説明

インターベンショナル療法をモニタリングするためのコントラスト増強型診断的画像化方法

【課題】
非侵襲的かつ正確に特定の組織または組織成分の状態をモニターし得る診断的画像化方法を提供すること。
【解決手段】
インターベンショナル療法を受けているまたは受けた特異的な組織または組織成分のコントラスト増強型診断的画像化のための方法であって、該方法は以下:
(a)標的化された組織または組織成分に結合し得、かつ該組織または組織成分に特異的な親和性を有し得る造影剤を、患者に投与する工程であって、ここで該造影剤は画像増強部分(IEM)および状態依存性の組織結合部分(SDTBM)を包含する;
(b)MRI画像化、紫外光画像化、可視光画像化または赤外光画像化のうちの1つに、該患者を供する工程;ならびに
(c)該造影剤の特徴的な画像化シグナルをモニターして該インターベンショナル療法が完了したかどうかを決定する工程、
を包含する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(本発明の技術分野)
本発明は、コントラスト増強型診断的画像化のための方法に関する。詳細には、本発明は、特定の組織または組織成分を標的化し、そしてインターベンショナル療法の間または後に生じる、標的化された組織における状態の変化(例えば、変性、壊死、組織凝固、アポトーシス)のモニタリングを可能にする造影剤を使用する、MRIおよび光学的画像化の方法に関する。本発明に使用される造影剤は、標的化された組織の1つ以上の成分に対する状態依存性結合を示し、そして組織結合型造影剤のシグナル特異性において検出可能な変化を提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
診断的画像化技術(例えば、磁気共鳴画像法(MRI)、X線、核放射性薬学的画像法、光学的(紫外線、可視光および/または赤外光)画像法、および超音波画像法)は、長年、医療診断に使用されてきた。いくつかの場合において、画像の質を改善するため、または特定の情報を提供するための造影媒体の使用は、長年進歩してきた。光学的または超音波画像法のような、他の場合において、造影剤の導入は、差し迫っている(すなわち、近年のものである)。
【0003】
MRIおよび光学的画像化方法は、標的化された組織の化学的環境および状態に感受性の複雑なシグナルを生じるという点で、画像化様式のなかでも独特のものである。X線または放射性核種薬剤からのシグナルは、この薬剤が血漿中に遊離していようと、タンパク質に結合していようと、または骨の中に補足されていようと同じままであるが、MRIまたは光学的画像化のための特定の薬剤は、異なる生理的環境および病理学的状態において異なるシグナル特性を有する。例えば、組織成分への結合によって、MRI造影剤は、核の近傍または核に付随する誘導された緩和速度または化学シフトの変化を示し得る。同様に、光学色素は、結合の際に、その吸光度、反射率、蛍光、燐光、化学ルミネセンス、散乱、または他のスペクトル特性における変化を示し得る。
【0004】
一般に、診断データを提供するために、この造影剤は画像化技術で使用される電磁放射の波長を干渉するか、組織の物理学的特性を改変して改変型シグナルを生じるか、または放射性薬品の場合のように、それ自体、放射線源を提供しなければならない。一般に使用される物質には、有機分子、金属イオン、塩あるいはキレート剤が挙げられ、これには金属キレート剤、粒子(特に、鉄粒子)、または標識ペプチド、抗体、タンパク質、ポリマーもしくはリポソームが含まれる。
【0005】
投与後、代謝および/または排泄される前に、身体コンパートメント中に非特異的に拡散する薬剤もある;一般にこれらの薬剤は、非特異的薬剤として公知である。あるいは、他の薬剤は特定の身体コンパートメント、細胞、細胞性コンパートメント、器官または組織に対して特異的な親和性を有する;これらの薬剤は標的化薬剤と称され得る。
【0006】
診断的画像化技術の適応の1つは、インターベンショナル療法モニタリングにおけるものであった。一般のインターベンショナル療法は、以下を用いる高熱エネルギーによる所望されない組織または組織成分の標的化工程を包含する:集束超音波(例えば、Clineら、「MR Temperature Mapping of Focused Ultrasound Surgery」Mag.Resn.Med.,31:628−636(1994))、無線周波発生器(例えば、Rossiら、「Percutaneous RF Interstitial Thermal Ablation in the Treatment of Hepatic Cancer」AJR,167:759−768(1996))、マイクロ波アンテナ(例えば、Schwarzmaierら、「Magnetic Resonance Imaging of Microwave Induced Tissue Heating」Mag.Resn.Med.,33:729−731(1995))、およびレーザー(例えば、Voglら、「Recurrent Nasopharyngeal Tumors:Preliminary Clinical Result with
Interventional MR Imaging−Controlled Laser−Induced Thermotherapy」Radiology,196:725−733(1995));寒冷切除の使用(すなわち、液体窒素)および変性液(例えば、エタノール、熱生理食塩水)の所望される組織への直接的な注入(例えば、Negalら、「Contrast−Enhanced MR Imaging of Hepatic Lessions Treated with Percutaneous Ethanol Ablation Therapy」Radiology、189:265−270(1993)およびHondaら、「Percutaneous Hot Saline Injection Therapy for Hepatic Tumors:An Alternative to Percutaneous Ethanol Injection Therapy」Radiology、190:53−57(1994));化学療法剤および/またはカオトロピック剤の組織への注入(例えば、Pauserら、「Evalution of Efficient Chemoembplization Mixture by Magnetic Resonance Imaging of Therapy Monitoring:An Experimental Study
on the VX2 Tumor in the Rabbit Liver」Cancer Res.、56:1863−67(1996));および光力学的療法、ここで細胞傷害性薬剤は光の照射によってインビボで活性化される(例えば、Doddら、「MRI Monitoring of the Effects of Photodynamic Therapy on Prostate Tumor」Proc.Soc’y Mag.Resn.,3:1368、ISSN 1065−9889(8月号19−25,1995))。全てのこのようなインターベンショナル療法に共通の目標は、所望されない組織または組織成分(すなわち、ガン性、腫瘍性、新形成性組織または組織成分)の壊死、切除(ablation)、凝固、あるいは変性による、このような組織の処置である。
【0007】
このようなインターベンショナル方法から最大の利益を得るために、そして副作用(例えば、隣接組織の損傷)を最小にするために、インビボでこの療法の効率をモニターすることが必要である。事実、本当に有効であるために、このインターベンショナル療法は、所望されない組織または組織成分の完全な「死」(除去または治療の終結後に生育可能ではない)まで継続しなければならない。それゆえ、過剰な処置および隣接組織への起こり得る損傷を回避するために治療の進行を正確にモニターしなければならないだけではなく、真に壊死性の組織と一定の程度まで損傷されているがそれにも関わらず生存し得る細胞とを正確に区別し得なければならない。
【0008】
インターベンショナル療法の効率をモニターするための1つの方法は、このような療法の間または後に、所望されない組織または組織成分を画像化することである。しかし、任意のこのような診断的画像化方法は、このような方法で異なる病理学的状態(ネイティブ対変性、生存対壊死)の組織間のコントラストを増加して2つの基本的なクラスの情報を提供し得なければならない:
1)検出データ.これには、画像化された組織の病理学的状態を決定するために必要な分光学的情報が挙げられる。このクラスの情報を提供するための能力は、この薬剤の「特異性」および「感度」に関する。
【0009】
2)フィードバックおよび解像度.これらのクラスの情報は、組織または組織成分を破壊または分解するインターベンショナル療法的手順のモニタリングを提供する。いくつかのインターベンショナル方法を用いる、治療の進行の「リアルタイム」フィードバック(約1〜10秒)が好ましく、一方、他の方法を用いての治療後評価が適切であることが想定される。全てのインターベンショナル療法で、処置された組織および処置の間の周辺組織に対する任意の影響の正確な空間的解像度が(約1〜5mm)が望ましい。
【0010】
インターベンショナル療法の効率をモニタリングするための現在のMRI−ベースの方法は、一般に、2つのクラスのうちの1つである:(1)外因性造影剤は使用しないがいくつかの他の観察可能なMRパラメーターに頼るもの(以下を参照のこと);および(2)非特異的細胞外造影剤を使用するもの。しかしながら、これらの方法は、インターベンショナル療法を受けている組織または組織成分の病理学的状態に関する直接的な情報を、実質的には全く提供しない(例えば、ネイティブであるかまたは変性されているか、壊死であるかまたは生存しているか)。さらに、このような方法は、熱切除療法のモニタリングに対して非常に制限されており、そして熱誘導型組織温度変化に対して制限された感度を提供する。
【0011】
熱切除療法をモニタリングするためのこれらのMRI−ベースの方法のいくつかは、温度依存性NMRパラメーター(例えば、緩和時間(T1および/またはT2)、水のプロトン共鳴振動数(PRF)、位相のずれ、および拡散係数)に依存する。しかしながら、これらの方法は多数の制限を受けている。
【0012】
例えば、このような方法の1つは、組織のT1緩和時間に対する温度の影響をモニタリングすることに関する。例えば、Clineら、「MR Temperature Mapping of Focused Ultrasound Surgery」Mag.Resn.Med.,31:628〜636(1994)を参照のこと。しかし、このアプローチは、各組織が独特のT1対温度プロフィールを有し、それゆえこの方法が各組織型についてT1較正を必要とするので、不適切である。このT1方法はまた、1℃あたりほんの0.01%〜1.5%のT1の組織依存的変化での感度の点で制限される。
【0013】
温度測定を使用する別の方法は、水のプロトン磁気共鳴(または化学シフト)に対する温度の影響をモニタリングすることに関する。この方法は、温度変化により誘導される水分子の水素結合および分子運動における変化を検出する。例えば、J.D.Poorterら、「Noninvasive MRI Thermometry with the Proton Resonance Frequency(PRF) Method:In Vivo Results in Human Muscles」Mag.Resn.Med.,33:74−81(1995)を参照のこと。しかし、低感度(0.01ppm/℃)のこの方法は、強い磁界強度(すなわち、>4.7T)の使用を必要とし、これは臨床的に望ましくない。さらに、この水の化学シフトの測定は、磁界の完全な安定性を必要とし、そしてまた、異なる組織型間で劇的に変化する組織の磁化率に非常に依存する。それゆえ、T1方法のような、この方法はまた、各組織型に対して広範な較正を必要とする。最終的に、この方法は熱誘導型の組織の壊死または変性に関する情報を提供しない。
【0014】
別の公知の方法は、水プロトン拡散係数に対する温度の影響をモニタリングすることを必要とする。例えば、H.Saint Jalmes,「Precision in Temperature Mesurement via T1
or Diffusion Imaging」Proc.Soc’y Mag.Resn.、2:1072、ISSN 1065〜9889(8月号19−25,1995)を参照のこと。しかし、この方法はまた、拡散係数が組織運動および還流に対して感度が高いので制限される。
【0015】
上記の方法の全てにおいて、増加した血流、組織代謝、または誘導された浮腫に起因する生理学的な組織変化は、予測不可能なシグナルバリエーションを生じ得る(すなわち、磁化率の変化)。これらの影響は、熱切除療法の正確なモニタリングに対して標準熱較正曲線をほとんど価値がないかまたは全く価値が無いものにする。さらに、温度のみの測定は、組織切除の有効性または周辺組織に対する副作用を正確に決定するために不充分なものであり得る。
【0016】
