説明

インサート成形方法及びインサート成形品

【課題】天然木化粧パネル等を製造する際のバックアップ材や化粧板、接着フィルムの積層構造を簡略化できるようにする。
【解決手段】まず、可動側金型21にスペーサーフィルム12を取り付けるとともに、天然木等を用いたコアフィルム10を密着させる。次いで、可動側金型21と固定側金型22とを型閉めして、溶融された合成樹脂を射出ゲート23から注入することによって、コア部品を作製する。次いで、コア部品からスペーサーフィルム12を取り外して、再び固定側金型22に密着させる。次いで、溶融樹脂導入部品24を、固定側金型22に密着させたコア部品に仮固定させる。そして、可動側金型21と固定側金型22とを型閉めして、溶融された合成樹脂を射出ゲート23から注入することによって、コアフィルム10の表面及び裏面の両面に合成樹脂層20a,20bが形成されたインサート成形品を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然木等のコアフィルムの表面及び裏面に合成樹脂層を形成したインサート成形品を成形するインサート成形方法、及びそのインサート成形方法を用いて成形したインサート成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の内装用に天然木化粧パネルが用いられている(例えば、非特許文献1)。非特許文献1に記載されたような天然木化粧パネルは、自動車部品として高い要求仕様を満足するために、寸法精度の狂いがなく耐環境特性を満足するように作製されなければならない。具体的には、このような天然木化粧パネルは、耐環境性(耐高温、耐低温、耐湿度、耐候性等)や、耐薬品性(耐水、耐化学薬品、耐汗、耐脂等)を満足するように作製することが要求される。
【0003】
【非特許文献1】福野礼一朗著、「クルマはかくして作られる」別冊CG、二玄社、平成19年7月20日13刷発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
耐環境特性を満足するために、一般に、天然木化粧パネルは、多層積層構造に作製され、その製造工程も複雑である。図17は、自動車内装用の天然木化粧パネルの製造工程の例を示す説明図である。天然木化粧パネルを製造する場合、まず、木材を0.5〜0.8mm程度にスライスしたパネルを、それぞれ木目を直交させながら10層程積層することによって、芯材93を作製する。次いで、図17に示すように、芯材93の両面に、フェノール樹脂を含浸させた5〜6mm程度のバッカー(フェノール樹脂含浸強化木材)91を重ねてサンドイッチ構造とする。なお、バッカーとは、バックアップ材を意味する。また、この場合に、図17に示すように、芯材93とバッカー91との間(図17に示すように、芯材93を複数重ね合わせる場合には、さらに各芯材93の間)には、フェノール系乾式接着フィルム92を挟み込む。そして、サンドイッチ構造としたものを加熱・熱処理して一気に接着した後、研磨加工して合板に仕上げる。
【0005】
次いで、作製した合板と化粧板(ウォールナット0.2mm板)96との間に、化粧材裏打ちシート95と2液性湿式接着剤94とを挟み、圧着・熱処理して積層する。次いで、ポリエステル樹脂97をスプレーを用いて下塗り/中塗りし乾燥させた後、研磨する。そして、UV(紫外線)硬化型アクリル塗料(アクリル系UV乾燥塗料)98を上塗り塗装後、UVを用いて強制乾燥させ、研磨して鏡面艶出しを行う。
【0006】
上記のように、天然木化粧パネルを製造する場合、天然木化粧パネルを構成する各層をプレスし加熱しながら接着する工程を繰り返す。そのため、製造工程が多く、製造に手間がかかる。
【0007】
