説明

インターホンシステム

【課題】1人で点検作業を実施でき、且つ簡便、安価なシステムであり、異常の有無の判定が容易なインターホンシステムを提供することである。
【解決手段】インターホンシステム10は、配線21により接続された少なくとも2つの端末装置11(第1端末装置11A、第2端末装置11B)を備え、各端末装置11は、インターホンの点検を実行するための点検開始信号を発報する点検操作部17、テスト音を予め登録したテスト音メモリ19、点検開始信号を受信して、通話状態を強制的に確保する通話状態確保手段18、及びテスト音メモリ19からテスト音を読み出して端末スピーカ15から出力するテスト音出力手段20をそれぞれ有する。端末スピーカ15(15B)から出力されたテスト音は、端末マイク14(14B)によって拾得され、他方の端末スピーカ15(15A)から出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターホンシステムに係り、特にインターホンシステムの点検機能を付設したインターホンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
インターホンシステムは、同一施設内で使用される通話装置であって、少なくとも2つの端末装置を備える。この端末装置には、スピーカ及びマイク、スピーカ又はマイク(一方にマイク、他方にスピーカ)を有するものがあり、前者の端末装置を備えるインターホンシステムによれば双方向通話が可能で、後者の端末装置を備えるインターホンシステムによれば一方向通話が可能になる。インターホンシステムとしては、例えば、一方の端末装置がエレベータかご内に設置され、他方の端末装置がエレベータの管理を行う同一施設内の管理室等に設置されたエレベータ用のインターホンシステムが挙げられる。なお、一般的に、エレベータ用のインターホンシステムの各端末装置は、スピーカ及びマイクをそれぞれ有する双方向通話可能なインターホンシステムである。
【0003】
このようなインターホンシステムの点検作業では、それぞれの端末装置について通話が問題なく行えることを確認する必要があり、エレベータかご内及び管理室にそれぞれ1人ずつ、合計2人の点検作業者が必要になる。このように2人を必要とする点検作業は効率的ではなく、1人で点検作業を実施できる手法が望まれていた。このような状況に鑑みて、1人で点検作業を実施できる点検装置が幾つか考案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、かご内インターホンは、記遠隔操作手段から送信された点検信号を記録し、再生する記録・再生手段と、遠隔操作手段から点検信号が送信された時に記録・再生手段に点検信号を記録させ、遠隔操作手段を呼び出した時に記録・再生手段に記録した点検信号を再生させ、再生した点検信号を遠隔操作部へ送信するインターホン制御手段と、を有するエレベータのインターホンシステムが開示されている。また、特許文献1では、点検者が遠隔操作部マイクを用いて点検音を発し、この点検音はインターホンスピーカからエレベータかご内に出力され、インターホンマイクはインターホンスピーカから出力された点検音を収音し、録音・再生部はこの点検音を録音すること、さらに、インターホンシステムの点検を遠隔操作部によって自動的に実行できること、が述べられている。
【0005】
また、特許文献2では、エレベータ故障時に外部の監視センターへ電話回線で自動通報する機能と、通報時にかご内インターホンを利用してかご内から監視センターと直接通話する機能とを有するエレベータ通信制御装置において、エレベータ通信制御装置は、任意の音声データをデジタルデータとして記憶する音声データ部と、前記音声データに記憶されているデジタルデータをアナログ音声に変換する音声データ変換部と、かご内インターホンスピーカから音声を流してインターホンマイクから入力される音声の音圧が閾値を超えていることを検出する音圧検出部と、を備えたエレベータ通話装置の自動点検装置が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平7−123162号公報
