説明

インターフェロンアルファ応答に関連する遺伝子マーカー

【課題】IFN−αを用いた治療に感受性の疾患、特に慢性HCV感染、黒色腫、腎細胞癌(RCC)、または慢性骨髄性白血病(CML)を治療する方法の提供。
【解決手段】インターフェロンアルファ(IFN−α)に対する有益な応答に関連するヒト染色体19上の遺伝子マーカー、およびIFN−α医薬組成物および薬剤製品の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインターフェロンアルファを用いた治療に対する有益な応答を予測するヒト19番染色体上の遺伝子マーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
本セクションおよび本出願のいずれのセクションにおける如何なる公開出版物の特定もそのような公開出版物が本発明の従来技術であることを受け入れるものではない。
【0003】
タンパク質のI型インターフェロンアルファ(IFN−α)ファミリーは臨床的に重要な抗ウィルス性、抗増殖性および免疫調節性の活性を呈し、肝炎および癌を包含する種々の疾患を治療するために認可されている。最初に認可されたIFN−αタンパク質の短い血漿中半減期のために、より長時間作用するバージョンが開発されており;特に商標名PEGASYS(登録商標)の下にHoffman−La Roche(Nutley,NJ)により販売されているペグインターフェロンアルファ−2a;商標名PegIntron(登録商標)の下にSchering−Plough(Kenilworth,NJ)より販売されているペグインターフェロンアルファ−2b;およびHuman Genome Sciencesにより後期臨床開発中のヒト血清アルブミンとインターフェロンアルファ−2bとの融合物であるAlbuferon(登録商標)が挙げられる。
【0004】
IFN−αタンパク質は正常および異常の両方の細胞におけるDNA複製およびRNAおよびタンパク質の合成を包含する種々の細胞機能に影響する。したがって、IFN−α療法の細胞毒性作用は腫瘍またはウィルス感染細胞に限定されず、正常で健康な細胞においても同様に顕在化する。その結果、望ましくない(但し典型的には可逆性の)副作用がIFN−α療法中に、特に治療効果を達成するために高用量が必要とされる場合に生じる。例えば、IFN−αタンパク質の投与は赤血球、白血球および血小板数の減少もたらす場合があり、高用量は一般に感冒様症状(例えば発熱、疲労、頭痛および寒気)、胃腸障害(例えば食欲不振、吐き気および下痢)、気分変化および肝酵素の変動をもたらす。
【0005】
そのような副作用は特にIFN−α系療法で典型的に必要とされる長い治療期間に起因する問題となる場合がある。例えばC型肝炎ウィルス(HCV)感染のためのペグインターフェロンアルファ/リバビリンの複合療法の推奨継続期間はHCVの遺伝子型およびベースラインウィルス量に応じて24〜48週間である。特定の癌適応症に対する治療継続期間は、より一層長期となる場合があり、これは切除III期黒色腫に対するアジュバント療法としてのペグインターフェロンアルファ−2bの近年終了した臨床治験により明らかにされており、それにおいては、患者に6μg/kgのペグインターフェロンアルファ−2bを週1回皮下で8週間(誘導期)、その後、週当たり3μg/kgを皮下で目的とする治療継続期間の5年間(維持期)投与している(Eggermont A.M.M.ら、Lancet 372:117−126[2008])。
【0006】
問題となる副作用の潜在性に加えて、IFN−α療法の治療効果は特定の疾患を有する患者の間で非常に大きなばらつきがあり得る。例えば、HCVに対する複合ペグインターフェロンアルファ−2b/リバビリン療法はHCV遺伝子型およびベースラインウィルス量により定義される種々の患者群において約20%〜93%の持続性ウィルス学的著効(SVR)率をもたらす。更にまた、アフリカ系のHCV患者はヨーロッパ系の患者よりも有意に低値の持続性ウィルス学的著効(SVR)率を有する。例えばMcCone,Jら、Hepatology 48(4):430A−431A,Abstr.No.268(59th Ann.Mtg.Am.Assoc.Study Liver Dis.,AASLD,San Francisco,CA、USA2008年10月31日〜11月4日);Reid,A.E.,Curr.Hepatitis Rep.,Vol.7,No.3,pp.120−126(2008);Jacobson,I.M.ら、Hepatology 46(4):971−981(2007)を参照できる。同様に、上出のEggermontらは、より早期のIII期黒色腫を有する患者に関して、より後期の疾患を有する患者よりも良好な臨床転帰、特に約18〜25%の回帰の全体的危険性低下を報告している。
【0007】
したがって、IFN−α療法で観察された副作用および変動性の応答および感受性のプロファイルに鑑みれば、IFN−α療法から利益を被る可能性が最も高い患者を識別する方法の必要性が存在している。本発明はこの必要性に着目している。
【発明の概要】
【0008】
本発明はヒト染色体領域19q13.13上の幾つかの1塩基多型(SNP)が、HCV遺伝子型1に慢性的に感染している患者におけるペグインターフェロンアルファ/リバビリン治療への応答に対して強力な関連性を有するという発見に基づいている。
【0009】
これらのSNPの1つはNCBIのSNPデータベースにおいてrs12979860として識別されるC/T多型である。rs12979860多型はインターフェロンラムダ3(IFN−λ3)をコードするインターロイキン28B(IL−28B)遺伝子の3kb上流に位置している。C対立遺伝子の存在は、より良好な治療応答に関連しており、C/C遺伝子型は、ヨーロッパ、アフリカおよびヒスパニック系のHCV患者において、T/T遺伝子型よりもそれぞれ2倍、3倍および2倍良好な持続性ウィルス応答(SVR)を有する。更にまた、C/C遺伝子型はアフリカ系の集団よりもヨーロッパ系の集団において実質的に高値の頻度で存在しているため、rs12979860多型はペグ化インターフェロンアルファ/リバビリン複合療法に対するHCV患者の応答における集団間の相違の有意な成分を説明している。rs1279860C対立遺伝子の頻度は、C型肝炎状態が不明な無作為に選択された集団サンプルと比較した場合にHCVに慢性感染している患者のコホートにおいて有意に低く、C対立遺伝子が、C型肝炎遺伝子型1の天然排除の確率が高いことにも関連していることを示唆している。
【0010】
本発明者らは本明細書において、19q13.13上のrs12979860と他のSNPの間の関連性も記載するが、これら自体がSVRと関連している。これらのSNPのうちの2つはIL−28B遺伝子中にあり:rs28416813、即ちATG開始コドンの37塩基上流に位置するG/C多型、および、rs8103142、即ち図4に示すIFN−λ3アミノ酸配列(配列番号10)のアミノ酸70位におけるLysまたはArgのアミノ酸多型の存在をもたらすコーディング配列中に位置するA/G多型である。rs8103142多型のA対立遺伝子はIFN−λ3の70位のLysをコードするのに対し、G多型は70位におけるArgをもたらす。IFN−λ3の近年公開された結晶構造(Gad,H.H.ら、JBC2009、2009年5月20日オンライン出版、原稿M109.002923)に基づいて、本発明者らは本明細書において、IFN−λR1へのIFN−λ3の結合に関与すると考えられる領域であるABループ中にArg/Lys変異が生じると考える。
【0011】
IL28B遺伝子におけるSNPは、HCVおよび他のウィルスによる感染によりIFN−λ3の発現が誘導されること、およびIFN−λ3がインビボで抗ウィルス性を示すこと(Sheppard,Pら、Nature Immunol.4(1):63−68(2003);Kotenko,S.V.ら、Nature Immunology 4(1):p.69−77(2003);Ank,N.ら、J.Interferon&Cytokine Res.26:373−379(2006))から、多型原因候補として特に興味深いものである。特にIFN−αへの貧応答性とのArg70対立遺伝子の関連性は、この対立遺伝子の存在が、IFN−α系療法に対するSVRを達成することに関与しているHCVへの免疫応答の必須成分を備える個体の能力に対して、負の影響を及ぼしていることを示唆している。これは、Lys70アイソフォームと比較してArg70アイソフォームの機能が低いことによるか、Lys70アイソフォームの機能に対するArg70アイソフォームの干渉によるか、または両方の作用の組み合わせによると考えられる。血清中のArg70アイソフォームのレベルが低いことは、Lys70アイソフォームまたはArg70アイソフォームのいずれかのmyc−タグ付けされたバージョンを発現するように操作されたヒト細胞系が有意により多くの量のLys70アイソフォームを分泌するという本発明者らの発見からすれば、貧応答表現型に関する最も可能性の高い説明である。
【0012】
IFN−α療法への応答に関連するSNPは下記の表1に示す通りであり、これはNCBIのSNPデータベース標記を用いて識別された、SNPが位置する多型部位(PS)、PSにおいて観察される代替の対立遺伝子、IFN−α療法に対するより良好な応答に関連する対立遺伝子、およびこの対立遺伝子を含むヘテロ接合およびホモ接合の遺伝子型、即ち本明細書においてIFN−α応答マーカーと称するものを列挙している。
【表1】

【0013】
本発明者らは本明細書において、表1におけるIFN−α応答マーカーの1つ以上の存在に関して個体を試験することが、IFN−αを用いた治療に感受性である疾患のためのIFN−α療法に対して応答する可能性が最も高い個体を識別するための種々の薬理遺伝学的な製品および方法において有用であり、Lys70 IFN−λ3アイソフォームのレベルを上昇させるか、Arg70 IFN−λ3アイソフォームのレベルを低下させるか、またはその両方を行う療法との補充的複合インターフェロンアルファ/リバビリン療法から利益を被る可能性のあるHCVに慢性的に感染している個体を識別するために有用であり、更に、HCVに急性に感染している患者に対して抗ウィルス療法を処方するかどうかを医師が決定する場合の助力となることにおいて有用となることを意図している。
【0014】
従って、1つの実施形態において、本発明はインターフェロンアルファ(IFN−α)を用いた治療に対して感受性である疾患およびIFN−α応答マーカーの少なくとも1つに対する陽性判定を有する個体を治療するためのIFN−αを含む医薬組成物を提供する。
【0015】
別の実施形態においては、本発明はIFN−αを用いた治療に対して感受性である疾患およびIFN−α応答マーカーの少なくとも1つに対する陽性判定を有する個体を治療するための医薬の製造におけるIFN−αの使用を提供する。
【0016】
更に別の実施形態において、本発明は、IFN−α医薬組成物および医薬組成物が推奨される薬理遺伝学的適応症を包含する処方情報を含む薬剤製品を提供する。薬理遺伝学的情報は2つの要素、即ち、医薬組成物中のIFN−αを用いた治療に感受性である疾患、および、疾患を有し、IFN−α応答マーカーの少なくとも1つを有することにより遺伝子的に定義される患者を包含する。
【0017】
本発明は更に、IFN−α応答マーカーの少なくとも1つの存在または非存在に関して個体を試験する方法であって、個体から核酸試料を得ること、および、試料をアッセイすることにより表1における少なくとも1つの多型部位に関する個体の遺伝子型を決定することを含む方法を提供する。
【0018】
別の実施形態においては、本発明は、rs8103142PSにおけるIFN−α応答マーカーの存在または非存在に関して個体を試験する方法を提供し、この方法は個体から生物学的試料を得ること、および、アミノ酸70位にLysを有するIFN−λ3の存在に関して、またはアミノ酸70位にArgを有するIFN−λ3の存在に関して、生物学的試料をアッセイすることを含む。一部の実施形態においては、アッセイ工程はアミノ酸70位にLysを有するIFN−λ3とアミノ酸70位にArgを有するIFN−λ3との間の区別が可能なモノクローナル抗体に生物学的試料を接触させることを含む。
【0019】
一部の実施形態においては、IFN−α応答マーカーの存在または非存在に関して個体を試験する方法は、更に、アッセイした多型部位に関する個体の遺伝子型を示す試験報告を作成すること、および場合により、個体に、または、IFN−αを用いた治療に感受性の疾患に関して個体を治療している医師に、試験報告を提供することを含む。
【0020】
別の特徴において、本発明は核酸試料中のIFN−α応答マーカーを検出するためのキットを提供する。キットはIFN−α応答マーカー中の多型部位における対立遺伝子の各々を識別するために設計されたオリゴヌクレオチドの1つ以上のセットを含む。一部の実施形態においては、核酸試料はIFN−αを用いた治療に感受性の疾患を有する患者から得られる。1つの実施形態において、疾患は慢性HCV感染であり、対象は以前に肝臓移植を受けており、核酸試料は移植された肝臓の肝生検から得られる。別の実施形態においては、核酸試料は慢性HCV感染を有する患者への移植に関して試験されているドナー肝から得られる。
【0021】
更にその他の実施形態において、本発明は、個体がIFN−α応答マーカーの少なくとも1つを有するかどうかを測定すること、および、試験工程の結果に基づいて療法を選択することを含む、IFN−αを用いた治療に感受性の疾患を有する個体を治療するための療法を選択する方法を提供し、ここで個体がIFN−α応答マーカーを有する場合は選択された療法はIFN−αを用いた初回治療または継続治療を含み、個体がインターフェロンIFN−α応答マーカーを欠失している場合は、選択された療法はIFN−αではない他の治療薬の少なくとも1つと組み合わせてIFN−αを投与することを含むか、または、IFN−α系の療法を除外する。
【0022】
本発明はまたIFN−αを用いた治療に感受性の疾患を有する個体の群からIFN−αを用いた初回治療または継続治療のための個体を選択するためのスクリーニング方法を提供する。このスクリーニング方法はIFN−α応答マーカーの少なくとも1つの存在に関して疾患群の各メンバーを試験すること、および、IFN−α応答マーカーに関して陽性判定された個体少なくとも1つを治療のために選択することを含む。
【0023】
上記した実施形態の各々において、IFN−α応答マーカーは表1に示すヘテロ接合およびホモ接合のIFN−α応答マーカーのいずれかである。好ましい実施形態においては、IFN−α応答マーカーはホモ接合応答マーカーの1つである。1つの好ましい実施形態においては、IFN−α応答マーカーはrs8103142におけるA/A遺伝子型またはrs28416813におけるG/G遺伝子型である。1つの実施形態において、IFN−αに対する応答の予測は表1における少なくとも2つのPSに関するIFN−α応答マーカーの存在に基づく。
【0024】
また更なる実施形態において、本発明は慢性HCV感染を有する患者がIFN−α−2およびリバビリンを含む複合療法に対して応答することになるかどうかを予測する方法を提供する。本方法は個体から核酸試料を得ること、表1のホモ接合IFN−α応答マーカーの少なくとも1つの存在に関して核酸試料をアッセイすること、および、アッセイ工程の結果に基づいて予測を行うことを含む。結果がホモ接合IFN−α応答マーカーの存在に関して陽性である場合は、予測は個体がSVRを達成する可能性があるとするものであり、結果がホモ接合IFN−α応答マーカーの存在に関して陰性であった(例えば個体がrs12979860多型部位においてC/T遺伝子型またはT/T遺伝子型を有する)場合は、予測は個体がSVRを達成する可能性がないとするものである。1つの実施形態において、患者は以前に肝移植片を受けており、核酸試料は移植された肝の肝生検から得られる。
【0025】
なお更なる実施形態において、本発明は慢性HCV感染に関して個体を治療する方法を提供する。本方法は表1における多型部位の少なくとも1つに関する個体の遺伝子型を得ること、および、得られた遺伝子型に基づいて治療レジメンを処方することを含む。遺伝子型がホモ接合IFN−α応答マーカーの1つである場合は、治療レジメンはリバビリンと組み合わせてインターフェロンアルファを個体に投与することを含む。一部の実施形態においては、ホモ接合IFN−α応答マーカーを有する個体に対する治療レジメンは、治療有効量のペグ(PEG)化インターフェロンアルファ、リバビリンおよび少なくとも1つの他の抗ウィルス剤を個体に投与することを含む。一部の実施形態においては、他の抗ウィルス剤はHCVプロテアーゼ阻害剤またはHCVポリメラーゼ阻害剤である。得られた遺伝子型がホモ接合IFN−α応答マーカーではない(即ち貧応答性対立遺伝子に関してヘテロ接合またはホモ接合である)場合は、一部の実施形態においては処方された治療レジメンはインターフェロンアルファではない抗ウィルス剤1つ以上を含み、一部の好ましい実施形態においては、そのような抗ウィルス剤はHCVプロテアーゼ阻害剤、HCVポリメラーゼ阻害剤、および、Lys70 IFN−λ3アイソフォームのレベルを上昇させるか、Arg70 IFN−λ3アイソフォームのレベルを低下させるか、または両方を行う治療薬から選択される。
【0026】
更に別の実施形態において、本発明はIFN−λ3 Lys70医薬組成物、および、医薬組成物がHCVに感染しており、rs8103142におけるG対立遺伝子の存在に関して陽性判定である個体を治療するために推奨されることを明示している処方情報を含む薬剤製品を提供する。IFN−λ3 Lys70医薬組成物はIFN−λ3 Lys70ポリペプチドまたはIFN−λ3 Lys70ポリペプチドをコードする発現ベクターを含む。好ましい実施形態においては処方情報は更に、IFN−λ3 Lys70医薬組成物がIFN−α系療法と組み合わせた使用のためのものであることを明示している。
【0027】
更にその他の実施形態において、本発明はIFN−λ3 Arg70の活性を特異的に中和するがIFN−λ3 Lys70に対してはそうではない医薬組成物を提供する。一部の実施形態においては、医薬組成物はアミノ酸70位におけるリジンに対してアルギニンが置換している図4(配列番号10)のアミノ酸23〜196を含むポリペプチドに特異的に結合してそれを中和するが、アミノ酸70位にリジンが存在する配列番号10のアミノ酸23〜196を含むポリペプチドには結合しないモノクローナル抗体を含む。他の実施形態において、中和医薬組成物はIFN−λ3 Arg70の発現を阻害するがIFN−λ3 Lys70に対してはそうではない分子を含む。一部の実施形態においては、分子はアンチセンスRNA、siRNAまたはリボザイムである。
【0028】
IFN−αを用いた治療に感受性の疾患が慢性HCV感染である上記した組成物および方法のいずれかの一部の実施形態においては、慢性HCV感染は遺伝子型1(G1 HCV)、遺伝子型3(G3 HCV)または遺伝子型4(G4 HCV)よりなる群から選択されるHCV遺伝子型による高ベースラインウィルス量感染である。
【0029】
上記実施形態の全てにおいて、IFN−αは好ましくはペグ化IFN−α−2aまたはペグ化IFN−α−2bであり、特に好ましい実施形態においては、IFN−αはPEGASYS(登録商標)(ペグインターフェロンアルファ−2a)またはPegIntron(登録商標)(ペグインターフェロンアルファ−2b)である。
【0030】
上記した実施形態の全てにおいて、IFN−αを用いた治療に感受性の疾患を有する患者はIFN−αを用いた以前の療法に対して十分に応答することに失敗している。
【0031】
上記した実施形態の全てにおいて、IFN−α応答マーカーに関する陽性判定は、IFN−αを用いた初回または継続療法に応答する可能性のある患者を識別するために、IFN−α療法に対する陽性応答の予測因子の1つ以上の存在と組み合わせて使用してよい。
【0032】
