説明

インサート金具圧入装置

【課題】成形品の埋込み用穴へインサート金具を正確に圧入し、固定するためのインサート金具圧入装置を提供する。
【解決手段】成形品ストッパープレート39のネジ孔40に調整ボルト41をねじ込み、ロックナット44により調整ボルト41を固定する。加熱コイルで加熱されたインサート金具をセラミックピンによりインサート金具受け台から突き上げ、調整ボルト41から下方に突き出した保持スティック46、46aに保持させて成形品の埋め込み用穴のところまで移動し、圧入ユニット30を下降させてインサート金具を埋め込み用穴内に圧入し、調整ボルト41でインサート金具のフランジを押えながら冷却エアーでインサート金具を冷却することにより、埋め込み穴内において溶融した樹脂を固化する。インサート金具の圧入状況は判定評価回路で評価し、適、否を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品へ他の部品を取付けるためのインサート金具を樹脂成形品に予め設けられた埋込み用穴へ圧入して固定するためのインサート金具圧入装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品へ他の部品を取付ける場合、事前に取付け用のインサート金具を樹脂成形品の埋込み用穴へ圧入して溶着固定して置く方法が用いられている。さらに詳しく説明すると、この方法は、インサート金具を加熱手段で加熱した後、埋込み用穴へ押し込み、インサート金具の熱で埋め込み用穴の周囲の樹脂を溶融または軟化させることにより、その樹脂をインサート金具の側面に形成したローレット状の網目へ浸透させ、樹脂の固化を待ってインサート金具を樹脂成形品の埋込み用穴へ固定する方法である。
【0003】
しかし、この方法によると、埋込み用穴へインサート金具を圧入後、樹脂の冷却固化が十分に行われない場合、インサート金具が所定の位置からズレてしまう危険性があることから、冷却されて固化するまでに待ち時間が必要であり、そのため生産効率が向上しないという問題がある。
【0004】
そこで、本出願人は、以前にインサート金具を加熱する加熱棒と、空気流通穴を有し先端にインサート金具を押さえる押さえ部が設けられていると共に、空気流通穴に連通し、かつインサート金具およびその周辺に空気を吹き出す吹き出し口が設けられた固定棒とを備えたインサート圧入装置を用いることにより、樹脂の冷却時間と待ち時間の短縮を図り、生産効率の向上を図った装置を提案している(特開平06−312458号)。
【0005】
また、インサート金具を樹脂成形品の埋込み用穴へ圧入する場合、インサート金具における圧入深さの均一性が必要になるが、しばしば不均一となりがちである。
【0006】
この不均一の要因として、インサート金具を穴内に押し入れる圧入棒の設定した値のみのストロークの制御では、例えば、樹脂成形品の埋込み用穴の位置が表面より凹んでいた場合、この凹み分インサート金具は穴内に十分に圧入が行われなくなることから、樹脂成形品の穴からインサート金具の頭が少し飛び出したり、逆に樹脂成形品の表面が盛り上がる方向へ反っていた場合、インサート金具の圧入量が過多となること等を挙げることができる。このように、万一不均一の問題が発生すると、部品を止めるボルトにおけるネジの係り代が所望する長さに至らなかったり、部品と樹脂成形品との間に隙間が発生したりすると云った問題が発生する。
【0007】
このようなことから、実開平5−2937号公報には、超音波ホーンのストローク量を制御するセンサーの基準点を内装基板の裏面側に設け、このセンサーの作動により超音波ホーンの先端部分を内装基材の裏面(基準点)から所定寸法上方位置で常に停止させて、内装基材の板厚バラツキ、セットバラツキを吸収する構成の超音波カシメ装置が紹介されている。
【0008】
この位置制御方法をインサート金具の圧入方法に応用すれば、樹脂成形品における圧入孔が設けられた表面を基準としてストローク量を設定することができるため、樹脂成形品が反っていても所定の位置にインサート金具を圧入することができる。
【特許文献1】特開平06−312458号公報
【特許文献2】実開平05−2937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、ストローク量を設定してインサート金具を圧入した場合、設定した深さへ実際に圧入されたか否かの判定はされないため、不慮の事故等により設定されたストロークは移動したが、規定の位置まで圧入されていなかった場合も生じる危険性がある。特に、自動化された場合、インサート金具を装着した樹脂成形品は不良として認識されず次工程へ移動してしまうので、その影響は大きい。
