説明

インストルメントパネルの収納部の構造

【課題】大きく異なる仕様の収納部を作り分ける場合に、コストを増加させず、部品管理および組立作業の効率を低下させず、デザインに統一感のあるインストルメントパネル(以下、「インパネ」という)の収納部の構造を提供する。
【解決手段】車両のインパネ1,11の収納部2,12と、インパネの主要構成部品のインパネ本体3とを備えるインパネの収納部の構造において、収納部の車幅方向両側部を仕切る枠状部材8,16が、インパネ本体と別体で取付けられ、枠状部材が、1つの空間を有する第1の構造、または車両上下方向の中間に配置される仕切部16aによって仕切られる2つの空間を有する第2の構造のいずれかを備え、第1の構造では1つの空間が第1グローブボックス4を収納可能に構成され、第2の構造では2つの空間の一方が車両後方側で開口する開口トレイ部13を構成し、2つの空間の他方が第2グローブボックス14を収納可能に構成される、インパネの収納部の構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インストルメントパネルの収納部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両のインストルメントパネル(以下、「インパネ」という)には、小物などを収納するための収納部が設けられている。この収納部には、開閉可能に構成されるグローブボックスや、車室内に向かって開口するラックなどが設けられることがある。
【0003】
そのため、同車種の車両であっても異なった仕様の収納部が設けられることがある。特許文献1には、この収納部をグローブボックス仕様またはラック仕様に作り分け可能に構成するインパネの構造が開示されている。
【0004】
特許文献1の収納部では、インパネの主要構成部品であるインパネ本体が収納部の車幅方向両側の側部および収納部の車両前方の前側部を仕切るように形成され、収納部の車両下方側の下側部と収納部の車両後方側の後側部とを仕切るためのラック本体がインパネ本体に取付けられている。さらに、この収納部には、車両の斜め後上側方向に向かって開口する開口部が設けられている。このような収容部において、グローブボックス仕様の場合、リッドが収納部の開口部に取付けられて、このリッドが開閉可能に構成される一方で、ラック仕様の場合、リッドを取付けずに、開口部が常時開口するよう構成されている。このような構成によって、収納部がグローブボックス仕様とラック仕様とに作り分け可能となっている。
【特許文献1】特許第3973981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のインストルメントパネル(以下、「インパネ」という)の収納部では、グローブボックス仕様とラック仕様とがリッドの有無によって選択できるにすぎず、グローブボックスとラックとを両方設けるような、大きく異なる仕様の収納部を構成することができない。
【0006】
また、特許文献1の収納部において、大きく異なる仕様の収納部を設ける場合には、複数種類のインパネ本体を作製するとともに、組立作業において各仕様で異なるインパネ本体を使い分ける必要がある。しかしながら、複数種類のインパネ本体を準備するためには、複数種類の金型を作製して、複数種類のインパネを作製する必要があり、部品コストを増加させる要因となる。また、組立作業時に複数種類のインパネを準備することは、部品管理を複雑にし、組立作業においても作り分け作業を煩雑にすることとなる。従って、部品管理および組立作業の効率を低下させることになる。
【0007】
さらに、インパネに大きく異なる仕様の収納部を用いる場合、同車種の車両に異なるデザインのインパネが設けられることとなり、インパネのデザインに統一感を持たせることができないという問題がある。
【0008】
そこで、本発明の課題は、大きく異なる仕様の収納部を作り分ける場合に、コストを増加させず、部品管理および組立作業の効率を低下させず、デザインに統一感のあるインパネの収納部の構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するために本発明におけるインストルメントパネルの収納部の構造は、車両のインストルメントパネルに設けられる収納部と、前記インストルメントパネルの主要構成部品であるインストルメントパネル本体とを備えるインストルメントパネルの収納部の構造において、前記収納部の車幅方向両側の側部を仕切る枠状部材が、前記インストルメントパネル本体に別体として取付けられており、さらに、前記枠状部材が、1つの空間を有する第1の構造か、または車両上下方向の中間に配置される仕切部によって仕切られる2つの空間を有する第2の構造のいずれか一方を備えており、前記第1の構造では、前記1つの空間がグローブボックスを収納可能に構成され、前記第2の構造では、前記2つの空間の一方が車両後方側で開口する開口トレイ部として構成され、前記2つの空間の他方がグローブボックスを収納可能に構成されている。
