mw)が5
000以上であることが好ましく、分子量があまり大きくなると反応性が低下するために
50000以下、より好ましくは、30000以下が良い。
【0039】
さらに、(a−1)反応性ウレタンオリゴマーの硬化皮膜のガラス転移温度は、−70
〜60℃が好ましく、−60〜50℃がより好ましく、−30〜50℃がさらに好ましい

【0040】
また、(a−1)反応性ウレタンオリゴマーは、活性エネルギー線硬化型インキの組成
中5〜50重量%で用いられることが好ましく、30〜50重量%で用いられることが良
く、30〜40重量%が、さらに好ましい。5重量%以下の場合、凝集力に効果を発揮し
ない。また、50重量%以上になるとインキ形状が取り難くなり、また、活性エネルギー
線を照射した場合に皮膜の硬化が悪くなる。
【0041】
本発明において、(a−2)ラジカル重合性二重結合を有しない非反応性ポリエステル
樹脂としては、特に、環状構造を有するポリエステル樹脂が良く、その分子内にカルボキ
シル基を有するものであることが好ましい。このポリエステル樹脂は急激な硬化収縮を緩
和させると推定できる。また分子中にカルボキシル基を有し、樹脂中にシクロヘキセンま
たはシクロヘキサン構造を含有することがより好ましい。
【0042】
また、本発明の(a−2)ラジカル重合性二重結合を有しない非反応性ポリエステル樹
脂を合成するのに使用するアルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコ
ール、1,3−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール
、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグルコール、トリエチレングリコール、水添化
ビスフェノールA、水添化ビスフェノールF、シクロヘキサン−1、2−ジオール、シクロ
ヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、
トリスヒドロキシメチルアミノメタンなどの多価アルコール等が挙げられ、これらの1種
または2種以上を使用してもよい。
【0043】
硬化皮膜の強靭性と、絞り・曲げなどの後加工適正をより強くするには、シクロへキサ
ン構造を含有した水添化ビスフェノールA、水添化ビスフェノールF、シクロヘキサンジメ
タノールが好ましい。
【0044】
また、(a−2)ラジカル重合性二重結合を有しない非反応性ポリエステル樹脂を合成
するのに使用する酸成分としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水コ
ハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒ
ドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水ヘット
酸、無水ハイミック酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水トリメリット酸、
メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸などの多塩基酸等が挙
げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。また、安息香酸などの1
塩基酸、アレイン酸、アマニ油脂肪酸や大豆油脂肪酸などの脂肪酸を使用することもでき
る。
【0045】
硬化皮膜の強靭性と、絞り・曲げなどの後加工性をより強くするには、シクロへキセン
構造を含有したテトラヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサン構造を含有したヘキサヒドロ
無水フタル酸が好ましい。
【0046】
本発明に係る(a−2)ラジカル重合性二重結合を有しない非反応性ポリエステル樹脂
、すなわち非架橋型のポリエステル樹脂は、併用する他の樹脂、反応性オリゴマー、モノ
マー溶解性はもとより、硬化皮膜の物性バランス確保から、重量平均分子量(Mw)が1
000以下であれば硬化皮膜が弱くなり、10000以上であればモノマーへの溶解性が
劣るため、1000〜10000で、好ましくは、2000〜6000の範囲が良い。
【0047】
本発明に係る(a−2)ラジカル重合性二重結合を有しない非反応性ポリエステル樹脂
は、活性エネルギー線硬化型インキの組成中100重量%に対して1〜50重量%の範囲
で用いられ、好ましくは5〜30重量%である。
【0048】
本発明において、(a−3)単官能モノマーとしては、(メタ)アクリレート類が良い
が、これに限定されるものではなく、1〜50重量%の範囲で用いられる。
【0049】
(a−3)単官能のモノマーの例としては、アルキル(カーボン数が1〜18)(メタ
)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブ
チル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレ
ート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、があり、さら