他の方法はまた、他の磁気核の化学シフトに対する温度の影響をモニターすることが報告されている。例えば、コバルトNMR化学シフトは、温度の非常に感度の高いプローブである。しかし、59Coの低受容性(receptivity)は、強い磁界(field)強度(≧4.7T)、高濃度、および過度の測定時間を必要とする。A.G.Webbら、「Measurement of Microwave Induced Heating of Breast Tumors in Animal Models Using Cobalt Baced NMR」Proc.Soc’y Mag.Resn.、1:72、ISSN 1065〜9889(8月号19−25,1995)を参照のこと。さらに、コバルト薬剤の毒性は、インビボでの使用に対して重大な制限が存在する。
【0017】
フッ素(19F)NMRもまた、リポソームカプセル化フッ化炭素およびフッ素化ポリマーの温度依存的相転移をモニターするために使用されてきた。例えば、Webbら、「Microencapsulation of Fluorine−Containing Phase Transition Agentsfor Monitoring Temperature Change in
vivo」Proc.Soc’y Mag.Resn.、3:1574、ISSN 1065〜9889(8月号6−12,1994)を参照のこと。しかし、臨床的に、ポリマー性フッ素化化合物の限定された生体分布(biodistribution)、pHおよび組織型に対するフッ素化薬剤の化学シフト依存性、ならびに大きな磁界の必要性のために、19F方法は有用ではない。これらの薬剤はまた、熱誘導型組織壊死については報告していない。
【0018】
常磁性金属錯体を含有する特定の造影剤もまた、インターベンショナル療法の効率をモニターすることが示唆されてきた。このような薬剤は、水共鳴振動数の正常範囲からの、キレート化リガンドのプロトン化学シフト(20〜40ppm)における大きな変化を誘導し得る。インビボにおける大量の水共鳴からの共鳴の常磁性シフトにより、これらの共鳴が観察され得る。例えば、Aimeら、「Yb(III)DOTMA as Contrast Agent in CSI and Temperature Probe in MRS」Proc.Soc’y Mag.Resn.、2:1109、ISSN 1065〜9889(8月号19−25,1995)を参照のこと。これらの超微細シフト化共鳴は温度依存性であるけれども、これらは温度変化を検出するために高濃度の常磁性錯体および臨床的に非現実的な、強い磁界の使用を必要とする。これらの錯体はまた、熱誘導型組織壊死を報告し得ない。
【0019】
さらに近年、正常肝組織と壊死肝組織とを区別するための方法が記載された。Dupasら、「Delineation of Liver Necrosis Using Double Contrast−Enhanced MRI」J.MRI、第7巻、第3号、472〜77頁(1997)。しかし、この方法は非特異的な造影剤の使用に関し、このことは、特に、所望されない組織または組織成分の状態の変化をモニターする能力を制限する。また、この方法は複数の造影剤の投与を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
それゆえ、公知の診断的画像化方法は、それらがインターベンショナル療法を受けている特定の組織または組織成分の状態に対する正確な情報を提供し得ないという点で制限される(すなわち、その組織がネイティブな状態であるかまたは変性状態であるか、壊死であるかまたは生存しているか)。従って、非侵襲的かつ正確に特定の組織または組織成分の状態をモニターし得る診断的画像化方法についての必要性が存在し、これは必要に応じて、インターベンショナル療法の間の誘導型組織壊死の迅速なフィードバックを提供し得る。
【課題を解決するための手段】
【0021】
(発明の要旨)
本発明は、インターベンショナル療法を受けているかまたは受けた特定の組織または組織成分の、コントラスト増強型診断用画像化、特にMRIおよび光学的画像化のための方法を提供する。本方法は以下の工程を包含する:
(a)インターベンショナル療法を受けているかまたは受けた、標的化された組織または組織成分に結合し得る造影剤を、患者に投与する工程;
(b)MRI画像化、紫外光画像化、可視光画像化または赤外光画像化の1つに、該患者を供する工程;ならびに
(c)該造影剤の特徴的な画像化シグナルをモニターしてインターベンショナル療法が完了したかどうかを決定する工程。
【0022】
本発明に使用される造影剤は、画像増強(すなわちシグナル生成)部分(「IEM」)および状態依存性組織結合部分(「SDTBM」)を含む。これらの造影剤は、標的化された組織または組織成分に対する状態依存性結合を実証し得る。このような結合は造影剤のシグナル特性における検出可能な変化を導き、それゆえ、インターベンショナル療法を受けているかまたは受けた標的化された組織内での状態の変化(例えば、切除、分解または変性)の決定を可能にする。
【0023】
本発明の1つの局面において、造影剤の使用は、熱誘導型壊死の熱的インターベンショナル療法の間の「リアルタイム」モニタリングを可能にする。これらの造影剤は、異なる状態の組織間の増加したコントラストを示す。
【0024】
上記に加えて、本発明は以下を提供する:
(項目1) インターベンショナル療法を受けているまたは受けた特異的な組織または組織成分のコントラスト増強型診断的画像化のための方法であって、該方法は以下:
(a)標的化された組織または組織成分に結合し得、かつ該組織または組織成分に特異的な親和性を有し得る造影剤を、患者に投与する工程であって、ここで該造影剤は画像増強部分(IEM)および状態依存性の組織結合部分(SDTBM)を包含する;
(b)MRI画像化、紫外光画像化、可視光画像化または赤外光画像化のうちの1つに、該患者を供する工程;ならびに
(c)該造影剤の特徴的な画像化シグナルをモニターして該インターベンショナル療法が完了したかどうかを決定する工程、
を包含する方法。
(項目2) 前記IEMが有機分子、金属イオン、金属塩および金属キレート剤、粒子、クラスター、鉄粒子、標識ペプチド、タンパク質、ポリマー、リポソーム、有機染料および無機染料からなる群から選択される、項目1に記載される方法。
(項目3) 前記IEMが、原子番号13、21〜34、39〜42、44〜50または57〜83を有する1つ以上の金属イオンと錯体化した少なくとも1つの環式または非環式有機キレート剤を含む、生理学的に適合性のキレート剤を含有する、項目1に記載される方法。
(項目4) 前記金属イオンが、原子番号21〜29、42、44または57〜83を有する常磁性金属イオンである、項目3に記載される方法。
(項目5) 前記常磁性金属イオンが、Gd(III)、Fe(III)、Mn(II)、Mn(III)、Cr(III)、Cu(II)、Dy(III)、Tb(III)、Ho(III)、Er(III)およびEu(III)からなる群から選択される、項目4に記載される方法。
(項目6) 前記金属イオンがGd(III)である、項目5に記載される方法。
(項目7) 前記キレート剤が、DTPA、DOTA、DTPA−BMAおよびHP−DO3Aからなる群から選択される、項目5に記載される方法。
(項目8) 前記IEMが、ルミネッセンス金属錯体を含む、項目1に記載される方法。
(項目9) 前記IEMが、鉄粒子またはDy、GdまたはHoの金属キレートを含む、項目1に記載される方法。
(項目10) 前記SDTBMが低分子および生体分子からなる群から選択される、項目1に記載される方法。
(項目11) 前記SDTBMが、1〜60の炭素原子、および必要に応じて1つ以上の窒素、酸素、イオウ、ハロゲン、脂肪族アミド、エステルスルホンアミド、アシル、スルホネート、ホスフェート、ヒドロキシルまたは有機金属置換基を有する少なくとも1つの脂肪族、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アリールまたは複素環式基を含む低分子を包含する、項目10に記載される方法。
(項目12) 前記SDTBMが少なくとも1つのアリール環を包含する、項目11に記載される方法。
(項目13) 前記SDTBMが少なくとも2つのアリール環を包含する、項目11に記載される方法。
(項目14) 前記SDTBMが、疎水性または親水性末端基を有するかまたは有さない、疎水性アミノ酸残基および/または疎水性置換基を含むペプチドを包含する生体分子を有する、項目10に記載される方法。
(項目15) 前記造影剤が、血漿中の組織または組織成分、間質性の空間、滑液、大脳脊髄液、炎症液(inflammatory fluid)、アブセス液(abcess fluid)、または細胞間空間に状態依存性の結合親和性を示す、項目1に記載される方法。
(項目16) 前記造影剤が、ヒト血清アルブミン、脂肪酸結合タンパク質、グルタチオン−S−トランスフェラーゼおよびリポタンパク質からなる群から選択されるタンパク質に対して状態依存性結合親和性を示す、項目1に記載される方法。
(項目17) 前記造影剤が、生理学的pHの水溶液中で1つ以上の完全または部分的に負の電荷を有する血液半減期延長部分(BHEM)をさらに含み、ここで該負の電荷は前記IEMに対する共有結合または配位共有結合によって部分的または完全に中和され得ない、項目1に記載される方法。
(項目18) 前記造影剤が、ヒト血清アルブミンに対して状態依存性な結合親和性を示す、項目17に記載される方法。
(項目19) そのネイティブな状態において、少なくとも10%の薬剤がヒト血清アルブミンに対して結合する、項目18に記載される方法。
(項目20) 少なくとも50%の薬剤が、ネイティブな状態でのヒト血清アルブミンに対して結合する、項目18に記載される方法。
(項目21) 少なくとも80%の薬剤が、ネイティブな状態でのヒト血清アルブミンに対して結合する、項目18に記載される方法。
(項目22) 少なくとも95%の薬剤が、ネイティブな状態でのヒト血清アルブミンに対して結合する、項目18に記載される方法。
(項目23) 前記造影剤が変性状態でのヒト血清アルブミンに結合親和性を示し、これはネイティブな状態のヒト血清アルブミンに対する該造影剤の結合親和性の約80%未満である、項目18に記載される方法。
(項目24) 前記造影剤が変性状態でのヒト血清アルブミンに結合親和性を示し、これはネイティブな状態のヒト血清アルブミンに対する該造影剤の結合親和性の約50%未満である、項目18に記載される方法。
(項目25) 前記造影剤が、変性状態でのヒト血清アルブミンに結合親和性を示し、これはネイティブな状態のヒト血清アルブミンに対する該造影剤の結合親和性の約20%未満である、項目18に記載される方法。
(項目26) 前記造影剤が、変性状態でのヒト血清アルブミンに結合親和性を示し、これはネイティブな状態のヒト血清アルブミンに対する該造影剤の結合親和性の約10%未満である、項目18に記載される方法。
(項目27) 前記造影剤が、変性状態で前記組織または組織成分へと結合した場合にR1緩和率を示し、これはネイティブな状態で該組織または組織成分へと結合した場合の該造影剤のR1緩和率の約80%未満である、項目1または18に記載される方法。
(項目28) 前記造影剤が、変性状態で前記組織または組織成分へと結合した場合にR1緩和率を示し、これはネイティブな状態で該組織または組織成分へと結合した場合の該造影剤のR1緩和率の約50%未満である、項目1または18に記載される方法。
(項目29) 前記造影剤が、変性状態で前記組織または組織成分へと結合した場合にR1緩和率を示し、これはネイティブな状態で該組織または組織成分へと結合した場合の該造影剤のR1緩和率の約20%未満である、項目1または18に記載される方法。
(項目30) 前記造影剤が、変性状態で前記組織または組織成分へと結合した場合にR1緩和率を示し、これはネイティブな状態で該組織または組織成分へと結合した場合の該造影剤のR1緩和率の約10%未満である、項目1または18に記載される方法。
(項目31) 前記インターベンショナル療法が完了し、そして前記標的化された組織または組織成分が生理学的状態に戻される場合に、前記造影剤がR1緩和率を示し、該緩和率がネイティブな状態での該組織または組織成分へと結合した場合の該造影剤のR1緩和率の約80%未満である、項目1または18に記載される方法。
(項目32) 前記インターベンショナル療法が完了し、そして前記標的化された組織または組織成分が生理学的状態に戻される場合に、前記造影剤がR1緩和率を示し、該緩和率がネイティブな状態での該組織または組織成分へと結合した場合の該造影剤のR1緩和率の約50%未満である、項目1または18に記載される方法。
(項目33) 前記インターベンショナル療法が完了し、そして前記標的化された組織または組織成分が生理学的状態に戻される場合に、前記造影剤がR1緩和率を示し、該緩和率がネイティブな状態での該組織または組織成分へと結合した場合の該造影剤のR1緩和率の約20%未満である、項目1または18に記載される方法。
(項目34) 前記インターベンショナル療法が完了し、そして前記標的化された組織または組織成分が生理学的状態に戻される場合に、前記造影剤がR1緩和率を示し、該緩和率がネイティブな状態での該組織または組織成分へと結合した場合の該造影剤のR1緩和率の約10%未満である、項目1または18に記載される方法。
(項目35) インターベンショナル療法を受けているまたは受けた特異的な組織または組織成分のコントラスト増強型診断的画像化のための方法であって、該方法は以下:
(a)以下の式の1つを有する造影剤を、患者に投与する工程であって、ここでnは1〜4であり得、そしてRは脂肪族の基および/または少なくとも1つのアリール環を包含する;
【化1】


