説明

インクジェット記録装置

【課題】ケーブル、ホースやパイプなどの長いものに連続して印字する場合、帯電タイミングを検出し、印字乱れの発生を防止する。
【解決手段】加圧インクをノズルより噴出し、粒子化するインク粒子作成手段と、粒子化されたインク粒子のうち印字されるドットに対応するインク粒子に電荷を帯電させる帯電手段と、該電荷が帯びたインク粒子を偏向電界中で偏向する偏向手段と、印字されないドットに対応するインク粒子をガターで回収する回収手段と、被印字物上にドットマトリクス状に文字を形成する文字形成手段とを備えたインクジェット記録装置であって、ドットマトリクス文字を形成する際、印字に使用しないインク粒子に位相検出用帯電信号を与え、ドットマトリクス文字を形成する過程において最適な帯電タイミングを検出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関し、特にケーブルなど長いものに印字するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、ノズルから噴出されるインクを一定周期で粒子化し、この粒子化される瞬間の最適なタイミングで印字情報に応じた電荷を帯電させ、偏向することで印字を行うものである。
【0003】
従来は、特許文献1(特開2011−46139号公報)に開示されているように、インク粒子の帯電を行うタイミングがずれると印字品質を劣化させる要因となるため、帯電を行う最適タイミングを検出するために、粒子化周期をN相にわけ、1/N相ごとにずらしてインク粒子が偏向しない程度に帯電させ、各々の帯電量から最適な帯電位相の検出を行う。この最適な帯電位相の検出は、最適帯電位相のずれがインク噴出圧力、周囲温度などの変化に影響を受けるため印字と印字の間に非印字期間に行っている。
ここで、インクジェット記録装置の性能を示す一つの指標として、印字速度、すなわち高頻度印字性能があり、印字速度を上げるための一つの方法として、印字と印字の間の非印字期間を短くする方法がある。印字と印字の間では、最適帯電位相の検出やインク粒子へ帯電する印字情報に応じた電荷量の算出などの処理を行っており、最適帯電位相の検出処理は、印字と印字の間の非印字期間の約半分の時間を占めている。
しかしながら、上記の印字方式は、被印字物が単品の場合で、ケーブル、ホースやパイプなど長いものへの印字には対応できていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−46139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の単品に印字するインクジェット記録装置は、印字と印字の間で、最適帯電位相の検出やインク粒子へ帯電する印字情報に応じた電荷量の算出などを行っているが、ケーブル、ホースやパイプなど長いものでは、上記のような最適な帯電での印字はできない。
ここで、インクジェット記録装置の帯電信号について説明する。
インクジェット記録装置は、帯電電極により2種類の帯電信号をインク粒子に与える。一つは、印字する文字情報を形成するインク粒子に帯電する印字帯電信号である。もう一つは、最適な帯電タイミングを検出するのにインク粒子に帯電する位相検出用帯電信号である。
【0006】
インクジェット記録装置の特徴として、常に最適な帯電タイミングで印字帯電信号をインク粒子に与えることが求められる。最適でない帯電タイミングで印字帯電信号をインク粒子に与えると、印字の乱れを発生するからである。
更に、最適な帯電タイミングがインクの粘度や温度など複数の要因により時々刻々変化するため、印字しないとき(印字帯電信号が発生しないとき)には、常に位相検出用帯電信号をインク粒子に与え、最適な帯電タイミングの変化を検出し、この変化に追従する必要がある。
【0007】
従来のインクジェット記録装置の最適な帯電タイミングを検出する検出方法について、図6(a)を用いて説明する。
図6(a)で(イ)は非印字物を検出するセンサの信号を示し、(ロ)はインク粒子に印字情報(印字帯電信号)と次の印字情報(印字帯電信号)との間に存在し、印字しない時間に位相検出用帯電信号をインク粒子に与え、最適な印字タイミングの検出を行っていることを示している。
