説明

インク供給器

【課題】簡易な構成でありながら、封止部材がインク室の内方に向けて過度に撓むことを規制して、インクの貯留量を正確に検出することができるインク供給器を提供する。
【解決手段】サブタンク120は、液体インクが貯留されるメインタンクから供給された液体インクを一時貯留した後にプリンタヘッド60に供給する凹状のインク貯留室123が開口形成された容体部材121と、容体部材121に取り付けられてインク貯留室123を封止するシート状のシート部材122と、容体部材121とシート部材122との間に配設されて、シート部材122の過度の撓みを規制する薄板部材122aと、インク貯留室123の内圧を調整する気送ポンプとを備えて構成され、気送ポンプにより、インク貯留室123の内圧が負圧状態に調整されたとき、薄板部材122aは、シート部材122のインク貯留室123内方への過度の撓みを規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出して所望の印刷を行うプリンタヘッドにインクを供給するインク供給器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記プリンタヘッドを用いたインクジェットプリンタは、プリンタヘッドを印刷媒体に対して相対移動させながら、プリンタヘッドの下面に形成されたノズルからインクを吐出させて所望の印刷を行うように構成される。インクジェットプリンタでは、インクの吐出に応じてインクが消費されるため、用途に応じた容量のインクタンク(インクカートリッジ)がプリンタヘッドのキャリッジまたはプリンタ本体に設けられる。例えば、商業用の大判広告やのぼり等をプリントする大型のインクジェットプリンタでは、多量のインクが比較的短時間のうちに消費される。このため、このような商業用のインクジェットプリンタでは、一般的に、大容量のインクタンクがプリンタ本体に設けられ、インクタンクとプリンタヘッドとがチューブ等により接続されて、インクの吐出に応じてインクタンクからプリンタヘッドにインクが供給されるように構成される。
【0003】
ここで、プリンタヘッドの内圧が大気圧よりも高くなると、インクがノズルから押し出されて印刷媒体上に滴下し、いわゆる「ぼた落ち」の問題を生じる。そのため従来、プリンタヘッドの内圧が大気圧よりもわずかに低い微負圧になるように、インク供給器(サブタンク)を用いた構成が知られている。従来のサブタンクの構成例として、プリンタ本体に設けたインクタンク(メインタンク)と、キャリッジに設けたプリンタヘッドとの間に小容量のインク室を有したサブタンクを設け、このサブタンクのインク室を調圧手段により減圧することで、プリンタヘッドを微負圧状態にする「負圧発生方式」が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
このサブタンクは、例えば箱状の本体部材の側面に凹状のインク室が開口形成され、このインク室を封止する封止部材が、開口面を覆うように取り付けられて構成され、プリンタヘッドへのインク供給が途絶えないように、ノズルからのインクの吐出量に応じて、サブタンクのインク室に所定量のインクが貯留されるように制御される。インクの貯留量制御には、例えばマグネットが固定されたフロートをインク室に浮かべ、そのマグネットの上下位置を検出することで、インクの貯留量を検出する方法がある。
【0005】
また、サブタンクは、例えば印刷時にはインク室内が調圧手段により減圧されて微負圧状態に保持され、一方、サブタンクのクリーニング時には、インク室内が調圧手段により加圧されて、インク室内のインクの排出を促進してスムーズにクリーニングが行われるように制御される。このとき、調圧手段による減圧または加圧の圧力変化を吸収して緩和させるため、およびインク室に貯留されたインクの状態(例えば、インクの貯留量)が、外部から目視で確認できるようにするために、上記封止部材として、従来例えば透明且つシート状の部材を用いて構成されていた。このように構成すると、封止部材が撓むことで圧力変化を吸収できるとともに、外部から目視でインク室の状態を確認できる。
【特許文献1】特開2004−284207号公報
【特許文献2】特開2006−62330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のように透明なシート状の封止部材を用いて、例えば調圧手段によりインク室が減圧された場合、封止部材はインク室の内方に向けて撓み、インク室の圧力変化を吸収する。しかしそのとき、封止部材がインク室の内方に向けて過度に撓むことでフロートと接触することがあり、このような場合には、液面の変化に応じたフロートの上下移動を妨げることとなり、インクの貯留量を正確に検出することが困難であった。