【0010】
また、圧入するための機構と冷却するための機構が独立しているため、装置のコンパクト化が図れない問題がある。
【0011】
本発明の第一の目的は、インサート金具を樹脂成形品の埋込み用穴へ圧入する際、確実に所定の位置にインサート金具を圧入し、かつこの圧入されたことを検知して不良品を発生させないインサート金具圧入装置を提供することである。
【0012】
更に第二の目的は、従来に比較してコンパクト化されたインサート金具圧入装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明においては、a.樹脂成形品の一部に形成されたインサート金具埋込み用穴内に加熱されたインサート金具を圧入して前記埋込み穴内の樹脂を溶融し、その後冷却することによりインサート金具を穴内に固定するためのインサート金具圧入装置において、b. 前記圧入装置は、インサート金具を加熱するための加熱ブロックと、インサート金具を樹脂成形品に圧入するための圧入ブロックに分けてあり、c.前記加熱ブロックは、前記圧入ブロックに隣接され、インサート金具保持プレートに設けたインサート金具保持穴の下方からインサート金具保持穴にセットされたインサート金具を前記保持プレート上に突き上げてこの保持プレートの上方で待機している加熱コイルのところに移動させて加熱した後、この加熱コイルの上方で待機している保持スティックの先端に装着する上下動自在に構成されたインサート金具突き上げピンから成り、d.前記圧入ブロックは、前記加熱ブロックに隣接され、この圧入ブロックの圧入ユニットは、前記圧入装置における圧入ユニット取付機枠に対してベースプレートを介して上下動及び左右動自在に取り付けられていると共に前記ベースプレートから垂下した支柱の下端に水平に取り付けられた樹脂形成品ストッパープレートと、前記支柱の中間に水平に取り付けられたサブプレートと、前記樹脂成形品ストッパープレートに形成したネジ孔に下端側がねじ込まれ、かつ、中心に中空穴を設けると共に上端部外周にフランジを形成して成る調整ボルトと、前記調整ボルトのフランジと前記樹脂成形品ストッパープレート間において、前記調整ボルトの外周に設けたネジに螺合して調整ボルトを前記樹脂成形品ストッパープレートに固定するロックナットとから成り、e.前記調整ボルトの中空穴の上方には、拡径自在であると共に内部に冷却エアー導入溝を設け、前記調整ボルトの中空穴を貫通してその先端が樹脂成形品ストッパープレートの下面より突出するように形成された保持スティックが設けられ、f.前記サブプレートにおいて、前記支柱の後方には上下動自在にサブ支柱が垂下されていて、このサブ支柱の下端には、前記樹脂成形品ストッパープレートよりも若干下位に位置し、且つスプリングに抗して前記サブ支柱ごと上昇自在に取り付けられた検知プレートが設けられていると共に前記ベースプレートの移動量を検知するために、前記検知プレートにはシャフトが取り付けられ、このシャフトの上下動によりベースプレートの移動量を検知する近接センサーが設けられており、g.前記インサート金具の圧入工程として、前記圧入ユニットが前記保持スティックに保持されたインサート金具を樹脂成形品の埋込み用穴内に上方から挿入し、所定の位置まで挿入したことを検知して下降用シリンダーを停止し、併せて信号を出力するリミットセンサーが設けられ、このリミットセンサーからの信号と前記近接センサーからの信号を受けて前記インサート金具の圧入状況を確認する判定評価回路が設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
樹脂成形品ストッパープレートに組み込まれたインサート金具の埋込み高さを調整する調整ボルトとロックナットの組み合わせにおいて、ロックナットは、調整ボルトの外周に設けた雄ネジに螺合されている。また、樹脂成形品ストッパープレート自体に調整ボルト固定用の雌ネジが切ってあり、調整ボルトの側面に形成した雄ネジとの組み合わせにより、調整ボルトは樹脂成形品ストッパープレートへ組み込まれる。したがって、調整ボルトを樹脂成形品ストッパープレートに所定の位置までねじ込んだのちロックナットを締め付けることにより、調整ボルトは緩むことなく固定される。
【0015】
調整ボルトの先端は、インサート金具の天面(フランジ)に当接し、インサート金具を樹脂成形品の埋め込み用穴へ押し込む働きを行うが、調整ボルトを樹脂成形品ストッパープレートからの凹み量を変えることにより任意にインサート金具の出代調整が可能になる。