【化2】


【化3】


【化4】


【化5】


【化6】


【化7】


(b)MRI画像化、紫外光画像化、可視光画像化または赤外光画像化のうちの1つに、該患者を供する工程;ならびに
(c)該造影剤の特徴的な画像化シグナルをモニターしてインターベンショナル療法が完了したかどうかを決定する工程、
を包含する方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
本明細書中に記載される発明がより十分に理解され得るために、以下に詳細な説明を記載する。
【0026】
本発明は、インターベンショナル療法の有効性を正確にモニタリングするための非侵襲的な方法を提供する(すなわち、望ましくない組織または組織成分の状態のモニタリング)。特に、本発明は診断的画像化方法を提供し、この方法は標的化された組織または組織成分への状態依存性結合を示す造影剤の使用に関し、そしてこれらのシグナル特性は標的化された組織に結合した場合に変化する。本発明の方法に有用な画像化方法は、MRI(これは、磁気共鳴分光技術を含む)および光学的画像化である。
【0027】
本明細書中で使用される場合、用語「インターベンショナル療法」とは、任意の多数の治療方法を称し、ここでの目的は、所望されない(ガン性、腫瘍性、または新形成性)組織または組織成分の壊死、切除、あるいは凝固を誘導するかまたは引き起こすことである。
【0028】
また、本明細書中で使用されるように、用語「病理学的状態」または「状態」は、インターベンショナル療法を受けている組織または組織成分の2つの生理学的状態を広範に記載するために本明細書中で使用される。1つの状態は、生存、ネイティブまたは生存可能とみなされる。この「最初(初期)」の状態は、通常、任意のインターベンショナル療法を受ける前の組織を記載し、そしてここでの組織および/または細胞性機構(例えば、代謝および呼吸)は機能的である。「第2」の状態(これは首尾良い治療を受けている間かまたは受けた後の組織を記載する)は、非生存、変性、壊死、またはアポトーシスと見なされ得、そしてここでこのような組織および/または細胞性機構は異常であるか、非機能的であるか、または停止している。
【0029】
本明細書中に記載される本発明の方法は、以下の工程を包含する:
(a)インターベンショナル療法を受けているかまたは受けた、標的化された組織または組織成分に結合し得る造影剤を、患者に投与する工程;
(b)MRI画像化、紫外光画像化、可視光画像化または赤外光画像化の1つに、該患者を供する工程;ならびに
(c)該造影剤の特徴的な画像化シグナルをモニターしてインターベンショナル療法が完了したかどうかを決定する工程。
【0030】
本発明に使用される造影剤は、画像増強(すなわちシグナル生成)部分(「IEM」)および状態依存性組織結合部分(「SDTBM」)を含む。以下により詳細に規定される、これらの部分の組み合わせのために、これらの造影剤は標的化された組織または組織成分に対する状態依存性結合を実証し得、そして標的へと結合した場合に変化されるシグナル特性を実証し得る。
【0031】
状態依存性結合とは、標的化された組織の状態に依存する、標的化された組織または組織成分について造影剤が示す相対的な親和性をいう。従って、本発明に使用される薬剤は、ネイティブまたは生存組織についてのこの薬剤の結合親和性と比較して、それらの変性または壊死状態における1つ以上の組織成分に対するより高いかまたはより低い結合親和性を有する。
【0032】
結合におけるこの状態依存性変化は、ある状態の組織を超える他の状態の組織への薬剤の局在化を生じると同時に、生じている状態変化の検出を増強する薬剤のシグナル特性を変更する。例えば、この薬剤が生存組織またはネイティブな組織に対してより高い結合親和性を示す場合(ここで増加した結合親和性はより強いシグナルを生じる)、生存組織は「ホットスポット」として画像化される(または検出される)。インターベンショナル療法の経過の間、生存組織が壊死になってしまうにつれてこのホットスポットは「クール」になる。なぜならば、この壊死組織に対するこの薬剤の結合親和性が減少するためである。逆に、壊死または非生存組織に対してこの薬剤がより高い結合親和性を示す場合、この組織はこの療法の経過の間にホットスポットとして進展する。
【0033】
この薬剤の状態依存性結合親和性が生理学的な状態の変化に非常に高い感受性を示すことが好ましい。好ましい薬剤は、結合親和性および対応するシグナル変化(これは組織または組織成分が受けている状態変化に対応して調節された感受性である)を有するものである。本発明の1つの局面において、インターベンショナル療法手順の経過の間におけるシグナルの変化をモニタリングすることによって、組織切除の効率および範囲の高感度リアルタイムモニタリングが増強される。
【0034】
(造影剤の構造)
本発明に使用される造影剤は、最小限、画像増強剤(すなわちシグナル生成)部分(「IEM」)および状態依存性組織結合部分(「SDTBM」)を含まなければならない。生理学的に適合性の連結基(「L」)が、必要に応じてIEMをSDTBMへと結合するために使用され得る。適切な連結基の例には、直鎖、分岐もしくは環状アルキル、アルキル、アリール、エーテル、ポリヒドロキシル、ポリエーテル、ポリアミン、ヘテロ環式、ペプチド、ペプトイド、ホスフェート、スルフェート、または他の生理学的に適合性の共有結合が挙げられる。この連結基は、血液または他の生物学的液体およびコンパートメントにおける半減期を増強することにより、重要な物理化学的な安定性をこの錯体へと提供し得る。この連結基はまた、この薬剤の生体分解および続いての排泄のための手段を提供し得る。
【0035】
(1.画像増強部分(IEM))
本発明に使用される造影剤の第一のドメインは、IEMであり、これは画像化におけるシグナルまたはコントラストを提供するために使用される任意の化学物質または物質であり得る。IEMは、薬剤のないシグナルと比べて、この薬剤が組織または組織成分へと結合される場合に特徴的な異なるシグナルを生成し得なければならない。光学的画像化法については、これは吸光度、反射度、蛍光、散乱、燐光、化学ルミネセンスにおける変化、吸光ピークの数における増加もしくは減少またはそれらの最大波長における任意の変化であり得るか、あるいは任意の他の変化であり得る。この外部検出による変化は、結合型IEMに対応する。MRIについては、このことは水プロトンの誘導された緩和速度(1/T1または1/T2)または任意の他の近傍の核の誘導された緩和速度における変化であり得るか、あるいはIEMまたはピークのいずれかのNMRスペクトルにおける1つ以上のピークのシフト(これはSDTBMのための結合部位中の核由来であるようである)であり得る。
【0036】
従って、このIEMは有機分子、金属イオン、塩またはキレート(金属キレートを含む);金属クラスターまたは粒子(特に鉄粒子);あるいは標識ペプチド、タンパク質、ポリマーまたはリポソームであり得る。光学的画像化法(これは紫外線、可視光および/または赤外光を使用する)のために、IEMはまた、任意の有機色素または無機色素であり得る。有用な有機色素の例にはインドシアニングリーンおよびフルオレセイン(fluoroscein)が挙げられる。無機色素の例には、発光性金属錯体(例えば、Eu(III)、Tb(III)および他のランタニドイオン(原子番号57〜71)の錯体)が挙げられる。W. Dew. Horrocks および M. Albin、Progr. Inorg. Chem. 1984、31、1−104頁を参照のこと。
【0037】
特に有用なIEMには、1以上の金属イオンで錯体化される1以上の環式または非環式の有機キレート化剤からなる生理学的に適合性の金属キレート化合物がある。光学画像化法のために、好ましい金属イオンには、原子番号13、21〜31、39〜42、44〜50または57〜83を有する金属イオンが挙げられる。MRIのために、好ましい金属イオンには、原子番号21〜29、42、44または57〜83を有する金属イオンが挙げられ、そしてより好ましくは原子番号21〜29、42、44または57〜83を有する金属イオンの常磁性形態が挙げられる。IEMが常磁性金属キレートを含む場合、好ましい常磁性金属は、Gd(III)、Fe(III)、Mn(IIおよびIII)、Cr(III)、Cu(II)、Dy(III)、Tb(IIIおよびIV)、Ho(III)、Er(III)、Pr(III)ならびにEu(IIおよびIII)からなる群から選択される。最も好ましいのはGd(III)である。
【0038】
IEMが金属キレートである場合、この金属キレートは、この薬剤が標的化された組織を含む体内を通過する間、任意の有意な程度には解離されてはならない。遊離金属イオン、特に遊離の常磁性金属イオンの著しい放出は毒性を生じ得、これは、病理学的組織に受容可能なだけにすぎない。
【0039】
一般に、金属キレートの毒性の程度は、排出前のインビボでのその解離の程度に関係する。一般に、毒性は、遊離の金属イオン量と共に増加する。動力学的不安定性が高い錯体について、高い熱力学的安定性(少なくとも1015-1およびより好ましくは少なくとも1020-1の生成定数)が、解離およびその付随する毒性を最小にするために望ましい。動力学不安定性が比較的低い錯体について、解離はより低い生成定数(すなわち、1010-1以上)で最小にされ得る。
【0040】
毒性はまた、錯体における開かれた配位部位の数との関数である。一般に、水の配位部位が少なければ少ないほど、キレート剤が常磁性金属を放出する傾向が少なくなる。従って、好ましくは、この錯体は、2つ、1つまたは0の開かれた配位部位を含む。一般に、2つ以上の開かれた部位の存在は、インビボでの金属イオンの放出により毒性を受容不可能に増加させる。
【0041】
MRI画像を有効に増強するために、錯体は、水プロトンあるいは他の画像化または分光核(spectroscopic nulei)(IEM、他の生体分子または注入された生体マーカー上のプロトンまたはP−31、C−13、Na−23、またはF−19を含む)の緩和速度1/T1(縦、またはスピン−格子)、および/または1/T2(横、またはスピン−スピン)を増強し得なければならない。緩和率(relaxivity)R1およびR2は、それぞれ、金属イオンのmMあたりの1/T1または1/T2、(すなわち、mM-1-1)を増大する能力として定義される。臨床MRIの最も一般的な形態である水プロトンMRIについて、キレート配位子に結合する常磁性イオンがなお、水交換のための1つ以上の開かれた(open)配位部位を有する場合、緩和性は最適である(R.B.Lauffer,Chemical Reviews,87,901〜927頁(1987))。しかし、これは、一般に、開かれた配位部位の増加数と共に減少する金属キレート(以下を参照のこと)の安定性と平衡に保たなければならない。従って、より好ましくは、錯体は1つまたは2つのみの開かれた配位部位を含む。
【0042】
キレート配位子の型は、MRI薬剤についての水交換速度に非常に影響を与え得る。特に、この水交換速度は、熱切除療法で生成される組織コントラストに重要な役割を果たし得る。一般に、より高い水交換速度は、常磁性中心と相互作用するより多数の水分子のために、より高いR1を与える;逆に、より低い交換速度は、より低いR1を与える。従って、遅い水交換速度(kex−298K=500〜10,000ns)を有する金属キレート錯体は、一般に、温度が増加するに従って1/T1(R1)における増加を示し、これは水分子の増加した熱運動および常磁性中心近傍の増加した水交換の明らかな影響を反映する;次いで、通常、R1は生理学的よりも高い温度で最大コントラスト値に達する。次いで、いくつかの温度では、増加した水交換の有益な影響が、各水分子が常磁中心の近傍で消費する不充分な量の時間により差し引きされるので、このコントラストは最小値に低下する。
【0043】
中程度に速い水交換速度(kex−298K 10〜100ns)を有する金属キレートは、1/T1(R1)の温度に対する比較的均一な依存性を実証し、次いで、これは、再度、各水分子がこのような状態における常磁性金属近傍で消費する不充分な時間のために、いくらかより高い温度で低下する。
【0044】
生理学的およびそれより高い温度で非常に早い水交換速度(kex−298K
0.1〜10ns)を有する金属キレートは、水分子の増加した熱運動が、各水分子が常磁性中心の近傍で消費する時間をさらに制限するので、減少する1/T1を実証する。しかし、このようなキレートは各水分子が常磁性金属の近傍で消費する増加した時間に起因して、より低い温度(すなわち、極低温)で1/T1の増加を実証する。
【0045】
本発明の方法が熱切除療法をモニターするために使用される場合、最初のネイティブな(すなわち生存可能な)組織状態(R1初期)と変性した(すなわち壊死した)組織状態(R1第2)との間のコントラストを最大にするために、中程度に早い水交換のキレートがIEMとして使用されることが好ましい。極低温(cryogenic)技術を使用するこれらの療法のために、温度が低下するにつれての1/T1(R1)における増加の選択的な利点を採用するために、非常に早い水交換速度のキレートを使用することが好ましくあり得る。インターベンショナル療法の全ての方法において、組織状態に関するR1プロフィールの感度が、目的の組織または組織成分の変性プロフィールと正確に一致することが好ましい。
【0046】
双極子−双極子相互作用を介して組織核(tissue nuclei)の1/T1または1/T2を高めることに加えて、MRI剤は、2つの他の磁気特性に影響し得るので、臨床的に使用し得る。
【0047】
1)高い磁化率の鉄粒子または金属キレート(特に、Dy、GdまたはHoのキレート)は、微視的な磁化率勾配を作り出すことにより、組織のMRIシグナル強度を変化し得る(A.Villringerら、Magn.Reson.Med.6、164〜174頁(1988))。この用途には、キレート上における空の配位部位は必要ではない。
【0048】
2)鉄粒子または金属キレートはまた、水プロトンの共鳴周波数、あるいは注入剤またはそれが結合する組織成分上の他の画像化核または分光核(プロトン、P−31、C−13、Na−23またはF−19を含む)の共鳴周波数をシフトするために使用され得る。ここで、使用される核およびストラテジーに依存して、0〜3個の空の配位部位が使用され得る。
【0049】
この有機キレート配位子は、生理学的に適合可能であるべきである。このキレート配位子の分子サイズは、この常磁性金属のサイズに適合しなければならない。従って、Gd(III)(これは0.938Aの結晶イオン半径を有する)は、鉄(III)(これは0.64Aの結晶イオン半径を有する)よりも大きいキレート配位子を必要とする。
【0050】
MRI剤に適した多くのキレート配位子が当該技術分野で公知である。これらはまた、他の形態の生物学的画像化のための金属キレートに使用され得る。好ましいIEMには、以下が挙げられる:
【0051】
【化8】

