説明

インクジェットヘッド

【目的】上下2段に配置した圧力室の間に共通の配線層を配置することにより、高密度化及び小型化と工数の簡略化とを同時に図ることができると共に、上下の各圧力室を独立して動作させることが可能なインクジェットヘッドの提供。
【構成】圧力発生手段によってインクをノズルから吐出するインクジェットヘッドであって、第1の圧力室11が形成され、該第1の圧力室11の壁面の一部を形成する第1の振動板13に配設された第1の圧力発生手段を有する第1の層10と、第2の圧力室21が形成され、該第2の圧力室21の壁面の一部を形成する第2の振動板23に配設された第2の圧力発生手段を有する第2の層20と、前記第1の層10の前記第1の圧力発生手段及び前記第2の層20の前記第2の圧力発生手段にそれぞれ電圧を印加する配線が形成された配線層30とを有し、前記配線層30は、前記第1の層10と前記第2の層20との間に配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェットヘッドに関し、詳しくは、圧力室を複数の層に立体的に配置することによって高密度化及び小型化を図ったインクジェットヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
軽印刷用途として高精細描画が可能なインクジェットプリンタが望まれており、インクジェットヘッドの高集積化が市場のニーズとしてある。
【0003】
インクジェットヘッドには、インクをノズルから吐出するための圧力発生手段として、電気信号を機械エネルギーに変換するPZT等の圧電素子を用い、圧力室の一面に形成された振動板を圧電素子によって振動させることで、圧力室内のインクにノズルから吐出するための圧力変化を与えるものが知られている。これは、電気信号を熱エネルギーに変換するヒーターを用いて圧力室内のインクに吐出のための圧力変化を与えるサーマル方式のものと異なり、圧力室に大きさが必要となるため、物理的な集積限界がある。
【0004】
このため、従来、圧力室を上下方向に2段に積層することによって圧力室の高密度な集積を可能とする技術が提案されている(特許文献1、2及び3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−146010号公報
【特許文献2】特開2005−153501号公報
【特許文献3】特開2005−231258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2記載の技術では、圧力室を平面的に配置した層を2層積層することによって圧力室を上下2段に積層する形となっている。従って、各層の圧力室にそれぞれ設けられる圧電素子に対して電圧を印加するための配線が、各層にそれぞれ必要となる。これにより、インクジェットヘッドを作製するための工数が増加すると共に歩留まりが悪化する原因ともなり、コスト高となる問題がある。
【0007】
また、特許文献2記載の技術は、上下2段に積層された2つの圧力室の間に1つの圧電素子を共通に配置することで、ノズル数に対する圧電素子数を削減できるようにしているが、圧電素子を共通にする2つの圧力室のうち一方がインクを吐出している状態のとき、他方はインクを吐出することができない。つまり、圧電素子を共通にする2つの圧力室は独立して動作させることができないので、液滴量のコントロール時等に悪影響を及ぼす問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上下2段に配置した圧力室の間に共通の配線層を配置することにより、高密度化及び小型化と工数の簡略化とを同時に図ることができると共に、上下の各圧力室を独立して動作させることが可能なインクジェットヘッドを提供することを課題とする。
【0009】
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0011】
請求項1記載の発明は、圧力発生手段によってインクをノズルから吐出するインクジェットヘッドであって、
第1の圧力室が形成され、該第1の圧力室の壁面の一部を形成する第1の振動板に配設された第1の圧力発生手段を有する第1の層と、
第2の圧力室が形成され、該第2の圧力室の壁面の一部を形成する第2の振動板に配設された第2の圧力発生手段を有する第2の層と、
前記第1の層の前記第1の圧力発生手段及び前記第2の層の前記第2の圧力発生手段にそれぞれ電圧を印加する配線が形成された配線層とを有し、