そこで、本発明は、天然木化粧パネル等を製造する際のバックアップ材や化粧板、接着フィルムの積層構造を簡略化することができるインサート成形方法及びインサート成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるインサート成形方法は、フィルムをインサート成形してインサート成形品を作製するインサート成形方法であって、第1の金型(例えば、可動側金型21)にスペーサー部品(例えば、スペーサーフィルム12)を取り付けるとともに、スペーサー部品のうちの第1の金型と対向する側の面に所定のコアフィルム(例えば、天然木製のコアフィルム10。合成樹脂性のフィルムであってもよい。)を密着させ、第1の金型と、溶融された合成樹脂を注入するための樹脂注入部(例えば、射出ゲート23)を備えた第2の金型(例えば、固定側金型22)とを型閉めして、溶融された合成樹脂を樹脂注入部から注入することによって、コア部品を作製し、コア部品からスペーサー部品を取り外して、再びコア部品を第2の金型に密着させ、コア部品が第2の金型から外れること及びコアフィルムが剥がれることを防止するとともに樹脂注入部から注入される合成樹脂を金型内に導くための溶融樹脂導入部品(例えば、溶融樹脂導入部品24)を、第2の金型に密着させたコア部品のうちの樹脂注入部に位置する部分に仮固定させ、第1の金型と第2の金型とを型閉めして、溶融された合成樹脂を樹脂注入部から注入することによって、コアフィルムの表面及び裏面の両面に合成樹脂層が形成されたインサート成形品を作製することを特徴とする。
【0009】
また、インサート成形方法は、溶融樹脂導入部品を、第2の金型に密着させたコア部品のうちの樹脂注入部に位置する部分に仮固定させるとともに、第1の金型に所定の表皮用フィルム(例えば、スキンフィルム11)を密着させ、第1の金型と第2の金型とを型閉めして、溶融された合成樹脂を樹脂注入部から注入することによって、コアフィルムの表面及び裏面の両面に合成樹脂層が形成されるとともに、表皮用フィルムが被覆されたインサート成形品を作製するように構成されていてもよい。
【0010】
また、インサート成形方法は、コアフィルムとして、天然木製のフィルムを用いたものであってもよい。
【0011】
本発明によるインサート成形品は、フィルムをインサート成形するインサート成形方法を用いて作製されたインサート成形品であって、所定のコアフィルム(例えば、天然木製のコアフィルム10。合成樹脂性のフィルムであってもよい。)を備え、コアフィルムの表面に第1の合成樹脂層(例えば、合成樹脂層20a)が設けられ、コアフィルムの裏面に第2の合成樹脂層(例えば、合成樹脂層20b)が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インサート成形方法を用いることにより、所定のコアフィルムの表裏両面に合成樹脂層が形成されたインサート成形品を得ることができる。そのため、成形品の各層を何回もプレスしたり加熱したりする必要をなくすことができ、成形品を製造する際のバックアップ材や化粧板、接着フィルムの積層構造を簡略化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施形態1.
以下、本発明の第1の実施形態を図面を参照して説明する。まず、本発明によるインサート成形方法を用いて成形したインサート成形品の具体例について説明する。図1は、本発明によるインサート成形方法を用いて成形したインサート成形品の構造の具体例を示す断面図である。図1に示すように、本発明によるインサート成形方法を用いて成形したインサート成形品は、コアフィルム10の表面及び裏面の両面に合成樹脂層20a,20bが形成されている。
【0014】
コアフィルム10は、具体的には、天然木等を用いて作製されたフィルムである。また、合成樹脂層20a,20bは、具体的には、ABS(アクリロニトル・ブラジエン・スチレン樹脂)や、AS(アクリロニトリルスチレン)、PC(ポリカーボネート)、PMMA(アクリル樹脂)等の合成樹脂を用いて成形される。
【0015】
なお、図1に示すインサート成形品は、耐環境性(耐高温、耐低温、耐湿度、耐候性等)や、耐薬品性(耐水、耐化学薬品、耐汗、耐脂等)等の高い耐環境特性を要求されるパネル等を作製する用途に適用される。例えば、図1に示すインサート成形品は、自動車の内装用に用いられる天然木パネルを作製する用途に用いられる。
【0016】
次に、本発明によるインサート成形方法の手順について説明する。本発明によるインサート成形方法では、例えば、図2に示すように、既設の可動側金型21と、射出ゲート23を備えた固定側金型22とが用いられる。
【0017】