しかし、印字情報が途切れない無限印字(ここで、ケーブル、ホースやパイプなど数m〜数十mの長いものの表面に連続して印字する場合を無限印字と呼ぶことにする)のアプリケーションにおいて、印字情報間の時間間隔が存在しないため、従来の制御方式では図6(b)に示すように、位相検出用帯電信号をインク粒子に与えることはできず、従って最適な印字タイミングを検出することはできなかった。
【0008】
本発明は、ケーブル、ホースやパイプなど長いものの表面に印字する無限印字のアプリケーションにおいても常に最適な帯電タイミングを検出し、印字乱れが発生しないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、加圧インクをノズルより噴出し、該ノズルを一定周期で振動させて該インクを一定周期で粒子化するインク粒子作成手段と、印字される文字情報に基づいて粒子化の周期に同期した帯電信号を帯電電極に与え、粒子化されたインク粒子のうち印字されるドットに対応するインク粒子に電荷を帯電させる帯電手段と、該電荷が帯びたインク粒子を偏向電界中で偏向する偏向手段と、印字されないドットに対応するインク粒子をガターで回収する回収手段と、被印字物をインク粒子の偏向方向とほぼ垂直に相対移動させることにより、被印字物上にドットマトリクス状に文字を形成する文字形成手段とを備えたインクジェット記録装置であって、ドットマトリクス文字を形成する際、印字に使用しないインク粒子に位相検出用帯電信号を与え、ドットマトリクス文字を形成する過程において最適な帯電タイミングを検出することを特徴とする。
【0010】
また、上記インクジェット記録装置にあって、ドットマトリクス文字の外に文字幅調整用インク粒子を配置し、該文字幅調整用インク粒子に位相検出用帯電信号を与え、ドットマトリクス文字を形成する過程において最適な帯電タイミングを検出することを特徴とする。
【0011】
また、上記インクジェット記録装置であって、前記最適な帯電タイミングの検出は、文字幅調整インク粒子の粒子化周期の1/N相(N:整数)ずつずらしながら帯電電圧を印加し、そのときの帯電電圧波形を検出し、帯電タイミング検出回路で検出した帯電電圧を位相0相より順に予め設定された閾値電圧と比較し、検出した帯電電圧が初めて閾値電圧を超える位相を検出することにより最適な帯電位相を検出することを特徴とする。
【0012】
また、上記インクジェット記録装置にあって、前記文字幅調整用インク粒子に与える位相検出用帯電信号のレベルは、前記ガターを飛び越得ることができない帯電電圧レベルとすることを特徴とする。
【0013】
さらに、上記インクジェット記録装置にあって、前記インクジェット記録装置には、印字内容を設定する設定画面を有したパネルを備え、該パネルの設定画面にて、文字高さ、文字幅、帯電タイミングを検出するためのインク粒子数、印字情報、連続回数を入力し設定できることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ケーブル、ホース及びパイプなど長いものに連続して印字する無限印字のアプリケーションにおいても最適な帯電タイミングを検出することが可能となり、印字乱れの発生ポテンシャルが低いインクジェット記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の構成のブロック図を示す。
【図2】本発明の連続して印字する場合の最適な帯電タイミングを検出する印字方法を説明する図を示す。
【図3】図2(b)及び(c)の部分拡大図を示す。
【図4】位相検出用帯電信号を与えたインク粒子より最適な帯電タイミングを検出する方法を示す図である。
【図5】インクジェット記録装置のパネルにおいて、印字内容に関する数値を入力設定する画面を示す図である。
【図6】従来の最適な帯電タイミングを検出する方法を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例の図面を用いて説明する。
【0017】
図1は、本発明のインクジェット記録装置の全体構成のブロック図を示す。
【0018】
図1において、1はインクジェット記録装置全体を制御するMPU(マイクロプロセッシングユニット)、2はデータを一時的に記憶する書き換え可能なRAM(ランダムアクセスメモリ)、3は必要なプログラムやデータを予め記憶しておくROM(リードオンリメモリ)、4は印字する内容等を表示する表示装置、5はパネルインターフェース、6は設定画面を備えたパネルである。
