説明

インターリーブ・チャープド・アレイ導波路グレーティングを有するコヒーレント受信機

インターリーブ・チャープド・アレイ導波路グレーティング(AWG)を用いた光コヒーレント検出器。このAWGは、AWGが光90度ハイブリッドとして機能することを可能にする周期的なチャープパターンを有する。AWGが複屈折材料を使用して実現される場合、AWGは偏光デマルチプレクサとしても機能し得る。一実施形態において、AWGは、波長デマルチプレクサ、各波長分割多重(WDM)信号成分に対する偏光デマルチプレクサ、および各WDM信号成分の各偏光分割多重成分に対する90度ハイブリッドとして同時に機能するように設計されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信装置に関し、より詳細には、限定されるものではないが、コヒーレント光受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
この節では、本発明のよりよい理解を促すための助けとなる態様について紹介する。したがって、この節で述べることは、この観点で読まれるべきであり、何が従来技術にあるか、または何が従来技術にないかについて認めていると理解されるべきではない。
【0003】
光コヒーレント検出方式は、光信号の振幅のみならず、信号の位相も検出可能である。これらの能力により、光コヒーレント検出は、直交位相振幅変調、様々な形態の位相偏移変調(PSK)(例えば、差動2値位相偏移変調および差動4値位相偏移変調)などの、スペクトル的に効率的な変調フォーマットの使用との両立が可能となる。非コヒーレント検出器と比較して、光コヒーレント検出器では、波長の同調性が比較的容易であり、波長分割多重(WDM)システムにおいて隣接チャネルからの干渉を良好に除去でき、現代のディジタル信号処理技法を効果的に適用するために電磁界を電気信号へと線形変換でき、偏光分割多重(PDM)を使用する機会が提供される。
【0004】
光コヒーレント検出器は、通常、光通信信号によって搬送されたデータを復元できるように、受信した光通信信号と局部発信器信号とを混合する90度ハイブリッドを用いる。しかし、従来技術の光コヒーレント検出器に関する1つの問題は、この検出器では、典型的には光通信信号の各WDMおよび/またはPDM成分に対して別々の90度ハイブリッドが必要になることである。この多数の構成デバイスは、WDMおよび/またはPDMシステムにおける光コヒーレント検出器の使用を比較的割高なものとし、対応する受信機が相当大きくなり、および/または比較的高い光減衰を示す原因となるので不都合である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,269,356号
【特許文献2】米国特許第5,909,522号
【特許文献3】米国特許第6,049,640号
【特許文献4】米国特許出願第12/194,352号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書において、インターリーブ・チャープド・アレイ導波路グレーティング(AWG)を有する光コヒーレント検出器の様々な実施形態を開示する。AWGは、AWGが光90度ハイブリッドとして機能することを可能にする周期的なチャープパターンを有する。AWGが複屈折材料を使用して実現される場合、AWGは、偏光デマルチプレクサとしても機能することができる。一実施形態では、AWGは、波長デマルチプレクサ、各波長分割多重(WDM)信号成分に対する偏光デマルチプレクサ、および各WDM信号成分の各偏光分割多重成分に対する90度ハイブリッドとして、同時に機能するように設計されている。従来技術に対して有利なことに、本発明の光コヒーレント検出器は比較的少ない構成デバイスを使用して実現することができる。
【0007】
一実施形態によれば、(1)平坦な表面を有する基板と、(2)前記表面に沿って存在し、第1および第2の光入力端子、ならびに第1の空間配列した光出力端子を有する第1の光スターカプラと、(3)前記表面に沿って存在し、第2の空間配列した光入力端子および第3の空間配列した光出力端子を有する第2の光スターカプラと、(4)それぞれが、第1の空間配列の1つの光出力端子を第2の空間配列の対応する光入力端子に接続する導波路アームのアレイとを備えたAWGを有する装置が提供される。導波路アームのアレイは、第3の空間配列の第1の組の4つの光出力端子が、ほぼ同じ波長の第1および第2の光入力端子で受信される光に応答して、第1および第2の光入力端子で受信される光の4つの異なる位相の組合せを受信するように構成される。
【0008】