【0007】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成でありながら、封止部材がインク室の内方に向けて過度に撓むことを規制して、インクの貯留量を正確に検出することができるインク供給器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るインク供給器(例えば、実施形態におけるサブタンク120)は、液体インクを吐出して所望の印刷を行うプリンタヘッドに接続されて、前記プリンタヘッドに液体インクを供給するインク供給器であって、前記インク供給器が、略箱状に形成されるとともに、液体インクが貯留されるタンク(例えば、実施形態におけるメインタンク110)から供給された液体インクを一時貯留した後に前記プリンタヘッドに供給する凹状のインク室(例えば、実施形態におけるインク貯留室123)が開口形成された本体部材(例えば、実施形態における容体部材121)と、前記インク室の開口部を覆うように前記本体部材に取り付けられて前記インク室を封止するシート状の封止部材(例えば、実施形態におけるシート部材122)と、前記本体部材と封止部材との間に配設されて前記開口部を部分的に覆い、前記封止部材の過度の撓みを規制する撓み規制部材(例えば、実施形態における薄板部材122a)と、前記インク室に接続されて、前記インク室の内圧を調整する調圧手段(例えば、実施形態における気送ポンプ160)とを備えて構成される。前記調圧手段により、前記インク室の内圧が負圧状態に調整されたとき、前記撓み規制部材は、前記封止部材の前記インク室内方への過度の撓みを規制するように構成されている。なお、前記撓み規制部材は、格子状に形成されたことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るインク供給器は、本体部材に形成されたインク室の開口部を覆う封止部材が取り付けられるとともに、本体部材と封止部材の間に撓み規制部材が挟まれて構成される。この構成から、調圧手段によりインク室の内圧が負圧状態に調整されたとき、封止部材はインク室内方へ撓むことで圧力変化を吸収するとともに、撓み規制部材は、封止部材がインク室内方へ過度に撓んで、例えば液面検出用のフロートと接触することを規制することができる。よって、単に開口部を部分的に覆う撓み規制部材を設けるという簡易な構成でありながら、封止部材がインク室の内方に向けて過度に撓むことを規制できて、インク室内のインクの貯留量を正確に検出することが可能となる。
【0010】
また、上記インク供給器において、撓み規制部材は、格子状に形成されたことが好ましい。このように構成された場合、例えば調圧手段によりインク室の内圧が調整されたとき、格子状の隙間を液体インクが通過することで、封止部材を撓ませてその圧力変化を吸収させることができる。また、例えばこの格子の大きさを変えることで、封止部材の撓みを所望の撓み具合となるように調整可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明する。本発明を適用したインクジェットプリンタの一例として、プリンタヘッドを往復移動させるとともに、これに直交する方向に印刷媒体を送りながら印刷を行うタイプを採り上げ、紫外光が照射されて硬化する紫外線硬化型インク(いわゆるUVインク)をプリンタヘッドから吐出させるUV硬化インクジェットプリンタ(以下、プリンタ装置と称する)に適用した構成例について説明する。本実施形態のプリンタ装置Pの斜視図を図1および図2に、このプリンタ装置Pの装置本体1の要部構成を図3に示しており、これらの図面を参照してプリンタ装置Pの全体構成について説明する。なお、以降の説明では、図1中に付記する矢印F,R,Uの指す方向を、それぞれ前方、右方、上方と称して説明する。
【0012】
プリンタ装置Pは、大別的には、支持部2に支持された装置本体1、支持部2の前後に設けられ未印刷の印刷媒体Mを送り出す送り出し機構3、描画が終了した印刷媒体Mを巻き取る巻き取り機構4などから構成される。装置本体1は、フレーム10に印刷媒体Mを前後に挿通させる横長窓状のメディア挿通部15が形成され、このメディア挿通部15の下側に位置する下部フレーム10Lに、印刷媒体Mを支持するプラテン20、および印刷媒体Mを前後に送るメディア移動機構30が設けられている(図3参照)。
【0013】