インサート成形を行う場合、まず、図3に示すように、既設の可動側金型21と固定側金型22との金型が型開きされた状態で、可動側金型21にスペーサーフィルム12を密着させてセットする。次いで、図3に示すように、可動側金型21にセットしたスペーサーフィルム12に、さらにコアフィルム10を密着させてセットする。なお、スペーサーフィルム12及びコアフィルム10は、例えば、真空引きを行うことによって、可動側金型21に密着させることができる。
【0018】
スペーサーフィルム12は、具体的には、射出成形時にコアフィルム10と接着しないようにするために、コアフィルム10とは異なる材質の材料を用いて作製される。例えば、スペーサーフィルム12は、金属製のフィルムとして作製される。また、スペーサーフィルム12は、コアフィルム10とは異なる材質の合成樹脂であれば、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPC、ABSを用いて作製されていてもよい。
【0019】
次いで、図4に示すように、可動側金型21を可動して可動側金型21と固定側金型22とを型閉めする。そして、図5に示すように、射出側の固定側金型22の射出ゲート23から、溶融された合成樹脂を金型内に射出し注入する。
【0020】
その後、溶融された合成樹脂の注入が完了すると、可動側金型21と固定側金型22とが型開きされ、図6に示すように、スペーサーフィルム12が取り付けられた状態のインサート成形品(この段階では、まだ完成品ではない。以下、コア部品という。)が得られる。
【0021】
前述したように、スペーサーフィルム12は、コアフィルム10とは異なる材質の材料を用いて作製されているので、コア部品からスペーサーフィルム12を容易に取り外すことができる。スペーサーフィルム12を取り外すと、図7に示すように、コアフィルム10の片面側(本例では裏面側)にのみ、合成樹脂層20bが形成されたコア部品が得られる。また、スペーサーフィルム12を用いることにより、図7に示すように、金型内部の寸法よりも小さいコア部品が得られる。
【0022】
次いで、得られたコア部品に、溶融された合成樹脂を射出するための溶融樹脂経路用の開口を設けるとともに、図8に示すように、再びそのコア部品を固定側金型22に密着させてセットする。この場合、図8に示すように、コア部品には、固定側金型22に密着された状態で射出ゲート23に位置する部分に、射出ゲート23から射出注入される合成樹脂を通過させるための開口が設けられるものとする。
【0023】
また、図8に示すように、固定側金型22側に密着させたコア部品に所定の溶融樹脂導入部品24を仮固定させる。溶融樹脂導入部品24は、射出側の金型である固定側金型22に密着させたコア部品が固定側金型22から外れたり、コアフィルム10が剥がれたりすることを防止するとともに、射出ゲート23から注入される合成樹脂(溶融された合成樹脂)を金型内に導入するための部品である。なお、溶融樹脂導入部品24は、インサート成形品を形成する合成樹脂層20a,20bと同じ材質の合成樹脂を用いて作製されたものであることが望ましい。
【0024】
溶融樹脂導入部品24は、図8に示すように、コア部品のコアフィルム10のうちの固定側金型22の射出ゲート23に位置する部分に、所定の接着剤を用いて仮固定される。この場合、所定の接着剤として、例えば、シアノアクリレートを用いた瞬間接着剤を用いればよい。また、所定の接着剤として、樹脂同士の接着に適した成分の接着剤(例えば、シリル化ウレタン樹脂やアクリル樹脂、ウレタン樹脂を用いた接着剤)を用いてもよい。また、このような接着剤を用いず、例えば、超音波溶着により溶融樹脂導入部品24をコア部品のコアフィルム10に仮固定してもよい。
【0025】
溶融樹脂導入部品24の形状について説明する。図9は、溶融樹脂導入部品24の具体的な形状を示す斜視図である。また、図10は、図9に示した溶融樹脂導入部品24の正面、上面、下面及び各側面を示した説明図である。なお、図9及び図10において、溶融樹脂導入部品24の各面のうち、各溝部241a〜241dが設けられている側の面を正面とする。
【0026】