なお更なる実施形態において、本発明は、慢性HCV遺伝子型1感染を有する患者がペグ化IFN−α−2およびリバビリンを用いた複合療法に対する持続ウィルス応答を達成することになる確率を推定するための方法を提供する。本方法は以下の工程、即ち、患者の応答の遺伝子的および臨床的な応答予測因子のセットを得ること;得られた予測因子を、入力された予測因子に対するロジスティック回帰モデルを実行するコンピューターに入力することにより推定確率を計算すること;および、推定確率を患者に、または、患者の医師に伝送すること、を含み、ここで患者はアフリカ系アメリカ人または白人として自己識別され、ここで遺伝子的および臨床的な応答の予測因子のセットはrs12979860多型部位における患者の遺伝子型、患者のベースラインHCVウィルス量、患者の自己識別された民族性、および、ベースライン線維症に関する患者のMETAVIRスコアよりなり、ここでロジスティック回帰モデルは下記:
【数1】

【0033】
(式中、
P:SVRを達成する確率;
G:rs12979860遺伝子型:TT=0、CT=1、CC=2;
V:ベースラインウィルス負荷:≧600,000IU/ml=0、<600,000IU/mL=1;
E:民族性:アフリカ系=0、白人=1;および、
F:ベースライン線維症:METAVIR F3−4=0、F0−2=1)である。
【0034】
なお更なる実施形態において、本発明は急性HCV感染を有すると診断された個体を治療する方法を提供する。本方法はrs12979860における個体の遺伝子型を得ること、および、得られた遺伝子型に基づいて治療を決定することを含む。遺伝子型がホモ接合Tである場合、治療決定は患者に対して抗ウィルス療法を開始することである。遺伝子型がヘテロ接合Cまたはホモ接合Cである場合は、治療決定は患者が慢性HCV感染を有すると診断されるまで抗ウィルス療法を見合わせることである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】HCV遺伝子型1に慢性的に感染しており、ペグインターフェロンアルファ−2/リバビリン複合療法により治療されている白人、アフリカ系アメリカ人およびヒスパニックの患者の複合群における持続ウィルス応答(SVR)の有意な決定要因に関する単一マーカー遺伝子型トレンド試験の結果を示す。上および中央のグラフはそれぞれゲノムワイドおよび染色体19の分析から得られた全ての遺伝子型決定されたSNP(Y軸)のp値を示し、赤色の垂直の線はSVRとのゲノムワイドの有意な関連性を示すSNPを示し、赤色の矢印はrs12979860SNPを示す。下のグラフは垂直バーにより示される染色体19上の知られた遺伝子の位置を示し、幾つかの遺伝子は名称により識別され、IL−28B遺伝子の位置は青色の矢印により示す。より詳細には実施例に記載する。
【図2】rs12979860多型部位(T/T、T/CまたはC/C)における遺伝子型(Y軸)とHCV遺伝子型1に慢性的に感染しており、ペグインターフェロンアルファ/リバビリン複合療法により治療されている異なる患者群においてSVRを達成した各遺伝子型を有する患者のパーセンテージ(X軸および円グラフ)の間の関連性を説明している。より詳細には実施例に記載する。
【図3】多様な民族群における持続ウィルス応答(SVR)の率およびrs12979860C対立遺伝子頻度を示し、白人、ヒスパニックおよびアフリカ系アメリカ人におけるSVR率は本明細書の実施例に記載した2つの臨床試験から得たものであり、東アジア人におけるSVR率はLiu,C.H.らのC型肝炎ウィルス遺伝子型1感染を有する治療未経験のアジア人患者に対するペグ化インターフェロン−アルファ−2a+リバビリン:多施設無作為化コントロール治験、Clin Infect Dis 47,1260−9(2008)から採用した。より詳細には実施例に記載する。
【図4】ヒト前駆体インターロイキン28B(IFN−ラムダ3)に関するレファレンスアミノ酸配列:196アミノ酸NCBIレファレンス配列NP_742151.2、GI:28144901(配列番号10)を示し、予測されるシグナルペプチドは下線を付し、2009年6月15日時点でのNCBI SNPデータベースにおいて報告されている変異体アミノ酸位置の所在箇所はレファレンス配列において太字で示し、変異体対立遺伝子のアイデンティティーは変異体アミノ酸位置の下の太字で示す。
【図5】図5は、293T細胞中におけるmycタグ付けされたコンストラクトとして発現される場合に、IFN−λ3 Lys70アイソフォームに比較してIFN−λ3 Arg70アイソフォームの分泌が少ないことを示し、図5Aは記載された発現コンストラクトを用いたトランスフェクションの後48時間における上澄み中に存在する全タンパク質のクマシーブルー染色ゲルを示し、図5Bは抗myc抗体でプローブした2連のゲルのウエスタンブロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
I.定義
本発明を更に容易に理解するために、特定の技術的および科学的な用語を以下の通り具体的に定義する。本明細書中で別途特段に定義しない限り、本明細書において使用する全ての他の技術的および科学的な用語は、本明細書において使用する場合と同様の内容において使用される場合に本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解される意味を有する。
【0037】
本明細書においては、添付請求項も含めて、「a」「an」および「the」などの単数標記は、内容から別様に明示されない限り、相当する複数標記を包含する。
【0038】
「約」とは、数的に定義されたパラメーター、例えば本明細書において考察する治療薬の用量、または治療時間の長さを修飾するために使用される場合、そのパラメーターがそのパラメーターの記載された数値の上下10%まで変動してよいことを意味する。例えば、HCV患者の治療において使用されるPegIntron(登録商標)(ペグインターフェロンアルファ−2b)約1.5μg/kgの用量は、1.30μg/kgおよび1.65μg/kgの間で変動できる。
【0039】
「対立遺伝子」とはこの特定のヌクレオチド配列により他の型から区別される遺伝子または他の遺伝子座の特定の型であり、対立遺伝子という用語はまた、多型部位において観察される代替の多型(例えばSNP)の1つを包含する。
【0040】
「有益な結果」とは、IFN−αを用いた治療の所望の臨床的結果を意味し、例えば1つ以上の疾患症状の軽減、疾患の範囲の減衰(例えばウィルス量の低減)、疾患の安定化された(即ち悪化していない)状態、疾患の進行の緩徐化、疾患状態の緩解または緩和、生存の延長(治療しない場合に予測される生存と比較して)、回帰のない生存、軽快(部分的または勧善のいずれも)および治癒(即ち疾患の排除)を包含するが、これらに限定されない。
【0041】
「〜より本質的になる(consists essentially of)」、または「〜より本質的になる(consist essentially of)」または「〜より本質的になっている(consisting essentially of)」などの変化形表現は、明細書および請求項を通じて使用する場合、いずれかの言及された要素または要素の群を含むこと、および、、言及された要素と性質が同じか異なる他の要素であって、特定された投薬レジメン、方法または組成物の基本的または新規な特性を物質的に変化させないものを含んでいてもよいことを指す。
【0042】
「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳類」とは、請求項に記載した組成物および方法のいずれかが必要とされるか、または有益である可能性があるいずれかの対象、特に哺乳類対象を意味する。好ましい実施形態においては、個体はヒトである。より好ましい実施形態においては、個体は成人ヒト、即ち少なくとも18歳である。
【0043】
「IFN−α応答」とは、IFN−αを用いた治療の所望の臨床的結果を意味し、例えば1つ以上の疾患症状の軽減、疾患の範囲の減衰、疾患の安定化された(即ち悪化していない)状態、疾患の進行の緩徐化、疾患状態の緩解または緩和、(治療しない場合に予測される生存と比較した)生存の延長、無再発の生存、軽快(部分的または完全のいずれも)および治癒(即ち疾患の排除)を包含するが、これらに限定されない。
【0044】
「IFN−α治療未経験」とは、いずれかの実験的または認可されたIFN−α薬剤製品を包含するいずれかのIFN−αを用いて以前に治療されたことのない、本明細書に記載する実施形態のいずれかに従って治療または試験されるべき個体または患者を意味する。
【0045】
「インターフェロン−ラムダ3」または「IFN−λ3」とは、配列番号10(図4における近接アミノ酸)のアミノ酸23〜196を含むポリペプチドを意味し、図4に示す変異体位置の1つ以上におけるレファレンスアミノ酸が変異体アミノ酸で置換されている配列番号10の天然に存在する対立遺伝子変異体を包含する。IFN−λ3 Lys70ポリペプチドは図3のアミノ酸位置70においてリジンを有するIFN−λ3アイソフォームであり、IFN−λ3 Arg70ポリペプチドは図4のアミノ酸位置70においてアルギニンを有するIFN−λ3アイソフォームである。本明細書に記載した治療用組成物および方法の関連において、「IFN−λ3 Lys70ポリペプチド」という用語は、アミノ酸骨格が他の分子に共有結合することにより望ましい特性1つ以上、例えばより長いインビボの半減期または低減された免疫原性を与える、その誘導体を包含する。本発明において有用なIFN−λ3 Lys70ポリペプチド誘導体の非限定的な例は、グリコシル化誘導体、ペグ化誘導体、およびIFN−λ3 Lys70ポリペプチドと非インターフェロンタンパク質、例えばヒト血清アルブミンまたはIgGの間の融合物である。本明細書に記載した治療用組成物および方法の関連において、「IFN−λ3 Lys70ポリペプチド」という用語はまた、米国特許第7,517,961号に記載されているように、単一のジスルフィド結合パターンを有するIFN−λ3 Lys70組成物の組み換え製造が容易になるように別のアミノ酸で配列番号10の7つのシステイン残基の1つ以上が置き換えられているシステイン突然変異体も包含する。好ましいシステイン突然変異体はセリン、アラニン、スレオニン、バリンまたはアスパラギンによる配列番号10の2つ目または3つ目のCys残基の置き換えを包含する。
【0046】
「IFN−λ3 Lys70医薬組成物」とは、製薬上許容し得る担体、希釈剤または賦形剤および(1)IFN−λ3 Lys30ポリペプチドまたは(2)ヒト組織少なくとも1つにおいてIFN−λ3 Lys70ポリペプチドの発現を駆動することができるプロモーター配列に作動可能に連結したIFN−λ3 Lys70ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターのいずれかを意味する。好ましい実施形態においては、ヒト組織は肝臓である。
【0047】
「単離された」とは、典型的には、生物学的分子、例えばRNA、DNA、オリゴヌクレオチド、またはタンパク質の精製状態を反映するために使用され、その関連において、分子が他の生物学的分子、例えば核酸、タンパク質、脂質、炭水化物、または他の物質、例えば細胞破砕片および生育培地を実質的に伴っていないことを意味する。一般的に、「単離された」という用語は、他の生物学的分子または物質の完全な非存在、または、水、緩衝物質、または塩の非存在を、それらが本発明の方法を実質的に妨害する量で存在しない限り、指すことを意図していない。
【0048】
「遺伝子座」とは遺伝子、物理的特徴、例えば多型部位、または表現型の特徴に相当する染色体またはDNA分子の所在箇所を指す。
【0049】
「ヌクレオチド対」とは、個体の染色体の2コピー上の多型部位において観察される2ヌクレオチド(同じかまたは異なっていてよい)のセットである。
【0050】
「オリゴヌクレオチド」とは通常は5〜100連続塩基長、より頻繁には10〜50、10〜40、10〜30、10〜25、10〜20、15〜50、15〜40、15〜30、15〜25、15〜20、20〜50、20〜40、20〜30または20〜25近接塩基長である核酸を指す。オリゴヌクレオチドの配列は遺伝子座の対立遺伝子型のいずれかに特異的にハイブリダイズするように設計することができ;そのようなオリゴヌクレオチドは対立遺伝子特異的プローブと称する。遺伝子座がSNPを含むPSである場合、そのSNPに対する相補対立遺伝子は対立遺伝子特異的プローブ内のいずれかの位置に生じることができる。本発明を実施する場合に有用な他のオリゴヌクレオチドはPSから1〜約10ヌクレオチド、好ましくは約5ヌクレオチドに所在するその3’末端で、PSに隣接する標的領域に特異的にハイブリダイズする。PSに隣接してハイブリダイズするこのようなオリゴヌクレオチドはポリメラーゼ媒介プライマー伸長法において有用であり、本明細書においては「プライマー伸長オリゴヌクレオチド」と称する。好ましい実施形態においては、プライマー伸長オリゴヌクレオチドの3末端は、PSに直接隣接して所在するヌクレオチドに対して相補的なデオキシヌクレオチドである。
【0051】
「非経腸投与」とは静脈内、皮下、または筋肉内注射を意味する。
【0052】
「製薬上許容し得る」とはヒトに投与された場合に、「一般的に安全であると見なされる」、例えば生理学的に耐容性があり、典型的にはアレルギーまたは同様の良くない反応、例えば胃の不調などをもたらさない化合物および組成物を指す。別の実施形態においては、この用語は連邦または州の政府の規制当局により認可されるか、または、合衆国薬局方、または動物における、更に特定すればヒトにおける使用のための他の一般的に認識されている薬局方に掲載されている、化合物および組成物を指す。
【0053】
「多型部位」または「PS」とは、多型、例えば1塩基多型(SNP)、制限断片長多型(RFLP)、縦列反復配列多型(VNTR)、ジヌクレオチドリピート、トリヌクレオチドリピート、テトラヌクレオチドリピート、単純配列リピート、挿入エレメント、例えばAlu、およびヌクレオチド1つ以上の欠失または挿入が観察される遺伝子座または遺伝子中の位置を指す。PSは通常は目的の集団における高度に保存された配列に先行され、後続され、このため、PSの所在箇所は典型的には、SNPの場合には一般的に「SNPコンテクスト配列」と称されるPSを包囲する30〜60ヌクレオチドのコンセンサス核酸配列に関するものとなる。PSの所在箇所はまたタンパク質翻訳の開始コドン(ATG)に対して相対的なコンセンサスまたはレファレンス配列におけるその位置により識別してもよい。当業者の知る通り、特定のPSの所在箇所は、目的の集団における各個体におけるレファレンスまたはコンテクスト配列における厳密に同じ位置に生じない場合もあるが、これはコンセンサスまたはレファレンス配列と比較した場合に、その個体における挿入または欠失1つ以上の存在のためである。更にまた、検出すべきPSにおける代替対立遺伝子のアイデンティティーおよびPSが生じているレファレンス配列またはコンテクスト配列の一方または両方を当業者が利用可能である場合には、対象者の多型部位における代替対立遺伝子を検出するために、強力、特異的且つ正確な試験法を設計することは、当業者にとって慣用手法である。したがって、当業者は、レファレンスまたはコンテクスト配列における特定の位置を基準として(またはそのような配列における開始コドンに対して)本明細書に記載したいずれかのPSの所在箇所を特定するのは単に簡便のためであることを理解し、また、特定的に数値化されたヌクレオチド位置は、本明細書に記載した遺伝子型決定方法または当分野で周知の他の遺伝子型決定方法を用いて本発明の遺伝子マーカーの存在または非存在に関して試験される個体において、同じPSが実際に所在している同じ遺伝子座における何れのヌクレオチド位置も、文言上包含することを理解するであろう。
【0054】
「治療する」または「治療している」とは、治療薬を必要としている個体に内用または外用において本明細書に記載したインターフェロンアルファタンパク質のいずれかを含有する組成物のような治療薬を投与することを意味する。薬剤を必要としている個体は、薬剤を用いた治療に対して感受性の状態または障害を有するか、発症する危険性を有すると診断されている個体、並びに、第1の治療薬を用いた治療の副作用であって第2の治療薬によって緩和され得る副作用を1つ以上を有するか、発症する危険性を有する個体を包含する。典型的には、治療薬は、有益な結果1つ以上をもたらすために有効な量を意味する治療有効量において投与される。特定の薬剤の治療有効量は治療すべき患者の疾患状態、年齢および体重、および患者の重症度、例えば治療薬に応答する能力のような要因に応じて変動する場合がある。有益な結果、または臨床的な結果が達成されているかどうかは、標的となる疾患、症状または有害作用の存在、重症度、または進行状態を評価するために医師または医療関係者により典型的に使用されているいずれかの臨床計測により評価することができる。典型的には、薬剤の治療有効量はベースライン状態よりも、または、治療しない場合に予測される状態よりも、少なくとも5%、通常は少なくとも10%、より通常は少なくとも20%、最も通常は少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも60%、理想的には少なくとも70%、より理想的には少なくとも80%、最も理想的には少なくとも90%、該当する臨床計測値における改善をもたらすものである。本発明の実施形態(例えば治療方法または製造物品)はあらゆる患者において所望の臨床上の利益または結果を達成しなくてよいが、当分野で知られたいずれかの統計学的検定、例えばスチューデントのt検定、カイ二乗検定、Mann−WhitneyのU検定、Kruskal−Wallis検定(H検定)、Jonckheere−Terpstra検定およびWilcoxon検定により測定した場合に患者の統計学的に有意な数においてはそうあるべきである。
【0055】
慢性HCV感染を治療することの関連における「ウィルス量」とは、患者の血清中のHCVのRNAの量を意味する(当分野および本明細書においては、血清中HCV RNAおよびHCVウィルス量とも称する)。ウィルス量は好ましくは、定量的RT−PCR試験、例えば本明細書における実施例のセクションにおいて記載する試験、または異なる方法論を用いているが等価または同様の結果を与えるものとして当分野で一般的に受け入れられているいずれかの他の試験を用いながら計測される。より好ましくは、個体のHCVウィルス量を計測するために使用されるRT−PCR試験は約29国際単位/ml(IU/ml)以下の定量下限(LLQ)を有する。ベースラインにおける、抗ウィルス療法を用いた治療の間の種々の時点における患者のHCVウィルス量を定量することは、本明細書に定義する通り高いベースラインウィルス量を患者が有するかどうかを分類するため、本明細書に記載したウィルス応答表現型のいずれか1つを包含するウィルス応答表現型に患者を割り付けるために、有用である。
【0056】
「ベースラインウィルス量」とは1つ以上の抗ウィルス剤を用いた療法の開始前の血清中HCV RNAレベルを意味する。「高ベースラインウィルス量」とは治療困難な慢性HCVウィルス感染を有すると患者を分類する場合の当分野において一般的に理解されているHCV RNAの量を意味する。間接的ペグインターフェロンアルファ/リバビリン療法の関連において治療が困難と患者を分類するために使用されている2つのベースラインウィルス量値は>600,000IU/mlおよび>800,000IU/mlである。近年、治療が困難であると患者を分類するために使用されるウィルス量は>400,000IU/mlである。
【0057】
「検出不能なHCV RNA」とは約10IU/ml以下の検出下限(LLD)を有するRT−PCR試験、または、異なる方法論を用いているが等価または同様の結果を与えるものとして当分野で一般的に受け入れられているいずれかの他の試験を用いた場合にHCV RNAが検出されないことを意味する。
【0058】
慢性HCV感染を治療することの関連における「ウィルス応答」とは、抗ウィルス療法の開始後の血清中HCV RNAのレベルの低減を意味する。
【0059】