特定の用途において、他の金属がGd3+を置換し得ることは、当該技術分野で公知である。
【0052】
(2.状態依存性組織結合部分(SDTBM))
本発明に使用される造影剤の第2のドメインは、状態依存性組織結合部分(SDTBM)であり、これはこの薬剤に対して標的化機能を提供する。このSDTBMは非常に可変性であり得、これは目的の適用に依存する。それゆえ、SDTBMの特定の構造は、結合されるべき特定の組織または組織成分に依存する。しかし、一般に、SDTBMは、標的化された組織または組織成分に対する結合親和性における状態依存性変化を有する造影剤を提供しなければならない。結合親和性におけるこの状態依存性変化もまた、造影剤のシグナル特性における検出可能な変化を生じなければならない。結合親和性における変化は十分感度が高くなければならず、そして結合部位の数は、組織の状態が変化した場合にコントラストが生じるように十分多くなければならない。
【0053】
このSDTBMは、低分子、あるいは生体分子を含み得る。生体分子は分子量およびサイズが変化し得るが、これらが天然に存在するサブユニット(すなわち、アミノ酸またはヌクレオチド)から生物学的に誘導されるかまたは合成されるという点で、すべて同一の基本的な特徴を共有する。生体分子の例には、レセプターリガンド、サッカリド、脂質、ホルモン、ペプチド、タンパク質、ヌクレオチドおよび核酸(DNA、RNA)、ならびに抗体(そのフラグメントおよびモノクローナルおよび遺伝子操作されたバージョンを含む)が挙げられる。
【0054】
一方、低分子は、周知の合成的に誘導された比較的低分子量の有機分子であり、これは生体分子とほとんどまたは全く化学的な類似性を有さない。典型的には、低分子には生体分子サブユニットおよび連結(linkage)(例えば、アミド結合によって連結された天然のアミノ酸)は挙げられない。低分子の例には、合成薬剤、親油性または両親媒性有機分子、およびポルフィリンが挙げられる。
【0055】
より好ましいSDTBMは、血漿、間質空間(細胞間液)または細胞内空間にて、タンパク質と可逆的に結合するものである。タンパク質に結合する任意の生体分子または低分子が使用され得るが、最も有用なものは高濃度で存在するかまたは特定のリガンドに対して多数の結合部位を有するかのいずれかのタンパク質に結合するものである。通常、組織、血漿、または間質空間もしくは細胞内空間中のネイティブな状態の多数のタンパク質は、変性または折たたまれていない状態のものよりも構造的および化学的に非常に明確であるので、このようなネイティブな状態のものにその対応する変性状態のものよりも高い親和性で結合するSDTBMを設計することは本発明の好ましい局面である。ネイティブな状態と変性状態との間の結合親和性におけるこの差異は、この薬剤のシグナル特性に検出可能な変化を導く。
【0056】
造影剤が、水のプロトンを緩和して、結果的にMRI画像に影響を及ぼす能力の定量的な測定は、その緩和率により提供される。先に記載したように、緩和率とは、溶液中の常磁性金属イオンの濃度に対する水のプロトンシグナル強度の依存性である。緩和率は、造影剤について観察された単位時間あたりの誘起T1またはT2緩和として定義され(mM-1-1の単位のR1またはR2)、ここで、造影剤の濃度はミリモル(mM)で表わされる。
【0057】
ガドリニウム錯体の物理的特性は、造影剤の緩和率に影響を及ぼす。ガドリニウム錯体に結合した水分子の数、水分子とバルク溶液との交換速度、7個の不対電子の緩和時間、および溶液中での造影剤の回転タンブリング時間(これは、回転相関時間として知られる)は全て、全体として観察される緩和率に寄与する。これらの物理的特性の変化は、この緩和率を劇的に変化させ得る。水交換速度の緩和率に対する影響は上に記載した。さらに、小さい、比較的低分子量のガドリニウムキレートの大きな高分子への結合により、回転タンブリング時間が遅延し、3〜10のファクターで緩和増強が増大する。造影剤のタンパク質への結合により、ラーモア振動数と同じタイムスケールで生じる常磁性イオンと水のプロトンとの間で磁気的揺動(magnetic fluctuation)が引き起こされ、これは最も効率的な縦(T1)緩和の可能性および最も高い可能性の緩和率を生じる。従って、タンパク質のような大きな高分子へのMRI造影剤の状態依存性結合は、他の状態を超えるある状態で、MRIシグナル(およびコントラスト)を高める効率的な方法である。造影剤への異なるレベルの結合を有する領域間に、画像コントラストが生じる。本発明の好ましい局面において、高い結合親和性の領域(ネイティブな状態)と低い結合親和性の領域(変性状態)との間で、画像コントラストが生じる。
【0058】
異なる状態の組織または組織成分との間にコントラストを生じるために、この組織が状態を変化した場合、少なくとも20%以上、造影剤の結合親和性の変化を有することが所望される。例えば、この薬剤が生存状態の標的化された組織または組織成分(すなわち、HSA)に90%結合(すなわち10%遊離)するのならば、この薬剤は同一条件下で非生存(すなわち、変性)状態に72%以下で結合するべきである。結合親和性における差異が大きければ大きいほど、より多きいコントラストが生じる。第2の組織状態(これはインターベンショナル療法に起因してまたはその間に生じる)に対する造影剤の結合親和性は、第2の状態における結合親和性と比較して第1の組織状態に対する結合親和性の80%以下、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、さらにより好ましくは20%以下、そして最も好ましくは、10%以下であるべきである。
【0059】
IEMが光学的画像化での使用に適切な発色団である場合において、本発明は、非組織結合型薬剤の光学特性と組織結合型造影剤の光学特性との間に、測定可能な相違が存在する必要がある。例えば、インドシアニングリーンの最大吸光度は、血漿または血液中での結合の際に、770〜780nmから790〜805nmへとシフトする。この状態依存性結合は、組織が変性され、そしてこのタンパク質がもはや結合しない場合の色素の吸光度におけるシフトをモニタリングすることにより、組織変性を検出するために使用され得る。一般的に、本発明に有用な光学的薬剤は組織状態に対してより高い感受性を提供する傾向を有することが、当業者に理解される。それゆえ、十分なコントラストを生じるために、この光学的薬剤は、2つの組織状態の間で、本発明のMR薬剤と同じぐらい大きい結合親和性の差異、または同じくらい大きいシグナルの差異を必要としなくてもよい。
【0060】
状態依存性結合はまた、造影剤の特徴的なシグナル変化を生じなければならない。MRIでは、この状態依存性シグナル変化は、水プロトンの誘起緩和速度(1/T1または1/T2)の変化、または緩和率R1およびR2として表わされ得る。本発明の好ましい局面においては、第2の組織状態におけるこの薬剤の緩和率(R1第2)は、望ましくは、最初の組織状態における薬剤の緩和率(R1初期)の80%以下である。好ましくは、緩和率R1第2は、緩和率R1初期の50%以下、さらに好ましくは、20%以下、さらにより好ましくは、10%以下である。
【0061】
インターベンショナル療法が完了し、そして標的化された組織が生理学的状態に戻った後(例えば、熱変性の場合、温度が生理学的温度に戻った後)、この薬剤のR1緩和率が最初の組織状態における薬剤の緩和率(R1初期)よりもさらに低く、好ましくはR1初期の80%以下、より好ましくはR1初期の50%以下、さらにより好ましくはR1初期の20%以下、そして最も好ましくは10%以下であることもまた、好ましい。インターベンショナル療法が完了し、そして標的化された組織が生理学的状態に戻った後、この造影剤のR1緩和率が、このインターベンショナル療法が完了した直後に測定されたこの薬剤の緩和率に維持されることもまた、好ましい。
【0062】
先に記載したように、このSDTBMの特異的な構造は結合されるべき特定の組織または組織成分に依存する。従って、標的化される組織または組織成分を最初に決定することが必須である。
【0063】
多数の可能な結合部位が意図される。このような結合部位には、核酸、グリコサミノグリカン(以前には酸ムコ多糖類として公知)、石灰化組織、骨、脂肪、滑液、細胞膜、タンパク質、リポタンパク質、酵素、プロテオグリカン、アミロイドおよびセロイドが挙げられる。好ましい結合部位はタンパク質であり、血清および構造的/結合タンパク質がより好ましい。
【0064】
標的がタンパク質の場合、適切なタンパク質には、以下が挙げられる:ヒト血清アルブミン(HSA、血漿中では0.7mM;間質空間では、それより低い濃度);脂肪酸結合タンパク質(FABP、Z−タンパク質またはプロテインAとしても公知、肝臓、腎臓、心臓および他の組織の主要細胞中に、およそ0.1mM);グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST;これは、リガンジンとしても公知;肝臓、腎臓、心臓および他の組織の主要細胞中に、およそ0.1mM);α1−酸性糖タンパク質(AAG、分子量41,000、0.55〜1.4g/L)およびリポタンパク質(例えばアテローム硬化性プラーク中に集中する)。他の例には、細胞外マトリックスの構造タンパク質(コラーゲン、ラミニン、エラスチン、フィブロネクチン、エンタクチン、ビトロネクチン)、アミロイド(アルツハイマー病のβ−2アミロイドタンパク質(A4)を含む)、セロイド(またはリポフスチン)、および糖タンパク質(例えば、オステオネクチン、テネイシンおよびトロンボスポンジン)が挙げられる。
【0065】
正に荷電した造影剤または塩基性SDTBM含有造影剤に好ましいタンパク質標的は、α1−酸性糖タンパク質(AAG)である。この正の急性期タンパク質の血漿レベルは、疾患状態に伴い著しく変わる。例えば、AAGの濃度は、炎症性刺激の後に2〜4倍高くなり、AAGの血漿レベルは、神経膠腫、転移性の乳ガンおよび他のガン、新生児感染、ならびに慢性疼痛のための予後判定の補助として示唆されている。アテローム硬化症、クローン病、心筋梗塞、腎炎、および細菌感染、ウイルス感染および術後感染において、高いレベルが認められている。高い可溶性のAAGは、183アミノ酸の単一のポリペプチド鎖を有し、そして高い炭水化物含量およびシアリン酸含量(それぞれ、45%および12%)ならびにpH2.7の低い等電点を含む、いくつかの珍しい特性によって特徴づけられる。α1−酸性糖タンパク質は、多くの塩基性薬物(プロプラノロール(Ka=11.3×105)、イミプラミン(Ka=2.4×105)およびクロルプロマジン(Ka=35.4×105))の結合に関連してきた。遊離のリグノカイン(lignocaine)の割合は、患者におけるAAGの濃度(0.4〜3gl-1)に相関し、このことは、血漿中における他のタンパク質(例えば、HSA)を超えるAAGに対する選択的結合が理論的な薬剤設計法を使用して達成され得ることを意味する。
【0066】
HSA、FABPおよびGSTに対する配位子は、負に荷電した分子であり、そして部分的に負に荷電した基(例えば、エステル、アミドまたはケトンカルボニル酸素)により中性となる傾向にあるので、より好ましいSDTBMである;このような化合物は、一般に、正に荷電した分子よりも毒性が低いと考えられる。これらの3種のタンパク質のうち、いくつかの場合において、HSAは最も好ましくあり得る。なぜなら、FABPおよびGSTに対する配位子は、結合前にいくつかの細胞内への取り込みを必要とするからである。一般に、細胞内への取り込みは、毒性を最小限にするために造影剤については回避される(肝臓内を除く)。HSAは、多くの細胞外液環境(血漿、正常組織およびガン組織の間質空間、滑液、脳脊髄液および炎症性液(inflammatory fluid)または膿瘍液(abscess fluid)を含む)でかなりの量で存在している。多くの病理学的組織(例えば、腫瘍、炎症、アテローム硬化性プラークまたはアテローム硬化性動脈壁)では、毛細管が漏れやすくなり、その結果、さらにより高いHSAレベルが生じる。このことによって、本発明の薬剤の有用性が増強され得る。なぜならば、多数のインターベンショナル療法が疾患組織を標的化するからである。
【0067】
HSAはまた、通常、多数の結合部位で、良好な親和性、および広範な種々の構造的に類似していない分子に結合する高い能力を有することが公知であるので好ましい。それゆえ、造影剤の設計において、より高い順応性が存在する。
【0068】
ネイティブな状態のHSAに対する結合について、広範な疎水性および両親媒性基質がSDTBMとして有用であり得る(U.Kragh−Hansen、Pharm.Rev.、33、17〜53頁(1981);X.M.Heら、Nature、358、209〜215頁(1992);D.C.Carter、Adv.Protein Chem.、45、153〜203頁(1994))。これらには、1個〜60個の炭素を有する、少なくとも1つの脂肪族基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリール基または複素環式基、および、必要に応じて1個以上の窒素置換基、酸素置換基、イオウ置換基、ハロゲン置換基、脂肪族アミド置換基、エステルスルホンアミド置換基、アシル置換基、スルホネート置換基、ホスフェート置換基、ヒドロキシル置換基または有機金属置換基を含む低分子が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、あまり好ましくはないが、SDTBMは、疎水性または親水性の末端基を有するかまたは有さない、疎水性アミノ酸残基および/または置換基を含むペプチドのような生体分子であり得る。
【0069】
上記のように、HSAへの結合については、広範な疎水性基質がSDTBMとして有用であり得る。一般に、HSAおよびおそらく他のタンパク質に対する結合親和性は、SDTBMの疎水性と共に増加する。置換基(例えば、SDPBM)の疎水性の理論上の評価は、置換基についてHansch1定数を用いて、TBM自体に対するオクタノール−水(またはオクタノール−緩衝液)分配係数の対数(log P)への寄与を計算することにより得られ得る。A.LeoおよびC.Hansch,「Partition Coefficients and their Uses」,Chemical Reviews,71,E525〜616頁(1971);K.C.Chu,「The Quantitative Analysis of Structure−Activity Relationships」,Burger’s Medicinal Chemistry,Part 1, 393〜418頁(第4版、1980)を参照のこと。結合親和性は、log P寄与の増加と共に増加する。例えば、脂肪族基の置換基について、以下の1定数が使用され得る:
【0070】
【表1】