【特許文献2】特開2007−119106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のインターホンシステムでは、点検者が発声した肉声を録音(記憶)して点検音として使用するため、点検者の声の大きさや音質によっては再生された点検音が聴こえ難い場合がある。そのような場合には、点検音の大きさや音質、或いは記憶再生装置の不具合による影響か、それともインターホンシステムの不具合による影響か、を識別してインターホンシステムの異常を判断することが困難になる。なお、特許文献1のインターホンシステムには、点検者の発声した肉声を記憶する記憶装置を搭載する必要があり、実装コストが高価になる。
【0008】
また、インターホンシステムの点検を遠隔操作部によって自動的に実行する構成によれば、点検信号が正常に伝わったか否かを判定する機能(判定装置)が必要となり、実装コストがさらに増加する。加えて、点検信号の判定装置が故障した場合には、正常な点検を行うことができず、上記と同様に、判定装置の不具合による影響か、それともインターホンシステムの不具合による影響か、を判断することが困難になる。
【0009】
特許文献2の自動点検装置についても、判定装置である音圧検出部を備える必要があり、特許文献1のインターホンシステムと同様に、実装コストが高価であって、また、インターホンシステム自体の異常を判断することが困難な場合がある。なお、インターホンシステムは、通話装置であるから、その点検は作業者の聴覚によって行うのが適切であり、また、作業者の聴覚による判定では、特別な判定装置等を必要としないため、システムコストを削減でき、且つインターホンシステムの異常判定を困難にする要因を低減することができる。
【0010】
本発明の目的は、1人で点検作業を実施でき、且つ簡便、安価なシステムであり、異常の有無の判定が容易なインターホンシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るインターホンシステムは、少なくともスピーカを有する第1端末装置及びスピーカ及びマイクを有する第2端末装置を備えるインターホンシステムであって、
少なくとも第1端末装置は、インターホンシステムの点検を開始するための点検開始信号を第2端末装置に発報する点検操作部を備え、少なくとも第2端末装置は、テスト音を予め登録したテスト音メモリを含み、第1端末装置の点検操作部を操作することによって発報された点検開始信号を受信した場合に、テスト音メモリからテスト音を読み出して第2端末装置のスピーカから出力するテスト音出力手段を備え、第2端末装置のスピーカから出力されたテスト音は第2端末装置のマイクにより拾得されて、第1端末装置のスピーカから出力されることを特徴とする。
【0012】
また、少なくとも第2端末装置は、第1端末装置の点検操作部を操作することによって発報された点検開始信号を受信して、第1及び第2端末装置との通話状態を強制的に確保する通話状態確保手段を備えることが好ましい。
【0013】
また、第1端末装置は、スピーカ及びマイクを有し、第1及び第2端末装置は、点検操作部、通話状態確保手段、テスト音メモリ、及びテスト音出力手段をそれぞれ備えることが好ましい。
【0014】
また、一方の端末装置がエレベータかご内に設置されるエレベータ用のインターホンシステムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るインターホンシステムによれば、少なくとも第1端末装置は、インターホンシステムの点検を開始するための点検開始信号を第2端末装置に発報する点検操作部を備え、少なくとも第2端末装置は、テスト音を予め登録したテスト音メモリを含み、第1端末装置の点検操作部を操作することによって発報された点検開始信号を受信した場合に、テスト音メモリからテスト音を読み出して第2端末装置のスピーカから出力するテスト音出力手段を備え、第2端末装置のスピーカから出力されたテスト音は第2端末装置のマイクにより拾得されて、第1端末装置のスピーカから出力されるので、1人でインターホンシステムの点検作業を実施することができ、点検作業の効率が飛躍的に向上する。また、作業者の聴覚によって点検を行う簡便且つシンプルなシステムであるため、インターホンシステムの異常判定を困難にするおそれがある判定装置等を必要とせず、異常の有無の判定が容易であって、且つインターホンシステムのコスト(点検機能の実装コスト)を大幅に削減することができる。
【0016】
さらに、少なくとも第2端末装置が、第1端末装置の点検操作部を操作することによって発報された点検開始信号を受信して、第1及び第2端末装置との通話状態を強制的に確保する通話状態確保手段を備える構成とすれば、例えば、呼び出されたときに通話ボタンを押す又は受話器を上げる等の操作を行って初めて通話状態となる端末装置を備えたインターホンシステムについても、1人で点検作業を実施することが可能になる。