【0016】
インサート金具圧入ユニットが下降し、樹脂成形品ストッパープレートの底面が樹脂成形品の表面に当接したとき、リミットセンサーがこれを検知して判定評価回路へ信号を送り、この判定評価回路からシリンダーへ停止信号が送られてインサート金具圧入ユニットの下降が停止し、インサート金具の樹脂成形品からの出代は所定の寸法に定まる。
【0017】
インサート金具は、その中空穴内に保持スティックの先端が挿入され、更に、保持スティックを左右に広げる(拡径する)ことにより保持スティックの先端に保持される。
【0018】
判定評価回路は、予め、近接センサーが接続されたアンプの感度を、設定した圧入深さに相当する位置にサブ支柱の天面が接近したときに信号を出力するように調整しておく。
【0019】
次に、インサート金具圧入ユニットを樹脂成形品側へ下降させると、まず、検知プレートが樹脂成形品の表面に当接し、更に下降することによりサブ支柱の天面が近接センサーに接近すると共に、インサート金具を押し付けている樹脂成形品ストッパープレートが樹脂成形品に当たるまで(シリンダーの下降をリミットセンサーが感知するまで)インサート金具圧入ユニットは下降する。
【0020】
そして、樹脂成形品ストッパープレートが樹脂成形品に当たった時、下降リミットセンサーから信号が出力されて判定評価回路へ入力される。
【0021】
同時に設定位置までサブ支柱が上昇すると近接センサーから信号が出力されて前記判定評価回路へ入力される。
【0022】
判定評価回路では、上記2つの信号を受けた場合、インサート金具が設定位置に埋め込まれたと判断し、良品の評価信号をインサート金具圧入装置側に設けた制御回路へ出力する。
【0023】
もし、樹脂成形品ストッパープレートが樹脂成形品に当たっても近接センサーが未だ検知していない場合は、インサート金具の圧入深さ異常(圧入不十分)と判定し、判定評価回路はNG検知の信号を出力することにより、不良品として扱われる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の効果は次の通りである。
1.インサート金具を樹脂成形品の埋め込み用穴に圧入する際、圧入ユニットによるインサート金具の圧入位置の検知と、樹脂成形品の形状を検知するセンサーを別に設け、双方が設定通り動作した場合のみ、圧入作業が正常に完了したと判断される。したがって、インサート金具のインサート量が不十分なまま製品が完成したりすることがないため、インサート金具に対するボルトの固定強度を常に安定させることができると共に製品と部品間に隙間が発生したりすることがない。
【0025】
2.インサート金具保持スティックに冷却用エアーを流通するための溝を形成したため、インサート金具を製品ストッパープレートで抑えた状態で冷却用エアーを内部から効率的に吹きかけることができる。したがって、インサート金具の冷却及び周囲の樹脂を急速に冷却固化することができるため、インサート金具が樹脂成形品から浮き出したりせず所定の位置に埋め込んで固定することができると共に、従来の装置に比べて装置のコンパクト化を図ることができる。
【0026】
3.調整ボルトによりインサート金具の出代調整ができるため、インサート金具を樹脂成形品の反り等に影響されることなく、所望する位置に埋め込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明のインサート金具圧入装置には、樹脂成形品の埋込み用穴にインサート金具を挿入する機構と、インサート金具の埋込み量をチェックする機構とを有している。
【0028】
また、インサート金具圧入装置は、インサート金具圧入ユニットを備えていると共に、インサート金具をインサート金具圧入装置にセットした後は、インサート金具の加熱と、樹脂成形品の埋込み用孔に埋め込む工程をすべて自動で行うことができる構成となっている。
【0029】
本発明を用いることができる樹脂成形品の代表的な樹脂は、ABS樹脂、PP樹脂、PS樹脂、PE樹脂、PC樹脂、POM樹脂、PMMA樹脂、PBT樹脂、
ABS/PC樹脂、PPS樹脂、PPA樹脂、PET樹脂、LCP樹脂、PA樹脂などが挙げられる。
次に、本発明の実施例を各図に基づいて説明する。
【実施例】
【0030】
図1はインサート金具の一例を示すもので、このインサート金具1は、真鍮の円筒体から成り、胴体部2の胴囲にローレット3を加工し、上端開口部5にフランジ4を形成し、中空部6に部品取付用のボルトがねじ込まれるネジ7を切設した構成である。因に長さ(高さ)Lは12.5mm、フランジ5の高さLは1.2mm、フランジ4の外径Wは11mm、ネジ7の内径Wは6mmである。