7は帯電タイミングを検出するタイミング検出回路、8は被印字物検知回路、9はインクジェット記録装置の印字動作を制御する印字制御装置、10はインク粒子に帯電させるビデオデータを記録しておくビデオRAM、11は帯電データを印字帯電信号又は位相検出用帯電信号に変換する帯電信号発生回路、12はインクを噴出するノズル、13はノズルより噴出したインクが粒子になり、そのインク粒子に電荷を加える帯電電極、14はプラス偏向電極、15はマイナス偏向電極、16は印字に使用しないインク粒子や位相検出用帯電信号を帯びたインク粒子を回収するガター、17はガター16で回収した位相検出用帯電信号を検出する位相検出センサ、18はガター16より回収されたインクを再びノズルへ供給するポンプ、19は被印字物を検出するセンサ、20は被印字物を搬送するコンベア、21は印字の対象となる被印字物、22はデータ等を送るバスラインである。
【0019】
次に印字方法について説明する。
【0020】
先ず、パネルインターフェース5を介してパネル6で印字情報を入力すると、MPU1はROM3に記憶されているプログラムにより印字情報に応じてインク粒子へ帯電させる帯電データを作成し、バスライン22を介してビデオRAM10へ格納する。
【0021】
被印字物検知センサ19が被印字物21を検知すると、被印字物検知回路8を通じてMPU1へ印字開始の指令が届く。MPU1はビデオRAM10に記憶している印字データを帯電信号発生回路11へ送る。帯電信号発生回路11は送られてきた印字データを印字帯電信号に変更する。印字制御回路9は、バスライン22を介してこの印字帯電信号を帯電電極13へ送出するタイミングをコントロールする。被印字物検知センサ19が被印字物21を検知しない場合は、予めROM3に記録している位相検出用ビデオデータを帯電信号発生回路11で位相検出用帯電信号に変換し、印字帯電信号と同様に帯電電極13へ送出する。このように被印字物センサ19が被印字物21を検知したときには印字帯電信号を送出し、被印字物センサ19が被印字物21を検知しないときには位相検出用帯電信号を帯電電極13へ送出する。ノズル11より噴出されたインクは、帯電電極13内で粒子化し、電荷を受け、プラス偏向電極14とマイナス偏向電極15によって形成される電界を飛行通過することにより偏向される。そのとき、インク粒子は帯電量に応じて偏向され、帯電量の大きいインク粒子は偏向量が大きく、帯電量の小さいインク粒子は偏向量が小さい。
帯電量の大きい印字帯電信号を帯びたインク粒子は、大きく偏向され、ガター16を飛び越え、被印字物21へと飛行し付着して印字し文字を形成する。
【0022】
一方、印字に使用しないインク粒子や帯電量の小さい位相検出用帯電信号を帯びたインク粒子は、ガター16を飛び越えることができず、ガター16に回収され、位相検出センサ17で電気信号として検出され、帯電タイミング検出回路7に送出し、最適な帯電タイミングを検出する。
【0023】
また、最適な帯電タイミングは、時々刻々と変化するため印字帯電信号が発生していないときには常に位相検出用帯電信号を帯電電極14に送出し、最適な帯電タイミングを検出し、最適な帯電タイミングの変化に追従する。
【0024】
以上のように、インクジェット記録装置は、常に位相検出用帯電信号を用いて最適な帯電タイミングを検出し、被印字物センサ19が被印字物21を検知したときには印字帯電信号を用いて印字を行う。
【0025】
次に、本発明の連続した無限印字において、最適な帯電タイミングを検出する印字方法について説明する。
【0026】
図2は、連続した文字を印字するとき、最適な帯電タイミングを検出する印字方法を示す図で、図2(a)は被印字物に印字するタイミングを示すタイミングチャートで、図2(b)は印字帯電信号の拡大図で、図2(c)は印字する文字“B”のドットマトリクスを示している。
【0027】
図2(a)において、(イ)は被印字物検出センサ19の出力信号、(ロ)は帯電信号発生器11の帯電信号を表している。被印字物検出信号19に、(イ)のように検出信号が出力されると、印字指令が送信され、(ロ)のように印字帯電信号が立ち上がり、印字を開始する。そして、印字帯電信号は、印字が連続して行われるため立ち上がった状態が印字が終了するまでずっと続く。
