説明

インストルメントパネル側方に窓を配置した車両の室内構造

【課題】 インストルメントパネル側方の窓から目視可能な視界を下方へ広げることが可能である車両の室内構造を提供する。
【解決手段】 インストルメントパネル(1)の側方に窓(3)を配置した車両の室内構造において、窓(3)とインストルメントパネル(1)の車両幅方向の側端部(12)との間に、インストルメントパネル(1)の上面(11)より車両上下方向の下方に凹陥した凹陥部(4)を設け、凹陥部(4)の底面(41)に沿って窓(3)の下端縁(32)が配置されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インストルメントパネル側方に窓を配置した車両の室内構造に関し、さらに詳しくはインストルメントパネル側方に配置した窓の視界を向上する室内構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のフロントドアウィンドウは、フロントドアのヒンジ部を避けて昇降可能とするために、フロントピラーに隣接する部分に三角窓を設けたり、ドアミラーの取付け部としたりしていた。これらはフロントウインドウとフロントドアウィンドウの中間の視界を遮るものとなるため、フロントドアの三角窓は殆ど採用されなくなった。
【0003】
一方、室内空間の拡張やスタイリングの向上を目的として、フロントウインドウの傾斜を大きくし、インストルメントパネル上面の空間を前方に拡張することも行なわれている(特許文献1参照)。このような車両においては、フロントピラーの下端が前方に大きく張出しているため、フロントドアウィンドウとは別に、フロントピラー後方に固定ガラス(三角窓)を設け、フロントドアウィンドウの前端部に取付けたドアミラーとフロントピラーとの間に視界が確保されるようにしている。しかし、運転席の乗員から三角窓までの距離が大きく、その分、窓の下方に視界の死角が大きくなる傾向があった。
【0004】
また、一般的に車両側部の窓用のデフロスタの吹出し口は、運転席からの視界を遮らないように、インストルメントパネルの上面または前面などの意匠面内に設けられていることが多い。このような設置面からそのまま吹出したのでは効率的に窓に風が当たらないため、吹き出し口に風向を制御するためのルーバーなどが設けられているが、吹き出し口の形状や、送風経路が複雑になり易かった。さらに、上記設置面から吹出した風は、吹出し直後に開放空間に放出されるため、ルーバーで風向制御を行なっても窓ガラスに到達することなく拡散してしまう虞があった。
【0005】
【特許文献1】特開2005−112120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、インストルメントパネル側方の窓から目視可能な視界を下方へ広げることが可能な車両の室内構造を提供することにある。また、それと併せて、デフロスタの気流を効果的に導き、前記窓に対する曇り除去性能を向上し、前記窓からの視界を確保できる車両の室内構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来技術の有する課題を解決するため、本発明は、インストルメントパネルの側方に窓を配置した車両の室内構造において、前記窓と前記インストルメントパネルの車両幅方向の側端部との間に、前記インストルメントパネルの上面より車両上下方向の下方に凹陥した凹陥部を設け、前記凹陥部の底面に沿って前記窓の下端縁が配置されるようにした。
【0008】
本発明において、前記窓が運転席側に位置した窓であって、該窓を運転席の乗員が見た時に、前記インストルメントパネルの上面側端縁が前記窓の下端縁とほぼ重なることが好適である。また、前記窓が助手席側に位置した窓である場合に、該窓を運転席の乗員が見た時に、前記インストルメントパネルの上面側端縁が前記窓の下端縁とほぼ重なるように、前記インストルメントパネルの助手席側上面側端縁が形成され、かつ、助手席側と運転席側の上面側端縁が左右対称に形成されていることが好適である。
【0009】
さらに本発明において、前記インストルメントパネルの、前記凹陥部に臨む側端面に、前記窓に対向してデフロスタの吹出し口を設けた。前記凹陥部の車両前後方向の前方または後方に位置するピラー表面の形状が、前記側端面から前記窓に向けて、前記凹陥部の空間を徐々に狭める方向に傾斜または湾曲していることが好適である。
【発明の効果】
【0010】
上述の如く本発明は、インストルメントパネルの側方に窓を配置した車両の室内構造において、前記窓と前記インストルメントパネルの車両幅方向の側端部との間に、前記インストルメントパネルの上面より車両上下方向の下方に凹陥した凹陥部を設け、前記凹陥部の底面に沿って前記窓の下端縁が配置されるようにしたので、凹陥部空間により、下方に拡張した窓を通して目視可能な視界を下方へ広げることが可能である。
【0011】
また、前記窓が運転席側に位置した窓であって、該窓を運転席の乗員が見た時に、前記インストルメントパネルの上面側端縁が前記窓の下端縁とほぼ重なる態様においては、インストルメントパネル側方の凹陥部が最小限で済み、運転席の乗員が確認できる視界を下方へ効率良く広げることが可能である。さらに、前記窓が助手席側に位置した窓であって、該窓を運転席の乗員が見た時に、前記インストルメントパネルの上面側端縁が前記窓の下端縁とほぼ重なるように、前記インストルメントパネルの助手席側上面側端縁が形成され、かつ、助手席側と運転席側の上面側端縁が左右対称に形成されている態様においては、インストルメントパネル側方の凹陥部が最小限で済み、運転席の乗員が確認できる助手席側の視界を下方へ効率良く広げることが可能である。