別の実施形態によれば、(1)平坦な表面を有する基板と、(2)前記表面に沿って存在し、第1および第2の光入力端子、ならびに第1の空間配列した光出力端子を有する第1の光スターカプラと、(3)前記表面に沿って存在し、第2の空間配列した光入力端子および第3の空間配列した光出力端子を有する第2の光スターカプラと、(4)それぞれが、第1の空間配列の1つの光出力端子を第2の空間配列の対応する光入力端子に接続する導波路アームのアレイとを備えるAWGを提供するステップを含む光信号を処理する方法が提供される。この方法は、さらに、(a)光入力信号をAWGの第1の光入力導波路に、(b)局部発信器信号をAWGの第2の光入力導波路に供給して、第3の空間配列の1組の4つの光出力端子において、光入力信号と局部発信器信号の4つの異なる位相の組合せを生成するステップを含む。
【0009】
本発明の様々な実施形態の他の態様、特徴、および利点は、例示によって、以下の詳細な説明および添付図面からより完全に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態によるコヒーレント光受信機のブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による、図1の受信機において使用することができるアレイ導波路グレーティング(AWG)の概略レイアウト図である。
【図3】本発明の別の実施形態による、図1の受信機において使用することができるAWGの概略レイアウト図である。
【図4】本発明のさらに別の実施形態による、図1の受信機において使用することができるAWGの概略レイアウト図である。
【図5A】本発明のさらに別の実施形態による、図1の受信機において使用することができるAWGの概略図である。
【図5B】本発明のさらに別の実施形態による、図1の受信機において使用することができるAWGの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施形態によるコヒーレント光受信機100のブロック図を示す。受信機100は、(1)SおよびRの符号を付けた2つの入力ポート、および(2)1からNまでの符号を付けた複数の出力ポートを備えたアレイ導波路グレーティング(AWG)110を有する。AWG110は、入力ポートSおよびRにそれぞれ供給される入力信号102および104を光学的に混合して、N個の混合信号112〜112をそれぞれ出力ポート1からNにおいて生成する。様々な実施形態において、入力信号102は、非多重信号、もしくは波長分割多重(WDM)および/または偏光分割多重(PDM)された信号成分を有する多重信号とすることができる。所期のタイプの入力信号102に応じて、AWG110は、(1)90度ハイブリッド、(2)各WDM成分に対する波長デマルチプレクサおよび90度ハイブリッド、(3)各PDM成分に対する偏光デマルチプレクサおよび90度ハイブリッド、または(4)波長デマルチプレクサ、各WDM成分に対する偏光デマルチプレクサ、および各WDM成分の各PDM成分に対する90度ハイブリッドの機能を遂行するように設計することができる。AWG110のこれらの実施形態に対応した代表的なAWGの構造を図2〜5を参照して以下により詳細に説明する。
【0012】
入力信号104は、入力信号102をコヒーレント検出するために使用される局部発信器(LO)信号である。そのため、入力信号104は、入力信号102の各信号成分に対応した信号成分を有する。例えば、入力信号102がn個のWDM成分を有する場合、LO信号104もn個のスペクトル成分を有し、各スペクトル成分は入力信号102の対応するWDM成分と実質的に同一の光搬送波周波数(波長)を有する。同様に、入力信号102が各光搬送波周波数に対して2つのPDM成分を有する場合、LO信号104も各光搬送波周波数に対して2つの対応する偏光成分を有する。一実施形態では、LO信号104は、当技術分野において知られているように、例えば光位相ロック・ループ(PLL、図1では明示的に示されていない)を使用して受信機100において生成される。別の実施形態では、LO信号104は、例えば米国特許第7,269,356号に開示されているような遠隔の送信機(図1では明示的に示されていない)から受信され、この特許は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0013】