メディア挿通部15の上側に位置する上部フレーム10Uに、プリンタヘッド60を保持するキャリッジ40、およびキャリッジ40を左右に移動させるキャリッジ移動機構50が設けられている。また、装置本体1には、後述するコントロールユニット80が設けられ、装置本体1の前面には、各種操作スイッチ等が設けられた操作パネル88が配設されている。
【0014】
プラテン20は、メディア挿通部15の下側を前後に延びて下部フレーム10Lに設けられており、プリンタヘッド60による左右帯状の描画領域には、印刷媒体Mを水平に支持するメディア支持部21が形成されている。メディア移動機構30は、上部周面がプラテン20に露出した円筒状の送りローラ31と、この送りローラ31をタイミングベルト32を介して回転駆動するローラ駆動モータ33等からなり、送りローラ31の上方には、回動自在に支持されたピンチローラ36を有するローラアッセンブリ35が、左右に配設されている。
【0015】
ローラアッセンブリ35は、ピンチローラ36を送りローラ31に押しつけたクランプ位置と、送りローラ31から離隔させたアンクランプ位置とに設定可能に構成されている。印刷媒体Mをピンチローラ36と送りローラ31との間に挟み、ローラアッセンブリ35をクランプ位置に設定して、ローラ駆動モータ33を回転駆動することにより、印刷媒体Mを所定距離だけ前後に送ることができる。なお、図3では、クランプ位置およびアンクランプ位置の両方を併記している。
【0016】
キャリッジ40は、上部フレーム10Uに取り付けられたガイドレール45に、左右に移動自在に支持されており、後述するキャリッジ駆動機構50により駆動される。キャリッジ40には、UVインクを吐出するプリンタヘッド60が、メディア支持部21と所定ギャップを隔てた状態で搭載される。図5にキャリッジ周辺の斜視図を示しており、この図5には、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のUVインクについて、それぞれプリンタヘッド60(第1プリンタヘッド60C,第2プリンタヘッド60M,第3プリンタヘッド60Y,第4プリンタヘッド60K)を設けた場合を例示している。
【0017】
キャリッジ40には、後に詳述するサブタンク120(第1サブタンク120C,第2サブタンク120M,第3サブタンク120Y,第4サブタンク120K)が、プリンタヘッド60に対応して設けられている。なお、本実施形態におけるプリンタヘッド60は、ピエゾ方式によってインクを吐出させる構成を例示している。
【0018】
キャリッジ40の左右側部には、印刷媒体Mに向けて紫外光を照射する左UV光源70Lおよび右UV光源70Rが設けられており、例えばUVランプやUV−LED等を用いて構成される。この左UV光源70Lおよび右UV光源70Rの点滅作動は、キャリッジ40の移動およびプリンタヘッド60からのインクの吐出に応じて、コントロールユニット80により制御される。
【0019】
キャリッジ移動機構50は、フレーム10の左右側部に設けられた駆動プーリ51および従動プーリ52と、駆動プーリ51を回転駆動するキャリッジ駆動モータ53、駆動プーリ51と従動プーリ52との間に巻き掛けられた無端状のタイミングベルト55等から構成される(図3参照)。キャリッジ40は、タイミングベルト55に固定されており、キャリッジ駆動モータ53の駆動に応じて、ガイドレール45に沿ってプラテン20の上方を左右に移動される。
【0020】
コントロールユニット80は、各構成部の制御プログラムが書き込まれたROM81、プログラム等を一時記憶するRAM82、このRAM82から読みこまれたプログラム、および操作パネル88から入力された操作信号等について演算処理を行う演算処理部83を主体に構成される。このコントロールユニット80は、メディア移動機構30、キャリッジ移動機構50、プリンタヘッド60、後述するインク供給装置100等の、各構成部の作動を制御する。
【0021】
例えば、コントロールユニット80に読み込まれた印刷プログラムに基づいて印刷媒体Mに描画を行う場合、メディア移動機構30による印刷媒体の前後移動Mと、キャリッジ移動機構50によるキャリッジ40の左右移動とを組み合わせて、印刷媒体Mとプリンタヘッド60とを相対移動させる。この相対移動と同時に、各プリンタヘッド60から印刷媒体Mに向けてUVインクを吐出させながら、キャリッジ40の移動方向後方に位置するUV光源(例えば、キャリッジ右動時には左UV光源70L)を点灯させて、印刷プログラムに応じた情報を描画する。
【0022】