【0012】
前記インストルメントパネルの、前記凹陥部に臨む側端面に、前記窓に対向してデフロスタの吹出し口を設けたので、吹出し口からの気流を直接窓に吹き当てることができ、吹出し口の形状および構造を複雑にする必要が無く、簡易な吹出し口形状で効率良く窓の曇りを除去することが可能となる。また、凹陥部の空間により吹出し口からの気流の散逸が防止され、窓に向けて効率良く流れるため、曇り除去性能を向上することが可能である。さらに、前記凹陥部の車両前後方向の前方または後方に位置するピラー表面の形状が、前記側端面から前記窓に向けて、前記凹陥部の空間を徐々に狭める方向に傾斜または湾曲している態様では、ピラー表面が吹出し口からの気流を窓に導くガイドとして機能し、窓に向けて一層効率良く流れ、曇り除去性能を一層向上することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の詳細について説明する。図1は本発明の実施形態に係る車両室内のインストルメントパネル1およびその周辺を示す概略図である。図において、インストルメントパネル1の車幅方向の側方には、車体側部の一部を構成するAピラー2が配設されている。Aピラー2は、インナー、リインフォース、アウターなどの構造材の室内側を、樹脂材等からなるトリム(21,22)で覆い、意匠面を形成している。
【0014】
Aピラー2は、図2に示すように、屋根側から下方に向かって拡幅され、途中でフロントピラー21と補助ピラー22に分岐し、Aピラー2の下方寄りに三角窓3を形成している。三角窓3は、車両前方に向かい下降するベルトライン33と、フロントピラー21の基部から車両後方に向かう下降ライン34によって、三角窓3(固定ガラス31)の下辺が下方に拡張された四角形の外形状をなし、それに伴い三角窓3も略四角形状をなしている。固定ガラス31は、三角窓3を車両室外側から塞ぐようにシール材等を介してAピラー2に固定されている。
【0015】
そして、図3および図7(図1の矢視A)に示すように、インストルメントパネル1の車幅方向側端部には、固定ガラス31に対して一定の距離をおいて側壁12が立設されている。また、フロントピラー21の下部と補助ピラー22の下部はともに、固定ガラス31と側壁12との間に配置され、固定ガラス31、フロントピラー21、補助ピラー22および側壁12の下端は底面41に連接している。これにより、インストルメントパネル1の側方には、固定ガラス31、フロントピラー21、補助ピラー22および側壁12に四方を囲まれた空間4が形成される。空間4は四方と底面41が囲まれ、上面が開放された形状となり、インストルメントパネル1の上面11よりも車両上下方向の下方に凹陥した凹陥部となっている。
【0016】
三角窓3の下端縁32(固定ガラス31と底面41が当接するライン)も、インストルメントパネル1の上面11の端縁13より、車両上下方向の下方に位置している。この特徴により三角窓3をインストルメントパネル1の上面11よりも車両上下方向における下方に広げて設けることができ、車両側部の下方向側の視界を拡大することができる。
【0017】
さらに本実施形態では、運転席の乗員から見た時に、図6に示すように、三角窓3の下端縁32とインストルメントパネル1の上面11の端縁13とがほぼ重なって見えるように配置している。これにより、三角窓3の下端を運転席の乗員が見える範囲内の最も低い位置まで下げることができる。下端縁32の両端部はデザイン上、若干上方に傾斜させたり、円弧形状としたりする場合があるが、その場合は中央部のほぼ直線の部分が端縁13と重なって見えるようにすれば良い。
【0018】
尚、運転席の乗員から見た時に上記のような配置となるようにする方法としては、例えば、座席のスライド位置および背凭れの角度などの条件を設計基準位置とし、50パーセンタイルの成人男性ダミーを座席に座らせた状態で、ダミーの頭部の中心と三角窓3の下端縁32の中心を結ぶ線上に、インストルメントパネル上面11の端縁13の一部が交差または近接するような位置関係に設定すれば良い。但し、各車両のコンセプトにより、ダミーの種類や座席の位置を適宜変更することも可能である。また、上記設定は車両の両側に適用可能であるが、運転席から遠く確認しにくい助手席側を基準に適用するのが視界向上効果の面で、特に好ましい。
【0019】
インストルメントパネル1の上面11は、エアバッグや計器類を配置する都合上、高さを抑えるには限界がある。図示例ではインストルメントクラスター部を除くインストルメントパネル1の上面11を運転席側に傾斜させて高さを抑えてある。しかし、本発明のようにインストルメントパネル1の両側端に下方に一段下がる凹陥部(空間4)を設けることにより、インストルメントパネル1の上面11の高さを下げずに三角窓3の下方の視界を広げることが可能となる。
【0020】
さらに本発明では、図3(図7)に示すように、固定ガラス31に対向してインストルメントパネル1の側壁12を立設するとともに、側壁12に窓ガラスの曇りを除去する為のデフロスタの吹出し口5を設けている。この構成により、側壁12には簡易なスリット形状を設けるだけでよく、風向制御のための複雑なルーバー形状を設ける必要がない。このため、デフロスタからの風を固定ガラス31に向けて効率良く吹出すことができ、曇りを迅速に除去して視界の確保を行うことができる。