PDM信号を処理するために設計される受信機100の実施形態は、AWG110の入力ポートRに配置された任意選択の偏光制御素子106を含み得ることに留意されたい。偏光制御素子106の1つの機能は、確実に、LO信号104から関連する信号の偏光のそれぞれにとって十分な光電力が供給されるようにすることである。例えば、偏光制御素子106は、LO信号が、AWG110に結合したとき、TE(traverse electric)導波路偏光モードおよびTM(traverse magnetic)導波路偏光モードにおいて、実質的に等しい光電力を有するように、LO信号104の偏光を変化/回転させるように構成することができる。等しい電力分配は、例えば偏光制御素子106により(1)直線偏光したLO信号104の偏光がAWG110の面に対して約45度に向けられるか、または(2)LO信号104が円偏光されるときに、起きる。
【0014】
本明細書において使用される場合、TE偏光/モードおよびTM偏光/モードという用語は、(1)従来のTE偏光/モードおよびTM偏光/モード、ならびに(2)疑似TE偏光/モードおよび疑似TM偏光/モードの両方を含む。
【0015】
さらに、受信機100は、N個の光信号112〜112を、入力信号102の独立に変調された成分に対応する複素数値を示すK個の電気信号122〜122に変換する検出器アレイ120を有する。電気信号122〜122のそれぞれは、対応する(任意選択の)増幅器130において増幅することができる。得られた信号132〜132のそれぞれは、対応するアナログ・ディジタル・コンバータ(ADC)140においてディジタル形式に変換される。得られたディジタル信号142〜142は、ディジタル信号プロセッサ(DSP)150によって処理されて、入力信号102の独立に変調された各成分によって搬送されたデータが復元される。代表的な実施形態では、N=KまたはN=2Kである。一実施形態では、AWG110および検出器アレイ120は、単一の集積回路の部品として共通の基板上に実装される。
【0016】
図2は、本発明の一実施形態による、AWG110(図1)として使用することができるAWG200のレイアウトを概略的に示す。より具体的には、AWG200は、N=4(図1参照)に相当し、光90度ハイブリッドとして機能するように設計されている。AWG200は、AWG導波路アーム222の束220によって接続される導波路カプラ(スターカプラと称される場合もある)210および230を有する。AWG200がAWG110(図1)として使用される場合、カプラ210の入力ポート208および208は、それぞれ受信機100の入力ポートSおよびRとして働く。カプラ230の出力ポート232〜232は、AWG110の出力ポート1〜4に相当する。
【0017】
非チャープドAWGにおいては、任意の2つの隣接するAWGアーム(AWG200のAWGアーム222に類似する)間の長さの差は定数である(以下、ΔLで示す)。数学的に、非チャープドAWGのこの特性は、式(1)
=L+mΔL (1)
を使用して表わされ、式中、mは、平面基板上の前記アームの横方向の空間的な並びのm番目の導波路アームを識別する指数である。ここで、m=0は、横方向の空間的な並びの第1番目のすなわち最も短いAWGアームに相当し、このAWGアームは長さLを有し、Lは、m番目のAWGアームの長さである。対照的に、インターリーブ・チャープドAWGにおいては、隣接するAWGアーム間の長さの差は、例えば周期的に調節することができ、指数mに依存する。数学的には、インターリーブ・チャープドAWGのこの特性は、近似的に式(2)
=L+mΔL+l(m mod M) (2)
を使用して表わされ、式中、Mはチャープパターンの周期であり、l(m mod M)は、指数mを周期Mで除した剰余に依存する離散的なアーム長変調関数である。チャープドAWGおよび非チャープドAWGには、ΔL=0で実現できるものがある。インターリーブ・チャープドAWGの設計および実現に関するさらなる詳細は、例えば本願の権利者が所有する米国特許第5,909,522号および第6,049,640号に見出すことができ、これら特許は両方ともその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
一実施形態では、AWG200はインターリーブ・チャープドAWGであり、AWG200において、AWGアーム222は、例えば表1に記載された8個の代表的な離散関数l(i)〜l(i)の組から選択されるアーム長変調関数l(m mod M)によって表現されるチャープパターンを有する。表1に記載された離散関数は、M=4の周期のAWGアームに相当することに留意されたい。記載された離散関数のそれぞれは正規化され、対象となる波長(λ)は正規化因数として働く。様々な実施形態において、λは入力信号の搬送波波長、または入力信号に存在する複数のWDM成分に対する平均的な波長とすることができる。
【0019】
【表1】

【0020】