【0031】
図2はインサート金具圧入装置の正面図、図3は圧入装置の斜視図、図4はインサート金具圧入ユニットの正面図、図5は圧入ユニットの下面図、図6は圧入ユニットの斜視図、図7は圧入ユニットの右側面図、図8はインサートブロックの説明図である。
【0032】
図9(A)〜(E)はインサート金具受け台及び突き上げピン及び加熱コイルの構成とその作用の説明図である。
【0033】
図10(A)(B)はインサート金具を樹脂成形品の埋込み用穴に埋め込むまでのイメージ図、図11(A)〜(C)はインサート金具の加熱と保持スティックへの装着までの説明図である。
【0034】
図12〜図15はインサート金具を成形品の埋込み用穴内へ圧入し、溶着固定するまでの工程の説明図である。
【0035】
次に、上記した各図を基に圧入装置の構成を詳細に説明する。図2において、A線で囲まれた部分は圧入ブロック、B線で囲まれた部分は加熱ブロックであって、圧入ブロックAの構成は、装置20の機枠21の上部に架設したガイド22に沿って前後及び左右方向に移動自在のブロック24から図4に示すシリンダー32のロッド33を介して懸下されたインサート金具圧入ユニット30と、この圧入ユニット30の下方において、テーブル25上を前後にスライド自在に配置されたインサート金具保持プレート59と、この保持プレート59の下方に配置された突き上げピン61と、突き上げピン61の上方であって、保持プレート59の上方に配置された誘導加熱コイル60とを主要構成要素としている。
【0036】
更に、図4〜図8に基づいて圧入ユニット30の詳細を説明する。
圧入ユニット30は、前記ブロック24に対して下向きに取り付けられた(吊設された)シリンダー32のシリンダーロッド33により昇降自在であるベースプレート34と、ベースプレート34の下面35から垂下するようにして取り付けられた2本の支柱36と、支柱36の中間部にベースプレート34と平行になるように支柱36に取付けられたサブプレート37と、から構成されている。
【0037】
更に圧入ユニット30には、図4に示すように、支柱36の下端に樹脂成形品ストッパープレート(以下「成形品ストッパープレート」という。)39が取り付けられている。さらに、前記成形品ストッパープレート39に形成された貫通ネジ孔40には、図8に示すように調整ボルト41がねじ込まれており、この調整ボルト41の先端はインサート金具1のフランジ4に上方から当接してインサート金具1を成形品10の埋込み用穴へ圧入することができる。
【0038】
また、調整ボルト41のフランジ42と成形品ストッパープレート39の上面との間には、調整ボルト41の側面に切設されたネジ山43と螺合するロックナット44が取り付けられている。
【0039】
調整ボルト41の先端と成形品ストッパープレート39の底面との位置関係によりインサート金具1の出代が調整できる。例えば、成形品の表面よりインサート金具1を僅かに出したい場合は、調整ボルト41の先端を成形品ストッパープレート39の底面より所定値上方に位置にさせることにより可能になる。
【0040】
この様に、成形品ストッパープレート39の貫通ネジ孔40における調整ボルト41の位置を設定した後、ロックナット44を絞めこむことによりその作用で調整ボルト41を固定することができる。
符号の45はチャック機構であって、このチャック機構45は拡径自在の2本の保持スティック46、46a及びチャックシリンダー47、47aから構成されている。
【0041】
図4、5において説明すると、各々の保持スティック46、46aはその根元をサブプレート37の後方に取付けられたチャックシリンダー47、47aに固定され、そのチャックシリンダー47、47aの作用によりお互いの間隔を狭めたり広げたりすることができる。
【0042】
さらに、保持スティック46、46aは、調整ボルト41の貫通ネジ孔40から成形品ストッパープレート39の下面にその先端が突き出る様に設置されている。ゆえに、保持スティック46、46aの先端をインサート金具1の中空部6内に挿入させ、かつ、お互いの間隔を広げることによりインサート金具1をその先端で保持することができる。
【0043】
さらに、お互いに対向する保持スティック46、46aの周面には、保持スティック46、46aの根元側から先端にかけて縦溝48が形成されている。この縦溝48は、図7に示す冷却パイプ49から導かれた冷却用エアーが流動するための溝であり、加熱されたインサート金具1を成形品の埋込み穴内に圧入後、前記縦溝48から冷却用エアーをインサート金具1に吹きかけてインサート金具1を冷却し、併せて溶融した樹脂を固化する。