【0021】
また、吹出し口5は前述の空間4を形成する側壁12に設けられているため、吹出した風が空間4内にとどまり、吹出し風を効率的に固定ガラス31に導くことができる。さらに、図4に示すように、空間4を形成するフロントピラー21または補助ピラー22のトリム表面を、インストルメントパネル1の側壁12から固定ガラス31に向けて、空間4が狭まる方向に傾斜(または湾曲)する形状に形成している。さらに詳しくは、一端狭まった後、固定ガラス31の直前で僅かに拡大したディフューザー形状をなし、空間全体としてはスロート形状を形成している。
【0022】
この構成により、上記ピラー表面(21,22)は、デフロスタの吹出し口5から空間4内に吹き出された風を固定ガラス31の方向へ導くガイドの機能を有し、吹き出し風を固定ガラス31に効率良く誘引することができるため、さらに迅速に固定ガラス31の曇りを除去し、乗員の視界確保に寄与することができる。
【0023】
尚、上記実施形態においては、インストルメントパネル1の側方の窓が固定ガラス31による三角窓3である場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、Aピラー2がフロントピラー21のみからなり、インストルメントパネルの側方の窓が、フロントドアのドアガラスである場合にも適用可能である。
【0024】
以上の詳述したように、本発明によれば、窓ガラスの下方端縁の位置を可能な限り下げることによる運転席からの乗員の車両下方への視界拡大、およびデフロスタの吹出し口の配置による迅速な窓ガラスの曇りの除去により、乗員の視界確保の向上を可能とすることができる。
【0025】
以上、本発明の実施の形態について述べたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る車両室内のインストルメントパネル周辺を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係るインストルメントパネル側方の窓付近を示す車両要部右側面図である。
【図3】図2のB−B線断面図である。
【図4】図2のC−C線断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るインストルメントパネル側方の窓付近を後斜め上方から見た要部斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係るインストルメントパネル側方の窓付近を運転席の乗員の視線よりやや低い位置から見た要部斜視図である。
【図7】図1のA方向矢視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 インストルメントパネル
2 Aピラー
3 三角窓
4 空間(凹陥部)
5 吹出し口
11 上面
12 側壁(側端面)
13 側端縁
21 フロントピラー
22 補助ピラー
31 固定ガラス
32 下端縁
41 底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネルの側方に窓を配置した車両の室内構造において、前記窓と前記インストルメントパネルの車両幅方向の側端部との間に、前記インストルメントパネルの上面より車両上下方向の下方に凹陥した凹陥部を設け、前記凹陥部の底面に沿って前記窓の下端縁が配置されるようにしたことを特徴とするインストルメントパネルの側方に窓を配置した車両の室内構造。
【請求項2】
前記窓が運転席側に位置した窓であって、該窓を運転席の乗員が見た時に、前記インストルメントパネルの上面側端縁が前記窓の下端縁とほぼ重なることを特徴とする請求項1に記載のインストルメントパネルの側方に窓を配置した車両の室内構造。
【請求項3】
前記窓が助手席側に位置した窓であって、該窓を運転席の乗員が見た時に、前記インストルメントパネルの上面側端縁が前記窓の下端縁とほぼ重なるように、前記インストルメントパネルの助手席側上面側端縁が形成され、かつ、助手席側と運転席側の上面側端縁が左右対称に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインストルメントパネルの側方に窓を配置した車両の室内構造。
【請求項4】
前記インストルメントパネルの、前記凹陥部に臨む側端面に、前記窓に対向してデフロスタの吹出し口を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインストルメントパネルの側方に窓を配置した車両の室内構造。
【請求項5】
前記凹陥部の車両前後方向の前方または後方に位置するピラー表面の形状が、前記側端面から前記窓に向けて、前記凹陥部の空間を徐々に狭める方向に傾斜または湾曲していることを特徴とする請求項4に記載のインストルメントパネルの側方に窓を配置した車両の室内構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−118871(P2007−118871A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−316653(P2005−316653)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】