【0017】
また、第1端末装置は、スピーカ及びマイクを有し、第1及び第2端末装置が、点検操作部、通話状態確保手段、テスト音メモリ、及びテスト音出力手段をそれぞれ備える構成とすれば、双方向通話可能なインターホンシステムにおいても、各端末装置のマイク及びスピーカを含むインターホンシステム全体の点検が、簡便且つ迅速に、1人で実施することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図面を用いて本発明に係る実施の形態につき以下詳細に説明する。図1は、エレベータ用のインターホンシステムの全体構成を示す模式図である。図2は、双方向の呼び出し、通話、及び点検が可能なインターホンシステムの構成を示すブロック図である。
【0019】
図1に示すインターホンシステム10は、2つの端末装置11を、エレベータかご12及び管理室13にそれぞれ備えるエレベータ用のインターホンシステム10である。図1に示す2つの端末装置11は、配線21により接続されており、後述するように、双方向の呼び出し及び通話が可能である。インターホンシステム10は、通話機能に加えて、簡便且つ安価な点検機能を備えたことを特徴とし、エレベータ用のインターホンシステムとして好適であるが、用途はエレベータに限定されるものではない。
【0020】
以下では、図2に示す構成のインターホンシステム10を中心に説明するが、実用形態(端末装置の形態や各構成要素の設置箇所等)については、エレベータに適用されたインターホンシステム10(エレベータ用のインターホンシステム)を例に挙げて説明する(以下、エレベータかご12に設置される端末装置11を第1端末装置11A、管理室13に設置される端末装置11を第2端末装置11Bとする)。
【0021】
図2に示すように、インターホンシステム10において、通話機能を発揮する構成要素群50は、端末マイク14、端末スピーカ15、相手方の端末装置11を呼び出す呼び出しボタン16、及び呼び出しがあった時に相手方の端末装置11と通話状態にする通話ボタン24である。これらの構成要素としては、特に限定されるものではなく、公知のマイクやスピーカ等を使用することができ、従って、点検機能を備えない既設のインターホンシステムに点検機能のみ、即ち点検機能を発揮する構成要素群51を付設することもできる。点検機能を発揮する構成要素群51としては、点検操作部17、通話状態確保手段18、テスト音メモリ19、及びテスト音出力手段20である(詳細は後述する)。なお、インターホンシステム10の点検とは、通話機能の点検であるから、通話機能を発揮する構成要素群50(端末マイク14及び端末スピーカ15)は、点検操作においても当然に使用される。
【0022】
具体的な端末装置11の形態としては、エレベータ用のインターホンシステム10の場合、図1に示すような形態(第1端末装置11A、第2端末装置11B)が挙げられる。エレベータかご12内に設置された第1端末装置11Aは、エレベータかごの運転操作を行うためのかご内操作盤22にその一部として組み込まれている。かご内操作盤22において第1端末装置11Aを構成する部材は、端末マイク14A(以下、第1及び第2端末装置において、同一の機能を有する構成部材は、第1端末装置に関連するものにAを付し、第2端末装置に関連するものにBを付する)、端末スピーカ15A、呼び出しボタン16A、及び点検操作部17Aである。また、図1では示していないが、かご内操作盤22内に、少なくともテスト音メモリ19A、及びテスト音出力手段20Aの点検機能を発揮する構成要素群51が設置されることが好ましい。
【0023】
管理室13に設置された第2端末装置11Bは、第1端末装置11Aと配線21により接続されると共に、図示しないその他のエレベータやその他の施設設備と接続された端末装置11である。ここで、管理室13とは、エレベータが設置された施設と同一施設内にあり、エレベータを含む施設設備の管理を行う場所(部屋)である。ここで、第2端末装置11Bは、コードレスタイプの端末装置11を示しているが、有線配線21が直接接続されたコード付き端末装置11であってもよい。なお、配線21は図示しない親機又は中継器に接続され、親機等から第2端末装置11Bまでは無線接続されている(配線21を備えない完全無線接続とすることもできる)。
【0024】