【0010】
本発明におけるインストルメントパネルの収納部の構造では、前記収納部の車両後方側の表面が、前記枠状部材を第1の構造とする場合と前記枠状部材を前記第2の構造とする場合とのそれぞれで同様に、車幅方向側面視でくの字形状に形成されており、さらに、前記枠状部材を前記第2の構造とする場合に、前記2つの空間の車両上方側が前記開口トレイ部として構成され、前記2つの空間の車両下方側がグローブボックスを収納可能に構成され、前記表面のくの字形状の角部が前記仕切部と対応するように配置されている。
【0011】
本発明におけるインストルメントパネルの収納部の構造では、前記枠状部材を前記第2の構造とする場合に、前記開口トレイ部に設けられるトレイが、前記枠状部材に着脱可能に取付けられている。
【0012】
本発明におけるインストルメントパネルの収納部の構造では、前記枠状部材を前記第1の構造とする場合に、前記グローブボックスの車幅方向両側の側壁部が、くの字形状の前記表面の角部より車両下方に配置され、前記側壁部の車両上方で前記1つの空間を車両上下方向の中間を仕切る仕切棚が、前記枠状部材に着脱可能に取付けられており、くの字形状の前記表面の角部より車両上方に位置する前記表面の上側斜面部が、前記グローブボックスのリッドで覆われるように構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明におけるインストルメントパネルの収納部の構造によれば、以下の効果を得ることができる。本発明におけるインストルメントパネルの収納部の構造は、車両のインストルメントパネルに設けられる収納部と、前記インストルメントパネルの主要構成部品であるインストルメントパネル本体とを備えるインストルメントパネルの収納部の構造において、前記収納部の車幅方向両側の側部を仕切る枠状部材が、前記インストルメントパネル本体に別体として取付けられており、さらに、前記枠状部材が、1つの空間を有する第1の構造か、または車両上下方向の中間に配置される仕切部によって仕切られる2つの空間を有する第2の構造のいずれか一方を備えており、前記第1の構造では、前記1つの空間がグローブボックスを収納可能に構成され、前記第2の構造では、前記2つの空間の一方が車両後方側で開口する開口トレイ部として構成され、前記2つの空間の他方がグローブボックスを収納可能に構成されている。そのため、大きく異なる2種類の仕様の前記収納部を作り分ける場合に、共通の前記インストルメントパネル本体を使用しながら、2種類の前記収納部のいずれかを設けた前記インストルメントパネルを作製することができる。また、異なる仕様において前記インストルメントパネル本体を共通に使用することによって、作り分けのために複数種類のインストルメントパネル本体を準備する必要がなく、部品コストを低減し、作り分けの煩雑さを解消し、部品管理および組立作業の効率を改善できる。
【0014】
本発明におけるインストルメントパネルの収納部の構造では、前記収納部の車両後方側の表面が、前記枠状部材を第1の構造とする場合と前記枠状部材を前記第2の構造とする場合とのそれぞれで同様に、車幅方向側面視でくの字形状に形成されており、さらに、前記枠状部材を前記第2の構造とする場合に、前記2つの空間の車両上方側が前記開口トレイ部として構成され、前記2つの空間の車両下方側がグローブボックスを収納可能に構成され、前記表面のくの字形状の角部が前記仕切部と対応するように配置されており、大きく異なる形態である前記収納部同士のデザインが、類似することとなる。そのため、例えば、同車種の車両において異なる仕様の収納部が設けられる場合にも、デザインに統一感を持たせることができる。
【0015】
本発明におけるインストルメントパネルの収納部の構造では、前記枠状部材を前記第2の構造とする場合に、前記開口トレイ部に設けられるトレイが、前記枠状部材に着脱可能に取付けられており、一般的に前記インストルメントパネルの内部に設けられるフィルターを交換するなどのメンテナンス作業が、前記トレイを取外し可能に構成することによって、前記第1の構造と同様な作業によって行なうことが可能になる。そのため、大きく異なる仕様の収納部を用いた場合であっても、デザインの統一感を保ちながら、メンテナンス作業を共通化できる。従って、メンテナンスの作業者が複数の工程を習得する必要がなくなり、メンテナンスの効率化を図ることができる。