次に、印字帯電信号における印字パターンを従来及び本発明について、図2(b)を用いて説明する。
【0028】
図2(b)は、印字文字“B”を被印字物に連続して印字する印字パターンを示している。ここで、印字文字“B”は、図2(c)に示すドットマトリクス文字で構成する。すなわち、文字部分は、横4×縦5ドットマトリクスで構成し、文字部分の上に文字幅調整用インク粒子を5ドット各縦スキャンに配置している。従って、1縦スキャンが、印字に使用する5ドットと文字幅調整用インク粒子の5ドットで構成され、1縦スキャンのドット数は10ドットで構成される。また、図2(c)には、印字文字“B”を2個連続して印字するドットマトリクスを示し、この図2(c)の文字“B“の印字ドットパターンを、ドット印字するように時系列に並べたのが図2(b)である。
【0029】
また、上記の文字幅調整用インク粒子とは、ユーザが印字する文字幅を調整するのに縦ドットスキャンの間に設ける帯電しないインク粒子のことである。
文字幅調整用インク粒子は、図2(c)では5ドット分であるが、この数値を多く設定すると縦スキャンの時間間隔が長くなり、印字した文字の幅が大きくなる。逆に、文字幅調整用インク粒子の数を少なく設定すると、縦スキャンの時間間隔が短くなり、印字した文字の幅が狭くなる。
【0030】
次に、印字文字“B”を連続して印字する場合について説明する。
印字文字“B”のドットマトリクス文字は、図2(c)に示す通り、横4×縦5ドットマトリクスで、ドットマトリクス文字には、文字幅調整用インク粒子が各々縦スキャンに5ドット付加されている。
ドット印字の順序は、図2(c)においてドットパターンの左側の列(1)の下側からから上側に向かいドット印字され、次に列(2)の下側から上側に向かい、次に列(3)の下側から上側に向かい、最後は列(4)の下側から上側に向かって印字し、“B”の1文字が印字完了となる。
【0031】
ここで、図2(b)及び図2(c)を図3に再掲し、従来と本発明との印字方法を詳細に説明する。
図3において、印字するインク粒子(黒丸)には、ドットマトリクスと対応するインク粒子と同じ番号を付している。
【0032】
先ず、図3(a)の従来の印字方法について説明する。
図3(a)において、インク粒子の順序(1)は、印字文字“B”のドットマトリクス(図3(c))の左側の列(1)と対応する。
そして、印字するインク粒子黒丸(1)(図3において、黒丸の中に数字を書き込んでいるが、そのインク粒子をこのように黒丸(1)と表すことにする。)、黒丸(2)、黒丸(3)、黒丸(4)、黒丸(5)の帯電電圧は段階的に大きくなっていく。帯電電圧が大きくなっていくと、偏向電圧が大きくなっていき、偏向電極にて段階的に印字ドットが下側より上側に印字されて、印字文字“B”の左側の縦ラインが印字される。
【0033】
次に、文字幅調整用インク粒子を5ドット(白四角印)配置している。この文字幅調整用インク粒子は、上記の通り数値を多く設定すると、印字した文字の幅が大きくなり、逆に少なくすると文字幅は狭くなる。
【0034】
次に、図3(c)の列(2)は、印字文字“B”の中央の縦部分の印字に対応し、印字インク粒子黒丸(6)−非印字インク粒子(印字に関係しないインク粒子をいう)−印字インク粒子黒丸(7)−非印字インク粒子−印字インク粒子黒丸(8)の順序でインク粒子は偏向電極より飛行し、印字する。
【0035】
ここで、印字するインク粒子の帯電電圧において、印字インク粒子黒丸(6)と印字インク粒子黒丸(1)、印字インク粒子黒丸(7)と印字インク粒子黒丸(3)、印字インク粒子黒丸(8)と印字インク粒子黒丸(5)は、それぞれ同じ帯電電圧である。
【0036】
次に、文字幅調整用インク粒子を5ドット(白四角印)配置する。
そして、図3(c)の列(3)を印字する。
図3(c)の列(3)は、印字文字“B”の中央の縦部分の印字に対応し、印字インク粒子黒丸(9)−非印字インク粒子−印字インク粒子黒丸(10)−非印字インク粒子−印字インク粒子黒丸(11)の順序でインク粒子は偏向電極より飛行し、印字する。
ここで、印字インク粒子黒丸(9)の帯電電圧は、印字インク粒子黒丸(6)と同じで、印字インク粒子黒丸(10)の帯電電圧はインク粒子黒丸(7)と、また、印字インク粒子黒丸(11)の帯電電圧は印字インク粒子黒丸(8)と、それぞれ同じである。