一部の実施形態においては、抗ウィルス療法はインターフェロンアルファを含む。他の実施形態において、療法はインターフェロンアルファおよび1つ以上の追加的な抗ウィルス剤を含む。インターフェロンアルファを包含する複合療法は当分野ではしばしばインターフェロンアルファ系療法と称される。他の実施形態において、計測すべきウィルス応答はインターフェロンアルファを包含しない抗ウィルス療法への応答である。好ましいウィルス応答表現型は急速ウィルス応答(RVR)、早期ウィルス応答(EVR)、治療終了時応答(ETR)、持続ウィルス応答(SVR)、緩徐応答、ゼロ応答、非応答(NR)および回帰である。これらの応答表現型の定義および評価時点は以下に記載する。一部の実施形態においては、HCV治療は、間接的抗ウィルス療法、例えば複合ペグインターフェロンアルファ/リバビリン療法のリードイン期間、およびそれに続く直接抗ウィルス療法を含むが、本明細書において「直接抗ウィルス療法」は、この治療法が、HCVプロテアーゼ阻害剤のような直接的抗ウィルス剤の少なくとも1つの投与を含むことを意味し、この治療法はペグ化インターフェロンおよびリバビリンのような間接的抗ウィルス剤の1つ以上とくみあわせられてもよい。そのような多相治療レジメンにおいて、以下に記載するウィルス応答時点はリードイン治療期間を包含せず;むしろ、それらは直接抗ウィルス療法の治療期間を指す。
【0060】
「急速ウィルス応答」即ち「RVR」とは、例えばペグ化インターフェロンアルファおよびリバビリンを含む間接抗ウィルス複合療法の関連においては、治療4週間の終了時の検出不可能な血清中HCV RNAを意味する。
【0061】
「早期ウィルス応答」即ち「EVR」とは、抗ウィルス療法12週間の終了時に≧2logの血清中HCV RNAの低減を意味し、「完全EVR」とは抗ウィルス療法12週間の終了時の検出不可能な血清中HCV RNAを意味する。
【0062】
「治療終了時応答」即ち「ETR」とは、抗ウィルス療法の完結時、好ましくは本明細書に記載する治療レジメンのいずれかの完結時、または規制当局により認可された処方情報において推奨されるいずれかの治療レジメンの完結時における検出不可能な血清中HCV RNAを意味する。ETR時点の非限定的な例は12、16、24、36および48週である。
【0063】
「持続ウィルス応答」即ち「SVR」とは抗ウィルス療法の完結時、および抗ウィルス療法の終了後最大24週における検出不可能な血清中HCV RNAを意味する。一部の実施形態においては、SVRは抗ウィルス療法終了後12週において計測される。SVRはまたDr.Steven L.Flamm、Journal of the American Medical Association、Vol.289,No.18,pp.2413〜2417(2003)に記載されている。
【0064】
「緩徐応答」とは、ペグ化インターフェロンアルファ/リバビリン複合療法の関連においては、抗ウィルス療法12週間の終了時における≧2logの低減であるがなお検出可能な血清中HCV RNA、抗ウィルス療法24週間の終了時における検出不可能な血清中HCV RNAを意味する。
【0065】
「ゼロ応答」とは抗ウィルス療法4週間および12週間の終了時においてそれぞれ血清中HCV RNAの<1log低減、および/または、血清中HCV RNAの<2log低減を意味する。
【0066】
「非応答」即ち「NR」とは、抗ウィルス療法の最低12週間を通した検出可能なHCV RNAの存在を意味する。非応答表現型は典型的には、抗ウィルス療法の4週間の終了時、および、12週間の終了時に血清中HCV RNAが検出可能である場合に割り付けられる。
【0067】
「再発」とはETR後12週または24週の時点を含むがこれらに限定されない治療応答の終了(ETR)の後のいずれかのときにおける検出可能なHCV RNAの存在を意味する。
【0068】
II.本発明のIFN−α応答マーカーの有用性
本明細書に記載した応答マーカーの表現型作用は、種々の商業的用途、例えば限定しないが、これらのマーカー1つ以上の存在または非存在に基づいて選択された患者における治験中または以前に認可されたインターフェロンアルファ剤の臨床治験、これらの応答マーカーの少なくとも1つを有する患者を治療するためのインターフェロンアルファを含む医薬組成物および薬剤製品、診断方法、および、これらのマーカー1つ以上を患者が有するかどうかに基づいて患者の薬剤療法を個人専用化することを包含する薬理遺伝学的治療方法におけるこれらのマーカーの使用を支援する。
【0069】
ここに主張した商業的用途のいずれの有用性も、本発明の遺伝子マーカーの存在とインターフェロンアルファへの所望の応答の発生との間の相関がインターフェロンアルファを受容する個体の100%において観察されることを必要とするわけではなく;また、診断方法またはキットがあらゆる個人において応答マーカーの存在または非存在の測定における特定の程度の特異性または感度を有することを必要とするわけではなく、また、インターフェロンアルファへの有益な応答を個人が有している可能性があるかどうかをあらゆる個体に対して予測する場合にここに主張した診断方法が100%正確であることを必要とするわけではない。したがって、本発明者らは本明細書において、「測定する」、「測定すること」および「予測すること」という用語は決定的または特定の結果を必要とすると解釈すべきではなく;むしろこれらの用語は主張した方法が個人の大部分において正確な結果をもたらすこと、または、いずれかの所定の個人に対する結果または予測が不正確ではなく正確である可能性がより高いことを意味しているものととらえるべきであることを意図している。
【0070】
好ましくは、本発明の診断方法により与えられる結果の正確度は方法が使用される特定の用途に対して当業者または規制当局が適当であると考えるものである。同様に、主張する薬剤製品および治療方法の有用性はあらゆる個人において主張または所望される作用をそれらがもたらすことを必要とせず;必要であることは、臨床医が全ての適応可能な基準に合致した自身の専門的判断を適用する際に、主張された方法に従って、または主張された薬剤製品を用いて所定の個人を治療することの主張された作用を達成できる機会は治療または薬剤製品を処方することを保証するために十分高いものであることを決定することのみである。
【0071】
A.本発明のIFN−α応答マーカーに関する試験
IFN−α応答マーカーの存在または非存在は当分野で一般的に使用されている遺伝子型決定手法の種々のもののいずれかにより検出してよい。典型的には、そのような遺伝子型決定手法は目的のPSを含有するか、それに隣接している領域に相補であるオリゴヌクレオチド1つ以上を使用する。目的の特定のPSを遺伝子型決定するために使用されるオリゴヌクレオチドの配列は典型的にはPSに関するコンテクスト配列に基づいて設計される。
【0072】
表1に示す多型部位のいずれかの特定の個人における所在箇所は、目的のPSを包囲するレファレンスのコーディングまたはゲノムのDNA配列の中、または、以下の表2に記載するコンテクスト配列またはそれらの相補配列の1つの中の、目的のPSの所在箇所に相当する。表1のPSを遺伝子型決定するためのオリゴヌクレオチドを設計する場合に有用なより長いコンテクスト配列は2009年5月19日時点のNCBIのSNPデータベースに掲載されているコンテクスト配列である。IFN−λ3に関するレファレンスコーディングおよびアミノ酸配列は2009年5月19日時点のNCBIのヌクレオチドデータベース中のゲンバンクアクセッション番号AY129149(バージョンY129149.1、GI:25527104)に示されるものである。
【表2】

【0073】
当分野で周知の通り、特定のPSを含有している核酸試料は相補2本鎖分子である場合があり、このためセンス鎖上の特定の部位に言及する場合は、それは同時に相補アンチセンス鎖上の相当する部位を指すことになる。同様に染色体の一方の鎖の両方のコピーの上のPSに関して得られた特定の遺伝子型への言及は、もう一方の鎖の両方のコピーの上の同じPSに関して得られた相補遺伝子型に等しい。したがって、IL28B遺伝子に関するコーディング鎖上のrs8103142PSに関するA/A遺伝子型は、非コーディング鎖上のそのPSに関するT/T遺伝子型に等しい。
【0074】
本明細書に記載したコンテクスト配列並びにその相補配列は、個人が表1に示す良好応答対立遺伝子に関してヘテロ接合であるかホモ接合であるかを決定可能とする当分野で周知の種々の方法のいずれかを用いながら目的のヒト対象から得られた核酸試料中の表1の多型部位を遺伝子型決定するためのプローブおよびプライマーを設計するために使用してよい。そのような方法において利用される核酸分子は一般的にRNA、ゲノムDNA、またはRNAから誘導されたcDNAを包含する。
【0075】
典型的には、遺伝子型決定方法では、目的の多型部位1つ以上に存在するヌクレオチドまたはヌクレオチド対のアイデンティティーを測定するために個体から得られた生物学的試料から調製された核酸試料を試験することを含む。核酸試料は実質的に如何なる生物学的試料から調製してもよい。例えば好都合な試料は全血、血清、精液、唾液、涙液、糞便物質、尿、汗、口腔内物質、皮膚および体毛を包含する。体細胞は目的のPSに存在する両方の対立遺伝子のアイデンティティーの測定を可能にするため、好適である。
【0076】
核酸試料は当業者の知るいずれかの手法を用いながら分析用に調製してよい。好ましくは、そのような手法は核酸分子中の所望の多型部位に関する遺伝子型を測定するために十分純粋であるゲノムDNAの単離をもたらす。その測定の感度および特異性を増強するためには、遺伝子型決定するべきPSを含有する標的領域を核酸試料から増幅することが望ましい場合が多い。核酸の単離および増幅の手法は、例えばSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory,New York)(2001)に記載されている。
【0077】
当業者の知るいずれかの増幅手法、例えば限定しないがポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の手法を、本発明を実施する場合に使用してよい。PCRは当業者の知る材料および方法を用いながら実施してよい(例えば一般的にPCR Technology:Princzals and Applications for DNA Amplification(編集H.A.Erlich,Freeman Press,NY,N.Y.,1992);PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(編集Innisら、Academic Press,San Diego,Calif.,1990);Matillaら、Nucleic Acids Res.19:4967(1991);Eckertら、PCR Methods and Applications 1:17(1991);PCR(編集McPhersonら、IRL Press,Oxford);および米国特許第4,683,202号を参照できる。他の適当な増幅方法はリガーゼ連鎖反応(LCR)(Wu and Wallace,Genomics 4:560(1989)およびLandegrenら、Science 241:1077(1988)参照)、転写増幅(Kwohら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173(1989)),自己持続配列複製(Guatelliら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 87:1874(1990));等温法(Walkerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:392−6(1992));および核酸系配列増幅(NASBA)を包含する。
【0078】
増幅された標的領域は標的領域におけるPSに存在する対立遺伝子の少なくとも1つのアイデンティティーを測定するために試験される。遺伝子座の両方の対立遺伝子が増幅された標的において示される場合は、当業者のよく知る通り、そのPSにおいてホモ接合である個人においては1つのみの対立遺伝子が検出されることになり、個体がそのPSに関してヘテロ接合である場合は2つの異なる対立遺伝子が検出されることになる。
【0079】
対立遺伝子のアイデンティティーはポジ型識別として知られている通り直接、またはネガティブ識別と称される干渉により、識別してよい。例えばレファレンス集団においてSNPがグアニンまたはシトシンとわかっている場合、PSは、その部位においてホモ接合である個人に関してはグアニンまたはシトシンのいずれか、或いは個人がその部位においてヘテロ接合である場合はグアニンおよびシトシンの両方であるとポジティブに決定してよい。或いは、PSはグアニンではないか(このためシトシン/シトシンである)またはシトシンではない(このためグアニン/グアニンである)とネガティブに決定してよい。
【0080】
個人から得られた核酸試料中のPSにおける対立遺伝子または対立遺伝子対(例えばSNPの場合は2ヌクレオチド)を識別することは、当分野で知られたいずれかの手法を用いながら行ってよい。好ましい手法は試料の取り扱いを最小限にしつつ多数のPSの急速で正確な試験を可能にする。適当な手法の一部の例は限定しないが、増幅された標的領域の直接DNA配列決定、キャピラリー電気泳動、対立遺伝子特異的プローブのハイブリダイゼーション、1本鎖コンホーメーション多型分析、変性勾配ゲル電気泳動、温度勾配電気泳動、ミスマッチ検出;核酸アレイ、プライマー特異的伸長、タンパク質検出、および他の当分野で周知の手法を包含する。例えばSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory,New York)(2001);Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons,New York)(1997);Oritaら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86,2766−2770(1989);Humphriesら、in MOLECULAR DIAGNOSIS OF GENETIC DISEASES,Elles編集、pp.321−340,1996;Wartellら、Nucl.Acids Res.18:2699−706(1990);Hsuら(1994)Carcinogenesis 15:1657−1662;Sheffieldら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:232−6(1989);Winterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA82:7575(1985);Myersら(1985)Nature 313:495;Rosenbaum and Reissner(1987)Biophys Chem.265:12753;Modrich,Ann.Rev.Genet.25:229−53(1991);米国特許第6,300,063号;米国特許第5,837,832号;米国特許第5,459,039号;およびHuSNP Mapping Assay,reagent kit and user manual,Affymetrix Part No.90094(Affymetrix,Santa Clara,CA)を参照できる。
【0081】
好ましい実施形態においては、PSにおける対立遺伝子のアイデンティティーはポリメラーゼ媒介プライマー伸長法を用いて決定される。そのような方法の幾つかが特許および科学文献に記載されており、「遺伝子ビット分析」法(WO92/15712)およびリガーゼ/ポリメラーゼ媒介遺伝子ビット分析(米国特許第5,679,524号)を包含する。関連の方法はWO91/02087、WO90/09455、WO95/17676および米国特許第5,302,509号および同第5,945,283号に開示されている。多型の相補物を含有する伸長されたプライマーは米国特許第5,605,798号に記載されている質量スペクトル分析により検出してよい。
【0082】
別のプライマー伸長法は対立遺伝子特異的PCRを使用する(Ruano,G.ら、Nucl.Acids Res.17:8392(1989);Ruano,G.ら、Nucl.Acids Res.19:6877−82(1991);WO93/22456;Turkiら、J.Gun.Invest.95:1635−41(1995))。更にまた、WO89/10414に記載の通り対立遺伝子特異的プライマーのセットを用いながら核酸の多数の領域を同時に増幅することにより多数のPSを検討してよい。
【0083】
多型を識別して分析するための更に別のプライマー伸長法は、付加された塩基の標識とプライマーの標識との間の蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)と組み合わせた蛍光標識されたプライマーの1塩基伸長(SBE)を利用している。典型的には、本方法は、Chenら、Proc.Nat.Acad.Sci.94:10756−61(1997)に記載のもののように、5−カルボキシフルオレセインで5’末端を標識された遺伝子座特異的オリゴヌクレオチドプライマーを使用している(FAM)。この標識されたプライマーは、3’末端が目的の多型部位に直接隣接するように設計されている。標識されたプライマーを遺伝子座にハイブリダイズし、標識されたプライマーの1塩基伸長を、デオキシリボヌクレオチドが存在しないことを除きダイターミネーター配列決定様式において蛍光標識されたデオキシリボヌクレオチド(ddNTP)を用いながら実施する。標識されたプライマーの波長における励起に応答した添加ddNTPの蛍光の増大が、添加ヌクレオチドのアイデンティティーを推定するために使用される。
【0084】
好ましい遺伝子型決定試験はApplied BiosystemsのTaqMan(登録商標)SNP遺伝子型決定試験、または概ね同じ信頼性、正確度および特異性を有する試験である。
【0085】
上記した方法の全てにおいて、いずれかのPSにおける対立遺伝子のアイデンティティーを検出するために設計された試験の正確度および特異性は典型的にはそのPSにおける対立遺伝子のアイデンティティーが既知であるDNA試料に対する試験を実施することにより有効化される。好ましくは、各々の可能な対立遺伝子を示す試料を有効化のプロセスに包含させる。常染色体およびX染色体上のもののような二倍体の遺伝子座に関しては、有効化の試料は典型的にはPSにおけるメジャー対立遺伝子に関してホモ接合である試料、PSにおけるマイナー対立遺伝子に関してホモ接合である試料、およびそのPSにおいてヘテロ接合である試料を包含することになる。これらの有効化試料は典型的にはまた、被験試料に対する試験を実施する場合の対照として包含される(即ちPSにおける対立遺伝子のアイデンティティーが未知である試料)。試験の特異性もまた、被験試料に関する試験結果を、異なる型の試験を用いて同じ試料に関して得られた結果と比較することにより、例えば目的のPSを含有すると考えられている増幅された標的領域の配列を決定すること、および、決定された配列を本明細書に記載したコンテクスト配列のような当分野で受け入れられているコンテクスト配列と比較することにより、確認してもよい。
【0086】
正しいゲノム位置が試験されていることを明確化するために必要なコンテクスト配列の長さは標的領域における配列の唯一性に応じて変動することになる(例えば他のゲノム領域に所在する高度に相同な配列1つ以上が存在する場合がある)。当業者であれば、いずれかのPSに関するコンテクスト配列の適切な長さは、公開されている配列データに対してコンテクスト配列をブラスティングするなどの知られた手法を用いながら容易に決定することができる。第1レベルの特異性を与える増幅された標的領域に関しては、既知試料中のPSの各側における約30〜60塩基のコンテクスト配列を調べることが、試験設計が目的のPSに関して特異的であることを確認するためには十分である。ときとして、有効化された試験は被験試料に関する明白な結果を与えることができない場合がある。これは通常は試料が不十分な純度または量のDNAを有している結果であり、明白な結果は通常は、DNA試料を再精製または再単離することにより、または、異なる型の試験を用いて試料を試験することにより得られる。