前記配線層は、前記第1の層と前記第2の層との間に配置されていることを特徴とするインクジェットヘッドである。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記第1の圧力発生手段は、前記第1の層の底面に形成され、
前記第2の圧力発生手段は、前記第2の層の天面に形成されていることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドである。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記配線層は、一方の面に、前記第1の層の前記第1の圧力発生手段と該第1の圧力発生手段に電圧を印加するための前記配線とを電気的に接続する第1の電気的接続手段を有し、他方の面に、前記第2の層の前記第2の圧力発生手段と該第2の圧力発生手段に電圧を印加するための前記配線とを電気的に接続する第2の電気的接続手段を有することを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェットヘッドである。
【0014】
請求項4記載の発明は、前記第2の層は、ノズルを形成したノズルプレートを有し、
前記第2の層と前記配線層とに亘り、前記第1の圧力室と前記ノズルとを連通させるインク吐出用の流路を有することを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェットヘッドである。
【0015】
請求項5記載の発明は、前記第1の層の上層に、前記第1の圧力室及び前記第2の圧力室へ共通にインクを供給する共通インク室を有し、
前記第1の層と前記配線層とに亘り、前記共通インク室と前記第2の圧力室とを連通するインク供給用の流路を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェットヘッドである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上下2段の配置した圧力室の間に共通の配線層を配置することにより、高密度化及び小型化と工数の簡略化とを同時に図ることができると共に、上下の各圧力室を独立して動作させることが可能なインクジェットヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るインクジェットヘッドの層構成を示す部分断面図
【図2】本発明に係るインクジェットヘッドをノズル側から見た斜視図
【図3】圧力室の配置構成を示す平面透視図
【図4】配線層の作製方法を説明する図
【図5】配線層の作製方法を説明する図
【図6】インクジェットヘッドの作製方法を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、圧力発生手段によってインクをノズルから吐出するインクジェットヘッドであって、第1の圧力室が形成され、該第1の圧力室の壁面の一部を形成する第1の振動板に配設された第1の圧力発生手段を有する第1の層と、第2の圧力室が形成され、該第2の圧力室の壁面の一部を形成する第2の振動板に配設された第2の圧力発生手段を有する第2の層と、前記第1の層の前記第1の圧力発生手段及び前記第2の層の前記第2の圧力発生手段にそれぞれ電圧を印加する配線が形成された配線層とを有し、前記配線層は、前記第1の層と前記第2の層との間に配置されていることを特徴とする。
【0019】
第1の圧力室及び第2の圧力室は、第1の層及び第2の層においてそれぞれマトリックス状に平面的に配列されるため、第1の圧力室及び第2の圧力室が上下2段に配置されることで、インクジェットヘッドの高密度化及び小型化が図られる。また、第1の層の第1の圧力発生手段及び第2の層の第2の圧力発生手段に対する電圧印加のための配線は、共通の配線層に形成され、この配線層が第1の層と第2の層との間に配置されることで、配線を各層に形成する場合に比べて工数の簡略化をも図ることができる。しかも、本発明によれば、第1の圧力室と第2の圧力室にそれぞれ専用の第1の圧力発生手段及び第2の圧力発生手段が配設されるため、上下の各圧力室を独立して動作させることが可能である。
【0020】
圧力発生手段としては、電気信号を機械エネルギーに変換する電気機械変換素子である圧電素子が用いられる。このような圧電素子としては、一般にPZTが好ましく用いられる。
【0021】