アリール基上の置換基について、以下の定数が使用され得る:
【0071】
【表2】

従って、IEMに取り付いたp−メチルベンジル基に対するlog P寄与(contribution)は、(−CH2−基に対する評価のようにCH3に対する1−脂肪族の値を用いて)以下のように計算される:
log P寄与=0.50+2.15+0.56=3.2。
【0072】
HSAへの結合において、2の最小のlog P寄与(4つのCH3基または1つのフェニル環に等しい)は、著しい結合を達成するために必要とされる。3のlog P寄与は、より好ましい。4のlog P寄与は、さらにより好ましい。
【0073】
HSA結合は、pH7.4緩衝液中の4.5%重量/体積HSAを用いる平衡透析または限外濾過により評価され得る。好ましくは少なくとも10%、およびより好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも80%、および最も好ましくは少なくとも95%の造影剤が、生理学的に適切な濃度(MRIおよび光学的画像化について血漿中に0.01〜10mM)でネイティブな状態のHSAに結合する。この適用において、HSAへの造影剤の結合パーセントの測定は、約+/−5%の誤差を有する。他のタンパク質または血清へのタンパク質結合は、同様の様式で評価され得る。
【0074】
造影剤への親油性基の付加は、薬剤の可溶性を減少させるようである。臨床的に効果的な投与量レベルまたはより高い投与量レベルでの、造影剤の効率的な溶解性を保持するために、1つ以上の水素結合基(酸素、窒素等)をSDTBMに組み込むことは、好ましくあり得る。
【0075】
純粋に脂肪族基がSDTBMとして使用され得る一方で、これらは混合脂肪アリール基または純粋にアリール基ほど好ましくなくてもよい。特に、負の電荷が純粋に脂肪基、特に長く、かつ可変性のものに接着される場合、造影剤は、内因性分子(例えば、脂肪酸)の代謝あるいは膜タンパク質と脂質との間の相互作用を妨げ得る。これは、薬剤の毒性を増加し得る。従って、SDTBMは少なくとも1つのアリール環を含むことが好ましい。
【0076】
腫瘍または組織増強に対するネイティブな状態のHSA結合型MRI剤の場合において、造影剤が、タンパク質に結合する場合、薬剤を十分に固定する2つ以上の異なる親油性基を含有することは特に好ましい。これらの基は、1つのSDTBM上であり得るか、または造影剤に取り付いた2つ以上の別個の化学基上であり得る。それらのかさ高い(bulky)性質および剛性(rigidity)のために、2つ以上の基それぞれが芳香族環からなることは好ましく、全分子内の2つ以上の環は、固定された非平面方向に配置される。
【0077】
一般に、MRI剤の磁気効力または緩和は、薬剤がHSAにほぼ等しい回転相関時間を有する場合最も高い(R.B.Lauffer,Chemical Reviews,87,901〜927頁(1987))。Gd−DTPAのような低分子は、約0.1ナノ秒(nsec)の回転相関時間を有するが、HSAは5〜10nsecより大きな相関時間を有する;キレートがこのより長い相関時間を有する場合、常磁性イオンと水プロトンとの間の磁気変動は、ラーモア振動数と同じ時間スケールで起こり、これは最も効率的な縦(T1)緩和の可能性、従って最も高い可能性のある緩和率を生じる。タンパク質に結合する場合、キレートの屈曲性はいずれも、有効な回転相関時間を減少させ、従って緩和率を減少させると予想される。タンパク質に取り付く1つの部位は、いくつかの方向における屈曲性を生じ得るため、さらなる取り付け部位が好ましくあり得る。
【0078】
上記のように、状態依存性結合はまた、造影剤の特徴的なシグナル変化を生じなければならない。MRIでは、この状態依存性シグナル変化は、水プロトンの誘起緩和速度(1/T1または1/T2)の変化、または緩和率R1およびR2として表わされ得る。それゆえ、HSAが標的である場合、薬剤が最大緩和率へと調整される程度は、HSAの存在下におけるその2つの生理学的な状態(ネイティブおよび変性)の状態依存性緩和率結合(R1結合型)を測定することによって、評価され得る。本発明の好ましい局面において、第2の組織状態におけるこの薬剤の緩和率(R1第2)は、望ましくは、最初の組織状態における薬剤の緩和率(R1開始時)の80%以下である。好ましくは、R1第2は、R1開始時の50%以下、さらに好ましくは、20%以下、そして最も好ましくは、10%以下である。
【0079】
これは、その2つの生理学的状態で、遊離のキレートの緩和率(R1−遊離)、ならびに緩和率(R1−観察)、および4.5%HSA中の薬剤の結合パーセントの測定を必要とする。本発明の好ましい局面において、変性状態におけるR1−遊離は、R1観察に対応する。R1観察は、R1−遊離およびR1−結合のモル分率加重平均である:
【0080】
【数1】

(HSAに対する状態依存性結合)
上記のように、本発明に使用されるべき造影剤について好ましい標的化タンパク質は、HSAである。このような適用のために、造影剤は、この薬剤が血液中に残存する(すなわち、HSAに結合する)程度を増加させるために、増強された血液半減期を示し、それゆえ、インターベンショナル療法の経過にわたってずっと利用可能であることが望ましい。延長された血液半減期は、造影剤の肝細胞取り込みの速度を減少させるために、血液半減期延長部分(「BHEM」)として機能する連結基(L)を含むことにより達成され得る。米国特許出願第08/382,317号(1995年2月1日に出願され、その内容は、参考として援用される)を参照のこと。BHEMは非常に親水性の基であり、これは水と水素結合し得る。造影剤上における親水性BHEMの存在は、この薬剤の肝細胞取り込みを減少する。
【0081】
BHEMとして働く化学基の例として、2つ以上の孤立電子対(すなわち、完全なまたは部分的な負の電荷)を有するかもしくは水との水素結合のための正に荷電した水素原子(すなわち、プロトン化アミン)を有する荷電したまたは中性ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、またはハロゲン(特にフッ素))を結合した炭素、リン(phosphorous)、タングステン、モリブデン、または硫黄原子が挙げられる。これらは、スルホン、エーテル、ウレア、チオ−ウレア、アミンスルホンアミド、カルバメート、ペプチド、エステル、カーボネート、およびアセタールのような基を含む。好ましい基として、生理学的pHの水溶液において、1つ以上の部分的または完全に負の電荷を有する基が挙げられ、ここで負に荷電した原子は、IEMへの共有結合、または配位共有結合により部分的または完全に中和され得ない。これらの好ましいBHEMの例として、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、カルボキシレート、およびスルホネートのような負に荷電した基が挙げられる。リン酸基またはその任意のエステル形態を有する基は、さらに好ましい。リン酸ジエステルはなおさらに好ましい。なぜなら:a)それらは4つの水素結合する酸素により非常に親水性である;b)それらは以下に示す技術を用いて比較的容易に合成される;c)それらはIEMとSDTBMとの間の優秀なリンカーとして作用する;そしてd)リン酸化合物は体内において自然に存在し、そして代謝されるので、リン酸ジエステル含有造影剤は非毒性であることが予想される、からである。
【0082】
BHEMの本発明の造影剤への組み込みは、薬剤の延長された血液保持をもたらす。好ましくは、血液保持は、ラット血漿薬物動態学実験である、特定の長さの時間(例えば、0〜10分、0〜30分、0〜60分、0〜120分または0〜無限大)に対する血漿濃度対時間曲線下の面積(「曲線下の面積」または「AUC−濃度」)の計算により測定される。(AUC−濃度により測定されるように)血液保持は、ラット、ウサギ、または高等哺乳動物に対する造影剤の投与により実験的に評価され得る。血液半減期延長は、ラットにおいてよりウサギおよび高等哺乳動物においてより高いことが観察された。この適用において、AUC−濃度により測定されるように、血液半減期データは、ラットにおける実験を表す。このデータに関する誤差は、約+/−10%である。
【0083】
半減期測定自体が使用されない理由は、この量の数学的な定義がしばしば明確でなく、そして得られた評価は、使用した薬物動態学モデルおよび血液サンプルが得られた時間の長さに依存して変化し得るからである。
【0084】
例えば、2匹のラットにおける0.1mmol/kgのGd153標識Gd−DTPAを尾静脈注射した後に観察された平均血漿濃度を、以下に示す。MacintoshプログラムKaleidaGraphを用いて、0〜10分のこのAUC−濃度を、3.5mM分として計算した。
【0085】
【表3】

血清タンパク質(例えば、HSA)の標的化に有用な本発明の造影剤は、BHEMがIEMおよびSDTBMに添加された場合、少なくとも20%のAUC−濃度の増加を示す。それらは、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも70%、およびさらにより好ましくは少なくとも100%のAUC−濃度の増加を示す。一般に、BHEMにより引き起こされたAUC−濃度の増加は、血漿における結合が著しい場合、より高い(例えば、20%〜50%、またはそれ以上)。AUC−濃度の計算されたパーセントの増加は、異なる時間にわたって測定されたAUC−濃度のパーセントの増加とは異なり得る。一般に、BHEMにより引き起こされたAUC−濃度のパーセントの増加は、より長い期間(例えば、0〜30分)にわたって得たAUC−濃度の方が0〜10分の場合より高い。
【0086】
造影剤分子全体の構造的および物理的特性は血漿中におけるその結合を支配するので、所望の結合に適合するIEMおよびBHEMを選択することは重要である。例えば、HSA上の正に荷電した結合部位への結合を達成するために、正味の中性電荷または正味の負電荷のIEMおよびBHEMを有し、斥力の可能性を低下させ、そしておそらく結合親和力をさらに増加させることが好ましい。α酸性糖タンパク質へ結合するためには、造影剤の少なくともいくつかの部分は正に荷電するべきである。グロブリンへ結合するためには、造影剤の少なくともいくつかの部分はその性質においてステロイド性であるべきである。リポタンパク質に結合するためには、造影剤の少なくともいくつかの部分は、親油性または脂肪酸様であるべきである。
【0087】
BHEMは、IEMおよびSDTBMに関して種々の位置で配置され得ることが意図される。しかし、これらの部分の位置は、1つの部分が、他の部分の意図された機能を妨害するような位置でないかもしれない。例えば、HSA結合造影剤の場合、BHEMの配置は、STDBMの造影剤をHSAに結合する能力を妨げるべきではない。HSAにおける主な結合部位が、疎水性の内部(特に、「つま先(toe)」領域付近)および正電荷を帯びた「足首(ankle)」領域を有する靴下様(sock−like)(X.M.Heら,Nature,358,209〜215頁(1992);D.C.Carter,Adv.Protein Chem.,45,153〜203頁(1994))であるので、STDBMの遠位部分が極めて親水性になされた場合、STDBMの結合親和性は減少する。例示的な例として、STDBMがフェニル環である場合、環上の最も好ましいBHEMの位置はオルト、続いてメタである。パラ位の親水基は、HSAに対するSTDBMの結合親和性を低減させる。
【0088】
金属キレートからなるIEMに対して、金属イオンとキレート配位子との間の結合の強度が顕著に低下するように、BHEMおよびSDTBMはIEMに結合されないのが好ましい。例えば、キレート化アーム(chelating arm)がアセテートである場合、好ましくは、BHEMまたはSDTBMをアセテートの酸素に結合されない。
【0089】
別の位置的な必要条件は、BHEMの負に荷電した原子が、IEMとの共有結合または配位共有結合によって部分的または完全に中和され得ないことである;このことは、水性系において、BHEMの非常に親水性の原子がかなり溶媒和されることを確実にする。例えば、IEMが金属キレートである場合、BHEMの負に荷電した原子が、最も安定な環サイズである5−または6−員キレート環の形成を経て、配位共有結合を通じてIEMの正に荷電した金属イオン(Mn+)によって中和され得ないような位置に置くことが重要である。5−員キレート環はIEMについての目的の金属イオン(例えば、ガドリニウム)に対して最も安定であるので、これらの形成を妨げるために最も重要である。従って、以下の図に示すように、ホスフィネート(−PO2−)またはホスホネート(−PO3−)BHEMは、−CH2−リンカーを介してアミノカルボキシレートキレート剤の窒素原子に結合し得ない。なぜなら、これは非常に安定な5−員キレート環を形成するためである。同様に、ホスホジエステル(−OPO3−)BHEMは、−CH2−リンカーを介してアミノカルボキシレートキレート剤の窒素原子に結合されるべきでない。なぜなら、これは6−員キレート環を形成し得るためである。しかし、これらのBHEMの両方は他の位置(例えば、リガンドのエチレン骨格)に結合され得る。いくつかの場合において、示されるように、リンカー基の長さを増加させて、5−または6−員環を確実に形成できなくすることが好ましくあり得る。
【0090】
【化9】

本発明の部分が、造影剤において、以下の構造式であり得るように配置され得ることが意図される:
【0091】
【数2】

ここで、mは、0から4に等しくあり得、
s、oおよびpは同一であるかまたは異なり、そして1〜4に等しくあり得、
そしてrおよびqは少なくとも1である。
【0092】
本発明の部分が上記の構造(1)におけるように造影剤に配置される場合、BHEMは好ましくはスルホン、ウレア、チオウレア、アミン、スルホンアミド、カルバメート、ペプチド、エステル、カーボネート、アセタールであり、そしてより好ましくは、
【0093】
【化10】