【0087】
更にまた、特定のIFN−α応答マーカーの存在または非存在を決定することを必要とする本明細書に記載した方法のいずれかを実施するに際しては、そのような決定は、患者が目的のマーカーを有するかどうかを決定するために患者の遺伝子組成に関する十分な情報を含有するデータレポジトリを調べることにより行ってよい。好ましくはデータレポジトリはどのIFN−α応答マーカーが個人において存在および非存在であるかを包含する。データレポジトリは個人の患者記録、医療データカード、コンピューターによりアクセスできるファイル(例えばフラットASCIIファイル)または適切な情報または遺伝子データを格納できる他の電子的または非電子的な媒体を包含する場合がある。本明細書においては、医療データカードはポータブルの格納デバイス、例えば磁気データカード、オンボードプロセシングユニットを有し、ドイツミュンヘンのシーメンスのような供給元により販売されているスマートカード、または、フラッシュメモリカードである。データレポジトリがコンピューターによりアクセス可能なファイルである場合、そのようなファイルは種々の媒体、例えばサーバー、クライアント、ハードディスク、CD、DVD、パーソナルデジタルアシスタント、例えばPalm Pilot、テープ、ジップディスク、コンピューターの内部ROM(リードオンリーメモリ)またはインターネットまたはワールドワイドウエブ上に所在してよい。コンピューターによりアクセス可能なファイルの格納のための他の媒体は当分野で周知である。
【0088】
本発明はまた、IFN−α応答マーカーに関して試験することは、表1に掲載したSNPのいずれかに関する良好応答対立遺伝子と高い連鎖不平行(LD)にある異なる遺伝子座において対立遺伝子、例えばヌクレオチドを個人が有するかどうかを決定することにより決定してよい。同じ染色体上の異なる遺伝子座における2つの特定の対立遺伝子は、ある遺伝子座における対立遺伝子の1つの存在が他の遺伝子座における他の対立遺伝子の存在を予測する傾向を有していれば、LDにあるといえる。そのような変異体は、本明細書においては連結変異体、またはプロキシ変異体と称し、これは目的の良好応答対立遺伝子と高いLDにあるいずれかの型の変異体(例えばSNP、挿入または欠失)であってよい。
【0089】
連結変異体は表1のSNPのいずれかの良好応答対立遺伝子と染色体領域19q13.13または染色体19上の他所に所在する多型部位における候補連結対立遺伝子との間の連鎖不平衡(LD)の程度を測定することにより容易に識別される。候補連結変異体は現在知られている多型の対立遺伝子であってよい。他の候補連結変異体は多型を発見するための当分野で周知のいずれかの手法を用いて当業者が容易に識別してよい。
【0090】
表1の良好応答対立遺伝子と候補連結変異体との間のLDの程度は当分野で知られているいずれかのLD計測を用いて測定してよい。ゲノム領域におけるLDパターンは、いずれかの2つの対立遺伝子(例えば異なるPSにおけるヌクレオチドの間)が連鎖不平衡にあるかどうかを決定するための当分野で知られている種々の手法を用いて適切に選択された試料において経験的に容易に決定される(例えばGENETIC DATA ANALYSIS II,Weir,Sineuer Associates,Inc.Publishers,Sunderland,Ma 1996参照)。どのLD決定方法が特定の集団のサンプルサイズおよび遺伝子領域に最も適しているかは、当業者が容易に選択してよい。連鎖不平衡の最も頻繁に使用されている尺度の1つはrであり、これはDevlinら(Genornics,29(2):311−22(1995))の記載した式を用いて計算される。rは第1の遺伝子座における対立遺伝子Xが同じ染色体の第2の遺伝子座における対立遺伝子Yの存在をどの程度正しく予測するかの尺度である。尺度は予測が完璧である場合に1.0に到達するのみである(例えばYのときかつその場合に限りX)。
【0091】
好ましくは、連結変異体の遺伝子座は、表1のPSのいずれかに渡っている、約100キロ塩基、より好ましくは約10kbのゲノム領域にある。他の連結変異体は、良好応答対立遺伝子とのLDが、適当なレファレンス集団において計測した場合に、少なくとも0.75、より好ましくは少なくとも0.80、更に好ましくは少なくとも0.85、または少なくとも0.90、更に好ましくは少なくとも0.95、最も好ましくは1.0のr値を有するものである。このr計測のために使用されるレファレンス集団は、一般的な集団、IFN−αを用いている集団、IFN−αが薬効を示す特定の状態(例えば慢性HCV感染)と診断された集団、または白人、アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック、ラテン、ネイティブアメリカンなどのような同じ民族群に属するものとして所属メンバーが自己識別される集団、またはこれらの範疇のいずれかの組み合わせであってよい。好ましくは、レファレンス集団はIFN−αを用いて治療されるべき患者の集団の遺伝子多様性を反映する。
【0092】
一部の実施形態においては、医師は、患者が表1の多型部位の1つ以上において良好応答対立遺伝子少なくとも1つを有するかどうかを決定するために設計された診断試験をオーダーすることにより、患者が本明細書に記載したIFN−α応答マーカーを有するかどうかを決定する。好ましくは、試験は両方の対立遺伝子のアイデンティティー、即ちこのPSにおける遺伝子型を決定する。一部の実施形態においては、試験作業所は患者から得られた生物学的試料(例えば血液試料または口腔スワブ)から核酸試料を調製することになる。一部の実施形態においては患者由来の血液試料は医師または医師スタッフのメンバーにより、または、診断作業所の技術者により採取される。一部の実施形態においては、患者は自身の頬内部から口腔スワブを採取するためのキットを提供され、これを患者がその後、医師スタッフのメンバーに渡すか、診断作業所に直接送付する。
【0093】
一部の実施形態においては、試験所は試料を試験している個人のアイデンティティーを知らず;即ち、作業所により受領された試料は作業所に送付される前に何らかの態様において匿名化される。例えば試料は数字または何らかの別の記号(「試料ID」)により識別されるのみであってよく、診断方法の結果は試料IDを用いながら試験をオーダーした団体に報告されることができる。好ましい実施形態においては、個体のアイデンティティーと個体の試料との間の関連は個体のみ、または個体の医師のみが知っている。
【0094】
一部の実施形態においては、試験結果が得られた後、試験作業所は、良好応答対立遺伝子が遺伝子型決定された多型部位に存在するか存在しないかを示している、好ましくは、患者が良好応答対立遺伝子に関してヘテロ接合であるかホモ接合であるかを示している試験報告書を作成する。一部の実施形態においては、試験報告書は、試験作業所により作成され、ハードコピーとして、または電子メールを介して、患者または患者の医師に送付される書面である。他の実施形態において、試験報告書は、コンピュータープログラムにより作成され、医師のオフィスにおいてビデオモニター上に表示される。試験報告書はまた、患者、または患者の医師、または医師のオフィスの権限を与えられた従業員に直接試験結果を口頭で伝達することも含んでよい。同様に、試験報告書は患者のファイル中に医師が作成する試験結果の記録を含んでよい。
【0095】
1つの好ましい実施形態においては、患者が良好応答対立遺伝子に関してホモ接合である場合は、試験報告書は更にIFN−αを用いた治療に対する応答の可能性に関連する遺伝子マーカーに関して患者が陽性判定であることを示し、個人が良好応答対立遺伝子に関してヘテロ接合であるか、または、別の対立遺伝子に関してホモ接合である場合には、試験報告書は更にIFN−αを用いた治療に対する応答の可能性に関連する遺伝子マーカーに関して患者が陰性判定であることを示す。一部の実施形態においては、試験結果はIFN−αに対する有益な応答を達成することに関する確率評点を包含することになり、これは、該当する疾患の集団におけるIFN−α応答に関連する、種々の患者のパラメーター(例えば年齢、性別、体重、人種、IFN−αに関する他の薬理遺伝学的マーカーに関する試験結果)および疾患パラメーター(例えば疾患の重症度)を加重するモデルを実行することにより誘導される。各パラメーターに与えられる荷重は該当する疾患集団におけるIFN−αへの応答の個体間の変動性を説明する際の、他のパラメーターと相対比較した場合のその寄与度に基づく。医師はこの応答確率評点を、患者に対する療法または治療レジメンを選択する際の指針として使用してよい。例えば、慢性HVC感染については、SVRを達成することに関連する患者のパラメーターは人種を包含し、疾患パラメーターはHCV遺伝子型、ベースラインウィルス量、および線維症の程度を包含する。
【0096】
典型的には、個人はIFN−α療法の開始よりも前にIFN−α応答マーカーの存在に関して試験されるが、そのような試験はIFN−αの初回用量を個人に投与した後のいずれかのときに実施され得ることも意図している。例えば、治療している医師は、患者が十分に応答していないのではないかと懸念し、IFN−αを用いた継続治療が正当化されるかどうかを決定するために個体を試験することを望んでいる場合がある。一部の実施形態においては、医師は、IFN−α応答マーカーに関して個体を試験すべきか否かを決定してよい。例えば、医師はIFN−α応答マーカーに関して陽性判定である患者を適応症とする医薬製品を患者に対して処方するかどうか検討してよい。患者が検出可能な血清中HCV RNAを有し、肝移植を受けている実施形態においては、医師は患者に対する治療決定を支援するためにIFN−α応答マーカーに関して試験された移植肝に由来する生検試料を保有することを決定してよい。
【0097】
任意の患者を治療する場合にIFN−α応答マーカーの試験結果をどのように使用するかを決定する際には、医師はまた、他の該当する状況、例えば治療すべき疾患または状態、患者の年齢、体重、性別、遺伝子的背景および人種もまた考慮してよく、更にはこれらの要因と遺伝子マーカー試験の結果の組み合わせをその治療を用いた療法および/または治療レジメンを選択する場合の医師の指針となるモデルに入力することも包含する。
【0098】
表1の応答マーカーのいずれかの存在または非存在を検出することはこの目的のために特に設計されているキットを用いて実施してよい。1つの実施形態において、本発明のキットは表1のマーカー少なくとも1つにおけるPSにおける対立遺伝子の各々を識別するために設計されたオリゴヌクレオチドのセットを含み、好ましい実施形態においては、PSはrs12980275、rs28416813またはrs8103142である。別の実施形態においては、オリゴヌクレオチドのセットは表1におけるPSの2つ以上のいずれかの組み合わせにおける対立遺伝子を識別するために設計される。好ましい実施形態においては、PSの組み合わせは少なくともrs28416813PSおよびrs8103142PSを含む。別の好ましい実施形態においては、PSの組み合わせは表1における多型部位の各々を含む。
【0099】
一部の実施形態においては、キット中のオリゴヌクレオチドは対立遺伝子特異的プローブまたは対立遺伝子特異的プライマーのいずれかである。他の実施形態において、キットはプライマー伸長オリゴヌクレオチドを含む。更にその他の実施形態において、オリゴヌクレオチドのセットは対立遺伝子特異的プローブ、対立遺伝子特異的プライマーおよびプライマー伸長オリゴヌクレオチドの組み合わせである。キットはインターフェロンアルファへの応答に関連した他の遺伝子マーカーの存在を検出するために設計されたオリゴヌクレオチドを含んでよい。
【0100】
本発明のキット中のオリゴヌクレオチドはポリヌクレオチドの標的領域に特異的にハイブリダイズすることが可能でなければならない。本明細書においては、特異的ハイブリダイゼーションとは、オリゴヌクレオチドが特定のハイブリダイゼーション条件下に標的領域とアンチパラレルな2本鎖構造を形成するが、同じハイブリダイゼーション条件下でポリヌクレオチドと共にインキュベートした場合に非標的領域とはそのような構造を形成できないことを意味する。一部の実施形態においては標的領域は目的のPSを含有し、他の実施形態においては、標的領域はPSに1〜10ヌクレオチド隣接して所在する。
【0101】
キット中の各オリゴヌクレオチドの組成および長さはPSを含有するゲノム領域の性質並びにオリゴヌクレオチドを用いて実施されるべき試験の型に応じたものとなり、当業者が容易に決定できる。
【0102】
例えば試験において使用されるべきポリヌクレオチドは増幅産物を構成する場合があり、そのため、オリゴヌクレオチドの必要な特異性は、個体から単離したゲノムまたはcDNA中ではなくむしろ増幅産物中の標的領域へのハイブリダイゼーションに関するものである。別の例として、キットが2つ以上の多型部位を同時に遺伝子型決定するように設計されている場合、キット中の各PSに関するオリゴヌクレオチドの融点は典型的には狭い範囲内、好ましくは約5℃未満、より好ましくは約2℃未満にあることになる。
【0103】
一部の実施形態においてはキット中の各オリゴヌクレオチドはその標的領域の完全な相補体である。オリゴヌクレオチドは、分子の1つのあらゆるヌクレオチドが他の分子の相当する位置におけるヌクレオチドに相補である場合に、別の核酸分子の「完璧な」または「完全な」相補体であるといえる。完璧に相補なオリゴヌクレオチドが多型検出のためには好ましいが、完全な相補からの逸脱は、そのような逸脱が上記定義した標的領域に分子が特異的にハイブリダイズすることを妨げない場合には、意図される。例えば、オリゴヌクレオチドプライマーはその5’末端において非相補フラグメントを有してよく、プライマーの残余は標的領域に完全に相補である。或いは、非相補ヌクレオチドは、結果として生じるプローブまたはプライマーがなお標的領域に特異的にハイブリダイズできる限り、プローブまたはプライマー内に点在してもよい。
【0104】
一部の好ましい実施形態においては、キットにおける各オリゴヌクレオチドはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下にその標的領域に特異的にハイブリダイズする。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は配列依存的であり、状況に応じて変動する。一般的にストリンジェントな条件は所定のイオン強度およびpHにおいて特定の配列に関する熱融点(Tm)より約5℃低くなるように選択される。Tmは標的配列に相補なプローブの50%が平衡時に標的配列にハイブリダイズする温度(所定のイオン強度、pHおよび核酸濃度の下)である。標的配列は一般的に過剰に存在するため、Tmにおいてはプローブの50%が平衡時に占有される。
【0105】
典型的には、ストリンジェントな条件はpH7.0〜8.3における少なくとも約0.01〜1.0Mのナトリウムイオン濃度(または他の塩)の塩濃度を包含し、温度は短いオリゴヌクレオチドプローブ(例えば10〜50ヌクレオチド)の場合は少なくとも約25℃である。ストリンジェントな条件はまたホルムアミドのような脱安定化剤の添加によっても達成できる。例えば5xSSPE(750mM NaCl、50mM Naホスフェート、5mM EDTA、pH7.4)および25〜30℃の温度の条件は対立遺伝子特異的プローブハイブリダイゼーションのために適している。別のストリンジェントな条件はMolecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrookら、Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(1989),第7、9および11章、およびNUCLEIC ACID HYBRIDIZATION,A PRACTICAL APPROACH,Haymesら、IRL Press,Washington,D.C.,1985に記載されている。
【0106】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の1つの非限定的な例は、約65〜70℃における4×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中のハイブリダイゼーション(または代替として、42〜50℃における4×SSC+50%ホルムアルデヒド中のハイブリダイゼーション)と、その後の約65〜70℃における1×SSC中の1回以上の洗浄を包含する。高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の非限定的な例は、約65〜70℃における1×SSC中のハイブリダイゼーション(または代替として42〜50℃における1×SSC+50%ホルムアルデヒド中のハイブリダイゼーション)と、その後の約65〜70℃における0.3×SSC中の1回以上の洗浄を包含する。低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件の非限定的な例は、約50〜60℃における4×SSC中のハイブリダイゼーション(または代替として約40〜45℃における6×SSC+50%ホルムアルデヒド中のハイブリダイゼーション)と、その後の約50〜60℃における2×SSC中の1回以上の洗浄を包含する。中程度〜上記値、例えば65〜70℃、または42〜50℃の範囲を有するストリンジェンシー条件もまた本発明により包含されることを意図している。SSPE(1×SSPEは0.15M NaCl、10mM NaHPOおよび1.25mM EDTA、pH7.4)はハイブリダイゼーションおよび洗浄緩衝液においてSSC(1×SSCは0.15M NaClおよび15mMクエン酸ナトリウム)と置き換えることができ;洗浄はハイブリダイゼーション終了後、各々15分間実施する。
【0107】
50塩基対長未満であると予測されるハイブリッドに対するハイブリダイゼーション温度はハイブリッドの融点(T)よりも5〜10℃低いことが必要であり、ここでTmは以下の式に従って求める。18塩基対長未満のハイブリッドについては、T(℃)=2(A+T塩基の数)+4(G+C塩基の数)である。18〜49塩基対長のハイブリッドについては、T(℃)=81.5+16.6(log10[Na])+0.41(% G+C)−(600/N)であり、ここでNはハイブリッド内の塩基の数であり、[Na]はハイブリダイゼーション緩衝液中のナトリウムイオンの濃度である(1×SCCに関する[Na]=0.165M)。
【0108】
本発明のキット中のオリゴヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、および非環式のヌクレオチド誘導体、および他の機能的に等価な誘導体のいずれかのホスホリル化状態を含む場合がある。或いは、オリゴヌクレオチドはホスフェート非含有の骨格を有してよく、それはカルボキシメチル、アセトアミデート、カーバメート、ポリアミド(ペプチド核酸(PNA))などのような連結部を含む場合がある(Varma、MOLECULAR BIOLOGY AND BIOTEChNOLOGY、A COMPREHENSIVE DESK REFERENCE,Meyers編、pp.617〜20、VCH Publishers,Inc.,1995)。オリゴヌクレオチドは当分野で知られているいずれかの適当な方法論を用いた化学合成により調製してよく、または、例えば制限酵素消化により生物学的試料から誘導してよい。オリゴヌクレオチドは当分野で知られているいずれかの手法に従って検出可能な標識を含有してよく、例えば放射標識、蛍光標識、酵素標識、タンパク質、ハプテン、抗体、配列タグなどの使用を包含する。キット中のオリゴヌクレオチドは、分析対象特異的な試薬(ASR)として製造および販売されてよく、或いは、認可された診断装置の要素を構成してよい。