当業者には、他の適切なチャープパターンがAWG200において同様に使用することができることが理解されるであろう。様々な実施形態において、導波路束220は、様々な数のAWGアーム222を有することができ、最小のアーム数は4である。AWGアーム222の最大数に理論的な制限はなく、すなわちその数は4より大きな任意の数が可能である。しかし、それでも、例えば構築に関する実際上の考慮すべき問題により、前記最大数は制限されることがある。
【0021】
入力ポート208および208が1/4回折ゾーンだけ離間し、出力ポート232〜232が対応して離間するAWG200が、アーム長変調関数l(i)を使用して実現されるとき、AWGアーム222のチャープパターンにより、AWGは出力ポートにおいて実質的に等しい強度の4つの出力信号を生成する。式(3)は、AWG200の出力ポート232〜232における電界E間の関係を近似的に与え(ここで、添え字p=1〜4は出力ポートの番号を指す)、
【0022】
【数1】

式中、EおよびEは、それぞれ入力ポート208および208に供給される光信号の電界である。当業者には、式(3)が従来の光90度ハイブリッドの機能性に相当し、AWG200の実施形態が、受信機100(図1)などのコヒーレント受信機におけるこの機能性を実現するために使用できることを意味していることが認識されるであろう。さらに、当業者には、表1に記載された他のアーム長変調関数を使用することにより、結果として、AWG200の出力ポート232〜232において、式(3)で与えられる関係と類似の電界E間の関係が得られるであろうことが認識されるであろう。
【0023】
AWGのアーム222は、典型的には、交差しないように平面上に配列されて、第1の側部エッジ224および第2の側部エッジ226を有する導波路の平面アレイを形成する。非ゼロ値のΔLに対応する一実施形態では、平面アレイ内のAWGアーム222の長さは、式(2)に従って、平面上の横方向位置の変化とともに単調に増加し、したがって側部エッジ224に配置されたAWGアームは最小の長さを有し、側部エッジ226に配置されたAWGアームは最大の長さを有する。ΔL=0に対応する別の実施形態では、アーム長変調関数l(m mod M)によって定義されるチャープパターンが無視される場合、AWGアーム222は全て同じ長さを有する。
【0024】
図3は、本発明の別の実施形態による、AWG110(図1)として使用することができるAWG300のレイアウトを概略的に示す。AWG300は全体としてAWG200(図2)と類似し、この2つのAWGの類似する要素は同一の下2桁を有する符号で示されている。しかし、AWG200とは違って、AWG300はN=8に相当し(図1も参照)、各PDM成分に対する偏光デマルチプレクサおよび90度ハイブリッドとして同時に機能するように設計されている。様々な実施形態において、導波路束320は様々な数のAWGアーム322を有することができ、最小のアーム数は8である。
【0025】
AWG300の偏光デマルチプレクサの機能性は、複屈折ゾーン340の存在によって可能となる。例えば、各AWGアーム322に対して、ゾーン340内のアームの一部分は、比較的高い複屈折を特徴とする導波路材料で構成することができる。ゾーン340内のAWGアーム322を実現するための別の適切な構成には、薄いInGaAsPの導光層を有するInPの深くエッチングされたリッジ(ridge)などの大きなアスペクト比を有する導波路コアを含み得る。複屈折ゾーン340は、導波路束320全体、またはその一部分のみを含んでもよい。ゾーン340内の導波路は、複屈折材料を使用しても使用しなくてもよい。上記の材料に加えて、ゾーン340内の導波路を実現するための他の適切な材料には、Si、InGaAs、SiO、およびSiONがあり得る。
【0026】
平面の光導波路の複屈折部分の例示的な設計および製作方法は、例えば2008年8月19日に出願された米国特許出願第12/194,352号に記載されており、この特許出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。これらの設計および方法は、ゾーン340内のAWG導波路アーム322の各部分を実現するために有用となり得る。
【0027】
複屈折ゾーン340により、式(3)に対応する出力信号のそれぞれは、TE偏光モードおよびTM偏光モードにそれぞれ相当する2つの空間的に分離された成分に分割される。偏光依存性波長分割(PDWS)の大きさは、一般には導波路束320内の、具体的にはゾーン340内のTEモードおよびTMモードに対する実効的な屈折率の差によって決まる。したがって、複屈折ゾーン340を実現するための材料は、導波路カプラ330の出力面328において8つの出力導波路332が隣り合わせに配置できるように、PDWSが十分大きくなるように選ばれる。式(4a〜4b)は、それぞれAWG300の出力ポート3321X〜3324Xおよび3321Y〜3324Yにおける電界EpXと電界EpYとの関係を近似的に与え、