第1の層に設けられる第1の圧力室は、壁面のうちの底壁が第1の振動板とされ、この第1の振動板の底面(第1の圧力室の外側の面)に第1の圧力発生手段が設けられる。従って、この第1の圧力発生手段は、第1の層の底面に形成されている。また、第2の層に設けられる第2の圧力室は、壁面のうちの天井壁が第2の振動板とされ、この第2の振動板の天面(第2の圧力室の外側の面)に第2の圧力発生手段が設けられる。従って、この第2の圧力発生手段は、第2の層の天面に形成されている。
【0022】
なお、本発明のインクジェットヘッドにおいて、ノズルが開口する面を下面、その反対面を上面と定義する。従って、本発明においてノズルが開口する面が下となるように配置させたときに下側となる壁及び面をそれぞれ底壁、底面といい、上側となる壁及び面をそれぞれ天井壁、天面という。
【0023】
配線層は、一方の面に、第1の層の第1の圧力発生手段と該第1の圧力発生手段に電圧を印加するための配線とを電気的に接続する第1の電気的接続手段を有し、他方の面に、第2の層の第2の圧力発生手段と該第2の圧力発生手段に電圧を印加するための配線とを電気的に接続する第2の電気的接続手段を有している。配線層は、前記一方の面が第1の層、前記他方の面が第2の層にそれぞれ面するように配置され、第1の層と第2の層との間に積層される。この積層状態で、配線層の第1の電気的接続手段は、第1の層の第1の圧力発生手段と電気的に接続され、また、配線層の第2の電気的接続手段は、第2の層の第2の圧力発生手段と電気的に接続されている。
【0024】
本発明において、第2の層はノズルプレートを有している。第1の圧力室及び第2の圧力室にそれぞれ対応するノズルは、第2の層の底面(第1の層及び配線層の積層側と反対側の面)を構成するノズルプレートに形成される。このため、第1の層の第1の圧力室と第2の層の底面に形成されたノズルとを連通させるインク吐出用の流路が、第2の層と配線層とに亘って、これらを貫通するように形成される。
【0025】
また、本発明において、第1の層の上層(第2の層及び配線層の積層側と反対側の層)に、第1の圧力室及び第2の圧力室へ共通にインクを供給する共通インク室を有することができる。この場合、共通インク室と第2の圧力室とを連通するためのインク供給用の流路が、第1の層と配線層とに亘って、これらを貫通するように形成される。
【0026】
次に、本発明の具体的な実施の形態について図面を用いて説明する。
【0027】
図1は、本発明に係るインクジェットヘッドの層構成を示す部分断面図、図2は、本発明に係るインクジェットヘッドをノズル側から見た斜視図、図3は、圧力室の配置構成を示す平面透視図である。
【0028】
インクジェットヘッド1は、図1に示すように、複数の層が積層されることによって形成されており、それぞれ内部にインクが供給される第1圧力室11と第2圧力室21とが、積層方向である図示上下方向に2段に立体的に配置されている。
【0029】
第1圧力室11は、Si(シリコン)基板12の厚み方向にエッチング加工されることによって、図1における左右方向に亘ってマトリックス状に多数配列形成される。第1圧力室11の底壁111の一部は、Si基板12がエッチング加工し残されることによって、薄壁状の第1振動板13を構成しており、この第1振動板13の底面(第1振動板13の外側の面)に、第1圧力室11内のインクに吐出のための圧力を付与する第1圧力発生手段である圧電素子14が設けられている。なお、圧電素子14は、不図示の上部電極及び下部電極を有している。
【0030】
Si基板12の上面には、感光性ドライフィルムからなる接着剤層15を介してSi基板からなる天板16が積層されている。本実施形態では、以上のSi基板12、圧電素子14、接着剤層15及び天板16によって第1の層である第1アクチュエータ層10が構成される。従って、第1アクチュエータ層10において、底面に圧電素子14が配置されている。
【0031】
一方、第2圧力室21は、Si基板22の厚み方向にエッチング加工されることによって、図1における左右方向に亘ってマトリックス状に多数配列形成される。第2圧力室21の天井壁211の一部は、Si基板22がエッチング加工し残されることによって、薄壁状の第2振動板23を構成しており、この第2振動板23の天面(第2振動板23の外側の面)に、第2圧力室21内のインクに吐出のための圧力を付与する第2圧力発生手段である圧電素子24が設けられている。なお、圧電素子24は、不図示の上部電極及び下部電極を有している。
【0032】
かかる第1圧力室11及び第2圧力室21は、図3に示すように、平面視で互いに部分的にオーバーラップするように配置されている。このため、第1圧力室11と第2圧力室21の水平方向の広がりが抑えられ、高密度化及び小型化が一層発揮される。