【0044】
50は検知ブロックであって、この検知ブロック50は図7に示すように、サブプレート37の貫通孔37aを上下自在に摺動するサブ支柱51を設け、このサブ支柱51の下端部には樹脂成形品の表面に当接する長方形の検知プレート52を取付けている。また、サブ支柱51における検知プレート52とサブプレート37の間には検知プレート52を下方へ賦勢するためのスプリング53を具備している。更に、サブ支柱51におけるサブプレート37の上面側には、サブ支柱51の摺動距離を設定するストッパー54を設けている。
【0045】
また、検知プレート52においては、図5、図7に示すように検知プレート52の一部を延長した検知子55を設け、この検知子55が成形品ストッパープレート39における貫通孔40まで続く溝39aに入り込むことにより、サブ支柱51の動きと近接センサー57により、後述するようにインサート金具1を圧入するときに成形品の表面位置を正確に知ることができる。
【0046】
サブ支柱51の上端面51aに対向するベースプレート34の位置には、サブ支柱51の上端面51aとの距離を検知するための近接センサー57が取付けられている(図7参照)。
【0047】
また、成形品ストッパープレート39と検知プレート52とにおいて、検知プレート52の方が成形品に近く組み込まれているため(図4、図7参照)、圧入ユニット30が降下した場合、常に成形品ストッパープレート39よりも検知プレート52の方が成形品に対して先当たりする。よって、確実にインサート金具1の圧入深さを検知することができ、成形品ストッパープレート39が成形品に当たった時、近接センサー57が未だ検知していなかった場合は、インサート金具の圧入深さ不十分(異常)と判定評価回路(判定回路)58で判断される。図7において、56は、シリンダー32の動き(ベースプレート34、成形品ストッパープレート39の下降位置)を検出するリミットセンサーであって、このリミットセンサー56と近接センサー57からの信号に基づき判定評価回路58が前記インサート金具1のインサート状況を監視する。
【0048】
以上説明した様に、本実施例の圧入ユニット30は、図10、図12〜図15で説明する成形品10の埋込み用穴11内にインサート金具1を圧入したとき、深さ検知ブロック50にてインサート金具1の圧入深さを検知して設定する深さへ圧入されたかどうかを判定評価回路58で評価する機能を持つ。
【0049】
次に以上で説明した圧入ユニット30を用いたインサート金具圧入装置20(以下「圧入装置」と称する)について説明する。
【0050】
図11に示すようにインサート金具受け台59にインサート金具1を載置すると、インサート金具受け台59の下部にはセラミックピン(突き上げピン)61が設置されていて、このセラミックピン61の上端位置にはインサート金具1の中空部6の径よりやや小径に形成した段部62が形成されているため、セラミックピン61が上昇するとインサート金具1はセラミックピン61の段部62に被さるようにしてセラミックピン61の先端に保持される。
【0051】
前記の状態で、さらにセラミックピン61をインサート金具受け台59から貫通するように突き出すとインサート金具1を上部に配置した誘導加熱コイル60の内部へ導くことができる(図11(B))。この状態で、加熱コイル60はインサート金具を加熱する。この加熱後、セラミックピン61を更に上昇させてインサート金具1を誘導加熱コイル60の上部に待機する圧入ユニット30の保持スティック46、46aの先端に導く。2本の保持スティック46、46aをシリンダー47、47aで水平方向へ開くことにより、インサート金具1は保持され(図11(C))、その後、セラミックピン61は降下してインサート金具受け台59の下で待機する。
【0052】
一方、圧入ユニット30は保持スティック46、46aでインサート金具1を保持した後、成形品10の埋込み用穴11の位置に移動し(図12)、圧入工程に入る(図13)。
【0053】
以上、説明した圧入装置によれば、成形品10に圧入するインサート金具1をインサート金具受け台59にセットするだけで、インサート金具1の加熱、圧入ユニット30への搬送、成形品10の埋込み用穴11への圧入、圧入深さの評価まですべて自動でできることになる。
【0054】
次に、圧入ユニット30及び圧入装置20を用いたインサート金具1の圧入作業を説明する。
【0055】