【0028】
【数2】

式中、ESXおよびESYは、それぞれAWG300の入力ポート308に供給される光信号(例えば、図1の光通信信号102)のTE偏光およびTM偏光に対応する電界であり、ERXおよびERYは、それぞれAWGの入力ポート308に供給される光信号(例えば、図1のLO信号104)のTE偏光およびTM偏光に対応する電界である。式(4a〜4b)は、AWG300が、2つの理由で、TE偏光およびTM偏光に対する偏光デマルチプレクサ、ならびに偏光のそれぞれに対する光90度ハイブリッドとして同時に働くことを示している。第1に、第1の組の光出力ポート3321X〜3324Xおよび第2の組の光出力ポート3321Y〜3324Yの異なる光出力ポートは、異なる相対位相の組合せを有する、信号光および局部発信器光の組合せを出力する。すなわち、光90度ハイブリッドにおいてなされるように出力する。第2に、第1の組の光出力ポート3321X〜3324Xは、一方の偏光成分に対してそうした組合せを出力し、第2の組の光出力ポート3321Y〜3324Yは、他方の相対的に直交する偏光成分に対してそうした組合せを出力する。すなわち、偏光デマルチプレクサにおいてなされるように出力する。
【0029】
図4は、本発明のさらに別の実施形態による、AWG110(図1)として使用できるAWG400のレイアウトを概略的に示す。AWG400は、全体にAWG200(図2)と類似しており、この2つのAWGの類似する要素は同一の下2桁を有する符号で示されている。しかし、AWG200とは違って、AWG400は、N=8に相当し(図1も参照)、WDM成分のそれぞれ(搬送波波長λ1およびλ2をそれぞれ有する)に対して、2チャネルの波長デマルチプレクサおよび90度ハイブリッドとして同時に機能するように設計されている。当業者には、AWG400の設計は、任意の所望の整数n(>2)個のWDMチャネルに対して一般化でき、この一般化により出力導波路432の数がN=4nになるであろうことが理解されるであろう。様々な実施形態において、導波路束420は、様々な数のAWGアーム422を有することができ、可能な最少のアーム数は4nである。
【0030】
波長デマルチプレクサとして働くことができるAWGは、当技術分野では知られている。AWG400の波長デマルチプレクサの機能性は、ある従来技術のAWGのものと全体的に同様であるため、ここではその詳細な説明はしない。さらなる詳細については、適切な説明を見出すことができる、例えば上記の米国特許第5,909,522号および第6,049,640号を参照されたい。
【0031】
AWG400の追加された90度ハイブリッドの機能性は、AWG200のものと同様であり、チャープパターン(例えば、表1に記載された離散関数の1つによって定義される)によって可能となる。実際には、チャープパターンによって、AWG400の波長デマルチプレクサの機能性に従って生成された各多重分離されたWDM信号が式(3)に従って4通りに分割される。AWG400は、例えば検出器アレイ120(図1)においてさらに処理するために、分割されたWDM成分に対応する混合信号を捉え導くための、導波路カプラ430の出力面428に適切に配置された8つの出力導波路432λ1,1〜432λ1,4および432λ2,1〜432λ2,4を有する。
【0032】
図5A〜Bは、本発明のさらに別の実施形態による、AWG110(図1)として使用することができるAWG500の概略図を示す。より具体的には、図5AはAWG500のブロック図を示す。図5BはAWG500のレイアウトを概略的に示す。AWG500は、全体としてAWG300(図3)と類似しており、この2つのAWGの類似する要素は同一の下2桁を有する符号で示されている。しかし、AWG300とは違って、AWG500は、N=32に相当し(図1も参照)、4チャネルの波長デマルチプレクサ、4つのWDMチャネルのそれぞれに対する偏光デマルチプレクサ、および4つのWDMチャネルそれぞれの2つの直交偏光のそれぞれに対する90度ハイブリッドとして同時に機能するように設計されている。例示的に、4つのWDMチャネルが搬送波波長λ1〜λ4を有するものとして示されており、ここで、λ1<λ2<λ3<4である。
【0033】