【0033】
Si基板22の下面には、感光性ドライフィルムからなる接着剤層25を介してSi基板からなるノズルプレート26が積層されている。本実施形態では、以上のSi基板22、圧電素子24、接着剤層25及びノズルプレート26によって第2の層である第2アクチュエータ層20が構成される。従って、第2アクチュエータ層20において、天面に圧電素子24が配置されている。
【0034】
配線層30は、かかる第1アクチュエータ層10と第2アクチュエータ層20との間に配置され、感光性ドライフィルムからなる接着剤層361、362によって該第1アクチュエータ層10及び第2アクチュエータ層20と接合されている。
【0035】
配線層30は、Si基板31の両面に、それぞれ圧電素子14、24に電圧を印加するための配線321、322がパターン形成されている。配線321の一端は、第1アクチュエータ層10の各圧電素子14の上部電極(図示せず)の直下に配置され、配線322の一端は、第2アクチュエータ層20の各圧電素子24の上部電極(図示せず)の直上に配置されると共に、各他端は、所定の電圧を出力する駆動回路(図示せず)と電気的に接続されている。
【0036】
配線321は、絶縁膜(SiO膜)331によって、Si基板31の上面に対して絶縁されていると共に該配線321の上面も絶縁膜331によって被覆されることで絶縁されている。絶縁膜331における配線321の一端に対応する部位は、絶縁膜331が部分的に除去されて非絶縁部341を形成しており、配線321の一端を上面に向けて露出させている。この非絶縁部341に臨む配線321の一端に、低融点半田からなる接点部351が上方に突出するように形成されており、この接点部351が上方に位置する第1アクチュエータ層10の圧電素子14の上部電極(図示せず)と接合することにより、圧電素子14と配線321とを電気的に接続している。
【0037】
また、同様に、配線322も、絶縁膜332によって、Si基板31の下面に対して絶縁されていると共に該配線322の下面も絶縁膜332によって被覆されることで絶縁されている。絶縁膜332における配線322の一端に対応する部位は、絶縁膜332が部分的に除去されて非絶縁部342を形成しており、配線322の一端を下面に向けて露出させている。この非絶縁部342に臨む配線322の一端に、低融点半田からなる接点部352が下方に突出するように形成されており、この接点部352が下方に位置する第2アクチュエータ層20の圧電素子24の上部電極(図示せず)と接合することにより、圧電素子24と配線322とを電気的に接続している。
【0038】
このように、1枚のSi基板31の両面に、第1圧力室11の圧電素子14のための配線321と、第2圧力室21の圧電素子24のための配線322とをまとめて形成しているため、各圧電素子14、24に対する電圧印加を共通の配線層30によって行うことができると共に、第1圧力室11と第2圧力室21とで圧電素子14、24を独立して動作させることができる。
【0039】
ノズルプレート26には、第1圧力室11及び第2圧力室21内のインクを吐出するためのノズル261、262が開口形成されている。
【0040】
ノズル261は第1圧力室11内とインク吐出用流路41によって連通しており、圧電素子14が駆動した際、該インク吐出用流路41を通って第1圧力室11内のインクをノズル261から吐出させる。第1圧力室11は、最上位の第1アクチュエータ層10に設けられているため、インク吐出用流路41が、第1圧力室11の底壁111及び配線層30を上下に貫通し、更に第2アクチュエータ層20を通ってノズルプレート26に形成されたノズル261と連通している。第1圧力室11へのインクの供給は、天板16に開口形成されたインレット161を介して行われる。天板16の外側には、第1圧力室11及び第2圧力室21に対して共通にインクを供給するための共通インク室50(図2)が形成されており、インレット161は、この共通インク室50内に臨んで開口している。
【0041】
一方、ノズル262は第2圧力室21内と連通しており、圧電素子24が駆動した際、第2圧力室21内のインクをノズル262から吐出させる。第2圧力室21は、最下位の第2アクチュエータ層20に設けられているため、共通インク室50からのインクを供給するためのインク供給用流路42が、第1アクチュエータ層10及び配線層30を上下に貫通して天板16に開口形成されたインレット162と連通している。インレット162は、共通インク室50内に臨んで開口している。
【0042】