管理室13に設置された第2端末装置11Bは、第1端末装置11Aと同様に、端末マイク14B、端末スピーカ15B、呼び出しボタン16B、及び点検操作部17Bを有し、さらに、第1端末装置11A等からの呼び出しがあった時に、第1端末装置11A等と通話状態にするための通話ボタン24を有する。また、図1では示していないが、第2端末装置11Bには、通話状態確保手段18B、テスト音メモリ19B,及びテスト音出力手段20Bの点検機能を発揮する構成要素群51が設けられることが好ましい。なお、第2端末装置11Bは、複数の施設設備と繋がった端末装置11であるから、図1に示すように、呼び出しボタン16Bが複数存在する。
【0025】
インターホンシステム10は、上記のように、簡便且つ安価な点検機能を備えた点を特徴とする。図2(及び図1)に示すインターホンシステム10は、各端末装置11に呼び出しボタン16を備えるので双方向の呼び出しが可能であり、また、各端末装置11に端末マイク14及び端末スピーカ15を備えるので双方向の通話も可能である。さらに、各端末装置11に、点検機能を発揮する構成要素群51を備えるので、1人の点検作業者による双方向の点検も可能である。
【0026】
なお、通話状態確保手段18やテスト音出力手段20を一方の端末装置11のみに備えるインターホンシステム10とすることもできるが、その場合には、一方向のみの点検が実施できる。例えば、一方の端末装置11が設置される場所には、管理人等が常に待機しており他方の端末装置11から点検を実施する際には管理人等の協力を得ることができる等の事情がある場合には、一方の端末装置11に通話状態確保手段18やテスト音出力手段20を設置せず実装コストを削減することができる。
【0027】
点検機能を発揮する構成要素群51の1つである点検操作部17は、インターホンシステム11の点検作業を開始するための点検開始信号を相手方の端末装置11に発報する機能を有する。即ち、図1及び図2に示すように、第1端末装置11A及び第2端末装置11Bのいずれにも点検操作部17が設けられる場合には、どちらの端末装置11からでも点検作業を開始することができる。なお、後述するように、第1端末装置11Aの点検操作部17AをON操作した場合には、第1端末装置11Aの端末マイク14Aの点検はできないので、最終的に、点検作業者は各端末装置11の点検操作部17をON操作してシステム全体の点検を実行する必要がある。
【0028】
図1に示す第2端末装置11Bについては、複数の端末装置11に接続されているので、例えば、点検操作部17BをON操作した後に、第1端末装置11の呼び出しボタン16を押すことにより、エレベータ用のインターホンシステム10について点検作業を開始することができる。また、第1端末装置11Aの点検操作部17Aは、いたずら防止等の観点から、かご内操作盤22に設けられるスライドカバー付きボックス23内に設置されることが好ましい。なお、スライドカバー付きボックス23内には、点検操作部17Aの他に、ファンや照明等のスイッチが設置され、スライドカバーには鍵がかかるようになっている。
【0029】
第1端末装置11Aの点検操作部17AのON操作によって発報される点検開始信号は、配線21を通じて第2端末装置11Bに伝達されると、第2端末装置11Bの通話状態確保手段18Bが信号を受信する。通話状態確保手段18Bによって点検開始信号が受信されると、第2端末装置11Bの通話状態確保手段18B及びテスト音出力手段20Bの機能により、通話状態の確保及びテスト音の出力が実行される。なお、図2に示す点線は、第1端末装置11Aの点検操作部17AのON操作により開始される点検の動作経路を示している。
【0030】
エレベータ用のインターホンシステム10においては、かご内操作盤22に設置される第1端末装置11Aには、一般的に、通話ボタン24Aがなく、第2端末装置11Aからの呼び出しにより自動的に双方向通話状態が確保される。従って、通話状態確保手段18Aは必要なく、例えば、テスト音出力手段20Aが点検開始信号を受信する機能を有することができる。
【0031】