には、ベンジル(メタ)アクリレート、ブチルフェノール、オクチルフェノールまたはノ
ニルフェノールまたはドデシルフェノールのようなアルキルフェノールエチレンオキサイ
ド付加物の(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)
アクリレート、トリシクロデカンモノメチロール(メタ)アクリレート、N−ビニルカプ
ロラクタム、N-ビニルピロリドン、アクロイルモルフォリン、フェノキシエチル(メタ
)アクリレート、シクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アク
リレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2−アクリロイロキシエチルフタ
レート、2−アクリロイロキシプロピルフタレート、2−アクリロイロキシエチル−2−
ヒドロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、ア
クリロイルモルフォリン等が挙げられる。特に、アクリロイルモルフォリンおよびフェノ
キシエチルアクリレートが、密着性向上には良い。
【0050】
さらに、本発明において、(a−3)単官能モノマーの(メタ)アクリレートモノマー
類としては、脂肪族アルコール化合物のアルキレンオキサイド付加体(メタ)アクリレー
トがある。脂肪族アルコール化合物のアルキレンオキサイド付加体(メタ)アクリレート
モノマーとして、脂肪族アルコール化合物のモノまたポリ(1〜20)アルキレン(C2
〜C20)オキサイド付加体(アルキレンオキサイド)があり、単官能モノマーとしては
、カーボン数が2〜20アルキレンオキサイド付加体(メタ)アクリレート、例えばメタ
ノールモノまたはポリ(1〜20)アルキレン(C2〜C20)オキサイド付加体(アル
キレンオキサイドとして、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサ
イド)(メタ)アクリレート、エタノールモノまたはポリ(1〜20)アルキレン(C2
〜C20)オキサイド付加体等が、例示される。
【0051】
本発明において、(a−4)反応性ウレタンオリゴマーを除く反応性オリゴマーは、エ
チレン性不飽和二重結合を有するものが好ましく、アルキッドアクリレート、エポキシア
クリレート、ポリエステルアクリレート等が挙げられる。さらに、活性エネルギー線硬化
型インキ中0〜25重量%の範囲で用いられることが好ましい。
【0052】
本発明に係る(a−5)ラジカル重合性二重結合を有しない非反応性ポリエステル樹脂
を除く非反応性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステ
ル樹脂((メタ)アクリル樹脂))、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース誘導
体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、塩化ビニル−酢
酸ビニル共重合体樹脂、ポリアマイド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレ
ート樹脂、ブタジエン−アクリルニトリル共重合体樹脂のような合成ゴム等が挙げられ、
油性インキ中の(b−1)熱可塑性樹脂および(b−3)熱可塑性樹脂を除く樹脂と重複
する場合があるが、少なくとも(a−5)ラジカル重合性二重結合を有しない非反応性ポ
リエステル樹脂を除く非反応性樹脂を活性エネルギー線硬化型インキに混合した場合に、
活性エネルギー線硬化型インキのインキ性状を有することが必要である。さらに、(a−
5)ラジカル重合性二重結合を有しない非反応性ポリエステル樹脂を除く非反応性樹脂は
、上記に挙げた中の1種または2種以上を用いることができる。何れも反応性ウレタンオ
リゴマー、モノマー可溶である樹脂が用いられる。
【0053】
さらに、本発明に係る(a−5)ラジカル重合性二重結合を有しない非反応性ポリエス
テル樹脂を除く非反応性樹脂は、本発明に係る(a−2)ラジカル重合性二重結合を有し
ない非反応性ポリエステル樹脂と同様に、併用する他の樹脂、反応性ウレタンオリゴマー
、モノマー溶解性はもとより、硬化皮膜の物性バランス確保から、重量平均分子量(Mw
)が1000以下であれば硬化皮膜が弱くなり、10000以上であればモノマーへの溶
解性が劣るため、1000〜10000で、好ましくは、2000〜6000の範囲が良
い。
【0054】
また、本発明の(a−6)単官能モノマーを除くエチレン性不飽和二重結合を有するモ
ノマーとしては、2官能以上の多官能の(メタ)アクリレート類が挙げられ、活性エネル
ギー線硬化型インキ中の組成として、0〜40重量%の範囲で用いられる。40重量%を
超えると(a−2)ラジカル重合性二重結合を有しない非反応性ポリエステル樹脂等の樹
脂の可溶性が落ちる。
【0055】
本発明の(a−6)単官能モノマーを除くエチレン性不飽和二重結合を有する2官能モ
ノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ
(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレン
グリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ
プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)ア
クリレート、ペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグルコールジ(
メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジ(メタ9アクリレート
、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレー
ト、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ヘキシルジオールジ(メ
タ)アクリレート、1,5−ヘキシルジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール
Aテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチ
レンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0056】
また、本発明の(a−6)単官能モノマーを除くエチレン性不飽和二重結合を有する3
官能モノマーとしては、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン
トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリカプロラクトネートトリ(メタ
)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールヘキ
サントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリ
メチロールヘキサントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)ア
クリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0057】
さらに、本発明において、(a−6)単官能モノマーを除くエチレン性不飽和二重結合
を有するモノマーの(メタ)アクリレートモノマー類としては、脂肪族アルコール化合物
のアルキレンオキサイド付加体(メタ)アクリレートがある。脂肪族アルコール化合物の
アルキレンオキサイド付加体(メタ)アクリレートモノマーとして、脂肪族アルコール化
合物のモノまたポリ(1〜20)アルキレン(C2〜C20)オキサイド付加体(アルキ
レンオキサイド)があり、2官能モノマーとしては、エチレングリコールモノまたはポリ
(1〜20)アルキレン(C2〜C20)オキサイド付加体(アルキレンオキサイドとし
て、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド)ジ(メタ)アク
リレート、ジエチレングリコールモノまたはポリ(2〜20)アルキレン(C2〜C20
)オキサイド付加体等が例示される。
【0058】
また、3官能モノマーとして、グリセリンポリ(2〜20)アルキレン(C2〜C20)
オキサイド付加体(アルキレンオキサイドとして、エチレンオキサイド、プロピレンオキ
サイド、ブチレンオキサイド)トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリ
(2〜20)アルキレン(C2〜C20)オキサイド付加体等が例示される。
【0059】
本発明で使用される(a−7)光開始剤、光開始助剤のうち光開始剤としては、水素引
き抜き型として、ベンゾフェノン、p−メチルベンゾフェノン、p―クロルベンゾフェノ
ン、テトラクロロベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェ
ノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイルー4’−メチルージフェニルサルファ
イド、2−イソプロピルチオシサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジ
エチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、アセトフェノン・アリールケ
トン系開始剤、4,4‘−ビス(ジエチルアニノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジ
メチルアミノ)ベンゾフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、p−ジメチル
アミノアセトフェノン・ジアルキルアミノアリールケトン系開始剤、チオキサントン、キ
サントン系・そのハロゲン置換・多環カルボニル系開始剤などが挙げられる。
【0060】
また、開裂型光開始剤として、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイ
ソプロピルエーテル、α―アクリルベンゾイル・ベンゾイン系、ベンジル、2−メチルー
2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパンー1−オン、2−ベンジルー2−ジ
メチルアミノー1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、ベンジルメチルケター
ル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシー2−メチルー1−
フェニルプロパンー1−オン、1−(4−イソプロピルフェニルー2−ヒドロキシー2−
メチルプロパンー1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニルー(2−ヒドロキ
シー2−プロピル)ケトン、4−(2−アクロイルーオキシエトキシ)フェニルー2−ヒ
ドロキシー2−プロピルケトン、ジエトキシアセトフェノンなどがある。
【0061】
本発明で使用される(a−7)光開始剤、光開始助剤のうち光開始剤としては、トリエ
タノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン・脂肪族アミ
ン、4,4‘−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4
−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジブチルエ
タノールアミンが挙げられる。
【0062】
本発明で使用される(a−7)光開始剤、光開始助剤は、活性エネルギー線硬化型イン
キ組成物100重量%に対して合計5〜15重量%の範囲で用いられる。
【0063】
本発明の着色材としては、主に顔料が使用でき、活性エネルギー線硬化型インキの(a
−8)顔料(有機顔料・無機顔料)および油性インキの(b−4)顔料(有機顔料・無機
顔料)としては、酸化チタンなどの白顔料、ミネラルファーネスイエロー、ネーブルスイ
エロー、ナフトールイエローS,ハンザイエローG,キノリンイエローレーキ、パーマネ
ントイエローNCG,タートラジンレーキなどの黄顔料、インダスレンブリリアントオレ
ンジRK、ピラゾンオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジG、インダスレン
ブリリアントオレンジGKなどの橙色顔料、パーマネントレッド4R、リオノールレッド
、ピラロゾンレッド、ウオッチングレッツドカルシウム塩、レーキレッドD,ブリリアン
トカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアン
トカーミン3Bなどの赤色顔料、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ
などの紫色顔料、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレー
キ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩
素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBCなどの青色顔料、ピグメント
グリーンB、マラカイドグリーンレーキ、ファイナスイエリーグリーンGなどの緑色顔料
、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランブラック、アニリンブラックなどの黒色
顔料、バライト粉、炭酸バリウム、ベントンなどの体質顔料などが挙げられる。
【0064】
本発明に係る顔料は、各活性エネルギー線硬化型インキおよび油性インキの組成物10
0重量%に対して0〜55重量%の範囲で用いられ、好ましくは0〜30重量%である。
なお、本発明において、インキとは、活性エネルギー線硬化型インキ、油性インキおよび
活性エネルギー線硬化型インキと油性インキとを混合したインキの各インキで、顔料等の
着色材を含有していない場合(含有量0重量%)も含めて呼称する。
【0065】
また、本発明では、上記に示したような(a−8)顔料(有機顔料・無機顔料)および
(b−4)顔料(有機顔料・無機顔料)以外に、金属粉あるいは金属ペーストを加えるこ
とができる。この金属粉あるいは金属ペーストの金属としては、銅と亜鉛の合金であるブ
ロンズパウダーを用いる場合もあるが、コスト等からアルミニウムパウダーが一般的であ
り、このアルミニウムを微粉末化そのまま用いるかあるいは脂肪酸等で表面を処理したも
のを沸点の高い炭化水素類溶剤(ミネラルスピリットなど)でペースト状にしたアルミニ
ウムペーストが用いられている。
【0066】
さらに、本発明において、活性エネルギー線硬化型インキの(a−9)添加剤および油
性インキの(b−5)添加剤の添加剤としては、耐摩擦、ブロッキング防止、スベリ、ス
リキズ防止を目的として、例えば、カルナバ、木ろうなどの植物系ワックス、鯨ろう、ラ
ノリンなどの動物系ワックス、モンタンなどの鉱物系ワックス、パラフィン、マイクロク
リスタリンなどの石油系ワックス(以上天然ワックス)やサゾール、ポリエチレンなどの