AWG500の偏光デマルチプレクサの機能性は、複屈折ゾーン540によって可能となる。AWG500の90度ハイブリッドの機能性は、AWGアーム522のチャープパターン(例えば、表1に記載された離散関数の1つによって定義される)によって可能となる。実際には、複屈折ゾーン540およびAWGアーム522のチャープパターンにより、AWG500の従来の波長デマルチプレクサの機能性に従って生成された各多重分離された信号Sが1組の8つの出力ポート532S1、532S2〜532S8に送られる。すなわち、AWG500の1組の8つの出力ポートは、式(4a〜4b)に従って、各入力WDM波長チャネルに対して信号光と局部発信器光との8つの異なる相対位相および偏光の組合せを出力する。AWG500は、例えば検出器アレイ120(図1)においてさらに処理するために、分割されたWDM/PDM成分に対応する混合信号を捉え導くために、導波路カプラ530の出力面528に適切に配置された32個の出力導波路532を有する。
【0034】
図5Aのブロック図は、入力ポート508に供給される入力信号(例えば、図1の光通信信号102)の様々なWDM/PDM成分に対応する様々な出力導波路532の相対的な空間的配置を示す。より具体的には、出力導波路532において生成される様々な混合信号に符号を付けるため、以下の術語を図5Aにおいて使用する。(1)λは波長を示し、ここでi=1、2、3、4であり、(2)1X、2X、3X、および4Xは、式(4a)の4つの行に対応するTE偏光した混合信号を示し、(3)1Y、2Y、3Yおよび4Yは、式(4b)の4つの行に対応するTM偏光した混合信号を示す。
【0035】
当業者には、AWG500の設計は、任意の所望の数n(ここで、2≦n≦nmaxである)個のWDMチャネルに対して一般化でき、この一般化により出力導波路532の数がN=8nとなるであろうことが理解されるであろう。そうした設計において収容できる最大のWDMチャネル数(nmax)は、AWGにおける偏光依存性波長分割(PDWS)により決まり、式(5)で与えられ、
【0036】
【数3】

式中、Δλはチャネル間隔である。PDWSは式(6)により、次のように表わされ、
【0037】
【数4】

式中、λはAWGのWDMチャネルに対する平均的な波長であり、nTEは波長λにおけるTE偏光モードに対する実効的な屈折率であり、nTMは波長λにおけるTM偏光モードに対する実効的な屈折率である。様々な実施形態において、導波路束520は様々な数のAWG導波路アーム522を有することが可能であり、最小のアーム数は8nである。一実施形態において、AWG500は、100個のAWG導波路アーム522を有し、21次の回折次数で動作するように設計されており、約200GHzのチャネル間隔Δλを有する。
【0038】
本発明の様々な実施形態の1つの利点は、デバイスがフォトニック集積回路(PIC)技術を使用して実現されるときでさえ、ハイブリッドの90度位相特性を極めて正確なものとすることができることである。ちなみに、PIC技術を使用して実現した従来技術の90度ハイブリッドでは、90度ハイブリッドの様々な出力に対する位相差は、典型的には、単一の素子、例えばハイブリッドで使用されるマルチモード干渉カプラによって決定されるため、90度から著しくずれる可能性がある。したがって、この単一の素子の誤差または精度の低さ(例えば、製造工程中の寸法における)が比較的わずかであっても、必要とされる90度から位相差が著しくずれる可能性がある。対照的に、本発明の様々な実施形態では、1つの特定のAWGアームの長さにおける小さな誤差は、多数のAWGアームにわたる効果的な平均化によって軽減されるため、位相に深刻な影響を及ぼさない。
【0039】
本発明は、例示的な実施形態を参照して説明してきたが、この説明は限定的な意味で解釈されるべきものではない。本発明の実施形態をTE偏光モードおよびTM偏光モードに関して説明してきたが、本発明の様々な実施形態は、例えば(1)左円偏光および右円偏光、ならびに(2)相互に直交する直線偏光を使用する任意の適切な偏光多重信号を処理するために使用することもできる。説明した実施形態の様々な変更形態、ならびに本発明の他の実施形態は、本発明が関係する当業者には明らかであるが、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の原理と範囲の範囲内にあるものと見なされる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「光ハイブリッド」という用語は、ある搬送波周波数を有する光入力信号と同一の搬送波周波数を有する局部発信器信号とを混合して、入力信号とLO信号間の様々な相対位相シフトに対応する複数の混合信号を生成するように設計された光混合器を指す。光90度ハイブリッドは、約0度、90度、180度および270度の入力信号とLO信号間の相対位相シフトにそれぞれ対応する少なくとも4つの混合信号を生成するように設計された特定のタイプの光ハイブリッドである。当業者には、位相シフトのそれぞれは、360度の整数倍の位相シフトの追加が可能であることを説明するまでもなく定義されることが理解されよう。