点検機能を発揮する構成要素群51の1つである通話状態確保手段18は、点検操作部17を操作することによって発報された点検開始信号を受信して、点検操作部17が操作された端末装置11と点検開始信号が送信された端末装置11との通話状態を強制的に確保する機能を有する。図2の点線で示すように、第1端末装置11Aの点検操作部17Aを操作することによって発報された点検開始信号は、配線21を通って第2端末装置11Bに送信され、第2端末装置11Bの通話状態確保手段18Bをよって受信される。そして、点検開始信号の受信により通話状態確保手段18Bが、第1端末装置11A及び第2端末装置11Bとの通話状態を強制的に確保する。具体的には、通話状態確保手段18Bは、呼び出されたときに通話ボタン24を押すことにより通話状態となる、或いは受話器を挙げることにより通話状態となる端末装置11の場合には、通話状態確保手段18の機能により、点検作業者が直接通話ボタン24を操作等することなく通話ボタン24が押された状態等にすることができる。より具体的には、通話ボタン24が押されることによりON状態となるスイッチ等が、点検開始信号を受信した通話状態確保手段18によってON状態にされる。
【0032】
点検機能を発揮する構成要素群51の1つであるテスト音出力手段20は、テスト音を予め登録したテスト音メモリ19からテスト音を読み出して端末スピーカ15から出力する機能を有する。図2の点線で示すように、第1端末装置11Aの点検操作部17AがON操作された場合には、通話状態が確保された後、テスト音出力手段20Bは、テスト音メモリ19Bから予め登録されたテスト音が読み出して、端末スピーカ15Bから出力する。また、テスト音出力手段20は、特に、通話状態確保手段18が設けられない場合には、点検開始信号を受信する機能を備えることが好ましい。なお、テスト音出力手段20としては、テスト音の読み出し再生機能を有していればよく、テスト音等を新たに録音して記憶装置に記憶させる機能を備える必要は無いので、後述するように、安価なマイコン(CPU)等によって構成することが可能である。
【0033】
テスト音出力手段20Bの機能によって、端末スピーカ15Bテスト音が出力されるタイミングとしては、点検開始信号が受信された後であれば、任意に設定することが可能であり、例えば、点検操作部17AがON操作された後、所定時間(10秒後など)経過後とすることができる。テスト音が出力されるタイミングを決定する観点からも、テスト音出力手段20は、点検開始信号を受信する機能を備えることが好ましい。或いは、テスト音が出力されるタイミングを規定するために、通話状態確保手段18に、通話状態が確保された時に、テスト音出力手段20に対してテスト音を出力させる指令信号を送信する機能を備えることもできる。
【0034】
テスト音出力手段20の機能によって端末スピーカ15から出力される予め登録されたテスト音とは、点検作業を実行する前からインターホンシステム10に予め登録されていたテスト音であって、音量、さらには周波数等の音質が判っているテスト音を意味する。ここで、テスト音とは、インターホンシステム10の点検に使用される音であり、例えば「音声が聞こえますか」」等の合成音声や「ピッ、ポッ、パッ」等の信号音を含む。インターホンシステム10の点検においては、点検作業時に記憶され音量や音質が明確ではない音声は含まれず、音量、音質が明確である予め登録されたテスト音を使用することにより、迅速な点検作業が可能になると共に、音量や音質が判っているので、異常の有無を判定することが容易になり、点検の精度を向上させることができる。
【0035】
点検機能を発揮する構成要素群51の1つであるテスト音メモリ19は、テスト音を予め登録したメモリ(記憶装置)であって、不揮発性メモリが使用されることが好ましい。なお、テスト音メモリ19は、新たなデータを記憶する必要はなく、インターホンシステム10は録音機能を有さない。従って、テスト音メモリ19としては、予め登録されたテスト音を保存できる容量があれば十分であり、安価なメモリを使用することができる。
【0036】
図2の点線で示すように、端末スピーカ15Bから出力から出力されたテスト音は、端末マイク14Bにより拾得されて、第1端末装置11Aの端末スピーカ15Aから出力される。後述するように、端末スピーカ15Aから出力されたテスト音を点検作業者が聴くことにより、インターホンシステム10、正確には第2端末装置11Bの端末マイク14B及び端末スピーカ15B、第1端末装置11Aの端末スピーカ15Aが正常であるか否かを判定する。
【0037】
点検操作部17、通話状態確保手段18、及びテスト音出力手段20は、CPUや各構成要素の制御プログラム、及び制御プログラムをインプットした記憶装置等を有する1つ又は複数のマイコンなどによって構成することができ、該マイコンは端末装置11(かご内制御盤22)に搭載される。端末装置11に搭載される既設のマイコン等の一部として構成することもでき、各手段の機能は、ソフトウェアを実行することで実現することもできる。