本実施例で用いた成形品は、PA6-GF30樹脂を用いた成形品で、この成形品10には深さ16.6mm、直径7.9mmの円筒形であるインサート金具1を圧入するための埋込み用孔11が複数個所形成されている。
【0056】
インサート金具1の開口部4は成形品10の上面から出代狙い値0.15mmとしたいため、後述の圧入ユニット30の出代調整ブロックにおける成形品ストッパープレート39の底面と調整ボルト41の底面との位置を凹0.15mmとし、その状態でロックナット44を締め付けて調整ボルト41が緩むことを防止した。
【0057】
さらに、成形品ストッパープレート39が成形品10の上面に正確に当たった時、近接センサー57から信号が出力されるようにアンプの感度調整を行った。
【0058】
以上各調整の後圧入作業を行う。
【0059】
まず、圧入装置20のインサート金具受け台59に設定数量のインサート金具1を載置すると自動的に誘導加熱コイル60の下までインサート金具受け台59が移動する。次にセラミックピン61の先端をインサート金具1の内径に差込み、さらにセラミックピン61を上昇させてインサート金具1を誘導加熱コイル60の中へ挿入する。
【0060】
誘導加熱により300℃に加熱されたインサート金具1はセラミックピン61にて更に上昇し、上部に待機している圧入ユニット30の保持スティック46、46aの先端を中空部6内に挿入後、2本の保持スティック46、46aをシリンダー47、47aにより左右に広げることにより保持スティック46、46aの先端にインサート金具1は保持される。そこで、セラミックピン61は降下し次作業まで待機する。
【0061】
インサート金具1を保持した圧入ユニット30は、ガイド22に沿ってブロック24の作用により成形品10の埋込み用孔11の上部に移動する(図12)。その後、シリンダー32のシリンダーロッド33により圧入ユニット30が降下すると、図13に示す様にインサート金具1は埋込み用穴11内において、周囲の樹脂を溶融しながら埋込み用孔11内に圧入し、やがて検知プレート52が成形品10の表面に接触する。
【0062】
さらに圧入ユニット30が降下を続けるとインサート金具1は埋込み用穴11に圧入し続けると共に、サブ支柱50の天面51aはベースプレート34に設けられた近接センサー57へ図14の様に接近する。
【0063】
最終的に成形品ストッパープレート39が成形品に接するとインサート金具1は所定の深さに圧入され、そして予め所定の圧入深さと相対的に一致する様に調整されたサブ支柱51の天面51aが近接センサー57に接近すると、この近接センサー57から判定評価回路58へ信号が出力される。また、シリンダー32の位置がリミットセンサー56で検知され、これからの信号が判定評価回路58へ出力される。
【0064】
判定評価回路58は、双方のセンサーからの信号が入力されると、インサートが正しく行われたものと判定し、冷却エアーをベースプレート34に取り付けられた冷却パイプ49から保持スティック46の溝48へ供給し、インサート金具1の内径に吹きかけてインサート金具1を冷却し、併せてその周囲の溶融した樹脂を冷却し、固化させる。
【0065】
このようにインサート金具1を調整ボルト41の先端で押さえながら周囲の樹脂を固化できるので、成形品10の埋込み用穴11内にインサート金具1の出代として設定した狙い値(0.15mm)通りの圧入を行うことができる。
【0066】
この圧入完了後、冷却エアーの吹きつけを停止し、保持スティック46、46aを相互に閉じることによりインサート金具1は開放され、圧入ユニット30を上昇させて次の作業まで待機する(図15)。
【0067】
本実施例の圧入装置は、以上のように、インサート金具1を成形品10の埋込み用穴11へ圧入したとき、その圧入状態をその都度判定評価回路58でチェックするため、成形品10の埋込み用穴11へ常に正しい状態でインサート金具1を圧入した高品質の製品を得ることができる。
【比較例1】
【0068】
比較例として、深さ検知ブロック50を装備していない圧入装置にて、インサート金具1の圧入作業を行った。
【0069】
その結果、インサート金具1の埋込みが不完全で製品面より浮いていた不良品が選別されずに良品に混合し次工程へ搬送されてしまった。この結果、次工程の作業効率が低下する要因となった。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】インサート金具の説明図
【図2】インサート金具圧入装置の正面図
【図3】インサート金具圧入ユニットがワーク上に移動して来た状態の圧入装置の斜視図