【0041】
本発明は、単一の集積回路またはパッケージ上で実現可能であることを含め、自由空間光系および/または導波路回路を使用して実現することができる。
【0042】
別途明示的に述べられていない場合は、各数値および範囲は、あたかも「ほぼ」または「約」という言葉が、その数値または範囲の値の前に付されているように、近似的なものであるとして解釈されるべきである。
【0043】
本発明の本質を説明するために説明し例示してきた部品の詳細、材料、および構成における様々な変更は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく、当業者により可能であることが、さらに理解されよう。
【0044】
添付の方法クレームにおける各要素は、もしある場合は、対応する符号を付けて特定の順序で記載されているが、クレームの記載がその他の方法でこれらの要素のいくつかまたは全てを実現するための特定の順序を暗示していない場合は、これらの要素は、必ずしもこの特定の順序で実現されることに限定されるべきものではない。
【0045】
本明細書において、「一実施形態」または「1つの実施形態」に言及する場合、この実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも一実施形態に含まれ得ることを意味する。本明細書の様々な場所で「一実施形態において」という語句が現われる場合、必ずしも全て同一の実施形態に言及しているわけではなく、別のまたは代わりの実施形態が必ずしも相互に他の実施形態を排除するものでもない。同じことが「実現」という用語にも当てはまる。
【0046】
詳細な説明を通して、図面は、正確な縮尺ではなく、単に例示的なものであり、本発明を限定するというよりも説明するために使用されている。高さ、長さ、幅、上部、底部などの用語は、もっぱら本発明の説明を容易にするために使用されており、具体的な向きに本発明を限定するために使用されるものではない。例えば、高さは、単に垂直方向の立ち上がりに限定した意味ではなく、図に示すような3次元構造の3つの次元の1つを識別するために使用されている。そうした「高さ」は、電極が水平ならば垂直であるが、電極が垂直ならば水平である、などである。同様に、全ての図は様々な層を水平な層として示しているが、そうした向きは単に便宜的なものであり、限定的に解釈されるべきではない。
【0047】
また、本説明のための、「結合する」、「結合している」、「結合される」、「接続する」、「接続している」、または「接続される」という用語は、エネルギーを2つ以上の要素間で伝達することができ、必須ではないが、1つまたは複数の要素の挿入が予期される当技術分野、またはより最近開発された技術分野において知られている任意の様式を指している。逆に、「直接結合される」、「直接接続される」などの用語は、そうした追加の要素が存在しないことを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な表面を有する基板と、
前記表面に沿って存在し、第1および第2の光入力端子、ならびに第1の空間配列した光出力端子を有する第1の光スターカプラと、
前記表面に沿って存在し、第2の空間配列した光入力端子および第3の空間配列した光出力端子を有する第2の光スターカプラと、
それぞれが、前記第1の空間配列の1つの光出力端子を前記第2の空間配列の対応する光入力端子に接続する導波路アームのアレイであって、前記第3の空間配列の第1の組の4つの光出力端子が、ほぼ同じ波長の前記第1および第2の光入力端子において受信される光に応答して、前記第1および第2の光入力端子において受信される前記光の4つの異なる位相の組合せを受信するように構成される、導波路アームのアレイと
を有するアレイ導波路グレーティング(AWG)を備える装置。
【請求項2】
前記4つの異なる位相の組合せは、約0ラジアン、π/2ラジアン、πラジアン、および3π/2ラジアンの相対位相を有する、前記第1および第2の光入力ポートからの前記光の組合せである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記導波路アームのアレイは、前記第3の配列の別の第2の組の4つの光出力端子が前記光の4つの第2の組合せを受信するように構成され、前記第2の組合せは、前記第3の配列の前記第1の組の光出力端子に出力される前記光の偏光とほほ直交する前記光の成分の偏光である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記導波路アームのアレイは、前記第3の配列の別の第2の組の4つの光出力端子が前記光の4つの第2の組合せを受信するように構成され、前記第2の組合せは、前記第3の配列の前記第1の組の光出力端子に出力される前記光の波長とは異なる波長を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記導波路アームの少なくともいくつかに対して、前記アームの少なくとも一部分は複屈折導波路を備える装置であって、