【0037】
図3(c)の列(3)の印字のあとは、文字幅調整用インク粒子を5ドット(白四角印)配置し、文字幅を設定している。
【0038】
次に、図3(c)の列(4)を印字する。
図3(c)の列(4)は、印字文字“B”の右側の出っ張った部分の印字に対応し、非印字インク粒子−印字インク粒子黒丸(12)−非印字インク粒子−印字インク粒子黒丸(13)−非印字インク粒子 の順序でインク粒子は偏向電極より飛行し、印字する。
ここで、印字インク粒子黒丸(12)の帯電電圧は、列(1)の印字インク粒子黒丸(2)の帯電電圧と同じで、印字インク粒子黒丸(13)の帯電電圧は列(1)の印字インク粒子黒丸(4)の帯電電圧と同じとする。
【0039】
図3(c)の列(4)の印字のあとは、文字幅調整用インク粒子を5ドット(白四角印)配置し、文字幅を設定している。
【0040】
以上の印字方法により印字文字“B”が印字され、印字完了となる。
【0041】
印字文字“B”の1文字の印字が完了したら、連続して印字文字“B”を印字するため、図3(c)の列(4)のあと、次の列(1)の印字文字“B”の印字を開始し、これを繰り返す。
【0042】
次に、図3(c)において、本発明の印字方法を説明する。
【0043】
図3(c)の印字文字“B”のドットマトリクスの左側の列(1)の印字は、図3(b)の最初の印字(1)の黒丸(1)、黒丸(2)、黒丸(3)、黒丸(4)、黒丸(5)に対応する。そして、印字するインク粒子黒丸(1)、黒丸(2)、黒丸(3)、黒丸(4)、黒丸(5)の帯電電圧は段階的に大きくなり、偏向電圧も大きくなっていき、偏向電極にて段階的に偏向され、下側より上側に印字されて印字文字“B”の左側の縦ラインが印字される。
【0044】
次に、図3(c)の列(1)のあとに、文字幅調整用インク粒子を5ドット(白四角印)配置している。そしてこの5ドットのうち中央の3ドット(黒星印)に最適な帯電タイミングを検出するため、位相検出用帯電信号を与える。
この位相検出用帯電信号の帯電電圧のレベルは、大きくしないで、この帯電したインク粒子はガター6を飛び越えることができず、ガター6より回収され、位相検出センサ17で電気信号として検出され、帯電タイミング検出回路に送出し、最適な帯電タイミングを検出する。
【0045】
次に、図3(c)の列(2)の印字は、印字文字“B”の中央の縦部分の印字に対応し、印字インク粒子黒丸(6)−非印字インク粒子−印字インク粒子黒丸(7)−非印字インク粒子−印字インク粒子黒丸(8) の順序でインク粒子は偏向電極より飛行し、印字する。
【0046】
また、図3(c)の列(2)の印字のあと、文字幅調整用インク粒子を5ドット(白四角印)配置する。そしてこの5ドットのうち中央の3ドット(黒星印)のインク粒子に、最適な帯電タイミングを検出するため位相検出用帯電信号を与える。
【0047】
次に、図3(c)の列(3)の印字は、印字文字“B”の中央の縦部分の印字に対応し、印字インク粒子黒丸(9)−非印字インク粒子−印字インク粒子黒丸(10)−非印字インク粒子−印字インク粒子黒丸(11) の順序でインク粒子は偏向電極より飛行し、印字する。
【0048】
そして、図3(c)の列(3)の印字のあと、文字幅調整用インク粒子を5ドット(白四角印)配置し、そのうち中央の3ドット(黒星印)のインク粒子に、最適な帯電タイミングを検出するため位相検出用帯電信号を与える。
【0049】
次に、図3(c)の列(4)の印字は、印字文字“B”の右側の出っ張った部分の印字に対応し、非印字インク粒子−印字インク粒子黒丸(12)−非印字インク粒子−印字インク粒子黒丸(13)−非印字インク粒子 の順序でインク粒子は偏向電極より飛行し、印字する。
【0050】
図3(c)の印字のあと、文字幅調整用インク粒子を5ドット(白四角印)配置し、そのうちの中央の3ドット(黒星印)のインク粒子に、最適な帯電タイミングを検出するため位相検出用帯電信号を与える。
ここで、印字インク粒子の帯電電圧において、印字インク粒子黒丸(1)、黒丸(6)、黒丸(9)は同じ帯電電圧で、印字インク粒子黒丸(3)、黒丸(7)、黒丸(10)は同じ帯電電圧で、印字インク粒子黒丸(5)、黒丸(8)、黒丸(11)は同じ帯電電圧で、印字インク粒子黒丸(2)、黒丸(12)が同じ帯電電圧で、印字インク粒子黒丸(4)、黒丸(13)が同じ帯電電圧である。