このように、概要構成されるプリンタ装置Pにあって、印刷時にはプリンタヘッド60
におけるUVインクの消費量に応じて、インク供給装置100からプリンタヘッド60に
UVインクが供給される。図4はインク供給装置100の系統図、図6はサブタンク120の外観斜視図、図7は図6中のVII−VII部分における断面図、図8はインク供給装置100の概要ブロック図を示す。
【0023】
インク供給装置100は、プリンタヘッド60に接続されたサブタンク120、UVインクが貯留されたメインタンク110、サブタンク120の内圧を負圧状態に減圧するサブタンク減圧部140、サブタンク120の内圧を正圧状態に加圧するサブタンク加圧部150、メインタンク110に貯留されたUVインクをサブタンク120に移送するインク移送部115等からなり、サブタンク減圧部140およびサブタンク加圧部150が一台の気送ポンプ160により構成される(図4参照)。
【0024】
メインタンク110として、このプリンタ装置Pにおける単位時間当たりのUVインクの消費量に応じた容量を貯留し得るものが選択される。また、図2に、上述の4色についてそれぞれカートリッジ式のメインタンク110(第1メインタンク110C,第2メインタンク110M,第3メインタンク110Y,第4メインタンク110K)を、装置本体1の背面に着脱可能に配設した構成例を示す。
【0025】
サブタンク120は、図6に示すように、一側方(紙面右方)に開口した薄型矩形箱状の容体部材121に、この容体部材121の開口面を覆って封止する例えば樹脂材料からなる透明なシート部材122が溶着されており、シート部材122によって封止されることにより、UVインクを貯留するインク貯留室123が形成される。この容体部材121の開口面とシート部材122の間に、例えば金属材料からなり格子状に形成された薄板部材122aが挟持されており、この薄板部材122aにより開口面が部分的に覆われている。
【0026】
インク貯留室123の後方には、インク貯留室123と連通して上下に延びる溝状のフロート収容室124が形成される。フロート収容室124には、UVインクに浮揚する円盤状のフロート134が上下移動自在に収容され、そのフロート134の中心部には、マグネット134aが固着されている。容体部材121およびシート部材122の少なくとも一方が、透明または半透明の材料を用いて形成されることにより、インク貯留室123のUVインクの貯留状態およびフロート134の浮遊状態等を、外部から目視確認可能に構成される。
【0027】
サブタンク120の下面側には、容体部材121の底壁121bから下方に突出した短円筒状のコネクタ部125が形成され、このコネクタ部125とプリンタヘッド60とが、チューブ69を用いて接続されている(図6および図7参照)。コネクタ部125の上部には、底壁121bからインク貯留室123内を上方に延びるブロック状のダクト部126が形成される。インク貯留室123とコネクタ部125とを繋ぐように、底壁121bを上下に貫通する第1導出路127aが形成されるとともに、ダクト部126を上下に貫通する第2導出路126bが形成されている。
【0028】
上記第1導出路127aの断面積は、第2導出路126bの断面積よりも小さく形成され、インク貯留室123とプリンタヘッド60とは、第1導出路127aおよび第2導出路126bを介して接続されている。なお、印刷を行っていないとき、キャリッジ40は基準位置(ホームポジション)に位置するように移動制御され、この基準位置に位置したプリンタヘッド60の下方には、UVインクを受け止めるバット状のインクトレイ180が設けられている(図5参照)。
【0029】
サブタンク120の後面側に、インク貯留室123内のUVインクの貯留状態を検出する貯留検出部130が設けられている。貯留検出部130は、インク貯留室123のUVインクの液面とともに上下移動する上述のフロート134、およびフロート134に固着されたマグネット134aの磁気を検出して、UVインクの液面高さを検出する液面検出センサ138から構成される。容体部材121の後方壁121rには、上下に延びる溝状のセンサ装着部131が形成されており、このセンサ装着部131に上記液面検出センサ138が装着され、例えば後述するケース部材137の取付孔137aに取付ネジ139を挿通させて締結することにより、液面検出センサ138が後方壁121rに固定される(図7参照)。
【0030】