図9及び図10に示す例において、溶融樹脂導入部品24の背面244側が、固定側金型22に密着されたコア部品のコアフィルム10に接するように仮固定される。また、溶融樹脂導入部品24の正面側が、可動側金型21と固定側金型22とが型閉めされた状態で可動側金型21に接する。なお、図9及び図10に示すように、溶融樹脂導入部品24の正面のうち、各溝部241a〜241dが形成されていない部分の各面243a〜243dが、可動側金型21に接触する接触面を形成している。
【0027】
また、図9及び図10に示すように、溶融樹脂導入部品24の背面244には、溶融された合成樹脂を注入するための開口部242が設けられている。従って、図8において、溶融樹脂導入部品24の背面244に設けられた開口部242が、固定側金型22の射出ゲート23に位置するように、溶融樹脂導入部品24がコア部品のコアフィルム10に仮固定される。
【0028】
また、図9及び図10に示すように、溶融樹脂導入部品24の正面側には、溶融された合成樹脂を金型内に導入するための溝部241a〜241dが上下左右4方向に形成されている。
【0029】
なお、本実施形態では、図9及び図10に示すように、直方体形状の溶融樹脂導入部品24を用いる場合を説明するが、溶融樹脂導入部品24は、コア部品が固定側金型22から外れたり、コアフィルム10が剥がれたりすることを防止するとともに溶融された合成樹脂を金型内に導入できるものであれば、本実施形態で示した形状のものにかぎられない。例えば、溶融樹脂導入部品24は、円柱形状の部品として構成され、溶融された合成樹脂を導入可能な複数溝部が形成されたものであってもよい。
【0030】
次いで、図11に示すように、可動側金型21を可動して可動側金型21と固定側金型22とを型閉めする。そして、図11に示すように、射出側の固定側金型22の射出ゲート23から、溶融された合成樹脂を金型内に射出し注入する。なお、この場合、射出ゲート23から注入された合成樹脂は、溶融樹脂導入部品24の背面244に設けられた開口部242から、溶融樹脂導入部品24に設けられた各溝部241a〜241dを介して(図9及び図10参照)、金型内部に注入される。また、本実施形態では、図11に示すように、スペーサーフィルム12を用いることにより金型寸法よりも小さく得られたコア部品と、可動側金型21との間にできる空間に、溶融された合成樹脂が射出される。
【0031】
その後、溶融された合成樹脂の注入が完了すると、可動側金型21と固定側金型22とが型開きされ、図12に示すように、コアフィルム10の表面と裏面との両面に合成樹脂層20a,20bが形成された態様のインサート成形品(完成品)が得られる。
【0032】
以上に説明したように、本実施形態によれば、インサート成形方法を用いることにより、天然木等のコアフィルム10の表裏両面に合成樹脂層20a,20bが形成されたインサート成形品を得ることができる。そのため、成形品の各層を何回もプレスしたり加熱したりする必要をなくすことができ、天然木化粧パネル等を製造する際のバックアップ材や化粧板、接着フィルムの積層構造を簡略化することができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、コアフィルム10の表面側及び裏面側を合成樹脂層20a,20bとして形成できるので、製品寸法の狂いをなくすことができるとともに、成形品の軽量化を図ることができる。また、本実施形態によれば、一体的にインサート成形を施すことにより、各層毎の加熱によるプレス接着工程を低減することができる。
【0034】
また、本実施形態によれば、成形品の表面及び裏面の表面層を射出成形による合成樹脂層20a,20bとして形成するので、加工後に平坦仕上げを行わなくても、金型21,22の平滑性により成形品表面を平坦な状態に仕上げることができる。従って、研磨による鏡面艶出し仕上げ工程を除くことができ、成形品製造のための手間を低減することができる。
【0035】
また、本実施形態では、射出側の固定側金型22に密着させたコア部品のコアフィルム10に溶融樹脂導入部品24を仮固定した状態でインサート成形を行う。そのため、インサート成形を行う際に、射出側の固定側金型22に密着させたコア部品が固定側金型22から外れてしまったり、コアフィルム10が剥がれてしまう事態を防止することができ、適切にインサート成形を行うことができる。
【0036】
実施形態2.