なお、配線層30に形成される配線321、322は、これらインク吐出用流路41及びインク供給用流路42を避けた位置にパターン形成されている。
【0043】
また、図2中、51は共通インク室50へのインク流入のための流入管、52は共通インク室50からのインク流出のための流出管である。
【0044】
次に、かかるインクジェットヘッド1の作製方法について図4〜図6を用いて説明する。
【0045】
第1アクチュエータ層10及び第2アクチュエータ層20は、第1圧力室11の第1振動板13が該第1圧力室11の底壁111によって構成され、第2圧力室21の第2振動板23が該第2圧力室21の天井壁211によって構成されて、両者が上下対称形状となる以外、従来公知の積層工程を経て作製することができる。従って、ここでは本発明の特徴である配線層30の作製方法について図4、図5を用いて説明する。
【0046】
まず、配線層30の基板となる所定厚のSi基板31を用意し(図4(a))、このSi基板31の一方の面にSiOからなる絶縁膜33をCVD(Chemical Vapour Deposition)法によって形成する(図4(b))。
【0047】
次いで、絶縁膜33の上面にレジスト100を被覆した後、該レジスト100を露光、現像処理によってパターニングし、配線321となる領域321aのレジスト100を除去して絶縁膜33を露出させ(図4(c))、配線321を形成するための金属材料、例えばAlをスパッタリング等によって被覆して、絶縁膜33及びレジスト100の上面全面に金属膜32を形成する(図4(d))。
【0048】
金属膜32の形成後、レジスト100を除去することによって、絶縁膜33の上面に所定パターンからなる配線321を作製する(図4(e))。その後、その配線321を含む上面全面に更にSiOからなる絶縁膜33をCVD法によって形成し、配線321を絶縁膜33によって被覆する(図4(f))。
【0049】
次いで、絶縁膜33の上面に再びレジスト100を被覆した後、該レジスト100を露光、現像処理によってパターニングし、配線321の一端に対応する領域321b、インク吐出用流路41に対応する領域321c及びインク供給用流路42に対応する領域321dのレジスト100をそれぞれ除去して絶縁膜33を露出させ(図4(g))、RIE(Reactive Ion Etching)法によって、各領域321b〜321dにおいて露出する部位の絶縁膜33をエッチングする。ここで、領域321bの直下には配線321が形成されており、領域321c、領域321dの直下には配線321が形成されておらず、Si基板31を直接被覆している(図4(h))。
【0050】
この後、レジスト100を除去すると、Si基板31の一方の面に、エッチング後の絶縁膜331によって被覆された配線321が形成され、該配線321の一端が非絶縁部341によって露出する。これにより、Si基板31に第1アクチュエータ層10の圧電素子14に対する配線321が形成される。また、インク吐出用流路41及びインク供給用流路42に対応する領域321c、321dには、それぞれSi基板31の表面がそれぞれ露出する(図5(a))。
【0051】
同様にして、Si基板31の他方の面にも、絶縁膜332に非絶縁部342、凹設された領域322c、322dをそれぞれ形成し、非絶縁部342において一端を露出させた配線322を形成する(図5(b))。
【0052】
次いで、RIE法によって両面にそれぞれエッチングを行い、絶縁膜331、332の一部とSi基板31とを除去する。SiOのエッチングレートをSiよりも遅くすることで、絶縁膜331、332よりもSi基板31を深掘りすることができる。これにより、インク吐出用流路41及びインク供給用流路42をそれぞれ貫通形成する(図5(c))。
【0053】
その後、更に絶縁膜331の上面及び絶縁膜332の下面に接着剤層361、362を被覆し、これを露光、現像処理によってパターニングし、インク吐出用流路41及びインク供給用流路42に対応する部位を除去する(図5(d))。
【0054】
次いで、各非絶縁部341、342にそれぞれ露出する配線321、322上に、低融点半田ペーストを付与することによって接点部351、352を形成する(図5(e))。これにより配線層30が作製される。
【0055】