液面検出センサ138は、上から順に限界検出センサ136E、Hi検出センサ136H、Lo検出センサ136Lが取り付けられた液面検出基板135、およびこの液面検出基板135を収容したケース部材137から構成される。なお、各検出センサ136E,136H,136Lは、例えばファラデー素子や磁気インピーダンス素子等を用いて構成することが可能で、ホール素子が好適に用いられる。また、マグネット134aとして種々の磁石を用いることが可能で、異方性フェライト磁石が好適に用いられる。
【0031】
図7に示すように、液面検出センサ138は、後方壁121rを挟んでフロート134と対向配置され、マグネット134aの磁気を各検出センサ136E,136H,136Lで検出することにより、マグネット134aの高さ位置、すなわちインク貯留室123のUVインクの液面高さを検出できるようになっている。図7から分かるように、フロート収容室124の内壁とフロート134(マグネット134a)の前後側面とは近接しているため、フロート134がUVインクの液面高さに応じてフロート収容室124を略真っ直ぐに上下移動する構成となっている。
【0032】
液面検出センサ138がセンサ装着部131に固定された状態において、Hi検出センサ136Hは、インク貯留室123におけるUVインクの液面が最高位置に達したことを検出し、一方、Lo検出センサ136Lは、UVインクの液面が最低位置に達したことを検出する。限界検出センサ136Eは、Hi検出センサ136Hよりも上方に位置しており、UVインクの液面が最高位置を超えて上昇したこと検出する。フロート134が、限界検出センサ136Eの位置を超えてさらに上昇しないように、フロート収容室124の上部には規制リブ124aが形成されている。このようにして検出されたUVインクの液面高さは、液面検出センサ138からコントロールユニット80に出力される。
【0033】
サブタンク120の前面側には、容体部材121の前方壁121fを前後に貫通するインク導入路(図示せず)が形成され、このインク導入路にチューブコネクタ128が挿入される。また、サブタンク120の上面側には、容体部材121の天井壁121tを上下に貫通する気体導入路(図示せず)が形成され、この気体導入路に、中心部に気体導入孔129aが形成されたチューブコネクタ129が挿入される。
【0034】
インク移送部115は、メインタンク110とサブタンク120との間を結ぶメイン供給回路116により形成される。メイン供給回路116は、メインタンク110と液送ポンプ118とに接続されたインク吸入ライン117a、液送ポンプ118とチューブコネクタ128とに接続されたインク送出ライン117b、UVインクをメインタンク110からサブタンク120に供給する液送ポンプ118等から構成される。
【0035】
サブタンク減圧部140は、サブタンク120と気送ポンプ160の吸入口161との間を結ぶ負圧回路141により形成される。負圧回路141は、図4中の枠Aで囲んで示すように、エアチャンバー142、負圧回路141の圧力を検出する圧力センサ144、負圧回路141を開閉する負圧制御弁145、およびこれらの機器を接続して気送ポンプの吸入口161とサブタンク120との間を結ぶライン147(147a,147b,147c,147d)等から構成される。なお、図4中の枠Cで囲まれた部分がキャリッジ40に設けられ、枠外の部分が装置本体1に設けられる機器である。
【0036】
エアチャンバー142は、吸入口161と接続されており、気送ポンプ160の作動によりチャンバー内の空気が排気されて負圧状態に減圧されるように構成されており、また、負圧状態のチャンバー内に空気を導入する空気導入ライン147iが設けられている。この空気導入ライン147iには、空気の流量を調整する流量調整弁143aおよび除塵用のエアフィルタ143bが設けられている。流量調整弁143aは、気送ポンプ160とサブタンク120が負圧回路141を介して接続された状態において、エアチャンバー142に流入する空気の流量を調整してエアチャンバー142の内圧を定圧化させる。
【0037】
負圧制御弁145は、エアチャンバー142とサブタンク120との間に位置し、ライン147cとライン147dとを、連通状態と遮断状態とに切り替える電磁弁である。図4には、負圧制御弁145として三方弁を用いた構成を例示しており、コモンポート(COM)にライン147c、ノーマルオープンポート(NO)にライン147dが接続され、ノーマルクローズポート(NC)はライン147xおよびサイレンサ148を介して大気に開放されている。
【0038】