【0109】
一部の実施形態においては、キット中のオリゴヌクレオチドのセットは異なる標識を有することにより、2つ以上の多型部位における対立遺伝子のアイデンティティーの同時決定を可能とする。オリゴヌクレオチドはまた、マイクロチップ、シリカビーズ(例えばIllumina,San Diego,CAのBeadArrayの技術)またはスライドガラス(例えばWO98/20020およびWO98/20019参照)のような固体表面上に固定化されたオリゴヌクレオチドの秩序のあるアレイを含んでよい。そのような固定化されたオリゴヌクレオチドを含むキットは種々の多型検出試験、例えば限定しないがプローブハイブリダイゼーションおよびポリメラーゼ伸長試験を実施するために設計してよい。
【0110】
本発明のキットはまた、他の試薬、例えばハイブリダイゼーション緩衝液(例えばオリゴヌクレオチドが対立遺伝子特異的プローブとして使用される場合)またはジデオキシヌクレオチドトリホスフェート(ddNTP;例えば多型部位における対立遺伝子がプライマー伸長により検出される場合)を含有してよい。ポリメラーゼ媒介遺伝子型決定試験における使用のために設計されたキットはまた、ポリメラーゼおよび実施されるべきポリメラーゼ媒介試験のために最適化された反応緩衝液を含有してよい。
【0111】
本発明のキットはまた、いつ特異的ハイブリダイゼーションが起こったか、または特異的ポリメラーゼ媒介伸長が起こったかを検出するための試薬を包含してよい。そのような検出試薬は、ビオチンまたは蛍光タグ付きオリゴヌクレオチドまたはddNTPおよび/または酵素標識抗体および酵素による作用を受けた場合に検出可能なシグナルを発生する基質1つ以上を包含してよい。
【0112】
当業者が知る通り、試験を実施するためのオリゴヌクレオチドおよび試薬のセットは、生物学的または化学的な活性を温存し、試験における適切な使用を可能とするために、適宜、キット容器中に入れられた別個のレセプタクル中で提供されることになる。
【0113】
他の実施形態において、キット中のオリゴヌクレオチドおよび全ての他の試薬の各々は表1におけるPS1つ以上に関する遺伝子型を決定するために設計された試験における最適な性能に関して品質試験を受けている。一部の実施形態においては、キットは、応答マーカーの存在または非存在を試験された核酸試料に割り付けるためには、決定された遺伝子型をどのように使用すればよいかを記載した説明書を包含する。
【0114】
一部の好ましい実施形態においては、キット中のオリゴヌクレオチドのセットは対立遺伝子特異的なオリゴヌクレオチドである。本明細書においては、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)という用語は、十分にストリンジェントな条件下で、PSを含有する標的領域においてPSの一方の対立遺伝子に特異的にハイブリダイズするが、異なる対立遺伝子を含有する同じ領域にはハイブリダイズしないという能力を有するオリゴヌクレオチドを意味する。当業者の知る通り、対立遺伝子特異性は種々の容易に最適化されるストリンジェンシーの条件、例えば塩およびホルムアミドの濃度、並びにハイブリダイゼーションおよび洗浄の両方の工程の温度に依存することになる。
【0115】
ASOプローブおよびプライマーに対して典型的に使用されるハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件の例はKoganら、「Genetic Prediction of Hemophilia A」in PCR PROTOCOLS,A GUIDE TO METHODS AND APPLICATIONS,Academic Press,1990およびRuafloら、Proc.Nati.Acad.Sci.USA 87:6296−300(1990)に記載されている。
【0116】
典型的には、ASOは一方の対立遺伝子に対して完璧に相補でありつつ他方の対立遺伝子に対しては1ミスマッチを含有することになる。ASOプローブにおいて、1ミスマッチは好ましくは、それが標的領域における多型部位にアラインするため、オリゴヌクレオチドプローブの中央の位置内部にある(例えば概ね、15量体では7番目または8番目、16量体では8番目または9番目、20量体では10番目または11番目)。ASOプライマーにおける1ミスマッチは3’末端ヌクレオチドに、または好ましくは3’末端から2番目のヌクレオチドに所在する。コーディングおよび非コーディング鎖のいずれかにハイブリダイズするASOプローブおよびプライマーが本発明では意図される。
【0117】
一部の実施形態においては、キットは試験されるべき各PSに関する対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドの対を含み、対の一方のメンバーは一方の対立遺伝子(例えば良好応答対立遺伝子)に対して特異的であり、もう一方のメンバーは他の対立遺伝子に対して特異的である。そのような実施形態において、対中のオリゴヌクレオチドは、キットのユーザーが試験されたPSに関する遺伝子型を決定できるようにするために、異なる長さを有するか、異なる検出可能な標識を有してよい。
【0118】
更に他の好ましい実施形態において、キット中のオリゴヌクレオチドはプライマー伸長オリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドのいずれかからのポリメラーゼ媒介伸長のための終止ミックスはPSにおいて存在する代替のヌクレオチドに応じて、目的のPSかそれより1塩基後方において、オリゴヌクレオチドの伸長を終止させるように選択される。
【0119】
1つの実施形態において、キットは表1における多型部位の少なくとも1つを遺伝子型決定するための対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブの対を含む。1つの実施形態において、対の一方のASOプローブは表2に示すコンテクスト配列の良好応答対立遺伝子と同一であるか、これに完璧に相補である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み、対のもう一方のASOプローブは表2に示すコンテクスト配列の他の対立遺伝子と同一であるか、これに完璧に相補である少なくとも15ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む。1つの好ましい実施形態においては、キットはそのようなASOプローブをrs8103142およびrs8103142よりなる群から選択されるPS少なくとも1つを遺伝子型決定するために含んでいる。別の好ましい実施形態においては、キットはそのようなPSプローブをこれらのPSの両方を遺伝子型決定するために含んでいる。また別の実施形態において、キットはそのようなASOプローブを表1のPSの各々を遺伝子型決定するために含んでいる。
【0120】
B.医薬組成物、薬剤製品および治療レジメン
本明細書に記載した方法および製品のいずれかを用いて試験または治療されるべき個体はインターフェロンアルファを用いた治療を必要とするヒト対象である。一部の実施形態においては個体はインターフェロンアルファを用いた治療に感受性である疾患を有すると診断されているか、その症状を呈する。他の実施形態において、使用されるべきインターフェロンアルファ薬剤は個体が診断されている適応症を治療する場合の使用に関して認可されている。更に他の実施形態においては、使用されるべきインターフェロンアルファ薬剤は診断された疾患または呈された症状を治療するためには認可されていないが、処方する医師は薬剤が個体の治療に有用である場合があると考える。
【0121】
本発明の医薬組成物、薬剤製品および方法において使用されるIFN−αはヒトおよび多くの他の種において発現されるIFN−αタンパク質の多数のサブタイプのいずれかであってよい(Pestka,S.ら、Immunol.Reviews 202:8−32(2004);Diaz,M.O.ら、J.Interferon Cytokine Res 16:179−180(1996)。好ましい実施形態においてはIFN−αタンパク質は以下のヒトIFN−αサブタイプ:IFN−α1、IFN−α2、IFN−α4、IFN−α5、IFN−α6、IFN−α7、IFN−α8、IFN−α10、IFN−α13、IFN−α14、IFN−α16、IFN−α17、IFN−α21(Bekisz、J.ら、Growth Factors 22(4):243−351(2004))並びにこれらのサブタイプのいずれかの対立遺伝子変異体、例えばIFN−α2a、IFN−α2b、およびIFN−α2cの1つの成熟アミノ酸配列よりなるか、これらより本質的になる組み換え生産されたタンパク質である。ヒトIFN−αサブタイプは75〜99%のアミノ酸配列同一性および44位における欠失のために165a.a.を有するIFN−α2を除き166a.a.の成熟配列を共有している(Bekisz,J.ら、上出)。本発明における使用を意図する他の組み換えIFN−αタンパク質は、各位置において、種々のネイティブのIFN−αサブタイプにおけるその位置で最も共通して存在しているアミノ酸を選択することにより、アミノ酸配列が設計されているいずれかのコンセンサスIFN−αタンパク質を包含する。
【0122】
本発明の薬剤製品および方法における使用のために特に好ましいIFN−α組成物は政府規制当局により認可されているインターフェロンアルファ−2製品であり、これらに包含されるものは、Hoffmann La−Roche,Nutley N.J.により販売されているRoferon(登録商標)−A(インターフェロンアルファ2A、組み換え体)およびそのペグ化型、例えばHoffmann La−Roche,Nutley N.J.により販売されているPEGASYS(登録商標)(ペグインターフェロンアルファ−2a);Schering Corporation,Kenilworth,N.J.により販売されているINTRON(登録商標)A(インターフェロンアルファ−2b、組み換え体)およびそのペグ化型、例えばPegIntron(登録商標)(ペグインターフェロンアルファ−2b);(INFERGEN(登録商標)(インターフェロンアルファコン−1)、即ちAmgen,Thousand Oaks,CAで最初に開発され、現在はThree Rivers Pharmaceuticals,Warrendale,PAにより販売されているコンセンサスIFN−αである。本発明における使用のために意図される他のインターフェロンは、インターフェロンアルファと非インターフェロンタンパク質の間の融合物、例えばHuman Genome Sciences,Rockville,MDおよびNorvartis,Basel,Switzerlandにより開発中のAlbuferon(登録商標)(アルブインターフェロンアルファ−2b);Locteron、即ち研究用制御放出インターフェロンアルファ製剤(Biolex/OctoPlus);およびBelerofon(登録商標)、即ちNautilus Biotechにより作成された天然アルファインターフェロンの1アミノ酸変異体を包含する。上記の名称を有するIFN−α組成物のいずれも、例えばPegIntron(登録商標)ペグインターフェロンアルファ−2bと同じ組成であるVIRAFERONPEG(登録商標)ペグインターフェロンアルファ−2bのように、異なる商標名の下に販売されている場合がある。
【0123】
PEGASYS(登録商標)ペグインターフェロンアルファ−2bはインターフェロンアルファ−2b分子のリジン側鎖にアミド結合を介して1つの40kDaの分枝鎖PEG重合体の共有結合により得られ、例えばDhalluin,C.ら、Bioconjugate Chem.16:504−517(2005)および米国特許第7,201,897号を参照できる。得られる生成物は主に6モノペグ化位置異性体の混合物である(Dhalluin,C.,上出、Foser,S.ら、J.Prot.Exp.Purif.30:78−87[2003])。REGASYS(登録商標)(ペグインターフェロンアルファ−2a)およびそのバイオシミラーはまた、本明細書においては、bPEG40K−インターフェロンアルファ−2aとも称する。
【0124】
PegIntron(登録商標)インターフェロンアルファ−2bは100mMリン酸ナトリウム、pH6.5中の平均分子量12,000Da(SC−PEG12k)を有するスクシンイミジルカーボネートPEGに組み換えインターフェロンアルファ−2bを共有結合することにより得られる(例えばGrace,M.ら、J Interferon Cytokine Res.21:1103−1115(2001);Wang,Y.S.ら、Adv.Drug Delivery Rev.54:547−570(2000);および米国特許第5,951,974号参照)。得られた産物は主に、PEG12kがウレタン結合を介してインターフェロンアルファ−2bの異なる残基に結合したモノペグ化物質種とヒスチジン34においてウレタン結合を有する大部分は位置異性体との混合物である(例えばWang,Y.S.ら、上出および米国特許第5,951,974号参照)。PegIntron(登録商標)ペグインターフェロンアルファ−2bおよびそのバイオシミラーは本明細書においてはPEG12k−インターフェロンアルファ−2bとも称する。
【0125】
既にに認可されているか現在販売されている本発明における使用のために意図される他のIFN−α製品は、Berofor(登録商標)アルファ2(組み換えインターフェロンアルファ−2C,Boehringer Ingelheim Pharmaceutical,Inc.,Ridgefield,CT);インターフェロンアルファ−n1、即ち、Surniferon(登録商標)(Sumitomo,Japan)またはWellferon(登録商標)インターフェロンアルファ−n1(INS)、Glaxo−Wellcome Ltd.,London,Great Britainとして知られている天然のアルファインターフェロンの精製された混合物;米国特許第4,897,471号および同第4,695,623号(特にその実施例7、8または9)に記載のもののようなコンセンサスアルファインターフェロン;ALFERON N Injection(登録商標)[インターフェロンアルファ−n3(ヒト白血球誘導)、Hemispherx Biopharma,Inc.,Philadelphia,PAから入手できる天然のアルファインターフェロンの複数の種の混合物を包含する。
【0126】
本発明において有用な他のインターフェロンアルファ−重合体コンジュゲートは米国特許第4,766,106号、米国特許第4,917,888号、欧州特許出願第0236987号、欧州特許出願第0510356号、同第0593868号および同第0809996号および国際公開番号WO95/13090に記載されている。
【0127】
同様に本発明における使用のために意図されるものは、上記した販売されているペグ化インターフェロンアルファ製品、即ちPEGASYS(登録商標)(ペグインターフェロンアルファ−2a)およびPegIntron(登録商標)(ペグインターフェロンアルファ−2b)のいずれかの認可に関連して規制当局に以前に提出されている前臨床および/または臨床データに少なくとも部分的には信頼により基づいて規制当局から認可されるいずれかのペグ化インターフェロンアルファ2aまたは2bの医薬組成物である。そのような後に認可された製品は以前に認可された製品のジェネリック、生物同等性、バイオシミラー、または代替品のような用語において記載当局により説明される場合があり、このような用語は規制当局により明確に定義される場合またはされない場合がある。
【0128】
非経腸投与を意図されるペグ化インターフェロンアルファの医薬組成物は適当な緩衝物質、例えばTris−HCI、酢酸塩またはリン酸塩、例えば2塩基性リン酸ナトリウム/1塩基性リン酸ナトリウム緩衝液、および製薬上許容し得る賦形剤(例えばスクロース、トレハロース)、担体(例えばヒト血清アルブミン)、毒性剤(例えばNaCI)、保存料(例えばチメロソール、クレゾールまたはベニルアルコール)、および界面活性剤(例えばツイーンまたはポリソルベート)を用いながら、滅菌された注射用水中に製剤してよい。米国特許第6,180,096号および国際特許出願WO2006/020720を参照できる。このような組成物は2〜8℃の冷蔵下に、凍結乾燥粉末として保存し、使用前に滅菌水で再溶解してよい。そのような再溶解された水溶液は典型的には再溶解24時間以内は保存中安定であり、その間に使用される。例えば米国特許第4,492,537号;同第5,762,923号および同第5,766,582号を参照できる。凍結乾燥されたペグ化インターフェロン製剤は1つのコンパートメントに希釈剤(即ち滅菌水)を、別個のコンパートメントに凍結乾燥されたペグ化インターフェロンアルファ粉末を含有するガラスカートリッジを含むペンタイプのシリンジシステムにおいて提供してよい。
【0129】
水性ペグ化インターフェロン製剤の例は米国特許第5,762,923号に記載されている。そのような製剤は予め充填された多用量シリンジ、例えばインスリンのような薬品の送達のために有用なものの中で保存してよい。典型的な適当なシリンジはNovo Nordiskから入手可能なNOVOLET Novo Penのようなペンタイプシリンジに連結された予備充填バイアル、並びにユーザーによる簡単な自己注射を可能にする予備充填ペンタイプシリンジを含むシステムを包含する。
【0130】
本発明はまたインターフェロン応答を誘導することが提案されるtoll様受容体(TLR)アゴニストと組み合わせた上記インターフェロンアルファのいずれかの使用を意図する。例えば、TLR3、TLR7およびTLR9に対するアゴニストがHCVを治療する場合の使用に関して評価中である。
【0131】
本発明に従って治療してよい疾患および状態は、一般的にIFN−αを用いた治療に対して感受性であるものであり、即ち、IFN−αが疾患を有する患者の群において臨床的に計測可能な有益な結果、例えばHCV感染患者におけるウィルス量の低減を達成する場合である。IFN−αを用いた治療に対して感受性の疾患および状態の例は、限定しないが例えば細胞増殖障害により誘発される疾患、特にウィルス感染および癌を包含する。好ましくは、疾患はそれに対してIFN−αが合衆国食品医薬品局のような規制当局により認可されているものである。
【0132】
ウィルス感染は、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、他の非A/非B肝炎、ヘルペスウィルス、エプスタインバーウィルス(EBV)、サイトメガロウィルス(CMV)、単純疱疹、ヒトヘルペスウィルス6型、乳糖腫、ポックスウイルス、ピコルナウィルス、アデノウィルス、ライノウィルス、ヒトTリンパ親和性ウィルス1型および2型、ヒトロタウィルス、狂犬病、レトロウィルス、例えばヒト免疫不全ウィルス(HIV)、脳炎および呼吸器ウィルス感染を包含する。好ましい実施形態においては、ウィルス感染はHCVまたはHBVである。特に好ましい実施形態においては、ウィルス感染は慢性HCV感染である。
【0133】
好ましい実施形態においては本発明のIFN−α応答マーカーは慢性HBVまたは慢性HCV適応症に関して規制当局により認可されているいずれかのIFN−α単剤療法または複合療法の治療レジメンとの関連において、特に好ましい実施形態においては、Roferon(登録商標)−A(インターフェロンアルファ2A、組み換え体)、PEGASYS(登録商標)(ペグインターフェロンアルファ−2a)、INTRON(登録商標)A(インターフェロンアルファ−2b、組み換え体)およびPegIntron(登録商標)(ペグインターフェロンアルファ−2b)の製品の添付文書に記載されている慢性C型肝炎に対する投薬および治療レジメンのいずれかとの関連において、使用される。慢性HCV感染に対する認可された複合療法レジメンは典型的には、リバビリン、ヌクレオシド類縁体を、IFN−αタンパク質に追加して投与する。PegIntron(登録商標)(ペグインターフェロンアルファ−2b)製品に関しては、そのような認可された複合レジメンは、HCV遺伝子型2または3に慢性的に感染した患者に対しては24週間、HCV遺伝子型1に慢性的に感染した患者に対しては48週間までの療法を推奨しており、欧州では遺伝子型1感染を有する患者、および治療第4週でHCV−RNA陰性であり、治療第24週においてHCV−RNA陰性のまま存続している低ウィルス量(<600,000)患者のサブセットに対して24週間治療が認可されている。