またはエステル形態であり、
ここで、ZはP、W、MoまたはSであり、
1、Y2はOまたはSであり、
3、Y4は、O、Sであるか、または存在せず、
2は、H、C1-6アルキルであるか、または存在しない。
最も好ましくは、BHEMはホスフェート基である。
【0094】
本発明の部分が上記の構造(2)のように造影剤に配置される場合、BHEMは好ましくはスルホン、ウレア、チオウレア、アミン、スルホンアミド、カルバメート、ペプチド、エステル、カーボネート、アセタールであり、そしてより好ましくは、BHEMは以下の式を有する:
【0095】
【化11】

またはエステル形態であり、
ここで、ZはP、WまたはMoであり、
1、Y2はOまたはSであり、
3、Y4は、O、Sであるか、または存在せず、
2は、H、C1-6アルキルであるか、または存在しない。
最も好ましくは、BHEMはホスフェート基である。
【0096】
本発明のこの部分が上記の構造(3)のように造影剤に配置される場合、BHEMは好ましくはSO3-またはエステル形態、スルホン、ウレア、チオウレア、アミン、スルホンアミド、カルバメート、ペプチド、エステル、カーボネート、アセタールであり、そしてより好ましくは、
【0097】
【化12】

またはエステル形態であり、
ここで、ZはP、W、MoまたはSであり、
1、Y2はOまたはSであり、
3、Y4は、O、Sであるか、または存在せず、
2は、H、C1-6アルキルであるか、または存在しない。
最も好ましくは、BHEMはホスフェート基である。
【0098】
本発明の部分が上記の構造(3)のように造影剤に配置される場合、好ましい造影剤は以下の式を有することが意図される:
【0099】
【化13】

ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR16は、同じであっても異なってもよく、そしてH、SDTBM、BHEMおよびC1-6アルキルからなる群より選択され得る。ただし、これらのRsの少なくとも一方がSDTBMであり、そして少なくとも他方がBHEMであり、
12、R13およびR14は、同じであっても異なってもよく、そしてO-およびN(H)R17からなる群から選択され、
15はH、CH2CH(OH)CH3、ヒドロキシアルキルまたはCH(R16)COR12であり、そして
17はHまたはC1-6アルキルである。
上記に示した式を有する造影剤の場合、BHEMは、好ましくはスルホン、エーテル、ウレア、チオウレア、アミン、アミド、スルホンアミド、カルバメート、ペプチド、エステル、カーボネート、アセタールであり、そしてより好ましくはCOO-またはエステル形態、SO3-またはエステル形態、および
【0100】
【化14】

またはエステル形態であり、
ここで、ZはP、W、MoまたはSであり、
1、Y2はOまたはSであり、
3、Y4は、O、Sであるか、または存在せず、
2は、H、C1-6アルキルであるか、または存在しない。
【0101】
HSA結合造影剤の場合、構造(1)において上に示されるようにIEMとSDTBMとの間か、または構造(3)において上に示されるようにSDTBMから離れたIEM上に、BHEMは配置され得る。この様式において、疎水性SDTBM基の完全な結合能は、親水性BHEM基によって妨害されることなく発現され得る。
【0102】
HSAに対して状態依存性結合を示す、本発明に有用な造影剤は、米国特許出願第08/382,317号(1995年2月1日出願)に記載される。例えば、以下の薬剤が有用である:
【0103】
【化15】

【0104】
【化16】

【0105】
【化17】

ここで、Rは、脂肪族基および/または少なくとも1個のアリール環を包含するか、あるいは疎水性アミノ酸残基および/または疎水性または親水性の末端基を有するかもしくは有さない置換基を含むペプチドを包含する。
【0106】
本発明に好ましい有用な造影剤は、以下の通りである:
【0107】
【化18】

HSAに対して状態依存性結合を有するより好ましい造影剤は、MS−317、MS−322、MS−325およびMS−328である。最も好ましくはMS−325である。
【0108】
(造影剤の使用)
本発明に使用される薬剤は、その薬学的に受容可能な誘導体を含むことが定義される。薬学的に受容可能な誘導体とは、任意の薬学的に受容可能な塩、エステル、エステルの塩、または本発明の化合物の他の誘導体を意味し、これはレシピエントへの投与の際に、本発明の化合物、または阻害性の活性な代謝物もしくはそれらの残留物を、(直接的にかまたは間接的に)提供し得る。特に好ましい誘導体は、本発明の化合物が哺乳動物に投与される際にこのような化合物のバイオアベイラビリティを増加させる(例えば、経口的に投与された化合物を血液中により容易に吸収させることによって)ものか、または親化合物の生物学的コンパートメント(例えば、脳またはリンパ系)への送達を増強するものである。
【0109】
本発明に使用される薬剤が、薬学的に受容可能な塩を包含し得ることもまた考慮される。本発明の薬学的に受容可能な塩は、無機または有機の酸および塩基から誘導されるものを含む。以下がこのような酸性塩に包含される:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモエート(pamoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩(pivalate)、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩およびウンデカン酸塩。塩基性塩は、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウムおよびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム、マグネシウムおよび亜鉛塩)、有機塩基を有する塩(例えば、ジシクロヘキシルアミン塩、N−メチル−D−グルカミン)、およびアミノ酸(例えば、アルギニン、リジン)を有する塩などを包含する。また、塩基性窒素含有基は、低級アルキルハライド(例えば、メチル、エチル、プロピルおよびブチルクロリド、ブロミドおよびヨージド);ジアルキル硫酸(例えば、ジメチル、ジエチル、ジブチルおよびジアミル硫酸)、長鎖ハライド(例えば、デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルクロリド、ブロミドおよびヨージド)、アラルキルハライド(例えば、ベンジルおよびフェネチルブロミド)、ならびにその他のような薬剤で4級化され得る。それによって、水溶性または油溶性あるいは水分散性または油分散性の生成物が得られる。本発明の好ましい塩は、N−メチル−D−グルカミン、カルシウムおよびナトリウム塩である。
【0110】
本発明の薬学的組成物は、任意の薬学的に受容可能なキャリア、アジュバントもしくはビヒクルと共に、本発明の任意の複合物、または薬学的に受容可能なその塩を含有する。本発明の薬学的組成物中に使用され得る薬学的に受容可能なキャリア、アジュバントおよびビヒクルは、イオン交換物質、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、ホスフェート)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよびラノリンを包含するが、これらに限定されない。
【0111】
本発明によれば、薬学的組成物は、無菌注射用調製物(例えば、注射可能な無菌の水性または油性の懸濁液)の形態であり得る。この懸濁液は、当該分野で公知の技術に従い、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて製剤され得る。無菌注射用調製物はまた、非毒性の非経口で受容可能な希釈剤または溶媒中において、無菌の注射可能な溶液または懸濁液(例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液として)であり得る。用いられ得る受容可能なビヒクルおよび溶媒は、水、リンガー溶液および等張食塩水である。さらに、従来では、無菌、固定油が溶媒または懸濁媒体として使用される。この目的のために、合成のモノ−またはジ−グリセリドを含む任意の刺激のない固定油が使用され得る。脂肪酸(例えば、オレイン酸およびそのグリセリド誘導体)は、天然の薬学的に受容可能なオイル(例えば、オリーブオイルまたはヒマシ油)と同様に、注射可能物の調製、特にこれらのポリオキシエチル化した変形物において有用である。これらのオイル溶液または懸濁液はまた、長鎖アルコールの希釈剤または分散剤(例えば、Ph.Helvまたは類似のアルコール)を含み得る。
【0112】
本発明の造影剤は血漿タンパク質に結合し得るので、用量および注入速度に依存するいくつかの場合において、血漿タンパク質の結合部位が飽和になり得る。これは、この薬剤の結合の減少を導き、そして半減期および耐用性を損ない得る。それゆえ、無菌アルブミンまたは血漿置換溶液へとあらかじめ結合させた薬剤を注入することが望ましくあり得る。あるいは、器具/シリンジ(これは造影剤を含み、そして造影剤をシリンジ中に引き上げられた血液と混合する)が使用され得る;次いでこれは患者に再び注射される。
【0113】
本発明の化合物および薬学的組成物は、経口投与、非経口投与、吸入スプレーによる投与、局所投与、直腸投与、鼻腔投与、頬投与、膣投与または従来の無毒性の薬学的に受容可能なキャリア、アジュバントおよびビヒクルを含有する投薬製剤中に埋め込まれたリザーバを介して投与され得る。本明細書に使用されるように用語「非経口」は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、くも膜下、肝臓内、病変内および頭蓋内注射または点滴技術を含む。
【0114】
経口投与される場合、本発明の薬学的組成物は任意の経口的に受容可能な投薬形態(カプセル、錠剤、水性の懸濁液または溶液が挙げられるがこれらに限定されない)で投与され得る。錠剤を経口使用する場合、一般的に使用されるキャリアには、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。代表的には、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤もまた添加される。カプセル形態の経口投与に対して、有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。経口使用に水性懸濁液を必要とする場合、活性成分は乳化剤および懸濁剤と配合される。所望の場合、特定の甘味料、香味料または着色料もまた添加してもよい。
【0115】
あるいは、直腸投与のために座薬形態で投与される場合には、本発明の薬学的組成物は、この薬剤と室温で固体であるが直腸温で液体である適切な非刺激性の賦形剤とを混合して調製され得、その結果直腸内で溶け薬剤を放出する。このような物質として、ココアバター、ビーズワックスおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0116】
また、前述のように、特に、処置標的が局所施用によって容易に接近可能な領域または器官(目、皮膚または下部腸道(lower intestinal tract)を含む)を含む場合に、本発明の薬学的組成物は局所投与され得る。適切な局所製剤は、これらの各領域または器官用に容易に調製される。
【0117】
下部腸道に対する局所施用は、直腸用座薬製剤(上記を参照のこと)または適切な浣腸製剤でなされ得る。局所−経皮性パッチもまた使用され得る。
【0118】
局所施用に対して、薬学的組成物は、1つ以上のキャリア中に懸濁または溶解される活性成分を含有する、適切な軟膏に製剤され得る。本発明の化合物の局所投与のためのキャリアには、鉱油、液体ペトロラタム、白色ペトロラタム、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水が挙げられるが、それらに限定されない。あるいは、薬学的組成物は、1つ以上の薬学的に受容可能なキャリア中に懸濁または溶解された活性成分を含有する、適切なローションまたはクリームに処方されてもよい。適切なキャリアには、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルべート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられるが、それらに限定されない。
【0119】
眼科用途に対して、薬学的組成物は、防腐剤(例えば、ベンジルアルコニウムクロリド)を含有してもしなくてもどちらでもよい、pH調節された等張の無菌生理食塩水中に微小化された懸濁液として、または好ましくは、pH調節された等張の無菌生理食塩水中の溶液として、製剤され得る。あるいは、眼科使用のために、薬学的組成物は、ペトロラタムのような軟膏に製剤され得る。
【0120】
鼻腔エーロゾルまたは吸入による投与に対して、本発明の薬学的組成物は、薬学的処方の分野で周知の技術に従って調製され、そしてベンジルアルコールもしくは他の適切な防腐剤、バイオアベイラビリティを増大させる吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または他の従来の可溶化剤もしくは分散剤を使用し、生理食塩水中の溶液として調製され得る。
【0121】
投薬は、診断用画像化機器の感度、ならびに造影剤の組成に依存する。例えば、MRI画像化に対して、高常磁性の物質(例えば、ガドリニウム(III))を含有する造影剤は、一般的に、より低い磁気モーメントを有する常磁性物質(例えば、鉄(III))を含有する造影剤より、より低い投薬を必要とする。好ましくは、投薬は、1日当たり約0.001〜1mmol/kg体重の活性金属−配位子錯体の範囲である。より好ましくは、投薬は、1日当たり約0.005mmol/kg体重〜約0.05mmol/kg体重の範囲である。
【0122】
インターベンショナル療法をモニタリングするために使用される光学的画像化の場合、この薬剤の用量は、およそ、MRIの場合に等しい(0.001〜10mmol/kg)。また、MRI造影剤を用いる場合のように、この光学的薬剤の投与は、当該分野において周知である。
【0123】
しかしながら、任意の特定の患者に対する特定の用量レジメもまた、種々の因子(年齢、体重、全体的な健康状態、性別、食事、投与時間、排泄速度、薬剤の組み合わせ、および処置する医者の判断を含む)に依存することが理解されるべきである。
【0124】
適切な用量の本発明の造影剤の投与に続いて、次いで、患者はMRIまたは光学的画像化(紫外光、可視光または赤外光画像化)のいずれかに供される。これらの画像化技術、ならびにデータ回収および分析(すなわち、この薬剤のシグナル特性のモニタリング)を行うために適切なセッティングおよび画像化パラメーターは、周知であるか、または一般的に受け入れられている方式に関する。
【0125】
本発明の方法の最終工程は、投与された造影剤の画像化シグナル特性をモニタリングすることである。光学的画像のために、このようなシグナル特性には、吸光度、反射率、蛍光またはりん光および/またはそれらの寿命、化学発光、散乱、または他のスペクトル特性が挙げられる。MRI画像化のために、このようなシグナル特性には、R1およびR2緩和率(それぞれ、1/T1および1/T2)が挙げられる。
【0126】
本発明のより好ましい局面において、インターベンショナル療法の経過にわたって画像が生成され、それゆえシグナル特性が定期的にモニタリングされる場合、「リアルタイム」モニタリングが可能である。画像が生成され、そしてモニタリングされる頻度は、治療の型および期間に依存する。
【0127】
本発明がより完全に理解され得るために、以下の実施例を示す。これらの実施例は、例示のみの目的のためであり、いかなる観点においても、本発明の範囲を制限するようには解釈されない。
【0128】
(実施例)
以下は、本発明の方法に有用な好ましい造影剤の合成スキームであり、そして特に、MS−325についてのものである。米国特許出願第08/833,745号(1997年4月11日出願そしてこれは本明細書中において参考として援用される)を参照のこと。好ましいものではないが、別の有用な、これらの造影剤についての合成スキームは、米国特許出願第08/382,317号(1995年2月1日に出願、そしてこれは本明細書中参考として援用される)に記載される。
【0129】
最初に、アルコール(ROH)をPCl3と、好ましくは1:1のモル比で反応させてジクロロホスフィン反応生成物(I)を形成する:
【0130】
【化19】