【0038】
上記構成のインターホンシステム10の作用、特にインターホンシステム10の点検手順について、図3を加えて以下詳細に説明する。図3は、図2に示すインターホンシステム10における点検手順を示すフローチャートであり、第1端末装置11A側に作業者がいて点検作業を実行する場合について説明する。なお、図1に示すエレベータ用のインターホンシステム10についても適宜説明する。
【0039】
まず、点検作業者は、第1端末装置11Aの点検操作部17AをON操作する(S10)。点検操作部17AをON操作することにより、点検開始信号が発報され、インターホンシステム10の点検が開始されることになる。なお、エレベータ用のインターホンシステム10では、かご内操作盤22のスライドカバー付きボックス23のカバーを開けて、その中に設置された点検操作部17AをON操作することになる。また、点検の終了については、例えば、テスト音が流れた後(直後に、又は所定時間経過後に)自動的に終了する、或いは点検操作部17Aを再度押す等してOFF操作することによって終了することができ、点検モードの解除忘れを防止する等の観点から、点検終了手段としては前者の手段を適用することが好ましい。
【0040】
点検開始信号は、配線21を通って第2端末装置11Bに伝達され、通話状態確保手段18Bがその信号を受信すると共に、第1端末装置11Aと第2端末装置11Bとの通話状態が確保される(S11)。この手順は、通話状態確保手段18Bの機能によって実行され、通話状態確保手段18Bは点検開始信号をトリガーとして、通話状態を確保するための制御を実行する。なお、エレベータ用のインターホンシステム10では、通話状態確保手段18Bの機能により、第2端末装置11Bの通話ボタン24が押された状態となる。通話状態が確保されている状態とは、各端末装置11の端末マイク14及び端末スピーカ15は機能する状態であり、端末マイク14は周辺の音を拾得し、端末スピーカ15は相手方の端末装置11の端末マイク14によって拾得された音を出力することができる。
【0041】
次に、第2端末装置11Bのテスト音メモリ19Bから、予め登録されたテスト音が読み出され、端末スピーカ15Bから出力される(S12)。この手順は、第2端末装置11Bに設置されたテスト音出力手段20Bの機能によって実行される。テスト音出力手段20Bによって端末スピーカ15Bからテスト音が出力されるタイミングは、例えば、「点検操作部17AがON操作された後5秒後」のように任意に設定することができる。
【0042】
S12で端末スピーカ15Bから出力されたテスト音は、端末マイク14Bにより拾得される(S13)。上記のように、通話状態確保手段18Bにより通話状態が確保されているので、端末マイク14Bは、通常の通話状態と同様に機能して、テスト音を拾得することができる。
【0043】
端末マイク14Bによって拾得されたテスト音は、第1端末装置11Aの端末スピーカ15Aから出力される(S14)。端末スピーカ15Aについても、端末マイク14Bと同様に、通常の通話状態と同様に機能して、端末マイク14Bにより拾得されたテスト音を出力することができる。
【0044】
点検作業者は、端末スピーカ15Aから出力されたテスト音を聴いて、インターホンシステム10(第2端末装置11Bの端末マイク14B及び端末スピーカ15B、第1端末装置11Aの端末スピーカ15A)に異常がないかを判定する(S15)。所定の判断基準に基づいたテスト音が確認できた場合には、第2端末装置11B等は、「異常なし」と判定し(S16)、所定の判断基準に基づいたテスト音が確認できなかった場合には、「異常あり」と判定する(S17)。インターホンシステム10の点検によれば、予め登録されたテスト音を使用するので、明確な判断基準を作成することが可能であり、点検精度を向上させることができる。なお、判断基準は任意に決定することができる。
【0045】
以上S10〜S17の手順により、第2端末装置11Bの端末マイク14B及び端末スピーカ15B、第1端末装置11Aの端末スピーカ15Aの点検を実施することができる。なお、点検作業者が実際に行う作業は、点検操作部17AのON操作及びテスト音の判定だけであり、極めて簡便に点検を実施することができる。
【0046】
点検作業者は、S10〜S17と同様の操作を第2端末装置11B側からも実施することにより、第1端末装置11Aの端末マイク14Aの機能を含むインターホンシステム10全体の点検を実施することができる。