【0134】
他の実施形態において、IFN−α応答マーカーはHCV遺伝子型1に感染している患者に対する複合インターフェロンアルファ/リバビリン療法を用いた治療の適切な継続期間を決定するためにウィルス応答試験との関連において使用される。ホモ接合IFN−α応答マーカーに関して陽性判定であり、治療第4週および12週の各々において検出不可能なHCV−RNAを有する患者は、12〜36週間、例えば12、18、24、30または36週の治療継続期間に関する候補となる。一部の好ましい実施形態においては、選択される治療継続期間はホモ接合IFN−α応答マーカーに関して陽性判定であり、治療第4週および12週の各々において検出不可能なHCV−RNAを有する高いベースラインウィルス量の遺伝子型1HCVに慢性的に感染している治療ナイーブな患者に対して、24週間である。特に好ましい実施形態においては、インターフェロンアルファはPEG化インターフェロンアルファ−2aまたは2bまたはアルブミン−インターフェロンアルファ−2aまたは2b融合タンパク質である。
【0135】
リバビリン以外のヌクレオシド類縁体を含むIFN−α系の複合レジメンもまた、IFN−α応答マーカーに関して陽性判定の個体におけるHCV感染を治療するために意図される。そのようなヌクレオシド類縁体の例は、リバビリン誘導体、例えばValeant Pharmaceuticals International(Aliso Viejo,CA)により開発中のタリバビリン(ビラミジンおよびICN3142としても知られている)および米国特許第6,403,564号および同第6,924,270号に記載されている化合物を包含する。
【0136】
本発明のIFN−α応答マーカーは追加的な抗ウィルス剤1つ以上と組み合わせたIFN−α系療法(リバビリンを使用または非使用)を用いた治療から最も利益を被ると考えられるHCVに慢性的に感染している患者を選択するためにも使用してよい。そのような複合治療レジメンにおいて有用な抗ウィルス剤の非限定的な例はHCVプロテアーゼ阻害剤、NS3プロテアーゼ阻害剤、HCVポリメラーゼ阻害剤、HCV NS5A阻害剤、IRES阻害剤、NS4B阻害剤、HCVヘリカーゼ阻害剤、HCVエントリー阻害剤、HCVビリオン生産阻害剤、および他のインターフェロンを包含する。
【0137】
1つの実施形態において、抗ウィルス剤はHCVプロテアーゼ阻害剤である。
【0138】
そのような複合レジメンにおいて有用なHCVプロテアーゼ阻害剤は公開国際出願WO2009/038663、WO2007/092616およびWO2002/18369および公開米国特許出願第2007/0042968号に記載されている。
【0139】
本発明の方法および複合療法において有用な他のHCVプロテアーゼ阻害剤はボセプレビル(SCH503034)およびSCH900518(Schering−Plough);テラプレビル(VX−950)、VX−500およびVX−813(Vertex Pharmaceuticals);MK−7009(Merck);およびITMN−191(R7227)(IntermuneおよびRoche);TMC−435(Medivir/Tibotec);MK−7009(Merck);GS−9132およびACH−1095(Gilead/Achillon);PHX1766(Phenomix);ABT−450HCV(Abbott/Enanta Pharmaceuticals);およびBILN2061およびBI201335(Boehringer Ingelheim)を包含する。
【0140】
本発明の方法および複合療法において有用なHCVプロテアーゼ阻害剤の追加的な例はLandroら、Biochemistry,36(31):9340−9348(1997);Ingallinellaら、Biochemistry,37(25):8906−8914(1998);Llinas−Brunetら、Bioorg Med Chem Lett,8(13):1713−1718(1998);Martinら、Biochemistry,37(33):11459−11468(1998);Dimasiら、J Virol,71(10):7461−7469(1997);Martinら、Protein Eng,10(5):607−614(1997);Elzoukiら、J Hepat,27(1):42−48(1997);BioWorld Today,9(217):4(1998年11月10日);米国特許公開番号US2005/0249702およびUS2007/0274951;および国際公開番号WO98/14181、WO98/17679、WO98/17679、WO98/22496およびWO99/07734およびWO05/087731に開示されているものを包含する。
【0141】
本発明の組成物および方法において有用なHCVプロテアーゼ阻害剤の別の例は、以下の化合物を包含するがこれらに限定されない。
【化1】


【0142】
別の実施形態においては、抗ウィルス剤はNS3プロテアーゼ阻害剤である。本発明の方法および本発明の複合療法において有用なNS3セリンプロテアーゼ阻害剤は、米国特許第7,494,988号、同第7,485,625号、同第7,449,447号、同第7,442,695号、同第7,425,576号、同第7,342,041号、同第7,253,160号、同第7,244,721号、同第7,205,330号、同第7,192,957号、同第7,186,747号、同第7,173,057号、同第7,169,760号、同第7,012,066号、同第6,914,122号、同第6,911,428号、同第6,894,072号、同第6,846,802号、同第6,838,475号、同第6,800,434号、同第6,767,991号、同第5,017,380号、同第4,933,443号、同第4,812,561号および同第4,634,697号;米国特許公開US20020068702、US20020160962、US20050119168、US20050176648、US20050209164、US20050249702およびUS20070042968;および国際公開番号WO03/006490、WO03/087092、WO04/092161およびWO08/124148に開示されているものを包含するがこれらに限定されない。
【0143】
更にその他の実施形態において、抗ウィルス剤はHCVポリメラーゼ阻害剤である。本発明の方法および複合療法において有用なHCVポリメラーゼ阻害剤はVP−19744(Wyeth/ViroPharma)、PSI−7851(Pharmasset)、R7128(Roche/Pharmasset)、PF−00868554(Pfizer)、VCH−759およびVCH−916(ViroChem/Vertex)、HCV−796(Wyeth/ViroPharma)、IDX184(Idenix)、NM−283(Idenix/Novartis)、R−1626(Roche)、MK−0608(Isis/Merck)、GS9190(Gilead)、ABT−333(Abbott)、A−848837およびA−837093(Abbott)、GSK−71185(Glaxo SmithKline)、ANA598(Anadys)、GSK−625433(Glaxo SmithKline)、XTL−2125(XTL Biopharmaceuticals)およびNiら、Current Opinion in Drug Discovery and Development、7(4):446(2004);Tanら、Nature Reviews、1:867(2002);およびBeaulieuら、Current Opinion in Investigational Drugs、5:838(2004)および国際公開番号WO08/082484、WO08/082488、WO08/083351、WO08/136815、WO09/032116、WO09/032123、WO09/032124およびWO09/032125に開示されているものを包含するがこれらに限定されない。
【0144】
別の実施形態においては、抗ウィルス剤はHCV NS5A阻害剤である。本発明の方法および複合療法において有用なHCV NS5A阻害剤の非限定的な例はAZD2836(A−831)およびAZD7295(A−689)(Arrow Therapeutics);およびBMS−790052(Bristol−Myers Squibb)である。
【0145】
1つの実施形態において、抗ウィルス剤はNS4B阻害剤、例えば塩酸クレミゾールおよびクレミゾールの他の塩である。
【0146】
1つの実施形態において、抗ウィルス剤は米国特許公開番号US20090081636に開示されているものを包含するHCVレプリカーゼ阻害剤である。
【0147】
別の実施形態においては、抗ウィルス剤はトリオキサレンのようなHCVヘリカーゼ阻害剤である。
【0148】
別の実施形態においては、抗ウィルス剤はHCVエントリー阻害剤、例えば限定しないがITX5061およびITX4520(iTherx))、PRO206(Progenics)およびセルゴシビル(MX−3253)、MIGENIXである。
【0149】
別の実施形態においては、抗ウィルス剤はRNAi化合物、例えばTT−033(Tacere Therapeutics,Inc.,San Jose,CA)である。
【0150】
更にその他の実施形態において、抗ウィルス剤は別のI型インターフェロン(例えばIFN−ベータまたはIFN−オメガ)、II型インターフェロン(例えばIFN−γ)またはIII型インターフェロン(例えばIl−28またはIl29)である。
【0151】
本発明の方法および複合療法における使用を意図するIII型インターフェロンの例はPEG−IFNラムダ(ZymoGenetics/Brisol Myers Squibb)を包含するがこれに限定されない。
【0152】
本発明の方法および複合療法における使用を意図する別の追加的な抗ウィルス剤の例はTT033(Benitec/Tacere Bio/Pfizer)、Sirna−034(Sirna Therapeutics)、GNI−104(GENimmune)、IDX−102(Idenix)、Levovirin(商標)(ICN Pharmaceuticals、Costa Mesa、California);Humax(Genmab)、ITX−2155(Ithrex/Novartis)、PRO206(Progenics)、HepaCide−I(NanoVirocides)、MX3235(Migenix)、SCV−07(SciClone Pharma)、KPE02003002(Kemin Pharma)、Lenocta(VioQuest Pharmaceuticals)、IET−インターフェロン増強療法(Transition Therapeutics)、Zadaxin(SciClone Pharma)、VP 50406(商標)(Viropharma、Incorporated、Exton、Pennsylvania);ISIS14803(商標)(ISIS Pharmaceuticals、Carlsbad、California);Heptazyme(商標)(Ribozyme Pharmaceuticals、Boulder、Colorado);Thymosin(商標)(SciClone Pharmaceuticals、San Mateo、California);Maxamine(商標)(Maxim Pharmaceuticals、San Diego、California);NKB−122(JenKen Bioscience Inc.,North Carolina);Alinia(Romark Laboratories)、INFORM−1(R7128、ITMN−191とリバビリンの組み合わせ);およびマイコフェノレートモフェチル(Hoffman−La Roche、Nutley、New Jersey)、SCY−635(SCYNEXIS)、ANA773(Anadys)、CYT107(Cytheris)、SPC3649(Santaris Pharma)、Alinia(nitrazoxanide)(Romark);Oglufanide disodium(Implicit Bioscience)、CTS−1027(Conatus)NOV−205(Novelos Therapeutics)、IMO−2125(Idera Pharmaceuticals)およびCF102(CAN−FITE)を包含するがこれらに限定されない。
【0153】
本発明はLys70 IFN−λ3アイソフォームのレベルを上昇させるか、Arg70 IFN−λ3アイソフォームのレベルを低下させるか、その両方を行う治療薬を用いてrs8103142におけるG対立遺伝子に対してヘテロ接合またはホモ接合であるHCV患者を治療することを意図する。
【0154】
Lys70 IFN−λ3アイソフォームのレベルを上昇させる治療薬の代表例はIFN−λ3 Lys70ポリペプチドおよびIFN−λ3 Lys70ポリペプチドをコードする発現ベクターを包含する。IFN−λ3 Lys70ポリペプチドは当分野で周知の手法を用いて製造してよく、例えばDellgren,c.ら、Genes and Immunity 10:125−131(2009)および米国特許第7,517,961号を参照できる。好ましくは、発現ベクターはヒト肝細胞中のコードされたIFN−λ3 Lys70ポリペプチドの発現をターゲティングするものである。アデノ関連ウィルスベクターを用いたそのような肝ターゲティング遺伝子療法は報告されており、例えばHasbrouck,NCら、Gene Therapy 15:870−875(2008)およびその引用文献、Nancy Smyth Templeton,Gene and Cell Therapy:Therapeutic Mechanisms and Strategies,3rd Edition、発行元CRC Press(2008),Mark A.Findeis,Nonviral vectors for gene therapy:methods and protocols、発行元Humana Press(2001)を参照できる。
【0155】
Arg70 IFN−λ3アイソフォームのレベルを低下させる薬剤はアンチセンスRNA、小型干渉RNA(siRNA)およびリボザイムを包含する。当業者であれば当分野で知られている手法を用いながらそのような剤を容易に設計して試験することができる。例えばStanley T.Crooke,Antisense drug technology:principles,strategies,and applications、第2版:2、発行元CRC Press(2007)Kevin J.Scanlon,Therapeutic applications of ribozymes、発行元Humana Press(1998)を参照できる。
【0156】
Arg70 IFN−λ3アイソフォームのレベルを低下させる別の薬剤はArg70アイソフォームには結合して中和するが、Lys70アイソフォームに対してはそうではないモノクローナル抗体である。そのような抗体の単離はアミノ酸70位がIFN−λ3の外部表面上に存在すると考えられているため、容易に達成されるはずである。
【0157】
rs12979860C対立遺伝子はまた、HCVによる急性C型肝炎(感染の最初の6ヶ月を指す)の患者においてHCVの自然排除の可能性が高いことと関連している。感染者の60%〜70%が急性期には症状を発症しない。しかしながら、一部の患者は急性C型肝炎の症状を有し、これは、食欲低下、疲労、腹痛、黄疸、掻痒および風邪様の症状を包含し、これらは早期の診断につながる。他の患者は針による傷害のような感染源への曝露が確認された後のHCV感染に関するモニタリングにより急性C型肝炎と診断される。C型肝炎ウィルスは通常は感染後1〜3週間以内にPCRにより血中で検出可能であり、ウィルスに対する抗体は一般的に3〜15週間以内に検出可能である。
【0158】
患者の50%までが急性期の間に自身の身体からウィルスを自発的に排除するため、患者が慢性HCV感染、即ち6ヶ月以上継続する感染にまで進行しない限り、急性肝炎と診断された患者を抗ウィルス療法の出費および副作用に付すことには医師は伝統的には消極的であった。rs12979860PSにおける患者の遺伝子型を決定することは抗ウィルス療法を開始するか、または急性HCV感染と診断された後6ヶ月の間は療法を遅延させるかどうかを決定する場合に医師が考慮する別の要因である場合がある。患者の遺伝子型がヘテロ接合またはホモ接合のCである場合、医師は6ヶ月間治療を遅延するように決定してよい。患者の遺伝子型がホモ接合Tである場合は、患者が自発的にウィルスを排除する可能性は低いため、早期の抗ウィルス療法を正当化できると医師は決定してよい。
【0159】
担当医師は、HCV感染の治療のための本発明の複合療法において使用される他剤の用量および投薬レジメンを、認可された用量および添付文書中の投薬レジメン;および患者の年齢、性別および全身の健康状態を考慮しながら、決定することができる。HCV複合療法において投与される薬剤は同時(即ち同じ組成物中か、または一方を他方の直後となる別個の組成物中)または逐次的に投与できる。これは複合物の成分が異なる投薬スケジュールにおいて与えられる、例えば1つの成分を1日1回、別を6時間毎に投与する場合、または好ましい医薬組成物が異なる場合、例えば1つは錠剤および1つはカプセルである場合に、特に有用である。従って別個の剤型を含むキットが好都合である。
【0160】
IFN−αがPEG12k−インターフェロンアルファ−2b、例えばPegIntron(登録商標)(ペグインターフェロンアルファ−2b)またはそのバイオシミラーである場合、慢性HCV感染に対する好ましい治療投薬法は1.5mcg/kgのPEG12k−インターフェロンアルファ−2b週1回を800〜1400mgのリバビリンの一日当たり用量と組み合わせたものを含む。リバビリン用量は患者体重に基づいており:体重40−65kgの患者に対しては800mg/日、体重65超〜85kgの患者に対しては1000mg/日、体重85超〜105kgの患者に対しては1200mg/日、体重105kg超の患者に対しては1400mg/日となる。一部の実施形態においては、患者体重に基づいて、PEG12k−インターフェロンアルファ−2bの推奨される週当たり用量は0.5、0.75または1.0mcg/kgであり、一日あたりのリバビリン用量は600−1400mgリバビリンである。
【0161】
IFN−αがbPEG40K−インターフェロンアルファ−2a、例えばPEGASYS(登録商標)(ペグインターフェロンアルファ−2a)またはそのバイオシミラーである場合、慢性HCV感染に対する好ましい投与レジメンは、体重<75kgの患者では1000mg、体重≧75kgの患者では1200mgの用量の一日あたりリバビリンと組み合わせた180mcg/週のbPEG40K−インターフェロンアルファ−2aを含む。一部の実施形態においては、bPEG40K−インターフェロンアルファ−2aの推奨される週当たり用量は180mcgより少なくとも25%低値である。
【0162】
一部の好ましい実施形態においては、高ウィルス量HCV遺伝子型1に慢性的に感染しており、IFN−α応答マーカー少なくとも1つに関して陽性判定である患者を治療するために使用される複合薬剤レジメンは、インターフェロンアルファ、例えばPEG12k−インターフェロンアルファ2bおよびbPEG40K−インターフェロンアルファ−2aがリバビリンと組み合わせて投与される約2〜17週のリードイン治療期間と、その後のインターフェロンアルファ、リバビリンおよびプロテアーゼ阻害剤、例えばボセプレビルまたはテラプレビルの3重複合物が投与される約12〜約28週間の第2治療期間を含む。そのような2相治療投薬法は国際特許出願公開WO2009/038663に記載されている。特に好ましい実施形態においては、リードイン期間は約4週間であり、第2治療期間は約24週間である。