このようにして作製された配線層30は、図6に示すように、一対の圧着機200、200の間に、上から第1アクチュエータ層10、配線層30、第2アクチュエータ層20の順に位置決めして積層配置させた後、圧着機200、200を締め付けて一体に積層させ、圧着する。このとき、ヒーター(図示せず)によって熱を掛けることにより、低融点半田からなる接点部351、352を溶融させ、それぞれ対応する圧電素子14、24の上部電極と接合させ、該圧電素子14、24と対応する配線321、322との電気的接続を図ると同時に、接着剤層361、362によって、第1アクチュエータ層10、配線層30及び第2アクチュエータ層20を一体に接合する。
【0056】
本発明において接点部351、352は低融点半田に限らないが、本実施形態に示すように低融点半田を用いることにより、第1アクチュエータ層10、配線層30、第2アクチュエータ層20を積層一体化する際、熱を掛けることで、圧電素子14、24と接点部351、352との間の接合及び電気的接続を一度に得ることができる。しかも、層の異なる第1圧力室11の圧電素子14と第2圧力室21の圧電素子24に対する接点部351、352の接合を同時に行えるため、例えば一方の層の接点部に熱を掛けたときに他方の層の接点部が溶融してしまう問題を回避することができ、製造プロセスをより簡略化できるために好ましい。
【符号の説明】
【0057】
1:インクジェットヘッド
10:第1アクチュエータ層
11:第1圧力室
111:底壁
12:Si基板
13:第1振動板
14:圧電素子
15:接着剤層
16:天板
161、162:インレット
20:第2アクチュエータ層
21:第2圧力室
211:底壁
22:Si基板
23:第2振動板
24:圧電素子
25:接着剤層
26:ノズル板
261、262:ノズル
30:配線層
31:Si基板
32:金属膜
321、322:配線
33、331、332:絶縁膜
341、342:非絶縁部
351、352:接点部
361、362:接着剤層
41:インク吐出用流路
42:インク供給用流路
50:共通インク室
51:流入管
52:流出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力発生手段によってインクをノズルから吐出するインクジェットヘッドであって、
第1の圧力室が形成され、該第1の圧力室の壁面の一部を形成する第1の振動板に配設された第1の圧力発生手段を有する第1の層と、
第2の圧力室が形成され、該第2の圧力室の壁面の一部を形成する第2の振動板に配設された第2の圧力発生手段を有する第2の層と、
前記第1の層の前記第1の圧力発生手段及び前記第2の層の前記第2の圧力発生手段にそれぞれ電圧を印加する配線が形成された配線層とを有し、
前記配線層は、前記第1の層と前記第2の層との間に配置されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記第1の圧力発生手段は、前記第1の層の底面に形成され、
前記第2の圧力発生手段は、前記第2の層の天面に形成されていることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記配線層は、一方の面に、前記第1の層の前記第1の圧力発生手段と該第1の圧力発生手段に電圧を印加するための前記配線とを電気的に接続する第1の電気的接続手段を有し、他方の面に、前記第2の層の前記第2の圧力発生手段と該第2の圧力発生手段に電圧を印加するための前記配線とを電気的に接続する第2の電気的接続手段を有することを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記第2の層は、ノズルを形成したノズルプレートを有し、
前記第2の層と前記配線層とに亘り、前記第1の圧力室と前記ノズルとを連通させるインク吐出用の流路を有することを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記第1の層の上層に、前記第1の圧力室及び前記第2の圧力室へ共通にインクを供給する共通インク室を有し、
前記第1の層と前記配線層とに亘り、前記共通インク室と前記第2の圧力室とを連通するインク供給用の流路を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェットヘッド。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−152740(P2011−152740A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16485(P2010−16485)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】