次に、本発明の第2の実施形態を図面を参照して説明する。図13は、第2の実施形態におけるインサート成形方法を用いて成形したインサート成形品の構造の具体例を示す断面図である。図13に示すように、インサート成形品は、第1の実施形態で示したものと同様に、コアフィルム10の表面及び裏面の両面に合成樹脂層20a,20bが形成されている。また、本実施形態では、インサート成形品は、さらに、表面側の合成樹脂層20aの表面をスキンフィルム11で被覆されている。
【0037】
スキンフィルム11は、インサート成形品を加飾したり、コーティング等の機能性処理を施したり、内部の合成樹脂層20a,20bを保護したりするためのフィルムである。例えば、スキンフィルム11は、PETやPC、ABS等の合成樹脂を用いて作製される。また、例えば、スキンフィルム11として、AR(Anti-Reflection :アンチリフレクション(反射防止))コートフィルムやハードコートフィルム等の機能性フィルムを用いてもよい。また、例えば、スキンフィルム11として、本革製や布製、木材、紙類等の天然素材を用いたフィルムを用いてもよい。
【0038】
また、一般に、安価な汎用樹脂(ABS樹脂等)を合成樹脂層20,20bに用いると、薬品に対して弱いため、耐薬品性の高いPETフィルムをスキンフィルム11として表面に設ければ、合成樹脂層20a,20bを保護することができる。
【0039】
次に、第2の実施形態におけるインサート成形方法の手順について説明する。なお、本実施形態において、コア部品を作成するまでの工程は、第1の実施形態で示したそれらの工程と同様である(図2〜図7参照)。
【0040】
次いで、第1の実施形態と同様に、得られたコア部品に、溶融された合成樹脂を射出するための溶融樹脂経路用の開口を設けるとともに、図14に示すように、再びそのコア部品を固定側金型22に密着させてセットする。この場合、図14に示すように、コア部品には、固定側金型22に密着された状態で射出ゲート23に位置する部分に、射出ゲート23から射出注入される合成樹脂を通過させるための開口が設けられるものとする。
【0041】
また、図14に示すように、可動側金型21側にはスキンフィルム11を密着させてセットする。なお、スキンフィルム11は、例えば、真空引きを行うことによって、可動側金型21に密着させることができる。
【0042】
また、図14に示すように、固定側金型22側に密着させたコア部品に所定の溶融樹脂導入部品24を仮固定させる。溶融樹脂導入部品24は、図14に示すように、コア部品のコアフィルム10のうちの固定側金型22の射出ゲート23に位置する部分に、所定の接着剤を用いて仮固定される。従って、本実施形態では、溶融樹脂導入部品24は、図14に示すように、可動側金型21にセットされたスキンフィルム11と、コア部品のコアフィルム10との間に挟まれた状態でセットされることになる。
【0043】
次いで、図15に示すように、可動側金型21を可動して可動側金型21と固定側金型22とを型閉めする。そして、図15に示すように、射出側の固定側金型22の射出ゲート23から、溶融された合成樹脂を金型内に射出し注入する。なお、この場合、射出ゲート23から注入された合成樹脂は、溶融樹脂導入部品24の背面244に設けられた開口部242から、溶融樹脂導入部品24に設けられた各溝部241a〜241dを介して(図9及び図10参照)、金型内部に注入される。また、本実施形態では、図14に示すように、スペーサーフィルム12を用いることにより金型寸法よりも小さく得られたコア部品と、可動側金型21に密着されたスキンフィルム11との間にできる空間に、溶融された合成樹脂が射出される。
【0044】
その後、溶融された合成樹脂の注入が完了すると、可動側金型21と固定側金型22とが型開きされ、図16に示すように、コアフィルム10の表面と裏面との両面に合成樹脂層20a,20bが形成されるとともに、表面側をスキンフィルム11で被覆された態様のインサート成形品(完成品)が得られる。
【0045】
以上に説明したように、本実施形態によれば、スキンフィルム11で被覆されたインサート成形品を得ることができる。従って、第1の実施形態で示した効果に加えて、加飾性や機能性をもたせたインサート成形品を得ることができる。また、スキンフィルム11で保護することにより、耐薬品性に優れたインサート成形品を得ることができる。
【0046】
なお、上記に示した各実施形態では、コアフィルム10として天然木を用いたフィルムを用いる場合を示したが、コアフィルム10として他のフィルムを用いることも可能である。例えば、コアフィルム10として、PETフィルムやPCフィルム、機能フィルム、加飾フィルム等の合成樹脂製のフィルムを用いてもよい。また、例えば、コアフィルム10として、本革製や布製、紙類等の天然素材を用いたフィルムを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、例えば、自動車の内装用に用いられる天然木パネルを作製する用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明によるインサート成形方法を用いて成形したインサート成形品の構造の具体例を示す断面図である。