【0163】
IFN−αを用いた治療に感受性の癌は、黒色腫、骨髄性白血病(CML)、腎細胞癌(RCC)、ヘアリー細胞白血病、カポジ肉腫、多発性骨髄腫、基底細胞癌、悪性黒色腫、表在性膀胱癌(SBC)、卵巣癌、濾胞性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、尖圭コンジローム、菌状息肉腫、カルチノイド症候群、結腸直腸癌、喉頭乳頭腫症、および光線性角化症を包含する。従って好ましい癌および投薬レジメンはRoferon(登録商標)−A(インターフェロンアルファ2A、組み換え体)およびINTRON(登録商標)A(インターフェロンアルファ−2b、組み換え体)製品に関する標記および処方の情報において記載されている慢性C型肝炎に関するレジメンに記載されている。
【0164】
好ましい実施形態においては、本発明のIFN−α応答マーカーは黒色腫、慢性骨髄性白血病(CML)および腎細胞癌(RCC)を有する患者を治療するためにペグ化IFN−αとの関連において使用され、例えばその治療レジメンは米国特許第6,923,966号(黒色腫)、同第6,605,273号(RCC)および同第6,362,162号(CML);Bukowski R.ら、Cancer 95(2):389−396(2002);Bukowski R.ら、J.Clin Oncol.20(18):3841−348(2002);Garcia−Manero,G.ら、Cancer 97(12):2010−2016(2003);Garcia−Manero,G.ら、Cancer 98(3):437−457(2003);Michallet,M.ら、Leukemia 18:309−315(2004);Motzer,R.J.ら、J.Clin Oncol.19(5):1312−1319(2001);Motzer,R.J.ら、Ann.Oncol.13:1799−1805(2002);Lipton,J.H.ら、Blood 100:782a Abstract 3091(2002);Hochhaus,A.ら、Blood100:164a Abstract 616(2002);およびDummerら、Proc.Am.Soc.Clin.Oncol.22:712 Abstract 2861(2003)に記載されている。
【0165】
1つの好ましい実施形態においては、本発明のIFN−α応答マーカーはIFN−α療法の良好な候補であるハイリスクの黒色腫を有する患者、特にステージIIB(患部>4mm、しかし陽性節を伴わない)およびステージIII(患部>4mmで節陽性)の原発皮膚黒色腫を有する患者を識別するために使用される。好ましくは、IFN−α療法は患者が自身のステージIIBまたはステージIIIの黒色腫に関して手術を受けた後にアジュバント療法として使用される。
【0166】
より好ましい実施形態においては、アジュバント療法として使用されるIFN−αはペグ化IFN−αである。本発明の進歩した方法に従って治療可能な黒色腫患者はこの疾患を有すると新たに診断された者であって手術後の疾患を有さないが疾患の全身性再発の危険性が高い者を包含する。「ハイリスク患者」という用語は本明細書においては、Breslow厚み>4mmの患部を有する黒色腫患者、並びに原発または再発の節関与を伴うBreslow厚みのいずれかの患部を有する患者を意味する。本発明によるペグ化IFN−αを用いた治療は疾患の進行、許容できない毒性、または治療中断の患者要請がない限り、5年まで継続されることになる。
【0167】
ハイリスク黒色腫患者を治療するために使用されるペグ化IFN−αがPEG12k−インターフェロンアルファ−2b、例えばPegIntron(登録商標)(ペグインターフェロンアルファ−2b)またはそのバイオシミラーである場合、好ましい治療投薬法は、キログラム当たり3.0〜9.0マイクログラムを週1回(QW)、好ましくはキログラム当たり4.5〜6.5マイクログラムQWの範囲、より好ましくはキログラム当たり5.5〜6.5マイクログラムQWの範囲、最も好ましくはキログラム当たり約6.0マイクログラムQWの開始用量を患者に投与することを含む。一部の好ましい実施形態においては、ハイリスクの黒色腫患者は、8週間PEG12k−インターフェロンアルファ−2bQWのキログラムあたり6.0マイクログラムで初期治療され、次に5年マイナス初期治療8週間の期間、PEG12k−インターフェロンアルファ−2bQWのキログラム当たり3.0マイクログラム以下で治療される。例えば治療に対する患者耐容性を維持するために患者に対してキログラム当たり3.0マイクログラム未満を投与する場合は、用量は好ましくはキログラム当たり1マイクログラムずつ低減され、例えば3.0から2.0に、1.0に低減される。
【0168】
ハイリスク黒色腫患者を治療するために使用されるペグ化IFN−αがbPEG40K−インターフェロンアルファ−2a、例えばPEGASYS(登録商標)(ペグインターフェロンアルファ−2a)またはそのバイオシミラーである場合、治療レジメンは約50マイクログラム〜約500マイクログラムQW、好ましくは約200マイクログラム〜約250マイクログラムQWの用量を患者に投与することを含む。
【0169】
患者におけるIFN−α応答マーカーの存在または非存在に基づいて患者を治療するために選択された複合療法剤を投与する場合、複合物中の治療薬、または治療薬を含む医薬組成物は、例えば逐次的に、併用により、共存させて、同時になど、いずれかの順序において投与してよい。そのような複合療法における種々の治療薬の量は異なる量(異なる投薬量)または同じ量(同じ投薬量)であってよい。一部の実施形態においては、複合物中の剤は患者の疾患または状態を治療するための単剤療法としてそのような剤が使用される場合に一般的に使用される用量において投与され、他の実施形態においては、剤は疾患または状態を治療するための単剤療法としてそのような剤が使用される場合に一般的に使用される用量より低用量において投与される。
【0170】
一部の実施形態においては、複合療法において使用される治療薬は、経口投与、静脈内投与、皮下投与または非経腸投与に適していてよい同じ医薬組成物中に存在する。
【0171】
本発明者らは本明細書においてはまた、本明細書に記載したIFN−α応答マーカーが薬理遺伝学的適応症、即ち、疾患の成分とIFN−α応答マーカーの成分を包含する適応症に対する新しいインターフェロンアルファ薬剤製品を販売するために制定法上の認可を訴求するために使用されることを意図している。疾患の成分はIFN−αを用いた治療に感受性である疾患であり、遺伝子マーカー成分は本明細書に記載したIFN−α応答マーカーの少なくとも1つに関して陽性判定である患者である。同様に本発明者らは本明細書において、これらのIFN−α応答マーカーが、一般的集団における特定の疾患のための薬剤の境界的な利益/危険性の比率に基づいてその疾患のために処方することに医師が消極的である現在認可されているIFN−α薬剤に関する薬理遺伝学的適応症の認可を訴求するために有用であることを意図している。
【0172】
薬理遺伝学的適応症に関して認可を訴求することは、薬剤で治療されている患者の2つの別個の群において薬剤に対する所望の応答の発生率を計測することを一般的に包含する。1つの群における各個体は提案された薬理遺伝学的適応症内に個体を位置づける疾患および遺伝子的プロファイルを有する。他の群における個体は提案された薬理遺伝学的適応症の遺伝子マーカー成分を彼らが有するかどうかとは関係なく無作為に選択してよい。或いは、遺伝子マーカー成分に合致するおよび合致しない個体のパーセンテージが一般的集団、または提案された薬理遺伝学的適応症の疾患成分を有する患者の集団において観察されるものと同様である「対照」群をもたらすような態様において、個体を他の群に割り付ける。認可を訴求している薬剤製品は、予測的治験における2つの群に投与され得る。或いは、薬剤で以前に治療されている患者の回顧的薬理遺伝学的分析が実施され得る。
【0173】
薬理遺伝学的適応症を訴求している薬剤製品は、他の治療活性剤、例えば提案された薬理遺伝学的適応症における疾患または状態を治療するための薬効を有する別の薬剤、または薬剤により生じる有害作用の発生率を低減することを意図した薬剤と共に評価され得る。一部の実施形態においては、制定法上の認可を訴求している薬理遺伝学的適応症は、薬剤への応答の他のマーカー(遺伝子マーカーまたはバイオマーカー)または予測因子を包含してよい。例えばペグ化インターフェロンアルファおよびリバビリンの複合療法に対する迅速なHCVウィルス応答(RVR)はSVRを達成する良好な予測因子である。
【0174】
薬理遺伝学的試験は、特定の国における薬理遺伝学的薬剤製品の販売の前に認可を要求してくる規制当局または政府の機関の代表との協議において設計され得る。好ましくは、規制当局は主要先進国、例えばオーストラリア、カナダ、中国、欧州連合のメンバー、日本などの政府により権限を与えられている。最も好ましくは、規制当局は合衆国政府により権限を与えられ、提出すべき認可のための願書の形式は薬剤製品に適応される食品医薬品化粧品法の最終成立版に記載されている法的要件に基づくものとなり、また、制定法上の提出および薬剤製品の販売を行う費用のような他の懸案事項も包含する場合がある。例えば、薬剤製品の医薬品製剤が提案される薬理遺伝学的適応症の疾患成分に関して以前に認可されている場合は、願書はペーパーNDA、追補NDA、または略式NDAである場合があるが、医薬品製剤が以前に認可されたことがない場合、願書は完全NDAである必要が生じる場合もあり;これらの用語は薬学分野の当業者により適用されているか、または、1984年の薬剤価格競争および特許期間回復法に定義されている意味を有する。
【0175】
本発明のIFN−α応答マーカーを用いた薬理遺伝学的臨床治験の1つの望ましい結果は、(1)インターフェロンアルファ医薬組成物、および(2)医薬組成物が推奨される薬理遺伝学的適応症を包含する処方情報を含む薬剤製品を販売するための認可である。処方情報は典型的には製品添付物に含まれ、頻繁には薬剤の添付文書またはラベルと称される。
【0176】
上記考察した通り、薬理遺伝学的適応症は2つの成分:疾患成分およびIFN−α応答マーカー成分を有する。即ち、処方情報は1つ以上の疾患、症状または医学的状態に対する薬効を薬剤が呈している患者の遺伝子的に定義された群を記載する場合がある。一部の実施形態においては、処方情報は遺伝子的に定義された群に属する個体を識別するための方法を考察することになる。例えば、一部の実施形態においては、処方情報は本明細書に記載したIFN−α応答マーカーの1つ以上に関して陽性判定である個体が薬剤の適応症となることを示す。或いは、処方情報はこれらのIFN−α応答マーカーの1つ、それより多く、または全てに対して陰性判定である個体が薬剤の禁忌となることを示してよい。一部の好ましい実施形態においては、処方情報は薬理遺伝学的適応症の必要な遺伝子マーカー成分の存在または非存在を検出するために使用されるべき認可された診断試験少なくとも1つの名称を包含する。本明細書に記載した通り、本発明の薬理遺伝学的薬剤製品における薬理遺伝学的適応症はIFN−α医薬組成物への応答の追加的なマーカーまたは予測因子および/または他の治療活性剤1つ以上との組み合わせで薬剤を使用するための要件を包含してよい。処方情報は推奨される用量および治療レジメンに関する情報を包含してよい。
【0177】
一部の実施形態においては薬理遺伝学的薬剤製品は、同じか同様のIFN−α活性成分を含むが薬理遺伝学的適応症を有さない他の市販品から本製品を区別する場合に、薬剤師および医師の支援となるために、薬理遺伝学的製品として薬剤製品を識別するために製造者が採用している区別可能な外観を有する製剤として、または包装において、提供される。薬剤製品に関して区別可能なブランドを発生させることの一部として医薬品製剤および薬剤製品包装の外観を用いることは、当分野で周知であり、錠剤またはカプセルの形状および色、並びにそれらの上、または薬剤製品の包装材料の上に刻印された符号またはロゴマークを包含する。
【0178】
本発明の好ましい薬理遺伝学的薬剤製品において、医薬組成物はペグ化インターフェロンアルファ−2a、ペグ化インターフェロンアルファ−2b、またはアルブインターフェロンアルファ−2bを含む。より好ましくは、医薬組成物はbPEG40K−インターフェロンアルファ−2aまたはPEG12k−インターフェロンアルファ−2bを含む。本発明の薬剤製品に関する好ましい薬理遺伝学的適応症はHCV遺伝子型1に慢性的に感染しており、本明細書に記載したホモ接合IFN−α応答マーカー少なくとも1つに関して陽性判定である患者の治療のための医薬組成物の使用を含む。一部の好ましい実施形態においては、患者は上記定義した通り高いベースラインHCVウィルス量を有する。より好ましい実施形態においては、処方情報はインターフェロンアルファ医薬組成物がHCV遺伝子型1の高いベースラインウィルス量に慢性的に感染している患者を治療するための他の抗ウィルス剤少なくとも1つとの組み合わせにおいて指示されることを示している。抗ウィルス剤はリバビリン、HCVプロテアーゼ阻害剤、およびHCVポリメラーゼ阻害剤、または、HCVの複製を特異的に阻害する他の剤であってよい。処方情報はこれらの抗ウィルス剤2つ以上のいずれかの組み合わせと組み合わせたインターフェロンアルファ医薬組成物の使用を推奨する場合がある。更にまた、処方情報は推奨される治療レジメンを包含してよく、好ましい治療レジメンはPEG12k−インターフェロンアルファ−2bおよびbPEG40K−インターフェロンアルファ−2a医薬組成物に関して上記したもののいずれかである。
【0179】
本明細書に記載した方法の実施、または本明細書に記載したキットおよび製品の使用に関与する全ての分析および数学的作業はコンピューターにより実施してよい。例えば、コンピューターは、試験作業所の従業員によるか、治療医師により入力される遺伝子型データに基づいて個体にIFN−α応答マーカーの存在または非存在を割り付けるコンピュータープログラムを実行してよい。更にまた、同じコンピューターまたは異なるコンピューターが応答マーカー割り付けに基づいてIFN−α療法への予測される応答を出力してよい。一部の実施形態においては、コンピューターは、IFN−α応答マーカーの存在または非存在を包含するIFN−α応答に関連する種々の患者および疾患のパラメーターから患者に関する応答確率評点を誘導するコンピュータープログラムを実行する。個体におけるIFN−αマーカーの存在または非存在に関連するデータは、個体の他の臨床および/または遺伝子データを含有する関連データベース(例えばOracleデータベースの例、またはASCIIフラットファイルのセット)の部分として格納してよい。これらのデータはコンピューターのハードドライブに格納するか、または例えばCDROMまたはコンピューターによりアクセス可能な他の格納デバイス1つ以上に格納してよい。例えばデータはネットワークを介してコンピューターと接続しているデータベース1つ以上の上に格納してよい。
【実施例】
【0180】
以下の実施例は本発明をより明確に説明するために提示するものであり、本発明の範囲を制限すると見なしてはならない。
【実施例1】
【0181】
HCV RNAに関する定量的RT−PCR試験
原理
HCV−RNAの検出は生物学的試料から全RNAを抽出し、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を実施することにより測定する。使用するRT−PCRは標的核酸分子のリアルタイム定量を可能にする自動化された方法である。この方法は逆転写酵素、5’−エキソヌクレアーゼおよびrTth DNAポリメラーゼのDNAポリメラーゼ活性を利用している。rTthDNAポリメラーゼはまずウィルスRNAのDNAコピーを作成(逆転写酵素活性)し、次にDNAのコピーの作成に進行する(ポリメラーゼ活性)。増幅が進行するに従って、rTthDNAポリメラーゼの5’−エキソヌクレアーゼ活性が配列特異的プローブを消化する。この反応が蛍光シグナルを放出し、投入されたRNAコピーの定量を可能にする。
【0182】
HCV遺伝子型はHCVゲノムの5’−未翻訳領域のPCR増幅されたDNAフラグメントを配列決定することにより決定する。次に配列をHCV遺伝子型の公開された配列とアラインすることにより決定に至る。
【0183】
B 試料からのRNAの抽出
全RNAは自動化ハイスループット液体ハンドラーおよびQIAGEN(Germantown,MD)製のQIAamp96 Viral RNA抽出キットにおいて抽出する。この方法はRT−PCRに適する高品質のRNAを与える。
【0184】
C HCVに関する定量的RT−PCR
1工程RT−PCRをrTthDNAポリメラーゼを用いて実施する。RT−PCR産物の直接検出は、染料標識プローブの蛍光の増大をモニタリングすることにより達成される。PCRの間、目的の標的が存在する場合、プローブは標的に特異的にアニーリングする。rTthDNAポリメラーゼの5’−エキソヌクレアーゼ活性がプローブを消化して蛍光を放出する。このプロセスはPCRの間の毎サイクルにおいて起こり、産物の指数的蓄積を妨害しない。蛍光の増大(蓄積したPCR産物の量に比例)は、標的配列がプローブに相補であり、PCRの間に増幅される場合のみ、検出される。これらの要件のために、非特異的な増幅は検出されない。
【0185】
システムは増幅の毎サイクルの後のPCR産物を計測できる。標的鋳型の最初のコピー数はPCRの間の鋳型の増幅の結果として蛍光シグナル(.Rn)のサイクル毎の変化を分析することにより求められる。検出可能なレベルの蛍光に達するために必要なサイクル数(Ct、即ち閾値サイクルとして報告)が少ないほど初期コピー数が多い。配列検出アプリケーションは既知初期コピー数の標準物質から作成した標準曲線上の外挿により未知の初期コピー数を決定する。
【0186】
D 品質管理/品質保証
内部RNA対照を各試料に添加することによりRNA抽出およびRT−PCRの効率を確認する。予備検定されたHCV対照RNAの種々の希釈物を毎回の試験において試行することにより標準曲線を作成する。HCV Proficiency Panel Membersは陽性対照として各試験と共に試行する。正常ヒト血清および水はRNA抽出およびRT−PCRの陰性対照として試行する。
【0187】
上記した試験を用いて実施したRT−PCR HCV−RNA測定はC型肝炎ウィルスRNAに関するWHOの国際基準およびAcro Metrixより入手したHCV Panelに対して有効化されている。この試験の定量下限は29国際単位/mL(IU/mL)である。全てのHCV−RNAの結果は本明細書においてはIU/mLで報告する。
【実施例2】
【0188】
ペグインターフェロンアルファ2/リバビリン複合療法を用いた治療へのHCV応答に関連する1塩基多型(SNP)の識別
治療応答への遺伝子的寄与を確認するために、本発明者らは2つの予測的臨床試験から得られたゲノム試料に対して全ゲノム相関解析(genome-wide association study)を実施した。1500を超える個体数がIDEAL試験の部分となり、その設計はMcHutchinsonら、J.Viral Hepatol.,Vol.15,No.7,July 2008,pp.475−481により報告される通りである。全ゲノム相関解析におけるアフリカ系アメリカ人の数を増大させるために、ペグインターフェロンアルファ−2bおよびリバビリンを用いたアフリカ系アメリカ人の治療に着目した別の予測的試験から67患者を更に含めた(Muir,A.J.,Bornstein,J.D.&Killenberg,P.G.Peginterferon alfa−2b and ribavirin for the treatment of chronic hepatitis C in blacks and non−Hispanic whites.N Engl J Med 350,2265−71(2004)).