【0016】
本発明におけるインストルメントパネルの収納部の構造では、前記枠状部材を前記第1の構造とする場合に、前記グローブボックスの車幅方向両側の側壁部が、くの字形状の前記表面の角部より車両下方に配置され、前記側壁部の車両上方で前記1つの空間を車両上下方向の中間を仕切る仕切棚が、前記枠状部材に着脱可能に取付けられており、くの字形状の前記表面の角部より車両上方に位置する前記表面の上側斜面部が、前記グローブボックスのリッドで覆われるように構成されており、前記収納部の設計に際して、前記仕切棚の上下方向の配置位置を変化させることが可能となる。そのため、この配置位置の変更によって前記インストルメントパネルの外観に影響を与えることなく、前記収納部の仕切り構造や前記収納部の収納容量を変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明における実施形態を以下に説明する。第1収納部を有する第1インストルメントパネル(以下、「第1インパネ」という)について説明する。図1は、本発明の実施形態において、第1インパネ1に第1収納部2を設けた場合の車室内前方の斜視図である。第1インパネ1の助手席側の車両下方には、第1収納部2が設けられている。この第1収納部2は、第1インパネ1の主要構成部品であるインストルメントパネル本体(以下、「インパネ本体」という)3に取付けられている。
【0018】
第1収納部2の車両後方側の表面2aは、車幅方向側面視で、車両後方側に向かって膨出する略くの字形状に形成されている。詳細には、第1収納部2の表面2aの上部で車両上方に向かうに従って車両前方側に傾斜する上側斜面部2bと、第1収納部2の表面2aの下部で車両下方に向かうに従って車両前方側に傾斜する下側斜面部2cとが設けられている。この第1収納部2の略くの字形状の角部には、車幅方向に沿ってライン2dが形成されることとなり、このライン2dが第1インパネ1のデザインにシャープなイメージを与えることとなる。この第1収納部2は、買い物袋などの荷物を掛けるためのフック22を備えている。
【0019】
また、第1収納部2はグローブボックス4を備えており、第1グローブボックス4のリッド4aは、第1収納部2の表面2aに対応して、車両後方側に向かって膨出する略くの字形状に形成されている。そのため、上側斜面部2bは、第1グローブボックス4のリッド4aで覆われるように構成されることとなる。
【0020】
ここで第1収納部2について説明する。図2は、本発明の実施形態における第1収納部2の分解斜視図である。グローブボックス4のリッド4aにおける車両前方側の前側面には、車両上方に向かって開口するポケット部4bが設けられている。ポケット部4bは、車幅方向両側に一対の側壁部4c,4cを備えており、一対の側壁部4c,4cは、第1収納部2の表面2aを構成するリッド4aの略くの字形状の角部よりも車両下方側に配置されている。
【0021】
第1グローブボックス4のリッド4aは、上端寄りの車幅方向中央の位置にレバー4dを備えており、リッド4aの車両前方側の前側面には、ロック部(図示せず)が設けられている。レバー4dは第1グローブボックス4の開閉の際に、第1グローブボックス4のロックを解除するために用いられる。レバー4dとロック部とは連動しており、レバー4dを操作することによってロック部が動作することとなる。
【0022】
第1収納部2は、車両水平方向に沿って配置される略長方形状の仕切棚5を備えている。この仕切棚5の車両前方側の前端部および車両後方側の後端部に、車両上方に向かって立設する前壁部5aおよび後壁部5bがそれぞれ設けられている。また、仕切棚5の車幅方向内側の側端部には、車両上方に向かって立設する側壁部5cが設けられている。
【0023】
第1収納部2は、飾り部材として設けられるオーナメント6と、このオーナメント6を照らすための間接照明として用いられるライトチューブ7とを備えている。オーナメント6は、略板状に形成されており、車幅方向に沿って配置されている。ライトチューブ7は、略管形状に形成されており、車幅方向に沿って配置されている。
【0024】
第1収納部2には、インパネ本体3とは別部品として構成される第1枠状部材8が設けられている。第1枠状部材8は第1の構造を有しており、この第1の構造について説明する。この第1枠状部材8は、第1収納部2の車幅方向両側の側部を仕切り、かつ車両前方側で開口している。さらに、第1枠状部材8は、車両後方側で、第1グローブボックス4を収納可能に開口している。そのため、第1枠状部材8は、グローブボックス4を収納可能な1つの空間を有することとなり、グローブボックス4は、この空間に、第1グローブボックス4の下端で車幅方向に沿って配置される軸を中心に回動可能に収納されることとなる。