このR基は、直鎖、分岐、または環式脂肪族、アリール、ヘテロ環式、ペプチド性、ペプトイド、デオキシリボ−もしくはリボ−ヌクレオチド、またはヌクレオシド、または環式もしくは非環式有機キレート剤基であり得、これは、必要に応じて1つ以上の窒素、酸素、硫黄、ハロゲン、脂肪族、アミド、エステル、スルホンアミド、アリール、アシル、スルホネート、ホスフェート、ヒドロキシル、または有機金属置換基で置換され得る。
【0131】
この反応は、エーテル性溶媒または炭化水素溶媒の存在下で生じ、そして約−50℃〜約15℃、好ましくは約−10℃〜約−5℃の温度で、約30分〜約3時間、好ましくは約1〜約1.5時間の時間で、行う。この溶媒は、任意のエーテル性溶媒または炭化水素溶媒であり得、そして好ましくは、ヘプタン、メチル−t−ブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、およびエチレングリコールジアルキルエーテルからなる群から選択され得る。より好ましくは、この溶媒はテトラヒドロフランである。
【0132】
次いで、ジクロロホスフィン(I)を、約5〜約6当量のアミン塩基と反応させてビス(アミノ)ホスフィノ反応生成物(II)を形成する:
【0133】
【化20】

この反応もまた、上記のように、エーテル性溶媒または炭化水素溶媒の存在下で生じ、そして約−50℃〜約15℃、好ましくは約−10℃〜約−5℃の温度で、約30分〜約3時間、好ましくは約15分〜約30分の時間、行う。反応生成物(II)を形成するために使用される塩基は、任意のアミン塩基であり得、好ましくは、約5〜約11のpKa値を有する塩基であり得、そしてより好ましくは、イミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1H−テトラゾール、ジアルキルアミン(メチル、エチル、ブチル)、ピリジン、ピペラジン、ピペリジン、ピロール、1H−1、2,3−トリアゾール、および1,2,4,−トリアゾールからなる群から選択される。より好ましい実施例において、この塩基はイミダゾールである。
【0134】
次いで、ビス(アミノ)ホスフィノ化合物(II)を、約0.75〜約1.0当量の第2のアルコール(R1OH)(ここで、R1は、R基について上に規定された任意の置換基であり得る)と反応させて、(アミノ)ホスフィノ反応生成物(III)を形成する:
【0135】
【化21】

この反応は、エーテル性溶媒または炭化水素溶媒の存在下で生じ、そして約−50℃〜約15℃、好ましくは約−10℃〜約−5℃の温度で、約30分〜約3時間、好ましくは約1.0時間〜約1.5時間の時間、行う。この溶媒は任意のエーテル性溶媒または炭化水素溶媒であり得、そして好ましくは、ヘプタン、メチル−t−ブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、ジグリム、ジエチルエーテル、ジアルキルエーテル、およびエチレングリコールジアルキルエーテルからなる群から選択され得る。より好ましくは、この溶媒はテトラヒドロフランである。
【0136】
最終的に、(アミノ)ホスフィノ化合物(III)を、約1当量の酸性の水、好ましくは、約2.5〜約5のpHを有する酸性の水、および約1当量以上の酸化剤と反応させて、所望のホスホジエステル化合物(IV)を形成する:
【0137】
【化22】

この酸化剤は任意の過酸化型酸化剤であり得、そして好ましくは、過ヨウ素酸塩からなる群から選択される。より好ましくは、この酸化剤は過ヨウ素酸ナトリウムである。
【0138】
上記の加水分解および酸化は、約−15℃〜約25℃の温度で、好ましくは、約0℃〜約2℃、約10時間〜約24時間、好ましくは約10〜約15時間の間、溶媒混合物中で行われる。この溶媒混合物は、エーテル性溶媒または炭化水素溶媒からなる群から選択される溶媒の任意の組み合わせを含む。好ましくは、この溶媒混合物は、テトラヒドロフラン、ヘプタンおよびトルエンを、10:10:1の容量比で含む。
【0139】
この合成スキームに従って、このMS−325錯体におけるキレート配位子は以下のように調製される。
【0140】
([(4,4−ジフェニルシクロヘキシル)ホスホオキシメチル]ジエチレントリアミンペンタ−酢酸の調製)
MS−325錯体に使用されるキレート配位子の調製を以下のスキームIに示す:
【0141】
【化23】

三塩化リン(13.2mL,0.151mol)のテトラヒドロフラン(202ml)溶液を含む単一の反応容器に、4,4−ジフェニル−シクロヘキサノール(1)(38.34g,0.152mol)のテトラヒドロフラン溶液(243ml)を添加し、この間、撹拌し、かつ内部の温度を−6.2℃〜−5.3℃に1.5時間維持した。次いで、この混合物をさらに34分間撹拌して、ジクロロホスフィン反応生成物(2)を得た。これは174.28ppmの31P NMR化学シフトを有した。
【0142】
この溶液に、イミダゾール(51.34g,0.753mol)のテトラヒドロフラン(243ml)溶液を添加し、この間、撹拌し、かつ内部の温度を−7.8℃〜−3.6℃に37分間維持した。次いで、得られた混合物をさらに20分間撹拌して、ビス(アミノ)ホスフィノ反応生成物(3)の溶液を得た。これは106.36ppmの31P NMR化学シフトを有した。
【0143】
この混合物に、ヘプタン(114ml)中2−(R)−ヒドロキシルメチルジエチレントリアミン五酢酸,ペンタ−t−ブチルエステル(4)(160.0g,0.128mol、純度:56.32重量%)からなる溶液を添加し、この間、撹拌し、かつ内部の温度を−6.8℃〜−4.8℃に1時間6分の間、維持した。次いで、この混合物をさらに23分間撹拌して、123.8ppmの31P NMR化学シフトを有する溶液(5)を得た。
【0144】
最後に、約1分かけて水(202ml)を添加し、この間、内部の温度を−6.5℃〜6.5℃に維持した。この混合物を5分間撹拌し、続いてヘプタン(620ml)、トルエン(70ml)および5N水性塩酸(202ml)を5分かけて添加し、この間、内部の温度を1.0℃〜12.1℃に維持した。次いで、過ヨウ素酸ナトリウム(22.6g,0.106mol)を3分かけて添加し、この間、内部温度を10.5℃に維持した。この反応混合物を35分かけて室温まで加温し、そしてさらに2.5時間撹拌して4.27ppmの31P NMR化学シフトを有する溶液(6)を得た。この層を分離し、そしてこの有機層を10%水性チオ硫酸ナトリウムで洗浄した(2×809mL)。
【0145】
上記の有機層にテトラオクチルアンモニウムブロミド(8.21g,0.015mol)を添加した。次いで、22分かけて濃塩酸(11.51M,405mL)を添加し、この間、22.8℃〜25.0℃の内部の温度を維持した。この混合物を16.0時間撹拌して、7.78ppmの31P NMR化学シフトを有する化合物(7)を得た。この層を分離し、そしてこの有機層を捨てた。
【0146】
上記の水層に、6.56のpHを記録するまで8Mの水性水酸化ナトリウム(630mL)を添加した。400mLの溶媒が回収されるまで、この溶液を減圧下(50℃〜55℃,真空85mmHg)で濃縮した(約1時間)。この溶液を室温まで冷却し、そしてアンバーライトXAD−4樹脂(92.0g)を添加した。この懸濁液を50分間室温で撹拌し、そしてろ過して明るい黄色の水溶液を得た(1.1L)。
【0147】
上記の溶液をC−18逆相シリカゲル(271g,メタノールで湿らせてパックし、次いで800mLのメタノール、800mLのメタノール/水(1:1)および800mLの水で洗浄した)にロードし、そして水で溶出した。回収した最初の1.0Lの溶出物を捨て、そして次の1.3Lの回収物を保持した。この保持した溶液に、6Nの水性塩酸(pH=2.15まで、60mL)および3Nの水性塩酸(pH=1.63まで、30mL)を添加した。このスラリーを1.25時間撹拌し、そしてろ過した。この固体をpH1.67の水溶液(500mL)で洗浄し、そして一定重量まで乾燥して(48〜50℃、4〜6mmHg)(18時間)、オフホワイトの固体の、以下の式の化合物を得た:
【0148】
【化24】

(65.5g、収率:68.89%、純度:99.45重量%、98.95面積%、3.02%の水および97.81%のキレート可能物(chelatables))。
【0149】
(実験)
3つの型のサンプルを調製し、そして評価した。第1は、造影剤を有さずにヒト血清アルブミン(HSA)を含むコントロールサンプルであった。他の2つのサンプルは、それぞれ、HSAと、非特異的な薬剤Gd−DTPAおよびHSA−特異的薬剤MS−325を含有した。
【0150】
これらの実施例において、20MHzで、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS,150mM NaCl,10mMリン酸塩,pH=7.4)、4.5wt%HSAを含有するPBS溶液、または4.5wt%HSAおよび1%寒天を含有するゲルにおける水プロトンの緩和速度(1/T1)を決定することにより、縦緩和率(R1、mM-1-1)をモニターし、そして得た。緩和率(R1)の温度への依存を、循環水浴を用いてサンプルの温度を変化させ、そして熱電対を用いたサンプル温度のモニタリングにより観察した。
【0151】
(実施例1:4.5%HSAの熱壊死のモニタリング)
以下の3つのサンプルを、4.5%HSA溶液中で調製した:(1)造影剤を含有しないコントロールサンプル;(2)Gd−DTPAを含有する比較サンプル;および(3)MS−325を含有するサンプル。Gd−DTPAおよびMS−325を含有するサンプルを、Gd−DTPAまたはMS−325のいずれかを有する水性処方物(pH=7)を4.5%HSA溶液に添加することによって調製した。得られた混合物は、それぞれ、0.3mM Gd−DTPAおよび0.1mM MS−325の濃度を有した。
【0152】
次いで、3つのサンプルを使用して、4.5%HSA溶液の熱変性をモニターした。このことを行うために、各サンプルについてのT1データ(従ってR1データ(=1/T1))を、20℃〜60℃の温度範囲にわたって20MHzで集めた。次いで、各サンプルをNMRから取り出し、そして85℃で15分間加熱してHSAの熱変性を誘導した。続いて、このサンプルをNMRに戻し、そしてT1デ−タをこのより高い温度で集めた。以下の表1および図1を参照のこと。
【0153】
【表4】

表1および図1に示すように、3つのHSA含有溶液の熱変性後、HSA特異的造影剤MS−325をも含有するサンプルは、変性直前(56.2℃)〜変性直後(85℃)で測定したHSAの変性の間の観察されたR1に、顕著な減少(26.7mM-1-1の損失)を実証した。しかし、非特異的な造影剤であるGd−DTPAを含有するサンプルは、MS−325サンプルについて使用されたものの3倍の濃度でさえ、変性の間、R1にほとんど変化を示さなかった(ほんの0.1mM-1-1の損失)。このことは、Gd−DTPAがネイティブなHSAまたは変性したHSAのいずれにも結合しないことを示す。
【0154】
上記のデータが得られた後、この変性したサンプルを生理学的な温度(37℃)まで冷却させ、そして再度T1データを回収した。MS−325を含有するサンプルはR1における顕著な減少を維持した(25mM-1-1の正味の損失)が、一方、Gd−DTPAを含有するサンプルはR1においてわずかな変化のみを示した(0.5mM-1-1の正味の損失)。
【0155】
(実施例2:1.0テスラでのHSAの熱変性のMRI画像化)
以下のサンプルを、4.5%HSAを含有する1%寒天ゲル中で調製した:(1)造影剤を含有しないコントロールサンプル;(2)Gd−DTPAを含有する比較サンプル;および(3)MS−325を含有するサンプル。Gd−DTPAおよびMS−325の濃度が、それぞれ、0.3mM Gd−DTPAおよび0.1mM MS−325であるように、十分な量で造影剤を添加する。4.5%HSAを含有するような寒天ゲルを、「ファントム(phantom)」と称する。
【0156】
次いで、1.0テスラで、寒天ファントムの初期T1−加重MRIスキャン(FISP−3D、TR=15、TE=4、α=30)を、約25℃の温度で得た。この初期スキャンは、MS−325含有ファントムがGd−DTPA含有ファントム(比較サンプル)または4.5%HSAのみを含有するファントム(コントロールサンプル)よりも明るいことを示した;この結果は、予想通り、MS−325のHSAに対する特異的な結合に起因した。
【0157】
次いで、ファントムを循環水浴中で加熱し、この時間にわたって、さらなる初期T1−加重MRIスキャンを得た。温度が増加するにつれて、MS−325含有ファントムは、Gd−DTPAのみ、または4.5%HSAのみを含有するファントムよりもずっと明るいままであった(%ROI減少において測定されるより少ないシグナル強度の減少(目的の領域))。以下の表2および図2を参照のこと。
【0158】
【表5】