合成炭化水素ワックス、シリコーンオイルなどのシリコーン系添加剤、硬化ひまし油など
の水素化ワックス、脂肪酸アミドなどのアミド系ワックス、他、ケトン、アミン、イミド
、エステル化合物及びポリテトラフルオロエチレン(以上合成ワックス)を使用すること
が出来る。
【0067】
第2に油性インキについて以下説明を行う。
【0068】
本発明において、(b−1)熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリ
塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂((メタ)アクリル樹脂))、セルロ
ース誘導体樹脂(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、塩
化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアマイド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジ
アリルフタレート樹脂、ブタジエンーアクリルニトリル共重合体樹脂のような合成ゴム等
が挙げられる。これらの樹脂は、その中の1種または2種以上を用いることができるが、
本発明において用いられる溶剤に可溶であり、油性インキとしての性状を有することが必
要である。上記の(b−1)熱可塑性樹脂の中、特に好ましいのは本発明においては、ポ
リ(メタ)アクリル酸エステル樹脂((メタ)アクリル樹脂))および塩化ビニル−酢酸
ビニル共重合体樹脂であり、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体樹脂がより好ましい。
【0069】
本発明においては、一般的な油性インキに使用されているロジン(変性)フェノール樹
脂もこの(b−1)熱可塑性樹脂の範疇に含めることとする。
【0070】
本発明に係る熱可塑性樹脂のガラス転移温度としては、30〜200℃が良く、50〜
150℃がより好ましく、さらに60〜120℃が良い。
【0071】
本発明に係る(b−1)熱可塑性樹脂は、油性インキの組成物100重量%に対して5
〜80重量%の範囲で用いられ、好ましくは30〜60重量%である。
【0072】
本発明の(b−2)溶剤としては、炭化水素類のトルエン、キシレン、シクロヘキサン
、シクロヘキセン、ソルベッソ100、ソルベッソ150等、エステル類の酢酸エチル、
酢酸nブチル、酢酸イソブチル、酢酸nアミル、セロソルブアセテート、メトキシプロピ
ルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等、ケトン類のアセ
トン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、、シクロヘキサノン、イソホロン
等、エーテル類のメチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトー
ル、カルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルカルビトール、プロピレングリコール
モノメチルエーテル、アルコール類のメタノール、エタノールイソプロピルアルコール、
n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、シクロヘキ
サノール等が挙げられる。
【0073】
本発明の目的である印刷適性を有する溶剤としては、特に、沸点が100℃以上の高沸
点溶剤が良く、乾燥性等を考慮すると、100〜300℃の沸点を有する溶剤が好ましく
、トルエン、キシレン、ソルベッソ100、ソルベッソ150、酢酸nブチル、酢酸イソ
ブチル、酢酸nアミル、セロソルブアセテート、メトキシプロピルアセテート、プロピレ
ングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、イソホロン、メチルセ
ロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、カルビトール、ブチル
カルビトール、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、n−
ブチルアルコール、イソブチルアルコール、シクロヘキサノール等が良い。
【0074】
さらに、好適には、沸点が140〜250℃の沸点を有する溶剤が良く、ソルベッソ1
00、ソルベッソ150、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエー
テルアセテート、シクロヘキサノン、イソホロン、ブチルセロソルブ、メチルカルビトー
ル、カルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルカルビトール、シクロヘキサノールが
好ましい。
【0075】
本発明に係る(b−2)溶剤は、油性インキの組成物100重量%に対して20〜90
重量%の範囲で用いられ、好ましくは30〜60重量%である。
【0076】
(b−3)熱可塑性樹脂を除く樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェ
ノール樹脂、メラニン樹脂等が挙げられ、油性インキの組成物100重量%に対して0〜
20重量%の範囲で用いられ、好ましくは0〜10重量%である。
【0077】
なお、本発明において、油性インキ中の(b−1)熱可塑性樹脂あるいは(b−3)熱
可塑性樹脂を除く樹脂が、活性エネルギー線硬化型インキ中の(a−2)ラジカル重合性
二重結合を有しない非反応性ポリエステル樹脂あるいは(a−5)ラジカル重合性二重結
合を有しない非反応性ポリエステル樹脂を除く非反応性樹脂と重複する場合があるが、少
なくとも油性インキを作製した場合に、油性インキとしてのインキ性状を有することが必
要である。
【0078】
油性インキの(b−4)顔料(有機顔料・無機顔料)および(b−5)添加剤について
は、上記の活性エネルギー線硬化型インキの部分で説明した通りである。
【0079】
本発明において、基材としては、後の成形加工を考慮すると合成樹脂シート、その中で
も熱可塑性樹脂シートが好ましい。熱可塑性樹脂シートに使用される熱可塑性樹脂として
は、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂
、ポリプロピレン樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、ポリ
アミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられるが、基材上への印
刷の容易性および最終の成形品の諸物性を勘案すると、ポリカーボネート樹脂およびポリ
エステル樹脂が好ましく、さらに、ポリカーボネート樹脂が好適に使用できる。
【0080】
また、本発明のインキ組成物を合成樹脂シート上に印刷する方法としては、一般的に公
知である印刷方法は何れも使用可能であり、例えば、オフセット印刷、グラビア印刷、ス
クリーン印刷、樹脂凸版印刷、インクジェット印刷等が挙げられるが、立体感を出すため
に厚く印刷するため、さらに、剥離あるいは亀裂(クラック)防止等を勘案すると、スク
リーン印刷が好適である。印刷層の厚さとしては、3μm以上、より好ましくは、5μm
以上、さらに、10μm以上が良い。
【0081】
本発明のインキ組成物で作製される印刷層(インキ層)は、活性エネルギー線硬化型イ
ンキのみでは、達成できなかった特に、印刷層を厚くした場合に、基材特に、合成樹脂シ
ートへの密着性が良く、印刷の立体感、触感が得られる。
【0082】
また、合成樹脂シートを印刷した印刷面上に、活性エネルギー線硬化型あるいは熱乾燥
型もしくは、酸化重合型オーバープリントニス組成物を印刷し、もしくは塗工し、硬化さ
せて印刷シートを作製することもできる。さらに、厚い印刷層にできることからオーバー
プリントニス組成物を印刷し、もしくは塗工し、硬化させた場合にも、立体感(、触感)
を得ることができる。
【0083】
また、合成樹脂シート上に印刷を行った後に、(b−2)溶剤を乾燥させてから、活性
エネルギー線を照射せずに、その上に活性エネルギー線硬化型であるオーバープリントニ
ス組成物を印刷もしくは塗工してから活性エネルギー線を照射し、本発明のインキ組成物
および活性エネルギー線硬化型であるオーバープリントニス組成物を同時に硬化させる方
法も可能である。
【0084】
さらに、本発明では、合成樹脂シートを印刷した印刷面上に、熱可塑性樹脂等の樹脂シ
ート(層)を積層することも可能であり、熱あるいは加圧もしくは、熱および加圧により
所謂ラミネートすることにより、印刷面の保護あるいは美粧性等の向上を目指すことがで
き、もちろん樹脂シート(層)を積層するのに熱あるいは加圧もしくは、熱および加圧に
よる方法だけではなく樹脂シート(層)との間に、接着層等の層を挟ませることも可能で
あり、厚い印刷層にできることから熱可塑性樹脂等の樹脂シート(層)を積層させた場合
にも、立体感(、触感)を得ることができる。
【0085】
本発明では、上記のように、合成樹脂シート上に本発明のインキ組成物を印刷した印刷
シートの印刷面上に、活性エネルギー線硬化型あるいは熱乾燥型もしくは、酸化重合型で
あるオーバープリントニス組成物を印刷し、もしくは塗工し、硬化させて作製した印刷シ
ート作製後、この印刷シートを真空成形、圧空成形あるいは真空圧空成形して、印刷シー
ト成形物を製造することができる。
【0086】
さらに、本発明は、合成樹脂シート上に本発明のインキ組成物を印刷した印刷シートの
印刷面上に、熱可塑性樹脂等の樹脂シート(層)を積層させて作製した印刷シート作製後
、この印刷シートを真空成形、圧空成形あるいは真空圧空成形して、印刷シート成形物を
製造することができる。
【0087】
本発明において、ガラス転移温度の測定は、試験片を室温から、10℃/分の割合で昇
温させ、熱分析装置にて厚さ方向の熱膨張量を測定し、ガラス転移温度の前後の曲線に接
線を引き、接線の交点からガラス転移温度(省略する場合には、Tgとする。)を求める
TMA法にて測定を行なった。
【0088】
また、本発明の平均分子量は、重量平均分子量を表し、GPC(Gel Permeation Chromato
graphy)により測定した。
【0089】