【0025】
第1枠状部材8は一対の側部8a,8aを備えており、側部8aの車両後方側の表面は、略くの字形状に形成されている。さらに、第1枠状部材8には、一対の側部8a,8aの下端同士を結ぶように車幅方向に沿って延在する底部8bが形成されている。
【0026】
第1枠状部材8の車幅方向内側の側部8aには、車両上下方向で略くの字形状の角部に対応する中間の位置に、車両後方に向かって略長方形状に切り欠かれた凹部8cが設けられている。一方で、第1枠状部材8の車幅方向外側の側部8aには、車両上下方向の凹部8cの下端に対応する位置に、車幅方向内側に向かって突出する突起部(図示せず)が設けられている。
【0027】
第1枠状部材8の1つの空間の車両上方には、車幅方向全体に渡ってオーナメント6を取付可能に構成したオーナメント取付部8dが設けられている。さらに、第1枠状部材8のオーナメント取付部8dの車両上方には、ライトチューブ7を取付可能に構成したライトチューブ取付部8eが設けられている。そのため、オーナメント6は車両上方からライトチューブ7によって光を照らされることとなる。
【0028】
次に、第2収納部を有する第2インストルメントパネル(以下、「第2インパネ」という)について説明する。図3は、本発明の実施形態において、第2インパネ11に第2収納部12を設けた場合の車室内前方の斜視図である。第2インパネ11の助手席側の車両下方には、第2収納部12が設けられており、第2インパネ11は、第1インパネ1の場合と共通の部品であるインパネ本体3を備えている。第2収納部12の車両上方側の上部には、開口トレイ部13が設けられ、第2収納部12の車両下方側の下部には、グローブボックス14が設けられている。
【0029】
第2収納部12の車両後方側の表面12aは、第1収納部2と同様に、車幅方向側面視で、車両後方側に向かって膨出する略くの字形状に形成されている。詳細には、第2収納部12の表面12aの上部で車両上方に向かうに従って車両前方に傾斜する上側斜面部12bと、第2収納部12の表面12aの下部で車両下方に向かうに従って車両前方に傾斜する下側斜面部12cとが設けられている。この第2収納部12の略くの字形状の角部には、車幅方向に延びるライン12dが形成されることとなり、このライン12dが第2インパネ11のデザインにシャープなイメージを与えることとなる。また、第2収納部12は、買い物袋などの荷物を掛けるためのフック22を備えており、このフック22は、第1インパネ1の場合と共通し、かつ同じ位置に配置されている。
【0030】
開口トレイ部13は、第2収納部12の上側斜面部12bに配置され、車両後方側に向かって開口している。開口トレイ部13には、トレイ15が設けられている。また、第2グローブボックス14に設けられるリッド14aは、第2収納部12の下側斜面部12cに対応して配置されている。
【0031】
ここで第2収納部12について説明する。図4は、本発明の実施形態における第2収納部12の分解斜視図である。第2グローブボックス14は、リッド14aの車両前方の前側面に、車両上方に向かって開口するポケット部14bを備えている。
【0032】
第2グローブボックス14のリッド14aは、上端寄りの車幅方向中央の位置にレバー14cが設けられており、リッド14aの車両前方側の前側面には、車幅方向略中央のポケット部14bの上端部分に対応する位置にロック部14dが設けられている。レバー14cとロック部14dとは連動しており、レバー14cを操作することによってロック部14dが動作することとなる。
【0033】
第2収納部12は、第1収納部2と共通して用いられるオーナメント6およびライトチューブ7を備えている。
【0034】
第2収納部12には、インパネ本体3とは別部品として構成される第2枠状部材16が設けられている。第2枠状部材16は第2の構造を有するとともに、第1枠状部材8とほぼ同じ大きさで、かつほぼ同じ外形を有するように形成されている。この第2枠状部材16の第2の構造について説明する。この第2枠状部材16は、第2収納部12の車幅方向両側の側部を仕切り、かつ車両前方側で開口している。さらに、第2枠状部材16の車両後方側には、略くの字形状の角部に沿って仕切部16aが設けられている。
【0035】
第2枠状部材16は一対の側部16b,16bを備えており、側部16bの車両後方側の表面は、略くの字形状に形成されている。また、第2枠状部材16には、一対の側部16b,16bの下端同士を結ぶように車幅方向に沿って延在する底部16cが形成されている。
【0036】