【0051】
本発明は、上記の通り、文字幅調整用インク粒子に位相検出用帯電信号を与え、最適な帯電タイミングを検出するというものである。
【0052】
次に、文字幅調整用インク粒子に位相検出用帯電信号を与え、最適な帯電タイミングを検出方法について、図4を用いて説明する。
図4は、位相検出用帯電信号を帯びたインク粒子が位相検出センサ17で検出されたときの帯電電圧の分布図を示し、位相検出センサ17で検出した帯電電圧の波形と帯電タイミング検出回路7で検出した最適帯電位相の関係を示す。
【0053】
図4では、文字幅調整インク粒子の粒子化周期の1/10相ずつ、ずらしながら帯電電圧を印加し、その際の帯電電圧波形を検出している。帯電タイミング検出回路7では、検出した帯電電圧を位相0相より順に予め設定された閾値電圧と比較し、検出した帯電電圧が初めて閾値電圧を超える位相を検出することにより、最適な帯電位相を検出する。ここでは10相としているがこれに限るものでない。
図4においては、検出した帯電電圧が閾値電圧を超えて、最も帯電電圧の大きい位相を最適な帯電位相と判断しており、図4では4相目ということになる。
このように、文字幅調整用インク粒子に位相検出用帯電信号を与えることで、連続して印字する無限印字のアプリケーションにおいても、常時最適な帯電タイミングを検出することが可能となる。よって、印字乱れが発生しないインクジェット記録装置を実現できる。
また、文字幅調整用インク粒子が設定されていない場合、本発明のように位相検出用帯電信号を文字幅調整用インク粒子に与えることができないため、文字幅調整用インク粒子が存在することのみ有効である。
【0054】
次に、ユーザがパネル6より文字幅を設定する方法について図5を用いて説明する。
図5(a)はパネル6の画面を示し、図5(b)は印字文字“B”のドットマトリクス文字を示す。
パネル6の印字内容設定画面には、文字高さ、文字幅、帯電タイミング用インク粒子の数値、文字サイズ、印字情報、連続回数、印字情報間の間隔に関するデータを入力設定できるようにしている。
【0055】
設定画面は、タッチパネルで、数値は画面の右下コーナの数字キー30で入力できるようにし、数値入力の位置決めは上下左右移動制御するカーソルキー31で制御する。
文字高さは、図5(a)では“99”を入力設定しているが、入力可能な数値は0〜99ドットである。実際、印字対象物に印字する文字の高さ(或いは大きさ)は、インクジェット記録装置と印字対象物との距離によっても決まるため、その距離も調整して文字の高さ(或いは大きさ)を決めている。
【0056】
次に、文字幅は、図2(c)においては、5ドット設定しており、この数値は、多く設定すると縦スキャンの時間間隔が長くなり印字した文字が大きくなる。また、逆に少なく設定すると縦スキャンの時間間隔が短くなり、印字した文字幅は狭くなる。この設定箇所においては、0〜199ドットが入力可能である。
【0057】
また、文字幅を設定する文字幅調整用インク粒子において、帯電タイミングを検出するため位相検出用帯電信号を与えるインク粒子の数値も入力設定する。
この帯電タイミングを検出するためのインク粒子は、文字幅調整用インク粒子を採用しているため、<文字幅>の設定値以下となる。
次に、文字サイズは、図5(a)では横4×縦5ドットマトリクスに設定している。図5(b)に文字"B”を表しているが、縦スキャンの上部には文字幅調整用インク粒子を5ドット配置している(図2(c)参照)。
印字情報は、印字する文字を入力し、設定する箇所である。印字する文字は、一般にアルファベットや数字が最も多い。また、連続回路は、印字する文字の回数を入力設定する箇所で、図5(a)では、印字対象物が数mから数十m印字するケーブル、ホース又はパイプなど長いものの場合を示し、“無限"と入力することを示している。
【0058】
次に、印字情報間の間隔は、すなわち印字する文字の間隔のことで、図2(c)の場合は印字文字“B”のあとに間隔を持たないで、連続して印字文字”B“を印字するため、こと場合は印字情報間の間隔は”000“で、この数値を設定する。
【0059】