第1の偏光と前記第1の偏光にほぼ直交する第2の偏光との間で光電力を分配するように、前記第2の光入力端子において受信される前記光の偏光を変化させるように構成される偏光制御素子をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記AWGは、nチャネルの導波路デマルチプレクサとして機能するようになされ、ここでnは1より大きい正の整数であって、
前記第3の空間配列した光出力端子が4n個の光出力端子を備え、それぞれは、(1)搬送波波長、ならびに(2)前記第1および第2の光入力端子に供給される前記光間の相対位相シフトの値のうちの少なくとも1つにおいて、残りの(4n−1)個の混合信号のそれぞれとは異なる、対応する混合信号を受信するためのものである、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記導波路アームのアレイは4つの導波路アームの周期を有する周期的なチャープパターンを含み、
前記チャープパターンは、選択される順番に配列される
(1)2つのゼロ、
【数1】

、および
【数2】

、または
(2)2つのゼロ、
【数3】

、および
【数4】

からなり、式中、λは前記AWGの1つまたは複数の波長チャネルに対応する波長である、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
それぞれが、前記第3の空間配列した光出力端子の対応する出力端子と光学的に結合され、対応する光出力信号を電気信号に変換するようになされた光検出器のアレイと、
前記光検出器のアレイによって生成された前記電気信号を対応するディジタル信号に変換するようになされたアナログ・ディジタル・コンバータと、
前記ディジタル信号を受信するディジタル信号プロセッサであって、
前記第1の光入力端子に供給される光入力信号が複数の独立に変調された成分を含み、
前記ディジタル信号プロセッサは、前記ディジタル信号を処理して前記独立に変調された成分のそれぞれによって搬送されたデータを復元するようになされ、前記複数の独立に変調された成分は2つ以上のWDM成分を有する、ディジタル信号プロセッサと
をさらに備える光受信機である、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記複数の独立に変調された成分は2つ以上のPDM成分も含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
(a)平坦な表面を有する基板と、
前記表面に沿って存在し、第1および第2の光入力端子、ならびに第1の空間配列した光出力端子を有する第1の光スターカプラと、
前記表面に沿って存在し、第2の空間配列した光入力端子および第3の空間配列した光出力端子を有する第2の光スターカプラと、
それぞれが、前記第1の空間配列の1つの光出力端子を前記第2の空間配列の対応する光入力端子に接続する導波路アームのアレイと
を備える、アレイ導波路グレーティング(AWG)を設けるステップと、
(b)(1)光入力信号を第1の光入力導波路に、および(2)局部発信器信号を前記AWGの第2の光入力導波路に供給して、前記第3の空間配列の1組の4つの光出力端子において、前記光入力信号と前記局部発信器信号の4つの異なる位相の組合せを生成するステップと
を含む光信号を処理する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2013−501968(P2013−501968A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524780(P2012−524780)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/044958
【国際公開番号】WO2011/019683
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(391030332)アルカテル−ルーセント (1,149)
【Fターム(参考)】