また、第2枠状部材16の開口トレイ部13の車両上方には、第1収納部2の場合と同様に、車幅方向全体に渡ってオーナメント6を取付可能に構成されるオーナメント取付部16dが設けられている。さらに、第2枠状部材16のオーナメント取付部16dの車両上方に、第1収納部2の場合と同様に、ライトチューブ7を取付可能に構成されるライトチューブ取付部16eが設けられている。このような構成によって、オーナメント6は車両上方からライトチューブ7によって光を照らされることとなる。
【0037】
トレイ15は、開口トレイ部13と第2グローブボックス14を収納する空間とを仕切るように構成されるとともに、仕切部16aから取り外し可能に構成されている。このようなトレイ15および仕切部16aによって、第2枠状部材16には2つの空間が設けられることとなり、第2グローブボックス14は、これらの2つの空間のうち車両下方の空間に、第2グローブボックス14の下端で車幅方向に沿って配置される軸を中心に回動可能に収納されることとなる。また、トレイ15が取外された状態では、2つの空間は車両上下方向に連通するように構成されている。
【0038】
ここで、第1インパネ1および第2インパネ11で共通に用いられるインパネ本体3について説明する。図5は、本発明の実施形態におけるインパネ本体3の概略を示す斜視図である。インパネ本体3は、車室内前方の車幅方向全体に渡って配置されることとなる。このインパネ本体3の車両後方側の表面に、各種計器などの構成部品が配置されることとなる。インパネ本体3の助手席側の車両下方には、車両前後方向および車両下方に向かって開口する凹形状の収納凹部3aが設けられている。
【0039】
ここで第1収納部2を有する第1インパネ1の組立構造を説明する。図6は、本発明の実施形態において、第1収納部2を組み入れる場合の第1インパネ1の組立構造を説明する図である。インパネ本体3は、車体の車両室内の前方で車幅方向全体に渡って延在するステアリングサポートメンバー(以下、「サポートメンバー」という)21の車両後方側に取付けられて支持される。
【0040】
第1収納部2については、仕切棚5が、第1枠状部材8の車幅方向内側の側部8aに設けられた凹部8cに係合するとともに、第1枠状部材8の車幅方向外側の側部8aに設けられた突起部(図示せず)によって車両下方から支持される。この仕切棚5によって、第1枠状部材8の1つの空間が車両上下方向の中間で仕切られることとなる。第1枠状部材8の1つの空間には車両後方からグローブボックス4が収容されて、グローブボックス4が、その下端で車幅方向に沿っては位置される軸を中心に開閉可能に取付けられる。
【0041】
第1枠状部材8の上端部分では、オーナメント取付部8dには車幅方向に沿ってオーナメント6が取付けられ、ライトチューブ取付部8eには車幅方向に沿ってライトチューブ7が取付けられる。
【0042】
また、フック22を、第1枠状部材8の側部8aの車両後方側表面で露出するように配置するため、サポートメンバー21にはこのフック22の配置位置に対応するようにフック取付部21aが設けられており、フック22はこのフック取付部21aに取付けられることとなる。
【0043】
このような取付状態において、第1枠状部材8および第2枠状部材16に対応して形成されたインパネ本体3の収納凹部3aに、第1枠状部材8が取付けられることとなる。
【0044】
このように組み立てられた第1インパネ1において、第1グローブボックス4がロックされた状態では、ロック部がストライカ(図示せず)に係合し、グローブボックス4のレバー4dが操作されて、第1グローブボックス4のロックが解除された状態では、ロック部とストライカとの係合が解除されて、第1グローブボックス4が開閉可能となる。
【0045】
第2収納部12を有する第2インパネ11の組立構造を説明する。図7は、本発明の実施形態において、第2収納部12を組み入れる場合の第2インパネ11の組立構造を説明する図である。インパネ本体3は、第1収納部2を組み入れる場合と同様に、車体の車両室内の前方で車幅方向全体に渡って延在するサポートメンバー21の車両後方側に取付けられて支持される。
【0046】
第2収納部12については、第2枠状部材16の仕切部16aにトレイ15が取付けられて、2つの空間が形成されることとなる。これらの2つの空間のうち車両下方側の空間には、車両後方から第2グローブボックス14が収容されて、グローブボックス14が、その下端で車幅方向に沿って配置される軸を中心に開閉可能に取付けられる。
【0047】
第2枠状部材16の上端部分では、第1収納部2を組み入れる場合と同様に、オーナメント取付部16dには車幅方向に沿ってオーナメント6が取付けられ、ライトチューブ取付部16eには車幅方向に沿ってライトチューブ7が取付けられる。