慨すれば、IDEAL試験においてはHCV遺伝子型1に慢性的に感染している治療未経験の患者を以下の48週間治療レジメン:即ちペグインターフェロンアルファ−2b(PEG2b)1.5mcg/kg/週+リバビリン(RBV);PEG2b 1.0mcg/kg/週+RBV;またはペグインターフェロンアルファ−2a(PEG2a)180mcg/週+RBVの1つを受けるように無作為(1:1:1)に割り付けた。PEG2bレジメンにおいては体重40〜65kgの患者には800mg/日のRBVを投与;体重65kg超〜85kgの患者には1000mg/日のRBVを投与;体重85kg超〜105kgの患者には1200mg/日のRBVを投与;体重105kg超の患者には1400mg/日のRBVを投与した。PEG2aレジメンにおいては、体重<75kgの患者にはRBV1000mg/日を投与し、体重≧75kgの患者にはRBV1200mg/日を投与した。HCV RNAの状態はベースライン時、治療の12および24週において、48週の治療終了時において、治療後24週において測定した。12週または24週で不十分なウィルス応答を有していた対象は治療失敗として療法を停止した。IDEAL試験の結果はPEG2b(1.5mcg/kg/週)+RBVとPEG2aのレジメンの本質的に等価な薬効を明らかにし、白人と比較して十分マッチしたアフリカ系アメリカ人における有意に低値の応答を示していた。
【0189】
全ゲノム相関解析に含めた全ての患者は、治療未経験であり遺伝子型1 HCVに慢性的に感染していた。患者は治療48週間(12および24週で十分なウィルス応答を有さなかった対象は治療失敗としてプロトコルにより療法を中断した)およびフォローアップ24週間を受けた。1630個体に由来するゲノム試料をフェーズIIのHapMapデータ(HumanHap 610 quad V1.0)から取り出した約600,000のタグ付けSNPを含有するIllumina(登録商標)(San Diego,CA)製のHuman610−quadBeadChipを用いて遺伝子型決定した。遺伝子型決定の結果は一次エンドポイントとして治療応答の決定因子(ウィルスクリアランスまたはSVR)に関して分析した。治療の応答および非応答(NR)は標準的な定義に従って定義した(Ghany,M.G.ら、Strader,D.B.,Thomas,D.L.&Seeff,L.B.American Association for the Study of Liver Diseases:Practice Guidelines;Diagnosis,Management,and Treatment of Hepatitis C:An Update.(2009))。持続ウィルス応答は治療終了後24週間の高感度RT−PCR試験を用いた場合の検出不可能な血清中HCV RNA(またはその後のフォローアップができない場合は12週間フォローアップ時点での検出不能ウィルスレベル)として定義した。非応答は治療12週の時点での血清中HCV RNAにおける少なくとも2−log10の低減達成の失敗、または、フォローアップ終了時の検出可能な血清中HCV RNAのいずれかとして、定義した。SVRを達成した全ての患者はレスポンダーとして分析に含めた。十分な薬剤曝露を受けた非レスポンダーのみが評価されることを確実なものとするために(真の生物学的非レスポンダー)、最低12週間の療法およびPegIFNおよびRBVの両方に関して80%超のコンプライアンスを有する患者のみを関連性の分析に含めた。一連の品質管理手順を適用するためにデータの品質を確保した。十分な治療応答データを有する合計1,143人のC型肝炎患者がこれらの基準を満足し、その後、関連性の分析に含めた(表3)。
【0190】
SVRに対する一次関連性試験は、3つの独立した民族集団(白人、N=874;アフリカ系アメリカ人、N=191;およびヒスパニック、N=78)において実施した単一マーカー遺伝子型トレンド試験を含み、これにはベースライン(投与前)血清中HCVウィルス量および線維症の重症度を含む多くの臨床的共分散の補正を行いながらPLINKソフトウエア(Purcell,S.ら、Am J Hum Genet.81(2007))において実施したロジスティック回帰モデルを用いた。
【表3】

【0191】
次に関連性シグナル(P値)をStoufferの加重Z方法(Whitlock,M.C.ら.J Evol Biol 18,1368−73(2005))を用いて組み合わせ、その際サンプルサイズ、エフェクトサイズおよびエフェクトディレクションを各集団で正確に考慮した。この複合P値を次に主要結果として報告し、各民族集団におけるP値も併記した。一連の品質管理工程により関連性試験に関して565,759多型が得られた。方法をコピー数変異体(CNV)を評価するために適用し、CNVとSVRの間の関係を試験した。集団の層化に起因する見かけの関連性の可能性を制御するために、変更したEIGENSTRAT法(Price,A.L.ら、Nat Genet 38,904−9(2006))を用いて各民族集団内の集団系統軸に関して補正した。有意性はBonferroni補正(P cutoff=2.9×10−8)により試験した。
【0192】
これらの分析によれば、染色体19上の多型、rs12979860は試験した全ての患者群においてSVRと強力な関連性を有しており、白人患者群は圧倒的なゲノムワイドの有意性を示していた(P=1.17×10−25)。集団群に渡るp値を組み合わせると、変異体は1.21×10−28で関連性を示している(図1および表4)。
【表4】

【0193】
白人患者群において、CC遺伝子型はTT遺伝子型よりもSVRの2倍高率に関連しており(図2)、同様の比率がアフリカ系アメリカ人(3倍)およびヒスパニックの患者群(2倍)の両方で観察された。重要な点は、自己報告の民族性によってのみ群わけした白人およびアフリカ系アメリカ人でSVR率は2.4倍相違していた(56.1%/23.6%)が、この変動性はC/C遺伝子型を有していた白人とアフリカ系アメリカ人の間では1.5倍の相違にまで低下した(81.7%/53.3%)。本発明者らはアフリカ系アメリカ人患者における低値のSVR率の有意な量はアフリカ系アメリカ人および白人の患者群におけるC対立遺伝子の頻度の相違、即ちそれぞれ0.395対0.635であることにより説明されると推定する(図2、および以下の表5)。
【0194】
興味深いことに、東アジア人は白人よりも高いSVR率を有することが明らかにされている(Liu,C.H.ら、Clin Infect Dis 47,1260−9(2008);Yan,K.K.ら、World J Gastroenterol 14,3416−20(2008))。未知のC型肝炎状態を有する無作為の多民族集団のサンプルを見た場合、本発明者らは東アジアにおいてC対立遺伝子のかなり高値の頻度を観察した(図3)。総括すれば図3に示す通り、多様な民族群に渡るSVR率は各群におけるC対立遺伝子頻度と薬剤応答の推定SVR率との間の明白な一致を示していた。
【0195】
最後にやはり注目すべき点として、CC遺伝子型を有するアフリカ系アメリカ人(53.3%)はTT遺伝子型を有するヨーロッパ系統の個体(33.3%,p<0.05)よりも有意に高値の率を有しており、治療応答を予測する場合には民族性を超えた個体の遺伝子型の重要性が強調されている(Wilson,J.F.ら、Population genetic structure of variable drug response.Nat Genet 29,265−9(2001))。
【実施例3】
【0196】
SVRにおける変動性の原因となる候補起因変異体の発見
これらの関連性の原因となる起因変異体を発見する試みにおいて、本発明者らはまず2つの初代細胞における多型の全ゲノムセットを全ゲノム発現パターンに関連付けるSNPExpressデータベース中の80個体(未感染集団対照)に由来する末梢血単核細胞中の遺伝子発現とrs12979860 SNPの間の関連性を試験した(Heinzen,E.L.ら、Tissue−specific genetic control of splicing:implications for the study of complex traits.PLoS Biol 6,el(2008))。本発明者らは本データベース中で入手可能なrs12979860の最良の代替物を用いた場合に、感染非存在下のIL28B発現レベルは低値であったものの、IL28Bの発現レベルとの相関は発見できなかった(rs12980275、rs12979860の場合はr=0.88)。HCV感染存在下、より特異的にはHCV感染肝細胞中の、IL28B発現上に対するrs12979860の作用を評価するためには追加的な試験が必要である。
【0197】
rs12979860と同じゲノム領域中の6つの他のSNPはIllumina Human610−quad BeadChip上でゲノム有意の関連性シグナルを有していた(rs12980275、rs8099917、rs12972991、rs8109886、rs4803223、rs12980602、表1)。これらのSNPはこの関連性の原因であることの可能性のある候補であるが、これらのSNPの関連性シグナルは大部分は、以下の表4Aに示す通りこれらのSNP各々とrs12979860の間の連鎖不平衡のため、rs12979860のシグナルにより説明され得る。
【表5】

【0198】
IL−28B遺伝子へのrs12979860の接近のため、IL28B遺伝子の全エクソンを96試料中で配列決定した。IL28B遺伝子中の2つの強力に関連する推定機能性SNPは:70位における1アミノ酸置換多型(Lys70Arg、またはc.213A>G、またはrs8103142)およびプロモーター領域における1つの多型(−37G>C、またはrs28416813)であった。両方のSNPがこの関連性の原因である候補であり、表1に同じく含めた。
【実施例4】
【0199】
SVRに関連するSNPに関するHCV患者群における対立遺伝子の発見および遺伝子型頻度
慢性感染HCV患者および一般的集団におけるC対立遺伝子およびC/C遺伝子型の優勢度を推定するために、rs12979860PSに関する3つの可能な遺伝子型の頻度を実施例1の関連性分析において、未知C型肝炎状態の自己識別白人個体の無作為集団サンプル、即ち白人対照集団において使用した全ての対象に関して測定した。これらの結果を以下の表5に示す。
【表6】

【0200】
多型が自然排除に対して影響するとすれば、ウィルスを自然に排除する全ての個体は慢性感染のコホートから除外されることになるため、この比較においては頻度の相違が予測されることになる。表2のデータはその予測に合致しており、その理由は、HCVコホート(0.635)と未知HCV状態の民族的にマッチした対照集団(0.732)(P=2.48×10−6)における白人個体におけるC対立遺伝子の頻度において統計学的有意差が観察されているためである。これらのデータはC対立遺伝子を有する個体はHCVコホートから優先的に排除されることを示している。この比較は、治療に対する良好な応答に関連しているrs12979860C対立遺伝子はC型肝炎の自然排除のより高い誘導にも関連していることを示しているが、一方でこの作用の規模は、ウィルスを天然に浄化することがわかっているコホートと同様にマッチした慢性感染のものとの間のより直接的な比較がなければ推定困難である。
【0201】
IL28B遺伝子における2つのSNPに関する対立遺伝子頻度は以下の通りである。
【0202】
rs28416813
−37G>C:マイナス鎖はレファレンス対立遺伝子Gを有し、これはSVRに関連している。
【0203】
−37C対立遺伝子頻度=0.345、ただしここでn=55白人
−37C対立遺伝子頻度=0.500、ただしここでn=11黒人
G対立遺伝子はSVRに関連している。
【0204】
rs8103142
c.213A>G:マイナス鎖はレファレンス対立遺伝子Aを有し、これはSVRに関連している。
【0205】
Lys70Arg(レファレンス対立遺伝子c.213AはLys70に関してコードしている)
Arg70対立遺伝子頻度=0.361、ただしここでn=54白人
Arg70対立遺伝子頻度=0.545、ただしここでn=11黒人
A対立遺伝子(Lys70)はSVRに関連している。
【実施例5】
【0206】
SVRに関連する種々のSNPの間の連鎖不平衡
白人におけるLD尺度:
rs28416813(−37G>C)とrs8103142(213A>G):r−sq=0.96;D’=1.00
rs28416813(−37G>C)と:
rs12979860:r−sq=1.00;D’=1.00
rs12980275:r−sq=0.88;D’=1.00
rs8099917:r−sq=0.50;D’=1.00
rs12972991:r−sq=0.59;D’=1.00
rs8109886:r−sq=0.49;D’=1.00
rs4803223:r−sq=0.08;D’=0.45
rs12980602:r−sq=0.19;D’=0.60
rs8103142(213A>G)ただし:
rs12979860:r−sq=0.96;D’=1.00
rs12980275:r−sq=0.85;D’=1.00
rs8099917:r−sq=0.48;D’=1.00
rs12972991:r−sq=0.56;D’=1.00
rs8109886:r−sq=0.51;D’=1.00
rs4803223:r−sq=0.07;D’=0.42
rs12980602:r−sq=0.29;D’=0.65
黒人におけるLD尺度(小さいサンプルサイズのため予備的、n=11):
rs28416813(−37G>C)とrs8103142(213A>G):r−sq 0.83;D’=1.00
rs28416813(−37G>C)と:
rs12979860:r−sq=0.69;D’=1.00
rs12980275:r−sq=0.83;D’=1.00
rs8099917:r−sq=0.22;D’=1.00
rs12972991:r−sq=0.16;D’=1.00
rs8109886:r−sq=0.38;D’=1.00
rs4803223:r−sq=0.10;D’=1.00
rs12980602:r−sq=0.18;D’=0.61
rs8103142(213A>G)と:
rs12979860:r−sq=0.83;D’=1.00
rs12980275:r−sq=0.69;D’=1.00
rs8099917:r−sq=0.19;D’=1.00
rs12972991:r−sq=0.13;D’=1.00
rs8109886:r−sq=0.45;D’=1.00
rs4803223:r−sq=0.12;D’=1.00
rs12980602:r−sq=0.23;D’=0.64
【実施例6】
【0207】
SVRの遺伝子的および臨床的な予測因子の比較
本明細書において試験した患者に関する応答の種々の予測因子の規模を定量的に比較するために、本発明者らは幾つかの知られた臨床予測因子、並びにrs12979860遺伝子型を応答率に関連付ける簡単なロジスティック回帰モデルを開発した。
【数2】

【0208】
(式中、
P:SVRを達成する確率;
G:rs12979860遺伝子型:TT=0,CT=1,CC=2;
V:ベースラインウィルス量:≧600,000IU/mL=0,<600,000IU/mL=1;
E:民族性:アフリカ系=0、白人=1;
F:ベースライン線維症:METAVIR F3−4=0、F0−2=1)
この回帰モデルは、CC遺伝子型が、モデルに包含した他の既知ベースライン予測因子よりも、応答率におけるより大きい相違に関連していることを示している。
【実施例7】
【0209】
rs12979860多型は自発的ウィルス排除に関連している。
【0210】
本発明者らはrs12979860多型がC型肝炎の自然排除に影響するかどうかを、本試験における慢性感染患者における対立遺伝子頻度(上記表3)をC型肝炎状態が未確認の見かけ上健康な個体の無作為多民族集団サンプルと比較することにより試験した。全対象が遺伝子試験参加のインフォームドコンセントにサインした。彼らはIllumina Human 610−Quad BeadChipを使用して遺伝子型決定され、遺伝子型データはHCVコホートに関して記載した通り品質管理手順に付した。以下の表6はこの集団サンプルの一般的特徴を示す。
【表7】

【0211】
rs12979860多型が天自然排除に影響するとすれば、この比較において頻度の相違が予測されるはずであり、その理由は天然にウィルスを排除する個体は全て慢性感染コホートから除外されることになるため天然排除の可能性を上昇させる対立遺伝子の頻度が低減するからである。本発明者らの観察によれば、C対立遺伝子の頻度は慢性感染コホートにおいて有意に低く、HCVコホートにおけるヨーロッパ系の個体においては頻度0.63であったのに比較して、曖昧な層化があった場合のために補正してある民族的にマッチした対照においては頻度0.732であり(P=2.48×10−6)、C対立遺伝子を有する個体がHCVコホートから優先的に除外されていることを示していた。この比較は、治療への良好な応答に関連しているrs12979860C対立遺伝子はまた、C型肝炎の天然の浄化のより高い尤度にも関連していることを示している。作用の規模は、天然にウィルスを浄化することがわかっているコホートと同様にマッチした慢性感染のものとの間のより直接的な比較を行わなければ推定は困難である。
【実施例8】
【0212】
IFN−λ3 Arg70アイソフォームは細菌中で発現された場合には不安定である。
【0213】
rs8103142 SNPのG対立遺伝子がIFN−λ3 Arg70アイソフォームの発現または機能に影響するかどうかを試験するために、細菌の細胞中で発現されたHisタグ付けIFN−λ3 Lys70およびHisタグ付けIFN−λ3 Arg70アイソフォームを精製し、各精製アイソフォームの抗ウィルス活性をEMCVウィルス誘発刺激試験を用いて評価した。意外にもLysアイソフォームでは観察されなかった広範な分解がArgアイソフォームでは精製中に観察されたが、完全長の精製されたアイソフォームの等しい量を使用した場合に同等の抗ウィルス活性が観察された。Hisタグ付けIFN−λ3 Arg70アイソフォームの有意に低値の量が単離された。
【実施例9】
【0214】
ヒト293T細胞由来のIFN−λ3 Lys70アイソフォームと相対比較した場合のIFN−λ3 Arg70アイソフォームの低減された分泌
IFN−λ3 Arg70アイソフォームがヒト細胞中で発現された場合にやはり不安定であるかどうかを評価するために、以下の実験を実施した。
【0215】
哺乳類発現コンストラクト:myc抗体エピトープに対するDNAコーディング配列がIFN−λ3遺伝子コーディング配列の3’末端に取り込まれているIFN−λ3 Lys70アイソフォームおよびIFN−λ3 Arg70アイソフォーム遺伝子配列をインビトロで合成した(GenSript,Piscataway,NJ)。得られたIFN−λ3−mycタグ遺伝子コーディング領域を、IFN−λ3遺伝子発現が早期サイトメガロウィルス(CMV)のエンハンサー/プロモーターにより調節されるように、標準的な制限酵素消化およびライゲーションにより哺乳類発現ベクターpCDNA3.1(+)(Invitrogen,Carlsbad,CA)内に取り込ませた。得られたコンストラクトはpcDNA3.1(+)IFN−λ3 Lys70およびpcDNA3.1(+)IFN−λ3 Arg70と命名した。
【0216】
発現されたIFN−λ3タンパク質の発現::293T細胞(CRL−11268)をATCC(Manassas,Va)から購入し、10% FBSおよび300μg/ml G418を添加したDMEM中で維持した。IFN−λ3発現の検出のために、3×10293T細胞を100mmの細胞培養皿(Corning,Corning,NY)上にプレーティングし、24時間後10μgのpcDNA3.1(+)IFN−λ3 Lys70または pcDNA3.1(+)IFN−λ3 Arg70プラスミドをProFection(登録商標)哺乳類トランスフェクションシステム(Promega Corp.,Madison,WI)を用いながらリン酸カルシウム法によりトランスフェクトした。トランスフェクション後48時間に細胞上澄みを収集し、等量を同じ10% NuPAGEビストリスゲル(Invitrogen,Carlsbad,CA)上に分離した。NuPAGEゲルの1つをクーマジーブルー(Invitrogen,Carlsbad,CA)で染色することにより等しいタンパク質ローディングを確認し、他のNuPAGEゲルから得られたタンパク質はPVDF メンブレン(Invitrogen,Carlsbad,CA)に移行させた。次にPVDFメンブレンをmycタグ付けIFN−λ3 Lys70およびIFN−λ3 Arg70アイソフォームの検出のために抗−c−Myc(Ab−1)マウスモノクローナル9E10抗体(Calbiochem,La Jolla,CA)を用いたウエスタンブロットにより分析した。
【0217】
図5に示される通り、mycタグ付けIFN−λ3 Arg70アイソフォームの分泌はmycタグ付けIFN−λ3 Lys70アイソフォームの分泌より遥かに低値であった。この相違は各アイソフォームのゲルバンドの強度を計測することにより定量した。Lys70アイソフォームの総強度は9441であったのに対し、Arg70アイソフォームに関しては僅か2541であり3.72倍の低減であった。この結果はrs8103142 SNPのG対立遺伝子が通常はペグインターフェロンアルファ−2b/リバビリン複合療法へのHCV患者の低減された応答に原因として関与しているという仮説と合致している。
【0218】
本発明は本明細書に記載した特定の実施形態により範囲が制限されるわけではない。実際、本明細書に記載したもの以外の本発明の種々の変更が上記説明から当業者には自明である。そのような変更は添付の特許請求の範囲内に属するものとする。
【0219】
特許、特許出願、出版物、製品の説明およびプロトコルを本出願を通して引用したが、その開示内容は全ての目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターフェロンアルファ(IFN−α)を用いた治療に対して感受性である疾患を有し少なくとも1つのIFN−α応答マーカーに対して陽性判定であるヒト個体を治療するための医薬の製造におけるIFN−αの使用であって、
IFN−α応答マーカーが下記表1におけるIFN−α応答マーカーから選択される前記使用。
【表1】

【請求項2】
IFN−αを用いた治療に感受性の疾患が慢性HCV感染である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
IFN−αを用いた治療に感受性の疾患が黒色腫、腎細胞癌(RCC)、または慢性骨髄性白血病(CML)である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
IFN−α応答マーカーがrs8103142においてホモ接合A、rs28416813においてホモ接合Gまたはrs12979860においてホモ接合Cである、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
IFN−α応答マーカーがrs12979860においてホモ接合Cである、請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
インターフェロンアルファがPEG化インターフェロンアルファ−2aタンパク質またはアルブミン−インターフェロンアルファ−2a融合タンパク質である、請求項1〜5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
インターフェロンアルファがPEG化インターフェロンアルファ−2bまたはアルブミン−インターフェロンアルファ−2b融合タンパク質である、請求項1〜5のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
下記表1における少なくとも1つの多型部位(PS)における個体の遺伝子型を得ること、および得られた遺伝子型に基づいて治療レジメンを実施することを含む方法によりHCV遺伝子型1による慢性感染に対してヒト個体を治療するための医薬の製造における使用のためのインターフェロンアルファ(IFN−α)の使用であって、
【表2】

ここで個体の遺伝子型が良好応答対立遺伝子に関してホモ接合である場合は、治療レジメンはリバビリンと組み合わせてインターフェロンアルファを個体に投与することを含み、
個体の遺伝子型が他の対立遺伝子に関してヘテロ接合またはホモ接合である場合は、治療レジメンはリバビリンおよび少なくとも1つのインターフェロンアルファ以外の抗ウィルス剤と組み合わせてインターフェロンアルファを個体に投与することを含むか、または治療レジメンはインターフェロンアルファに基づく治療を除外する、前記使用。
【請求項9】
インターフェロンアルファがPEG化インターフェロンアルファ−2aタンパク質またはアルブミン−インターフェロンアルファ−2a融合タンパク質である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
インターフェロンアルファがPEG化インターフェロンアルファ−2bまたはアルブミン−インターフェロンアルファ−2b融合タンパク質である、請求項8に記載の使用。
【請求項11】
前記少なくとも1つの抗ウィルス剤がHCVプロテアーゼ阻害剤である、請求項8〜10のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
HCVプロテアーゼ阻害剤がボセプレビル(boceprevir)またはテラプレビル(telaprevir)である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
多型部位がrs12979860、rs28416813またはrs8103142である、請求項8〜12のいずれかに記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−236844(P2012−236844A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−171995(P2012−171995)
【出願日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【分割の表示】特願2012−512059(P2012−512059)の分割
【原出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(596129215)メルク・シャープ・アンド・ドーム・コーポレーション (785)
【氏名又は名称原語表記】Merck Sharp & Dohme Corp.
【住所又は居所原語表記】One Merck Drive,Whitehouse Station,New Jersey 08889,U.S.A.
【Fターム(参考)】