このため、負圧制御弁145がオフのとき(印刷中や待機中など通常の稼働時、およびインク充填時)には、ライン147cとライン147dとが接続されて負圧回路141が連通状態に設定され、吸入口161とサブタンク120とが後述する合流回路171を介して接続される。一方、負圧制御弁145がオンのとき(クリーニング時等)には、ライン147cとライン147dとの接続が切り離されて負圧回路141が遮断されるとともに、ライン147cがライン147xに繋がり、気送ポンプ160の吸入口側の回路が大気に開放される。
【0039】
サブタンク加圧部150は、サブタンク120と気送ポンプ160の吐出口162との間を結ぶ正圧回路151により形成される。正圧回路151は、図4中の枠Bで囲んで示すように、空気の流量を調整する流量調整弁153a、除塵用のエアフィルタ153b、正圧回路151の圧力を検出する圧力センサ154、正圧回路151を開閉する正圧制御弁155、およびこれらの機器を接続して気送ポンプ160の吐出口162とサブタンク120との間を結ぶライン157(157a,157b,157c,157d)等から構成される。流量調整弁153aは、気送ポンプ160とサブタンク120とが正圧回路151により接続された状態において、インク貯留室123の内圧が所定以上に上昇しないように調整するバルブである。
【0040】
正圧制御弁155は、流量調整弁153aとサブタンク120との間に位置し、ライン157cとライン157dとを、連通状態と遮断状態とに切り替える電磁弁である。図4には、正圧制御弁155として三方弁を用いた構成を例示しており、正圧制御弁155のコモンポート(COM)にライン157c、ノーマルクローズポート(NC)にライン157dが接続され、ノーマルオープンポート(NO)はライン157xおよびサイレンサ158を介して大気に開放されている。
【0041】
このため、正圧制御弁155がオフのとき(印刷中や待機中など通常の稼働時、およびインク充填時)には、ライン157cとライン157dの接続が切り離されて正圧回路151が遮断されるとともに、ライン157cがライン157xに繋がり、気送ポンプ160の吐出口側の正圧回路が大気に開放される。一方、正圧制御弁155がオンのとき(クリーニング時等)には、ライン157cとライン157dとが接続されて正圧回路151が連通状態に設定され、吐出口162とサブタンク120が合流回路171を介して接続される。
【0042】
気送ポンプ160は、吸入口161に接続された負圧回路141から空気を吸入し、吸入した空気を吐出口162に接続された正圧回路151に圧送するポンプであり、吐出口162および吸入口161に、所定の正負圧力を発生する形態のポンプが用いられる。
【0043】
負圧回路141と正圧回路151とは、サブタンク120に向かう途上で合流し、合流回路171が形成される。合流回路171は、サブタンク120に接続されるライン177と、合流回路171を開閉する合流回路開閉弁175とから構成される。合流回路開閉弁175は、サブタンク120の数量に対応して設けられており、図4には、合流回路171(ライン177)が4つに分岐され、分岐された各合流回路(ライン177C,177M,177Y,177K、一部符番を省略)を、個々に開閉可能に構成される場合を例示している。
【0044】
以上のように構成されるプリンタ装置Pは、図8に示すように、コントロールユニット80に圧力センサ144,154および液面検出センサ138において得られた検出結果が入力されるとともに、操作パネル88からの操作信号が入力される。コントロールユニット80は、これらの入力結果を基に、液送ポンプ118、気送ポンプ160、負圧制御弁145、正圧制御弁155および合流回路開閉弁175の作動を制御する。
【0045】
以下において、コントロールユニット80による作動制御について説明する。なお、UVインクの供給系については4つの系統(C,M,Y,K)について同様であるため、以下の説明において各系統に共通する事項については、これらの添え字を省略して説明する。
【0046】
プリンタ装置Pのメイン電源がオン操作されると、コントロールユニット80は気送ポンプ160を駆動させ、すべての合流回路開閉弁175をオンにする。合流回路開閉弁175をオンにした後、負圧制御弁145および正圧制御弁155は、ともにオフのままとすることにより、負圧回路141では、ライン147cとライン147dとが連通して吸入口161とインク貯留室123とが接続され、一方正圧回路151では、ライン157cとライン157xとが接続されて、気送ポンプ160の吐出口側の回路が大気に開放される。このようにして、印刷プログラムの実行中、または待機中を問わず、気送ポンプ160は継続して駆動され、4つのインク貯留室123の内圧が、常時同一の負圧に設定された状態で保持される。