【0048】
また、第1インパネ1の場合と同様に、サポートメンバー21のフック取付部21aに、フック22が取付けられる。そのため、第2枠状部材16における車幅方向内側の側部の車両後方側表面に、買い物袋などの荷物を掛けるためのフック22が露出して配置され、第1収納部2と同位置にフック22が位置することとなる。
【0049】
このような取付状態において、第1枠状部材8および第2枠状部材16に対応するインパネ本体3の収納凹部3aに第2枠状部材16が取付けられることとなる。なお、第2枠状部材16の収納凹部3aの取付部は、第1枠状部材8の収納凹部3aの取付部と同様に構成されているため、収納凹部3aには、第1枠状部材8と第2枠状部材16とが取付け可能となっている。
【0050】
このように組み立てられた第2インパネ11において、第2グローブボックス14がロックされた状態では、ロック部14dがストライカ(図示せず)に係合し、第2グローブボックス14のレバー14cが操作されて、第2グローブボックス14のロックが解除された状態では、ロック部14dとストライカとの係合が解除されて、グローブボックス14が開閉可能となる。
【0051】
以上のように本発明の実施形態によれば、大きく異なる2種類の仕様の第1収納部2と第2収納部12とを作り分ける場合に、共通のインパネ本体3を使用しながら、第1インパネ1および第2インパネ11を作製することができる。また、異なる仕様においてインパネ本体3を共通に使用することによって、作り分けのために複数種類のインパネ本体3を準備する必要がなく、部品コストを低減し、作り分けの煩雑さを解消し、部品管理および組立作業の効率を改善できる。
【0052】
本発明の実施形態によれば、大きく異なる形態である第1収納部2および第2収納部12のデザインが、類似することとなる。そのため、例えば、同車種の車両において異なる仕様の第1収納部2および第2収納部12が設けられる場合にも、第1インパネ1および第2インパネ11のデザインに統一感を持たせることができる。
【0053】
本発明の実施形態によれば、一般的に第2収納部12を有する第2インパネ11の内部に設けられるフィルターを交換するなどのメンテナンス作業が、トレイ15を取外し可能に構成することによって、第1収納部2と同様な作業によって行なうことが可能になる。そのため、異なる仕様の収納部を用いた場合であっても、デザインの統一感を保ちながら、このように、メンテナンス作業を共通化できる。従って、メンテナンスの作業者が複数の工程を習得する必要がなくなり、メンテナンスの効率化を図ることができる。
【0054】
本発明の実施形態によれば、第1収納部2の設計に際して、仕切棚5の上下方向の配置位置を変化させることが可能となる。そのため、この配置位置の変更によって第1インパネ1の外観に影響を与えることなく、第1収納部2の仕切り構造や第1収納部2の収納容量を変更することができる。
【0055】
加えて、本発明の実施形態によれば、第1収納部2および第2収納部12のいずれにおいても、ライトチューブ7を直接第1枠状部材8および第2枠状部材16に取付けることができる。そのため、通常、ライトチューブ7を取付けるための別部材を設ける必要がなく、部品点数を削減できる。
【0056】
加えて、本発明の実施形態によれば、第1収納部2および第2収納部12のいずれにおいても、共通してサポートメンバー21に取付けられるフック22に対して車両後方から覆いかぶせるように、第1枠状部材8および第2枠状部材16がそれぞれ組付けられることとなる。そのため、フック22の意匠が組付けの際の干渉によって傷付くことを防ぐことができる。また、フック22を取付けるために、ブラケットを介してサポートメンバー21にボルト締結する必要がなく、サポートメンバー21にフック22を直接取付けることができる。そのため、組立作業を簡単にすることができる。
【0057】
ここまで本発明の実施形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0058】
例えば、本発明の第1変形例として、第2インパネにおいて、開口トレイ部13が第2収納部12の下側斜面部12cに配置され、グローブボックス14が第2収納部12の上側斜面部12bに配置されてもよい。本発明の実施形態と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態において、第1インストルメントパネルに第1収納部を設けた場合の車室内前方の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における第1収納部の分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態において、第2インストルメントパネルに第2収納部を設けた場合の車室内前方の斜視図である。