本発明において、活性エネルギー線硬化型とは、紫外線あるいは電子線硬化型を主とし
て示し、紫外線硬化型である場合は、光開始剤が必要である。
【実施例】
【0090】
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権
利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における「部」は、「重量部」を表す

【0091】
表1に示す活性エネルギー線硬化型インキの原料および油性インキの原料をそれぞれ混
合器により混合して、活性エネルギー線硬化型インキおよび油性インキを混合器により混
合してインキ組成物を作製した(表1:実施例1〜5、比較例1〜2)。
【0092】
【表1】

【0093】
さらに、透明な100μm厚のポリカーボネート樹脂シートに、実施例1〜5、比較例
1〜2のインキ組成物によりスクリーン印刷を行い、熱乾燥炉を通して、溶剤を乾燥させ
た。その後、アクリル樹脂シートの印刷層を160W/cmの強度を有するメタルハライ
ドランプ1灯の下10cmのところを10m/分のコンベアーに載せ、照射し、硬化させ
、印刷シートを作製した(印刷層の厚さ10μm以上、表2に厚さを示す。)。
【0094】
得られた印刷シートの印刷面(塗工面)にJIS K5600によりクロスカットを行
い、テープ剥離試験を行った(テープ接着性試験)。
〔評価〕
◎:剥がれなし。
○:印刷面(塗工面)の一部(5%以下)に剥がれが観察される。
△:印刷面(塗工面)の一部(50%未満)に剥離が観察される。
×:印刷面(塗工面)の一部(50%以上)または全部に剥離が観察される。
【0095】
さらに、得られた印刷シートを印刷面(塗工面)を表にして、90°に折り曲げ、剥離
および亀裂(クラック)の度合いを50倍ルーペで観察した(成形性適性試験)。
〔評価〕
◎:剥離および亀裂(クラック)が観察されない。
○:剥離は観察されないが、亀裂(クラック)が少し観察される。
△:剥離はほとんど観察されないが(多少観察される。)、さらに亀裂(クラッ
ク)も観察される。
×:剥離が観察され、亀裂(クラック)も観察される。
【0096】
評価結果を表2に示す。
【0097】
【表2】

【0098】
また、立体感および触感をそれぞれ目視および指診による官能検査を行った結果、立体
感があり、しかも指診によっても立体感が得られた。
【0099】
表2の実施例である本発明のインキ組成物を使用して作製した印刷シートを用いて、製
造した印刷シート成形物は、その表面の印刷面に剥離あるいは亀裂(クラック)等が生ぜ
ず、一方、比較例においては、剥離も亀裂(クラック)も観察される。本発明で、密着性
および成形適性に優れた、活性エネルギー線硬化型インキと油性インキとを混合したイン
キ組成物、これを用いて製造される印刷シートおよび印刷シート成形物が提供可能となり
、しかもその印刷層は、立体感が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂シート上に印刷を施す場合において、使用されるインキが、a)活性エネルギ
ー線硬化型インキと、b)油性インキとを混合したインキであることを特徴とするインキ
組成物。
【請求項2】
請求項1記載の活性エネルギー線硬化型インキが、a−1)反応性ウレタンオリゴマー
およびa−2)ラジカル重合性二重結合を有しない非反応性ポリエステル樹脂を含有する
ことを特徴とする請求項1記載のインキ組成物。
【請求項3】
請求項2記載の活性エネルギー線硬化型インキに、さらに、a−3)単官能モノマーを
含有することを特徴とする請求項1または2記載のインキ組成物。
【請求項4】
請求項1記載の油性インキが、b−1)熱可塑性樹脂およびb−2)溶剤を含有してい
ることを特徴とする請求項1記載のインキ組成物。
【請求項5】
請求項4記載のb−1)熱可塑性樹脂として、少なくとも塩化ビニル−酢酸ビニル共
重合体樹脂あるいは(メタ)アクリル樹脂を含有していることを特徴とする請求項1また
は4記載のインキ組成物。
【請求項6】
請求項4または5記載のb−1)熱可塑性樹脂として、少なくとも塩化ビニル−酢酸
ビニル共重合体樹脂および(メタ)アクリル樹脂を含有していることを特徴とする請求項
1または4記載のインキ組成物。
【請求項7】
請求項4乃至6何れか記載のb−1)熱可塑性樹脂のガラス転移温度が、50〜250
℃であることを特徴とする請求項1または5記載のインキ組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7何れか記載のインキ組成物によって印刷を施したことを特徴とする印刷
シート。
【請求項9】
請求項8記載の印刷シートが、スクリーンで印刷されることを特徴とする印刷シート。
【請求項10】
請求項8または9記載の印刷シートを、絞り加工により行われて製造されることを特徴
とする印刷シート成形物。

【公開番号】特開2010−6879(P2010−6879A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165114(P2008−165114)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】