【0047】
このように、貯留室123の内圧が負圧に設定されたとき、シート部材122がサブタンク120の内方に向けて撓むことにより、その内圧変動を吸収(緩和)できるので、サブタンク120の各構成部に過度の外力が作用しない構成となっている。また、インク貯留室123およびフロート収容室124は、薄板部材122aにより部分的に覆われているので、シート部材122がサブタンク120の内方に向けて過度に撓むことを規制できる。よって、例えばシート部材122とフロート134とが接触することがなく、UVインクの液面高さに応じたフロート134の上下移動を確保でき、正確な液面高さの検出が可能となる。また例えば、サブタンク120内のUVインクを一旦全て排出させてクリーニングを行う時、上記とは逆に貯留室123の内圧が正圧に設定される。この場合、シート部材122は、サブタンク120の外方に向けて撓むことにより、その内圧変動を吸収する構成となっている。
【0048】
通常の印刷時において、サブタンク120のインク貯留室123に、常にある程度のUVインクが貯留されるように、コントロールユニット80は各構成部を制御する。その制御について具体的に説明すると、インク貯留室123に貯留されたUVインクは、印刷プログラムの実行等により、プリンタヘッド60のノズルから吐出されて消費されることにより徐々に減少する。インク貯留室123に貯留されたUVインクが減少すると、UVインクの液面高さは下がり、フロート134もその液面高さに応じてフロート収容室124を下方に移動される。
【0049】
そして、マグネット134aの磁気が、最低位置のLo検出センサ136Lによって検出されたとき、コントロールユニット80は、インク貯留室123が負圧状態に減圧された状態で液送ポンプ118を起動させる。液送ポンプ118の駆動により、メインタンク110から送り出されたUVインクは、ライン117bを通ってチューブコネクタ128からインク貯留室123に供給される。このインク貯留室123へのUVインクの供給が継続されることで、UVインクの液面高さが徐々に上がり、マグネット134aの磁気が、最高位置のHi検出センサ136Hによって検出されたとき、コントロールユニット80は、液送ポンプ118の駆動を停止させUVインクの補充が完了する。
【0050】
上記UVインクの補充時に、マグネット134aの磁気がHi検出センサ136Hで検出されることで、コントロールユニット80は液送ポンプ118の駆動を停止させるが、例えば、液送ポンプ118の駆動を停止させてから、実際にUVインクの供給が停止されるまでに、多少のタイムラグが発生することがある。上述のように、インク貯留室123の内圧は負圧に設定されているので、このタイムラグの間に過度に供給されたUVインクが、気体導入孔129aに吸引されてライン177を逆流してしまう虞がある。このような事態を回避するために、本発明に係るサブタンク120には、液面検出センサ138に限界検出センサ136Eを設けている。
【0051】
この限界検出センサ136Eの作動について説明すると、UVインクの補充時において、マグネット134aの磁気が限界検出センサ136Eで検出されると、コントロールユニット80は、液送ポンプ118の駆動を停止させた状態のまま、負圧制御弁145および正圧制御弁155をオンにする。つまり、ライン147cとライン147dとの連通を遮断するとともに、ライン157cとライン157dとを連通させて、気送ポンプの吐出口162と第1サブタンク60cのインク貯留室123とを接続し、短時間(例えば1秒間)インク貯留室123内を正圧状態とする。こうすることにより、UVインクが気体導入孔129aに吸引されてライン177を逆流することがなく、さらには、短時間だけ正圧状態とすることにより、いわゆる「ぼた落ち」の問題も発生しない。
【0052】
上述の実施形態において、金属材料からなり格子状に形成された薄板部材122aを例示して説明したが、この構成に限定されない。例えば、インク貯留室123内が負圧に設定されたときに、サブタンク120の内方にシート部材122が過度に撓むことを防止できれば、シート部材122の材質および形状は限定されない。
【0053】
また、上述の実施形態において、サブタンク120に対して液面検出センサ138が脱着可能な構成を説明したが、例えば、限界検出センサ136E、Hi検出センサ136H、Lo検出センサ136L、および液面検出基板135が、サブタンク120に組み込まれた構成でも良い。
【0054】