【図4】本発明の実施形態における第2収納部の分解斜視図である。
【図5】本発明の実施形態におけるインストルメントパネル本体の概略を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態において、第1収納部を組み入れる場合の第1インストルメントパネルの組立構造を説明する図である。
【図7】本発明の実施形態において、第2収納部を組み入れる場合の第2インストルメントパネルの組立構造を説明する図である。
【符号の説明】
【0060】
1 第1インストルメントパネル(第1インパネ)
2 第1収納部
2a 表面
2b 上側斜面部
2c 下側斜面部
2d ライン
3 インストルメントパネル本体(インパネ本体)
3a 収納凹部
4 第1グローブボックス
4a リッド
4b ポケット部
4c 側壁部
4d レバー
5 仕切棚
5a 前壁部
5b 後壁部
5c 側壁部
6 オーナメント
7 ライトチューブ
8 第1枠状部材
8a 側部
8b 底部
8c 凹部
8d オーナメント取付部
8e ライトチューブ取付部
11 第2インストルメントパネル(第2インパネ)
12 第2収納部
12a 表面
12b 上側斜面部
12c 下側斜面部
12d ライン
13 開口トレイ部
14 第2グローブボックス
14a リッド
14b ポケット部
14c レバー
14d ロック部
15 トレイ
16 第2枠状部材
16a 仕切部
16b 側部
16c 底部
16d オーナメント取付部
16e ライトチューブ取付部
21 ステアリングサポートメンバー(サポートメンバー)
21a フック取付部
22 フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のインストルメントパネルに設けられる収納部と、前記インストルメントパネルの主要構成部品であるインストルメントパネル本体とを備えるインストルメントパネルの収納部の構造において、
前記収納部の車幅方向両側の側部を仕切る枠状部材が、前記インストルメントパネル本体に別体として取付けられており、さらに、前記枠状部材が、1つの空間を有する第1の構造か、または車両上下方向の中間に配置される仕切部によって仕切られる2つの空間を有する第2の構造のいずれか一方を備えており、前記第1の構造では、前記1つの空間がグローブボックスを収納可能に構成され、前記第2の構造では、前記2つの空間の一方が車両後方側で開口する開口トレイ部として構成され、前記2つの空間の他方がグローブボックスを収納可能に構成されている、インストルメントパネルの収納部の構造。
【請求項2】
前記収納部の車両後方側の表面が、前記枠状部材を第1の構造とする場合と前記枠状部材を前記第2の構造とする場合とのそれぞれで同様に、車幅方向側面視でくの字形状に形成されており、さらに、前記枠状部材を前記第2の構造とする場合に、前記2つの空間の車両上方側が前記開口トレイ部として構成され、前記2つの空間の車両下方側がグローブボックスを収納可能に構成され、前記表面のくの字形状の角部が前記仕切部と対応するように配置されている、請求項1に記載されるインストルメントパネルの収納部の構造。
【請求項3】
前記枠状部材を前記第2の構造とする場合に、前記開口トレイ部に設けられるトレイが、前記枠状部材に着脱可能に取付けられている、請求項1または2に記載されるインストルメントパネルの収納部の構造。
【請求項4】
前記枠状部材を前記第1の構造とする場合に、前記グローブボックスの車幅方向両側の側壁部が、くの字形状の前記表面の角部より車両下方に配置され、前記側壁部の車両上方で前記1つの空間を車両上下方向の中間を仕切る仕切棚が、前記枠状部材に着脱可能に取付けられており、くの字形状の前記表面の角部より車両上方に位置する前記表面の上側斜面部が、前記グローブボックスのリッドで覆われるように構成されている、請求項2に記載されるインストルメントパネルの収納部の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−52465(P2010−52465A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216701(P2008−216701)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】