ファントムを50℃〜60℃より上で加熱するにつれて、これらは、HSAの熱変性に対応して色が不透明になった。同時に、表2および図2に示すように、MS−325を含有するファントムについてシグナル強度の劇的な減少が観察された(76%の強度の減少)。しかし、Gd−DTPAのみ、またはHSAのみを含有するファントムは、シグナル強度において穏やかな変化のみを生じた。このGd−DTPAファントムは、MS−325ファントムについて使用された濃度の3倍のGd−DTPA濃度でさえ、熱変性の後のMRIスキャンの間、コントラストの暗い画像として残存した。
【0159】
上記のデータを回収した後、次いで、この変性したサンプルを正常な生理学的温度(37℃)まで冷却させた。MS−325を含有するファントムはシグナル強度におけるその減少を維持した(32%の損失)。コントロールファントムおよびGd−DTPAを含有するファントムは、さらに、変性後に、それぞれ、5%および10%のみのシグナル強度の減少を示した。
【0160】
これらの結果に従って、本発明の方法に有用な造影剤は、HSAの熱変性の非常に感度の高い指標を提供し得る。事実、3倍の濃度の別の造影剤を使用した場合でさえ、このより高い濃度はHSAの熱変性をモニターするために必要とされる感度を提供し得なかった。
【0161】
(実施例3:HSAのエタノール変性)
以下の3つのサンプルを、4.5%HSA溶液中で調製した:(1)造影剤を含有しないコントロールサンプル;(2)Gd−DTPAを含有する比較サンプル;および(3)MS−325を含有するサンプル。Gd−DTPAおよびMS−325を含有するサンプルを、Gd−DTPAまたはMS−325のいずれかを有する水性処方物(pH=7)を4.5%HSA溶液に添加することによって調製した。得られた混合物は、それぞれ、0.31mM Gd−DTPAおよび0.08mM MS−325の濃度を有した。
【0162】
次いで、無水エタノールを各々のサンプルに対して滴定した。T1データ(従って、R1データ(=1/T1))を、エタノールの各々の添加後、20MHzおよび37℃で集めた。以下の表3および図3を参照のこと。
【0163】
【表6】

表3および図3に示されるように、4.5%HSA溶液のエタノールアブレーションの間、このMS−325含有サンプルが観察された緩和率(relativity)に顕著な減少(33mM-1-1)を示し、それゆえエタノール誘導性壊死の検出を可能にすることを実証した。しかし、Gd−DTPA含有サンプルは(MS−325の約4倍の濃度においてさえ)、観察された緩和率に少量の変化のみを示した(0.3mM-1-1)。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】図1は、造影剤の使用を伴うかまたは伴わない、HSA溶液の観察された緩和率(R1)に対する温度における変化の効果の実験データの図示である。
【図2】図2は、造影剤を含むかまたは含まないHSA溶液を使用して生成されたMRI画像に対する、時間にわたってのROIシグナル強度の損失の実験データの図示である。
【図3】図3は、造影剤を含むかまたは含まないHSA溶液に対して観察された緩和率(R1)に対するエタノール濃度における変化の効果の実験データの図示である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターベンショナル療法を受けているまたは受けた特異的な組織または組織成分のコントラスト増強型診断的画像化のための方法であって、該方法は以下:
(a)標的化された組織または組織成分に結合し得、かつ該組織または組織成分に特異的な親和性を有し得る造影剤を、患者に投与する工程であって、ここで該造影剤は画像増強部分(IEM)および状態依存性の組織結合部分(SDTBM)を包含する;
(b)MRI画像化、紫外光画像化、可視光画像化または赤外光画像化のうちの1つに、該患者を供する工程;ならびに
(c)該造影剤の特徴的な画像化シグナルをモニターして該インターベンショナル療法が完了したかどうかを決定する工程、
を包含する方法。
【請求項2】
前記IEMが有機分子、金属イオン、金属塩および金属キレート剤、粒子、クラスター、鉄粒子、標識ペプチド、タンパク質、ポリマー、リポソーム、有機染料および無機染料からなる群から選択される、請求項1に記載される方法。
【請求項3】
前記IEMが、原子番号13、21〜34、39〜42、44〜50または57〜83を有する1つ以上の金属イオンと錯体化した少なくとも1つの環式または非環式有機キレート剤を含む、生理学的に適合性のキレート剤を含有する、請求項1に記載される方法。
【請求項4】
前記金属イオンが、原子番号21〜29、42、44または57〜83を有する常磁性金属イオンである、請求項3に記載される方法。
【請求項5】
前記常磁性金属イオンが、Gd(III)、Fe(III)、Mn(II)、Mn(III)、Cr(III)、Cu(II)、Dy(III)、Tb(III)、Ho(III)、Er(III)およびEu(III)からなる群から選択される、請求項4に記載される方法。
【請求項6】
前記金属イオンがGd(III)である、請求項5に記載される方法。
【請求項7】
前記キレート剤が、DTPA、DOTA、DTPA−BMAおよびHP−DO3Aからなる群から選択される、請求項5に記載される方法。
【請求項8】
前記IEMが、ルミネッセンス金属錯体を含む、請求項1に記載される方法。
【請求項9】
前記IEMが、鉄粒子またはDy、GdまたはHoの金属キレートを含む、請求項1に記載される方法。
【請求項10】
前記SDTBMが低分子および生体分子からなる群から選択される、請求項1に記載される方法。
【請求項11】
前記SDTBMが、1〜60の炭素原子、および必要に応じて1つ以上の窒素、酸素、イオウ、ハロゲン、脂肪族アミド、エステルスルホンアミド、アシル、スルホネート、ホスフェート、ヒドロキシルまたは有機金属置換基を有する少なくとも1つの脂肪族、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アリールまたは複素環式基を含む低分子を包含する、請求項10に記載される方法。
【請求項12】
前記SDTBMが少なくとも1つのアリール環を包含する、請求項11に記載される方法。
【請求項13】
前記SDTBMが少なくとも2つのアリール環を包含する、請求項11に記載される方法。
【請求項14】
前記SDTBMが、疎水性または親水性末端基を有するかまたは有さない、疎水性アミノ酸残基および/または疎水性置換基を含むペプチドを包含する生体分子を有する、請求項10に記載される方法。
【請求項15】
前記造影剤が、血漿中の組織または組織成分、間質性の空間、滑液、大脳脊髄液、炎症液(inflammatory fluid)、アブセス液(abcess fluid)、または細胞間空間に状態依存性の結合親和性を示す、請求項1に記載される方法。
【請求項16】
前記造影剤が、ヒト血清アルブミン、脂肪酸結合タンパク質、グルタチオン−S−トランスフェラーゼおよびリポタンパク質からなる群から選択されるタンパク質に対して状態依存性結合親和性を示す、請求項1に記載される方法。
【請求項17】
前記造影剤が、生理学的pHの水溶液中で1つ以上の完全または部分的に負の電荷を有する血液半減期延長部分(BHEM)をさらに含み、ここで該負の電荷は前記IEMに対する共有結合または配位共有結合によって部分的または完全に中和され得ない、請求項1に記載される方法。
【請求項18】
前記造影剤が、ヒト血清アルブミンに対して状態依存性な結合親和性を示す、請求項17に記載される方法。
【請求項19】
そのネイティブな状態において、少なくとも10%の薬剤がヒト血清アルブミンに対して結合する、請求項18に記載される方法。
【請求項20】
少なくとも50%の薬剤が、ネイティブな状態でのヒト血清アルブミンに対して結合する、請求項18に記載される方法。
【請求項21】
少なくとも80%の薬剤が、ネイティブな状態でのヒト血清アルブミンに対して結合する、請求項18に記載される方法。
【請求項22】
少なくとも95%の薬剤が、ネイティブな状態でのヒト血清アルブミンに対して結合する、請求項18に記載される方法。
【請求項23】
前記造影剤が変性状態でのヒト血清アルブミンに結合親和性を示し、これはネイティブな状態のヒト血清アルブミンに対する該造影剤の結合親和性の約80%未満である、請求項18に記載される方法。
【請求項24】
前記造影剤が変性状態でのヒト血清アルブミンに結合親和性を示し、これはネイティブな状態のヒト血清アルブミンに対する該造影剤の結合親和性の約50%未満である、請求項18に記載される方法。
【請求項25】
前記造影剤が、変性状態でのヒト血清アルブミンに結合親和性を示し、これはネイティブな状態のヒト血清アルブミンに対する該造影剤の結合親和性の約20%未満である、請求項18に記載される方法。
【請求項26】
前記造影剤が、変性状態でのヒト血清アルブミンに結合親和性を示し、これはネイティブな状態のヒト血清アルブミンに対する該造影剤の結合親和性の約10%未満である、請求項18に記載される方法。
【請求項27】
前記造影剤が、変性状態で前記組織または組織成分へと結合した場合にR1緩和率を示し、これはネイティブな状態で該組織または組織成分へと結合した場合の該造影剤のR1緩和率の約80%未満である、請求項1または18に記載される方法。
【請求項28】
前記造影剤が、変性状態で前記組織または組織成分へと結合した場合にR1緩和率を示し、これはネイティブな状態で該組織または組織成分へと結合した場合の該造影剤のR1緩和率の約50%未満である、請求項1または18に記載される方法。
【請求項29】
前記造影剤が、変性状態で前記組織または組織成分へと結合した場合にR1緩和率を示し、これはネイティブな状態で該組織または組織成分へと結合した場合の該造影剤のR1緩和率の約20%未満である、請求項1または18に記載される方法。
【請求項30】
前記造影剤が、変性状態で前記組織または組織成分へと結合した場合にR1緩和率を示し、これはネイティブな状態で該組織または組織成分へと結合した場合の該造影剤のR1緩和率の約10%未満である、請求項1または18に記載される方法。
【請求項31】
前記インターベンショナル療法が完了し、そして前記標的化された組織または組織成分が生理学的状態に戻される場合に、前記造影剤がR1緩和率を示し、該緩和率がネイティブな状態での該組織または組織成分へと結合した場合の該造影剤のR1緩和率の約80%未満である、請求項1または18に記載される方法。
【請求項32】
前記インターベンショナル療法が完了し、そして前記標的化された組織または組織成分が生理学的状態に戻される場合に、前記造影剤がR1緩和率を示し、該緩和率がネイティブな状態での該組織または組織成分へと結合した場合の該造影剤のR1緩和率の約50%未満である、請求項1または18に記載される方法。
【請求項33】
前記インターベンショナル療法が完了し、そして前記標的化された組織または組織成分が生理学的状態に戻される場合に、前記造影剤がR1緩和率を示し、該緩和率がネイティブな状態での該組織または組織成分へと結合した場合の該造影剤のR1緩和率の約20%未満である、請求項1または18に記載される方法。
【請求項34】
前記インターベンショナル療法が完了し、そして前記標的化された組織または組織成分が生理学的状態に戻される場合に、前記造影剤がR1緩和率を示し、該緩和率がネイティブな状態での該組織または組織成分へと結合した場合の該造影剤のR1緩和率の約10%未満である、請求項1または18に記載される方法。
【請求項35】
インターベンショナル療法を受けているまたは受けた特異的な組織または組織成分のコントラスト増強型診断的画像化のための方法であって、該方法は以下:
(a)以下の式の1つを有する造影剤を、患者に投与する工程であって、ここでnは1〜4であり得、そしてRは脂肪族の基および/または少なくとも1つのアリール環を包含する;
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

(b)MRI画像化、紫外光画像化、可視光画像化または赤外光画像化のうちの1つに、該患者を供する工程;ならびに
(c)該造影剤の特徴的な画像化シグナルをモニターしてインターベンショナル療法が完了したかどうかを決定する工程、
を包含する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−77020(P2006−77020A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−276942(P2005−276942)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【分割の表示】特願2000−514677(P2000−514677)の分割
【原出願日】平成10年9月24日(1998.9.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Macintosh
【出願人】(397050785)エピックス ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】