なお、上述の実施形態において、液面検出センサ138として、液面検出基板135がケース部材137に収容された構成を例示して説明したが、この構成に限定されない。例えば、液面検出基板135がケース部材137に収容されておらず、限界検出センサ136E、Hi検出センサ136HおよびLo検出センサ136Lが取り付けられた液面検出基板135を、サブタンク120に装着した構成でも良い。
【0055】
上述の実施形態において、図7に示すように、フロート134の中心部にマグネット134aが固着され、マグネット134aの上下位置とUVインクの液面位置とが一致する構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、上端部にマグネット134aが固着されたフロート134をUVインク中に浮かべたときの、UVインクの液面位置とマグネット134の固着位置との位置関係が把握されている場合、このマグネット134の固着位置を考慮して、限界検出センサ136E、Hi検出センサ136H、Lo検出センサ136Lを配設した構成も可能である。
【0056】
また、上述の実施形態では、本発明を適用したインクジェットプリンタの一例として、一軸印刷媒体移動、一軸プリンタヘッド移動の、UV硬化インクジェットプリンタに適用した構成例について説明した。しかし、本発明は他の形態のジェットプリンタ、例えば二軸プリンタヘッド移動タイプや、二軸印刷媒体移動タイプのインクジェットプリンタにも適用することができ、使用するインクについても、染料系や顔料系など他の種類のインクを用いたインクジェットプリンタに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の適用したプリンタ装置を斜め前方から示した外観斜視図である。
【図2】上記プリンタ装置を斜め後方から示した外観斜視図である。
【図3】上記プリンタ装置の装置本体の要部構成を示した正面図である。
【図4】インク供給装置の系統図である。
【図5】上記プリンタ装置のキャリッジ周辺を示した斜視図である。
【図6】キャリッジに設けられたサブタンクを示した外観斜視図である。
【図7】図6中のVII−VII部分を示した断面図である。
【図8】インク供給装置の概要ブロック図である。
【符号の説明】
【0058】
60 プリンタヘッド(60C:第1プリンタヘッド、60M:第2プリンタヘッド、60Y:第3プリンタヘッド、60K:第4プリンタヘッド)
110 メインタンク(110C:第1メインタンク、110M:第2メインタンク、110Y:第3メインタンク、110K:第4メインタンク)(タンク)
120 サブタンク(120C:第1サブタンク、120M:第2サブタンク、120Y:第3サブタンク、120K:第4サブタンク)(インク供給器)
121 容体部材(本体部材)
122 シート部材(封止部材)
122a 薄板部材(撓み規制部材)
123 インク貯留室(インク室)
160 気送ポンプ(調圧手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体インクを吐出して所望の印刷を行うプリンタヘッドに接続されて、前記プリンタヘッドに液体インクを供給するインク供給器であって、
前記インク供給器が、
略箱状に形成されるとともに、液体インクが貯留されるタンクから供給された液体インクを一時貯留した後に前記プリンタヘッドに供給する凹状のインク室が開口形成された本体部材と、
前記インク室の開口部を覆うように前記本体部材に取り付けられて前記インク室を封止するシート状の封止部材と、
前記本体部材と封止部材との間に配設されて前記開口部を部分的に覆い、前記封止部材の過度の撓みを規制する撓み規制部材と、
前記インク室に接続されて、前記インク室の内圧を調整する調圧手段とを備えて構成され、
前記調圧手段により、前記インク室の内圧が負圧状態に調整されたとき、
前記撓み規制部材は、前記封止部材の前記インク室内方への過度の撓みを規制することを特徴とするインク供給器。
【請求項2】
前記撓み規制部材は、格子状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のインク供給器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−36415(P2010−36415A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200825(P2008−200825)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】