以上のように、本発明は、文字幅調整用インク粒子に位相検出用帯電信号を与えることで、無限印字のアプリケーションにおいて常時最適な帯電タイミングの検出が可能となり、印字乱れが発生しないインクジェット記録装置の実現が可能となる。
しかし、文字幅調整用インク粒子が設定されてない場合において、本実施例の内容では位相検出用帯電信号をインク粒子に与えることができず、従来と同様に印字の乱れが発生する。本実施例は文字幅調整用インク粒子が存在する場合にのみ有効である。
【0060】
以上の各実施例によれば、無限印字において最適な帯電タイミングを検出することが可能となるインクジェット記録装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0061】
1…MPU 2…RAM
3…ROM 4…表示装置
5…パネルインタフェース 6…パネル
7…帯電タイミング検知回路 8…被印字物検知回路
9…印字制御回路 10…ビデオRAM
11…帯電信号発生回路 12…ノズル
13…帯電電極 14…プラス偏向電極
15…マイナス偏向電極 16…ガター
17…位相検出センサ 18…ポンプ
19…被印字物検知センサ 20…コンベア
21…被印字物 22…バスライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧インクをノズルより噴出し、該ノズルを一定周期で振動させて該インクを一定周期で粒子化するインク粒子作成手段と、
印字される文字情報に基づいて粒子化の周期に同期した帯電信号を帯電電極に与え、粒子化されたインク粒子のうち印字されるドットに対応するインク粒子に電荷を帯電させる帯電手段と、
該電荷が帯びたインク粒子を偏向電界中で偏向する偏向手段と、
印字されないドットに対応するインク粒子をガターで回収する回収手段と、
被印字物をインク粒子の偏向方向とほぼ垂直に相対移動させることにより、被印字物上にドットマトリクス状に文字を形成する文字形成手段とを備えたインクジェット記録装置であって、
ドットマトリクス文字を形成する際、印字に使用しないインク粒子に位相検出用帯電信号を与え、ドットマトリクス文字を形成する過程において最適な帯電タイミングを検出することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
請求項1記載のインクジェット記録装置であって、
ドットマトリクス文字の外に文字幅調整用インク粒子を配置し、
該文字幅調整用インク粒子に位相検出用帯電信号を与え、ドットマトリクス文字を形成する過程において最適な帯電タイミングを検出することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項2記載のインクジェット記録装置であって、
前記最適な帯電タイミングの検出は、文字幅調整インク粒子の粒子化周期の1/N相(N:整数)ずつずらしながら帯電電圧を印加し、そのときの帯電電圧波形を検出し、帯電タイミング検出回路で検出した帯電電圧を位相0相より順に予め設定された閾値電圧と比較し、検出した帯電電圧が初めて閾値電圧を超える位相を検出することにより最適な帯電位相を検出することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
請求項2記載のインクジェット記録装置にあって、
前記文字幅調整用インク粒子に与える位相検出用帯電信号のレベルは、前記ガターを飛び越得ることができない帯電電圧レベルとすることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項5】
請求項1記載のインクジェット記録装置にあって、
前記インクジェット記録装置には、印字内容を設定する設定画面を有したパネルを備え、
該パネルの設定画面にて、文字高さ、文字幅、帯電タイミングを検出するためのインク粒子数、印字情報、連続回数を入力し設定できることを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−39545(P2013−39545A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179480(P2011−179480)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】