【図2】既設の可動側金型と射出ゲート23を備えた固定側金型との例を示す説明図である。
【図3】既設の可動側金型と固定側金型との金型が型開きされた状態を示す説明図である。
【図4】既設の可動側金型と固定側金型との金型が型閉めされた状態を示す説明図である。
【図5】射出側の固定側金型の射出ゲートから、溶融された合成樹脂を金型内に射出し注入した状態を示す説明図である。
【図6】スペーサーフィルムが取り付けられた状態のインサート成形品(非完成品)を示す説明図である。
【図7】スペーサーフィルムを取り外した状態のインサート成形品(非完成品)を示す説明図である。
【図8】再びコア部品を固定側金型に密着させてセットした状態を示す説明図である。
【図9】溶融樹脂導入部品の具体的な形状を示す斜視図である。
【図10】図9に示した溶融樹脂導入部品の正面、上面、下面及び各側面を示した説明図である。
【図11】可動側金型と固定側金型とを再び型閉めした状態を示す説明図である。
【図12】コアフィルムの表面と裏面との両面に合成樹脂層が形成された態様のインサート成形品(完成品)を示す説明図である。
【図13】第2の実施形態におけるインサート成形方法を用いて成形したインサート成形品の構造の具体例を示す断面図である。
【図14】第2の実施形態における再びコア部品を固定側金型に密着させてセットした状態を示す説明図である。
【図15】第2の実施形態における可動側金型と固定側金型とを再び型閉めした状態を示す説明図である。
【図16】コアフィルムの表面と裏面との両面に合成樹脂層が形成されるとともに、表面側をスキンフィルムで被覆された態様のインサート成形品(完成品)を示す説明図である。
【図17】自動車内装用の天然木化粧パネルの製造工程の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0049】
10 コアフィルム
11 スキンフィルム
12 スペーサーフィルム
13
20a,20b 合成樹脂層
21 可動側金型
22 固定側金型
23 射出ゲート23
24 溶融樹脂導入部品
241a〜241d 溝部
242 開口部
243a〜243d 接触面
244 背面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムをインサート成形してインサート成形品を作製するインサート成形方法であって、
第1の金型にスペーサー部品を取り付けるとともに、前記スペーサー部品のうちの前記第1の金型と対向する側の面に所定のコアフィルムを密着させ、
前記第1の金型と、溶融された合成樹脂を注入するための樹脂注入部を備えた第2の金型とを型閉めして、溶融された合成樹脂を前記樹脂注入部から注入することによって、コア部品を作製し、
前記コア部品から前記スペーサー部品を取り外して、再び前記コア部品を前記第2の金型に密着させ、
前記コア部品が前記第2の金型から外れること及び前記コアフィルムが剥がれることを防止するとともに前記樹脂注入部から注入される合成樹脂を金型内に導くための溶融樹脂導入部品を、前記第2の金型に密着させた前記コア部品のうちの前記樹脂注入部に位置する部分に仮固定させ、
前記第1の金型と前記第2の金型とを型閉めして、溶融された合成樹脂を前記樹脂注入部から注入することによって、前記コアフィルムの表面及び裏面の両面に合成樹脂層が形成されたインサート成形品を作製する
ことを特徴とするインサート成形方法。
【請求項2】
溶融樹脂導入部品を、第2の金型に密着させたコア部品のうちの樹脂注入部に位置する部分に仮固定させるとともに、第1の金型に所定の表皮用フィルムを密着させ、
前記第1の金型と前記第2の金型とを型閉めして、溶融された合成樹脂を前記樹脂注入部から注入することによって、前記コアフィルムの表面及び裏面の両面に合成樹脂層が形成されるとともに、前記表皮用フィルムが被覆されたインサート成形品を作製する
請求項1記載のインサート成形方法。
【請求項3】
コアフィルムとして、天然木製のフィルムを用いた請求項1又は請求項2記載のインサート成形方法。
【請求項4】
フィルムをインサート成形するインサート成形方法を用いて作製されたインサート成形品であって、
所定のコアフィルムを備え、
前記コアフィルムの表面に第1の合成樹脂層が設けられ、
前記コアフィルムの裏面に第2の合成樹脂層が設けられている
ことを特徴とするインサート成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−64273(P2010−64273A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230121(P2008−230121)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000220686)東京特殊印刷工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】