【0047】
以上のように、インターホンシステム10によれば、少なくとも第1端末装置11Aは、インターホンシステム10の点検を実行するための点検開始信号を第2端末装置11Bに発報する点検操作部17Aを備え、少なくとも第2端末装置11Bは、第1端末装置11Aの点検操作部17Aを操作することによって発報された点検開始信号を受信して、第1及び第2端末装置11との通話状態を強制的に確保する通話状態確保手段18Bと、テスト音メモリ19Bから予め登録されたテスト音を読み出して端末スピーカ15Bから出力するテスト音出力手段20Bと、を備え、端末スピーカ15Bから出力されたテスト音は端末マイク14Bにより拾得されて、第1端末装置11Aの端末スピーカ15Aから出力されるので、1人でインターホンシステムの点検作業を実施することができる。また、判定装置や書き込み型の記憶装置を必要とせず、簡便且つシンプルなシステムであるため、点検機能の実装コストを大幅に低減することができる。また、点検作業者の聴覚による判定によれば、インターホンシステム10の異常判定を困難にする要因を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】エレベータ用のインターホンシステムの全体構成を示す模式図である。
【図2】双方向の呼び出し、通話、及び点検が可能なインターホンシステムの構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示すインターホンシステムにおける点検手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
10 インターホンシステム、11 端末装置、12 エレベータかご、13 管理室、14 端末マイク、15 端末スピーカ、16 呼び出しボタン、17 点検操作部、18 通話状態確保手段、19 テスト音メモリ、20 テスト音出力手段、21 配線、22 かご内操作盤、23 スライドカバー付きボックス、24 通話ボタン、25 充電器、50 通話機能を発揮する構成要素群、51 点検機能を発揮する構成要素群。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともスピーカを有する第1端末装置及びスピーカ及びマイクを有する第2端末装置を備えるインターホンシステムであって、
少なくとも第1端末装置は、インターホンシステムの点検を開始するための点検開始信号を第2端末装置に発報する点検操作部を備え、
少なくとも第2端末装置は、
テスト音を予め登録したテスト音メモリを含み、
第1端末装置の点検操作部を操作することによって発報された点検開始信号を受信した場合に、テスト音メモリからテスト音を読み出して第2端末装置のスピーカから出力するテスト音出力手段を備え、
第2端末装置のスピーカから出力されたテスト音は第2端末装置のマイクにより拾得されて、第1端末装置のスピーカから出力されることを特徴とするインターホンシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のインターホンシステムにおいて、
少なくとも第2端末装置は、
第1端末装置の点検操作部を操作することによって発報された点検開始信号を受信して、第1及び第2端末装置との通話状態を強制的に確保する通話状態確保手段を備えることを特徴とするインターホンシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のインターホンシステムにおいて、
第1端末装置は、スピーカ及びマイクを有し、
第1及び第2端末装置は、点検操作部、通話状態確保手段、テスト音メモリ、及びテスト音出力手段をそれぞれ備えることを特徴とするインターホンシステム。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1に記載のインターホンシステムにおいて、
一方の端末装置がエレベータかご内に設置されることを特徴とするエレベータ用のインターホンシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−28686(P2010−28686A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190411(P2008−190411)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】