【図4】圧入ユニットの正面図
【図5】圧入ユニットの下面図
【図6】圧入ユニットの斜視図
【図7】圧入ユニットと圧入装置の説明図
【図8】圧入ブロックの説明図
【図9】(A)〜(E) 圧入工程の説明図
【図10】(A)、(B) 圧入工程のイメージ図
【図11】(A)〜(C) インサート金具の加熱と保持スティックへの保持工程説明図
【図12】インサート工程の説明図
【図13】インサート工程の説明図
【図14】インサート工程の説明図
【図15】インサート工程の説明図
【符号の説明】
【0071】
1 インサート金具
10 成形品(製品)
20 インサート金具圧入装置
30 インサート金具圧入ユニット
34 ベースプレート
37 サブプレート
38 出代調整ブロック
39 製品ストッパープレート
41 高さ調整ボルト
44 ロックナット
46、46a 保持スティック
50 検知ブロック
55 検知子
57 近接センサー
59 インサート金具受け台
60 誘導加熱コイル
61 セラミックピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.樹脂成形品の一部に形成されたインサート金具埋込み用穴内に加熱されたインサート金具を圧入して前記埋込み穴内の樹脂を溶融し、その後冷却することによりインサート金具を穴内に固定するためのインサート金具圧入装置において、
b. 前記圧入装置は、インサート金具を加熱するための加熱ブロックと、インサート金具を樹脂成形品に圧入するための圧入ブロックに分けてあり、
c.前記加熱ブロックは、前記圧入ブロックに隣接され、インサート金具保持プレートに設けたインサート金具保持穴の下方からインサート金具保持穴にセットされたインサート金具を前記保持プレート上に突き上げてこの保持プレートの上方で待機している加熱コイルのところに移動させて加熱した後、この加熱コイルの上方で待機している保持スティックの先端に装着する上下動自在に構成されたインサート金具突き上げピンから成り、
d.前記圧入ブロックは、前記加熱ブロックに隣接され、この圧入ブロックの圧入ユニットは、前記圧入装置における圧入ユニット取付機枠に対してベースプレートを介して上下動及び左右動自在に取り付けられていると共に前記ベースプレートから垂下した支柱の下端に水平に取り付けられた樹脂形成品ストッパープレートと、
前記支柱の中間に水平に取り付けられたサブプレートと、
前記樹脂成形品ストッパープレートに形成したネジ孔に下端側がねじ込まれ、かつ、中心に中空穴を設けると共に上端部外周にフランジを形成して成る調整ボルトと、
前記調整ボルトのフランジと前記樹脂成形品ストッパープレート間において、前記調整ボルトの外周に設けたネジに螺合して調整ボルトを前記樹脂成形品ストッパープレートに固定するロックナットとから成り、
e.前記調整ボルトの中空穴の上方には、拡径自在であると共に内部に冷却エアー導入溝を設け、前記調整ボルトの中空穴を貫通してその先端が樹脂成形品ストッパープレートの下面より突出するように形成された保持スティックが設けられ、
f.前記サブプレートにおいて、前記支柱の後方には上下動自在にサブ支柱が垂下されていて、このサブ支柱の下端には、前記樹脂成形品ストッパープレートよりも若干下位に位置し、且つスプリングに抗して前記サブ支柱ごと上昇自在に取り付けられた検知プレートが設けられていると共に前記ベースプレートの移動量を検知するために、前記検知プレートにはシャフトが取り付けられ、このシャフトの上下動によりベースプレートの移動量を検知する近接センサーが設けられており、
g.前記インサート金具の圧入工程として、前記圧入ユニットが前記保持スティックに保持されたインサート金具を樹脂成形品の埋込み用穴内に上方から挿入し、所定の位置まで挿入したことを検知して下降用シリンダーを停止し、併せて信号を出力するリミットセンサーが設けられ、このリミットセンサーからの信号と前記近接センサーからの信号を受けて前記インサート金具の圧入状況を確認する判定評価回路が設けられている、
h.ことを特徴とするインサート金具圧入装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−99896(P2010−99896A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272432(P2008−272432)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(591061769)ムネカタ株式会社 (40)
【Fターム(参考)】